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1949-11-21 第6回国会 衆議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十月二十九日       大橋 武夫君    篠田 弘作君       福永 健司君    三浦寅之助君       吉武 惠市君    青野 武一君       小川 半次君    春日 正一君       島田 末信君    衞藤  速君  が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和二十四年十一月二十一日(月曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 篠田 弘作君 理事 福永 健司君    理事 三浦寅之助君 理事 青野 武一君    理事 春日 正一君 理事 島田 末信君    理事 衞藤  速君       麻生太賀吉君    塚原 俊郎君       福田 喜東君    船越  弘君       前田 種男君    聽濤 克巳君  出席国務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         (労政局長)         労働事務官   賀來才二郎君         (労働基準局         長)         労働基準監督官 寺本 廣作君         (職業安定局         長)         労働事務官   齋藤 邦吉君  委員外出席者         専  門  員 濱口金一郎君         専  門  員 横大路俊一君 十一月十五日  委員吉武惠市君辞任につき、その補欠として廣  川弘禪君議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員麻生太賀吉辞任につき、その補欠として  青木孝義君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員青木孝義辞任につき、その補欠として麻  生太賀吉君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十二日  舞鶴市の失業救済事業に関する請願大石ヨシ  エ君紹介)(第二六六号) 同月十七日  失業対策に関する請願江崎真澄紹介)(第  五一八号)  日雇労働者救済に関する請願淺沼稻次郎君外  二名紹介)(第八九一号) 同月十九日  生理休暇に関する請願外四件(苅田アサノ君外  六名紹介)(第一〇四六号)  賃金遅配並びに分割払い解消対策に関する請願  (春日正一君外一名紹介)(第一〇四八号)  自動車工業人員整理反対請願春日正一君  外一名紹介)(第一〇五一号)  公共企業体労働関係法撤廃等に関する請願(  河田賢治君外二名紹介)(第一〇六六号)  同(松澤兼人君外六名紹介)(第一〇六七号)  同(中原健次紹介)(第一〇六八号)  労働基準法完全実施に関する請願江崎一治外  三名紹介)(第一〇九三号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願  (岡西明貞紹介)(第一一四三号) の審査を本委員会に付託された。 同月十二日  失業対策に関する陳情書  (第四六号)  失業救済事業費全額国庫負担陳情書  (第六二号) 同月十四日  失業対策事業に対する国庫補助増額陳情書  (第一〇五号)  失業対策に関する陳情書  (第一〇九号)  同(  第一二八号) 同月十七日  労働基準審議会に対し予算増額陳情書  (第一七七号)  労働基準行政職員増員に関する陳情書  (第一七八  号)  失業対策に関する陳情書  (第一九四号) 同月十九日  失業救済対策樹立陳情書  (第二三七号)  失業救済に関する陳情書  (第二六〇号)  職業安定機関職員増員に関する陳情書  (第二八〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  労働事情に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  まず労働事情について当局より説明を聴取いたします。
  3. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 私から最近におきまする失業状況並びに先般の国会以来、失業につきまして労働省としてとつて参りました措置等につきまして、簡単に御説明申し上げます。  まず最初に現在の失業状況でございますが、これにつきましては、先般の国会でも申し上げましたように、現在の失業者がどのくらいいるかという問題につきましては、きわめて困難な問題でありますが、これにつきましては一、二の資料がありますので、その資料に基きまして御説明申し上げたいと思います。まず失業の最も有権的な推定といたして行つておりますものに、内閣統計局労働力調査なるものがあるのでございます。この内閣労働力調査によります失業者数を申し上げますれば、大体において四十万台を動いているのであります。この労働力調査によりますると、本年の四月の失業者数は四十三万であつたのでありますが、それが五月に四十四万、六月に三十六万、七月に三十八万、八月に三十五万、九月にちよつと上りまして四十七万という数字に相なつております。これはいわゆる調査前一週間に就業しなかつた完全失業者数字であるのでございます。なおこの失業者九月四十七万という数字は、完全なる失業者数字でありまして、内閣統計局の行つております労働力調査には、そのほかに追加労働を希望するという統計があるのでございます。この追加労働と申しますのは、ある一定の時間相当就業はしておりますけれども、さらに働きたい。追加労働を希望するという者の調査であるのでありまして、これが一つ失業様相を判定する上の資料になるかと存ずるのでありますが、それを申しますと、追加労働希望者は本年の五月に四十八万、八月には下りまして二百六十九万という数字に相なつておるのであります。この追加労働希望者のうちで、現に三十五時間以上働いておりながら、さらに追加労働を希望するというものから申し上げますと、三十五時間以上働きながら追加労働を希望します者が、五月で二百六十六万人、八月で百五十五万人という数字なつております。しかしながらこの三十五時間以上働いておりながら、さらに追加労働を希望するのでありますので、これは失業という懸念には入らないのでありまして、純粋の家計国民生計の問題かと考えておるのであります。そこで三十五時間未満働いておりながら、さらに追加して、三十五時間以上働きたい。こういうものが、やはり雇用の面から申しますと、一つの問題かと存ずるのであります。この数字は五月で百十八万、八月で八十七万でありまして、約百万台を上下いたしておるような状態であります。この三十四時間以上働いておりながら、三十五時間以上働きたいという追加労働の百万程度の人がおるということ。この数字は、必ずしも世間でいわゆる潜在失業というふうなものではないと思いますけれども、一面こうした様相のものがこの労働市場におるということが、やはり失業問題から申しますれば考えてみなければならぬ問題かと存じておる次第であります。しかしいずれにいたしましても内閣統計局によりまする失業者数字は、厳密な意味において——この厳密な意味と申しますのは、失業の定義につきましては、日本でもさまざま言われておりますけれどもこれは世界共通の定義において調べたものでありまして、その労働力調査によりまする失業は、あくまで四、五十万程度というのが現在の失業数字ではないだろうかと存じておる次第であります。  