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1949-11-22 第6回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十二日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 庄司 一郎君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 風早八十二君    理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君      岡村利右衞門君    尾崎 末吉君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    周東 英雄君       高橋  等君    田中 啓一君       玉置  實君    坪内 八郎君       西村 英一君    丹羽 彪吉君       松浦 東介君    松野 頼三君       南  好雄君    稻村 順三君       西村 榮一君    水谷長三郎君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       村瀬 宣親君    野坂 參三君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       山本 利壽君    平川 篤雄君       松本六太郎君    黒田 寿男君       世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 樋貝 詮三君         国 務 大 臣 本多 市朗君         国 務 大 臣 増田甲子七君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         統計委員会委員         長       大内 兵衛君         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         (銀行局長)         大蔵事務官   愛知 揆一君         (主税局税制課         長)         大蔵事務官   原  純夫君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君         (財政金融局         長)         経済安定事務官 内田 常雄君  委員外出席者         経済安定事事務         官       菅谷 重平君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十四年度一般会計予算補正(第一号)  昭和二十四年度特別会計予算補正(特第一号)  昭和二十四年度政府関係機関予算補正(機第一  号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 会議を開きます。  これより質疑を許します。稻村順三君。
  3. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣はさきの財政演説で、当初予算編成にあたつてインフレを收束させ、経済を安定させることを眼目として、昭和二十四年度の当初予算総合的予算たらしむべく努力したと言つております。その結果その方針が着々と成功したから、補正予算にもまた総合的均衡予算原則を堅持したものであると述べております。昭和二十四年度の当初予算の結果が成功、であつたと、それほど保証できるものであるかどうかにつきましては、われわれには多くの疑問があるばかりでなく、與党議員諸君の中でも、多くの疑問を持つていると思います。現に與党議員諸君が選挙区で、われわれはああいう予算には反対であつたが、いかにもわれわれの力以上のものがあつて、いたしかたがなくてこの予算をのんだんだというような弁解をしていることによつても、そのことが証明されると思うのであります。特に民自党公約がたな上げされてしまつたので、そういう不平が起つて来たのだと思うのであります。いやしくも一党が内閣を組織した場合に、公約をたな上げするような予算を組んで、その党の出身閣僚である大蔵大臣が、その予算が着々と成功しているというように言うのは、ちよつとおかしいような感じがするのであります。また補正予算が、税制改革を除けば、当初予算編成に際して、すでに予想された公共事業費地方配付税不足を追加することに主眼を置いているにすぎなかつたということは、民自党の主張によつて、当初予算編成方針修正を加えられたと見なければならぬと思うのでありますが、その点に関して大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十四年度の当初予算につきまして、いろいろな批判があつたというお話でございますが、それは長い間のインフレーシヨンを急速に收束せしめ、わが国経済の基盤をつくり上げる場合におきましては、かなりの摩擦はあるのであります。それで私は、いろいろな公約がありますけれども、まず第一にわが国経済ほんとうの姿にし、自立経済に持つて行くのが、公約を実行する前提要件だという考えのもとに、あの二十四年度の当初予算を組んだのであります。そこで私が、大体所期通りの成果を收めつつあると言つたのは、この四月にわれわれの公約を実行し得なかつたのを、半年足らずのうちに、ほとんど財政経済に関するわれわれの公約は実行できた、またできんとしていることを見ましても、これを物語ると思うのであります。それは建直しというものは一朝一夕にできるものではないのでありますが、過去半年の間に、わが国経済の歩みというものは、私は予期以上の成績を上げたと思つている次第でございます。
  5. 稻村順三

    稻村委員 先に私が質問したように、今度の予算重点を見ますと、大体において公共事業費をふやしたことと、地方配付税をふやしたことと、政府機関等損失補償金をふやしたということでありまして、政府機関損失補償金を除けば、主として目立つた増加というのは、公共事業費地方配付税の問題であります。これだけのものを追加するということになつて、しかも今度の補正予算の中で重点を置かれているということになると、これは過去の当初予算方針というものを堅持したと言うけれども、この点において前の編成方針に対して修正を加えたことを意味しているのではないか。こういうことに対して大蔵大臣の御見解を承りたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 経済情勢がかわつて参りまして、すなわち前はインフレ收束にあらゆる点を集中して参つたのでありますが、大体インフレ收束の見通しもつきましたから、財政演説において申し上げておりますように、今度はほんとう復興予算、発展的の予算を組むのだ、こういうことでございます。従いましてその意味におきましては、補正予算並びに来年度予算は、第五国会に提案いたしました当初予算よりも、非常に堅実な発展的、復興的なものになつておるのであります。
  7. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、経済情勢がかわつて来たから、予算編成方針に対して修正を加えたと解釈してよろしゆうございますか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 経済情勢がよくなりましたから、大体その情勢に沿うように予算を組んで行つておるのであります。
  9. 稻村順三

    稻村委員 それでそのことは、今後の予算編成方針に関する修正意味するというふうに、大蔵大臣考えないのですか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 今後の予算編成方針についての修正はございません。過去の予算編成のときの気持よりも、だんだん経済情勢に応じて方針をかえております。
  11. 稻村順三

    稻村委員 私はこれは客観的情勢によつて、少くとも修正をする一つの現れである、こう考えておるのでありますが、この点に関していくら押し問答しても、大蔵大臣との間にのれんの腕押しになるようでありますから次に進みます。  大蔵大臣は、今度の予算経済原則を尊重して組んだというふうに、前から幾たびか繰返して言われておるのでありますが、経済原則の中に、支出を厳重に引締め、かつ最大の收入を確保することによつて、一日も早く予算の真の均衡をはかること、こういうふうなことを述べておりますが、大蔵大臣総合的均衡予算というのも、こういうふうなことを意味するものだと思うのであります。しかしながら実際の均衡という言葉は、非常に抽象的な表現であつて、具体的にはどういうふうに支出を引締めるか、またどういう收入をふやすかということは、いろいろかわつて来ると思うのであります。またそういう具体的なやり方によつて政府の性格がきまつて来ると思うのであります。しかるに吉田内閣が当初予算で、昨年の予算に比べて特に引締めたと思われるものは、終戰処理費関係するものを除けば、公共事業費地方配付税あるいは教育関係費用農地改革に関する費用というようなものであります。言葉をかえて言えば、現下の急務に即応すべき費用が非常に削減されておつたのであります。補正予算を見ますと、この点を修正するというようなところに、相当力が注がれておるように考えられるのでありますが、私はこういうところがすなわち当初予算修正であるというふうに解釈しておるのであります。しかしながらこの際、特に重要性を帯びて来たものは失業の問題ではないかと思うのであります。というのは、当初予算によつて一番われわれが重大視しなければならぬのは失業であります。行政整理が行われると、それに便乗して企業整備という名前で人間の整理が行われました。そのために非常に失業が増大して、政府でも失業の救済のためにはいろいろなことを考えておるというようなことを言つておるのでありますが、しかしながら先ほど大蔵大臣は私への答弁に対して、インフレを急速に收束せしめるために、いろいろな施案やりそれが成功した、こう言つておるけれども、その政策から来るところの、結果としての失業対策が十分になされておらないばかりでなく、しかもこういう整理のみを非常にむりにやつて来たという感じがあると思うのであります。そうしてこのむりは、現に政府機関である各省あるいは現業庁の中に今日現われて、非常に矛盾したものがたくさん出ていると思うのであります。大蔵大臣は、このむりがたたつて今非常に困難をしているという実情をお認めになるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 均衡財政をとりまして経済再建いたしますことは、一朝一夕ではなかなかできないことでございます。徐々にやつて行かなければなりません。しこうしてかかる手段をとります場合に、一時的にいろいろな困難な問題も起つて来ると思いますが、それは大体克服できると考えておるのであります。また克服するような施策をとらなければならぬと思つて、努力いたしておる次第でございます。
  13. 稻村順三

    稻村委員 ときによると法規を無視してまで、そのむりが行われておるという事実を見て、われわれは考えさせられるのでありますが、大蔵大臣はそういう点は絶対にないと考えておりますかどうか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 法規を曲げるようなむりをしているとは考えておりません。
  15. 稻村順三

    稻村委員 これは運輸大臣あるいは郵政大臣農林大臣に確かめなければよくわからぬことであろうと思いますが、それを確かめることはあとといたしまして、大蔵大臣はそれならば、たとえて申しますと、国鉄の場合に退職手当がいろいろな点で欠乏してしまつて、そのために石炭代の中から四十億の金を退職手当として流用したという事実を御存じでありましようか。またこのことは会計法違反にならぬと思いますか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 かかる事実は聞いておりません。退職手当を出しますときに、予定の退職手当資金が足りないときには、合法的に流用する場合が考えられます。
  17. 稻村順三

    稻村委員 もし石炭代を流用したと申しましても、それは合法的なものだというふうに考えることができますか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 会計法上認められておる範囲ならけつこうと思います。ただそういう事実があつたかないか知りませんので、お答えするわけに行きません。
  19. 稻村順三

    稻村委員 これも郵政大臣に聞かなければわからぬことでありますが、郵政省の管轄になつておる簡易保険特別会計に関する問題であります。ここでは收入増加をはかるために、すなわち三十億円の收入増加を目途といたしまして、小口整理をやつたのであります。この小口整理の場合に三百六十万件、実際整理しようとしたところが千九百万件という数にふえたと言われておるのであります。ところがむりな整理をやつたために、ただちに人手不足になつて、どうしても臨時雇いなりあるいは労働強化をさせなければならぬというようなことで、たちまち費用に困つてまつた。それでしかたがなくて備品費役務費をこれに流用してしまつたという事実があるのでありますが、この点は国鉄の場合と同じように、こういう費用を流用しているという事実は、私は非常に遺憾だと思うのであります。しかしこういう事実を大蔵大臣ははたして聞いておるか、聞いておらぬかであります。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 聞いておりません。
  21. 稻村順三

    稻村委員 これはやはり農林大臣質問しなければ、明確な御答弁は得られないと思うのでありますけれども、行政整理によつて非常に人手不足になつてしまつて供米期になつて事実検査に応ずることができない。このためにせつかく整理したあとになお三百人だつたか、六百人だつたか、わからないけれども、臨時雇いを入れてこれに対処しているという事実があるのであります。私は新潟県でありますが、新潟県のごときはなれていない人々が臨時雇いとなつて検査に従事するものですから、検査はなかなか思うように進捗しないのであります。それで定員が少いからというので、今までは農業協同組合倉庫であるならば、どこでもやつたのでありますが、今度は指定倉庫に限りましてやつたために、延々長蛇の列をなして検査を受けているのであります。雨が降つて来たために、せつかく供出するために持つて来たところの米を、みんなぬらしてしまつたという事実がたくさんあるのでありますけれども、かように臨時雇いを入れて、実際国民相当の迷惑をかけているという事実が至る所に見られるのであります。これはどうかというと、今度の人員整理に非常なむりがあり、しかも国民損失をかけているということになるのでありますが、こういう事実を大蔵大臣は認めるのであるかどうか、その点を質問いたします。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 食糧管理特別会計の職員の手不足で、ことに供米代金の支拂い等につきまして手不足感じている。臨時雇員使つてつているが、これを何とかしなければならないということは、先ほどの閣議で聞きました。
  23. 稻村順三

    稻村委員 そういたしますと、これは本多国務大臣に聞かなければわからぬことでありますから、あとから本多国務大臣に詳しく尋ねるのでありますけれども、そうなるとこの点について、大蔵大臣定員法修正しなければならぬという意味のことと解釈してよろしゆうございますか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう申出を農林大臣からただいま聞いたところでございます。はたして事実なりやいなや、これが対策につきましては、ただいまお答え申し上げるまで行つておりません。
  25. 稻村順三

    稻村委員 そういう申入れを受けたということ自身大蔵大臣が述べたのでありまして、この点申入れがもし事実であるとするならば、大蔵大臣定員法修正の意思を持つているというふうに解釈して、次の質問に移りたいと思つております。  次にお尋ねしたいことは、財政資金日本経済との関係についてであります。日本産業の現体制は、元来戰争中国家財政資金によつて急速に再編成されたものであると思うのであります。従つて財政資金の用途のいかんによつては、はなはだしい混乱に陥る危險を蔵しておるのであります。この点について大蔵大臣はどうお考えになつておりますか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの定員法の改正につきまして、御解釈になるのはごかつてでございますが、私は改めなければならぬと申し上げたのではございません。そのおつもりで……。  それから日本経済再建財政資金をもつて充てた。それが再建に非常に役立つたというお話でございます。見方によりましたならば、国の財政資金ということにすればその通りでございます。また特別会計赤字財政資金ということになればその通りでございましようが、しかし財政資金日本インフレの大きい要因をなしたということも事実であるのであります。
  27. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣は私の質問を勘違いして聞いていらつしやると思うのでありまして、私の言うのは日本の現段階における経済復興のことを問題にしているのではなくて、日本産業の、産制を問題にしている。日本の現在の休業体制は、戰争中国家財政資金によつて再編成されたものだと、解釈しているのでおります。こういう考え方から申しますと、現体制それ自身がどつちかというと、財政資金によつて育成されて来て、まだひとり立ちになるというところにまで行つておらない段階にある。そこに財政資金が杜絶されるというようなことになると、日本産業体制と申しましようか、経済体制全体からいたしまして、非常に混乱に陥る危険性があるのではないか、この点について大蔵大臣の御所見を向いたいと申したのであります。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 国の産業発展財政資金を使うということは、それ自体が正当な道ではないと思います。やはり一般産業資金から第一義的に出しまして、国はこれにはあまり関與しないのが本筋だと思います。ただ非常な場合におきましては財政資金で行く場合もありましよう。
  29. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣答弁は、実を言うとそれはかくあるべしという意見なのでありまして、日本経済の現体制というものを考えての話ではないのであります。私の言うのは、日本の現体制はどうかというと、戰争中の必要に応じて財政資金によつて再編成されたものである。こう考えるのでありまして、そのために財政資金と縁を絶たれた日本経済というものは、まだひとり立ちになるまで成長しておらないから、混乱に陥る本質を持つておると考えるのであるが、大蔵大臣はどう考えるかというのが私の質問なのであります。この点に関してもう一応御答弁を願います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 財政資金というものは経済再建あまり出しやばるべきではない。そして日本産業はそれ自体でやり、財政資金でやるようでき上つておらない、こう考えております。
  31. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣日本経済体制というものがどうやつてつくられて、現在どういう段階にあるからどうしなければならないということと、一つアイデアとしてこうならなければならないということと混同しておると思うのでります。われわれはアイデアとしてはこうしなければならないということはわかつてつても、日本経済体制本質というものは、過去の歴史的あるいはまた現在の状態発展段階というようなものから考えて、必ずしもアイデア通りに行かないものがたくさん蔵せられておると思うのであります。従いまして大蔵大臣は、そこから何ら日本財政というものを考えておらないということを、今私に対する答弁で明らかにしたと思うのであります。たた大蔵大臣はそういう歴史的なあるいは客観的な事実というものを無視して、アイデアだけで財政を取扱おうという気持でおることが明らかにされたと思いますが、この点もまたいくら問答を繰返してもこんにやく問答になりますので、次の質問に入ります。  この点に関連して通産大臣農林大臣にも聞いてみたいことがあるのでありますけれども、これは大臣がまだ見えておりませんので、通産大臣農林大臣が見えてから質問することにいたします。  さらに大蔵大臣にお尋ねしたいことは、昭和二十四年度当初予算によつて生じた大衆の怨嗟の声を、この補正予算で緩和できると思つておるかどうかということであります。他の支出を十分に節約いたしまして、産業復興に伴う公共事業費あるいは産業対策費地方配付税、それから農地改革等にこれ以上の支出が必要であると思うがどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 公共事業費産業対策費等につきましては、できるだけ財政の許す範囲内において出したいと思つておるのであります。従いまして補正予算はこの程度でございますが、来年度の予算におきましては、こういう費用相当盛れるものと考えております。
  33. 稻村順三

    稻村委員 財政的な理由のために出せなかつたのであつて現実の問題に即して考えると、やはりこれでは足りないというお考えですか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 財政的理由で出せなかつたのであります。財政の許す範囲内において出すことにいたしたいと思います。
  35. 稻村順三

    稻村委員 現実客観的事情からすれば、これは不足であると考えてさしつかえないのですか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 財政的理由からできるだけ出しているのであります。こういうものは多いに越したことはございませんが、やはり均衡予算ということを考えながら、できるだけ出すというのがいいと思います。
  37. 稻村順三

    稻村委員 私はこういうふうな問題を、現在の補正予算にもとつて考えていただきたいと思うのでありますが、財政の許す限りと大蔵大臣は申しましたけれども、それならば現在の補正予算を中心として考えてみまして、これがはたして財政の許す範囲一ぱい一ぱいであるかということにつきまして、多少の質凝をしてみたいと思います。節約すべきものは節約した、とこういう、うな意味前提として大蔵大臣はおつしやつておるのでございましようが、しかしながらこの補正予算を見ましても、食糧管理特別会計への繰入れ百七十億、それから薪炭需給調節特別会計への繰入れ五十四億七千万円等は、まだ節約できる余地がこの中だけでも出て来るのではないかというふうに私考えているのであります。すなわち負担管理特別会計予算は、補正予算支出全額の約四十パーセントを占めておる状態でありますし、後者すなわち薪炭需給調節特別会計は、とにかく十六パーセントに近いものを占めておるのであります。食糧は買入れに多くの資金も要し、しかも輸入がふえ、それから米価の改訂があつたので、多くの資金が特に増加したということは私たちにも了解ができるのでありますが、しかしこれは配給とともに早晩回收されることが実に確実なものであるがゆえに、私たち食糧証券見返りとして、対日援助見返資金の中からでも一時融通ができるのではないかというふうに考えておるのであります。現にまたそういう食糧証券見返りとしての一時借入金の政策を、これまでとつて来たのではないかと思うのであります。それを何がゆえに急いで、税金の中から——そのやりくりをやめてしまつて、この赤字を埋めなければならないか、私たちその理由に苦しむのでありますが、この点に関する大蔵大臣の御答もを願いたいと思います。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 こういういわゆるインヴエントリ一・フアイナンスの問題が、インフレ收束のための健全財政のもとであります。議論の余地はありますが、私は今の段階におきましてはインヴエントリー・フアイナンスの分を食糧証券の増発によつてまかなうよりも、かくする方がいいという考えのもとにいたしました。
  39. 稻村順三

    稻村委員 そのことについて私たちもまだ多くの意見を持つておりますが、先を急いておりますので、あまりそこでこだわつておるわけには行かぬのでありますが、薪炭需給特別会計赤字補填の問題にあつても、これは私たちから考えますと、薪炭需給特別会計に関するところの赤字に関して、われわれが予算委員会におきまして、また農林委員会におきまして、いろいろ政府当局答弁を聞きましても、実に明確でないのであります。ことに山元で三割なくなつた、輸送中に二割なくなつたというのが、現物がなくなつた大きな原因であるという説明をしているかと思うと、またあとで聞きますと、それが逆になる。さらに農林委員会で現在政府手持ちの木炭はどれだけあるかということを聞きますと、二十億だと言う。それから予算委員会で聞きますと、二、三日後だのにかかわらず、それが十億だと言う。そういうふうに実にその答弁が明確でないのであります。そして手持ちに一体幾らあるのかさえわかつておりませんし、それから同じような卸売業者からの売掛金の回收に関しても、調定未済の問題も明確になつておりませんし、また備蓄の額が一体どういうふうになつているか、それさえ明らかにしておらぬのであります。また未納金の取立てに関するところのいろいろな点についても、多くの問題があるのであります。しかも現に部分的に——小さな部分ではありますけれども、その問題について疑獄事件として発展しているものさえあるのであります。こういうふうな問題を十分に明らかにしていない。これは代々の内閣がたなおろしをしないで、單に帳簿だけの引継ぎをやつたから明らかでないのだというような、ただそれだけでもつて、しかもただちに日銀及び中金からの借入金の期限が来たから、これに対して五十四億七千万円を実は繰入れなければならぬ、こういうようなことを言つているのでありまして、こういうものは実に事件が明確になり、あるいはこれに対する態度を政府が明確に示すことによつてのみ、私たちはこういうような補填を一応審議すべきものであるにかかわらず、こういうものを明確にしないでしようというようなことになりますと、これはゆゆしい問題であると私は考えるのであります。これに関して大蔵大臣は一体どういうふうなお考えを持つておるのでありますか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 薪炭需給特別会計への繰入れ五十四億七千万円は、八月にこの特別会計の仕事を非常に縮小いたしまして、その後におきましての薪炭代金の安拂い回收のつなぎ資金であるのであります。赤字があるやに聞いております。また相当あることと考えておりますが、その赤字整理の問題と、この融資の繰入れの問題とは、一応別個にお考え願いたいと思うのであります。すなわちこの繰入れは薪炭需給特別会計の清算事務のやりくりの問題であるのであります。
  41. 稻村順三

