○大野
説明員 ただいま御審議いただくことになりました通信
事業復興に関する大綱でございますが、先般お手元に通信
事業復興促進に関する第五国会の決議に対する報告書をお届けいたしまして、ごらんを願
つておるわけでございますので、便宜それを中心といたしまして、御
説明申し上げたいと存じます。
過ぐる第五国会におきまして、参議院において、通信
事業は終戰以来、政府がしばしば言明したにかかわらず、戰災による復旧ははかばかしく進んでないし、従
つて施設もその機能を十分に発揮していない。すみやかに
施設、資材、要員その他万般にわた
つて、企業的な
経営態勢を整備して、早くその本来の安全、迅速をモツトーとする通信サービスを、十分に果すような施策を講ずることとして、その具体的施策の大綱を報告してほしいという
意味の要求の決議があ
つたのであります。もちろんこの決議のございますまでもなく、私
どもとしては当然に、戰災によります通信
施設の機能低下の状態を、一日も早く正常の状態にとりもどすべく、いろいろと努力を重ねて参
つたのでございますが、かような決議をいただきますと、これは実に私
どもにと
つてはありがたい御激励の決議でもございますので、さつそくその線に沿いまして、省内にあらためて各主管局より專門家を集めまして、種々その復興の具体策を検討いたしておりまして、大体その結論となしましたものを、かような册子にまとめたものでございます。
この通信
事業復興の
計画を立てますにつきましては、もちろんこれは本
年度あるいは来
年度といつたような、短かい期間において目的を達成することは、とうてい至難でありますから、どうしてもある
程度長期の
計画とならざるを得ないのでございますが、御
承知のような経済情勢、あるいは国際情勢、国内情勢から考えみまして、長期の
計画を的確に
見通しを立てつつ樹立いたしますことは、決して容易のわざではございません。これはもちろんそのときどきの情勢によりまして、端的に申しますれば、直接関係のあります
予算事情のいかん等によりまして、相当の影響を受けますことは当然でございますれ
ども、私
どもがいろいろと努力をいたして参ります一つの
目標としては、何かさような長期の
計画がなくてはならぬ。かような
意味におきましてこれを考えた次第でございます。
さてその施策の大綱の基本的な考え方でございますが、
郵政事業は御
承知のように、本年六月よりはつきりと
電気通信事業と別の
経営管理主体によ
つて、営まれることになりましたので、その点はきわめてすつきりして参
つたのでありますが、しかしその内容を検討してみますと、
郵便、
郵便為替、
郵便貯金、あるいは国庫金の
取扱い業務をやる。一方におきましては別個の
特別会計と
なつております
簡易保險及び
郵便年金の
仕事があり、さらに
電気通信の
事業は、
事業の、主管省は別になりしたけれ
ども、一万数千の全国に附置されております特定
郵便局におきます
電気通信の
業務は、これを
電気通信省から
郵政省が
委託を受けるという形になりまして、依然として
郵政省において営んでおるというような関係がございますので、その内容は財政的に見ましても、また
経営的に見ましても、非常に複雑なものを持
つておるわけでございます。しかしながらこの複雑なものをそれぞればらばらに
運営するということは、とうていできることではございませんし、また非常に非能率、不経済のもとでございますので、これを一本の
郵政特別会計というものにくくりまして、まず
郵政省の
仕事は総体的に、
郵政特別会計という一本の綱でこれを統括をいたしまして、統一的に
運営をして行くという建前に相
なつておることは、皆様御
承知の通りであります。そういうわけでございますから、この
会計を通じまして一本に統括された内容の非常に複雑な
仕事を持
つております
郵政事業を、有機的、総合的に
運営して、長所をあくまでも発揮して、独立採算を
維持しつつ、
事業を発展させるというところに、まずその後興の基本方針を置こうというふうに考えたのでございます。
それから一つ一つの
事業について考えて見ると、何と申しましても大きなものは
郵便の
事業、
為替貯金の
事業、保険
年金の
事業、この三つにわけられるわけでございます。これは実態的にわけると、そういうふうにわけられるのでございます。
会計的に申しますれば、もちろん
郵便事業は
郵政特別会計の骨であります。また
為替貯金の
仕事は、一部は
郵政会計固有の
仕事でありますけれ
ども、
会計的には大
部分大蔵
大臣所管の
郵便貯金特別会計でございますが、その
郵便貯金の
特別会計から実際の
業務を
運営するに必要な
経費を
郵政特別会計に繰入れ、それ以後は人物、一切
郵政会計の
負担におきまして、これは
郵政特別会計の
仕事として営むという形に
なつておるのであります。また
