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1949-11-29 第6回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十九日(火曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 小玉 治行君 理事 田嶋 好文君    理事 石川金次郎君 理事 梨木作次郎君    理事 大西 正男君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       古島 義英君    松木  弘君       眞鍋  勝君    武藤 嘉一君       吉田 省三君    猪俣 浩三君       田万 廣文君    上村  進君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         (矯正保護局         長)         法務事務官  古橋浦四郎君         (検務局長)         検     事 高橋 一郎君  委員外出席者         議     員 庄司 一郎君         法務事務官  八木 新治君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  刑事補償法案内閣提出第二号)  人権擁護に関する決議案志賀義雄君外三十五  名提出決議第八号)  武生裁判所事及び検察庁怪火事件調査報告の聽  取     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず刑事補償法案を議題といたします。  梨木作次郎君より質疑の通告がありまするから、これを許します。梨木作次郎君。
  3. 梨木作次郎

    梨木委員 石川委員の方から詳しい質問が出ておりましたので、重複を避けまして、二、三伺いたいと思うのですが、第三條に「左の場合には、裁判所の健全な裁量により、補償の一部又は全部をしないことができる。」こうあつて本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽自白をし、又は他の有罪証拠を作為することにより、起訴、未決の抑留若しくは拘禁又は有罪裁判を受けるに至つたものと認められる場合」こうなつておるのでありますが、大体こういうようなことはきわめてまれなことに属すると思うのであります。ただ私が心配するのは、これら身柄拘束されておつた場合におきましては、客観的にはこういうように見られることが起りかねないのであります。そこで私はこの條項の但書といたしまして、但しいかなる場合も、身体の自由を奪われた後の自白の場合はこの限りではない、こういうようにしなければ、どうしても身柄拘束されておる場合は、実際は拷問だとか、強制された自白ということになるのであります。しかし拷問とか、強制されたということが証明されないというと、この條文虚偽自白ということが出て来るのであります。その前の「捜査又は審判を誤まらせる目的」ということは、これは認定できまするので、私はここにどうしても身柄拘束れておる場合に、虚偽自白をした場合は例外にしなければ、この補償法目的から言いまして、非常に弊害が生じて来るように思うのでありますが、その点についての政府の所信をお伺いいたします。
  4. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの御心配はごもつともだと考えます。ただ私ども立案趣旨から申しますと、身柄拘束されておつて、よく早く出たいために、つい心にもあらぬことを言うことがあると思いますけれども、そのような場合において、この第三條の第一号に該当する場合とするつもりもないし、またこの文章ではさような場合は当然入らない。その場合には刑事補償を受けるというように考えるのであります。すなわち捜査または審判を誤らせる目的で、虚偽自白をするとか、あるいは他の有罪証拠を作為するというような表現事を用いてあります。前回にお出ししました案の際には、その点がことさら任意の自白をすることにより云々と、こうなつてつたのでありますが、ただいまのような御疑問の点なども十分考えまして、さらにその意味を明確にするつもりで本法案のような表現にいたしたのであります。従いまして本法の場合に該当すると考えられるのは、前回にも申したのでありますが、親分がたとえば人を殺したのを、子分が親分をかばつて、自分が罪を背負うというような場合でありますとか、また実際にさようなことがあるかどうか存じませんが、刑務所の方が暮しよいというようなことで、ありもしない罪を買つて出るというような場合がもしあれば、それらが該当するのであつて、他はこの適用はないと考えております。従つて別段さらに何らかの文字をつけ加えることなくして、このままで十分御心配事のようなことは避けられると考えております。
  5. 梨木作次郎

    梨木委員 この点につきまして特に私が心配するのは、あまり繰返しませんが、まずこの虚偽自白をしたという事実が現われておつて虚偽自白というものが客観的に出て来まして、こういう虚偽自白があると、これは捜査を誤らせる目的つたというふうにすぐ結びつけられるので、非常に心配するわけなのでありまして、この点については審判、あるいは捜査を誤らせる目的がなければよいのだという事柄で救われそうですが、この点が実際の運用の面で非常に心配になるのであります。これは運用の面からいつても特に身柄拘束された場合には、特別この点について十分の配慮をされるよう希望しておきます。  それから同じ條文の第二でありますが、一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪言い渡しを受けても、他の部分について有罪言い渡しを受けた場合、こういう場合には裁判所裁量補償しなくてもよろしいというようなことになつておるのでありますが、この「健全な裁量により、」というようなことで、併合罪の場合に非常に補償適用を受けることが少くなりはしないかということをおそれるのであります。特に起訴の場合に、検察官の方がいろいろと網を張つてたくさん條文を書いてある。そういう場合におきましては、これによつてその一部が無罪になつても、それによつて補償を受けることが非常に困難になりはしないかということをおそれるのであります。こういう点についての政府の用意を伺いたいと思います。これは必ず併合罪の場合には、一部が無罪になれば、その分については必ず補償する。こういうようにした方が、刑事補償法目的が十分達成できるのであつて併合罪の場合には、一部分無罪なつた場合は、これはしなくてもよろしいということでやつて行くと、よろしいの方が原則になつてしまつて補償が受けられないようなことが非常に多く出て来はしないかとおそれます。
  6. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 併合罪の一部無罪なつたような場合についての御質問でありますが、そのような場合には、たとえば窃盜罪詐欺罪とで起訴されておりまして、窃盗罪勾留されておる、そして窃盗罪の方は有罪なつたが、詐欺罪の方が無罪なつたというような場合でありますとか、あるいは勾留理由なつ窃盗の方は無罪になつて、そうでない詐欺罪の方が有罪なつたというような場合もありましようし、いろいろな場合が考えられると思うのですが、勾留理由なつ窃盜罪の方が無罪になつて、別の詐欺罪の方が有罪なつたというような場合でありましても、窃盜罪勾留しておつたからあらためて詐欺では勾留しない。もしも窃盜罪勾留ということが行われてなかつたならば、詐欺罪の方ではあらためて勾留をしたであろう。しかもその詐欺罪についても有罪なつたという場合も、むろん含まれるわけなのであります。それでいろいろな場合を含んでおりますので、画一的にこれを規定することを避けまして、裁判所の健全なる裁量におまかせするほかはない。裁判所裁量というものを信用して、こういうふうな規定の体裁になつたわけでありまして、運用につきましては、当然裁判所において愼重な考慮を拂われるものと思うのであります。
  7. 梨木作次郎

