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1949-11-25 第6回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十五日(金曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長代理理事 三浦寅之助君    理事 大橋 武夫君 理事 青野 武一君    理事 小川 半次君 理事 春日 正一君    理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    佐藤 親弘君       塚原 俊郎君    福田 喜東君       船越  弘君    松野 頼三君       前田 種男君    聽濤 克巳君  出席国務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         (労政局長)         労働事務官   賀來才二郎君         (労働基準局         長)         労働事務官   寺本 廣作君         (職業安定局         長)         労働事務官   齋藤 邦吉君  委員外出席者         経済安定事務官 石井 通則君         専  門  員 濱口金一郎君         専  門  員 横大路俊一君 十一月二十二日  委員小淵光平君及び竹山祐太郎辞任につき、  その補欠として平澤長吉君及び井出一太郎君が  議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員篠田弘作君及び金原舜二君辞任につき、  その補欠として林讓治君及び本多市郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 十一月二十四日  失業対策促進に関する決議案野坂參三君外三  十五名提出、決議第四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働事情に関する件     —————————————
  2. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 ただいまより会議を開きます。  本日は委員長病気のため私が委員長の職務を行います。労働事情に関する件を議題といたしまして審査に入ります。前田委員
  3. 前田種男

    前田(種)委員 労働大臣が見えませんので、政府委員にそれぞれ簡単に質問いたしますから、答弁は要領よく要点だけお願いたしたいと思います。まず基準局長にお尋ねいたしますが、この春の国会から今日まで、日本経済状態は非常に悪くなつた、そのために賃金の遅欠配相当深刻なものがあるのであります。特に最近では、会社側が首を切ると相当退職手当を出さなければならないので、賃金支払いを引延ばす。そうして本人が自発的にたまりかねてやめて行くと、みずからの退社だというので、わずかの退職手当でやめさせられるというような、深刻なものが全国に蔓延いたしまして、非常に労働階級は板ばさみになつて、せめても解職してくれるなら相当退職手当がもらえるのに、それもしない。この点に対して労働省はどういう対策を立てておられるか、あわせて労働基準法完全施行に関して、相当違反行為が行なわれておると私は見ております。幼年工の問題、あるいは長時間労働の問題、深夜業の問題等々についても、相当基準法を無視した行為が行われております。しかも今のような経済事情のもとにおいては、それが当然かのように印象づけられております。それともう一つ出先基準監督官素行、綱紀の問題等についても、相当忌まわしい問題が全国各地にあるように言われております。末端で直接民間企業監督をやつておる出先監督官行為それ自体に、もつと粛正されなければならないという点が相当ありまして、民間企業では逆に非常に迷惑になつておる。そうかといつて、りくつを言つたり、あるいはきげんをそこねるというようなことになると、それの逆があるということで、非常に苦しい状態に置かれておる問題もありますから、私はもつとこまかく具体的に質問したいと思いますが、そうした三点に関する労働省見解なり対策、あるいは今後の措置等に対してお聞きしたいと思います。
  4. 寺本廣作

    寺本政府委員 最初お尋ねの、賃金の遅欠配に対する労働省対策いかんという問題でありますが、これにつきましては本年の三月、検事総長労働大臣から声明が発せられまして、賃金一定期日に全額支払わないものは、基準法第二十四条違反として処理するという声明が出されたのであります。これに基きまして私の方といたしましては、地方に対してこの賃金遅払い不払い取締りを厳重に励行するように通牒をいたしております。それ以来八月十五日現在まで、私ども出先機関であります労働基準監督署に持ち込まれた事件——これは賃金遅払い不払いでありますが、五千五百九十件、金額にいたしまして三十億五千百六十七万九千二百二十八円という額になつております。こういう事件の持ち込まれました場合には、基準監督署では起業の実態を調査いたしまして、それで税金を除いて、ほかの債権に優先して、賃金支払うようにという勧告を行つております。ほかの債権に優先して賃金を払うようにということは、経営の上からいうと、銀行の利子を払うとか、その他の債務を支払うというように、いろいろ経営上の問題があるわけでありまして、税金をほかの債権に優先して支払うということには、若干経営者側から意見があるようであります。しかし法律建前といたしまして、労働基準法においては、賃金不払いは刑罰をもつて支払を要求しておると解釈されておるので、ほかの債権に優先して払わない場合には、基準法第二十四条違反を構成するという建前をとつて、ほかの債権に優先して支払うように勧奨いたしております。こういう勧奨によつて大体片づく事件相当あるのでありまして、八月十五日現在では五千五百九十件のうち、三千九百五十五件、金額にいたしまして二十六億五千五百十一万七千五百二十七円というものが片づいております。もつとも毎月二度図つ報告をとつておるのでありますが、月の半ばになりますと、事件解決して未払い金額がずつと減りますが、月末になりますと俸給支払い日が參りますので、ぐつと未払い金額がふえるという統計になつております。七月末では、先日も申しましたが、二十八億のうち二十一億が片づいて、約七億が残つてつたのでありますが、八月十五日現在では三億九千六百万が未払いのものとして残つております。事件といたしましては千六百三十五件であります。こういうふうに基準監督官の活動によつて解決する事件相当あるのであります。それによりましても解決しない、特に監督官が経理の内容を調べました場合に、現金があつて支払つていない、ないしは賃金債権返済期になつておるにもかかわらず、ほかの債権を優先して払つたために、賃金遅払いのまま続いておるというような事件で、経営者側法律遵守の誠意なきものと認められたものは、これを検事局に送検いたしておりまして、本年三月以降今日まで検事局に送つた事件は、百四十三件に達しておるのでございます。こういうふうにいたしまして、賃金不払い遅払い事件の当面の対策、当面の取締りは、監督署として全力をあげて行つておるのでありますが、根本対策は先日も申しましたように、販売関係の不振であるとか、金融がつかないとかいうような、経営の他の面から来る原因が非常に多いのでありますので、その方面のことにつきましては、この賃金遅払い状況各省に連絡いたしまして、各省の方々から促進をしてもらうという手続きをとつております。  なお基準法全般施行状況につきましては、法律施行以来監督官がだんだんなれて参りまして、月々相当能率を上げるようになつております。本年七月、八月行政整理をいたしましたので、その分につきましては、能率がその以後はいくらか落ちて参つておるのでありますが、その前の月、二十四年の七月までの統計によりますと、大体監督官月々延べ人員約千六百人前後が監督に出かけまして、事業場にいたしまして約三万六千、労働者にいたしまして二百万くらいの労働者の働いておる事業場をまわつて監督いたしておるような状況であります。それに従いまして違反件数相当に出ております。違反件数のうち労働時間や、休日関係賃金不払い解雇予告の問題など、実体的な問題につきましては、それぞれ監督を加えて送検その他の手続をとつておるのでありまして、監督成績は逐次上昇をしつつある。かように考えております。  なお先日も申し上げました通り監督官が八月の行政整理以後、机上事務に忙殺されて、現場に出かけて行く日にちがずつと減つております。現在の制度で言いますと、月のうち半分以上は、現現に出かけて行つて工場を見まわつて違反を調べるという建前になつておりますが、行政整理以後の状況を見ますと、約一月のうち十日くらいしか現場に出かけられないような現状になつておりますので、机上事務をぐんと軽減して、現場に出かけることができるようにということで、先日も申し上げました通り、今般施行規則の許可、認可、届出、報告といつたような机上事務を大幅に整理いたしまして、監督官現場に出かけることができるように、そうして法律施行状況を巡視監督することができるようにいたしております。  なお監督官非行の問題につきましては、私どもときどきそういうことを耳にいたしますし、また非行が私どもの方の耳に入りました場合には、ただちに本省から人を派して実情を調べた上、それぞれ措置を加えております。昨年以来労災保険関係で、若干の府県で不祥事件が起りまして司法事件になりましたことは、非常に遺憾に思つております。歴史が浅く、労働基準法施行の際、大急ぎで監督官を各方面から人を集めました関係で、教養訓練その他が不十分であることを非常に遺憾に存じております。この点はだんだん人間の入れかえ、淘汰、そういうことを行いますと同時に、教養訓練を徹底して行かなければならぬと思つております。明年度予算におきましては、監督官研修所をつくりたいということで、大蔵省に要求いたしましたところ予算が認められましたので、監督官中央における研修制度を実施して行きたいと思つております。同時に中央監察官制度を設けまして、監督官の非違にわたる点を、部内で徹底的に調べ上げて取締つて参りたいと思つております。
  5. 前田種男

