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1949-11-11 第6回国会 参議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十一日(金曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————  委員氏名    委員長     伊藤  修君    理事      鬼丸 義齊君    理事      岡部  常君    理事      宮城タマヨ君            大野 幸一君            齋  武雄君           大野木秀次郎君            鈴木 安孝君            遠山 丙市君            岩木 哲夫君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松井 道夫君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   —————————————   本日の会議に付した事件橋本金二事件少年法の一部を改正する法律案(内  閣送付) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付) ○刑事補償法案内閣送付)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。先ず大野委員より発言を求められておりますから、これを許可いたします。
  3. 大野幸一

    大野幸一君 先の国会検務長官にお尋ねして置きました東京都庁に対するデモ事件で、橋本金二捜査に対する質問、それに対する御答弁をお願いいたします。
  4. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 東京都庁デモ事件に際して起りました橋本金二死亡の問題につきまして、検察庁における捜査の結果を概要申上げます。  これにつきましては、警察の方ですでに九十四のいろいろな報告をいたして、おつたのでありますが、更に検察庁において、警察官、都電の従業員都庁職員、その他学生、医師なで十八名につきまして調べをいたし、その他検証鑑定等捜査を遂げまして、その結論としては、この橋本金二死亡原因につきましては、当時二階又は三階から警察官がこれを突落して死亡させたものであるというようなことであつたのでありますが、そういう事実は認められない。死因肝臓破裂に基く出血死でありまして、その肝臓破裂に基く出血死でありまして、この肝臓破裂は背中とか、或いは腹部を蹴るとか、或いは踏みつけるというようなことによつて起る可能性があるのでありますが、大勢で揉み合つている最中に下敷になつて、そのようなことになつたのではないかというような結論に達しているのであります。これにつきましては、事件の起つたのが五月二十日のことでありまして、検察庁においては宿直検事がその夜直ちに現場に臨みまして実地を検分をし、更に死体につきまして東大の法医学教室死因鑑定を依頼し、その他の捜査をいたしたわけであります。  先程申上げたような結論に達しましたことを項目を逐いまして若干申上げたいと思うのであります。  死因肝臓破裂による内出血によるものと認められるのでありますが、その肝臓破裂が如何なる原因によるものか、鑑定の結果は出ておりません。併し死体の検視及び検証の結果では、骨折の事実はありません。又高い所から落ちた場合には、通常打撲傷或いは皮下出血等も認められるものでありますけれども、そういう傷はございません。それから橋本が倒れておりました場所の側に、都議会議事堂三階の窓のあるのは、農地課農地係分室社団法人東京農地協会室であります。この入口は守衞証言によりまして、当日鍵がかかつてつたので、誰も入つているとは認められないのであります。それから只今のは三階の方でありまして、二階の窓の方は都議会議員待遇室という部屋でありますけれども、そこの職員や、それから警察官警察吏員証言などによりまして、問題の起りました当日午後八時頃から十時二十分頃までの間には誰も入つていないということになつております。次に一階の窓でありますが、そこには丁度当時東交組合遠山宏という人が上つておりまして、そこから落ちたのではないということもはつきりしているのであります。でこの遠山宏或いは都の教員組合の石崎という人、或いはやはり都の教員組合の宮尾という人などは、橋本が高い所から落ちたのじやないかというようなことを疑うに足りるような供述をしているのでありますが、これはよく調べて見ますというと、現実に高い所から人が落ちて来たということを認めたものではないのであります。上から落ちて来る衣類のようなものに手を触れたとか、或いは被害者の倒れておつた姿が高い所から落ちたもののようだつたというようなことから、落ちたのであるというふうなことを言うに至つたということが認められるのであります。原因といたしましては、以上のような捜査の結果になつておりまして、当時は下で警察官とそれからデモ隊との間に大勢の間で揉み合いがございまして、従つてその間に倒れて或いは踏みつけられる、何人の過失というわけにも行かない状態において踏みつけられるということもあり得るということでありましたので、恐らくはそんなことではないかと考えられるのでありますが、結局事件として何人かを被疑者に立ててこれを訴追するというような段階には至らなかつたのであります。捜査の結果は概要以上の通りであります。
  5. 大野幸一

    大野幸一君 上の方から落ちたということが初め伝わつたために……それで落ちたのではないということを言えば、それで責任を免がれるように捜査の方針が進んだようでありますが、重大なことは当時最後にこの肝臓破裂に基く出血死であるということが鑑定の結果分つて、そうして蹴られたという事実があれば、これによる肝臓破裂が生じたと考えることは可能であつて、又証人はこれは現に調べられて分つておるわけでありますが、重要な証言で、目撃者として橋本君が倒れて起上ろうとしたとき、傍らの一警官が左顏面を強打し、更に下腹部を靴で踏みつけたというような証言があるのであります。こういう方面にちつとも捜査を向けられなかつたことが非常に遺憾であるが、いつこの証人を検問せられたか、これをもう一度伺つて、順次質問したいと思います。
  6. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 手許に参つております捜査結果の報告は六月六日附になつております。  それから只今御指摘の件でありますが、不起訴理由といたしましては、單に上から落ちたものではないということの外に、橋本に対しまして同人が倒れておつた現場附近において、何人かが故意に或いは外力によつて同人肝臓破裂を招来すべき位置と考えられますところの背部或いは腹部に対して殴るとか、或いは蹴るとかいつたような暴行を加えたというような事実は、結局これを認められるに至る証拠を発見することができなかつたのであります。
  7. 大野幸一

    大野幸一君 鑑定はいつ完成したのでしようか。
  8. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 鑑定の日附はちよつと手許で分つておりません。  それから鑑定の結果をちよつと申上げます。肝臓破裂は、これは鑑定の結果の抜萃でございますが、兇器の種類というようなことに関連いたしまして、肝臓破裂は生前問題の部分鈍体が作用したために生じたものでありますが、これが棒等による殴打のため、或いは人混みの中で揉み合つている間に生じたと認められる可能性は少いと考えられ、又三、四間の高所から落ちた場合には肝臓破裂が起り得るが、本件においてそのために生じたという確証はない。踏みつけられるとか、蹴られるとかいう事実があれば、それによつて肝臓破裂が生じたと考えることは可能であるというようなことになつております。
  9. 大野幸一