次に、失業統計を見ます上のもう一つ参考資料といたしましては、公共職業安定所窓口に現われておりまする様相であるのであります。この様相を最近の五月以降について申し上げますれば、五月以降の職業紹介状況は、求人数は逐次減つて参つております。これはもとより企業整備等のあつた関係もありますし、それから有効需要が減少したこともありまして求人数は減少の一途をたどつてつたのでありますが、九月から有効求人は多少ふえて参つております。しかしそれにいたしましても、求人数は五月に二十七万程度ありましたものが、九月においては十八万であるのであります。これに対して求職の方は、新規求職は逐次ふえてはおりますけれども、新規求職者よりも特に目立ちますものは、求職者の再来がきわめて多くなつて来ておるということであるのでもります。特に今年の二月、三月以来、逐次企業整備が行われて参つております関係上、失業保険の金をもらいながら、職業紹介を申込みに来る者の数がきわめてふえておるのであります。五月と九月の比較を申し上げますれば、常傭労働者再来者は、五月十四万のものが九月三十六万というふうに、約三倍近くふえて参つておるのであります。これに対して、先ほど申し上げましたように求人の減少と相まちまして、就職関係はきわめて少くなつて来ております。大体就職は八万台を今日動いております。これは常傭でありますが、毎月常傭といたしましては、八万程度就職を見ております。従いまして常傭労働者におきましては、いわゆる未就職者に終るものが、九月で申し上げれば約六十方であります。日雇い労働者の未就職者は九月八十三万であるのであります。これに対しまして、九月の公共職業安定所窓口に現われておる未就職者の数は、日雇い常傭合せて六十九万、約七十万になつております。五月に比較いたしますと、五月は四十二万でありますので、二十七万、約三十万程度就職者の数がふえておるのであります。この姿から失業の数はどのくらいあるだろうかということでありますが、これもまたきわめて推定困難な問題であります。御承知のように公共職業安定所を利用する方々は、必ずしも失業者には限つておりません。また一方失業者はすべて安定所を利用しておるものとも言えないのでありますので、この未就職者総数失業者だとも申せない状況であるのであります。しかしいずれにせよ、公共職業安定所窓口に現われております未就職者の数は、五月の四十万から九月の約七十万にふえておる。こういう状況なつております。  次に、失業数字を調べます上の、もう一つ参考資料といたしまして考えられますのは、失業保険の最近における受給者の数の問題であるのでございます。失業保険受給者の数は、本年二月以降の企業整備のあおりを食いまして、逐次ふえて参つております。受給者の実人員で申し上げますれば、本年の一月に失業保険金をもらいまして、その最低生活をいたしておりました者の数は、わずかに三万五千程度であつたのでありますが、それが逐次ふえまして、本年の四月になりますと六万人になり、さらに七月、八月、九月の企業整備頂点時になりますと、その企業整備の月から一箇月ほどずれて現れて参ることになりますが、七月が十五万、八月が二十方、九月が二十七万、十月には約三十万に近い数が、失業保険受給者として現われて参つておるのであります。従いまして失業保険金の額といたしましても、本年一月にわずかに六千万円を給付いたしておりましたものが、本年の七月に約四億、八月に六億、九月に約八億、十月に十億近い金額に相なつて来ておるのであります。すなわち十月に失業保険受給者が十万人おつたということ、こういう数字に相なるのてあります。従いまして以上の内閣労働力調査並びに安定所窓口に現われておりまする需給調査状況失業保険の受給の給付状況等を考えてみますれば、下半期当初におけるわが国完全失業者数字は、五、六十万程度推定するのが適当ではないだろうかと存じております。しかしその五、六十万のほかに、内閣統計局の行つておりまするところの追加労働希望の者が約百万程度おるということ、しかしこの百万は——世間潜在失業者が数百万あるというような説をなす方々があるのでありすすが、そういう尨大な潜在失業者があるとは私ども考えておらない。要するに追加労働希望者約百万人を——この百万は必ずしも潜在失業者ではないかもしれませんけれども、やはり経済の状況その他によりまして、失業という問題を中心に、ある程度考えなければならぬ問題かと存じておる次第であります。  大体以上が最近におきまする失業者推定でありますが、次にこの失業者下半期において相当ふえるだろうかという問題であります。これにつきまして現在私どもの手元でいろいろな資料に基きまして研究をしてみますと、本年度下半期に、ある程度離職者の増加を見ることは予想されます。まず第一に進駐軍関係の労務者でありますが、これは予算等関係もありまして明年の三月までに約三万人が解雇されることに相なつております。それから次に問題になりますのは、民間の企業整備は、七、八、九月を頂点といたしまして、その大半を終了するような形に一応今のところは向いております。七、八、九月でありますが、特に七月が頂点であるのでありまして、七月から逐次減つて来ております。いずれにせよ、七、八、九を頂点といたしまして、今日でもやはり企業整備はある程度行われておりますが、山は越したのではないだろうかと考えております。そしてこの民間企業による解雇されました方々は、先ほども申し上げましたように、十月までに約三十万人に近い人々が失業保険を受けて、六箇月間生活の一応の、——最低生活とは申しましても、一応の安定を得ておりますので、問題はこの企業整備による離職者が、六箇月の期間が切れたときにどうするかという、ことが、下半期の問題になろうかと考えるのであります。失業保険期間が六箇月で切れます者の数は、第三・四半期で約五万五千人くらいと予想いたしております。第四・四半期で約十二万五千人が失業保険給付期間が切れるので、合計いたしまして本年下半期中に、十八万人の人々が失業保険給付期間が切れるということに相なります。  次は行政整理の問題でありますが、これはすでに御承知のように終了いたしておりまして、その就業の成績はきわめて良好であるのであります。すなわち官公庁、公社、地方公共団体をひつくるめまして二十万人に達しませんが、大体二十万程度行政整理が行われております。その二十万人の約三〇%は、すでに病気あるいは自然引退等によりまして、就職を全然希望いたしておりません。すなわち労働市場外の者であります。その残り七〇%が就職を希望する、いわゆる労働市場におけるところの労働を希望することになるのであります。その七〇%の就職希望者のうちの、さらにその七〇%がほぼ今日まですでに就職を見ております。従いまして、残つておりますのは、行政整理におきましては、二十万解雇いたされながらも、現在のところ失業状態にあるのではないかと考えられます者は、四万人程度であるのであります。一つの例を引いて国鉄関係で申し上げますれば、九月末の調べによりますと、国鉄関係離職者総数が九万四千三百十二人で、そのうち就職を希望する者が五万七千二百九十四人であつたのであります。この五万七千二百九十四人の就職希望者のうち、すでに九月末において三万六千八百三十人が就職をいたしておる状態であります。従つて差引きますると、国鉄関係約十万人の離職者のうち、就職してないと考えられます者は約二万一千という数字に相なつております。この就職につきましては、公共職業安定所就職あつせんの努力、並びに鉄道関係外郭団体等の協力によりまして、大体におきまして、わずか二箇月足らずの間に、未就職に終つております数は、二万という数字であります。