    梨木委員 これを少しつつ込んで伺いたい。これはもう少し設例的に説明していただきたいのですが、補償する場合と補償しない場合とは、ちよつと例でおつしやつて事もらえば、どういうような場合には補償するし、どういうような場合には補償しないということになるのでしようか。私はこういうようにうまいこと書いておりますが、実際の併合罪の場合には、刑事補償がもらえないのではないかということをおそれるのでありますが、この点を伺います。
  8. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 たとえば併合罪起訴事実中、非常にかんじんの部分無罪になりまして、一部分だけ事が有罪なつた。ところがその有罪なつ部分だけならば、通常わざわざ身柄拘束してまで調べるようなことはないというような場合などには、補償をすべきものであるというふうに考えます。またその反対に、一部無罪なつたけれども有罪なつ部分について十分勾留を受ける程度のものであるというような場合におきましては、これは刑事補償を受けることができないか、あるいは受けましても、金額が減額されるというふうになるだろうと思うのです。大体そういうような考え方でこれはつくられておりますので、御了承を願いたいと思います。
  9. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、この点がよくわからないので伺いたいのですが、こういう併合罪の場合、併合罪の一部について無罪判決を受けた被告人は、客観的には刑事補償請求権はあるのですか、ないのですか。あるにはあるのだろうが、この点については、たとえば刑事補償法全体を見ますと、裁判所刑事補償決定というものは、大体客観的にきまつているものを確定するというようなものだと思うのでありますが、その場合は少し違つて来はしないかと思うのですが、その辺の理論と言いますか、そういうものを少し掘り下げて伺いたいと思います。
  10. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 御意見のように、私ども請求権の有無は客観的にきまつておりまして、裁判所はただそれを発見し宣言するのであるというふうに了解しておるのであります。ただそれが具体的な場合によつて、主従の程度がありますので、このような表現を用いたのであつて、第一号の場合も同じでありますが、要するに請求権が実質上ないと認められる場合でなければ、補償しないということはできないというふうに考えておるわけです。
  11. 梨木作次郎

    梨木委員 それから次に移りますが、第四條は石川さんからも繰返し繰返し質問もあり、相当質疑が盡されているように思いますが、どうも一日最低二百円ということでは少な過ぎると思うのでありまして、少くとも私は最低五百円ぐらいにして、最高はきめない方がよろしいというように考えるのであります。最高——これは精神的並びに物質的な補償なのでありますから、その精神的なり物質的な補償限度というものは、具体的な事案について決定したらよろしいのでありまして、最低額だけをきめて、最高額はきめない方が適当だというふうに考えるのですが、これをもう一度伺いたいと思います。
  12. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 最低額をきめて、最高額の方を特にきめないということになりますと、裁判所の方として、どのくらいを標準として補償金額決定すべきかという標準を見失うことになりはしないかというふうに考えるわけであります。刑事補償国家賠償や、あるいは民法上の損害賠償ど違いまして、一方が他方に損害を與えたので、それの賠償をする、それから故意過失があつて、それを前提として損害賠償責任を負う、その場合の損害賠償というものは、たとえば原状回復程度であるというようなふうになつておるようでありますが、これをただちに故意過失のない刑事補償の場合に持つて参りますことはいかがかというふうに考えておるわけであります。刑事補償はそれとは違いまして、お互いに対立するものの間の故意過失前提とする損害賠償ではございませんで、同じく損害補填とは申しますけれども、結局は国民のうちのある一人が、裁判所あるいは検察庁のかかり合いになつて拘禁を受けた後に無罪なつた、それに対してその者だけがその損害を負担しつぱなしになるか、あるいは国民全部が出し合つてこれを補償するかどうかという問題でありまして、それにはやはり損害の額なども一定の範囲を定めまして、これを定型化して、大体の場合をカバーし得るような限度金額を定めることが、最も適当ではないかというふうに考えた次第であります。
  13. 梨木作次郎

    梨木委員 次にこれと同じ質問になるかもしれませんが、死刑の場合は五十万円以内なつておりますが、それは今の御答弁で、どうしてもいろいろな点から一応わくをきめておかなければならないというようなお話なんでありますが、この死刑の場合の五十万円のわくというのは、いかにも少な過ぎるという感じを受けるのであります。こういう点について当局の御見解を伺いたい。
  14. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 五十万円では少な過ぎるではないかという御趣旨でありますが、金額の点は、二百円ないし四百円という金額もそうでありますが、何らか数字的な計算によりまして、幾らというふうに出て来るものでは決してないのであります。われわれいろいろなデーターを集めてみましたけれども、そういうことから結論は引出せないので、結局常識による達観ということできめて参らなければならないと思うわけであります。五十万円という金額も、たとえば故意過失に基くところの損害賠償の場合などについて、一般にたとえば七十万円とかいつたような例も聞くのでありますけれども、これは故意過失前提とはいたしておりません。そういうような関係から、まず五十万円ということであればよろしいのではないか。もしあやまつた死刑の執行ということが、実は公務員の故意過失に基くものであるというような場合はきわめて恐るべき事例でありまして、よようなことは万に一つもあつてはならないわけでありますが、かような場合は、国家賠償法適用によつて十分の損害補填を受けるわけであります。刑事補償法適用の場合は、それではカバーできない場合についての規定でありまして、私どもといたしましては、大体五十万円ということで押えればなお多少のプラスもございますし、よろしいのではないかというふうに考えたわけであります。なおこれにつきましては最低限を切る方が、二百円ないし四百円ということとつり合うのではないかという御疑問も当然起ると思うのでありますが、同じく達観と申しましても、最低限を何ほどにきめるかということについて、どうもぴつたりした考えが、浮びませんのので、こういう例はきわめてまれな事例でありますが、これらの場合には裁判所もおそらく非常に真剣になつて考えになることだと思います。従いましてその辺は裁判所の御判断にまかせて、決してこの刑事補償法の本質を無視するような結果にはなるまいと考えておる次第であります。
  15. 梨木作次郎

    梨木委員 この第十四條で、補償請求の事由があるときは、補償決定をしなければならない、この補償決定をいつまでも延ばされては困るわけでありますが、これには一箇月以内だとか、あるいは二週間以内に決定しなければならぬというふうに、一つ期限の制約をつけておかなければ、これをだらだら延ばされたのでは、実際補償を受ける人にとつて、せつかく受けても非常にその受取る効果が薄いような結果になると思うのであります。特に最近の裁判所事務の非常な停滯ぶりから見まして、この点について何か期限わくをつけることを考慮する必要があると思うのでありますが、この点いかがですか。
  16. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 裁判所審理が遅れましては、同じ金額補償を受けても、本人の受ける感じはよほど違うと思うのでありまして、その点まことにごもつともであると思うのであります。ただ私どもは、この刑事補償法案立案する際には、まずできるだけ簡單手続で、早く補償金が渡るようにという考慮でこれを立案いたしまして、先ほど来も問題になりました金額定型化ということは、その一つの現われであります。それから故意過失の立証を要しませんから、これはよほど審理簡單になります。また先ほどお尋ねの除外する理由ということが、非常に明確に制限されておりますから、この点におきましても、審理は決して複雑化いたしません。そういう関係で、特に裁判所審理を制限するような規定を設けませんでも、この刑事補償運用は、決してそうだらだら遷延するようなことは、事柄の性質上からいつてもないのではないか。そういう点では元ありました刑事訴訟法に附帶する私訴といつたような働きをねらつておるわけであります。
  17. 梨木作次郎