保險年金の
仕事につきましても同様の関係でございまして、
保險年金特別会計というものが別個にございますけれ
ども、これは
会計的にあるいは計算的に一つの
特別会計に
なつておるのでありまして、
事業の
運営の実際は、ただいま申しました
為替貯金と同様の関係において、
郵政特別会計に統合されておるという状態でございます。しかし
仕事の実態そのものは、
会計的にはさように一諸に
なつておりましても、これにはおのおの特質がございますので、実態的に申しますならば、
郵便の
仕事と、
為替貯金の
仕事と、
保險年金の
仕事と、この三つがそれぞれその特質に即して、最も合理的に、また能率的に
運営されて行かなければならないという関係にあるものでございます。
さようなわけでございますので、
郵便事業につきましては、
郵便のモツトーともいうべき、また
郵便のサービスの生命ともいうべき、安全性、敏速性、確実性という三点を
目標として、この
目標達成の根幹といたしまして、
経営面の刷新をはかり、また合理化、能率化をはか
つて行くことが、どうしても復興の基本方針でなければならず、また
為替貯金につきましては、その簡易、便利、確実な
貯金及び送金の手段としての使命というものを、あくまでもはつきりさせるところに、復興の重点がおかれなければならないことは、申すまでもございません。また
保險年金事業につきましては、これが
保險年金という
仕事を通じまして、一般の社会の人々に対しまして、簡易に利用できるところの生命
保險と
年金というものを、なるべく安い
保險料で提供しつつ、国民経済生活の安定と福祉の増進に資するということが、表面の理由であり、それをさらに裏づけるものとしては、
経営の健全化ということ、あるいは
経営の健全化に相伴いまして、サービスの向上、
積立金の自主的
運用といつたようなところを、復興達成の
目標として
計画を立てて行くようにいたしたいというのが、復興の基本的な考え方に
なつておるわけでございます。
次に
郵政事業復興の施策でありますが、まず昭和二十四
年度をかりに第一年と定めまして、将来五箇年間に、比較的国民経済の安定しておりました昭和五年ないし九年を標準にとりまして、その当時のサービスにもどすということを
目標として、いろいろの
計画を立てるということにいたしておるのでございます。それはここに書きました通り、
事業施設の整備及び戰災の復旧を強力に推進するため、戰災
局舍、狭塩
局舍、老朽
局舍の復旧整備、並びに
事業用の諸設備、機械器具等の設備をはかる。それから
郵便の正確性、安定性を向上するため、事故の予防を強化するとともに、規定の結束、つまり
郵便局で取集めましたものをそれぞれ区分をいたしまして、必要な逓送便あるいは自動車便等にそれぞれ連絡をいたしまして、その連絡からさらに次の
郵便局にそれが届き、
郵便局から配逹にまわされるといつたような一連の流れ作業を、予定のスケジユール通りにや
つて行く。そうしてその
取扱いの間において事故のないようにして行くという点を、一層強化して行くということに
なつておるのであります。
それから
郵便の速度を向上させますためには、
郵便物を運ぶ
施設を整備拡充して行くとともに、取集めをいたしましたり配達をいたします度数を、今少しふやす必要がありますので、前者の目的に沿いますためには、汽車便、自動車便、水路便等の便数をふやす。あるいはその線路を延長する。さらに
集配の
施設を機械化する。機械化すると申しましても、御
承知の通り
郵便は
電気通信と違いまして、比較的人の労力による部面が多うございますので、機械化のおもなる点は、結局
郵便物を運送する、あるいは取集め、配達するという面での機械化でございますので、これは主として車両の機械化、すなわち自転車から自動自転車あるいは、自動車の
施設を、相当幅広くさらに取入れるといつた点に重点が置かれるわけであります。さようにいたしまして、大体考えております私
どもの
目標では、まず
集配度数の問題につきましては、六大都市、その他市制施行地、その他と三段階にわけますと、通常取集めの例をと
つてみれば、昭和六年当時において六大都市が十度、その他市制施行地では八度、六大都市、市制施行地以外の都市では二度の取集めをいたしておりますが、二十四
年度には四度、四度、二度となり、来
年度においては六度、四度、二度とふやし、二十六
年度においては六度、五度、二度といたしまして、二十八
年度においては八度、六度、二度といたそうというのであります。それから配達におきましては、六年の当持においては六大都市、市制施か行地、その他の地域という三地域におきまして、四度、三度、二度でありましたものが、二十八
年度においては三度、三度、二度までは持
つて行こうというのであります。
それから
郵便取扱機関の普及等につきましても、
