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1949-11-18 第6回国会 参議院 文部委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十八日(金曜 日)    午後一時十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○派遣議員報告私立学校法案内閣送付) ○教育委員会法の一部を改正する法律  案(内閣送付)   —————————————
  2. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは本日の委員会を開会いたします。お諮り申上げます。速記都合もございますので、議事日程の第三になつておりますところの派遣議員報告を問題といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、過般閉会中に中国地方並びに北海道方面、二班に分れまして各委員が御出向になりました。その御報告をお願いいたします。  先ず中国地方にお出向きになりました班の代表の方に御報告を願います。
  4. 松野喜内

    松野喜内君 私は中国地区教育を視察いたしました三名の代表として御報告申上げます。  去る六月七日より十五日まで、山口広島岡山県下を視察いたしました。一行は堀越高良松野、三委員でありました。今その大体を御報告申上げますが、これが補足堀越委員にお願いいたします。  第一は、山口県ですが、全般的の問題といたしましては、御承知通り山口県は日韓支文化の交流のみでなく、我が国欧米文明の輸入の嚆矢と言われておる、いわゆる大内文化の華が咲いた所であり、聖師ザビエル社会教化意識というものは、著しい感化であると考えます。本県は伝統的に英才教育建前といたしておりますようなところから、これが受験の主要科目が数学、国語、英語といつた方面教師の選択にこれ努めたのでありまして、一面には実業教育大衆教育などは、比較的に不振であつたように言われております。本県は維新の謹皇思想の高かつた反面には、又左翼極端の思想もあつたりいたしまして、中共とも朝鮮とも接近しておる関係上、今後の動きには相当重大な関心を持たねばならんと考えます。分けても山口県で重大なる教育上の問題は鮮人教育のことであります。目下朝鮮人は全県下に四万五千人を数えております。朝鮮連盟左翼といつた北鮮からの密行者等が大部分であると言われております。現在では、これらに対する教育教育委員会の手から離れまして、県の総務部文化課の所管になつておりますが、鮮人学校は三十数校であり、教科目などにつきましても問題が多くあつて、中には日本人小学校にも入学しておる者もあるといつた次第であります。  本県校長会の声として、教員待遇上の問題に及び、いわゆる能率給與を加味して欲しいというようなこと、又中学高等学校学校長が十一級止まりであるというようなことは不滿であるとも声もありました。教育税措置を法的に考えて見て貰いたいというような要望がありました。文部省が省令、政令などを出されるときには、必らず予算裏付をして頂きたい。机の上での立案、立法は容易でもありましようが、実際面に立つ我々第一線の者は困つてしまうという訴もありました。  次に、本県教育委員会について申上げて見ます。委員会における諸君要望一つには、委員選挙には立候補者選挙民に熟知せしめる手段をもつと講じて欲しい。候補者の履歴についても、もつと早く知らして貰いたいものであるということ、それから教育委員会事務機構といたしまして、経費不足が最大の難点であると言われております。予算とか、教育運営といたしましては、国庫補助削減による影響が極めて大きいのであります。二百三十二校のうち百四十八校が建築に着手しましたが、現在は四十六校がその三分の二の完成、九十八校が三分の一の完成、八十八校が未着手そのままであるといつたように状況であるのであります。このため教育委員会としては、中央に強い要望として、価格調整費からの賠償額の残り二十億を教育費に廻して頂けないものでしようか。又安本資材裏付がない、呼び水もないこともお含み願いたいのであります。尚教育待遇上においては基本給を一律にして、物価によつて地域給を考えても頂きたい。全般的に見ても教育委員会は、教育者でない方の委員日教組出委員の方のリードされつつあるという定評があるのであります。  次に、社会教育について……。社会教育法の第三章第十五條の「置くことができる」、これはやや弱きに失していないかと思われます。従来の委員指導者にはとかく実行力が乏しかつたと考えております。新人、新らしい人を見出すことが困難でありましたのが、良質の委員を出すべく努力して欲しい。社会教育現状といたしましては、昨年頃から青年団の間に起ち上る機運が生れて参りました。地についた経済的の仕事でありたいと念願し、産業教育に力点を置いておるが、青年一人に必ず一つ研究をさせる建前で行つておりますので、中には麦の穗を一本の茎から二本出させることの成功者もあります。  公民館は、百七十市町村中届出は四十館でありますが、実際には百館できつつある次第です。中にも萩と下關には立派なものが造られております。博物館には、科学博物館のような立派なものができております。図書館に至りましては、蔵書数が、一年購入数五千册、本年度は二千册、百二、三十万円かければ戰前の状態に復旧するものと見られております。利用する人は学生生徒が大部分であつて、一日三百人。これが消毒は現在は日光浴程度であります。巡回文庫は二百ケ所ぐらいで、一箱四五十册入のものを六百箱を年に五六回廻しておる次第です。農家が多いために、農繁期には休んでおります。一般に文化事業に対する関心は薄いのであります。希望事項といたしましては、專門事項の質問がしたいから、これに対して何か相談相手になるような機関が欲しい。又村落ごとに分館を設置して大衆読書施設といたしたい。図書館法の生れることを急いで頂きたい。ボーイ・スカウト運動に至りましては、目下四十団体あります。この夏には更に増して七、八十にはなる見込であります。尚ガール・スカウトの着々建設中であります。  次に、視覚教育視覚教育は極めて良好であります。視覚教育連盟は三百団体からできております。月に一、二回は映画を配付しております。