    稻村委員 赤字融資の問題とそれから予算の問題とは、別だというふうに一応お考えになつておるようでありますが、これは形式的な考え方でありまして、実にこういうふうな疑惑が起つておるときに、政府ではその疑惑に対して明確なる態度がとれないという場合に、われわれが予算的措置をしてやるということはできないと思うのであります。予算措置を講じてやることはいかぬと考えるのでありますが、大蔵大臣はそれもさしつかえない、どんな疑惑のあるものでも、予算的措置が形式的に必要だということさえわかれば、やはりその措置を講じてやるという御意見でありますか、その点もう一度お伺いいたします。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 疑惑を糾明し、正しきに直すことは最も必要でございます。しかしそういうものがあるからといつて、薪炭会計の跡始未ができないようにしておくことはよくありませ。
  43. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、薪炭会計は政府自身が——あなたは大蔵当局でありますから、その点どうもはつきりしたことは言えないかもしれませんが、同じ政府部内であるところの、たとえば農林省なら農林省の関係におきまして、こういう点を明確に国民の前に示すことができない場合であつても、なお予算的措置は講じなければならない、こういうふうにお考えになつておるのですか、どうですか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 別個の問題で、繰入れてその特別会計の清算事務はさせなければいかぬと思うのであります。
  45. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、私たちから考えられることは、たとえば民間金融などの場合になりますと、こういう問題は相当重視して、整理しなければ非常に迷惑をこうむる者があるから、整理しなければならぬということが明確であつても、しかしながらそこに多くの清算上において疑惑が生じて来ておる。不正があるとかないとかいうことは別といたしまして、少くとも清算の方針あるいは清算するところの見通しというようなものについて明確な方針を持たない。それにもかかわらず金融するということは、おそらく財界に通じているところの大蔵大臣といえども、そういう金融は認めないと思うのであります。しかるにもかかわらず大蔵大臣は、事政府関係のものになりますと、農林省当局がそういうことに対して明確な態度をとらぬでも、なおこれを整理しなければならぬというふうなことになるとするならば、政府だけはどんな態度であつても、損失したものはこれは補償してやらなければならぬ、こういうふうな結論になると思うのでありますが、その点に関して大蔵大臣にもう一度答弁を願いたいと思います。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 不正な事実があつたか、ないかということのついては、もちろん調べなければなりませんが、薪炭特別会計におきましては五十数億円の薪炭証券を発行しております。この年度内に償還しなければいかぬ。しかもまたこの清算事務と申しますか、山元に炭代を拂わなければならぬ。また債務の償還をしなければならぬ。こういうふうなつなぎ資金がいる場合におきましては、これは出すのが当然だと思います。それで会社の例をおとりになつたようでありますが、事柄が違うのであります。出すべき金は出してやる。不正な事実があつたかなかつたかということは、これはもちろん調べなければならぬ、こう私は考えておるのであります。
  47. 稻村順三

    稻村委員 その点に関しましては、ここにも小委員会をつくつておりますので、そこでまた問題になつて来ると思いますから、その点にとどめておきます。  ちようど運輸大臣がお見えになつたようでありますので、そこで大蔵大臣に対する質問と関連いたしまして、先ほど尋ねた問題をもう一度お尋ねしてみたいと思うのであります。運輸大臣にお尋ねしたいことは、国鉄では退職手当が非常に足りなくなつたということを私たちしばしば聞くのでありますが、この退職手当の支拂いに窮して、予算の上では石炭代として計上されておるものの中から、四十億退職手当に流用したということを聞いております。この点は事実でありますかどうですか。
  48. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 当初予算に組みました石炭の量が、大体その値段が安くなりました関係、それから塊炭、粉炭の当初予定しました比率が、塊炭がよけい入手できた。カロリーが当初組みました点よりもいいものが入手できた。また公団廃止というようなことで中間の経費が省けて、石炭代が非常に安く上つた。総数量にいたしまして石炭の当初の数量がはるかに節約できたという面から予算の流転用をいたしまして、退職手当並びに基本給の不足を補つたのは事実であります。
  49. 稻村順三

    稻村委員 今運輸大臣石炭代四十億を退職手当に流用したということを認めておるのであります。そうしますと、これが会計法の違反であるかないかということは別といたしましても、この点に関しましては、少くとも今度の行政整理においてむりがあつたということを一応示していると思うのであります。すなわち退職手当さえ十分な準備もせずに、定員法をしやにむに実行したということになるのでありまして、この点は先ほど私が質問したように、定員法自身を早晩修正しなければならぬことを意味していると私は思うのであります。なおまた私はこういうふうに、たとえば石炭代と計上されたものが、すぐに何と申しますか運輸大臣退職手当にこれを流用したということ自身を、簡單に合法的なものであると片づけることができるかどうか、その点についてもう一度質問いたしておきます。
  50. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 予算の流転用は会計法上正当な手続で、ごうも違法ではないのであります。また行政整理がむりな行政整理でやつたというお言葉ですが、これも決してむりがない。行政整理後の実情にかんがみて、十分それが妥当づけられる、かように考えております。
  51. 稻村順三

    稻村委員 それから大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、今度の補正予算の中に、節約し得るものは全部節約しているというのでありますが、これを私が見まして、その中にいわゆる国債費が全然節約されていないのを発見するのであります。これはわれわれの主張といたしましては、少くとも戰時公債に関する限りにおきましては、これは国が戰争に関するところのものとして負うたところの債務でありますし、しかもこれを引受けたものは多く銀行でありまして、一般の引受けというものはきわめて少いのであります。その意味から申しまして、われわれは戰時公債に関する限りにおきましては、こういうふうに支拂いを何でもかんでも創らなければならぬ。先ほど大蔵大臣も認めたように、公共事業費であろうが、また災害復旧費であろうが、教育充実費であろうが、そういうものもできるだけのことはするが、しかし財政均衡範囲内において、これはやむを得ないことであるというふうに言われておるのであります。そういうときにおきましては、特にこういうものは一時支拂いを停止するなり、あるいは打切るべきものであると考えて、われわれといたしましては、軍事公債に関する限りは、支拂いの停止を主張して来たのであります。ところがこれは軍事公債ばかりでなくて、戰時の公債といえども、これは償還期限が来たのであるならば、これは国の財源のためにした借金でありますから、一応返さなければならないと思うのでありますが、二十四年度の当初予算に関する限りにおいて、われわれが見ますと、必ずしもそうではないように考えるのでありまして、ことに復金債のごときは三百億、期限の来ていないのを返すというふうな考え方のようであります。今私たちから言うならば、期限の来たものを償還し、そうしてその利子だけにとどめるならば、これに対してはよほどの支出が節約できるのではないかというふうに考えておるのであります。そうしますと、大蔵大臣は、しばしばここでも説明しておつたのでありますが、この公債を償還することは、結局は銀行に資金を潤沢にさせることであつて、そのことは産業資金にも間接的に潤沢にすることを意味するというようなことを述べておるのであります。しかし私たちから考えてみるならば、こういう間接的投資が、はたして今度の産業資金を円滑にするかどうかということは、実は疑問に思つておるのでありますけれども、そういうことを一応考えたといたしましても、それよりも産業に対しては、むしろ日本産業自身が長い間財政資金に依存している程度が非常に多いのでありまして、またそういう財政資金に依存しておればこそ、日本の資本主義というものが今日まで急速に高度の発達をして来たのでありますから、そういうふうなことを考えてみますと、むしろ銀行に返して、それからそれを直接民間企業に投資した方が有効ではないかというふうに考えられるのでありますが、この点に関する大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 軍事公債の利拂い停止とか減額とかということは、私はとんでもない議論だと思うのでありまして、われわれのとらざるところであります。なお復金債の償還三百億円は国債の償還ではありませんので、期限の来たものでございます。期限の来たものを返す。なお千億円ばかり復金債があつたのでありますが三百億円は一般財政資金から返し、残り六百二十四億円は見返り資金から返すことにいたしております。お話の点は国家社会主義的の考えで、国がいろいろな産業にどんどん手を出すというような思想のもとにお話になつておるようでありますが、私はそれはとらない。民間の一般産業は民間にまかして、政府があまり積極的に手を出すべきものではない、こういう方針を持つております。
  53. 稻村順三

    稻村委員 これはあとから金融政策の問題について質問をするつもりでありましたが、しかし今のお話を伺つておりますと、大蔵大臣の説明は、あとの金融の問題と矛盾して来るのでありまして、たとえて申しますならば、長期金融に対しては、市中銀行はなるべく商業銀行化して、そうして長期金融はむしろ特殊の金融機関たとえば興銀を強化するとか、その他の特殊な金融を考えておるというふうに、大蔵大臣は小峯君の質問に対して答えておるのであります。そうしますと、今一番大事なことはこの投資の問題、ことに財政を節約いたしまして、いろいろな産業資金を捻出するということになり、それを市中銀行を通じておやりになる、ことになりますと、これは全部短期資金の方面にまわすような結果になると思うのであります。われわれはむしろこういう金は長期の資金としてこれを投じなければならぬというふうに考えております。従いましてその点から申しますと、われわれは、商業銀行というようなものに対しても、長期資金の投資を促進させるという考え方でないと、こういう財政資金を運営する上において、私は十分な効果が上らぬというふうに考えておりましてこの点、どうも大蔵大臣は、この前の小峯君に対しての長期金融機関に対する問題と市中銀行に関する問題との説明の間に、矛盾して来るのではないかというふうに考えられるのでありますが、その点、どうお考えになつておりますか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはつきりわからないのでありますが、市中銀行が長期資金を直接に貸出すことは、今後はなくなることが望ましい。しからば市中銀行は長期資金に何ら関係しないかという問題になりますと、これは関係いたします。どういう形式で関係するかといえば、日本興業銀行とか、あるいは農林中央金庫、商工中央金庫の債券を引受けることによつて、長期金融に関係することになるのであります。その方法が望ましいというのであります。
  55. 稻村順三

    稻村委員 そういうふうな考え方から行きますと、長期金融に市中銀行が乗り出すということは、これは結局、金融資本と申しますか、銀行資本が産業の支配の方向に次第に向いて行く、いわゆる独占資本と私たちは言いますけれども、そういう方向を強化することになると私は思うのであります。要するに特殊金融機関というのは、こういう銀行の産業支配形態を完成するまでの促進剤と申しますか、促進的な機関として、過渡的につくる、こういう意味だと解釈して、大蔵大臣考え方が実に明確になつたことと考えまして、そこで次の質問に移つて行きたいと思います。  次に郵政大臣質問したいのであります。郵政大臣がさきの人員整理後におきまして、簡易保険特別会計で、二十億の收入をふやすために、三百六十万件の小口整理をしようとして努力したことは、御存じのことであろうと思うのでありますが、しかし三百六十万件でとどまらなくて、一千九百万件だけの整理をしなければならなくなつて人員整理した後であるものですから、人手不足になり、そのために臨時雇い、あるいは労働強化その他を加えまして、そこで非常な多くの費用がいるようになりましたが、その費用がない。やむなく備品費とそれから役務費からこれを捻出したというようなことを聞いたのでありますが、その点事実でありますか、どうですか。
  56. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 行政整理の結果、多少第一線の現場におきまして、新定員に基く人員の配置のでこぼこを生じておることは事実であります。なぜこれはそういうでこぼこが生じたかといいますと、たとえば甲の郵便局は退職者が多かつた、あるいは乙の郵便局は非常に少かつたというような場合に、配置転換が思うようにできますればそういうことは生じませんけれども、そういうものを全部含めて定員法のもとで整理をいたしました関係上、不自然にでこぼこがあるのであります。従つてこれは配置転換で極力本来の新定員の姿に復帰しつつあるのでございますが、いまだ全部完了したとは申すことはできません。お示しの、いわゆる保険の小口から大口に整理する問題についても、これは臨時的の仕事でございますから、多少臨時的の雇いを使用しておる事実はお話通りであります。しかしこれがために費用が少くて、お話のような金に困つておるという事実はございません。
  57. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、こういうふうな小口整理のための費用というものは新しく計上するつもりでありますか、どうですか。
  58. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 これは既定予算範囲内で実行できると考えております。
  59. 稻村順三

    稻村委員 それから大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのでありますけれども、今度の節約する場合におきましては、節約すべからざるところに節約しているという気持が非常に強いのでありますが、その結果といたしまして、徴税ということに関しまして、今度は收入の点でありますが、收入をずいぶんむりしてふやそうとしている事実を、また私たちは見のがすことができないと思うのであります。結局徴税を非常にむりしているというようなことからいたしまして、われわれから考えて、ちよつと想像のつかないような事例が出て来るのであります。たとえて申しますならば、私一番ふしぎに思うことは、源泉所得が自然増收になつていることであります。この当初予算が組まれたときと今日との間には、別段私はこの間に賃金ベースにおいて大きな変化がなかつたと思うのであります。そこへもつて来て、人員もどちらかというと、むしろ失業その他でもつて、課税されるべき人員の数も減つていると思うのであります。しかもどうかというと、最近におきましてはむしろ大蔵大臣は別の考えを持つていらつしやるようでありますけれども、私たちから考えてみますと、実質賃金はむしろ低下するような傾向にすらあるのであります。この際に私はこういうふうな事情のもとにおいて、源泉課税が自然増收になつて来るという理由はどこにあるのか、その根拠を明らかに知りたいのであります。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 二十四年度の予算は二十三年十一月のベースで来ておるのであります。その後賃金の上昇を見まして、所得に対します源泉課税は支拂者が俸給支拂いのときにとるのでございまして、これはもう向うにまかせ切りであるのであります。従いまして税金をたくさんとりたいから、どうこうということはないのであります。俸給の支拂者が支拂いのときに源泉で徴收して納める。しかもただいまの状態は、十月末で予算に対して六十数パーセント徴收済みでございまして、昨年は十月末で四十七、八パーセントの收入であつて、六百億に対して百億近い自然増收でありましたが、今年は今までの徴收額に対しまして昨年に比べてよほどふえておりますので、従いまして、千二百億に対して百五十億近くの自然増收が出ることははつきりいたしておるのであります。
  61. 稻村順三

    稻村委員 その徴收が源泉課税であるから、むりな徴收はないというふうな御返答でありますが、私自身いろ、ろなことを聞いてみますと、ここにもむりがあるということが考えられるのであります。これも国鉄の問題でありますが、これは大屋運輸大臣にもあわせて質問したいと思うのでありますが、国鉄の夜勤手当の問題であります。この夜勤手当に課税されている実例があるのであります。この問題が非常に問題になつたときに、増田官房長官は、そんなものには税金がかからないと言つて組合の代表者に答弁したそうであります。夜勤手当を出しましても、多いもので四十円、少いものでは十円ぐらいしか夜勤手当が出ていないのであります。夜勤をする以上は、肉体をすり減らすのでありますから、どうしても夜食をするのでありますが、この夜勤手当が十円や四十円ということではこの夜食代にも足りない。こういうものに課税されて来ておるのでありまして、最初のうちは差引がなかつたそうでありますが、途中でこれをとることになりまして、首になつた人間が、やめてしまつてから四千円もこの夜勤手当のために、税金を請求されたというような話を聞いておるのでありますが、こういう点について大蔵大臣及び運輸大臣の御意見を聞きたいと思います。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 超過勤務手当に対しましては、それが俸給、給料、手当に相当するものでありますから、税法上当然課税いたすのであります。その算出の方法は、給與規定に載つております通りに時間制になつておりまして、普通の俸給に対して一週の勤務時間で割つたものより二割五分高くなつております。従いまして一時間で十円とか二十円というようなことは、よほど月給の少い人でもないんじやないかと思つております。
  63. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 超過勤務手当の件は、大蔵大臣と同感であります。
  64. 稻村順三

    稻村委員 この点まだ質問したいことがありますが、先を急ぎますので次に移ります。  今度は申告所得の問題でありますけれども、申告所得の中に、いわゆる目標額というものを大体立てておるのでありますが、ここで聞けば目標額であつて、それは決してむりするものではないということを言つておるのでありますが、税務署の立場になりますと、これが割当額というようなかつこうになつておりまして、そのために非常なむりをしております。むしろ割当額よりもたくさん徴收したということをもつて、税務署長あたりの手柄にしておるのでありまして、そのために新潟県では目標額よりもよけいとつたというので松之山温泉で税務署長の連中が祝賀会を開いて大宴会をやつたという話すらあるのであります。こういうふうなことをやつて行くならば、今度は大分申告所得が減つておるようなかつこうになつておりますけれども、実際上から申しますと、これはきのうも私柏崎のある人から手紙をもらいまして、それには結局去年の大体二倍あるいは三倍くらいずつ所得を見積られて来ておるということであります。もしもこれに対して承諾しないと、すぐ更生決定をして延滞利子をとるぞというおどしをかけておるという話でありますので、数字の上に現われた軽減というようなものではなくして、実際上においてはこういうような目標額あるいは実際上の割当額というようなもののために、非常に多くの申告所得に対して過重な取立てが行われて行くという、いわゆる目標額以上のものがこうやつてとられて行くという事実を大蔵大臣は御承知であるかどうか。もしこれに対する対策がありましたならばお聞きしたいと考えます。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 今まで租税の割当をやつてつたということをちよいちよい聞くのでありますが、この前の国会で私申し上げましたように、各税務署に割当というようなことは一切ありません。これははつきり申し上げます。ただ税務の執行の上におきましては、柏崎税務署が幾らとれるだろう、新潟税務署はどうだ、新発田税務署はどうだという、国税当局といたしましては税務署長からどのくらい收入があるかということを聞くことは当然だと思います。しかしこれ、だけとれという指令は一切いたしません。御了承願います。  なお目標額よりも多くとれたとかとれないという問題でございますが、これは御承知の通り昨年の租税及び印紙收入は三千百億であつたのが、自然増收三百億余り出たのであります。従いまして全体としては目標額を突破しておりましよう。この目標額とかなんとかいうものは、予定の予算額というものは、これは今の賦課課税の問題ばかりではございません。酒がたくさん出たとか、あるいは織物がたくさん出たとか、そういう全体の問題で言うのでありまして、しかして昨年の事業所得すなわち申告納税所得につきましては千二百億円に対しまして少しくらい赤が出たと思います。五、六十億くらいの赤ではなかつたかと思います。目標額を越えたから栄転さすとか、目標額を越えないから左遷さすというようなことは、私どもとしては全然考えておりません。
  66. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、そういうふうな事実がもしあつた場合には、これに対して大蔵大臣としては断固たる処置をとるということを、ここで言明してさしつかえありませんか。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 いかなることに対しまして断固たる処置をとるということかわかりませんが、仕事の繁閑を見まして、署長が職員と一緒に温泉に行くというようなことを非難する気持は私はありません。
  68. 稻村順三

    稻村委員 そういうような、ただ温泉に行つたとかなんとかいうような問題ではなく、たとえば目標額を越えたということによつてどうかというと、むりな徴税がなされたということをむしろ祝賀するような気持を持つておる官吏に対して、あなたの方ではこれを戒告するという意思があるかどうかということを聞いておるのであります。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 目標額を越えたことを喜ぶことは決して悪いことではないのであります。課税の充実を期し、あなた方のおつくりになりました税法をまともに施行しまして、そうして大体これくらいとれるだろうと思つたのが越えたということについて、非難することはできないと思います。ただ問題はむりをして税をとるということはいけませんから、むりして税金をとる者は十分戒告いたします。
  70. 稻村順三

