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1949-11-11 第6回国会 衆議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十一日(金曜日)  議事日程 第七号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質(前会の続)     午後二時九分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより開議開きます。      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。松澤兼人君。     〔松澤兼人登壇
  4. 松澤兼人

    松澤兼人君 昨日総理大臣一般施政方針演説に対し、日本社会党を代表して鈴木茂三郎君より質問が行われたのでありますが、私は別の観点より御質問申したいのであります。  第一にお伺いいたしたいことは、最近の思想弾圧の問題であります。憲法規定する思想及び良心の自由、学問の自由、信教の自由の、いわゆる文化基本権政治基本権を相並んで、民主国家建設のための基盤となつているのであります。この三大基本権の上に、わが国が文化国家として真に独立自主建設をなさなければならないのであります。政府は最近、大学教授地方教員に対しまして、頻頻として辞職強要をなしているのであります。この辞職対象となる者は進歩的な教員でありまして、これら進歩的な教員学園から追放する企図が行われているのであります。われわれの調査によりますと、すでに大学においてこの種の企てがなされたところは約三十校、地方教員で追放の対象となつている者が約三千九百名に達しているのであります。かくては、憲法規定する文化基本権というものは、まつたくの空文にすぎないのでありまして、思想弾圧が、今日の民主主義の時代において公然と行われておるのであります。  森戸事件河合事件美濃部事件瀧川事件等々の、旧憲法下における思想弾圧の悲惨な歴史は、われわれの記憶になお新たなところであります。かかる思想弾圧戦争の悲劇の発端となつたことは、諸君のご承知の通りであります。目には目、歯には歯という言葉があります。もし進歩的な思想がいけないというのであるならば、どこまでも政府はこれに対抗する健全なる思想をもつてなすべきであります。(拍手)單に一方的な権力をもつて進歩的な教授学園から追放することこそ、思想弾圧でなくて何であろうかと、われわれは思うのであります。総理大臣は、現在吉田内閣のもとにおいて行われているかかる思想弾圧に対して、いかなるお考えを持つておられるのか、承りたいのであります。かかる思想良心の自由、学問の自由を剥奪して、どこに一体民主国家の真骨頂があるかということを疑わざるを得ないのであります。(拍手)かかる思想弾圧は、戦争中の思想統制と同じく、かかる進歩的な思想弾圧することは、確かに文化国家の進歩を障害するものであるとわれわれは考えているのであります。  さらに、これらの辞職強要法律的根拠を承りたいのであります。大学教授の場合は、教育公務員特例法第六条によりまして、「学長教員及び部局長は、大学管理機関の審査の結果によるのでなければ、その意に反して免職されることはない。教員の降任についても、また同様とする。」という規定があるのであります。現在教授会意思決定によらず、学長の一方的な意思によつて、かかる思想弾圧が行われておるということは、何らそこに法律的な根拠がないと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)しかも、その責任所在も明らかでなく、文部当局大学当局に処分を一任してあると言い、大学当局文部当局の指示であると言い、責任所在が明らかでないばかりでなく、理由もまた明確ではないのであります。單に教育に非協力であると言い、あるいは特定政党に加入しておるというだけの理由をもつて辞職強要をされておるのであります。地方教職員の場合におきましては、その任命権者はどこまでも教育委員会にあるのであります。しかも、学校長がその部下に対して辞職強要するということは、教育委員法の精神にも反するのであります。私は、かかるあいまいな法的根拠によつて思想弾圧が行われ、進歩的な教授学園追放が行われておるということは、民主主義の今日、まことに悲しむべきことであると言わざるを得ないのであります。(拍手)これらの進歩的教員学園追放が、いかなる法律的根拠において行われているのであるか、この際明確にしていただきたいのであります。  次に、国家公務員政治活動制限の問題について御質問申上げたいのであります。総理大臣は、国家奉仕者である政府職員が、その公正なる立場を保持するために、その行動に若干の制約を受けることは当然であると、施政方針演説の中において言われておるのであります。しかし、人事院規則によつて禁止せられておる政治活動は、若干の制限ではなくして、選挙権の行使以外のほとんどすべての政治活動が全面的に禁止せられておるのであります。総理大臣は若干の制限と言われておるが、かかる認識を持つておられるとするならば、認識不足もはなはだしいといわなければならないのであります。  総理大臣にお伺いしたいことは、この人事院規則のもとにおいて、政府職員に許されておる政治活動のいかなるものがあるか、その範囲を明確にしていただきたいのであります。公務員は全体の奉仕者であつて一部の奉仕者でないということは、憲法規定されてあります。しかし、この憲法第十五条の規定は、戰争中、たとえば軍部の役人が総理大臣にさえ反抗し、一部の利益のために国家利益を犠牲にしたというがごとき場合に適用せられるものであつて、かかる心配のないように規定せられたものが、この規定趣旨であると存ずるのであります。従つて公務員が一部の奉仕者でなく全体の奉仕者であるというこの憲法規定によつて政府職員が職務に忠実であり、公務の執行に公正かつ能率的である場合において、その公務員の基本的な人権をほとんど全面的に禁止するというがごときは、明らかにこれは憲法趣旨を歪曲し、人権を圧迫するものであるといわなければならないのであります。(拍手)かかる制限公務員に強制することは、善良にして進歩的な公務員をして政治的関心を失わせると同時に、合法活動を放棄して非合法活動に追いやる結果になることは当然であります。  この人事院規則は、国家公務員法二條規定によつて授権してつくられたものであるということは事実であります。しかし、かりにも、かかる重大なる政治活動の禁止を一片規則をもつて規定することは委任立法範囲を逸脱したものであるとわれわれは断じているのであります。しかもこの規則が公布せられると、人事院人事院解釈を発表し、文部省文部省解釈を発表しているのであります。一つの規則に対し、同じ政府部内の二つの官庁がそれぞれ解釈を出さなければならないところに、この人事院規則あいまい性があるのであります。われわれが国家公務員法二條規定に反対して参りましたことは、一片規則をもつて基本的な人権弾圧する結果になることをおそれたからであります。総理大臣は、この規則憲法に違反し、法律に違反していると考えるが、はたしていかようなる所見を持つておられるか承りたいのであります。  思想弾圧の問題に関連いたしまして、次のお尋ねいたしたいことは、警察制度改革の問題であります。政府はしばしば現在の警察制度改革するということを声明し、かつ改革案まで作成せられておると聞いておるのであります。もしできておるならば、その具体案をお示し願いたいのであります。思想弾圧を一方に振りかざしておるところの現在の政府が、警察制度改革するというならば、警察制度を民主的かつ進歩的に改革することは、期待できないのであります。聞くところによりますと、内閣警察制度改革を行わんといたしましたところ、関係方面より書簡をもらつて改革を断念したという話を聞いておるのであります。かかる経緯が実際にあるのか、どうかその経緯を承りたいのであります。  政府は、警察制度改革理由として、現在の社会不安をあげておるのであります。その社会不安の原因警察力不足があるというのが政府の見解であります。しかしながら、真の社会不安の原因は、かかる警察力不足にあるのではなくして、その真の原因は、経済的あるいは政治的なりゆうに基くものであります。再建の前途に明るい希望を持たせない現在の政情や、あるいは生活不安と失業の状態に追い込まれておるところの経済事情が、社会不安の真の原因であります。(拍手)  ところが政府は、この社会不安の真の根本的な理由解釈をはからず、一方的に警察制度を旧憲法下のもとに返して、国家警察本部長官政府意思によつてとりかえようとしたのであります。承りたいことは、本年の夏、齋藤国家警察本部長官を罷免させる企図をなし、国家公安委員会の反対によつて、遂に中止せざるを得なくなつたのであります。国警長官国家公安委員会によつて任命せられ、政府によつて任命せられておらないということは明々白々たる事実であります。しかるに政府は、策動をして国警長官をやめさせると同時に、その後任として某々氏を持つて来ることまでも考えておつたのであります。かかる、国警長官政府意思によつて、都合が惡い場合にやめさせ、都合のいい者を持つて来るというようなことをやることができるならば、どこに新しい警察制度の意味がありましようか。(拍手)われわれは、政府任命権から国警長官をはずして、直接の任命権者として国家公安委員会というものを考えておるのであります。政府は、思想弾圧に加えるに、警察国家を再建するために、国警長官をかつてに罷免しようとしたのであります。われわれは、これらの点を考えて、この国警長官罷免のいきさつについて、総理大臣からはつきりとした経緯を承りたいのであります。(拍手)  われわれは前に、真にかかる社会不安を除去するには政治的、経済的の根本原因を解決しなければならないと申しましたが同時にまた、われわれは、健全なる民主主義的な思想国民の間に涵養することが重要であると考えるのであります。それにつきましては、教育機会均等義務教育の確立、これが不可欠な条件であると信ずるのであります。ところが、昨日鈴木君の質問に対しまして、二十四年度予算政府予算であると言われたのであります。もし二十四年度予算政府予算であるとするならば六・三制建設費はなぜ削減せられたのであるか。教育費予算が増額せられなければならないということは国民全部の要望であります。これは、民主自由党議員諸君といえども否定することはできない。この要求を当初予算において削減せられたということについて、この予算吉田内閣予算であるならば、その理由を明確にされたいのであります。さらにわれわれは、教育予算がすべての予算に優先しなければならないという主張を持つているのであります。従つて教育があらゆる施設に優先しなければならないというならば、予算の中において、一定の割合の予算をあらかじめ優先計上するのが当然であると考えるのでありまするが、この問題について所見を承りたいのであります。  第二は給與ベースの問題であります。私は緊急質問におきまして、給與ベース改訂の問題を総理大臣質問いたしましたところ、総理大臣は、人事院から勧告があつた場合には考慮すると言われたのであります。ところが、一般施政方針演説におきましては、給與改訂は行わないという声明をされているのであります。この二つの間の意見の食い違いは、総理大臣自身の口から出ているのであります。いかなる理由で、ある質問に対しては勧告があつたときには考慮すると言い、また施政方針演説の中においては改訂をしないと言われておるのか、理由を承りたいのであります。まだ人事院から勧告がなされておらない今日、総理大臣改訂をしないという声明をなされることは、私といたしましては、まことにふしぎにたえないのであります。これはおそらく、政府人事院勧告義務を拘束しようという意図に出ているものと思うのであります。この点につきましては、総理大臣及び人事院総裁にさらに承りたいのであります。総理大臣は、人事院勧告があつて改訂を考慮しないと言われているのか。人事院は、給與改訂を、いつ、いかなる形式においてお出しになるのか、承りたいのであります。  CPSあるいはCPI等の資料をもつて見ましても、今日はすでに給與の改定の行われなければならない時期である。また民間給與政府職員給與とを比較してみますならば、本年の七月において、すでに二千円の開きがあるのであります。公務員法の中におきましても、民間の資金を勘案して政府職員の賃金をきめると書いてあり、また公務員法改正に関するマッカーサー元帥の書簡の中にも、政府職員給與より高からず低からざるものでなければならないと述べておられるのであります。これを考えてみますならば、民間給與よりも二千円の給與の開きがある今日といたしましては、政府は当然給与の改訂をなすべき時期に到達していると考えているのであります。     〔発言する者あり〕
