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1949-11-28 第6回国会 衆議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十八日(月曜日)  議事日程 第十八号     午後一時開議  第一 薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出)  第二 大蔵省預金部特別会計外特別会計昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出)  第三 未復員者給與法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第四 日本通運株式会社法を廃止する法律案内閣提出)  第五 通運事業法案内閣提出)  第六 日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案内閣提出)         ————— ●本日の会議に付した事件  漁業法案(第五回国会内閣提出漁業法施行法案(第五回国会内閣提出)  日程第一 薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出)  日程第二 大蔵省預金部特別会計外特別会計昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出)  日程第三 未復員者給與法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第四 日本通運株式会社法を廃止する法律案内閣提出)  日程第五 通運事業法案内閣提出)  日程第六 日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案内閣提出)  地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  国際観光ホテル整備法案観光事業振興方策樹立特別委員長提出)  私立学校法案内閣提出)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出)  国際観光事業の助成に関する法律案内閣提出)  所得税法臨時特例等に関する法律案内閣提出)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出)  織物消費税法を廃止する法律案内閣提出)     午後二時三十九分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出漁業法案及び漁業法施行法案の両案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  4. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられなした。  漁業法案漁業法施行法案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。水産委員長石原圓吉君。     〔石原圓吉登壇
  6. 石原圓吉

    石原圓吉君 ただいま議題になりました漁業法案及び漁業法施行法案に関しまして、水産委員会審査の経過並びに御報告を申し上げます。私は、この演壇に登るにあたりまして、熱涙をもつてその説明に当たるものであります。  まず、両方案の提出されました政府提案理由内容を申し上げますと、終戰以来漁業問題の全面的解決につき、去る第三国会において、漁業制度改革のため水産業協同組合に関する法律が成立し、すでに本年二月十五日より施行しておりますが、根本的には漁業生産に関する基本的制度、すなわち漁業制度改革を断行することが不可欠なものでありまして、現行漁業制度は、明治三十四年の漁業法において初めて法制化され、同四十三年の全面的改正によつて確立されたものでありますが、これは旧来の慣行をそのままに固定したものであり、その後の諸般の情勢の変化、特に漁業生産力の著しき発展にもかかわらず、基本的部分については何ら改正を見ずに今日に至つたものであります。政府は、その内容根本的欠陥といたしましては、個個の漁業権を中心に漁業生産力をあげるに不可欠な、相当広い水面を単位とした総合的な調整機構を伴なわず、漁業権物権としたことの弊害面として、権利者に不当に強い力が與えられ、漁業秩序漁民の総意によつて民主的に起用されておらぬこと等をあげられているのであります。これが漁業生産力発展を阻害し、また漁村封建性基礎をなしていると指摘しております。従つて漁業生産力発展させ、漁業民主化をはかるためには、この行き詰まつた漁場関係を全面的に整理し、新たに漁業生産に関する基本的制度を定め、民主的な漁業調整機構運用によつて水面総合的高度利用をはかる必要を強調しております。これが、漁業制度改革を実施するため必要な漁業法案及び漁業法施行法案を提出されました政府提案理由であります。  以下、両法案の主要な内容について、両法案はその内容が一体をなすものでありますから、その概要を一括してご説明申し上げます。  第一は、沿岸漁場全面的整理であります。この法律施行の際現に存する漁業権は、二年以内にほぼ一斉に消滅させ、計画的に新漁業権免許を行います。この漁場整理のため消滅する漁業権等には、漁業権補償委員会の計画に従いまして補償することとし、この補償の財源は免許料及び内水面における料金に求めることにいたしております。  第二は新漁業権についてでありますが、漁業権定置漁業権区画漁業権及び共同漁業権の三種とし、その内容は従来と多少違つております。存続期間は従来より幾分短縮し、期間延長区画漁業権以外には認めないこととし、漁場固定化を防ぎ、事情の変化に応じて最も合理的に漁場を利用し得るようにいたしております。漁業権免許方法は、都道府県知事漁業調整委員会意見を聞いて、水面総合的高度利用見地から、事前に免許内容等を定め、法定の適格性及び優先順位従つて免許することとし、従来のごとき行政庁行政裁量のみによることを避け、法律の定める基準に従つて民主的に決定することになつております。免許する相手は原則としてみづから漁業を営む者であり、漁業権貸付を禁止しております。但し、漁業権の性質上その行使団体的規制が必要なものは、自営でなくとも、一定條件を備えた漁業協同組合またはその連合会免許を受け、組合の定款の定めるところにより組合員漁業を営み得るように措置いたしております。このような漁業権及び独占排他性弊害の強く現れる漁業権については、一定民主的要件を備えた地元漁民団体優先的に免許するようにいたしております。漁業権物権として第三者の侵害から保護する点は従来と同様でありますが、権利者の意欲的な行使を制限し、また貸付を禁止し、譲渡性及び担保性を制限して、單なる私権でなくて、水面総合的高度利用のためとういう意味合いにおける公権的性格を強めております。入漁権は、慣行を廃止して、すべて設定行為によらしめることとし、漁業調整委員会の裁定によつて調節し得るようにいたしております。  第三は指定遠洋漁業であります。これについては許可の定数を定め、また適格性規定に反しない限り、船舶の使用権実質許可が伴うように措置されてあります。  第四は免許料及び許可料でありまして、毎年、沿岸漁業に関する補修及び漁業制度改革費をまかなうため、沿岸漁業者から免許料または許可料を徴収し、沿岸漁業以外の漁業者からは、沿岸漁業者とほぼひとしい負担度許可料を徴收することになつております。  第五は、漁業調整委員会であります。漁場総合的高度利用及び漁業に関する紛争の調整をはかる民主的な機構として、新たに漁業調整委員会を設けることとし、行政庁漁業免許等重要な行政処分をする場合には、必ずこの委員会意見を聞かなければならないこととし、さらにまた漁業調整上必要な指示をするという広汎な権限を有して、漁業制度改革の眼目をなすものであります。これには、主務大臣の指定する海区ごとに設置する海区漁業調整委員会と、二つ以上の海区にまたがる特定の問題を処理するために臨時に設けられる連合海漁業調整委員会とがあります。また中央に、漁業法施行に関する重要事項審議するため中央漁業調整審議会を設置することといたしております。  第六は土地及び土地定着物使用についてでありまして、海草ほし場、船揚場等漁業上の施設として利用することが必要かつ適当であつて、他のものをもつてかえることが著しく困難であるときは、一定の手続を経ることにより、これらの土地または定着物漁業者使用し得るように措置してあります。  第七は内水面漁業であります。内水面の中でも、海に準ずるようなものは別といたしますが、通常の内水面については、その特殊性に即応し、増殖事業を積極的に展開するため、海面と異なる特殊規定を設けることといたしてあります。すなわち内水面においては、原則として料金を納めなければ水産動植物の採捕または養殖をすることができないこととし、政府は、この料金收入をもつて補償および漁業制度改革費のうち内水面漁業に関する分をまかなうとともに、内水面における基本的増殖事業を行うのであります。この内水面における民主的な調整機構としては、都道府県に内水面漁場管理委員会を設置いたすこととなつております。  第八は瀬戸内漁業についてであります。瀬戸内海における資源の維持と、複雑な入会関係調整を期するため、特に瀬戸内海漁業調整事務局を設置し、漁業法施行に関する事務の一部を分掌させることといたしてあります。これに対応して、連合海漁業調整委員会も、普通は臨時のものでありますが、瀬戸内海には常設のものを設置いたすこととしております。  第九は漁業制度改革に伴う関係法律改正でありまして、特に水産業協同組合法関係規定改正してあります。  以上が両法案内容でありますが、一千三百万漁民の既得の漁業権を一旦国家が取上げ、再分配するという、漁民にとつては死活問題に関する重大法案でありますから、われわれ水産常任委員は、その審議に慎重に慎重を重ねたものであります。すなわち、去る五月七日水産常任委員会に付託され、九日農林大臣より政府提案理由説明聴取、次いで十二日より三十一日までに八回にわたり委員会を開き、各委員農林大臣及び政府委員質疑をいたし、漁業生産確保民主化をはかるため、慎重これを検討したのでありますが、遂に第五国会は終りとなり、本委員会は、両法案は全漁民を初め一般的に関心を有する重要なる法案でありますから、五月三十一日、閉会中両法案継続審査を行うことに決定されたのであります。  つきましては、六月一日、本委員会は、両法案審査をなすため、全国日本海班班長川村善八郎委員、六月十七日より二十五日まで九日間、四国九州班班長玉置信一委員、六月十八日より二十七日まで十日間、太平洋班班長冨永格五郎委員、七月一日より八月まで八日間、北海道班班長鈴木善幸委員、七月二十日より八月五日まで十七日間、以上のように区分いたしまして、両法案に関する漁民意見聴取のため、現地調査にそれぞれの委員が派遣されたのであります。  次いで、九月五日、派遣委員の各班長より、両法案に関する調査報告がありました。その詳細は会議録に譲ることにいたしますが、これらの調査のための懇談会において、一都一道二府四十二県より出席した方々は、実に二千三百七十五名に達したのであります。そのおもなる調査意見をあげますと、漁業権免許優先順位に関し、その大多数は、漁業協同組合へすべての漁業権を最優先免許せよとの意見であり、一部の者からは、個人自営者漁業権は最優先免許せよとの意見もあり、その他免許期間延長免許料許可料徴収撤廃または軽減及び行政費並び調整委員会費用国庫負担とせよ、法案はこれを撤回し、再草案せよ、等の反対意見がありました。  次いで、九月五日より十月十四日まで、本委員会は十回、漁業権制度に関する小委員会は五回それぞれ開会いたしまして、政府委員より逐條的に両法案説明聴取、各委員政府委員に対し質疑を続行し、審査継続をなしたのであります。  引続き第六国会におきましても、十月二十六日両法案が再付託となりましたので、漁業法案及び漁業法施行法案に関する小委員会を十月二十九日に設置いたしまして、十一月一日より十四日まで六回にわたり小委員会を開会し、審議したのであります。  次いで、本委員会は十一月十六日より十九日まで四日間、漁業法案及び漁業法施行法案について意見を聞く公聴会を開会し、公述人三重漁業協同組合連合会専務理事里中政吉外二十三名、及び参考人沿岸漁業者、新潟県漁業協同組合長外十九名を、全国各地より召集して、両法案に対する意見をそれぞれ聴取したのであります。  次いで、十一月二十二日、二十五日、本委員会及び漁業法案に関する小委員会を開き、両法案に関する検討をなし、二十七日慎重審議を重ねましたが、遂に十一月二十八日、本委員会は、ただいま上程されました漁業法案及び漁業法施行法案に対する一部修正をいたしまして、これらにつき討論を行い、採決の結果、多数をもつてこれを可決した次第であります。その詳細は会議録に譲ります。  以上ご報告申し上げますが、最後に、漁民の憲法ともいうべきこの重要法案審査報告にあたりまして一言述べさせていただきます。このたびの漁業法についての請願及び陳情は、その数実に三百余件、人員は一万五百七十五名に上る多数でありまして、漁民の苦衷を察することができるのであります。━━━━━━━━━━━━━━━━━漁民諸君が、さしあたる難局に屈せず、不撓不屈精神ををもつて御努力あらんことを祈つてやまない次第であります。  以上ご報告申し上げます。適当の御審議を願います。(拍手
  7. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。佐竹新市君。     〔佐竹新市登壇
  8. 佐竹新市

    佐竹新市君 ただいま議題となりました漁業法案並びに漁業法施行法案に対しまして、私は日本社会党を代表いたしまして反対意見を述べるものでございます。  ご承知のごとく、本漁業法案並びに漁業法施行法案は、さきに制定されました農地法に基く農地改革と同じものでありまして、漁村民主化を促進し、漁業生産力増大をはかるというこの法律目的が、はたして今度の漁業法案に盛り込まれているであろうかどうかという点と、この法案審議いたしまするところの審議過程におきまして、委員会の一部民自党の委員諸君のこの法案に対するところの審議態度というものに対して、私は遺憾ながら反対せざるを得ないのでございます。(拍手)  まず、御承知のごとく、およそ漁村民主化の促進をはかるというところに、この法の精神がなくてはならぬのであります。     〔発言する者多し〕
  9. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  10. 佐竹新市

    佐竹新市君(続) ただいま委員長報告申し上げましたように、五月の国会から継続審議となりまして、全国を各ブロツクにわけて細密に漁村調査して止き、さらに公述人が四日間にわたつて公述をなした。そうして昨日、これがこの委員会において修正されたのでありますけれども、この長い間かかりまして修正されました小委員会修正案なるものは、昨日突如として撤回されて、さらに委員長修正案なるものが提出されたのでございます。その委員長修正案に対しては、昨日の委員会におきまして、わずか三分間の質疑しか許さない。五月から昨日まで一体何を審議したのであるか。聞くところによりますると、参議院修正案が……     〔発言する者多し〕
  11. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  12. 佐竹新市

    佐竹新市君(続) 突如として委員長修正案として塗りかえられて出され、この法案のいわゆる進歩性を阻止して、あくまで漁村資本家を残し、いわゆる封建性を打破するのと逆行的な態度をとつたということに、われわれは遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。(拍手)  かくして、この法案内容検討いたしまするときに、はたしてこれで働く漁民が救われるでありましようか。私は、今後の日本輸出を促進する上におきましては、何といたしましても、天然資源物であるところの農産物、水産物の輸出にその重点を置かなければならないと考えるのであります。この重点を置きますところの水産業発展を促進し、民主化を促進して、漁業生産力増大をはかるという法案が、一部の人々の横やりによつて阻止されるというがごときことは、断じて許されぬところであります。  われわれは、この法案内容を見まするときに、まだまだ漁民民主化をはばむ幾多のものがあるのでございます。特に、働く零細漁民のこれらの立場を保護するというためには、この法案においては法的な根拠がない。こういう点が第一であります。  第二点におきましては、漁業権免許許可料をとるという点に対しては、われわれは反対せざるを得ないのであります。さらに漁業調整委員会の構成を見まするときに、単なる漁村の有力な人々のみが漁業調整委員に入つて行つて、ほんとうに働く漁民意見漁業調整委員の中に盛り込まれないというような点が、反対をする第二の理由であります。(拍手)  これらの点を総合して考えてみまするときに、この法案の中には、真の漁村民主化をはかるという点に多く欠けているところがあることを強く指摘して、日本社会党は、本案に対しまして絶対に反対をするものでございます。(拍手
  13. 幣原喜重郎

  14. 小高熹郎

    小高熹郎君 ただいま上程されております漁業法案及び漁業法施行法案修正案に対し、私は民主自由党を代表して賛成意見を開陳せんとするものであります。  世界経済への一環として、海国日本漁業生産力発展させ、同時に漁業民主化をはかることは、けだし食糧問題、国民栄養に関する問題及び外貨獲得見地からしても、当然のことと思われるのであります。かくのごとき見地から、現在行き詰まりを感じつつあります現行漁業関係整理を前提として、新たに漁業生産に関する基本制度を確立し、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構運用により水面総合的高度利用をはかるため、漁業法案及び漁業法施行法案が立案され、政府提出として、本年五月七日、第五国会に上程されたのであります。  しかして、衆議院のわが水産委員会においては、第五国会慎重審議をいたしたのでありますが、会期余すところわずかに二十日ばかりでありましたため継続審査となり、遂に今日まで委員会において審査し、あるいは全国各地への議員派遣による調査をなし、さらに本月十六日より十九日に至る四日間公聴会を開催して、広く漁業者意見聴取いたしたのでありますが、その際各方面の意見には、原案相当懸隔があるものがあつたのであります。たとえて申しますならば、一、莫大な補償金を支出して全面的に漁業権を一斉に消滅せしめることの可否、二として、漁業権貸付を例外なく禁止するの可否、三点として、漁業権存続期間の問題、四といたしましては、河川共同漁業権を与える問題、五、免許料許可料可否、六、過去の封建制を拂拭して、資源保護政策に立脚した法文化をはかるべきであつたが、時間的にこれを許さなかつた点等、幾多検討を要する事項が多く、今ただちに断定を下すことの困難があるのであります。しかし、この際本法案を遷延せしむることは、いかがかと思われるのであります。  ただいま上程されておりまする漁業法案並びに漁業法施工法案修正案を見ますると、一、定置漁業の範囲において、水深二十七メートルに満たないものを共同漁業権に入れたこと、二、河川共同漁業権を認めたこと、三、免許料許可料の金額の決定の基礎行政費を含ませないこと、四、漁業権者以外の者が当該漁業権内容たる漁業の経営を実質上支配していると認められる場合の漁業免許取消し運用については、漁業協同組合が他のものから全出資額の過半の出資を受けている事実のみをもつてその免許取消しをすることのないようにすること、なお漁業調整委員会が各種の審議をするにあたりまして、公聽会を開き、利害関係者意見を開陳させる機会を得せしめた点等、従来の政府提案から見ますると、今回のこの修正案はよほど進歩いたしたるものでありまして、これらの諸点から考えましても、私はこれに賛成するにやぶさかでないものでございます。(拍手)  わが国経済再建は、世界環境一環としての経済再建でなければなりません。それには、総合施策に生きたところの政策を持たなければならないのであります。さき農地法が設定され、労働法に伴いまして、本漁業法が、三つの足としてわが国民主化を確立する以上、講和條約も近しといわれるわが国において、必ず前途輝やかしきものあることを信じて疑わないのであります。(拍手)この意味におきまして、私は、以上の理由を明らかにいたしまして、本法案民主自由党を代表して賛成意思を表明するものであります。(拍手
  15. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 砂間一良君。     〔砂間一良登壇
  16. 砂間一良

    砂間一良君 私は、ただいま上程されております二つ法案に対しまして、日本共産党を代表して反対意見を表明するものであります。  漁業権制度改革は、漁村の最も遅れた封建的諸関係を清算し、日本民主的再建土台を築く意味におきまして、農地改革とともに、日本民主化二つ土台であります。しかるに、この漁業権制度改革が、農地改革よりも数年遅れて、今ようやく本院の議に上つたということは、歴代内閣がいかに怠慢であり、いかに日本民主化に熱意を欠くかを示す一つの証左であると思うのであります。ことに民主自由党内閣は、進んで漁村民主的改革をやる意思がないばかりか、反対民主化を妨害するがごとき反動的意図の看取されるのは、まことに遺憾であります。今回の漁業権制度改革にいたしましても、法案が提出されてすでに半歳、その間、制度改革根本の趣旨を骨拔きにするような反動的修正案をでつち上げることに日を暮しまして、もつて法案成立を遅らし、漁業民主的改革の進行を阻もうとして来たのは、民主自由党であります。  私どもは、漁村の遅れた封建的諸関係を一掃し、真に民主化された漁業秩序の上に水面総合的利用をはかり、漁業生産力一大発展をはかるという漁業権制度根本的改革には、全面的に賛成であります。しかしながら、修正案を含めた政府原案におきましては、口に漁業民主化漁業生産力発展を唱えながら、その内容におきましては、何らその目的が実現されておらないのであります。今回の漁業権改革は一口にしてこれを言うならば、漁村の封建的諸関係はそのまま温存いたしまして、零細漁民からの一切の漁業権を剥奪し、これを少数の大資本漁業に独占させようというのが、そのねらいであります。  まづ第一に、本法案には労働保護規定が何も書いてありません。漁村ほど封建的残滓の強いところはありません。勤労漁民の団結の組織をはかり、労働條件の急速な改善をはかることなしに、漁業民主化も、漁業生産力発展も、とうてい期し得られないのであります。歩合賃金や、しろわけ制度、封建的な主従関係が、そのまま今日日本漁村には残されておるのであります。労働組合をつくるだけでも多くの困難があります。組合組織しただけで解雇する網元や船主がたくさんあるのであります。団体交渉は事実上認められておりません。解雇手当さえも支拂われていない。労働組合に加入した者は漁業協同組合に加入することを拒まれているのが現状であります。漁船が難破いたしましても、船員の家族の生活保障すらなされていないのであります。労務配給物資船主や親方に横領されまして、税金は反対労働者に転嫁されているのが現状であります。勤労漁民漁村の下敷きでありまして、漁村ボスの思うままの搾取の対象となつております。このような労働條件改善をはかることなくして、漁村封建性の一掃も、民主的協同組合組織も、断じて望むことはできないのであります。今日組織されつつあるところの漁業協同組合は、まつたく漁業会の看板の塗りかえに終つているような実情であります。  次に本法案は、従来の漁場関係を一切御破算にいたしまして、二箇年以内に、新たに免許によつて漁業権を設定し、漁業調整機構運用によつてこれを再分配して行こうというのでありますが、この際御破算になるのは零細漁民漁業権だけでありまして、大型捕鯨業や以西トロール業、以西機船底びき網漁業、遠洋かつお・まぐろ漁業など、すでになわ張りができているところの巨大資本のものに対しましては、ほとんど手を触れないばかりか、その継続許可を認めておるのであります。以西底びきなど、三割四分減船問題さえ起つている現在、新規企業はまつたく手を出す余地はないのであります。これらの業者の犠牲的地位を安定化させ、さらに大資本への独占集中を進めようとしておるのであります。  ことに大型捕鯨業のごときは、その独占的特権がそのまま維持温存されております。その反対に、漁業民主化、沿岸漁民保護のために最も必要とされる許可漁業の制限や、その取締り、漁区制限などには、まつたく手をつけておりません。この許可漁業につきまして何らの規定が設けられていないということは、本法案の一大欠陥であります。何となれば、今日海のギヤングと呼ばれている機船底びき、トロール等が官憲と結託いたしまして、いかに横暴に漁業取締規則を無視し、沿岸漁場を荒しまわつているかは、天下周知の事実であります。近年打ち続く沿岸漁業の不漁は、明らかにこの許可漁業の濫獲の結果であります。ここでもまた、零細漁民は大漁業に圧迫され、その犠牲に供されているのであります。しかも本法案は、漁業生産に対する基本制度を定めると称しながら、沖合漁業沿岸漁業との間におけるこの深刻な相剋摩擦について、何らの調整的措置も講じておらないのであります。  次に本法案は、一応漁業権が第一順位として漁業協同組合優先的に渡されるよう規定しておりますけれども、それはあくまで見せかけの、ごまかしであつて、協同組合自営できない場合には、資力ある個人に渡されることになつているのであります。定置一統新しく張るにも数千万円の費用を要する今日、資金・資材の国家的裏づけなくして自営できる協同組合は、事実上きわめて少いのであります。  また今度の修正案によりますと、資本家が協同組合に半額以上出資しておりましても、この漁業権を取消すということは認めないという規定を新たに挿入いたしましたことによつて資本家は協同組合を金融的に支配し、この支配を通じて、協同組合が持つているところの漁業権すらも自分が横領することができるような仕組みに改惡されておるのであります。されば、形の上では協同組合が第一優先順位になつておりましても、これに対する資材、資金の国家的保障が何らなされていないために、事実においては、漁業権は資力ある個人に独占されてしまうことになるのであります。  漁業協同組合に確保されている漁業権は、わずかに今度新しく設定された共同漁業権でありますが、しかもこの共同漁業権は、浮魚をはずされたために、ほとんどその内容は貧弱なものとなつてしまつております。沿岸漁業民の專用漁業権として守られていた浮魚は、今後自由漁業として開放されてしまつたために、資本漁業と競争する力のない零細漁民は、まつたくその生活の資料を奪われることになつたのであります。また区画漁業権の中でも特に重要な真珠養殖業のごときは、わざわざ特例まで設けて個人にこれを與えることとし、資本漁業の独占を保護し、協同組合がやることができないようにしております。  かように本法案は、見せかけの民主的裝いにもかかわらず、重要な漁業権は、全部零細漁民から取上げ、資本漁業の発達と、その独占を強化するように仕組まれておるのであります。  この漁業権制度改革の事業を実際に推し進めて行く推進機関であるところの漁業調整委員会は海区に設けられ、一般の選挙によるもの七名、知事の任命によるもの三名、都合十名で構成されることになつております。漁民代表の選挙には、何ら階層別に選挙するというような特別な規定が設けられておりません。従つて、広い海区から一般選挙によつて出せば、そこに上つてくる委員は、必ずその地方の有力者、顔のきいたボスで占められることは、推定にかたくないのであります。また知事任命の学識経験者あるいは公益代表にいたしましても、資本家に有利な人が選ばれるであろうことは、これまでの経験が示しておる通りであります。中央漁業調整審議会の会長は主務大臣であり、その委員は総理大臣の任命であります。  かようにして、旧漁業権の消滅、新漁業権免許、これが再配分等、制度改革の実務を担当する漁業調整機関は、上から下まで資本漁業の代表と官僚によつて占められ、零細漁民を犠牲にして大資本のふところを肥やすような機構に仕組まれておるのであります。  さらに免許料許可料補償との関係について申しますと、新たに漁業権を得た者は、毎年水揚高の平均三・七%、定置漁業においては五%強、共同漁業においては二・八%に当る免許料許可料を納めなければなりません。これは非常に重い、税金外の税金であります。この免許料許可料をもつて漁業権補償に充てることになつておるのであります。旧漁業権補償は、府県知事が天くだり的に任命した漁業権補償委員会が立案し、三十年以内に償還する漁業権証券で交付されることになつておりますが、その総額は、元本だけでも百六十億に達するのであります。証券は移転や質入れなどを禁じられているために、資金・資材の融通には何ら役に立ちません。つまり零細漁民は、このから手形にひとしい紙きれ一枚をもらつて大事な漁業権を取上げられてしまい、その反対に、ボスは素手でもうける仕組みになつておるのであります。すでに北海道では、七千の定置漁業権のうち、休業中の大多数の漁業権は、二年後の補償金を目当に、ボスが暗躍しておるような現状であります。また、今後資源枯渇防止の立場から取消される漁業権に対しても補償されるような道が開かれていて、資本漁業の連中は、ころんでもただ起きない、必ずもうけられるような措置が講ぜられている。これがこの漁業法案のからくりであります。この法案は徹頭徹尾ごまかしであり、羊頭を掲げて狗肉を売るものであります。  もしこの法案が、その第一條に掲げている目的従つて、ただちに漁業民主化漁業生産力発展を期そうとするものであるならば、本法案は少くとも次の諸規定を含まなければならないと思うのであります。一、労働に関する法令の規定をもつと具体的に挿入し、漁業労働組合漁民組合の国家による保護育成をはかり、これによつて漁村民主化漁業協同組合民主化を急速に達成すること、二、一切の漁業権を無償で国家に收用し、これを漁民の民主的管理に移すため、すべての漁業権を協同組合に與えること、許可料免許料はとらないこと三、漁業協同組合に対する国家的資金、資材の保障、四、指定遠洋漁業の独占排他的な特権の排除、大規模漁業の国営人民管理、五、許可漁業に対する制限規定、六、漁業調整委員会中央漁業審議会を漁民の民主的選挙とし、これに決定権を與えること、調整委員会を市町村に設けること、七、漁業に対する一切の官僚支配の廃止、これらの諸規定の入らない漁業法案は、まつたくごまかしでありまして、制度改革にはならないのであります。  われわれは、かくのごときごまかしの、そうして零細漁民を犠牲にして資本漁業を擁護するこの漁業法案、同施工法案に対して絶対反対であります。(拍手
  17. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 林好次君。     〔林好次君登壇
  18. 林好次