この数字は逐月減少して来るものと考えております。しかしながら、いずれにせよ、九月末を基準として考えますれば、二十万の行政整理に対して、約四万人程度が残つておるのではないかと考えておるのでありまして、年末になりますれば、さらに減少して行くものと考えております。  その次に問題になりますのは、いわゆる補給金の削減あるいは諸種の統制の緩和、あるいはまた引揚者、あるいは東京で問題になつております露店商問題等がふりますけれども、これを大まかに推定いたしてみましても、この面からは、十万人を越すような離職者はまず出ないと推定をいたしております。  かようなわけでありまして、本年下半期に新たに離職とか失業という状況に入りますのが、三十五万人程度であります。しかしながらこの三十五万人は、先ほども申し上げたように、全部が全部失業者になるものとは考えておりません。たとえば石炭配給公団というものの廃止に伴いましても、大半はやはりそれぞれ前職に復帰したり、あるいは配給の業務に従事するということもありますので、全部が全部失業になるものとは予想されておりませんけれども、三十五万人程度離職者が出るということを頭に入れて、今日までいろいろ企画をいたしておるような状況であります。要するに現在の完全失業者の総数は五、六十万程度、それに下半期に三十五万人程度離職者が出る、こういう大体の現況であります。  こうした状況に対しまして、失業対策といたしまして、今日までとつて参りましたうちの大体のやり方につきまして、簡単に御説明を申し上げます。まず第一に、特に民間の企業整備に対処いたしましては、先般の第五国会におきまして改正されました失業保険法を円滑に実施し、運用するということに力を入れて参つておりまして、今日までのところ失業保険状況は、大体において健全なる歩みを続けておるものと一応考えております。保険料の収納の状況もきわめて良好でありまして、本年の四月から九月までの保険料決定額が四十二億に対しまして、約九九・八%という良好な保険料の収納を見ておりまして、約四十二億の保険料を徴収いたしておるのであります。これに対しまして、保険給付は、先ほどもちよつと申しましたように、本年四月以降逐月ふえて参つておりまして、本年四月以降十月末までに支給いたしました給付総金額約三十億であります。大体において失業保険状況は以上のように円滑に動いておるのであります。さらに失業保険につきましては、先般の第五国会におきまして、失業保険法の改正によりまして、日雇失業保険制度実施されることに相なつておりまして、これは一月から失業保険給付が始まることになつております。日雇い失業の問題につきましては、きわめて有効な結果が上るものと期待いたしておるのであります。  次に問題は、公共事業並びに失業対策事業の運用の状況でありますが、公共事業におきましては、本年の四月、五月、六月ときわめて公共事業実施が遅れておりまして、特に東京を中心とする大都市において相当公共事業実施が遅れておりましたので、特に日雇い労働者のあぶれが、公共職業安定所窓口に相当深刻に現われて参りまして公共事業よりもまず失業対策事業で救済すべきだというふうに、非常に情勢が悪化して参つて来ております。そこで私どもの方といたしましては、公共事業実施が遅れておりますので、公共事業実施を促進いたしますると同時に、日雇い失業者にとつての最後の手段であります緊急失業対策法による失業対策事業実施することにいたしたのであります。第一・四半期におきまして約一万七千人程度失業対策事業実施して参つたのであります。その当時日雇い労働者のあぶれは、全国におきまして四月、五月といたしましては、五万人程度日雇い労働者のあぶれがあつたのでありまして、その三分の一を失業対策事業で救済するという態勢を整備して参つたのであります。しかるにその後公共事業実施がやはり依然第二・四半期に至りましても遅れましたので、御承知緊急失業対策事業予算八億八百万円を繰上げ支出することを考究いたしまして、これを実施するため努力をいたして参りましたところ、九月に至りまして、失業対策事業の繰上げ支出が認められることとなりましたので、大体において九月の十五日から実施いたしまして一万七千人就労しておりましたものを、さらに三万に増加いたしまして、さらに十一月に至りまして繰上げ支出を徹底することによりまして、全国約四万人の失業者を吸収することにいたしております。特に第三・四半期におきましては、災害復旧の繰上げ支出問題等もありまして、また公共事業の費用が相当流れて参りまして、第三・四半期における公共事業就労実数は五十七万余という実数になつております。それに失業対策事業約四万、合計六十一万というもりが日雇いを中心としてこの官庁関係雇用量として増大しておるような次第であります。従いまして九月の全国日雇いのあぶれの約八万人に対しまして、公共事業並びに失業対策事業によりまして、一応の救済すべき努力を払つて来ておつたのであります。それと同時にとつて参りましたのは——緊急失業対策法よる公共事業吸収率の規定が問題であつたのであります。本年五月に緊急失業対策法が制定されましたあとに、ただちに公共事業における失業者吸収率というものを定めて、安定所窓口に現われております失業者を、公共事業に優先的に就労あつせんをしておつたのでありますけれども、この当時、失業者吸収率を定めでおりました種目は、わずかに三十五種目事業種目であり、そり吸収率もわずかに二〇%程度であつたのでありまして、公共事業失業者を吸収する数はわずかなのであつたのであります。わずかに二万五千人を公共事業失業者を吸収するということであるのでありますが、本年十一月に至りまして、公共事業における失業者吸収率を全面的に改訂することにいたしたのであります。従来三十五種目でありました公共事業事業種目を、約その倍の六十六種目に拡充すると同時に、吸収率の平均二〇%を約四〇%に高めることといたしました。これによつて本年度公共事業に約十万人の失業者を優先して雇用せしめるという措置を、本年の十一月に完了いたしまして、それによつて実施いたしておるような次第であります。大体以上が今日まで、前の国会以後とつて参りました措置であります。  なお次に将来下半期におきます失業の問題につきまして、とつております内容につきまして、時間もありませんので、簡単に申し上げたいと思つております。本年下半期離職者先ほど申し上げましたように二十五万人出るあろうというような情勢も勘案いたしまして、従来の予算だけで足りない面も相当ありますので、今回の補正予算に相当な額が失業対策的な意味において計上せられております。  まず第一に申し上げたいことは公共事業費であります。公共事業費として百六億が本年度補正予算に組まれております。内訳は災害復旧費に八十五億、一般公共事業に六億六千万、六・三制の建築費として十五億、合計公共事業費として百六億六千万円が組まれております。この百六億にあります雇用量は三箇月間でありまして、三十五万人ないし四十万人の雇用量であるのであります。  次に失業対策事業費であります。この失業対策事業費の先般の国会できまりました八億八百万円の金は、第三・四半期で全部支出済みに相なることになりますので、第四・四半期の分といたしまして、八億五千万円を計上いたされております。この八億五千万円によりまして、就労する労働者は約八万二千人程度であります。そういたしますと、現在日雇い失業者の最の手段として残されております失業対策事業に最近働いておりますのは、全国四万人でありますが、これがさらに倍以上のものになるのであります。この失業対策事業の経費が八億五千万円であります。  さらにもう一つ失業保険特別会計へ約一般会計より八億五千万円が繰入れられておりまして、補正予算に計上いたされております。