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1949-11-24 第6回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十四日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 庄司 一郎君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 風早八十二君    理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       大上  司君   岡村利右衞門君       角田 幸吉君    小金 義照君       小平 久雄君    坂田 道太君       島村 一郎君    周東 英雄君       高橋  等君    田中 啓一君       玉置  實君    塚田十一郎君       西村 英一君    丹羽 彪吉君       松浦 東介君    松野 頼三君       松本 一郎君    南  好雄君       稻村 順三君    西村 榮一君       水谷長三郎君    北村徳太郎君       中曽根康弘君    村瀬 宣親君       野坂 參三君    深澤 義守君       米原  昶君    奧村又十郎君       小坂善太郎君    山本 利壽君       平川 篤雄君    松本太郎君       黒田 寿男君    世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         郵 政 大 臣 稻垣平太郎君         電気通信大臣  小澤佐重喜君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君        国 務 大 臣 木村小左衞門君         国 務 大 臣 本多 市郎君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         内閣官房長官 郡  祐一君         大蔵政務次官  水田三喜男君         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         (銀行局長)         大蔵事務官   愛知 揆一君         (主税局税制課         長)         大蔵事務官   原  純夫君         林野庁長官   三浦 辰雄君         経済安定政務次         官       西村 久之君         (財政金融局         長)         経済安定事務官 内田 常雄君  委員外出席者         專  門  員 小竹 豊治君 十一月二十四日  委員坪内八郎君辞任につき、その補欠として松  本一郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任に関する件  昭和二十四年度一般会計予算補正(第一号)  昭和二十四年度特別会計予算補正(特第一号)  昭和二十四年度政府関係機関予算補正(機第一  号)  昭和二十四年度一般会計予算補正(第一号)中  修正  昭和二十四年度特別会計予算補正(特第一号)  中修正     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を許します。圖司安正君。
  3. 圖司安正

    圖司委員 大蔵大臣は、本補正予算安定経済から復興経済への発展的方向を示す芽ばえであると言われておりますが、はたして国民大蔵大臣の言葉を額面通り受取つて納得するでございましようか。昭和二十四年度本予算は、なるほど均衡予算であり、インフレに終止符を打つ予算でありましたが、新聞や雑誌などでは公然と歳入面におきましては、大衆課税であり、歳出面におきましては、消極的支出積極的支出とが四と六の割合で、明確に逆現象を呈しておると指摘いたしておつたのであります。しかも補正予算には米価の値上げ貨物運賃及び船賃の値上げ価格調整費削減国庫補助金の廃止または削減、その他物価を騰貴せしめる要因を相当にはらんでいるのであります。もつともその反面におきまして、税の軽減をはかつておりますから、多少のカバーはできましようけれども、問題は、この予算実施面に移すことによつて国民生活がはたしてどうなるか。国民感情いかように動くか。はたして暗夜に光明を発見したるような希望のひとみを輝かすことができるかどうかに、かかつていると思うのであります。現に本年二月調査総理庁世論調査部国民生活に関する世論調査に見ましても、一年前に比べまして、暮しはよくなつたか、悪くなつたかという質問に対しまして、よくなつたと答えた者が三八・一%、悪くなつたと答えた者が四八・一%、その悪くなつた原因物価騰貴に基くと答えた者が八六・四%、経営がうまく行かないと答えた者が一八・四%であります。これは東京、横浜、川崎、千葉、浦和等の都市を対象としたものでありますが、農林省調査課の本年十月の発表によりますと、富山山形両県のある村を調査いたしましたところ、一町歩未満農家は、富山県では二万六百八円、山形県では一万三千四百十七円の赤字となつておるのであります。これらの調査によつてみましても明らかなように、国民生活実相は、ディス・インフレかデフレかは別ものといたしまして、とにもかくにも借金のために娘を売るのどろ沼に一歩足を踏み込んでおるのであります。政府はデスク・プランだけで国民所得計算するよりも、国民一般にそれが不可能だといたしましたならば、せめて標準町村だけでも指定いたしまして、家計簿の記帳やその他の方法によつて国民生活実相を把握することが必要だと思いますが、そうした措置を講ずるお考えがあるでございましようか。あわせてこの際お伺いいたしておきたいのは、国民経済復興国際経済との関連において、どのようなコースをたどつて、それが国民生活にいかなる影響をもたらすか、そして本予算が明年度予算とともに、その間どんな役割を果すか、すなわち国民所得の増加はいかようになるか、負担軽減は具体的にどうなるか、そうした点について国民すみからすみまではつきりと認識させて、国民の心構えをしつかりさせると同時に、盛り上る協力をまず期待することが、本予算を施行する上に、政府としては当然とらなければならない措置であろうと考えられるのであります。こうしたことに対しまして、各省においては、いろいろな白書であるとか、あるいは世論調査などの消極的な方法を講じておられるのでありますが、一歩進めて積極的に国民世論を指導する、いわゆる積極的な施策がおありでしたならば、承りたいと存ずるのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。国民生活は必ずしもゆたかになつていないというお話でございますが、これは敗戰の結果であり、しかしてまた敗戰後三年余りの間、インフレ政策によりまして、そうして目に見えない、何と申しますか、経済的にはよくない波に乗つてつたのを、今回自立経済立て、そうして国民経済のやり直しをしようと強力な手段をとつた結果といたしまして、一部の者にある程度の困難さを増して来たことは、これは認めざるを得ません。しかし全体といたしましては、私は徐々によくなりつつあると考えるのであります。これは大いに伸びんとする場合に、ある程度の屈する方法でありまして、全体としては非常によくなつて来ておると考えでおるのであります。また私個人としてよくなりつつあると思つておるのであります。  なお次に国民負担はどうなるか、補給金を切り下げること等によりまして、物価は上つて来るだろう、国民負担はそれだけ減らないではないかというふうなお考えのようでありますが、これは特殊の物品につきましては、補給金を切ることによつてつて参りましようが、国民実生活には、減税によりまして、支障のないように、あるいは実生活がよくなるような計算を持つておるのであります。いずれ皆さんにごらんに入れる考えでおるのでありますが、ただいまのところでは、本臨時国会で提案しております減税案によりまして、一月から三月までを計算いたしております。それまでは全部の階級がよくなつて参ります。来年の四月からはどうなるかという問題は、国税のみならず、地方税相当の重要さを持ちますので、来年度は国税地方税調整をいたしまして、そうして次の国会にお出しするようになると思うのであります。なおこういうことは国民全体に知れわたるような方法をとらなければならぬのでありまして、国会で御審議願うのが一番よい方法でございますが、私は国民経済の動向、負担調整等につきましては、国会のみならず、機会あるごとに国民に知つていただくようにやつて行きたいと考えております。
  5. 圖司安正

    圖司委員 次に私は、負担地域差という問題について、大蔵大臣所見をただしたいのであります。応能負担であるとか、均衡負担というような原則は、大蔵省としては特に留意せられておるところであろうと存じます。しかしながら国民生活の側から見ました場合には、それだけでは十分であるとは思えないのであります。職業別あるいはまた所得階層別から見まして、税制の上には相当の考慮が拂われておるのでありますが、地域差という問題になりますと、それが全然関心の外に置かれておるのであります。たとえて申しますれば、同じ百万円の所得があるものでも、その収入の源泉が、十一月の末——今日もうすでに二回も三回も雪の降つております地方は、雪ごもりの生活に入つておるのであります。これらの地方と、全然雪の降らぬ地方とではまるきり違うのであります。投下資本においても、投下労力においても、そこに非常な差があるのであります。いわんや支出面になりますと、防雪のためあるいは除雪のため、保温のため等に、想像もできないほどの余分の経費を要するのであります。農林省積雪地方農村経済調査所調査の結果を見ますと、降雪のための収入減支出増とを計算しておるのでありますが、その出費の状態は、農家一戸平均にいたしまして、積雪一メートル以下のところでは全体の経済の一二%、一メートル以上二メートル以下では一五%、二メートル以上三メートル以下では二〇%、三メートル以上は二五%というような莫大な数字を示しておるのであります。そこで本補正予算にも、石炭あるいは寒冷地手当というようなものが計上されておるだろうと思いますけれども、一方これを押し進めまして、税の上にもこのような地域差を認めるお考えがないでございましようか。応能負担均衡負担原則に筋金を強く通す意味におきましても、ぜひ地域差を認めてほしいのであります。かつて政府に設置せられました雪害対策調査会におきましては、会長内務大臣から政府に対してかくのごとく答申いたしておるのであります。「雪国地方においては、各種生業経営または家屋の維持その他において、他の地方に比し防雪費除雪費等多額経費を要するものあるをもつて所得または営業純益もしくは家屋賃貸価額等課税標準認定にあたつては、右の経費計算留意するを相当と認める。」かような答申をすでに昭和八年には政府に対していたしておるのであります。もとより政府におかれましては、必要経費の算定の上に、こうした点はつとに御留意になつておるとは思います。かりに御留意になつておるとすればするほどこれを表面化いたしまして、税率の上にはつきり認めていただいた方が政府施策国民に徹底せしめる上においても、きわめて必要な措置ではなかろうかと思うのであります。政府の内部におかれまして、必要経費の中にこうした特殊の事情は十分に考慮いたしておるというだけでなしに、これを表に出される御意思があられるかどうか。もし幸いにして雪国地方に特殊の税率を認められるということでありましたならば、少くもそれは三分の一を下らざる範囲においてお認め願いたいと私は思うのであります。またそうあることが地域差を認めるところの、きわめて応能負担原則に沿うゆえんであると考えるのでございます。大蔵大臣所見をお伺いいたします。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 雪国地方に対しまする課税につきましては、お話の通りに、従来から問題があつたのであります。土地賃貸価格決定家屋賃貸価格決定につきましても、議論のあつたところであります。われわれといたしましては、所得に対しまする税率でかげんするよりも、課税標準でかげんするのが理論的であり、また実際的であると考えております。従いまして、従来もそうでありますが、今後とも課税標準決定につきまして十分留意し、税率でかげんすることはいたさない考えでございます。
  7. 圖司安正

    圖司委員 ただいま大蔵大臣は、課税標準で御決定になる方が論理的であり、また実際的であるというお話でございますが、私はそれといささか意見を異にするものであります。と申しますのは、課税標準ということになりますと、税務当局がしやくし定規になるおそれが多分にあります。事務的な、あるいは認定的な措置によつていかようにも課税標準が動いて参るのであります。もしかりに大蔵大臣のおつしやるように、認定でやられた方が実情に即するということでございますならば、むしろ百尺竿頭一歩を進められまして、それを税率の上にはつきり現わされた方が、政治的な措置として、地方の住民を納得せしめるために、かえつてよろしいのではないかと私は思つているのであります。あえて税務官吏の素質を疑うわけではございませんけれども、現在二十五歳以下の者が七〇%を占めるとか、あるいは八〇%に達するとかいわれ、経験年数二年以上の者はほとんどおらないというような実情にある税務署の方々が、すみからすみまで実情調査するということそれ自身が、むりではないかと考えるのであります。それよりもむしろ税率の上に特別措置はつきりと講ぜられた方が、政治国民に信頼せしめる上におきましてよい措置ではないかと考えるので、もう一回その辺大蔵大臣所見を伺います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 議論にわたるようでありますが、私は理論的にも実際的にも、課税標準でかげんするのが適当であると考えております。
  9. 圖司安正

    圖司委員 そうした問題につきましては、今後大蔵省は、あるいは土地賃貸価格調査でありますとか、あるいは所得調査について、税制の改正と相まつて十分事務的な措置を講ぜられると思うのでありますが、現在の税務署異動状況を見ますと、署長初め税務署員は、ほとんど一年以内もしくは二年以内で異動をしているのであります。地方実情に通じない考ばかりだと言つては過言でありますけれども、そうした点が多分に見受けられるのでありますから、将来課税調査をなさる場合におきましては、私はあくまでも税率に差異を設けた方が理論的であり実際的だと思うのであります。大蔵大臣としては、それはただちにとりがたい処置であるということでございますならば、各国税局を通じまして、末端税務署までその趣旨が十分徹底するように、御通牒でもお願いしたいと思うのであります。  その問題はそれだけにいたしまして、次に、前の議会に出ることになりましていろいろ物議かもしました、いわゆる徴收目標額の問題でございますが、本年度からこの徴收目標額は廃止した、事務的にはそういうことはやらぬということでございますが、それによつて私は問題が解決いたしたものとは考えません。むしろより重大な問題が未解決のまま、置きみやげとして残つておると思うのであります。それは何であるかと申しますと、徴收目標額を越えた財務局と、徴收目標額に達しなかつた財務局のあることでございます。徴收目標額を越えた財務局といいますのは、仙台、札幌、及び金沢が一番多いのでありまして、一二〇%からに達しております。関東信越、名古屋、高松の各税務署は百パーセント内外。それから徴收目標額に達しない所は東京、大阪、福岡の財務局でありまして、いずれも八十パーセント内外であります。それについて実は私は、各地の税務署に尋ねまして、その実情をいささか調査したのでありますが、東北のある税務署では大蔵省指示額の八割を課税したと言つておるのであります。八割課税をしたと言つておるこの税務署は、指示額の一二〇%に達した成績を上げて大蔵省から表彰を受けて、実は面くらつたと職員は言つておりました。そこでさらにつつ込んで申告額更正決定額とを調べてみますと、八、九割までは更正決定をいたしておるのであります。もちろん申告額が多いから更生したのではございません。少いから更正したものでありまして、しかもそれは大蔵省指示額標準にして更正したのではないのであります。指示額を完納するために、その税務署更正額指示額よりさらに二、三割方上まわつて見積り更正したのではないかと思われるのであります。そこで、東北だとか北陸あるいは北海道のような、いわゆる淳朴で、正直で、差押えの赤紙など張られますと、隣近所に外聞が悪いというようなことから、むりに納税したものがかような結果を生んだものと、解釈するよりしかたがないと思うのであります。いずれにいたしましても、この徴收目標額というものは、大蔵省をして言わしめましたならば、單なる事務上の努力目標額にすぎない、割当ではない、こういうようなことを言われるのでありますが、少くも徴收目標額として国税庁を通じて末端税務署までお示しになるにつきましては、そこに相当の根拠がなければならない。でたらめな、単なる事務上の措置であるとは私どもは受取れないのであります。大蔵省といたしましては、農林省のやつておりますように、割当額を突破した供出米に対して三倍の値段で買い上げるとか、あるいは報奨金を出すとかいうような措置は講じていないのでありますから、せめて百パーセントを超過した金額だけでも、昭和二十一年度、昭和二十二年度、二十三年度と積算いたしまして、納税者に還付するような措置でも講ずることが、きわめて実情に沿うゆえんであると私は考えます。もし還付するようなことが、手続上めんどうであるというようなことでございますならば、それを本年度以降の減税額割当てる。そうして正直者がばかを見ないんだというような政治を、はつきりとここに国民に示すことによつて政治に対する国民信頼感を高めるということが、今日の場合きわめて必要だろうと思うのでございますけれども、それに対して大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 納税割当額というのが問題になりますが、私はそういうことはやる意思はありません。大臣就任以来そういうことをいたしませんとはつきり申し上げておるのでおります。今後割当額とか目標額とかいうことはございません。従いましてたくさんとれたところに返すという問題も起つて来ないと思います。
  11. 植原悦二郎

    植原委員長 圖司さん、実は薪炭に関する問題は小委員に付託してあるのでありますが、特に緊急質問として稻村さんから申出がありましたので、本日の劈頭にこれを許すことになつておりましたが、農林当局が見えませんので延ばしておりましたが、この際これを許すことを御承知を願いたいのであります。稻村順三君。
  12. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣がおりませんので林野庁長官から御返答願いますが、七月の終りに木炭の買上げが中止になりましたが、しかしそれまで全販連、全木連、全薪連の合同の協同組合におきまして、当然政府が買い上げるもので、政府に金がないので立てかえ拂いをして、買いつけた手持ち木炭があるわけでありますが、この額が約十三億二千万円と言われております。これに対する金利だとか保管料あるいは手直し損耗料とかいうものの二億を加えますと、十五億二千万円という厖大な額に上つておるのでありますが、これは当然政府としては早急支拂うべきものである。もし支拂えない場合には、農業協同組合を初めとして、まだはつきりと財政的に固まつていないところの組織がつぶれてしまう危険があるのであります。政府におきましては、これを至急拂うという方針をとつているのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  13. 三浦辰雄

    三浦政府委員 お答えいたします。政府薪炭特別会計が、八月一日から買入れの機能を停止した際に、いわゆる集荷業者の方たがお持ちになつてつた薪炭について、補償ないし追加購入をするかという問題でございますが、その集荷業者、ことに団体といたしましては、その傘下の会員が思うような数量を政府が買わないために生活に苦しんでおる。従つてその会団としては、一応その資金を融資をして、政府が買つてくれる際に出すということで、手持ちしておつたというような事情から見ますと、その点は、政府の買入れ停止による結果の補償として、ないしはその資金については考えなければならぬ点ではありますけれども特別会計といたしましては、買入れを停止し、買わないものに対しては、何ともその事情はまことに御気の毒ではあるけれども補償方法のようなものは、今後とれない。こういうような見解を持つておるわけであります。
  14. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、これによつて協同組合その他の団体破産状態に瀕しているというのに対して、政府は何か特殊の救済策考えておるかどうか。その点もはつきりとここで御答弁願いたい。しかもこれは相当急を要する問題であり、政府が買うという建前の土に立てかえ拂いをしておるのであります。この立てかえ拂いをいかんともしがたいということになれば、もしこれが民間であれば、おそらくただでは済まない問題であろうと思う。政府なるがゆえにしかたがないといつて投げるというのは、あまりにも無責任きわまると思うのでありますが、その点についてもう一度伺いたい。
  15. 三浦辰雄

    三浦政府委員 この問題につきましては、閉鎖の前後、すでに衆議院の農林委員会におきましても、特にこの問題が非常に論ぜられました。当時からすでにまことに遺憾ながら、先ほどお答え申し上げたような状況であるということを、お答え申して参つたのであります。しかるところ、その後におきまするところの状況は、生産者の横の連絡等によりまして、思つたより割合卸売方面に対抗ができて、さような会団としてこのためにまつたく参つてしまう、こういうようなことには私どもとしては考えておりません。
  16. 圖司安正

    圖司委員 大蔵大臣昭和二十四年度は徴税目標額はない、こうお答えでございますけれども、私のお伺いしておるのは、昭和二十四年度の徴税目標を示しておられないということを伺つておるのではございませんで、昭和二十一年度から二十三年度まで、すでに徴税目標額というものを示して、その收入実績が一〇〇%を越えるところと、一〇〇%に達しないところとがある。一〇〇%を越えるところに対しましては、どのような措置を講ぜられるか、しかもその一〇〇%を越えた地方は、経済的にもきわめて貧弱な地方でありまして——あえて私は税務官吏の苛斂誅求を云々するわけではありません。きわめて職務に忠実であつたとは考えますけれども、それがために、その地方国民があるいは借金をして税金を納めた。非常なむりをして農家でありましたならば、再生産費を犠牲にしてまでも、税金を納めたという事実は、私ども至るところに見聞するのであります。こうした徴收目標額を超えた、しかも二〇%から三〇%というようなきわめて莫大な超過納税があつたのでありますから、それに対して、せめて政府政治にあたたかい心持を持つておるといたしましたならば、国民に対して還付の方法を講ずるか、あるいはまた幸いにして補正予算には減税措置も講じておられますけれども、二十五年度にはさらにその減税を増すと大蔵大臣は議場ではつきりと明言せられておるのでございますから、その中に織り込んででも、過去にそうしたむりをして收入をいたした金額をば、国民に対して返してやるという措置を講ぜられることが、この際きわめて必要な措置であろうと思うのでございますけれども、重ねてその点をお伺いいたしたい。  あわせて、昭和二十四年度は徴收目標額はなるほど大蔵省から押しつける——言つては語弊があるかもしれませんが、通牒はいたしておらないかもしれませんが、漏れ聞くところによりますと、下からこれだけの金額はとれるんだというような、いわゆる徴收目標額税務署の方から国税局へ、国税局からさらに国税庁へと下から上に盛り上げて来ておるというようなうわさも聞くのでありますが、もしそうしたことが事実あるといたしましたならば、それこそは過去の徴收目標額が一つの基準になつておることは明らかだろうと思われますので、あわせてそうした事実が実際ありやなしやという点につきましても、お伺い申し上げたいのであります。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。税收の割当ということがあつたというお話でございますが、それがたといあつたにいたしましても、何も有権的なものではございません。税をむりしてとることは最も悪いことでありますが、今までとつた税がむりであつたかどうかということは問題であります。とり足らない分は五年間においては遡及してとりますが、お聞き及びの通りに実地調査いたしまして、過去の分までもさらつてとりつつあるのであります。今までとつたのが、何も権威のない目標額とか割当額を越えたから、これがむりであつたという前提にはならぬと思うのであります。従いまして返すという措置はとるべきでないと思います。  第二段の御質問の、目標額割当額はないが、今度下から報告させてやつておる。これはよくないじやないか、こういうようなお話でございますが、これは圖司さんが大蔵大臣になられてもやはりおやりになると思うのであります。どこの税務署は今年どのくらいとれるかということを報告することは、下級官庁として上級官庁に対する務めだと思います。ある税務署調査を十分しなくて、このくらいしかとれない。ある税務署は非常に用意周到に調査いたしましてこれだけとれる。これを野ほうずにやつておれば、国全体に非常にでこぼこがあり、不公正がありますから、適当な科学的調査をいたしまして、甲税務署はこれだけ、乙税務署はこれだけ、丙税務署はこれだけということを国税局長なり、国税長官なりが、報告をとることは当然の仕事だと思うのであります。私はそういうふうなやり方についてさしとめる気持はございません。そういうようないろいろな方法を講じまして、税務署ごとの不権衡のないように努むべきだと考えます。
  18. 圖司安正