集配普通局は、六年当時におけるものよりも、戰災によ
つてなく
なつて、現在廃止しておる局のうち、まだ未復旧のものを大体復旧するという建前で行くことにいたしまして、二十七
年度までに大体三局ずつ復旧して行こうというのであります。もちろん
郵便局ばかりでなく、その他の
施設でもそうでありますが、戰災後におきましては、都市の人口状態、あるいは通信力の面から見まして、非常な変動がございましたので、必ずしも
局舍なり通信
施設を、戰争前と同じ状態に設けることが必要でない部面が確かにございました。従
つて率直に申し上げますと、今日におきましては
局舍等から見ますと、かりのバラツク建のものが大
部分でございますけれ
ども、必要な
郵便機関というものは大体復旧いたしておるのでございます。しかしながら都市の復興その他は毎年急速に進んでおります。従
つて人口の集中あるいは経済力の回復な
ども、それふぞれ年々かわ
つて来ております。その情勢に対応して、年々この
程度の
郵便局、
郵便機関、
窓口機関をふやして行こうというのが戰災
郵便局復興の数字でございます。
かようにいたしまして、とにもかくにも
郵便のサービスを向上して行くと同時に、独立採算制を初
年度から徹底させるために、
收入をふやす面につきましてもいろいろとくふうをいたしまして、先般御審議、御
決定をいただきましたお年玉年賀
郵便のごときも、まつたく独立採算制達成のための一つの試みであります。もちろん独立採算制を達成するということは、單に收支のバランスを合せるというだけのことではございませんで、
郵便施設を拡充し、またサービスを向上いたすための必要な
経費をみずからまかなうために、こういう増収対策を立てて行くものであることは申し上げるまでもございません。
なお
郵便の復興というのは、單に将来の
計画を述べただけではございません。もちろん将来のものは
計画でございますが、今日までもだんだんと戰前の状態に復帰する措置はと
つているのでございまして、その一例を申し上げますと、たとえば
郵便におきましては、内容証明及び差出後に請求をする配達証明の
取扱いなどは、昭和十九年の四月以降中止してお
つたのでございますが、これは二十年十一月に再開をいたしました。また通貨価格表の
取扱いは、十九年四月以降休止をいたしておりましたが、二十三年の一月から通貨
保險扱いとして再開をいたしております。代金引換等も、十二年十一月以降休止いたしておりましたが、二十一年一月からこれを復活いたしました。年賀
郵便は
先ほど申し上げました通り、昨年から復活にな
つたのでございますが、そのほか隣組等へ一括配達という戰時中のやり方は、全部今日では改められまして、戸別配達の原則に
なつております。ただ昨今まで何と申しましても
郵便の速度が非常に落ちたという点が、御利用願う国民大衆の各位から非常な御不満を買
つておつた点でございますが、この点も、今年八月から少くとも、主要都市間におきましては、速逹に限りましては特に特別速達の扱いをいたしまして、一定の予定所要到着日数には、必ずあて所に配逹されるというような
制度などをや
つてお
つたのでございますが、最近
郵便のスピード・アツプという点につきまして、相当期待できるような條件も熟して参りましたので、一層これらの点は
改善されるものと期待をいたしておるわけでございます。
なお
郵便につきましては、一言外国
郵便との関係を申し上げておきますが、戰争という一つのできごとによりまして、本来国際的性質を持
つております
郵便がまつたく孤立、立ち切られてしまいまして、非常にきゆうくつな思いをお互いにいたしてお
つたのでございますが、戰後いまだどこにも條約
関係等はできておりませんのに、まつ先に
郵便につきまして国際的な
業務が再開されるに至りましたことは、皆様すでに御
承知の通りであります。こまかく申しますと、いろいろのサービスに連れまして、漸次復旧いたしたのでございますが、昨年の七月には御
承知の万国
郵便條約、及び小包
郵便に関する約定に正式に晴れて持参がかないまして、日本はやはり條約国の一員として、戰前と同じステータスにおいての條約加盟国ということにな
つたのでございまして、爾来全世界のどこへも、若干の制限はございますが、ほとんど戰前と同様な状態で外国
郵便の交通が開かれましたことは、
郵便事業の本質に基くこととは申しながら、非常に明るい復興の一部面ではないかと考える次第でございます。
郵便は大体その
程度にとどめまして、次は
為替貯金の復興施策でございますが、これはここにいろいろ書いてございますが、最近におきまして
為替貯金事業の一つの大きな問題は、何と申しましても小口の
貯金、非常に多数の品数、そして零細な預
貯金の出し入れをいたします関係上、非常にコスト高になりまして、
貯金事業自体の計算から見ますと、多額の赤字を生じておつたという点が、この