この八億五千万円の内容は、一般失業保険日雇失業保険と二つの内容になつておるのであります。一般失業保険から申し上げますれば、本年度の当初予算におきましては、政府の一般会計への繰入れはわずかに二十億であつたのでありますが、最近におきまする失業保険給付額が増加することに伴いまして、これだけでは足りないような情勢になりましたので、さらに二十億にプラスして、八億を一般失業保険への繰入れをいたすことにいたしたのであります。そういたしますると大体二十八億の本年度の繰入れとなりまして、保険金給付といたしまして予想いたされまするものが、八十四億になるのであります。大体八十四億となりまするならば、今の情勢から申しますれば、本年度における失業保険保険金としては十分ではないだろうかと考えておる次第であります。日雇失業保険でありますが、これは先ほども申し上げましたように、本年十一月から実施せられておりまして、明年一月から日雇失業保険給付が始まることになります。日雇失業保険給付の繰入れ分といたしまして、約三箇月分九千万円が見込まれております。その他安定所の事業費等を入れまして八億五千八百万円がこの失業保険のための一般会計よりの繰入れということに相なつておるのであります。従いまして以上申し上げました公共事業費百六億六千万円、失業対策事業費八億五千万円、失業保険特別会計への繰入れ八億五千八百万円、合計百二十三億六千八百万円が今回の補正予算の中に計上せられておりまして、これが失業対策的な予算として運用されるものと期待いたしておるのであります。  なおこれに関連いたしまして下半期における失業者の吸収の問題でありますが、これは先般労働大臣から本会議におきまして申し上げました通り、民間雇用、あるいは見送り資金の面、失業保険公共事業失業対策事業等の問題をひつくるめまして、大体上半期に比べて下半期における新規雇用量、並びに救済能力の増大の状況は、百十五万ないし百三十五万と相なつております。見返り資金の問題につきましては、多少ペンデイングな問題もありますので、かりに見返り資金が全然ないものといたしましても、約九十万人ないし百万人という新規雇用量、並びに救済し得る能力というものが、ここにあることであります。見返り資金の問題はペンデイングでありまして、かりに大体政府の予定しておりました通りのもので参りますと、見返り資金だけの雇用並に十五万ないし三十万ということになりますが、これが全然ないものとしても、九十万ないし百万ということに一応相なるのでありまして、下半期の吸収計画としては、さような状況で考えておる次第であります。時間もありませんので、現在の失業状況並びに下半期の見通し等につきまして、簡単に御説明申し上げた次第でございます。
  4. 倉石忠雄

  5. 賀來才二郎

    ○賀來政府委員 私からは労政関係につきまして前国会以来今日までに至りまする状況について、簡単に申し上げたいと思います。  第一は前国会におきまして非常にごやつかいになりました労働組合法並びに労調法改正のその後の状況について申し上げたいと存じます。御承知のように今回の改正のおもなる点は、労働組合をして自主性、民主性、責任制の明確化をはかつて行く。従いまして官庁が労働組合の設立その他に関与することを排除し、同時に労働委員会の権限を拡充する、かような方角で参つたのであります。改正法の施行後——これを施行いたしましたのは六月の十日であります。ところでこの施行に伴いまして労働組合におきましては、規約の改正、または協約の改定等を必要とする面も出て参つておりましたので、六月十日に施行いたしましたが、施行後の運営につきましては、労働委員会と十分なる連絡を保ちつつ、主要なる筋をはずさないようにいたしまして、実情に即する運用をはかつてつたのであります。規約改正にいたしましても、全国組合のごときにありましては、相当の時日を要するということは十分認めまして、さような実績に即応するがごとき取扱いをやつてつたのであります。しかしながら一部におきましては、今回の改正が、官庁の関与を排しまして、届出主義等を廃しまして、そうして自主的に運営をして行くというふうな観点をとつておりました関係から、この法律外の労働組合の運動をやつて行こうというふうな意見もあつたのであります。しかしながらその後趣旨が徹底いたしますにつれまして、なおまた労働者といたしましては、労働組合法に基きまする労働組合運動の発達に関係いたしまして、これに協力をする、また場合によりましては、その運営の仕方に対しまして、かような趣旨であるということを勧告をするというふうな協力方針をとつて参りました結果、九月末日現在におきまして、組合の意思といたしまして、組合法に基かざる組合運動をやるというふうな意向を表明いたしました組合は、組合数で申しますと一%、すなわち約三百五、六十組合、組合員数からいたしましたならば〇・一%程度でありまして、五、六千人であります。従つて一組合二、三十人程度の小さい組合におきましては、法外の組合活動をやつて行こうという意思表示をした組合があつた状況であります。しかしその後、この組合法の趣旨の徹底をはかりつつありますので、おそらく本年一ぱい中には、かような運動は消滅するものと考えておる次第でございます。ただこれに関連いたしまして、労働委員会は資格の審査その他の取扱い件数が非常に増加をいたしておるのであります。目下それら法の施行に伴いまする実績に関しましては、詳細なる調査をいたしておるのでありまするが、場合によりましては福岡、大阪、北海道等の地方労働委員会につきましては、あるいは東京都の労働委員会のように、これを労、使、中立各七人というふうな制度にかえなければならないことになるのではないかとも言われておるのであります。これらの府県と連絡を保ちつつ、目下その実情について調査を続けておるような状況でございます。  第二は、公共企業体労働関係法に関連いたす問題でありまするが、この公共企業体労働関係法は六月一日から施行になりました。目下この法律に基きまして、国鉄労働組合の紛争議並びに専売公社労働組合の紛争議の問題を取扱つておるのであります。専売公社の労働組合の紛争につきましては、目下調停委員会がこれを取上げまして、調停をやつておるのでありまするが、多分二十七、八日ごろには、調停案が示されるであろうという進行状況でございます。国鉄労働組合の紛争議に関連いたしましては、先月末に調停委員会が出しました調停が不成立になりまして、仲裁委員会が、これを三十一日に受理をいたしました。目下仲裁委員会がこの問題を取扱つておるのでございます。仲裁委員会の仲裁は施行令に基きまして、受理してから三十日以内にこれを出すということになつておるのでありまして、二十九日がその期限になつておるのでありまするが、目下各種資料を最後的に検討いたしておる状況でありまして、これも近く仲裁委員会の案が提示されるという段階に立ち至つておる次第でございます。  次の問題は、おもなる労働組合の賃金をめぐりましての紛争議の問題であります。賃金その他の問題も含んででありますが、御承知の東芝の労働争議に関連いたしましては、これは昨年来の問題でありまして、この間各種の問題を起しまして、社会の注目を引いたのでありまするが、四、五日前に新聞で御承知のように全面的に円満な妥結が遂げられまして、この東芝の労働組合の紛争議をめぐりまする一切の問題は、解決をいたしておるのであります。  次に電産の労働紛争議の問題でありまするが、この問題も新聞で御承知のように、一昨晩深更に至りまして解決をいたしたのでありまして、中労委が出しました調停案のうち、六千円を支給するということは、組合が受諾をいたしまして、使用者側において受諾をいたしていなかつたのでありまするが、一昨晩深更に至りまして経営者側もこれを受諾することになり、とりあえず三千五百円を支給し、残りの二千五百円の取扱いに関しましては、両者で一つの協定に達して、二十日から停電その他の争議行為を実施するという予定は、組合側よりこれを停止の命令を出しまして、解決をいたしたのであります。