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 松澤——松澤君、時間が参りましたから、適当なところで打切つてください。
  6. 松澤兼人

    松澤兼人君(続) 政府実質賃金を引上げるということを声明せられておりますが、具体的な方策を示していただきたいのであります。なお年末賞與、手当の充実など、法律によらない給與は一切禁止せられておるのであります。これらの給與の問題について、人事院政府より何かの申入れを受けておるかどうか。この点について人事院総裁に承りたいのであります。民主的な労働組合は、給與改訂合法的方法によつて行おうとしておるのであります。今日、ぎりぎりの法律的な範囲の中において給與改訂を要求しておるのであります。しかも、この合法的なわくの中において闘つておるところの民主的労働組合意図を、政府は一方的に拒否するその結果が、どういう結果になるかということを考えていただきたいのであります。(拍手)すでに総同盟におきましても、他の民主的な労働組合においても、現在はすでに合法的な運動限度に達したと考えておるのであります。この限度を超えた場合に、彼らがいかなる運動考えておるかということを考えてみるときに、今こそ政府は、あたたかい気持ちによつて給與改訂をなさなければならない時期であると信じておるのであります。この点につきまして明確な御答弁を承りたいのであります。  時間が参りましたので、以下の点は省きまして、これをもつて質疑を終わります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  政府思想弾圧をいたした事実はないのであります。教師とか、あるいは国家公務員が、その地位においてある制約を受けるということは、私は当然と考えるものであるが、これが憲法違反なりやいなやについては、あなたと政府とは意見を異にいたしております。  警察制度については、治安秩序が維持せられるように、警察制度をますます改善いたしたいと存じます。なお国家警察長官の人選については、今なお同じ人がその地位にあるのであります。また新聞等において、その任免等についていろいろうわさがあつたとしても、一々政府がこれに対して答弁する責任を感じないのであります。(拍手)  六・三制については、補正予算の中に組み入れてありまするから、補正予算が提出せられたときに、ごらんを願いたいと思います。(拍手)  給與ベースについては、政府は今日改訂する考えがない。実質賃金において、なるべく公務員の生活を安定せしめたいと考えておりますことは、施政方針において述べた通りであります。しこうして私は、人事院勧告した場合において考える、これはあたりまえの話であります。ただちに人事院勧告政府が受け入れるか受け入れないかは、そのときにおいて考える。  その他については主管大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣高瀬荘太郎登壇
  8. 高瀬荘太郎

    国務大臣高瀬荘太郎君) 思想の自由が守られなければならないことは当然のことでありまして、まつたく同感であります。しかしながら、学園政治的中立性を守ること、また学園秩序を保持すること、これは学問研究の府であります学園にとつては最も大切はことであります。(拍手)従いまして、学園におきましては、一党一派に偏するような言動をもつて学園政治中立性を破壊いたしましたり、あるいは学区制を煽動して学園秩序を撹乱するような破壊的言動に対しましては、厳重な措置を講ずることが当然であります。文部省が各大学に対しまして強力に要請しておりますのは、この点であります。最近における各大学措置は、このような方針のもとに、慎重公正に、かつ合法的に行われておるものと信じております。このような言動は、すでに教育基本法その他の法令におきまして明らかに禁止されているところでありまして、これが憲法違反でも、また思想弾圧でも決してないと考えております。(拍手)  政治活動制限につきまして御質問がありましたが、学問研究活動政治活動とは、その活動の目的及び性質におきまして、明らかに論理的な相違があるのであります。これを区別しますことは、論理的に可能なはずであります。従つて政治活動に対する制限がただちに学問研究制限になるとは断定できないのであります。真理を探求し、その結果を発表するという純粋な学問の自由が、政治活動制限によつて当然に傷つけられるものとは、決して言えないのであります。問題となりますところは、学問研究の名において一党一派に偏するような政治活動を行う場合でありました、一党一派に偏するような政治活動は、たといそれが学者の行動でありましても、制限されるのが当然であります。(拍手)  次に六・三予算の問題でありますが、国民要望地方財政窮状等にかんがみまして、急速にこれが解決をはかります必要のあることは、御意見通りであります。政府といたしましては、順次これが完遂を期待いたしまして、本年度の補正予算及び二十五年度予算におきまして、相当程度予算計上を期待しております。  次に教育予算優先の問題でありますが、教育費一定率優先割当という制度につきましては、従来もいろいろ研究をされたのであります。しかしながら、その理論及び実際の運用につきまして、いろいろと欠陷、困難が認められますので、まだこれを実施する段階ではないと思います。従つて、これを実施しようとする考えは現在持つておりません。(拍手)     〔国務大臣殖田俊吉登壇
  9. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) ただいま松澤さんのお尋ね大学教授その他の学校教員の免職は、教育基本法国家公務員法教育公務員特例法等に基きまして、それぞれの責任当局において、所定の手続を経てこれを行つておるのであります。何ら思想弾圧でないことは、ただいま文部大臣のお話のごとくであります。また憲法違反の問題もないのであります。もしそれ辞職勧告に至りましては、單に勧告でありまして、決して強要ではないのであります。従つて、これは、法律問題を、云々する余地はないのであります。  さらに、昨日私は不在をいたしましたので、志賀君の御質問に対する御答弁を申上げておりません。この際ついてに申したいと思います。  それは、三鷹事件福島松川汽車転覆事件等では自分の気に入らない証人偽証罪で起訴しながら、一方福岡の徳田球一襲撃犯人古賀一郎高橋喜照のごときじゆうような暴力犯人保釈せしめている、不公平ではないか、こういうお尋ねであつたと思います。三鷹事件松川事件に限りませず、重要な証人であつて、しかも虚偽の証言をする者は、犯罪の捜査訴追に大きな支障を来しますので、これを偽証罪で起訴しているのであります。この場合は、もちろん偽証を認むべき田の証拠があるのでありまして、検察官自分で気に入る入らないというようなことで偽証罪にするのでは決してございません。また古賀一郎高橋喜照等は、徳田襲撃事件によりまして、すでに懲役刑——実刑各十一年及び四年でありますが——の第二審判決を受けまして、現在被告人より上告中のものでございます。これらの保釈請求に対しまして、検察官反対意見を申し出たのであります。しかるに裁判所は、これにもかかわらず保釈決定をいたしたのでありますが、本年十月下旬、この両名が保釈條件であります住居の制限違反いたしまして上京したという情報がありましたので、現地検察官は、ただちに裁判所に対しまして保釈取消し請求をいたしました。そういたしまして、十一月の四日、取消し決定がございまして、十一月七日、両名とも逮捕収監済みでございます。  以上の通りでありまして、検察庁におきまして、事件により不公平の取扱いをなすがごときことは決してないつもりであります。(拍手)     〔国務大臣樋貝詮三君登壇
  10. 樋貝詮三

    国務大臣樋貝詮三君) 春以来、警察法改正につきましては、私ども政府におきましては非常に沈默を守つておりまして、改正するともしないとも申したようなわけではないのであります。従つて、過日の新聞改正するようなことが出ましたのに対しても、私ども政府においては、慎重を期して、そういうことを申したことはないのであります。また社会不安が経済上から来る、政治上から来ることは、明らかにさようだと存じておりますが、しかしながら私どもは、警察がこの裏づけを十分に持つておると存じておりまして、決してこの方面においても、なおざりにしていることはないのであります。警察裏づけになつている、また同時に、警察がわれわれのせ遺作に対して十分な力のあることを考えております。現在におきましては社会不安も決してありませんので、現在日本中から集まります報告によりましても、私どもは、日本全体としては、一階級のために決して日本治安を害される恐れはないと思います。数時間のうちには必ず撲滅いたすことと考えてろいます。  さらに人事問題等については、私どもは言及することを欲しません。従つて申し上げません。  また日本をもつて警察国を代表しようというような考えは毛頭持つておりません。私どもは、明るく民主的に—しかしながら、私どもは弱い警察を望んでおるのではないのであります。十分なる力をもつてこれに善処して行きたいと考えておる次第であります。     〔政府委員淺井清登壇
  11. 淺井清

    政府委員淺井清君) 松澤さんにお答えを申し上げます。  昨日鈴木さんにも申し上げましたとおり、人事院給與ベース改訂の必要を認め、これを国会及び内閣に対して勧告しようという決意には、いささかも変更のないことを、重ねて申し上げる次第でございます。その時期、内容等について、ここで申し上げませんのは、この勧告をして最も実効あらしむるゆえんと存ずるのであります。予算との関係については御懸念がございましたが、人事院は何が適正であるかを勧告するものでございまして、予算との関係についてお考えくださいますのは、国会及び内閣だろうと存じます。人事院は、この点について、いささかの懸念も持つていないのでございます。  次に内閣よりこの勧告を阻止するような申入れがあつたかとのお尋ねでございまするが、そのようなことは絶対にないということを、総理大臣と同じように御答弁申し上げるだけでございます。(拍手
  12. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 村瀬宣親君。     〔村瀬宣親登壇
  13. 村瀬宣親