    前田(種)委員 今の答辞でさらにお開きしたいのですが、時間もありませんので——賃金の遅欠配の問題はある程度解決がついたというような御説明でございますが、さらに年末あるいは来春を迎えまして、今まで以上に深刻なものがあろうと私は予測します。そうして深刻な賃金の遅欠配に対して労働省ばかりでなく、政府全体としても最善努力をしてもらうように要求しておきます。  それから末端監督官素行等の問題は、教養訓練あるいは基準法施行日なお浅いというような点ももちろんあります。しかしそれ以外に、私は今日の国民生活実情公務員待遇の問題が、相当重要なウエートを占めておると見ておるのです。少くとも経済的に満足を与えるということは、日本の今日の現状においてはおぼつかないと思います。しかしながらそうかといつて、今日の公務員待遇実情から推して、なかなか生活が苦しいということはよくわかりますので、この点についてはまたほかの角度から論議を進めて行きたいと思いますが、当面の監督官庁でありますところ労働省といたしましては、所管の公務員のそうした問題等につきましては、微細の問題といえども監督的地位にある者に、要するに不品行の行為があつてはならぬということは言うまでもありませんから、最善努力をお願いしておきます。  労働大臣にお聞きしたい問題は、池田蔵相が何回も本会議で言つておりますが、今日の政府の施策から参りますところ減税の行き方で、国民生活の上においては、プラス、マイナスしてプラスになるということを言つております。はたして労働大臣は、具体的に明年度予算も予測した上において、今日の物価現状あるいは一般勤労大衆賃金状態公務員賃金ベースその他と関連いたしまして、減税を予想されておりますところ内容と比較して、プラスになるという見解を明確に示されるかどうか。私の見解から申し上げますならば、絶対にプラスにはならないという結論が出ますが、その点に対するところの労相としての見解を承つておきたいと思います。
  6. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 この問題は結局結論は、税金、それから一般物価、特に主食配給内容変化、それからやみ物価及びマル公物価から、自由物価に移つて行く過程に起きてくるところの、期待されるところ物価変化というごときは、われわれはある程度の下落を期待しておるのでありますが、そういつた意味消費物価下落、それから税の中でも勤労所得税というような直接的なもののほかに、大衆課税的な消費税的なもの、織物税とか、交通税とか、あるいは広い意味でタバコもそうでありましよう。そういつたようなものの値下り、もしくは減廃撤廃、そういつたことも全部統合したところ考え方のもとに、実質貸金がどういうふうな変化を受けるかという、結論をつけることになるのだろうと思います。これにつきましては、C・P・Iをつくる過程の、その前提となる経済各般にわたるところの現象を、労働者自身の手でもつて全部調べ上げて、そうして一つ一つの材料をつくり上げて行くという機能は従来も持つておりませんし、政府部内にも、それができる権能を持つたところの省なり局なりがたくさんあるのでありますから、そこにまかせていいと思つております。この場合最終的なものではありませんけれども経済安定本部がただいま前田委員が御指摘になりましたような角度から、最近各般の情勢でもつて計算したところのものが、来年の一月から三月に至るまでの一応の計算ができておるのであります。それから四月以降は、物価もさらに統制の撤廃とかいろいろの要素が加わつて来るでありましようし、同時に減税も、大蔵大臣が言います通り、今度の国会に出したところ減税を、さらに通常国会において、二十五年度以降はそれよりも相当大巾に減税を実行するという建前のもとに、再検討するのであつて、今度のは一月から三月までの暫定的の減税案であると、こう説明しておる通りでございます。それで一月から三月までで、今申しましたような角度で、どういうふうな変化が出て来るかという結論といたしまして、ここに非常に詳しいことを御説明する余裕はありませんし、また政府部内でも、細部にわたつては多少検討する必要があるかと思いますけれども、大体補給金を切つたことによつて、ある程度この間からの物価値上りが予想される。それと他方では間接税減税、それから公定価格及び自由物価を通じて家計上支出がある程度減つて行く。そういうふうなすべての要素を算定すると、三%くらいは負担軽減が見込まれるといつた一応の結論を今得ておるわけであります。これは先ほども申しましたように、労働省計算ではございません。労働省にはこういうものを計算するテーマはありませんから、経済安定本部計算であります。私どもとしては、同じ政府部内の権威ある筋がつくつたところ計算を信頼するのは当然でありまして、この見通しの上に実質賃金を、消極的に言えば維持充実し、積極的に言えば、あらゆる総合政策の力によつてさらに今後も引上げて行く。実質賃金はこの一、二年間、大体において上昇の線は辿つて来ておりますけれども、戦前に比べればなお相当低いのでありますから、でき得る限り引上げて行くという努力を今後も傾けて行く、こう考えております。なおあらかじめお断りしておきますが、ただいまの総合的な数字等は、経済安定本部が一応つくつたところ数字結論を、御質問がありましたから私から申し上げたのでありまして、これについては前提があるのであります。今予感される一月から三月までの暫定の間においてはそうなるという数字でありまするし、予想されないところ要素も今後加わつて来ることもあるでありましようし、四月以降は、おのずから別の計算のし直しということになるわけでございます。
  7. 前田種男