    大野幸一君 あなたの先程の御報告のうちに、五月二十日事件が起きたというのは誤まりであつて、五月三十日であろうと思う。私の方では五月三十日だと思つておるが、五月二十日が正しいのか、どつちが正しいのか伺いたい。
  10. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 失礼いたしました。五月三十日が正確でございます。
  11. 大野幸一

    大野幸一君 それで鑑定の結果を綜合して起訴にしないことにしたというわけでございますか。
  12. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) さようでございます。
  13. 大野幸一

    大野幸一君 この報告は実に過ちも甚だしいものと思料しますから、もう一度まじめに一つ報告して貰いたいと思います。鑑定は六月二十一日に報告されておる。而も不起訴は六月六日にされておる。この重大なる事件を僅か一週間を出でずして、鑑定の結果を待たずして不起訴にしておる。かくのごとき結果を喋々とここで報告されることは甚だ遺憾である。片方においてはたとえ国有鉄道の総裁であろうと、未だ以て捜査を打切らないという事実がある。一労働者なるが故にといつて、一週間であつさり片付けておる。今ここで喋々と述べられることは間違いも大である。あれは絶対承服できないから、もう一度よくお調べを願いたい。そうして更に御報告を願いたいと思います。
  14. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 不起訴の日は正確でありません。たまたまここにあります要領というのは六月六日附になつておりますが、不起訴の点は直ぐ調べまして、後刻御報告申上げます。   —————————————
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では少年法の一部を改正する法律案刑事補償法案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部改正する法律案、以上四案を議題に供します。先ず少年法の一部を改正する法律案について政府委員提案理由並びに内容の御説明をお願いいたします。
  16. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 少年法の一寺を改正する法律案提案理由を御説明いたします。少年法、これは昭和二十三年七月十五日法律第百六十八号によるものでありますが、本年一月一日施行されましたが、同法第二條少年とは二十才に満たない者と規定しているのであります。旧少年法は、十八才未満の者を少年といたしましたのに、新法はこれを引き上げたのであります。この規定通り実施いたしますと旧法時代に比し少年事件は、約二倍以上増加することが予想されたのであります。  ところが本法施行当時における家庭裁判所少年院、少年観護所及び同鑑別所等少年事件取扱機関の人的物的の設備の実情と犯罪者予防更生法がその後五月に施行される予定であつたことよりこの激増する少年事件に対する受人態勢が極めて不十分であつたのでありました。そこで少年法第六十八條により、同法施行後一年間は、少年法旧法樣十八才未満の者とするということにいたしデこの一年間に二十才未満に引き上げる場合の受入態勢整備に努めることにいたしたのであります、ところがすでに同法施行後十ヶ月になりますが、この受入態勢整備工作の進展が裁判所側法務府側とも十分でなく、今日では昭和二十五年一月一日より少年の年齢を新法の常則通り二十才未満に引き上げた場合には、到底激増する少年事件を滯りなく処理し得ないものと思われますので、更に一年間少年法の常則に則ることを延期し、その受入態勢整備をなし、少年事件の処理に遺憾なからんことを期したいのであります。  以上が改正要旨であります。愼重御審議上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは質疑は後に一括してお願いすることにいたしまして、次に裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由並びに内容を御説明願います。
  18. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 只今議題となりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を使宜一括して御説明申上げます。  裁判官報酬等に関する法律及び検察官俸給等に関する法律は、昨年六月第二回国会において成立し、同年七月一日から施行せられ、その後、同年十二月第四回国会において、それぞれその一部が改正せられ、同年十一月一日に遡つて適用せられて今日に及んでおりますことは御承知通りでありますが、この第四国会における両改正法は、政府が同国会の当初に提出した「昭和二十三年十一月以降の政府職員俸給等に関する法律案」と題する職員平均月收五千三百三十円を基準とする一般政府職員給与に関する法律案の例に準じて立案せられたものでありました。然るにその後御承知のような経緯によつて一般政府職員に関する「昭和二十三年十一月以降の政府職員俸給等に関する法律案」は、職員平均月收基準が五千三百三十円であつたのを六千三百七円に改め、この基準による「政府職員の新給与実施に関する法律の一部を改正する法律案」に修正され、この修正法案が両院を通過成立して、本年一月一日から施行せられておるのであります。そこで裁判官及び検察官につきましても一般政府職員の例にならいその給与基準を引上げる必要がありますので、この両法律案を提出いたした次第であります。  この両法律案別表に掲げる報酬又は俸給の各月額現行法別表と比較しますと、認証官たる裁判官及び検察官判事、二号以上の簡易裁判所判事並びに四号以上の検事報酬又は俸給月額については何らの変更がなく、その他のものについてのみ一般政府職員俸給月額増加に準じて月額二百三十七円から一千十二円までの増加になつており、その増加率は、一分六厘から一割四分となつております。  この法律案におきましては、右別表改正の外、他の法律改正に伴ふ法文の字句の修正及び別表俸給月額増加に伴う副検事特別俸給月額増額等に関する規定を設けてありますが、これらにつきましては特に御説明いたすまでもないと存じます。  以上簡單にこの両法案について御説明いたしました。何とぞ愼重御審議上速かに御可決あらんことをお願い申上げます。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に刑事補償法案について提案理由並びに内容を御説明願います。
  20. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) 只今上程になりました刑事補償法案提案理由を御説明いたします。  現行刑事補償法は、昭和六年法律第六十号を以て制定せられ、昭和七年一月一日から施行されたのであります。而して爾来今日まで寃罪者の救済に不十分ながらその役割を果して参つたのであります。  然るに、新憲法は、その第三十一條から第三十九條までの多くの規定により、刑事司法について、事前愼重手続をとることを要求し、過誤を未然に防止するに努めるとともに、第四十條において「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」と規定し、若し、愼重手続にも拘らず、刑事司法が誤まりに陷つていたときは、国に対する補償請求権を認め、以て事前、事後の両面相俟つて人身の自由の保障を完からしめんとしているのであります。  然るに、現行刑事補償法内容とこの新憲法第四十條の規定とを対比いたしますと、その補償原因及び補償不成立條件について改正を要する点があるばかりでなく、民法改正に伴い補償を受けるべき者の順位及びその相互の関係について改正を要する点があり、国家賠償法制定に伴い、同法による補償との調整を図る必要があり、更にまた拘禁による補償金額が一日五円以内という現行法規定は如何にも現状に適しないのであります。かくして、すでに昭和二十一年秋の臨時法制調査会においても、現行刑事補償法改正すべきものとしてその改正要綱の答申があり、政府においても、引続きその全面的改正準備を進めて参り、刑事訴訟法改正の終るのを待つて昨年暮の第四回国会刑事補償法改正する法律案として提案したのであります。ところが、不幸にして審議未了となりましたので、当時の国会における論議を参照しつつ、再検討を加えた結果ここに改めて本案提案する運びに至つたのであります。  そこで、本案内容の御説明に入ります前に刑事補償本質について簡單に申述べて置きたいと思います。この問題は、刑事補償国家賠償とその本質を異にするかどうかという面から論ぜられていたのでありますが、本案においては、刑事補償はそれが損害の填補である点において国家賠償とその本質を同じくするものといたしました。従つて刑事補償国家賠償と異るのは、国家機関故意又は過失補償の要件としないこと及び補償の額が定型化されていることの二点に止まるのであります。国家機関故意又は過失がある場合には、刑事補償を受け得るばかりでなく、刑事補償によつて填補せられない損害については、国家賠償を受け得ることになるのであります。  次に本案内容について現行法と相違する主な点を御説明いたします。  第一点は、補償原因の拡張であります。現行法においては、刑事訴訟法上の未決勾留及び刑の執行についてのみ補償すべきことを定めているのでありますが、本案では新憲法第四十條の趣旨に則り、刑事手続上のすべての抑留及び拘禁、刑の執行並びにこれに伴う抑留及び拘禁のすべてについて補償をすることといたしました。少年法及び経済調査庁法規定による抑留及び拘禁もそれが後に刑事手続に移る場合がありますので、これも補償原因に加えたのであります。  第二点は、補償不成立條件の整理であります。現行法第四條においては補償不正立條件を相当広く規定しており、この規定によつて、運用の実際においても補償を阻まれる事例が少くなかつたのであります。然るに新憲法は、無罪裁判を受けた者には特別の場合を除き必ず補償をすべきことを要求している趣旨と解されますので、現行法第四條に規定する補償不成立條件を整理し、單に(一)本人が、捜査又は審判を誤ませる目的で、睦虚僞の自白をし、又は他の有罪証拠を作為することにより、起訴未決抑留若しくは拘禁又は有罪裁判を受けるに至つたものと認められる場合(二)一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪裁判を受けても他の部分について有罪裁判を受けた場合のみを補償不成立條件とし、而もこの場合にも裁判所の健全な裁量によつて補償の一部又は全部をしないことができるものとしたのであります。