    村瀬宣親君 私は、民主党野党派を代表して、吉田内閣施政方針に対し、單刀直入に若干の質問をいたしたいと存ずるのであります。  吉田総理大臣は、去る八日の施政演説において、無防備、無軍備こそわが国民の安全、幸福の保証であると喝破せられたのでありまするが、吉田首相の言われる無軍備とは、いかなる内容を意味するものであるか。これが質問の第一点であります。  終戰以来日本国民が忍びがたきを忍び、苦難と忍従に耐えて、ひたすら恭順の誠をささげて参りましたゆえんは、一日も早く講和條約を締結して世界の一員に復帰したいとの念願にほかならなかつたのでありまするが、今日ようやく講和の曙光が見え始めたという総理大臣施政演説を聞くことのできた全国民の感慨は、今さらに心魂に徹するものがあるのであります。しかしながら、いよいよ講和会議が近づいたと知つて、ここにあらためて国民の脳裡を打つものは、これからの日本をいかにして守るかという問題であります。これに対し、吉田首相は、無軍備こそ唯一の保障であると説かれたのでありまするが、この無軍備とは、單にわれわれ日本人だけがわが国から永久にかつ完全に軍備を撤廃するというような單調な意味でなくて、日本の国土からあらゆる軍備、ある揺る軍事施設、あらゆる軍事基地を払拭するという信念を吐露されたものと存ずるのでありまするが、この点に関し総理大臣の明確なる御所見を承つておきたいのであります。(拍手)このことが明らかになりまするならば、外電の報ずる單独講和説や、多角協定による保障問題等についても、国民は安心することができるのでありまするが、しからざる場合は、單独講和は何らかの形において日本の国土に外国の軍事施設を設けるというような協定を結ばずにおれない結果となるかもしれないのでありまして、世界の比類なきわが国の憲法も、これがために死文と化する心配があるのであります。(拍手)  次に、吉田首相お尋ねいたしたいことは、自衛権をも放棄したわが国の将来は、永世中立国として進むべきか、集団保障に頼つて生きるべきかという問題であります。いかに無軍備が唯一の安全保障であるといたしましても、講和成立後のわが国が、独立国家として世界各国の間にいかなる国家構造を持つかということは、三千年の歴史を、伝統を忘れ得ぬ日本国民最大の関心事であります。  質問の第二点は、講和会議締結後、政府は自力をもつて国内治安確保の自信ありやという問題であります。説くに最近、中国、台湾及び朝鮮等の情勢の緊迫に伴い、わが国の近海は物情騒然として、海上警備力の充実いよいよ急を要する状態と相なつたのであります。はたして現在の海上警備に不安なきや。政府は、第五国会において可決された警備力整備に関する決議案に基き、いかなる措置をなされたか。右決議案には、次期国会の初めまでに、政府のとりたる措置を衆議院に報告することとなつているのであるが、いまだその報告がありません。この際、これが詳細なる報告を要求する次第であります。(拍手)  質問の第三点は移民問題についてであります。講和開議の朗報とともに、われわれは今からその準備と対策を怠つてはならないと存ずるのであります。労働者の海外渡航が許されておらない現在においても、すでにパキスタンその他から技術者の招聘を受けているのであります。資源もなく国土も狭いわが国が、世界の文明と福祉増進に寄與し得る道は、ただわれわれの技術をもつてアジヤの天地を開拓することであります。現在建設省に設けられてろいまする土木研究所、建築研究所、地理調査所を大拡充して技術養成の一大殿堂となし、一方特許庁の機構を充実するとともに、この殿堂に入るものは必ず三種以上の特許をとることとし、技術陣営の一大プールを造成して、アジヤ南方の道路、港湾、河川、橋梁等の建造に当るならば、アジア各国の招聘は必ずあると存ずるのであります。ことに農耕については、日本人は生まれながらにして特技を持つておりまするから、農業技術の一大養成所をつくつて、アジア各国に送り出すことができまするならば、必ずや大歓迎を受けるものと信ずるのであります。かつてわが国は、竹やりをもつて原子爆弾に向わんとして、科学なき民族の末路と侮られたのでありまするが、湯川博士のノーベル賞受賞とともに、世界の日本人観がようやく改まらんとしつつあるこのときこそ、技術立国の大計を立てるべきであると存じまするが、吉田首相建設並に農林大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)  質問の第四点は農業政策についてであります。国民生活安定の基礎が食糧問題の解決にあることは、いまさら申すまでもありませんが、最近食糧に関し政府の意向として報道されることは、あるいは二合八勺の配給といい、あるいは主食からかんしよを除外するといい、あるいは米劵制度を創設といい、いずれも確固たる方針を示すことなく、いたずらに国民を迷わすがごとき感を抱かせるのでありまして、ことに農民は、そのいずれに信を置くべきか、去就に迷う状態であります。政府は、昭和二十五米穀年度における食料需給計画をいかに立てておられるか、根拠ある数字をお示し願いたいのであります。  さきに政府は、本年十月一日現在の産米予想高を六千五百五十四万八千二十石と発表し、農民に異常なる衝動を與えたのであります。しかしながら、今年は十月に入つて、いもち、うんか等の病虫被害がはなはだしく、粒の稔実歩合もきわめて不良で、近年まれに見る秋落ちの傾向が随所に現れておるのであります。この事実を裏書きするものとして都道府県知事の産米予想高は、農林省の発表よりも九百三十万石少なく、また各都道府県食糧事務所の報告は、五百三十三万石の減少となつておるのであります。安孫子食糧庁長官も、今年の米の作柄は、昨年の作柄よりもよくないものと思うわれると、公式に述べているにもかかわらず、政府は、本年は終戦以来の大豊作として、昨年よりも百四十五万石の増収と発表せられたのでありますが、今日もなおさようにお考えになつているならば、ゆゆしき問題であります。もちろんわれわれは、アジアの米産国を除き、世界の食糧事情がようやく過剰傾向を表して参つた今日、ひとりわが国の米の生産高を不当に少なく見積る必要はないのでありまして、今日いたずらに生産数量を過少に決定することは、やがてその報いが農民自体に降りかかつて来ることを覚悟せねばなりません。しかしながら、供出割当の補正と米価決定を眼前に控えての産米予想高の発表は、それが直ちに補正割当の基準となり、場合によつては農家の飯米をなくすることとなるのみならず、税金の追求までつきまとうのでありますから、その予想高は、あくまでも信憑性の確実なものでなければなりません。歴史に残る幾多農村の悲惨なる百姓一揆は、すべて時の為政者がその領地の産米予想を誤つたところに端を発しているのでありまして、今日においても、杜撰なる産米予想高を基礎として食糧政策を強行するときは、農民はあるいはその耕作を放棄し、あるいはその娘を売り、遂には牢獄につながるる農民をも生ずるに至るのであります。  次に、政府は米価決定をいかにせんとするか伺いたいのであります。農民の一年間の努力と勤労の結晶である米の供出基準については、不確かなものでも、いち早く発表する政府がこれに報ゆる米価の決定を荏苒として巡らせていることは、とることばかり過酷にして、與えることを喜ばないとの、きわめて不愉快な感じを與えるのであります。これは農民心理を顧みない、きわめて拙劣なる政治と言わねばなりません。ことに今年は、農民が多年渇望してやまなかつた米価審議会が設けられ、消費者代表とともに、農民代表があらゆる観点より慎重審議の結果、米価は米作の再生産を可能ならしめ、かつ国民生活の安定に資すべく定められるべしとの原則を定め一石四千七百円と決定せられたにもかかわらず、その後における政府の態度は、米価審議会の決定を無視するがごとき態度であるのは何たることか。  当初米価の審議にあたり、経済安定本部は、バリテイ計算により一石四千二百六十三円の原案を出し、農林省はバリティによる四千五百十八円と原産計算による四千六百十六円の原案を出したと伝えられておりまするが、最近の報道では、一石四千二百五十円にきめられそうだということであります。はたしてしかりとすれば、最初に安本が出した金額そのままであつて、三十二名の米価審議会委員は、何がために二週間にわたつて、夜のふけるまで審議を続けたかということになります。  パリティ算式は、ラスパレス式においても、パーシエ式においても、基準年次と比較年次との品目、価格及びウエイトの六つの凾数関係によつて算出せられるものでありまして、現行パリティ計算は、一見いかにも厳粛なる科学的根拠を持つているように見られますけれども、現下わが国の統計資料の制約のもとにあつては、あめ細工のごとく、どのようにでも計算のできる算定形式なのであります。現行のパリティ算式は、項目及び目次のとり方についても、価格、銘柄、品質についても、ウエイトのとり方についても、基準年次及び基準米価についても、最終米価算定の計算期間たる三、九方式についても、それぞれ動かすべからざる科学的欠陷の存することは、青木安本長官は充分ご存じのはずであります。しかるにもかかわらず、あえてこの算式を固守して安本の原案を貫徹せんとする以上、もはや政府には米の再生産を維持するに足る公正なる価格決定意思なく、米価はただ賃金、物価の騰貴抑制政策から割出されるのであつて、米価のあるべき価格の高さは、価格決定以前にすでに想定せられているものと断ぜざるを得ないのでありまするが、政府の決意はいかがでありますか。  ことに驚くべきことは、米の超過供出代金が昨年は公定価格の三倍であつたものを、今年は二倍に引き下げるかも知れないという暴論であります。農家経済が今年になつて、いよいよ窮迫を告げるに至つたことは、あらゆる統計が明示しているところでありますが、かかる事実を無視して、超過供出代金の引き下げを行わんとすることは、徳川時代の暴政よりもはなはだしき無法であつて、農民心理に與える惡影響は、まことに旋律を覚えるものであるのであります。米価審議会の決定は、一石四千七百円ときめる場合に限り、超過供出代金を二倍にしてもやむを得ないというのであつて、米価を冷酷なるバリテイ一本できめておきながら、なお超過供出代金を二倍に引き下げるという経済上の論拠は断じてどこにも見いだされないのであります。政府はあくまでも米価審議会の決定に基いて米価をきめる決意ありやいなや、明確なる御答弁を得たいのであります。  政府は最近、外国食糧三百余万トンを輸入する計画があると言われておりますが、将来日本の食糧政策は、その重点をいずこに置かんとするのであるか、わが国の長期食糧計画の根本方策を承わりたいのであります。たとえば、かんしよの統制撤廃のごとき、かんしよ栽培に精魂を打ち込んで登り詰めた精農家に退却の道を教えることなく、無策のままにこれが統制をときはなすことは、はなはだ無慈悲な仕打ちであつて、たとい二千八百二十種類の澱粉の利用方法があるとしても、一たび、南方のタピオカ澱粉が襲来すれば、とうていかんしよ澱粉は太刀打ちできないのであります。作付転換をしようとしても、多作の麦の統制を強化したまま、夏の半年間だけ畑を百姓の手に返してみても、除虫菊を植えることもできず、果樹栽培も不可能でありまして、ことに砂糖の世界的増産は、やがて高級水菓子の製造を促し、過日はこれに圧倒される運命の来ることを覚悟せねばなりません。かかる実情に対し、政府はいかなる農村工業を興して農業経営の危機を脱せしめんとするのであるか、その方策を示されたいのであります。  また米劵制度は、米を投機と営利の対象にせんとするものであるのみならず、幾たびか政府によつて搾取の憂き目にあつている農民は、たとい自家の飯米を節約して売つた場合も、米劵制度による米の集荷高が、やがて翌年の供出割当に加味せられることをおそれて、その成績は必ずしも来たい出来ないのであります。冷静に観察すれば、米劵制度民主自由党の公約に対する窮余の一策であつて、これによつて農民も消費者も利するところはきわめて少なく、かえつて供出制度そのものに亀裂を生ずるおそれがあるのであります。