    ○林好次君 私は、民主野党派を代表いたしまして、ただいま提案になつております本漁業法案並びに同施工法案に対しまして、希望意見を付して賛成の意を表するものであります。(拍手)  思うに本法案は、前第五回特別国会に提出されて以来、その事柄の重要性と会期の関係にかんがみまして、継続審議を前提といたしまして、今日に至るまで愼重なる審議をいたして参つたのであります。このことは、いかに本法案が重要なる意義を含んでいるかということを如実に物語つているのであります。われわれは、国会閉会中におきましても国政調査をいたし、あるいは全国にわたつて懇談会を開き、全国漁民諸君の忌憚ない意見を聽取いたしたのであります。さらにまた、去る十六日から十九日に至る四日間にわたりまして公聽会を開き、全国多数の漁民諸君の代表者並びに学識経験者の公正なる意見を拜聽し、かつまた今国会開会中におきましても国政調査をいたしましたことは、皆様すでに御承知の通りでありまして、これらの各機会におけるそれぞれの意見を総合判断いたしてみまするに、そのいずれにおきましても、政府提案に対しましては大部分反対意見を開陳いたし、修正意見を具申しているのであります。従いまして、私といたしましては、本法案を真に全国漁民諸君に納得の行く法律にいたしたいと念願いたしまして、先輩、同僚各位と協力を重ねて参つたのであります。この苦心の結晶が政府原案に対する修正意見として現われ、たび重なる審議の結果、一応の成案が得られ、今日の終局的段階に達したのであります。  思うに、すべての基本的制度改革するにあたつては、早急に理想的な段階に達することのきわめて困難なことであることは、もちろんのことでありますが、本法案が、いまだ十分にその本来の目的に合致することになつていないのは、私としては衷心から遺憾に思うものであります。すなわち、漁民諸君をして真に日常の生産に安んじて従事することのできるような実体的裏づけがいまだ十分でなく、かつまた北海道の特殊事業に関しましては、従来種々なる角度から検討を加え、特別なる考慮を拂うべきであるとの意見もあつたのでありますが、この点につきましては考慮が拂われていないのでありまして、はなはだ残念に思うものであります。  しかしながら、現段階におきましては、事急を要する問題であり、その重要性と時間的制約の関係上、不本意ながら、私はやむを得ず一応賛成の意を表するものでありますが、政府におきましては、きわめて近い将来において、すみやかに適当なる機会をつかみ、本法案総則第一の目的であります漁業生産力発展漁業民主化目的に真に合致するよう、さらに改正方に最善の努力をすることを強く要望して、本案に賛成するものであります。(拍手
  19. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 奧村又十郎君。     〔奧村又十郎君登壇
  20. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま御提案になりました法律案に対しまして、委員長報告通り賛成をいたしまして、その意見を述べるものであります。(拍手)  わが日本の水産は、戰後次第に漁獲を増加いたしまして、ただいま世界第一位の漁獲高を示しております。アメリカの漁獲高の二倍であります。ところが、わが日本漁業の漁種、漁法あるいは経営形態などは、地方により、漁種により種々様々でありまして、複雑多岐なること、これまた世界一なのであります。このように複雑多岐でありまして、従つて従来の漁業権のあり方も、複雑多岐なる事情のままに、自然発生的に漁業権が設定されて参りましたがために、これまた複雑多岐。  たとえて申せば、不在地主的に漁業権を他に賃貸して暴利をむさぼる人もあります。あるいは漁業会漁業権を持つておるものもあります。これは漁民の団体であります。あるいは個人が漁業権を持ち、それを自営している形態もあります。こうしたいろいろな漁業権を、今後二箇年以内に一斉に消滅させまして、日本民主化一環として新たな漁業制度をつくろう、しかして生産力を向上させ、日本民主化をやろう、これがこの法律案目的であります。(拍手)  何も漁業に限りませず、民主化生産力向上は、わが日本に與えられました至上命題でありますが、この二つ目的を同時に全うさせるということは、はなはだ困難な場合が多いのであります。特に日本漁業のように複雑多岐なる場合において、普遍的な、妥当な法律をつくることは、はなはだ至難なりと申してさしつかえないのであります。われわれ委員会が今日まで苦労した根本理由があるのであります。  そこで、法案について、いささか論じてみまするのに、この法案規定いたしておりまする漁業制度は、いかなる性格を持つておりましようか。すなわち、漁業権漁業を営む権利であります。この漁業を営む権利は、漁民の総有にさるべきで、つまり沿岸漁民全体の皆に持たせるべきものであるというのが、この漁業制度改革根本原因になつております。すでに日本は、農地改革において、土地は耕作農民に与えられました。漁業権も働く漁民に与えなければなりません。しかし漁業権は、土地のように一反、二反と、一人一人に分割して与えるわけには行きません。そこで、漁民全体のいわゆる総有の観念を具体化するためには、零細漁民を団結さした漁民団体をここに持つて参つたのであります。これがこの法案の性格の第一点であります。  次に、漁民の中からお互いに選び出した漁業調整委員会なるものをつくりまして、新たに水面の高度利用をいたしまするような漁業計画を立てる、この計画に基いて漁業権免許許可する、あるいは漁業の取締りその他調整をやる、こういう問題に、漁民の代表たる漁業調整委員会が深く関与することになつておるのであります。  第三番目に、この漁業権はいかなるものに与えられるか。区画漁業権及び協同漁業権は、地元の漁民団体である漁業協同組合のみに与えられるのであります。定置漁業権におきましては、適格性優先順位におきまして、まず漁民の団体である漁業協同組合、あるいは村張組合、あるいは漁業生産組合、この漁民の団体が自営を望む場合には、優先してこれに免許を与えるのであります。(拍手)この団体がもし希望がなければ、最後に個人の経営者に免許が与えられることになつておるのであります。従つて、あくまでも漁民の団体に漁業権を持つて行こうとしておるのが、この制度の性格であります。  この漁業協同組合なるものは、すなわち零細漁民の団体である。(拍手)この零細漁民の団体に漁業権を持たせるという性格において、共産党は何がために反対なさるのであるか。実は私は、この案が最初われわれの手元に参りましたときには、どうやらこの案は、農林省あたりにおられる共産党の方々が立案したのではないかとさえ思つたのであります。(拍手)ただいま砂間君のお言葉によりますと、日本漁村制度では、労働制度がはなはだ封建的であると言われるのでありますが、長崎県に生月という村があります。この小さな村に、二十六のきんちやく網の生産組合なるものが、自然発生的にできております。これには資本家もない。労働者もない。海に働く漁夫が労力と金とを出し合つて、利益は平等にわけるという共同経営であります。板子一枚、底地獄、死なばもろともの漁業に対して、この協同経営は理想形態であります。(拍手)こういう理想形態が、長崎県にも、福井県にも、京都府にも、たくさんできつつあるということを、一体共産党はお知りにならぬか。  いま一つ、砂間君のお言葉によりますと、許可漁業が盛んになつて、沖合いで濫獲するから、沿岸の零細漁民が困る、というお言葉であります。しかし、これは科学と技術の進歩によりますことと、一つは、おもにこの大漁は、若狭湾の沖合い、北海道の沖合いであります。これはなぜ漁獲がふえたかと申しますれば、北鮮において、あるいは露領沿海州において、終戰後われわれ日本漁民が引揚げて後、あの豊富なる水産資源の漁獲がないから、そのふえた魚が次第に南下して来て漁獲がふえて来たのでありますが、どうか砂間君におかせられましては、あの北鮮なり、あるいは露領沿海州に眠つておる水産資源を、世界一の優秀な日本漁民に開放すべく、御努力になつていただきたいのであります。(拍手)  しかし、現実の問題といたしましては、ただいま申しますごとく、この漁業制度は、まことに民主化の理念のみに走り過ぎまして、現実から、はなはだ飛躍していると私は考えるのであります。その重大なる一点を申し上げてみようと思います。沿岸漁業の五割を占めるのは定置漁業であります。いわゆる大謀網や大敷網であります。諸君が東海道線に乗られて、熱海あるいは湯河原辺をお通りになりまして、汽車の窓からごらんになると、竹のうきで大敷が敷設になつている。あれが大謀の理想的なものであります。この国会の大きさと々くらいの錦糸の網を海につけてある。この中へぶりを追い込んで、百名近くの漁夫が取上げるのが大謀網であります。定置網であります。この定置網は、一統敷設するにいたしましても、最低八百万円から三千万円以上の資材がかかるのであります。しかも、デラ台風、ヘスター台風、ああいう台風が吹けば、こういう資材は一朝にしてけし飛んでしまうのであります。反対に大漁に惠れますと、昔から一攫千金と申しますが、今日なら一攫千金の漁獲を上げる事業であります。こういう漁、不漁の危険のある、しかも資金のたくさんいる漁業を、この零細な漁民の団体である漁業協同組合に持たして行こうとすることが、はたしてよいかどうかということに、はなはだ問題があるのであります。  今日までの水産業の団体法によりますと、この協同組合漁業自営は、農林大臣許可を得なければできないことになつております。すなわち、漁業自営によつて、一朝大不漁、大しけを食つて大きな赤字の出た場合は破産してしまう。組合の性格は何であるか、この水産団体法によりますと、漁村の中核体として、この漁業協同組合を育てて行こうとしております。この組合に対し、かかる危険な事業を與て、はたしてこれがよいかどうか、これが問題になつて来るのであります。  そこで、われわれといたしましては、この漁業権も全部漁業協同組合に持たせまして、組合が自然発生的共同経営をやるならばよろしい。しかし、やらなければ暫定的貸付を認めるという制度にすれば最も妥当なりと考えて、この考えを法案に盛り込むべく努力をして参つたのであります。これにつきましては、沿岸漁民の大多数、学識経験者の大多数が、先般もわれわれの考えに御賛成なつたのであります。しかし、この考えを実行いたしますについては、一つには水産団体の加入脱退自由という大原則と、一つには貸付禁止という原則と、この二つ原則を阻害するからいけないという有力な反対理由が明らかになつて参りまして、われわれは、やむなくこの希望を放擲せざるを得なかつたのであります。しかし、それがために日夜苦心した結果、委員長提出の修正案のごとく、漁業協同組合と一部資本家とが共同経営をなすことが大幅にできる道を明けたのでありまして、この点においては、われわれは賛成をいたすのであります。  なおそのほかに、ただいま申し上げましたように、不在地主的な賃貸借の個人の漁業権は、この法実施によつて全部消滅いたしまして、結局において漁民の団体、漁業協同組合に移ることに相なつたのであります。  ただ一つ、私が残念に思いますのは、北海道についてであります。北海道は定置漁業の四割を占めておるのであります。その北海道は、日本内地とは相当事情が違つておりま。すなわち、北海道の漁業権は非常にあとから発達しまして、明治時代以後最近に至るまで、移住して開拓した人が漁業権を持つております。これを一挙に取上げることは困難であります。いま一つは、北海道はさけ、ますの漁獲をやる。さけ、ますというものは、孵化事業と漁獲とが一体となつておるのであつて、内地と同じ規定はできないのであります。いま一つ北海道の特徴は、漁業の労働の六割までは、内地からの出かせぎ漁民によつてまかなわれておるのであります。従つて、地元の漁民なるものは少いのでありまして、この意味で、この法案を北海道にそのまま適用するのは不当であります。この意味において、われわれは、北海道について特に適当な規定を設けたいと努力したのであります。これも残念ながら実現いたさなかつたのでありますが、いずれ将来の時期をもつて、この実現に邁進いたしたいと考えるのであります。(拍手)  最後に、砂間君がお話になりました許可漁業の点であります。この許可漁業について規定が十分なされておらないということは、私も御同様遺憾に存じます。今時このきんちやく網、あるいはアメリカ式きんちやく網なるものが非常に発展して来まして、科学の進止とともに、あるいは電波探知機、あるいは電気集魚燈、これらをもつて漁獲がどんどんふえて参りました。こういうものが、おそらく近い将来には何十隻の船団を組んで世界の海に発展して行く可能性が、はなはだ多いと思うのであります。こういう発展性の許可漁業に対して十分な規定がなされておらぬということは、はなはだ遺憾ではありまするが、政府の答弁によれば、まだ調査が十分に行われておらない。発展途上でありますから、われわれとしても、なかなか規定はつくれなかつたのでありまして、事情やむを得ないと思つておるのであります。従つて一日も早くこの規定もわれわれは国会に提出して、法律といたしたいと考えているのであります。  最後に、この法律が実施になりますと、おそらく沿岸のいわゆる資本漁業家というものは、次第に存在の立場がなくなるだろうと思うのであります。先祖代々、この漁業権の開発に対して心血を注いで技術を研究して来られたこれら全国沿岸の網主の方々が、次第にその地位を失つて行かれるということを考えますると、この法案通過に際して、私は心からこれらの方々に対して御同情にたえないのであります。(拍手)お許しを得まして私のことを申し上げますならば、私も親子三代定置漁業を個人経営しておりましたが……(発言する者あり)十年前に、私は自分の事業を組合に移しまして、この法律になる漁業協同組合自営を実行いたしまして、今日十年間努めて来たのであります。ただいまここに、私の組合の方々が傍聴に来ております。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  21. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  22. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君(続) この歴史的な日本漁村改革漁業法案が通過する日に、私のきようまでの経験から討論に立てたことは、男子一生の名誉であると喜んでおる次第であります。これをもつて討論を終ります。(拍手
  23. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  24. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。(拍手)よつて両案とも委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  25. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 日程第一、薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案日程第二、大蔵省預金部特別会計外特別会計昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案日程第三、未復員者給与法の一部を改正する法律案、右三案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員会理事北沢直吉君。     〔北澤直吉君登壇
  26. 北澤直吉

    ○北澤直吉君 ただいま議題となりました薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、この法案が提出になりました趣旨について申し上げます。政府におきましては、薪炭の需給事情の好転に伴いまして、その需給の統制及び薪炭需給調整特別会計を廃止することを前提といたしまして、本年七月三十一日以降、新たな薪炭の買入れを停止すること、及びすみやかに残務を整理してこの会計の收支を明らかにするここといたしたのであります。しかしながら、この会計には昭和二十三年度以前に生じました損失額が約三十四億円ありまして、これに残務の整理によつて生ずることが予想されます現物の不足並びに手持薪炭の値引消耗損を加えますと、大体五十五億円の赤字が、生産結了時において発生することが見込まれておる次第であります。従つて、この会計の残務の整理を促進させます必要上、今年度において、その債務の支拂い財源に充てますために、五十四億七千万円を限り一般会計からこの会計に繰入金をすることができる道を開こうとしておるものであります。  この法案は、十一月十五日、本委員会に付託され、翌十六日、政府委員より提出理由説明聴取し、審議に必要な資料の提出を求めまして、十一月二十四日、二十五日の両日にわたり慎重審議を行いましたが、その詳細につきましては速記録によつて承知を願います。  次いで、十一月二十六日討論に入りましたところ、前尾委員民主自由党を代表しまして、この特別会計は永年にわたり制度が悪く、内容も疑惑の目をもつて見られたが、繰入金のみについて考えれば、生産者に対する未拂金は何としても支拂わねばならぬものであり、提案の限度の繰入れは、金融問題の早急解決にも必要である、損失に対する責任はもとより明らかにされなければならないが、今後債権の取立ても徹底的に実行され、生産者に対する支拂いも優先的に行われたい旨を述べて、賛成の意を表せられ、田中委員は社会党を代表して、赤字の原因、内容については幾多の問題がある、これを究明しないで、このような多額の損失を国民の血税をもつて補填すべきではない、さらに赤字補填の計画が発表されてから、卸売業者から回收率が著しく低下していて、今後も十億円程度の赤字が見込まれる状態である、従つて、赤字内容をさらに徹底的に検討する見地から本案の撤回を要求し、あらためて生産者に対する未拂金を支拂うため約二十億円の繰入れを行う案を新たに提出さるべきである旨を述べて、反対の意を表せられ、宮腰委員は民主党野党派を代表して、二十四年一月より四月にわたり不始末がある、これを片づけないで繰入れをすることには賛成できない、赤字は一時借入金をもつてまかなうべきである旨を述べて、反対の意を表せられ、林委員は共産党を代表して、赤字の原因の第一は、現物不足十四億円であつて、その内容は一つとして納得できるものがない、第二は卸売業者より要求されている保管料、消耗料、手直し料十億円であつて、これは卸売業者のやりくりのしりを持つて来たものである、第三は、赤字の計算について林野庁と会計検査院との間に相違のあることである、第四は、跡始末、未回收二十億円であるが、これは卸売業者が支拂うべきものである、このように不正の積つて出て来た赤字をこのままにしておいて、繰入金で補填せんとすることには賛成できない、政府は本案を撤回して赤字の原因を明らかにし、国民の血税を空しくしないようにすべきである旨を述べて、反対の意を表せられ、内藤委員は新政治協議会を代表して、本案は承認いたしがたい、その理由は田中委員、宮腰委員の述べられたところと同様である、繰入れは生産完了後に初めて行うべきものであり、この法案が出たために薪炭需給状態が混乱しておつて遺憾である旨を述べて、反対の意を表せられました。  次いで採決に入りましたところ、起立多数をもつて、本案は原案の通り可決いたしました。以上御報告申し上げます。  次に、ただいま議題となりました大蔵預金部特別会計外二特別会計昭和二十四年における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、この法案が提出になりました趣旨について申し上げます。この法案は、農業共済再保險特別会計昭和二十四年度における歳入不足補填のための一般会計からする繰入金に関するものでありまして、この法案が提出になりました趣旨は、農業共済再保險特別会計の農業勘定におきまして、異常災害発生のために本年度産麦の再保險金支拂いが増加し、これに対する支拂い財源が四億四千六十六万四千円不足することとなりますので、これを一般会計からする繰入金をもつて補填しようとするものであります。この趣旨に基きまして、この法案では、農業共済再保險特別会計の農業勘定の歳入不足補填のため、昭和二十四年度において一般会計から繰入金の限度が現在八億五千六十八万八千円となつておりますのを、四億四千六十六万四千円増加しまして十二億九千百三十五万二千円に改めようといたしております。  この法案は、十一月二十四日、本委員会に付託されたものでありまして、翌二十五日、政府委員より提案理由説明聴取し、二十六日質疑に入りましたが、その詳細は速記録によつて承知を願います。  次いで、討論を省略して採決に入りましたところ、起立総員をもつて原案のとおり可決いたされました。以上御報告申し上げます。(拍手)  次に、ただいま議題となりました未復員者給與法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、この改正法律案の要旨を申し上げます。未復員者にかかる給與につきましては、現在未復員者給與法によつて処理されているのでありますが、それによりますと、扶養手当は、配偶者は月額六百円、その他の扶養親族は一人につき月額四百円でありまして、政府職員の扶養手当が、配偶者及び十八才未満の子のうち一人について月額六百円となつているのと比較いたしまして権衡を失しておりますので、昨今の物価事情にもかんがみまして、未復員者に対しまして政府職員と同額の扶養手当を支給するように、所要の改正を加えようとするものであります。  この法立案は、十一月二十一日大蔵委員会に付託せられ、まず政府委員より提案理由説明聴取して、二回にわたり質疑を行い、その間、林、田中、川島、河田の各委員より熱心な質疑が行われました。その詳細の内容につきましては速記録を参照願いたいと存じます。  かくて、二十六日質疑を終り、ただちに討論を省略し、採決いたしましたところ、起立総員、これを可決いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  27. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。田中織之進君。     〔田中織之進君登壇
  28. 田中織之進