第四回国会提出案では、この点に関する辞句がやや不明確でありましたので、今回は、これを修正して明確を期することといたしました。  第三点は、補償請求権相続対象として点であります。これは、前に申述べましたように、刑事補償本質一種国家賠償と考える以上、現行法のように補償請求権相続対象としないことはその理由に乏しいからであります。相続対象とする結果、相続順位相続分その他相続に関する点はすべて民法規定に従うことになるのであります。  第四点は、補償金額を引き上げた点であります。現行法では、身体を拘束した場合には一日五円以内、死刑執行による場合には裁判所の相当と認める額を補償することとしているのでありますが、今回は、身体を拘束した場合には、一日二百円以上四百円以上とし、死刑執行による場合には五十万円以内で裁判所の相当と認める額を補償することといたしました。旧案と異るのは、死刑執行による補償について一万円以内とありましたのを、如何にも低きに過ぎますので、五十万円以内とした点であります。  第五点は、国家賠償との調整図つた点であります。旧案によりますと完全な国家賠償を受けても、刑事補償請求があれば、尚百円以上のノミナルな補償をすることになつていたのでありますが、これも刑事補償国家賠償一種と考えれば必要のないことになりますので、本案では、かような場合には、補償をしないことといたしたのであります。  第六点は、補償決定をしたときは、申立により決定要旨を官報のみならず新聞紙にも掲載して公示すべきものとした点であります。この点は、現行法制定当時から要望のあつた点でありますが、今回不十分ながらその一部の実現を図ることといたしました。  以上簡單ながら、刑事補償法案内容を御説明いたしました。尚本法による補償は新憲法施行の日以後補償原因の生じた場合にも遡つて適用することとし、本法制定が今日まで遅延いたしたため寃罪者の蒙る損害最小限度に止める措置を講ずることといたしました。  何とぞ愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを希望いたします。   —————————————
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尚これより逐條について簡單に御説明願いたいと思います。
  22. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 刑事補償法案につきまして簡單に御説明いたします。  この法案は、第一條から第五條までが実体的規定、第六條から第二十三條までが手続規定、第二十四條が補償公示に関する規定であります。尚附則にも重要な規定を含んでおります。  第一條関係、これは本案中最も基本的な規定であります。新憲法抑留又は拘禁無罪裁判を受けたときには、すべて補償請求ができるて定めておりますので、現行法一條のように未決勾留と刑の執行のみを補償対象にするだけでは不十分で、逮捕、勾引は勿論、刑の執行に伴う抑留拘置まで、すべて補償対象とする必要があり、旧案でも少年法経済調査庁法犯罪者予防更正法による抑留拘禁補償対象となつておりませんでした。本案はこれらの点を補正いたしたものであります。これによつて刑事手続上のあらゆる抑留拘禁及び刑の執行を受けた者が無罪なつた場合には、補償請求をすることができることとなるのであります。ただ第三條に例外のあることは、第三條につきまして申上げる通りであります。  第二條現行法では補償請求権相続を認めず、本人死亡し、又は死亡した者について無罪裁判がありますれば、一定の範囲の遺族が大体家督相続順位によりまして受償主体となることになつており、旧案はその考え方を踏襲しておつたのでありますが、刑事補償現行法制定当時の考え方、つまり損害補填ではなく、国家補償金を交付することにより遺憾の意を表するという考え方によるべきものではなくて、国家賠償法による賠償とは同一ではございませんが、ややそれと似た損害補填と考えるのが、新憲法に国民の基本的な権利として刑事補償請求権の認められるに至つたことからして適当ではないか、そうなれば民法の原則の適用を特に否定する理由に乏しいので、現行法及び旧案のような特別規定を置かず、相続対象とすることといたしました。ただ相続対象とすると申しましても、本人が一度も請求をしないで死亡した場合にも相続対象となるかどうかにつきましては、民法上のいわゆる慰藉料請求権に関する判例と学説との間に争いがあるように思われますので、特に本條第一項を設け、相続されるものであることを明らかにいたしたのであります。  更に死亡した者につきまして無罪裁判があつた場合には、特別の規定がない限り相続の問題を生じませんので、特に本條第二項を設け、第一項と相俟つて、この場合にもやりは相続されるものとして、統一的な解決を図つたのであります。  第三條、これも又重要な規定でありまして、いわば第一條例外をなす規定ということができます。現行法四條ではこの例外が極めて広範囲で、心身の故障による無罪の場合及び起訴された行為が犯罪にはならないが、公序良俗に反する場合には補償をせず、本人故意又は重大な過失起訴勾留有罪判決原因なつたものと認められる場合にも補償しないこととなつてつたのでありますが、新憲法第四十條との関係上、かような広範囲の例外は許されないものと思われます。旧案の四條では、現行法規定を大幅に整理いたしたのでありますが、尚多少明確を欠く点がありましたので、本案は旧案の規定修正し、趣旨の明確を期したものなのであります。本條程度例外は、憲法第四十條と第十二條とを併せ考えれば許されるものと考えておるのであります。  第四條、これは補償内容、つまり如何なる内容補償をするかを定めた規定でありまして、一般には最も利害関係の多い規定であると思います。現行法五條では、身体を拘束した場合には、一日五円以内の補償金死刑執行の場合には裁判所の適当と認める額の補償金財産刑の場合には徴收した金額に相当する補償金没收の場合には、没收物、その売却代価、又は追徴金に相当する補償金を交付することになつております。旧案ではこれを大幅に拡張いたしたのでありますが、本案は旧案を踏襲しつつ、そのうち、死刑執行の場合の補償金一万円以内を、五十万円以内に引き上げ、財産刑及び没收執行による補償の場合の利息に相当する加算額の算出基礎を明確にいたしました。一日二百円以上四百円以内とした理由は、現行法の一日五円以内という額の基礎が明確でありませんので、その五円が現在幾らに相当するかの算定に困難を生じたのでありますが、旧案作成当時物価指数、賃金指数などを考慮し、特殊な事例ではございまするが、刑事訴訟費用法に定める証人の日当の引上率の引き上げを考えまして、まあこの程度で相当であるということになつたのであります。  第五條刑事補償損害賠償との関係に関する規定でありますが、現行法には勿論かような規定はありませんで、旧案におきまして初めて生じた問題であります。旧案では、刑事補償損害賠償ではないという考えを推し進め、仮に全額の損害賠償を受けましても、尚百円以内で名目上の補償をするということにいたしておつたのでありますが、このような考え方につきましては、旧案審議の際にも批判を加えられたところであり、理論付けに困難な点もありますので、本案では現行法以来旧案に至るまでの考え方を一擲し、刑事補償損害賠償と同様、損害補填であると観念いたしました。その結果全額の損害賠償を受ければ、損害補填されておりますので、更に刑事補償をする必要はないということになります。本條前段が旧案と異りますのは、かような理由によるのであります。本條の他の法律と申しますのは、現在では国家賠償法民法でありまして、他にはございません。  以下手続規定に入ります。  第六條は、補償請求事件の管轄機関を定めた規定であります。現行法六條及び旧案の六條とその内容を同じくしております。  第七條、補償請求の出訴期間を定めた規定であります。現行法九條及び旧案七條では、六十日となつておりますのを、本案では三年といたしました。その理由補償請求権者が現行法及び旧案では容易に確定することになつてつたのでありますが、本案では相続人が補償請求権者となる関係から、相続人の確定に相当日時を要する場合も想像されるのであります。三年といたしましたのは、民法の不法行為による損害賠償請求権の消減時効期間が三年であるのを参酌したのであります。尚時効期間としなかつたのは、時効中断によつて迅速な手続の完了を期し得ないからであつて、時効期間としないことによりまして、格別不都合は生ずることはないと考えるのであります。  第八條、本條中、本人との続柄を疎明する点は、現行法第六條第二項にも同趣旨規定がありまして、特に説明を要しないと思います。同順位相続人の有無を疎明する点は、第十條第十一條との関係で必要な規定であります。旧案では、本條のような規定は、裁判所の規則に讓る意味で設けられておりません。  第九條、これは現行法八條及び旧案十條と同一の規定でありまして、特に説明を要しないと思います。  第十條、刑事補償無罪裁判け受けた者即ち本人について補償請求権の存否及び補償の範囲が定められるのでありまして、本人死亡した場合に、おける相続人の数、その相続分の如何には何ら関係がございません。従つて数人の同順位相続人があります場合にも、その一人から補償請求がありましても、本人に対する関係補償すべきかどうか、補償するとすれば補償金の範囲はどうなるかが決定せらるべく、相続人一人々々の受ける補償金が幾ばくであるかは、その後の問題になるのであります。一方、補償決定確定前の補償請求権は、その存否及び範囲が未確定の状態にあるのでありますから、それが相続された場合にも、当然分割されるのではなく、一個の債権の共有関係を生ずるものと解せられるのであります。従つて特別の規定がなければ、民事訴訟法に規定する必要的共同訴訟的形態によつて請求が行われなければならないと考えられるのであります。これらの関係を考慮し、且つ刑事補償の性質上、簡明迅速な手続が望ましいということも併せ考えまして、本條を設けることにしたのであります。旧案八條と同趣旨規定でありますが、刑事補償の性質を旧案と異り、損害の填補と考えながら、尚旧案と同様な本條を設けた点にその意味があるのであります。  本條において全員のため全部につき請求があつたものとみなされる結果、請求人以外の者も、みずから請求した場合と同一の利益を受け、且つ請求人は、その相続人に拘わらず、全額の請求をしたものとみなされるのであります。これに反する請求は許されないのであります。併し、請求をした者以外の者は、請求の利益に与り得るだけで、当然手続上も請求人として取扱われるわけではないのであります。一方、全員のため請求したものとみなされる以上、別に独立の請求をすることは認められないのであります。そこで、本條第二項において、共同請求人としての手続参加を認め、その権利保全の途を開くこととしたのであります。現行法では補償請求権者が数人あることは考えられないので、本條のような規定はないのであります。  