    前田(種)委員 今の大臣答弁は私は満足しません。しかし直接担当が安本なり大蔵省関係でありますから、労働大臣を責めることはむりかもわかりませんが、どうも政府のものの考え方は甘過ぎるのです。私は本年の下半期から来年にかけまして、民間賃金ベースはだんだん下り坂だと見ております。労働大臣はいくらか上昇する傾向だと言われますが、私は逆だと見ております。その反面に補給金の打切りその他から参りますところ値上り相当あります。それから減税相当できる、暫定でなくして明年の予算にはさらにそれ以上の減税ができるというような答弁でございますが、私はその減税がそう期待はできないという結論を持つております。私の調査によりますと——この一部は労働省調査にもよりますが、標準年昭和五年から昭和九年、昭和九年をとりますと、貸金べース六十四円七十四銭になつております。二十四年の七月は、民間において九千五百十二円十六銭ということになつておりますので、昭和九年に比べますと百四十六倍ということに一応なります。しかし実効物価指数を調べてみますと、昭和九年に比較いたしますと三百四十一倍ということになつて、この賃金との差というものは百九十五倍も少い率になつておるわけです。それでありますから、昭和九年を百といたしますと、本年は四三%に低下しておるわけです。そういたしますと、昭和九年を四三と見ますと、月給にいたしまして二十七円八十銭が昭和二十四年の賃金だということになります。それから今日減税されますところ税金を引きますと、二十三円六十六銭ということになります。補給金打切りによるところ物価値上り、それから米価が一一%値上りいたしますし、運賃が八割上る。それから電力料ガス料新聞代その他の値上りを見ますると、少くとも月給二十一円九十七銭、日給にいたしまして七十二銭ということになつて参ります。一体二十一円九十七銭で生活ができるかどうかという数字が出て来るわけです。もし昭和九年の六十四円七十四銭の賃金ベースをそのままの倍数で行きますと、本年の七月は二万六千六百八円八十四銭ということにならなければならぬわけです。もちろん二方六千六百八円八十四銭ということは、今の日本経済事情においては容易ではございませんが、少くともこれの半分にいたしましても一万三千何がしということになるわけです。賃金ベースが今日のような事情であつては、これで国民生活の最低が守れるかどうかという点は、守れないという結論に到達するわけです。ここに外国貿易その他の関係から、戦前同様に戦後においても、日本はソーシャル・ダンピングの傾向が顕著になつて来る。これが貿易再開、あるいは講和問題に影響するところは非常に大きいと私は考えます。少くともそうした低賃金のもとにおいて輸出産業が振興されるということは、今日の世界各国が許すはずはないと私は考えます。そういたしますと、結局は高賃金、高能率、そうしてりつぱな製品をつくるということに結論がならなければならぬと私は考えますが、こうした見解に対するところ労働大臣の所見を承つておきたいと思います。
  8. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 前田さん御自身の詳しい計算はただいま承りました。非常に詳しい数字を急速にあげれたから、はつきり全部頭の中に残つて、ここでどうこうという御批評を申し上げるほどわかつておりませんけれども、一応承りました。それから最後の方の御質問にありました全般的の経済の実力を上げて、そうして労働生産性の向上に資するような充実した賃金の問題も一歩々々築き上げて行かなければならないという考え方には、毛頭反対はありません。ただそのためにも、現段階的に幾つかの諸条件がある。たとえば一方において賃金原則があつて、昨年一昨年あたりのような形の、名目賃金引上げということはやり得ない。またそれがあるないにかかわらず、ほんとうの意味日本経済の再建をはかるためには、賃金の三原則が出たから出ないからという問題を別にいたしましても、日本経済が、ここにおいて本来のバランスのとれた形において、再建しなければならないところに来ておつたということも事実でありまして、これらの線を守つて行かなければならないと思います。企業努力によつて将来実質賃金が充実されるということにつきましては、われわれも極力そういたしたいのであります。ただ経済バランスを無視し、すでに出ている幾つかの絶対的な制約をも無視したところ賃金引上げというふうなことは、事実上の問題としてはできないのであつて、そういう諸制約及び諸条件のもとにおいての実質賃金の充実、引上げということに極力努力すべきだと思います。なお私が申し上げました安本数字等につきまして、前田さんの方でも非常に詳しいことをあげましたから、政府側の考えておる賃金の動きという点につきまして、私ども事務当局及びただいま私が申し上げましたあの安本調査内容につきまして、安本からも来ておりますから、もう少し詳細に誤解のないように発表していただきたいと思います。
  9. 前田種男

    前田(種)委員 安本からの説明は、あとで適当なときにお願いして、私は先に進みたいと思います。  端的に労働大臣にお聞きいたしますが、低賃金労働ということが、日本の今日の経済を建て直すものだという意見を立てる人もございます。要するに低賃金労働という、昔の日本の因襲にとらわれて、依然としてそうした観念でやらなければならぬという強い意見もありますが、労働大臣としてはその意見に対してどういう見解を持つておられるか、一応承つておきたいと思います。
  10. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 私自身、そういう考え方は成立たないと思つております。
  11. 前田種男