    稻村委員 税務署に行きますと、税金が非常に高くなつたということに対して、こういうふうに税務吏員は言つておるのであります。これはおれの知つたことじやないから、国会議員に聞け。これはどこに行つても聞くことであります。お前の選んだ国会議員がこんな高い税金をかけたんだ、こういうことを盛んに言つてまわつておるのであります。これはどうかというと、私たちから申しますならば、税法の示すところによつて所得の決定は税務署長の権限だろうと思う。従つて税金の税率はなるほど国会であります。しかしながら所得の額というものは、税務署長の決定すべきものである、査定すべきものであります。ところが税率ということもわれわれの税金の額においては、非常に大きな役割をなすものでありますが、それ以上に大きなものは所得額の査定であります。だから大きな税金をかけて行くというのは、單に国会議員だけの責任ではなくして、実に税務署長、あるいはさらに考えて行けば、大蔵省の責任でもあるのであります。こういうふうな場合におきまして、税額が高いということ一切を、税務官吏の多くの人間はこれを国会におつかぶせて、そうして苛酷の取立てをしておるのであります。  それからもう一つお尋ねしたいのは、この予算の上に現われておるところにおきましては、申告税が自然減收になつておるのであります。しかしながら地方至る所に旅行して聞きますと、大体において去年から八割あるいは二倍くらいは普通に申告所得税の額がふえておるのであります。このこと自身が私はすでに徴税にむりが来ておると考えるのでありまして、こういうむりな徴税をしておるということでもつて、しかしそれが成功したといつて祝賀するような悪質官吏に対して、大蔵大臣はこれに対して戒告をする意思があるかどうかということを聞いたのであります。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 むりな税金をとる税務職員につきましては十分戒告いたします。しかし仕事が終つたというので慰労することにつきましては戒飭する意思はございません。なお申し上げておきますが、昨年の決定に対しまして二倍とか三倍とかいうことを言つておるというお話でありますが、もしも二倍三倍にいたしましたならば、昨年の千二百億円に対しまして、もし三倍としまして予算以上です。所得額を二倍にしますと税額は二倍半から三倍になりますので、そういうものは全般的にはないと思います。なお税率はきめるとおつしやいますが、所得税法自体が税率のみならず課税の方法、決定につきましても法律できまつております。従いましてこの法律によつて税務署長が決定するのでありますから、責任は税務署長にももちろんあるのであります。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連して——大蔵大臣はむりな税金はとらせないと言つておりますが、現にある税務署でこういう事実があります。今年の六月申告を指導したときに、これこれの業種については二倍とかあるいは八割とか、その程度でやつてくれ、しかしそれじやとても出せないというので業者の方ががんばつて、両方で妥協して、六割とか八割にした。この通り申告すれば更正決定はやらぬ、そういうことをはつきり税務署の人が公開の席上で宣言した。しかるにこの間の十月の仮更正のときには軒並にそういうのがやつて来たという事実がある。大体実業団体の組合長なんかは、自分の組合に対して、税務署はこれだけだからのんでくれ、これだけは納めるんだというので、自分の額までさいてやつた事実がある。しかるに十月になつてみると、政府は違約をして仮更正決定をよこしたという事実が全国的にある。こういうような不正納税をやることが、実は申告納税をインチキに申告させる原因になつている。こういう問題に対して大蔵大臣はいかに責任をとられるか、大蔵大臣の所信を伺いたい。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう事実は聞いておりませんが、どこでそういうことがあつたかということをお知らせくださいますと、私の方で事実を調査しまして、適当な処置をとるのであります。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばあとで申し上げましよう。  もう一つ不可解にたえぬのは、税務署あるいは大蔵省の方針かもしれませんが、ことしは十月に仮更正をやる。そして来年には仕事を延ばさぬ。つまり来年の一月、二月、三月には再修正をやらぬ。税務署の仕事は十月ないし十一月で税金を大体指導して、そうして修正申告を出さしたらそれで打切つて、来年に入つたらそれ以上再修正をやらぬ。こういう方針があるやに聞いておる。それは農業関係でもあるいは営業関係でもそうであるということを聞いておる。営業関係についてはこの間それが現にあつた。農業関係については十一月の十五日までに修正申告を指導してそれが決定になる。そういううわさを聞いておるのですが、大蔵大臣はそういう方針で事実税務署を指導しておられるのかどうか。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 更正決定をいつやるか、どうこうということにつきましては、国税庁長官にまかしておりまして、個々のやり方については、私は逐一聞いてはおりません。適当に税法によるところでやつておると考えております。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣はそういうふうにお答えになつておるが、現実にそういう方向に税務署の行政は進んでおるのです。税務署の方の理由を聞いてみると、おそらく来年はシヤウプ勧告の資産再評価、そういういろいろなむずかしい仕事がある。それを来年の四月以降に延ばしたら税務行政は澁滞してできぬ。それでその準備のためにことしはこれで打切りだというので、そういう方向に進めているらしい。これは大蔵大臣の所管の仕事であつて大蔵大臣は責任がないとは言えない。あなたは国税庁長官にまかしてあると言うけれども、国税庁長官はあなたの部下ではないか。国税庁長官のやる方向がいいか悪いか。これをあなたはどういう考えを持つてやる方針か、そのお考えを聞いておるのです。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 仮更正決定をいつやるか、あるいはまた確定申告が出てから更正決定をやるか、こういう問題につきましては、国税庁長官あるいは各国税局で適当にやつておると思います。私が一々どこの国税局はこうやれ、こういうのはこうやれというところまで言わなくても、適当にやつておると考えておるのであります。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その適当にやるという方法が私はけしからぬというのです。大体国民は来年の一月あるいは三月には再修正あるいは修正申告を出すということでやる。しかし行政事務としてはそれをやらせないで、ことしだけで打切つてしまうということは、これは国民の権利を無視するものである。あなたは法律違反はやらぬと言うかもしれないけれども、行政事務でそういうふうに運用して行けば、事実上無規されることになる。これは国民にとつてはたいへんなことですよ。それをあなた方は責任を負わぬというのか。国税庁長官がやるから私は知らぬというのか。それで大蔵大臣の役目が勤まりますか。私は勤まらぬと思う。大蔵大臣はどういう方針でやるか。かりに国税庁長官かあるいは国税局の人がそういうことをやつた場合に、あなたはそれを、どういうふうに処置するか。それをそのまま見のがしておくか。そういうことを聞きたいと思う。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 責任を負わぬというのではございません。国税庁長官並びに国税局長は法の範囲内において適当にやつておると思います。仮更正決定を十一月にやり、そうして一月の確定申告をまつてから本更正決定をやらないとかなんとかいうことは、これは行政上のあれでございまして、違法でも何でもございません。仮更正もできますし、また仮更正をした上で更正決定をすることもできるのであります。それをいつやるかどうかということにつきましては、行政官庁として適当な方法をとつておるのであります。もし行政官庁の方法が悪かつた場合には大蔵大臣として責任を負います。しかし一一の仮更正をいつやるとかどうとかいうことについては、大蔵大臣は一々聞いておりません。適当にやつておると私は信頼しております。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 国会は行政を監督する責任があると思う。私は行政を監督する意味において、大蔵大臣の行政を聞きたいと思つておるのです。行政の運用上、法律を無視するようなことが実は行われるのです。あなたは法律の範囲内で行われると言われるけれども、それは形式的に見たら違法でないかもしれぬが、事実上内面指導でそういうことをやられれば、国民の権利は無視されることになる。われわれが今まで聞いておる範囲では、来年はシヤウプ勧告で忙しいから今年以内に全部納めてしまう。来年は、最後のときになつて修正申告なるものはやらせない。今度の営業については仮更正でとどめを刺す。農業については十一月十五日までに納めさせる。再修正申告もそれで税務署で決定にしてしまう。来年に入つては新しい修正やなんかは行わせない。そういう行政方針でやつておられるかということを私は聞いておるのです。そういう方針がいいか悪いかについて、あなたの下僚監督に対する方針を聞いておるのです。そういう方針でいいかどうか、その答弁を私は要求しておるのです。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 仮更正決定とかあるいは確定申告とか、更正決定は課税の適正を期するためにいろいろな方法があると思います。何もこの方法で行かなければならぬというふうにきまつたものではありません。それは初めから適正な申告が出ておれば、仮更正決定も更正決定もやらずに行くのがほんとうなのであります。来年からシヤウプ、勧告で忙しくなるとかなんとかいつても、私はそういうことは来年は来年であつて、シヤウプ勧告が出たから一般の課税にどれだけの影響があるかどうかなどということは、まだはつきりしていない。そういうふうなものをもつて仮更正決定を十一月にやる。十一月に仮更正決定をやるといつたつて、農家の方につきましてはまだ米価もきまつていない状況であります。できつこない。実際からいつたら夏だけの仕事の分につきましては、十一月ごろで確定的な決定もできるかもわかりません。理論といたしましては、やはり年が過ぎて、そうして確定申告をやつてやるのがほんとうだと思います。しかし経済の実態から言えば、個人の所得状況によりましてそれで大体行けると思つたら、仮更正決定でそのまま済ましていい場合もありましよう。
  82. 植原悦二郎

    ○植原委員長 中曽根君、あなたのお話はかなり抽象的ですね。だから中曽根君はこういう具体的な事実を持つておるといつて、それでいつまでやつても、今の御議論を聞いておると抽象的で、片一方はそうでない、片一方はそうだというだけのことです。もう一問許しますけれども……。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が今一番聞きたいのは、来年の一月に入つてから修正申告を出させてもそれを認めない。そういうようなおそれが十分にある。それでは国民の権利というものは無規される。来年一月に入ればローガン構想その他で経済界に変動がある。米価も今のようにこういうふうになつておる。そういうときにその状況変化に応じて、あるいはこれがネグレクトされるのではないか、こういうことを国民は非常に心配しておる。その点を大蔵大臣に私は今聞いておるのです。大蔵大臣は来年に入つて米価の問題とかあるいは経済界の変動とか必ず出て来る。そういう場合に国民の、営業者にしてもあるいは農業者にしても修正申告を出した場合に、この修正申告を認めるのか認めないのか。今年一ぱいで打切つたから私はもう知らないというのか。そういう大蔵大臣の行政の方針を私は聞きたいと言つておるのです。もしかりに下僚が今年一ぱいで打切つて、来年はネグレクトするというような、そういう行政方針をやるならば、あなたはどういう責任をとるか、それを聞きたいのです。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十四年分の所得につきまして、十月あるいは十一月に修正申告等を出して、そうして二十四年が過ぎて一月中に確定申告が出て来たときに、これを認めないと言つたら違法でございます。これはわかり切つたことです。だからその違法な行為をした場合につきましては十分戒飭いたします。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に大蔵大臣は認めないということは違法であるということであるが、まつたく私は同感であります。しかし現在国税局系統が行政方針として指導しておるのは、今年一ぱいで打切つて来年はこれを流そう、そういう含みが十分感ぜられる。大蔵大臣はもしそういうことをやられるならば違法であると、そう言明なさつた以上は、そういうことはないと私はここに信じて、一応この関連質問を終ります。
  86. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これにて休憩いたします。午後は正一時から開会いたします。   正午休憩      ————◇—————     午後一時三十七分開議
  87. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  質疑を継続いたします。稻村順三君。
  88. 稻村順三

    稻村委員 直接税と間接税との問題について、大蔵大臣に御質問いたします。従来直接税を主に間接税は従という予算の編成の仕方が、原則とされておつたという理由は、直接税は下級の、たとえば勤労者といつたようなものの所得に関しては、ほとんど税金が免除されておつた、こういうところにあるのであります。そこで間接税は平均してすべての人間が負担するというので、間接税は大衆が負担し、直接税は所得の多い者が負担する、こういう建前から直接税本位の予算が、編成せられて来たと思うのであります。しかるに最近になりますと、インフレーシヨンの進行とともに、直接税は勤労者に非常によけいかかるという形になつて参りますので、そこで結局いえば、直接税と間接税の比率の問題は、よほど丁算編成上変化をして来なければならぬと考えるのであります。しかるに最近になりまして、大体間接税から直接税に重点が移りつつあります。昭和二十三年度予算よりも、二十四年度の当初予算の方が、直接税の重点が重くなつてつておりますが、さらにそれが補正予算によりまして、一層直接税の比重が大きくなつてつていると思うのであります。それで勤労者が税を負担するということになりますと、結局間接税を負担するのと直接税を負担するのとは、どちらが大きな苦痛を感ずるかと申しますれば、直接税を負担する方が大きな苦痛を感ずること申すまでもないと思うのであります。この点について、この次の二十五年度予算においても、今度の間接税のいろいろな廃止の点と結びつけまして、直接税重点予算が組まれるようになつているのでありますが、これは平時における原則と現在の情勢との間に、大きな食い違いが生じて来ているのではないか。シヤウプ勧告案も原則としては一応直接税中心であることを認めているが、暫定措置としてはむしろこの際間接税に重点を置くということでなくて、もつと間接税をとつて、直接税を大巾に軽減するという建前をとるのが、ほんとうではないかと思うのであります。この点きのうの井藤教授なども私の質問に対して、それが今日の税制の建前としては当然のことではないかというような結論を述べられておつたのでありますが、この点に関する大蔵大臣の御意見を伺いたいと思つております。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 租税制度としては、直接税中心の租税制度がいい制度だと東西を通じて認められております。しこうして原則としては直接税中心がいいが、過渡的、ことにわが国経済事情からいうと、必ずしも直接税中心主義で行くべきではない、こういうお話でございます。もちろんそういう議論もあると思いますが、しかしこれは程度問題でございまして、考え方としては直接税中心主義で行くべきだと私は思うのであります。しこうしてその間において間接税に、どれだけの重さを持たすかということは、私の考慮の上で今のような方法を講じておるのであります。
  90. 稻村順三

    稻村委員 それは先ほど私が前提に述べましたように、直接税が下級の所得者にはかからないということを前提として、直接税を中心にするのが正しいということが、一般にいわれているのではないかと思うのでありますが、今日のように下級と思われる所得者にも、相当大きな直接税が負担せしめられるという事態においては、必ずしもこの原則が通用しないというふうに考えられるのであります。なぜかというと、税制そのものもやはり社会的な関係が考慮せられなければならないのでありまして、ことに税制は社会政策とある程度密接に結びついていなければならぬと思うのでありますが、大蔵大臣は今でも直接税中心がいいというならば、今では社会政策的な意味を税制の中に織り込まなくてもよろしい、こういう意味であるかどうかをお伺いいたします。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 租税の社会政策意味におきまする考え方から申しますと、直接税中心が社会政策的の税であるわけであります。
  92. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、先ほどからその点について少しも返答がないようでありますが、直接税を下級所得者が負担している現状を、どうお考えになつておりますか。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 所得税の妙味は、国民大多数が公平の原則によつて負担するのが、所得税の長所であります。
  94. 稻村順三

    稻村委員 この所得税と間接税の問題になりますと、直接所得税を納めているということが、公平に納めておるということを前提にしておるのでありますが、しかし私たちから申すならば、ことにインフレーシヨンが進んでいるときに、下級所得者が直接所得税を負担しなければならぬ。——相当額といえばなんですが、源泉課税というものを見ますと、この点むしろ税金のうちのほとんど中心をなすようにだんだんなりつつあるということは、申告所得税と源泉所得税との間の比率を見ると明らかなのであります。そうしますと、いわゆる勤労者というものが非常に大きな負担をしているという場合になりますと、所得税をたくさんとるといえば、勤労者がよけい負担しなければならぬということを意味すると思うのであります。そういうような直接税を中心としたところの税制がとられて行くということになりますと、そういう所得税をよけい拂うということと、間接税を拂うということとの間に、一般勤労大衆の苦痛の点は、どちらが重いかということになると、言うまでもなく直接税をたくさん拂うということが非常に大きな苦痛を感ずるわけであります。そうすると、その間においてどういうふうな調節を大蔵大臣はお考えになつているのですか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 直接税を中心の税制にするか、間接税を中心の税制で行くかという問題と、所得税のうちにおきまする負担の割振りの問題とは、別個の問題であります。あなたはこういうときだから、間接税を中心にすべきではないか、少くとも間接税の方に相当の重みを持たしたらどうかとおつしやいますが、所得税につきましては、百円当り十円の人もありますし、五十円の人もありますし、五十五円の人もあるのでございます。しかしお酒とか、タバコというものは所得の多寡できまらずに、その差額はほとんど平等に負担する、制度としては間接税にあまりウエイトを持たすべきじやなくて、直接税にウエイトを持たして、所得の分量によつて負担を考えて行くというのがいい税制だと申し上げるのであります。
  96. 稻村順三

    稻村委員 現在の所得税が、勤労大衆にとつてそう苦痛でないと考えているということを前提にして私は大蔵大臣答弁を、一応それ以上追究しないことにして次の問題に移りたいと思います。  大蔵大臣はこの当初予算の編成にあたつて盛んにデイス・インフレという言葉使つておるのでありますが、しかし私はデイス・インフレという言葉は、大体においてイギリスにおいて支配的にあつたものであるというふうに考えますが、イギリスは御承知の通り労働党が内閣をとつでおりまして、勤労大衆の代表者が財政の責任者となつているわけであります。そういうところから見まして、イギリスにおきましては、まず勤労者の立場から戰後の経済を復興するために、生産をどうやつて増強するかということがまず第一に考えられ、それから第二には、同じように生産復興の前提といたしまして、勤労者の保障制度や、それから福祉の施設というようなものに対して、相当資金を投ずるというようなことを前提として考えておるのでありまして、それから生じたところのインフレーシヨン的傾向、インフレーシヨンの進行を、たくみに通貨を吸收して、防ぐというような建前をとつておると思うのであります。しかるにもかかわらず、池田大蔵大臣考え方は、これと反対の立場をとつておりまして、まず支出を非常に切り詰めて、貨幣を吸い上げることによつて一応デフレを招来して、そのデフレを通じて通貨を安定せしめる。それが一応安定したならば、初めて公共事業その他生産に関係のあるものに、それで余裕があつたならば保障制度の方面に、というような考え方でありまして、イギリスで従来考えられましたデイス・インフレという考え方とは、転倒した政策をとつていらつしやるのではないか。午前中の当初予算編成方針修正したのではないかという私の質問に対して、大蔵大臣答弁は、経済情勢が一応安定して来た。この安定したのは私は主としてデフレを通ずるところの通貨安定の傾向だと思うのでありますが、こういう傾向が生じたから、今度は公共事業費その他に投資し、さらに余裕があつた失業対策その他の方面に出そう、こういうふうに私は聞き取つたのであります。そうしますと、これはまつたくイギリスあたりで考えられておるデイス・インフレとは、反対の行き方をとつておるものだと私は考えるのでありますが、この点に対して大蔵大臣はどう考えていらりしやるか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 財政経済政策は、その国の状況によつていろいろかわつたことをやらなければいけないのであります。イギリスと日本状態とはよほど違つております。私が今までとつた政策はやはり安定の方戰策でございまして、イギリスのごとく戰勝国であつて、しかも物価が戰前に比べて二倍半から三倍ぐらいの程度でとまつておる国と、日本のようにインフレの持続して来た国とは、おのずから政策が違わなければなりません。
  98. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣答弁は、どつちかと言うと私には詭弁のようにしか考えられません。というのは、大蔵大臣は、ただ抽象的に答弁の形式を整えることにだけ一生懸命になつて、実質的なものには多く触れまいという考え方が強いようであります。なるほど日本は戰敗国であります。戰敗国であればあるほど、やはりイギリスにおいてとられたように、まず雇用量をふやすための生産の問題、生産を特に強行しなければならぬということになれば、それに対して勤労者の生活のめんどうを一番先に見てやり、そこから始めて、起ろうとするインフレに対して特殊な通貨の吸収策を講じて行くという建前が、かえつて私は必要だと思うのであります。どうかというと日本は戰敗国だし、イギリスは戰勝国だ、だからかわつたやり方で行くのがほんとうだというような考え方は、一国の財政を論ずるというまじめな気持ではなくて、單に詭弁を弄して議員を言いくるめようとする態度にすぎないと私は思うのであります。こんな態度をもつて一国の財政がやつて行けるかどうか、私はふしぎと思うのであります。  その点はそれといたしまして、次に私は、現にとつている政策はデイス・インフレでなく、デフレの政策だと思うのでありますが、このデフレ政策の中で特にデフレ政策であるということを象徴しているものは、為替レートの問題であると考えます。日本円はこの前為替レートの設定のときに、一ドル三百六十円と決定いたしましたけれども、しかしながらこの三百六十円というものは、日本の今日の生産力ないしはそれに応じた発券高というようなものを勘案してみると、少し日本の円の信用状態を過大に評価しておると思われるので、その点に関して大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 イギリスの今の労働党内閣のとつておる経済財政政策と、わが国のとはおのずから違うのであります。それは戰勝国とか戰敗因という前提のためではありません。経済の状況が違つておるのであります。向うは大体ずつと安定の道をたどつて来ておるのであります。日本は今まで不安定の状態にあつたのを、安定さそうとするのでありますから、そこにおのずから政策の違つて来るのは当然のことと思います。しこうして最近の状態から見て必ずしもイギリスの財政経済政策が非常にりつぱなものであるとは私は考えておりません。自分はイギリスも今財政経済的に相当危機に立つておると存じておるのであります。  次に為替レートの問題でございますが、私は一ドル三百六十円でけつこうで、これで行くことが、わが国経済再建に必要だと考えておるのであります。
  100. 稻村順三

    稻村委員 これはやみその他のこともあるでございましようが、大体において複数制をとられておつたときには、多くの日本の輸出品は、主として四百円以上であつたと思うのであります。やみの場合になると五百円近いものになつてつたと思うのでありまして、貿易専門家の話を聞きますと、大体において四百二、三十円というのが、平均的な数字じやないかというふうにさえ言われておつたのでありますが、これはわが国の生産力及び今日の発券高を勘案いたしまして、大体そこに落ちついたと私は想像しておるのであります。ただ三百六十円が妥当、だというような答弁では、私は満足できないのであります。私は三百六十円を維持しようとすれば、相当急速な速度をもつて通貨の收縮をさせなければならないという考え方を持つておるのでありますが、大蔵大臣は今年春ごろから今日における発行券の吸收を、相当急速にしなければならぬとお考えになつておらぬわけでありますか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 為替相場の問題で、稻村委員は四百円、五百円ということを言つておられます。それはもちろんその通りでございます。生糸におきましては一ドル四百二十円ぐらい、あるいは医薬品におきましては一ドル五百五十円ぐらいということであつたのであります。しかし反対に農産物をお考えなつたらわかりましよう。これは一ドル百二、三十円でも行きますし、また米、麦にいたしましても、一ドル百六、七十円程度であつたのであります。そして輸出の大宗である綿糸、綿て三百六十円レートを堅持できるかと申しますと、堅持できるのであります。堅持しているではありませんか。そしてわれわれは予定通り大体五ドルくらいの輸出はあり得ると思います。またその実績を示しつつあります。これをもし円を切り下げるというようなことがあつたならば、せつかく安定しておる日本経済を、また元のもくあみのインフレーシヨンに持つて行くのであります。私は国民大衆のために堅持しなければならない、また堅持できると確信いたしております。
  102. 稻村順三

    稻村委員 為替相場が算定される一番大きな要素として、国内の生産力と発券高ということを、一応われわれは想像しなければならないのでありますが、現在の生産力をもつてして、もしも三百六十円を堅持しようとするならば、そこに相当のドラステイツクなデフレを覚悟しなければならないと私は想像するものであります。ことにポンドの切下げが行われまして、そのためポンドとの関係において日本は非常に円高になるのであります。日本の輸出はドル圏よりも、むしろポンド圏に多くの輸出の得意を持つておるのでありますが、私は今日開くところによりますと、ポント圏においては、円が切り下るのを予想して、相当買い控えをやつておるというような話も聞いておるのであります。こういうふうなときにポンドの切下げがあつた場合、なおどういうふうな形でもつてこういうところに輸出を進行させて行くことができるか、その政策を聞きたいのであります。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の趣旨がわかりませんが、ポンド切下げ後日本の円も切り下げられるだろうということを見越しておる外人は相当あるようであります。また日本でも特殊の者は、円が切り下げられればよいがということを願つておる人もあるやに聞きます。しかし私はそういうことは考えていないので、またそういうことを考える人が内外におるからして、貿易が一時非常に減退しておる。スターリング・エリアの方に対しましては、一月から四月までの実績の四%くらいしか輸出できなかつたのもあつたのでありますが、最近は回復いたしまして、大体月に、全体の輸出でございますが、三千五百万ドルから四千万ドルの輸出を見ておるのであります。また貿易協定がどんどん行われつつありますので、先ほど申しました通り、予定に近い輸出ができるのではないかと期待いたしております。
  104. 稻村順三

    稻村委員 私はあくまでも三百六十円の為替レートを堅持いたしまして、その上にさらに補給金を削る、国内における補給金を財政のいろいろな関係からして削るということになると、生産力を増大する、すなわち単位労働の生産量をふやして行くということをしないで、そういう関係は現状のままにしておいて行くとすれば、結局参どうかというと、賃金を切り下げてそれによつてコストを引下げる、こういうような方向に向わざるを得ない。これはことに貿易関係にはそういうふうに考えざるを得ない。賃金を安くするためには、当然農産物もまた安くしなければならぬというので、今度は農産物の価格をむりに押える。先ほど私が質問したのに対して、農産物は非常に円高に入つておるというようなことを言つておりましたが、これはどうかというと、国内の農産物価格というものを相当人為的に押えつけておる。この低賃金の基礎である農産物価格を人為的に押えつけたというところに、私はやはりこういう條件が出て来たと思う。こういうふうなことから考えてみますと、結局賃金ベースをくぎづけする、あるいは米価をあくまでも低位に抑えつけておくことは、これは結局先ほど申しました通りに、為替レートをそのまま維持しでおいて補給金を削つた。それから労働の生産性すなわち単位労働で生産力をふやすというようなことによつてコストを下げることもできないからして、とにかく賃金と農産物価格を押えておけという結論にならざるを得ないのであります。私は今日大蔵大臣考えておる輸出振興というようなものは、結局この線ではないかと考えられるのですが、この点はどうですか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国経済は、この四月までは温室経済と申しますか、鎖国経済と申しますか、貿易があつてほんとう意味での国際貿易が行われていないと言うのであります。私はこの温室経済をできるだけ早く普通の経済にする、すなわち外国の市場にさや寄せするほんとう経済を立つて行こうとしてやつておるのであります。米価その他につきましては、不当に押しつけるということではございません。やはり適正な米価にしなければならない。徐々に国際物価へのさや寄せをして、日本経済を本然の姿にしようとしておるのであります。そして輸出振興策としては、すぐあなた方は首切りだとかなんとかおつしやいますが、とにかく企業の合理化をはかる。合理化には今までの設備その他は非常に荒廃いたしておりますので、設備を改善すると同時に、優良な技術を導き、能率を上げて輸出の振興をはかろうといたしておるのであります。
  106. 稻村順三