第十一條は、第八條において御説明いたしました通り、第十條との関係において同順位相続人の権利保全を図つた規定であります。  第十二條は、補償請求をすることができる同順位相続人が数人あります場合には、その一人のした補償請求は、全員のためその全部につきしたものとみなされるのでありますから、請求人單独の意見による請求の取消を認めることは妥当でないので、本條が設けられたものであります。現行法及び旧案には、このような規定はございません。  第十三條は、これは当然のことを規定したものでありますが、現行法七條では、取消をした効果は、その後順位者にも及ぶことになつておりました。本條では、これに反して、取消をした者が死亡し、尚第七條に定める期間内であれば、その相続人は請求をすることを妨げないのであります。  尚第十二條規定によつて他の者の取消に同意しても、自己の請求権は失わないのであります。従つて同意をした者が新たに請求をすれば、先に取消をした者も第十條によつてその利益にすることができるわけになる。ただ取消をした者と、同意をした者との間に内部関係として問題が残るに過ぎないのであります。旧案第九條は、本條と同じであります。  第十四條は、補償請求があつたときの裁判の形式が決定であること、決定をするについては、検査官及び請求人の意見を聞くべきこと並びに決定告知の方式を定めたもので、現行法第十條第一項及び旧安第十一條第一項と同様の規定であります。  第十五條は、補償請求を却下する裁判に関する規定で、現行法第十條第二項では、請求の方式が違法である場合にも、請求が実質的に理由のない場合と同樣、請求を棄却する裁判をすることになつており、旧案第十一條第二項でも、現行法と同樣であつたのでありますが、第十七條の関係から、形式的裁判と実質的裁判との区別する必要がありますので、特に大條を設けたのであります。  第十六條、現行法第十條第二項及び旧案第十一條第二項と同趣旨規定で、第十五條で述べたこと以外に附加して説明すべき事項はないと思います。  第十七條は、第十條に対応する規定でありまして、同條とは不即不離の関係に立つものであります。  第十八條、補償請求手続の受継に関する規定であります。補償請求をすることのできる同順位相続人が数人あります場合に、そのうちの二人以上の者が請求をしておるならば、うち一人が死亡したり、相続人たる身分を失いましても、他の請求人がおりますので補償手続を進めることができます。死亡した者の相続人は、第十條第二項によつて改めて共同請求人として手続に参加することが可能であり、その参加は、第七條の出訴期間の制限を受けませんから、何時でもできるのであります。ところが請求人が一人であります場合、つまり共同請求人もない場合には、その者が死亡いたしますと、適法な請求がないことによつて請求却下の裁判を受けることになります。その場合にも出訴期間中であれば、死亡した者の相続人から改めて補償請求をうることもできるのではありますけれども、出訴期間を過ぎておる場合には救済の方法がないことになるばかりではなく、出訴期間中であつても、改めて請求手続をするのは繁雑なので、本條を設けた次第であります。  第十九條は、補償決定及び補償請求を棄却する決定に対する不服申立を認めた規定であります。旧案の第十四條と同趣旨規定でありますが、旧案に比し準用規定整備しております。現行法第十一條は、補償請求を棄却する決定に対してのみ即時抗告を認めておつたのでありますが、本案は、それを補償決定につきましても拡充いたしました。補償金額の多寡についても争う途を開くためであります。検察官には不服の申立権はありません。  第二十條補償拂渡の管轄裁判所、拂渡請求の効果、請求を受けた裁判所の通知義務に関する規定で、補償請求に関する規定とほぼ同趣旨のものであります。  補償金額が確定した後の拂渡につきましては、数人の拂渡を受けることができる者の各自の相続分に応じて拂渡すことも考えられますが、相続分について争のある場合もありますので、その確定を待つて拂渡をするよりも、むしろ拂渡は急速に行い、相続人間の分配は相続人等に一任するのが相当であるという考えに基いて本條を設けたのであります。  尚補償拂渡請求権は、一般の国に対する債権の例に従い、金銭の給付を目的とするときは五年、物の給付を目的とするときは十年であります。現行法の十三條二項では、拂渡請求の期間を一年とし、旧案の十六條二項でも同様であつたのでありますが、かく限定する理由に乏しいので、本案ではかような規定を削除することにいたしました。  第二十一條補償決定の効力に関する第十七條と同趣旨規定であり、本條を設けた理由は、第二十條の御説明の際述べたところと同様であります。  第二十二條補償請求権及び補償拂渡請求権の讓渡禁止に関する規定で、現行法十四條及び旧案十八條は、拂渡請求権についてのみ讓渡禁止の規定があつたのでありますが、補償請求権の方は当然その性質上讓渡できないものとせられていたのであります。本案では、補償請求権自身も損害賠償請求権とその本質において異らないものと観念するに至りましたので、特別の規定のない限り讓渡は禁止されないことになります。併しながら刑事補償請求権は、その確定前であると否とを問わず、讓渡を許すことは妥当ではありませんので、本案においても特に明文を設けてそのことを明らかにいたしたのであります。讓渡禁止は差押の禁止を含むこと勿論であります。  第二十三條、刑事補償請求に関する手続が原則として刑事訴訟法決定手続に準じて行われるべきことを明らかにした規定でありまして、現行法十八條、旧案十九條にも同趣旨規定があります。  刑事補償の性質を損害賠償と異らないものと考えても、民事訴訟のような複雑愼重手続によることの必要はなく、刑事手続の一環としての簡明な手続による方が適当であると考えます。  第二十四條、補償決定のあつた場合の公示に関する規定であります。現行法十九條及び旧案二十條にもすでに同趣旨規定がありますが、本案は、第一、官報以上に新聞紙にも公示すべきこと、第二に、公示を求める申立の期間を二箇月に制限したこと、第三、公示の内容補償決定要旨としたこと、第四、全額の損害賠償を受けたという理由補償をしない場合にも申立があれば公示だけはすることとしたことにおいて旧案と違いまして、第一の点は、官報に公示することは国家が公に名誉回復を図るという意味ではよいのであるが、広く知らせるという意味では不十分でありますから、新聞紙を加えることといたしたのであります。如何なる新聞紙に公示するかは具体的事情に応じ、申立人の希望をも参酌して裁判所が定めるのであります。第二の点は、期限を定めないのは適当でないからであり、第三の点は、補償決定のうちに裁判の主文及び要旨は明示されているので、刑事補償の公示としては現行法及び旧案のごとく、裁判の主文及び要旨補償をした旨のみよりも、補償決定要旨の方が妥当であるからであります。第四の点は、旧案では全額の損害賠償を受けた場合にも百円以内の名目的補償をすることになつておりますので、この規定がいらなかつたのであります。  次は附則でありますが、第二項は、施行期日を定めた規定でありますが、補償決定要旨を新聞紙にも公示することは、本案の初めて採用した制度でありまして、予算の関係を考慮いたしまして、明年四月一日以後決定の確定した事件にのみ適用することといたしました。  第二項、旧案では現行法改正する形式によつてつたのでありますが、現行法を主面的に改正することと、現行法を廃止して新たに法律制定することの間に実際上の差異はなく、むしろ廃止制定の形式を採る方が常識的でもありますので、本案ではこの廃止制定の形式を採ることといたしました。本項はその意味の規定でございます。  第三項は、経過規定の原則でありまして、特に説明を要しないと思います。要するに新法を遡及して適用することを示しているのであります。  第四項は、昭和二十二年五月三日、日本国憲法施行と同時に刑事補償法本案とほぼ同様の内容に改められなければならなかつたのであります。特に補償すべき場合、補償請求権者の範囲、補償金額等につきましてもそうであります。併しながらそれが諸般の事情によりまして今日まで遅延したため、本案憲法施行の日まで遡及して適用し、その間に無罪裁判を受けた者を救済する必要があるのであります。現に請求中の者、又はまだ請求をしておりませんが、現行法によつても尚請求権を喪失していない者は、附則第三項によりまして本案による補償を受けることができるが、すでに現行法による請求期間を徒過した者、又は現行法では請求権を有しなかつた者、例えば現行法第四條第一項に該当する者、逮捕されて七十二時間留置せられたが、勾留はされなかつた者等であります、このような現行法では請求権を有しなかつた者、或いは現行法により一日五円以内という僅少な補償しか受け得なかつた者は、特別の規定のない限り本案による救済を受け得ないこととなるのであります。そこでこれらの者もすべて本案による補償を受けることができるよう、この第四項を設けたのであります。  第五項は、第四項によつて現行法により一日五円以内の補償金を受けた者も、本案による補償請求をすることができるので、重複を避けるため前の補償金を差引くべきことを定めたものでありまして、当然の規定と考えるのであります。  第六項は、補償決定の官報公示も又第四項の事件につきましては、特別の規定のない限り重複して行われることとなりますので、これを避けるために設けられた規定であります。  第七項は、新刑事訴訟法を前提として立案されておりますので、第四項において旧刑事訴訟法及び刑事訴訟法応急措置法当時の無罪事件にも、本案を適用することとすれば、旧刑事訴訟法規定する事項と新刑事訴訟法規定する事項との関係を明らかにする必要があります。本案はそのための規定であります。  第八項、刑事訴訟法応急措置法はすでに効力を失つておるのでありますが、同法に規定されていたいわゆる特別上告は、新刑事訴訟法に取入れられていないので、これを本案による刑事補償対象とするため本項を設けたのであります。  第九項は、第七項と同趣旨規定でありますが、第七項の方は本案施行前に無罪裁判の確定した事件に関するものであります。旧刑事訴訟法及び応急措置法の適用のある事件は、刑事訴訟法施行法により尚当分続きますので、本項はかような事件に関する規定であります。  以上を以て一応の御説明を終ります。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では以上四案について、これより質疑に入ります。
  24. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 少年法の一部改正法律案理由として「整備工作の進展」という点、「受入態勢整備」ということを言われておるのでありますが、これは予算関係ですか、人的物的の受入態勢が整わないという意味なんですか、金がないという意味ですか、若し予算関係があれば昭和二十六年の四月から始まるようなことにならんというと、一月という関係ちよつと分らないのですが、どうですか。
  25. 牧野寛索