    前田(種)委員 さらに今日問題になつております公務員手当あるいは給与の問題でありますが、新聞の報ずるところによりますと、労働大臣は昨日の参議院予算委員会で、公務員に対して何らかの手当を考慮しなければならぬという答弁をしておられますが、この公務員手当に対して、どの程度のことを政府としては考慮せられておりますか。あわせて国鉄専売に今日調停委員会が持たれまして、最終的な委員会の案が発表されようとしておりますが、労働省として、どういう熱意とどういう見通しをもつて、この国鉄専売の問題を処理されようとしておられるか、この点に対する見解を承つておきたいと思います。
  12. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 昨日の参議院においての、どなたかに対するお答えはこうであつたと思います。この問題について何の努力もしていないのか、またしないのか、こういう御質問がありましたのに対して、われわれはいろいろな方法論を検討し、努力をいたしました。また現在でもいたしつつあります。こういうお答えをしただけでありまして、それ以上のお答えは、この問題の現状及び微妙な関係にかんがみまして、私からお答えいたしかねます。新聞の書き方がどうであつたかの問題は別として、そういうふうにお答えいたしたわけであります。  それから国鉄専売の問題、これは前田さんも御承知の通り調停委員会にしても、仲裁委員会にしても、完全に政府からは独立した機関で、独自の立場に立つて調停案なり仲裁案なりをつくるものであるということは、これは労働立法建前からいつて当然だと思います。だからこそ、この問題につきましては、私自身は、これは国鉄の方ですが、調停委員会の方にかかつていた間にも、これに対して何らの意見を、積極的にも消極的にも、発表いたしませんでした。発表しなかつたその意味は、あれは独立の機関である。それが調停案なり仲裁案なりを出して来たときに、それに対しては、まず国鉄当局が拒否、あるいは再折衝という問題もやるのであつて、その過程においても、政府はみだりにこれに関与すべきではないという立場をとつておるのでありまして、今の段階においても同様でございます。私どもといたしましては、何らかの形でもつて労使双方経営者側並び従業員諸君の側の努力によつて、円滑な解決がつくようにということは、切に念願しておるわけでありますけれども、こういう方法でやればいいとか、こういう方向はいけないとかいうことにつきましては、今に至つても厳として、絶対不干渉主義をとつておるのでありまして、これは事実その通りであります。それで国鉄専売等の問題も、不日仲裁案も出て来るだろうと期待される今の段階でありますので、依然としてこれに対して政府側の意図というようなことは、この段階においては申さないで、そうして独自な立場でもつて、妥当なる案に到達する雰囲気を持続することの方が、解決のためにいい、こう考えております。従つて会議員の御質問に対して、決して明確な答弁を拒否するわけではありませんけれども、今のような事情にかんがみまして、この点については、妥当円満な仲裁案の出ることを待つておるということでもつて、御了承願いたいと存じます。
  13. 前田種男

    前田(種)委員 私も仲裁機関なり、調停機関なりが、独自の権限で何ものにも拘束されずに、公正な案が出ることを望んでおります。またそれが政府の干渉によつて、曲げられるということがあつてはならないということを堅持しております。  ただ労働大臣に重ねて意見をお聞きしたい点は、そうした仲裁案なり調停案が出た場合に、そうした仲裁案なり調停案なりに対して、政府はその権威を重んじて善処するというだけの用意があるかどうか。それを一片の仲裁案調停案だというふうに軽く取扱うか、あるいはそうしたりつぱな仲裁案であり、調停案であるから、出て参りますところの案に対しては、十分その案を尊重し、善処する決意が政府としてはあるかどうか、という点を重ねてお聞きしておきます。  それから昨日参議院で言われたことに対する答弁でございますが、結局今日の公務員が、年末を越すか越さないかという問題が重要な問題になつて来ております。これが一つには賃金ベースの問題にからみ、一つには諸手当の問題にからんで来ております。これは毎年常に年末を控えて、押し迫つて国会の問題となるわけであります。これに対して新聞では、労相として何らかの考慮を払つて手当の問題は善処したいということを報じておりますが、重ねてこの点に対する労働大臣見解を承つておきたいと思います。
  14. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 仲裁案が出て来た場合に、これを単に一片の仲裁案として、軽く取扱うというふうなことはありません。しかしその意味は、仲裁案に必ず全的に、いかなる場合でも政府が従うということを申し上げておるのではないのでありまして、それが出て来たときに、諸般の関係、法規との関係国鉄の経理との関係等において可能なるものであるときには、それが実現する方向をとるでありましよう、そうでない場合には、これは実現の方向をとらない場合もあると思いますが、いずれにいたしましても、先ほどから申しますように、今最終の仕上げの段階に入つておるのでありますから、この点についてはあまり立ち入つたことを申し上げるのはどうかと思います。ただ通り一ぺんの簡単な取扱いなどはいたさず、慎重に誠意をもつて——たとえばこれを受入れる場合においても、あるいはこれを拒否せざるを得ない場合においても、政府としての見解を明らかにして、善処いたすということは申し上げますけれども、賛成か反対かというふうな問題は、これは案自体がまだ出て来ない、しかも今のような微妙な際には、もとより私も申し上げかねますので、御了承願いたいと思います。
  15. 前田種男

    前田(種)委員 今の問題をこれ以上聞くということは、むりかもしれませんが、私は、もしこの問題が決裂をした場合に及ぼす影響が、国内的にも重要な問題であるだけに、政府としても最善努力をしてもらいたい、こう考えるわけであります。そうでなければ、せつかくの独立機関として、仲裁、調停の機関から、権威ある結論が出たにもかかわらず、いろいろな理由を講じて拒否するということになりますと、企業の経営の面から行きましても、あるいは社会秩序の画から行きましても、あるいは今後の経済の再建という基本的な線から行きましても、相当重要な問題となりますから、そうした重要な問題になつてしまつてから対処するよりも、これを未然に防止するというのが、仲裁委員会調停委員会の本旨でありますので、その本旨を政府はよく認識されまして、最善努力をしていただくように私はお願いしておきます。これ以上労働大臣答弁を求めるということはむりでありますが、これは重要な問題でありますから、重ねてそういうふうに切にお願いを申し上げておきます。  それから先日政府側説明の中で、進駐軍関係の解雇者が本年度一ぱい、いわゆる来年の三月までに三万人出るということを労働省は発表しているのです。この三万人の進駐軍関係の解雇者が出るということに対して、政府は一体いかなる対策を立てておられるか。あるいはそうした三万人に対するところの失業対策をどういうふうに考慮されておられるのか。あるいは失業保険の関係等につきましては、進駐軍関係予算は計上されておりませんが、そうした問題に対してどういう善処をしようとされるのか。失業者が出れば、それは一般失業者と同様に、今補正予算として出されておりますところの範囲内において、おざなり的にまかなおうという態度か。そうした大量の失業者に対して、どういう方策を講じておられるか。その点に対して大臣の所信を承つておきたいと思います。
  16. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 失業問題はどの面から出て来るものも重要でありまして、どれを比較的力を抜いていいというような問題はないと思います。たとえば補給金を切つたがために、金属鉱山等の一部から失業される方たちがある程度出て来るとか、あるいはまた海外から引揚げて来られた方たちの中でもつて、仕事が見つからない方もあるとかいろいろあるのでありまして、政府といたしましては、その間に特に一方を軽くするとか——軽くというのは語弊がありますが、そういつた考えでなくして、全体の失業者に対する考え方でもつて対策を講じておるわけでございます。しかし同じ失業者にも、おのずから素質の関係、技能の関係、あるいは住宅等の関係もあるのでありますから、そういつた関係と結びついての、特殊の考慮はして行かなければならないと考えておりますが、ただいまの進駐軍の方たちの問題にいたしましても、他の一般失業対策と全然切り離して、進駐軍関係一つのわくをつくつてというふうな考え方には、ただいまのところ進んでおらないのでございます。全体の問題としてこれを取扱つて行きたい。それではどういうふうな構想と規模のもとに、失業対策が計画されているかという問題につきましては局長から説明してもらいます。
  17. 前田種男