    梨木委員 それではこの立案者としまして、一体こういう請求があつた場合には、どれくらいの期間内に決定ができるという見通し、また運用でどの程度期間内に決定が下ることを期待しておるのですか、こういう点を伺います。
  18. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 これは実際裁判所のなさることでありまして、その点は推測になることでありますけれども、大体これを立案しておりまして、この手続でやるとどのくらいかかるだろうかということになると、要するに無罪裁判があつた裁判所請求することでもありますし、十日もあれば通常はやれるのではなかろうかと考えております。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 最後にもう一点伺います。十九條に、第十六條の決定に対しては、即時抗告ができることになつております。その決定をしたのが高等裁判所の場合は、さらにその高等裁判所異議申立てをすることができるというようになつて最高裁へ即時抗告するという規定の建前にはなつておらないのであります。こうなると高等裁判所の場合には、さらに上級の裁判所判断を受ける機会が奪われておるように私は思うのですが、この点はやはり最高裁判所即時抗告ができるようにすることが——同じ高等裁判所裁判に対して、その裁判所異議申立てをするというようなことでは、やはり第一項において即時抗告規定を設けた趣旨からいつても、非常に不合理であると思いますし、特に高等裁判所裁判に対して不服がある場合には、最高裁判所判断することこそが、その人に対して最も納得と親切な方法を講じさせるゆえんだと思うのですが、この点を伺います。
  20. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 この点は要するに刑訴の一般原則に従つたものでございます。裁判所法で特に規定のあるもの以外には、最高裁判所特別抗告ができないことになつておりますので、この間の原則従つて、このような定めにしたわけであります。
  21. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 私はただいま上程されておりまする刑事補償法について希望を申し上げたいと思います。  私は本案に賛成するものではありまするが、この不拘束であれば全然補償をしなくてもいいというところに、私は多少疑問を持つておりまするので、御意見を伺いたいと思います。それは実は岐阜県に起りました知事並びに土木部長等に対しまする事件でありまするが、この事件によつて被告四名が受けましたところの有形無形損害は非常に大きいのであります。幸いにしてこれは第一審において無罪判決を得まして被告は非常に喜んでおりまするし、裁判所検事局に対して何らの惡感情を抱いていないのではありまするが、私として申し上げまするならば、不拘束であれば全然補償しないでもいいということのどこかに矛盾がある例を申し上げたいと思うのであります。すなわち不拘束であれば、いつまで裁判がかかつても、またいかに金がかかつてもかまわない。こういうことでありますと、検事がややもすれば権力を濫用して、いわゆる検事フアシヨということが起る可能性がありはしないか、これをチエツクする意味におきまして、私はある程度事情を勘案いたしまして、ことに被告その他が受けましたところの物質上の損害並びに得べかりしところのいろいろの精神的並びに物質的の利益を考えまして、不拘束の場合であれば、すべてさしつかえないのだ、補償は全然しないのだということについては幾分不安があるのであります。ことにこの事件につきましては、ここに雑誌を持つておるのでありまするが、これは新聞記者諸君の間ではよくわかつておることであると思いますが、被告知事起訴いたしましたところの検事との間におきましては、その問題の発生する前から個人的な感情、私怨的なものがあるとか新聞がうたつており、雑誌が書いておるのみならず、何がゆえにその検事は、起訴するとたちまちにして辞職をしたかというようなことも、私はここに疑問があるのであります。かような点から考えまして、私はドイツにあるとか聞いておるのでありますが——私は列席の委員違つて、弁護士でも法律家でもないので、常識論でありまするから、間違つておるかもわかりませんが、ドイツには裁判所において無罪判決を受けるならば、同時にある程度補償額をきめて、裁判所が拂うことを指定するとか聞いておるのです。私はこれらの見地で、資力があればどこまでも裁判を闘うことができ、あるいは無罪になることもできる。しかしながらもし資力がなかつたならば、ただいま申しました事件でも、あるいは勝ち得なかつたかもしれない、無罪にならないで有罪なつたかもしれない。かようなことを考えますると、私はいわゆる検事が無責任とは申しませんが、これは法理論の違いであるかもわかりませんが、これらを軽卒に起訴しないために、場合によつては不拘束のものをも補償していただきたいことを希望するものであります。
  22. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 武藤さんの今おつしやいました岐阜事件は、私もよく存じております。すでに無罪に確定したはずでございますが、たしかにお気の毒に存ずるわけであります。今御意見のありました抑留拘禁された場合に限らず、起訴されて無罪なつたと事いうような場合には、それ相当に名誉の上からも、それから精神上の苦痛、心労というようなことからもあるいは経済的にも打撃を受けるのである、が、そういう場合についてはやはり補償をした方がよいのではないか、またそうすることが、検察官の行き過ぎを是正する道ではないかという御趣旨でありまする。まことにごもつともなのでありますが、ただ今日におきましては、起訴されれば、何か罪人扱いにするというような傾向が相当にまだ実際に残つておりますことが、一層そういうことを感じさせるのであろうかと思うのであります。もう一つ検察官起訴いたしまして、それが百パーセント有罪になるということは、これは実際問題としてとうてい望み得ないことではないかというふうに考えるのであります。もし検察官がそのようなことを非常に考えて参りますと、結局は起訴することが心配になつて、疑問のあるところはすべて不起訴にしてしまう。そうして公開の裁判所で、たとえば重要なる法律問題なんかをきめることを躊躇するというようなことになりまして、また逆な弊害がそこに伴つて起きるように考えられるのであります。今日新たにできております検察審査の制度などが、やはりそういう弊害を是正するために、不起訴事件について審査請求を認めておるものであると了解しておるのであります。もう一つ抑留拘禁以外の場合に補償を押し広めますと、その程度をいかなる程度までやるかということも問題でございますが、いわゆる財政上も相当支出になると考えるのであります。もちろん財政上の支出の困難ということを理由に、人権の保障をないがしろにしてよろしいというわけではございませんが、ただこの刑事補償というのは、先ほども申し上げたと思うのでありますが、故意過失損害をだれかに與えたものに対して、こちらからそちらに損害補償するというものではなくて、結局は国民自身にもどつて来ることなんでありまして、そのような運の惡い目にあつた人に対して、その人限りでしんぼうしていただくか、あるいはその都度全部がお金を出し合つて、これを補償するか、それをどこで区別するかという問題でありまして、ただ金を出すことにすればそれだけでよろしいというものではなく、そこにほど合いがあるものだろうと考えるわけであります。従つてただいまの点は、検察運営上十分これは注意して参りますと同時に、さしあたつて抑留拘禁以外の無罪の場合にまで刑事補償を及ぼすということは、なお研究を要する問題ではないかと考えておる次第であります。
  23. 石川金次郎

    石川委員 どうしても立案者の御意思を明らかにしておきたい点がありますので、またお伺いします。  それはこの第四條の第二項と第三項の問題であります。まず補償請求ができますものが、本法において補償請求をした。そうして補償を受けた後に、故意、過失を前提として国家賠償法によるまた請求ができる。これが御趣旨だと存ずるのだが、この点は御異議がないでしようか。
  24. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 まつたくその通りに考えております。
  25. 石川金次郎

