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淺井一郎君 富山県、石川県班は私から御
報告いたします。
決算委員会は院議を経て、七月十八日から二十四日までの間に、富山県、石川県及び福井県下における公共事業費中災害復旧費の
処理状況並びに復旧事業の実地を
調査した。
調査を行
つた委員は、浅井、
竹中両議員である。尚
波江野專門員及び
建設省津田技官がこれに参加した。
〔
報告内容は
イメージ参照〕している。尚この外に工事は進行しており、従
つて更に未拂金は増加しておるものと思われる。
四、常願寺川の復旧工事の現況
(
別紙富山県I
II参照)
復旧工事の現状の一部を
視察した本川は、相当の急流であり、又土砂石の流出の甚だしいのが特徴であ
つて、再議もこれに起因することが多い。現在各所で復旧工事を
施行しているが、川底を下げることが災害防止に最も効果的であるという見地から、常磐橋の上流地域に二十三年度予算で二台、二十四年度予算で一台の「タワー・エキスカヴエーター」を設置しつつあることが特に目立つ
施設であ
つて、その一台は
完成の域に達している。一台の土石採取
能力は年間二十万立米であ
つて、三台で年間六十万立米となり、常願寺川の土石流出量は年間百万立米と推定されるので、本
施設完成の上は災害防止に著しい効果を挙げ得ることと予想している。本
施設の
建設費は一台三千万円の予算である。
五、黒部川の復旧工事の現況
別紙富山県IVを参照せられたい。
六、庄川の復旧工事の現況
本川の出水は三十分位で高岡市を侵入せしむるものであ
つて、目下主として堤防を高くする工事を進めている。復旧工事の現況については、
別紙富山県Vを参照せられたい。
七、小矢部川の復旧工事の現況
別紙富山県VIを参照せられたい。
八、災害復旧費補助その他に関する県の意見及び希望
(1)復旧工事は短期間に終了することが必要である。
復旧が長引くと、その間に、更に災害を蒙り、支出した経費が無駄となることがあり、場合によ
つては、更に大きな災害を蒙むるようなこともある。大体三箇年計画を目標としており、政府の
方針も同様であるが、国庫の都合により、最近は国庫補助が三年以上に亘ることが多いから、三箇年計画の確保を希望する。
(2)国庫補助金の交付を急がれたい。
補助金の交付の遅くなることは、工事の進捗上甚だしい支障を来たすのみならず、県の立替支拂額も多額にな
つて、県の財政上にも影響が大きく、更に又未支拂金が巨額に達して業者の苦痛も甚だしい。
(3)起債の枠を拡張されたい。
公共事業に対する起債の枠が今年にな
つて縮小されたことは災害復旧工事に大きな支障を来たしている。折角国庫補助が
決定しても、充分の起債ができないために、県の財政に余裕がなければ県の増税を図らねばならんが、本県においては県財政の余裕もなく、増税の余地も少いので、国の予算を返上するの余議ないことになる虞れがあ
つて、災害復旧が実行できないことになる。
(4)災害予防に一段の考慮を拂われたい。
戰時中の山林濫伐の実情に鑑み、災害を生ずる危険性が非常に多いから、災害を生じてからその復旧の策を講ずるは本末顛倒であ
つて、むしろこの際河川維持費の増加等災害予防工事に主力を注ぐべきである。
(5)食糧増産のための開墾計画の再検討を要望する。
開墾計画中には、山の中腹以上の個所や開墾の目的に副わないものがある。富山県としては、災害防止のため、開墾指示の辞退を農林省に申出している。日本の現状では、未開墾地域中には開墾の価値のあるものは少く、寧ろ
土地改良によ
つて食糧増産を図るべきである。
第二章 石川県
調査班は二十一日、石川県庁に於て柴野県知事、土井副知事、山岡土木部長並びに
県関係官及び八尾
建設省金澤工業
事務所長等から、県下における災害及び復旧工事の
概要について
説明を聴取した後、手取川復旧工事の現状の一部を
視察し、更に大聖寺町において三森大聖寺町長及び村田石川県江沼地方
事務所長から、震災に関する
説明を聴取した。
一、震災及び暴風雨による土木
関係の被害
状況(石川県I参照)
昭和二十三年六月の北陸震災による被害は、
建設省
関係二百五十七ヶ所八千三百万円、
運輸省関係九ヶ所二千七百万円であるが、更に同年七月及び十月の暴風豪雨による被害を合算すると、
建設省
関係約一億二千万円に達している。これに対する国庫補助は、
昭和二十四年第二、四半期迄に三千百万円である。
二、北陸震災による建築物の被害並びに復旧
状況北陸震災による
建物の被害は、機業中心地の大聖寺町が最も大であるが、損害比率の最も大であつたのは、小漁村塩屋村であ