    政府委員牧野寛索君) お尋ねの点でございますが、丁度政府委員が衆議院の法務委員会に出ておりますので、後刻詳細に御説明いたしたいと思います。
  26. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今の答弁は留保することにいたします。
  27. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 刑事補償法案の点で相続人が数人ある場合に、一人が請求を取消したという場合、そうするとその請求権は、例えば五人の相続人の中で一人が取消した、均分の場合を相続して、そうすると残の人は五分の四だけの請求権が残るのであるか、やはり全額の請求権は取れるのであるかどうか、その点はどうですか。
  28. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 全額残るものと考えます。
  29. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それであると、元は自分は五分の一しか取れないに拘わらず、五分の一以上取れるということになると、それはやはり讓渡ということになりませんか、相続分の讓渡ということ……相続だけは今度認める、併し移転は認めないということを説明しておられるわけですね。そうすると相続分というものは初めから決まつておるわけですが、五分の一しかない筈なんです。それが殖えればやはりそれは権利の移転じやないですか。
  30. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) その場合にはやはり讓渡とは性質が違うように考えるのであります。
  31. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 議論になりますから、もう少し私も検討して見ますけれども、相続分というものは初めから決まつておるのですね。不可分的に相続はしますから、その点は私はいいと思います。ですからむしろ請求することができないと思うけれども、賠償を受けることができないということになれば、実体的にも失つてしまうわけなんですね。この意味は、請求することはできない、受くることはできないという明文でないのだから、その点においても幾らか疑いがあると思います。受くることができないということになると、五分の四になつてしまうわけです。併しながらこれは請求することができないのだから、実体的の権利はなくならないという想像であつて、その方がいいと思います。私は考えとしては、それであれば内部的の問題だから、あとから請求は国に対する関係で放棄したけれども、相続人の内部関係において相変らず五分の一請求しても一向差支ないじやないか。国家がそこまで干渉して請求をしなかつたにも拘わらず、依然として全額を国としては支拂うつもりであるというならば、手続の上において放棄したからといつて、あと内部関係においてその人が貰われないというところまで進んで干渉と言いますか、考えることは必要じいじやないかというように考えますが、この点どうですか。
  32. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) お尋ねの御趣旨は、請求を取消しておる者に対しては実体的にも受けることができないとして、相続分をやらなくていいじやないかというお尋ねでございますか。
  33. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 その思想でないというと移転という問題が起りはしないかということを私は疑つておる、先程申しましたごとく。併し移転を禁じたがいいかどうかということになると、むしろ立法論としては相続はいいけれども、移転はいけないということを言う理由の方が、私にはまだ十分分らない。もうすでに或る財産的の請求をするという権利であれば相続はいいけれども、他人にそれを移転してはいかないということは、相続財産という見地から見ると少しおかしいのじやないかという感じがするのですね。移転をして見てもそれは財産権になつておるわけで、人格権という程のことでもないのです。いろいろ拘禁を受けたりすると、財産上の損害を受けておるのですね、それは賠償する趣旨であつて、名誉を回復するという思想とは思われない。若し名誉回復であれば、それは人権であつて、移転は許されないというのが当然と思いますが、どうもこれは財産権の関係で、金銭上の賠償ということになつておるように考えられる。五十万円とか、二百円乃至四百円というようなことは名誉の関係とは思われない。身分如何に拘わらずその金額を超過することはできない。それでそこに範囲があるのか。まだもう少し理由を承わりたいと思います。何故そういう二百円乃至四百円というようなことにするのか、五十万円以下とするのか、皆同じ金額でいいじやないかという考えも疑いとして思うのです。どういうような工合にその間の伸縮をするのですか。二百円と五百円の範囲、五十万円以下となつた場合、以下はどこまで下がるのであるか。どんなような区分をして金額を査定するのであるか。いわゆるここに書いてある健全なる判断とかいうふうに言葉を使つてある。健全ということはどういう意味か。少し了解し難いと思います。
  34. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 死刑執行に対する補償の五十万円以下というのは、御指摘のように少い方の額の制限は法律上はございません。裁判所の判断によりまして、具体的に又妥当な金額け受けるという考えであります。
  35. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私は下を決めないということがよくないと思うのですが、少くとも生命を失つたというような場合には以下というようなことにすると、何だか分らないというような法律で進むということは私としては少し疑問にする、或る程度の金額は必ず支拂つていいのじやないかと思う、死亡した場合にはそう考えますが、その点如何でしよう
  36. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 五十万円以下ということで、裁判所の方の判断で先ず適正を期し得るだろうというふうに考えましたのでありまして、他に深い意味はございません。
  37. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私はやはり最低は考えた方がいいのじやないかと思います。刑法でも最低最高が決まつておるのですから、凡そ何かの判断をつけて或る金額は必ず出すということにしないというと、健全なる判断に委せるといつて、国が最低のことは自分でも何にも考えていないということは、これは人命に対する考慮が不親切じやないかというふうに感ずるのですが、何らか如何なる場合でもこのくらいは出すということが、いろいろな事例であるのじやないかと思います。鉄道の場合の見舞金であるとか……世の中に大体の例ができている、その健全なる判断の最低は、国として定めて私はいいのじやないか、それは御考慮を煩わしたいと思います。
  38. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) その点尚研究したいと思います。
  39. 大野幸一

