○河野正夫君 全般的なことを五項程伺
つて置きたいと思います。それは実は逐條審議の際と思いましたけれども、
速記がいつまでおるかも分り兼ねるので、今のうちに質問して置きたいと思います。
第一に今
財政権の問題でいろいろ御
質疑があ
つたのでありますが、当局のお答えは
教育費の方向で何とか努力しつつあるというようなことでありました。それは勿論極めて重要でありまするが、
教育委員会そのものの
財政的な
裏付けがないのではないかというのが、昨年のこの
法案の提出された時の問題の
一つであつたと思います。実際に各
地方を廻
つて見ましたが、本年度極めて圧縮せられたあの教員の定教の中から、この
教育委員会事務局に相当数教員が
事務局員として喰い込んでいるわけです。そういうような
実情はどうして生じたかというと、結局
都道府県或いは五大都市等も
教育委員会の運営費用に乏しいというところから来ておるのであります。この
法案の
改正が全般として
教育委員会を育成し、助長し、強く健全な発達をさせるというところに目的があるとするならば、先ず第一にこういう点について何らかの打開の途を講じて置かなければならない。そこで伺いたいのは、
教育委員会の運営の
経費というようなものについて、
国庫の補助乃至は
都道府県に対してこの分を出し得るように何らかの方途を講じたか否かということになるのであります。ついでに申上げて置きますが、私立学校法が
只今上程されておりますが、私立学校側が、
都道府県の場合、所轄長は長官にしないで
教育委員会にしてはどうかという一部の
意見に対して非常に惧れをなしておる所以のものは、
教育委員会を所轄長とすると権力が強くな
つて干渉がひどくなるという点ではないので、その点は法令で決めて置けば、
都道府県知事であろうとも
教育委員会であろうとも同じことで、而も
教育委員会の方が民選されて来ておるだけ、それだけ民主的だとも言い得るのであります。そうでなくして、
教育委員会には
財政権がない、又
地方議会に対する
発言権も弱いし、
都道府県の
知事の方が予算の立案権を持
つておるだけ強いし、補助も貰い得るだろう、こういうふうな点に、私立学校
関係の人々があの所轄長の問題についても
都道府県知事を欲しておる
理由があると私は思
つておる。そういうふうな
意味におきましても、これは事、私立ならば
都道府県知事において
財政権を持たして置くからいいけれども、公立の方でも
教育委員会の
財政権のないところでは不安で、私立学校さえも、いや当局さえも嫌がる
方面へ任して置いてもいいということは成立たないわけだ。而もこの
法案は
文部省が責任を持
つて出して来ておるのであります。そこらに矛盾を感じないか。とにかく私の第一点に伺いたいのは、
教育委員会に
財政権を何故持たせなかつたかということについては先般来しつこい程繰返されましたから繰返しません。ただ
教育委員会の運営そのものについても、もつと
財政的に
確立をする必要がある。今でもあるものについて、如何なる手を打
つておるか、伺
つて置きたい。
第二点は、設置のことについて期日の変更をしておるのであります。この設置の範囲と期日については
法案の上程当初からしばしば議論が出ました。日本の
民主化の現段階では、そう細かな段階にまでこれを設置することは無理であるということは、文部当局も重重承知されておつた筈で、それをこの
改正においても又その精神を以て
改正を行われておると思うのでありますが、
理由は成る程選挙費用云々というようなことにもなりましよう。或いは又シャウプ勧告に基く
地方行政体系の
確立をしなければならんという点もありましようけれども、併しその外に実際に
教育委員会というものを有効に運営させるためには、これはアメリカの
制度を直訳してや
つておるのであ
つて、日本の現状に適合させて
効果のある運用をするというのは相当考慮しなければならん点があるということが、昨年来二度目のこれで
改正ですけれども、その
改正の度に話題に上つたことであります。然らばもう一歩を進めて、
都道府県と五大都市乃至は現在の
教育委員会だけで暫く模樣を見ようという結論に到達してもいい筈であります。それを二十七年に云々とまた一寸延ばしに延ばして行くというようなふうに見えるのでありますが、ここらで先ず
都道府県乃至五大都市に限るくらいの割期的な
改正をやるべきではなかつたか。それらについての御
意見を伺いたいと思います。
第三には、
法案の根本
趣旨であります。
教育委員会法の根本
趣旨について往々誤り伝えられております。
教育委員というのは極めて
教育について素人がよろしい。そうして地域住民の
代表という
意味で、
教育の大雑把な立案企画というようなことが中心になるべきである。成る程
執行権を持つにしても、そういう細かいことまで素人の