つて、全村壊滅の惨害を蒙つた。この外、片山津温泉地は埋立地の
関係上、各旅館
建物が殆んど半壊と
なつた。
建物被害
状況を数字で示せば、住家の全壊約八百戸、半壊約三千八百戸、非住家全壊約八百棟、半壊約千七百棟であ
つて、現在迄に右被害の約八〇%が復旧した。なおこれが復旧対策として
施設したものは、事業費で約三千五百万円であり、そのうち国庫補助金は約千五百万円である。
なお大聖寺町及塩屋村の震災復興に伴う都市計画事業として、三ヶ年計画及び六千四百万円の予定をも
つて進行しているが、今日迄の国庫補助金は、二千七百万円である。国庫補助率は二十三年度は三分の二であつたが、二十四年度において二分の一に減額されたので、地元負担の増加、起債の至難と相俟
つて、本事業の前途については、困難を感じている。
三、災害復旧、其の他に関する県の意見及び希望(
別紙石川県I参照)
(1)手取川改修促進を要望する。
手取川は、
昭和九年の大水害によ
つて、甚大な災害を蒙り、政府は
昭和九年度から
昭和二十年度に至る十二ヶ年継続事業として、総工費四百九十五万円を計上して改修を行うことと
なつたが、
終戰前後国庫財政の都合と
経済事情の変動により事業の進捗が遅々として進んでいないので、下流河床の上昇を来し、洪水氾濫の脅威が加は
つている。事業費の増額と工事の促進等、既定計画の全面的促進を要望する。
なお、河口導流堤工事、辰口橋改築工事、砂防事業についても災害防止の見地から促進を要望する。
(2)震災地大聖寺町、塩屋村の都市計画事業に対する国庫補助率の復旧を要望する。
(3)北陸震災復旧に対する国庫補助金の増額を要望する。
(4)国庫補助金に関する手続の簡素化が望ましい。
三千万円の国庫補助金に関し、五百四十四回の手続を要した実例がある。その間、度々出張を要、しその経費、手数等軽視出来ない。
(5)会計検査院の実地検査に関し一考を望む。
実地検査は、各係毎に出張して行はれるので、年間数回の実地検査があり、約八十円の補助金に関して実地検査が行われた実例がある。その都度、資料作成等に多大の時間と労力を要する。成るべく各係が合同して実地検査の回数を減ぜられるよう要望する。
(6)予算費目間の流用を許されたい。
会計法の改正によ
つて、予算費目間の流用が従来に比し窮屈に
なつたので、工事
施行上困難を感ずることが多い。再考を望む。
第三章 福井県
調査班は、二十二日福井県庁に於て、小幡県知事、北副県知事、安立出納長、小林土木部長、荒木農地部長並びに
県関係官及び淺田
建設省福井工事
事務所長等から県下における災害及び復旧工事の
概要について
説明を聴取した後、同日午後及び二十三日に亘
つて九頭龍川流域其の他災害地の現状を
視察した。(
別紙福井県I参照)
一、
昭和二十三年災害土木事業の
概要
(
別紙福井県
II参照)
(1)災害の
概要
昭和二十三年災害の特異性は、地震と水害が併発したことであり、地震の
範囲は狭小であつたが、その激烈の度は関東、濃美地震を遙かに凌ぐものといはれ、その余燼の納まらぬ一ヶ月後に、大水害を受けたものである。
即ち、地震による被害は人畜を始め、あらゆる地上
物件に及び、又地盤に隆起、沈下等の変動を生じて、水防
施設が脆弱化された後に来襲した洪水は、福井市を始め越前平野を濁水の海に化せしめたものである。
(2)復旧の
状況
戰災の痛手がまだ消えやらぬとき、この震水災を一挙に受けた本県の打撃は極めて大きかつたが、
関係各
方面の絶大な援助と県民の努力によ
つて予想以上の復興を遂げた。併しこれは民間の建築面の復興であ
つて、国庫補助に依存する土木の復興は漸く四〇%に過ぎない。
即ち、
昭和二十三年度に下附された補助に基く事業量は、約四億円であるが、応急工事、地建委託工事に約三億一千三百万円を使
つておるので、残りの約八千七百万円で道路、橋梁、河川砂防、港湾の復旧を図らねばならない窮状に陥つたので、県は資金の借入等の手段を講じて緊急箇所の復旧を図
つている、今日迄に起工した支拂義務発生額は、約八億五千二百万に達しているが、二十四年第二、四半期迄の支拂
済額は五億七千七百余万円(内、国庫補助金は約三億八千五百万円)であ
つて、差引二億七千四百余万円の支拂不足とな
つておる。
更に、本年度の今後の緊急起工額は、約二億六千六百万円の計画を以て、その実現を期しているが、国庫補助の大幅の削減で、復旧事業に一大暗影を投じている。なお二十五年度以降の
施行額は、約九億八百万円と予定している(註以上復旧費の総額は二十億二千五百余万円となる。)
(3)
結論
公共事業費の大幅な圧縮が災害復旧に致命的打撃を与えていることは全国的ではあるが、地震と水害とを併せて蒙つた本県に対し、他県の水害と同等に見做して、同じ比率を以て補助せられることは特に苦痛が甚だしい。地震はその