    前田(種)委員 安定局長が見えましたので、局長にさらに今の点について具体的に答弁を願いたいと思いますことは、もちろん一般的失業対策として、政府が計画を立てられることは当然でございますが、心中軍関係政府の労務者でありますから、政府の責任において、この失業対策に対して善処しなければならぬと思います。先日年度末までにさらに三万人失業者を出すと言つておりますが、今日まででも、相当多数の失業者がいろいろな形において出て来ております。部隊の都合、あるいは編成がえ、あるいは民事部の廃止その他を勘案いたしますと、相当出ているわけです。さらに今日話題になつておりますところの講和会議問題等が考えられますと、進駐軍関係の労務者は、大量に失業するということが予測されるわけです。でありますから、特にそうした大量の失業者に対するところの失業手当の問題、あるいは失業対策の問題、それから失業保険法と進駐軍労務者との関係、さらに補正予参、明年度予算等において、どういう対策をもつて対処しようとされるかという点について、斎藤局長の答弁を願つておきたいと思います。
  18. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 進駐軍労務の問題につきましては、失業対策を実施する上にあたりましても、私どもは細心の注意を払つて参りたいと考えているわけでございます。そこで進駐軍労務に従事している方々には、肉体労働に従事している方もありますが、そのほかにデスクワークの方もありますので、私ども考え方といたしましては、その本人のそれぞれの能力に応じたような配置転換について、できるだけ努力して参りたいと考えております。これにつきましては、先ほど大臣からもあるいは話があつたと思いますが、民間の雇用の拡大を期待しながら、その民間雇用方面に健全な職場を見つけるように、できるだけあつせんをして参りたいと考えております。これが第一段でありますけれども、それだけではもちろんその時間的なずれにおきまして、多少の支障がありますので、補正予算におきまして、公共事業費が約百六億ほどふえております。その百六億において、約三十万以上の雇用がふえることに相なつております。さらにそうした場合でも救済することのできない困難な場合におきましては、御承知の緊急失業対策事業によりまして、この救済をして参りたいと考えております。なお失業対策事業につきましては、現在のところ大体十一月以降今日までにおいて、全国で日雇い的のあぶれ約四万人ほどを救済しております。補正予算八億五千万円が成立いたしますれば、これによつて約八万二、三千人程度の人々を救済することができるのでありまして、現在実施している対策事業の倍以上の人間になるということになつておりますので、そうした方面でできるだけこれが救済をはかりたいと思つております。なお進駐軍労務の中には、日雇い的な性格のものも全国的には相当ありますので、こうした方々に対しましては、御承知の日雇失業保険が十一月から実施されておりまして、これが一月から給付が始まることになりますので、日雇失業保険の円滑な運用と、失業対策事業、あるいはまた公共事業等の総合的な運営と相まちまして、できるだけこれが救済に努力をして参りたいと考えております。なお進駐軍労務の方々におかれましては、将来おのおの腕をつくられて、新しい職場に出発することも必要かと存じておりまして、職業補導事業につきましても、これにできるだけ入所をあつせんすることにいたし、これによつて職場の配置転換を円滑ならしめて行くようにいたしたいと考えております。
  19. 前田種男

    前田(種)委員 進駐軍関係退職手当は、一体どういうやり方をやつているかという点をお聞きしたいと思います。それから進駐軍関係は、軍の命令で仕事をしている関係上、ささいな失策のために、そのままあしたからお前はやめろというような点で、一般公務員民間企業で扱われないような例もあるわけです。こうして問題を勘案いたしますと、非常なみじめな状態に、進駐軍関係の労務者は置かれている。特に大量失業者が出るということが予想されておる今日の心中軍関係の労務者の心情を察するに、さらに暗い影がさしていると思うのであります。こういう暗い影に対して、政府としては何らかの明るい対策なり、そうした希望を持たせるという施策が私は必要だと思う。特に、これを直接使つておるのは特調でありましようけれども、そうした点に対して善処すベき役割は、あくまで労働省の所管だと考えます。労働省はほんとうにあたたかい熱意を持つて、そうした従業員に対しての策を考慮するという努力——かりに十六人の大臣の中で、労働大臣だけが閣議でがんばつて、その点を努力するということだけでも、そうした何十万という進駐軍関係の労務者に対しては、相当の希望を持たせることになると思いますので、そうすることが絶対に私は必要だと考えます。従つてもう一度その点に対する政府見解を承つておきたいと思います。
  20. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 前田さんのただいまの御意見に対しましては、つつしんで拝聴いたしておきます。いつ、どういうことという具体的な問題は、今即座に申し上げる段階ではないのでありますが、考え方においては、政府全体としてもそうでありましようし、労働大臣といたしましては、前田さんの御指摘の通り立場におるのであります。あらゆる機会にその線に沿つて、明るい気持を持つていただけるように努力をいたしますということを申し上げます。
  21. 前田種男