    ○田中織之進君 私は、ただいま上程に相なりました三案のうちで、まず最初に、委員長より報告せられました薪炭需給特別会計の赤字補填のための一般会計からの繰入れに関する法律案に対しまして、日本社会党を代表いたしましまて反対討論を行わんとするものであります。  まず、本法律案規定いたしておりますところのいわゆる薪炭需給調節特別会計は、薪炭需給調節特別会計法に基いて運用されておるのであります。しかるにもかかわらず、政府は、この法律の効力を、国会の承認を経ることなしに、行政府の一方的方針に基いて、本年の七月三十一日をもつて打ち切つたのは、これは法律違反の事項であるといわざるを得ないのであります。(拍手)ことに、これに先だちまして、実質的には三月三十一日をもつて薪炭の買入れを停止しておるというこの不当なる事実もわれわれは指摘しなければならないのであります。これが反対の第一点であります。  第二点は、薪炭会計の機能を停止いたしました理由は、薪炭の需給が円滑になりまして、需給会計を通じまするところの一手買上げ、一手販売の必要がなくなつたというのでは断じてないのでありまして、この薪炭需給特別会計が、政府の統制の失敗のために莫大なる赤字を生じて運用ができなくなつたことが、この特別会計の機能を停止いたしました理由になつておるのであります。  しかも、すでに八月一日以来約四箇月を経過いたしておるのでありますが、この間における本特別会計の精算事務は遅々として進まず、特に現物不足約十四億に対しますところの賠償、並びに卸売業者から未回收になつておりますところの売掛金の取立て、これは約二十二億ございます。こうしたことに対しましては、まことに手ぬるいのでありまして、一方約二十億に達しますところの零細なる製炭業者に対しますところの代金の未拂いは、八箇月を経過いたしました今日におきましても、ろくろく利子すら拂われずに放置されておるのであります。  こういうように、零細なる製炭業者に対する二十億からに上りますところの未拂金をそのままにしておきまして、いわゆる金融独占資本の本家でありますところの日本銀行より借り入れました薪炭証券の五十四億七千万円を、国民の血税から補填しようとするのでありまして、われわれは、薪炭の予算案に対しまして——総額わずか三百六十数億の予算の中で、あるいは六・三制の十五億にいたしましても、失業者対策の八億にしても、ほんの涙ほどしか必要なる予算を計上しない半面におきまして、この赤字の内容がいまだ不明確であり、これにつきましては刑事問題すら発生することが今や必至の情勢にあるやさきにおきまして、国民の血税から五十四億七千万円をこの赤字補填のために費そうとすることに対しましては、われわれは断固として反対せざるを得ないのであります。  政府は、この薪炭特別会計の赤字の原因については、歴代内閣の責任にこれを転嫁しようといたしておりますが、昭和二十二年度までの本特別会計の決算は、いずれも薪炭特別会計法に基いて行われた決算報告で明らかなように、その報告によりますると、二十二年度末には、その赤字はわずかに一億四千万円でございます。しかるに、二十三年度末に至りまして、その赤字が三十三億五千万円という厖大なる数字に達したのでありまして、これは現内閣の責任であることはいうまでもありません。(拍手)(「でたらめだ」と呼ぶ者あり)これは決して、でたらめを申しておるのではありません。われわれの要求に基いて大蔵委員会に提出いたしましたところの会計検査院の資料が、有力に物語つておるのであります。(拍手)  ことに、この会計の赤字の内容検討する上に重要な点は、薪炭証券五十四億七千万円のうちで、二十八億数千万円というものは、本会計の実質的な機能が停止されました本年の五月二十日に、一度に発行されておるという事実であります。政府はこれに対しまして、四月、五月、六月、七月も若干の買入れを行つておるということを申しておりまするが、買入れとともに、政府の売上金の回收ができておるはずでございます。かように、本会計の機能を実質的に停止いたしました本年の五月二十日に、薪炭証券の残りの二十八億数千万円というものを一度に発行いたしましたが、この金がどういうように使われておるかということに対して精細なる答弁を要求いたしましたにもかかわらず、政府当局は、本案の審議が完了するまでの間に、その資料を提出することができないのであります。生産者に拂つておると申しまするならば、この法案をもつて約二十億の生産者に対する未拂金を拂わんとする政府のこの意図は、われわれ国会を欺瞞するものである。  ことにわれわれは、この今回の特別会計からの繰入れは、現に精算事務が進行いたしておりまするところの本会計に対し、障害になるという事実を指摘せざるを得ないのであります。何となれば、これまた政府が大蔵委員会の要求に基いて提出した資料によりましても、政府からこの薪炭会計の赤字を一般会計から補填するという方針が示されて以来、卸売業者からの未回收金の取立てが月ごとに減つておるという事実は、これをわれわれは否定することができないのであります。(拍手)  われわれはさらに、最近における三重県木炭事務所を中心といたしまするところの、十万俵のいわゆる空気木炭の問題を初め、この赤字発生の原因につきましては徹底的に糾明せざる限り、この一般会計からの繰入れに対しましては断じて承服ができないのであります。(拍手)  政府説明によりましても、この五十四億七千万円の一般会計からの繰入れのうちで、二十億は、さしあたり生産者の未拂代金に充てると申しております。そうするならば、残りの三十四億は薪炭証券等の返還に充てるわけでありますから、われわれは、この会計の精算が結了するまでは、五十四億七千万円のこの赤字補填は、しばらく猶予いたしまして、この会計の赤字の原因を徹底的に糾明すべしということを主張するのであります。  現に政府は、この法律の提出にあたりましても、われわれから強く要求されて初めて——閉会中の予算委員会におきまして、三浦林野庁長官は、ただ一般会計から法律的な手続きを要せずしてこの赤字補填ができるようなことを申しておつたのであります。われわれがこれを追求したからこそ、水田大蔵政務次官なり、あるいは河野主計局長は、必ず法律的手続きをとると言つて、われわれに指摘されて初めて出して参つたのであります。さらに、予算委員会における与党の池田正之輔君を委員長とする小委員会におきましても、本特別会計の赤字がさらに増加するであろうということを指摘しておるのでありまして、われわれは、この赤字の原因を究明し、赤字に対する責任を追及した後でなければ、国民からの血税をもつてこの赤字を無批判的に補填するということには、断じて賛成できないということを申し上げて、私の討論を終る次第であります。(拍手
  29. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 村瀬宣親君。     〔村瀬宣親君登壇
  30. 村瀬宣親

    ○村瀬宣親君 私は、民主党野党派を代表して、ただいま上程せられました薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案に絶対反対の意を表明するものであります。(拍手)  薪炭需給調節特別会計の損失については、政府は、昭和二十二年末までの損失十四億六千四百万円、昭和二十三年度末までの損失十九億七千万円、合計三十四億三千四百万円と発表しておりますが、会計検査院の調査によると二十九億五千七百万円となつているのであつて、両者の金額は根本的に相違しているのであります。  この損失の原因について、農林省は、現品が未生産であるのに支拂証票を発行したためとか、支拂証票を二重に発行したためなど、二十一項目に及ぶ理由を掲げておるのでありますが、たとえば亡失による損失額十余億円の内容を見ても、はなはだ信憑性の乏しい、不可解しごくな金額であります。(拍手)また農林省は、二十四年度損失見込額を二十一億六百万円と推定しております。二十四年度に支拂つた過年度支出額及び今後支拂うべき過年度支出の金額も明らかにせず、また二十四年度において会計法上許容せられる過年度支出の最高額すら判明しておらないのであります。  会計検査院は、薪炭特別会計の損失額の中に、昭和二十二年度の支拂い未済を、二十三年度分において一億八千万円を過年度支出として決済し、さらに二十三年度の支拂い未済を、二十四年度において五億五千万円を過年度支出として決済している事実を指摘しておりまするが、二十三年度においては、支拂い元受資金に余裕がなかつたのみならず、予算外残額もなかつたのでありまするから、これは、薪炭特別会計が無軌道をもつて、めちやくちやの予算経理をしたその跡始末を、二十四年度において新規に発生した経費のごとく装い、これを支出して当面を糊塗せんとしたところを、会計検査院に摘発せられたのであります。(拍手)  かくのごとく、会計法第十一條及び第十二條の支出負担行為に関する規定や、同法第十四條の支出予算に関する規定並びに同法第二十七條の過年度支出の規定に違反した支出をなし、国の財政を紊乱した薪炭特別会計については、その責任の帰趨を明らかにすることが、繰入れ可否決定の先決問題であります。いわんや、数十億円に上る損失が何によつて起り、いかなるところにその原因があるかをも明らかにせず、かつその金額についても、会計検査院との間に、はなはだしき不突合いを来しておる事実をきわめずして、漫然国費をこれに投入せんとするは、国みずから財政の紊乱を助長し、不正にくみする結果を招来するおそれがあるのであります。(拍手)  薪炭に関する不正問題は、国家警察において取り調べられることでもありますから、これらの関係が詳細に判明したる後に本案を提出すべきであります。従つて、生産者に支拂うべき債務は、政府において一時借入金により処理すべきであつて、国民より徴收せる血税をもつて支拂うべきものでは断じてないのであります。(拍手)  以上の理由により。本法案には断固として反対するものであります。(拍手
  31. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 深澤義守君。     〔深澤義守君登壇
  32. 深澤義守

    ○深澤義守君 ただいま上程されております薪炭需給調節特別会計に対する一般会計からの繰入れに関する問題につきまして、私は日本共産党を代表いたしまして断固として反対するものであります。  五十四億七千万円の、一般会計から特別会計への繰入れでありますが、この赤字の原因を明確にせずして、国民の租税によつてこれを負担するということに対しましては、おそらく全国民の納得し得ざるところであります。     〔発言する者あり〕
  33. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 靜粛に。
  34. 深澤義守

    ○深澤義守君(続) まず第一に、この赤字の第一の案件は現物不足十四億でありますが、この内容検討いたしますれば、木炭五百十五万九千俵、これが不足しているのであります。まきにおきまして二千三百八十二万五千把であります。ガスまきが二十七万五千俵であります。しかも、その現物不足の原因というものは十七項目にわたつているのでありまするが、この十七項目が、いずれも徹底的に糾明するならば、すべて刑事上の犯罪を構成するというような事情によつて、この現物不足が行われているのであります。国警当局も、この問題は重視いたしまして、全国的な調査をやつているということが言明されているのであります。  われわれは、かかる不正に満ちた原因によつて現物不足が行われているものを、そのままこれを隠蔽いたしまして、国民の負担にするということに対しましては、断固として承服せざるところでございます。かかる厖大な現物が不足しておるのに、いまだかつて何人も政治上及び行政上の責任を明らかにしていないということは、今日の政治がまつたく国民を無視した政治であると言わざるを得ないのであります。(拍手)  さらに赤字の第二の原因は、予定外経費の支出の問題であります。これが十五億三千五百万円あるのでございます。この経費は、生産者価格と消費者価格との間にあるところの中間経費百円によつて、すべてまかなわるべき性質のものであります。しかるに、それにもかかわらず、備蓄保管料七億六千四百万円、これは備蓄保管と申しますが、卸売業者が道の端に雨ざらしにして積んでおつたあの薪炭に対してすら保管料を拂つているのであります。さらに卸売業者の横持料も、すでに卸売業者がまつたく処分してしまつたものに対しても、なおかつ横持料を拂つておるという実情があるのであります。集荷業者に対する手数料、あるいは早期築窯、特別小出し賃等は、いずれも生産者と消費者の中間にある業者を利益したところの負担でございまして、一般国民の断じて納得し得ざるところであります。さらに会計検査院は、この支出に対しまして、いずれも適当でないという断定を下しているのでございます。こういうことを隠蔽いたしまして、われわれ国民の負担によつてこの赤字を埋めるということに対しましては、断じて賛成し得ない。  さらに政府当局は、生産者に対する支拂いがあるからと申しまするが、卸売業者が政府にいまだに支拂つていないところの金額が二十二億以上あるのでございます。これを何ゆえに政府は回收することに怠慢であるか。政府は、一般国民に対して見当のつかない税金を押しつけて、それをとることに対しましては権力をもつてつておるけれども、この現物を拂い下げた代金の支拂いに対しては何ら強行の手段をとつていないというこの事実は何事であるか。(拍手)卸売業者が政府の支拂いを遅延いたしまして、現金に困難しておるところの生産者が、炭を持つてつておるものを、安くたたき買いしておる事実があるのであります。この事実を無視いたしまして、われわれは国民の負担によつてこの赤字を埋めるということに対しましては、断じて賛成し得ざるところであります。  この意味において、日本共産党は、この赤字補填に対しましては断固として反対せざるを得ないのでございます。(拍手
  35. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 松谷天光光君。     〔松谷天光光君登壇
  36. 松谷天光光

    ○松谷天光光君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、ただいま上程になつておりまする三法案のうち、薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案に対しまして、…     〔発言する者あり〕
  37. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 靜粛に願います。
  38. 松谷天光光

    ○松谷天光光君(続) 絶対反対の意を表するものであります。  本年の五月以降、夏の汗の出る時分におきまして、われわれ消費者は、薪炭の押売りを受けたのであります。しかるに、われわれ勤労大衆の財政からいたしまして、冬を見越しての買いだめは不可能でありました。今日すでに冬に向かい始めました折においても、今年一ぱいに一俵の配給がいかがであろうかという報道を受取りまして、唖然たらざるを得ないのであります。(「何の一俵だ、言つて見ろ」と呼ぶ者あり)木炭一俵であります。われわれが、こうして不安におののき、しかも東京都の例から見まするならば、都内に、炭はまさに二十一万俵が山積されておるのでありまするが、これが、今回問題になつておりまする薪炭特別会計の精算によりまして、業者はこれを安く買いたたこうといたしまするし、農林省は高く売らんとするところのこの行き違いから、いまだ手がつけられずして、この山積する炭にはペンペン草がはえながら、われわれ消費者のところには、一俵の配給もいまだ実行できないという状態に追い込まれておるのであります。(拍手)  われわれ国民は、この現政府のいわゆる無能または無責任なる状態対して不満を持つておりましたるやさき、今日ここにまた上程されて参りました本法案を見まして、われわれは、またこの不満を一層憤怒にまで移さなければならないのであります。なぜならば、私どもがこの炭を買わんといたしまする際には、掛売りは断じて許されないのであります。あらゆるくめんをしながら、現金を持たねば、われわれは現品を受取れないのであります。こうして、われわれが苦労をして支拂いましたその貴重なる代金が、一体どこに姿を隠したのでありましようか。すでに野党各派が追究いたしておりまするように、その行き場の責任すらも完全に追及されることなくして、今われわれは、また二重に、われわれの納めた税金の中からこの赤字を補填するという、この法案を受取らざるを得なかつたのであります。(拍手)  先ごろ、十月三十一日の本議場におきまして、社会党井上議員よりの薪炭特別会計に対する緊急質問に対しまして、森農林大臣は、「一般会計からの五十数億の繰入れは、赤字補填という意味ではありません。」と言われておるのでありまするが、しかし、これが赤字でなくして、いかなるものをもつて赤字補填とわれわれは解釈するのでありましよう、(拍手)解釈に苦しむところであります。  あるいはまた、われわれ野党が、ただいままで各派から説明をいたしておりましたように、この五十四億、その中には零細なる生産者に対するところの支拂いも含まれておるのであると政府は答弁されるのでありまするが、また同日の本議場における水田大蔵政府委員のその答弁によりますると……。(「政務次官だ、直せ」と呼ぶ者あり)政府委員でありますから、政務次官も同じことであります。いわゆる未收金をもちまして、この零細なる生産者に対する未拂いはこれを必ず返すのである、かように申されております。従つて、いわゆる薪炭証券の五十四億七千万円と、繰入金の五十四億七千万円が同額であつても、未收金を必ず回收するのであるから心配するな、という意味のことを申されておるのでありまするが、しかし、すでにこの回收が、もはやそのパーセンテージを低下させておるという今日の状態から参りましても、あるいはまた、今後においてこの回收が完全にはたしてなされるやいなやということは、まことに不明であるのであります。ことに、このような、まことに不明確なるその財源をもつて零細なる生産者には充て、一方金融資本に対しましては、国民の血税をもつてこれに充てるというところに、われわれの憤怒はまた一段と燃えざるを得ないのであります。(拍手)  また、この赤字の内容につきましては、すでに野党各派から出ておりますので、詳細は省きますが、いわゆる予算項目の項目外の支出、横持料であるとか、あるいはまた、手数料の値上げであるとか、あるいは備蓄経費の予算外の支出でありまするとか、こうしたいわゆる項目外の支出、あるいはまた、本特別会計が特に卸業者に完全に今日まで利用されておつたというようなその内容から、これは木炭事務所というものが、その仕組みにおきまして、どうしても業者に依存しなければならないというようなそのあり方から参りましても、いわゆる卸業者たちが薪炭の目減りを不当に評価いたしまして、買いたたきをいたしましたり、あるいはまた未拂金を転用して高利を得ておりましたり、あるいはまた備蓄用の薪炭を流用いたしましたり、あるいはまた、表面上調定未済で政府の所有に属しておりますところの薪炭を、実際上は配給にまわしてみたりしておりながら、国庫に対する收入は未済の状態を続けておる。  また、先ごろ説明されておりましたように、現物自体が不足しておる。いわゆるから供出であるとか、あるいは行方不明であるとか、あるいは盗難であるとかいう理由のもとに、これは従来の慣例と申しましようか、手落ちと申しましようか、未だに一度のたなおろしさえもなかつたというルーズな状態において、この莫大なる損失が出て来ておるということに対しまして、われわれは、これをただ見のがすことはできないのであります。あるいはまた、特に関係官僚の無能と腐敗によりまして、この特別会計に寄生するところの腐敗官僚が根強く跋扈いたしておるのにかかわらず、林野当局は、これを押える能力がない始末であります。たとえば、三重県におけるあの空気木炭の例であるとか、あるいは高知県における、からすまきの例であるとか、これらの金が政治資金にまで流用されておるということをうわさに聞き、問題になりつつあるというような点から考えてみましても、われわれは、まずこれからの責任がどこにあるか、この赤字がいかなる内容を持つかということにつきまして、徹底的に糾明をまず第一にさせなければならないということを強く強要するものであります。  今日、補正予算の中におきましても、その組み入れられた内容の一、二を拾つてみますと、皆さまの最もかわいいお子さんたちの教室には、わずかに一つ当り二千円の補助費より組んでございません。あるいはまた、一千万と予想されるところの失業者の対策に対しましては、わずかに八億五千万円より計上しておらないのでありますが、それにもかかわらず、このような行方知れずに消えましたところの、しかもわれわれがすでに苦労して現金を出して買いましたはずのその行きどころにつきましても、先ほども申し述べるように追究をせずして、ここに五十四億七千万円という莫大なるわれわれの血税を注ぎ込もうという、このやり方につきましては、まさにわれわれ勤労国民を犠牲にすることによりまして悪徳官僚と悪徳ボスのしりぬぐいをせんとする対策であると断言しなければならないのであります。(拍手)まさに、いかなる角度から考えてみましても、本法案は、いわゆる政界のボス、官界のボス、業界のボスに対するところの、いわゆる私腹擁護対策であるということを断ぜざるを得ないのでありまして、かかる観点からいたしまして、私ども労働者農民党は断固として反対をいたす次第であります。(拍手
  39. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず、日程第一、薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につき採決いたします。この採決は記名投票をもつて行ないます。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  これより氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  40. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 投票漏れはありませんか。投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  41. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 二百八十六   可とする者(白票)  百八十八     〔拍手〕   否とする者(青票)   九十八     〔拍手
  42. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) ただいまの投票の結果、薪炭需給調節特別会計における債務支拂財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)     —————————————     〔参照〕  本案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名    阿左美廣治君  足立 篤郎君    安部 俊吾君  青柳 一郎君    淺香 忠雄君  麻生太賀吉君    井手 光治君  飯塚 定輔君    池見 茂隆君  石田 博英君    今泉 貞雄君  岩本 信行君    宇野秀次郎君  内海 安吉君    江田斗米吉君  江花  靜君    小川原政信君  小高 熹郎君   小野瀬忠兵衞君  小淵 光平君    尾崎 末吉君  尾関 義一君    越智  茂君  大石 武一君    大泉 寛三君  大上  司君    大澤嘉平治君  大橋 武夫君    大和田義榮君  岡延右エ門君    岡崎 勝男君  岡野 清豪君    押谷 富三君  鍛冶 良作君    風間 啓吉君  柏原 義則君    甲木  保君  上林山榮吉君    川野 芳滿君  川端 佳夫君    川村善八郎君  川本 末治君    菅家 喜六君  木村 公平君    北川 定務君  北澤 直吉君    金原 舜二君  倉石 忠雄君    栗山長次郎君  黒澤富次郎君    小金 義照君  小平 久雄君    小玉 治行君  小西 英雄君    小峯 柳多君  小山 長規君    五島 秀次君  河野 謙三君    近藤 鶴代君  佐久間 徹君    佐々木秀世君  佐藤 榮作君    坂田 道太君  志田 義信君    塩田賀四郎君  篠田 弘作君    島村 一郎君  白井 佐吉君    庄司 一郎君  周東 英雄君    鈴木 仙八君  瀬戸山三男君    關内 正一君  千賀 康治君    田口長治郎君  田中 啓一君    田中  元君  田中 萬逸君    田渕 光一君  多田  勇君    多武良哲三君  高木  章君    高木吉之助君  高木 松吉君    高塩 三郎君  高橋 英吉君    高橋 權六君  高橋  等君    高間 松吉君  竹尾  弌君    玉置 信一君  中馬 辰猪君    塚田十一郎君  塚原 俊郎君    土倉 宗明君  辻  寛一君    圓谷 光衞君  坪内 八郎君    苫米地英俊君  冨永格五郎君    奈良 治二君  内藤  隆君    中川 俊思君  中野 武雄君    中村 純一君  仲内 憲治君    中村  清君  中村 幸八君    永井 英修君  永田  節君    夏堀源三郎君  二階堂 進君    丹羽 彪吉君  西村 英一君    西村 直己君  西村 久之君    根本龍太郎君  野原 正勝君    野村專太郎君 橋本登美三郎君    橋本 龍伍君  幡谷仙次郎君    畠山 鶴吉君  花村 四郎君    原田 雪松君  樋貝 詮三君    平島 良一君  平野 三郎君    廣川 弘禪君  福田 喜東君    福永 健司君  藤井 平治君    藤枝 泉介君  淵上房太郎君    船越  弘君  古島 義英君    降旗 徳弥君  星島 二郎君    細田 榮藏君  眞鍋  勝君    前尾繁三郎君  前田  郁君    前田 正男君  松井 豊吉君    松木  弘君  松田 鐵藏君    松野 頼三君  松本 善壽君    丸山 直友君  三池  信君    三浦寅之助君  三宅 則義君    水田三喜男君  水谷  昇君    南  好雄君  宮幡  靖君    武藤 嘉一君  村上  勇君    村上 清治君  守島 伍郎君    森   曉君 藥師神岩太郎君   山口喜久一郎君  山口 好一君    山崎  猛君  山本 久雄君    吉田 省三君  吉田吉太郎君    吉武 惠市君  龍野喜一郎君    若林 義孝君  渡邊 良夫君    亘  四郎君  天野  久君    犬養  健君  奧村又十郎君    金光 義邦君  小坂善太郎君    小松 勇次君  田中伊三次君    田中不破三君  橘  直治君    坪川 信三君  中村 又一君    長野 長廣君  原   彪君    保利  茂君  山本 利壽君  否とする議員の氏名    足鹿  覺君  青野 武一君    淺沼稻次郎君  井上 良二君    猪俣 浩三君  石川金次郎君    大矢 省三君  岡  良一君    加藤 鐐造君  上林與市郎君    佐竹 新市君  坂本 泰良君    田中織之進君  戸叶 里子君    土井 直作君  中崎  敏君    成田 知巳君  前田榮之助君    松井 政吉君  松岡 駒吉君    松澤 兼人君  松本 七郎君    三宅 正一君  門司  亮君    八百板 正君  山口シヅエ君    米窪 滿亮君  荒木萬壽夫君    有田 喜一君  稻葉  修君    小野  孝君  川崎 秀二君    北村徳太郎君  小林 運美君    河本 敏夫君  坂口 主税君    笹山茂太郎君  志賀健次郎君    椎熊 三郎君  清藤 唯七君    園田  直君  千葉 三郎君    床次 徳二君  中島 茂喜君    中曽根康弘君  長谷川四郎君    畠山 重勇君  林  好次君    福田 繁芳君  藤田 義光君    増田 連也君  宮腰 喜助君    村瀬 宣親君  柳原 三郎君    井之口政雄君  伊藤 憲一君    池田 峯雄君  江崎 一治君    加藤  充君  春日 正一君    上村  進君  神山 茂夫君    柄澤登志子君  川上 貫一君    河田 賢治君  苅田アサノ君    木村  榮君  今野 武雄君    田島 ひで君  田代 文久君    田中 堯平君  高田 富之君    竹村奈良一君  谷口善太郎君    土橋 一吉君  梨木作次郎君    林  百郎君  深澤 義守君    山口 武秀君  米原  昶君    渡部 義通君  石田 一松君    金子與重郎君  吉川 久衛君    河野 金昇君  竹山祐太郎君    寺崎  覺君  内藤 友明君    羽田野次郎君  松本 瀧藏君    山手 滿男君  石野 久男君    岡田 春夫君  黒田 寿男君    玉井 祐吉君  中原 健次君    松谷天光光君  佐竹 晴記君     —————————————
  43. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 次に、日程第二及び第三につき採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手
  45. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 日程第四、日本通運株式会社法を廃止する法律案日程第五、通運事業法案日程第六、日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案、右三案は同一の委員に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長報告を求めます。運輸委員会理事前田郁君。     〔前田郁君登壇〕     —————————————
  46. 前田郁

