運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1949-10-31 第6回国会 参議院 懲罰委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十月三十一日(月曜日)    午後一時五十九分開会   —————————————   委員の異動 十月二十九日(土曜日)委員中山壽彦 君の辞任につき、その補欠として小野 光洋君を議長において選定した。   —————————————   本日の会議に付した事件議員金子洋文君、中西功君、板野勝  次君、カニエ邦彦懲罰事犯の件   —————————————
  2. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) これより懲罰委員会を開会いたします。本事件に対しまして、他に御質疑等ございますか。    〔「質疑なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 別に御発言もございませんから、これより直ちに討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 何に賛否を明らかにするんですか。賛否を明らかにしようがない。
  6. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) それじや訂正いたします。御意見のおありの方は、それぞれお述べを願います。
  7. 遠山丙市

    遠山丙市君 本懲罰動議に対しましては、提案者であります草葉議員より提案理由を述べられ、御説明も聞いておりまするし、懲罰事犯者でありまする中西君、カニエ君、金子君、板野君の本会議における詳細なるところの弁明趣旨も拝聽いたしておるのでありまして、且つ本委員会騒擾当夜の数葉の写真並びに数種の新聞記事等を参照いたしまして、且つ本委員会は非常に数多くの証人を喚問し、宣誓の上で証言を得たのであります。而も愼重の上に愼重を重ねまして、最後事犯者補充的弁明の機会をも與えまして、全員は全力を傾倒いたしまして事実の真相の把握に邁進をいたした次第であるのであります。かくしまして漸くここに結論に到達いたしたのであります。私は特に各証人証言、これを一々引例申上げまして、処罰対象にいたしたいと考えておるのでありますけれども、時間の関係もありまするし、而も速記録等においては各証人証言は極めて詳細に載つておることでもありまするし、我々も度重なつてそれに立会つております関係上、そういう点は速記録に譲らして頂きたいと思うのであります。この速記録等によりまして、この証人証言というものが誠に明瞭と相成りまして、事犯者四君共に事犯該当者であると断ずるものであります。戰後日本平和国家といたしまして、民主国家といたしまして誕生いたしまして、今日に及んでおるのでありまするが、暴行行為というものは許容すべからざるものであるということは、今更論を俟たないのであります。今日立法の府でありまする参議院議場において、騒擾暴行傷害という事犯が公然と行われたということは、国家最高機関権威のためにも誠に遺憾に考えておる次第であるのであります。誠に国民の指弾を買うところの一大不祥事件であり、国会の名誉を失墜せるものでありまして、我々委員会は全く私事私行というものを去りまして、嚴然たる態度を以てこれが解決に臨まねばならないと考えておるのであります。国会法第百二十二條の懲罰事犯罰則には、一、二、三、四と四つの罰則が書いてあるのであります。参議規則二百四十五條には「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者に対しては、登院を停止し、又は除名することができる。」と規定してあるのであります。この規定から考えて見まして、事犯者の中で中西君は最近の国会においても懲罰に付せられておるのであります。それに拘わらず前回とは比較にならざる重大事犯を敢て敢行したいということは、その改悛の情というものが更にないものと見なくちやならんと思うのであります。誠に遺憾でありまするが、除名処分に付するを最も妥当なるものと考えるのでございます。次にカニエ議員は、これはまあ速記録等によつて明瞭でありまするが、カニエ議員に対しましては登院停止二十五日。次は、金子議員に対しましては登院停止二十五日。最後に、板野議員に対しましては登院停止二十日を以て御決定を願うということが最も妥当なるものであると考えておる次第であります。全委員諸君の御賛同あらんことをお願いする次第であります。
  8. 松井道夫