(拍手)  食糧確保臨時措置法案の改正に至つては、農民を愚弄すること、これよりはなはだしきはないのでありまして、第一国会に置いて握りつぶしとなつた臨時農業生産調整法案が、第二国会において大幅に緩和され、食糧確保臨時措置法と形をかえて上程されたとき、自由党は、これにもなお極力反対されたのでありまするから、よもや民主自由党諸君が、この食確法の改正案に賛成されることはないと確信をいたしまするが、経済界の情勢が自由経済復帰の傾向をたどり、吉田内閣また強力に統制撤廃の政策を実行しておりながら、ひとり淳朴なる農民に対してのみ、何がゆえにかくも理不盡なる強圧を加えねばならぬのであるか。  食確法の骨子は、食料生産の事前割当をなすかわりに、農民の精励によつて割当以上に増産した分量については、これを農民の所得にするということでありまするが、もし今回の改制案のごとく、事前割当を行つた上で多くの収穫があつたときは、更に割当以上に法律をもつて供出せしむるということになりますれば、事前割当という意味はまつたくなくなつてしまうのであります。(拍手)かくては、農民は精出して作ればつくるほど政府がこれを収奪する結果となつて、七公三民のおきてに苦しんだ徳川時代の農民が、再び新憲法下に現出することと相なるのであります。(拍手)かくのごとき道義にもとる法律をつくれば、長く農民の恨みを買うに至るのみならず、遂には生産意欲を減退し、遵法精神を乱すもとと相なるのであります。自由と公平を信条にせられる吉田総理大臣は、良心に顧みて食確法の改正案を撤回される御意思いなきや、御所見を承りたいのであります。  次に吉田首相は、今なお外資導入によるタバコ民営をお考えになつているかどうか。もしこれを民営とするならば千二百億円のタバコ益金は激減のおそれがあり、葉タバコの輸入により、わが国の耕作農民を窮地に追い込むのみならず、用紙、印刷その他の関連産業も、ことごとく外国の圧迫をこうむるに至るでありましよう。吉田首相のお考えが、さきには鉄道を払い下げんとし、今またタバコの民営を説かれる点より、すべての公共企業対を民営に移さんとする主義方針であるならば、それは極端なる国有国営の思想とともに、われらの断じて賛成し得ざるところであります。  質問の第五点は配炭公団の廃止についてであります。政府は、去る九月十五日、国会に諮ることなくしては配炭公団を廃止して、臨時石炭興業管理法の大半を死文と化したのであります。吉田首相は、その施政演説において、失業対策の根本は産業を振興し、雇用の増大をはかるほかはないと説かれたのでありますが、私は産業界の雇用量は石炭の消費量は石炭の消費量に正比例すると信ずるのであります。従つて、失業対策は直ちに石炭問題につながります。しかし、明年及び明後年の石炭需給計画に不安はないか、政府はその方針を示されたいのであります。  本年は八月から石炭の滯貨が増大し始めたのは、予定以上の石炭が増産されたからではなくて、吉田内閣のつくつた本年度予算がわが国の産業界を賃貸せしめた結果、石炭の有効需要が減退したためであります。(拍手)この眼前の事実に狼狽して、何らの準備、将来の計画もなくして配炭公団を廃止したために、従来政府の生産命令により設備の新設、坑道の掘り進等をなして増炭につとめてきた中小炭坑の大半は、はからざる損害をこうむつたのであります。政府は、これら潰滅に頻せる中小炭坑に何らの救済方法も講じていないのでありまするが、臨時石炭鉱業管理法第四十条には、かかる場合、石炭鉱業損失保障審査会を設けてその損失を審査すべき規定が設けられてあるのであります。政府は、この審査会を設置する御意思いありやいなや。これらの中小炭坑の救済は、わが国将来の石炭需給計画を確立する上にも必要と存ずるのでありまして、もしこれを捨てて顧みないならば、現在保障すべき額よりも、更に数倍場の金額を後日に至つて政府が負担せねばならぬ事態が起こらないとは、何人も保障できないのであります。(拍手)炭坑は、ひとたびこれを閉鎖すれば、再びこれを採掘するのは用意のわざではありません。もし区々たる眼前の事実にとらわれ、石炭百年の大計を誤ることあらば、吉田内閣は、経済復興の阻外者として子々孫々その責任を追求されるでありましよう。(拍手)  次に政府は、配炭公団の欠損額を大体幾らに見込んでおられるか。私の計算をもつてするならば、百億円以上と存ずるのでありまするが、これは新炭特別会計の赤字のごとく、数年間の赤字が累積して生じたものではなく、今春の決算においては八億余円の黒字であつた事実よりいたしまして、これこそまつたく吉田内閣が独断をもつて配炭公団を廃止したために生じた損失であります。政府は、これをいかに処理せんとするのであるか、御方針を承りたいのであります。  最後に引揚げ問題でありますが、やがて五度目の多を迎えんとして、未だ帰らざる同胞の留守家族は、骨肉の情にたえず、まさに半狂乱の体であります。抑留邦人の数については、今春ソ連側の発表と、わが国の数との間には三十一万余人の差があるのでありますが、ソ連の発表した九万五千人の送還がやがて終了せんとする今日、これら不明の三十余万人の生死につき、政府はいかなる調査と処置をとられんとするか、その経過と方針を明らかにせられたいのであります。(拍手)また講和会議の曙光とともに、引揚者の在外資産の処理についても、いかなる準備ができているか。その他深刻なる社会問題となりつつある引揚者厚生援護施設の具体策をお示し願いたいのであります。  以上の諸点につき、総理及び所管大臣の明確なる御答弁を要求する次第であります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  無防備の内容いかんという御質問でありますが、これは御意見通り、わが国からあらゆる軍事施設を払拭するという意味合いであります。また外国の軍事基地を日本に設けるとかあるいは全体講和とか單独講和、永世中立、集団保障というようなことは、ことごとくこれは講和条約に関係するところでありまするが、現在におきましては、講和条約については何らの具体的提案をわれわれは得ておらないのであります。今日は講和條約に素案ができたかできないかというところで、はなはだ大切な時であり、外交関係ははなはだ微妙な状態にあるのでありまするから、これら仮説の問題について私が意見を申し上げることは差し控えたいと思います。  また食糧確保臨時措置法案は撤回する意思はないのであります。その他海上保安とか、移民とか、あるいは米穀問題等については、主管大臣から答弁をいたさせます。  また引揚促進については、政府としてますます努力する考えであります。(拍手)     〔国務大臣森幸太郎君登壇
  15. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。  二十五米穀年度の需給状況の御質問でありましたが、米、いも類、雑穀をいれまして、千四百二十四万九千トンを計画いたしております。これは二合七勺の配給で計画してあり、全食糧の八六・四%になつておりまして、輸入は二百二十六万トンを予定いたしまして、十三・六%を輸入食糧に仰いでおるのであります。  二十四年生産米の予想高について、政府はさきに六千五百四十一万余石を予想して発表いたしたのでありまするが、これは九月の二十五日現在の農林省作物報告事務所の統計に基いたものであります。本年は、御承知の通り気候の関係から稲の成長が軟弱になつておりましたところへ肥料の増加をいたしましたために、病虫害等の発生なども局部的にあつたのであります。その後におきまして、稲熱病等の発生等がありますので、さらに調査をいたしておるのであります。御承知の通り、米は脱穀をしてしまわなければ、ほんとうの数量はわからないのでありますが、予想数量でありますから、この六千五百四十一万石は、九月二十五日における現在としては、正当のものと認めておるのであります。さらに十月に入りましてこれを調査をいたしまして、まだ結論は出ておりませんが、その数字によりまして補正の道も考慮することを考えております。  次にかんしよの問題であります。これはいろいろ道途伝えられておりまするが、二十四年度におきましては、当初計画いたしておりました通り方針に基きまして、かんしよの出荷計画、配給計画を立てております。  米劵制度についての御意見がありましたが、これは政府でこれを取り上げて研究いたしておりまするが、この点につきましては御意見として承つておきます。  米価問題につきましてはいろいろお話がありましたが、今日米価を決定するにおきましては、いろいろの方式があります。バリテイ式必ずしも完全ではありません。しかしながら、バリティ式によることが今日の場合妥当と考えておるのであります。  食糧確保臨時措置法のことについて、絶対反対であるという御意見でありましたが、これは撤回はいたしません。今日アメリカから食糧をもらつて、ようやく二合七勺の配給をいたしておりまする現在の日本におきましては、この食糧確保臨時措置法というものは、今日の場合に必要な法律考えておるのであります。     〔「供出後の自由販売と矛盾するじやないか」と呼ぶ者あり〕
  16. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君)(続) あえて政府は供出後の自由販売を約束したことはございません。  以上において大体の答弁が終つたつもりであります。(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇
  17. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) ただいまの御質問中、私がお答えする点と考えまするのは、米価パリテイの指数は実情に即していないかどうか、こういう御質問であります。米価算定方法につきましては、御承知の通り生産費計算の方法もございます。しかしながら、わが国の農業経営はきわめて多種多様でありまして、農業労銀の見方であるとか、あるいは作況等について困難な問題がありますので、終戦後は、農家の購入いたしまする肥料であるとか、あるいは農具であるとか、各種目用品などの価格と均衡のとれた米価を求めようとする、いわゆるパリテイ計算を採用いたしております。しかしながら、このバリテイ計算を行うといたしましても、できるだけ農業の実情に即することが必要であると考えますので、基礎資料としては、毎年前年度の農林省の農家経済調査を用いて、項目と、品目と、ウエート、この選定とその方法の改善に努めながら、今年度なども米価審議会の答申に基きまして、御承知の通りパリテイ計算にできるだけ生産費を織り込むという考え方で米価を決定する方針であります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕     〔国務大臣稻垣平太郎君登壇
  18. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 村瀬議員の私に対する御質問に対してお答え申し上げます。  まず配炭公団廃止後の事態に対して、臨時石炭鉱業管理法第四十条の損失保障を適用する意思があるかないかという御質問であります。同條は御承知のように、同法に基きますところの個別的な命令または指示によるところの因果関係を持つたものに対する損失を補償する規定であります。従つて、当時の委員会における審議によつてごらんくださいましても、当時の当局者において、今日のような事態に対する損失に対しては、これを補償しないと言うことを話しておることを、よく御検討願いたいと存ずるのであります。  それから第二に、配炭坑団の今回のことによつての損失はどれくらいであるかというお尋ねでありましたが、この問題は、要するに配炭公団が持つておりますところの貯炭をできるだけ早く手放すということは、石炭業者に非常な影響、刺激を與える。従つて、これの放出に対しましては、十分その間をにらみ合せて放出をいたさなければならない。従つて、今日その損失がいかほど出るかということは、それらの問題と彼此にらみ合わせてでないと判断はできないのであります。従つて、従来ありますところの余剰金並びにそれらのものとにらみ合わせてお答えしなければならないので、今日はまだその時期に達しておりません。     〔国務大臣林讓治君登壇