為替貯金事業の一つの大きな癌でありました。しかしながらいろいろと
経費の節減のできることは、極力節減をはかりますとともに、一層いろいろな点を合理化をいたしまして、要員のごときもずいぶん想い切
つて落すような措置を講じまするとともに、
業務の整備復旧等に一層の努力をいたしまして、今日では大体来
年度以降あたりからは赤字をなくして、正常な
運営ができるという
見通しも立
つたのでございますので、この綿を一層押し進めまして、将来少くとも五箇年間には相当の黒字を生む。そうしてほんとうに国民大衆の
貯金としての本来の使命を、遺憾なく発揮できますようにという
計画を立てたのでございます。
経費節減の一例といたしまして、四ページに証券保管
業務のことをAとして掲げてございますが、これな
ども実は戰争中、いろいろな国債あるいは貯蓄債券等を
郵便局でお殖預かりをいたしておりました。その
金額は二十数億に
なつておりまして、枚数にいたしますと一億三千万枚くらいの国債、証券などを預か
つておりましたが、預かることによります
收入はわずかに年四、五万円にすぎません。ところがそれを扱うために要する
経費というものは、年額四億円を要する。まるでちようちんとつりがね以上の大サービスをや
つておつたわけであります。しかしながら戰後はむしろ証券保管を依頼された方の側から、それをひとつすみやかに換金してほしいという要望が相当強うございましたし、一方私
どもの
事業の方から申しますと、ただいま申しました通り非常な
経費を要しながら、ほとんど
收入のない。まつたくサービスだけであるこの証券保管
業務を、一日も早く合理化する必要がございましたので、先般過ぐる国会でその法律が通過いたしまして、この二十四年九月から実施になりまして、全部これを
整理し、
郵政省の方で売却の措置をとりまして、それぞれ保管主の
貯金に振込み、あるいは御要求によ
つては現金をすぐにもどして差上げるという措置を講じました。このために出ます
経費の節減だけでも相当なものであることは、ただいまの
説明で御了承願えるかと考えるのであります。そのほか、睡眠
貯金の
整理とか、これもなかなか大きな問題でございますので、これらを大いに積極的にやりたいというのでございます。
次は
保險年金事業の復興でございますが、
保險年金事業につきましても、大体復興の重点は、
先ほど基本の方針のところで申し述べました通り、一日も早く、安くて、ほんとうに合理的なサービスを提供すること、つまり安い
保險料で有利な
保險金が
支拂いできるような、そうしてほんとうの大衆
保險としての実をあげるというところに、重点を置かなければならないのでありますが、遺憾ながら、戰争後は非常な経済変動によりまして、この
保險特別会計は莫大な赤字を背負わなければならないようなことになりました。そのために、長年や
つておりました長期
還付金の
制度な
ども、一時これをストツプせざるを得ないというような状態に立至
つてお
つたのでありますが、今
年度から赤字克服に大馬力をかけますとともに、この
保險事業の利用層の大拡充をはかりまして、いわゆる二十億達成
目標というものを立て、全員非常な努力をいたしました結果、一箇月分の
保險料の合計額におきまして、すでに新規十七億を突破するというような成績をあげておりまして、予定の二十億達成も大体期待し得るという
見通しのつく状態に相
なつております。これができますと、来
年度以降は、この九ページから十ページに表を掲げましたように、二十億から、来
年度は十五億、二十六
年度は十三億、二十七
年度は十億、二十八
年度は十億というふうに、漸次新規の
契約を逓減いたしまして、それと同時に質の内容、あるいは
維持、つまり失効、解約ということのないように、掛け続けていただくという点に重点を置いてや
つて行くということにすれば、もう来
年度からはけつこう赤字なしで、しかもただいま申しました
長期還付金制度な
ども復活せられまして—長期
還付金と申しますのは、御
承知のことと思いますが、民間
保險でいわゆる
契約者に対する配当というものでございますが、これをぜひ復活いたしたい。そのほか
保險期間を短かくするとか、伝染病その他の場合に非常に有利な扱いをするといつたような、大衆
保險にふさわしいような
制度は、すでに本
年度から実施いたしておりますが、それに加えてだんだんとこういう点を充実いたして行きますとともに、被
保險者の
福祉施設、あるいは健康相談とか、健康の増進といつたような
方面にも、一層
施設を充実して行く考えでございます。
大体以上で
郵便、
貯金、
保險年金の三
事業についての、復興
計画の大要を申し上げたのでございまして、あと御質問に応じまして、本日は各主管の局長も参
つておりますので、御質問がありますれば、各主管局長の方からお答え申し上げることにいたしたいと存じます。