    石川委員 それではあとで国家を相手に国家賠償法によつて訴えを提起いたしました場合には、本法第四條第二項によつて補償金を支拂いますときに、故意過失の心事がなかつた故意過失というものは全然考えなかつたということにおいて、あとの国家賠償法による補償をやつてくださるのだと思いますが、そう考えてさしつかえありませんか。
  26. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの点は、私は結論においてそう違わないと思いますけれども国家賠償請求を受けた場合において、裁判所の方では、故意過失の点を十分考慮して、刑事補償の方に無関係に、一体幾ら賠償すべきものであるかということをまずお考えになると思うのであります。そうしてたとえば一定の金額が出て参りますと、その中で刑事補償の方で幾ら受けているか、たとえば一日平均して二百円三〇の補償国家賠償をすべき事案である。ところが刑事補償の方ではすでに四百円かりに損害補填されていたという場合には、差額の二百円を国家賠償手続の上で認める。その場合に刑事補償で認めた四百円の中に、公務員の故意過失考慮されているかいなかは問題にならないのではないかと考えるのであります。その故意過失部分に対して幾らかということの計算ではなくして、今申し上げたような計算汁方法をやるだろうと考えるのでございます。
  27. 石川金次郎

    石川委員 そういうお考えであれば、あとで出て参ります国家賠償法に基く請求が、全然第四條第二項のこれには拘束されるものではない、こうお聞きしてよろしゆうございますか。
  28. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 同じ侵害に対して、二重に損害を受けないという点において交渉があるだけでありまして、それ以外にこの国家賠償の場合には、何らこれの拘束は受けないと考えるのであります。同じ損害に対して二重の損害を受けたからと言つて、差引かれることは差引かれると思います。
  29. 石川金次郎

    石川委員 この故意過失の文字に結局入つたのでありますから、どうしても吟味しなければならなくなつたのですが、ここに故意あるいは過失と書いてみたけれども、これは書かないでも同じことだというふうに解されませんか。そうしないと首尾一貫しないようです。これは請求権者の利害に非常に関係しますから、御見解を承つておきたい。
  30. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 結局同じだろうと私は存じます。
  31. 石川金次郎

    石川委員 もう一つ、第三項の前段をお読み願います。「死刑の執行による補償においては、五十万円以内で裁判所相当と認める額の補償金を交付する。」今度は但書に参りまして「本人の死亡によつて現に生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額に五十万円を加算した額の範囲内とする。」とあります。そこで財産が幾らでも死んだことによつて損失があつたことを証明しますれば、五十万円とその金額とは加算になるのであります。ところが財産上の損失があつたという証明がされなければ、五十方円以内となるのあります。ゆえに前段の五十万円以内の意味は、結局は五十万円というものを意味するものだというように解されますので、死刑の場合には五十万円を補償すべきものとの御趣旨によつて立案であろうと思います。そうしないと、前段と後段とは少しつり合いがとれない点があると思います。
  32. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 死刑の場合には、五十万円以内ということになつておりますと、おそらく五十万円あるいはそれに近い金額が多分決定されると思います。実際問題として、裁判所の問題になつてみなければ申し上げかねるわけでありますけれども、五十万円になつてしまうのではないかと考えます。
  33. 石川金次郎

    石川委員 その点明らかになりましたから、私はこれで打切ります。
  34. 大西正男

    ○大西(正)委員 私出張でこの前出席いたしませんでしたので、あるいは他の方から御質問があつたかもわかりませんが、ありましたならば簡單にお答え願いたいと思います。それは第三條の一の字句の解釈であります。第三條の一項の「本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、」云々とありますが、この「捜査又は審判を誤まらせる目的で、」といいますのは、どういう意味であるか、すなわち捜査または審判を誤まらせる認識あればいいのか、それとも願望が必要であるのかどうか、この点お答え願いたい。
  35. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 これは單に認識程度では不充分であると考えます。特に故意がなければならない。従つて先ほども申し上げたのですが、これに該当する場合は非常に少いということになる。親分の罪を子分が背負つたとか、あるいは刑務所志願で、ありもしない罪を着て行くとかいう、特別な場合というふうにこれを考えるわけであります。
  36. 大西正男

    ○大西(正)委員 言葉の争いになりますが、故意があればいいという点になりますと、故意の解釈になりますが、故意はつまり認識があればというのが、今までの学説、判例だろうと思います。その点どういうふうになりますか。
  37. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 失礼いたしました。故意というよりは、むしろ目的と御了解願いたいと思います。單に「虚偽自白をし、」というふうに、たとえば認識とか何とかいう程度でありますれば、「虚偽自白をし、」ということだけで、もう同じじやないかというふうになるのであります。特にそれに対して「捜査または審判を誤まらせる目的で、」の目的という文字を、ここに制限的に加えたわけであります。
  38. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか——質疑がなければ、質疑はこれにて終了いたしました。  ただいま委員長の手元に角田幸吉君提出の、各派共同提案にかかる修正案が提出せられております。提出者よりその趣旨説明を願います。角田幸吉君。
  39. 角田幸吉

    ○角田委員 刑事補償法案の一部を次のように修正いたします。  1 第一條より第二十四條まで、各條に順次次のような見出しを加える。第一條(補償の要件)第二條(相続人による補償請求)第三條(相続をしないことができる場合第四條(補償の内容)第五條(損害賠償との関係)第六条(管轄裁判所)第七条(補償請求期間)第八條(相続人の疎明)第九條(代理人による補償請求)第十條(同順位相続人の補償請求)第十一條(同順位相続人に対する通知)第十二条(同順位相続人の補償請求の取消)第十三條(補償請求取消効果)第十四條(補償請求に対する裁判)第十五條(補償請求却下の決定)第十六條(補償又は請求棄却の決定)第十七條(同順位相続人に対する決定の効果)第十八條(補償請求手続の中断及び受継)第十九條即時抗告又は異議の申立)第二十條(補償拂渡の請求)第二十一條(補償拂渡の効果)第二十二條(請求権の譲渡及び差押の禁止)第二十三條(準用規定)第こ十四條(補償決定の公示)  2 第四條第一項中「次條」を「次條第二項」に、同條第二項中「うべきであつた利益」を「得るはずであつた利益」に改め、同條第三項中「現に」を削り、同條第六項を次のように改める。 6 沒收の執行による補償においては、沒收物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、すでに処分されているときはその物の時価に等しい額の補償金を交付し、また、徴收した追徴金についてはその額にこれに対する沒收の日の翌日から補償決定の日までの期間に応じ年五分の割合による金利を加算した和に等しい補償金を交付する。  3 第五條を同條第二項とし同條第一項及び第三項として次の二項を加える。    この法律は、補償を受けるべき者が国家賠償法(昭和二十三年法律第百二十五号)その他の法律定めるところにより損害賠償請求することを妨げない。3 他の法律によつて損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によつて補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならない。  4 第十五條中「請求を却下」を「請求を却下する決定を」に改める。  5 第十六條中「請求を棄却」を「請求を棄却する決定を」に改める。  6 第二十二條中「譲り渡すことができない。」を「これを護り渡し、または、差し押えることができない。」に改める。  7 第二十四條第四項中「第五條」を「第五事條第二項」に改める。  8 附則第一項中「第五條」を「第五條第二項」に、第四項中「三箇月」を「一年」に、第六項中「第五條」を「第五條第二項」に改める。  以上の通り修正をするものでありますが、第一に申し上げたいことは、條文に見出しをつけることが、最近の法律のほとんどすべてがさようになつておりまするので、これは一般民衆にわかりいいためにさよに改める方が適当と思うのであります。  第二に刑事補償請求権は譲渡を禁止しただけでなく、差押えについてもこれを禁止することにしたのであります。これはこの権利が売買譲渡の適当でないとするばかりでなくて、恩給権と同じように、債権者に差押えされないようにする方がほんとうの保護になる。こういうところから差押えをも禁止することにしたのであります。  第三には、刑事補償請求権は、新憲法施行後この法律施行前に無罪なつたものについては、これを本法施行後三箇月ではなく、一年といたしまして、寃罪に泣く人々をこの際補償することがまことに適当であろうと考えております。  第四には、刑事補償国家賠償との関係につきまして、二つの法律関係より損害賠償請求した場合の調節規定を第三項に入れたのであります。  その他の條文につきましては、用語の訂正、條文の繰上げ等でありますが、何とぞ皆さんの御賛成をお願いいたしたい。以上簡單に修正の理由を御説明申し上げました。
  40. 花村四郎