二十三年度には六十万円で六十券買い求め、六券ずつのものを廻しました。本年五月にはCIE映画地方事務所十ケ所で三百会場に映写し、十二万人に観覧せしめましたとのことであります。島嶼にも自家発電裝置を持つた所が相当行き渡つておるようであります。婦人指導者講習会では、映画によるレクリエーシヨンをやり、デイスカツシヨンもいたしておるのであります。教養講座といたしましては、特に科学教養講座婦人青年模擬県会といつたようなところでも映画を持込んで、動的に社会教育の各分野で視覚教育に力を入れておる次第でありますとのことでありました。  文化財については、洞春寺の観音堂は四百万円の予算目下修理中であります。瑠璃光寺の塔婆、五重の塔の周囲には、柵が壊れておりますので、塔の安全保護上にはこれが修理を必要とされております。小修理は県の委託費制度といたして欲しい。  次に、教育実施状況について見ますと、新制中学校設備の極めてよろしいと言わるる代表としまして、白石中学校を見ました。又設備の極めて不十分で困つておるという代表方面として、西女子高等学校を参観いたしました。山間僻地生徒数は一クラス三十名くらいの小学校からありまするが、定員法のために一クラス一人の先生もいない学校があるので、定員定額法には欠陷があると言われております。学科担任制に伴いまして、学級数の少い中学校教師の配置によつて生ずる困難と欠陷があります。教育宝くじを売出して、二回程設備費を集めましたが、これらは大学高校に割当てたが、今後は小中学の方に振向ける考えであるとのことでありました。国立学校については、殊に山口大学のうち学芸学部といつた方面志望者の少いことは、我々委員としても考えねばならんと聞きました。学生政治運動につきまして、防府新制中学とか、山口高校ストライキがあつた程度で、その他には格別の運動も起つていないとのことでありました。  第二に、廣島県下を御報告申します。廣島県の教育委員会について申上げますというと、委員諸君要望として、委員選挙県下を一選挙区にするのは妥当であるかどうか、考えて頂きたいとのことでありました。立候補の意欲のない人を無理に立てる傾向もあるから、委員となるべき人の意思の発表の機会を設け得るようにして頂きたいとのことでありました。委員会機構といたしまして、県会にも教育常任委員会があり、五十八名の県会議員中、十四名が教育の方の常任委員であります。且つ予算関係になりますと、こういつた県会の方の教育常任委員にその政治力を握られておるという次第でありますがために、いわゆる教育委員会の方は、結局県会の方に頤使つれておるような現状である。教育税問題等も切実に考えて見ねばならんと言われております。委員会から現在の機構は少し複雑過ぎると思うから、もう少し簡素な強力なものにして欲しいとの要望がありました。  予算関係につきましては、二十四年度の教育費は本年歳出の三七・七%、人件費の膨脹と歳入の不足に困つていますとのことでありました。教育税目的税としてパーセンテージを決めるのもよいが、融通性のなくなる憂もあるかと思いますがという意見でございました。教員健康状況につきまして、要注意者が一・九%、休職百六十名、教員保養所に收容している者が少くないのであります。教員免許法につきましては、観念的には整理されておりますが、実情は必ずしもそうでないのであります。もう少し簡素化して欲しい。教員組合からの要望を申上げますと、どうも実情から見ると知事や委員会の間の交渉というものが行きずまつているかに思う、今後は大衆の輿論としてもつと進めて貰いたいと要望されました。教育委員会との連絡におきまして、事務局中央と直結して人事に至るまで関與し、教育委員会なるものは浮き上つているという現状であります。今後はよろしく教育長権限を明白にし、教育委員会をして権威ある民主的方法運営ができるようにして貰いたいものであります。尚、六三制定員定額法というものは枠の中の操作が限界に達しており、これが危機の実体を示しております。PTAへはいろいろ資料を提供しておるが、余り活用されていないのを遺憾と思つておる。教員議員兼職は若干の矛盾もあろうが、尚これを存続して欲しいという要望もありました。その他免許法五條はまずい印象を與えるとか、教育宣言などは逆効果になりはしないかと思います。教員健康状態は芳しくない、保養所設備の劣悪のために、職員の数の方が患者の数よりも多いといつた現状なのであるといつたことであります。  国立学校について。広島大学は、御承知の通り自然的、地理的條件や、産業、人文、歴史的には好條合の下にあるので、典型的の総合大学と言えましよう。ここでは教員養成機関が特色になつております。教育学部は重要視されております。広島大学からの要望としては、経費不足していますこと、二十三年度には学生一人当りの費用が千二百円であつた。又教育文化費国家関心を持つような実をもつと強く示して貰いたい。研修所の問題ですが、これに出講する講師の旅費は実費だけで、何ら特別手当もありません。四十九八時間勤務の一部とみなされている現状である。これらも考えて頂きたい。学生政治運動につきましては、表向きには中央への義理立てでストライキをやつているが、必ずしも学生生徒の総意ではないと思われます。授業を受けても、出席の点呼を受けても返事をしないというような現象もあるようであります。  社会教育につきましては、浅野図書館あり、文部省から二十万円、市から百万円出して、昨年十月に移転したのであります。文化施設国庫補助を伴うものは優先的に県の予算が通るから、幾らでもいいから裏付が願いたいのであります。視覚教育連合会は、三百万円の予算市町村別経費を受持つております。市及び地方出張所を通じて巡廻の映写をしております。映写機二十八台であるとか、技術者六百名、フイルムCIEからの四十本、日本物三十数本とかがあるというように聞いております。  文化財といたしましては、不動院、広島城跡縮景園泉庭、巖島神社等ありますが、これらについて水害その他補修を要することになつております。  特に科学教育を奬励しなければならん折から、御報告申上げて置きたいのは、広島原爆影響研究所であります。宇品の凱旋館を改造して造つたものであります。原爆被害者調査研究、五年、十年の短期でなく、数世紀にも及ぶ長期の研究をする計画と聞きました。本部はワシントンにあります。予算は判然としませんが、人件費の一部だけで年七百万円とのことであります。