○鈴木国務
大臣 先ほど
決議案の
趣旨の弁明につきまして、
春日委員よりいろいろ現場の
実情、その他相当貴重な事実をもあげての御説明を承りました。その中にはわれわれと考えの違
つたところもあり、また傾聴に値する現実をお知らせいただいたという面もありますが、これに対しまして、この際
政府として、これはしばしば本
会議なり、各種
委員会なりで申し上げてきたことが大部分でありますけれ
ども、もう一度ここで総合的にそれらのこと、及び今日まで申し上げなか
つたことをも加えまして、
政府の
失業対策はどういうふうな計画で、そういうふうに進んでおるかということをまず一応申し上げたいと存じます。
失業対策の根本としては、しばしば申し上げた通りに、
国民経済の中で
経済の再建が進んで、そうして真の意味における雇用の増加がもたらされ、ここに
失業者が安定的に吸收されるということにあることは申すまでもありません。従
つて対策の根本は、あくまでも
政府の
経済政策の安定、再建の
方向への推進にまたなければならないのであります。この考え方につきましては、先ほど拝聴してお
つた際、
春日委員からも、確かにそういうふうな意味において、諸
経済政策の急速なる充実と、この振興を云々という御指摘がありましたが、私
どもも根本的な考え方としてま
つたく同感でございます。この面から、
国民経済の中から生ずるところの雇用量というものが、一体どれくらいあるか、これがまず第一の問題であります。昭和二十四年度にはそれが四十万あるであろう、これは春の国会で私
どもはそう説明申し上げて参りました。それから二十五年度には同じ意味において八十万と計算されております。これは安本、大蔵省、通産省等と打ち合せて、十分の検討を経た
数字であります。昭和二十四年度の四月以来、今日に至るまでの
実情に照らし合せてみますときに、この二十四年度内の雇用量四十万という
数字は、十分達成し得られると確信し得るような推移をたど
つておるものと、私
どもは見ておるのでります。しかしこれは
失業者と
就業者の数の差引を言
つておるのではなくして、
失業者の
数字の推移と全然離れて、別に新たに生ずる雇用の計算だけをしたものであることは、申すまでもないのであります。
第二に有力な雇用増加の基盤として今日考えられることは、見返り資金の散布によるところの雇用の増加であります。この面から産まれるところの雇用量の増加は、見返り資金の散布の時間的関係その他について、いろいろの御批評もありましたが、二十四年度の下半期において十五万人前後、二十五年度にはさらにその上に相当の量の増加があるものと見られております。
第三には、以上二つの要件によ
つて生ずるところの新しい雇用に比べては、やや暫定的の性質のものでありますが、しかし相当の安定性を持つところの雇用増加の基盤は、
公共事業であります。二十四年度下半期における
公共事業関係によるところの新規雇用量の増加は十三万五千ないし十八万五千であり、そのうち補正
予算の
公共事業費の追加によ
つて生ずるものが、六万ないし十一万、
公共事業への
失業者吸収力を引上げることによ
つて生ずる雇用量の増加が七万五千、それらを合せてただいまの
数字になるのであります。この計算の基礎方式等につきましては、必要がありましたならば、別の機会に御説明申し上げていいと思います。さらにまた二十五年度において、同じ計算で
公共事業費九百六十億によ
つて百万の雇用が期待されております。但しこのうち二十五年度に純粋に増加するものは五十万であります。これは二十四年度すでに五百億円の
公共事業で、五十万の雇用が実存しておるわけだからであります。
以上のような三つの要因によ
つて生ずる雇用の増加は、安定的もしくは相当安定的なものであ
つて、この三つの
わく内に
失業者を全部吸収することができましたならば、
失業問題は大体解消するわけでありますけれ
ども、そういうふうに一挙に根本的に解決することはなかなかできるものではく、特に今年度のごとく諸種の悪条件が累積しておるところの、
失業者発生の最もはげしいときにおきましては、一層そうなのであります。この段階に処するためには、どこの国の例に見ましてもそうであるがごとく、段階的な、緊急的な
対策が迅速に行われなければならないのであ
つて、この緊急
失業対策として第一に取上げられますのは、
失業保険制度の
適用であります。幸いわが国の
失業保険制度の内容は、この難局に十分耐え得るだけのものを持
つておるのでありまして、二十四年度下半期において、五十三万人の保険給付をなし得る準備を整えてあります。その内容は
一般失業保険において四十万人、日雇い
失業保険において十三万人であります。同時にこれらの
予算的
措置をも講じてあります。補正
予算において八億五千万円の
失業保険
政府負担金を計上したのはこれがためであります。これらを当初
予算と合せると、二十四年度分は約二十九億円の
政府負担となりまするし、さらに二十五年度においても同様五十三万人の給付が計画され、
予算におきましても