    ○前田郁君 ただいま一括議題となりました日本通運株式会社法を廃止する法律案通運事業法案日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  右三法案は、いずれも十一月二十三日、本委員会に付託され、二十四日、政府から提案理由説明聴取して以来、委員会を開くこと三回、慎重審議いたしたのであります。     〔議長退席、副議長着席〕  まず法案の趣旨を簡単に申し上げますれば、日本通運株式会社を廃止する法律案は、通運事業の公正な競争を保障するためには、現在の特殊会社としての日本通運株式会社の性格は適当ではないので、通常の商事会社とするために日本通運株式会社を廃止せんとするものであります。  次に通運事業法案は、小運送業の現状には独占的な弊害が見受けられ、荷主、公衆に対するサービスの低下の傾向も生じておるのでありますから、この際すみやかにその弊害を取除き、通運事業の公正な競争を保障し、その健全な発達並びに鉄道による物品運送の効率の向上をはかり、公共の福祉を増進せんとするものであります。  次に、日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案は、日本国有鉄道所有地内に通運事業者の施設を公平に利用せしめ、通運事業の公正な競争の確保に資するために、日本国有鉄道にこれらの施設を譲り受け、または賃貸させ、なお日本国有鉄道が所有する日本通運株式会社の株式を同会社に譲渡させること等を目的としたものであります。  次に質疑応答は、本法案によつて日本通運株式会社の独占的性格はまつたく排除されたとは認めがたく、日通の網が全国的に張りめぐらされている現状において、新たに免許を受けた業者が、はたして日通と自由公正な競争をなし得るかどうか免許基準は抽象的であるが、将来どの程度に新規事業を免許するつもりであるか、通運計算事業を認可制にしたのはどういう理由であるか、新たに免許せられた通運事業者が計算事業を営むことができるように事業者団体法の適用除外を規定する必要があるのではないか、等の点に集中されたのであります。特に最後の点については、政府において法律改正を用意せられたいとの強い要望がありましたが、これに対しまして、政府といたしましては、次期国会において要望に沿うごとく極力努力いたす旨の答弁がありました。なお質疑応答の詳細につきましては会議録に譲りたいと思います。  かくて、一昨二十六日質疑を打切り、三法案一括議題として討論に入り、日本社会党米窪滿亮君から反対意見を、民主自由党關谷勝利君から賛成意見を、日本共産党柄澤登志子君から反対意見を、民主党第九控室清藤唯七君から賛成意見を、労働者農民党石野久男君から反対意見を、それぞれの党を代表して述べられたのであります。  かくて討論を終局して、ただちに三法案を一括採決の結果、三法案とも原案通り可決いたした次第であります。  以上、簡單ながら御報告を終ります。
  47. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。松井政吉君。     〔松井政吉君登壇
  48. 松井政吉

    ○松井政吉君 私はただいま議題となつております日本通運株式会社法を廃止する法律案通運事業法案日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案、これに対しまして、特に通運事業法案を中心として、日本社会党を代表して、反対意見をきわめて簡單に申し述べる次第であります。  日本通運株式会社によつて小運送業及び通運関係事業が独占されておるということにつきましての弊害は、あえてわれわれも認めないわけには参らないのであります。従いまして、日本通運株式会社を廃止するという法律案について強く反対する意思はないのでありますが、日本通運株式会社法を廃止いたしまして、小運送業及び通運事業を公共の福祉と社会化のためにつくらなければならない通運事業法の内容が、きわめて社会化されておらない、さらに公共の福祉に沿うような形において立法化されていないという点が、われわれの反対しなければならない内容であります。  たとえば、第六條におきまする免許基準の規定におきましても、この法律によりまして六條を適用する場合に、免許基準の方式を中心とする濫立と混乱を排除することが、この條文からは不可能であります。もし濫立と混乱を排除することが不可能だということになりまするならば、鉄道施設の利用に対しまして大きな妨げが生ずることは御承知の通りであります。従いまして、こういう事柄につきましても妥当な基準を採用するために、あるいは公共の福祉、鉄道施設の高率的効用等の見地から、免許基準の改正免許基準の実質的な條項というものが法の内容に盛られていなければならないということであります。  さらに十二條におきまする事業計画の変更につきましても、輸送秩序の確保が不完全であります。さらに十三條の自動車の場合におきまして、あるいは二十六條の事業改善の命令の問題にいたしましても、運輸大臣の命令だけで決定することは、きわめて妥当を欠いておるのであります。審議会の諮問を経たならば、いかなる事柄でありましても——事業改善の命令を発する前には、審議会に諮問いたしまして、その権限を非常に尊重する建前から取扱わなければならないのでありまするが、この條文にも、かなりこの点に対する不満があるのであります。  さらに、二十八條の認可規定のところにおきまする通運計算事業の面におきましては、弊害と混乱を生ずる内容が、かなり立法の内容の中にうたわれているのであります。従いまして、その結果惹起いたします問題は、保証金積立等による減価償却が荷主への運賃過重の結果となるので、勢い必要以上の競争が起こりまして、業界に不明瞭な事態を惹起するおそれが、この法律からいうと看取されるのであります。  さらに三十三條におきまする運輸審議会の諮問規定でありまするが、特に免許許可、認可、あるいはその他の処分に関する事項につきましては、運輸審議会のきめられた、あるいは運輸審議会で出ました意見を中心にして、民主的に行わなければならないのでありまするが、この法律からいいますると、民主的に行われるよりも、むしろ運輸大臣の権限が大幅に拡大されている感を抱かざるを得ないのであります。  さらに三十七條におきまする報告、検査の條項でありまするが、これは通運計算事業者及び事務所、事業場に、いわゆるその計算の検査及び報告等のために、書類、会計、物件の調査に運輸省の官吏が出かけることに相なつているのであります。もし、この事柄が必要以上に許されるならば、これは過去において通運事業が濫立、混乱いたしまして、非常な贈賄等不正事件を起した時代におきまする弊害が再び起る原因をつくるものでありまして、こういう内容につきましては、われわれは了承できかねるのであります。  従いまして、この法律内容を全部通してながめました場合に、おきまして、われわれが日本通運株式会社法を廃止いたしまして、通運事業の社会化、民主化、計画化の中に、きわめて秩序あるところの通運行政、通運事業、通運の運営をやらなければならないというわれわれの考え方からは、内容において、はるかに遠いものがあるということを指摘せざるを得ないのであります。こういう角度から、わが党といたしましては、修正案を作成いたしまして、修正をいたす予定でおりましたが、これは時間の関係その他で、委員会において取上げることが不可能な状況に相なつたのであります。従いまして、ただいま申し上げた社会化の方向が明確になつていない、さらに計画性が乏しい、特に官僚独善の傾向が内容を占めておる、さらに混乱時代の再現が来るおそれがある、こういうような形におきまして、立法の内容における不備を指摘いたしまして、この点から本法案反対意見を申し述べた次第であります。
  49. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 柄澤登志子君。     〔柄澤登志子君登壇
  50. 柄澤登志子

    ○柄澤登志子君 ただいま一括上程されました通運事業法案日本通運株式会社法を廃止する法律案日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案、この三案に対しまして、日本共産党の立場から反対意思を表明するものでございます。  この法案は、昭和十二年に小運送事業法を制定いたしまして、日本通運株式会社によつて独占さられて参りました日本の小運送事業というものを、この独占の形態から解放して、公共の利益に合うべく自由競争をここで確立して行くということにあるのでございますけれども、私どもといたしましては、むしろこの三法案が実施されますことによりまして、実質的には日本通運株式会社のこの独占的な性格がむしろ強化されるのではないかという点、こういう点につきまして、反対理由を申し上げたいのであります。  大体、この法案の立法化されますところの順序が非常に非民主的なのでございます。小運送事業法案から、当通運事業法案ができます間に、すでに政府は、昨年の十一月二日、閣議をもりまして、運送事業の複数制ということを実施しておるのでございます。これにつきましては、何ら国会に諮ることもなく、広汎な民衆の意思を聞くところの公聴会その他をも開かずに行われたのでございまして、この複数制が、現実にこの法案の出ます前に、すでに既成的な事実となつて現れておるのでありまして、この既制的な事実をつくつた上におきまして、政府はこの法案を出したのであります。これは、最近の吉田内閣のとつておりますあらゆる法案に対しますところの国会無視の現れでございまして、私どもは、今後かかる政府のやり方に対しましては断固反対せざるを得ないのであります。  しかも、この小運送事業の複数制ということは、今度この法案におきまして免許制という形で取扱われておるのでありますが、その免許制が運輸大臣の許可によるということになつております。そうして、運輸大臣は運輸審議会にこれを諮問するということになつておるのでございますが、法律的な建前は別といたしまして、具体的な事実をもつて、この昨年以来実施されておりますところの政府の方針について、今多くの運送業者あるいは荷主の間から起きておるごうごうたる非難が、この法案の不備を明らかに物語つておるものであります。  それは、一駅二店制ということを主張しながら、情実その他によりまして、地方ボスと結託いたしまして、いろいろな巷間伝わるところのかけひきが行われ、これに対する一般人民の不満が高まつて来ておるのであります。これは交通新聞などすでに明らかになつておりまして、九月十一日の交通新聞と、十月二日の交通新聞には、吉田内閣のこの小運送事業に対する方針に対する輿論というものが、明らかに反映されておるのであります。  具体的に申し上げますならば、現在複数制が実施されましたのは函館、仙台、新潟でございます。この新潟は、一駅二店制ということが、すでにその範囲を越えております。また現に、岡山におきますところの認可についての申請が、運輸審議会でなぜ許可が出ないでおるかということにつきましては、地方ボスと政党との間におけるいろいろな好ましからざるうわさが、われわれの耳にも伝わつておるのでありまして、地方ボスが、むしろ今後この認可制によつてはびこり、それを政党が利用する方面で、われわれは十分警戒しなければならぬものと考えられておるのであります。  さらに、非民主的な運輸大臣の認可、運輸審議会の現在の諮問ということに対しまして、われわれが反対するだけでなく、日本通運株式会社法を廃止することによりまして、一応日本通運株式会社は、いわゆる集排法の適用を除外することができるかもしれないのであります。しかし、シヤウプ勧告案によりまして、現在日本通運株式会社は、国に対する税金の負担を大きく任務づけられておるのでありますが、この法案によりますと、日本国有鉄道所有地内にある日本通運株式会社施設処理等に関する法律案におきまして、この持つておりますところの諸施設は、日本国有鉄道に肩がわりするのであります。そのことによりまして、日本通運株式会社は、いわゆる固定資産の再評価によるところの厖大な税金をまず免れることができるのであります。のみならず、そのことによりまして、日本通運株式会社中にございます、日本国有鉄道の持つておりました九十九万株に上りますところの、今まで国有財産でありました株式というものは、日本通運株式会社のものになるのでございます。このことは、つまり日本通運株式会社の株式を強化することになるのでございまして、むしろこの独占性を強化するということにほかならないのであります。そのことによりまして、かりに小さな店を複数制によつて許可いたしましても、大きなうわばみが、小さなうわばみをのみこみむように、依然として日本通運の独占性というものは、日本の通運、小運送事業におきましては、嚴然としてこれが存在するということになるのでございます。  さらに、この通運計算事業というものが、やはりこの事業の死命を制することになるのでありますが、これは日本通運が…。
  51. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 柄澤君、結論をお急ぎください。
  52. 柄澤登志子

    ○柄澤登志子君(続) この事業を握つておるのでございまして、この点からも、依然として日本通運の独占性というものは、何ら微動だにもしないのであります。でありますから、結論から申しますれば、この法案は、シヤウプ勧告案によるところの税制改革に際して、日本通運が大いに利益を得ること、そのことによりまして、同時に日本国有鉄道の厖大な赤字を前にいたしまして、運賃値上げを前にいたしまして、日本国有鉄道の現実的な財産でありました株式は、全部通運に移管されて強化されるということであります。また自由競争を建前としておりますところの複数制にいたしましても、免許制にいたしましても、これは、非常に非民主的な方法できめられますので、むしろ地方ボスと政党との惡因縁を強化して、弊害をもたらす以外の何物でもないという点を指摘いたしまして、日本共産党といたしましては、この法案に絶対に反対するものであります。(拍手
  53. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  三案を一括して採決いたします。三案の委員長報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数、よつて三案とも委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  55. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  56. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加さられました。  地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員会理事菅家喜六君。     〔菅家喜六君登壇
  58. 菅家喜六

    ○菅家喜六君 ただいま議題となりました地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案につき、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  御承知のごとく、今年度の地方財政は、国、地方を通ずる総合予算の均衡を期するため、極度の緊縮を余儀なくされたのでありますが、特に地方配付税につきましては、その法定率三三・一四%を、地方配付税法特例に関する法律によつて一六・二九%に切下げるという、思い切つた削減を行わなければならなかつたのでありまして、このために、地方財政の運営は、困難の域を越えて、まさに破綻に瀕する事態に立ち至つたのであります。当時本委員会といたしましては、地方自治擁護の立場から、極力その削減を阻止すべく努力をいたしたのでありますが、諸般の情勢から見まして、一応これを承認せざるを得なかつたのでありまして、委員会としては、政府に対して、国税の徴収額が減少した場合にも配付税額五百七十七億円を確保するよう措置すること、並びに本年度において歳入に余剰を生じた場合には、これを優先的に地方配付税額の増加に充当すること、その他一、二点を強く要望して、右特例法を可決すべきものと決定した次第であります。その後地方団体は、やむを得ず経費の支出に極度の切詰めを行つて来たのでありますが、各種災害が相次いで起り、これに伴う財政支出をも余儀なくされるに及んで、とうてい地方財政の均衡を保持することができなくなつたので、政府も地方配付税の増額の必要を認め、今回補正予算において九十億円の増額を決定し、これに伴い本法律案を提出するために至つたのであります。  改正案の内容は、昭和二十四年度に限り配付税の額が所得税及び法人税の徴收額の一六・二九%とあつたのを、当該徴収額の六百六十六億八千七百五十一万八千円に改めたことであります。この額は、一六・二九%で算定した本年度の地方配付税額が五百七十六億八千七百五十一万八千円、これに補正予算計上分の九十億を加えた額であります。なおこれを定率によらずして定額としましたのは、御存じのごとく、明年度以降、地方配付税を廃止して新たに地方財政平衡交付金制度を創設することとなりましたので、全面的にこれを切りかえる必要があり、かつ定率制をとる結果、地方配付税の額に増減を来すことは適当でないという考えに基くものであると、説明をしているのであります。  以上、本法律案の趣旨、内容並びに政府提案理由の概要を申し上げたのでありますが、本法案は、去る十一月一六日、本委員会付託となり、同月十七日、十九日、二十四日、二十六日、二十八日の五回にわたり委員会を開き、慎重審議をいたしたのでございます。委員会における質疑応答の内容会議録においてごらんを願いたいのであります。  かくて討論に入りまして、民主自由党の龍野委員、民主党の藤田委員、民主党の鈴木委員から賛成討論があり、社会党の門司委員及び共産党の谷口委員から反対討論があり、続いて採決の結果、先ほど述べましたごとく、起立多数をもつて可決と決定いたした次第でございます。  以上御報告申し上げます。(拍手
  59. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。門司亮君。     〔門司亮君登壇
  60. 門司亮

    ○門司亮君 私は、ただいま議題になつておりまする地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党を代表いたしまして反対意思表示をするものであります。  さき国会において、委員長報告の中にもありました通り、私どもは、地方の財政がきわめて窮迫いたしておりまするときに、当然地方配付税法によつて定められた所得税、法人税の三三・一四をぜひ配付税として支給しなければならないということを、強く主張して参つたのであります。しかるにもかかわらず、政府は、その配付率を変更いたしまして、一六・二九にいたしました。その当時における政府の答弁を考えまするならば、これによつて大体地方財政がまかない得るものであるという見通しのもとに、私は、あえてあの暴案を強行されたと思うのであります。しかるのもかかわらず、それよりわずか半歳にして、ここに地方配付税の増額をしなければならないという政府の無定見さに対して、まず一矢を報いなければならないと思うのであります。(拍手)  さらにわれわれは、その内容検討いたしまするときに、九十億増額すると申しておるのでありまするが、そのうちの約三十数億というものは、当然支拂わなければならない固定されたものであり、さらに本日われわれが審議いたしまする内容の中に含まれておりますものは、十八億という多額のものが、二十四年度の当初予算において当然記載さるべきものが記載されず、これは地方から返還するものを、地方財政の見地から、おそらく政府は当初予算に見積らなかつたと思うのであります。今地方財政がきわめて窮迫しておると言つて、ここに九十億を増額しながら、その反面に、十八億という返還すべきものを、この補正予算において要求しておるという事実であります。一方において窮迫せる地方財政を救済すると言つて、一方において当初予算に見積もらなかつたものを補正予算に見積もつて、それを政府に引上げようとする法案提出の矛盾さを指摘しなければならないのであります。さらに政府説明によりまするならば、これによつて地方財政が必ずしも完全に行われるのではないが、その不足額については、歳出をできるだけ圧縮することによつて相殺せんとするというような意図を、はつきりと大臣の説明の中に加えておるのであります。  さらにわれわれが見のがすことのできないものは、そうした地方の歳出を積極的に抑圧するの指導を行うということであります。今日の地方財政は、すでに御存じのように、きわめて窮迫いたしておりまして、いずれの公共団体といえども、むだな出費をしておるところは、日本全国に一つもないと考えられるのであります。その際に、政府は、その窮迫せる実情を知りながら、きわめて小額の配布税を配付しておいて、そうしてなお不足額について、地方公共団体の歳出に対して政府がこれを指導するということは、一体何事であるかということであります。われわれは、さなきだに官僚中央集権に苦しんで参りました経験と、さらに日本の真の民主化のために、地方の自治体が自立的自主性をもつて完全なる発達を遂げることこそが日本民主化の第一要素でなければならないと考えておりますときに、地方財政を極度に圧迫いたしまして、その財政の運用に対して政府がこれを指導するということは、明らかに自治権の干犯であるということを、また考えなければならないと思うのであります。政府は今日地方自治権に極度の強圧を加えて、どこに一体地方の自治体の真の自立的自主性があり得ようか。われわれは、かくのごとき政府の意図に対して強く反対するものであります。  以上三点を申し上げまして、日本社会党は、本案に対して反対意思表示をいたすものであります。(拍手
  61. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 谷口善太郎君。     〔谷口善太郎君登壇
  62. 谷口善太郎