    圖司委員 ただいま大蔵大臣の言われた、目標額をかつて上から大蔵省が指示しておかれて、それを越えたからそのままでいいんだというようなことは私には納得しかねるのであります。また下から盛り上げるのは当然だというお話でございますが、しかし人情の弱みとでもいいましようか、ややもしますと過去にとらわれがちであります。過去にすでにむりな徴收目標額というものがあつたのでありますから、それにとらわれるのが人情ではなかろうかと思いますけれども、そうした点に対する十分の御指導を願いたいと思います。  その問題はそのくらいにとどめておきまして、次に地方配付税の問題についてお伺いいたしたいのであります。配付税の根本趣旨は、貧弱な地方団体に財政的な基盤をつくつてやることだと思うのでありますが、そうとしますならば、各都道府県から国庫で吸い上げておる国費と、地方配付税だとか、あるいは補助金等によりまして地方に還元しておりまする経費割合は、はたしてどうなつておるでございましようか。まずその点をお伺いいたしたい。そうして貧弱な地方に対しましては、少くとも国庫から、その吸い上げておる金額より少くない金額を還元せしめる措置を講ずることが、当然の措置であろうかと考えられるのであります。ことに地方団体に委任いたしております国家事務によつて、貧弱な地方であればあるだけ、地方の固有の事務が圧迫をこうむつておるのであります。人件費その他の消極的な経費ではなくて、産業助長費であるとか、必要な行政費でありますとか、そうしたものが自然に節減せざるを得ないような状態に置かれておるのであります。ことに今後開発を要すべき資源を多分に包蔵しておる地方が、国家事務の犠牲になつておるというような矛盾現象も露呈しておるのでありますから、こうした意味におきまして、少くとも今回九十億の増額を見込んでおります地方税の配付金におきましては、東北地方であるとか、新潟県であるとか、單作地帯の、しかも将来開発すべき資源の豊富な地方に対して、特別の措置を講ずる御意思がないでございましようか、その点をお伺い申し上げたい。これらの地方はまた国有林のきわめて多い地方でありまして、国有林の收入が国庫にころげ込んで来るだけでも、そこに非常に財源の圧迫をこうむつておるのであります。農林省といたしましては、国有林の所在町村に対しまして、涙金ほどの交付金は出しておりますけれども、とうてい收入には比較にならぬものがあるのであります。こういう点を考えてみましても、国家事務あるいは国家の財産收入というものが、そうした地方を圧迫をしておる実情というものがきわめて濃厚でありますので、貧弱町村に対する特別措置ということに対して、大蔵大臣いかようにお考えになつておられるのでございましようか、その点をお伺い申し上げたい。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 地方から吸い上げておる金よりも、やる金の方が貧弱町村においては多くなければならない。まことにごもつともでございます。従来昭和十五年までは、地方税の独立税として、所得税附加税とか、あるいは家屋税をとつておりましたが、全部国でとることにして、そうして、ずつと昔の財政調整交付金ようなかつこうで、分與税分與金の特別会計ができた。その後配付税配行金にかわりましても、その府県市町村の財政状況に応じて、適当に、国で取上げたものを返すことに相なつておるのであります。従いまして、非常に財政的にゆたかなところは、あまり行かなくて、貧弱町村には、吸い上げた以上の金が行くように相なつておるのであります。シヤウプ勧告案によりましても、この主張は堅持されまして、地方財政委員会というものを特に設けて、貧弱町村の財政に寄與する方法考えておられるのであります。われわれもこの線に沿つて今後やつて行きたいと考えております。
  20. 圖司安正

    圖司委員 なおこの際お伺いいたしておきたいことは、地方公務員に対しまして、寒冷地手当、石炭手当というようなものは、行くようになつておるのでありましようか、その点ちよつとお伺いしたい。
  21. 河野一之

    ○河野政府委員 地方公務員に対する石炭手当、寒冷地手当は、地方団体の財源の中から出すという建前になつております。ただ義務教育費とか、国家から補助する職員の分につきましては、これは人件費を補助している建前から、石炭手当、寒冷地手当も、一部今回の補正予算に計上しておりますし、また一部は既定予算の中から差繰り支弁するというようなことで処置しております。
  22. 圖司安正

    圖司委員 ちよつと主計局長さんにお伺いしますが、そういたしますと、地方団体経費の中から出すわけですか。この地方配付金の総額の中には入つておりませんですか。
  23. 河野一之

    ○河野政府委員 今回九十億円の地方配付税配付金を増加いたしましたのは、最近における地方財政の状況から、この程度の金額を必要とすると考えた次第でありまして、この配付税の中にイーア・マークして入つておるわけではございませんが、地方財政全体として、この程度の金額が行くならば、十分石炭手当その他の経費も支出し得るのではないかというふうに考えておる次第であります。
  24. 圖司安正

    圖司委員 もう一度お伺いしたいのですが、そうしますと、石炭手当あるいは寒冷地手当を国家が支給しておる地域でございますが、それらの地域に対しましては、地方配付税といつたようなものも、率を高めて配付するというような措置を講ぜられる御趣旨でございましようか。
  25. 河野一之

    ○河野政府委員 それは九十億円の配付税の配付の方法の問題であります。これは法律で一応きまつておるのでありますが、最近各地方団体における災害の状況というようなことも勘案せられますので、この配付税九十億円の配付について、そういう事情をも勘案して、特段の考慮をいたすことが必要ではないかというふうに考えた次第であります。
  26. 庄司一郎

    ○庄司委員 圖司君の質問に関連してお伺いしたいのですが、先ほど大蔵大臣は、いわゆる昔の言葉の貧弱財政町村等には、特段の考慮をもつて配付税配付金を交付しておる、そういう措置をとつておるというようなお答えでありましたが、それに関して一点伺いたいのは、最近、好むと好まざるとを問わず、府県等より天くだり的に引揚者を、あるいは二百戸、あるいは三百戸と押しつけられて、入植されておる町村等は、それらの入植者の子弟が、義務教育の学校等に通学しておる関係上、町村財政は極度に逼迫して来るのであります。さような引揚者たちが、特に無縁故引揚者たちが多く入つておる町村に対しても、大蔵大臣はただいまお答えになられたような御信念の上より、配付税配付金の、特段の財源としての町村に対するところの補助があるかないか、それをお伺いしておきたいのであります。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 配付税配付金は、その地方の人口に正比例し、地方財政力に逆比例して、そうして配付することに原則はなつておるのであります。臨時的にいつた経費につきましても、特に考慮するように、建前としてできておるのでありますから、お話のような点は十分勘案できるように行つておると考えております。
  28. 圖司安正

    圖司委員 石炭手当、寒冷地手当に関連して、もう一点恩給関係でお伺いしたいのですが、このたび恩給につきまして、約三億五千六十万円ですか、増額されておるようでございますけれども、これは今までの恩給を受けておる人たち、いわゆる受恩給者ともいうべき人たちに対しまして、六千三百円にべースに合せて恩給を増額されたのでございましようか。それと、石炭手当、寒冷地手当を、やはりその地域の恩給受給者に対しましても、支給する御意思がおありでございましようかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  29. 河野一之

    ○河野政府委員 お答え申し上げます。今回補正予算に提出いたしました三億五千万円ほどの恩給費の増加は、今回の行政整理に伴う恩給費の増加でございます。御指摘のありました六千三百円ベースの分は、明年度の予算において予算化いたしたいと考えております。恩給の受給者に対しまする寒冷地及び石炭手当は、これは法律にもございます通り、政府の公務員に支給するという建前でございまして、すでに退職いたされた者につきましては、これを支給することは考えておりません。
  30. 圖司安正

    圖司委員 今の主税局長の御答弁はいささか満足しかねるのであります。大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますけれども、すでに恩給を受けている人々は、きわめて安い俸給時代の俸給生活者であります。一身を犠牲にして国家のために奉仕せられた人々であり、それが物価騰貴によつて非常な生活困難を味わつておるのであります。三十年も勤務した人が、わずかに年額一万円台というような人をも少くないのでありまして、こうした人たちの生活をこそ守らなければならぬと私は考えるのであります。そうした意味から、このたびの行政整理によつて、職を離れた人ばかりでなく、すでに恩給を受けて、しかもその恩給がその当時であつたならば、十二分に生活をささえて行くだけの金額であつたものが、時の経過につれて、物価騰貴によつて今日の苦境にあえがなければならぬ状態に追い込まれておる人々に対しまして、何らの措置を講じないということでは、いささか人情味に欠けておる措置だと考えるのであります。大蔵大臣はこうした人々をもこの増額の中に含める御意思があるかどうか。その点お伺いしたいのであります。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 まことに前段はごもつともな御意見であります。二十五年度の恩給につきましては、御意見通りにやる予定で相当増額をいたしております。実は千二百円ベース、千八百円べース、二千九百円べース、三千七百円べースにかわりますときに、恩給受納者につきましても、適当に早く調整しなければならぬことでありましたが、その調整事務上十分に行つておりません。従いまして今小学校の校長をおやめになつた人は三、四万円もらえる。昔長いことをやつてつた人はお話の通り一、二万円しかもらえぬというような不公平があつたのであります。まつたくこれはよくないことである。しかし二十五年度からすつかり改めて、六千三百七円ベースに昔の方も直しまして、そうして恩給を二十五年度から出すことにいたしておるのであります。従いまして二十五年度の予算が出ましたら非常な増額になつておりますから御了承願います。しかして今回の補正予算に組みました三億五千万円のうちに、昔のそういうお気の毒であつた方を入れるということはしばらくごがまん願いたい。今回の分は今年度の退職者による自然の増加だけにいたしております。
  32. 圖司安正

    圖司委員 承るところによりますと、一月から繰上げて支給するというようなことも聞くのでありますが、その点はどうでございますか。
  33. 河野一之

    ○河野政府委員 私からお答え申し上げます。恩給は第一回の支給期日が四月でございまして、それから四箇月ごとに支給するわけでございます。一月から三月までの分を四月に支給いたしますので、二十五年度の予算からは一月分から支給するという構想で考えております。
  34. 圖司安正

    圖司委員 最後に酒の税金についてお伺いいたしたいのでありますが、酒税は大体百二億の増加を見込まれておるようであります。これは一体民自党さんのおつしやるように、造石高を増されたからこういうふうに増額になつたのでございましようか。それとも委託醸造のような方法でも新たにお考えになつておられるのでございましようか。私はその点をお伺いいたしたいのであります。と申しますのは、御承知のように濁酒は今日密造ではなくて半ば公然のようにつくられておるのであります。しかも販売されておる向きすら私どもは多く見聞するのであります。この間私は東北税務署をまわつて歩いたのでありますが、ある税務署に参りましたところ、税務署長は、われわれはとうてい取締りの煩にたえない。むしろこの際委託醸造のような方法を認めてもらいたいというような趣旨のことを、漏らしておられたのであります。消息通の間には、この濁酒の密造高は二百万石あるいは二百五十万石ぐらいに達しておるのではないかというような話も聞きます。昔であつたならばくず米とか、あるいは二番米なんかでつくつてつたものも今日ではもう上等の白米をつぶしておる向きも見受けられるのであります。こうしたことから考えまして、さらに食糧政策とか、あるいは国民健康上の問題から、濁酒は禁止しなければならぬということはよくわかるのであります。しかし一歩しりぞいて考えてみますと、どうも現在の浩石高では不足なのではないか。ことに輸入食糧が増加して参る今日の場合におきまして、濁酒密造を取締るということは、実際において税務署としても、おそらく不可能でございましよう。そうとしますれば、何とかして造石高をふやす。それが正式にはできないということでありましたならば、供出が完納いたした農家に対して、あるいは部落なり村なりが完納いたしました場合には、その完納した後における一定の量を限つて、委託醸造でも認められたらどうかと思うのでありますが、その問題に対して大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 今年度の酒造税百二億円の増收見込額は、最も大きい原因は、いもの割当五千万貫のところが一億万貫になつたことであります。石炭事情がよくなつた関係上、しようちゆうが非常に増産になつたのであります。従いまして都会地におきまするかすとりしようちゆうのやみ酒はなくなつて、非常にしようちゆうの売れ行きがよかつた。第二番はビールが予想以上に売れたことによるのであります。来年度におきましては、いもの統制がほとんどはずれるような状態になりますのと、相当増石いたしまして、やみしようちゆうは追つ拂い得ると思うのであります。しかしお話の清酒の醸造につきましては、御承知の通りに昨年度は四十三万石でございました。最もたくさんつくつた十五、六年前から比べますと、ほとんど八分の一か十分の一になつておるのであります。食糧事情がいいので、今年度におきまして四十三万石をもう少しふやそうと今計画いたしまして、関係方面と折衝いたしておりますが、いくらふやしても二十万石程度で大したことはないと思います。従いましてお話のような超過供出後における委託制度ということが問題になつておるのであります。この問題は一昨年埼玉県で施行いたしまして、かなり好成績をあげたのでありますが、その後やはり供出問題とからみまして、なかなか実際問題として委託制度は実現困難のように思われます。実際問題としてはお話の通りでございますが、食糧事情から申しまして、なかなか委託醸造の問題の見通しは、私は困難とお答えせざるを得ないのであります。     —————————————
  36. 植原悦二郎

    植原委員長 この際お諮りいたしたいことがあります。薪炭特別会計予算委員尾崎末吉君より小委員辞任の申出がありましたので、この補欠をいたしたいと存じますが、これは委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは岡村利右衞門君を小委員に指名いたします。  なお同一の薪炭特別会計予算委員川崎秀二君より小委員辞任の申出がありましたので、その補欠をいたしたいと存じますが、これは委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なければ中曽根康弘君を小委員に指名いたします。  これにて休憩いたします。午後は正一時より開会いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時二十八分開議
  39. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を許します。今井耕君。
  40. 今井耕

    ○今井委員 大蔵大臣に次の諸点についてお伺いをいたします。  本年度の補正予算に、申告納税が百九十六億円の減少を見ております。この内訳を、最初に農業事所得、営業所得その他について、はつきりした数字をお伺いしたいと思います。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 申告所得税の今年度の減收は、お話の通りに百九十数億円を見込んでいるわけであります。内訳におきましては農業七十八億並びに営業六十八億円、その他の事業所得を五十億円程度に見込んでおります。
  42. 今井耕

    ○今井委員 申告納税分につきまして、減少分を見込まれたことは、非常にけつこうでありますが、その原因を考えてみますと、当初予算におきまして、前年度に比べて農業所得において二七・五%増し、営業所得において三一・五%増し、その他において二九%増しを見込んでおられた。この点につきまして、当初予算のときにも非常に水増しであるというようなことを、われわれは相当主張しておつたのでありますが、今回こういうふうに減少を見込まれたのは、そこに原因があると思うのでありまして、その後の経済の情勢から考えますと、私はこの一割程度の減少ではまだむりができるのじやないか、こういうことを多分に心配するのであります。この減收を見込まれたところの基礎につきまして、もう少し納得ができるように御説明を願いたいと考えます。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 農業におきましては、例年とは違いまして相当の災害がありました関係も見ております。営業その他の事業につきましては、最近の経済事情が、予定よりは中小商工業者に対して減收があるのではないかということを見込んで減らしたのであります。
  44. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの御答弁は非常に抽象的で、まだ十分納得ができぬのであります。たとえば農業所得で当初予算におきましては、前年に比べて二七・五%がふえている。これそのものが非常に多過ぎる。また営業所得そのものにおいても三一・五%増になつている。こういうものが根本において多過ぎるので、それが一割程度の減少でとどまるかどうかということについて、この百九十六億円というものを出されたことについて、何か根拠があると思うのです。今こうなつておるからこうだというような、この百九十六億円を出された根拠があると思う。そうでなければ百九十六億円というものは出て来ない。その点をちよつとお伺いしたい。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げました通り、農業につきましては災害が予想以上に多かつた。営業その他のものにつきましても、最近の経済状況を見込んでやつておるのであります。
  46. 今井耕

    ○今井委員 その数字はないのでありますか。ただそういうふうなぼつとしたお見込みでお出しになつたのですか。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 こまかい数字につきましては、別の機会に政府委員にお答えさせてもよろしいと思います。
  48. 今井耕

    ○今井委員 それではこの問題はあとから答弁があるそうですから、保留をいたします。  次に事業所得に対する勤労控除の件でありますが、この問題は長い間われわれが主張して来まして、今回のシヤウプ勧告におきましても、十月からさかのぼつて一五%の基礎控除を認むべきであるということが示されております。われわれはそれを非常に期待しておつたのでありますが、遺憾ながらその実現を見ておりません。まず最初に事業所得税につきまして、十月から一五%の勤労控除をするなれば、歳入にどれだけ影響するか、その額をお伺いしたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 大体七十億円程度影響すると思います。
  50. 今井耕

    ○今井委員 事業所得者におきまして、農民の経済が非常に悪化しておるとともに、中小企業の所得も非常に減少し、同時に勤労的性格というものがいよいよ強くなつて来ておるのでありまして、これは当然この十月からさかのぼつて軽減せらるべきであると考えるのであります。なおまた政府におかれましても、相当この点について御心配されたと思いますが、いま少しその経緯について、あるいはお考えについて御意見をお伺いしたいと思います。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士はお話の通り、勤労所得が二割五分の控除で昭和二十四年につきまして課税しております関係上、権衡を考えて、事業所得につきましても十月から三・七五%控除すべしという勧告書が出ておりますが、私は租税の軽減は、各階層を通じまして同時に出発するのが適当だと考えましたので、二十四年度分につきましての控除については、シヤウプ勧告案に従わなかつた次第であります。
  52. 今井耕

    ○今井委員 シヤウプ勧告そのものにも、ただいまの大蔵大臣の答弁のごとくに、なるべく同時に行つた方がいいというお考えはあつたと思うのです。それを特に十月からさかのぼつてやるというふうに勧告されたということ、そこに深い意義があると思う。私たちもそういうふうに思うのです。この問題はいろいろ論議が盡きぬ思うのでありますが、われわれその点において納得しがたいものがありますが、時間の関係もありますので、これだけにしておきます。  次に本年度の補正予算におきまして、食糧管理特別会計の繰入れ百七十億円という問題は、これは非常に重要な意義を持つものであります。この政府提出の資料によりますと、輸入食糧の増加及び国内産食糧供出増加を見込まれるため、これに伴う運転資金の増加を必要とする、こういうふうに出ておりますが、この百七十億円の前提となるべき事項はどういう事項であるか、何を基礎として出されておるか、その概要をお伺いいたします。
  53. 植原悦二郎

    植原委員長 ちよつとこの際申し上げます。総理は二時にここへ御出席になります。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧管理特別会計への百七十億円の繰入れは、主として輸入食糧の増加によるものであります。なお米価の上りました関係も、一つの原因にはなつております。
  55. 今井耕

    ○今井委員 この説明に輸入食糧の増加及び国内産食糧供出増加が見込まれておるというような事項がありますが、一体食糧供出の増加というのは、どれだけ増加になつておるか、この点をお伺いいたします。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。
  57. 河野一之

    ○河野政府委員 食糧管理特別会計におきます積算の根拠をちよつと申し上げます。年度内に食糧が二百九十万五千トン輸入され、当初予算におきましては、これが二百三十万トン程度と見ております。それから国内の食糧の供出でありますが、二十四年産米につきましては、普通供出が二千九百万石、超過供出が二百二十万石程度に見ております。次に米の価格でありますが、三等米の価格を四千二百五十円、これに格差四十四円、俵代百九円を足しまして、生産者価格が四千四百五円ということに相なつておるわけであります。これはパリティー一五六・二四で計算してございます。この暮に対する消費者価格の計算でございますが、明年の夏作につきましては、すなわち麦でありますが、これはパリティーが一六〇程度に相なる。それから秋作についてはパリテイーが一六八程度になる。明年一年を通じまして、消費者価格を動かさないという建前、收支相償うという建前で、明年の一月から消費者価格の値上げをいたします。これは約一一・三%でありますが、その結果十キロ当り従来の四百五円のものが四百五十円になるのでありますが、一年を通じてそういう価格で計算する。そして一月から三月までの売拂い数量を差引きますと、大体この予算に出ている程度の金額が運転資金として年末に不足する。こういう計算から出ておるのであります。
  58. 今井耕