この研究所の持つ意義は、原爆影響研究でありまするが、進んだアメリカの最新医学施設が極めて科学的にできていまして、内地留学的に見学、活用したならば、敗戰後の乏しい我が科学教育施設に如何ばかりか効果をもたらすものと見て来た次第であります。ここには広島を中心として、長崎、呉にも研究所が沢山あります。ここには医学方面図書もその他の図書も多数ありますし、統計その他においても見るべきものがあります。尚長崎とも連絡をとつております。尚広島には連合軍設置されました図書館があります。米国人を館長といたしまして、米国から提供された図書を市民に閲覧せしめつつあり、図書館運営方法にはよき参考であり、且つ模範とすべきであると見て来ました次第であります。  第三に、岡山県のことを少し申上げます。先ず教育委員会からの要望その他について御報告申上げます。教育委員会選挙は、六十人以上の推薦連署とありますけれども、それには六十人以上、何千人でもよいということになり、弊害があると思うがどうですかということであります。全県区制は広く人物の如何を知り難いから、もつと候補者についても周知せしめる方法をとつて欲しい。現在の教育委員の色分けは、実業家一、教員三、PTA二、博士一という現状であります。機構といたしまして、教育委員会法第三十五條による月一回の会合は事実上少ないと思いますが、本県での実情は頻繁にいたしております。連合会での空気では、教育委員教育事務局との間は極めて円満に行われておることは、中国第一だと評されております。月一回各課員とも意見疏通を図つておる次第であります。事務機構は七課を五課としまして、簡素、強化的にいたしております。指導主事現在六人、増員の必要があります。教員二百人に対し一人の割合で、どうしても五十人にして頂きたい。現在講習を受けた者は十人ぐらいあります。予算といたしまして、県費に対する教育費の率というものは、二十二年度は三〇・二%、二十三年度は二九・六%、二十四年度は二八・九%、これがフルの場合は全体平均して三十%ぐらいと見ております。教育の無資格者は、小学的に四四%余、中学校に二一%、高等学校に二五%余で、新免許法が実施されたらややよかろうと思つております。教員健康状態について、休職者が一万二千人中百四十一名あります。このうち、これに対する保護所のベツドは十しかないから、結局十名入所しておるだけであります。教育費PTAについては、PTAから教育研究費として出しておる分が多く、会費の半分というものは施設とか、図書等に使つておる次第です。建築費の三分の一は父兄から平等に醵出し、すでに終つております。  教育委員会からの要望としては、朝鮮人学校教育費を何かの名議で捻出して欲しいという要望があります。又無資格教員の再教育を願いたい。教育に関する法律案は、是非早めに内示して貰いたい。国家委任事務で、経費の出どころのないものがあつて誠に困つております。例えば指導課講習或いは宗教事務も、仕事は残つているが、人も予算もちつともないといつた次第です。免許法につきましては、教職員の地位は確保せられましたが、待遇資格の均衡が取れない以上、果して人材が集まるかどうかを憂うる次第です。適性検査の結果は、師範生の中にも適性でない者も出ておる次第です。免許状の発行は現在の人員では不可能であります。  さて、大学についてでありますが、岡山県の大学は、いわゆる吉備文化発祥地であり、池田光政の施策よろしきを得て、私塾の数は日本第一である。寺小屋は長野、山口に次いでおる次第である。教育の普及徹底しておることは、岡山県は天下一なりという評もある次第なんである。文化水準も高い。而してこの岡山県の岡山大学は敷地二十万坪に近く、運動場その他を加えて四百万坪を超える大規模のもので、恐らく北海道大学に次いでは、この大学規模が一番大規模であろうと言われております。而も旧軍施設の建物を全部利用し、又それを改造して教室とし、周囲には教員諸君の住宅、落付いて研究できるような設備も段々できつつあるような次第である。今後の大学教育についても、かくのごとき施設要望して止まないものであります。教育組合等についても申上げたいが、時間もありませんから、略して置くことにいたしたいと思います。  社会教育等につきましても、社会教育指針という参考資料が出ておる次第であります。それらについて御覧願いたいと思います。又公民館は百二十館できております。文化財につきましては、県民が一体関心が薄いという感じを持つております。法的の措置を必要視されたのでございます。国宝岡山城月見櫓などに、人が住んでおるといつた次第である。以上大体御報告申しましたが、これが修正なり、補足堀越委員にお願いいたします。
  5. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  6. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて。それでは御異議ありませんければ、議事都合がございますので、派遣議員の御報告は少しあとに延ばしまして、私立学校法案につきましての、文部大臣提案理由説明を先にいたしたいと思います。    〔「異議なし」と呼び者あり〕
  7. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは文部大臣が見えましたから、私立学校法案提案理由説明を伺いたいと思います。
  8. 高瀬荘太郎

    国務大臣高瀬荘太郎君) 只今上程になりました私立学校法案につきまして、大要説明申上げます。  私立学校は、その数におきまして新制高等学校以上の学校の半数以上を占めているのみならず、その特有な学風及び伝統を以て、我が国学校教育に貢献をしたことは、誠に大なるものがあるのであります。  この点に鑑みますとき、私立学校教育振興するということは、我が国教育全般振興を図る上からも忽せにすることのできない重要問題でありまして、只今私立学校法案を上程致しました理由も、一人にここにあるのであります。  以上の趣旨によりまして、私立学校に関する教育行政について、私立学校の特性を尊重した特別な立法の必要なことは、つとに認められていたところであり、又特に、昨年の教育委員会法の施行以来、私立高等学校以下の教育行政について、緊急に、特別の措置を講ずる必要のあることも広く認められていたところであります。  又私立学校設置する法人につきましても、これを特別法人として、民法による財団法人以上に教育的な、又基礎の強固なものとすることが必要であります。