    松井道夫君 私も只今遠山委員の述べられた結論に賛成するものであります。本件事案国際環視の中に、新憲法下に再出発いたしましたところの日本国会、この国会権威を冒涜いたしました、極めて重大なる事犯であります。この事犯特異点と私考えておりますることは、あの昭和二十四年五月二十三日、この日は会期を延長いたしまして、定員法その他の重要法案を更に愼重に審議決定いたすという日に当つてつたのでありまして、野党はこれを何とかして阻止しようと考えておつたのであります。併しながらこの手段たるや、勿論法に従いまして行わなければならんことは申すまでもないに拘わらず、実力を以てこれを阻止せんといたした結果を生じておるのであります。これは実力を政争の手段に供しましたので、甚だ悪い例を残したものと言われなければなりません。言葉を換えて申しまするならば、実力を以て議院の担当しておりまするところの立法権そのものに対する攻撃を加えたというように見えるのであります。これが一つ特異の点であると存ずるのであります。又その実力を行使する対象議長であり、副議長であるのであります。議長は申すまでもなく、これに代りまする副議長も亦内外に議院を代表いたしておりまするのでありまして、極めて尊嚴を保たねばならぬものなのであります。いわば国家立法権の象徴たる地位にあるわけであります。それに対して実力を行使いたしたということでございまして、この点も特異の点であろうと存ずるのであります。更に新憲法下戰争を放棄いたしております。暴力的傾向を排除いたすということは、これは新憲下勿論のことでありますが、又占領政策の上から行きましても極めて重要な事項でございまして、国を挙げて暴力的傾向の排除に努めておる次第でございます。かかる関係にありまする点も、我々は深く思いをいたさなければならんと存ずるのであります。本件事案は先程遠山委員も述べられましたが、証処調べによりまして、明白に立証せられておりまする。  先ず、中西君につきましては、実力を以て議長登壇を阻止いたした。更に実力を以て副議長をその席より引下さんとしたした。又議事日程を記載いたしておりまする紙をその手中に收めた。それから更にマイクを引張りまして、その後副議長発言が明瞭に聞取り得ないというような関係もありまして、コードが切れたという説が專らであつた程であつたのでございますが、そういつた事実が立証いたされておるのであります。コードは事実は切れたのではなかつたので、この点は中西君のために仕合せであつた次第であります。  次に、カニエ君につきましては、委員会におきまして加藤議員を両三回毆打した。而もそれによつて傷害も與えておるのであります。更に本会議場におきまして議長進行前に倒れまして、議長登壇を阻害する重大な原因一つになつた。これは故意にやつたかどうかということが問題になつたのでありまするが、これは証拠上故意にやつたものとは認め難いことになつておりまする。これは又カニエ君のために仕合せであつたと言わなければならないのであります。  次に、金子君でありまするが、実力を以て副議長をその席より引下さんといたしたという事実が認められるのであります。  最後に、板野君でありまするが、他の数名の議員議長進行を阻害しておるそのかたまりに参加いたしたのであります。尚議場に向いまして手を振り、大声を発しまして混乱を助長いたしておるのであります。尚マイクをがちやがちや壇上に叩き付けた事実も認められておるのであります。ただ板野君の場合、どの程度まで現実に松平議長進行を阻止する原因となつたか、その原因となつたことは間違いないのでありまするが、どの程度その原因になつたかということは明白でないのであります。この点は板野君のために仕合せであるのであります。  以上の事実でございまして、これに対して如何なる懲罰を加うべきかという結論は、先程冒頭に述べました通り遠山委員の説と合致いたすのであります。即ち中西君は除名同僚議員除名にいたすということはもとより情において忍びざるものあり、心中頗る晏如たらざるものがあるのでございますが、これは先程申しました議院尊嚴議長尊嚴を護るために止むを得ない次第であります。カニエ君は中西君と比較いたしまして、やや程度の下がるものがあると認めまして登院停止三十日金子君は更にそれより五日減じまして二十五日。板野君は更に二十日という結論に相成るのであります。  ここに私注意を喚起いたしたいと思いますることは、この四君、中西君は除名にという結論になりましたが、他の三君につきましても除名が相当であるという強い意見がありまして、見方によりましては勿論除名が相当であるとも十分認められる事犯であるということを注意を喚起いたしたいと存ずるのであります。
