○国務大臣(増田甲子七君)
木下さんの御
質問にお答え申上げます。
政府といたしましては、先般の
総理大臣の声明
通り給与ベースを
変更いたしにくいということを言明いたしておる次第でございます。というのは、折角インフレーシヨンも安定いたしまして、今デフレであるとか或いはデイスインフレであるとか、生産力が発展しないというような非難も受けますが、今まで終戰後数年間は我々お互いにインフレーシヨンのために悩んでおつた次第でございまして、各政党、各国体、国民、すべて悪性インフレの徹底的停止あるいは中間安定というような
言葉を使
つて、何とかしてあの悪性インフレから免がれたいと、こう努力しておつた次第であります。ところが九
原則の完全な
実施によりまして、この九
原則というのはあながち
政府ばかりではございません。野党も与党も国民も挙げてひたすら乏しきに耐えて、九
原則を
実施して行くことによ
つて中間安定でなくて、我々といたしましては終局的の安定があるとこう思
つております。積極的な産業復興と安定という
基礎の下に始めたのである。これから大いに生産力の発展の
方面に、海外貿易を始め国内産業すべて努力しなければならないのでありますが、ともかく今回作らんとする均衡
予算も前回の均衡
予算と同様でありまして、できるだけ冗費を節約いたしまして、財政インフレが起きないように、こういう見地から
予算を組んでおります。尤も所要経費はどしどし計上いたしております。前には産業インフレ、財政インフレと相待
つてインフレの波が激化しておつた次第でございますが、今や折角停止したのでございますから、この際暫く我慢していただきたい。もとより
総理大臣は一番
公務員の
給与のよくないことを心配しております。それで伝えられるような実はボーナスというようなことも
考えたらどうかというようなこともありましたが、今淺井君の所管されるところの
人事関係の
給与制度から至難であるということが分
つておりますが、尚あえて言われたというのは
公務員の
給与がよくないから何とかいたしたいという心持から、ボーナスといつたような制度を
考えたらどうかという
言葉で現われたんだとわれわれは
考えておる次第でございまして、即ち昭和五年乃至九年に比べますと、やはり実質賃金は低いのでございます。少くとも昭和五年乃至九年に比べても相当低いのでありますから、我々は高賃金を拂
つているとは決して思つた事はございません。併しながら今のところ終戰後といたしましては、六千三百七円というのが実質賃金で一番高いところへ来ております。もとより
木下さんのお経験の深い
一般産業労働者の賃金に比べますと、二千円くらいの差はあります。その点甚だお気の毒に思いますがとにかく今回作るべき総合均衡
予算は六千三百七円を
基礎にいたしております。本日はこの明年度の
一般予算についての審理を閣議でいたす次第でございますが、このペースが崩れますと、今度は総合均衡
予算が崩れ、即ち健全財政が崩れる、そうなると段々他の方にも響いて来て、結局端的に申しますと、物価と賃金の悪循環ということになりますので、やはり財政の專門家や経放の專門家で、もまだインフレが止つたわけではないと言う人すらあるわけでありますが、我々はまあインフレは安定したと、こういう
考えでおります。そこで今暫く我慢して頂けば必ず春遠からずである。こういうふうに
考えております。尤も宿舎の
関係とか、或いは超過勤務については、大体例えば十時間超過勤務がありましても、
予算がないから三時間しか超過勤務手当を出していないというようなこともございます。これではいかんから、正直に勤務しただけ
政府としては拂うべきである。又諸手当の充実を期すとかによ
つて、そうしますと、先ず懐に入る
関係からいたしますと、実質賃金は相当上ることになりやしないか、又交通
関係で今相当悩んでおります。賃金に比べますと交通費は非常に高うございますから、定期パスなども安くすることを
考えておりますし、又幾分でも交通費を
支給できるならばというので、折角財政当局において
給与とは別に交通費を幾分
支給するというようなことも
考えておる次第でございます。それから又かたがた減税というようなことも大いにやるつもりでございますし、取引高税が廃止されますと、物価の
方面も幾分楽にな
つて来るのではないかと思います。そういうようなあらゆる総件的の施策をなしまして、実質賃金の確保或いは多外の向上に努めまして、官公吏諸君の生活難を打開して行く、こう
考えておる次第でございます。