このことにつきましては、教育刷新審議会建議もあり学校教育法におきましても私立学校設置する法人について、別に法律が制定されることを予想しているのであります。  ここに、政府と致しましては、私立学校法案に関する教育刷新審議会建議の線に沿い、又私立学校代表者との一年有余にわたる研究の結果、成案を得て、取急ぎ本臨時国会に上程した次第であります。  さて、本法案目的といたしますところは、その第一條に明らかにされておりますように、先ず、私立学校自主性を高めるということであります。併しながら、私立学校学校教育法に定める学校として、教育基本法のいわゆる「公の性質」を有するものでありまして、設置者がほしいままに経営すべきものではないのであります。このため私立学校については、その自主性を尊重するとともに、あわせてその公共性を高めることが必要とされるのであります。  この目的を達成するため本法案におきましては、先ず私立学校自主性を重んずるという点から、私立学校に対する監督事項を整理するとともに、所轄庁がこの監督事項を処理する場合にも、主として私立学校代表者から構成されます私立学校審議会又は私立大学審議会に諮問することと致しました。尚、私立学校審議会及び私立大学審議会委員のうち、私立学校側から任命される者につきましては、その候補者を、私立学校によつて自主的に結成された団体推薦する方法をとることといたしまして、自主性尊重目的を更に徹底させたのであります。  他方、私立学校公共性を高めるという趣旨は、主として学校法人に関する規定のうちに盛られております。即ち、私立学校設置する法人学校法人という特別法人といたしまして、民法による財団法人よりも更に教育的に運営できるようにし、又学校法人財的基礎を強固にする一助といたしまして、教育上支障のない限り、收益事業を行うことを認める等の特別な規定を設けたのであります。  更に、私立学校に対して、国又は地方公共団体補助貸付等助成を行い得ることを明にいたしました。これは、多くの私立学校が戰災による被害に加えて最近の経済的困難によつて深刻に苦しんでいるという当面の理由から特に必要であるのみならず、わが国の学校教育振興という点からも、私立学校助成を極めて必要と考えられるからであります。これについては、従来憲法第八十九條の解釈をめぐつて疑問があつたのでありますが、本法案におきましては、私立学校は諸種の点において「公の支配」に属する教育事業であるという見解のもとに、助成に関する若干の必要規定を新たに設けて、学校法人に対して、国又は地方公共団体補助貸付等助成を行い得ることを明らかにしたのであります。  本法案提出理由及びその大綱は、以上に述べたところでありますが、何とぞ愼重御審議の上、速やかに議決下さるようお願いいたします。
  9. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 本件につきましては尚、細目の説明があるわけでございますが、速記都合もございますので、教育委員会法の一部を改正する律律案につきまして、これはすでに予備審査として付託になつております。同じく国務大臣提案理由の御説明を願いたいと思います。
  10. 高瀬荘太郎

    国務大臣高瀬荘太郎君) 昨年七月十五日公布施行されました教育委員会法の一部を改正する法律案をこの度国会に提出いたしましたのにつきまして、その提案理由改正要点を御説明いたしたいと思います。  第一は市町村に設けられる教育委員会設置の時期についてであります。この点につきましては、去る第五国会におきまして中央地方財政状態その他の事情に鑑みまして、その設置昭和二十五年度又は昭和二十七年度とするよう法律改正が行われたのでありますが、この度町村地域に設けられる教育委員会はすべて昭和二十七年度に、市に設けられるものは昭和二十五年度又は昭和二十七年度に設置することといたしました。  その理由は、町村地域に設けられるべき教育委員会につきましては、その地域的な規模委員会の組織、権限等につきまして、尚調査研究を要する問題が非常に多くあります関係上、これらについて十分検討するため、二十七年度までその設置を延期することとし、二十五年度には市についてのみ教育委員会設置し得るよう措置いたしましたことに基くのであります。  第二は委員選挙に関する規定改正であります。これにつきましては、教育委員会委員選挙をも含める選挙制度全般改正も考慮されているのでありますが、今般は取敢ず二十五年度の選挙を控えて、昨年の経験に鑑み最小限度改正を行うことにいたしました。即ち委員候補者連署推薦人を六十人以上百人以下とその人数に制限に加えたこと、及び選挙運動については都道府県及び五大市にありましては都道府県知事の、その他の市及び町村にあつて市町村の議会の議員の選挙運動に関する規定をそれぞれ準用し、いわゆる選挙運動における公営の範囲を五大市までにいたしたのであります。  第三は委員の服務などについてであります。現行法には委員の服務などにつきましては規定を欠いておりますが、教育委員会委員の職責の重大性に鑑みまして、新らしく規定を設けることといたしました。  第四は教育委員会の職務権限についてであります。これにつきましては、現在すでに実質的に教育委員会権限として行われている事柄、あるいは地方公共団体の議会及び長との関係において権限の所在が必ずしも明確でない事柄等につきまして必要な規定を設け、もつて教育委員会運営に遺憾なきを期したのであります。即ち  (一) 教育委員会学校その他の教育機関建築、営繕の実施の責任を有すること。  (二) 学校その他の教育機関の使用に係る財産の取得、管理及び処分に関する権限を明らかにすること。  (三) 学校の保健計画に関する権限を明らかにすること。  (四) 教育事務に関する收入の命令権を地方公共団体の長から教育委員会に委任しうること。  (五) 教育事務に関し議会の議決を経るべきものについては、すべて議案の原案は教育委員会の発案にかかわらしめることを常例とすること。  (六) 都道府県の教育委員会権限として、学校給食、文化財保存(史跡天然記念物等)及び教育に関する法人につきましての事務を明らかにすることなどであります。  第五は、教育委員会教育長との関係についてであります。現行法上両者の関係につきましては明確を欠く点もあり、実際運営上にもややともすれば円滑を失う憾みもありましたので、教育委員会の專門的助言者であり且つその事務報行の衝に当る教育長の職務の特殊性を明らかにし、両者の本来の機能を明確にいたした次第であります。  以上改正の主要点につきましてその内容及び理由を概略御説明いたしましたが、今回の改正は條文の一部改正を行つたもの十六ケ條、追加又は新たに設けられたもの十一ケ條、削除ないし全文改正をいたしたもの十一ケ條合計三十八ケ條に亘つております。何とぞ愼重御審議の上御決議下さるようお願いいたします。
