○神山茂夫君 共産党を代表しまして、
考査特別委員会の設置に対して反対の討論をいたします。
三月二十九日に、本会で
考査特別委員会の設置が決定されました。この決定を見る前に、本壇上に立
つて、
提案者である
石田博英君はいろいろな詭弁を述べたのでありますが、そのときに問題に
なつた一つは、私たち共産党は社会党及び労農党と協力いたしまして、
考査特別委員会の設置ではなくて不当財委の設置を
提案したのであります。これが否決されまして、
石田君の
提案に基いて
考査特別委員会が設置されたのでありまするが、
考査委員会の設置そのものは、すでに民主自民党が絶対多数をと
つて以来
吉田君が先頭に立
つて言
つておりますところの、非日
活動委員会的なものをつくろうという計画的な宣伝と計画的なねらいとの一つの産物であつたのであります。従
つて私たちは、この
考査特別委員会の設置のときにあたりまして、この
考査特別委員会が日本のフアツシヨ化の一つの道具になるであろうということを最も力を込めて強調したのであります。
しかも、この
考査特別委員会がその
決議文の中で言
つておりますように、日本の再建を阻害する行為と言われておるものは、これは
石田君が今でもよく記憶していると思うのでありますが、たとえば賃金の不拂いとか、あるいは供出を阻害する行為とか、あるいは納税を阻害する行為というその行為だけにとどまらず、これを起したような政府の責任を追及するということを、この席上において、あの
石田君は言明しておるのであります。(
拍手)しかも、こういうことを口で言いながら、その心底において非日
委員会的な
活動をねら
つておつたということは、満天下周知の事実なのであります。しかも、これだけでは若干てれくさいので、はじめから日本の再建に貢献するような行為があつたならばこれを
表彰するとい
つて、美しいことを言つたおのであります。これが絶対多数によ
つて通つた。
ところが、この
決議案が通
つて、これを鍛冶
委員長がその筋に持
つて行つたところ、すでに
猪俣委員の言いましたように、サゼスチョンが出ている。(「どこのだ」)と呼ぶ者あり)言
つてやろうか。御希望がありますので、この点は申し上げてもいいのでありますが、言はれてはお困りの
委員長があそこにいますので申し上げません。
関係当局のサゼスチョンがあつたことは事実だ。
しかし、この事実が、最もはつきりしておるのは、四月七日付のニツポン・タイムスであります。ニツポン・タイムスの社説には、ごまかしの
考査特別委員会と、はつきり書いてある。この
考査特別委員会というのが、不当財委そのものをすりかえて、日本民主化に最大の貢献をした不当財委を握りつぶして、非日
委員会化への道具であるということをちやんと書いてある。この事実の上に基いて‥‥(発言する者あり)興奮するな。静かにしろ。今
猪俣君が指摘しましたように、
理事会及び
委員会においては、旧不当財委的な
活動に六〇%、さらに再建を阻害する行為に三〇%、
表彰に該当する行為に一〇%、こう割振りをした事実は、わか
つていると
高木君が言つたように、わか
つておるはずだ。
ところが、実際にこれを行うにあた
つて、皆さんが今
猪俣君の言葉によ
つてはつきりわかるように、非常に一方的な解釈をしているということは、事実そのものが立証しているのであります。この事実をまずはつきりさせるものは、日本の再建を阻害する行為の最大のものは何であつたか。それは
諸君、賃金の遅配や欠配であり、さらに
政府支拂促進の
特別委員会をつくらなければならなかつたような、あの金詰まりに関連するところの賃金の遅配と欠配であつた。これこそ日本の再建を阻害する第一のものであつた。これに対して、わが党が
調査要求を出したが、どうした。また第二に、農民の供出を阻害するような原因をつくつたものは不当な供出の割当であつた。その最たるものは、先ほども
猪俣君のいわれましたように、われわれと北君とが協力して出しましたところの埼玉県における不当供出の割当であります。この
調査を要求した。これに対して何をしたか。何もしていない。納税を阻害する行為のうち一番大きな問題は何であつたか。これは日本の税制そのものが不当であるということが明らかにな
つている。それにもかかわらず、こういう問題には大きな努力は拂わずに、
諸君の知
つておられますように、あの浦和
事件や
中野の
税務署の
事件をわずかに取上げただけであります。しかも、これは官吏の
汚職事件そのものとして