    大野幸一君 その研究されるついでに、三十歳で死刑になる人、四十歳で死刑になる人、五十歳で死刑になる人、こういう三段ぐらいで……四段でも五段でも尚結構ですが、例のホフマン式計算法によつて、どれはどのくらいであるということ、それから、それが生活平均からどのくらいであるという数字的根拠を出されないと我々は承認できないので、ただ五十万円程度だということは、丁度電車に轢かれて死んだ人にそのくらいやろうじやないかという、そんな程度ではいけないので、むしろこれは五十万円以上とするならば意味があるければも、現下の情勢から、五十万円以下であつては権利を制限するものである。電車にぶつかつて死んだつて五十万円ぐらい取れます、過失があれば……三鷹事件では七十万円ですから、裁判所裁判によつて、誤判のために死刑なつた人が五十万円以内というのは二十万円損をする、どうかこの点については前発言者からおつしやつたように考究をなされたい、こう思うのであります。ということと、資料を一つ出して頂きたい。
  40. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 四條の一項では一律に二百円以上というので下を括つているのですが、三項で下を括らないという立法理由は……
  41. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) その点一つ研究して置きます。
  42. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 今の二百円以上四百円以下というのはどういうふうな工合に考えておられるのですか。健全なる判断の、凡そのあなた方の考えの健全なる判断は、どういうふうな工合に切り盛りするつもりですか。
  43. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) この金額につきましては第四條の第二項において「拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、うべきであつた利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情」ということになつておるのでありますが、まあここに書き上げましたようなことなぞを参考にして、斟酌して金額を決めるというような考え方になつております。
  44. 大野幸一