    ○谷口善太郎君 簡單に日本共産党反対意見を申し述べます。  地方配付税の減額を第五国会でやりましたときに、秋の臨時国会に必ずこれを補正する、この配付税の減額によつて受けた地方財政の圧迫を補正して行くということを政府が約束いたしました。このことは、第五国会での配付税の減額が、地方の財政にとつてそれ自身非常な大きな圧迫になり、窮乏を意味することを、当時政府も認めておつたのでありまして、今度の臨時国会で補正される意味は、当時減額いたしました地方配付税を大幅に元へ返すという意味でなければならないのであります。  ところが、今委員会報告にございました通り、今度の九十億の増額は、その後の地方の状況の中に、災害その他最初思わなかつた費用がふえた、このうちの緊急やむを得ないものとして九十億を出すと、こう言つているのであります。従つて根本的には九十億の増額をいたしますが、最初の約束である五百七十七億に減額したそのことから来る地方財政の窮乏を救うという意味は、まつたくないのでありまして、そういう意味では、政府は、当時の第五国会における言質を、ここにまつたく捨ててしまつて、いわゆる約束を踏みにじつたものであると言わざるを得ないのであります。そういう点で、私どもはまずこの案に反対したい。  第二の問題は、それでは九十億をふやしただけで、その後の地方団体におぶさつて来たところの災害その他の思わなかつた費用がまかなえるか、その支出がまかなえるかという点でありますが、これまた委員会における審議の間で私ども明らかにいたしましたところによりますと、全然十分の一にもならないほどの額にしか当らない。これによつて地方財政は決してよくならないばかりか、若干の増額をしたということによつて、先ほど門司君も申しました通り、今後の地方財政の運営について政府当局が指導して、そうして收支のバランスをとらすようにする、非常に窮乏していることは知つているが、その上に、政府の指導によつてこれらの收支のバランスをとらせるようにする、こう言つているのであります。こういう結果で、地方財政は、今の内閣のもとで、ますますひどく圧迫されて行くことは見えすいているのでありまして、こういう意味からも、私どもは、本案に賛成できないものであります。  第三の問題でありますが、この九十億の増額を決定するに至ります間の、政府部外の地方団体及び地方財政に対する態度に、私ども納得行かないものがあるのであります。この九十億という額を決定するに至ります前に、政府部内では、地方団体の財政上の窮乏の状態を何ら考慮することなく、打明けた話をいたしますならば、補正予算ができて、それが決定される間がたつた数時間しかないほどの状態で、地方に対しては、この九十億をきめたことを示さなかつた。これを論議する余地を與えない。こういう形で、一方的に九十億というものをきめておるのであります。この間に、大蔵当局と地方行政を担当する地方自治庁との間に、仄聞するところによりますると相当の対立すらあつた。こういう状態で、一方的にこの案をきめておるのであります。このやり方は、今この場合、私どもはがまんするといたしましても、現在当面しております問題の中には、今後地方財政の豊富化のために、新しい制度の樹立をシヤウプ勧告の中に示されておる。今後これをきめて行く。つまり、地方財政を豊富化し、地方財政を有力にするという新しい案をきめなければならない。こういう重大なときに、今日この問題で、これほどひどく圧迫する、こういう政府のやり方に対しましては、私どもは、これをただうのみにするという態度であつては、ますますなめられる。こういう点で、今の政府のやり方、特に地方財政、地方財政に対する政府の無理解と一方的な支配、こういう問題で断固として反対する意味でも、この法案賛成しがたいのであります。  以上簡單でありますが、共産党の意見を述べまして反対意思を表明いたします。
  63. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  64. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決せられました。      ————◇—————
  65. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、観光事業振興方策樹立特別委員長提出国際観光ホテル整備法案は、委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  66. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  国際観光ホテル整備法案議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。観光事業振興方策樹立特別委員長栗山長次郎君。     〔栗山長次郎君登壇
  68. 栗山長次郎

    ○栗山長次郎君 観光事業振興方策樹立特別委員会は、国際観光によるわが国の国際收支の改善、国際親善、文化の交流を三大目標といたしまして、わが国の観光事業をいかように振興すべきかにつき調査審議をいたしておりましたが、その結果、 一、わが国の観光事業は戰争により荒廃し、現状は再発足の努力を傾倒すべき段階にあること。 一、英、仏、伊、瑞等の諸観光国は、この事業を国策として取上げ、国の助成を強化し、競うて外客の誘致に万全を期していること。 一、観光事業は国際競争場裡においてなされる外貨獲得のルートであるから、わが国の観光施設を漸次国際水準に引上げなければならぬこと。 一、観光施設中、基本的な條件として外客の宿泊施設、すなわちホテル、道路、輸送機関、接遇方法等の改善が急務なること。などが明らかになつたのであります。  さきに本院の決議をもつて、観光に関する基本條件の急速な改善が要請されたのでありまして、あの決議は、いわば総論的のものでありまして、観光特別委員会は、各論としての必須條件を具体的に推進しようとするものでありますが、ここに、目下最大の隘路となつております宿泊施設、すなわちホテルの充実をまず取上げ、法的措置によるこれが助成策を達成するために、ただいま議題となりました国際観光ホテル整備法案を起草したのであります。  当該委員会の起草いたしました法案につき、関係のあります五つの常任委員会と連合審査を遂げましたほか、広くこれに関し意見を徴し、審議には万遺憾なきを期した次第でありますが、当該特別委員会は、本日の委員会におきまして、共産党及び社会党の代表を除く多数決によつて法案を採択して、これを委員会提出とすることに決したのであります。すなわち本案は、委員会の起草にかかります委員会提出の法律案でございます。  本法案は、ホテルを初め外客宿泊施設の最低基準をまず定め、これに達するものは自由意思によつて主務大臣に登録することができることとし、登録したものについては、それが新説のものでありますならば、五箇年間家屋税及び同附加税を二分の一に減じて、採算がきわめて困難な創業期を支持せんとするものであり、同様の趣旨に基いて、基準に合致させるための改装、増築部分についても、この減税を適用することといたしております。しかして、登録條件を備え、かつ登録したものには、既設のものであると新設のものであるとを問わず新しい耐用年数制度を採用して、これによつて若干の助成をなさんとするものであります。この種の助成の方法として、軽微ながらこの減税によつたものでありますが、補助金の支給によつて助成するのが妥当であろうという議論もありましたが、周知のごとく、補助金によりますことは、きわめて弊害が多いのでありまし、委員会としては減税による助成を採択したのであります。減税によつて助成をすることは課税の公正に反しはしないかという御意見もあるのでありますが、これは現在、国が、重要産業の振興もしくは国策遂行の上もしくは創業当初において支拂い能力のきわめて微弱なものに対しては実際にとつておる方途でありまして、その実例は多多あるのでございます。また、現在地方が徴收しておる家屋税を減額いたす結果にはならないのでありまして、その地域に新たに建てられるか、もしくは増築される部分のみについて家屋税を五箇年半減しようとするのである。その後はむろん全額徴收となるのでありますから、地方財政としては、まつたくのプラスになるのであります。しかも、この財政的プラスは、ただいま御審議つておりますような助成措置を講じてこそ初めてホテル建築の採算がとれるようになるので、新築の機運がそこに出て来ようとするものでありますから、地方財政の圧迫になるということはないのでございます。  次に、委員会における審議に際して反対の御意見がありますので、それを御報告申し上げます。共産党を代表された柄澤委員反対の御意見は、主としてかくごとき措置は時期尚早である、さらに一層国内を整えてから外客を迎えるようにした方がよろしいという御見解でありました。社会党代表の門司委員反対の御意見は、地方財政のの犠牲において国策を進めることは妥当ではないという点と、助成をするからには、他面において利潤の制約をなすべきものがあるが、その規定がないという御指摘でございました。これに対しまして民自党代表の淵上委員が反駁的討論を行い、本案を支持なさいましたほか、民主野党派の代表藤田委員ほか他会派の方々から賛成討論がございまして、委員会といたしましては、多数をもつて前に申しましたように国際観光ホテル整備法案を可決し、同時にこれを委員会提出といたすことにきめたわけでございます。何とぞ御審議の上、原案の御可決をお願いいたす次第でございます。(拍手
  69. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。門司亮君。     〔門司亮君登壇
  70. 門司亮

    ○門司亮君 私は、ただいま議題になつております国際観光ホテル整備法案委員長報告に対して、日本社会党を代表いたしまして反対意思表示をするものであります。  先ほど委員長は、委員会において決定されたと申されておりますが、委員会で話をいたしましたものは、どこまでも法律案提案前における審査であつたのであります。この法案は、ただいま私どもの目の前に正式に提案された法案であるということを、御了承を願つておきたいと思うのであります。  私どもが反対をいたします第一の理由といたしましては、委員会における法案をいかに処理するかということを、委員会において私どもが発言いたしました。本案は、一部少数の利益を得ることを目的とする営利社会に対する資金、資材の融資を優先的に行なおうとするものであります。しかもその上に、地方の税金を—五箇年間にわたつて家屋税を免除しようとする法案でありまして、これが大体本法案の骨子となつておるかと考えられるのであります。  地方財政法の第二條の二項におきましては、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行なつてはならない。」ということを明記いたしておるのであります。かくいたしまして、国が行ないます施策において、地方公共団体が財政的に被害を受けることを、われわれは極度にこの法案によつて防いで参つたのであります。しかるに、この観光ホテル整備法案は、その理由の中にありまする通り、日本の国が、今外貨の獲得と、さらに観光施設を置くことのために充実しなければならないという国策的見地よりこれを行なうということが、この提出法案の主要な理由になつているのであります。従いまして、この法案はあくまでも国策に基く一つの法案であるということには間違いないのであります。そう考えて参りますならば、この国が行う施策によつて地方の公共団体に財政的の迷惑をかけてはならないというこの地方財政法二條の二項に明かに抵触し、違反するものであるということを、われわれは考えなければならないのであります。  地方財政は、今日きわめて窮乏の極に達しておりまして、地方財政が今日の状態にありますならば、地方の公共団体は破産する以外にないということは、皆さんの御承知の通りであります。その上に、一つの営利会社の利益を擁護することのために、国の法律によつて地方の財源を少なくするようなことは、断じてわれわれの許せないところであります。私どもは、かくのごとき見地と、さらに先ほど委員会におきまして、そういう意見はあつたが、しかし法律の中には幾多それに類したものがあるということを申し述べられましたので、誤解を招くといけませんので、私は念のために、その内容をはつきりしておきたいと思うのであります。  すなわち、地方税法の第十四條において「公益上その他の事由に因り必要があるときは、不均一の課税をなすことができる。」という條文のあることは、御存じの通りであります。しかしながら、これは公益に関係した問題でありまして、決して一箇の会社の利益を主張するために不均一の課税をしてもいいという法律では断じてないのであります。さらに次にありますものは、「天災その他特別の事情のある場合又は貧困に因り生活のため公私の救助を受け若しくは扶助を受ける者その他特別の事情ある者に限り、道府県又は市町村の議会の議決を経て、地方税を減免することができる。」という法律のあることも、御存じの通りであります。さらに、災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律にも同様なことが書いてあるのでございますが、これは特別の場合によつてその納税の負担義務を果すことのできない特別な人に対するものであります。今日観光ホテル業を営もうというような人たちは、この條文に当てはまるとは断じて考えられない。かくのごとき法律を引用いたしまして、地方税が減免することのできる規定があるではないかということは、詭弁もはなはだしいと、私はここにはつきり追及いたすのであります。  さらに、先ほど委員長報告にもありました通り、法律によつて保護するこの営利会社が、その会計の面において、利潤に対して何らの制限をも加えず、これを野放しにしておくということは、いかなる魂胆があるかということであります。一方において、地方税の半減を法律によつてはつきり規定し、その間にもし利潤があつたら、その被害は一体だれがこうむり、その利潤は一体だれが得をするかということであります。もしこのままの姿においてこの法案が通過いたしまして、五箇年以内において、営利業を営みますホテル業者に利潤がありましたならば、この法案によつて、ホテル業者の利潤はホテル業者自身が受け、地方公共団体は減免された税金だけを損するということに相なつて参るのであります。しかも、規定は何ら設けていないということである。われわれは、かくのごとき地方財政の今日の窮乏を知らざる、まつたく暴案にひとしいこの法案に対しましては徹底的に反対意思を表明するものであります。(拍手
  71. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 柄澤登志子君。     〔柄澤登志子君登壇
  72. 柄澤登志子

    ○柄澤登志子君 ただいま上程されました国際観光ホテル整備法案に対しまして、日本共産党を代表して反対意見を申し述べるものでございます。  この法案は、大体観光事業振興特別委員会におきまして審議されまして当初から、幽霊的は法案であつたのであります。すなわち、私ども反対委員のありますことを考慮せずに、これがどこから出たのかわからない形で審議されたのでありまして、連合審査委員会には、この醜態が暴露されたのであります。こまかな点につきましての反対は門司委員からございましたが、民自党内部にも相当の反対がございまして、今日までこの法案が延びて来た。  その影に隠れている理由については、この法案提案の形が、そもそもそういう形で行なわれていたということにあるのであります。きようも、緊急動議という形で、突然、運営委員会にもかけられずにこの議場にかけられましたのは、門司委員から御指摘がありましたごとく、奈辺にその理由があつたのかということは明らかなのでございます。二、三の有力な地方の業者を保護いたしますために、国の法律をもつて援助し、国の財政の困難を考えずに、地方税の收入を少なくするというようなことを法律的にきめ、しかも、あの多数の行政整理を行いましたところの各省設置法案までもこれを切りかえて、運輸省の中にホテル審議会というようなものまでつくらせるべく、これが準用されておつたのであります。しかも、そのできる根拠といたしましては、これが特別法であるということを言われたのでありますが、そういう根拠は何らないということが、連合審議会によつて明らかにされたのであります。  講和のための特別の委員会を設立することに対しまして、私ども野党は努力したのにもかかわらず、外務委員会の拡大という形で、これがすりかえられておるのであります。そもそもこの委員会ができましたのは、各省の利害が対立するので、その調整をするための委員会でございまして、一部の業者の利益をはかるための、かくのごとき法案を提出するための委員会ではなかつたのであります。私どもは、現在国際的な講和会議を前にいたしまして、全面的講和の見通しもまだできません際に、單に国際親善を名とし、外貨獲得を名といたしまして、かかる法案が上程されることに対しましては、反対せざるを得ないのであります。何を観光してもろうのでありますか。災害費の不足のために、川があふれ、災害が続き、われわれの同胞があの苦しみをなめておりますのを見てもろうのでありますか。学校は建たない、未亡人が多い、パンパンが多い、性病がふえている、結核が何ら手をつけずにほうつてあるのに、何を観光してもろうのでありますか。(拍手)  われわれの民族産業というものは、政府の方針のために、現実に音を立てて崩壊しているのに、われわれは、こんなやり方で外貨の獲得をすることは、恥さらしだと思うのであります。(拍手)われわれは、日本の産業を健全に回復して、正当な手段でもつて外貨の獲得をはからなければならぬし、平和な産業を再会することこそが、その方面に融資をすることこそが、初めて全面的講和の道を開きますところの、国際親善の基本的な條件だと思うのであります。そういう基本的なものを捨てて、そして遊興飲食税が多くなるとか、接客婦をふやすとか、実にモナコに日本を落すような、こういうはずかしい法案には、われわれは断じて賛成することはできないのであります。  こまかな法律的な反対は、社会党の門司委員反対意見に譲りましても、私ども共産党の建前からは、この法案反対する理由を簡單に申し述べまして、美しい山、美しい川、日本の自然を、私どもは、全面的な講和ができましたならば、どこの国の人にも堂々と平等に見てもらいたいと思います。そのために、現在吉田内閣のもとで、このホテル整備法案が、このような形で出されますことは、吉田内閣の性格が、この法案を出す方法において、実にはつきりフアツシヨ的な、独裁的な形で現れていることを指摘いたしまして、私どもの反対討論を申し上げる次第であります。
  73. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  74. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  75. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出国際観光事業の助成に関する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  76. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  国際観光事業の助成に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。運輸委員会理事大澤嘉平治君     〔大澤嘉平治君登壇
  78. 大澤嘉平治

    ○大澤嘉平治君 ただいま議題となりました国際観光事業の助成に関する法律案について、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、十一月二十五日、本委員会に付託され、翌二十六日、政府から提案理由説明聴取して以来、委員会を開くこと三回、慎重審議いたしたのであります。  本法案の趣旨を簡單に申し上げますと、国際観光事業の重要性にかんがみ、これが振興をはかるため、対外観光宣伝、観光観念の普及等外客誘致の促進に資する事業を営む営利を目的としない法人に対して、政府から予算の範囲内において補助金を交付し得ることとしようとするものでありまして、この補助金は国際観光事業の振興以外に使用してはならないこと、補助金を受ける法人が事業計画を変更せんとするときは運輸大臣の承認を受けなければならぬこと等を定めているのであります。  次に質疑応答に入り、今後対外宣伝の重点はいずれの国に置くかとの質問に対しては、政府から、当分の間はアメリカに重点を置くこととなると思うとの答弁がありました。また補助の対象となる法人はいかなるものか、これに対する補助金は幾ばくを予定しているかとの質問に対しては、政府から、これに該当する法人はさしあたり日本交通公社と全日本観光連盟であつて昭和二十四年度補正予算には一千万円を計上して、全日本観光連盟に対する補助を予定しているが、明年度予算においては、日本交通公社に二千万円、全日本観光連盟には一千万円の補助を計上したいと考えているとの答弁がありました。その他質疑応答の詳細については会議録に譲りたいと存じます。  かくて質疑を打切り、討論を省略して、ただちに採決の結果、多数をもつて原案通り可決した次第であります。  簡單ではございますが、これをもつて報告を終ります。(拍手
  79. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  80. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数、よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  81. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出私立学校法案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  82. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  私立学校法案議題といたします。委員長報告を求めます。文部委員長原彪君。     〔原彪君登壇
  84. 原彪

    ○原彪君 ただいま議題となりました私立学校法案につきまして、本案の概要並びに本委員会における審議の経過及びその結果を御報告申し上げます。  まず、本法案内容並びに趣旨のおもなる点につきまして御説明申し上げます。第一に、本法案の骨子となつておりますものは、私立学校の特殊性と自主性を重んずるとともに、あわせてその公共性を高めるというところにあります。それは本法案の第一條に明らかにされておりますが、さらに第二章の教育行政に関する規定においてもまたこの点が示されておるのでありまして、すなわち、所轄庁の命令監督等については一定の制限を與えて、できるだけ私立学校の自主性を保たしめるために、私立学校審議会または私立大学審議会を設けてあるのであります。  第二といたしましては、私立学校を従来の民法上の財団法人の規定からはずしまして、第三章において、あらたに学校法人という特別法人にいたしてあります。従いまして、この学校法人は、経営上特にその財政的な面において收益事業を行なうことができることとされております。  第三には、従来よりとかく問題となつておりました憲法第八十九條と私立学校との関係でありますが、それは、この法案によりまして、私立学校が公の支配に属するものであるという法的な根拠が與えられたことであります。従いまして、私立学校に対しても国庫から補助と助成ができることとされております。  第四といたしましては、私立学校に対しまして、本法は收益事業から生じたもの以外のものについては所得税及び法人税を課さないことに定められてあります。  以上が、本法案内容並びに趣旨のおもなる点であります。  本委員会におきましては、わが国の文化の発展のために私立学校の有する役割のきわめて重要なることにかんがみまして、慎重審議を重ねたのであります。その間におきまして、本委員会は、本法案の重要性にかんがみ、さらに世論を聴取することとし、去る十一月十八日、参考人といたしまして、私学団体総連合会代表、早稻田大学校学部長大浜信泉、私立大学協会代表、明治大学法学部長松岡熊三郎、私立中等高等学校連盟代表堀内操、日本学術会議代表、東京大学教授我妻栄、大学教授連合代表、中央大学教授片山章、日本教職員組合代表江口泰助の諸君を招きまして、それぞれの意見聴取して審議の参考といたしました。  かくて審議を終了し、民主自由党の水谷昇君より修正案が提出されました。この修正案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  まずその第一点は、本法案第二條を削除いたしました点であります。その理由は、元来この私立学校法は、その趣旨にも明らかでありますように、学校法人として規定されました特別法であり、私立学校の特殊性と自主性をあくまでも尊重し、日本文化の発展のために、私立学校の教育行政並びに財政上について独自な基礎を與えようとすることを目的とするものであります。しかるに、原案第二條が存置されますならば、他のすべての法律がこの私立大学校に優先するものとなりまして、本法案目的とはむしろ相反する結果を生ずる可能性がありますことと、さきに定められました教育委員会法と本法案中の第五條との関連に疑義を生ずる点がありますこととによりまして、ここに原案第二條を削除しようとするものであります。  第二点は、原案第三條を第二條とし、新たに第三條を加えたこと、及び原案第五條第一項の法文を改正し、同條に第二項を加えまして、学校法人の法的基準を明確にし、学校教育法による拘束の一部を本法案では適用しないこととして、本法案立法の趣旨並びに目的をさらに明確にした点であります。  以上の修正案に基きまして、本委員会におきましては、ただちに修正案並びに修正部分を除く原案に関する討論に入りまして、民主自由党を代表いたしまして高木章君の、修正案賛成並びに修正部分を除く原案賛成討論があり、続いて日本共産党を代表して今野武雄君の、修正案賛成及び修正部分を除く原案反対討論があり、次に日本社会党を代表して松本七郎君、民主党野党派を代表して稻葉修君、新政治協議会を代表して小林信一君の、それぞれ修正案賛成並びに修正部分を除く原案賛成討論がありまして、討論は終局し、まず水谷昇君提出の修正案の採決をとりました結果、全会一致をもつて可決いたし、次いで修正部分を除く原案について採決の結果、起立多数をもつて可決いたしました。よつて法案修正議決いたした次第であります。  最後に、本委員会において本法案修正議決いたすに先だちまして、次の要望を政府にいたしました。すなわち第一は、本法案のごとく、一つの法律をもつて幼稚園より大学にわたる私立学校に関する法律を定めることは、それぞれ教育内容及び制度等で異なるところが多いので、自主性及び特殊性をむしろ損する憂いがある、将来は私立大学に関しては別な法律を定めることを要望する、第二、私立学校における免税措置については、さらに考慮してほしい、以上の二点について、文部大臣より次の答弁を得たのであります。すなわち第一につきましては、政府においても私立学校の特殊性は十分に尊重し、またその特殊性あるがゆえに文化の発展に貢献している私立学校の価値も十分に承知しておるので、将来において適当なる処置をいたすということでありました。第二につきまして、シヤウプ勧告により地方税、贈與税等については近き将来において考慮されることと思うという答弁がありました。  以上において、本委員会における本法案審議の経過並びに結果の御報告を終ります。なお詳しくは会議録によつてご了承いただきたく存じます。
  85. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。今野武雄君。     〔今野武雄君登壇
  86. 今野武雄