  9. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 私は民主党を代表いたしまして、草葉隆圓君から提案されましたところの中西君、カニエ君、金子君、板野君の懲罰の件に関しまして一言意見を述べたいと思います。先程来遠山委員並びに松井委員より、それぞれ国会としての立場、或いは新国家建設という大きな問題に対する立場より御意見が申述べられましたが、全く同感であります。殊に参議院におきましては、従前より衆議院に対しまして貴族院という制度があり、その貴族院が新らしい民主主義国家建設のために参議院と改まつてつたものの、やはり何かしら国民感情から申しますれば冷靜に事を運び、正確なるところの国家政治を掌つて呉れるものという非常なる信頼感を持つておるところであります。それが去る五月二十三日のあの晩の混乱を惹き起しましたということは、全く国民に対して愕然として参議院に対する認識を改めさせたと言つても過言でなかつたのであります。而もあの混乱に対しまして、多数の人々がいろいろの動きもありましたでしようが、冷靜の度を失つて非常にエキサイトしたということは、我々お互い議員として誠に残念であつたのであります。あの当夜の状況を振返つて見まするというと、議院運営委員会におきまして非常に混乱を生じ、その混乱というものは今回懲罰の議に供されておりましたところの四君の責任ばかりでなく、相当多数の方の責任もあつたということは疑いを入れない事実であつたのであります。而もその混乱を捲き起した大きな一つ原因が、現政府の手続の欠陷、或いは謙譲なるところの態度に欠けておつたというのは、これは現政府に対して深く反省を求めなくてはならない点であつたと思います。その当夜におきまして、議院運営委員会混乱とその興奮というものが、そのままそつくり本会議場に引継ぎをされまして、その後趣旨弁明に立たれましたところの懲罰委員にかけるべしという動議を出されましたこの四君の外の方々によつても、本会議におきましていろいろ説明をされたのでありますが、極端なるところの、一、二の議員を除いて全部怒号と混乱のるつぼの中に捲き込まれておつたというような表現を以て現わしておつたのであります。併しながらこれは甚だ当らないのでありまして、例えば我々民主党におきましては、一人もあの壇上に上る者もなく、冷靜にあの出来事を全員見守つてつた。新政治協議会等におきましても、やはり同様であり、又更に緑風会民自党の一部の方々におきましても、冷靜にあの場を御覽になつておられる方々も相当数多くあつたのであります。併しながら我が民主党といたしまして一人の議員もあの混乱の中に捲き込まれることなく、終始冷靜に見守つてつた関係上、相当正しい意見皆さん方に申上げることができると信ずるのであります。そういう観点よりいたしまして、この四君の当日の行動を拜見いたしておりましたところ、カニエ君におきましては、運営委員会において加藤君との経緯がありまして、これはカニエ君自身が確かに自分責任であつたということを申述べておられるのであります。更に又本会議場に入りましても濫りに壇上に上りまして、議長登壇されるのを阻止したということを万人に認められるような行動を取られたということは、これは全くカニエ君の不徳と言わねばならないのであります。従いまして、議長登壇の阻止ということは、実に議会運営上から申しましても、重大なる事件でありまするによつて最高の、処分規定に許されておりますところの三十日の登院停止を科することが当然であると思われるのであります。  次に金子君についてでありますが、金子君は副議長議長席に著いたときに突如として馳け上りまして、その議長席に著くことを阻まれんといたしたことは写真等によつても明白であります。ああいう行動はたとえ金子君の主張するごとく、議長がまだ議場内におられるにも拘わらず、議長席登壇される態勢を示されておるのにも拘わらず、副議長上つたということが決して当を得たものでないので、それを阻止したのだというような御弁明があるにも拘わらず、副議長といたしましての職責上、議長議長席に著くことができないような状態になつてつた。これは事実であります。そのときに副議長職責として、あの議長席に著かれるのは、これは又当然の措置であると思われるのであります。金子君がそういうことをお知りにならないでおやりになつた行動といたしましても、決してこれは議員といたしまして取るべき態度ではない。而も一面から申しますれば、実力を以てその議長席に著いた副議長を下さんとするがごとき行動は、これは実に重大なる行動であつたと言わねばならないのであります。併しながらあの当夜の混乱というものが、実に想像に絶するものがあつたという観点上からいたしましても、幾分の恕すべき点もないではなかつたと考えられるのであります。よつて金子君に対しましては二十五日間の登院停止が至当であると考えられるのであります。  又板野君でありますが、板野君につきましても、議院運営委員会等におきまして、やはり自分の信ずるところの政策、信念、それを押通さんがために活躍をなさつたことではありましようけれども、万人の認めるところ、少し度を過ぎたのではないかということは、これは板野君にとつて誠に遺憾な点でありました。その板野君が本会議場に入りまして、板野君の弁明通りに申しますれば、中西君が壇上上つておるのは、議院運営委員会の小委員という、それの更に補助委員である。そこで上つてつたのは当然である。そこで自分議院運営委員会の小委員であるから、又上るのは当然だ、こういうような弁明をなさつておりますが、すでに中西君が登壇して、いろいろ交渉をしておるものとすれば、中西君と交代するか、然らざれば御自分は上らないのが当然であつたと思うのであります。