  11. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 御異議ございませんければ、本件につきましても細目の説明並びに質疑は後程に延期いたしまして、先程開始しておりましたところの派遣議員報告を引続いていたしたいと思います。如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 御異議ないと認めます。速記を止めて……。    〔速記中止
  13. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて下さい。  それでは先程の中国地方報告を終えまして、次に、北海道地方代表の御報告を願います。
  14. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は北海道地区の視察の状況報告いたします。私達三人、即ち岩間委員、河野委員、私、この三人は六月の二十四日から七月九日まで、十六日間に亘つて北海道地区を視察したのであります。その大要を私から申述べたいと思うのでありますが、不備な点は河野君から補足説明を願いたいと思います。大体日程に従いまして、初めに当つて概要を述べ、それから主要な問題二、三を簡潔に述べまして、私の御報告を終りたいと思います。  それでは大体北海道の特殊性に従いまして、その外貌を申上げて見たいと思います。北海道は御承知の通り誠に広い土地でありまして、広袤正に八万九千平方キロメートル、東北六県、新潟を併せただけの広さがあるのであります。そのために、私達は十六日間の長きに亘つて視察をしたのでありますけれども、その全地域に亘つては到底視察し得なかつたのであります。道南、東北海道、そういうふうな域に止まつてしまつた次第であります。この問の如何に広いかというようなことにつきましては、誠にその消息を直截に現わしておるものは、二月の東北地方の視察に関連いたしまして、岩間委員の所感といたしましては、いわゆる北海道の特殊事情は、東北地方が顯微鏡的に拡大されておるという、そういう観察であります。又河野委員の、いわゆる北海道の中に北海道がある、こういう感想であろうかと思うのであります。最初帶廣市の視察を終えて十勝支庁に入りました。殆んど道なき道をトラツクで、奧地、下音更村の單級学校を視察したのであります。ここでは生従達にいろいろな希望を聞いて見たところが、一様に長靴が欲しい、或いは雨具が欲しい、こういうことであつたのであります。又校長さんのお話を聞くというと、普通では教員を得ることができないので、止むを得ず養女を迎えて、これを補助教員にしておる、こういうふうな実情であつたのであります。我々はここで非常に悲しくも、又珍らしいところの事実を見たのでありますが、それは單級中学校というようなものであるのでありまして、異様な感じを持つて見ました。こういうふうな單級複式小学校或いは單級複式中学校というような数は、どれだけ北海道にあるかというようなことを考えて見ますと、丁度單級複式小学校は、全道学校数の六七%を占めております。それから小、中学校を併せましても全道の五六%を占めておる。そうして日本全国に比較しますと、北海道はどういう割合になつておるかというと、全国の約八五%が北海道で占めておる、こういうふうな恰好になつておる。尚、小、中学校併せても全国の六五%を占めておる、こういう実情であります。我々はそこを終えまして根室に着いたのでありますが、これが七月の一日でありました。併し駅に着くというと寒くてどうにもなりません。いきなり駅の中に焚いてあるところのストーブにかじりついた、これが七月の一日の状態であります。更に学校視察に行きましても、全部我々にストーブを焚いて迎えて呉れたという実情なつております。こういう根室や釧路の原野におきましては、この單級小学校の事情というものは、一層いわゆる北海道の中にも北海道があるように拡大されて来るわけであります。ここに来て見ますというと、定員定額制或いは建築予算という、こういうふうな方面が如何に画一的であつて、事情に即さないかということが、我々は看取することができたのであります。その詳細については、後程述べることにいたしたいと思うのであります。  根室を終えまして、更に我々は根釧原野の……根釧原野というのは、根室、釧路の原野であります。その中心であるところの中標津という村に入りますと、そこから又トラツクで奧地に入りました。そこは開陽、保落或いは當幌、こういうような開拓地があるのでありまして、ここの教育状況を視察しました。ここでは全く文化から置去られてしまつて、気の毒な気持がいたしました。この辺の第一の要望は、石油を與えろということであります。年に二斗くらい要るところの石油が僅か三升くらいしか渡つておらん。それで我々の生先は全く鶏の生活であるというのが、あの辺の人の感想であつたのであります。一方又、この生徒達は、学習するところの参考書が手に入らん、新聞は三日くらい遅れなければ来ない。全く文化から置去られておる。従いまして青年は、この土地に土着するというふうなことが、なかなか気持が出て来ない。直ぐ他に転出してしまうという状態であつたのであります。こういうふうな感想を我々は聞きました。  ここを終えまして上川支庁管内に入つたのでありますが、ここでは又二里、三里の山道を提灯を持つて、犬を連れて峠を越して通学する、こういう兒童がある。更に冬に備えるために、夏素足のままで通学して、そうして靴を大事にしなければならんという、誠に涙ぐましい情景がここで見られる。ここは特に地形的に特殊な事情がありまして、丁度地脈が手の指のように混つておるのであります。渓谷のために、その間の連絡が取れない。従いまして、ここでは学校設置というふうなことが、極めて部落的の小さな学校け建てなければならんという実情にあるのであります。