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説明員(
内山徳治君) この前に
ちよつと
説明を残しましたところを補いまして、或いは御
質問等ございますれば、それによ
つて又御
説明申上げることにいたしたいと思います。
前回資産再
評価の
シャウプ案に対する若干の批評を申し上げまして、途中で時間が切れたわけでございましたが、もう一度簡單にその結論だけを繰返しますと、要するに現在の我が国の
企業の経理の
状況から見ますると、
シャウプ案に示されております
評価の
基準は
最高限としては、あの
基準通りを採用すべきでありますが、それよりも低い
評価をすることは、
相当自由にできるようにすることがどうしても必要だということが第一点であります。
それからそれに伴いまして、低い
評価をいたします場合に、どの
程度の
評価に止めて置くのが最も妥当であるかということの
判断が現在の
経済事情の下ではまだ
適確に
判断しかねる場合が
相当あると
考えられますので、そういう
資産につきましては、将来もう一度
評価の
修正ができるようにして置くことが必要であろう。つまり今度の
評価が最終的なものとしないで、それをもう一度、例えば五年後もう一回ということでもいいと思うのでありますが、とにかくもう一度
修正ができるようにして置く。
シャウプ案によりますと、
物価の
変動が一ケ年一割以上に及びました場合は、何遍でも再
評価していいということにな
つておりますが、それとは別個に、
物価の
変動が一割に及ばない場合でも、
経済事情の変化によ
つて評価の
判断の基礎が変
つて来た場合には、もう一度
修正ができるようにして置く必要があるということであります。
それから第三と申しますか、第二に再
評価税の問題てございますが、再
評価税は、
シャウプ案示されておる六%の
評価差額に対する税を、三ヶ年に分納するというその課税では高すぎるので、これをもう少し低くする必要があるだろうということを結論として
前回申上げた次第であります。その課税の問題につきまして、もう少し今日詳しく御
説明申上げまして、その理由及び課税の
方法等に関する私の持
つております案を申上げたいと思います。
その前に表をお配りいたしまして本日お持ち下さ
つておりますかどうか存じませんが、再
評価の資料としまして計算した表を差上げて置いたのでごといまする減価償却の仕方が定額法償却によるか、定率法償却によるかということで余程
評価の
方法が変
つて参りますが、定額法償却による場合にはどうなるかということが表の上の方の括弧一に計算してあるのがそれでございます。定額法によ
つて償却することを前提といたしました場合に、再
評価によ
つて再
評価税を負担するということと、それから
評価が高まることによ
つて固定
資産税が増加いたします
程度と、この二つを合せましたものが再
評価の結果、いつでも税負担が増加するこいうことになるわけでありますが、それに対して再
評価によ
つて減価償却が増大し、
従つてそれだけ税法上
相当認めて貰うことができる金額が殖えて来る。それによ
つて法人税が軽減されますが、その
法人税の軽減の
程度とを比べて見て、どうなるかということを引算いたしましたのがこの表でございます。
ちよつと先に簡單に御
説明申上げますが、この三つの税の負担の
関係を見ます場合に、これを一本のものに比較できるように直して比較する必要があるわけでございます。そこで再
評価税の方は三ヶ年分でございますが、これを現在一遍に納めるとしたらば幾らの税率に当るであろうかということを計算したのが第一欄であります。と申しますのは三年の間の金利を計算に入れまして、その金利を仮りに一年一割と計算いたしまして計算をいたしますと、現在一遍に納める場合にはそれよりも六%より少し軽くなりまして、五六%の税を課けたと同じ計算になる、こういうことになるわけであります。それから同じようにいたしまして固定
資産税の殖える
程度、これも固定
資産税は勿論年々の課税でありますから、
会社としての税負担は、将来同じ割合でずつと続いて行くことになるわけであります。
資産別に取
つて参りますと、その
資産の帳簿
価格若しくは固定
資産の課税標準になる
価格というものが残
つておる間だけその税が続くわけでありまして、年々減価償却をして参りますと、この金額が段々減