然るにも拘わらず、板野君は登壇いたしまして、先程両議員からもお話しの通り混乱を惹起すところの大きな原動力になつたということは、これはあの議場内にあるところの大方の人々が認める事実であつたのであります。そういう点からいたしましても、板野君のあの混乱を惹起した一つ責任を負つて頂く、反省を頂くという意味において二十日間の登院停止が至当であると思うのであります。  最後に、中西君についてでありますが、遠山委員或いは松井委員より除名論が出ております。誠に中西君にとりまして……この前も懲罰委員会にかかりました。戒告ではありましたが懲罰の体験を有されております。これにも拘わらず更に五月二十三日のあの大混乱の大きな役割を取つたということは、誠に中西君にとつては惜しい点でありますが、遺憾の点であります。中西君が本会議場に入りまして、小委員補助員として登壇されたのは、一応納得ができるものと思いますが、あの当夜もうすでに時間も切迫いたしまして、小委員会開催方松平議長に要求いたしておつたのであります。要求はいたしても、松平議長がそれを引受けなければ、これはいたし方ない点でありまして、議長の職権上どんどん議長席へお著きになるということを、それを阻止するような立場のところにおられたということは、甚だ以て遺憾だつたのであります。而もその上に更に副議長議長に代つて議長席にお著きになるとき、金子君と共に副議長議長席より下さんとせるがごとき行動を取られたことは、金子君のところで申上げたような理由によつて、全くこれは看過し得ないところの点であると思うのであります。こういう点から見ましても、相当の処分というものは当然なさねばならないところであることは疑いを入れないのでありますが、併しながら御両者がお話のごとく、除名ということは、これは我々民主党にとりましては一応賛成でき難い点なのであります。何分あの当夜の混乱というものは、ひとりこの四君のみによつて惹起されてものではなく、反対立場におられた方々も随分紙一重の点まで種々行動を取られた方があつたのであります。然もそれらの人々懲罰委員会に付されるかどうかというような点に参りましたときに、一面から申しますと、多数の人々によつてそれを懲罰委員会にかけることを阻止されたというようなことが事実あつたのであります。結局そういう点からいたしましても、できるだけお互いに自粛をいたし、反省をいたしまして、将来に二度とああいう混乱の起きないような国会にいたしたいというのが我々の強く要望するところであります。ただ除名をいたすことによつてのみ、これらの目的が到達されるかという点に参りますと、如何にも片手落ちのような感じもいたし、又世間から見ましても、国民から見ましても、国会が多数偏重主義というふうな形に見受けられる点がないでもないのであります。例えば先程申しましたような懲罰委員会にかからなかつた人々が、この委員会に参りまして、懲罰委員によつて種々尋問を受けるとか、或いは調査をされる対象になつたというならともかく、そういうこともなくして、多数派でない人々のみが極刑処罰を受けるというような事態は、全く以て国民から見て何かしら割切れない感情が出るのではないかと思われるのであります。而も中西君に対しましても、我々も相当強く主張し、反省を促したいところも多々あるのでありまするが、除名によつてそれを取除くというようなことでなしに、むしろ今一応深く反省をいたして、将来新らしい思想の持ち主の人々であつても、国会に出た以上には国会の許す範囲の立派な態度を取るということに反省を願いたい。こういうふうな我々の観点よりいたしまして、除名を除く最高処分規定に当嵌めるのが当然ではないか、こういうような意見なついているのであります。ところが現在の処分規定におきましては三十日が最高となつております。そういう意味におきまして、除名を除く最高処分規定という意味におきまして、やはり三十日の登院停止より科する途がない。かかる結論に到達するわけであります。以上を以ちまして我々民主党としての意見を申上げた次第であります。
  10. 大野幸一

    大野幸一君 私は日本社会党といたしまして、只今動議に、即ち四人に対する懲罰動議に対して反対の意思を表明いたします。中西功君に対して除名極刑動議が提出されましたが、私はこの動議提出も亦非常に遺憾なことであると思います。これは議場を騒がせたあの騒擾事件責任を問われると共に、場合によつてはこの除名こそ又非常に遺憾であつて、むしろ反省すべきものではないかとさえ考えるのであります。何故かと申しますと、一体我我仲間を死刑に処する、こういう結果であります。民主主義的な投票によつて国民の支持を受けて議席にあるお互いであります。その何万票か、何十万票かの投票の効果を失わしめることである。それが我々仲間によつて失わせることであります。成る程除名制度はありまするが、これは容易に行使すべき事柄ではありません。私は参議院が本会議においてこの除名は否決されることを希うものでありまするが、委員会においてもこの動議が提出されたることは遺憾に堪えないと思うのであります。我々はこれから仲良くして円滿議事進行して行かなければならないのです。