    稻村委員 今大蔵大臣産業の合理化の問題について御見解を述べられましたので、そこで私は産業の合理化の点について質問したいと思います。産業の合理化と申しますと、大蔵大臣の言われたように、設備を更新するというようなことが普通常識的に言われておりますが、しかし今日の実情で、はたして短時間に設備の合理化ができるかどうかということを考えてみますと、合理化はもう一つ方法があるのではないかと考えるのであります。その一つは、どういう方法かといえば、今日フルに運転していない設備をフルに運転すること、それから既設の設備に対応したようにこれに対して労働力を配置すること、こういつたような意味での、いわゆる現在の設備をフルに運転して、労働を非常に過重な方向に向けて、そういうことによつてコストを引下げるというような、いわゆる労働者の犠牲によるところの合理化とも考えられるのであります。私はその際に考えることは、大蔵大臣は私の質問に対して合理化といつて設備の更新というようなものを問題にされたのでありますが、この予算にも現われておるように、設備に関する資金というものはきわめて不十分である。これは財政的理由によつて不十分だということは、大蔵大臣自身も認められるだろう。多いに越したことはないというようなお話でありましたけれども、多いに越すどころじやない、少いうらみがある。そういうふうなことを考えております。また今度の金融の問題などを先ほど小峯君からもいろいろ質問されましたが、金融の点から申しましても、そう楽に設備更新ができるかというと、なかなか時間的に簡単にできない。そうしますと、結局今日産業の合理化を達成するということになると、さきの第二の、既設設備をフルに運転するとか、あるいはまた労働者の労働を非常に加重するとかいうようなこと、それから資産の再評価をいたしますと、ますます大きく見積られた資産に対しての労働でありますので、その点も賃金を創ることによつてコストを下げる、こういう方向に行かざるを得ないと思うのであります。この点に関しまして私の結論といたしましては、結局この合理化は労働者を犠牲にするという方向の合理化にならざるを得ないと思うのでありますが、その点大蔵大臣はどうお考えになつておるか。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 国の産業を興し、日本経済がよくなつて来れば勤労階級、その他あらゆる階級がよくなるのです。その方向に向つて私は進んで行きたいと思つております。
  108. 稻村順三

    稻村委員 やはり同じように抽象的にただ大蔵大臣は逃げるだけです。現実と遊離して、ただ理論的に抽象しているだけだ。というのはわれわれは合理化をしてよくなつたその結論を言つているのではない。合理化の過程においてわれわれは、どういうように労働者その他が大きな犠牲になるかというのであります。設備を更新するのには一定の時間を要します。金融状態からいつても、資材の点からいつても、また財政資金の点からいつても、時間を要するのであります。この時間の間にどうかというと、犠牲にされるものがあるのでありますから、これに対してそれならば第二の合理化の政策がとられるとするならば、こういうことに対して大蔵大臣はどう考えているか、こういうことなのであります。将来のことではない。現在大蔵大臣の言う通り言うならば、将来のために現在は労働者は犠牲になつてもよろしいとお考えになつておるかどうかであります。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 企業の合理化は着々進行しております。資金、技術は十分ではございませんが、私は月とともに進んで行つておると考えておるのであります。会社の増資、すなわち設備資金等におきましても、自己資金で充てたもの、あるいは増資で充てたもの、社債で充てたもの等を加えますと、四月から九月までに三百億近い金が、設備の方へ行つておるのではないかと私は思います。なおこの機会に申し上げておきますが、対日援助見返資金も、この方面にどんどんこれか出て行くようになると考えております。そうしてまた日本産業の合理化、生産の増強には、特に先進国の技術者の指導を受けることも必要でありますので、これが措置につきまして、ただいま具体的方法を考えておるわけであります。
  110. 稻村順三

    稻村委員 それは着々として進行するというけれども、その進行の過程において、さきに言つたように第一の合理化と第二の合理化がありますが、そのいずれがとられるかということによつて、労働者の犠牲の度合いが違うのであります。第一の合理化は着々と進行していると言いながらも、これは一年で済むか二年で済むか私にはわからないのであります。ことに合理化という以上は、中小企業及び農業の合理化のことも考えなければならぬのであります。これらの全部が合理化されて行かなければ、先ほど申しました通りに為替レートをくぎづけにしておいて、しかもコストを下げるという役目は果せないと思うのであります。それで大企業の方面の企業合理化の点はまだ比較的早いかもしれませんが、日本産業における比重から見ますと、中小企業及び農業が占める割合が大きいのであります。ことに農業の合理化の問題に対しましては、きわめて困難な問題があつて、そう簡單には参らぬと存ずるのであります。そこで私はこういうふうな時間的なずれから生ずる多くの犠牲に対して、大蔵大臣はどういう政策を持つておるかを聞きたいのであります。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 農業の合理化も進んでおると見ております。また一般企業の合理化によりまして一時的には失業者も出ることがある、また現に出ておるのでありますが、これが対策といたしましては、予算面においても相当考えておるのであります。
  112. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣は一体どういうところが、農業の合理化の重点だと思つておりますか。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 農地改革が行われ、また農村電化も進んでおりますし、いろいろな方面から改革されつつあると考えております。
  114. 稻村順三

    稻村委員 日本における農業の電化が合理化の一番大きな特徴であるというふうにお考えになつておるようであります。そうして大蔵大臣は農村生れだから農業のことはおれも知つておるというようにお考えになつておるようでありますが、電化が農業の生産の面にタッチしておるところはきわめて少いのでありまして、農村においては消費生活の面に電化はよけいに結びついておるのでありますから、私たちから申しますと、この程度の農村電化くらいでは、合理化どころの騒ぎではないと思うのであります。  もう一つ農地改革が行われたことも合理化の一つだと申されましたが、私は農地改革は合理化の前提ではあるけれども、これは全然合理化を意味するものではないと思う。なぜかというと、日本農業は御承知の通り過小農制であります。過小農制である限りにおきまして、單に農地が改革せられたからといつて、ただちに農業生産が合理化されたとは思わないのでありまして、これは農業生産を合理化するための非常にいい條件をつくつたというだけでありますが、この点につきまして大蔵大臣質問いたしましても、この程度の農業に対する知識でありますと、問答は無用だと思つております。ただこの際大蔵大臣についでですからお尋ねしておきたいことは、それほど合理化だと思われるほど重要な農地改革が、今日まだ済んでいないのであります。しかも農地委員会の人々の非常な苦労にもかかわらず、買收登記は二十六パーセントくらいしか済んでおらない。買收計画に至つては二四%しか行つていない。売渡し計画はたつた六%、こういう事態にあるにもかかわらず、農地委員会の費用はきわめて少いのでありまして、今度予算に計上されておる中でも一億二千万円くらいで、おそらく一町村当り一万円くらい。しかし、私たちがいろいろと聞いてみたところによると、多いところでは五十五、六万円もかかつておりますし、少いところでも十四、五万円はかかるというので、実をいうと一万円くらいもらつたつてどうにもならないと言つておる。こういう事態におきまして、農業の合理化の一つ前提だと私は考えているのでありますが、農業の合理化だというこれほど重要な農地改革に対して、何がゆえにかような無関心というか、かような冷淡な態度をとつて農地改革を促進させることをしていないのか、この点について御質問したいと思います。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 農地改革のいわゆる地主から小作人に渡りました農地の代は百億円余りでございます。今まで農地改革に出しました費用は土地の値段にほとんど近い金額が出ております。こうして今農地改革の進行状況を見ますと、田畑につきましては大体九十五、六パーセントまで行つております。牧野につきましては予定の二十万町歩を越えて二十四万町歩やつておるのであります。ただ進まないのは登記事務であります。登記事務につきましては、これはお話通りに、一億円余りを計上いたしております。なるべく早く処理していただきますように、できるだけ予算をさいてやつております。決して農地改革をおろそかにしてはおりません。
  116. 稻村順三

    稻村委員 それではこの予算に計上されている一億二千万円でもつて、この登記事務は完了するに足りると思われますか。来年の大体三月ごろまでにはどうしても登記事務を完了せよという方針のようでありますが、これで完了できると思いますか。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 もともと農地改革のうちにこの登記事務も加えて計算いたしておるのであります。従いまして、用紙その他は既定の予算のうちに載つておるのでありますが、あまりに進行状況が遅々としておりますので特に加えたのであります。われわれといたしましては、できるだけ早い機会に、来年の三月くらいまでに終えていただきたいと考えておりますが、来年度にわたることもまた考えられますので、来年度にはやつぱり適当な金額を農地改革費として計上いたしております。
  118. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、農地委員会の費用に関しましては、これだけでもつて大体いいからして、今度の場合はこれ以上行かぬが、来年度の予算まで待つてもらいたい、こういうふうな意味なんですか。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 大体この程度で予定通り行くと考えております。これ以上補正予算で出す気はもちろんございません。
  120. 稻村順三

    稻村委員 来年の三月までできないということははつきりしておるのであります。現在の費用ではできないということははつきりしております。なぜかと言うと、先ほど申しました通りに登記事務というものが、今わずかに買收の方の登記が二四%、売渡しが六%であります。これを全部合せて三〇%くらいしかないのでありまして、これから三月までに強行しようとするには、相当費用がいるというふうに考えているのですが、その費用大蔵大臣はいらぬというふうに考えているわけですか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 いりますから一億円余りを組んでおるのであります。
  122. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣はとにかく農業の事情やなんかは全然お知りになりませんので、一町村二万円くらいでもつて、それで現在多く赤字が出ている農地委員会の財政のことは、よく御存じないというよりも、むしろ見ないようにしているというふうに私考えて、それ以上のことはここで述べないことにいたします。  次にそれでは金融政策のことについてちよつとお尋ねしたいと思います。大蔵大臣は、日銀のマーケット・オペレーシヨンが日銀貸出しの回收を操作する結果、市中銀行が日銀のマーケツト・オペーシヨンによつて今日金融を非常に円滑にしているというような意味の演説をなさつておりますが、しかしながら日銀のマーケット、オペレーシヨンは、日銀の貸出し回收をするために、市中銀行の貸出し回収を間接的に強制するということを前提にしておるようでありますが、そういうふうなお考えはないのでありますか。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀のマーケット・オペレーシヨンはどんどん貸したり、また貸出したものは回收する等、金融の情勢に適応するようにやつているのであります。
  124. 稻村順三

    稻村委員 実は今のマーケット・オペレーシヨンによつて、市中銀行から日銀に回收せられた金はどうかというと、さらに市中銀行に貸付けられたといたしましても、その際市中銀行は今日のような経済的な変動のはげしいときには、非常に貸出しが慎重で査定が非常にやかましくなつて参ります。その結果といたしましては、主として有利な事業にのみ貸付けて、そうして非常に国家経済国民経済の上から重要な産業であつたとしても、この方面にはまわらないというような傾向がしばしば見られるのであります。すなわちどうかというと、有利な産業に——有利な産業といえば、大体において一から十までというわけではありませんが、大体の傾向といたしまして、大企業でありますが、そうすると大企業の方面には、回收された金は必然的にマーケット・オペレーシヨンの程度でもまわつて行くと思うのでありますが、しかし少しめんどうな産業になりますと、こういうところにはむしろ回收されつぱなしになるという傾向になつて、むしろ国民経済の上から見て、必要なところに金がまわらぬという傾向が生じて来ると思うのでありますが、その点に関してそういう心配がないと思つておりますか。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 必要な方面には市中銀行を通じて金を出すように指導いたします。なお市中銀行が独自でやりにくいときには、日本銀行の融資あつせんによつて、市中の数銀行が合同して出すという場合も金融の円滑をはかつております。また市中銀行だけでなかなか行きにくい、すなわち中小商工業者とか、あるいは農林、水産の方面におきましては、勧銀とか興銀とか商工中金、農林中金を通じまして、日銀から融資をいたしておる次第でございます。
  126. 稻村順三

    稻村委員 りくつの上ではなるほどそういうふうになつているかもしれませんが、現実の問題としてなかなかそうは行つていないのが事実でありまして、市中銀行はことに短期の至急を要する金融の場合などになりますと、しばいば日銀のあつせんをもつてしてもなお金を貸さない、こういうふうな例が市中銀行にたくさんあるのであります。  次に御伺いしたいと思うことは、長期金融の問題であります。前に小峯君が質問いたしましたけれども、この点に関連するのでありますが、同じことを質問しているけれども、結論が大分違つて参るのであります。と申しますのはわれわれは最近長期金融お道として増資が盛んにされておるわけでありますが、この増資をする会社というのは、銀行に大きな焦げつきを持つておる会社が増資している例があるのであります。だからしてこの増資したものがどうかというと、半分くらいは焦げつきの方に持つて行かれてしまう、そして残つた半分はどうかというと、新株が無統制に至るところに出される結果といたしまして、新株の不消化という現象が起きて参りまして、そのために親株にまでそれが響いて参る。遂にはせつかく増資しましても、そこから来る損害から設備資金その他の重要なところには、ほとんどまわらないという状態になつていると思うのであります。こういうふうに金融の面におきましても、銀行が非常に大きな有利な地位を占めて、そして焦げついている貸付を回收するということのために、無統制にやたらに増資しているという傾向があるのではないか。この点私は、こういう銀行が会社を強要して増資させるというような建前に対して、もつともつと政府としては統制的手腕を発揮することが必要でないかと思うのでおりますが、大蔵大臣はそういうふうに考えないのですか。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 増資資金は直接会社の設備資金にまわさずに、一部従来の債務の償還に充てられていることは私も存じております。しかしてまた御質問の、無統制にどんどん増資をすることはどうかということにつきましては、これをある程度統制すると申しますか、無統制にならないようにしなければならぬと思います。
  128. 稻村順三

    稻村委員 無統制にならないようにるためには、そうするとこういうふうな銀行を、十分に政府が統制して行かなければならぬということを意味するのですか、どうですか。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 これは銀行の問題ではございません。証券会社の方の問題でございます。
  130. 稻村順三

    稻村委員 私はそれは証券会社の問題というよりも、銀行が強要して増資をさせているということを問題にしているのであります。私は証券会社のことを問題にしているのではありません。そうしてこういうふうに、銀行が焦げついている会社に対して強要して増資をさせる結果、むしろそのために生産の拡充にせつかくの増資が何の役にも立たない。だから銀行にさようなことをさせないように一応の統制が必要なんじやないか。これは金融の統制をはつきりして、そうして銀行への回收、その他に対しての統制をはつきりしておきますれば、こういう現象は起らないのじやないかということの意味なのであります。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 稻村君とは見解を異にしております。それは今までの普通銀行が長期資金相当するものを貸しているとすれば、これを証券化して融通をつけるのが適当な金融の政策考えているのであります。
  132. 稻村順三

    稻村委員 この点についてもどうも意見があまり違つておりますので、結局押問答に終るような危険がありますので、そこで最後に農業資金のことについて簡單に質問してみたいと思います。きのうのどなたかの発言の中にもあつたことなのでありますが、今日の農業は短期資金はとにかく農業手形という形でもつて出しているけれども、長期金融の措置がほとんど講ぜられないために、非常に農業が困つているというようなお話があつたのでございます。この点に関しまして政府は、單に民間の資金を蓄積してそれをもつて農業の金融の基金にするというようなことは、これはほとんど不可能な農業の実態であります。従つて少くとも農業金融は、たとえば政府出資によるところの農業金融機関をつくるとか、あるいはまた中金に対して政府が、政府の持つておるところの資金を低利に貸しつけるとか、そういうふうな手段を十分に講じてやらなければならないと思うのでありますが、この点に対して政府はどういうふうなお考えでありますか。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 この点は御同感でありまして、先ほど申し上げました、普通銀行が相当の長期資金を貸しているのが、増資によりまして返つて来た。そういうところを見はからいまして、農林中金の方は四億円の出資を八億円にし、二十倍の証券を出す。そうして農林中金から農業の長期資金の方に持つて行きたい、こう考えているのであります。なお農地改良その他につきまして財政資金を昔は使つてつたのでありますが、この点につきましてはただいま検討中でございます。できるだけ従来通り財政資金を持つて行きたいと思つております。それが行かない場合におきましては、また他に適当な財政資金類似の資金を持つてつてはどうかと今研究をいたしているのであります。
  134. 稻村順三

    稻村委員 私はまだほかにもたくさん質問することがあるわけでありますが、結局今まで大蔵大臣から答弁を得たことは非常に抽象的で、しかも大蔵大臣の單なる——何といいますか、アイデアを承つたにとどまりまして、現実の問題と結びつけての結論はほとんど得られなかつたと思うのであります。私がこれまでいろいろな点について質問申し上げましたことは、第一には超均衡予算と普通いわれているところのこの予算のために、歳出の点におきましては必要なところに十分な資金がまわされないで、ほかの方面に相当支出がなされておるということ、歳入の点におきましては、主として勤労大衆の方面に歳入の源泉を求めているということが第二点であります。第三の点におきましては、今日大蔵大臣が物価を引下げるというような点について重点を置いておるようなお話をしておりますが、この物価の引下げのためには、結局デフレというようなことによつて通貨の安定をまずはかつて、それから日本のいろいろな必要どころに必要な財政計画を立てよう、こういう点になつて来ていると思うのであります。こういう建前から行つているところの今度の補正予算でありますので、結局金融政策の点におきましても、また経済政策その他の産業政策の点におきましても、やはり資金その他の点が主として回收という面に置かれておるように感ぜられて来ておるのであります。その他この補正予算に現われたところでは、公共事業費、その他が比較的多く出されておるとは言いながら、これは要するに過去の当初予算の結果、大きな国民的批判にあつたので、それを緩和する意味において出しているというふうにしか私たちは感ぜられないのであります。こういうふうな意味合いから申しまして、私は大蔵大臣答弁に対して、非常に不満足であるという私の気持をここに現わすとともに、今後われわれもさらに予算審議の上において、これに対して十分な対策を立てて行きたい。こういう意見を述べまして、私の質問をこれでやめておきます。
  135. 植原悦二郎