    大野幸一君 とにかくこの機会に甚だ苦言であるけれども、これはもう国民の代表者として申上げるのですが、どうも法務政府委員の人ですね、少し誠意がお足りにならないのじやないかと思うのだが、先程の私に対する答弁といい、まあそのくらいでよかろうという数字で根拠はないと言い、これはもう一つ皆さん政府委員において、昔のいわゆる政府委員のように正々堂々と我々に対して反撃的の行為に出られるように、追つて答弁するとか、今のは間違いましたとか言うのではこれは困るのです。政府委員をして我々教えて頂くくらいに一つやつて頂きたい、こう思います。
  45. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 答弁が誠に抽劣でございまして、いろいろ誤解を受けるのじやないかと思うのですが、併しこの刑事補償法案につきましては、前回の国会の御審議の際にいろいろ御意見が出ました点などを十分にこれは取入れて、改めてこれは一つ考え直したものであります。只今死刑補償の場合にも、価格の点につきましては尚若干考えて見たいと思いますが、決して国会の御審議を軽視するどころじやなくて、本当にこれはよく取入れたつもりでおるのであります。
  46. 大野幸一

    大野幸一君 いや、あなたは私の言つたことは必要はないとおつしやるのですか。もう少しよく研究して頂きたいと思います。
  47. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) はあ、そういうつもりでおります。
  48. 大野幸一

