○塚田十一郎君 私は、
日本民主自由党を代表いたしまして、ただいま
議題とな
つておりますところの
所得税法の
臨時特例等に関する
法律案外二
法律案に対して
賛成の
討論をいたそうとするのであります。(
拍手)
私どもが、これらの三つの
法律案に対して
賛成をいたしますところの
根本の気持は、これら
法案に盛られておりますところの
改革が、
昭和二十四年度中においてわれわれが期待しておりましたところの
改革として十分なものであるという
意味においてではないということを、まず冒頭においてお断り申し上げておきます。しかしながら、
審議の経過を通しまして、われわれは、来るべき通常
国会において、われわれの考えておるところの、なお残余の種々なる
改革が十分に実現せられる見込みのあるものであるということを
承知いたしましたので、これに
賛成の意を表するわけであります。(
拍手)
従つて私は、われわれが来るべき通常
国会に——今後どのような
改革案を希望いたしておるかということを申し上げて、
討論の趣旨弁明にいたしたいと考えるのであります。
国民負担を軽減し、租税の負担を公平にするということが、今日の税制において最も
重点を置かなければならない点であることは、申すまでもないのであります。その
意味におきまして、今度の三
法案に盛られておる種々の
改革は、必ずしも十分であるとは私どもも考えておりません。まず第一に、給與所得に対する減税措置についてでありますが、これらの減税措置は、諸君も御
承知のように、シヤウプ勧告に盛られてある
内容と合致いたしておるものであります。シヤウプ勧告が、給與所得の減税についてこのような数字を示唆いたしましたのには、使節団の予定しておりますところの予算のわくというものがあることは、申すまでもないのであります。つまり勧告は、
昭和二十五年度の所得税
收入として二千八百八十億、これに富裕税
收入の二十億を加えて、二千九百億というものを予定しておることは、諸君の御
承知の通りであります。この前提に立つときに、初めてあのような減税案の
内容が出て参るのでありまして、われわれは、これに対しては、所得税
收入は、さらに国費の一段の節約と負担の均衡化、もつと率直に申し上げますならば、今日なお捕捉せられておらない部分の所得の捕捉度を向上することによ
つて十分
收入財源を得て、一段の軽減ができるものであるという確信を持
つておるのであります。(
拍手)
従つて、それに対して、二十五年度以降におきましては、一段の所得税軽減というものを、給與所得、事業所得を含めまして行われたいということを、強く
政府に対して要望いたしておく次第であります。
次に事業所得税についてでありますが、事業所得税の勧告中に示唆いたしております、本年中における十、十一、十二の三箇月間の、年間を通じて三分七厘五毛程度の所得の特別控除を行えという勧告が、このたび実現せられなかつたのは、これまたわが党のきわめて遺憾といたしておるところであります。しかし、この点につきまして、ただいま川島議員よりいたしまして、今度の
改正案が給與所得に対して非常に薄かつたというような御批判であつたのでありますけれども、私どもは、遺憾ながらその点に対しては、まつたく考え方を異にいたしておるものであります。私どもは、今日の所得税におきましては、給與所得と事業所得と、そのいずれの負担がより過重であるかということを考えます場合に、われわれは、事業所得の負担がはるかに過重であるということを申し上げたいと思うのであります。(
拍手)(「でたらめを言うな」と呼ぶ者あり)いかに私の申し上げることがでたらめでないかということを、数字をも
つて、ただいま御
説明申し上げます。
東京都の実例で申し上げますならば、扶養家族三人を有しますところの家庭におきまして、一箇月間において約一万円の生活費、つまり、
收入のうちから税金を差引きまして、手元に一箇月間一万円の所得が残ります例を想定いたします場合に、給與所得者は一箇月どれだけの所得があればいいか、また事業所得者は一箇月間にどれだけの所得を上げればいいかという数字を比較いたしてみますと、給與所得者の場合には、年額十五万円、月一万二千五百円の所得がある場合に、手元に一万円の所得が残るのであります。ところが、事業所得の場合におきましては、年額三十万円の所得を上げない限りは、手元に月一万円の税引の残りがないという数字が出ておるのであります。
この事実は、申すまでもなく給與所得に対しましては二割五分の控除がある。事業所得に対しましては、その控除がない。さらに事業所得に対しましては、東京都の場合におきましては、事業税が約一割八分程度課税せられておる事実に由来するものであります。これらの事実が今まで存在いたしておりました
理由は、もちろんいろいろ
理由がありますけれども、その一つとして、しかも最も重要なる一つといたしまして、事業所得の捕捉が十分に行われないということが大きな原因とな
つておることは申すまでもない。
しかし、皆さん方も御
承知であられるように、今度の税制
改革が行われますならば、
改革以後におきまして、
わが国の税制運営に最も
重点を置かなければならないのは、税法通り税をとるということであります。税法通りな税制運営というものが行われない限りは、いかなる税制
改革も結局成功いたさないのであります。もちろん、これを実施いたしますには相当な困難を伴うことは申すまでもないのでありますけれども、最大の努力を拂
つて、その方向に税制の運営を持
つて行く、こういう重大決意を待つたのでなけらばならないことは申すまでもない。