    ○今井委員 次に今回提出の補正予算のうちで最も特徴とするところは、ほかの補給金は削られておるのに、主食の輸入食糧の補給金が大巾にふえておるということであります。ちようど米において八十二億二千六百万円、当初予算のときの三倍であります。麦について六十二億六千二百万円増となつております。合計して百四十四億八千八百万円の多額に上つております。これは米麦だけの分でありますが、大体一石当りの輸入の単価が幾らで、輸入先はどこの予定になつているか、この点をちよつとお伺いしておきたいと思います。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお話申しましたように、当初は輸入の主食を二百二十九万トンと予定しておつたのが、二百九十万五千トンになつた関係であるのであります。しかしてその内訳につきましては政府委員をして答弁いたさせます。
  60. 河野一之

    ○河野政府委員 食糧の補給金でありますが、これはお手元に差上げました資料に詳しくついていると思うのでありますが、大体小麦は一トンあたり百ドル程度でございまして、その結果一トンあたり三万六千円ということに相なります。これは拂下価格が二万一千八十三円でありまして、補給金がトンあたり一万四千九百十六円、すなわち約一万五千円程度であります。それから米は一トンあたり百六十八ドル、三百六十円レートで計算いたしますと六万四百八十円になります。拂下価格が二万八千十四円でありまして、補給金の額が三万二千四百円程度であります。大体以上でございます。
  61. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大蔵大臣か安本長官にお尋ねしたいと思いますが、国際小麦協定には参加するのですか、参加しないのですか、その時期がいつであるかということをお知らせ願いたい。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 国際小麦協定には参加を申し込んでおります。まだいつ参加ができるかどうかそれはきまつておりません。
  63. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから国際小麦協定に参加すれば、アメリカの最低価格は一ブッシェル、一ドル五十セントということは大体聞いておりますが、そういたしますと今の統計によると、日本渡しで大体一トンでやはり百ドルという計算で買つているのでありますが、参加すればこの数字は減ると見てよろしゆうございますか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 今年度におきまして参加の見込みはついておりません。しかも今年度輸入するものはすでに既契約のものでございます。従いまして来年度におきましては、参加を前提とせずに予算を組むことにいたしております。参加すればそれだけ減ることになります。時期にもよりますが、相当数十億円の輸入補給金が減ることと期待をいたしております。
  65. 今井耕

    ○今井委員 次に日本経済の自立のために補給金削減するということは、非常にけつこうなことであると思うのでございますが、本予算におきましてその点について非常に大きな矛盾がある。それは何かと言えば、安定帶の物資やあるいは一般の輸入補給金削減されております。ところが先ほどもちよつと申しましたように、主食の輸入補給金は非常な大巾な、百五億九千万円非常な多額のものが増加しております。これは結局食糧の価格を財政負担によつて押え、それによつて低賃金も維持して行く、そして産業の復興をはかろう、こういう意図に出ているものであると考えます。そこでこの補給金削減という問題について結論的に考えますと、他の産業の竹馬の足を短かくするために、主食に対する補給金、竹馬の足を非常に長くして、その長くすることによつて他の竹馬の足を短かくする、こういうところに非常に不健全性があると思うのであります。そういう点から考えまして、目下の問題としては、こういう行き方もやむを得ぬ場合もあると考えますけれども、そういうような隠れた非常な欠陥がここにある。その欠陥の上に立つた他の産業の振興である。こういう結論になると思いますが、これに対して大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。この点をお伺いいたします。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧に対します輸入補給金は、総体の額ではお話のようにふえております。それは輸入の数量が非常に増大したためでございます。しかし世界の主食に対しまする価格がだんだん下つて来つつあることと、国内の主食の価格が上つて来ることによりまして、当初見込んでおりました、すなわち四月ごろの予算のときに見込んだ一石当り、あるいは一トン当りの補給金は減つて来ておるのであります。将来の問題といたしましては、米の価格にいたしましても、肥料の補給金をなくすることによりまして価格が上つて参ります。そして先ほどお話もありました小麦協定に参加することによつて、輸入食糧の価格が下つて来ることになります。従いまして将来はだんだん主食に対する輸入補給金が減つて来ることと期待いたしております。
  67. 植原悦二郎

    植原委員長 この場合、穀物輸入等に関して見返り資金の問題に関連して、緊急質問をしたいというから、これを許します。上林山榮吉君。
  68. 上林山榮吉

    ○上林山委員 聞くところによりますと、大蔵大臣は見返り資金の問題についてドツジ公使と打合せをした、しかもその結果が、報ずるところによりますと相当好転しつつある、こういうようなことでありますが、漏らし得る範囲内においてその結果と見通しを伺いたいと考えます。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の使用につきましては、この議場においてたびたび申し上げておりますように、わが国経済再建のかぎとでも言い得るものであるのであります。従いまして前国会におきまして、この見返り資金を活用して、一日も早く再建をはかりたいということを申し述べておつたのでありますが、その後見返り資金特別会計への繰入れは順調に行つております。しこうしてまた国債や復金債の償還は予定通り行つておるのでありますが、直接に企業の方に投資いたします金額は、手続その他の関係上期待ほどには参つておりません。従いまして、私はできるだけ早く今年度内におきましても、見返り資金を直接私企業に投資するように、また来年度の見返り資金につきましても、できるだけ多くわが国産業の発展に直接必要な方面に使用するよう、懇請をいたしておつたのであります。昨日三時からこの席をはずしまして、本年度並びに来年来におきます見返り資金の使用につきまして、懇談を遂げたのでありますが、私が先般来申し上げておりました通りに、今年度内におきまして二百億ないし三百億程度のお金が、一般企業の方に向け得つれるような見通しもついて参りました。また来年度におきましても、相当のお金が公共事業あるいは一般の私企業に出る見込みもついたのであります。私は前の国会で見返り資金はわが国経済復興の打出の小づちだということを言つてつたのでありますが、ようやく最近におきまして、この私の言葉が実地に裏づけられる希望が大くなつて来たのであります。この程度以上のことをただいま申し上げる段階に至つておりません。
  70. 上林山榮吉

    ○上林山委員 御承知の通り、本年度予算にしても来年度予算にしても、見返り資金の活用いかんということが、予算執行に重大なる関係があることは当然のことでありますが、しかもその見返り資金を早く出すか、おそく出すかということによつて、特に予算執行については重大な影響があるわけでありますが、現在まで残つている本年度の見返り資金六百億円は、大体見通しにおいては本年度内に消化でき得るような処置ができるのであるかどうか。さらに私がつけ加えて伺いたいことは、電力開発事業等に関する見返り資金は、どういう方向に進んでおるか、その限度についてあわせて伺つておきたいのであります。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 今年度使用し得べき見返り資金の額は、予算の補正に出しておりますように千四百九十億円を見込んでおるのであります。従いましてこのうち二百七十億円の国鉄並びに電気通信会計の方に持つて行きます予定額は、年度内に全額使用することになると思います。しこうして復金債償還に充てております六百二十四億円につきましては、すでに数十億円を償還いたしておりまして、年末までに二百四十億円、年度末までに四百億円の償還は実行し得ることに相なつております。そういたしますと、残りの五百数十億円のうち、どの程度直接企業に使い得るかという問題でありますが、この五百数十億円の全額は使用できないと私は考えておるのであります。そのうち相当額すなわち二、三百億程度は使用し得るのではないかと見込んでおるのであります。しこうしてお話の電力関係にどの程度を使うかということになりますと、ただいま私が電力関係で関係方面に申請いたしております金額は百億円余りでございます。私はこの百億円が本年度内すなわち来年の三月までに、使い得るのではないかと期待いたしておるのであります。
  72. 上林山榮吉

    ○上林山委員 簡潔に一言だけ伺いたいのでありますが、十二月までの間に今お話のうちの数量のどの程度が実現し得る見込みであるかどうか、この点を年末金融と密接な関係があるので伺つておきたいと思います。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 なるべく早く使いたいという念願を持つております。しかし十二月末までにどれだけの金額が出るということははつきり申し上げられません。ただこれが解除を申請いたしまして、解除に対しまするOKの指令が出ました場合に、すぐ金になるか、あるいは五、六日、十日遅れるという問題もございます。私は年末金融の状況考えまして、適当に善処いたしたいと考えております。
  74. 勝間田清一

    ○勝間田委員 見返り勘定の問題が出ましたから、関連的に質問したいと思いますが、池田さんは打出の小づちと言われたのでありますが、これは前の予算のときにも、これでデイス・インフレの線をつくるのだ、こういう非常な御抱負であられたと私は思うのですけれども、私はそうは考えておらない。現在までこれほど金が遅れているという状態、持にデフレーシヨンの傾向を非常に強めたというのは、むしろ私は池田さんの責任ではないだろうかと考えるのであります。それで若干お尋ねをしたいのでありますが、復金債の償還をこの年度末までに大体完了したい、すでに三十何億、これからまた四百億近いものをやるということでありますが、どの程度これ自体で日銀の方に還流するという見通しを持つておりますか、その点をお尋ね申したい。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまデフレーシヨンだという見解につきましては異論がありますが、ここでは議論を差控えます。本年度内に償還いたします六百二十四億数千万円の復金債は、市中銀行と日本銀行とが持つておるのであります。預金部もある程度持つております。しかしてこの復金債がマーケツト・オペレーシヨンによつて、日銀持ちと市中銀行持ちは常にかわつております。半分以上は日銀が持つておるのではないかと思いますが、この際日銀の復金債を償還いたしますと、通貨が收縮になりますので、これはマーケット・オペレーシヨンによつて、通貨が非常な收縮の起らないように処置いたしたいと考えております。
  76. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それと同時に、従来まですでに見返り勘定の中に繰入れただけでも今まで二百億程度寝ておつたわけであります。もちろん一部食糧証券を買つてつたのでありますが、その残額としても私はそう思うのであります。この二百億円は完全に通貨縮小の原因をなしておつたんじやないか。この点はいかがでございますか。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 すでに見返り資金に繰入れました八百二十億円のうち、復金債の償還並びに特別会計への貸付、あるいは私企業への四億円の貸付を加えまして、大体六百億足らずの余裕金があるのでありますが、このうちすでに五百億円程度のものを食糧証券の引受に充て、残る百億円が日銀の預金になつておるのであります。従いまして日銀はこういう操作がありました関係上、市中銀行への貸出しをふやしております。ただいまのところ千億円を越えておるような貸付になつておるのであります。
  78. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほどの御答弁の中で、本年度、来年度という言葉をお使いになつたが、本年度とは会計年度の三月末までのことでございましようか、もしそういうことでありますれば、千四百九十億という見返り勘定の相当部分が来年度に繰越されると見てよろしゆうございますか、その点を伺います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 年度と申しますことは会計年度で言つております。従いまして、来年三月までのことでございます。そういたしますと、私の今の見通しといたしましては、本年度の見返り資金の千四百九十億円のうち、相当部分は来年度に繰越されると見込んでおります。
  80. 今井耕

    ○今井委員 ただいま大蔵大臣は、輸入食糧の補給金の問題について、国際小麦協定なんかに参加することによつて、漸次補給金が減つて来るだろう、こういうような御答弁であつたのでありますが、これはきわめてのんきなことでありまして、そういうことではならぬと私は思います。できるだけ早く国内食糧の価格を国際物価にさや寄せする一方、画期的な食糧増産をはかつて、食糧の自給ができるように最大の努力を拂うことが一方においてなされるということが、最も根本的に必要な問題だと考えるのであります。この点について大蔵大臣の御意見を承りたい。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 できるだけ早い機会に小麦協定に参加を許されることを期待いたしますと同時に、財政演説で申し上げておきましたごとく、わが国の個々の品物の価格を、国際価格にさや寄せするということは私の念願であります。従いましてただいま主計局長から申しましたように、小麦を輸入いたしますと、横浜着のシフ値段が一石五千数百円になつております。しかしてわが国の小麦の農家からの供出値段は三千数百円、これを縮めて行かねばならぬと思います。また米にいたしましても、石九千数百円のシフ価格になるのであります。私の念願としては、主食もできるだけ早い機会に国際物価に近寄らせたいという気持は持つております。しかし何分にも、まだ経済が磐石の状態になつておりません。主食を上げることによつて、賃金その他に影響をいたしますので、このことは徐々にやつて行かねばならぬ。私は経済安定の度がますます強くなりますと同時に、またうらはらになりまして価格を適正なところに持つて行こうとしておるのであります。
  82. 今井耕

    ○今井委員 食糧の価格を国際物価にさや寄せする問題につきましては、別に安本長官にまたお伺いしたいと思います。ただいまの私の質問の、一方において画期的な食糧時給のための増産計画を樹立して、これに努力する必要があるという点について、御答弁がなかつたのでありますが、大蔵大臣の御意見を承りたい。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧の増産は最も望むところでございます。従いまして今後財政の許す限り、また見返り資金が使用を許可せられる範囲において、土地改良その他に力を入れて行きたいと考えております。
  84. 今井耕

    ○今井委員 大体大蔵大臣のお考えはわかつたのでありますが、どうもいつも予算面において食糧の増産という方面について非常に削減される場合が多い。それで特にこの点をお願いしておいた次第であります。  最後にもう一つだけお伺いしたい事柄は、タバコの民営の問題がずいぶんいろいろ議論されております。この問題は今国民の間もいろいろ論議が闘わされておるのであります。その真意は実は吉田総理にお伺いしなければならぬ問題でありますが、しかしこれは財政收入に非常に重大なるところの影響を持つものでありまして、その点についてはいろいろ心配するものでありますが、これについて財政收入という立場から考えて、大臣はどういうふうにお考えになつておるか、この点お伺いします。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 タバコ專売制度を民営に移すことが、われわれの理想であります。しかし数十年来專売制度を施行し、ただいまでも千二百億円の益金を出しております状態におきまして、また一面この葉タバコの栽培が、農家経済に重大なる関係を持つこと等を考えまして、タバコの民営につきましては、臨時專売制度調査会を設けまして、検討をいたしておるのでありますが、まだ結論に達しておりません。
  86. 今井耕

    ○今井委員 タバコの民営が、タバコの耕作者に重大なる影響を及ぼすととは申すまでもありません。一面脱税とか、密売とかいうことが相当心配されております。こういうことについて、これを防ぐ自信がおありであるかどうか、この点をひとつ承りたい。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 それは民営に移します手段方法でございまして、民営にいたしますとすれば、脱税を防止する成案がなければ、民営に移すことも困難であるのであります。従つて私は各国の状況を見まして、脱税のないような民営にして行かなければならぬと考えております。
  88. 今井耕

    ○今井委員 タバコの民営問題はまた別の機会に譲りまして、大蔵大臣に対する質問はこれで終ります。  次に安定本部長官にお伺いをいたしたいと思います。この補正予算が来年度の予算とにらみ合せて編成せられて、その基礎が低米価、低賃金という上に立つておるということは言うまでもないことであります。そのうち賃金の問題につきましては、ある程度いろいろ科学的な数字に基いて議論をされておりますが、米価の問題につきましては、ただパリティー計算によつたのだという一点張りでこれが説明されております。ところがこのパリテイー計算というものには、非常に政治的な含みが多い。そうしてそのパリテイーのとり方によりまして、相当大きな巾が出て来ることは、すでに御承知の通りであります。従つて問題は、現在おきめになつ予算の基礎になつておりますところの四千四百五円というものでも、この価格ではたして再生産ができるか、同時に農民の生活が、国民の平均的な生活水準を保てておるかどうか、こういう上から検討してみなければならぬと私は考えます。ことに今日の統制下におきましては、米価は米作農民に対する賃金べースにひとしいものであります。ことに供出などの強化によりまして、米価イコール賃金ベースと考えてよいのであります。従つてこの米価というものによりまして農民の生活水準がどうなるか、こういうことについて十分御調査があると考えるのであります。こういう点から何か御調査があれば、お伺いいたしたいと考えます。
  89. 青木孝義

    ○青木国務大臣 かつて物価庁と農林省とでいろいろ協議の結果、民主的に米価を決定したいということで、米価審議会を開催いたしました。その際の答申にも、農家生産者として生産を償い得る程度の米価ということの御要求がありましたことは、われわれよく承知いたしておるわけであります。また再生産し得るということは、一般的に考えれば、当然の考え方であります。しかしながら米価の決定に際しまして、生産費をもつてこれを決定するということは、かねていろいろと言われておりますように、なかなかこれが困難であります。御承知の通り、この全体を見ましても、これについての決定的な数字を見出すということは困難であるというようなことから、パリテイー計算をもつてこれを決定することになりまして、従来御承知の通りパリティー計算で行つておる次第でございます。従つて今年度におきましても、パリテイー計算でこれを決定いたしたのでありまして、そのいろいろといきさつはありました。もちろん政治的にといつたような意味で、超過供出に対する三倍を二倍に削つて、その一倍分を一般の供出価格に加えるというような考え方もありました。しかしながら結局決定せられましたのは、御承知の通り基礎価格といたしまして四千二万五十円ということに相なつておりますので、もちろん米が主食として特別なものであるということについては、十分御承知のことでありますから、右ようの考え方でやむを得ずパリテイー計算によつているということであります。
  90. 植原悦二郎

    植原委員長 今井君、総理がおいでになりましたから、安本長官に対する質問は保留しておいていただいて、総理に集中の質問を願いたいと思います。ただいま総理も御出席されましたから、この際総理大臣に対する質疑を集中していただきたいと存じますから、さよう御承知を願いたいのであります。なお発言通告もたくさんあることでありますから、簡潔に質疑の要点をされるように特にお願いいたします。それでは総理大臣に対して質疑を許します。松野頼三君。
  91. 松野頼三

    ○松野委員 私は総理大臣に二点だけ御質問いたしたいと思います。少し遠い話かもしれませんが、総理はかねてから二大政党の対立を持論としておられますが、日本の現状ではなかなかむずかしく、民主党を除きましても日本に二つ——社会党の育成も総理は考えられましたけれども、(「じようだん言うな」と呼ぶ者あり)結果において政党は総理の力において切り盛りするということも不可能であつて国民政治意識の高揚と、もう一つは選挙を通してやはり政党というものができるべきであると私も考えるのであります。それでさしあたり差迫つた問題としてお尋ねいたしたいことは、国際的に大きな問題で、講和條約、講和会議あるいは講和問題というものが、日本の国内問題としても出て来る事態がぼつぼつあるように考えられるのでありますが、現在の吉田内閣の現状において、当然この講和は吉田内閣でやるという準備と心構えをお持ちであろうと私も感ずるのであります。ただこの際多少思想を一にし、あるいは講和問題に限つてともに政権を担当しようという申出が他の政党からあつた場合に、もちろん嚴重なる身体検査を行つた上においてでも、あるいは講和條約に限つて一時的にもこの申出に応じて、講和をやられるという御意思があるかどうか。
  92. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはかねてから私の申しているように、志を同じゆうした政党ということで、講和問題だけについて志を同じゆうするが、その他の問題においては志を同じゆうしないというのも少し私の希望と違つておりますし、もう一つは仮設の問題でありますから、その場合々々を想定してああだこうだと申すのも、はなはだ申しにくいと思いますから、この程度をもつて御満足願いたいと思います。
  93. 松野頼三

    ○松野委員 仮設の上でありますが、それでは現在のままでただいまのところ押し切られる、こう了承いたします。  もう一つは少し身近なことでありますが、最近民主党の一本化運動ということが行われております。これも民主党のことでありますから、どうなろうと私たちは川向うの火事程度に拝見しておればけつこうな話でありますが、ただ総理に一言お尋ねいたしたいことは、閣僚の中にこういう運動を行われるという提案が大分明らかになつて参りましたが、前もつてこのことに関し、総理は御承知であられましたか、あるいは現在その閣僚のこういう行動をいかなる御見解で傍聽されておられるか、あるいは黙殺されておられるか、これをひとつお尋ねいたします。
  94. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは正式にどうこうという四角ばつた話ではありませんが、民主党を一本にして、そしてこの政界の安定をはかりたいものであるという話は受けました。しかしこれも雑談の間の話であつて、非常にかど立つた正式の申込みとは考えておりません。雑談の間にそういう話を受けましたが、その程度で別段今日において私がその問題を取上げて、どういうというところまで進んだような話ではありませんでした。
  95. 松野頼三

    ○松野委員 もう一歩話が進みますが、民主党がどういう形で一本になるか、あるいは一本になつて吉田内閣を援助すれば、プラスになるかマイナスになるかは別といたしまして、一応現在の内閣の成立当初からの構想を確かに乱す。よく乱すか悪く乱すかは知りませんが乱す。当時のいわゆるわれわれに協力するところの民主党の一派と連繋をして、今日つくつた現内閣の基礎を——よくか悪くか知りませんが、多少波紋を来しておることは事実であります。この際一本化されたときには、私たちは白紙にもどつて、この一本化の民主党とともに今までと同様に、あるいは今まで以上に緊密なる態度で、お互いにおつき合いできるかどうかは、あらためて白紙の立場でその際考え直さなければならない。いずれにしても、現吉田内閣に対して波紋を投けたことは事実であろうと思います。将来この一本化に対して総理は白紙で臨まれるか、あるいはあらためてこれと交渉をやり直すかどうかということも、仮説ではありませんし、ぼつぼつ現実の問題でありますからお尋ねいたしたいと思います。
  96. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 それはただいまも申す通り、正式の話として私のところへ提案されたものでありませんから、この際は何とも答えはできません。もし具体的の話になつて参りましたら、そのときにまた御相談いたします。
  97. 植原悦二郎