委員がタッチしない方が本当である、というような意向がそもそも
最初から伝えられておる。それが
法案化されて来たものだと私は思います。然るにこれが衆議院の修正ではそうではなくして、この
教育委員会というものを、本当に
教育の主権を持たしめて、
代表せしめて、それによ
つて曾て
知事の持
つておつたような
教育の
行政をもつと民主的に運営せしめようというところにあ
つたのだと思う。従いまして
教育委員に教員若しくは過去に教員であつたというような人はむしろ望ましくないので、
一般的な素人がよいというような説は、全然消し飛んでしまう筈のものだと思うのであります。ところが今度の
改正法案を見ますと、やはり
教育委員は素人が多いので、專門家の
教育長に
重点が置かれなければならんというようなふうに窺われるが、そういう積りはあつたかどうかということを伺いたいのであります。固より先程来の御
答弁でも、
権限は
教育委員会に存在するのであ
つて、
教育長はその指揮監督を受けておるのであるということを繰返し御
説明されたのでありますけれども、その
改正の本旨には、私の申上げた本
法案が衆議院で
改正される前の
教育委員会の立案の
趣旨が再び跋扈して、カムバツクして来ておるのじやないか、その点を率直に承りたいのであります。
第四に、これを立案された
文部省は、一体
教育委員会の、
教育委員の指揮権なり、
教育委員の力なりというものを助け長ぜしめるということを必要と感じておるのかいないのか。
教育長というものについて、これは現状で、もつと明確に
職責、
権限を明らかにして、それによ
つて教育長の
立場を有利にする必要があると
考えたのか
考えなか
つたのか。この点が私共には不明瞭なので、
教育委員会の全体の発展を冀うという
意味でいうならば、先程来多くの方の御
発言もありましたけれども、むしろ
教育委員が萎縮しておる、或いは又
教育委員として当選した当時の熱情を失
つておるという現状を
文部省は知
つておるのかどうかということが私には疑わしいのである。それにはいろいろな
理由がありましよう。ありましようけれども、
教育の
民主化ということで
教育委員会を一遍出発せしめた以上は、今後の選挙に当
つても、選挙民は
教育委員は重要なものであるというので非常な熱意を持
つて選挙に当る。又当選した
教育委員も立派にその職務を矜りを持
つて実行する。又それだけの仕甲斐があるのだというふうな方向に持
つて行くのが当然であります。ところが、理論から言えば、この
改正法案の
教育長との
権限の問題についても、
教育委員がしつかりしておれば何でもないことだと
文部省当局の言う
通りでありますが、それはその
通りでありますが、本法というものは單に理論で作るものではありません。現状がどうな
つておるか、その現状をどういうふうに導いて行くのがよいのであるという認識の上に立
つて法案というものは作られ、
改正されて行かなければならない。そこで私の伺いたいのは、現在の
教育委員会の運営について、
文部省は如何なる認識の下に立
つてこの
改正法案を提出されたのであるか、その点を伺いたいと思います。
最後に第五に承りたいのは、第四点と関連をいたしますけれども、
教育委員会は出発して一年、そこにはいろいろな難点もありましよう。又弱点も見出されましようけれども、これは十分に育成して行かなければならん、日本の
民主化のすべてがそうであるように、例えば、或る種の労働運動で行き過ぎであるといわれることもありましよう。けれども、それだからとい
つて一切の労働運動も彈圧する方向に向
つたのでは、世界の
民主化という方向から見て逆行と言わざるを得ない。
教育委員会で私は全然そういう事実は知らないし、ないかと思いますけれども、仮に
教育委員会の諸君の行き過ぎがあつたといたしましても、それは行き過ぎるくらいにな
つて初めて
教育の
民主化が達成できる。
〔理事
若木勝藏君退席、
委員長著席〕又行き過ぎのときにな
つて初めて
措置を講ずれば足れりと我々は
考える。然るにまだ生れて一年、ひ弱いもので、行き過ぎたか行き足りないのか、まだ判定もつかない。又文部当局の
説明によりますると、これは單に
地方の
行政体系ばかりではないと思いますけれども、
委員会の組織
権限等について尚
調査研究を要する問題が数多くあるということは当局も認めておる
通りであります。こういう際に細かな
規定の変更を行
つて、而も現在
各地に行われておる
教育委員会の現地指導から見て、
教育委員の職務を萎縮せしめる方向に
改正がなされるのじやないかと我々は疑う。そういうことは文部当局もすでに御承知にな
つておつた筈だと思います。そこでこれを育成するために、この
法案改正が適当であると思うかどうか、こういうことを最後に承りたいのであります。