つて行きまして、最後には現在の減価償却のやり方でありますと、一割の残骸
価格が残る、その一割り残骸
価格をやはり
評価をして固定
資産になるわけでありますが、併しそれを次にスクラツプとして廃棄してしまいますと、その
資産についての固定
資産というものはなくなるわけであります。つまり耐用年数がある間だけ、この固定
資産税が課かるわけでありますから、その耐用年数の続いておる間に課かります固定
資産税の税額を全部これを寄せ集めまして、そうしてそれを現在一遍に負担するとしたら、幾らの税率になるかということを計算したのが、左の方から第二欄目に書いてあります
数字であります。そういう計算の仕方でありますから、これは当然耐用年数の長いのと短いのと、耐用年数の如何によりまして違うわけでありまして、十年の耐用年数の場合にはこうなる、一十年は幾ら、二十年は幾らというふうに計算いたしてあります。これを
ちよつと
数字を見ますと、耐用年数十年の
資産について見て再
評価の結果、固定
資産税が増加いたします。その年々の増加分を全部寄せ集めて現在全部一遍に負担するとしました場合には、これは八・三%であります。八・三%の税率を現在一遍に負担するのと、それから一・七五%の税を年々課けられて、減価償却によ
つてその課税対象としての
価格は段々減
つて行きます。正確に申しますと、十年間経ちました後、更に残骸
価格が残り残ますから、この計算では十二年かかるものと仮定して計算してありますが、十二年間に拂う固定
資産税を全部寄せ集めまして現在一遍に負担するとすると、そうすると現在の再
評価によ
つて評価額は、殖える分に対して八・三%の税を負担すると同じことになる。同じようにいたしまして、耐用年数十五年の
資産は一〇・一%税率になり、二十年の
資産は一一・六%、二十五年では一二・七%、三十年の
資産では一三・五%、こういうふうな工合になるのであります。
それから
法人税の軽減はどうなりまするかと申しますと、これもやはりその
資産の残存
価格というものが残
つておる間だけ毎年減価償却が行われて、その行われた結果減価償却だけ
法人税が軽減されて行く、こういうことでありますから、これもやはり耐用年数の間だけ、つまり減価償却の行われておる間だけ
法人税の軽減という恩惠が起るわけであります。それでこれを固定
資産税の場合と大体同じような
方法によ
つて計算をいたしまして、複利年金の減価を計算するのと同じ算式になるわけでありますが、それによ
つて計算をして見ますと、
法人税の軽減の方は、耐用年数十年の
資産については
評価増しされたその差額に対する二一・九%だけ一遍に軽減されたのと同じ
関係になる。それから十五年の場合にはそれはもう少し減りまして一八・二%、二十年の場合には一五・四%、二十五年の場合には一三・二%、三十年分場合では一一・四%、こういうふうな
関係にな
つて参るのであります。それで再
評価によ
つてこの税負担の殖える方と減る方と差引して見ますると、
法人税の軽減は耐用年数が長くなる程その恩惠が少くなる、これは金利の
関係その他からいたしまして、一遍に何と言いますか、軽減されるものとして原価を計算して行きますと、耐用年数の長いもの程軽減の割合が少くな
つて行くのであります。それに対して固定
資産税の方は、耐用年数が長くなると段々と負担の差額というものは大きくなる。それから再
評価税の方は耐用年数が長くても短くても変らないのであります。そういう
関係からしまして、或る一定の耐用年数を持
つている
資産までは、再
評価によ
つて明らかに税の負担が減りますが、或る
程度以上に耐用年数の長い
資産については、却
つて税負担が固定
資産税まで合せますと税負担が殖える、こういうふうな計算が出て来るのであります。今その定率償却法を前提としまして金利を年一割として見まして、それから固定
資産税は一・七五%と仮定し、それから
法人税の方は三五%だけを見まして軽減する度合を計算して比べて見ますと、耐用年数が十五年の
資産では
評価差額に対する二・五%だけ税負担が軽くなります。ところが二十年の
資産になりますと一・八%だけ反対に税負担が重くなる、こういう
関係にな
つて参りまして、結局この計算から見ますと、大体耐用年数十七八年
程度までの
資産は、再
評価によ
つて会社の税負担が減りますが、それより耐用年数が長くなりますと、再