    植原委員長 米原昶君。
  98. 米原昶

    ○米原委員 総理に対して二、三質問を集中いたします。首相は先日の失言以来、講和問題に対しては、はなはだ消極的な発言を続けられて来ましたが、昨日は相当積極的になられたと思うのであります。本日もできるだけ積極的に御答弁願いたい。もちろん首相は、講和問題に対しては、愼重な態度で論議しなくちやならぬということを言つておられますが、愼重であつても簡單に明快に、しかも大胆に答えてもらいたい。  第一に昨日首相が申されたことを私が誤解しておると話が進みませんから、ちよつと念のために開いておきたいのですが、昨日首相は全面講和を希望する。希望としては全面講和に越したことはない。そうしてもし日本人の希望を無視した講和が行われた場合には、そういうものができても、結局そういうものは国際間に紛糾を残して行われぬことになるであろう。従つて連合国としては、日本人の要望に反するような講和は結局結ばないであろう。こういうふうに言われたと思いますが、それでよろしいでしようか。もしもその点が言葉に不足がありましたら、特に明快に説明していただきたい。
  99. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 明快に、明確にいたすためには多少言葉を入れますが、御趣意はその通りであります。しかし言葉としては、日本国民の希望に反するような條約は結局行われないことになるから、連合国においても日本の国民の希望は十分取入れるだろう、こう私は想像いたします。こういう意味合いであります。
  100. 米原昶

    ○米原委員 それでは第一に聞きますのは、わが国はいわゆる無條件降伏をしたわけでありますが、これは單なる無條件降伏というか、私はそういう言葉をよく知りませんが、降伏條項についてこれを無條件に受諾したのではないか、私はそう思うのでありますが、その点についての首相の見解を承りたい。
  101. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 御承知の通り、日本は無條件降伏、ポツダム声明なるものを無條件に承諾したものと、こう了解いたします。
  102. 米原昶

    ○米原委員 そうだとしますと、講和の條件というものも、もちろんポツダム宣言の線を逸脱することは絶対にあり得ない、こういうように考えますが、いかがですか。
  103. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これも昨日でありましたか、先日でありましたか、ここで申した通りに、アメリカ政府の声明として、ポツダム宣言によつて日本が権利として要求し、もしくは論議することは、米国政府においては受入れない、こういうことを声明にはつきり申しております。
  104. 米原昶

    ○米原委員 日本にそういう権利として発言することはできないというふうに、アメリカ政府で見ておるということはわかりましたが、しかしポツダム宣言の線を逸脱することはあり得ない。こういうことも同時に言えるのだろうと思います。そうだとすると、講和條約を結べばただちに撤兵するということは、これはポツダム宣言の趣旨から明らかである。この点を首相はどういうふうに考えられますか。
  105. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいま申す通り、ポツダム宣言によつて日本にとやこう言う権利、たとえば駐兵は承知しないとかなんとかいうようなことは、アメリカ側としては認めないという趣意で、しかしながら日本の希望を述べ、あるいは日本の望むところ、要求するところを言つてはならぬと申すわけではありませんが、権利として要求することはアメリカ政府としては受入れない、こういう趣意であろうと思います。
  106. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと非常にはつきりしておると思いますが、日本の方でそういうことを主張する権利はない。ポツダム宣言で明らかに撤兵することは当然だと書いてあるわけでありますから、これはもちろんそうなるということを今明言されたわけですか。
  107. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私は明言をしたわけではない。ただポツダム宣言に対してのアメリカ側の説明を私がここで取次いただけであります。
  108. 米原昶

    ○米原委員 同様に講和條件の中に軍事基地を設けるというようなこともポツダム宣言——他にこれは憲法の問題にもなると思いますが、日本の憲法に違反しておるかどうかというような問題、これは当然日本の憲法にも違反しておると私は思いますが、同時にこれはポツダム宣言にも違反しておる。こういうふうになると思いますが、どうですか。
  109. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これもこの間お尋ねがありましたが、仮設の問題に対しては一切お答えはいたしません。
  110. 米原昶

    ○米原委員 仮設の問題ではない。ただいまただちに撤兵するということははつきりおつしやつたのです。首相の見解としておつしやつたのではないけれども、とにかくそういうことをおつしやつた。同時にポツダム宣言の趣旨に沿つて言えることだ。これは講和條件の中に軍事基地を入れるということではなくして、講和條件とは別個な協定というような問題で、軍事基地の問題を入れるとしても同じでありますが、そういうことはポツダム宣言の線に明らかに逸脱しておる。こういうふうに首相は解せられると思いますが、いかがですか。
  111. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはもし軍事的基地を置きたいとかなんとかいう要求があつたとき、そのときに考えますが、その以前においてはすべて仮設の問題として——そういう要求を連合国から受けない前においては、私は仮設の問題としてこの問題に対してお答えいたしません。
  112. 米原昶

    ○米原委員 再び首相は消極的になられたようでありますから、講和問題についてはこの程度にします。  先日の施政演説の中で、外債償還のことを首相ははつきり申しておられる。この前風早君が外債問題について質問しました場合に、やはり仮設の問題に対しては答えることはできないということを話されましたが、そういうのは一応別にしまして、首相か外債と言つておられるのは、戦前のものを特にさしておられるように聞いておるわけでありますが、一体どういう外債をさしておるか。外債はどのくらいのものをいかなる時期にいかなる方法で返済するつもりでおられるか。その外債はポンド債、ドル債、国債、社債、地方債等いろいろあると思いますが、大体そういうのはどんな時期に、どんな方法で返済するように考えておられるか。この点をお聞きしたいと思います。
  113. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 戰前において日本は外債として、イギリス、アメリカ、フランス等に対して債務を負つております。その債務は日本の対外債務として明らかになつておるのでありますから、この義務に属するものはもちろんのことでありますが、私の言うのは、いやしくも日本国の債務に属するものは償還したい。その方法はと言えば、結局貿易によつて余し得た資金をもつて拂う以外に方法はないのでありまして、今ただちに金があるかと申せば、御承知の通り在外資金を持つておらないのでありますから、外国貿易によつて生じた余剰をもつて支拂うという以外に、国としては方法はないのであります。従つて金ができ次第拂う、こう言う以外に申しようがないのであります。
  114. 米原昶

    ○米原委員 詳しいこまかいことはあまり総理は御存じないと思いますが、大体総額でどのくらいのものになるか一つだけ聞きたい。
  115. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは私もこまかいことは知りません。大蔵大臣は数字を持つておるだろうと思いますからお尋ね願います。
  116. 西村久之

    西村(久)政府委員 米原君の御質疑にお答え申し上げます。大体におきましてドルに換算いたしまして、四億四千万ドルと御了承を願います。これは英貨債、米貨債、仏貨債を含めての合計であります。
  117. 米原昶

    ○米原委員 四億四千万ドルというと相当大きなものであります。私が特にこの問題を聞きましたのは、昨日の新聞にもたしか出ておりましたが、外資導入問題との関係で、外債の償還ということが行われなければ、あまり外資に期待できないじやないかという、たしかドレーパー氏の談として新聞に出ておつたようでありますが、外債の償還ということが、外資導入に非常に大きな條件となつておると思います。そういう点で非常に大きな問題だと思うのでありますが、現在首相はこの外資導入の見通しを、どんなふうに持つておられるか、この点を聞きたいと思います。
  118. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 外資導入がなければ、日本の産業復興も希望通り参らないので、外資導入にはなるべく早く、できるだけたくさん招来せしめたいとかねて考えておるのでありますが、従来これに対して三つの障害があつたのであります。第一は日本の政界なり財界が安定していない、労働争議がたびたび起る、労働不安がある、これでは外資を持つて来ても、これによつて相互に利益を生ずるということもできがたいであろう。労働及び社会不安から生ずる外資の導入の不安ということがあり得るので、財界においても政界においても、なるべく安定の事態を早く招来したい。こう考えておつたのが一つであります。  第二はかりに持つて来たところが、税制等が従来のごとくあつて非常に税が高い、あるいは投資がただちに利益を生まない。税になつて政府に取上げられてしまう。税を納めるために外資を持つて来る人もないでありましようから、日本の税法が適正であるという確信がつくまでは、外資の導入もむずかしい。この議会において法案が通過することによつて一応の安心が與え得るであろうと思うのであります。  それから第三には、主として従来の外債の元利支拂いに対して、日本はその義務を履行しないということになると、結局海外の信用を害することになりますから、外資は入つて来ないという観点から、この三つの條件を満たすために、今日の税法その他の改正をして来たのでありますが、これができれば外資は自然入つて来るものと私は考えております。現にその場合には、という話もぼつぼつ起つております。でありますから税制が完全になり、そうして経済の不安も除かれ、さらに対外債務は元利償却をするという趣旨が明瞭となれば、自然に入つて来るものと見通しております。
  119. 米原昶

    ○米原委員 ただいまの説明では、労働不安、社会不安ということを使われましたが、労働者は現在非常な低い生活を送つておる。さらにそれを押えて、そうして大資本家の税金を低くして、うんともうけさせるようにしてくれということだと思う。そういう政策をやられる考えのように思う。しかしこれは見解の相違になりますから、こういう点は別にしまして、たとえば最近只見川、熊野川の電源開発とか日鉄の分離に伴う外資の導入ということが言われております。こういうような具体的な問題が新聞紙上にも大分出ておるようでありますが、これの見通しはどういうような状態であるか。その他の産業に対する外資の導入の見通し、また現実に導入されておる状況のおもだつたもの、こういうものをひとつ簡単に説明していただきたい。
  120. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 たとえば観光ホテルの企ても二、三申込みがあります。この間只見川の電源の視察にウエステイング・ハウスから技師が来た。それから日本のいろいろな産業に対しての引合いが相当あります。この産業に関する引合いは、政府に関係のないものでありますから詳細は知りませんが、しかしながら具体的に話は大分進みつつあるように聞いております。たとえば軽金属の問題でありますとか、あるいは硫黄山でありますとか、詳細なことは今私ははつきりお話するだけの材料は持つておりませんが、政府以外のところに相当話が参つておるようであり、従つてまたその会社の重役等が外国に出かけて行つておるということも聞いております。
  121. 米原昶

    ○米原委員 石油の方には大分外資が入つているようであります。たとえば日石、三菱、昭和石油、丸善、最近では興亜石油に外資が入つている話も、私ははつきり知りませんが、大体きまりそうだということも聞いております。この点はどうですか。
  122. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この点も今申した通り、政府以外の話は正確に知りませんので、お答えしにくいが、いずれにしても税法がきまらないと——課税方法等がきまらないと、話はまだ具体化できないだろうと思います。
  123. 米原昶

    ○米原委員 ちよつとその点について、これは政府委員の方でもわかつておると思いますが、どれくらい入つているかということを、そのことだけを説明してもらわぬと質問を続けられないと思いますので、簡単にだれか政府委員の方にお願いします。総理はそういう具体的な問題になるとあまりにも知らない。
  124. 植原悦二郎

    植原委員長 それは他の機会にしてください。
  125. 米原昶

    ○米原委員 では説明は聞きません。私続けて質問しますが、実際にたとえば石油や、そういう方面には大分入つておるようだけれども、実際には総理も御存じのように日本の石油は足りない。相当たくさんの原油が入つているのに、日本には実際に石油がない。たとえば農村へ行きますと停電すればモーターがとまつてしまう。石油があればこれを動かせる。相当たくさんの石油が入つているのに、ガソリンの規正をやつている。一体その石油はどこにやつているか、ただ日本に原油が来てこれを精製するだけで、またこれをほかの方に持つて行く、こういう形のものであつて、ほんとうに日本の生産を復興させるために使つてないということを私は開きたいのです。日本の産業を復興させるために使わないで、そういうただ加工的な役割を石油の場合やつている。しかもこの石油は相当厖大なものでありますが、そういうものを全部見ても、最近問題になつている電源開発問題、それから日鉄に外資が入るような問題、そういう大きなところを見ても、ほとんどすべてが、これは実際上軍事基地的なものにする條件をつくりつつあるということであります。そういう外資導入を首相は全然知らない。そういうことでほんとうに首相が希望しておられる全面講和が実現できるかどうか、この点なんです。そういうことを首相は知られないから問題にならぬかもしれぬけれども、総理大臣として当然知つていなくちやならぬことだと思う。実際上日本を軍事基地にして行く、実際まだ講和が行われない前に事実上軍事基地化しつつある、こういうことであつたならば、絶対に全面講和はできない。この点を首相はどう思われるか、お聞きしたい。
  126. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 全面講和問題についてはしばしばお答えしておりますが、どの国も、連合国といえども、わが国といえども、全面講和を希望しておることは明らかであります。しかし全面講和をした方がいいか、全面ならざるものをした方がいいかは、議論の選択は、この間も申した通りに連合国の間における、あるいは極東委員会等における決定によるものであつて、日本政府がとやこや希望をして、そうして全面講和になるとかならぬとか選択の余地のないもので、いわゆる国際関係が決定するので、日本がこの点に対して関與する力がはなはだ少いということはこの間も申した通りであります。現在の外資が、軍事基地をこしらえるがために来つつあるという事実は私は認めません。
  127. 米原昶

    ○米原委員 首相は具体的に知らないでいて断定されたつて、そういう断定は架空なものである。知らないような顔をしてそういうことをやつておられるか、まつたく無知であるか、どちらかであるという結論にしまして、次の問題に移ります。  それは国際小麦協定に対しては、これに参加するという希望を持つて向うの方にも行かれたのでありますが、それは新聞の報じているような事情になつておるかどうか、この点を聞きたい。
  128. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいまの国際小麦協定、これはまだできておりません。国際小麦会議がロンドンで開かれて、そうして日本からもオブザーバーとして出て来いというので、出ております。日本の希望は申し出ておりますが、まだ協定には入つておりません。
  129. 米原昶

    ○米原委員 それで日本が確かに参加できるかできないかということを聞きたい。
  130. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは国際小麦会議決定にまつべきであつて、ただいまのところ私としては見通しがありません。
  131. 米原昶

    ○米原委員 新聞はもうこれは大体参加できないようなことを報じているわけでありますが、そのような見通しであるかどうか、もう一ぺん念を押しておきます。
  132. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これはわからないというのがほんとうであります。
  133. 米原昶

    ○米原委員 そうだとすると、もしそれが国際小麦協定に参加できなくつて、参加されるような予定で予算なんか別としまして、予定でいろいろな計画を立てたようでありますが、それができなかつたらどうするか。
  134. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 できるかできないかはただいま申した通り、見通しがないのでありますから、できたときに考えるということをお答えする以外にないのであります。
  135. 植原悦二郎

  136. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は総理大臣に一点お尋ねいたしたいと思います。最近講和條約の問題を中心にして、国会でいろいろ論議がされておりますが、私はこの講和に対する日本の準備といたしまして、一番大切なことは経済の自立である。もつて今後なるべく外国の御援助を受けないようにする。これが講和の最も大事な準備であると考えるのであります。この経済の自立に対しては、内閣が一貫した強力な経済財政政策を立て国民の信頼を得る。これが根本であろうと思うのであります。ところが吉田総理大臣は、この財政経済政策に関して一貫した御信念を持つておられないやに、不安を持たれておるように感じられるのであります。すなわち吉田総理大臣は、終戰後第一次内閣をおつくりになられましたとき、あのときこそ日本は戰時経済から平時経済に立ちもどるべく、健全財政を実行すべきであつたのであります。そのときに大臣は石橋湛山を起用せられまして、いわゆる有名な、石橋インフレ財政を行わせた、当時国民の輿論はこの石橋のインフレ財政に非常に反対した。われわれも国会において反対した。與党の出身である予算委員長の矢野委員長が、当時国会において、石橋財政はインフレの波のために沈んでしまうと與党の委員長が反対の口吻を漏らしたのであります。それをなお押し切つて石橋のあのインフレ財政をやらせた。ところが今日今において総理大臣は、当時の石橋大蔵大臣の下におられた次官であつた池田さんを大蔵大臣にすえられ、今回はまた非常に極端とも思われる均衡財政をおとりになつておられます。そこに国民として非常に吉田総理大臣の財政経済政策に対する一貫した信念を疑う根拠があると思うのであります。なお特に現在の政策において、予算においてはドツジさんの案をまるのみにのみ込まれ、これを内閣の全責任において実行せられる。これはよろしい。しかし財政と金融、車の両輪ともいうべき金融の面において、はたしてこれが最初の内閣の計画通りに行つておるかどうか。これがはなはだ遺憾な状態であると思うのであります。最初見返り資金経済復興に最も有効である、その見返り資金が現在いまだに直接投資としてはわずから四、五億の状態、今年中においてどれだけ出されるかまだはつきりした見通しが立たない。あるいはまた農村金融、あるいは中小工業の金融、この金融問題については、ほとんどあちら様まかせのような状態である。このような状態であれば、これはディス・インフレでなく、確かにデフレ恐慌の状態である。こういうような状態であれば、国民としてはこの内閣の財政政策を一貫した政策と信頼することはできぬ。石橋インフレ財政の当時、無計画に事業が濫立した。それがために設備が非常にたくさんできた。ところが今回はまた急転して非常なデフレ状態なつた。やめずともよい事業がやめるということになる。この無計画性が日本の経済復興に非常な打撃を来す。設備のむだを来す。こういうことを考えるのでありまして、この際総理大臣はもう少し財政経済において自主性をとりもどされて、真の経済自立を全うして講和の準備をいたされたいと思います。この点について総理大臣の御所信をお伺いいたしたいと思います。
  137. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 石橋財政は、私の記憶するところでは当時なかなか評判がよくあつたように記憶いたします。また今日において、とにかく民自党が絶対多数をとつておる以上は、国民はわれわれの財政に信頼しておる証拠と考えまして、どうぞあなたにおいても御安心を願いたいと思います。
  138. 植原悦二郎

    植原委員長 黒田寿男君。
  139. 黒田寿男

    ○黒田委員 第一にお尋ねいたしたいと思いますことは、政府はさきに経済復興計画の樹立を意図せられまして、昭和二十八年度にわが国の経済目立を達成するという、いわゆる五箇年計画としての経済復興計画の立案を、一応完成されたようであります。それが実行に移されず、かえつて総理の御意向により、とりやめになつとわれわれは聞いておる。総理は先般その施政方針に関するある議員の質問に対しまして、本会議場におきまして、この問題につきまして多少の説明をされたのでありますが、われわれにまだ十分納得が行かないのでおります。元来右の復興計画は、政府経済諸政策樹立の指針となるものである。その政策に総合性と一貫性とを付與するものである。国民もわが国の自立経済を達成するための努力の目標をここに置く。こういう趣旨のもとにごしらえられたものでありまして、また外国の援助との関係も、自立達成の過程においてそれがどうなるか、これをも復興計画の樹立の中に取入れて、当時のわが国の経済の実態、内外情勢の推移というような事柄につきまして、綿密な検討を行つてその当時において把握し得る限りのあらゆる状況、前提としてとらえ得るだけのあらゆる情勢に基いて、総合計画としてのあの経済復興計画を立てたものと聞いておるのであります。それが突然とりやめになつてしまつたのでありますが、これを少し詳しく、その理由がどこにあるか、またこれをやめるとしまして、総理はこれに対してかわるべき、いかなる復興計画の基本構想を持つておいでになるか、まずこれにつきましてお尋ねしたいと思います。    [「その問題は済んでおる」と呼ぶ者あり〕
  140. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この問題もしばしば説明をいたしましたが、政府としては——まず第一に黒田君において誤解しておられたと思われるのは、あの計画なるものは政府立てた計画ではなくて、安本の何とか委員会でもつて——審議会でつくつた一つの案として提出されたのであります。ゆえにこの問題を、あの印刷物といいますか、五箇年案なるものをさらに安本において、すなわち吉田内閣において再検するように命じておるわけであります。これから採用するかしないかは、再検した後にとくと発表いたします。
  141. 黒田寿男