    ○植原委員長 中曽根康弘君。
  136. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は大蔵大臣及び安本長官及び通産大臣、その他の関係閣僚に質問をいたします。  最初に大蔵大臣と安本長官に関連し、てお二方に御答弁を願いたい。最初に申し上げたいことは、現内閣の基本政策であります。池田財政が出発して約半年以上になりますが、この財政のやり方を見ていると、私達が四月の議会で池田さんに追究したところがかなり出て来ておる。たとえば私は現にこの席で、必ず秋になつたら生産財の過剰という現象が出て来る、そしてデフレ現象が出て来る、大蔵大臣はどういう対策があるかということを申し上げたのでありますが、大蔵大臣はそんな過剰などは起らない、デイス・インフレだ、こういう答弁をなさつた。しかし現にすでに滞貨だけでも輸出入合せて一千億になんなんとするものが出て来ておる。私は池田さんの財政政策というものを見て、はなはだ失礼でありますが、今のところ成功四分、失敗六分だと思う。どうしてそういうことを申し上げるかというと、池田さんのねらいというものは国民生活を非常に緊縮する、あるいは低物価を強行する、そういうようなやり方で、生活水準をある程度犠牲にして輸出を振興しようという。そして現に輸出する物資は出て来た。しかし一千億になんなんとする滞貨がある。これが輸出されておつたなら成功だつたと思う。あるいは輸出できなくても、滞貨でなくて国内市場の開拓ができて、有効需要が起きて、現在よりも生活水準が高くなつているという状態なつたら成功だと思う。しかし一番大事な最後のとどめが刺されていない。しかもそういうふうに持つて来た背景を見ると、非常な犠牲者が出ている。第一は農民である。低米価その他の政策を強行されて、農民の犠牲においてこういうような財政政策がとられている。あるいは勤労者であり、ことに中小商工業者である。企業の合理化というものは必然的に現在の状態では首切りであるとか、あるいは中小企業に対する下請金の支拂いを遅らすとか、値段をたたくとか、そういうことでこれだけの滞貨が出て来ているのだけれども、残念なことは大事な最後の一点ができていない。そこにたまたいわゆるローガン構想なるものがやつて来て、日本経済は一体どこに行くのか、現在の状態を見ると、国民はまさに暗夜行路だろうと思う。一体どこにひつぱつて行かれるのだかわからぬ、そういう不安を持つている。私はそういう点を中心にして両大臣にお尋ねしたいと思います。  まず第一に現在ドツジさんが来たり、あるいはシヤウプさんが来たり、シーツ、ローガンさんが来たり、いろいろな人がおいでになつている。国民はこれを見て一喜一憂している。しかし政府の態度を見ていると、いずれもべつこり頭を下げて、唯々諾々としてこれを受入れる以外にない。こういう人が来るたびに、われわれ国民の進路はかわつて来るのではないかというような心配を持つている。吉田内閣は自主性を誇称して来たのだけれども、実際はそうじやない。そこで外国筋の援助や日本の能力を調べてみて、一体どの程度まで援助がもらえるか。つまり外国からの援助の時期と限界、これをはつきり調べてもらつて国民に耐乏を要請するなら、これまで耐乏すれば次はこうなるのだ、そういうことを明らかにするのが政治の大本でなければならぬと思う。しかしそういうことはとられておらない。この問題を大蔵大臣はいかに考えておるか、お伺いをいたしたい。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 私の財政政策に対しまして全部失敗だとおつしやらずに、四分は成功だというお言葉でございますので、衷心よりお礼を、申し上げます。  私は二十四年度の当初予算を組みまして、インフレを極力收束するために、ある程度のことは起つて来ると覚悟いたしておりましたが、私が心配しておるほどのものも起つて来ておりません。もちろん滞貨は千億円というお話でございますが、正確なことは存じませんが、ある程度の滞貨は出て来ておりましよう。しかしこれはポンド切下げが予想外に強かつた、私は当初二割程度と思つてつたのでありますが、予想外に強かつたという一つの結果でありまして、何も心配する必要はないのであります。今後の施策によりまして十分切り抜け得る確信があるのであります。  第二に、ドツジ氏が二度目に来られ、シヤウプ博士が来られ、ローガン、シーツという人が来てどんどんかわつて行くじやないかと申されるが、かわつて行くのが当然であります。経済安定の見通しがつきましたから、どんどんいい方にかわつて行く。公共事業費をふやせ、あるいは地方配付税をふやせという議論がございました。しかし経済の見通しがつき、財政均衡が保たれる自信がつくまで出さなかつたのですが、私は自信がつきましたから、公共事業費を今回のように補正予算で出し、地方配付税もふやした。来年度はもつとふやすつもりであります。かわつて行くのが当然である。またシヤウプ博士が来てかわつて行くのは、税が安くなるので喜ばしい。ローガン氏が来られて、今まで関係方面の管理貿易であつたのが民間に移つて来るということは、まことに喜ばしいことではございませんか。私は、かわつて来るのがわれわれの念願するところであつて、また私がせめて四割の成功だと言われる理由だと思います。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 確かにかわつて来ております。かわつて来ているうちには池田さんの腕前から来ておるところも大いにあると私は敬意を表します。それはいいのだけれども、しかし一体今後どうなるかという問題なんです。国民に耐乏を要請しておるけれども、今度はだれが来るか。たとえば農村の問題なんか今一番圧迫されているが、圧迫されて、はたしてそのまま進むのか。要するに日本の政治というものは日本の総理大臣がやつているのでなくて、外国から来る人がやつているのだという印象を国民が持つている。これじや日本政府じやない。日本を支配しているのはトルーマンでもなければスターリンでもなく、吉田総理大臣国民の信託を受けてやつておる。その信託している国民が暗夜行路のような状態でほつて置かれるというのでは困る。なるほど非常にかわつて行く。おそらくいい方へかわつて行くだろう。しかし一体いつになつたらどういうふうになるのか、援助の時期と限界はどの程度まであるのだ、いつごろになつたら日本にどの程度の経済的自主権が回復されるのか、そういう見通しをはつきり向うの方々と話をつけて、国民に行先を示していただきたい。これが私の言わんとするところであります。大蔵大臣の御答弁を伺いたい。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 関係方面からいろいろな方がおいでなります。われわれはそういう方にある程度の意見を求めて、われわれの責任においてやつておるのであります。従いまして国民大多数の信任を受けました吉田内閣は、着々公約を実行しつつあるのではございませんか。われわれの責任においてやつておるのであります。しこうしていつになつたら日本経済が自立できるかという問題でありますが、これはマツカーサー元帥も経済の自立なくして政治の独立はないということを言われておりましたが、一日も早く経済の自立をはかるべく努力いたしておるのであります。しかし何分にも今回の戦争はわが国に非常な痛手を與えておりますので、アメリカの援助なくしてただちに自立することはできないと思います。私はできるだけ早い機会に自立できるように、すなわちアメリカの援助を極力われわれの努力よつて減らして行つて、そうして自立経済を立てるようにいたしたいのであります。債務償還が多いとか、いろいろな問題がございましようが、私は日本自立経済を早急に持つて来さすためには、今の財政経済政策が一番いいという確信のもとにやつておるわけであります。
  140. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 吉田内閣の責任でなるほど政治はやつていますが、しかし一体だれに知恵を授けられているかというと、実際の答案をつくつてくれているのは向うの人である。吉田内閣あるいは池田財政と言つておるけれども、私に言わしむればこれはカンニング財政である。人の答案を見て自分のような顔をして書いている、こういうように私は考える。国民もおそらくはそういうふうに考えるでしよう。そういう点をもう少しはつきりしてもらいたいというのが私の考えです。そこでひとつ安本長官にお尋ねしますが、アメリカの今やつているイロアあるいはガリオアという資金が来会計年度からなくなつて、別の形式のやり方によつて日本に対する援助その他が行われるという情報がありますが、一体それはどういうふうになるのでありましようか、安本長宮に伺つておきたいと思います。
  141. 植原悦二郎

    ○植原委員長 安本長官のお答えの前に、いい機会だから中曽根委員の御了解を得て、委員長から一言申し上げておきたいことがあります。先刻理事会で、明日は休日であるにもかかわらずかような時期でありますから予算委員会を開会することを了解を得ました。その條件として総理が明日必ず出席するということであります。かつ明日は他の委員会も多く休みでありますから、各大臣もそろつて列席されると思いますから、明日はひとつ皆さん方の御精励によつて馬力をかけて、なるべく国民に対して、この予算委員会質問意味あるようになさしめたいと思いますから、どうかなるたけ奮つて御出席くださつて、いい御質問を賜わらんことを切望いたしておきます。
  142. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ただいま中曽根君からの御質問でございますが、私は寡聞にしてまだそういう情報を何ら受取つておりませんので、来年度もその点については、内容はどうか知りませんが、かわりはないと存じておる次第であります。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その次にお伺いいたしますが、この前の議会が終つてから、池田大蔵大臣が言われたことをいろいろ考えてみると、大分かわつております。たとえば減税六百億をやると言つたり、あるいはそれが二百億にかわつたり、あるいはドツジ・ラインを堅持すると議会において言つてつたのが、そのうちにドツジ・ラインを修正すると言い、あるいはデイス・インフレを緩和すると言つておる。ところが最近においてはこの予算は緊縮予算であると言われたり、あるいは復興予算であると言われておる。みなある程度矛盾している言葉である。この間の財政演説の中においては、物価を下降の趨勢に持つて行くように努力している、しかし復興されて行く、こういうことを言われている。私はそういう言葉を聞いて、日本経済がどこの安定点で自立するかという確信が大蔵大臣にないのではないかと思う。政府はたとえば現在の米価やあるいは現在の賃金はこのまま、為替レートもこのまましかし運賃を上げ、補給金をとる、そういうような一定の條件で日本経済を安定さして行こうとしておるけれども、はたしてどの程度に安定さして行こうとしておるのか、たとえば為替レートを現在のままやつて行くということは、むしろデフレの傾向が強い。現在はやみでは四百五十円とか四百六十円とか言つておるが、三百六十円で強行しておる。今年は一体どの程度の基準で自立さすのか、来年になつたらそれがどの程度に復興して行くのか、そういう具体的な数字を一示されたいと思います。その内容としては、国民所得は今年はどれくらいになるか、来年はどのくらいになるか、あるいは生産水準は来年はどのくらいになる予定だ、あるいは工業活動はどうなる、貿易はどうなる、こういう具体的な構想について伺いたい。最近政府経済復興二箇年計画というものをつくられているようですが、おそらくそれが一応の政府アイデアだろうと思うのです。その内容を具体的に御説明願いたいと思います。
  144. 青木孝義

    ○青木国務大臣 私どものところで二箇年計画というよりも、見通し作業というような立場で、今せつかく研究をいたしておりますが、ただいま中曽根さんのおつしやいましたように、今度の予算復興予算であるとか、あるいはデイス・インフレ予算であるとか、あるいはいろいろな言葉で表現されておるがということでありますが、私どもとしては、この四月以来ドツジ・ラインを堅持し、九原則を実施して、そうしてまずともかくもインフレを收束せ、しむることに努力をして参りましたその過程におきまして、御承知の通り均衡予算と一本為替レートが決定せられて参りましたので、その後の経済活動は、われわれとしてはまず日本経済の一般的な均衡と申しますか、その線に沿つた経済活動というものが、漸次好転して行くような意味で努力をして参つておるのでありまして、これがデフレであるとか恐慌であるとかいつたようなことは、われわれは申しておりませんし、まだその過程でもありますので、われわれとしては日本の自立、復興、再建ということを目ざして、漸次その方面に努力を積んで行くという以、外に、別段特別な言葉を申したようには私は記憶いたしておりません。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がお尋ねしたのは具体的な数字であつて、今年と来年の日本経済力の形状というか、それを示されたい。その内容としては、国民所得税はどういうことになるか、生産活動はどういうことになるか。来年の輸出入の量はどのぐらいになるか。今年はどのぐらいになるか。そういう数字をもつて実証的に示される経済復興について要求しておるのであります。その具体的な数字を示されたい。
  146. 青木孝義

    ○青木国務大臣 日本国民所得につ要しては、四月以来われわれの方としても、諸條件を基盤といたしましてその様相を検討いたしておりますが、大体三兆億ということを予想いたしておるのでありますが、まだ決定はいたしておりません。それからまた二箇年の見通しというようなことにつきましては、今年度、来年度の予算、すなわち補正予算と二十五年度の予算、十五箇月予算というものに対する一応の見通しとして考えたのでありますが、ただいま私はそれについての数字を持ち合しておりませんので、また別に、その数字ついては、われわれの大体見通しているところのものについて申し上げたいと存じます。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今まで各大臣の御答弁はいずれも抽象的な答弁で、抽象的にはそれは納得できるけれども、はたしてどういうふうになるのかということが納御が行かない。そこで私は今後の質問は、全部具体的な、実証的な数字で聞きたいと思つておる。こういう意味で先ほどから私は安本に対してもはつきりした数字を聞きたいと思つて、部局長の出席を顧つている。安本長官はもちろん御承知ないでしよう。しかしあなた方が十五箇月の財政計画をつくつたあかつきにおいては、それの基礎になつている数字があるはずだ、それを国民の前に見せるべきだ、そういう考えで私は申し上げておるのであつて、この委員会の席上に部局長を至急呼ばれて、ただいまの質問にお答えくださるようにお願いしたい。いかがですか。
  148. 青木孝義

    ○青木国務大臣 われわれはこの現状把握、経済現況の把握ということについては、もちろん意を用いまして、その努力をいたしております。今おつしやいました点については、われわれの持つている数字を、十分であるかどうかわかりませんが、明日でも明後日でも、近い機会におきまして申し上げたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の委員会で答えていただきたいということを申しておる。私たちは前から安本長官及び関係局部長をお願いしておるのです。
  150. 青木孝義

    ○青木国務大臣 その点について、あらかじめそういう御注文がありますれば、私も用意をして来たのでございますが、ただいまのところ用意をいたしておりませんので、正直にお答えをしたのであります。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで電話をかけて呼んでいただきたい。私は委員長にお願い申し上げたいと思いますが、この問題は一番重要な問題であると思つたので、私は事務局を通じて、安本にも、それから大蔵省にもお願いしておる。きようは主税局長と銀行局長の御出席、それから安本は財政その他の関係部局長の御出席をお願いしておる。しかるにまだここへ出て来ておらない。これははなはだ怠慢であると思う。委員長からも、ただいま安本長官にお願いしましたように、ぜひこの委員会に出るように御警告を願いたい。大委員長として……。
  152. 植原悦二郎

    ○植原委員長 安本長官に申し上げます。ただいま中曽根委員から御要求の通りであります。至急その要求に応ぜられるように御手配あらんことを希望いたします。——数字なら事務官がお答えになつてもいいでしよう。
  153. 菅谷重平

    ○菅谷説明員 まだ明年度の国民所得は大体の計算中でありますが、大体三兆一千億見当であります。それから輸入は約十億、輸出は約五億と推定しております。それから生産指数は、昭和七——十年を一〇〇としますと、二十五年が約九〇です。
  154. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二十五年が九〇、そうしますと、今年は最終幾らぐらいになつておるのですか。
  155. 菅谷重平

    ○菅谷説明員 二十四年が七六見当です。     〔「それは二十四年の何月ですかし」と呼ぶ者あり〕
  156. 植原悦二郎

    ○植原委員長 私語を禁じます。
  157. 菅谷重平

    ○菅谷説明員 二十四年の見通しです。
  158. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の具体的な数字で、政府の意図する大体のスケールはわかりましたが、現在池田財政あるいは青木安本長官のやつておる政策で、これだけの増大した指数をはたして期待し得るかどうか。現在の経済界の状態を見てみると、御存じのように輸出入の滞貨が一千億に及んでおる。売掛金だけでもおそらく五、六百億以上です。手形の不渡りは一箇月に一万件以上、五十億ぐらいの下渡り手形が今行われておる。今の経済状態は、どつちかというと一種の恐慌現象、一種のモラトリアム現象である。これが普通の経済状態であつたならば、必ずこれはガラが起きたかもしれない。それが起きないというのは、連合軍に対する信頼によつて国民がガラを起さないというだけの話であつて政府は安定と言うけれども、むしろ空虚の安定である。これは安定というよりも、むしろ停滞である。これを安定であると過信しているところに、現在の政府の楽観性というものがあると思う。しかも現在の政府のやろうとした自由主義経済というか、自由主義政策というものによつて、次に出て来るところのそれだけの拡大再生産への糸口があるか。自由放任でほつておけば、そういう拡大再生産の糸口はないでしよう。ある程度の計画経済とか、われわれに言わせれば、計画経済あるいは修正資本主義をやるというのであるならばわかる。しかし、あなた方が呼号しておるような自由主義の形態によつては、現在の停滞しておる経済活動というものを、次の段階の拡大再生産に向ける糸口というものはないと思う。それをどういうふうな形にして安本長官は向けようとしておるのであるか。自由経済を放擲して、修正資本主義経済になつたのか、この点をお聞きしたい。
  159. 青木孝義

    ○青木国務大臣 まことにごもつともなようなお説でございますが、しかしながら、われわれが現実にやつておりますところの施策は、従来の統制経済における欠点を指摘して、しかもこれを改めて行くというところにその本旨があるのでありまして、この方向をもつて、ともかくも日本経済の安定性をかち得るという確信のもとにやつておるのでございまして、決してのほうずにわれわれは今日の経済考えておるわけではございません。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もちろん大臣のことだから、のほうずになんか考えるはずはないですが、一体どういう政策で拡大再生産に持つて行くか。政府公共事業費を一千億出すと言い、あるいはそのほかに補給金を出すとか、いろいろなことを言つておる。しかし他方において債務償還が来年度においては一千四百億ぐらいになろうとしておる。そういう段階で、はたして拡大再生産ができるのか。一体どういうプログラムで拡大再生産をお進めになるのか、その国策を聞いておる。その基本政策を御明示願いたいと思う。
  161. 青木孝義

    ○青木国務大臣 御質問になる御趣旨が、私にもそういうふうに言われるとよくわかりませんが、一体現在の経済がどういうものであるかということについての、根本的な食い違いということがあればともかくといたしまして、おそらく今日の経済が一応安定の段階に進みつつあるということについては、御承認が願えるだろうと思います。従来のインフレの状況から、インフレが一応静止する状態になつて来たということについては、おそらくこれについてお疑いはなかろうと存じます。その場合において、われわれがどういう施策をとつて行くかといえば、もちろんこの四月から約半年余であります。この半年余の経過をごらんになりましても、これはわれわれとしても、この調整もしくはこれについてできるだけ強い施策を実行して行くというような面では、予算面にも現われておりますように、二十五年度においては一千億の公共事業費も見積つておるし、あるいはそのほか台風の災害に対する問題にいたしましても、そのほかともかくも国内において有効需要をつけるというようなことについては、たといその力が弱い点がありましようとも、相当にこれを強力に実行できるような体制のもとに予算は組まれておると、自分は確信をいたしておるのでありまして、そういう意味で、漸次経済体制は改まつて行く、しかもよく改まつて行くだろうという見通しのもとにわれわれは実行いたしておりますので、ただこれくらいあるだろう、これくらいあるだろうというようなことで、そういう御質問を受けるのでは、自分としては答えにくいと思いますので、率直にこんなふうにお答えをいたしておきます。
  162. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 はなは事納得を得ないお答えですが、私が御質問をしておるのは、なるほど今までの日本経済というものは、インフレでからだがほてつてつた。そこで青木さんと池田さんが日本経済を冷蔵庫に入れた。入れたんで凝縮をして来た。凝縮をもつてあなたは安定と言つておる。しかしこのように凝縮をしたからには、非常なひずみが出て来ておる。たとえば中小企業はこれだけ苦難をしておる。農村は低米価を押しつけられておる。失業は漸次出て来ておる。しかしそれでも国際価格からは離れて来ておる。正常な価格の循環というものができていない。従つて日本経済はまだ毛細血管に血がまわつていない。このひずみを、次の拡大再生産にどう結びつけて行くか。要するに毛細血管にどうして血をめぐらして行くか、このひずみというものをどうしてほぐして行くか、それを私は聞いておる。それがあなた方の今までの経済原理でできるかということをお聞きしておる。はつきりお答えを願います。
  163. 青木孝義

    ○青木国務大臣 われわれは、今御質問の点について、広く一般的にいろいろなことを申し上げることは避けますが、まず御承知の通りに、貿易も漸次民間貿易に移行されて来る。国際経済体制が変化いたしますとともに、わが国経済体制もかわつて来るというようなところまで、だんだん日本経済活動はかわつて来たということを自分は考えておりますので、こういう意味から見ましても、たとえば貿易優先というような言葉使つておりますが、今後の日本の貿易は、かりに輸出の点においても輸入の点におきましても、そこに、その輸出なり輸入なりに合理性が持たれて来るだろうということは、これは最近この国会に、為替管理法あるいは貿易に関するものを含めたものが提出されると思いますが、そういうことは一つ一つ敗戰後の日本にとつては大きな進歩であつて、しかもわが国経済体制が進展しつつあるという前提をもつて考えますれば、当然今のある点におきましては、有効需要が多少欠けておるというような点もあるだろうし、あるいはまた経済恐慌的な面が多少出ておるとかいうような言葉も当るかもしれませんが、しかしよくわれわれが実相を見ますれば、ともかくも戰後の苦しい中からようやくわれわれはここまでたどりついて来た。そうしてここであなたの言われる縮小再生産とか何とかいう意味では、むしろ拡大再生産に幾分ずつでもかわつて行くという曙光が見えつつあるというふうに自分は考えておる次第でございます。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題は安本長官にいくら御答弁を願つても、はつきりした御信念がないようですからその程度にして、その次に安本長官と農林大臣にお伺いしたい。  これは根本的な問題ですが、ローガン構想によつて日本の貿易体制というものは漸次かわつて行く、それに伴つて国内経済体制相当の衝撃が来ると考えておる。具体的にいえば、たとえばポンド・ブロックとの貿易に漸次転換して行きます。そうするとポンド貿易にバーター的なことをやると、日本から輸出するものは雑貨類や機械類でしようし、向うから対に入つて来るものは何であるかといえば農産物以外にはない。ほかにあるものは石油とかごくわずかなものです。日本がポンド・ブロックに輸出が増進して、日本の国力が増大して行くようになればなるほど、見返りに入つて来るものは農産物以外にはない。そのことは日本の農業に大きな打撃を與えることになる。これは今農村が一番心配している問題です。しからばそれをもらわないといえば、どういうふうにして決済するのか、こういう問題が出て来る。あるいはそれでなくて今度はアメリカの方から農産物を入れて、ポンド・ブロックから入れないというと、借金の形でふえて来る。いずれにしても日本経済の現在の状態をもつてすると、日本の政治的地位というものは、経済的な面から圧迫されて行く方向に追い込まれるのではないかと思う。具体的にいえば、相当借金が外国にたまる。たまるとすればしようがないから軍事基地の一つもやらなければなるまいというふうに、今すぐではないけれども漸次追い込まれはしないか、これを国民は実は心配していると思う。この経済体制の切りかえに伴つて、南方からおそらく安い農産物が入つて来るに違いない。現にこの間は群馬県において、こんにやくをジャワかスマトラから入れようとした。その結果日本のこんにやくというものは一斉にやめなければならぬという状態になつて大問題になつた。そういうことは一つの前ぶれである。それ以外のものもずいぶん出て来る。こういうものに対して政府はどういう根本的な国策をもつて臨むか、その点について安本長官及び農林大臣から確固たる信念を伺つたことがない。これを明確に御答弁を願います。
  165. 青木孝義