    花村委員長 これより原案並びに修正案につき討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。佐瀬昌三君。
  41. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私は民主自由党を代表いたしまして、本案に対する討論をいたします。  さきに刑事補償法が制定されてから、相当その成績見るべきものがあつたのでありますが、ここに再び憲法四十條の精神を徹底せしめるために、刑事補償法が新たな内容をもつて提案されて来たのは、まことに当然のことと存ずるのであります。内容的に申し上げるならば、その提案の趣旨に基いて、国家の刑事被告人に対する補償の範囲を拡大し、また補償の全額を引上げて、個人の基本的人権の保障に全きを期せんとするものでありまして、その精神はまことに近代の法律思想に合致し、何人も異論のないところであります。国家賠償法が他方にありますけれども、その法律は本法案によつて何らその機能を阻害するものでなくして、両々相まつてますますその立法の目的を達することは、私ども疑いをいれないのでありますが、特に刑事補償法が簡便な手続で、かつ迅速に個人に対する補償を得せしめるという点にその特色があるのでありまして、その特色、性格は十分発揮されなければならないのであります。飜つてこの改正の内容から見ますると、その補償の範囲の拡大においては、原案は必ずしも私どもの満足するところではなかつたのでありますけれども、現在の刑事訴訟法の円滑な遂行、あるいは警察権、検察権、裁判権の適正な行使をもはばむようになるというような結果は、われわれ公的な立場から嚴に戒めなければならないのであります。またそれと同時に、無制限に賠償し、補償を認めるということは、現在の日本の財政の困難な時代におきましては、これまた遺憾ながら許されないのであります。さような点を勘案いたしますと、現段階においては、この補償の範囲をもつて一応満足しなければならぬのでありますが、しかし将来刑事訴訟法運用の実績いかんによりましては、私どもは国会として、再びその改正を考えなければならないと思うのであります。補償金額その他の点については、大体役府の提案理由に明らかにされたように、またただいま修正案が提案され、その理由の説明がありましたように、それらを総合いたすならば、これは当然のことであろうと私どもは認めざるを得ないのであります。ただその実際の運用はすべて裁判所にかかつております。その金額の範囲の決定、あるいはしばしばここで問題になりましたように、併合罪その他の関係においていかに処理するか、また国家賠償法との調整を運用上いかにすべきかというような点においては、裁判所の適正な具体的な妥当性に合つた解釈と裁決にまたなければならぬ点が多々存るのであります。私どもはそういう点は、将来裁判官の良識ある裁量を期待いたしまして、さきに申し上げましたように、一応この際はこの程度の原案及び修正案をもつて満足すべきものであるというような見地に立ちまして、簡單でありますけれども、本法案に賛成の意を表する次第であります。
  42. 花村四郎

  43. 石川金次郎

    石川委員 社会党を代表いたしまして、簡單に申し上げます。ます各党共同提案になります修正案に対しましては、賛成いたします。修正せられなかつたその他の原案に対して、これまた賛成いたします。この場合申し上げたいと存じますことは、第一條の補償をなすことができる場合、第二條の補償をなすことができる場合、第一條の補償の要件、第四條の補償の内容、さらに進んで請求手続がなお簡単にできますように修正したいものであると思つてつたのでありますが、しかしこれら事は近い将来の改正に期しまして、目下の事情は、本法の成立をすみやかにすることが国民の利益であると存じましたので、修正せられざる部分は原案に賛成するものであります。なお本案を通過させますにあたつて裁判所の良識ある裁量が非常に重大なことでありますがゆえに、これを裁判所に強く期待しておきたいと存じまして、賛成いたします。
  44. 花村四郎

  45. 梨木作次郎

    梨木委員 日本共産党を代表いたしまして、ただいま上程になつております刑事補償法の修正案並びに修正案を除く原案に賛成いたします。私はこの法案の審議の過程におきまして、刑事補償の範囲をもつと拡大しなければならぬという点と、それから補償金額が少な過ぎるということ、手続がいささかめんどうであるということ、この三点について不満を持つてつたのでありまして、この点はわれわれの希望がいれられないままになつておるのでありますが、さらばといつて現行の刑事補償法から言えば、相当進歩した内容を持つておりますので、近い将来われわれの希望するように本法案が改正せられることを期待して、本法案に賛成するものであります。  特に希望しておきたい点は、現在問題になつております裁判におきましての、特に公訴棄却の判決や、あるいは決定、こういう場合におきまして、長い間勾留されておつても、これが本法案の対象とたつて救済を受けることがでないのでありまして、新刑事補償法の施行に伴いまして、今後これら公訴棄却の判決決定というものがどんどん出て来る可能性が非常に強いのであります。この点は委員全部の希望で修正が期待されておつたのでありますが、遺憾ながらこれが通らなかつた関係上、現在の法案満足せざるを得なかつたわけでありまして、これらの点を近い将来改正されることを期待いたしまして、本法案に賛成するものであります。
  46. 花村四郎

    花村委員長 大西正男君。
  47. 大西正男

    ○大西(正)委員 私は民主党を代表いたしまして、本案の修正案に賛成し、またそれを除く原案に賛成の意を表するものであります。  新憲法が実施されましたそのときから、すでに刑事補償法の全面的なる改正ということは喫緊の要事であつた考えるのでありますが、今日ここに討論の段階に至りましたことを幸いとするものであります。しかしながら本案に対しましては、もちろん私ども国民の立場から考えまして、決してこれが満足すべき法案であるとは考えておりません。その例は一にして盡きないと思うのでありますが、補償の要件にいたしましても、またその内容にいたしましても、その他の諸点について、われわれとしては大いなる希望と意見があるのであります。本案は、いわば憲法が表わしておりますところの表面的な刑事訴訟法の精神を、最小限度に充したものに過ぎないと考えるのであります。この点につきましては、他の討論者にも申されましたように、将来の改正ということに希望を持ちたいと存じます。また本法律案が通過いたしました際には、その後の裁判所における良識ある運営といつた面につきまして、他の討論者も申されたような希望を私も強く持つものであります。  以上申し上げまして、現在の段階として、財政上その他諸般の点を考慮いたしました結果、この程度において本案に対しまして賛成をいたすものであります。
  48. 花村四郎