こういうところにも、いわゆる建築予算なり、定員定額というふうなものの不合理性が発見されるのであります。  以上大体そういうふうな特殊事情に従いまして、主要な問題の二、三を御報告申上げて見たいと思うのであります。北海道は広いので沢山あるのでありますけれども、時間の関係上省略いたしまして、極く主要な点だけに止めて見たいと思うのであります。  先ず第一、北海道の教育行政事情、こういうことについて申上げて見たいと思うのでありますが、教育委員会は、教育者出身が三人と、それから農民が三人、議会から一人というふうな委員が出まして構成されておるのであります。よく問題にされるところの教育委員会教育長との関係につきましては、これは北海道においては問題がなく、極めて順調に進んでおるようであります。ただです、この教育行政全般から見まして、教育委員会事務局市町村との連絡が緊密を欠いておる。これは北海道ばかりでなしに、ここに制度の欠陷があるのじやなかろうか、こういうことが考えられるのであります。つまり地方事務局までは陣容なり、そういうものが整備されておりますけれども、それから先の町村というふうなところに行きますと、僅かに一人くらいの教育係がおつて、それを繋いで行くという形になりますから、そこに非常に、つまり地方委員会ができない場合においての、行政上の連絡が緊密を欠いておる、こういう形になるのであります。  それからもう一つは、都道府県の委員会と、それから市町村との教育事務の中において一つの繋がりが欠けておる点は、市町村教育事務は二本建になつておるということになるのであつて、一方においては都道府県委員会方面との系統があつて、それから在来持つておつたところの市町村長の権限、そういうふうな方面の二本建に置かれておる。そういうところから非常にこの事務は円滑に行かない関係が考えられるのです。これはどの府県でも同じではないかということが考えられるのであります。この問題につきまして将来、今地方委員会ができたとしましても、その地方委員会と都道府県委員会との間に、十分この條文に示されておるところの連絡協議会という方面から考えられなければ、将来においてやはりこの間に行政事務の緊密が欠かれてしまうのではなかろうか、この点についても、今後の研究が大事ではないかということを考えておるものであります。  次には、定員定額制の問題でありますが、先程北海道のこの特殊事情でも申述べました通り、北海道は地域が非常に広大な割に、人口の密度があらいのであります。交通も不便だし、冬季が長くて而も寒気が嚴しい。而も本日あたり猛吹雪になつておるというようなことが言われておるのであります。積雪が非常に多い。そういうふうな條件を持つておると同時に、又拓殖の途上にあるのであります。従いまして新設されるところの学校は極めて小さいものが多いということであります。以上の関係で通学が非常に不便であるから、勢い單級複式学校が多く、全道学校数の六七%を占めるという工合になるのです。それらの学校につきましては、学級の整理統合ということは、先程も上川支庁管内で申述べた通りできないのであります。不可能なのです、地域的に従つて一学級の生徒数は極めて少数である。一例を挙げて見ますというと、根室、釧路管内では二十人以下で一学級を編制するところがこれが十二もあるのであります。釧路管内だけでも相当な数に上つておるのであります。これを釧路管内の例で申上げて見ますと、小学校で五十人未満の学級が三百八十三ある。それから五十人を超えておるところのものが七十四ある。合計四百五十七ある。これをいわゆる文部省の理論学級というふうなものに直しますというと、四百五十七が三百八十八、正に六十九減少するということになる。これは小学校、それから中学校では五十人未満の学級数というものは、百七十八学級ある。五十人以上のものは二十四、合計二百二になつております。これを理論学級の割に直しますというと、三十九減つてしまう。ここに非常にこの定員定額制の不合理が考えられるのであります。そこでこれを北海道全体の問題といたしまして、統計的に挙げて見ますというと、大体こんなことです。小学校では十人以下の学級数が七つあるのです。それから十一人から二十人の学級が四十三学級ある。二十一人から三十人までが三百六十五、三十一人から四十人までが千五百八十一、四十一人から五十人までが三千五百六十一、五十人以上は七千百十二というような数字になるのであります。その比率は二十一人以下が七・四二%になる。それから三十一人以上のものは一二・四六%になる。四十一人以上は二八・〇六%、五十人以上は五六・二八%中学校では三十人未満のものは一一・二三%になる。それから三十一人から四十人までのものは二一・八%、四十一人から五十人までのものが四〇・三%、五十人以上は三〇%、ですから五十人に満たないものは、七〇%を中学校においては占めておる。こういうふうな実情なつておるのであります。そこでいわゆる五十人を一学級とするところの理論学級というものは、極めて北海道の実体に合つておらない。こういうことが証明されるのであります。そこで昭和二十四年度の四月現在で調べたのでありますが、定員の方においては国庫負担法の基準即ち小学校一・三五に対しまして、北海道は一・一一になる。それを実態に合せて行きますと、実態に合せるというのは、單級小学校当りに校長さんの外に一名置くということ、そういうことを進めて行きますと、正に一・〇五になる。中学校は一・七に対しまして一・五二になろ。実態に合せまして一・三六というふうに低下して来るのであります。こういうことが、一方地方において小さな学級を以て一つ学校を構成しなければならない半面におきまして、都市では教員配置が非常にその影響を受けて、一学級七十人以上になるというふうな、正に教育が停止される方向に進められておると、こういう状態にあるのであります。  次に、六三建築状況について御報告申上げたいと思いますが、新制中学校建築費が当初予算に計上されなかつたということに対する北海道の関心というものは極めて深刻なものがありまして、これは気候の関係から内地と違いまして、青空教室とか、粗雑な仮教室だけで以て学習ができないということなのです。あらゆる懇談会では、この問題についての質問、陳情が行われました。河野君もここにお出でですから、事情をよく御承知のことであろうと思うのです。殊にいわゆる町村長、理事者の方面では、深刻な悩みを持つた話が出ておるのであります。