評価をすると大抵損になる。これは勿論減価償却を新らしい
評価によ
つて行うことができるだけの利益がある場合のことでありますが、それだけの利益がありましても、或る
程度以上耐用年数の長い
資産については、却
つて再
評価の結果が損になる、こういうことになるのであります。同じ計算を今度は定率法によ
つて償却した場合にはどうなるかということを計算しましたのが下の方の表でありますが、定率法によりますと、定額法償却の場合よりは、
会社の何といいますか、税負担の軽減が大きくなると申しますか、
会社に取
つて利益の
程度が大きくなりまして、結論としまして耐用年数二十七年の
資産で丁度損得なし、再
評価によ
つて損にもならない、得にもならないというところが出て参ります。それ以上耐用年数の長い
資産ではやはりマィナスになる、こういう
数字が出て参るのであります。そこでこういうことから
考えますと、シャウプ勧告案
通りの再
評価税、及びその他の法人
関係の税率で参りますと、或る
程度以上耐用年数の長い
資産は、再
評価の結果、却
つて損になるのでありますから、それを
基準を決めて強制するということであれば、損にな
つても
会社は再
評価せざるを得ないのでありますが、
基準は最高
基準として、それより低い
評価は
相当自由になるということになりますると、その自由の
程度にもよりますけれども、
会社が自由に
評価してよいのだということになりますと、或る
資産についてに再
評価をしない方がよいということにな
つて来るのは当然であります。尚又、これは再
評価の結果減価償却を殖やすことができるわけでありますが、それも困難であるというような場合には、一層
評価を非常に低くするものが出て来る、
従つて非常な過少
評価が起るということにな
つて来ますので、余り過少
評価になることは、非常な弊害を持ちますから、それでこれについては税率を少し手加減しないと、シャウプの原案を少し変えませんと、今度の再
評価措置というものが本当にうまく行かない危險があると、こういうふうに
考えられるのであります。それではどの
程度に課けるのがよいかということでありますが、この表で見ますと、再
評価税の六%を全部止めてしまいましても、固定
資産税がありますために、定額償却法の場合にはやはり二十年以上の耐用年数を持
つた資産では得にならない、
法人税の軽減が一方にあるけれども、固定
資産税が殖えるために却
つて損になるというような計算になります。定率法償却で行きますと、三十五年くらいのところが、大体限界になるかと思いますので、まあ
相当過少
評価の虞れは少くなりますが、併し、全部なくなるわけにはいかないと、こういうことになるのであります。
従つてそういう点からみまして、やはり或る
程度の強制はするにしましても、再
評価税はどうも全然なくしてもまだ多少損になる物合もあるということがありますから、これは全部止めるのが一番よいという結論になるのであります。ただ併し、全部止めないで軽い税をかける場合にどうするのが一番よいかと申しますと、これはやはり
法人税の軽減するその
程度に応じた税を、若しかけるならかけるのが一番合理的である。即ち、耐用年数の長いものは軽い税がかかり、短いものは比較的重い税がかかるという行き方をとればよいわけであります。その
方法は、このような数理的な研究から当然結論が出て参りますわけで、割合に簡單な
方法がございまするので、どうしても再
評価税をかけるというならば、そういう
方法で取るように、即ち再
評価税の課税の
方法を根本的に
考え直す必要があると、
前回申上げました理由がそういうことに言えるわけであります。
要するに今度の
シャウプ案は、まともに
考えますと非常に理想的な案にな
つておりまするので、一挙に
シャウプ案の理想の線を全部実現しようとしますと非常に無理が起りますので、附加価値税にいたしましても、或いは固定
資産税にいたしましても、再
評価税につきましても、
相当過渡的な
措置が必要であるということを強く感ずる次第でありまして、その点が全部を貫く基本方針として是非
考え直して頂きたいと、財界
関係の者としては切に
希望しているところでございます。それの
内容は、今まで申上げましたことになるわけであります。
少しはしよりまして、分りにくいところがあ
つたと存じますが、一応これで終ります。