失業保険の国庫
負担金四十三億円が計上されております。
第二の緊急
対策は、いわゆるしばしば問題となるところの緊急
失業対策事業であります。われわれの緊急
失業対策事業に対する考え方は、初めにも申し上げましたように、根本施策の方こそ
失業対策の中軸をなすものであり、いわゆる緊急
失業対策事業は、これらの根本的な諸施策をも
つてしても応じ切れない最後の方策として、
失業保険と並んで応急的に行われるところのものである、こういうふうに考えております。それではこの事業の内容がどう変化しているかと申しますと、二十四年度当初
予算においては、御承知のように
予算が八億八百万円でありました。そうして一日の就労者は約二万人であ
つたのでありますが、下半期に入るとともに、
失業の情勢とにらみ合せまして、繰上げ利用を決心し、総司令部の承認を経まして、本年十二月までにこの八億八百万円は全部使うことにな
つております。これによ
つて雇用量は第三・四半期の当初において約三万人に引上げられ、さらに十一月からは約四万人に増加しております。従
つて補正
予算においては新たに八億五千万円を計上して、これを一—三月の第四・四半期において使用することといたしまして、総数八万二、三千人の人人を救済していけるということにな
つております。さらに二十五年度には、この経費は四十億円計上されておりますから、十万人前後の吸収力があるということになるのであります。
最後に、さらにもう一つの吸収力は、これは一時的のものでありますが職業補導事業であります。現在の補導所は三百五箇所、明年度においては三十五箇所増設が計画され、
予算の裏づけもできております。この事業は
労働力の配置転換の上からも、今後最も力を入れたいと考えておるわけであります。以上申しましたような全部の施策を融合したものが
失業対策の骨格なのであります。
申すまでもなく、これらの施策の中には根本策の第一、すなわち
国民経済の
わく内に生ずる雇用力の増のごとき、また第二の見返り資金の増によ
つて生ずるもののごとき、
失業の最終的安定吸収とい
つた性格を持つものもあり、また
失業保険の保険給付期が終了するとともに、相当の者が新たな
失業者として再出現するものもあり、
公共事業のようにこの二つの中間的な性格を持
つているものもあるわけでございますが、最初に申し上げましたごとく、根本施策で一挙に
失業者を安定吸収するがごときは、こういう際におきましては、いずれの国の実例に見ましても、至難のことだと思うのであります。つまり根本施策を推進しつつ、緊急的方法による吸収者の数並びに新たに生じてくるところの
失業者の数を減少して
行つて、そして漸次安定雇用の
わく内に吸収して行く、これが最も着実にして実施し得るところの方法であり、この線に沿
つての計画と
予算的裏づけとは、一応できておるものと確信しておるのであります。これらを運用して行く中核となる行政機関は
職業安定機関でありまして、これについての経費なり人員なりの点について、この危機を乗り切るのに不足しておるのではないかという御意見が、過去の国会からしばしばありました。その結果もありますけれ
ども、私
どもも
実情にかんがみまして、定員法をくずすのではございませんが、各方面において、たとえば統制
経済が廃止されて行くに従
つて生ずるところの官庁の定員の余りというふうなものを、こちらにも
つて来るという方法をとりまして、二十五年度におきましては一千八百八十人の職業補導関係の職員をふやすことに決定し、
予算の裏づけも済んでおります。このうち約一千百人は十二月から実施するという方針をと
つております。それから経費の点でありますけれ
ども、経費はこういう際大きいほどいいのでありますけれ
ども、しかし
予算とにらみ合せまして、それとの関係を考慮しなければならない。そういう関係を考慮いたしました結果、明年度
予算におけるたとえば超過勤務手当というふうなものは、本年度において四千万円であ
つたものを、職業安定行政の性格と重要性にかんがみまして、一億一千四百万円に増加しております。旅費も七千万円から一億円に増加しております。通信費も三千五百万円から四千八百万円に増加し、これらを総計して大体一億二千万円程度の増加で、昨年度に比べてはこれらの経費が倍ということにな
つております。これでもちろん完璧だとは考えておりません。
失業して職業がなくて困
つておられる方々のことを考えれば、この程度の努力をも
つてして十分であるということは決して言えませんけれ
ども、
政府は現在の条件の許す限りにおきまして、この線に沿
つて十分の努力はして参りましたし、今後もや
つて参りますことだけは明確に申し上げ得ると思うのでございます。なおこれらは計画でございまして、それを運営して行く上において、
実情に応じての誠意ある
政府の
仕事はもちろん必要であり、これらの点につきましては、先ほど
春日議員から御指摘になりましたような
実情をも、とるべきものはと
つて、謙虚な気持で対処して行きたい、これが私
どもの考えでございます。