現在北海道で建築するに必要なところの量は二部授業、仮授業に改修を要するだけで二千二十六教室になるのであります。ところがこれがために誠に悲惨な学習が行われておるのでありますが、先程述べたように提燈を持つて、犬を連れて四里の遠きを通学する、こういうふうなことや、或いは當幌というところの開拓地の学校を視察したときでありますが、丁度視察した日の午後に中学生の二部教授が行われておつたのであります。それらの子供はあの山坂、人のいないところを六時頃でなければ家に帰れない。こういうような実情にあるのであります。誠にこれは我々もその実情を見まして、無量の感に打たれたのであります。北海道は先程述べた地域が広いとか、通学距離が大きいとかいうようなこと、或いは入植者の開拓の途上にある、或いは引揚者が多い、こういう特殊事情の外に寒冷、積雪のために、実際校舎を建てる上において非常に内地と違つた事情がある。つまり文部省で定めておるところの一人について〇・七坪というふうな基準が北海道には当てはまらない。これは内地だけの話であります。というのは、北海道の学校建築においては、廊下の中を広くしなければならない。これは積雪とか、寒冷、雨具の置場というようなものを考えるので、それから渡り廊下は本建築に直さなければならない。内地は屋根も横もありません。全部北海道はそういう建築にしなければならん。その外に燃料を入れるところの小屋を特に建てなければならない。こういうような條件から、北海道は内地に比べまして二〇%を一人の基準に多く見なければならない。即ち〇・八四坪と見なければならないような実情になるのであります。そういうところから見まして、従来のこの国庫補助の配分は極めて北海道にとつては不適切である、こういうふうなことが考えられるのであります。そういうことから非常に建築状況が今北海道は遅れておることになるのでありますが、そのためにどういう事実が行われておるか。旭川市の学校を視察したときに、一学級に百四十二人收容されておるのであります。それが一学級であります。全く教育というふうなものを超えておる。今度はそれと対蹠的なものは、函館市におきましては、これは学校の学級の五六%というものは小中学校を併せて二部教授をやつておるというふうな実情にあるのであります。そういうことがまあ事実として発生しておるのであります。  次に、この行政のセクシヨナリヅムから、如何に教育が阻害されておるかというようなことが考えられるのであります。これは先程申上げた通り開拓地に行つて見ますと、一つ状況を見ることができる。これは開拓行政の方面から見ますと、そこの入植者が五十戸なり或いは百戸に満たなければ、学校を建てたり、道路を造つたりしないという方針で進んでおる。ところが入植者は先ず入つて見まして、学校が建たなければ子供の教育ができないと、こういうふうなことを先ず深刻に考える。これは親として私は当然だと思うのでありますが、そういうことのために、学校が建たないならということで、そこから転出してしまう。そういう実情が考えられる。そこでこの問題はやはり農林行政とか、拓植行政とか、或いは教育行政、そういうふうな面、お互いがここに関連を持つて進めなければ解決が付かない問題であろうと思うのであります。そういうところに非常にこの行政のセクト化ということが考えられて来たのであります。次に、もう一つの例は、旭川の引揚者の学校である春光という小学校を訪れたのでありますが、このときには、これは旭川市でもつて元の第七師団の兵舎を借りて、この引揚者の兒童を收容する学校に当てているのであります。ところがここでは管財の方がやかましくて、学校長教育の上からちよつと物を除けたり、或いは柱のようなものを抜いたりするというと、お叱りを受けなければならない。これは私は実際……、私が行つたときに、ここだと言つて場所を示しておりましたのは、何か兵舎当時の物干場の柱のようなもので、これをいじつたために、いたく叱られたという形になつておるのであります。そういうようなことのために教育が阻害されておる。もう少し日本の行政府というものは、お互いにそういう点を連絡を取つて進めて行かなければならんのじやないか。こういうふうな感じを持つて参つたのであります。  次は、社会教育について。我々は社会教育法が制定されたので、それが一体如何なる影響があるか、どういう実情にあるかということに対して、特に目を向けて視察をしたのであります。これはこの北海道におきましては、道の教育委員会事務局では、相当社会教育というものに対して従来から力を入れて来たのでありまして、いろいろなパンフレットなどが出まして、貴重な資料などを整えておられます。この点については非常に私は敬服したのでありますが、併し従来の社会教育というふうなものは、如何に社会教育を指導するかという立場を採つておつたのであります。それがいわゆる社会教育法ができまして、指導というよりも、一般国民が自分らのこの生活に即したところの文化的教育を高めようとする環境を釀成するところに根本があるのだというようになつたものでありますから、その間に、具体的にどのようにして行くのが社会教育法の精神に適うかということに対して、相当の悩みを持つておつたようであります。殊にこの公民館運営であるとか、社会教育団体関係方面では、如何にしたならば従来の指導体系というふうなものが、この精神に適うかということについての技術的な方面などについても相当研究しておつたようであります。一方それでは公民館経営という方面の実際がどうなつておるかということを見るために、帶広市において我々は公民館を視察したのであります。これはこの間も表彰されたようでありますが、相当この間から一生懸命になつて、この公民館を中心にして、社会教育が熱心に行われておるわけでありまして、行つて見ましても整備されておる点がありました。ここで懇談会を開いたのでありますが、その席上先ずそれらの社会教育委員なり或いは公民館の当事者の言うことは、我々は従来から自由な気持で以て社会教育方面をやつて来たけれども、今度は社会教育法ができまして、何だか一つの枠に入れられて、統一規制されたような気持がして、甚だどうもそういう点がぎごちないと思うところがあると、むしろ不満の意を表する点が多かつたのであります。これは御承知の通り、社会教育法が上程された場合に、我々は最も関心を寄せて、遂にこれに相当な修正をしたのでありますけれども、その結果相当進歩的なものにはなつたけれども、まだまだそういう点において十全でないというふうなことについての事実は、皆さんも御承知の通りであります。