    ○青木国務大臣 日本の農産物等の問題でありますが、これもわが国としては、農産物等の値段がなるべく下らないように、できるなら外国輸出というようなことを考えたいのでありますけれども、御承知の通り日本の主食である米は足りませんし、またそのほかいろいろの食糧はガリオア、イロアを通して輸入しておるというような形でありますので、なかなか日本の農産物を海外に輸出するというようなことが、手取り早く参らないということは、はなはだ遺憾であります。さらに日本が今後外国貿易が盛んになつて来る。こういうことを目途といたしまして、かりに輸入貿易が大体南方地域、東南アジアに切りかえられるというような場合についての御懸念のようでありますが、それは必ずしも安い物であれば何でも買う、そういうようなことばかり考えて行かなければならぬということでもございません。従つてその間の多少の調整もできるでありましようし、またわが国の農業の今日の保護的な関係等もありますので、そういうことから考えて参りますれば、そんなに悲観しなくてもよかろうと考えておるのでございます。
  166. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 青木長官は現在の日本の政治的地位をよもやお忘れじやないでしようが、われわれは被占領国で、国際小麦協定に入るのでも何でも関係方面の指示あるいは援助によつてつておるのです。従つて日本には主権というものはそう多くはない。そういう中であなたのような楽観論ができますか。あるいはあなた方の言う自由経済ではたして国内経済が乗り切れますか。先ほど申し上げたこんにやくの例はその前哨であります。たとえばあなた方が前にやつたような米穀統制法をつくるとか、あるいはアメリカがやつたような農業調整法をつくるとか、そういう国内保護政策あるいは関税に関するある程度の自主権を認めてもらう、そういうことができれば、それはある程度防禦できましよう。あなた方は安い物を買わないと言うけれども、バーター・システムでやれば、こつちが出した分は買わなければならぬ。何が入るかといえば結局入つて来る物は農産物以外にないじやないですか。何がありますか。そういう点についての御認識が安本長官はないと思う。農林大臣と安本長官にもう一ぺん、そういう国内保護政策をとるかとらぬか、こういう場合が来た場合に、あるいは関税についてある程度の自主性を認めてもらうかという御信念を伺いたい。
  167. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。今日の食糧の需給関係は、まことに変則的な状態に置かれてあるのであります。従つて現状がはたして将来何年続くかということも、はつきりしないような情勢であるのであります。これはわが国が講和談判が許されまして、独立国としての立場から考えてみましたときに、日本食糧は決して自給自足はでき得ないのであります。いろいろ増産方面におきまして、あるいは技術の進歩、品種の改良、耕地の改良、農業経営方式の改善等によりまして、相当の増産はできますけれども、限りなく増加する人口からして、いずれは食糧不足ということが考えられるのでありまして、どうしても食糧の輸入を求めなければなりません。さてそういう場合において、食糧の価格の問題であります。日本の農産物が外国の農産物とどういうふうな価格の対比を持つかということ、日本の農業が栄えるのも、日本の農業が圧迫を受けるのも、ここにかかつて来るのであります。われわれは世界の農産物の価格がどういうふうに変調いたしましても、日本の農業が経営し得られるという方途を考えて行かなければならぬと思うのであります。日本の今日の農産物の価格と、今日輸入されておる農産物の価格を比較いたしますと、非常に日本の農産物は安いのであります。しかしこれは今日日本が金を拂つてもらつておるのではないのでありまして、一部分はバーター式で、今お話のように日本から輸出しました工業品のかわりに向うから食糧が入つて来る。その食糧は今日南方から入ります米でも、日本の内地に参りますと一石一万円以上にもついておるのでありますが、日本の将来は外国の食糧と価格が対等の位置に立つように、食糧農産物の価格を上げて行かなければならないと思うのであります。関税政策が自由に許される場合はともかくも、もし外国の食糧が安く入つて来るという場合において、関税政策を許されればいいのでありますが、今日の日本の農産物は外国の農産物と比較して安いのであります。安いのでありますから、どうしても外国の農業と対比して行く場合において、日本の農産物は将来上げて行かなければならない。その上げて行くことが日本のすべての経済にどういうふうに影響して行くか、あるいは労賃の部面にお、いて、あるいは物価の部面にどういう影響を及ぼして行くかということが、ここに問題になつて来るのでありますが、日本食糧はある程度輸入に仰がなければならない。その輸入に仰ぐにいたしましても、日本の農業ができるだけ合理的に生産されるように増加さして行く。そうして外国の農産物価と競争して負けないという政策をとつて行くことが必要であります。今日の現状、今日の姿をもつて今日の食糧問題を論議することは、現在の段階においては許されないことを御承知願いたいと思います。
  168. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今農林大臣から非常に喜ばしい朗報を得たのでありますが、ともかく米価その他の農産物価格を上げて行かなければならぬということをおつしやつた。しかし現実に事態はここまで出て来ている。イギリスその他のポンド圏とのバーター・システムもできておる。あるいはその他もどんどん進んでおります。そういうときに、四千二百五十円という米価をどうして認めたのですか。これに対して大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  169. 池田勇人

    池田国務大臣 パリティー計算によりまして、吉田内閣がきめたのであります。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 パリティー計算によつて吉田内閣がきめたというのですが、しかしこの間の農業団体がつくつた米価、あなた方がお手盛りでつくられた米価審議会の値段は幾らですか、四千七百円でしよう。しかも民自党内部ですら、パリティー計算一本でやるのはいけない、生産費を加味してきめろ、こういう意見が支配的であつた。それを民自党の代議士会その他の意見を無視してまでも四千二百五十円にしたとは何ですか。しかし超過供出三倍を認められればいい、それも認められないで二倍に下つている。先ほど池田財政は失敗六分で〇成功四分ということを言つたが、農林大臣は成功ゼロで失敗十だと思う。このような農林大臣は私は信任しない。そういう農林大臣には私は今に弾劾案を出そうと思つている。こういうような四千二百五十円の米価をあなたはよくおのみになつたですね。あなたは上げなければならないと言つている。しかも事態はここまで来ておる。それでもあなたは恋々として農林大臣の地位にとどまつておられるお考えですか。農林大臣の責任を私はこの際明白に表明してもらいたいと思います。
  171. 森幸太郎

    ○森国務大臣 中曽根委員は気が早過ぎる。あなたは人の言うことをよく聞いて論議してもらいたいのであります。講和條約ができて、日本が自主的な方策をなす場合においては、日本の農産物価は上げなければならぬと言つたのです。ガリオア物資で輸入されておる今日、日本の米価をきめる上においては、パリティー指数によつてきめざるを得ないのであります。今後日本が外国の食糧事情と融和して行くには、日本食糧の価格を上げなければならない。これをお話したのであります。現段階と将来とをチャンポンにされては困ります。よく人の言うことを聞いてから言つてもらいたい。
  172. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 あなたがそう言われるなら、あえてお尋ねしません。あなたが農林大臣におなりになつてから、あなたがやろうとしたことで何ができましたか。米価問題だつて、あの超過供出問題だつて、自由販売の問題でも、あらゆることができていない。のみならず薪炭特別会計五十四億円などという醜態きわまる予算が出て来ております。それは別として、ただいま申し上げましたように、漸次ローガン構想その他によつて日本経済は国際経済の影響を受けつつある。先ほど言つたこんにやくの例はその前哨戦だと言つた。このまま話が進めばこんにやく問答になるかもしれませんが、よく聞いてもらわなければならない。そういう先ぶれが来ておるときに、あなたはわれわれが期待しておる、全農村が期待しておるのに安い米酒をきめていいかという問題だ。上げなければならぬ事態が刻々と迫つて来ておる。それなのに四千二百五十円でいいかどうか、それを聞いておる。農林大臣はもう少し御親切に御答弁願います。
  173. 植原悦二郎

    ○植原委員長 お答えありません。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 さすがに強い心臓の農林大臣もそこに立てません。さらに私は追究しません。もう少し基本的な問題で国民所得の問題を今度安本長官と池田さんにお尋ねいたします。  先ほど来年度の国民所得が三兆一千億というお話がありました。しからばことしの国民所得は大体どれくらいになる御予定でありますか。ことしの分を漏らしましたからお答え願いたい。
  175. 青木孝義

    ○青木国務大臣 先ほど三兆一千億程度であるということを御報告申し上げました。大体三兆一千億程度になると思いますが、なお国民所得につきましては研究中でございますので、その結論が出次第申し上げたいと思います。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 来年の国民所得の推定が出て、ことしのが出ていないという話はない。先ほど生産局長がお答えになりましたから、生産局長は知つておられると思いますのでこれを伺いたい。
  177. 菅谷重平

    ○菅谷説明員 私の記憶にして誤りがありませんければ、二十四年の国民所得は約二兆八千億と記憶しております。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最近のいろいろな話では、シヤウプ勧告でも三兆から四兆の間と言つておる。安本の最近の計算ではもつと上つておると聞いておる。その数字をお聞きしたい。
  179. 菅谷重平

    ○菅谷説明員 数字はまだ私の手元には出ておりません。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 本年度の国民所得の見込みは二兆九千三百億だつたかと思います。それが結果においていかになるかということにつきましては、ただいま調査中でございます。二十五年の国民所得はどうかという問題につきましても、今安本の生産局長は三兆一千億程度と言われたようでありますが、われわれはまだその点について研究いたしておりません。いずれ早い機会に調査して発表することになると思います。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大体お役所というところは隠すのがすきであつて、われわれ議員や民間人には表へ出さぬという悪いくせがある。しかし十五箇月の予算を組んだというからには、必ず基礎ができていなければならない。それがここに出ていないということは変じやないですか。今のような答弁は委員会をばかにしておる答弁だと思う。私は前からそういうことを委員長にお願いしておる。
  182. 青木孝義

    ○青木国務大臣 決してばかにしておるわけでも何でもありません。まじめにお答えを申し上げておりますもそれは先ほど申し上げましたように、大体来年度の推定が三兆一千億くらいになるじやないか、しかし今なお検討中でございますので、正確な数字が申し上げられない。こういうことでございます。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣は自然増收によつて十三億もよけい増税しようというようなことをやられておる。そういうときに基礎的な数字が出て来ないことはない。そういうのは官僚の逃げ口上にすぎない。委員長はこの委員会の冒頭において、委員会の名誉と権威にかけてやるということをおつしやつてつた。それで吉田総理大臣に対してすらもあなたは御出席を懇請しておつた。そういうような状態であなたはこのままお過しになるか。委員長の責任において今の数字を言わせてください。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 今年の国民所得がわからなくて自然増收ができるかというような御意見でございますが、何も国民所得の正確な発表がなければ自然増收ができないということはございません。勤労所得についての課税の実積から自然増收は計算できるのであります。しかもまた、御質問にないかもわかりませんが、来年度の大体の大綱をきめる場合に、来年度の国民所得がはつきりきまらなければ予算の大綱はきめられぬというのはあなたのドグマでありまして、予算をきめますときに、何もそんなにはつきりしたものかなくても、たとえばシヤウプ博士におきましても、来年度の大体の租税收入の計画をこしらえましたが、そのときに二十三年度の国民所得に対して二十四年度は五割、二十五年度は一割増しという前提のもとにこの予算を立てられておるのであります。何もはつきり来年度の国民所得が幾ら幾らときめらなければ、予算の大綱ができぬというものではないのです。ただ私としては大体の見当はつけておりますが、まだ来年度の予算案ができておりませんので、正確な数字は申し上げる段階に至つていないのであります。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のお答えは私は実に乱暴なものが含まれておると思います。今年の一割増しくらいで見当をつけて、それで大体の骨格をつくつておる。それによつておそらく課税の標準が出て来るだろうと思うというようないいかげんなことでやられていいのですか。あるいは大蔵大臣は今年はまだできてないと言われるが、あなたは営業関係の所得税を百九十六億減らすと言つてここでいばつておられる。それは課税所得が減つておるからそういうことを言われる。課税所得の算定には国民所得の算定を当然やらなければならない。これは生産指数や物価の上昇をかけて当然出て来ると思う。それが出ないというのはどういうことですか。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度が一割程度増加するだろうということは、シヤウプ博士の意見でございまして、私の意見ではございません。よくお聞き取り願いたい。しかしてまた源泉課税の所得がふえ、今までの課税の実績からいつて、申告納税の部分が減るだろうという見通しは、何も国民所得の全体がきまらなければ計算できないものではないのであります。国民所得と課税の限度は相当の因果関係はございますが、絶体的なものではないと私は考えます。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 絶体的な因果関係はないけれども、相当の因果関係以上の関係がある。課税所得だけは算定して——ほかの業種はどうなつておるかわからないのに、課税所得だけぶつかけてよいのですか。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得全体のうちには勤労所得の増加もありましよう、あるいはまた法人所得の増加もありましよう、また農業所得の増加もありましよう、しかして営業所得のある程度の減少を見込まれることもありましよう、それが全体として出なければ、それじや予算は出ないか、こういうことになると、まだ今年の国民所得は十一月、十二月が残つておる。それでも私は今までの経験から、大体の勘で申告納税ができておるのです。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 実積はまだ年度が経過中だから残つているにきまつておる。しかしあなた方は補正予算をお組みになつたからには、そういう再検査、再調査をしておるに違いない。十五箇月の予算を組むからには、骨格は千億程度くらいのものはできていなくちやいかぬ。それがなくて勘でやると言われるのですか。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 調査中でございまして、私の大体の気持はわかつておりますが、まだ申し上げる段階に至つてないと言うのです。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば大体本年度の国民所得は二兆九千億よりも上まわるか下まわるか、その辺の輪郭でもお聞かせ願いたい。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 調査中ではつきり申し上げられませんが、大体二兆九千三百億程度だと考えております。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣も御案内のように、日本経済は安定ではなく、停滞しておる。それで実効価格はずつと下つておる。しかも失業その他の率が多くなつておる。あなた方は一般の勤労者の源泉課税の趨勢から見て、勤労所得の源泉申告分をふやしておる、そういうふうに言つておるが、はたして二兆九千億であなたはいいと思いますか。われわれの考えでは、これは正確な数字はないけれども、現在の経済状態ではむりだと思う。去年に比べて三千百億の所得税をあなた方はおつくりになつておる。あのときに非常な重税であるということを私たちは言つた民自党の内部でも重税であると言つてつた。そこにおられる上林山君はあなたの前で言つておる。あなた方自体も国会が終るやいなや六百億減税すると言つておる。その基礎になつておるのは二兆九千億の国民所得の数字である。それをそのままをやつてつていいか。私らに言わせれば、あの二兆九千億の基礎ですら相当警戒しなければならないものがあると思う。どうしてかと言えば、あの国民所得の基礎には、大体減価償却分というものはほとんど入つていない。資産再評価をやらなければならないということは、減価償却をやつて再生産をやらせるためにやるのだ。それが昭和二十年以来ずつとやつていないというのはどういうわけか。その償却分がどのくらいあるか。おそらく二、三千億あるだろう。それが入つていない。あるいは災害によつてやられておる国土の磨滅すらも入つていないのみならず、今算定しておる国民所得の基礎というものは大体昭和二十一年の数字でやつておるらしい。しかもあれは増加所得税をとつたかなり富裕な階段のサンプル調査を基礎にしてやつた数字であるらしい。物価が上つて補給金を撤廃した、公定価格が上つたとかというような名目的な価格の値上りがあつて、実質的に国民所得はふえていない。そういうインフレの架空的な数字が膨脹し、そういうものを基礎にして二十一年のものができ、それに何割々々という生産指数や物価の指数をかけて今のが出ておる。そういうことから今の二兆九千億は国民生活の実態からいうと、それよりもはるかに低いものでなければならない。たとえば一千二百円收入の者は、昭和五—九年においては所得課税はされなかつた。この一千二百円は時価に計算すると三十万円以上に該当する。昭和五—九年にはエンゲル係数は幾らかというと、食糧は三十何パーセント、今はそれが五十幾らである。生産自体は半分以下に下つておるということはわかつておる。それなのにインフレのあぶくを基礎にした二兆九千億のものをもつて、はたして国民所得として表に出していいか、大蔵大臣の信念を承りたい。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得の計算につきましては、いろんな方法がありまして、なかなか困難な問題でございます。一朝一夕に過去からずつと統計をとらなければ国民所得は出ないのであります。シヤウプ博士の来られましたときに、一応この問題について検討を願つたようでありましたが、私の見るところではさじを投げられたようなかつこうになつておる。そうして二兆九千三百億円というものがどうかという問題になりますと、それはお話通り前の内閣、その前の内閣ごろから今の名目的の国民所得を出した。これがいいか悪いかということは御検討なさる必要がありましようが、大体国民所得というものはいいかげんだ、と申してはいけないが、一定の仮定のもとに立つてつておるのであります。これをいかに考えるかということは大きい問題である。従つて課税の自然増收の見込みというものは、国民所得と直接密接不離の関係とは私は考えていない。これは参考にはなりましようが……。そういう意味において、あなたが今おつしやるような名目的な国民所得をどうするか、こうおつしやるならば、何もそういうものを土台にしなくても自然増收は見込まれるということになると思うのです。
  195. 水谷長三郎

    ○水谷委員 関連して質問をいたします。池田国務大臣にお尋ねしますが、国民所得は前の内閣、その前の内閣からやつたということを言われますが、わが国において国民所得が予算総会において問題になつたのは、日本が中国と事を構えて税金もうんととらなければならぬようになつてからです。税金をこれこれとる。そうして国民所得と税金との比率を出して、まだ日本の税金はよその国に比べてパーセンテージがこれだけ少いのだというぐあいに、税金をよけいとるための水増しの国民所得なんです。これがいわゆる国民所得を議会で論議された元祖であることは、あなたはそのときの、主税局におられたことだから御存じであろう。問題は日本のこれまでの財政の欠点というものが、今年度において税金をなるべくとらなければならない、今年度の予算は何ぼにしなければならぬということを先にきめて、それに見合うように水増しの国民所得をやつて来たのが、今日の日本財政、税制の一番大きな欠点だと思う。そういう大きな欠点をそのまま伏せておいて、相もかわらず今日においてもなおかつ国民所得をきめないで、税金を何ぼとつてもよい、あるいは予算も何ぼ組んでも組みほうだいだというあなたの考え方は、根本的に間違いだと思う。あなた方が官僚時代に、中国と事を構えたころに発明された国民所得を、前の内閣、その前の内閣からやつたというふうな白々しいことを言うのには私は反対です。その点をはつきりさせてもらいたい。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得の問題については、御承知のように昭和十年に全国的に大調査して調べました。その後における国民所得の問題は、第三種所得税の増加ぐあいによりまして、推定いたしたのであります。昭和十五年の中央、地方を通ずる税制改正のときに、堀切税制委員長はこれに非常に苦心せられました。しかしほかに資料がないので、所得税の増加割合で国民所得を推定しておつたのであります。しかしこれでは非科学的だからというので、昭和十六、七年ごろから計算方法をかえて行つたわけであります。もちろん国民所得に対して何割というようなことは言つておりますが、アメリカの国民所得の増加方法にしてもいろいろな方法があります。最も発達しているイギリスにおいても相当方法があります。それでかけ出しの日本国民所得の計算が、実態に沿つているとはつきり言うこともなかなかむずかしいが、できるだけ沿うように調査はしているのであります。しかして今年度の国民所得の見通しいかん、あるいは来年度の国民所得の見通しいかんということは、調査中でございますから、しばらくお待ち願いますと、こう言うのでありまして、何も否定するわけではございません。
  197. 風早八十二

    ○風早委員 今国民所得の計算が問題になつているわけでありますが、今日は幸いに統計委員会委員長の大内博士が来ておられますので、私はまず大内博士に伺いたい。今政府は盛んに国民所得は目下検討中で、はつきりまだ言えないと言われますが、その基礎は国民所得算定の一つの大声きな基礎になつている生産指数、それから国民生活水準の指数というものが、おそらく問題になつているからだと思うのでありまして、この点について私は大内博士に伺つてみたいと思うのであります。これはもちろん何も統計の技術的な問題でどうこうということを論議しようとしているのではないのであります。これはまつたく政治の問題として聞きたいのだということをあらかじめ御了承願いたいと思います。今日生産水準、生活水準というものが国際的にも問題になつている。ことに生活水準についてはソーシヤル・ダンピングということが言われている。たとえば今回あのフロア・プライスを撤廃したことによつて、イギリス側からも猛烈なソーシヤル・ダンピングの声が起つている。またアメリカあたりでも一般に日本の生活水準、低賃金が問題になつている。先般も鮎澤さんがアメリカに行かれまして、アメリカで日本とドイツとアメリカとのハーモニカの値段を比較しておりましたが、全然同じ品物でア、メリカが最も高く、その次がドイツだが、日本のハーモニカの値段はそのドイツの半分以下だ。それはなぜかということを鮎澤さんが聞いたときに、それは日本の低賃金のためだというように向うの者がみな言つている。至るところで日本の低賃金、低生活水準ということが問題になつている。そういう際でありますから、日本の生活水準、またひいては産業水準というものが一体どこに置かれるのか、日本の復興にとつて大事なことであるが、この点が非常に問題だと思うのであります。大内博士に伺いたいことは、今回八月に、今までの統計方式を突如としてラスパイレス式に改められたということの意味であるが、この点が国民にもはつきりし、また政府自身にもはつきりいたしますれば、今マの国民所得の算定の問題も、おそらく非常に早く片づくと思うのであります。大体この予算委員会において予算審議をするのに、国民所得が出ていないというような体たらくでは、まつたく世界的にも恥さらしである。この委員会において、もう最初から国民経済の実態に関するあらゆる資料をちやんとそろえて、これをわれわれが頭に入れて、その上で政策についての議論をして行くというのがあたりまえであるのに、全然逆になつている。ここであらためて国民生活水準を云々するということがわからない。こういう状態でどうしてわれわれが予算の審議を進行することができるか。そこで新しい統計委員会委員長である大内博士から、蒙を開くという意味において伺いたいのであるが、まず今度統計をかえられて——今までわれわれ戰前の水準から見て、平均しましてもせいぜいまだ六〇%ぐらいにしか達していないと考えられていたのが、突如として、六月現在ではすでに九四・二%にまでなつているということを聞かされる。こういつた妙なからくりは一体どこに問題があるのか、こういう点についてひとつ伺つておきたいと思います。
  198. 大内兵衛