ただ電産といたしましては、これは一時金の問題でありまして、本格的な賃金ベースに関しまする要求は妥結に至らず、目下中央労働委員会において、これが調停が進行中であります。  次に石炭の問題でありまするが、石炭は御承知のように、中央におきまして全国的にとりまとめて交渉をするということが不可能になりまして、両者とも各企業別あるいは地域別に交渉に入つたのであります。一部におきましては、これに基きまして解決をいたしておりますが、まだ大部分は、特に大手筋の山におきましては、解決をされていないのであります。最近に至りまして会社側よりある一つの提案をいたしまして、それに対して各組合においては、これを受諾すべきかどうかということを討議をいたしておる状況でありまして、まだ最後的な解決に至つておりません。ただ一般的に申し上げられますことは、石炭におきましては五千四百円べースを改訂しようとする本格的な要求でありましたものが、目下のところでは本年内におきましては、本格的な賃金の解決は至難の状況にあります。組合側におきましても、また使用者側におきましても、九月中旬から実施されました石炭の自売制度の見通しがつくまでは、本格的な賃金の設が困難であるということは認めておるようでありますが、しかしながら今後この自売制度に基きまして、石炭産業を維持して行くことになりますならば、やはりその基本であります賃金については、すみやかに基本的な線を決定いたしたいという希望におきましても、労資双方ともほぼ意見が同じだとわれわれは見ておるのであります。従いまして本格的な賃金ベースの問題は、一月以降において行われるものと、われわれは推定をいたしておるのであります。  繊維につきましても、やはり中央交渉をすることが至難な状況でありまして、各会社別の交渉に入つておるようであります。羊毛等におきましても、本日からその交渉に入つたようでありますが、これらの状況も、石炭産業と同じように、年内におきまして本格的なべースの設定は、各般の事情から困難のように見られるのであります。しかしながら来年に入りまして、特に三四月以降におきます繊維工業の見通し等から考えますならば、少くとも三、四月のころまでには、本格的なペースが設定されなければ、職業の安定がむずかしいのではないかという見通しは、両者とも持つておると、われわれは見ておるのであります。  以上はなはだ簡単でありますが、労働組合法の改正法の施行に関しましては、労働組合はもちろん、各方面の御協力によりましで、予期以上の好成績を収めておることは、われわれといたしましても感謝にたえないところでありますとともに、各般のこれらの労働紛争議の問題も、ほぼ実質的な解決に向かつて——年度内におきましては、大体その解決の線で一応経過するものであるというふうな考え方をいたしておりますが、いずれも本格的な賃金ベースは、経済界の動向に関連いたしまして、翌年に持ち越されるもの、かような見通しを持つておる次第であります。
  6. 寺本廣作

    ○寺本政府委員 前国会以後におきまする基準法の運営状況について、ごく簡単に申し上げます。  基準法が施行せられましたのは、御承知の通り昭和二十二年九月一日でありまして、その以後この運営については、幾多の段階を経て今日に至つております。二十二年九月一日から二十三年一月に至る間は、労働基準法の趣旨を普及徹底する。この間におきましては、違反については指導監督によつてこれを処理するという方針をとつて参り、その後二十三年一月から二十三年五月に至る間は、違反事件については中央において統制してこれを処理するという段階を通りまして、二十三年五月以降は、一応この違反事件の処理方針を中央で地方に示しまして、本格的な監督をするということで、今日まで来たわけでございます。しかるところ本年に入りまして、経済九原則、賃金三原則等の施行によりまして、個々の企業の経営にはいろいろ困難な点が現われて参り、基準法違反についても、その違反が目立つて増加して参つたわけであります。一方労働基準監督官の定員は、従来二千百余の監督官がこれの施行に当つてつたのでありますが、去る国会を通過いたしました定員決定によりまして、その後千八百に減員されまして、その減員された監督官の数をもつて、在来の基準法の施行規則をそのままに運営し、違反の続出されつつある事態に対処することは、非常に困難であるというふうに考えましたので、去る九月より基準法施行規則の改正に着手し、施行規則中、届出、報告、許可、認可等、監督官の机上事務として認められておつたものを大幅に整理して、監督官ができるだけ工場に出向いて行くことができるように改正いたしたのであります。この点、従来でありますれば、賃金台帳の備えつけについて、異式の賃金台帳をつくるには、監督官の許可がいつたのですが、そういうことをやめる。それから年次有給休暇の附与状況については、労働基準監督署に報告がいるということであつたのを、改めたのであります。また残りました許可、認可、報告等の手続についても、従来は画一的な様式行為を必要としておつたのでありますが、これも内容さえ満たしておれば、必ずしも画一的な様式によらなくてもいいというふうにいたしまして、労働基準法施行規則、女子年少者労働基準規則、労働安全衞生規則、技能者養成規則、事業附属の寄宿規則等、各般の基準関係規則に改正を加え、事務的な負担の軽減をはかり、あわせて監督官の机上事務の簡素化をはかつたのであります。従いまして将来におきましては、労働基準法の形式的な違反が著しく減少し、監督官は机上事務に煩わされることなく、第一線に出向いて労働保護の実をあげることができるようになろうかと考えるのでございます。この規則は十一月の十六日から施行せられております。  次に労働基準法施行状況のうち、特に目立ちましたことは、前国会後、賃金不払いの件数が増加しつつあるということであります。賃金不払いの傾向は、本年の一月以降目立つてつたのでありますが、当時におきましては、主として政府支払いの不振による賃金不払いが相当多かつたのでありま。しかしながら、これにつきましては、前国会におきまして、政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律の改正が行われまして、政府の支払いは漸次促進されて参つたのであります。しかしながら、この政府支払いの不振が改善されましたにもかかわらず、一般には販売関係の不振、売掛代金の回収難、また金融難等の条件が重なりまして、企業の賃金不払いは、やはり解消するに至つておらないのであります。本年一月以降八月までの、労働基準監督署に報告されました賃金不払いは、約二十八億に達しております。これにつきましては労働基準監督官としましては、労働基準法に基く、一定期日に俸給の全額を払うようにという規定の趣旨を説明し、経営の内部をできるだけ詳細に調べて、事業主に支払いを勧告するという建前をとつております。悪質なものにつきましては、もちろん違法事件として処理して、送致するわけでありますが、その段階に至らず、労働基準監督官が関与しまして解決した賃金不払いの金額は、二十八億のうち、およそ二十一億に達しておるような状況でございます。傾向といたしましては、最近は大企業の賃金不払いが漸次解消しつつあり、賃金不払いは中小企業の方が深刻になつて行く状況にあるのであります。これにつきましては、単に法律の規定を強制的に押しつけるというだけでなく、政府の総合的な経済施策によつて、改善さるべきものが多かろうと考えるのであります。  