範囲内の地盤に対して全面的に陥没、隆起等の変動を与えるため、その復旧は一挙にこれを行はねば効果を期待し得ない。
二、耕地
関係災害復旧事業の
概要
(
別紙福井県I
II参照)
(1)被害
状況
地震による被害総額三十二億一千百万円、水害による被害総額約八億二千三百万円、合計四十億三千四百余万円である。これに対する農林省の査定は、一応、震災
関係二十二億二千五百余万円、水災
関係三百余万円、合計二十二億二千八百余万円である。
(2)復旧
状況
二十三年度において、国庫補助金の交付を受けて整理済のものを金額で示せば、震災
関係においては約四億一千六百万円、水災
関係においては百七十余万円であるが、この外に両者を通じて三億六千余万円が
施行済であ
つて、この分に対しては借入金等によ
つて支拂を了したものである。
(3)今後の計画
二十四年第二、四半期以降の予算は未定であるが、県としては、一応約十八億一千万円の実施を予定している。
(4)耕地復旧について
耕地復旧については、二十四年度以降国庫補助打切と
なつたが、前記被害総額四十億三千四百余万円中、耕地被害額は、震災、水害を併せて約十五億八百万円であり二十三年迄に完了したものは、約五千六百万円であるから、今後耕地復旧に要する経費は、約十四億五千三百万円となる。
三、九頭龍川復旧計画要領
(
別紙福井県
IV参照)
復旧工事費は、二十三年七月に取敢えず、福井委託工事として約九億二千万円を以て、全体計画予算が
決定されたが、同年十一月直轄災害工事に変更された。この間委託工事として約二億円を支出、竣工している。直轄災害工事としては、県委託工事に継続して、工費七億六千万円を以て
施行することと
なつた。
本復旧工事は、一日も遅延を許さぬ緊急工事であるので、特に二十三年度以降三ヶ年間に
完成の予定である。
四、災害復旧その他に関する県の意見及び希望
(1)本県の災害土木事業の復旧については、他に優先せられたい。
地震によ
つて、地盤に大変動を与えているから、復旧工事は一挙にこれを行わないと、効果が期待出来ず、時期出水には全面的に被害を生ずるから、これが復旧には特に重点を置いて、他に優先させる必要がある。
(2)国庫補助金の増加を要望する。又補助金の交付を急がれたい。
復旧工事は極めて急を要するので、国庫補助金を予定して工事を
施行しているが、国庫補助金の額が少く、又補助金の交付が遅延するので見越工事量が多くなり、従
つて借入金等の手段を講じて支拂を行
つているが、尚支拂遅延の額が多額に上
つている。その為、工事請負者の苦境も甚だしく、又復旧にも支障を来す。
(3)国庫補助以外の農家負担に対しては、長期低利資金の融通を要望する。
(4)二十四年度から国庫補助打切と
なつた耕地復旧に対しては、本県の非常な災害を認めて特に補助復活を希望する。
(5)地震とを水害と併せて蒙つた本県に対しては、特別に補助の増加を要望する。
第四章 結 言
本
調査の結果、考慮を要するものと感じた点を綜合すれば、次の
通りである。
一、国庫補助金に関する件。
(1)災害復旧に対する国庫補助金については、事業計画に対する安本の認証、補助金の
指令、補助金の概算拂、補助金の
精算拂等の各段階があるが、各段階の手続が遅れがちであるから、その迅速化を図るべきである。これ等が遅れることは、或いは工事の
施行に支障を来し、又は、支拂の遅延を来して、業者にも苦痛を与へ、或いは又、県の財政上にも種々の困難を与へることとなる。
(2)補助金の認証は、少くとも年二期程度に改める必要がある。
現在毎四半期ごとに区分して認証が行われ、従
つて補助金の概算拂、
精算拂も毎四半期に区分されているが、災害復旧工事は事実上数年に亘る継続事業であり、又工事の性質上、短期間に区分することは、事業の遂行上無理があり、また支障がある。
(3)補助金の手続につき簡易化を図る必要がある。
前述の
通り、毎四半期に区分して事業の認証申請、補助金の申請、補助概算拂の認証手続、補助
精算拂の認証手続が必要であり、本年九月中旬迄は、概算拂、
精算拂について、小切手認証官の認証が必要であ
つて、すでに相当の手数と思われるが、更にこれ以外に種々の手続を要するものと思われ、その結果、無駄な時間、費用等を要することになるから、その手続の簡易化を図るべきである。
(4)公共事業費から支出する災害復旧国庫補助金については、年度繰越を認むべきである。
公共事業費の性質上、その年度繰越は認められないというが、災害復旧が可成短期間に
完成を要するものであり、年度繰越を認めな