    ○大内政府委員 私は統計委員会委員長として御答弁申し上げます。という意味は、私の答弁を許されている範囲以外の政治的なことはまつたく知らないからであります。  ただま御質問はいろいろあつたかと思いますけれども、具体的な御質問は、日本の労働者に関係のある生活費の調査について、最近何ゆえにラスパイレス式というものを採用したかということのように聞えましたが、結局ラスパイレス式のものが一番今のところりくつに合つていやしないかということで、ラスパイレス式のもので計算してみればこのくらいのものになるということを示しただけであります。大体戰前の国民一般の生活内容、すなわち食べるもの、着るもの、あるいは住居に要する費用等、それらと今日のものとを比較することができない状態にあります。と申しますのは、單にその間にインフレーシヨンがあつて、その価格が非常に変化しているというだけではありません。米はともかくといたしましても、同じ木綿といい、同じタバコといい、その品質は全然異なるのであります。それから生活の方式がすつかりかわつておるのでありますから、戰前の生活水準と、今日の生活水準とを統計的に比較することは、絶対にできないのであります。従つて今日そういう問題について使い得る日本の統計は、戰後のものだけを比較することが可能なのであります。しかしどうしてもおよその見当を少しくらいつけてみたい、何とかしてつけてみたいというのがだれでもの希望でありますから、そういうものをつなぐ方式はないかということを、いろいろ世界の標準に従つて調査したわけでありますけれども、いい方法は絶対にないのであります。今日発表されておるのはどれも不完全であるが、こういうのがその不完全な中では少しくらいいいのではないかというだけの話であります。でありますから、先ほどのお話の数字は、私はちよつと違つてはしないかと思うし、あるいははつきり私自身覚えておりませんが、そんなに大きな違いが出たとは思つておりません。しかしいずれにいたしましても、その数字を使つて何かを主張することは、それだけでは決してできないのであります。ただそれがある主張をする、ある議論を立てる一つの御参考までに、数字をつないでみればこういうふうになる。こういうつなぎ方が一番今日のところではりくつに合つているだろうというだけであります。もう一度言いますと、今日の統計と戰前の統計とを生活費について比較することは、統計では不可能であります。統計以外のことでお読み取りを願う以外にはないのであります。それだけお答えしておきます。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の大内委員長言葉でもわかるように、戰前と戰後は比較できないかもしれないが、しかし戰後の昭和二十一年を基準にしてサンプル調査をやつたあの国民所得というものが基礎になつて、それが雪だるま式になつてふえておる。しかしその中には減価償却がおそらく数千億入つていない。あるいは国土の磨滅、その他がおそらく数千億入つていない。そういうものを入れないで、こういう名目的なインフレの圧迫下にある国民所得を基礎にして、税率が算定されている。それが課税所得に影響して、今の重税の根本原因になつておると私は思う。従つて公正な課税をやろうと思つたら、ここから改正して行かなければ、公正なる課税はできない。大蔵大臣は二十一年にやつたサンプル調査は、比較的高い水準のものを基準にしておる。それを修正するとか、あるいは国土の磨滅、償却費を検討される御意図はないか、それがなければ、国民所得の正鵠は期し得ないと私は思う。大蔵大臣の御意見を承りたい。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得の計算は、先ほど来申し上げておるように、なかなか困難なことであるのであります。わが国産業等を論じます場合に、統計が不備であることは内外ともに認めておりますので、できるだけ統計の拡充をはかりたいと思います。しかしお話通り、今国民所得の適正なる計算方法をきめて、それによつてでないと減税操作ができないということになりますと、いろいろな施策ストツプしてしまいますので、今後の問題として検討いたしますが、ただいまのところは今までの通りでやつて行くよりほかしかたがないと考えております。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば次を伺います。具体的な数字を伺いたいと思うのですが、最近の数字による税の收入状況は一体どうなつているか。それから現在までの滞納額は租税別にどの程度今あるか。三番目に加算税が実は業界の重大な問題になつているが、どの程度の加算税が今あるか、この数字を伺いたい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 納税成績は予期以上によろしゆうござしいます。滞納額並びに加算税額、あるいは最近の納税の金額につきましてはいずれ調査いたしまして御返事申し上げます。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先ほど申しましたように、私は主税局長その他関係局長の出席を前から要求しております。従つて予算委員会の席上でその数字が発表できないことはないと思います。委員長からひとつ御警告を願います。政府はいつでも調査させるといつて逃げております。
  204. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 中曽根君に申し上げます。ただいま大蔵委員会に御要求の政府委員が出席しておるそうです。後刻取調べて大臣より報告するということでありますから、御了承願えませんか。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば今日の委員会で後刻報告するということにして留保いたします。  次にもう一つ伺いますが、大蔵大臣は営業関係の申告課税分を百九十六億でありますか、これを減税すると言われております。これはまつたく同感であります。しからば営業の中にも農業その他がありますが、その内訳をこの際お示しを願いたい。     〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕
  206. 池田勇人

    池田国務大臣 最近の租税收入は十月末の租税收入が二千二百七十一億八千三百万円でございます。予算は御承知の通り五千百四十六億六千万円、従いまして四割四分二厘入つております。前年の十月末の状況はこの四割四分二厘が三割一分二厘に相なつております。滞納につきましては御承知の通り相当の金額に上つてつたのでありますが、七月、八月、九月、十月四箇月間に滞納の特別調査をいたしております。今なお進行しておりますが、それが非常に動いて来ております。  次に百九十六億の申告納税の減の分は多分農業が七十八億、営業が六十七億、その他の分が五十億だつたかと記憶いたしておりますが、これまたもし間違いがございましたらあとで調べて訂正いたします。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 営業関係の申告課税を減らすことはまつたくわれわれ同感でありまして、われわれが地方へ行つて一番陳情を受けるのはこの問題であります。その点については私も政府に敬意を表する次第であります。  その次にお伺いいたしますことは、来年度の財政計画をやる上について、資産の再評価が当然考慮に入れられると思うのであります。そこで資産の再評価をどのようにやるかということが来年度の物価水準であるとか、あるいはその他の問題に響いて参りますので、この前私は四月の議会に大蔵大臣にお尋ねしたら、物価は上げないようにして資産再評価をやるとお答えになつた。しからば物価を上げないようにして、どのように資産再評価をおやりになるのか、この前の議会以来の問題ですから、大蔵大臣にまずお伺いいたします。
  208. 池田勇人

    池田国務大臣 資産再評価の問題は、物価の問題にも影響いたしますので、今その程度につきまして検討を加えております。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣はかつてに簡單にほうり出しますが、しからば一つ一つについてこまかくお尋ねいたします。資帳、再評価の問題で一番大きな問題は、これを任意でやらせるかという問題、強制的にシヤウプ勧告案程度やらせれば、相当な打撃が収益の上つていない企業にはある。これを任意でするか、強制でするか、その一点をまずお伺いいたします。
  210. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士は勧告におきまして、ユニヴアーサル——普遍的にやりたいというふうな言葉使つておられます。あの勧告書には強制的という字もあつたかと思いますが、私はその後検討の上、全部についてやつていただくようにしたいと思いますが、その程度につきましては、ただいま業種別に調べまして、一定の標準を設けて行きたいと思います。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 業種別に程度をおきめになるというお話ですが、それは調整係数までも業種別に行われるという意味ですか。
  212. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知の通りに、各企業の種類によつて違いますので、どの程度の倍数を使つたらいいか、最高の倍数はきまつておりますけれども、業種別にどの程度の倍数を使つたらいいか、それを調べて達観的にどういうふうな方法をとるか。全般についてやつてもらうが、あるいは最高倍数は何割のところでとどめるようなことにしようかぐらいに考えております。しかしまた各企業の実態を今調査中でありますので、この標準については申し上げる段階に至つておりません。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これを強制的に、全面的にやるということは、これは物価に相当な影響が行くだろうと思います。従つて大蔵大臣が四月の国会で私に答弁なさつたことを実行しようと思えば、これは当然調整係数を設けて、企業によつて、経営実態によつてかえて行くという措置をおとりにならなければできないと思う。そのことを私は希望しておきます。  それからそのことに関連しているのは陳腐化の程度の問題。この陳腐化という言葉はシヤウプ勧告にはあまり触れておられない。しかしこの点によつて企業いろいろ関係があると思う。しからばこの陳腐化の評定というものをどの程度にやるか。国際水準によりてやられるのか、あるいは国内水準によつてやられるのかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  214. 池田勇人

    池田国務大臣 今の陳腐化の問題が再評価の倍数に影響いたすのであります。それは企業の見通しと各般の條件を勘案いたしてきめたいと思います。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の抽象的な御答弁では、私はその意図せられるところまで推測できないのですが、企業の状況によつて、各般の情勢によつてやると言われるのですが、陳腐化を見込んでやるのか、あるいはやらないのか。池田大蔵大臣のその方針をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 同一企業によりましてもある程度の差があるのであります。しかしてこういう問題は重要な問題でございまして、政府としても十分検討した上で発表した方がいいと思いますので、ただいま発表を差控えているのであります。ただ問題は、全部にあの倍数で強制するということは考えておりません。
  217. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば、来年度この資産再評価、によつて税金をとることになつておりますが、あの六%を三%にして、あと一・五%ずつにわけるという構想をそのまま維持されてやるのであるか。それから来年度どの程度の税收をお見込みになりますか。
  218. 池田勇人

    池田国務大臣 税率の問題につきましては、初年度三%、次年度、その次の年度一・五%ずつとシヤウプ勧告に乗つかつて行くつもりでありまして、来年度の收入につきましては、今陳腐化の問題、倍数の問題を検討しておりますので、正確な数字を申し上げるわけに行きません。  もう一つ質問があると思いますから、前もつて申し上、げておきますが、三年間で納まるかということでありますが、これは少し延ばすつもりであります。
  219. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 個人の資産再評価について、何か特例を認めるような措置をおやりになりませんか。
  220. 池田勇人

    池田国務大臣 個人の再評価について特例を設ける必要があれば、特例を設けます。また法人と同じようにやつてよければ、同じようにやる、これも検討中であります。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 特別資本金の処置について業界からいろいろ注文があるようですが、特別資本金の処置をシヤウプ勧告のようにやるつもりか、あるいは日本の現在の企業実態に即応して、あの勧告に修正を加えるおつもりであるか、その点をお伺いします。
  222. 池田勇人

    池田国務大臣 特別資本金の処置というお言葉がわかりませんが、どういうお話でありますか。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 積み立てておいて手をつけさせないということをどうするか。
  224. 池田勇人

    池田国務大臣 一定年間積み立てておく考えであります。
  225. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一定年間というのはどの程度の年間ですか。
  226. 池田勇人

    池田国務大臣 やはり陳腐化の問題、税収の問題等とにらみ合せて決定いたします。
  227. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に金融問題について銀行局長がおいでになりましたからお伺いいたします。金融制度の改革ということが論ぜられておりますが、最近関係方面の意向としては、アメリカ的な金融制度に改革して行く、銀行に関する方もそのように修正して行くということが報ぜられております。つまり、たとえば勧銀を商業銀行にかえるとか、あるいは長期資金については証券会社をつくつてやる、銀行によつてはやらせないそういういろいろなことが言われております。その金融制度の改革について銀行局長はどのような御方針であるか。具体的な問題はこの間ちらつと新聞に出たように、まず第一は、融資額の制限を個別的にやるかやらないかという問題、その次は預金の支拂い準備金制度を銀行にまかせるかまかせないかという問題、その次は銀行の資本構成あるいは投資の分散というものを、現在のものを修正するか、修正しないか、こういう問題について銀行局長の御見解を承りたいと思います。
  228. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 お答えいたします。金融制度の改革につきましては、御承知と思いますが、昨年の八月に関係方面から非公式に金融機構の改正の試案というものが提示されましたが、これは日本的の実情に沿うように金融機構を改正するための一つの参考意見として提示されたものでございます。その後いろいろと研究をいたしておりますが、最近の一応の結論といたしましては、日本の金融制度全般を、全面的に外国の例に従つて改編するというようなことは適当でなかろうという考え方に大体なつてつております。これを具体的に申しますならば、たとえば連邦準備制度というようなものを、日本にそのまま当てはめて行くということは、適当ではなかろうというような考え方にかわつて来ておるように考えるわけであります。しかしながら現在の日本の金融機構には、日本の実情に即しまして適正な改編を加えることは、別途に必要な点が相当あると思うのであります。そういう感覚で現在あらためていろいろと検討をしております。その中間的な結論といたしましては、まず銀行でありますが、この銀行というものは預金を吸收することを主とする、それから融資の面につきましては、できるだけ資産の構成に流動性を持たせまして、いわば短期の商業資金をまかなうことをもつて、その主たる使命とするというようなことになると思うのでありますが、一面それでは長期の設備資金その他の調達に十分でありませんから、その面に関しましては、たとえば日本興業銀行を中心にさらにこれを育成することであるとか、あるいは日本の実情に即しますようなモルゲージ・バンクとでも申しますか、不動産金融機関あるいは不動産銀行とかいうものを、今後育成して参りたいというように考えておるわけであります。なおその他農林中央金庫、商工中央金庫というようなものにつきましても、昨年の夏ごろの考え方といたしましては、こういうものの本質をも考え直さなければならぬのではなかろうかというような意見もないではなかつたのでありますが、今日のところでは、そういうような問題につきましては、大体現状を中心にして所要の変更を加えるというように考えておるわけであります。  それから最後に三点をおあげになりましたが、しからば銀行法の改正において融資の制限をどう考えておるかというお話でございますが、この点は現に研究中でありまして、これらの点も、一人の貸出し先に対する制限を非常にきゆうくつにするというようなことを、今ただちに実行することについては、ある程度考えなければならぬ点もあるのではなかろうかと思つておりますが、この点は私ども事務当局の現在の気持としては、それらの問題をも含めました銀行法の改正案というものを、次期通常国会に提案いたしたいと思いまして、準備をしております。それから次の支拂い準備制度でございますが、これは先ほどもちよつと申し上げたように、連邦支拂い準備制度を中心にされておるものでありますが、先ほど申しました通り、何も外国の例をそのまま当てはめるということは適当でもないと思いますので、現在の私ども事務当局の考え方といたしましては、これを取上げるにしても、その時期は尚早であるというふうに考えております。それから投資の分類その他についての考え方でございますが、これは今のところまだはつきりとした研究はできていないような状況で、鋭意勉強いたしておるというような状況であります。
  229. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう少し伺いますが、われわれが一番関心持つているのは長期資金であります。アメリカと日本は国情が違いますし、資本も少い。こういう考えから日本の長期金融機構というものは、独特の発達をして来ているだろうと思うのです。それで勧銀あたりが商業銀行にかえられるということは、相当農業その他の方面においては痛手が来ておると思うのです。それでこの間池田大蔵大臣は、債券発行会社をつくるというような構想を漏らされた。やむを得ない措置であろうとわれわれは考えておる。この間お漏らしになつた内容は、五十億の来年度の住宅資金を引当てにして、それで運用させるというようなお話であつた。しかし住宅だけがそういう恩恵にあずかるということはへんぱであつて、ほかの農業であるとか、あるいは中小企業であるとか、漁業であるとか、そういう全面的なものについても、債券発行会社をつくるならつくらなければいけないと私は思う。現在の興銀を育成することもいいが、それだけでは足らぬ。やはり関係方面のそういう改正が行われるならば、当然農業あるいは中小企業その他に関する債券発行会社もつくらなければならない。大蔵大臣の御見解を伺いたい。
  230. 池田勇人

    池田国務大臣 御説の通りでございまして、農林中央金庫の出資金四億円を八億円にいたしまして、二十倍の債券発行をする、また商工中金が一億二千万円の出資金でありますが、これを五億円にいたしまして、これまた二十倍の発行にいたします。こういうような方法を講じたいと考えております。
  231. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一つ承りたいのは、マーケット・オペレーシヨンを大蔵省が盛んにおやりになつておる。これはある程度成功しているだろうと思う。しかし国債の保有もこれでだんだん少くなつて行く。特にわれわれが関心を持つているのは、現在日銀が持つている国債は約八百一億、預金部が五百十二億、市中銀行が八百十二億、この程度持つておるということをわれわれは聞いております。ところがどの国債を買い上げられるかということが、相当産業金融界に響いて参ります。日銀のものを持つて行けば收縮するでしようし、そうでなければ通貨が出て来るでしよう。今後どういう方針でマーケット・オペレーシヨンを進められるかということが一つと、それから国債が将来漸次なくなつて来た場合に、その対象としてどの程度のものまで手を出すか、預金部の金もそういう方面に流用できないか、大蔵大臣にお尋ねいたします。
  232. 池田勇人

    池田国務大臣 だれが所有しております国債をます消化するかという問題につきましては、金融梗塞を起さないように、できる、だけ産業発達に寄與するような方法で、国債償還に充てたいと考えております。なお復金債も御承知の通り千億円近くあつたのが、今年度内でなくなります。従いましてまた来年度の見返り資金も、相当国債の償還に充てるような考え方も起つて来ると思うのであります。従いまして、これが対策といたしましては、長期資金を増資によつてまかなつたり、あるいは社債の発行でまかなう方針で今やつておりますので、そういう方面も市中銀行が社債を引受けたりなんかするようになつて参ります。従いまして市中銀行の引受けました社債につきましては、国債と同様に日本銀行の見返り担保になる制度を施行しておるのであります。今後株式の方面につきましても、日本銀行がマーケツトーオペレーシヨンの対象にすることに相なつて来ると私は考えております。
  233. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 株式の方まで対象にするというならば、しからば時期的にいつごろからおやりになる御予定ですか。
  234. 池田勇人

    池田国務大臣 日本銀行が直接に株式担保に出すか、あるいは他の金融機関を通じて出しますか、こういうことはそのときの情勢考えなければなりません。御承知の通りに明治時代におきましても日本銀行発券見返り制度のときには株式も入れておつたのであります。そういう時代が来ると私は予想いたしております。
  235. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 金融問題で最後にお伺いいたしますが、今年の四月の議会で、大蔵大臣は、本年度の設備資金が大体千四百億程度であると言われた。これはその程度までできないだろう、こういうことを追究したのです。実際今われわれが調べてみると、本年度の設備資金は、今後見返り資金がかなり出たとしても、おそらく八百億から九百億程度ではないかと言われている現在、設備資金を年末までにどの程度まで出せる見込みか。それが本年度の産業活動にも響いて来る問題であると思うので、大蔵大臣にお伺いします。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 当初予定いたしておりましたいわゆる資金計画が、貯蓄の増加が案外よかつたので、五月以後毎月百億円以上が貯蓄されておりますので、産業資金の方には相当出ておるのであります。しかし長期資金につきましてどうかという御質問でありますが、まだ年度中途ではつきり申し上げられませんが、相当出ることを期待し、また産業の現況から考えまして、できるだけ出したいと思つております。
  237. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私はある資料に基いて、おそらく八百億か九百億ではないかという数字まであげて大蔵大臣に言つておる。大蔵大臣として今後見返り資金がどの程度に出るかという目途を立てて、本年度末までにどの程度出るかという大体の概数を示されたい。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 長期の資金、設備資金の経理はなかなか困難であります。従いまして、幾らの金額になるということははつきり申し上げられません。見返り資金の使用につきましては、ほかの機会で申し上げておきましたように、ただいままでに関係方面に出しておるのが二百億足らずでございます。われわれの手元に百億ばかりあるのであります。今後も出て参りましよう。そういう場合には、関係方面へただちに送付いたしまして、できるだけたくさん今年度内において出すことを期待いたしておるのであります。期待するというよりも、大体ある見通しがついておるのであります。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 農業金融の点について稻村さんからいろいろ御質問かあつたのですが、われわれが今一番心配しておるのは、農業金融であります。大体農業団体その他が要求している額は二百三十億程度だと言われている。しかるに最近出て来ている情勢をみると、見返り賛金が二十数億というのも、割当はもらつたがまた出ておらぬ。しかし実際問題として、今農村関係がどれくらい預金をしておるかというと、郵便貯金その他系統外に貯金しておる部分だけでも六、七百億あると言われる。農業団体が系統の機関に預金しておるのが九十数億あると言われる。そういう大きな預金を農村関係が持つておりながら、しかも農村関係に投下される資金は微々たるものである。こういう不均衡を是正されるお考え大蔵大臣にないか、この点をお伺いします。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、農林中金等を中心といたしまして、農業金融をはかりたいと思つております。なお預金部資金でございますが、預金部資金も御承知のように公団の借入金を一手に引受けることになつておりますが、郵便貯金の増加が非常に目ざましいので、相当余裕金がございます。従いまして、二、三百億円の預金部の余裕金を、何とかして農業金融、あるいは漁業金融の方に使うべき案を立てて折衝中であるのであります。
  241. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その次に災害関係について、建設大臣もお見えですから、兼ねてお伺いいたしたいと思います。来年度の災害関係の経費として、約一千数十億でありましたか、大蔵大臣がお出しになつておる。これははなはだ同感するところであります。しかし実際その一千数十億という公共事業費の内訳は、綿密に計算してみなければいかぬ。というのは、来年度から災害関係は全部国庫負担ということになつておるからです。そこで、一体今まで災害関係の経費として国庫負担分がどのくらい出ているか、県費負担分がどのくらい出ておるか、それから県が單独事業でやつておるのが、どのくらいあるか、その数字を建設大臣にお伺いいたします。
  242. 河野一之

    ○河野政府委員 過年度分の災害対策費は、現在残つているものが大体九百億と言われております。県の單独工事の分は大体その一割程度でありまして、合計いたしまして大体千億程度になります。
  243. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 河野さんにお尋ねいたしますが、九百億というのは県費負担分も入れての話ですか。国庫補助金と、県が補助を除外された分を負担してやつておるものを全部ひつくるめて幾らになりますか。
  244. 河野一之

    ○河野政府委員 ただいま申し上げましたのは事業費の総額でございます。
  245. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私の質問していることと筋違いのことをお答えになつておる。私の質問に答えてください。
  246. 河野一之

    ○河野政府委員 九百億程度のうちの二分の二が国庫負担分であります。
  247. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 九百億のうちで三分の二が国庫負担分で、残りが県費負担で、そのほか県負担分が一千億という。ところがこの間うち出て来た災害は、昨年の災害に比べれば莫大なものです。昨年の災害はおよそ八百億ぐらいであるが、今年は千億以上の災害が出て来ておる。あるいはもつと多いかもしれぬ。そういう大きな災害を受けておるのに、県負担分を入れて千数十億ぐらいで足りますか。大蔵大臣に御説明を願いたいと思います。
  248. 池田勇人

    池田国務大臣 既発の災害につきましては、年度計画を立ててやるつもりでおります。われわれえの見た数字は、先ほど主計局長から申し上げた通りであります。
  249. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この災害について多少起債が認められておりますが、来年度の起債は、シヤウプ勧告で言つておるように、三百五十億程度でありましたか、どの程度まで認めるつもりでありますか。
  250. 池田勇人

    池田国務大臣 災害の国庫負担の問題と関連いたしまして、ただいま検討中でございます。
  251. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 シヤウプ勧告程度まで認められるのか、あれを切られるのか。
  252. 池田勇人

    池田国務大臣 これは災害の国庫負担の問題と直接の関係がございます。しこうして災害の国庫負担の問題は、既発の災害についてどういう措置をとるか、将来の分についてのみ国庫負担にするか、将来の分についてのみ国庫負担にする場合におきましても、零細な災害をどの程度に切るかという問題と関連して、それから起債のわくをきめようと思うのであります。
  253. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この災害のために預金部資金を動員して出しておられますが、この利子は幾らになつておりますか。
  254. 池田勇人

    池田国務大臣 災害の対策のみならず、ほかの分で、地方公共団体に御承知の通り二百三十億出しております。なお短期資金といたしまして、年度内償還を計画いたしまして出しておるのであります。利子は大体七分五厘かと記憶いたしております。
  255. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 われわれが聞いておるのは九分四厘ないし九分六厘でありますが……。
  256. 池田勇人