  19. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 引揚者の更正の問題についてお答えをいたします。  引揚者につきましては、特に本年度の新規引揚者の援助の要点は、何と申しましても、すみやかに就職の機会を與えることであると考えます。最近の引揚者の実情を見ますと、その大半が従来の営業や元の職に復帰いたしておるのでありまするけれども、約三分の一くらいは新規の就職を與えなければならぬ実情があるのであります。そこで、公共職業安定所などにおきましても、引揚者を第一位に置きまして、積極的にこの機能を発揮いたしまするように注意をいたしておるような実情になつておるわけであります。さらに緊急失業対策の拡充によりまして就職の機会を與え、また全国の民生委員などによる、それぞれの地元におきます就職先の縁故開拓などにつきましても、せつかく指導いたしておるのが実情なのであります。  次に、職業につきまして技能を持つておりまするような者、あるいは適当な就業先のない方々に対しましては、その更正をいたしまするような計画を立てておりまして、更正資金の貸付を実施いたしております。現在におきましては、各位の御協賛を得まして五億円の金額を出しておるわけでありますが、このたびの補正予算によつて皆さんのご協賛を得ましたならば、二億円の追加をいたすことになるわけでありますから、これらの更正資金の一部分に資することができることと考えております。  さらに帰還後の住宅などに対しましては、一般の住宅対策によりまするほか、引揚者のためにも住宅を建設いたしまするがために、国庫負担金四億五千七百万円を都道府県に公布いたしまして、本年度内に約九千五百戸建設するようにいたしております。これらの問題は逐次解決ができることと考えて、なお二十五年度の予算などにおきましても、相当に建て得られるような方策を講じておるわけであります。  また生活の困難なものに対しましては、生活保護法の適正な運営によりまして、その最低生活を保障し、応急の家財、越冬用の寝具等につきましても、真に窮迫をいたしおりまする者に対しまして適当な処置を講じておるわけであり、また一般国民の引揚者に対しますところの援護思想の高揚をはかりまして、政府国民一体となつて、引揚者のすみやかなる更正のできるように努力を重ねたいと考えておるわけであります。  右のほか、引揚者の入植あるいは国民金融公庫の拡充、その他引揚者の更正対策につきましては、引揚同胞対策審議会の数次にわたる適切なる御決議に基きまして、せつかくこれらの決議を参酌いたしまして実現をはかつて行きたいと考えておるわけであります。さようご了承をお願いいたします。(拍手
  20. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 黒田寿男君。     〔「警察権の答弁がない」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 黒田寿男君に発言を許しました。     〔黒田寿男君登壇
  22. 黒田寿男

    ○黒田寿男君 私は、労働者農民等を代表いたしまして、首相並びに他の閣僚諸氏に対しまして、施政方針演説に関連した質問をいたしたいと思います。  第一は講和会議の問題でありますが、太平洋戦争によりまして、帝国主義戰争の罪惡性と惨禍とを身をもつて体験いたしましたわが国の国民は、敗戰のどん底から民主主義国家としての再建の事業に立ち上るその出発点におきまして、憲法の大改革を行い、徹底的な国際平和主義、世界に類例のない絶対的な戰争放棄の宣言をいたしたのであります。最近に至りまして、講和会議が近いとの情報が伝えられておりまして、これはわれわれの心を明るくしておるのでありますけれども、しかしながら国際情勢は必ずしも明朗ではないのであります。原子力の問題は全世界の人心に不安の影を投げかけております。このような環境のもとで、非武装国として国際社会に復帰しようとするわが国は、近く迎えようとする講和会議が、まず何よりも全面的であることを心から願つておるのであります。それとともに、最近国内におきまして、集団保障か永世中立かというような問題が真剣に論議せられるようになりましたことは、講和会議後におけるわが国の安全保障について、国民がいかに深刻に考え始めたかを示す証拠であります。  しかるに首相は、施政方針演説におきまして、わが国の安全保障のために無軍備であるべきことを強調せられたにすぎないのであります。しかし、無軍備、非武装であるべきことは、新憲法施行の当時、すでにこれは明らかにせられております大方針でありまして、国民が聞かんと欲するところは、無軍備のわが国が安全保障を全うするためには、国際的にいかなる地位にわが国を置くべきかということであります。首相は、これについては何ら言及されていないのであります。しかしながら、このことは今よりこれを眞劍に研究し、一定の方向を定めて、諸外国に対して十分に了解を求むべき必要があると私は考えるのであります。総理大臣は、この点に対しまして、いかように考えられておりますか、御所見を承りたいと思うのであります。  なお私は、この際この問題につきましてのわれわれの態度を国民の前に明らかにしておきたいと思うのであります。わが党は、憲法戦争放棄の條章が、絶対的な戦争放棄、徹底的な無軍備、非武装を宣言したものであると理解いたしまして、この無軍備、非武装の規定は、講和会議後のわが国において、次のごとき政策として具体化さるべきものであると考えるものであります。すなわち、一切の軍隊をわが国に置かない、一切の軍事施設をわが国に設けない、武器の生産をしない、武器の運搬もしない、軍事的ファッション勢力を一掃する、警察の軍隊化を厳重に排斥する、講和会議成立後において、わが国はかくのごとき立場において国際社会の間を伍すべきであり、集団保障を受けることによつて冷たい対立に巻き込まれる危険を犯すよりも、むしろ絶対的戦争放棄の精神を守り、永世中立の道をわが道として行くべきであると思うのであります。これは恐らく、わが国の国民大多数が、素朴に純粋にこのことを願つておると、私は確信するのであります。私は、ここに繰返し、わが党の主張は全面的講和による永世中立主義の確立ということにあることを明らかにしておきたいと思うのであります。  講和問題に関連し、いま一つ総理大臣にただしたいことがあるのであります。最近新聞紙の伝えるところによりますと、講和条約にあわせて軍事協定が締結せられるかのごとく報道せられております。しかし、講和締結後におきまして、独立国となつた場合において、わが国が自由意思による協定によつて、他国の軍隊をわが国に駐屯させ、あるいは軍事基地を設定することを認めることは、無軍備を宣言した憲法の精神に反するものと思うのでありますが、総理大臣はこれをいかに解せられるか、憲法解釈問題としてこれを承つておきたいと思うのであります。  次は経済安定問題について質問したいと思うのであります。吉田首相は、二十四年度予算及び政府のいわゆる経済安定政策の実行によつて国民経済は安定正常化し、さらに積極的、本格的復興の段階へ進みつつあると言われましたが、これは現在の深刻な経済の実態を把握しないか、あるいは事実を曲げて説明したものだと私は考える。経済の実情は、そのように楽観し得べき状態ではないのであります。安定を目途として政府が予期していたデイスインフレが、最近では明らかにデフレ恐慌に突入せんとする危険を濃化していることを、われわれは率直に認めなければならぬ。現に、官庁あるいは権威ある各種調査機関の調査にかかる一連の経済指標を見ても、明らかにこの事実が証明されるのであります。  私は、ここでこまかい統計上の煩瑣な数字は省略しますが、たとえば生産についてこれを見れば、鉱工業生産は、本年の二月を頂点として次第に低下しているのであります。消費財生産もまた同様である。物価は、やみは下り、公定は上つておりますが、特に重要なことは、消費者物価が騰貴していることでありまして、これは大衆生活の困窮を物語るものであります。滞貨はどうであるか。本年六月末において、通常の四倍になつております。実質賃金は下がると同時に、多面賃金の不払い状況が多数の件数に上つている。企業整備、破産倒産の状態が続出しつつあります。最後に、株式暴落の事実をわれわれはあげることができる。以上のような経済指標の示すものを見て、どうして首相の言われるごとく国民経済が安定正常化しつつあると言い得られるでありましようか。まさに実際はデフレ恐慌の危機に立つておることを、率直にわれわれは認めなければならぬ。  しからば、どうしてこのような現象を生じたか。われわれは、それが現政府の政策に由来するところ多大なることを指摘することができると思う。すなわち第一には、わが国の産業構造が、戦時中に膨張した重化学工業を平和産業及び中小企業を中心に再編成すべきであつたのにもかかわらず、これをなさない。そこで重化学工業が、戦後においても、なお戦時中と同様な大きな比重のままに温存されておるのでありまして、これが現在の滞貨及び相対的過剰生産の基本的要因をなしていること、われわれは知ることができるのであります。  その次は、大衆購買力の減退による売れ行き不振であります。この大衆購買、力の減退は、インフレーションの時期におきましては、いわゆる所得分配に著しい不均衡を生じまして、勤労者の所得は減り、業主所得は増す、こういう現象を呈しておりましたが、現内閣に至りまして、インフレを急速に処理するという段階になりまするや、この処理の財源を国民大衆のふところからの税金に求めたのであるから、大衆にとりましては、いわば二重の意味におきまして負担の過重となりまして、その結果が購買力の減退、売れ行き不振となつておるのであります。  次に、現政府の財政と金融との機械的な分離政策の結果といたしまして、一方におきましては国民の負担の過重を強要いたしまして、その反面に過大な資本蓄積を行いながら、これが産業資金に振り向けられないので、結果的に日銀あるいは市中銀行に資金が返済、滞溜されておりまして、いたずらに遊休化しているという事実をあげることができるのであります。また待望されていた見返り資金も、そのうち直接産業に投資されたものは、今日までの間に、飯野海運、日本窒素の二社にすぎません。その他貯金部資金も遊んでおるのであります。復金貸出しの回収資金も、これが使えずに滞つているのであります。  その次に、国際的側面といたしまして、二十四年度予算の実施以後における輸出不振の原因につきまして、政府に誤算ないしは認識不足のあつた点を、われわれは指摘しなければならぬ。中国貿易についての誤算、アメリカの景気後退、従つてまた世界物価の低落、ポンド切下げに伴う国内物価高の影響等がこれであります。  このように見て来ると、わが国経済の現状はデフレ恐慌の危機に立つておるのでありまして、その原因は多分に現内閣の政策に由来するものであることを、われわれは断言することができるのであります。経済は安定正常化せりと首相は言われたのでありますけれども、一体どのような現象をさして、さように言えるのでありますか。私は、ここに経済指標のおもなものをとらえて説明しました。