これが参議院権威を保つゆえんのものでありまして、決して共産党中西君一人を除名して、我我参議院権威は高まらないのであります。これはそうではありませんでしようが、見ようによつて中西君を除名にするのではない、共産党を追い出すのだというような、こういうふうに考えられないわけでもありません。(「絶対にそういうことはない」と呼ぶ者あり)本会議において、提案者草葉隆圓君は共産党社会党、以上の諸君がこれらの暴挙をなさいましたことに対しては、こういう発言をされましたときに、我が社会党の中村君から、その取消を求められて、あつさりこれを取消されておるのであります。併し私はこの委員会において考えましたことは、板野君の懲罰、これこそ我々の考から以てすれば、壇上上つた三十二名の議員と大同小異である、若し板野君にして懲罰に付せられるものならば、何故に民主自由党緑風会人々は、あれと同じ程度にあつた人に対する懲罰動機に対して賛成せられなかつたかと考えます。どこに区別がありましたでしようか、ここを考えると、板野君が懲罰に付されたのではなくて、板野君がたまたま共産党に席があつたということの以外に何物もないように考えられる。そこで私は政治的考慮も拂いまして、そうして板野君に対しては懲罰に付せぬ、こういう結論が欲しかつたのであります、仮に私が板野君と同様にいわゆる壇上、嚴格な意味においての壇上でなくても、いわゆる壇上に立つた人々が民自党に何人おいでになりましよう。九名おいでになります。写真に現われた、川村、遠山、北村、淺岡、堀、城、加藤、池田、小林、各議員達、この人達は立派な人であります。立派な人でありまするけれども、その議場の雰囲気に捲き込まれておいでになるようであります。緑風会でも松井、岡元、矢野、岡本、この四名のお方、日頃崇拜する人々もあの壇上おいでになるではありませんか。壇上上つたというだけでは到底懲罰に値することは他の権衡上許されないと私は考うるのであります。只今読上げましたのは、民自党或いは緑風会、それはあなた方が除名動議を出されてから、あなた方の党にもこういう人があつたということを私は申上げておるに過ぎません。総計合せれば三十三名の人が同じ壇上に現われておるのであります。私達はこれから仲よくしようというその日から、その日というのは、今日本会議にかかるその日から、どうか一人の同志も失わずして仲よくしなければならない、こういう基本的観念から、中西君に対する除名には絶対反対であります。大きく国際的にこれを考えて例をとりまするならば、私は日本は平和にこれから向う、世界が平和に向うその終点こそ、或いは東京裁判の結果であつたのではないかと思いまするが、あの裁判においてマツカーサー元帥の一番不愉快な日を推察して見るならば、東條以下のあの戰犯被告に対して、死一等を減ずることができなかつた悲しさであつたろうと思うのであります。死一等を減ずる、即ち民主党議員から言われましたように、たとえ懲罰事犯であつても、同僚情けを以て死一等を減じて、その以外の最高刑を科するという、この情けこそ私は必要じやないかと考えるのであります。この情けある人のみが本当にこれから参議院を平和に導く資格のある人ではないかと私はそう考えるのであります。従つて中西君の除名には反対であります。他のカニエ及び金子君についての皆さんの御討論の中に、やや事実が違つておる点があるのであります。カニエ君に対して、緑風会松井君から、議長を阻止した結果となつた議長の前に立ち塞つたのでなくて倒れたということは、あれは結果論から見てそうであつたけれども、カニエ君が故意に倒れたのではない、こういうことの私は討論をされたことに対して敬意を表しますが、これは委員長も報告の中に、多数委員意見も一致することでありましようから、カニエ君の名誉のためにこれは報告して貰いたい。こう思いのであります。さて、カニエ君が、若し不意な出来事から自分の意思でなくて倒れたとするなれば、それはカニエ君の言う通りカニエ君の陳弁努むる通り、これはむしろ自分が被害者であつた。こういうことであるのであります。我々が人の迷惑を見て同情すべきことではあるけれども、それを懲罰にするというか、咎めることはできません。ここにカニエ君を調べまして、得たる資料の中から、廣元衞視班長の証言を以てすれば、私は議長の南左側にいた。そのときは大分揉み合つておる最中で、暫くすると、カニエ議員議長の右側の方から左側にかけてよろよろと倒れました。私は倒れたから危險だと思い、直ちに助け起そうとしたが、最初は人に揉まれて失敗して、二度目に助け起そうとしたときに、助けて呉れというようなことをカニエ議員言つており、一生懸命助け起した。カニエ議員が助けて呉れと言うのは本当に聞いた。これは私と遠山委員の質問に対して、こういう答弁をしております。岡田委員の質問に対して、その倒れ方は、人混みの電車の中で急に電車が停り、足が固定されていて、身体の中心が保たれなくなつたような形で倒れたというような感じであつた。又議長は、足下にまつわるような気がした。股なんかにちよつとしがみ付いたようなことはあるが、始終押えていたわけではない。