    ○今野武雄君 私は、この教育の根本をきめる非常に重要な法案が、このような閑散な、定足数を欠いた議場において審議されるということは、この法案の将来を暗示するものとして非常に重大な関心を有するものであります。すなわち、この法案において示されておる私立学校の公の支配、それが官僚的な支配になるということを、まざまざと暗示させるものがあるのであります。日本共産党は、この私立学校法案には、非常に残念ながら反対せざるを得ないわけであります。  まず明治開国以来、早稲田とか慶応とかその他の私立大学が、わが国の学術文化の発展に大変大きな功績を残したということについては、いまさら申すまでもありません。次いで大正年代になりまして、世界の新教育思潮というものが日本に押し寄せて来た。それに伴つて、成城とか成蹊とかその他の私立学校が設置されまして、初等、中等の教育に、自由でかつ清新な気をもたらしまして、軍国主義と官僚主義でこちこちになつていたところのわが教育界に、わずかながら民主的な教育の芽生えを植えつけたこと、これなどは、特に今日において高く評価されなければならない点だと考えます。われわれ共産党は、教育、学術、文化というものを、何ものにも増して尊重いたします。そして、その自由な発展こそが人類の幸福と世界の平和に最も重要な貢献をなすものであるという見地から、これら私学の功績に対しては、だれよりも高い評価をしておるものであります。  ところが戰後になりまして、わが国の教育、学術、文化というものは、皆さんも御承知のように、非常にひどい状態になつて来ておる。地方財政が崩壊して来ている。そのほか、独占金融資本によつて中央財政が収奪され、六・三制の建築費が削減される。定員定額制という悪法が実施される。育英資金や研究費がどんどんと遠慮なく削減される。こういうことのために、学術の研究とか教育とかいうものは、まつたく崩壊に瀕しておるのであります。このことは、たとえば教員生活が血の出るような窮迫にある。あるいはまた、失業の増大によつて、もうアルバイトもできないというような窮地に陷つておる学生たち、こういうものが、雄弁にこの崩壊の状態を物語つているのであります。私学も、やはりその例外ではございません。  授業料は公立学校の数倍徴收しておるわけでございますが、それにもかかわらず、教授の給料は、千二百円とか二千円とか、まるで世間離れした殺人的なものがあるのでありまして、学問の研究など、まつたく及びもつかない状態になつているのであります。しかも、学生が窮迫して参りまして、授業料の滞納も実に多くなつて来ております。また戰災の復興などにつきましても、私学出身者が非常に協力して寄付金などを集めようとするのでありますが、その集めた寄付金の大部分が税金として收奪されるというような現状にありまして、いかんともすることができない。こういう状態であります。  これらの学校に対する国庫補助は、あの二年前の憲法実施以来、憲法八十九條の條項をたてにとつて打ち切られて参つたのでございますけれども、しかしながら、今回わずかながら、一億二千四百万円というものが私立学校に與えられることになつた。この額は実にわずかで、われわれとしてはお話にならないと思う。しかしながら、ともかくそういう道が開けるということはいいことであります。だが、その道を開く手段として、この法案のようなものを制定するという至つては、まつたく本末を転倒するようなものであると考えるのであります。  この法案によりますと、国庫補助と引きかえに、私立学校を公の支配のもとに置くというのでありますが、これは参考人として呼ばれました我妻教授もはつきり申しておつた通り、公の支配に属する私立学校というものは、それ自身矛盾するものであります。従つて私どもは私立大学教授連盟とかあるいは日本学術会議の第一部、第二部の諸氏、あるいはまた各私立大学の学生自治会の諸君などとともに、学問の自由を害し、私学の自主性を破壊するおそれがあるという理由で、この法案に対して反対しておるのであります。  さて、本案の第一條に「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによつて、私立学校の健全な発達を図る」とうたつてありますが、ここにある自主性と公共性というものは、はたして矛盾しないかどうかということに対して、文部省としましては、この公共性が公の支配であるということを言つておる條文に照してみても、文部大臣、知事、あるいはその下の官僚の支配ということになるのであります。  私立学校審議会とか、あるいは私立大学審議会とか、一見民主的に聞える審議会ができるようなことになるのでありますけれども、しかし、これらは大臣、知事の單なる諮問期間でありまして、しかもその委員は、文部官僚または地方官僚が名簿を示して、結局大臣や知事が決定するのであります。従つて、大臣または知事は、結局自分の気に入る者だけを委員にあげ、しかもその審議会の決定に反して学校を閉鎖したり、学校法人を解散させることができるのであります。こういうようなことは、一体その実例がないかと言えば、決してないわけではない。過日の朝鮮人学校に対する彈圧などは、まさにその実例であります。  従つて、この私学は、経営者も教員も、ともに官僚の鼻息をうかがつて、学問の自由も、学校の自主性もまつたく有名無実になるおそれがあるのであります。特に最近、中央、地方を問わず、かつて軍国主義の奴隷であつたような教育官僚が、わが日本の自主的な立場を忘れて、卑屈な態度をもつて外国に迎合するようなことがあつて、教育の植民地化がとうとうとして行われておる今日、私学が官僚に支配されるということは、国の独立にとつても、まつたく危険きわまるものといわなくてはならないのであります。  なお、この法案によりますと、教科書は知事または大臣が検定の権限を持つておるのであります。私学の特徴は、教科書なども自分で自由につくることができて、自由な教育が出来るという点にあるのであります。かつて成城学校では、ドルトン・プランや何かを実施して、わが国の自由な教育の進歩のために非常に貢献したのでありますが、満州事変以来、軍国主義の強化によつて、国定教科書の使用を強要されまして、次第に学園の特色は失われて行つたのであります。こういうような実例から見ますならば、検定の元締めを知事などに握らせることは、私学がその特色を伸ばすことを妨げられ、事なかれ主義が横行することになるのであります。  これらの点に関しまして、文部省当局は、自主性に対する公共性の優越性をはつきり認めて、同時に文部大臣は、文部大臣や知事を信用しなければどうにもならぬということを申しておりましたが、先般朝鮮人が設立しました私立学校を解散いたしまして、その跡始末をまだしていないというような点を考えてみましても、あるいは六・三制の建築費を、二十二年度、三年度の年度にわたつて、しかも二十四年度の当初予算で当然もらえると思つていたのを、もうやらない。二十四年の四月三十日以降のものに限つて、今度わずか十五億というちよつぴりのものを出すというようなことをする文部省のやり方を見てみますと、国民は、こういう政府を信用していたら一体どうなるか、こういう大臣や官僚を信用していたら一体どうなるかという危惧の念に襲われておる。こういう際に、大臣や知事を信用しなければどうにもならぬと言つておりますけれども、これはまつたく官僚独善的な考え方といわざるを得ない。現に、この政府並びに與党は、私学学校法案を閣議で一旦決定しておきながら、私学側の反対にあいまして、十箇條にわたつて監督條項を削除し、監督庁という言葉を所轄庁に改めておるのでありますけれども、しかしながら、この條文をながめて見れば、まるでこれは平清盛と同じことなのである。よろいの上に法衣を着て、そのよろいがちらちら見えるというような状態なのであります。  私どもの見るところによりますと、この公共性というものは、本来学術文化の発展に寄與し、これを通じて人類の幸福と世界の幸福に貢献する、そこにこそ学校の公共性があるのだと考えるのであります。それは官僚支配の道とはまつたく別の方向において実現されなければならないものであります。すなわち、学園というものを徹底的に民主化して、私立学校を無條件的に自由な学問教育の場とすることによつてのみ、この公共性というものは得られるはずであります。  文部省は、学校行政に対する教授や学生の民主的な関與というものを極度にきらいまして、学生の自治運動に対してもいろいろな制限を設けておるのでありますが、これは決して学園の自主、自由を促進するゆえんではないのであります。特に学生の政治運動の禁止のごときは、憲法の條項をはつきりと踏みにじつておる、暴力的な不法行為と言わざるを得ない……。
  87. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 今野君、簡単に願います。
  88. 今野武雄

    ○今野武雄君(続) また與党の諸君が、この法案審議に際しまして、学生の諸君を参考人として呼ぶことに反対をいたしまして、それが学生の政治運動だとか何とか言つたのでありますが、しかし、諸君は選挙運動のときに何をしたか。諸君はアルバイト学生を使つていたじやありませんか。(拍手)また、フアツシヨの根源になるところの、あの悪質な反共運動にも学生を使つているではないか。そういう諸君が(発言する者多し)学生の政治運動をいけないなどと言うことは、まつたくこつけいな言いぐさにすぎない。いわゆる痛いところを突かれたくないという御都合主義にほかならないのであります。(発言する者多し)このような、真劍に将来を憂えて毎日々々国会に来ているような、こういう学生の協力なしには、日本の学術、文化の将来というものは決して明るい見通しはないのであります。  われわれは、この点におきましても政府與党と反対の立場をとるのでありまして、これら学生諸君並びに教授諸君の熱意にこたえまして、われわれは本法案に断固反対するものであります。(拍手
  89. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 岡延右エ門君。     〔岡延右エ門君登壇
  90. 岡延右エ門

    ○岡延右エ門君 私は、民主自由党を代表いたしまして、私立学校法案につきまして賛成の意を表せんとするものであります。  いわゆる私立学校は、その数実に数千、新制高等学校以上の学校におきましては、全体の半数以上の学校におきましては、全体の半数以上を占めておるのであります。私立学校は、その数において、かくのごとく多数であるのみならず、教育上における国家的貢献もまたきわめて顯著なものがあるのであります。一昨年八月来朝いたしましたアメリカの学術顧問団は、その報告書の中において、日本の私立大学は自由主義的及び民主主義的理想の指導的提議者であつたと、私立大学を礼讃いたしておるのであります。私立大学の双璧と称せらるる早慶両大学を初め、各大学とも、光栄あるところの歴史と、それぞれ特色のある校風を有し、教育上偉大なる功績を上げつつあるのであります。その他の新制高等学校以下の学校も、またおのおのその特色を活かし教育界に盡しつつあるのであります。それにもかかわらず、国家としてこれに報いるところはきわめて薄く、従来ほとんど放置されたかの感さえ深かつたのであります。  しかるに、この法案におきましては、私立学校の自主性と特殊性とをはつきりと認識したるほか、次のごとく重要あることを規定いたしておるのであります。すなわち一つ、所轄庁の私立学校に対する監督は、審議会の意見を聞くように民主化したること。一つ、従来の民法による法人を廃して学校法人という特別法人とし、その地位を高めたこと。一つ、憲法第八十九條との関連において、私立学校に対する補助、助成の点に難問があつたのであるが、この法律において公の支配に属するものとして公的性格を與えて、補助、助成ができることとして、この難問題を解明したこと。一、学校経営上の財政的基礎を強化するため、收益事業を行うことができることとしたこと。以上のほか幾多の重要な規定があるのでありまして、これ私が本法案に全面的に賛成するゆえんであります。  ところが、本法案においては、私立文学につきましても、各種学校、幼稚園等と同列に、この法律を一本にまとめているのでありますが、これは必ずしも妥当ではないと信じます。大学は、その本質にかんがみ、近き将来において、大学のみを切り離して別途に法制的処置をとる必要があると思うのであります。そこで私は、附帶條件として、「私立大学については、その大学の本質にかんがみ、すみやかに別途の法制的措置を講ずるよう考究されたい」というこの條件を強く文部大臣に申入れるものでありまして、文部大臣は委員会における御答弁を誠実に実行されるよう善処されたいのであります。  なお、この法案が文部省試案として公表されましたるとき、私立学校に対する所轄庁の監督がきわめて厳重に規定されておつたということは、何としても見のがしがたい事実であります。すなわち、文部事務官僚は、官学に対する監督権が薄弱となつたため、最後の線として私立学校にしがみつき、監督を嚴重にするのではないかという感さえ抱かしめたのであります。この点は、わが党において、上程前にこれを発見し、監督に関する十項目の規定を削除して、政党内閣の真のあり方を天下に示したのであります。しかるに、文部事務官僚にして依然として官僚思想がありとすれば、この法案運用においても危險性が全然ないとは言えないのでありまして、この点私は、この壇上より、運用上において自粛自戒するよう警告を発するものであります。しかしながら、私立学校の教授、教師諸君が、公務員にあらざることを奇貨として、私立学校が特殊的思想の温床となり、彼ら一派が学園の秩序を乱さんとするがごときことが、もしあつたならば、文部大臣は断固たる処置に出なければならない。また財政的補助、助成についても、さらに特段の考慮を拂われるよう要望するものであります。  次に私は、私立学校経営者に対しましても注意を喚起したい。それは、先ほど申し上げましたる通り、われわれは監督の條項を大幅に削除いたしました。そうして、私立学校に対して自主性と自由とを認めたのでありますから、この親心をくみとられまして、経営上においても自戒自粛されたいのであります。いわんや、私学経営上の財政を助くるため收益事業を行い得るとの規定があるのでありますから、さらに一層の自戒を要することを銘記すべきであります。  われわれは、前国会において、全国に六十九の新制大学を創設する法律を成立せしめ、今国会においても、また商船大学一校の創設法を通過せしめたのであります。この七十校の国立大学の創設に反対した共産党は、数千に上るところの私立学校の地位高むるこの法案にも反対しているのである。彼らは、全国の学園を閉鎖して、数百万、数千万の学生を街頭にほうり出して、これに赤旗をかつがせんとするのであるか。(拍手)魚を欲する兒童にへびを與え、パンを欲する生徒に石を與えんとするがごとき学校をつくることには、われわれは断じて反対である。  私は私学を熱愛する。私は私学を熱愛するがゆえに、この法律のもと、私立学校がますます生成発展せんことを祈りつつ、この法案賛成するものであります。(拍手
  91. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 松本七郎君。     〔副議長退席、議長着席〕     〔松本七郎君登壇
  92. 松本七郎

    ○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、私立学校法案につき、強い要望を二、三付しまして賛成するものであります。(拍手)  わが国における私学の重要性については、多く語る必要はございません。全国の私立学校数が六千四百以上、教員数が八万三千以上、学生、生徒、兒童、園兒等を含みまして百三十七万七千人以上に及びます。また私立大学、専門学校数と、官公立のそれとの比率は、私学が約四四・八%を占めておる一事をもつて明らかであります。従いまして、私学の急速な復興と振興とは国をあげての要望であり、国会においても、私学振興に関する決議をなしておるのであります。  今回政府は、この要望にこたえて私学校案を提出したとのことでありますが、これが立案の経過を顧みますと、はなはだ遺憾の点があつたのであります。文部大臣の説明にも明らかにされております通り、私学校案の立案にあたつては、一年有余にわたつて政府は私学団体総連合と協議を重ねた結果、一応閣議決定と相なつていたのであります。しかるに、その後になつて、私学団体総連合から十箇條の注文が出されましたために、これらを取入れた案に変更したのであります。しかも、この案についても、なお大学教授の一部及び教員、学生の間に強い反対の声が上がつた事は、御承知の通りであります。一年以上にわたつて双方の御苦心のあつたところは了解することができるのでありますけれども、このような事情を考えますと、私は、今後政府法案を立案されるにあたりましては、もつと広範囲にわたつて世論を聞く誠意と努力とを要望したいのであります。  次に、私学の自主性の尊重と、私学の復興、振興の方法についてであります。私学、特に戰災校の復興のためには、国の財的援助を至急に與えなければなりません。このため、さきに議員全部の賛成を得まして、教育金庫法を制定しようとの計画がなされたのであります。しかし、諸般の事情により提案の運びにまで至らなかつたのであります。これにつきましては、当時憲法八十九條の規定をめぐりまして、私立学校が公の支配に属するものやいなや、これが論議の中心となりまして、そのためにこの計画が挫折したものとわれわれは承知しておりました。  ところが今期国会の文部委員会における文部大臣の答弁によりますと、この問題は憲法の解釈問題によつて挫折したのではない、憲法とは関係なく、まつたく財政上の理由から実現不可能であることが明らかにされたのであります。憲法とは関係なしに、財政上のゆとりができさえすれば可能であるならば、私学の特性と重要性にかんがみまして、その自主性をより広範囲に確保しつつ国の財政的援助を可能とする方法、すなわち、先に申しましたような教育金庫の実現に向つて積極的に努力すべきであろうと思うのであります。これが実現されさえすれば、憲法との関係上必要とされておりまする。本法案中の監督規定の大半は、不必要となるのでありましよう。私学の自主性は一層高められるのであります。よつて、これがすみやかなる実現を要望する次第であります。  最後に、審議会の運営についてであります。本法案では、審議会は諮問機関となつております。私どもは、これをもつと強い決議機関にすべきことを主張するものであります。文部大臣も、その答弁におきまして、教育行政の面から考えれば、審議会を決議機関をすることは十分考えられることであるから、将来この点については考慮したい旨の答弁をしておられるのであります。従つて、本法の運営にあたつては、審議会が、教育行政上、決議機関的性格を持つべきものである点を、特に留意されんことを要望するのであります。この点から申しましても、大学だけは、すみやかに別途にはずして立法されんことを希望するのであります。  以上の観点から、社会党では修正案を準備いたしたのでありますが、必要な手続が完了いたしませんので、ここに要望として特に申し述べた次第であります。その他本法案にはいろいろ不満足な点がたくさんございます。しかしながら、私学の復興は急を要することであり、国の助成も遅れれば、それだけ効果が減殺されるのであります。国の予算としては、今度の補正予算で、私学貸付金がわずか一億二千四百万円でありますけれども、地方では、この法案の成立を見れば金を出すという準備をして、待機しておるとのことであります。もちろん、それでもまだ決して満足できる額ではございませんけれども、困窮にあえぐ私学関係者の多くは本法の成立を熱望されておるのでありまして、これらの要望を無視するわけには参りません。よつて日本社会党は、先の要望を付して賛成するものであります。(拍手
  93. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 小林信一君     〔小林信一君登壇
  94. 小林信一

    ○小林信一君 私は、新政治協議会を代表いたしまして、私立学校法案に対し、二、三の希望を府しまして賛成意見を述べるものであります。(拍手)  教育行政は、文化国家という世界に類例がない、かつての人間が理想としか考えられなかつたものをわれわれは具現すべく決意をいたしたために、重大なる責任を持つて制度改革施設の充実に当たつております。しかし、ひとり私学に対する行政制度の設定は取残されておりまして、これが私学関係者の要望は切実なものがあり、また教育行政の面からいたしましても非常に遺憾に存じておる次第であります。今回この法案が上程され、私学行政の基礎を明示されたことは、教育施策の責任からも、また国民の要望に対しても欣快にたえないものであります。  私立学校法は教育委員会法と同様な性格を持つものでありまして、教育委員会法が、あらゆる教育行政の根幹となり動脈となるものでありまして、この動脈を流れるところの血液が純潔であつて、何ものにも干渉を受けることなく、権力の支配に属することがないとき、初めて教育わが国の民主主義の基盤となることができ得るのは、皆さんの熟知するところでありますが、私立学校法も、この教育的使命を完遂することは当然であり、さらに私立学校の持つ特殊性を生かさねばならぬところに重大な使命を持つものであります。新制高等学校以上の学校の半数以上を持つ現在の私立学校が社会的に持つ使命を認識いたし、しかも経済的に困窮する現況を見るとき、本法案をいよ尊重視すると同時に、すみやかに設定すべきことを痛感したのであります。(拍手)すなわちわれわれは、次に述べるような点を重視したのであります。  その一つは、私立学校が従来特有な学風と伝統を持つてわが国の学校教育に貢献し来つた実績にかんがみ、独自な学風を自由に発展させるため、その自主性を尊重しなければならない。  第二は、私立学校が社会的に重大なる任務を持ち、施設はいよいよ拡充され、内容が整備されなければならないのでありますが、私立学校の現状は、この要望に必ずしも満足を與え得る状況にないことは、すでに前の方たちの申されたところでありまして、戰災によつて受けた損害は、とうてい自力によつては復旧し得られない。学校現下の経済情勢によつて、経営はまさに破滅に入らんとする学校は、全国にその数が少なくないのであります。このきわめて不安定な状態にあるときに、財政面に対して法律的に何らかの措置を講ずるべきである。  第三は、私立学校について、私立大学のごとき広大な規模と複雑な内容を持つものと、幼稚園のごとく簡單な機構内容とで運営されるものとを同一の法によつて規定し、その両者に適切を欠くがごときことがあつてはならない。  以上の点に留意して本法案検討したのでありますが、第一の点であります、私立学校が持つ特殊性の伝統を生かすために、その自主性を確立する点におきましては、本法案は、その公共性と自主性の点において明瞭を欠いておるのでありますが、私たちは、私学の現状に立ちまして、やむを得ざるものを感じたのであります。これは審議会の運営等によつて万全を期して行くべきであると信ずるのであります。従つて審議会の機構、運営の方法等をより民主的ならしめるよう、その権限に対してもさらに検討を加えるべきであると信ずるのであります。さらに経営の組織、すなわち法人の機関の構成及び権限におきましても同じであります。  第二の点でありますが、本法案は、私立学校に対して、国または地方公共団体が補助、貸付等の助成を行い得ることを明確にいたしております。また免税の措置が講ぜられておりますが、これは私立学校の現状に対して最も適切なる配慮であり、さらに将来において私立学校に対するその重要性を表明しておる点といたしまして、まことに当を得ておると存じます。しかしながら、計上されるところの補助の実際はまことに小額でありまして、この点、私たちは不満に存じております。さらに、助成方法の規定と同時に、公の支配に属する性格が決定されておりますと、私学の特殊性はそのために危險に陥ることが考えられるのであります。将来政府はこの点十分に留意して、助成とか、あるいは免税等の権限によつて私学本来のものを阻害することのないように注意すべきであります。  第三の点におきましては、本法案が非常に不備であることを私は感じます。これによつて起るところの障害を思いますと、前に幾たびか述べられましたように、やはり文部大臣に対して、この点すみやかに近い将来において何とか考慮してほしい、こういうことを強く要望するものであります。文部大臣も、委員会におきまして、この法案によつては確かに満足しておられない。近い将来において何とか措置することを申しておられますので、われわれは一応了承しておるのであります。前にも申しましたように、本法案の持つ使命は、私立学校に対するところの教育行政の根本をなすものでありまして、ひいては文化国家の基盤を確立する重大な意識を持つのであります。当事者の要望すでに久しきものがある現下の情勢から判断するとき、すみやかなる設定が考慮されることが必要であります。  以上の希望をつけまして、本法案に対しまして賛意を表するものであります。(拍手
  95. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これにて討論は終局しました。  採決いたします。本案の委員長報告修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  96. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  97. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案議題をなし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  98. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  農業災害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。農林委員会理事八木一郎君。     〔八木一郎君登壇
  100. 八木一郎