    池田国務大臣 資金の用途によつてつております。詳しくは銀行局長からお答えいたさせます。
  257. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 大体九分五厘を中心といたしておりますが、ものによつて九分まで下げておるのもございます。大体災害関係の分につきましては、できるだけ低利ということに考えております。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大蔵大臣に伺いますが、郵便貯金の利子は幾らになつておりますか。
  259. 池田勇人

    池田国務大臣 二分六厘であつたのが、少し上つておると思います。今正確な数字は私知りません。
  260. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで私は伺いたいのです。災害の金というものは、実は国庫が出してやらなければいかぬ金なんです。県ではとてもまかなえないというので、応急処置として預金部の金を動員して出してくれておる。その金に九分六厘と、いう利子をとつておる。ところが郵便貯金の利子は、大蔵大臣の言われるところによれば二分何厘、だという。これだけの開きを與えていいものかどうか。国家が出してやらなければならぬ金を、一時融通して出しておるにすぎない。その金に九分六厘というような大きな利子をつけておいてはたしていいのかどうか。われわれの聞いたところによれば、今までの赤字を解消するためにこういう高い率をかけておるという。ところが災害を受けた県や町や部落というものは、普通の県や町や部落よりは、もつと大きな痛手を受けておるので、郵便貯金以下の利子で貸すのは当然です。それをこのように高い利子をつけて貸していいのですか。大蔵大臣の所信を伺いたいと思います。
  261. 池田勇人

    池田国務大臣 災害復旧費を全部国が負担するという前提のもとならそういう議論になりますが、地方が負担するという前提のもとに金を貸しているのであります。しこうして二分何厘か三分前後の金利で預かつて、九分の利子ではその差額が多過ぎるというお話でありますが、御承知の通り今年度におきましては、一般会計から預金部特別会計に三十七億程度繰入れているのであります。昨年度においては四十九億になつております。その後合理化をはかりまして、来年度におきましてはほとんど赤字を出さないようにしても、なお三億円程度の赤字が出ることになると思つております。従つて経費をまかない切れぬ分は一般会計から出しておるのであります。
  262. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 合理化し得ないと言うけれども、災害の面から見ればこれは明らかに合理化にほかならぬ。しかも災害にあつて国家に見てもらわなければならぬのに、あなたはことしの予算を組むときに災害復旧費の七百億を五百億に切られている。われわれの期待に反して、どうしてこのこ百億を切られたか。預金部資金からもつとふやしてよいのではないか。そうして災害民に対する利率を引下げてやるのが国の行政ではないですか。大蔵大臣の今の御答弁は私納得できません。大蔵大臣の御答弁を願います。
  263. 池田勇人

    池田国務大臣 初めの計画通りに災害復旧費は出せなかつたからほかの方で出している。これもまた議論が違うようです。出すか出さぬかの問題です。しこうして郵便貯金の利子は三分程度であるのに、九分で貸すのは多過ぎるとおつしやいますが、銀行の状況をごらんなさい。これを安くすれば今言つたように一般会計からそれだけの差額を出さなければならぬのであります。従いまして、経費をできるだけ節約しまして、昨年度は五十億程度、今年度は三十七億円を補給していると思うので〇あります。これはできるだけ金利の安いのを欲しますが、今経費が非常に高くつくために安くできないというのであります。従つて赤字の分はベースを上げるということでなしに、一般会計の方から繰入れるということになつております。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 運輸大臣がお見えになりましたから、運輸大臣に簡単に二つばかり承りたいと思います。  御存じのように、国鉄が賃金ベースの問題で提訴して仲裁委員会にかかつておりますが、政府はこれに対して上げないというようなことを重ねて言われたのを聞いておるのですが、運輸大臣も上げないつもりですか。仲裁委員会に対して政府はどういう態度をおとりになりますか。
  265. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 中曽根君にお答えします。仲裁案が出てみた上一で考慮します。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 官房長官は調停案に対してこれを拒否した、閣議でもそうきめたと聞いております。しかし仲裁案というものはかなり権威のあるものであつて、行政機関も立法機関も傾聴しなくちやならぬものだろうと思う。その仲裁案が出た場合に、調停委員会に対すると同じような態度をおとりになるのか、運輸大臣個人の御見解を承りたい。
  267. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 調停案と仲裁案にはおのずから差異がありまして、仲裁案が出ましたならば、これは公共企業体労働関係法第十六條二項の規定によつて考慮いたします。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 考慮をしてくれることを期待して私はこの質問を留保します。  次に国鉄の電化の問題ですが、運輸大臣御存じのように、石炭を使うよりも電力を使う方が、はるかに多くの利益を国家に與えると思います。聞くところによりますと、東海道線の電化を第一次におやりになつておられますが、予算が足りないので、東海道線電化の計画に修正を加えられるように聞いておりますが、どういうような御修正を加えられるのか、もしやるとすればどういう線を次に選ぶべきか、運輸大臣の見解を承りたいと思います。
  269. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 電化はまず第一に東海道の幹線から始めまして、それからローカル線に及ぼすという観念に大体なつておるのであります。ところが昭和二十四年度の予算を編成いたすときにも、東海道線の浜松、米原間の予算をとろうと思いましたが、これがなかなか組めなかつた。その後見返り資金勘定の使途について、これを東海道線の電化に全部でなくとも一部分でも向けたいと考えて努力いたしましたが、これも十分の成功を收めるに至らなかつた。しこうして昭和二十四年度の補正予算におきまして、やはり運輸大臣といたしましては努力をいたしだのでありますが、これも不幸にして成功をいたさず、昭和二十五年度の予算編成につきましては、これも大いに奮闘いたしておりますが、目下東海道線を初め、ローカル線の方も九分方成功おぼつかないように考えております。はなはだ残念であります。何と申しましてもこれは非常に大切なことでありますので、目下関係筋と鋭意折衝しております。ローカル線の方は、たとえば中曽根君の選挙区の方の問題にいたしましても、第二次的に、本線をやりましたあとでやるというプリンシプルになつておりますから、さようにひとつ御了承願います。
  270. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 運輸大臣が非常に努力なさつて電化促進をしようとしておるにもかかわらず、成功しないというのは、いわゆる大蔵大臣が金を出さないのか、大蔵大臣の御所見を承りたい。
  271. 池田勇人

    池田国務大臣 国鉄電化の必要性は、運輸大臣と同様に私も感じておるのであります。従いまして交渉の経過は運輸大臣のおつしやる通りであります。何と申しましても見返り資金となります場合は、向うの承認を得なければ借りられない状況であります。しこうして私は見返り資金以外の金で電化をはかろうといたしたのでありますが、なかなかこれもむずかしいのであります。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 鉄道電化会社というような構想が一時新聞に出ましたが、こういうようなものをおやりになるつもりですか。
  273. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 鉄道電化会社の構想は、国家予算においてその資金の調達ができないという面を考慮いたしまして、民間において会社をつくつて、設備を鉄道に貸して運営をはかるという構想でございますが、現在のわが国の電化に関しましては、今われわれが熱望しております割合に、基本的にはたして日本経済の現状において電化相当の金額をもつてただちに実行すべきかいなかという問題に対しまして相当の議論がございますので、従つてこの議論が解消消しない限り、一応の計画は民間においてなされておりますが、実現の可能性は薄弱であると考えております。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に両大臣にお伺いしますが、海事金融の問題でございます。御存じのように二十四年度三十万トン、二十五年度三十万トン、こういう御計画を推進されるのはまつたく同感とするところであります。しかし問題はこういう計画を推進して行く資金の問題であります。この資金のくめんができるかできないか、あるいは高利か低利かということによつて、造船計画というものは大分違つて来ると思う。現在船舶公団について二百数十億の金で今のものをやつているように聞いておりますが、船舶公団は、いずれこれが解消するということを言つております。解消した場合にその金を一体どうするか。合後の海事金融について特別の機関をつくる意思があるか、あるいは外国がやつておるように利子補給を出すとか、あるいはその他の優遇措置を講ずるお考えがあるか、この点を両大臣に承りたいと思います。
  275. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 現在船舶公団をして民間人と共有の形において船舶の建造をいたさせておりましたが、昭和二十五年度からこの制度を撤廃いたしまして、船舶建造資金見返り勘定の方から支出いたし、あるいはまた船舶改Aの修繕費の分も見返り賛金の方から調達をいたす考えでおります。なおまた在来の公団のいわゆる継続施設といたしまして、目下いかようなものをつくつたらいいか研究中でございます。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この海事金融の問題は、造船あるいは日本船の海外進出ということに案外忘れられておる面がありまして、外国においては大臣御案内のように相当な利子を国家予算をもつて補給して、あるいはそのほか格段の優遇措置を講じておる。日本はもちろんこういう環境にありますから、自由にはできないかもしれないけれども、しかし人並程度のこういう措置は講じてもらわなければ、日本の商船隊の再建はできないと思います。具体的にわれわれが今一番関心を持つておる問題は、船舶公団が廃止された場合に今持つておる金がどこへ行くか、あるいは見返り資金がどういう機関を通じて運用されるか、こういう問題で〇あります。われわれは船舶公団が一朝廃止になつたら、それを母体にして何か海事金融のめんどうを見るような機関を、ぜひつくつてほしいと思うのです。それによつて日本の造船を進捗さしてほしいと思う。大蔵大臣及び運輸大臣にこのことを切に私は希望いたしまして、一応私の質問を終ります。ほかの大臣に対する質問あとに留保いたします。
  277. 米原昶

    ○米原委員 ちよつと国鉄電化の問題について関連質問をいたします。国鉄電化については先ほどの説明では少し不可解だと思います。この電化については、ここにおられるところの同僚諸君もほとんど皆異議がないと思います。全国民はほとんど異議のないところだと思うのです。それがどういうわけで電化ができないのか、その点の説明が非常にわからない。明確な説明をしてほしい。私はなぜそういうことを聞くかと申しますと、国鉄電化がそういうふうに進まない点が、先日この委員会で問題になりました単独講和の問題、それから日本の軍事基地化が事実上促進されておるのじやないかという問題と、関連があるのではないかという点について聞きたいのであります。それは何もこの電化の問題ではなく、たとえば国鉄の現在の車両生産計画について聞いたところでも、戰争が終つて平和時代に返つて行けば、三十トン級の車両でなく、十トン、十五トン級の車両の方に生産の重点が置かれるはずである。ところが三十トン級の車両の方が大量につくられておるということを聞いておる。電化の問題にしましても、もしも日本が軍事基地になるということになれば、電化しておれば一ぺんの爆撃で汽車はとまつてしまうわけである。そういう点と関連しておるのではないかということを聞きたい。なぜ電化が阻止されておるか、その点についてはつきりした御答弁を願いたい。
  278. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいまの御質問の前段に対してお答えいたしますが、電化がなぜ早く実現しないかという、最も大きな理由一つは、日本の電気がまだ電化いたすのに十分豊富でないということであります。その他は御答弁の限りではありません。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 樋貝国務大臣に御質問をいたします。警察制度改正の問題について、この前の議会で御存じのように決議案が通過しておる。それに対して政府から答弁書が出ております。しかし私は、実はその答弁書では納得行かない。あなたは相当な意気込みをもつて、議会中も議会後も関係方面にも御折衝に努力をなすつたことは私も知つております。しかし現状を見て、この警察制度でいいとは私らは考えない。樋貝国務大臣は、警察制度についてどういう御構想をなすつたか。どういういきさつでそれができ、今後どういう見通しがあるか、この問題をお伺いしたいのであります。
  280. 樋貝詮三

    樋貝国務大臣 この前の議会で御決議になりましたことに対しては、書面をもつて答弁した通りであります。言いかえれば、兇悪犯罪や多数の犯罪等に対しましては、十分な処置をとつておるし、だんだん強化して参ります。それから警察官の再教育等につきましては、今日各学校及び地方の学校等をもつてこれに当てております。その訓練もますますいたしており、ただいま決議の通り進行いたしております。また科学的な捜査につきましても、各機関を通じたり、あるいは今までの既存の制度を通じましてこれを完備して行く、予算の許す範囲内において着々と進行しておるのは事実であります。それからまた警察制度の改正等につきましては、私どもは現在の制度を固執するわけではなく、それ以上のものを考えなければならぬと思います。ことに地方の今日の状態において、特に財政方面において、経済的にいろいろ問題がありますので、その方面から研究をいたしておるような次第であります。今回におきましては、事務的にも大体十日ぐらいは準備にかかりますことは御承知の通りであります。従つてこの国会には間に合わないだろうと思います。それからたとえば自治体警察等に対しましても、再分配の問題もありましようし、それらの点について考えなければならぬと思います。政治上の関係におきましても、国際的にも国内的にも、非常に微妙な関係に立つておりますために、ただいまどういう構想を持つておるということを申し上げることができないのを遺憾とする次第であります。
  281. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 警察制度改革の重点は、まず第一には、国家地方警察と、それから自治体警察との調整の問題であり、人口五千以上の町村あるいは都市に自治体警察を置いたために、国家地方警察との間にかなりの摩擦があつた。それから財政の負担が多くなつて来たので、地方の市町村ではかかえ切れないで、返上論が大分出て来たはずであるが、これは一体どうなつたか。第二番目の問題は、警察力を増強せよ、警備力の充実という決議であつた。つまり警察官の人数をふやすかふやさないかという問題と、装備をどの程度に強くしてもらうかという問題、これが第二。第三は、国家地方警察をもつと全面的に強化せよ。たとえば警視庁というものを国家地方警察に入れて、特殊犯罪つまり外国人に対する犯罪とか、国交に対する罪であるとか、あるいは特殊の経済犯というものについては、これが地方自治体警察にも管轄権を及ぼし得るような、言いかえればアメリカのF・B・Iのような構想によつた改革をやれ。この三つの大きな問題であつたはずであります。この三つはどうなつておりますか。樋貝先生に率直、明快にお答えを願いたいのであります。
  282. 樋貝詮三

    樋貝国務大臣 国家地方警察と自治体警察との関係ですが、御承知の通り警察が民主的にならなければいけないというような関係から、今日のごとく人口五千人以上の町村において、自治体警察を持たねばならぬということになつておりますが、今日、財政の点において、小さい自治体において一様に困つておりますことは、統計の上でも明らかでありますので、この点に私どもはまず考えを及ぼしておりまして、なるべく経済的再分配をやりまして、この苦しみを除きたい。ことにドツジ博士の考えておつたあの財政そのものが、どういうような影響を持つて来るかということを考えております。その結果によりまして、さらにまた検討しなければならないと考えております。  それから今の警察を増員しようとは考えておりません。内容を充実することによつて、人数をふやすと同じ結果を招来するわけでありますから、たとえば今日において警察官の使用しております自動車とか電話等につきましても、その内容改善ということによりまして、今日の治安に対しましては、十分その目的を達するものと確信を持つております。言いかえれば国内治安といたしましては、あるいは数時間は凶暴な人たに占領されることがあるでありましようが、しかも全国一時に蜂起することはできませんために、今日の状態におきましても十分防ぎ得るものと考えております。のみならず、私ども合法的に発動する力をもつてすれば、ほとんど比較にならぬ力を持つておると考えておりますので、今日においては、別に人を増さぬでも、その内容を充実することによつて目的を達する、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、今日におきましてはわれわれは将来のことを考えおりますが、警察の方面につきましては十分な努力を拂つて行きたい、それができると確信しておりますために、すべての点について別に心配しておらぬ次第であります。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先日来、内閣は朝鮮人連盟の解散の問題であるとか、あるいは学校閉鎖の問題であるとか、えらいすご腕を振われました。法律に沿わないことをやる以上あるいはやむを得ないかもしれませんが、私は、この間も吉田総理大臣に申し上げましたように、東亜民族に対して禍根を残すような刺戟的な政策はこの際やるな、たとえ非行があつをしても、われわれが朝鮮や満州や中国においてやつた非行に比べれば、物の数にならぬのだということを申し上げたのですが、その後警察を中心にして、朝鮮人連盟あるいは学校に対して、どういう処置をおとりになつておるか、たとえば解散をさせるならば、その財産をそつくりそのまま持たして朝鮮まで帰してやるべきが当然で、日本の内地におるからこういうようなつまらぬ騒擾事件が起るのであつて、船に乗せて向うに送つてやれ。こういうことをやつて初めて親切なんだ。学校の閉鎖の問題も同じです。内閣はどういう御処置をおとりになるか。樋貝さんにお尋ねいたします。
  284. 樋貝詮三

    樋貝国務大臣 朝鮮人連盟の問題は、日本に参つた他の民族が日本のためにならぬような行動をとつておるものが一部にありましたことを、非常に遺憾だと思つております。従つて私どもは日本におる間は、日本の治安を維持する上においてやむを得ない必要な処置をあくまでとろうと考えておるのであつて、その発露であると考えておる。従つて好んでああいうような方法をとつたのではないのであつて、ああいう直接行動というようなあるものの手先になつて働くような場合には、将来においても断固としてこれに対して制限を加えたいと考えております。従つて相手が外地人であろうと、あるいは異民族であろうと、ああいうような国内の治安を害するようなものに対しては、今申し上げたごとく将来においても断固たる処置をとりたいと考えております。  それから送り帰すことについては、三十八度以南へ送り帰すのと、以北へ帰すのと非常に効果が違います。たとえば三十八度以北の者を三十八度以南に送り帰した場合には徴兵の関係において、あるいは危険の点において大分影響しますので、その点についても考慮しなければならない。またわが国に対して多大の好意を寄せておる人間で、しかもなおわれわれが違法として取扱わなければならぬ者も存在しておるわけでありますが、それらをどこに帰すべきかということが非常に問題になりますために、考慮いたしておる次第であります。
  285. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 帰す意思はあるのですか、ないのですか。
  286. 樋貝詮三

    樋貝国務大臣 ある者に対しては現に一部の者を帰しておるような次第であります。
  287. 風早八十二

    ○風早委員 ちよつと関連してお聞きします。政府はかつてなことを言つておると思う。朝鮮人を送り帰してやるとか、これから断固として取締るとか言つておりますが、一体朝鮮人は今まで日本でどういう役割を演じて来たか。朝鮮人に対しては戦時中にあの通りあらゆる苛酷な労働をしいておる。鉱山においても朝鮮人が果した役割は、日本の戰争にとつても偉大なものであつた。そういう朝鮮人を戰争が終つたとたんに首切つてしまつて、そのまま選挙権も與えず、税金だけをとつておるのであります。その朝鮮人に対して今回のような朝鮮人連盟解散という当局の仕打ちは間違つておる。われわれはこの朝鮮人が日本において治安を乱した場合、これを取締ることに何ら文句はないのです。しかしながらそれにはやり方がある。今のようにこれをただやつかい者のような頭でやられることはたいへんな間違いだと思う。朝鮮人は決して治安なんか乱していない。われわれはこの少数民族の利益を守るために言つておるのです。われわれがもし朝鮮人の立場になつてごらんなさい。とんでもない話だ。送り帰すといつたつて向うに土地がありますか。家がありますか。長い間日本におりましてさんざん日本のために働いて来た者が、今のような政府のやり方でやられたら困る。大体日本と朝鮮との国際関係の将来をもう少し考えて、こういう処置をやつていただきたい。朝鮮人連盟の解散があつたあと法務総裁に会つたときも、法務総裁は国際関係はちつとも気がつきませんでしたというお話です。そういうことでどうして朝鮮人の対策ができますか。もう少し将来の国際関係というものを大きく考えてやつていただきたい。これから貿易をどんどん拡大しなければならないというときに、朝鮮は大きな市場であります。これと仲よくして行かなければならないのに、ああいう禍根を残してもらいたくない。そういう意味でもう少し政府は国際的な視野から問題を解決してもらいたいのです。さらに朝鮮人の選挙権の問題でありますが……
  288. 植原悦二郎

    ○植原委員長 風早君、御意見ではなく、関連質問なら関連質問をしてください。
  289. 風早八十二

    ○風早委員 選挙権につきましては法務総裁は朝鮮人に選挙権があると思つてつたというお話つた。だからあらためて樋貝国務大臣にお聞きしますが、朝鮮人に今後選挙権を與えるつもりがあるかどうか。納税の義務は課しておきながら、選挙権を與えない。そういう点について選挙権を現在及び将来與える考えがあるかどうか伺つておきたい。私は特に国際的な視野から考えて御答弁願いたいと思います。
  290. 樋貝詮三

    樋貝国務大臣 朝鮮人なるがゆえに差別待遇していることは全然ありません。日本の治安を乱した朝鮮人に対しては、内国人と同様に取締りをいたしますけれども、治安を乱さない朝鮮人に対しては、決してそういう圧迫を加えたことはありません。また選挙権の問題につきましては、私の管轄ではないかもしれませんが、それを適当と考える時期になれば、選挙権をいかなる国民でも與える必要があるならば、與えて参りたいと考えております。
  291. 植原悦二郎

    ○植原委員長 この際先刻の中曽根委員から御質問がありました滞納数字について答弁があります。原税制課長。
  292. 原純夫

    ○原(純)政府委員 九月末の滞納額を申し上げます。五百十七億円であります。そのうち所得税の申告納税の分が二百九十四億円であります。なお追徴税、加算税の御質問がございましたが、最近までの数字が集つておりません。若干時期がちぐはぐいたすので恐縮でありますが、所得税につきましては七月末現在、法人税、相続税につきましては九月末現在で集計いたしましたところが百十七億円に相なつております。
  293. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 滞納についてですが、臨時増加所得税とか、非戰災者税とか、非戰災者家屋税とかのこまかい内訳はありませんか。
  294. 原純夫

    ○原(純)政府委員 恐縮でありますが、手元に資料を持ち合せておりませんので、後刻資料として差上げます。
  295. 奧村又十郎

    ○奧村委員 昭和二十四年度の第一期分の申告納税の滞納額の内訳もお知らせ願いたいと思います。
  296. 植原悦二郎

    ○植原委員長 明二十三日は休日に当るのでありますが、予算審議の重要性にかんがみまして、特に午前十時より会議を開きまして、総理大臣以下各大臣の出席を求めまして、質疑を進めることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時一分散会