    花村委員長 討論はこれにて終局いたしました。これより採決に入ります。念のため採決の順序を申し上げます。採決はまず修正条について行い、次に修正部分を除いた原案について行いますから、さよう御了承願います。  修正案に賛成の方の御起立を求めます。     〔総員起立〕
  49. 花村四郎

    花村委員長 起立総員。よつて修正案は可決いたしました。  次に修正部分を除いた原案について賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立〕
  50. 花村四郎

    花村委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて修正案通り修正議決いたしました。  衆議院規則第八十六條によります本案に関する委員会報告書の作成に関しては、委員長に御一任をお願い申し上げます。     —————————————
  51. 花村四郎

    花村委員長 この際武生裁判所及び検察庁怪火事件に関する委員派遣の報告を求めます。田嶋好文君。
  52. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 先般国会の承認を得まして、われわれ国会議員は武生の裁判所並びに検察庁に起りました放火事件の調査に参つたのであります。その調査につきまして、ただいまから報告をさせていただきます。  福井地方裁判所並びに同検察庁武生支部庁舍の火災及び公判記録等重要書類の燒失は、武田太平及び伊原忠成こと伊聖熙等十数名の暴力破壊を好む分子、及びもと朝鮮連盟構成員が、審理処罰を免がれんがためになしたと認められますところの大胆不敵な集団的、計画的放火であつたのであります。これはわが国司法史上まつたく前代未聞の事件であります。  今その遠因をたどつてみますと、元来福井県人は、北陸の他県人に比べまして気が荒いと言われております。そうして名古屋高等裁判所管内におきましても、従来難事件の一番多い県とされているのでありまして、終戰後においては特にこうしたことがひどくなつたようであります。博徒、的屋等の暴力団の数もたいへん多いのでありまして、十七個団体を数えることができます。そうして人員は五百名になんなんといたしておるのでありまして、そのうちの半数以上は子分三十名以上を持つた有力な暴力団体ということになつております。なかんずく津一家は子分三十二名、坂本組は子分百七十名、橘一家、子分四十四名等は、県下におきましてもその名をうたわれました朝鮮連盟であつたのでありますが、武生市におきましては、木下繁という的屋の親分がありまして、これは子分を四十人以上も持つておるということであります。現在市会議員をいたしております。その輩下におる和田善次こと和田吉春というのは博徒の親分でありまして、子分を三十名くらい持つておるのであります。木下は相撲勧進元である府中山五代目というのを自分は退いて、この和田善次こと和田吉春に六代目を襲明さしておるのであります。  また武生市会においては——まことに遺憾なことでありますが、武生市会の定員三十名の中で、半数以上が前科者である。また市内の不良暴力分子は、これらの市会議員と緊密な接触を保つており、市制について常に関與いたした状態があるのでありまして、まことに武生市は暴力の町とも言つていい町となつているのであります。これに対して警察の整備状況はどうかと申しますと、国警の地区署が八つあります。そうして自治警が十七あつて、自治警、国警あわせて二十五になるのでありますが、その定員がわずかに八百三十二名という少数の状態であります。また警察のこの状態に対して、朝鮮人の県内居住者は何人かと申しますと、福井県内に男二千七百三十四名、女四千三百六十九名おるのでありまして、これらの朝鮮人はほとんどやみ買いやみ商売ということで生活を営んでおるようであります。福井においては、朝鮮人は男が六百七十八名、女が五百二十二名、合計千二百名、居住いたしております。今回問題の起りました武生市には、三万の都市に二百八名の朝鮮人が居住いたしておりまして、この数は男が百三十六名、女が七十二名ということになつておるのであります。  こういう状態からいたしまして、これらの分子がどういう活動をしておつたかということを申し上げみますと、まず市政関係は、現在民主自由党の系統と称するところの人が市長に就任をいたしておるのでありまして、この市長の派に対する反市長派というのは、現在民主党の立場に属する方々によつて、構成をせられておるようであります。なおそこには、共産党の支部、社会党の支部等もあるようでありますが、市政は主として市長派、反市長派によつて運営をされているようであります。市会の分野は、先ほども申し上げたように、三十名の構成員であるのでありますが、この中で半数がほとんど前科者であるというような形であり、反市長派は現在民主倶楽部というものを構成いたしておるのであります。この反市長派を牛耳つておりますところの高木政二という者は、民主党系でありますが、前科数犯を持ち、なお市会議員として選任せられる直前には、前科の裁判をのがれるために遂に逃走いたしまして、その犯罪を時効によつて消滅させ、帰つて来て市会に当選したというような閲歴を持つた親分であります。なお、市長派といたしましては、先ほど申し上げましたように、賭博の的屋の親分でありますところの、子分を四十名も持つ木下繁というのが市長派の大幹部として牛耳つておるのでありまして、その下には、木下繁の府中山六代目を襲名いたしました和田善次というのが、院外団的存在といたしまして、やはり市政に関與しておるようであります。こういうような状態が市庁内に見られるのであります。  次に市の警察、つまり市警でありますが、これは前市長時代と現市長時代を区分して考えなければならぬと思います。前市長である野邊という人は、武生市の放火がありました前の日に辞表を提出いたしました。二十日に放火があつて、十九日に辞表を提出いたしまして、暴力団一行とともに飲食までしておる市長でありますが、この前市長の野邊という人は、常に暴力団であるところの和田善次につながりを持つております。野邊市長に和田との関係を聞きますと、親から和田のめんどうを頼まれておるのだから、和田をかわいがつておるのだと陳述しておりますが、この野邊前市長と和田の親分とは密接な関係で、まだその関係が切れないというような、まことにいまわしい関係にあるのであります。現在放火犯人としてあげられておりまして、元朝鮮連盟におりまして、最もきつい主張をしておつたと申します伊原忠成事伊聖熙は、野邊市長とは数回にわたつて飲食を共にいたしまして、相当関係も濃いものとわれわれは認めて参つたのであります。こういうような関係から、市におきましては暴力団を検挙する意思が全然なかつた。市の公安委員会において、暴力団検挙を数次にわたつて市の警察に勧告をいたしておるのでありますが、公安委員会の言を市長は聞こうともせず、依然として、この暴力団を武生市にのさばらすことに協力しておつたような感じが見受けられるのであります。  次に遺憾なことでありますが、検察庁の武生支部においても、市警同様とは申しませんが、まことに遺憾な点が多々あつたのであります。まず第一としましては、今年の五月ごろから十月に至る間において、公金が五十万円なくなつておるのであります。そのうちの三十八万の金は、検察庁の庶務会計をやつておりました久野登志雄というのが、横領して、これは現在刑が確定いたしておるのでありますが、内部の者が横領しておるにかかわらず、六月にわたりまして、しかも回数においては数十回にわたつてその金を横領したと本人は言つておりますが、その数十回にわたる横領を気づかず、しかも外部から入つた林好視というのが、十三万三千円の公金を窃取いたしたのであります。この窃取につきましては、探究すれば相当深いものがあるのじやないかと思つておりますが、この林好視が入つて来て金をとつた。とられて探してみて、とられた金よりもなおかつたくさんの金が足りないということがわかつて、びつくりして捜査を開始したところ、自分の内部の久野登志雄が横領しておるという事実がわかつたのであります。まことに間の抜けたと申しますか、実に緊張度の足らない遺憾な点がここに見出されるのであります。