    前田(種)委員 この追加予算に日雇い労務者の予算相当計上されておりますことは、私も賛意を表します。しかし実際に使われております日雇い人夫の今日の実情は、あまりにも悲惨な状態であろうと私は考えます。かりに東京都内で二百三十円もらつて日雇い労務者が働くといたしましても、それから往復の電車賃が引かれますし、税金がとられます。さらに安定所から現場に行くための電車賃がいるし、雨に降られるとあぶれるということで、一箇月うちに一体何日働けるかというような実際の実情等を考えますと、はたして今日の日雇い人夫の日給が、妥当であるかどうかという点も再検討しなければならぬと私は考えます。さらに最近は、戦争未亡人が子供を負つて、日雇い人夫として安定所に朝早くからがんばつて、就職する人も相当あるわけです。中には小さな子供を背負つて働かなければ、食えないという人もございます。こうした人のためには、少くとも安定所の近くに無料の託児所を設けてやるとか、あるいはそうした戦争未亡人で働く意思の十分ある者は、何とかして働かしてやるという施設を考える必要もあると考えますので、こうした日雇い人夫の対策等について、労働省としては今までの予算、あるいは追加予算、妙年度の予算等もございますが、さらに再考を促したいと私は考えますので、その点に対する労働省見解を承つておきたいと思います。
  22. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 日雇い的の仕事をやつておられる方々に対する失業対策的な予算の裏づけ、あるいは計画というものは、決して十分でございますとは言い切れませんけれども、二十四年度の当初に比べると——あの当時は少な過ぎたのでありますから、これは比較の根底にはならぬじやないかとおつしやるかもしれませんが、とにかく年間を通じて八億八百万円であつたものが、補正予算におきましては四箇月で八億五千万円になつておる。そのほかに補正予算の公共事業の中の五億円ほどは、都会を中心に労働大臣が希望する時期、場所において建設省において失業対策を中心にしたところの公共事業——公共事業はみんな失業対策的の性格は持つておるのでありますが、特に直接的にそれを持つようにしてやつて行くという、予算の裏づけもできております。同時に二十五年度に引続きましては、ただいま申しました四箇月に八億五千万円という数がそりまま一年に引延ばされて——それよりやや多いのでありますが、四十億円が二十五年度予算には同じ意味で計上されておりますから、ことしの四月、五月に比べますと、その方面で約四倍の人たちを吸収して行くという準備が、来年の一月以降二十五年度の終りまではしてあるわけでございます。十一月、十二月等は、御承知のように二億円の第四四半期で使う分を、繰上げて使つてしまうことにいたしましたから、この点においても相当ふえておると思います。なお食後あらゆる機会に、この方面についての考慮を払いたいと思います。  それからもう一つは、今も局長が言いましたような日雇い労働者の失業保険の運営、これは今後お互いの努力によつて成果を上げて行くべきでありますけれども、今後相当の期待が持てると思うわけでございます。なお戦争未亡人その他に対する考え方のこまかい点につきましては、局長からお答えいたします。
  23. 前田種男

    前田(種)委員 数的に多数の失業者をカバーするというのも一つの案でございますが、やはり最低の生活を確保してやるという一人当りの賃金、あるいは待避を引上げるということが絶対必要だ。食えないような状態に置いて、使つてやるから出て来いといつて、朝早くから押しかけて行つても、あぶれて電車賃を使うだけ損だということでは困ると思います。またせつかく就業いたしましても、食えないような賃金ではやつて行けないことになりますので、これにはもちろん限度がございます。限度はございますが、今の日給、今の状態では残酷ではないかというように考えますので、内容的にもよくしてもらうように特にお願い申しておきます。さらに日雇い労務者の失業保険の問題もございますが、これはできるだけ好意的に法の解釈をして、施行をしていただきまして、日雇い労務者がそういう恩典に浴す機会が一人でも多くあるようにしていただきたい。あるいは末端機関が四角定規に法を解釈されまして、当然受けられるところの保険が、受けられないようになることが、現実にあると私は考えます。その点につきまして、国家の出費は多くなりましようとも、そうした出費はさらに予算を計上することも可能だと考えますので、ぜひとも労働者側が有利に取扱われるという内容にすることが、絶対に必要だと考えます。  次に質問申し上げたい点は、先ほど安本から説明されるという問題と関連いたします労需物資の配給の問題であります。これは安本労働省との所管でございますが、私はこの点は前から主張しておつた問題でございます。あくまで実質賃金を確保してやることは絶対必要でございますが、今日のようにやみ物価マル公の差が非常に接近いたして参りますと、労務用として配給される物資は悪いものばかり配給されて、むしろ幾らか高くても、やみで買つた方が得だという結論になつて、労務川の配給が不要になつているという現実もございます。労務川の物資というものは、あくまで安く職場に流すという建前が確保されなければならぬ。そのために補給金なり補助金が必要であれば、この点は労働省にがんばつてもらつて、あるいは安本もがんばつてもらつて、職場に流す労需物資は、安いものを配給してやるという建前が堅持されなければならぬ。これがもしおろそかになりますれば、労需物資はいらねじやないかということになつてしまいますので、あくまでもいい品物を安く、政府の責任において労務用として配給してやる。そして実質賃金をあくまで確保して、安んじて仕事ができるように持つて行くことが絶対必要でございます。これと合せまして、先ほどの安本の計画内容等もご説明願えますならば、幸いだと思います。  最後に私は新しい労働法の施行に関しまして、一点だけ加來労政局長意見をたたいておきたいと思いますことは、労働組合は毎年一回会計検査を会計士にお願いをしなければならぬということになつております。全国の今日の実情を見ますと、会計士に願うために、相当多額の費用をとられることになります。それぞれの単産が、一々会計士に数千円あるいは数万円の金を出さなければならぬということは、組合の自主的発展の上から見ましても、非常な財政的負担だと私は考えます。法が決定されておりますので、法の改正を待つまではやむを得ませんので、できれば、幾らか予算はかかりますが、中央労働委員会なり各府県の地労委に嘱託として会計士を依嘱してもらつて、その管下の労働組合は全部その会計士の審査を受けて、スムースに会計の内容が公開されるという方法をとつていただきますならば、全国労働組合はこれで非常に経済的にも助かることになると考えます。これはさほど予算もかからぬと思いますので、今度は労働省としてぜひ本腰を入れて対処していただきたいという点が一つ。  それから第二点は、審議のときに述べましたところの大阪、福岡、北海道等の重要な、しかも東京都にまさるとも劣らないところの煩雑な事務をやつております地労委を、東京都並に七名にするということをぜひお願いしたいと考えます。これは次の議会に必ずその程度の改正案を出していただきたいと私は熱望しますが、労働省見解を承つておきたいと考えます。
  24. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 私の局の分についてまずお答え申し上げます。失業対策事業の賃金の問題でございます。東京都は二百四十五円でありまして、これは御承知のプリペーリング・ウエージの労働貸金をとつているわけであります。失業対策事業に就労する失業者は、最後の手段として救済されるものでありますので、一般の実際の賃金よりは低くきめられておりますけれども、東京は標準賃金二百四十五円で、実は日本の再考の賃金に相なつておることを御承知願いたいと思います。  なお次に失業保険法の運用について、労務者の立場に立つて弾力性のあるような適用をすべきである、こういう御意見、まことにごもつともでありまして、私どもといたしましても、失業保険法の運用のみではありません、そのほかの法律につきましても、法の許す限り、失業者の立場に立つて運用をして行くというふうに心がけて参りたい、かように考えている次第であります。
  25. 石井通則