    ○八木一郎君 ただいま議題と相なりました、内閣提出、農林委員会付託にかかわりまする農業災害補償法の一部を改正する法律案の、審議の経過並びに結果の大要につき御報告申し上げます。  御承知のごとく、農業災害補償法は第二国会において成立を見たものでありますが、今般経済事情の変化に順応し、本制度の円滑な運営を期するため、大よその次の二点を改正せんとするものであります。すなわち第一点は、蚕繭共済にかかわる掛金のうち、約半額に相当する金額は、従来製糸業者等が負担し、その負担額を、生糸等の販売価格の統制額に織り込んで消費者に転嫁することになつているのでありますが、本年の五月、蚕糸に関する統制の全面的撤廃に伴ない、かかる措置が実行困難となりましたので、製糸業者等の負担にかえまして、同額を国庫において負担することにいたしたのであり、第二点は、第五国会におきまして農業災害補償法の一部が改正せられ、農業共済組合組合員の所有または管理する牛馬を、死亡、廃用共済に当然加入せしめることとなりましたので、これら牛馬の死亡、廃用共済にかかる共済掛金の一部を国庫において負担することとするというのが、本改正法律案提案理由の大要であります。  本法律案は、去る二十五日農林委員会付託になりまして、本二十八日提案理由説明聴取し、続いて質疑が行われました。その際、民主自由党の足立、原田両委員、民主党の小林委員、社会党の井上委員、共産党の竹村委員、新政治協議会の吉川委員よりそれぞれ質疑があり、これに対し、森農林大臣その他政府委員より応答がありましたが、詳細は会議録に譲ることにいたします。  各委員ともに本法律案の趣旨に異議はないところでありますので、討論を省略して、ただちに表決に付しましたところ、全会一致をもつて原案の通り可決いたした次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  101. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 他に御発言もなければ、ただちに採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  103. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出所得税法臨時特例等に関する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び織物消費税法等を廃止する法律案の三案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  104. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  所得税法臨時特例等に関する法律案物品税法の一部を改正する法律案織物消費税法を廃止する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員長川野芳滿君。     〔川野芳滿君登壇
  106. 川野芳滿

    ○川野芳滿君 ただいま議題となりました所得税法臨時特例等に関する法律案物品税法の一部を改正する法律案織物消費税法等を廃止する法律案に関して、大蔵委員会審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  この三法案は、本月十五日大蔵委員会に付託せられ、十七日、まず大蔵大臣からその提案理由説明聴取いたしました。大蔵大臣の説明によれば、昭和二十五年を期して、さきに発表を見たシヤウプ税制使節団の勧告の基本原則を尊重し、さらにこれに適当と認められる調整を加えて、現下のわが国財政経済の実情に即応した国税及び地方税を通ずる税制の全面的改正を行い、国民の租税負担の軽減、合理化をはかるために、政府は全面的税制改正案を目下検討中であるが、今回補正予算の編成に際し、右税制改正一環として、租税負担の軽減及び適正化に資するため、まず間接税について、運賃、物価の改訂等の関係を考慮して、昭和二十五年一月一日を期し織物消費税及び取引高税を廃止し、あわせて物品税について一部改正を行い、清涼飲料税を物品税に統合するとともに、給與所得に対する所得税の源泉徴收について、明年一月より三月に至る間の暫定的軽減を行わんとするものであります。  まず織物消費税法等を廃止する法律案においては、織物消費税及び取引高税を、その性質及び歳出の状況にかんがみて、明年一月一日よりこれを廃止するとともに、物品税中に統合するために清涼飲料税をも廃止することを規定し、これらに対する経過規定をも定めるものであります。  次に物品税法の一部を改正する法律案においては、課税物品相互間の権衡等を考慮し、必需品的色彩の濃厚な物品及び主として事務用に供せられる物品等に対する課税を廃止し、奢侈的性質の比較的少い物品に対する税率を引下げ、及び現在あまりに高率に過ぎると認められる第一種甲類及び乙類の税率を引下げるとともに、また清涼飲料税の税率を引下げて物品税中に統合し、じゆうたん、窓飾り等、高級裝飾用、調度用の繊維製品を、物品税の課税物品として追加せんとするものであります。また取引の実情にかんがみて、納期を一箇月延長せんとするものであります。  次に所得税法臨時特例等に関する法律案におきましては、とりあえず昭和二十五年一月一日から三月三十一日までの支給にかかる給與に対する所得税の源泉徴収について、およそシヤウプ勧告による控除及び税率を基準として暫定的軽減を行わんがため特例を設けんとするものであり、これがため給與の金額及び扶養親族の有無及び数に応じて、源泉徴收表に掲ぐる税額から一定額を控除せんとするものであります。なおまた申告所得税の課税の適正化をはかるため、正確な帳簿の記載に基く青色申告書の制度の実施を考慮し、その準備のため、法人または事業所得を有する個人の所得の計算に関して政府が記載事項を定めることとし、右の帳簿を備えつける者は、昭和二十五年一月三十一日までに政府に届け出るべき旨を定めんとするのであります。  なお、今回の税制改正による減收額については、源泉徴收の所得税において約五十六億六千六百万円、物品税において約二十三億八千百万円、織物消費税において約二十五億九千二百万円、取引高税において約九十二億五千六百万円、清涼飲料税において約一億七百万円でありまして、合計約二百億二百万円を推定し、予算算定に組み入れられているのであります。  この三法立案に関して、大蔵委員会は、十八日より二十二日に至る間、四回にわたり委員会を開き、政府側に対して質疑を行い、また二十一日公聴会を開く等、愼重審議を続けました。この質疑応答及び公述の詳細に関しては会議録を参照願うとして、その間において特に重要と認められる数点について、要約御報告申し上げます。  まず所得税臨時特例について、今次の改正では、給與所得のみ軽減し、農業所得について軽減していないのは何ゆえか、シヤウプ勧告による本年十月以降の農業所得者等に対する勤労控除は行なわれないのかとの質問に対して、大蔵大臣及び政府委員から、勤労所得税は月々納付するが、申告所得税は、明年一月以降分は六月に申告し納付するものであるから、申告所得分については次の国会改正して十分間に合う、農業所得等に対する本年内の減税はこれをとりやめ、明年一月から申告、源泉ともに出足をそろえて均衡をはかりたい、これはシヤウプ勧告を変更したものであるとの答弁がありました。  次に、所得税の累進率を三十万円超五五%でとどめることは、税法の建前から妥当と考えるかとの問いに対して、大蔵大臣は、所得に対する課税率の限界は七五%程度にとどめるべきである、従つて、住民税等を考えると、所得税率最高五五%は適当である、しかし、三十万円で五五%にするのがよいか、百万円で五五%にするのがよいかは、税收の関係もあり、検討中であるが、三十万円以上の所得者はざらにはないから、今の状況では五五%負担してもらわねばらなぬとの答弁をいたされました。また、勤労控除二五%を一〇%に減らしたのは不適当ではないかとの問いに対しては、大蔵大臣から、これは農業者等に対しても勤労控除を認めんとする関係からであるが、二五%を一挙に一〇%とするのは急に過ぎるきらいがある、政府が許せば、経過的にはこれを緩和したい、次回の減税においては、まず勤労控除によつて減税し、これを一五%くらいにしたいとの答弁がありました。  次に、本格的改正案はいつ提出するか、今回の所得税の暫定軽減における原則は、来るべき改正において動くか動かないかとの問いに対しては、本格的改正については、ただいま検討中であるが、できるだけ早く来年度予算と同時に提出する所得税については、来年度はシヤウプ案及び今次の暫定措置よりさらに軽減する、なお勤労所得の合算制の廃止、医療及び災害控除、扶養親族の拡張はこれを実現したい、その実現は困難ではないと思うとの答弁がありました。  次に、帳簿制度と青色申告については、すでに各地において協同組合等で帳簿を準備している実情であるが、帳簿の記載事項、様式等について早く明らかにせられたいとの要望に対して、政府委員は、できるだけ早く政令で定める。政令では、これだけの事項は必ず記載すべしということをきめ、様式等については、各業態ごとに、既存のものにのつとつて行く旨を明らかにし、また記帳能力不足の現状において、青色申告の法的効力をどうするかとの質問に対し、法的効力は次の本格的税制改正の際きめる、更正決定に関しては、シヤウプ勧告の線は動かないが、減価償却及び繰越し欠損については、実情に沿うよう研究する旨の答弁がありました。  次に物品税に関しては、実用品で課税品目から抜けていないものもあり、なお不備である、近き将来改廃するか、また近き将来とはいつかとの問いに対して、予算の関係もあり、今後実情に即して改廃するが、今回の改正は次の通常国会においてなすべき減税を繰上げて実行したものである、従つて、次の通常国会には大きな期待は持てない旨の答弁がありました。  また織物消費税については、現下の取引の実情にかんがみて、十二月一日より一〇%まで軽減することはできぬかとの質問に対して、政府委員より、税收の関係もあり、むずかしい旨の答弁がありました。  最後に、今次減税と物価改訂の関連について、貨物運賃、主食の値上げ、補給金廃止による値上りによつて実質上減税とはならぬではないかとの問いに対し、大蔵大臣より、米価、運賃が上つても、相当生計費は楽になる、補給金廃止によつても、一般物価水準は大して影響はない。減税で相殺できる旨の意見が述べられました。  次に、公聴会における公述人意見の大要を御報告申し上げます。まず全国指導農業協同組合連合会農政部長平尾卯二郎氏は、シヤウプ勧告においては、本年十月以降、農業者に対する勤労控除が認められているにかかわらず、今回の臨時特例において、まつたく認められていない点が不満であること、及び帳簿様式に関して、どんな農民にも記帳し得るような簡單なものを望む等の意見の開陳があり、絹人絹織物商協会専務理事沼田義雄氏は、織物消費税及びメリヤスに対する物品税について、現下の取引停滞と価格の混乱等の実情を指摘し、十二月一日よりの早急実施を希望し、あわせて同税が消費税たる性質を考慮し、実施に際しては、納税済みストツクについて、納入済み税額を交付金として返還すべき旨要望せられ、全国財務労働組合中央執行委員徳島米三郎氏は、今次所得税臨時特例は、シヤウプ税制そのままであるがゆえに、勤労者に対する恩典が不十分である旨を述べ、また合理的税制なくしては青色申告も十分な効果を上げがたい旨を指摘し、最後に労働調査協議会の永野順造氏は、国民生活の実情から見て、勤労所得税は事実上増税である旨の意見の開陳がありました。  かくして、二十二日質疑を打切り、本日討論採決に入りました。まず塚田委員は、民主自由党を代表して三法案賛成の意を表せられ、次に川島委員日本社会党を代表して、所得税臨時特例及び物品税法改正に関しては反対、織物消費税等廃止案に関しては賛成の意を表せられ、宮腰委員は民主党野党派を代表して、所得税臨時特例については反対、他の二法案については賛成の意を表せられ、林委員日本共産党を代表して、所得税及び物品税の改正に関しては反対、織物消費税等廃止法案には賛成の旨を述べられ、内藤委員は新政治協会を代表して、所得税の臨時特例については反対、他の二法案については賛成の旨討論せられました。  以上で討論を終局し、採決に入りましたところ、所得税法臨時特例等に関する法律案については起立多数をもつて可決、物品税法の一部を改正する法立案については起立多数をもつて可決、織物消費税法等を廃止する法律案については、起立総員、原案の通り可決いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  107. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 本案については討論の通告があります。これを許します。川島金治君。     〔「大蔵大臣はどうした」「大蔵大臣が来るまでやるな」と呼ぶ者あり〕
  108. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 大蔵大臣は間もなく来られるということであります。まだ見えておりませんが、しかし次官が参つておりますから…。間もなく来られるそうでありますから…。     〔川島金次君登壇
  109. 川島金次

    ○川島金次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました所得税法臨時特例等に関する法律案について、まず反対意見を表明せんとするものであります。(「わかつておる、簡單にやれ」と呼ぶ者あり)簡單には行かない。  およそ税制の体系というものは、現在の日本経済の実態に即して、資本と労働—この資本と労働との関係において適切均衡を得るということが第一の要件でなければなりません。第二は、経済の安定と復興とは、国内労働生産力の高揚が前提とならなければなりません。従つて、高額所得者と零細所得者、言いかかえれば、生産に直接間接に携わつておりまする勤労大衆の税は、なるべく減税をいたし、あわせて一方における高額所得者に対しましては、日本経済安定のために累進的な負担を要求するという建前で打立てるべきであろうと、私は確信するのであります。しかるに、今回政府提案にいたして参りました所得税臨時特例法の内容を一瞥いたしますと、あたかも先般来朝せられましたシヤウプ使節団の勧告そのままの一部を採用いたしたにすぎないのであります。これを言いかえれば、シヤウプ勧告という配給品の一部を、そのまま政府は能もなく国民の前に取次いだ、ということにほかならないのであります。  民自党は、かつて総選挙に、選挙虎の巻の中で所得税の大幅軽減をば強調し、多くの候補者及び候補者をめぐる院外団の人々にこれを国民の前に強調せしめ公約をいたして参つたのであります。さらに政府もまた、日本の国民経済の実態に照して、ことに勤労大衆の生計の実態に即応して、零細所得階級の大幅な税の軽減をば約束いたしたのであります。しかるにもかかわらず、今日政府が上程して参りました税法は、ただいま申し上げたように、単なるシヤウプ勧告の、いわば配給品をそのまま国民に取次いだにすぎないのみならず、現下の勤労大衆の生計の実態をば、まつたく無視、蹂躪したというにほかならない形になつておるのであります。  一例を申し上げるならば、池田大蔵大臣は、日本の経済は今や安定の域に達し、ことに勤労大衆の実質的賃金はようやく向上して参つたと言明しておるのでありますが、その事実は、まつたくその交際とは雲泥の差があることを、私は一例をあげて申し上げたいのであります。  今日の勤労大衆の生計は、昨年十二月、公務員を中心とする六千三百円ベースがくぎづけになつて今日に参つておることは、言うまでもありません。さらにまた、民間産業のおよそたいていは、これまた企業の合理化の名に隠れて労働賃金のくぎづけをいたしておることも、これまた争うべからざる事実であります。しかるに、一方における労働階級のエンゲル係数において占めまする食糧費は、いまなお六二%という著しき高額でありますることは、安本の調査がこれを表明いたしておるのであります。さらにまた最近においては、すなわち米価の改訂、補給金の削減等により必然的にもたらしまする独占商品価格の上昇、あるいはまた運賃の大幅の値上げによりまして、これがことに勤労大衆の生計費にいかなるはね返りを示すかということについて、最近これまた経済安定本部が公表いたしました係数によれば、政府はシヤウプ勧告によつて、かりに勤労大衆の減税を行いましても、この値上りによつて勤労大衆の生計費にはね返るところの上昇率は、減税率を差引いても、なおかつ三・六%を上まわるであろうということを、政府自身が公表しておるのであります。  諸君、今日の全国都市における公益質庫というものは、私が言うまでもなく、働く勤労階級の唯一の金融機関であるといわなければなりません。しかるに、私が最近調査をいたしました結果によりますと、この働く勤労大衆の唯一の頼みであり、唯一の生活の金融機関ともいうべきところの公益質庫の利用者百のうちに、実に俸給生活者が八〇%に及んでおるというこの事実の一点だけ見ましても、政府実質賃金が充実し、国民生活は安定いたしたと強弁いたしましても、この事実こそは、いかに勤労大衆、俸給生活者がその生計に窮乏を告げているかということを、きわめて雄弁に物語るものであると、私は断言せざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、私が最近これまた調査いたしたものでありますが、私の知人である某が、最近某市において、しかも相当人口数の多い某都市において新聞社を設立するにあたり、その夕刊新聞の少年、青年の配達員を募集したのであります。ところが、わずか三十人の少年配達員の募集に対しまして、少年、青年にしてこの夕刊新聞の配達に応募いたしました者は、わずか十万足らずの人口の都市において、実に三百数十名の多きに上つたのであります。しかもその三百数十名の多きに上つた少年新聞配達員の中の二〇%は一般無職階級の子弟、残る八〇%のうちの四〇%は、生活保護を受けているところの家庭の子弟でありました。さらにまた、残る四〇%は実に俸給生活者の子弟であるということが判明いたしたのであります。  諸君、今や勤労階級は、その世帶主である主人公の俸給だけでは生計が支えられずして、その細君のアルバイト、あるいはまた本人の内職、さらにこれだけでは足らずして、ただいま申し上げましたごとくに、少年をして配達をさせなければならないという、あの生活保護階級の子弟と同様な生活戰線をたどつているということは、この一事をもつても、きわめて明瞭であると、私は断言するのであります。このような状態にありまする勤労大衆の、きわめて困難な、著しき窮乏の生活—白たびをはく宰相や、素封家に生れて育つて、とんとん拍子で出世をして来た池田蔵相は、この逼迫した勤労大衆の生活の実情は、よもや御存じなかろうと私は考えるのであります。  さらにまた、かくごとき勤労大衆の生計を無視いたしておりながら、一方においては、法人税の増税によつてわれわれ一般所得減收の補填をするというのが、今度の補正予算の大要であります。なるほど政府説明するがごとく、一般所得税の軽減を法人所得税の増徴に求めたということは一応認めるといたしましても、この法人税の増徴が、政府の予定よりはるかに上まわつて来たということは、法人税自体の企業努力ではなくして、法人に属する多くの従業員に当然値上げすべき賃金を抑圧し、言いかえれば、労働者の犠牲において法人税の増徴を求めたのでありまして、必ずしもわれわれは納得のできない点であるのであります。  以上申し上げましたごとく、今日の労働勤労階級の実質的な生計というものがいかに困難と窮乏を告げているかということは、実に明瞭にわれわれは感知できるのであります。このようなときに際して、政府は、基礎控除一万五千円を二万四千円、シヤウプ勧告通りであります。扶養家族の控除は、千八百円が、所得税差引によつて一万二千円、それだけならいざ知らず、勤労大衆が最も頼みの網といたして参りました勤労控除現行の二五%が、一挙にして一〇%に引下げられたというこの事実こそは、勤労大衆の政府に対する反感と失望とをそそつたにほかならぬのであります。  この点につきましては、笑つておりまする民自党の諸君においても、民自党内の有力な税制に通じている幹部においてすらも、きわめて忿懣の意思を示しておることは事実であります。このような税制改正案の取次によつて事足れりと考えておりまするところの政府、並びにこの案に賛成をいたそうとするところの民自党の諸君の、勤労大衆に対する理解がはたしてあるやなしやを、私は疑わざるを得ないのであります。  わが党は、この勤労所得税に対する基本態度といたしまして、働く勤労大衆の最低生計費に対しては絶対に課税すべからずという基本的な建前をもつて臨んでおるのであります。従つて、この基本的な建前からいたしまして、源泉徴收税に対しましては、基礎控除は現下の経済実情に照し、あわせて現下の財政ともにらみ合わせて、実行可能なる最低限として、基礎控除は一箇年に四万円、扶養家族の控除に対しましては一箇年に一人二万円、さらに勤労控除は現行二五%のすえ置き、さらに扶養家族の範囲の拡張及び基礎控除及び勤労控除は、これまた勤労所得者以外の中小企業及び農業所得者にもこれを適用するということを、われわれは主張して参つておるのであります。このことによつて、今や日本の経済の安定と復興に死力を盡している、あまねく勤労大衆の最低生計費が辛うじて維持されるほどであり、このことによつてのみ勤労大衆の生産労働力は遺憾なく発揮されるであろうということを、われわれは確信しておるのであります。  この意味合いにおきまして、わが党におきましては、政府所得税法臨時特例等に関する法律案に対しましては絶対に反対の意を表するものであります。(拍手)  第二の物品税につきましては、多くを申し上げることを差控えますが、要するに物品税の問題は、政府が言うごとくでありますれば、生活の必需品に対しては、できるだけこれを廃止し、あるいは減税して、生活必需品以外の高級品または奢侈品に対しましては、できるだけの税をかけるという、すなわち負担応能の精神に一貫すべきであろうと私は思うのであります。しかるに、今度の物品税は、負担応能の一貫した精神がどこにあるかということを疑わざるを得ない改正案であるのであります。たとえば、従来生活必需品以外であつた……     〔発言する者多し〕
  110. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 靜粛に願います。
  111. 川島金次

    ○川島金次君(続) 高級品や奢侈品の甲類は、従来は御承知のごとく一〇〇%の課税であり、乙類に対しましても八〇%の課税が現行であります。しかるに、今回の改正におきましては、われわれ働く勤労階級には縁もゆかりもないところの高級品や、ぜいたく品の、現行一〇〇%、八〇%をば、この甲類の一〇〇%を八〇%に、乙類の八〇%を六〇%に、二〇%という高率な引下げをあわせて実施いたそうとしております。もし負担応能の精神から言いましたならば、甲類、乙類に属する課税に対しましては、およそ現行でよろしいのである。甲類、乙類に対するところの課税を現行にすえ置いて、その乙類以外であるところのいわゆる生活必需品の品物に対しては、できるだけ課税を軽減し、できるだけこれを廃止するという方向に行くことが、物品税の改正精神でなければならないのにかかわらず、ただいま申し上げましたように、負担応能の精神に著しく欠けておるという点に、われわれは反対の意を表せざるを得ないのであります。  さらにまた、第三の織物消費税及び取引高税の一月一日からの廃止の問題につきましては、われわれが過ぐる国会において、第二次吉田内閣に対して、強力に国民の名においてこれを要求いたしました事柄でありますので、辛うじて今に至つて実現をいたしましたことは、おそいことではございますが、なきにまさる事柄であるということを考えまして、これに対しましては、わが党も賛意を表する次第であります。(拍手
  112. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 塚田十一郎君。     〔塚田十一郎君登壇
  113. 塚田十一郎