なお賃金不払い事件の深刻化と並行いたしまして、最近は賃金水準の切下げの傾向も現われているのでございます。これにつきましては、基準法中いまだ発動されておりません最低賃金の問題を研究いたしているのであります。最低賃金につきましては基準法施行以来、施行規則等はすでに整備せられているのでありますが、インフレの上昇期においては、最低賃金の額を法律上きめましても、インフレの高進に従つて、そのことが無意味になります。インフレの高進もかかわらず、有意義なる最低賃金をつくろうとすれば、インフレを促進することになるわけでありまして、インフレの進行期においては、最低賃金の設定は、慎重に研究し、これを見合せるという方針をとつてつたのでありますが、本年に入りましてからは、賃金、物価ともに漸次安定の方向におもむいております。賃金は本年に入りまして一進一退、大体安定の傾向にありますが、それは水準としての話でありまして、個々の企業について見ますと、企業内容、経営内容のいいところはやはり上り、経営内容の悪いところは漸次切り下げられつつあるという傾向が見えております。一方、輸出関係について見ますれば、輸出補給金の撤廃、それからフロアー・プライスの撤廃等により、滞貨の処理が、従来のようなダンピングによつて行われるではなかろうかという外国方面の懸念が、漸次増加しつつあるように見受けられるのであります。こういう事情から、漸次最低賃金の問題は、本格的に研究すべき段階に入つて来たというふうに考えるのであります。また一方、従来このインフレ上昇期におきましては、賃金問題に関する基礎資料が明らかでなかつたために、いろいろ最低賃金に関する議論の幅が大きく、意見がわかれておつたようであります。その後は家計調査、生計費調査、それから賃金調査、収入調査などに関する統計が漸次整備されて参りまして、現在ではこの最低賃金問題に関する意見の聞きも、さほど大きくないように見受けられるのであります。そういう意味におきましても、最低賃金の実施可能な條件が、漸次熟して参りつつあるように考えられるのであります。こうした客觀情勢に応じまして、政府としては最低賃金の問題を真剣に検討すべき段階に入つたものと認めまして、明年度予算についても、基準法に基きます賃金委員会設置に必要な予算を要求し、これの設置の準備をいかにすべきかということを、研究しているような状況でございます。前国会以後におきまする基準法運営に関する大きな問題としては、かような問題であろうと思います。
  7. 倉石忠雄

    倉石委員長 通告順に従つて質疑を許します。春日正一君。
  8. 春日正一

    春日委員 あとで労働大臣その他からたくさん聞きたいことがございますが、一番先に失業の問題です。実際からいつて非常に数が少くなつている。特に八月に非常に少い。七月にうんと首切られたのだから、八月はうんと多くなつていなければならないはずですが、これは一体どういうわけですか。
  9. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほども申し上げましたように、労働力調査によりますと、七月が三十八万、八月が三十五万、九月が四十七万、こういう数字なつております。これは要するに、世界共通失業定義で、内閣統計局で一応行つている数字でございまして、なぜ減つているかという点になりますと、具体的に私もよく存じておりません。ただ安定所窓口から見ました数字で申し上げますと、やはり逐月多少はふえているという形になつております。
  10. 春日正一

    春日委員 この世界的に行われているという失業定義ですが、これは大体どういう定義なつているのですか。
  11. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 内閣統計局労働力調査は、調査前一週間において一時間も就業しなかつた、労働の意思と能力を有しながら、一時間も働く機会がなかつた、そして本人が何らかの求職活動をした、安定所に申し込むなり、あるいは友人に頼むなり、何らかの求職活動をした者、これがいわゆる労働力調査によります失業者というものの定義なつております。
  12. 春日正一

    春日委員 その点から行くと、ごく一部の人だけがこの数字に出て来るということになることは、やはり認めざるを得ないわけですね。今の生活状況で、一週間、一時間も働かないで食えるという人はないのだから、どうしても食うためには何か働かなければならぬ。そうなると、いわゆるタバコのモク拾いなどが、私の家の近所に毎朝ごみためをあさりに来ているが、ああいうのは就業者とみなすのですか。
  13. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 今お話のその人は、統計就業しているということなら、入るでございましようが、結局これは本人の申告によりましてのサンプル調査ということになりますので、ただいまお尋ねのそうい人が、必ず就業していると言えるかどうか、これは私は多少問題じやないかと存じております。     〔委員長退席、福永(健)委員長代理着席〕
  14. 春日正一

    春日委員 それからもう一つ、国鉄の場合ですが、やめた人の大体三〇%は就業意思がないと言われておりますけれども、停年でやめたというような人たちは、年もとつているし、そうえらい仕事もできないということになる。私ども資料調査してみますと、からだが弱くて仕事ができない、しかし何か楽な仕事がやりたい、こういう人はたくさんいるわけです。ところが、こういう人たちが職業安定所に行くか何とかしても、使いようがないというので、断られたというのがたくさんある。だから労働力調査というのが、一万五千世帯ですか、そういうものを抜取り調査して、どうですかと聞いたところが、これによる数字というものは、実数の何分の一かにすぎないということは明らかだと思いますが、その点どうですか。
  15. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 国鉄の就業の必要のないという者が三万七千と先ほど申し上げましたが、これは国鉄当局におきまして離職の際、全部本人の申出によりまして調べたものでありましてもちろん自分の健康から考えまして、自分の健康に適した仕事はないだろうということを予想して、そういう申出をした者もないとも言えないと思いますが、大体において病気あるいは自然引退等の者が、私は事実上おそらく全部ではなかろうと考えております。  なお三十五万とか四十万、こういうものが少かろうというのでありますけれども、現在のところでは完全失業者統計といたしましては、これよりほかに実際問題としてはないのでございまして、これより多いだろうという推定をいたしましても、その推定自体にある程度のむりが来はしないか。そこで私どもの方といたしましては、先ほども申し上げましたように、部分就業追加労働状況とか、そういうものを頭に入れながら考えて行くことがやはり必要なのじやないだろうか、こういうふうに見ております。
  16. 春日正一

    春日委員 失業者の数ということに対しては、結局水掛論だということになるわけですが、それで京都で二百万かいくらかかけて、失業調査を徹底的にやるというような話を、この前私が行つたときに、京都府の労働委員会で聞いて来たのです。あれは結果はまだ出ておりませんか。私は非常に注目しているのですが……     〔福永委員会代理退席、委員長着席〕
  17. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまお尋ねの京都のは、まだ聞いておりませんが、一応至急に調べてみてわかりましたら、お知らせいたすようにいたします。