    大野幸一君 例えば議員が調査を求めたときに、先程の鑑定書は六月二十一日に出ていますが、その鑑定の結果を斟酌して六月六日と……あなたの法務庁として六月二十一日に鑑定書ができ、それを斟酌して六月の六日に不起訴決定をするなんということを堂々とおつしやつている。私は知つているからいいけれども、知らなかつたらここで済んでしまう。そういう点ですよ、私の申上げますことは……
  49. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 先程の橋本金二氏の死亡の問題に関する不起訴決定の日にちでございますが、尚私この点誤まりのないように帰つてから記録に基いて直調調べて見たいと思うのでありますが、一応電話で連絡を取つて調べて見ましたところによりますというと、六月七日の不起訴になつておるようであります。で鑑定の方は、鑑定の書類ができましたのが、二十九日のように報告を受けておるのであります。で実際の鑑定内容は当時鑑定の直後に法医学教室の方から口頭の報告は受けているのでありまして、実際にもそういう例は外に幾らもあるのであります。例えば拘留期間中に起訴をいたします場合に、鑑定書ができておらないことが通常でございまして、この場合もそういう例によつたのではないかというふうに考ておるのであります。尚この点は帰りまして記録に基いて正確なことをお答えしたいと思つております。
  50. 大野幸一

    大野幸一君 それは拘留中の者は判定書ができるまで一応起訴して置くということはできないでしよう。併しこれは犯人が分らないわけです。分らないのを判定報告が来るまで待てないからして、起訴にする理由がどこにあるか。大体この事件は一労働者というので侮蔑されたという労働組合の不満がある。これを私は法務庁に反省を求めたいと思つてつているのです。  もう一つお伺いしたいと思いますが、その告発事件があつたようですが、それについて調べているか調べてないか。
  51. 高橋一郎

    政府委員高橋一郎君) 今の点で尚よく記録に基いて誤まりのないところを、只今のお尋ねの件と一緒に御報告したいと思います。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の大野君の質問に対しましてはよく調査して後日御答弁を願うことにいたします。他に御質問ありませんか。裁判官及び検察官報酬及び俸給に関する法律案に関する資料は別に出ないのですか。
  53. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 資料は国会の方に廻しております。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから俸給の資料でありますとか、それから処理されたものとか未済のものとか、そういう仕事の面におけるところの統計を渡して頂けないでしようか。でき得れば過去におけるところの例えば戰前の二十年なら二十年当時の裁判官検察官の仕事の量……
  55. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 一人当りの……
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全体でいいですね。
  57. 野木新一

    政府委員(野木新一君) それは大体できると思います。
  58. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又比較いたしますと、一体どのくらいの重責になつているのですか、処理ができるのかできないのか、全国では相当の未済事件があるらしいのですが、そういう点も、一体裁判官は遊んでいるのかやつているのか分らないですから、そういう点をこの際広く我々知つて置きたいと思います。甚だしいところになりますと、四千件くらい貯めているところがあるらしいですね。仕事をせずに給料を貰つているのが……
  59. 野木新一

    政府委員(野木新一君) その点は裁判所若しくは裁判所事務局と連絡いたしまして、一応ちやんといた数字の整理したものを出したいと思います。
  60. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 尚参考のために二十年なら二十年でよろしいですから、その当時の成績を比較したものを頂きたい。
  61. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 承知しました。
  62. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後二時五十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            大野 幸一君           大野木秀次郎君            遠山 丙市君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松井 道夫君            松村眞一郎君   政府委員    法務政務次官  牧野 寛索君    検     事    (法制意見第四    局長)     野木 新一君    検     事    (検務局長)  高橋 一郎君