調査したにもかかわらず、その結論の中には、情勢の発展とにらみ合せて、巧みに反共産主義的な宣伝を織り込んでいる。こういうことの中にも、すでにこの
委員会の正体は現われておるのであるます。しかも後にな
つて、その日時の点は略しますが、これらの問題全部を打切るような方向によ
つて、ことに賃金不拂いの問題、不当供出の問題については、まつたく一方的な、片寄つた
調査だけをして押し切
つている。この点こそ日本の再建を阻害する最大の行為である。
諸君が調べたければ、まさにこれらの行為こそ
調査すべきだつたのであります。この点特に強調しておきたい。
さらに、今この点について
篠田君が劣等感云々と言
つておりますが、若干優越感に過ぎている。日本の再建を阻害する行為というものは、今言つた点に最も重点があるばかりでなく、先ほども言はれましたように、十数件にわたり当然取調べる
事件があり、ことに前の
委員会からの引継ぎの
事件があつたにもかかわらず、この
調査に全力をあげなかつた、あるいはこれに精力を注がなかつたということは、ここに来て
篠田君自身が
委員長の意思を代弁しているのとよく似ている。まつたくその
通りです。今までの
事件そのものについては、ほとんど重点を置いていないのが現実なのであります。
こういうふうな事実のうちに、一方には六月十五日、廣川
弘禪君の声明によ
つて、国電スト、それから熱海
決議、それから平の
事件、さらに広島日鋼
事件のごとき
調査が始まつたのであります。ここで手続上の問題はおくとしましても、六月十五日に、広川君は鍛冶
委員長その他に諮ることなく、一方的に
考査特別委員会においてこれらのものを
調査すると言つた。そうして、その言明を終るやいなや、一方では鍛冶
委員長を呼びつけ、一方では
調査員そのものを使
つて実際
調査を始めている。
理事会も知らず、いわんや
委員会も知らない間にこういうことを現にや
つているのであります。従
つて、六月二十日にな
つて、
委員長談という形によ
つて、廣川
弘禪君の指示とは無
関係であるということを言明せざるを得ない実情にな
つているではないか。こういう陰謀の道具にな
つているということは明らかな事実であります。
しかもこの
運営に至
つては、これは今
猪俣君が言われ、後に
石田委員からも言われると思うのでありますが、民主自民党の絶対多数を百パーセント以上に利用した、非常に一方的な
運営にな
つており、その中においては、少数派に対する発言の制限、暴言は無数にあつた。さらには暴行までや
つている。私は同僚議員であるので、今名前をあげることは避けますけれども、一
委員のごときは同僚議員に対して暴力を振
つている。こういうことが日常茶飯事にな
つているではないか。(
拍手)また証人に対しては、
猪俣君が言われましたように、一方的な尋問をするだけではなくて、たとえば
鈴木証人に対しては八時間にわたり尋問をしている。
井上唯雄君は、その間一室に監禁されて飯も食わされておらない。しかも、この証人のうちで、
委員会の、ことに多数派の
諸君の尋問に対して少しでも証言をしぶつたり、あるいは一方的な尋問に対して質問などしようものなら、これを告発している。こういうふうな事実さえあるのであります。
さらに問題は(発言する者あり)
椎熊君、聞きも見もしないくせに、だま
つてすつ込んでいろ。しかも、一方的な報告ばかりや
つているということは、すでに
諸君が御承知でありますが、四つの
事件、すなわち国電スト、それから熱海
事件、それから平
事件、広島日鋼
事件、この四つの
事件に関する報告のごときは、討論が終るや、その一晩のうちにできている。速記録はできていず、事務当局は関知しないのに、どこからか報告が出て来ている。これを、
民自党の
委員十六名が寄
つて、十六名だけで可決している。こういう一方的な
運営をしているこの
委員会が、どうして超党派的と言えるのか。(
拍手)これを目してわれわれが
民自党の私物というのが言い過ぎとすれば、
吉田君か廣川君の精神に従つた一方的な
運営をしているということは明らかではないか。
さらに、今までこうして一方的にや
つておいて、最近は完全なサボ状態に入
つている。私は、この点について鍛冶
委員長に対して再三申入れをしているのだが、最後まで何ら実際的な処理をされておらない。そうして、前第五
国会の閉会中の
審査の期限が切れる一昨日の十二時まで何事もしていないというのが現状なのであります。こういうふうな事実を考えます場合、この超党派的な
委員会を、民主自由党が、ある場合には
自分たちの利益のために一方的に