なおこの久野登志雄の公金横領が遺憾なばかりでなく、第一に今年の五月に久野登志雄が二万五千円の検察庁の公金を横領いたしておるのであります。この横領金に対して、金がないというので相当あわてたようでありましたが、金がなくなつたことを上司に報告して措置を仰ぐというような、検察庁の官吏らしい態度をとることなく、公金横領という事実に対して、臭いものにふたをしようという態度を検察庁がとつたのであります。その臭いものにふたをしようという態度をとつた結果はどうなつたかと申しますと、遂に現在の庶務課長の服部というのが、市長の派である一方の暴力団を牛耳ると称せられる木下の上にある大澤清に借金を申し込みまして、二万五千円の金を大澤清から服部が借りております。そうして二万五千円の穴埋めをいたしております。大澤清はそのつながりを持つところの前市長の加藤勝安に頼みまして、この金を出して検察庁の穴埋めをいたしました。それからさきの検察庁と市長派とのつながりは、どういうふうになつてつたかということは、皆さんの御想像におまかせいたしたいと思います。なおこの反市長派の高木政二というのはひんぴんと検察庁に出入りをして、副検事の中田氏が病気入院の場合には、その入院のあつせんまでしたと言われております。こういうように、検察庁においても遺憾ながら暴力団とのつながりを肯定しなければならないような状態があるのであります。まことに暴力団の武生市を中心として、国家機関への浸透は恐ろしいものがあつたことをわれわれは想像しなければなりません。  次に裁判所関係でありますが、裁判所に対しては、幸いにしてそこに駐在する伊藤という判事が温厚篤実な方であり、そうした面に対してまことにりつぱな態度をとつておるかのごとくわれわれは想像せられるのであります。この人の人柄は、裁判所関係からは、そうした暴力団とのつながりを見受けることができませんでしたが、暴力団は裁判所にもその足を延ばしまして、伊聖煕と和田は、伊藤判事を脅迫いたした事実が証言せられておるのであります。自分の言うことを聞かなければ、このままではおかぬからということを伊藤判事に申しておる事実があります。  以上が武生市を中心として見た状態でありますが、こうした状態にあつたものが、どうして今回のような放火にまで発展したかと申しますと、これは先ほども申し上げましたが、林好視というのが元地方事務所の職員でございまして、なかなか頭がいいようでありますが、窃盗的習癖がありまして、数次にわたつて窃盗いたしておるようであります。この林好視が窃盗によつて裁判にかけられると、彼は何とかして自分の罪をのがれたいとあせり、常に裁判所においても否認を続けておつたようでありますが、だれ言うともなく、裁判所の記録をなくしてしまえば裁判ができなくなつて、結局無罪になるということを耳にしまして、自己の犯罪に対する裁判記録の窃取を企てたのであります。遂に七月二十日には、記録六冊を裁判所の内部から盗み出して——その裁判所の内部の当時の設備はあとで申しますが、まことに不完全であつた関係上、林好視がそのすきに乗じまして、七月二十日記録六册を盗んでおります。八月十一日にはまた記録を盗むべく入つたのでありますが、これは未遂に終り、遂に八月十三日には林好視は裁判所でなくして、検察庁まで侵入して、検察庁の公金十三万三千円を窃取いたしておるのであります。九月の四日には、同じく公金の窃取か記録の窃取か知りませんが、検察庁に侵入いたしておるのであります。これは未遂に終つております。これが本件の放火犯の被疑者である林のやり方なんでありますが、この林につながるものに、やはり被疑者の武田太平というのがあります。これは三枚新聞の社長でありまして、今恐喝罪で裁判中であります。この恐喝罪で裁判を受けている途中、本人非常に検察庁裁判所に反感を抱いておつた。そうしたきらいが見られるのでありまして、この武田は林といとこという関係から、放火に対しては武田と林が連絡をとつたものと認められます。なお先ほど申し上げました伊原忠成こと伊聖煕という、元朝鮮連盟員の有力な方でありますが、これはやはり公務執行妨害罪で現在裁判中でありまして、同じく検察庁裁判所相当な反感を抱いておつたかに見えます。武田太平と伊原とは、武田が恐喝罪で市警にあげられ、伊原が公務執行妨害罪であげられた当時、市警間において知合いの関係ができ、その後密接な交際が生まれたようでありますが、この武田太平を通じまして、伊原と林との連絡がついたようであります。また和田善次、先ほど申し上げました暴力団の親方でありますが、これと伊原とのつながりは、市会の分野において、政治的な折衝をする場合に、いろいろな問題を通じまして知合いになつたきらいがあるのでありますが、この和田善次の子分が裁判にかけられるに至りまして、和田も子分の関係から裁判所検察庁相当な反感を持つて、和田、伊原、そうして武田、林の関連性がここに生れたように思います。以上の人間は裁判所検察庁に反感を持つ関係から、時期があれば放火をしようと計画をいたし、いかに放火し、いかにしてその結末をつけるかを協議したように思われますが、協議の結果、裁判所検察庁、市警察、こうした国家機関の無能であることを彼らは認めたようでありまして、この無能な国家機関がある以上、自分たちが放火しても、決して検挙せられることはないだろうという結論を生み、遂に今回の放火事件に到達したのではないかということが、各証人の証言によつて、私どもは裏づけをされました。こうした関係で放火が十月の二十日に決行されましたが、内容につきましては、こういうような内容を持つております。  昭和二十四年の九月二十日午前五時ごろ、あらかじめ山口龍男、武田勉、これはいずれも和田の子分でありますが、この二人及び佐藤勇を擁して、同市吾妻町武生市消防署の自動車車庫に在庫中の消防自動車二台の配線をとりはずしまして、そうして消防自動車の消火活動を妨害した上で、武田太平、山住鎭亮、澤田仁美、渡邊廣、坂井正作その他におきまして、右裁判所附近で見張りをいたしました。こうして伊聖熙と林好視、李喜雨、車東宋等におきまして、同裁判所事務所室内で所定の軽油を床の上に撒布いたしまして、持ち合せのライターで点火いたし、放火いたして同裁判所並びに福井検察庁武生支部、法務府武生支局の共同庁舍でありますところの、同時に裁判官伊藤泰藏の住居に使用せる建物を全燒してしまつたのであります。林好視はこの場合に誘導役、それから軽油をまく役等をいたしておるようでありますが、この軽油につきましても、普通の軽油ではなく、非常に点火が早く、一旦つけた以上必ず燃え上るという性質を持つた油、特殊の知能と、特殊の方面から入手したのではないかと認められるところの油が用いられているとも承つておるのであります。こういうような状態におきまして本件の事件は発生し、結末を告げたわけであります。  私たち派遣委員といたしましては、この事情、状態を総合いたしました結果、こうした結論を生み出すに至りましたので、委員会の御承認を得るに至れば、まことにけつこうだと思います。  第一に国政の面でありますが、国政の面におきましては、武生市を中心といたしまして、あらゆる機関の内部に暴力的手段を好む分子が侵入いたしまして、国政は極度に腐敗紊乱していて、その運用がまつたく阻害せられておつたものと認められます。  第二に治安の問題でありますが、国家機関が左のような状態でありますから、機能が麻痺いたしまして、その能力を発揮することができず、治安維持上も憂慮すべきものがあつたのでありますが、幸いこの点は放火後の福井地方検察庁、国警等の努力と、武生市警の人事の交替等により、漸次回復するものと認められるのであります。  第三、国家機関に欠陷がなかつたかどうかという点でありますが、遺憾ながら国家機関にも人員の配置、有能人の欠乏、設備の不十分等、幾多の欠陷を認めざるを得ないのでありまして、この点におきましては、政府といたしましても十分な施策が必要であると認めるのであります。  なお本件は、暴力的行為を好む分子と、元朝鮮連盟員の共同行為より発生した事件であるということは確認せられるのでありますが、その背後関係につきましては、單純なものとは認められないのであります。その背後勢力関係は、裏日本に最近続いて起りました裁判所検察庁等の放火、同未遂事件等と照し合せまして、徹底的にこれを調査し、国民の前にこれが真相を明らかにする必要があるものと認めるものであります。以上報告いたします。
  53. 花村四郎