その人が倒れたとき、どちらから来てどうだということは全く分らない。ただいきなり足下にぱつと人が来ただけだと、こういうことになりまして、全委員がこれこそ一致いたしておることであつて、少くともカニエ議員故意に倒れたのではない。空間の明いたところ、人間が揉み合つておる間に空間があいて、その空間のあいた理由によつて倒れたということであつて、最初草葉議員の提案の理由にあるような、故意に飛込んで議長の足を掴えた、こういうようなことがないんです。若しそれがなかつたならば、又他の壇上上つた大方の議員達とどんな大同小異のことがあるでしようか。ここで又いやカニエ君に対しては、運営委員会において、加藤君とのいわゆる毆り合があつたと言いまするが、若し当時の状況で、誰でも議院運営委員会だけのことであつたら、これは一週間かせいぜい十日の問題であろうとは異口同音に全議員が話し合つていたことであります。あの議院運営委員会におけるものは、民主党議員の言を以てすれば、エキサイトされたる雰囲気であつたことは、私が日頃敬愛して止まないところの西田天香先生ですら、あの日には北側の窓の枠まで上つて、土足で上つて、あれを見物されておつた、私はその姿を見て、あの西田天香先生ですら上られるから、自分もちよつと上つて見たいと、こういうように考えたのでありますが、当時の情勢からいつて非常に皆が興奮していたのでありまして、これはカニエ君の三十日の除名処分に付するまでには非常に私はまだ程遠いいものではないかと、こう考えるのであります。  金子君の弁解に至りましても、金子君は劇作家であつて……自分の言いたいことはこうである、劇作家であつて、何といつても副議長上つたということは、これは政治的陰謀である。こう考えたのであります。この点についてはいろいろ議論もありましようけれども、あのときに若し民自党ではなくて、野党の副議長つたら上らなかつた、こういうようなことまで彼は考えたのでしよう。そうして説得するために行つたので、平素の金子君の性格からして、決して暴力を振うのが主でなかつた、説き伏せるために人間は肩に手をかけ、手を引くという金子君の弁解は、これは全議員が彼の人となりから了解して呉れるだろうと思うのであります。  かようにいたしまして、本委員会の自由党から出されました動議は、その当を得ないものであると断言いたします。当時の空気から言いまして、ここに参考資料二通までを私は皆さんに御紹介したいと思いますのですが、民自党緑風会社会党一名が加わる宗教家議員団の名において声明書が発表されております。  第五国会の終末における参議院の紛糾は真に遺憾に堪えない。本件は院全体の責任として深く反省自粛し、今後超党派的和衷情神を以て本院の円満なる運営を期し、もつて国民の信頼に応えたい。     宗教家議員団            岩本 月洲            西田 天香            堀越 儀郎            小野 光洋            柏木 庫治            梅原 眞隆            來馬 琢道            草葉 隆圓            山下 義信            左藤 義詮  提案者草葉隆圓先生もここに署名されております。僧侶から成るところのこの十名の議員は、すでに当時こういうような院全体の責任として深く反省自粛しようではないか、和衷情神というこそ、これは除名意味しているものではないのでありまして、又人を責める意思が現われていないのであります。  由来婦人は何と言つても冷静であります。三十三名中婦人議員は一人もまだ暴力を振つた人はありません。又壇上に登つた人もありません。併しその人こそむしろ寛大であります。只今委員長から拜見したのですが、懇願書が懲罰委員会委員長太田敏兄殿宛として提出されております。    懇請書  この度の参議院での紛糾は、私達婦人議員としても深く反省自粛を痛感致します。不敏にして懲罰委員会附託の議員を出したことはまことに遺憾のかぎりでありますが、すべての者が将来かかる不祥事を絶対に繰り返さず、本院の権威と品位の保持を堅く心にちかつておりますのでこの度は愼重に御勘考のうえ何卒御寛大なる御処置をたまわりたく右心から懇請申し上げます。   昭和二十四年五月三十一日    参議院婦人議員            木内キヤウ            深川タマヱ            赤松 常子            河崎 ナツ  こういう四名の婦人委員から成る懇願書も我々の委員長に提出されております。以上のように次第でございますから、日本社会党として不幸にして二名の懲罰に付せられたる同僚を出したことは遺憾でありまして、この点については遺憾の意を表しますが、今提出せられた動議に対しては反対をいたさざるを得ない次第であります。
  11. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 他に御発言はございませんか。
  12. 中野重治

    委員議員(中野重治君) 中野ですが発言を……。