政府もまた、経済指標を具体的に取上げて、経済が安定正常化しつつあると言われるならば、その証拠をここに示していただきたい。  次に、経済の現状が以上のごとくであるといたしますならば、この経済危機に対しまして、いかなる対策を立てるべきであるか。われわれは、この危機に対処する緊急対策といたしまして、国内的には大衆の購買力の増大をはかる政策を実行すること、国際的側面においては、極東貿易、ことに中国貿易の拡大策をはかることが必要であると考えます。大衆購買力増大策としては、給與ベース改訂、米価の適正化による農村購買力の増大、雇用の増大、税の実質的軽減、物価引下げ等の政策を実行しなければならぬとわれわれは考えておる。政府は、国内の大衆購買力の増大策について、いかに考えておいでになるか。われわれのかくのごとき政策と対比して、政府のこの問題に対する対策を、この場で聞かしていただきたいと思うのであります。なお中国貿易を含む極東貿易の拡大策につきましても、どのように考えておられますか、御所見を承りたいと思うのであります。  次に国民生活安定問題について質疑を試みたいと思います。吉田内閣の基本政策は、自由経済、採算主義による再建方策であります。換言すれば、内外独占資本の支配の確立を目ざし、いわばめくら生産、めくら金融、めくら貿易を強行しようとするものでありますが、その結果は大衆生活の安定を破壊し、わが国民経済を破滅に瀕せしめているのであります。これを二、三の例をもつて申しますと、近く提出を予想せらるる補正予算において、政府は補給金三百五十億円を削減し、それによつて物価の値上げを強行しようとしておるのでありますが、これが国民生活の安定のうえにいかなる圧迫的作用を及ぼすかということは、われわれは今より明らかにこれを予想することができるのであります。また政府は、百八十億円の減税を行うと言いながら、その陰で、自然増収という名目をもつて、二百五十億円程度の税金の増徴を強行しようとしているのであります。その結果は、減税ではなくて、かえつて実質上差引七十億円の増徴を行うこととなるのであります。このような欺瞞的政策を実行しながら、他面労働者に対しては賃金ベースの改訂は行わないと言い放ち、農民に対しては低米価と強権供出を強行しようとしているのが、現政府の政策であります。このようなことをして、どこに国民生活の安定があり得ますか。  そこで私は、賃金ベースの改訂問題について関係大臣に質問したいと思うのであります。政府は、賃金ベースを改訂しない理由の一つといたしまして、賃金と物価との惡循環をあげているのでありますが、これは、いわば、ばかの一つ覚えであります。(拍手)それはインフレ時代と最近の経済情勢との変化を無視した暴論であります。すなわち、最近の経済情勢のもとでは、賃金ベースはいわゆる有効需要によつてきめられる形にかわつておるのであります。この点から見まして、いささかも惡循環とはならぬとわれわれは考えておる。いやしくも総理大臣施政方針演説の中におきまして、かくのごとき無知ないし欺瞞的な議論を、現下の重大問題の一つであります賃金ベース改訂問題について表明せられることは、われわれの断じて無視することのできぬ点であります。これは見解の相違の問題ではなくて、無知ないし欺瞞の問題であります。首相ないし関係大臣は、惡循環論について、この壇上より全国の労働者大衆に対し弁明する必要があると思うのであります。(拍手)  なお賃金問題について、さしあたつて問題となるのは官庁給與でありますが、この官庁給與水準は、現在の民間水準より大体二千円以上遅れているのは、みなひとしく知つておるところであり、すぐにも改訂の必要があるのであります。また、この給與改訂民間賃金水準の引上げを呼び起すということにはならないのであります。のみならず、六千三百円ベース改定以後において、すでに相当の物価の上昇が見られ、その上補給金の削減ないし全廃の結果、ますます上昇する傾向にあるのであります。それにもかかわらず、現行給與をすえ置きにすれば、実質賃金はいよいよ低下することになる。それでも政府実質賃金を確保できるというのであるか、どういう論拠に立つてこのような議論ができるのであるか、これを私は聞きたいと思う。いわんや首相は、減税、諸手当の充実、あるいは厚生施設等に注意して実質賃金の増加をはかると言つておるのであるが、しからば、その方法を——このような抽象的、作文的にではなく、実際においていかなる政策の上に具体的に実行し、または実行しようとしているのか、これをはつきり答えていただかなければ、われわれの賃金ベース改訂の要求に対する政府答弁にはならぬと、私は考えるのであります。  次に、国民生活安定の問題としての農家の生活安定問題について質問したいと思います。これに関連しましては多くの問題を取上げることができるのでありますが、今日は、農民の購買力増加の問題の一つといたしまして、簡單に米価の問題を取上げてみたいと思います。米価問題は、賃金ベースの問題とともに、勤労大衆が特別の関心を持つて政府の施策を見守つているものの一つでありますが、首相は、施政方針演説において、この問題については何ら触れるところがなかつたのであります。この問題については多くの論議すべき点があるのでありますが、私は時間の関係上、二、三の点に限りたいと思います。  従来行われて来たパリテイ方式による米価の決定の可否については、この方式の欠点について、ここで詳細に論じなくとも、この方式によつて算定せられて参りました従来の米価が生産費を償うものでなかつたという事実だけを指摘すれば足りると思うのであります。この方式で算定せられた米価で強制供出をさせられたのでは、農民生活の安定はあり得ないのであります。今や全国の農民は、先ほど前質問者も申されましたように、こぞつて再生産費を償う米価を要求しておるのでありまして、その要求を貫徹する方法として、生産費調査による価格決定方式を要望しておるのであります。二十四年度米価決定に際しまして、農民団体は、この方式によりまして独自に米価を決定し、これを発表しておりますことは、御承知の通りであります。従来のごとき低米価を現行の供出制度と結びつけ、及び農民課税と結びつけましては、農業の拡大再生産を望むことは断じて不可能であるばかりでなく、ひいてはわが国の経済を縮小再生産に陷らしめる原因の一つとなりつつあるのであります。政府は、米価算定の方式を農業生産費調査による価格決定方式に改め、急速にその調査機構を整備し、調査規模を拡大するとともに、調査方法を改善すべきであると私は思うのでありますが、この点に対しまして、どのような考えを持つておられますか、これをお聞きしたいのであります。  次に、二十四年度米価は、今日に至るまで、いまだに決定を見ていないのでありますが、かような状態が発生する原因の一つは、米価の決定にあたりまして、生産者たる農民がこれに参画し得ないという制度上の欠陷にもあると思います。農村民主化が唱えられておる現在、生産者たる農民が価格の決定に参画し得ず、いたずらに官僚の手にこれをゆだねている。しかも官僚は、資本主義の要望をいれて常に低米価を決定し、これをもつて賃金の基礎たらしめているのであります。農民は、かくのごとき非民主的、官僚的、資本主義的方法に対して強い不満を持つており、農民の民主的要求の一つといたしまして、米価決定に際し、生産者たる農民がこれに参画するというその要求を貫徹させなければならぬと考えるのであります。  政府は、この要求を無視することができず、米価審議会なるものを設けまして、これに農民の一部の代表を参加させたのでありますが、二十四年度米価決定経緯に顧みるとき、この審議会がいかに無力なものであるかが暴露されたのであります。これは單なる諮問機関にすぎず、しかもその決定は、ほとんど顧みられていないのであります。このような欺瞞的な制度によつて農民の要求をそらそうとしていることを、われわれは断じて見のがすことができない。私は、農民のこの民主主義的な要求を果たす最も適当な方法として、米価の決定は、従来も絶えずわれわれが言つておることでありますが、国会の決議によつてこれをなすように、関係法令を改正しなければならぬと考えます。食糧管理法あるいは財政法等を、この意味において改正する意思があるかどうか。これは農民の痛切なる要求であります。私はこれにつきましての政府の御答弁を承りたいと思う。  国民生活安定の問題として、次の中小企業に対する対策及びこれに関連いたしまして失業対策について政府にただしたいと思います。  政府の独占資本支配確立の政策によりまして、中小企業は破産倒産し、現内閣の首切り政策とあわせまして、失業問題はきわめて重大化しております。政府は第五国会におきましては、これ等の問題について何らの対策を示さなかつただけでなく、逆に中小業者を沒落のふちに追いやり、多くの労働者の首切り政策を強行したのであります。第六国会におきまして、政府は、これらの問題につきまして、率直にその対策を披瀝されなければならないと思う。総理大臣演説においては、中小業者対策については、わずかにその題目が演説の末尾において示されておつただけでありまして、全国の中小業者は、これに対しまして非常に大きな不満を持つていると思う。これは関係大臣をして答えさせると総理大臣が申されましたので、今日私は、関係大臣からこの問題についてお聞きしたいと思うのであります。  最後に私は、農地改革の問題についてお聞きしたいと思います。農地改革の徹底化は、農村民主化の根幹となるべきものでありますが、われわれの見方をもつていたしますならば、農地改革はいまだ完了しておらないのであります。第二次農地改革をもつていたしましても、なお約五十二万町歩の小作地が残つており、約三十万戸の小作人が残されておるのであります。反当り七十五円の小作料といたしまして、年額三億九千万円が小作料としてとられる関係が、まだ農村に残つておるのであります。山林、原野の開放、水利の民主的な管理、土地の改良事業、耕地整理、耕地の交換分合及びこれを通ずる集団化の問題等を前進させまして、これによつて農業生産力の近代化をはかるということ、ここに私は農村民主化の根本の道があると考えるのであります。  しかるに政府は、民自党の政策と呼応いたしまして、農地改革の逆もどりを策しているかのごとく、われわれには見受けられる。(拍手)一時伝えられたところによりますと、大蔵省は、財政的見地から市町村農地委員会を全廃し、農地改革の基本法たる自作農創設特別措置法を廃止しようと企てたことがあつたとも伝えられている。農林省でも、農地改革は最終段階に達したものとして、実質的に農地改革を打切るがごとき内容を持つ自作農創設特別措置法の特例法案、農地調整法の改正案を国会に提出しようとする意図があるというように漏れ聞いております。かくのごとき意図は、農村民主化への逆行を示すものでありまして、吉田内閣は農業政策において貧困であると批評されておりますが、さらにそれ以上に農村民主化を妨害せんとしつつあるのであります。  時間も参りましたから、箇條書的に政府にただしたいと思います。第一に、農調法及び自作農創設特別措置法の改正政府考えているか。もし考えているとすれば、どういう内容か、明らかにしてもらいたい。第二は、小作料及び農地の価格引上げにつきまして、どう考えているか、これをただしたいと思う。第三は、最近問題となつておることでありますが、農地委員会と農業調整委員会とを合併いたしまして、その機構を縮小し、予算を削減しようと政府はしておるのであります。はたしてその真意はどこにあるか。われわれは、偉大なる歴史的事業であります農地改革の遂行におきまして、農地委員諸君が過去において奮闘せられましたその功績を高く評価するものであります。また私は、将来もわが国の農地改革の問題、農村民主化の問題につきまして、農地委員諸君の上に尊い任務、重い使命が負託されておるということを信じておるのでありまして、その意味におきまして、このように機構を縮小し、予算の削減をはかるということに対しましては、農村民主化の立場から、絶対に私は反対する。(拍手政府は、これに対しまして、どのように考えておられますか。これを承りたいと思うのであります。  時間が参りましたので、私はこれをもちまして質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  全面講和とか、安全保障とか、軍事施設とか、いろいろな問題について、ただいま御意見がありましたが、これはしばしば繰返して申すようでありますが、政府としては、今日講和問題については、新聞情報以外に何ら的確な資料を持つておらないのであります。従つて、不完全なる資料をもつて私がかれこれ申すということは、国家のためにならぬと考えますから、これに対しては一切お答えを差控えます。  また経済安定と私が申したについては、どこにそういう事実があるかというお尋ねでありますが、ただいまの御指摘によれば、あるいは生産が衰えたとか、あるいは株式が暴落したとかいうようなことをもつて御指摘になつております。これがことごとく吉田内閣の惡政であるということは、はたしてその通りであるか。これから私が説明いたしますが、まず敗戦後の日本について考えてごらんになつたらどうであるか。私は、日本が敗戦後のかくのごとき惨状と、領土の大半を失つて、貿易にしても、あるいは漁業にしても非常な縮小を受けて、この四つの島に押し込められた日本経済がどうして立つかということを心配いたしたのであります。     〔発言する者あり〕