運営し、また他の場合には一方的にサボると言われても、弁明の余地はないと思うのであります。これらの一方的な
運営は、最近行われておりますところの諸
事件に関連して、警察法の
改正、あるいは消防と警察との協力、あるいは農地改革の打切りというふうな声明を一方的に出して、また現に第五
国会における食料確保臨時措置法のあの不当なる継続審議をここで多数で押し切つた、あの一方的な
運営とよく似ているのでありますが、参議院における五月二十三日の暴行
事件といわれるものに関連しまして、除名を一方的に強行しようとしている。しかも、不当な手続によ
つて強行しようとしている。こういうような
事件とも関連している
考査特別委員会は、現在
民自党が中心にな
つて、政府が先頭にな
つて行いつつあるところの、国内全体の反動的な、フアシスト的な方向の道具にな
つている。ここに大きな意味があるのであります。全体として私たちがこれらの事情を見ますならば、最近における政治全体の右翼化、極端右翼、ウルトラ・コンサヴアテイヴ——おきらいでありましようが、この国際的な輿論がいうところの極右的なせ維持のほんとうの傀儡にな
つておる。
しかも
諸君、ここで私たちが考えなければならないことは、すでに警察法
改正の問題に対する
樋貝君や
増田官房長官の言明にもかかわらず、最近やれないではないか。また農地改革を打ち切ると言つたが、これもマツカーサー元帥の声明によ
つてできなく
なつたではないか。現に本日の新聞にも報道されておりますように、
吉田君それ自体が共産党に対する対策はないというふうに言明せざるを得ないような情勢にな
つておる。
この情勢の変化に対応して、
永井博士
表彰の問題などが出ておるのであります。
永井博士
表彰の問題は、すでに
諸君が御承知のように、一体日本に
表彰なんていうものがあるのかという皮肉さえ言われておる。その
表彰を一〇%にしておいて、何とかかつこうをつけなければならない。そこで、あの気の毒な
永井博士をここにひつぱ
つて来て、
民自党の行き詰まつたこの最近の状態を切り抜け、特に
考査委員会における面子の丸つぶれをごまかすところの道具にしておる。これが
諸君の善良な意図にかかわりなく、客観的に演じておる役割であるということ、ここにほんとうの真相があるのであります。
しかも私は、ここではつきり言いたいのでありますが、先ほど
篠田君がここに立
つて、社会不安はことごとく共産党が起したのだと大きなことを言
つておる。しかし、
篠田委員にしましても、あるいは鍛冶
委員長にしても、その他の
委員諸君にしましても、また同僚議員
諸君にしましても、たとえば国電ストのほんとうの原因は何であつたか、あるいは平
事件の真の原因は何であつたか、あるいは広島日鋼
事件の真の原因は何であつたか、これを真にまじめに考えるならば、この
事件の根拠は、あの第五
国会においてはつきりと
予算及び法案の形で決定された、すなわち
民自党の政策の結果、日本の民族資本が崩壊した。鉱山が荒れ果てた。この結果労働者階級に対する賃金引下げ、首切りとな
つておる。この上に出ておるということを、われわれははつきり指摘せざるを得ない。どうだ、こう言つたら黙つたではないか。ここが痛かつたのだろう。
こういう事実を私たちが考えます場合、
考査特別委員会の設置ということは、すでに私が述べましたような事実そのものにおいて、
考査特別委員会が非常に反動的な、フアツシヨ的な政治の道具にな
つておるだけでなく、三月二十九日、本
委員会において決定された
決議の精神に反しておる。また
関係当局のサゼスチョンというものを蹂躪するところの、まつたく非日
委員会的な機関に化しておるということは、また天下が知
つておる事実であります。従
つて、われわれはこの
考査特別委員会の設置に対して心から反対せざるを得ない。もしも
諸君にして良心があるならば、もしもこういうものが必要であるならば、不当財委的なものこそ設置さるべきであるということを強調したのであります。このことは
民自党の
諸君の最も好まないところであろうと思う。なぜかならば、これらの
活動によ
つて最も手痛いのは、現在の政府とその與党の
諸君であるということは、これまた天下周知の事実であります。(
拍手)従
つて、私は最後に一言して終ります。
考査特別委員会の設置のねらいはどこにあるのか。まさしく非日
委員会を強化し、日本の政治をフアツシヨ化し、人民生活を弾圧する道具であるということ、従
つてわれわれは徹底的に反対いたします。(
拍手)