  13. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 委員議員の中野議員から発言の要求がありますが、許可してよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 中野君。
  15. 中野重治

    委員議員(中野重治君) この問題について私の意見を申したいと思います。多くの議員から言われました事柄のうち、懲罰に付すべきものではあるが、さまざまの事情を考慮して、できるだけこれをやわらげたいという、そういう言葉に私は問題として少しも反対ではありません。けれども、それとは別にカニエ君、金子君、中西君、板野君、四君の懲罰反対意見を持つております。それは懲罰に付すべきものではあるけれども、何らかの事情によつて懲罰に付すべきではないというそういう意味での反対ではありません。そうでなくつて参議院が特に今度の問題に関して懲罰事犯の継続審議ということをやつたのですけれども、そのこと自体が行わるべからざることであることによつて懲罰反対であると、そういう意味であります。それ自身の中に反対理由を見出すものである、こういう意味であります。これは委員長の席上で私が細かく言うのは不必要のことと思いますけれども、皆さんがかねてよく御存じのことをこの際もう一遍明らかに思い浮べて頂きたいという意味で言うわけであります。言うまでもなく、懲罰事犯の継続審議ということは世界のどの国の国会でも行われて来ておらない、我が日本国会でも衆議院ではそれを行なつておりません。これは世界に議会制度ができて以来、おのずからそう決まつて行われていることでありまして、殆んど常識になつていると言わねばならんと思います。けれども、それは何となしにそういうふうな習わしになつた、いつの間にかそういうふうになつて来ておるというのではなく、事実そうなつて来ておるのではあるけれども、それはそこに何と言いますか、普遍的な真実が横たわつておるために、それに基いてこうなつたと、こう言わなければならんと思います。懲罰事犯の問題は、国会がその秩序を乱された場合にこの秩序を速かに回復する、このことを目的として取上げられるものでありますから、会議の終了と共にこれが終る、他の法律案のように、国の政治関係して引続き将来に向つてこれを討議し、これを取扱い、その影響が将来に続く、そういう性質のものではありませんために、懲罰事犯の問題は継続審議ということにならない。事の自然においてならない。この事実が普遍性を持つているために、議会制度始まつて以来、懲罰事犯の継続審議ということは行われないということに国際的になつている。それですからいろいろ証人が呼ばれまして、足を掴まれたか、本当に破くために取つたのであるかとかいろいろなことが調べられました。こういうことを細かく調べることは大事なことでありますけれども、私はそういうことのために拂われた委員会の大きな努力を少しも軽んじようとは考えておりませんけれども、問題が国会における懲罰事犯である。そのことのために、次の会議において非常に重要な問題を控えておるこの会議の最初において、この問題が取上げられるようなことになつたこと自体が、四君の懲罰に対して私をして反対せしめるものであるということを申上げたいと思います。先程二人程の委員の方から、この問題が世界環視の下に進行しておるというお話がありました。私もそう思います。それから又衆議院とは違つておるというのは、決して衆議院を蔑視する意味ではなかつただろうと思いますが、我が参議院においては特に冷靜にこの種の問題を取扱わねばならないというお話がありました。私は両方の御意見にこの機会において全く賛成であります。若し我々が国際的な環視の下に事を運ぼうとし、本当に参議院の独自性を排して冷靜に結着に辿り着こうとするならば、世界の議会制度が普遍的な真実に基いて、その慣行として来たところのものを我から破るということはあつてはなるまいと確信します。このことをも含めて四君の懲罰に私が反対である旨を申上げます。
  16. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) それではこれで討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 一つこの本会議における取扱い方でございますが、これは委員長報告を一括して賛成或いは反対というふうにするのか、これは個人々々の問題でありますから、個人々々に分けて、そうして賛成反対をするのか、その点をはつきり決めて置いて頂きたい。
  18. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 本会議における採決の仕方は、議院運営委員会の方で決定いたします。この委員会では、委員長委員会の決定をそのまま報告すればそれでいいのじやないかと思います。本会議の採決の方法は本会議みずから決定すると思います。