  18. 春日正一

    春日委員 大体失業に対する基礎的な概念は承知したわけですけれども、そういうふうな形で、完全に失業している数がこれだけということでよいかどうか。失業問題を扱う労働省としての基本的な態度の問題ですけれども、今言つたように、会社を首切られて実際働けない人がおる。一番はつきり例を言えば、沖電気の清瀬病院に入院している人たち、これは失業だ。しかもその人たちは、働けと言つたつて、入院しているのだから、働く意思もなければ、就職の運動もできない。こういう人たちもあるわけですわ。それから年とつて働けないというような人もあるわけでしよう。あるいは現在しかたがない、食えないからというので、最近非常にふえて来ている、露店でライターだの、古本だの並べて売つている人たちも、たくさんあるわけです。それと、今言つた完全失業の線から言えば、入院している人なんかは、就職を申し入れたことがないわけだから、この数字の中に出て来ない。労働者として、これは大臣の見解ですけれども失業対策として救済しなければならぬという場合に、一体どこまで救済しようと思つておられるか。私らの考えで行けば、やはり現在日本人の中で食うに困つておる、しかも病気で入院しているような人間は、入院できて早くなおるようにしてやらなければならぬ問題だけれども、実際何らか働く意思があつて、しかも実際働くことがなくて、そういう露店に本でも広げておるというような人たち、あるいはタバコの吸がらを拾つておるというような人たちまで、やはり国の生産力を高めるという方向に就職させる、そうしてそういう人たちが、今困つておる生活におるなら、食えるようにしてやるという意味まで含めて、広くやはり失業者という意味を考えて対処しなければならぬのじやないかと思うけれども、そういう点労働大臣はどうお考えになりますか。
  19. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 まず第一に完全失業者の考え方と観念でございますが、これは春日委員先ほど水掛論になる—水掛論という言葉をお使いになりましたが、水掛論かどうか、私は水掛論だとまでは申しませんけれども、現在日本の持つている統計資料の中では、残念ながらそういうしつかりした統計の組織とあれは今ない。しかも今全国的な失業調査を始めたといたしましても、集計されて来るまでには時間もかかつて、大分遅くなつてしまうということで、一応あれで出た数字、その上にこの間も申し上げましたように、四百何万かある追加労働希望者というものをにらみ合せて、一体広い意味における失業者、もしくは失業者と言わなくても、失業対策の対象として、政府が政策を整備しなければならぬ層というものにどれくらいであるかということも押えて、そしてそれに対して失業対策の計画、吸収計画を立てて行くということが、でき得る範囲であり、また可能な範囲であると思つております。従つてはたして四十何万かどうかという疑問をつつ込んで行きますと、さつきも申しましたように、きわめて厳密なわくをかけての完全失業者の抽出でありますから、春日委員の御指摘のように、その上に、それに近いようなある程度の人たちもおるということは考えられると思いますが、しかしそれはこの間も申しましたように、四百何万かのあの段階の中に、それぞれの形でおるのであつて、私たちの大きな考え方としましては、三十五時間以上すでに働いておる、そうしてなおかつ生活をもつと充実させるためにもつと働きたいのだという人たちが、二百数十万おりますが、この人たちは、それでかまわないとは申しませんけれども、これは生活充実の問題、広く国民経済の復興と直接結びついた問題であつて失業の対象として考えなければならない人は、その下にいる、十九時間以下きり働いておらないとか、三十時間、二十時間しか働いていないとかいう、こういう層なのでございます。大体論といたしましても、十九時間以下という人たちは、ある意味失業対策の対象と最初から考えてよいと思います。それから二十時間以上三十時間以下というふうになりますと、今後の経済界の推移によつて、条件がそういうような上の方の三十時間の層に近寄る人もありましようし、下の方に落ちて来る人もあると思いますが、こういう情勢に応じて対処して行けばよい。今度の二十四年度補正予算下半期を通じての失業者救済計画、及び二十五年度の計画は、こういう点から勘案しまして、あるいは完全失業四十数万人を対策にしただけの失業救済計画じやなくして、その上の層が相当失業対策の対象となるという考えのもとに、失業者吸収計画を立てたわけでございます。その計画の大要については、おそらく局長から説明があつたと思います。そういうような意味でもつて失業対策をやつて行きたい。  それから今春日委員の御指摘になりました病気の人たちという場合には、これは働く意思はあつても、事実使う方でも使えない。働く方の人たちも、さあ働けといつても働けないのでございまして、これはかまわずにほつておいてよい人たちだとは申しませんけれども、普通の働く諸条件を全部備えておる人たちとは、やや違つた形で国家としては考えて行かなければならないと思います。ある場合には、広い意味の社会保障制度の一環の何らかの方途なり、あるいは生活援護の方途なりというような方に、問題が移つて行く人たちもあると思います。それらにつきましては、なお御指摘のように——そういう方面の救済等につきましては、将来は——将来と言うより今緊急の事態でありますから、厚生省とも打合せまして、何らかの考慮は払いたいと思います。やや普通の意味失業対策とは、性格が違つているのではないかというふうに考えております。
  20. 春日正一

    春日委員 大体失業救済の見通しをお聞きしたのですけれども、今の議論から行けば、やはり具体的に出て来ておる問題、たとえば数がどれだけということが大体水掛論になるということになれば、実情においてどうだからこうということが、一般施策をやつて行く上において、問題になると思うのです。この前の第五国会で大臣も説明されて、百八十万程度のものが出るかもしれぬ、それに対してこれこれの吸収対策をとるというような話であつた。ところで七月にこの委員会としてずつと関西に行つてみて、あのときの状況を調べてみると、たとえば京都なんかに行つてみると、緊急失業対策事業で働いておる人間ではなくて、職業安定所へ来る人間の就業率が八%だ、京都ではほとんど絶望ですと、あすこの職業安定所長ですか、課長ですかが言つておつた。神戸へ行つてみて一九・七%、これらはよい方です。しかも失業者の出始めたのが七月からずつと多いのです。それで七月初めに行つてそんな状態です。緊急対策事業の方でも、大体京都では一日百七十四円かの手間で、四日に一ぺん、あるいは五日に一ぺん。神戸に行つて見ると、一日百二十七円という賃金で働かしておる。これは法律からいつても不当ではないかということで、聞いてみたところが、人数が多いから、六時間労働制にして百二十七円で働かせる、しかも三日ないし四日に一ぺんしか働けないというような状態なんです。だから、緊急失業対策事業で救われる部分としてはほとんどないし、また四日に一ぺん、五日に一ぺん、百七十四円あるいは百二十七円もらつたんではどうにもならないというような状態に、すでに六月の末ごろになつておる。それから、七月、八月と首切りが出ているのです。私平へ行つてあすこの職安で聞いてみたところが、あそこでは、大体今推定して出すところですと言つておつたが、失業者は六千人くらいはあるでしようと言つた。登録した者は千人と聞いております。そうしてそれだけの失業者で、安定所へ職を求めに来るのは一日三十人ないし四十人、求人の方は十人くらいあるけれども、大体保険の外交、女中、サービス業、こういうものが大部分である、こういうようなことを言つておりました。