  24. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 静粛に願います。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君)(続) しかしながら、幸いにインフレーシヨンは停止したのであります。やみ相場も横すべりをさすというような状態で一応安定いたしておるから、安定をいたしたと申すのであります。(拍手)第一次世界戦争のあとにおいても(発言する者あり)前の第一次世界戦争のあとにおいても、日本経済界においては非常なパニツクが起つたのでありますが、この敗戦の事実があるにもかかわらず、パニツクはいまだ起らずにおるのであります。のみならず、今申したように、インフレーシヨンは停止したのである。物価の高騰も停止したのである。これは吉田内閣の善政のいたすところであると考えるのであります。(拍手)また財政経済等の対策については、あるいは貿易等の問題については、これは補正予算の数字をごらんになつてから議論をしていただきたいと思うのであります。  賃金ベースについては、しばしば私はここにおいて私の所信を述べておるのであつて、これを繰返す必要はないと思います。  中小商工業その他の問題については、主管大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣青木孝義君登壇
  26. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) ただいまの黒田さんの御質問お答えを申し上げます。  国内の購買力の増大策はどうか、すなわち有効需要の増大についてはどうかという御質問であつたと存じます。過去半箇年間の安定施策は、おおむね功を奏して来たと考えます。物価水準と公定価格の上昇と、それからやみ物価の下落が、この関係から見まして大体相殺せられて、本年四月以来、物価はほとんど横ばい状態にあると存じます。(「買えないんだ」と呼び、その他発言する者あり)従つて、戰時中以来の不合理な物価体系は、国際価格水準を基準として、逐次正常化におもむきつつありますることは、否定できない事実であると存じます。(拍手)しかしながら、安定施策の遂行の過程におきまして、多少御指摘のような事実が出て参つたのでありまするが、これは安定経済に対する転換にあたりましては避けることのできない摩擦的な現象でありまして、これをもつて、ただちにデフレ恐慌の危機が到来したと言うのは、時期尚早であると信じます。(拍手政府としては、今後、せつかくかち得ましたところのこの安定を基礎として、輸出産業を中心とする産業の振興、総合的な国土計画等によりまして、積極的に雇用の機会の増大をはかつて参りたいと存じます。これによつて失業の発生を防止するとともに、さらに減税を実施して実質賃金の維持をはかり、あくまでもデイスインフレの線に沿つて国民経済の発展をはかつて参りたいと存じます。  なお第二点でありますが、米価の決定については国会によるべきであるがどうかという御質問であつたと存じます。一般に価格の形成は、諸般の事情を考えて機動的に定める必要があるのでありまして、国会決定に待つということは、必ずしも妥当ではないと考えるのであります。(発言する者あり)しかしながら、米価が一般国民経済生活に重大な関係があることは仰せの通りでありまして、広く世間の意見を聞くことは当然のことと存じますので、先般来米価審議会を設けまして(発言する者あり)この考えに沿つた次第であります。(拍手)     〔発言する者あり〕
  27. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 徳田君、御静粛に願います。(拍手)     〔国務大臣鈴木正文君登壇
  28. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 失業対策のうち、失業者の見通しにつきましては、先般緊急質問に対してお答えした通りでございます。これに対しまして、失業者吸収の方法としては、繰返し繰返し申しますごとく、経済全体の立直りにあるのであり、さらに直接的には、見返り資金、公共事業、それらの運用にあり、さらに間接的な、段階的なものは、失業保險、あるいは緊急失業対策等にあることは、もちろんでございます。(発言する者あり)これらの方策を総合いたしまして、大体において補正予算においては百二、三十万人、もし予定の通りに行きましたならば、二十五年度予算におきましては二百万人前後の吸収力は生れるであろうということも、すでに申し上げてあります。(拍手)もちろん、これは決定した予算でありませんので、多少の変更はあることと存じますけれども、あらためて予算の出現を待つて明確に政府の吸収策を申し上げたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣森幸太郎君登壇
  29. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 農林省関係の御質問についてお答えいたします。  米価の決定につきましては、先ほど申しました通り、パリテイ指数によることが今日の事情として妥当である、かように考えております。  農地委員会と農業調整委員会を合併するようなことを考えていないかという御質問でありましたが、農地委員会の必要なことは申し上げるまでもないのであります。農業調整委員会というものを、経費節約の関係からこれを一つにするということも考えられるのでありますが、まだ政府としては、はつきりこの問題を予算の上に決定いたしておりません。  自作農創設特別措置法につきましては、今日の段階において、小作料あるいは地価等の問題が不適当と考えますので、時代に適合するような改正をいたしたいと考えております。  米価の決定国会によるべきであり、生産費を償うものでなければならぬという御所見があるのでありますが、これは先ほど申しました通り、今日の段階としてはパリテイ指数によることがよいと考えておるのであります。生産費を償うということにつきましては、生産費と申しましても、二十三年度の調査によりますと、一石当り千円、それから一万円、この間に生産費というものはあるのでありまして、再生産費の調整についての価格は、やはりパリテイ指数によつてこれをきめることが妥当と考えるのであります。(拍手
  30. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 大石ヨシエ君。     〔大石ヨシエ君登壇
  31. 大石ヨシエ

    ○大石ヨシエ君 私は、社会革新党を代表いたしまして、総理大臣並びに関係閣僚に対して、次の諸点につきまして質問いたします。何とぞ詳細なる御答弁をお願いする次第であります。  講和問題、財政金融、農林行政、商工業、労働行政問題等については、質問いたす予定でおりましたが、各党代表の質問と重複いたしますので、この際私は省略する次第であります。(拍手)  そこで、私の質問の第一点は人口問題と移民の問題であります。終戦後、わが国の人口は飛躍的な増加を見まして、終戦時に七千二百万人に満たなかつた国内人口は、本年は八千二百万という数字が予想されるのでありまして、戦後五箇年間に約一千万人の増加を見た次第であります。もちろんこの数字は、戦後の過渡的な現象が基調をなしているのでありますが、人口問題審議会及び総司令部経済科学局の調査によりますと、わが国の人口がこのまま推移するならば、昭和三十年には九千万人を突破するということが明らかになつているのであります。  かような人口の自然増加を抑圧する効果的な方法といたしまして、産兒制限があげられておるのであります。これによる効果は、人口問題審議会の研究によりますと、世界各国中最も強度な産兒制限が行われているイギリス、スエーデンの例をもつて推定いたしましても、なお六・二五%以下に自然増加率を抑制することはできず、やはり昭和三十年には八千五百万人と突破するであろうことは明らかであります。しかしながら、実際にバース・コントロールが、かほどまでに普及されるということは、わが国の実情から不可能と考えられます。従いまして、人口過剰の緩和は、産兒調整だけではとうてい望むことができないのであります。  以上の点は、いまさら私が説明するまでもなく周知の事実でありまして、問題の根本は、單に人口の総数が過剰であるということでなく、この過剰の事実が国民の実質所得を著しく低下せしめているということと、いわゆる生産年齢人口が、出生率のいかんにかかわらず、今後約二十年の間にはげしい増加を見ることであります。従つて、わが国の人口過剰は、稼動人口の激増という形をとるのであります。戦後の生産性の低下と相まつて勤労の自由ははなはだしい制約を受け、国民生活は非常なる不安に陷るのであります。また最もゆたかな過剰人口の収容力を持つ農業の分野でも、すでに戸数においては五百五十万戸を基幹として停滞して飽和状態に達しており、農業人口は一千八百万人を算するまでに至つておるという情勢であります。  かようにして、わが国の人口問題は、今日非常に重大なる段階に立ち至つております。(拍手)これに対処して、政府は人口問題研究所を設けて種種の研究を試みておるようでありますが、私の調べたところによりますと、今日まで何ら見るべき具体的な措置が講ぜられていない模様であります。(拍手)これはまさしく政府の怠慢であると私は思うのであります。(拍手政府は、一体今後この問題について、いかなる対策を講ぜられるのであるか、この点について私はお聞きしたいのであります。  なおまた、将来における稼動人口の激増の傾向を考えるとき、このための有力なる方策として移民問題があげられます。もちろん海外移住の問題は、諸外国の理解ある協力と、受入れ国の事情によつて決定されるものであります。この際世界の輿論に向つて、わが国の恐るべき人口過剰の実情を披瀝し、さらに資源の豊富なる未開発地域の開拓が結局は人類の福祉に貢献し、世界の繁栄に寄與するという一致する利害関係から、わが国の勤勉な、しかも有能な労働者の移住を、心をむなしくして訴え、一層の理解を喚起し、これが急速なる実現を期すべきでありますが、これに対して政府はいかように考えておられるか、また今後のこれに関する対策を知りたいのであります。