    ○黒田委員 問題は済んでおるというある議員からの御発言もあつたようでありますが、しかし私はもう少しこの問題につきまして、われわれの聞き知つております範囲におきまして、総理に御質問申し上げてみ事たいと思います。  新聞紙あるいは世上に伝えられているところによりますと、われわれとしましては、政府がこの計画をやろうとして安本をして立案させておつた、こういうふうにむろん解釈しておつたのでありますが、この計画がとりやめになりました理由としてわれわれが聞いておりますところは、この計画の中にはアウタルキー、自給自足の思想が強く出ておる、もつと国際経済の観点を織り込んで修正した上でなければいけないというようなことで、この復興計画がとりやめになつたのだ、こういうように伝えられておるのでありますが、かような事情によるものであるといたしますと、政府の政策上における重大な転換であると考えるのであります。この点私も少し調べてみたのでありますが、大体これは次のようなことを意味するものであると理解せられたのであります。  このいわゆるアウタルキーの思想が復興計画案のどこにあるかということを、あの計画に参加いたしました人の一人から聞いてみますと、しいてこれを言えば、重工業を非常に重視してあの計画がつくられておる、ところが、日本の重工業は、一般的に見て、資源的な基礎が非常に不利益な状態にある、不利益な條件のもとにあります。それにもかかわらず、この資源的に不利益な條件のもとに、ある重工業を中心に置いて考えておるところにアウタルキーの思想がある。自給自足の思想がここに非常に強く出ておる、これでは困る、もつと国際経済の観念を織り込んで修正しなければならぬ。こういう考え方があつて、あの計画がとりやめになつたというように聞いております。これをもう少し具体的に申しますれば、たとえば銑鉄などを国内でつくるのをやめて、アメリカあたりから輸入した方がはるかに安い。日本の経済をそういうしかうに持つて行くべきだというような一つの見解がありまして、これはアウタルキーの思想と全然反対の思想であります。このような観点からすると、将来の日本の経済の行き方なり、あり方につきまして、資源的に非常に不利な産業を維持することはおもしろくない、好ましくない。国際的に生産の高いものは、今まで與えておつたような保護を與えないで行こう、こういう見地がそこに現われておるように見えるのであります。こういう見地から、日本の経済の構造をもう一度考え直してみよう、これが、私はあの計画の変更の一つの大きな理由になつておるのではないか、こういうように考えておるのであります。これは私は復興計画の行き方についての大きな転換であると考えるのでありますが、こういうふうにわが国の経済の構造が将来かわつて行くものであるかどうか。このことにつきまして、総理の御見解を承つてみたいと思うのであります。
  142. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいま申した通り、再検をせよ、再び検討をした上にしよう、こういうだけの話であつて、理由については、私はあなたのお話のような理由を示して、再検を命じたわけではないのであります。経済安定本部長官において再検して、よければとにかくとして、その再検が済むまで発表は見合せるということを申しただけであります。
  143. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は工業生産の方で、われわれの見たところによると、あの発表が中止せられたことに関連して、そのような政策の転換の動きがあるのではなかろうか、こういうように考えましたので、それを質問してみたのであります。次に農業の生産計画につきましても、私にはこの際大きな転換が行われようとしているのではなかろうかと観測されるのであります。そこでこの点につきまして、政府の見解を聞いてみたいと思うのであります。従来われわれが政府の政策として国民一般とともに考えさせられておりましたことは、できるだけ農業生産の自給度を高め、純輸入額を、その反対に、節約する、こういう方向に向けて農業政策を実行する。そういう政策と、わが国の農業をできるだけ近代化して行きたい、機械化して行きたい、こういう要望とをあわせ考慮して、この考慮の上に立つて農業生産計画を推進して行く。大体こういうふうに、従来政府言つてつたと思うのであります。実際においてこの方針がどれだけ実現したがということは別問題でありますが、大体こういう方針であつたと思つております。もとより農業を近代化するということは、そしてまたそれによりまして農民の生活水準を引上げるということは、農業自体のみの要求ではないのでありまして、日本経済全体の発展の上から見まして、最も関心を拂うべき問題であるようにわれわれは考えておるのであります。しかし、実際に従来政府のやりましたことを見ますと、農業はいつもあとまわしにされ、工業がいつも先に置かれて来た、あとまわしあとまわしと農業はされておつたのであります。農業生産の近代化などということはほとんど第二次的にしか考えられていなかつた。そこでわれわれが絶えず主張しておりました土地改良であるとか、農機具等を導入して、土地の利用率を高度化し、労働の生産性を向上するというようなことには、実際はほとんど力点が置かれないで、單に肥料を増投するとか、品種の改良をするとかというように、農業の経営を零細な規模にとどめたままで、農業の進歩をはかるような政策が行われて来たにすぎないのであります。しかしとにかく表面上は農業を近代化するために努力するということは言つてはおつたのであります。ところが、私は最近になりまして、こういう方針につきましても、大きな転換がなされようとしておるのではないか、かように感じる。この農業政策の上における大きな転換が、まず食糧政策の転換を中心として起つて来ておるのではないかと私には考えられるのであけます。すなわち先ほど申しましたように、これまでは国内の食糧の確保、その自給度をできるだけ高め、純輸入額を節約する、こういう方向に進んでおつたと思うのでありますが、最近の事情を見ますと、食糧輸入の増加が計画以上に行われておる事実を私は知つているのであります。今日も先ほど大蔵大臣から、本年度におきましてどの程度予定以上に食糧の輸入量があるかということをお話になりましたので、私は数字は省略いたしますが、こういう方向に進んで参りまして、そのためにそれがわが国の農業生産への圧迫になつて作用しようとしておるのであります。食糧輸入が実際に輸入計画を上まわつてなされておるとか、あるいは先ほど問題となつておりました小麦協定に、これは参加が許されるかどうかまだわかりませんが、こういう協定に参加しようという意図、そういうところに従来の政策に対して、相当大きな転換を行おうとしていることが看取されるというように考えるのであります。これは予算の上におきましても、食糧管理特別会計の増額となつて現われております。それからまた、いもの統制解除の問題も、私はこの問題に関連をしていると思います。ただ今日は先ほども御注意がありまして、こういう問題に関連いたしまして農林大臣等にいろいろと御質問申し上げたい点もございますけれども、それは省きまして大きなところだけをつかんで結論だけを申し上げてみたいと思う。  そういう新しい方向がとられるようになつて参りまして、先ほど工業についても申しましたように、農業におきましても国内の農業を保護するのであるか、それとも資本主義の要請から、国内農業の保護という問題を第二にいたしまして、まず食糧の輸入——今のところ輸入価格が国内価格より高いのでありますけれども、これは先ほども大蔵大臣も申されましたように、次第に世界的には穀物の生産力が復興いたしまして、過剰になりつつある、その価格も次第に安くなりつつあるのであります。こういう傾向にある食糧を多数輸入することによりまして、日本の農業生産それ自身を近代化することによつて、日本の農業生産物の価格を安くして、国際的な農業の競争に耐え得るような方向に、わが国の農業を持つて行こう、こういう努力をなさずに、農民の犠牲において、資本主義的利害関係の立場から穀物を輸入する、従つて農業の近代化というようなことはおろそかになつて、農業を破壊に導くような方向に進んで行くのではないか。私はこういう方向に、政府が政策を転換しつつあるのではなかろうか、というように感ずるのであります。そこで、私は穀物の輸入状況等を指摘いたしまして、農業政策におけるこのような大きな転換があるのではないか。政府はどういう考えを持つておるか。われわれはこういう転換があるように思います。これについて全国の農民も非常に憂慮しております。将来こういう方向に政策が導かれるということになれば、日本の農業は破滅すると非常に憂慮しておりますので、現在食糧が計画以上に輸入せられたりその他いたしております、そういう現象と関連いたしまして、政府の農業政策の上において大きな転換があるかないか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  144. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、別段農業政策において転換を考えているわけではありません。農民の利益なり、また農業保護については、政府としては十分に考えたいと思います。但し今日において主要食糧が不足しているということも事実であり、また日本のごとく風水害がしばしばあるところにおいては、相当国民食糧については余力を持つておるということも、国民の食生活の上において肝要なことでありますから、今年は食糧を従来以上に輸入ができるならばとつておくがいい。今年は豊年であると考えておつたのに、いつの間にかさほど豊年ではないということを聞かされて、われわれも驚いているようなわけでありまして、かくのごとき天災の多い国においては、国民食糧は相当の余剰を持つて置くことが、日本の食生活の上、国民生活の上において安全であるという考えから、多少の余力を取入れました。しかしながらそれによつて従来の農業及び農民の保護を閑却いたしているわけでは毛頭ないのであります。
  145. 黒田寿男

    ○黒田委員 総理は、主観的にはあるいはそういうふうにお考えになつているかもわかりませんけれども、しかし実際の数量の上から見ますと、そのように安易に、農民の立場からこの食糧輸入の増加という現象を見のがしてはおけない状態にある。総理は多少余分を持ちたいというようなお話でございましたが、これは話が違う。私の持つております数字は、必ずしも端数に至るまで正確なものではないと思いますので、あるいは訂正を要するところがあるかとも思いますが、大体二十四年度の輸入計画の上から見まして、いもを入れて二合七勺の配給で二百三十万トン。これが実際の輸入は、多少数字が相違するかわかりませんが、三百十一万トン。多少の数字は訂正してよいと思います。その上に輸入食糧の持越高が百八十二万トンありまして、計四百九十三万トンくらいになつている。ところが、この持越高を過去の持越高に比較いたしてみますと、大豊作でありました昭和八年のときの持越高の二倍にも当る、こういう額に実際はなつておるのであります。そこでこれも計数上多少の相違があるかもわかりませんが、いもの統制をはずして二合七勺の配給ということにいたしましても、大体百万トンくらいの輸入食糧があれば足りると言われておりますときに、このような大きな数字が出ておりますから、首相が今おつしやいましたように、簡単に、多少の余裕を持つて置きたいというようなことで、このような輸入がなされているというようには考えられないのであります。いわんや、今回の米価の決定にあたりましては、だれがどう見ましても、二十四年度の産米価格が生産費を割るものであることは、議論の余地のないところでありまして、このような低米価に押えつけておいて、そうしてこのような数量の食糧を輸入して、それだけこの方面に資金を余分にとられて、その上に輸入に関する補給金もまたとられる。農業政策ははなはだ貧困である。こう見られているのが現内閣の農政である。その上に、食糧輸入がそういう状態にありますから、今農民は大きな不安を持つているのであります。そこで私は今この問題についてお尋ねしてみたのであります。この問題につきましては、他にこまかくいろいろと関連した問題もありますけれども、御注意もありましたので省略しておきたいと思います。要するに私は今農業政策の上における大きな転換が行われようとしつつあるのではないか、そういうふうに看取いたしまして御質問申し上げてみたのであります。  それからいま少し時間をいただきまして講和問題について御見解を承りたいと思うのであります。
  146. 植原悦二郎

    植原委員長 なるたけ繰返さないように願います。
  147. 黒田寿男

    ○黒田委員 私の観点は新しいと思いますので、少しくお尋ねしてみたいと思う。本会議質問におきまして、首相御自身から私の質問に対して、お答えを得られなかつた点がございますので、その点と、それに多少問題をつけ加えて質問してみたいと思います。     〔委員長退席、池田(正)委員長代理着席〕 ただここで特に申し上げておきたいと思いますことは、先ほどからいろいろと講和の問題に関係した質問になつて参りますと、総理は仮定論ということをよくおつしやいますので、私は事実問題としてでなく、法律論としまして、外務大臣であられる総理に、憲法の解釈の範囲におきぬして、理論の問題の範囲に限定して、御意見を承りたいと思うのであります。法律論と申しましても、別に民事刑事のような問題ではありません。憲法問題でありますから、外務大臣といたしまして十分に答えていただけると考えるのであります。講和会議が近いという情報が伝わりまして以来、国民の間にこの問題について非常に関心が高まつて参りまして、政府は慎重と申しましようか、はなはだしく消極的態度に終始しておられるように考えられるのでありますけれども国民の輿論は、この問題をめぐりまして非常に真剣に、活発に動きつつあるのであります。いろいろと新聞紙も輿論の調査をいたしましたり、国会におきましても、議員が大いに論じてみたい気持を持つている。これもこうした国民の気持の反映であろうと考えます。私は講和会議に関連する問題につきましては、事と次第によりましては、今議論すべきでないという問題もあるかもしれませんが、また問題によりましては、大いに論じておかなければならぬ点があると思います。そこで私は講和会議を前にいたしまして、まず何よりもわが国の国民の態度を、世界に向いまして明らかにしておく必要のある事柄があると思います。それはわが国があの罪悪的な戰争を遂行いたしましたその後の講和でありますから、日本国民があくまで平和を追求し、戰爭を放棄するものである、そういう考え方に徹底して、日本国の再建をはかりつつある。講和会議に臨むにあたりましても、まつたくこうした態度で臨む気持を持つておる。     〔池田(正)委員長代理退席、委員長着席〕 このことは今最も広く、最も強く、世界の各国民に訴えておくべきであると考えるのであります。対日管理政策を見ましても、その根本はあくまで日本の非軍事化と民主化にあります。先日総理が、まだ東亜の諸国におきましても、貿易問題に関連いたしまして、どうも日本に好意を持つていない国があるということを仰せられましたが、これもわが国民がどれだけ平和と戰爭放棄の観念に徹底しているかということにつきまして、十分な理解がまだ得られていないからであると思うのであります。昨日の新聞でありましたか、それにも講和後の日本の監視の措置といたしまして、十三箇国で管理委員会を設置して、どういうことを管理するかというに、その一つに、日本の再武装と潜在的軍需産業の発展を防止する、このことを十三箇国で監視する、こう伝えられている。これは一つの情報にすぎないのでありますけれども、そういうことから見ましても、私は平和追求と戰爭放棄ということにつきましては、政府も徹底的にここで意思表示してもらいたい。この点だけはいくらやつても足りないと私は思う。この問題について少しでもあいまいな態度をとることは、世界の疑惑を拂拭するゆえんでないと考えるのであります。このような点から私は総理に質問いたしたいと思いますと、かつ今申しましたように、法律論としてやりますので、できるだけ簡明にやりますが、総理も仮定論などということで逃げることなく、法律的な見解としてのお答えをはつきりと願いたいと思う。こういう問題があいまいにされるということ、たとえば仮定論だというようなことを言つてこれに触れようとしないことは、平和の徹底的な追求と戰爭放棄に対しまして、多少とも外国に疑惑を起すようなことになりはしないかと私は思いますので、はつきりお答え願いたいと思うのであります。  第一は、憲法第九條の解釈であります。もとよりこのことにつきましては、先般来他の委員会でも問題になつておりますが、私はこれは絶対的な戰爭放棄、徹底的な平和主義を世界に宣言したものであると考えますので、従つて自衛的な戰爭の権利をも放棄したというように解すべきであると思います。なお今日まであまり議論になつておりませんでしたが、私がここで新たに考えてみたいと思いますことは、この自衛的な戰爭の権利を放棄するという趣旨は、このことは国際的に徹底した中立主義の立場に立つということ——これは文面の上には表現されておしませんけれども、精神から申しまして、このように解すべきものであろうと考えるのであります。まず私のこの解釈につきまして、総理の御解釈を承つておきたいと思うのであります。
  148. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ちよつと御質問の趣旨が私にはよくわからないのでありますが、日本としては自衛権を放棄したとすれば、これは軍事的に自衛権を放棄したと解すべきものであると思います。戰争を放棄した、軍備を撤廃した、しかしながら国家として自衛権がないはずはないのでありますから、しからば自衛権が戰争放棄とどう関連するか。これは戰争を放棄した範囲内の、戰争に訴えざる範囲内の自衛権は、独立国家である以上、これを持つているということに解するのが常識であると思います。
  149. 黒田寿男

    ○黒田委員 條文の上では現われておりませんけれども、徹底的な中立主義をとるという精神が含まれていると思う。これを総理はどういうふうに考えておられますか。
  150. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 徹底的な中立主義というのも、ちよつと私にははつきりいたしませんが、しかし私の解釈するところでは、すなわち戰争には参加しない。戰争の場合には、いずれに対しても、日本が武力を持つて立つとかなんとかというようなことは全然しない。それが中立になるかならぬか知りませんが、いずれにしても戰争には参加しないという趣旨に解すべきものと思います。
  151. 黒田寿男

    ○黒田委員 自衛権の問題に対する私の質問に対しましては、私は総理のお答えで一応そのお立場はわかつたと思います。私の趣旨は、自衛的な戦争の権利をも放棄する、こういう解釈をなすべきである、こう申し上げておきます。ただ事柄が戰争ないし武力に関係なしには実際には考えられないのでありますので、この点を特にはつきりさせておけばよいと思います。中立主義という意味につきましても、総理は絶対に戰争にはどちらの側を問わず参加しない立場である、こういうように解釈されていると思う。私もそういう意味での中立正義ということに御解釈願えばよいと思います。私は憲法第九條の解釈の問題につきましては、他にいろいろと申し上げたいこともありますが省略いたします。  第二にお尋ねしたいと思いますが、これも私は簡単に、かつ法律論としてだけ申し上げますので、そのような見地からお答え願いたいと思います。この問題も従来問題にされたのでありますけれども、この予算委員会の席上で、国民に対して答えるというおつもりで、御回答を願いたいと思います。それは、軍事基地の協定は憲法違反になると思うが、法律論としてこれを承りたい。たとえばフィリピンのごとき、一九四七年にアメリカと陸軍及び海軍の基地を設定する軍事協定を結んだのでありますが、こういう事実は別にして、理論上憲法第九條の解釈をもつて進む以上は、日本はこういう軍事基地の設定はなし得られないものである。戰争を徹底的に放棄する、戰争に対して徹底的に、絶対的に、中立主義をとるという立場から、軍事基地協定は理論的に考えて、日本の憲法と抵触するものと考えるべきであると思いますが、これを実際問題である、仮定問題であるというような御議論からでなくて、先ほどはつきりいたしました憲法第九條の精神から見て、その精神と反するかどうかという法律論をひとつ試みていただきたいと思います。
  152. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この点はしばしばお答えいたしましたが、日本自身としては日本に軍事施設は行わない、これははつきりいたしております。しからば外国はという場合に、外国からそういう提議があつたという場合には、それは私としては考えますが、それ以上は仮設の問題としてお答えができません。
  153. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは仮設の問題ではない。軍事協定を——私はここで議論はしたくないのでありますが、軍事協定を結べば、むろん武器を持つてどうこうするということはできませんけれども、基地を供給するとかあるいは労力を供給するとかという問題は、起り得ることなのであります。これもやはり一種の武力による戰争行為の中に数えることができるのであります。私は憲法第九條の精神から、理論として論じているのであります。実際において外国からそういう問題を提起されたかどうか、そういうときにはどうするかということを、事実問題としてお尋ねしておるのではなく、理論としてお尋ねしておるのであります。たとえば人を殺したら日本のどの法律に触れるかという問題を提起された場合に、私は将来人を殺すつもりはない、そのような質問は仮定問題だから答えられぬといつたのでは、法律論にならぬのであります。人を殺したら日本の刑法の第何條に触れるかという問題は、法律論として提起し得られるのであります。軍事協定を結ぶことは、抽象的に言つて、憲法第九條の精神に反するという法律論が論じ得られぬというところに、私は首相に徹底していないところがあると思う。これは国民が一番知りたいところ、世界が一番知りたいところであります。仮定の問題だといつて逃げるところに、世界から日本が疑われるそのすきを與えることになるのである。私はそういう観点から質問しておるのであります。みなが知りたい、世界中が知りたいと思つている。ことに東亜の諸国民は、今後日本と貿易をする上におきましても、日本が徹底的に平和的な国民なつたかどうかということを知りたいに違いない。それを総理の口から明らかにしていただきたい。これは日本人の多くの者の念願であると考えるのであります。あまりきゆうくつに考えないで理論的に考えて、お答え願いたい。
  154. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私の言葉をそうきゆうくつにお考えにならずに、ごく広いところからお考えになりたいと思うのであります。そういうことを議論するということが、やはり——あなたの方は世界に対して明瞭ならしめることがよろしいとお考えになるかもしれませんが、そういう問題をとやこう日本の国外に関することについて申すことは、国家のためにならぬと思いますから、これはお断りいたします。
  155. 黒田寿男

    ○黒田委員 非常に私は遺憾に思うのでありますけれども、もうこれ以上理論的に話を進めようとしても、無意味だろうと思いますので、この問題は打切ります。  なお私は、一応問題とすべきものについては、総理がどういうお答えをなさるかは別として、触れるべきものについては一応全部触れておきたいと思いますから、お答え願いたいと思うのであります。  第三にはこれも理論の問題として伺います。同盟條約、相互援助條約というようなものも、日本憲法の精神からして、避くべきものであると思いますが、総理のお考えはどうでありますか。時間の節約上私がそう考える理由についての議論は省きます。要するにこういう條約を結ぶことは、理論的な観点から憲法違反になると思いますが、どう首相はお考えになるか、お答えを簡単にお願いしておきたいと思います。
  156. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これも仮定の問題としてお答えいたしません。
  157. 黒田寿男

    ○黒田委員 この問題につきましては、もうこれ以上私は議論いたしません。そこでもう一つ触れておかなければならぬ問題について、これもまたどういうお答えがありましようとも、私は国民の大多数の気持を代表してという立場で、一応質問をしておきたいと思います。それは国際連合による安全保障も、私は憲法第九條の精神に抵触すると考えるのでありますが、これも詳細な理論は省きますが、要するにこの保障を受けることによりまして、武力的の戰争の中において、絶対中立を守ることができないことになるのであります。これはもうわかりきつたことでありますから、これ以上議論はいたしませんが、要するにこの保障を受けることは、日本憲法第九條に違反することになる。このようにわれわれは考えておりますが、これにつきまして総理はどう考えられるか、お答えを願いたい。
  158. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 国際連合は、世界の平和を目的として起つておる国際組織であるから、日本も加入するがいいとは思いますが、加入する場合には、一つは講和條約等において問題になり、一つは国際連合において日本を入れるか入れないか、入れるについてもいろいろな條件があるであろうと思いますが、われわれとしてはそういう具体的問題が出たときに考えたいと思います。
  159. 黒田寿男