このような考え方に立つときに、事業所得と給與所得の間に、今申し上げるような年額三十万円と年額十五万円との所得の開きが、同じく一箇月間に一万円の実收にしかならないというような大きな開きというものは、とうていこれは合理的なものとは考えられないのであります。
従つて、事業所得と給與所得との間の扱いの相違、つまり開きというものは、特別勤労控除というものが現行の二割五分よりもはるかに低められてしかるべき正当な
理由があるということを、私どもは考えるのであります。(
拍手)もちろん私どもは、給與所得税があれだけの負担をいたしまして、十分生活に余裕ありとは考えておらぬのでありまして、それはもちろん、全体の国費の削減によりまして、全体の所得税の軽減を行う場合において考慮せらるべき問題であ
つて、事業所得、給與所得間の開きは、今申し上げるように相当に縮められてしかるべしということを、繰返して申し上げる次第であります。
次に青色申告の問題についてでありますが、この点につきましては、私どもは、今日の
わが国の中小企業者、農業者、それらの人たちの持
つておりますところの経理能力の程度というものを考えますときに、その備えつけを要する帳簿の種類、それからそれに記載をいたします方法等が簡易軽便なものにせられない限りは、このせつかくの
制度が十分効果をあげないおそれがあるということを、非常に懸念いたしておる次第であります。この点につきまして、十分
政府の御留意をお願いいたす次第であります。
次に物品税についてであります。御
承知のように、シヤウプ勧告は、物品税につきましては、
昭和二十五年度以降におきましても、本年度と同じく、大体二百七十億程度の税
收入というものをあげるのが適当であると勧告しておるのであります。私どもは、シヤウプ勧告に対しましては、物品税の部分が比較的できの悪かつた部分ではないかと考えておるのであります。この点に対しまして、
政府はわれわれとまつたく考えを同じくせられて、この勧告の考え方にもかかわらず、これに相当大幅の減税を企図せられておるのは、まことにその労を多とする次第であります。(
拍手)ただ
提案せられておりますところの各品目間の均衡、その物品の必需度の認定等において、なお再考を要するものがあるのではないかと考えるのでありまして、この点につきましては、ただいま
政府が考えておられます程度の
收入予定をくずすことなしに、なお十分再考をなし得る余地があると考えておるのであります。
物品税につきましては、本年度は、
修正の結果二百十三億程度、明年度は、清涼飲料税の十七億を含めまして、約百七十八億程度の税收を予定せられておるようでありますが、これらの税收も計算せられておりますところの
政府の推算の
基礎に対しましては、私どもは、なお若干の疑義を持
つておるのであります。
政府は、本年度に比較いたしまして、生産増加一二%、捕捉度の向上は、申告の向上によ
つて二五%程度を増加するものと見られておるのでありますけれども、申告の向上並びに捕捉度の上げられる程度というものは、御
承知のように税率を引き下げることと密接な関連を持
つているものでありますから、われわれの考えるように税率を引下げますならば、さらに捕捉度及び申告も一層向上させて、十分なる税收をあげ得るということの確信を持
つておる次第であります。
次に織物消費税についてであります。織物消費税が一月一日から全廃せられることになりましたのは、その織物が持
つておりますところの必需品的性格に考え合せまして、最も適切なる措置であつたと考えておる次第であります。ただ、この織物消費税が、本年度の予算におきましては百七十三億、それに物品税の中に含まれておりますところのメリヤス類の税
收入二十三億と合せまして、約二百億近い厖大な財源をなしておつたのでありますが、これが一気に免税にまで持
つて行かれましたために、その過渡期における混乱が産業界に相当起
つておる点を、われわれは懸念いたしておるのであります。われわれは、それらの点を懸念いたしましたから、勧告が九月免税を発表いたしましたときに、織物及びメリヤス類についてだけは他の部分と切り離して、本
臨時国会の冒頭に暫定的に減税措置をせらるべきであるということを強く要望いたしておつたのでありますが、この点の実現を見なかつたのは遺憾であります。今後の税制の運営の上において、これらの混乱をできるだけ最小にとどめ得るような措置を講ぜられんことを、
政府に要望しておきます。
最後に取引高税についてであります。この税は、
昭和二十三年七月、時の内閣によりまして創設せられましたときから、私どもの根強く
反対いたして参つた税であります。(
拍手)このたび、この税が、勧告では明年四月一日以降の予算のわくとにらみ合せてこれの撤廃を適当と考えると示唆いたしておつたのにかかわらず、明年一月一日よりその撤廃を見ることができるように
なつたのは、その点に対して、
政府の労をまことに多いといたす次第であります。(
拍手)この税がいよいよ廃止されるのを目前に控えまして、私は今、前芦田内閣の当時、時の多数を擁しておられた與党の諸君が、これが撤廃できるならばや
つてみろと言わんばかりの嘲笑的な激励をも
つてわれわれを鞭撻していただき、その結果、この税が今日廃止を見ることのできるようになりましたことに対して、衷心感謝の意を表するとともに、国民諸君とともに喜びにたえない次第であります。
以上三案に対して、わが党としましての
賛成の気持を申し上げ、
賛成の
討論をいたした次第であります。(
拍手)