(拍手)  質問の第二点は婦人問題であります。このところでは、特に未亡人母子の問題について申し上げたいと存じます。  わが国が戦争に敗れた原因は、天皇中心主義、男性中心主義、さらに勤労大衆を無視し、国民の半数を占める婦人を度外視したことによると私は考えておるのであります。(拍手)ことに私たち婦人は、昔から三界に家なく、幼にして親に養われ、嫁しては夫に養われ、老いては子に養われると言われているように、婦人の人権まつたく無視されて来たのであります。敗戦の結果、マ元帥からの贈りものとして、私どもは参政権を與えられ、男女同権の原則を獲得したのでありますが、旧来の男女のしきたりは、いまだに改められておりません。現にこの白亜の殿堂において、婦人代議士の無用論を放送する人すらもおるという現状であります。(拍手)さらにまた、今日までの総理大臣施政方針演説中に、ただの一回も婦人問題や兒童の問題について述べられたことがなかつたではないか。(拍手)今回の吉田総理大臣演説においても、またしかりであると思います。(拍手)これは明らかに婦人及び兒童の問題を無視する惡弊が今なお存在しているものと私は考えるのであります。この事実は、いまだに民主主義の陰に隠れて根強い封建思想が残存することを物語るものであると私は信じます。(拍手)  かような事実から出発して、戦前、戦時中と同じような悲劇が婦人の身の上に絶えず繰返されているのでありまして、その最たるものとして、私はここに未亡人母子をあげるのであります。この未亡人母子の終戦以来の生活の不安と困窮は、生活保護法、民生委員法、兒童福祉法等の実施による一連の対応策によりまして、当面の破綻は免れているのであります。しかしながら、最近の経済事情の惡化、失業者の続出等によつて社会的悲惨事は頻発いたしまして、つえとも柱とも頼む夫を戦争の惨禍によつて奪われ、しかも育つ盛りの子供を持つた未亡人が、全国に今なお数百万人を数えておりまして、その状態は、まつたく目をおおわしめ、あわれを催すものがあります。最近全国各地で、苦痛と懊悩の余り、遂に母子心中を遂げる人々が数知れずある現状であります。皆さんは、いかがお考えでございますか。これに対して、前に述べました各法律によつて一応の救済の道が開かれているとはいえ、問題は山積されております。  そこで私は、この対策といたしまして、第一に母子ホームの急速なる増設をはかる必要があると考えるのであります。この母子ホームは、今日までに全国で約一万五百戸程度設けられておるのでありますが、実際には必要量の半数にも満たないことが現状であります。社会施設の数は一国の文化のバロメーターであるといわれております。  第二の対策といたしまして、生業資金の貸付、職業補導及び授産施設等の急速なる拡大と強化ということであります。今日一定の職業を持たない未亡人は、全体の四割を占めておるというような状態であります。これも対策の貧困が、さきに述べた母子心中等の悲劇を起す最大の原因となつておるのであります。従いまして、この急速なる実施は、まつたく焦眉の急務であります。皆さん、生活苦にあえぐ未亡人母子の、この声なき声を、じつと心を澄まして私は聞いてやつていただきたいと思うのであります。(拍手)  第三の対策といたしまして、私は未亡人の子供に対しまして獎学金制度を設けるべきであると考えるのであります。根強い社会の封建性のために再婚の道をとざされている未亡人にとりましては、頼みの綱となるのは、ただ残された子供だけであります。この子供に向つて、夫の意思を継いで相当の学業を修めさせることは、未亡人にとりまして最も大きな悩みの種であります。か弱い女の細腕では、むなしく放置する以外に道がないという状態であります。未亡人母子に対する特別の育英制度の確立は、多数の兒童の不良化防止の見地からも、ぜひとも施策に織り込む必要があると私は信じます。  第四の点は農村婦人の問題であります。農村におきましては、依然としてほとんど例外なく、婦人は昔ながらの封建的な束縛のうちに呻吟いたしておるのであります。私は、農村婦人の解放こそ真に農村民主化の根本問題であると信ずるものであります。(拍手)ことに農村の未亡人母子は、まことにあわれなる境地に置かれております。このために、政府は農地法、税法等について適当の緩和策を早急に講ずる必要があると考えるのでございます。特に租税の減免は、ぜひとも実施していただきたいのであります。しいたげられた弱き女の声なき声を聞くこのことこそ、真の私は政治であると思うのであります。(拍手)  以上の諸点につきまして、私は政府の率直なるお考えと、その具体的な方策をお聞きしたいのでございます。  最後に私は、政府は鉄道運賃、特に貨物運賃の八割という大幅の値上げの準備をしていられるということでございますが、これがもし実現されるとするならば、諸物価に非常に大きく影響して、物価の高騰を示します。私は、この八割の大幅値上げに対して絶対に反対するものであります。この点につきまして、詳細なる御説明を私は要求するものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  人口問題についてのお尋ねでありますが、政府は、過剰人口の始末については、結局は生産を上げ、輸出を上げて、産業の振興によつてこの問題を解決する以外に妙策はないと考えます。また経済が安定し、生産が増進した場合には、自然人口の増加率は減るのが定則であります。また移民につきましては、これは講和條約後の問題でありますから、今日これを私がとやかく申すことは差控えたいと存じます。  婦人問題等については、なるほど私の施政演説の中には言及いたしておりませんが、これは重大でないから言及しないのではないので、他にいろいろな問題について、まだ言及いたしておらないのでありまするから、軽視しておるとは御了解にならぬように希望いたします。また財政の緊縮をはかつて、婦人問題その他の問題の施設については、政府考えたいと考えておるのであります。  以上お答えいたします。     〔国務大臣林讓治君登壇
  33. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 人口問題につきましては、大石代議士のおつしやる通りでございまして、きわめて憂慮すべきものがあると考えます。つきましては、わが国の人口過剰に対する対策といたしまして、何と申しましても、先ほど総理の申されましたように、生産力の回復と申しましようか、増進をはかつて行く、そうして人口の収容力をきわめて高めることが根本であると考えまして、その前提といたしまして、あるいは貿易の振興であるとか、海運の伸張、資源の開発、あるいは保存というようなものを最高度に利用するのに努めておるわけであります。なお生産力の回復増進につきましては、農業のみに人口の収容力の余地を求めることは、御承知の通り非常に今日至難のことであると考えまして、平和工業と申しましようか、あるいは商業その他サービス産業、観光事業の振興などを根幹といたしまして、関係方面と連絡をいたして、今日実現に努めておるような実情にあります。  また現下の生活の状況のもとにおきましては、いわゆる産兒制限が一部で強く要求せられておるのであります。近来遺憾ながら、死産の増加の傾向が非常に認められておりますし、また長い目で見まするならば、人口増加の調整をすることの必要を認めまして、真に必要とせられるところにおきましては、夫婦の健康に弊害のない健全な受胎調節が自由かつ自主的に行われるように、政府といたしましても指導する方針であるわけであります。政府は、さきに問題の重要性にかんがみまして人口問題審議会を設置いたしまして、その人口対策の審議を願つておるのでありますが、最近基本の方策といたしましては意見の一致を見たようでありまして、近くその審議会におけるところの建議をなされることと考えまして、政府は、この建議に基きまして十分に検討いたしまして、その問題を解決するのに努力いたしたいと考えておるわけであります。  なお次に、現内閣が婦人兒童問題などにつきまして、きわめて軽率であるような御意見もあつたのでありますが、私ども相当に考えております。ということは、先般兒童福祉法などを制定するようになりましたのも、それにほかならぬのと、また兒童局の廃止問題などが行政整理の間に口の端に上つたのでありまするけれども、これを残置するようにいたしました事柄も、この点につきましては相当に留意をいたしたというつもりでおるわけであります。そこで、未亡人母子に母子ホームを増設することにつきましては、兒童福祉法の母子寮の増設について、昭和二十四年度において二十数箇所を設置いたしました。それから明二十五年度におきましては、約百箇所を新設する予定で予算を計上しておりまするから、この点について皆さんの御協賛を得まするならば、これが達成を見ることができると考えております。  それから生業資金の貸付につきましては、生活保護法の生業扶助、国民金融公庫による小口の貸付を強化するようにいたしております。  また育兒の制度の確立につきましては、保育所を昭和二十四年度において百数十箇所設置する予定であります。また二十五年度におきましては、百箇所これを増しまして、目下予算を要求をいたしておるわけであります。  なお遺兒に対するところの年金制度などにつきましても、あるいは獎学資金などの問題につきましても、社会保障制度の実施と関連をいたしまして、今後の研究に努めたいと考えております。  なお農村の婦人が封建的であつて、これを打破すべきところの御意見があつたのでありますが、その点につきましては、私も大石代議士とまつたく同感でありまして、この点につきましては将来十二分に研究をいたしまして、御期待に沿うように努力をいたしたいと考えておるわけであります。(拍手)     〔国務大臣大屋晋三君登壇
  34. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 運賃の問題につきまして、大石さんにお答えいたします。  鉄道の貨物運賃は上げないに越したことはないのでありまするが、遺憾ながらこれを上げざるを得ないのであります。と申しまするのは、大体鉄道の運賃はいわゆる政策運賃でございまして、たとえば某地から某地までのある貨物の運賃が現在千円だといたしますると、実際の費用は千八百円以上かかつておるものを、千円にまけて品物を運んでおるというような状態でありまして、これが従来は国家の本会計から赤字をどんどん補填いたしておつたのでありまするが、御承知のように鉄道の会計がいわゆる独立採算制ということに相なりましたから、今回はこの政策運賃などを鉄道の独立会計がやつておるわけには行きませんので、かかつただけの運賃を徴収するという建前で、目下八割または九割、いずれになるかわかりませんが、値上げを考えておるのは、まことにやむを得ざる次第であります。しかして、この際に考えるべきは、この運賃が物価に占める割合がどういうパーセンテージであるかということを調べて、国民の消費経済に影響のないように考えなければいけないのであります。現在鉄道の運んでおりまする運賃を、たとえば八割上げますといたしましても、物価に占めまするパーセンテージは約四パーセント強ぐらいの程度でございまして、これはまことにいたし方ないことでありまするが、この分は国民消費生活の中で吸収をしていただくというふうに考えておることでございますので、この点ひとつ政府の苦衷をお察し願いたいと思います。(拍手
  35. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十九分散会