    ○黒田委員 なおあと二問だけでありますが、一応触れるものには触れておきたいと思います。日本の安全保障の問題につきまして、私は今三つの場合をあげまして、そしてそれが憲法第九條の精神に抵触するものであるという私の見解を述べたのであります。すなわち国連による保障、それから、若干のより勢力の強い国、あるいは特定の一国にたよつて、安全保障を求めるという方法、これはたとえばアメリカ一国だけとの協定ということも考えられますし、北大西洋同盟、あるいは、実際には実現しておりませんけれども、太平洋條約というようなものもこの方法でありますが、いずれもこういう方法によつて、安全保障を求めるというやり方は、憲法違反である、こういうように考えます。軍事協定についても同様である。そこで残るのは永世中立の道だけだと考えられる。わが憲法に永世中立ということは規定しておりませんし、また永世中立はもとよりわが国だけでそう希望しましたところで、相手のあることでありまして、多くの国々からそうした條約を獲得しなければならないことはもちろんでありますが、しかし一切の国際的な武力衝突は、日本としてはあくまで避けるという憲法の建前から申しますと、理論的に考えて、私は、永世中立に行くよりほかに方法はない、こういうように考えるのであります。これもできるだけ議論を省きたいと思いますけれども、要するに永世中立——他の安全保障の方法は、自分が助けてもらうかわり、自分もまた程度の差こそありますけれども、軍事的な義務を負う、戰争行為に参加しなければならぬ義務を負う、こういう保障の形態であります。そこでわれわれはそれに反対する。ところが永世中立は、自分の国の安全を外国から守つてもらいますけれども、日本が外国の戰争に巻き込まれるという義務は負わないという契約であります。私はこういう外交上の契約はあり得ると考えるし、現にその実例もあるのであります。こうした自己の安全を外国から保障してはもらうけれども、しかしながら日本が外国の戰争に巻き込まれる義務は負わない、こういう契約の締結の仕方が、憲法第九條の精神に合致し、わが国としては最もよい方法であると考えるのであります。ある学者は、そういうことを考えるのは、自分ばかりが助けてもらつて、他人が困つておるときに、自分から助けてやるということを考えないことで、国際的友誼に反した態度ではないかというような議論をしておる。しかしながら、わが国が諸外国に貢献するという方法は、まれに起るであろうところの戰争のときに、おつき合いをするということだけではない。わが国が諸外国に対して友誼を盡し、友情を盡し、好誼を盡す道が、それ以外にないと考えると大間違いである。たとえば湯川博士のごときが、あの学的功績をもつて世界に貢献するということも、日本が外国に盡し得る方法であります。従つて我争以外の方法において、いくらでもわれわれは諸外国に協力し得る道はあるのであります。戰争だけはごめんこうむりたいというのが、永世中立の上からの考え方であると思います。私はこの見方、考え方が、憲法第九條と理論上からいつても最もマッチした方法であると思うのであります。なおわが国の大多数の国民の気持もそこにあるのではなかろうかと考える。先般東京における某々新聞が、輿論の調査をいたしましたときに、その二つの新聞の事例を見ましても、いずれも今私が申しましたような態度をとることが、一番いいという国民の気持を表わしておるのであります。将来日本がどう行くべきであるかということにつきまして、わが国民は真劍にその方向を考えつつある。それがこういう輿論となつて現われておるのであります。これに理論の裏づけもできるのである。これほどよいことはないと思います。ぜひ私はこういう方針で行くべきだと思うのであります。これについて、一応総理の御見解を承りたい。
  160. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 ただいまの問題は講和條約後の問題でありまして、講和條約がどうできるかに関連いたしますから、私としてここに意見を述べることは国家のためによろしくない、いろいろ誤解を生じますし、またいろいろなうわさを生じますから、私のこれに対する見解は差控えます。
  161. 黒田寿男

    ○黒田委員 日本はもとより敗戦国でありまして、対等の地位で講和に臨むものではありませんから、連合国の設定した條件を受諾するにすぎない、こういうように考えられております。そこで問題になりますのは、その條件が憲法の趣旨なり主義なり原則なりとそぐわないような場合に、一体憲法の方が講和條件に調節して行かなければならぬものだろうか、講和條約の方が憲法の規定に優先するものであろうかどうか、こういうことが考えられるのであるがどうか、こういう問題を私は提起いたします。簡単にこれに対して御意見を承りたい。これで私の質問は終ります。
  162. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 まだ講和條約はできていないのですから、はたして憲法第九條に違反しておるか、違反してないかということは、それができた上で処したいと思います。
  163. 植原悦二郎

    植原委員長 世耕弘一君。
  164. 世耕弘一

    世耕委員 総理は御病気中を押して御出席くださつておるばかりでなしに、まだほかへお出かけのようでありますから、私はごく簡単にお尋ねいたします。総理も簡單にお答え願つてけつこうだと思います。  先般の総理の施政方針の演説は、私不幸にして病気中で面接お聞きすることができなかつたのですが、その後速記録等によりまして、詳細その内容を検討させていただきました。総括的に申し上げますれば、非常に力強い施政の御演説であつたことを、速記録を通じて非常に感銘いたしておるものであります。ただしなおこの点に対して数点お尋ねをしておきたい点がございますので、簡潔にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、日本の経済の自立性ということが非常に大切であることは、各委員からもるる述べられたのでありますが、日本の経済の自立性はまず国民経済の自立から出発しなくちやならぬ、かように考えておるのであります。この意味において、日本の国民経済の自立の根本をどこに置くか、言葉をかえて申しますれば、自由主義経済の徹底をはかり、外国貿易に対しては自由貿易主義をおとりになるかどうか、まず最初この一点をお尋ねいたします。
  165. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 理想としてはもちろん自由経済で行き、なるべく自由な貿易なり何なりいたしたいと思いますが、しかしながら今日外国貿易については、各国ともに貿易の協定をいたして進んでおりますから、貿易の協定主義というのもおかしな話でありますが、とにかく各国は今日、イギリスにしてもその他にしても、あるいはポンド区域とドルとを結ぶような、側別もしくは数箇国の間の貿易協定主義で行つておりますから、日本においてもやはり将来は貿易協定、少くとも現在においてはイギリスと日本との間の協定とかバーター・システムということになりましようが、協定主義で行くよりほか貿易に関してはいたしかたないかと思います。しかしながら国内においては統制といいますか、外国から物資を仰いでおるとか、主要食糧その他については、当分の間統制して行くよりしかたがないと思います。とにかく貿易については自由貿易ということは、ちよつと今のところはできにくいのではないかという情勢であります。
  166. 世耕弘一

    世耕委員 あとでこれは人事院の総裁にもお聞きしようと思うのですが、最近人事院においては高級官吏の適格試験と申しますか、試験を実行するということを聞きましたが、この点に関して、総理から直接お聞きしたいことは、むろん学科試験が内容に含むものと思いますが、その間において人物、いわゆる品位、素行等も採点の中に入るかどうか、お聞きしておきます。
  167. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 今のは人事院での官吏試験の問題ですか。——それは今相談しておるようです。まだ結論に達しておりません。いずれ結論に達しましたら御報告いたすことにいたします。
  168. 世耕弘一

    世耕委員 次にお尋ねいたしますが、総理の施政方針の演説の中にもありましたが、最近税金の徴収にあたつて、あたかも罰金を取立てるような徴税官の態度があることは、各所にその声がやかましい。まつたく苛斂誅求のはなはだしいという実例は、私どもの手元にも、私の県から、しかも商工会議所等から陳情が参つております。一例を申し上げますと、十分か十五分のうちに返答しろ、今度正直に返事しなければ、この次来るときはもつと苛酷なことを申しつけるぞ、こういう乱暴なことを言うて、すでに私どもの手元に和歌山県下だけでも三百万円以上の問題を起したのが二十三件ここに情情書が参つております。またきようは捜索令状は持つて来ないけれども、どうだ、内輪でひとつ話合いせぬか、もし言うことを聞かぬければ、捜索令状を持つて来て、お前の財産は徹底的に没收してしまうぞと言わんばかり。そういう放言を吐いた者が大阪税務署の中にあることを、私のところへ報告しておるのでございますが、これは大蔵大臣に具体的に申し上げて、さらに意見を問うはずでありますが、総理はかような問題に対してどうお考えになつておるか。もちろん施政方針の中には、さような事実をちよいちよい見ることは、はなはだ遺憾であるということを仰せられておるようでありますが、何かこれについて適正な方法をおとりくださらないと、かえつて総理のお考えになつておられる善政が、末端において悪政と化しつつあるということをここに申し上げておきたいのであります。
  169. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私のところにも課税についての不平、不満はずいぶん参ります。大蔵大臣のところにはさらに参つておるだろうと思います。それで大蔵省としてはその事実を認めて、そうしてなるべく課税その他の方法が妥当になるようにするために、しきりにいろいろ研究をしておるのであります。たとえば税務官吏の素質をよくするとか、向上せしむるとかいうような、いろいろな研究が進められて、これは現に実施されておるのかもしれませんが、しかしながらまた国税庁側の話を聞くと、脱税者もかなり多い。脱税者が多いために課税方法が自然苛烈になるということも、これは事実であろうと思います。そこで国民税務署と互いに協力してめんどうのないように、課税が妥当なところに落ちつくように、納税者側も協力する機運にならぬといけないと思いますので、私の施政方針の中にもその点はうたつておるつもりであります。これは政府納税者も、また徴税側においても協力して、互いに善意をもつて徴税が妥当になり、苛烈にならないようにするということで協力しなければならぬと考えます。
  170. 世耕弘一

    世耕委員 この所得調査に関する陳情の中にこういうことがあります。「その他調査にあたり係官の激越なる言辞の一例」として「われわれは身分を保障されており、いかなる権謀も政党もその地位を左右することができない。われわれの調査に対して不服あれば、国税庁総務部長正示氏に言つて馘首せよ。」こういう捨てぜりふを残しておるのであります。大蔵大臣もお聞きであろうと思いますから、いずれまた具体的な問題はあとでお聞きいたします。  次に、急いでお尋ねいたしますが、行政整理はこの九月で一応おやめになつたように私は聞くのですが、これは私は不十分だと思う。なお今後行政整理を徹底化する必要がないか。必要に応じては省の廃合等もやつてしかるべきではないかと私は考えております。なおまたこれは極端な議論になるかしらぬけれども、外務省なんかは今日はもう廃止していいのではないか。局ぐらいにしたらいいのではないか。そういうようなお考えで総理大臣は外務大臣を兼任しておられるのではないかと、私は臆測しておるような次第であります。民自党内にも人物多士済々であらせられるのだから、外務大臣の一人ぐらいは一夜のうちにおつくりになることができると思う。それをば兼任なさるというのは、何かそこに公的理由がなくてはならぬ。あればこの機会に承つておけば仕合せだと思います。
  171. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 その行政整理は私の施政方針の中にも述べておいたと思いますが、決してこれをもつて終りといたしておる考えではありません。省はとにかくとして局課の廃合なり、あるいは不要になつた局は廃するという考えで今しきりに進めておる。これはただに中央ばかりでなく、地方においてもまたしかりだと思います。地方での多くは人件費に充てられておるようであります。もつと行政を簡素化すれば、人を減らしていいと思います。また減らさなければ歳出の縮減ということはむずかしいと思います。ただ外務省につきましては、外務省は今日のところはほとんど何といいますか、各省の中で一番人間を少くしております。私が入つてから三、四年の間に三分の一以下になつておるはずであります。これは再建を考えたのであります。しかしながらやがてまた講和でもできますと仕事が始まるわけでありますから、全然やめてしまうというわけにも行かない、またそういう状態でありますから、外務大臣と総理大臣とを一人の者が兼ねておりますと、意見の衝突などもなく、外務省の経費節減その他においては最も円満に事が運ばれておると思いますから、兼任を続けております。
  172. 世耕弘一

    世耕委員 私はこの点は遺憾ながら総理と少し見解を異にしておる。それは講和会議の準備のために今日外務省が拡充されなければならぬ。もし現在のままならばむしろ廃止しろ、こういう議論であります。この点は見解の相違だから申しません。  次に近来官公吏の犯罪が非常に激増いたしております。しかもそれが多くは幹部級に犯罪の事実が多くなつておる。一例をとつてみますと、たとえば食糧公団のごとき、繊維貿易公団、価格調整公団、油糧公団、すでに大阪だけの部分に見ましても、千人以上この容疑者として逮捕されておるような例があります。最近の議院内のを見ましても、油糧公団内にすでに一億円からの不正融資あるいは会計問題が起つております。これは一部分であります。総理は最初の組閣以来綱紀粛正を強く叫ばれて、その実績は相当あげられて来たことを、われわれは外にいてよく承知いたしております。ならば、もう一般とこの点に御留意ください。ほんとうに国際的信用を獲得する意味において、民主主義政治の成果を上げる意味において、一般と御努力をお拂いくださる御勇気がさらにおありになるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  173. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 官紀の問題は、この間本会議においても申しておきましたが、法を犯す者、あるいはいろいろな疑獄を起した者に対しては、法に従つてあくまでも糾明する。また官吏の道徳高揚については、今後とも十分注意をいたすつもりであります。
  174. 世耕弘一

    世耕委員 講和会議に臨む日本国民の態度については、すでに種々論議されて来ましたから、私は前置きは申しませんが、いずれにいたしましても、国民を代表する政党の組織という意味から見て、現在の日本の政党のあり方が、講和会議準備の上に重要な役割を果すものとかように考えます。総理はかつて二大政党論を主張された。これには意義深いものがあると思つてわれわれは敬意を拂うものでありますが、最近の御心境はどうであるか、二大政党とするのについては、民自党は相当大きな立場から働きかけて行かなくちやならないのじやないかと思うのであります。一例を申しますなれば、民自党が吸收合併をもつて二大政党の成立をはかるか、あるいは各党解党して白紙の状態において大合同をするか、もちろん機械的ではないのでありますが、憂国の至情相通ずる意味において、自然とこの総理の理想が実現されなければならぬと思うが、御所感はいかがであるか。
  175. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 理想としては二大政党で参りたいと思いますけれども、むりもいたしたくないということは、始終述べております。適当なときが来まして、私のこの大理想が実現されたならば、日本の国の信用も増すゆえんであろうと思つて、念願いたしております。
  176. 世耕弘一

    世耕委員 重要な点でもう一つ伺つておきたい。今日、部分的な講和と全面的講和ということが論議されておるようでありますが、ポツダム宣言並びに、ミズリー号上の無條件降伏の條文をながめてみましても、日本政府と締結したその相手国は連合国という一つのブロックで、そのブロックと日本国とが條約を締結したように解釈されるのであります。もし数箇国と單独講和をした場合に、他のその講和に参加せざる国とは戰争状態に入る。あの條文をひもといてみると、こういう解釈が出て来るのでありますが、この解釈が妥当であるかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  177. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 この点しばしばしば申す通りに、講和條約あるいは講和会議の成行きを見て、外務大臣としてもしくは政府としてお答えをいたしたいので、将来こうなるであろうという点からして、いわゆる仮設の問題について申し述べることはよろしくないと考えますから、この点は御答弁を差控えたいと思います。
  178. 世耕弘一

    世耕委員 総理は、仮設の問題というからにはまつて逃げ口上を述べておられる。しかし、私はあえてこれの追究はいたしません。気持はよくわかつております。それはなぜかと申しますと、あの條文の解釈を総理にお尋ねしておるのであつて、仮設の問題ではございません。これもこの機会にさらにお尋ねすることはむりだと思いますから、後日適当な機会にお願いいたします。  次に、原子爆弾を使用して戰争するということは、これは非人道的だ、かように私は考えております。ことに原子爆弾の今後の使用は、人類を破滅に落すものだということは、世界の平和論者のひとしく論ずるところであります。われわれは原子爆弾による悲惨の多くの経験者を持つております。ならばこの機会に、原子力の使用は人道的にあらずという、総理のはつきりしたお考えをお聞きすることができれば、世界平和のために貢献することがまことに甚大だと思うから、御説を伺つておきます。
  179. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは外交に関することで、今日私として発言する自由を持ちませんから、後日に意見は申し述べます。
  180. 世耕弘一

    世耕委員 もう二点ばかり簡単にお伺いいたします。  総理その他の閣僚の御盡力によつて、われわれの待望した在外同胞の引揚げが好調になされたことを喜ぶものであり、同時に連合国側の御好意に対して、この機会に感謝を述べるものであります。在外同胞が、ソ連地区並びに中共地区にまだ多数あると総理の御演説の中にありましたが、この機会に、地区別の数がおわかりであれば、外務大臣としてお答えを願いたい。  もう一つは、日本の再建に教育が非常に大切である。敗戰のうき目を見た途端に、われわれの誇りとする日本の倫理道徳が地を拂うに至つた。これはわれわれ教育に関係ある者の恥でありますが、結局日本の教育の不十分であつたという一面と、ある意味において、倫理道徳を中心として人の道を教えている宗教に、薄弱さがあつたためではないかと考える。ゆえに私は、教育問題の一つとして教育の中にさらに強く宗教を織り入れることが必要ではないか、かように申し上げたいのであります。なおこの機会に、私立大学並びに私学関係は相当国家のために貢献をしたはずでありますが、遺憾ながらこれまでの例といたしまして私学は虐待をされて来ておる。たとえば官学に対して十である場合は、私学に対して一の割合である。民主主義教育を発達せしむる根拠としまして、今後私学振興の御意思があるか。私学も官学も同等に取扱う意味において、もし官学に予算を支出するならば、私学にも同額の予算を出す、もし国家財政上その予算が出せないならば、私学も官学も同様に寄付金制度にして、そうして政府が背後にあつて補助して行つたらいいではないか、かように考えているのであります。教育根本方針はかなり重大な問題であります。ひそかにうかがうところによりますと、教育問題について総理は非常に御熱心であるということでありますから、何か斬新な御抱負があろうと思いますので、この機会に承つておきます。
  181. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 在外同胞引揚げの問題については、私としてはもう四年前以来頭を悩ましておるのでありますが、何分海外の状況、ことにソビエトの状況、中共の状況がまだわからないものでありますから、どのくらいの人間が現在残つておるか、一応の終戰後残留しておつた数は、いろいろな陸軍その他の調べでわかるのですが、その後どうなつたか、死んだのか殺されたのか、あるいは行方不明になつたのか、ソビエト側の報告と、われわれ——と申しても主として総司令部の計算でありますか、どうもぴつたり行かないのであります。行かないのは地域が大きいということもありましようし、人間が多いということもあるでありましようし、ことに交通不便のために、正確な数字はどうしてもはつきりしにくいのであります。わずかに引揚げた人について他の人の消息を聞くとか、あるいは留守宅について消息を集めるとかいうことで、どうも正確を期しにくいものでありますから、お話のように地区別にどのくらい残つておるかということは言えないわけです。総司令部でもずいぶん手を盡してくれておりますが、正確な数字はソビエト側の報告とどうしても合わないのであります。この点は非常に苦心をしておりますが、ただいま申しますように、実地について調べることができないものでありますから、結局想像あるいは報告による、情報による調べでありますから、どうしても正確が期しにくいのであります。もちろん相当の数残留しておることは確かであると思いまして、できるだけの情報を集め、また情報をもらうことになつております。そこでどれだけという正確な統計はここで報告できませんが、つとめてその材料の收集に当つております。  また教育の問題、ことに私学の問題については、私の記憶では相当の額私学援助に支出しておると思います。終戰後私立学校が戰災をこうむつて燃えたりなんかして、非常に窮状を訴えられて、私もその実情を聞いて同情いたしたのでありますが、終戰直後にはわずかの金が出たか、あるいは出そうとして——十億幾らという数字を覚えておりますし、あつせんをしたこともありますが、そのあつせんが効を奏さないで結末のつかない間に、第一次吉田内閣が総辞職したと思います。最近の予算においては、相当金額を援助することになり、予算に計上してあると思います。詳細なことは文部大臣にお聞き願いたいと思います。
  182. 世耕弘一

    世耕委員 この間引揚者の大会で問題があつたようでありますが、そのときの話に、われわれがときどき司令部やロシヤの大使館に陳情に行くのに、吉田総理はまだ一回も行つてくれない、できたならば吉田総理に外務大臣なり総理大臣の資格においてロシヤの方にも交渉していただくと、非常に力強く感ずるのだという要望がございました。私も希望として、いろいろ立場もございましようから、ごむりをお願いするわけには行きませんが、この声のあることをお聞き取りくださいまして、善処していただきたいということを希望いたしておきます。  総理に対する私の質問は終ります。しかし総理のお答えの中に不満な点が二、三ありましたが、重ねてお尋ねすると時間をとりますから、適当な機会にまた譲ることにいたします。案外お答えをしていただいたことを感謝申し上げます。
  183. 植原悦二郎