    ○塚田十一郎君 私は、日本民主自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりますところの所得税法臨時特例等に関する法律案外二法律案に対して賛成討論をいたそうとするのであります。(拍手)  私どもが、これらの三つの法律案に対して賛成をいたしますところの根本の気持は、これら法案に盛られておりますところの改革が、昭和二十四年度中においてわれわれが期待しておりましたところの改革として十分なものであるという意味においてではないということを、まず冒頭においてお断り申し上げておきます。しかしながら、審議の経過を通しまして、われわれは、来るべき通常国会において、われわれの考えておるところの、なお残余の種々なる改革が十分に実現せられる見込みのあるものであるということを承知いたしましたので、これに賛成の意を表するわけであります。(拍手従つて私は、われわれが来るべき通常国会に——今後どのような改革案を希望いたしておるかということを申し上げて、討論の趣旨弁明にいたしたいと考えるのであります。  国民負担を軽減し、租税の負担を公平にするということが、今日の税制において最も重点を置かなければならない点であることは、申すまでもないのであります。その意味におきまして、今度の三法案に盛られておる種々の改革は、必ずしも十分であるとは私どもも考えておりません。まず第一に、給與所得に対する減税措置についてでありますが、これらの減税措置は、諸君も御承知のように、シヤウプ勧告に盛られてある内容と合致いたしておるものであります。シヤウプ勧告が、給與所得の減税についてこのような数字を示唆いたしましたのには、使節団の予定しておりますところの予算のわくというものがあることは、申すまでもないのであります。つまり勧告は、昭和二十五年度の所得税收入として二千八百八十億、これに富裕税收入の二十億を加えて、二千九百億というものを予定しておることは、諸君の御承知の通りであります。この前提に立つときに、初めてあのような減税案の内容が出て参るのでありまして、われわれは、これに対しては、所得税收入は、さらに国費の一段の節約と負担の均衡化、もつと率直に申し上げますならば、今日なお捕捉せられておらない部分の所得の捕捉度を向上することによつて十分收入財源を得て、一段の軽減ができるものであるという確信を持つておるのであります。(拍手従つて、それに対して、二十五年度以降におきましては、一段の所得税軽減というものを、給與所得、事業所得を含めまして行われたいということを、強く政府に対して要望いたしておく次第であります。  次に事業所得税についてでありますが、事業所得税の勧告中に示唆いたしております、本年中における十、十一、十二の三箇月間の、年間を通じて三分七厘五毛程度の所得の特別控除を行えという勧告が、このたび実現せられなかつたのは、これまたわが党のきわめて遺憾といたしておるところであります。しかし、この点につきまして、ただいま川島議員よりいたしまして、今度の改正案が給與所得に対して非常に薄かつたというような御批判であつたのでありますけれども、私どもは、遺憾ながらその点に対しては、まつたく考え方を異にいたしておるものであります。私どもは、今日の所得税におきましては、給與所得と事業所得と、そのいずれの負担がより過重であるかということを考えます場合に、われわれは、事業所得の負担がはるかに過重であるということを申し上げたいと思うのであります。(拍手)(「でたらめを言うな」と呼ぶ者あり)いかに私の申し上げることがでたらめでないかということを、数字をもつて、ただいま御説明申し上げます。  東京都の実例で申し上げますならば、扶養家族三人を有しますところの家庭におきまして、一箇月間において約一万円の生活費、つまり、收入のうちから税金を差引きまして、手元に一箇月間一万円の所得が残ります例を想定いたします場合に、給與所得者は一箇月どれだけの所得があればいいか、また事業所得者は一箇月間にどれだけの所得を上げればいいかという数字を比較いたしてみますと、給與所得者の場合には、年額十五万円、月一万二千五百円の所得がある場合に、手元に一万円の所得が残るのであります。ところが、事業所得の場合におきましては、年額三十万円の所得を上げない限りは、手元に月一万円の税引の残りがないという数字が出ておるのであります。  この事実は、申すまでもなく給與所得に対しましては二割五分の控除がある。事業所得に対しましては、その控除がない。さらに事業所得に対しましては、東京都の場合におきましては、事業税が約一割八分程度課税せられておる事実に由来するものであります。これらの事実が今まで存在いたしておりました理由は、もちろんいろいろ理由がありますけれども、その一つとして、しかも最も重要なる一つといたしまして、事業所得の捕捉が十分に行われないということが大きな原因となつておることは申すまでもない。  しかし、皆さん方も御承知であられるように、今度の税制改革が行われますならば、改革以後におきまして、わが国の税制運営に最も重点を置かなければならないのは、税法通り税をとるということであります。税法通りな税制運営というものが行われない限りは、いかなる税制改革も結局成功いたさないのであります。もちろん、これを実施いたしますには相当な困難を伴うことは申すまでもないのでありますけれども、最大の努力を拂つて、その方向に税制の運営を持つて行く、こういう重大決意を待つたのでなけらばならないことは申すまでもない。  このような考え方に立つときに、事業所得と給與所得の間に、今申し上げるような年額三十万円と年額十五万円との所得の開きが、同じく一箇月間に一万円の実收にしかならないというような大きな開きというものは、とうていこれは合理的なものとは考えられないのであります。従つて、事業所得と給與所得との間の扱いの相違、つまり開きというものは、特別勤労控除というものが現行の二割五分よりもはるかに低められてしかるべき正当な理由があるということを、私どもは考えるのであります。(拍手)もちろん私どもは、給與所得税があれだけの負担をいたしまして、十分生活に余裕ありとは考えておらぬのでありまして、それはもちろん、全体の国費の削減によりまして、全体の所得税の軽減を行う場合において考慮せらるべき問題であつて、事業所得、給與所得間の開きは、今申し上げるように相当に縮められてしかるべしということを、繰返して申し上げる次第であります。  次に青色申告の問題についてでありますが、この点につきましては、私どもは、今日のわが国の中小企業者、農業者、それらの人たちの持つておりますところの経理能力の程度というものを考えますときに、その備えつけを要する帳簿の種類、それからそれに記載をいたします方法等が簡易軽便なものにせられない限りは、このせつかくの制度が十分効果をあげないおそれがあるということを、非常に懸念いたしておる次第であります。この点につきまして、十分政府の御留意をお願いいたす次第であります。  次に物品税についてであります。御承知のように、シヤウプ勧告は、物品税につきましては、昭和二十五年度以降におきましても、本年度と同じく、大体二百七十億程度の税收入というものをあげるのが適当であると勧告しておるのであります。私どもは、シヤウプ勧告に対しましては、物品税の部分が比較的できの悪かつた部分ではないかと考えておるのであります。この点に対しまして、政府はわれわれとまつたく考えを同じくせられて、この勧告の考え方にもかかわらず、これに相当大幅の減税を企図せられておるのは、まことにその労を多とする次第であります。(拍手)ただ提案せられておりますところの各品目間の均衡、その物品の必需度の認定等において、なお再考を要するものがあるのではないかと考えるのでありまして、この点につきましては、ただいま政府が考えておられます程度の收入予定をくずすことなしに、なお十分再考をなし得る余地があると考えておるのであります。  物品税につきましては、本年度は、修正の結果二百十三億程度、明年度は、清涼飲料税の十七億を含めまして、約百七十八億程度の税收を予定せられておるようでありますが、これらの税收も計算せられておりますところの政府の推算の基礎に対しましては、私どもは、なお若干の疑義を持つておるのであります。政府は、本年度に比較いたしまして、生産増加一二%、捕捉度の向上は、申告の向上によつて二五%程度を増加するものと見られておるのでありますけれども、申告の向上並びに捕捉度の上げられる程度というものは、御承知のように税率を引き下げることと密接な関連を持つているものでありますから、われわれの考えるように税率を引下げますならば、さらに捕捉度及び申告も一層向上させて、十分なる税收をあげ得るということの確信を持つておる次第であります。  次に織物消費税についてであります。織物消費税が一月一日から全廃せられることになりましたのは、その織物が持つておりますところの必需品的性格に考え合せまして、最も適切なる措置であつたと考えておる次第であります。ただ、この織物消費税が、本年度の予算におきましては百七十三億、それに物品税の中に含まれておりますところのメリヤス類の税收入二十三億と合せまして、約二百億近い厖大な財源をなしておつたのでありますが、これが一気に免税にまで持つて行かれましたために、その過渡期における混乱が産業界に相当起つておる点を、われわれは懸念いたしておるのであります。われわれは、それらの点を懸念いたしましたから、勧告が九月免税を発表いたしましたときに、織物及びメリヤス類についてだけは他の部分と切り離して、本臨時国会の冒頭に暫定的に減税措置をせらるべきであるということを強く要望いたしておつたのでありますが、この点の実現を見なかつたのは遺憾であります。今後の税制の運営の上において、これらの混乱をできるだけ最小にとどめ得るような措置を講ぜられんことを、政府に要望しておきます。  最後に取引高税についてであります。この税は、昭和二十三年七月、時の内閣によりまして創設せられましたときから、私どもの根強く反対いたして参つた税であります。(拍手)このたび、この税が、勧告では明年四月一日以降の予算のわくとにらみ合せてこれの撤廃を適当と考えると示唆いたしておつたのにかかわらず、明年一月一日よりその撤廃を見ることができるようになつたのは、その点に対して、政府の労をまことに多いといたす次第であります。(拍手)この税がいよいよ廃止されるのを目前に控えまして、私は今、前芦田内閣の当時、時の多数を擁しておられた與党の諸君が、これが撤廃できるならばやつてみろと言わんばかりの嘲笑的な激励をもつてわれわれを鞭撻していただき、その結果、この税が今日廃止を見ることのできるようになりましたことに対して、衷心感謝の意を表するとともに、国民諸君とともに喜びにたえない次第であります。  以上三案に対して、わが党としましての賛成の気持を申し上げ、賛成討論をいたした次第であります。(拍手
  114. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 宮腰喜助君。     〔宮腰喜助君登壇
  115. 宮腰喜助

    ○宮腰喜助君 私は、民主党野党派を代表いたしまして、所得税法臨時特例等に関する法律案に対しては反対するものであります。並びに、物品税法の一部を改正する法律案及び織物消費税法等を廃止する法律案に対しては賛成するものであります。  池田大蔵大臣は、わが国の経済は安定の軌道に乗り、徐々に復興に向いつつあるということを言つておりますが、現状は、はたしてそうでありましようか。いや、決してそうではない。少くともわれわれの目をもつてすれば、決してそうではないのであります。品物をどしどしつくる。つくつたものは、どんどん売れる。品物が売れるから、ますますたくさんつくる。これが経済の正常なる姿でなくてはなりません。ところで、わが国現状は、はたしてその通りに行つているのでありましようか。  ごらんなさい。なるほど品物はたくさんつくられ、強い統制ははずされて、あれやこれやの品物が町に出て来た。ところが、それらの品物は、一向に売れない。厖大な滯貨の山が築かれている。企業の金詰まりがますますひどくなつて来る。これが日本現状の姿なのであります。それでは何ゆえ品物が売れないか。いや、売れないのじやない。買えないのであります。品物がほしくても、金がないので買えない。その買えないために、経済の流れがとまつてしまう。生産と消費のアンバランスが経済の循環を破壞してしまう。  国民の購買力の増進、消費水準の引上げ、これが経済の発達をさせる原動力なのであります。ところで、せつかく一月働いて月給袋をもらつても、頭から何割か税金を引かれている。ようやく丹精してつくつた米の代金を受取つても、税金でごつそり持つて行かれてしまう。それでは消費水準の引上げはできません。だから、税金をよけいに取るということは、経済の源泉を枯渇させるようなものであります。しかしながら、これは大きな目で見た場合に言えることでありまして、税金が重過ぎると、とてもやつて行けないという声は、国民にとつて最も直接的な、切実な叫びなのでありますが、働けば働くほど税をよけい取られる。税金のために商売がつぶれる。こういう現状が一般的なのであります。  昔から、よい政治は税金の少ない政治であると言われております。それでは、吉田内閣ははたしてよい政治をしているでありましようか。総選挙の当時、租税負担の軽減ということは、民主自由党の最も大事な公約の一つだつたはずであります。ところで、昭和二十四年度の本予算が提出された。どこを見ても、それらしいものはほとんど見当らない。  池田大蔵大臣は言われました、減税はすべてシヤウプ博士が来てから行うのだと。それでわれわれは、シヤウプ博士の勧告に大いに期待していたわけであります。ところが、シヤウプ勧告が発表されると、減税よりも、むしろ租税負担の均衡に重点を置いたのだとのことであります。これでは、国民はだまされたというよりほかはございません。それでも大蔵大臣は、シヤウプ勧告よりも相当大幅に減税するつもりだと申しておられました。そのため、勤労者や農民は、まだ一縷の希望を持つていたのでございます。ところで、ふたをあけてみると、どうでしよう。農民や営業者の所得に対しては、全然手がつけられていない。シヤウプ勧告には、十月以降の事業所得に対しては減税するようにと述べられていたはずなのに、それが全然葬り去られて跡形もない。これでは、農民や営業者は一体何と考えるでしようか。  勤労所得は、なるほど軽減されてはいる。しかし、問題はその程度いかんであります。妻一人、子二人の扶養家族をかかえている月收九千二、三百円の勤労者でさえ、減税はわずかに三百二十五円、独身者の場合は最もひどい。月收六千七、八百円の者は、たつた六十五円、これではピース一箱よけいに買えるだけではありませんか。昨年度からの物価騰貴を勘案すれば、租税負担はむしろ重くなつているのであります。政府は、国民の切実な要望をまつたく無視しているというよりほかありません。  あるいは政府は言うかもしれません、今度は間接税の軽減に重点をおいたのだと。なるほど間接税の軽減、それはまことにけつこうなことであります。しかしながら、政府は一方で運賃や電気料金を引上げているではありませんか。これでは何の役にも立ちません。おまけに物品税の軽減の仕方にも、どうもふに落ちない点が多いようです。一般大衆に何の縁もない乗用自動車などの税率を大幅に引下げているのに、もつと身近かな生活必需品である家具や雑貨類をそのままにしているのが多い。紙などにまで依然として税金をかけている。これでは、一般の貧乏人に比較して、宝石や自動車を買おうとする大金持の受ける利益の方がはるかに大きいではありませんか。どうも政府のやり方は、一般の国民感情とは正反対のようでございます。とても国民の信頼をつなぐ、よい政治をしているとは申せません。今回の税制改革は、まつたく国民の期待を裏切るものだというよりほかはありません。ゆえに私は、心から減税を切望する国民の代表として、あえて所得税法臨時特例等に関する法律案反対するものであります。また織物消費税法等を廃止する法律案物品税法の一部を改正する法律案には賛成するものであります。  以上をもつて私の反対討論を終ります。
  116. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 林百郎君。     〔林百郎君登壇
  117. 林百郎

    ○林百郎君 私は、日本共産党を代表しまして、所得税法臨時特例について反対物品税法の一部改正にも反対、織物消費税並びに取引高税の廃止には賛成するものであります。  まず第一に反対内容でありますが、勤労控除が二五%から一〇%に切下げられたという点、この点一つを見ましても、このたびの法案が、勤労者にとつてはプラスでないということは明らかであります。しかも、高額所得者、三十万円以上のものに対しては五五%ですえ置く。従来の法案ですと五百万円までは八五%が、三十万円、五五%すえ置き。ここにおきまして、勤労者にとつては負担は増加し、高額所得者に対しては、むしろ非常な有利な條件でなされておるこの法案の性格が、この勤労控除の点一つだけを見ても明らかだと思うのであります。  その次には、このたびの減税に対しては三つの支柱が考えられておるのであります。この柱が実は問題であります。第一には、勤労所得税を百四十九億自然増するということであります。しかも政府は、この勤労所得税の自然増は、勤労者の生活が実質的にも各目的にも安定の方向をたどつておるという、実に御同慶にたえない情勢の分析から、かかる勤労所得徴の増徴を考えておるのであります。  その次に問題になるのは、申告税の千七百億の徴税でありますが、この千七百億の申告税は、実は本年度下半期には、わずか三百九十九億しかとられてないのであります。すなわち、この年末から来春にかけまして、申告税は、おそらく下半期は上半期の三倍から四倍とられるということであります。このことに対しては、政府は、農業所得も中小企業の営業も三割四分から二割増收の方向をたどつておるから、この下半期は上半期の三倍、四倍の申告税をとつても決して心配がないという、これはまた実に楽観的な、中小企業並びに農民からいつたならば苛酷きわまる情勢の分析がなされております。  その次の問題は、法人税をさらに二百二十七億増徴するということであります。この三つの柱のもとに初めてこのたびの減税が行われておる。すなわち第一には、勤労所得を百四十九億増徴する。その次に、法人税を二百二十七億増徴する。申告税は本年度上半期分の三倍から四倍を下半期にとるという猛烈なる税金攻勢のもとに、このたびの減税というものが成立つておるのであります。すなわち、このたびの減税は、実に本年度下半期における苛酷きわまるところの税金攻勢、いわゆる徹底的な大衆收奪と、大衆負担のもとにおいてのみ行われ、ことに勤労階級にとつては耐えがたき負担のもとにのみ行われておるということは明らかであるのであります。  さらに政府は、政府が考えておらない要素といたしまして、このたびの安定帶物資に対する補給金の廃止その他の物価騰貴から言いまして、たとえば家族五人、月收九千円の者は、このたびの税制改革によつて月額三百五十五円の負担額になりますが、来年の一月から主食の公定価が一割増加することによつて、実に赤字二十五円が増加しておるのであります。  その次は地方税の増加でありますけれども、これもまた、年收五万円の東京居住の夫婦と子供一人の者は、来年度の都民税が内輪に見積つて二・六倍となるならば、さらにこのたびの減税にもかかわらず、百五十五円の増税となつておるのであります。このことは、このたびの減税なるものが、この物価高の趨勢と、地方税の増額という、この隠れておるところの、いわゆる一片のパンを與えることによつて猛烈なる毒素が含まれておる、いわゆる羊の皮をかぶつてるおおかみであるところのこのたびの税制改革、いわゆる減税案なる者に対しては、共産党は徹底的に反対する者であります。  勤労所得者に対しては、少くとも戰前、戰争中、勤労所得の免税点は千百円であつたのでありますが、これが、その後の物価騰貴から言いまして、少くとも四十三万円となる。だから四十万円以下の者に対しては、勤労所得税は当然撤廃すべきものであります。所得税は、收入から必要な経費を差引いた、いわゆる利潤に対してかかる税金であります。ところが、勤労者に対する勤労所得税は、肉体的な再生産の費用であります。もしこれを勤労所得税という形でとるならば、これは明らかに勤労者の血と肉をはぎとるものであります。すなわち、このたびの勤労所得税は—五十六億という、ほんのわずかな減税によつて、千二百億という勤労者の血と肉をはぎとるのがこの減税案の本質であると言わざるを得ないのであります。(拍手)  日本共産党は、この勤労所得税を撤廃いたします。そのかわり、高額所得者に対する高度の累進課税と、大口脱税を徹底的にとることによつて、皆さんに御心配することなき十分の財源を共産党は持つております。一例を言うならば、このたびの法人税が倍とれるということは……。     〔発言する者多し〕
  118. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 靜粛に願います。
  119. 林百郎

    ○林百郎君(続) 諸君がすでに考えていたことだ。これは結局、大口所得者、大口脱税に対して手を入れれば、倍もとれるということは、政府自身が知つておるのではないか。これによつて共産党は、勤労所得税を廃止することによつても十分のかわり財源を確保しておるのであります。  次に物品税の廃止についての反対理由でありますが、物品税はやはり一種の大衆課税である。家具だとか、ぼうしだとか、電球だとか、紙だとか、マツチ、あめ、こういうようなものは当然税金を撤廃すべきにもかかわらず、こういうものに対しては税率をすえ置いておる。しかるにもかかわらず、高級外国自動車は百%から三〇%に税率を下げておるのであります。このときの池田大蔵大臣の答弁は、外国の自動車は関税がかかるから、なるべく安くしてやりたいと言う。ところが、それほど安くして外国の自動車を使うならば、あの川崎の日産自動車なり、いすず自動車へ行けば、一千台もの日本の自動車が雨ざらしになつておるのであります。日本の自動車を雨ざらしにしておきながら、外国の自動車にまで、なぜ百%を三〇%に物品税を下げて、買う便宜を與えてやるのでありましようか。この物品税改正そのものの中に—吉田内閣がいかに買弁的な、植民地的な方向をとつておるかということは、この点一つだけでも明らかであります。(拍手)われわれは、かかる意味におきまして、所得税法臨時特例には反対物品税法改正にも反対であります。  以上を持つて私の討論を終ります。(拍手
  120. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 内藤友明君。     〔内藤友明君登壇
  121. 内藤友明

    ○内藤友明君 ただいま議題となりました税に関する三法案に対しまして、私は新政治協議会を代表いたしまして、三法案中、所得税法臨時特例等に関する法律案には反対、他の二案につきましては賛成するものであります。  反対理由をきわめて簡單に申し上げたいと思います。それは農業者及び申告納税をする個人業者、自由職業者に対して減税の措置がとられていないからであります。御承知の通り、今回の改正は、シヤウプ税制使節団の勧告に基いて立案されたのであります。使節団が、一九四九年十月一日から農業者その他の所得税について一五%の減税をするようにとの勧告をされたのでありますが、これを政府が一方的に削除して実現させなかつたことは、何と申しましても残念でならないのであります。(拍手)これは納税者間の税負担を公平にする目的をもつて特に勧告せられたのでありますが、これが実現できなかつたことは、重税に悩む農業者その他の事業所得者の失望まことに大きいものがあるのであります。  御承知の通り、農業者の税金が他に比較いたしまして重過ぎることは、いまさら申し上げる必要はございません。前の天然資源局のデーヴイス農業課長が日本を離れまする際に申しました言葉に、過重な税金は土地改革の計画を水泡に帰せしめるかもしれぬ、租税政策または過重負担のため、農民は戰前の事情に復帰するを余儀なくされるであろう、と申しているのであります。農業者の負担がいかに重いか、私どもは多くの具体的資料を持つているのでありますが、今はこれを省略いたします。従つて政府は、今年度において二百十三億の自然増收があると申されているのでありますが、何をさておいて、農業者の減税を考えられてしかるべきでなかつたかと思うのであります。(拍手)  もちろん、税率におきまして農業者に特に過重な負担をさせるようにはなつておりません。ただ税率が同じでありますが、所得把握の嚴密性いかんが問題にあるのであります。農業者の所得は、その事業の性質上隠されないのであります。一枚の水田、そこの作物、また住宅の周囲につくつております果樹にしましても、家畜にしましても、にわとりにしましても、そのできばえ、頭数、いずれもごまかされないのであります。ことに近来は、供出制度の実施によりまして、この傾向は著しくなり、農業所得は、厘毛も残らず、嚴格に計算の中に入つて来ているのであります。ことにこのごろは、生産割当、供出割当等は、市町村の認定する資料をそのまま使用することになりましたので、所得把握の嚴密性は、ほとんど完璧に近いものになりました。もちろん、現実に所得があるからには、それに課税されることは、それ自体何ら反対すべき理由はありませんが、しかし税の問題は、常に他との均衡が問題であり、他との比較が問題となるのであります。  他面、政府の農村に対する施策を見ますると、四千二百五十円という底米価、超過供出の価格を三倍から二倍に引下げ、補正予算のどこを探しても土地改良費は見当たりません。農業災害復旧費は認められましたが、わずか二十億であります。農村金融対策は全然ありません。しかも、食糧確保臨時措置法は、今委員会審議されておりまするが、おそらくこれは通ることだろうと思うのであります。これを考えますると、まつたく農村は八方ふさがりであります。食糧生産の重大な責任はどうして果されるのでしよう。  これに対して政府当局は、それは今日わが国の置かれた客観情勢からいたしまして、しかたがないのだ、と説明されるかも知れません。しかし、私どもから言わしむれば、それは努力が足らぬと思うのであります。かりに一歩を譲りまして、その理由を一応認めるにいたしましても、過重な農業者の負担を十一月一日にさかのぼつて減ずるようにとのシヤウプ博士の勧告に基いて立案いたしたならば、それは必ず実現したことであろうと思うのであります。それができ得なかつたことは、やはり現政府の農村軽視の片鱗が現われたものであると見るべきだと思うのであります。  最近、政府はここに気がつかれましたか、新聞紙の報ずるところによりますると、那須、東畑、大槻その他の農政学者を招かれまして、農政懇談会を開いて御勉強なさつておるようでありますが、まことにけつこうなことであります。しかし、いずれにしましても、私どもは、農山漁村の減税をすみやかにさなるべきにかかわらず、これを今回の所得税改正案に実現されなかつたことは遺憾至極でありまして、五百万農家にかわつて、これに反対するものであります。(拍手
  122. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず所得税法臨時特例等に関する法律案につき採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  123. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  次に、物品税法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者規律〕
  124. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  次に、織物消費税法等を廃止する法律案につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。     午後八時三十一分散会