この点については将来も相当研究を要するところでなかろうか、こういうふうに考えるのであります。  大体主要な点をその辺に止めまして、あと結論として申上げて終りたいと思うのでございますが、以上この北海道におけるところの定員定額の実情とか、或いは六三制とか、そういうふうな方面から見まして、如何にこの教育行政が、予算不足をめぐつて、いろいろ教育の阻害されておるところの点があるというようなことが考えられるのであります。これが北海道におきましては、單に定員定額とか、六三建築費に止まらないのであります。引揚者の兒童は相当の数に上つておるのでありますが、これに対する文部予算というふうなものは、東北、北海道を併せて確か当初予算は、文部省の要求は七千万円であつたと思うのであります。それが四分の一の一千七百万円に減らされておる。ところが北海道においては、引揚者の子供のために今年度大体八十三学級を要するのであります。殊に札幌の近郊の月寒小学校というところがありますが、そこなどは在来そこに居住しておつたところの子供の数よりも、遥かに引揚げて来たところの子供の数が多いのであります。そのためにもうあらゆる、裁縫室とか、特別教室を潰して、そうして漸くこの教育を繋いでおるという実情にある。又函館市におきましては、正に二十学級の一つ学校を建てなければならん。そういう実情に迫られておるに拘わらず、予算がそういうふうなことになつておるのであります。その他この旅費が不足のために、この頃は特に北海道でも、文部省あたりではいろいろな講習会、研究会を開いておるのでありますが、そういう方面に出席することができない。無理に出席しようとすれば、自費を以てするか、或いはPTAに過重な負担をかけなければ出られない、こういうふうな実情があるのであります。そこでこの予算不足ということは、何が原因になつて現われておるか、この点について私は一つ視察の面から考えて見たい。これは定員定額にせよ、六三建築の事情にせよ、先程申述べた通りの北海道の実情に合わない点がある。これは北海道ばかりでなしに、全国的な問題だろうと思うのでありますが、要するに教育予算の立て方が極めて実態に即さない。又非科学的である。特に私は定員定額のあの政令の定め方などについては、相当これは科学的に根拠のない、極めて当時の財政の事情によつて左右されたような建前で立てられておると思うのであります。そういうことが大きな原因をしておる。もつと教育予算を立てる場合には、少しこの実態なり、科学的な立場に立つて行つたならば、相当これは関係方面をも納得させて、教育予算を増して行くことができるのではなかろうか。こういうことが考えられるのであります。そういうことについて、この視察から今後文部省においても十分研究せられて、教育予算の獲得ということを考えて欲しい。  大体以上を以ちまして私の報告を終りたいと思うのでありますが、尚、河野君において補足されんことを希望いたします。
  15. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 只今御報告頂きました松野、若木両委員の御報告につきまして、御発言ございませんでしようか。別に御発言がございませんければ、本件はこの程度にいたして置きたいと思います。速記を止めて。    〔速記中止
  16. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて。それじや別に御発言ございませんければ……。
  17. 藤田芳雄

    ○藤田芳雄君 請願、陳情の書面が大部沢山出ておりますが、それを処理するために、本委員会に小委員会を設けて頂きたいと思うのですが、皆さんの御賛成を得て、若しできますならば、その委員の指名は委員長の御指名によりたいと思うのですが、如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 只今の藤田君の御発言に御異議がないようでありますから、委員長におきまして、さように取計らうことにいたします。速記を止めて。    〔速記中止
  19. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて。
  20. 松野喜内

    松野喜内君 私学法案につきましては、我々愼重審議をいたし、殊に大方多方面の識者の意見を聞く必要があると考えます。よつて日につもないから、公聽会とまで行きませんから、参考のための関係者を喚んで頂き、意見を聞くことを提案いたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  21. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 松野君の提案に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それではさよう取計いますが、参考のために関係者から意見を聞く顔触れにつきましては、如何いたしましようか。    〔「委員長一任」と呼ぶ者あり〕
  23. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは、請願、陳情の小委員会なり、或いは又私学法案につきましての参考のために関係者から意見を聞く顔触れにつきましては、理事の方々と御相談申し上げまして、適当に取計らいたいと存じます。  では、今日の委員会はこれで以て散会いたします。    午後二時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     田中耕太郎君    理事            若木 勝藏君            松野 喜内君            藤田 芳雄君    委員            河野 正夫君            左藤 義詮君            梅原 眞隆君            堀越 儀郎君            三島 通陽君            山本 勇造君            鈴木 憲一君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 高瀬荘太郎