ほとんど就職の可能性がないと言つておる。私は八月の末に横浜柳橋の職業安定所へ行つたのですが、夜中の一時起きして行つても四日に一ぺん、五日に一ぺん。現実にそういう状態です。この間も職安関係の人に聞いてみたらもう大丈夫、緊急失業対策の方は仕事は十分行つておると言つておつたが、私は現実に柳橋で見て来たが、朝そんなに早く出かけて行つても、やはり仕事にありつけないというのが具体的な事実です。だからやはり失業対策事業費を今八億余ふやして、人数をとにかく八万人吸収できるようにしてみたところで、まだそういうような形で、非常にあふれておる者がたくさんあるし、今後も出て来るとすれば、これだけではほとんど焼け石に水に近いものじやないかということが考えられる。  もう一つの問題は、これは基本的なことですが、今言つた保険が切れるという問題です。この保険料の平均を聞いてみると大体一箇月三千円程度です。そのくらいしか払つていない。そういうように額が少い。だから首切られた直後の人の状態を見てみると、一箇月ぐらいは退職手当もあれば、前の月の給料もあるということで、若干生活はよくなつておるが、それからずつと下つて来て、四箇月、五箇月になると、もうどうにもならなくなつて来ておる。そういうところでは結局食事を抜くとか、あるいはまずい物を食うという状態が非常に出ておる。沖電気の首切りのあとなんかを調べてみると、そうなつておる。特に中小企業などで首切られた人たちで、職安に来ておる人の状態を調べてみると、約半分に近い者が退職手当をもらつていない。非常に生活が窮迫しておる。だから失業保険が切れてからの生活というものは、非常に大きな問題です。とにかく板橋の明星寮なんか調べてみると、一食抜きという者がほとんど半分以上もある。朝すいとん、昼抜き、晩おじやということで、二割ぐらいは実際はつきり病人という形になつておる。こういう状態であります。四月から失業保険給付がずつと急激にふえたのですが、四月からもらえる人は、失業保険が切れておる。そういう人は今後毎月々々たくさん出て来る。これに対して政府はどういうような施策をとるか、私は好ましいことではないけれども、こういう事態に対しては、保険料をもつと上げてやるということ。保険給付期限を延ばして、その間に早く産業全般の計画を立てて吸収できるようにしなくちやならぬのじやないかと思うのだけれども、こういうことについて大臣に伺いたいのであります。
  21. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 春日さんが今一番しまいにおつしやつた措置をしておいて——言葉は違うかもしれませんが、国民経済の雇用力を引上げて、最終的に政策を強力に押し進めなければならないとおつしやいましたが、まつたく同感でございます。そういう建前のもとに政府失業対策は組み立てられておるのでありまして、御指摘のように二十四年度当初予算には年間八億であつた。それが今度は補正でもつて四箇月で八億五千万円になりまして、そのほかに五億円直接的なものが公共事業の中に都市復興費として入つており、かりに十三億といたしましても——予算では来年度四十億となつておりますが、それは緊急やむを得ない必要なものです。あくまでも失業者に対する対策であつて、そんなもので今の日本の失業対策なり全般の雇用計画が成立つものではないということは、私たちも考えておりまするし、しかもこの春から失業対策の組立ての説明にあたりまして、しばしば繰返して申し上げました通りでございます。従つて失業保険の方も今度の予算におきまして増加を見越して、政府の負担額八億余を計上いたしておりますけれども、そういつたものは失業保険にいたしましても、緊急失業対策にいたしましても、あくまでも緊急の段階に応ずる緊急的な措置である。そして全体の失業対策は国民経済自体の問題の中にあり、これは広い意味で申しますと、予算全体に盛られたところの経済政策の性格の中にあると言わなければならないのであります。さらにもう少しはつきり言えば、特に失業問題に関係のある公共事業費の動き、それから上半期には放出が相当遅れたけれども下半期においては放出が予想され、二十五年度にも相当引続き放出が予想される見返り資金の強力な運営というような面、それを通じて国民経営全体の雇用力の上昇というところに、重点があることは御指摘の通りであります。この問題につきましては私自身が直接の担当の衝にはございませんけれども失業対策の面からいいまして、失業保険の経費を増加すべし、緊急失業対策費を増加すべしという要求を閣議その他においてすると同時に、今度の予算及び来年度予算につきましては、そういつた公共事業費の強力な運営、それから見返り資金を強力に運営して行く。それから一方に、しつかりした永久性のある雇用をきめて行くという方式は、相当盛られておると私たちは確信しておるわけであります。なお細目の点につきましては局長その他から説明いたさせます。
  22. 春日正一

    春日委員 失業保険のあるものはいいとして、たとえば今度首になつた官公吏、引揚者、農業、商業の面から出て来る失業者、中小企業の失業者保険がない。そういう条件の人だから、食い詰めて出て来るので、失業して直ぐ困る。これに対する救済措置はどういうふうにお考えになつておりますか。
  23. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 要するに全般的な失業の臨機応変の措置は、公共事業なり、あるいは失業対策事業なりでやつて行くということであります。しかしながらやはり根本の問題は、先ほど大臣からお答えになりましたように、日本の経済全般の向上、これが一番の中心じやないかと考えております。
  24. 春日正一

    春日委員 それからもう一つ、こまかい問題についてお聞きしますが、失業救済事業というものを始めますね。ところが公共事業についても地方負担が三分の一とある。そうすると地方の最近の財政が非常に困つて来て、その三分の一の負担ができないというようなところを、私もちよいちよい聞くのです。これに対して失業救済事業というものを、全額国庫負担でやつて行くというようなことは考えておられるのですか。
  25. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 ただいま御指摘の問題は、一つの考え方としてすでに政府側でも考えられたのでございますが、諸般の情勢から、今ただちに実現するという域には至つておりません。しかし重要な問題でありますし、政府はなお今後もその線において検討し、何らかの考慮を払うという考え方を持つております。
  26. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際お諮りいたします。本労働委員会におきまして、衆議院規則第九十四条による国政調査の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたしまして、調査する事項は、労働事情に関する事項とし、調査の目的は、失業状態及び労働条件に関する諸調査並びに対策樹立として、調査の方法は、関係各方面よりの意見聴取及び資料要求等といたしまして、調査期間は、本会期中といたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。さつそく本日委員長より議長あてに手続をとることにいたします。  本日はこれにて散会いたしまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時三十二分散会