    植原委員長 今井君に申し上げます。先刻今井君の質疑中、申告納税の自然減の問題について答弁のため、政府委員より発言を求められておりますから、あなたの質疑を始める前に政府委員の発言を許したいと思います。
  184. 原純夫

    ○原政府委員 申告納税分の百九十六億円の自然減を立てました根拠を御説明申し上げます。予算に計上いたしております千九百億円というものは、二十三年分の所得の実績見込みを元といたしまして、それが二十四年にはどうなるであろうかということを、生産、物価等の趨勢を考えて見込みまして、それから税額を算出いたしたものであります。その後におきまして第一に二十三年分の課税の実績というのがわかつて参りました。第二に当初諸般の計画的な数字に基いて推定した所得の伸び方が、実際上どうであるかという点につきまして、本年は特に納税者所得の実額調査ということに重点を置いて、仕事を進めております関係上、今までの実際の経験から、この所得の伸び方がどうであるかということについての新しい見解が出て参りました。この二つの点を主として取入れましたことが主たる原因と相なりまして、補正予算に百九十六億の自然減を立てることになつたわけであります。これを数字的に申しますれば、農業におきましては去年の課税実績所得額に対して、今年は二四%ふえるであろう、営業におきましては三五%ふえるであろうということをただいま申し上げたような経緯から判断いたしまして、これによつて税額を計算し、そのうち本年分の徴收が幾らになるかという計算をいたしまして推測いたしましたものが、百九十六億の自然減となつたものであります。結論といたしまして、当初予算においては農業から四百九十七億、約五百億入るというふうに見ておりましたものが、補正予算におきましては四百十九億、約八十億ばかりの減、営業におきましては当初予算で千百七十五億と出ておりましたものが、千百八億、六十億円ばかりの減、その他においても若干の減を見まして、総計で百九十六億円の自然減というふうに見込んだわけであります。
  185. 今井耕

    ○今井委員 そうすると結論的に申しまして、本年の当初予算のときに農業の総所得が前年に比べて二七%ふえる、それから営業所得において——ちよつとただいまの御答弁の数字と違いますが、主税局の資料によると三一・五%増、その他において二九%増、こういうふうに前年に比べて増加が見込まれておる、それが多過ぎた結果こういうふうになつたのだ、こう解釈してよろしいのですか。
  186. 原純夫

    ○原政府委員 大体そういうことでございます。若干申し落した点もございますが、農業につきましてはおつしやいました通り一二七・五%と申しますのは、ただいま申しましたように、一二四%ということになつております。それと営業等におきましては、ただいま前年の課税の実績を元にして伸ばしたと申しましたが、御存じのように年度末に非常に馬力をかけて更正決定をいたします。それが一応前年の課税実績として上つて参ります。ところが御承知の通り審査の請求というものが非常に出まして、年度がかわりますとその審査の処理に相当忙殺されるわけであります。その結果として税務署課税の間違いを訂正して減る分が若干ございます。そういうような点も入ります。さらにもう一つはいろいろな台風の災害等がございます。こういうような関係で、当初考えておりましたよりも、所得の減を見なければならないというような要素も加えまして、ただいま申し上げたような数字になつたわけであります。
  187. 今井耕

    ○今井委員 青木経済安定本部長官質問の途中で首相に対する御質問がございまして、話がとぎれたわけでありますが、私の先ほどの質問に対する安本長官の御答弁は、私の質問の重点をはずれておるのであります。私は米価がパリテイー計算できまつた。そのいきさつを聞いておるのではないのでありまして、先に申しましたように、今日のパリティー計算そのものには相当異論があるということは、政府の内部でもあることである。またそのパリティー計算そのものに、相当大きな政治的な含みがあるということも明白なことです。そこでこういうことできめて、はたしてそれが実際の農民の経済考えて、従来通り農業を続け、ある程度の生活水準が與えられておるかどうか。こういうことについて実際調査をせられたかどうか。理論によつて相当幅のあるパリテイー計算できまつて、その結果どうなるということを実際に当らぬでおくということは、非常に農民の経済を無視したことになつて来る。従いましてそういう調査をせられたか。せられたならばその資料をお示し願いたい、こういうふうに申し上げたのであります。
  188. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ただいまの御質問は、私が先ほど申し上げたことについて多少つけ加えなければ、今の御質問にお答えすることにならぬという点をまず申し上げます。先ほど今年度の新米価はパリテイー計算できめられたもので従来通りである。そのパリティー計算という計算方式は同じであります。しかしながら今年度におきましては、そのパリテイー方式の中に、いろいろなマル公品目あるいは自由品目を織り込んで決定をいたしております点も、これはやはり農家生活というものも考えられて、当時のわれわれの考え方は——今日もまた考えてはおりますけれども、できるだけ生産費という観念を織り込むという意味が、そのパリティー計算計算に必要である。その品目について特に自由価格の品目もそれに取入れられておるということ、それが新しく取入れられたということを御承知置き願いたいと思います。  なお私どもといたしましては、国民経済全体から見て、この生産者価格が一応妥当であるという考えのもとに決定されております。また御承知の通り、これは国民生活全体にとつて最も重要なものでありますので、消費者価格とも勘案いたしておりますが、大体われわれの計算いたしておりますところでは、消費者価格はまだ一月に上るか、二月に上るか、四月に上るか決定しておりません。しかしながらこれが上りましても消費者価格が一一%ぐらい上るという予定でございます。なおこれは国民経済の観点から申しまして、消費者の立場を十分また考慮されておりますので、世帯当りどうかというような計算も上つておりまして、一世帶、たとえば夫婦に子供二人というような世帯についてとりまして、発表いたしております勤労者平均統計から考えますれば、大体一七・八パーセント程度に上ります。これはしかしやはり当然国民経済から考えてみたわれわれの考え方でありますが、さらにこれによつて上りますものをカバーするという意味で、補正予算、来年度の予算におきましても、御承知の通り一方において上つて参りますものは、また他方、おいて……という意味で、御承知かと思いますが、運賃の値上りも、あるいは電力料の値上り等の問題もありますが、それを計算した結果といたしましては、なお減税——御承知の通り間接税の軽減ということによつて計算をいたしますと、結局むしろ一般的には大して上らない——どころではない、むしろ幾分緩和されるという状況になると考えておる次第であります。
  189. 今井耕

    ○今井委員 どうも御答弁が私の要求しておることと、重点がはずれて来ておるのであります。パリテイー計算の内容において相当是正されたということもわかつております。またこれが消費者に及ぼす影響ということについても十分承知しておるのであります。ただ相当政治的に幅のあるようなパリティー計算、こういうものでやつてつて、はたして農民そのものが従来のごとくに農業に従事でき、なおまた農民の生活水準が、一般の国民生活水準に近い生活ができるかどうか、そういうことについて実際に当つて調査をなさつたことがあるかどうか、あつたならばその点をお示し願いたい、こういうことをお伺いしたのであります。
  190. 青木孝義

    ○青木国務大臣 経済安定本部といたしましては、そういう点についても考慮を拂つておる次第でございます。
  191. 今井耕

    ○今井委員 そういう点についても考慮を拂つておるという御答弁でありましたが、もちろん常識的にはそういう点も考慮を拂つただろうと思いますけれども、ほかの一般の勤労者の場合におきましては、相当こまかく調査されて、科学的な根拠があります。そういう立場に立つて調査されたことがあるか、これはさきに申しましたように、米価というものは賃金べースにひとしいところの性格のものです。それではつきりしたものに立脚しませんと、ただ相当議論があり、また相当政治的の幅のあるような理論だけで決すべきものではない。こうしたならば実際どうなるかということを、実際に当つて見て、そうしてそれで行けるかどうかということを相当つてみることが必要である。こういう点からお伺いをいたしておるのです。
  192. 青木孝義

    ○青木国務大臣 われわれのもとにおける調査におきましても、大体そのことは考えているのでありまして、御承知かと思いますが、昨年の米価の決定について申し上げますならば、農林省調査生産費計算いたしましても、たとえば石あたり三千五百四十五円というような数字が出ておりますことから見ましても、もちろんおつしやるような点も十分に調査をいたしておる次第でございます。
  193. 今井耕

    ○今井委員 生産費というものを考慮することは当然でありますが、同時に農民の生活国民の生所水準というものに、ある程度近いところまで行く必要がありますが、そういう点から御検討なさつたことはありませんか。
  194. 青木孝義

    ○青木国務大臣 御承知の通り、農家の家計調査というものは、大体われわれは農林省調査を基準といたしておりますので、これについてはもちろん御質問の今井さんも十分御承知のことと思いますので、それに基いて計算いたしますというのは、御承知の通りその計算がなかなかむずかしいものであり、日本全国を各農家について見ましても、なかなか困難な問題が横たわつているであろうことは想像のできることでありますが、いずれにいたしましても、われわれは農林省農家について取調べた標準的な統計を加味してこれを考えておるのでありますから、その点について矛盾はなかろうと存ずる次第であります。
  195. 今井耕

    ○今井委員 どうも私の聞こうとしておる点にぴんとお答え願えぬわけでありますが、今日食糧が不足であるからといつて、高い米価を要求するということは、これはもちろん今日の生活の安定、経済の自立の上から考えれば、愼まなければならぬ。けれども不当に安く抑えられて、そうして人間らしい生活もできないというところまで、米作農民に一方的に犠牲を負わすということも、これまた非常に考えなければならぬことである。従つてそれを先ほどから申し上げているように、相当議論のあるパリテイー計算とか、あるいは政治的の幅のあるような理論によつてきめて、そうしてそれらの間で、一番必要な主食を生産するところの米作農家経済が、従来通りのような農業経営ができて、しかもある程度の生活水準が保てるかどうか。理論的にそういうようなパリティー計算でやるのもよろしいが、一方においてその実際がどうなつているか、こういうことを当つてやることが必要であると思うのであります。今までのいろいろな御答弁について考えてみますと、大体そういうような御調査がない。われわれの要求しているようなそういうものじやなしに、ほかの今日までのありふれた調査だけが示されているのでありまして、私の要求するような調査というものをなさつておられない、またそういりものに基いて、この米価というものが考慮されておらぬ。こういうふうに大体解釈してよろしいと思うのでありますが、そういうことでありますと、なるほど日本経済を安定し、維持する上から言うならば、それは安ければ安いほどよいということはだれでもわかるわけであります。それが一番問題でありましたが、やはり相当生活水準が與えられる。そういうことに重点を置かなければいかぬ。今日までのやり方がそこに非常に根本的な欠陥がある。そこで農民に対して非常に不親切な米価の決定がなされておる。こう私は考えるのであります。長官はそういうような点についてどういうお考えをお持ちか、その点をお伺いいたします。
  196. 青木孝義

    ○青木国務大臣 最初にお答えを申し上げましたように、われわれといたしましては、できるだけ米価を民主的に決定したいという配慮、それに基きまして米価審議会等もつくりまして、その答申を得たような次第でありまして、これには御承知の通り、それぞれの代表メンバーが入つておりますので、御意見は十分承つておりますし、またわれわれとしても、米価についてできるだけ適当な米価ということを望んで、決定をいたしたような次第でございまして、なおおつしやるような点についても、将来できるだけわれわれも検討をいたしまして、そういう点の欠陥がもしありとするならば、それを改めて参るように努力いたしたいと考えております。
  197. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの米価審議会のこともよく承知しているのでありますが、これとても生産者生産者の立場から、消費者は消費者の立場から、いろいろ議論して、そうして折合つてきまつた、そういう立場のものであつてはつきりしたそういうような数字的な科学的な調査の上に立つて、ほんとうに農民の経済、特に米作農民の経済の実際の上に立つたはつきりした根拠はありません。私は物価庁あたりにおきましても、あるいは安定本部なんかにおいても、こういうものについて、もつともつと真劍な御研究を願いたいと思う。そうでないと、ただお互いがかつてのよい議論ばかり闘わせて、そこに適当に折合うようになさる、そういうことであつては、国民の半数近くを占めるところの農民の経済は立つて行かない。またきわめて不親切なものになつて来る。こういうことを私は痛感するわけです。ことに昭和二十一年からずつと農民の経済考えてみますと、非常に悪化の一路をたどつておることは御承知の通りであります。そうして今日の農民の所得という上から考えましても、本年の当初予算のときに政府から資料を提供された、その資料によりましても、納税者一人当りの国民所得という上からこれを検討いたしますと、農業者の納税者一人当りの平均所得は八万六千円になつております。それから勤労所得は九万円であります。事業所得は十七万三千円ということになつております。そうしてこの三つを比べれば、農民の所得の八万六千円というのが最低であります。しかもこの農業所得は家族の二人ないし三人の合算所得であります。従いまして働いておる者一人当りのほんとうの所得は、この八万六千円の二分の一ないし三分の一ということになつておるのでありまして、非常に所得が少くなつておることは、政府から示されました資料によつてはつきりしております。なおまた農林、水産業者全体からながめましても、やはり当初予算に提出されましたところの資料によりまして、われわれは相当高過ぎるといつて議論したのでありますが、その所得は五千六百億円になつております。そして国民全体の所得が二兆九千億円である。従つてこの五千六百億円の国民全体の所得に対する割合を出しますと、一割九分に当るのであります。国民の約半数を占めておるところの農民の所得は、全体の所得の一割九分にしか当つておりません。これを戰前の昭和五年から昭和九年ごろの割合について調べてみますと、御承知のようにそのころは農村の救済、農村の更生運動なんかが、相当やかましく取上げられた、その時期においてその割合はどうかというと、農民の所得国民全体の所得の一割八分に該当しております。そういたしますと、まさに今日におきますところの農林、水産業者の所得国民全体に対する割合は、戰前の昭和五年から九年程度の、あの農村救済、農村更生運動が行われておつた時代の割合にひとしいということになつております。また一面通貨安定対策本部の通貨の滞留状況から考えましても、なるほど昭和二十一年ごろには農山漁村は約五二%のものがあつた。けれどもその翌年の二十二年にはこれが二割八分に減少し、その次の年には二割に減つて、本年の六月二十日現在におきましては一割七分に減少しておる。国民の約半数近くの農山漁村民の持つておる金が大体全体の一割七分ということになつて、平均が約三分の一に落ちております。この米価の件につきましても、相当農民の経済に余裕がある間は、こういうような政治的の含みのある米価で、むりをいたしましても何とか切りまわしがつくと思う。ところが、今日ここまで農民の経済が追い込められ、どうにもならぬことになつてつて、農業手形なんかも急速な勢いでふえておる、こういう事業になつたからはよほど考えないと、従来のような漠然たる根拠のもとに、政治的に相当幅のあるようなことだけで決することは、私は不当であると思う。こういうことを私は心から心配するわけであります。ことに本年は米の作柄は予想外に悪く、おそらく一割以上の減收であろうと思います。そこへもつて来て検査が非常にきびしい。従つて四等が八割以上できておるというような地方もたくさんある。そこで米価は上つたけれども、この等級価格差による收入減というものも大きい。いろいろ考えあわせてみますと、私は本年の農民の経済というものは、実に寒心にたえないような状態にあると思う。こういうことを考えるときに、ただ低米価、低賃金、しかもその根拠がきわめて薄弱である、そういうことだけでは私はどうしても納得ができぬと考える。それについて今根拠を示せといつても、ないものは示すわけに行かぬ。しかしそういうようなことでは絶対これはいけないということを私ははつきり申し上げておきたい。  次の問題はやはり米価との関係でありますが、自由経済下におきましては、たとえば作柄が非常に悪い、こういう年には品不足のために米価は上ります。それがために多少凶作でありましてもある程度生計が持てた。また豊作のときには多少値が下つても、分量がたくさんとれますからそれでやつて行ける。こういうふうに都合よく調節がとれます。ところが今日のようなパリティー計算できめたような米価でありますと、作柄の悪いときには上るということがない。それだけはつきり減るわけです。ここに統制経済の非常な欠陥がある。調和がとれない。これは今日の価格統制の非常な弊害であつて、ここは工業生産物の価格をきめるのと違うのであります。幸い昨年まではある程度豊作が続いてこういうことはあまり心配がなかつた。ところが本年の作柄は非常に悪い。悪ければ自由経済をやつたら値は上るのです。ところがパリティー計算というものは機械的であつて、そういうふうな調節がとれない。かような点から考えて本年の作柄が非常に悪い、こういうときにはやはりそれを加味したところの米価を考えなければ、その調和がとれない。こういう問題についてどういうふうにお考えになるか。まだ本年の実收ははつきりしておりません。十二月になれば相当はつきりして来ると思いますが、そういう欠陥がはつきりした場合において、もし收量が一割なら一割少いという調査ができたならば、それに対して米価を改訂する御意思があるかどうか、こういう点について御意見を承りたいと思います。
  198. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ただいまのところ、米価を改訂するような考えはございません。
  199. 今井耕

    ○今井委員 ただいまのお答えによると、米価はそういう場合にも改訂しないということをはつきり答弁された、私は実に遺憾にたえないと思う。これは当然その程度によつて——もちろん三割以上になれば、農業保険の救済の道もあります。けれども、そこまで行かぬ場合においては救済の道はない。しかもだれが考えても低米価政策である。そういう場合にも何ら考慮せぬということをあんまりはつきり申されるということは私はどうかと思う。もつとそこに含みのある考え方、同情味のあるところの御答弁があつてしかるべきだと私は思う。もう一度これについて御所見を承りたい。
  200. 青木孝義

    ○青木国務大臣 今井さんの御意見はまことにごもつともなところが多々ございますので、十分私の方も研究してみる考えでございますが、先ほども申しました通り、非常に作柄が悪いから、米価を上げる考えはないかとおつしやいましたが、当分そういうふうに上げるという考えはないというようにお答えを申し上げた次第でございます。
  201. 植原悦二郎

    植原委員長 この際大蔵大臣よりちよつと発言を求められております。池田大蔵大臣
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 目下御審議を願つております昭和二十四年度の補正予算につきまして、一部を修正することといたします。ただいま本会議で説明をして参つたのでありますが、その修正をいたします要旨は、輸出振興のために輸出金融補償制度という制度を考えておつたのでありますが、その後いろいろな事情を勘案いたしまして、この輸出金融補償制度というものを輸出信用保険制度に改めまして、輸出の振興に資することといたしたのであります。従いまして、御審議を願つております額におきましては異動はございません。輸出金融補償制度を輸出信用保険制度に改めただけであります。どうぞ何分御審議を願います。
  203. 今井耕

    ○今井委員 次に米価の生産者価格と消費者価格の問題でありますが、米価を高くすれば、ここに消費者の生活問題が起ることは当然であります。そこで今日生産者価格と消費者価格との幅を狭めるということが非常に大きな問題になつておるわけです。そこで本年の生産者価格が四千四百五円である、そしで消費者価格を今十キロについて四百五円を四百五十円にするか、あるいは六十円にするかというようなことが新聞にも発表されております。これも十キロ四百六十円ということにいたして計算いたしますと、石当り六千九百円になります。そうすると、その差額、は一石当り二千四百九十五円ということになります。これを本年の供出米が三千二百万石ということで計算いたしますと、この中間の経費が七百九十八億ということになります。この中間経費の合理化の問題につきましては、今日までも相当論議をされております。十キロ当り四百六十円にするか、あるいは四百五十円にするか、この二つの案があるらしいのでありますが、この四百六十円にした場合において、中間経費の七百九十八億というものが、大体どこから出て来るのか、その中間経費の内容について、これはごく大綱だけでけつこうでありますが、国民一般が最も知りたいところであるので、その点をひとつ御説明願いたい。これは農林大臣からでもけつこうであります。
  204. 森幸太郎

    ○森国務大臣 中間経費を申し上げます。等級間の格差が三十九円二十五銭、包装代が八十五円、早期供出奨励金が二百六十六円八十五銭、超過供出の買入れ増し分が三百九十二円九十二銭、バツク・ペイが六十九円、直接経費としまして、特別指定倉庫の加算が三十円、集荷手数料六十円、倉庫保管料七十三円三十七銭、運送費百八円六十銭、その金利五十七円八十七銭五厘、小計が三百二十九円八十四銭五厘、これが政府経費であります。間接費としまして、人件費が八十九円九十七銭五厘でありますから、これで政府経費は、合計いたしまして四百十九円八十二銭であります。そのほかに食糧公団の経費が三百九十四円二十銭、目欠けが八十三円三十五銭、中間経費といたしまして千七百五十円三十九銭になるのでありますが、純粋な中間経費といたしましては、石当り八百九十七円三十七銭、これは生産者に還元せられる分を除いた数字であります。
  205. 今井耕