    ○石井説明員 先ほど租税、補給金削減等の問題に関しまして、いろいろ数字をあげて、生計費が楽にならないじやないかというようなお話でございましたが、この点に関しましては、安本物価庁、大蔵省とも十分協議し検討いたしまして、その影響を判定いたしておるのでございます。もちろんこの判定に関しましては、シヤウプ勧告によりまする税制の全般的にわたる問題がございますが、さしあたり来年の三月までの確定した問題について検討をいたしておるのであります。地方税に関しましては、まだ確定いたしておりませんので、その影響は現在のところわかつておりません。ただ私ども立場といたしまして、できるだけ労務者の生計が楽になりますように、租税負担の軽減、あるいはまた補給金に関しましても、影響がなるべく少いようにというような立場から、従来いろいろ意見を申し上げまして、その影響を判定しますとともに、これの緩和方につきまして、事務当局としてできるだけの努力をいたしておるような次第でございます。  まずこの三月までの状況の推定を申し上げますと、いろいろ階層別にかわつて参りますが、所得税の源泉徴収額の改正による現行税の税引収入に対する税負担の軽減率というものが、年額五万円程度の独身者にいたしますと、〇・八%の軽減になります。八万円程度の独身者になりますと一・一四%、夫婦者で一・九五%、それから十二万円程度の収入になりますと、夫婦者で二・三八%、それから夫婦、子供一人がありますと三・五%、夫婦に子供二人ありますと四・五参%、それから十三万円程度のものになりますと、夫婦だけで二・一一%、それから子供一人の場合に三・五二%、子供が二人ありますと四・五一%、こういうような税負担の軽減になります。  それからまたいろいろ間接税の改正あるいはまた廃止によりまして、相当生計費負担の軽減が見込まれるわけであります。それを五万円程度の独身者に見てみますと二・〇九%、八万円の独身者にしますと二・二三%、夫婦で二・〇八%、十万円の夫婦で二・三%、それから夫婦に子供が一人ありますと二・二七%、十二万円程度でありますと、夫婦が二・三二%、夫婦、子供一人で二・三七%、夫婦、子供二人で二・二七%、十五万円になりますと夫婦で二・四六%、夫婦、子供が一人で二・四五%、夫婦、子供が二人で二・三七%。  それから補給金の削減によりまして、主食あるいはその他の生計費の負担増加が見込まれます。これは一般のやみまたは自由価格の下落を見ませんで、公定価格だけのもので見ますと、五万円の独身者で二・八五%、八万円の独身者で二・五四%、夫婦者で三・二七%、十万円になりますと、夫婦で二・九%、夫婦、子供一人で三・四七%、十二万円になりますと、夫婦で二・五九%、夫婦、子供一人で三・六%、夫婦、子供二人で三・五三%、十五万円でありますと、夫婦で二・三二%、夫婦、子供一人でありますと、二・六九%、夫婦、子供二人で三・九%。結局五万円の独身者で〇・〇四%の負担軽減になります。八万円の人でありますと、独身者で〇・八三%、夫婦で〇・七六%、十万円になりますと、夫婦で一・九一%、夫婦、子供一人で一・九四%、十二万円の夫婦で二・一一%、夫婦、子供一人で二・八一%、夫婦、子供二人で三・二七%、十五万円は夫婦で二・二五%、夫婦、子供一人で三・二八%、夫婦、子供二人で三・七九%。これは自由価格の下落というものを見ておりません。それから来年四月からのいろいろ税負担の関係というものは、これからまたかわつて来るだろうと思つております。こういうような状況で、来年の三月までは下の方にはちよつと薄いのでありますけれども、上の方には相当の軽減になるということになります。  次にこういうように階層別に見ますと、あるいは平均収入家族に、C・P・Sにつきましては、割合負担の軽減になりますが、工業平均の賃金取得者、あるいはそれ以下の者には負担の軽減が薄いわけであります。私どもとしましては、これらの生活の安定のために、いろいろこの税負担その他の関係につきまして検討を加え、でき得る限り税負担の軽減になりますような事務的な検討をしておるわけであります。なおまたこれに関係いたしまして、労需物資につきましても、先ほどお話のありましたごとく、できるだけ労務川物資を確保いたしまして、労働能率の増進ももとより、また生計費の裏づけになりますように努力いたしておる次第でございます。価格の問題に関しましては、労需物資につきまして、できるだけ価格の低いように、いろいろ検討をいたしておるのでございますが、公定価格はなかなかこれを引下げるわけにも行きませんので、中間のマージンその他の経費の節減というような方法で、できるだけ安く労需物資が配給されるように努力いたしております。また品質の問題に関しましても、主食は米麦を主食とし、また衣料品につきましては、全面的に綿を配給するようなことを考慮いたしまして、そういうふうに努力いたしておるのであります。従来労務用物資の品質が悪かつたというようなことがございましたが、今後は相当当よくなつて行くと考えております。
  26. 賀來才二郎