  19. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 本会議はまだ別として、この委員会におきましても、遠山委員から四議員について一括して懲罰動議が出ておりますが、採決の場合には、その一人々々を区分して、そうして遠山委員動議によるところの懲罰罰則を別々に言つて頂きたいと思います。
  20. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) これは私からもお諮りしたいと思つてつたのでありますが、委員会におるけ採決の方法は、四人を個別に順次採決したらどうかと思いますが、如何でございますか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  21. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) それでは只今御賛成願いましたようにいたしたいと思いますが、その採決の順序は、只今遠山委員、各委員から御意見がありましたのによりまして、中西君が除名カニエ君が三十日の登院停止金子君が二十五日、板野君が二十日というふうに、それぞれ異なつた懲罰を科するという御意見でありまするので、順次重い方から、中西君、カニエ君、金子君、板野君という順序で採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) それではそういう順序で採決いたします。  それでは採決に入ります。中西君につきまして、遠山委員及び松井委員からは除名にすべきものとの御意見でありまするし、油井委員からは三十日の登院停止との御意見であります。故にこの二つの御意見につきまして採決をいたします。中西君を除名に付すべきものであるとする御意見に御賛成の方は起立を願います。    〔起立者多数〕
  23. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 多数と認めます。それでは中西君は除名に付すべきものと決定をいたしました。  次に、カニエ邦彦君に対しましては、遠山松井、油井三委員から、それぞれ三十日の登院停止懲罰に付すべきものであるとの御意見でございますが、この御意見に賛成の方は起立を願います。    〔起立者多数〕
  24. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 多数と認めます。  次に、金子君につきましても、遠山松井、油井三委員から、登院停止二十五日という御意見が出ております。御賛成の方は起立を願います。    〔起立者多数〕
  25. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 多数と認めます。  次に、板野勝次君の採決に移りまして、板野君につきましても、前の三委員から登院停止二十日にすべしとの御意見であります。それにつきまして御賛成の方は起立を願います。    〔起立者多数〕
  26. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 多数と認めます。  それでは本委員会といたしましては、中西除名カニエ君三十日、金子君二十五日、板野君二十日の懲罰に付すべきものとの意見が決定いたしました。尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によりまして、予め多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長におきまして、本事件の内容、本委員会における質疑応答及び討論の要旨並びに表決の結果を報告することとして、御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長議院に提出する報告書につきましては、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本件を可とされた方は順次御署名を願います。  多数意見者署名    〔金子洋文君外二名の件〕     遠山 丙市  小野 光洋     油井賢太郎  鈴木 直人     竹下 豐次  松井 道夫    〔中西功君の件〕     遠山 丙市  小野 光洋     鈴木 直人  竹下 豐次     松井 道夫
  28. 太田敏兄

    委員長太田敏兄君) これにて委員会を散会いたします。    午後三時六分散会  出席者は左の通り。    委員長     太田 敏兄君    理事            遠山 丙市君            松井 道夫君    委員            大野 幸一君            岡田 宗司君            小野 光洋君            油井賢太郎君            竹下 豐次君            鈴木 直人君   委員議員            中野 重治君