○小野光洋君 先程の河野
委員の質問の中に、私学
団体のことが問題にな
つておりますから、一応私その点についてお話を申上げて見たいと思います。私学
団体は
経営者の
団体だ、こういうお話でございますが、私学
団体は別に
経営者の
団体ではありません。
私立大学協会その他におきまして、多少
経営者側が多いというような嫌いがあるかも知れませんが、併しこの
私立大学協会の
役員、或いはそのメンバーも、殆んど大部分が教授でありまして、会長、副会長というようなものは或いは学長、総長というような者がな
つておるかも知れませんが、殆んどこれは教授であります。特に又私立中学、高等
学校連合会等におきましては、過半数がこれは殆んど
教員であります。校長で
役員にな
つているのは極めて少数であります。又各地方におきましても私学協会というのは
経営者と
教員と、それからこれのPTAと、これらが集ま
つて私学協会というものを、各地方で作
つておるのであります。決して私学総連合会というものは
経営者の
団体だというようなことではないことを、改めて御認識願いたいと思う次第であります。
それからもう
一つそれと関連をいたしまして、私学法の
審議がどうも偏
つた人達を相手にしてや
つているのではないかという話、これは文部当局もお話を申上げたことでありますが、多少私も総連合の常任
理事をいたしておりますし、又私立中学、高等
学校連合会におきましても常任
理事をいたしておりますので
関係のあることでありますから、一言端的に申上げて置きますが、先程久保田
政府委員のお話のように、この
法案の
審議は発案以来約二年有余を経過いたしておるのでありまして、段々形が変
つて来て、最後において多少、多少と申しましても、相当官僚統制の色が濃くな
つて来たことは確かの事実であります。併しこれは必ずしも
文部省自体が、いわゆる旧観念によ
つて官僚統制を強化しようとしてや
つたことだとは私思
つておりません。それはなぜかというと、これは最後において五十九條、原案の五十九條に
憲法八十九條の解釈を入れる、どうこの
法案に盛るかという問題が五十九條に集約されてここに現われて来たのであります。公の支配を受けてあるかという問題が、結局
私立学校が国家の
助成の対象になるかならないかという、極めて重要な事項にな
つておるのであります。今まではどうしてお
つたかという先程の質問もありましたが、今の問題はこの八十九條が、
文部省としてはこれは
憲法八十九條に該当して、
私立学校は公の支配を受けている、
学校教育法、
教育基本法その他によ
つて公の支配を受けているという
見解を持
つてお
つた。その
見解の上に
予算も計上し、大蔵省も了蔵を與えたのでありまするが、併しそこに釈然たらざるものが残
つているということは事実であります、私共は
私立学校の立場から言えば僅かの
助成金を計上し、貸付金とか或いは戰災復興貸付金とかいうて、二十一年の追加
予算から引続いて二十三年度の予計まで、
政府は私学
助成のために
予算を計上いたしてお
つたのでありますが、これがすべて貸付金という名前によつと出されておるのであります。
私立学校が悪性インフレと戰
つてどうにもならん、何とかして
私立学校を
助成しなければならん、それを貸付金によ
つて出す、それがいつ返せるか、返すことは実際
私立学校として不可能である。併し可能、不可能はともかくとしてこのままにしては、どうにもならんから
憲法八十九條の解釈を、貸付金とか何とかいうのでぼやかしておるわけで、この
私立学校の
助成金とか何とかいうことで行くより途がないという現実であ
つたのであります。それさえ
昭和二十四年度の
予算において全面的に削られてしま
つて、
助成金は出せないという結果にな
つたのでありますが、幸いにして
私立学校法がこの臨時国会に提案になりまして、而もこれが成立されるだろうという予想の下に、どうやらこの問題も極めて僅かであ
つても
予算の上に計上されるというような運びに
なつたわけであります。それらの点で本
法案に特に法務府その他の
関係官庁から、
憲法八十九條の適用を免れるためには、もう少し多くの公のコントロールを受けた条項がなければいかんというので、最後にこれが挿入せられたのであります。
文部省或いは我々の
見解として、特にこういう條項を入れなくても、全体的に多少官僚統制という匂いがあ
つても、そこに統制らしい條項が含まれておる、敢て五十九條というものを入れなくてもいいじやないか。それで全体的に
私立学校というものは、この公のコントロールを受けておるという結論に到達させたいという努力をして参
つたのでありますが、そこにこれをどうしても一応入れなければいかんということで、五十九條が入
つて来たのであります。そこで
文部省と
見解が変
つた来たのです。それならば外のものを入れろ、五十九條を入れるなら他の條項において、特に
私立学校を監督するような
規定は不当じやないか、これは
私立学校として、特に
助成を受ける
学校だけが統制されるならいいけれども、全部を統制されることは甚だ不当であるといういうなことから、この
法案の原案作成に当
つての行き方ががらりと変
つた。そこで
私立学校と、私学総連合と
文部省と
意見が対立したということにな
つたのであります。
文部省は、五十九條を入れるならば他の方の統制條項を撤廃する、というような極めてあつさりと御同意を表して頂けば余りいざこざはなか
つたのでありますが、確かにその点は折角拵えたものだからということであるかどうか分りませんが、ともかくこだわ
つたことのあ
つたことは遺憾と思います。併しそこに至
つた理由は
只今申しましたようなことで、特に統制をしようとしてや
つたのではないと、私共は善意に解釈いたしております。又それが
実情ではないかと思います。どうか
文部省と私学総連合会、或いは私学総連合会の実体その外については、どうぞ皆さんの賢明なる御推察を願いたいと思う次第であります。