    ○賀來政府委員 会計士の問題でありますが、実は御指摘のように、われわれといたしまして、会計士が相当多額の報酬をとろうとしておるという話を聞きましたので、計理士会の代表を呼びまして、いろいろ事情を聴取いたしたのであります。聞いてみますと、相当手数を食うので、ある程度の報酬を要求されることは、ごもつともであるとは思いましたけれども、一万人以上の組合に対しましては五万円以内というような金額では、これはご指摘のように趣旨に反する、かように考えたのであります。計理士会の申すところによりますと、五万円以内ときめたのであつて、以内であれば、もし本人の意思さえあれば、ただでもよろしいのだというようなことを言われておりますけれども、実際問題といたしましては、相当ところでおちついておるとは申しながら、やはりこの点については対策を必要とする、かようにわれわれは考えておるのであります。現在の状況を申し上げますと、組合が相当数寄りまして、一人の会計士に委嘱をいたしまして、そうしてその報酬の組合の負担額を少くしておるというところもあります。それから兵庫県におきましては、県が会計士を委嘱いたしまして、そうして低額の報酬で検査をしてやろうというふうな計画が進んでおるようであります。労働省といたしましても、御指摘の点を研究いたしまして、目下計理士会と打合せをいたしておりますけれども、計理士会といたしましては、全国の計理士を統制する力はないようでありまして、結局各県ごとに各県の計理士会と話をし、申合せによつてできるだけ低額にやつてもらう、この点については、日本計理士会におきましても協力をするということを申しておりまして、目下のところはその事情がどういうふうになるかということを、愼重に注視をいたしておるような状況でございます。一方公認会計士法の施行の関係からいたしまして、現在の計理士の資格は、三月をもつて一応失われるのであります。ところが公認会計士法に基きまする会計士の試験は、非常にむずかしいのでありまして、現在までに二百数十名しか合格してないというような状況であります。さようなことで進みますならば、ますます料金は高くなるのみならず、実施上困難な事情が出るものとも考えられますので、目下われわれといたしまして研究いたしておりますことは、できればあの職業的に権能のある会計士というようなものでなくして、外部の会計監査というふうに、現行法を改正しなければならぬことに至るのではなかろうかということで、研究をいたしておりますが御指摘の点につきましては、今後とも愼重に、しかも早急に対策を講じて参りたいと思つております。組合の負担が高額にならないように注意をいたしたいと存じております。  それから地労委の委員の数でありますが、御承知のように、前の国会におきまして東京都七名といたしましたのは、とりあえず東京都を入れたのであります。今後の状況によつては、さらにこれを加えて行くという予定をいたしておつたのであります。その後大阪から希望がありまして、また陳情をせられたのでありますが、なお福岡からも陳情が目下来ております。労働省といたしましては、大阪、福岡ということを考えますならば、愛知及び北海道も考えなければならないではなかろうかというので、目下いかなる基準によつて七人のところをきめるかということを、研究いたしておるのであります。御意見にもありましたように、できますならば通常国会において、この点を改正する必要が生じましたならば提案をいたしたい、こういうようなつもりで目下研究をいたしております。
  27. 前田種男

    前田(種)委員 私はもうこれ以上申しませんが、今の賀來労政局長答弁を信頼いたしますから、ぜひそういうふうに政府としてとりはからつていただきたいと思います。もちろん会計士の問題は、われわれは職業的な会計士でなくて、内部で公正な結果が公表されるということで足りると思つております。今日の労働組合を、何といつても実質的にりつぱなものにするというためには、政府も格段の指導援助が必要だと考えますので、そういう点、あるいはその他の点もございますが、ぜひ再検討を願いたいと思います。  それから安本の今の数字は、正式な調査票をわれわれ委員全部にいただきたいと思います。しかし今の数字から行きましても、地方税が考えてないのです。地方税を入れませんと、おそらくそれで何パーセントのプラスになるということには出て参りません。それはすでに現行法で、地方の住民税その他は昨年に比べますと、数倍になつております。さらに来年の春までに、二十五年度の地方の予算が組まれるときには、必ず地方税は、シヤウプ博士の勧告案から行きましても、相当引上げられるという傾向にあるわけです。その反面、先ほど指摘いたしました補給金打切りから参ります一切の主要な物価引上げられます。そういう点等を勘案いたしますと、絶対に政府が言つておるような減税にはならぬ。しかしこれをここで掘り下げ論議をする時間はございませんから、これは他の機会にさらに掘り下げて私は論議をして行きたい。今の安本答弁は承服できません。またその他の点についても、もつと掘り下げて検討したいのですが、時間がありませんから打切りますけれども、少くともこうした問題については、委員会としてももつと時間を持つて、十分の論議ができるように、ひとつ特に与党の方で御配慮願いたいと、私は希望を申し上げまして、私の質問を、一応留保しておきます。
  28. 春日正一

    ○春日委員 議事進行についてですが、ただいま前田委員からも発言がありましたけれども、大体国会が始まつて一月になるのに、今までに委員会が三回、最初の委員会では理事の互選だけで終つておるし、その後二回開かれて、それも午前中だけというようなことのために、この前の委員会でもほとんど私一人で、しかも私の質問したいという百分の一ぐらいしか質問できぬ。私はこれだけ持つている。それはとにかく、この前の第五国会でいろいろきめた決定が、実際に労働者生活にどう出ているか、実を言えば私は現場をまわつて調べて来ている。そういう問題が——たとえば労働法規の問題にしても、労働協約が今どんどん破棄され、改悪されて行つて、首切りが行われ、しかもそれが労働組合をぶつこわすという方向にやられておる。あるいは組合活動に対するいろいろな制限とか、あるいは法規の実施の面から来る、先ほど前田委員の言つた計理士の負担というようなことも一つの面ですけれども、そういう面のいろいろな問題がたくさん出ている。それから労働条件なんかも、こういう情勢のもとで、賃金の遅欠配から労働時間の延長、残業、そういつたものが非常に大きな問題になつておるし、特に今度あの法規が改正されて、第五回国会以後においての特徴的なものとして、工場の保健衛生の問題、厚生の問題が、労働者の命の問題として重大な問題となつておる。私の調べた材料だけでも、病人が去年の三倍になつたというような工場がたくさんある。こういう問題について労働委員会——今度の国会にはなるほど今まで議案がなかつた。しかし議案がなかつたから会議を開かないというようなことじやなくして、この前の国会でとにかく労働関係に対する重大な法律がきめられ、あるいは改正されて、それが労働情勢の上に新たに大きな影響を及ぼしておる。そのしりぬぐいをしてやるというような意味では、今度の国会の議案がないからと言うが、これは非常に重要な国会だ。ところがそれに対して二回しか開かれていない。しかも午前中でやめなくちやならね。私もそうだつたし、ただいまの前田君の質問を聞いておつても、非常に急がれて、大事なところをつつ込むという事が、ちつともできないような状態になつている。これでは非常に申訳ない。国会議員として高い給料をもらつてつて現場の食えない人たちの問題を扱わずに、この国会を済ましてしまうということは、まことに申訳ないことである。今後の会期もあと五日しかないから、二回、三回開き、特に午前から午後にわたつて開けるようにしなければ——どうしてもいろいろな都合で開会が遅れるものだから、質問応答できるのは正味四十分か四十五分です。これで一日勤めましたというようなことだと、労働者に聞かれたら、起られますよ。特にそれをやるための理事会もあまり開いていない。第一回が終つたあとで、この次いつごろやりましようと言つただけで、あと開かれていないけれども、私の方から出した失業対策決議案も出ているし、請願も相当つて来ており、この国会で処理しなければならぬものがたくさんある。ぜひ理事会をあすにでも開いて、この国全中にそれだけのものを片ずけて、国会議員としての職責を果すことにしなければ、申訳ないと思う。だからそういうようにやつてもらいたい。このことを委員長に希望して、とにかくあしたからそういうふうにやるように、ぜひしてもらいたいと思います。
  29. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十五分散会