    ○今井委員 大綱だけはこれでよくわかりました。なお各項目の内容についてある程度こまかい点をひとつプリントにしてお願いいたします。
  206. 植原悦二郎

    植原委員長 それは別に調べて資料を出すようにしてもらつた方がいいでしよう。
  207. 今井耕

    ○今井委員 それでは安定本部長官に対する質疑は、時間の関係もあるので、この辺七終りにして、次に農林大臣に二、三の点について……。
  208. 植原悦二郎

    植原委員長 まだどのくらいありますか。かなり時間がかかりますか。
  209. 今井耕

    ○今井委員 かなりかかります。
  210. 植原悦二郎

    植原委員長 それではそれを留保していただきます。  この場合、木村国務大臣に対しての留保されておる質疑がありますから、これを許します。中曽根康弘君。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 きのう実は木村国務大臣に御質問いたすことになつてつたのでありますが、大臣がお見えになりませんので——われわれの先輩濱口雄幸先生は、きのう申し上げましたように、ピストルのたまを腹の中に撃ち込まれて、それでも議会においでになつて、遂におなくなりになつた。吉田さんはその意を体して、きよう御出席になり、木村大臣も病を押してここにお出でになりましたことを、私は非常に敬意を表する次第であります。私がまずお聞きしたいと思いますことは、われわれは今十五箇月の予算をいろいろ検討しているわけであります。約一年半にわたるところの見解でこの予算をながめなければならぬと思いますが、そこで私お尋ねいたしたいと思いますのは、内閣の性格がかわつて来ると予算もかわるだろうし、予算の執行もかわる。最近盛んに保守合同とかなんとかいうことが言われております。ただいまの内閣は自由主義的な政策と、いわゆる修正資本主義的な政策との連立内閣であります。これがもし自由主義政策一本やりの内閣になると、地方財政もまた多分にかわつて来るのではないかと思います。そういう点から、最近来の保守合同とかなんとかいう問題は、われわれは相当関心を持つて地方財政の性格にすら影響するという考えで見ておるのでありますが、木村国務大臣は、最近宣言というものを発表されて、保守合同に反対のような意向をお漏らしになつておりますが、この内閣の性格を今のものとかえて、自由主義一本やりの性格の内閣にかえるということに対しては、木村国務大臣はどういう御見解を持つておりますか、ここでお漏らしくだされば幸甚と存ずる次第であります。まず第一にこの点をお伺いいたします。
  212. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 長らく休みまして、出て参りましたら、劈頭たいへん重大な問題を御質問されましたが、私は別に宣言をいたしたのではありません。この間病中に犬養総裁に進言をいたしました。あれはつまり進言に対する私の宣言でありまして、あれは私案でありますので、ここで公に、それについての性格をいろいろ申し上げることは、遠慮いたしたいと私は考えております。従つて予算には何らの関係をいたさぬものと考えております。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 やはり政党政治でありますから、基本的な政策協定とか、あるいは政策の問題が根底にあつて、そこで予算が出て来るだろうと思います。現在の内閣は社会連帯主義、修正資本主義と自由主義の協定による内閣だろうと思います。もしそれが自由主義的な政策一本になると、当然来年度の予算あるいは今後の地方財政そのものにも、影響が来ると思うのでありまして、そういう政策的な根底をなす問題から、木村国務大臣の御見解を承りたいのであります。つまり結論は、自由主義的な一本やりの政策をやるということに対して、木村国務大臣はどういうふうにお考えであるか。現状でやつて行くのがよろしいのか、あるいは合同して自由主義的な、灘の生一本でやるのがよろしいのか、この点を承りたいと思うのであります。
  214. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 この間新聞紙に取上げられました私の構想に対する御質問であるか、あるいは国務大臣としての私に対する御質問であるか、そこははつきりいたしませんが、承るところによりますと、この間私が病中に犬養総裁に対して進言をいたしました、あの構想に対しての性格に伴うところの予算に関係する問題と思いますけれども、これは私の所属するいわゆる民主連携派の犬養総裁に対する進言でありまして、犬養総裁がそれを取上げて、これを実行するやいなやという問題につきまして、まだここで——これは私の案でありまして、それに対して私の考えを申し上げることは遠慮したいと思います。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 どうも私の申し上げるのがあいまいでのみ込めないのは非常に残念ですが、社会連帶主義とか修正資本主義というものは、当然地方と中央の権衡をはかれるが、自由主義は実力主義でありますから、これは都市が強くなるかも知れない。従つて木村国務大臣が現内閣におられるということは、地方にとつては非常な強味であると思います。もしあなたがおいでにならなければ、地方は非常に憂欝な気持に包まれるかもしれない。そういう政策の基本の色合いというものをこの委員会でぜひお漏らしになることは、私は内閣の政策をはつきりする上において大事だと思います。私は決してあの進言を言つておるのではありません。木村国務大臣の御政策が、今後内閣にどう出るかということを申し上げているのでありまして、自由主義、灘の生一本でやるのがいいか、あるいは現在のままでやるのがいいのか、木村国務大臣の御見解を重ねてお尋ねいたします。
  216. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 簡単にお答えいたしますが、私も閣僚の末席を汚している一人であります。現内閣の方針によつて私の方針といたしたいと考えます。
  217. 川崎秀二

    川崎委員 病中で構想を発表せられたということでありますが、そのことはおきまして、その翌日でありますか、あなたはこの国務多端の折柄、廣川幹事長をその私邸にまでたずねられて、保守合同の問題について他意はないとか、いろいろ言われたというようなことを聞いております。その内容などについて私は興味を持ちませんが、地方行政委員会は先般来国務大臣の出席を要求して、なるべく早く出て来るようにということを、しばしば申しておつたにもかかわらず、国会におけるところのこの重要なる論議をよそにして、保守合同というような政界の裏街道の方ばかりを進められているということは、私は国務大臣としての責務を果すゆえんでないと思うのでありますが、あなたは一体国会におけるところの、この重要なる論議に出席する方が大事なのか、それともその政界の保守合同とかいう問題に執着されるのが大事なのか、この点明確にお答え願いたいと思います。
  218. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 私が病気をいたしておりましたことも事実でありまして、聞くところによると、仮病じやないかという御批判を受けたようでありますが、私はかねて宿痾の腎臓病を持つておりまして、風邪を引くとなかなか容易になおりません。静養いたしておつたのは事実でありますが、あれはその寝ているときの話でありますが、二十日に廣川幹事長を訪問して、保守合同の問題に関して論議したということは、それは少し新聞の取扱いが間違つておると思います。私はそのときには、おやじのようにいたしております若槻禮次郎が逝去いたしましたので、急遽伊東の方へ出かけるために、東京駅へ向います途中、廣川君の家は途中であつて、ちよつと寄ればよろしいのでありますから、廣川君のところに寄りまして、かねて吉田総裁は非常に若槻に同情をしていただいている一人でありますので、そのことに対してのお礼を吉田総理にお伝え願いたいということを言うために、廣川君の家へちよつと立寄りまして、おそらく五分間ぐらいであつたと思いますが、保守合同を論議した覚えは毛頭ございません。新聞にどう書かれましても、私としてはこれ以上申し上げることはできないのであります。  それから国会の重大なことはお説の通りであります。重大でありますが、私情として伊東に参りますことは、これは捨ておきがたいことでありますので、二十一日から国会へ出席するつもりでおりましたが、その悲報に接しまして、急遽向うへ飛んで参りましたようなことで、今日まで顔を出すことができなかつたということは、まことに慙愧にたえません。この点おわび申し上げます。
  219. 川崎秀二

    川崎委員 今のお話であると、ちよつとの時間であると言われたけれども、ちよつとの時間でも何でも、お寄りになつたということは事実であつて、そして保守合同の論議はしなくとも、こういうことをお伝え願いたいというようなことを言われたことが事実であるとすれば、それは私は新聞の誤報じやないと思います。新聞の誤報だとか、あるいは新聞のとり間違えだというようなことを是認してよろしいのかどうか、その点をお答え願いたい。あなたは議会政治家として非常に長い方であつて、私も常に尊敬しておりますけれども、大体議会の論戰の雄ではなかつたために、本会議とか委員会に出席することをあまり好んでおられないようにも見受けられる。はなはだ残念だと私は思つておる。今日地方財政の問題はきわめて重大な問題でありましてしばしば委員から深刻なる質問が出ておる。この点は私は御答弁はいりませんけれども、今の点だけは、新聞の誤報であつたのかどうか、ぜひ御答弁を願いたいと思う。
  220. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 新聞にありますようなことは事実と違います。その点だけは申し上げておきます。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 保守合同云々の問題は別な話だ、ここで論議すべきでないというようなお話でありましたが、実は吉田総理大臣もこの席上におきまして自分の御見解をお漏らしになつておる。これは施政方針にも関係するような重要な問題であるだろうと思います。従つて保守合同がいつごろ行われるかということは、日本の国政を左右するような重大な因子を含むものでありまして、木村国務大臣も吉田総理大臣並に、ここでぜひ御答弁を賜わりたいと思います。一体そういうことをつまり自由主義的な性格の内閣でやるのか、あなたは現在の内閣でやるのがよろしいと思うのか、政策的な問題についてお答え願いたいと思うのであります。
  222. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 繰返してお答えしますが、先ほど申し上げました通りであります。私は現内閣の施政方針を支持する一人でありまして、私の方針もその通りであります。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 現内閣の施政方針に追随しておやりになるということは、いわゆる民主党連立派の政策というものはないということになりますか。現内閣の自由主義的な政策をそのまま唯々諾々としておやりになるのだ、今後もそういうことをおやりになるのだ、もういう御趣旨でありますか。もう少し明らかにしていただきたいと思います。
  224. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 現内閣の閣僚といたしましては、現内閣の向う方針と同一なる方針で参りますということは、これは当然のことだと思います。もとよりこの方針に対して他意がありますならば閣僚の一人としてとどまることはできないわけでありますが、私は現内閣の方針に従つて行きたいと思つております。
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 よくわかりました。大臣は現内閣においでになりますから、あなた方が一緒になつておきめになつたことに服従するのは、これは当然のことだろうと思います。ところが状況変化が起りまして、たとえばここで二つの政党でできておる内閣というものが一つになつてしまう。これは内閣の性格がかわるし、閣議の内容もおのずからかわつて来るだろうと思います。そういうような変化が起つた場合に、木村国務大臣はどういうお考えを持つか。それを実はお聞きしておるのでありまして、現状をもつて質問しておるのではありません。どうぞその点御答弁をお願いいたします。
  226. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 それは仮定的なことでありまして、ここでどうも明確な答弁はいたしかねます。
  227. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 さすがに吉田内閣の閣僚だけあつて、吉田総理大臣の病気がうつつたようであります。それではこの点についてはこれ以上私は論及いたしませんが、ともかく世上では、新聞をごらんになつてもわかるように、もう少し政界を明朗にせよと、毎日新聞も言つておる。東京日日新聞も言つておる。あらゆる新聞が政界を明朗にしろと言つている。そのことは灘の生一本でやれ、こういうことだと私は解釈しております。大臣がそういう事態が起つた場合には、民政党の長老として勇躍してわれわれと提携せられんことを、ここに懇願いたす次第であります。  次に地方財政の問題に移ります。今度の予算で九十億円ほど配付税を増すことになつております。この九十億の配付税の内容は一体いかなる内容を配付するのか、いろいろ過年度分や、その他の関係があるようでありますが……。
  228. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 お答えいたします。配付税は申し上げるまでもなく、これは補助金ではありませんから、これをどういう目的でどういうことに配付するかという費目別の内訳はないわけであります。ただ地方財政の財源として最も重要な位置を占めておるものでありますが、今年度の予算の五百七十七億の配付税は、これを策定いたしましたあとにおいて、非常に足りなくなりまして、何とかして補給をいたさなければ、地方財政が立ち行かなくなつて参りましたので、九十億という補正予算の要求をいたしたような次第であります。当初配付税決定後新たに財源を要するという費目があるかと申しますと、石炭手当、寒冷地手当の支給というようなもの、それから二は、恩給費の増加に伴う地方負担額の増加、都道府県共済組合長期給付制度の創設に伴うもの、政府補正予算の公共事業費の追加に伴うものなどでこれを必要と認めたのであります。その他政府補正予算に伴う財源の所要額というようなものが、合計いたしまして九十億の新規財源要求の増加となつたのであります。そのうち公共事業費の関係の方につきましては、これを裏づけますために起債の額を広げてこれを裏づけたい。こう考えております。なお詳細の数字の点につきましては、事務的のことでありますので、政府委員をもつて御答弁申し上げます。
  229. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が調査いたしました範囲では、九十億という金は失業対策その他に五億、寒冷地手当に十三億、共済組合その他に五億、それから伝染病その他に四億、それからこの前の〇・八のときに地方へ補給した十八億の返済金、こういうようなものが合さつて、さらにその他のものを加えて九十億であるといわれております。従つてそれらの既定経費、つまり今まで使つてつた金を差引くと、今度のこの配付税で実質的に地方に配付になる額というものは、わずか四十億にすぎないといわれておる。わずかに四十億の配付税で今後の地方財政をはたしてまかなえるものかどうか。その点大臣の御信念を承りたい。私が調査した範囲ではわずかに四十億しかないという話であります。
  230. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 差引純粋な配付税の額は、お説のごとく四十億ぐらいにとどまると思います。これも国家の財政の立場からいたしまして、それ以上の要求をいたしましても、国庫の財政が許さぬ関係上、まず一方においては節約をし、そしてこの四十億をもつて何とか今年度内はまかなつて行くという自信を持つておる次第であります。
  231. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 四十億の金で大臣は御満足なすつてはおらないだろうと思うのですが、一体大蔵大臣に対して大臣は幾らよこせとお掛合いになつたのか。地方財政委員会の要望の額がありましたら、お示しを願いたい。まさか九十億や四十億を最初からぶつかけたのではないだろうと思う。
  232. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 当初地方自治委員会の協議をもちまして要求いたしました額は、たしか百三十億であつたろうと記憶いたします。少し数字が違うかもしれませんが、ただいまの記憶は百三十億であつた考えております。
  233. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大分時間をお急ぎのようですから、もう一点だけお伺いいたします。昨日私は池田大蔵大臣にもお尋ねいたしたのでありますが、預金部の資金を金融として地方公共団体に貸してやる問題であります。御存じのように、災害復旧その他で多額の金を、本年度は二百三十億でありましたか、起債として認めておることになつております。来年はシヤウプ勧告案によると、これを三百五十億程度に広げられる予定でありますが、問題なのはその利子であります。大臣御存じのように、大体災害復旧のためにまわす金は国庫が負担して、予算で公共事業費として配賦すべき金だ。しかしその配賦すべき金が現実にないというので、金融でまわしておるわけであります。ところがこの利子が非常に隔たつておる。御存じのように郵便貯金はわずか三分以下である。しかるに預金部の資金を貸してやる場合には九分四厘ないし九分五厘、これは期間によつて違いますが、そういう高い率で貸しておる。これは災害住民にとつて政府は高利貸に相違ない。災害住民は税金を納めておる。政府はやりたいのだけれども、金がないので国家予算が出ない、そのかわりに金を貸してくれる。貸してくれる金は一割近くの利子をもつて貸してくれる。これは災害住民にとつてとても納得ができないと思います。郵便貯金はわずか三分の利子、しかるにそれが返つて来るときには九分何厘というもので返つて来る。こういう状態をあなたは地方財政担当の国務大臣として、放任しておくつもりでありますか。昨日大蔵大臣にもお尋ねいたしましたので、地方財政関係を担当しておる木村国務大臣の御所見と御方針を承りたいのであります。
  234. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 九分五厘という高利の利子は、預金部の経理状況経費が非常にかさんでおりまして、どうも九分五厘というのは高いようであるが、これ以下にはならぬということから、この利子を九分五厘というふうにきめたわけであります。
  235. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 なるほど預金部の経理状況は悪いのですが、その経理状況の悪いのを、一番被害をこうむつた災害民に押しつけるという手はないと思います。大蔵大臣も御存じのように、預金部には一般会計から繰入れておる金もある。従つて災害関係の金が今年当初七百億だつたのが、五百億に切り下げられたが、その二百億というものがあるはずだ。それを災害に出せないならば、預金部に対する補給金として出したらどうか。そうして災害民に対して低利の金を貸してやるのが当然の親心であると思います。そういう措置をとられることは、社会連帯主義を奉ぜられる木村国務大臣として当然のことだと思います。あなたは現内閣の政策に追随して行かれると言われるが、そういう点まで盲従して行かれるのか。国務大臣の存在を明らかにして、現内閣は地方を軽んずるものではない、地方を重んずるということに修正する決心がないのか、それをあなたに私はお聞きしたいと思います。
  236. 木村小左衞門

    ○木村国務大臣 この問題は大蔵大臣からお答えを願うことにいたします。
  237. 池田勇人

    池田国務大臣 社会連帯保障制度あるいは修正資本主義を非常に言つておられるようでありますが、災害に対する復旧費用をだれが負担するかということは問題があるので、シヤウプ博士はある程度以上のものは、全額国庫負担とすべしという意見を出しておられるのであります。われわれはこの点について検討いたしております。しかし少くとも今までは災害が起つた場合におきましては、一部を地方費で負担し、一部を国の費用で負担しておるのであります。こういうやり方は一つは社会連帯保障制度の現われであつたかもしれないと思うのであります。従つて預金部が非常に高利貸をしておるというお話でありましたが、高利貸をしておるという前提には、よほどそこでもうけておるという前提がなければならないのでおります。今の経理状況から申しまして、先般お話申し上げた通りに、一般会計から繰入れをしてようやくつじつまを合しておるような状況であるのであります。興銀その他一般金融機関が貸し出します金利は、これ以上に高いのであります。預金部なるがゆえに一般金利よりも、安く貸し得る状況に相なつておるのであります。
  238. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 木村国務大臣はたいへんお疲れのようでありまして、これ以上御質問することはおいたわしい次第でございますから、この程度にいたします。地方税その他に関する質問はあとに留保さしていただきまして、私はこれで終ります。
  239. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの預金部の赤字の問題ですが、これはなるほど三十億円余り赤字を出して一般会計から繰入れております。これについてお尋ねしたいことがあるのですが、預全部の運用資金に余裕ができて、大体それが現在百億円以上ある。その余裕分を日本銀行へ預けてあるのですが、この利子充てとして七厘五毛普通預金部へ繰入れておる。この七厘五毛はその利子としては不当に少な過ぎる。将来はどうやら余裕金は三百億以上になるという見込みのようでありますが、この七厘五毛の利子を少くとも日歩一銭五厘程度に引上げて、これを日本銀行から拂うということにすれば、これほどの赤字は出まいと思う。従つて特に災害地にのみ高く融資をしなくてもいいと思います。この点大蔵大臣の御答弁を願いたい。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 預金部資金の運用につきましては、原則として地方債の引受ということに相なつておるのであります。しかし最近の郵便貯金の増加、簡易保険あるいは厚生年金の増加が非常におびただしいので、相当額の余裕金が出て参つておるのであります。従つて従来復金が公団に持つてつて融資しておりますのを、肩がわりして預金部から融資することになつたのであります。この金に相当出しております。しかしなお余裕金がありますので、今後の預金部資金の運用につきまして、できるだけ有利にするように努力いたしております。私は最近これの結果が出ると思いますが、片一方余つておる余裕金につきましては、食糧証券の引受等をいたしましてやつておるのであります。日本銀行への預金が七厘五毛というお話でございますが、これは主として食糧証券の引受、復金債の引受等にやつておるのであります。日本銀行等へ持つてつて、高い金利で預つてもらうということになると、日本銀行の納付金との関係もございますし、また日本銀行が特殊の国の財政資金を高く預かるということも、金融政策上いかがなものかと思います。従いまして問題は預金部の日銀への預け金の金利をどうこうするよりも、今後の余裕資金の運用を考えた方が根本的だと思います。
  241. 奧村又十郎

    ○奧村委員 日本銀行の利益は、結局一般会計繰入れになるのでありますから、同じことであるとはいうものの、預金部会計は預金部会計でやはり独立すべきものだと思います。それで日本銀行の方も相当黒字が出ておる。現在今度の一般会計においても繰入れを増加しておる。従つて預金部のみの赤字三十何億というものを預金部へ入れるということよりも、預金部は預金部として、十分な金利を受取るということにすべきである。七厘五毛というのは不当であつて、預金部資金の原価は政府の発表において九分何厘についておる。従つてこれは地方へ貸し出す場合も九分というのはやむを得ないかもしれませんけれども、日本銀行へ預けておくその利子七厘五毛というものは、これまた、不当に安過ぎる。少くともコールと同じ率にまで引上げるべきではないか。ただいまの大蔵大臣の御答弁にはどうも納得が行かぬのでありますが、これ以上お答えがなければしかたがありません。
  242. 池田勇人

    池田国務大臣 預金部が赤字であるからという出発点から、預金部の日本銀行への預金について特別の金利を設けたらという御議論のようであります。しかし私は日本銀行が預金部のみならず政府資金を預かります金利につきましては、差別を設くべきではないと思う。預金部が赤字を少くし利益を出すためには、預金部資金の運用について考えて行くべきだと思つております。
  243. 奧村又十郎

    ○奧村委員 しつこいようでありますが、預金部とそのほかの政府の会計とは別であろうと思います。預金部は一応金融機関の性格を持つておる。ただいま申し上げるように資金原価が九分以上についておる。それを七厘五毛というのは、これは昔からの金利を踏襲しているのじやないか、この意味においてお尋ねしておるのであります。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 政府預金の金利については、やはり統一的に考えた方がいいと思うのであります。
  245. 植原悦二郎

    植原委員長 本日はこれにて散会いたします。  明日は定刻午前十時より開会いたします。     午後五時三十三分散会