    花村委員長 ただいま委員派遣に関する報告に基いて、委員派遣の報告書を議長に提出いたしたいと存じます。報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  55. 花村四郎

    花村委員長 次に議員庄司一郎君より、委員外発言の申出があります。きわめて簡單とのことでありますから、この際これを許したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、発言を許します。庄司一郎君。
  57. 庄司一郎

    ○庄司一郎君 ただいま委員外の不肖私に、特別の御理解をもつて発言の許可をいただきまして、まことにありがとうございます。お言葉の通り、きわめて簡單に、法務委員会を通し、法務委員の皆様並びに法務総裁等に私見を述べさしていただきたいと思います。  案件は、多分一昨々日本委員会の議題と相なりましたと推定されますが、仙台市関係より請願に相なつております、仙台市大年寺山に法務府所管の少年院、名前は東北少年院となつておりますが、東北少年院を設置されることにつきまして、仙台市会はその所属政党政派のいかんを問わず、満場一致をもつて当該大年寺山に東北少年院の設置方について反対の意思を表示しているのであります。これは決してある特定の政党とか一党一派とかいう問題でありませんで、仙台市会が満場一致の形において決議され、すでに本院の議長あてに請願書が出ております。この請願の趣旨はすでにあるいはお聞きとりと思いますが、念のために簡單に申し上げるならば、仙台市の大年寺山というところは、仙台市に南面する廣瀬川という川の川岸にございます。これは藩主伊達正宗の二代目以下の歴代の墓地であります。そういう墓地であつたという古跡だけではなく、これは宮城県においては水害予防林、いわゆる保安林として編入されている山でございます。仙台市を訪問される方々は、景勝の地として常につえを引くところであります。治山の方から言いましても、治水の方から見ましても、観光面から、言いましても、仙台市にはこのままいわゆる文化財として永遠に保存したい場所でございます。さような観点から、東北少年院を仙台市内に設置することは、もとより仙台市長あるいは仙台市議会は反対のはの字もございません。心の底より御協力申し上げておるのであります。従来も仙台の高検あるいは裁判所、地検あるいはいろいろな調停関係、そういう方面、今回は特例として警察署の設置、そういう面に仙台市は従来長く、また現在も将来も心から法務府のいろいろな公官衙の設置等には御協力を申し上げて参りました。またこの後もこの方針であることは言うまでもございません。しかるにこの大年寺山だけはぜひ御考慮を願いたい。これはごめんをこうむりたいとうのがひとり大年寺山山麓の数千の住民だけではないのであります。仙台市約三十七万の市民の代表である市会——市会の中には社会党もおれば共産党もおるのであります。その全部があげてこれに反対しておるのであります。というのは大年寺山よりも、もつと適地がある。仙台市の西北に国見山峠というのがございます。仙台市より約二里あるいは二里半であります。大沢村というなだらかな丘陵地にいい場所が十何万坪ありまして、将来少年院の子供たちが農耕、開墾をやる場合にもいい場所がある。こういう場所を仙台市が御推薦を申し上げておるのでありまして、ただいままでも鷺ガ沢とか、その他数箇所をごあつせん申し上げておるのですが、法務府の方の大竹とかいう技官の方は、七箇條の條件を仙台市に持ち込まれまして、大年寺山以外の土地であるならば、これこれの條件をいれろ。この七箇条の條件を読みますと長くなりますから省略いたします。この七箇条の條件を仙台市がいれれば、三十万円の金を補充しなければならぬという結果に陥るのであります。国見山峠というせつかくのいい場所があるのでありますから、この大年寺山という景勝の地、水害予防林、いわゆる保安林のあるところだけは再検討を願いまして、それは国見山峠その他の適地を物色されて、御建築を願いたいという趣旨の結論でございますが、宮城県知事佐々木家壽治君も大年寺山建立には反対であります。私は一昨日会いましたが、保安林、水害予防林なるがゆえに、樹木を伐採して法務府が建物を建てることには、知事として認可しないということを言明しております。仙台市会が反対し、市が反対し、県が反対である。こういう場合にしやにむに法務府が一方的に、独善的にむりに建築を強行されることは、まことに司法保護の将来の大きな観点から望ましくないのでございます。私は現に法務総裁認可の財団法人仙台司法保護事業協会会長をやつておりますが、どの立場から見ましても望ましくない場所である。どうかひとつ他に適当な場所を物色していただいて、仙台市の景勝の地であり、治山治水の上からも将、来とも確保しなければならぬこの場所だけは、ひとつ再検討を願いたい。こういうことが私の発言の結論でございます。もし法務委員会にお願いができますならば、小さな問題のようでありますが、今法務府と仙台市が正面衝突しておるような大きな問題でもございますので、でき得るならば、法務委員会より若干名の委員に御調査等もお願いできれば、まことに仙台市のためにもけつこうなことである。仙台市は決して少年院に対して無理解で反対しておるのではありません。大年寺山だけはどうかひつと御検討願いたい。他の場所であればできるだけの御協力を惜しまない、こういうことでございます。以上のことはすでに皆さんの委員会に請願も出ておるのでございまして、ぜひ御採択をいただいて再検討をお願い申し上げたい。この際なお委員長より御紹介を賜わまして、法務総裁において御意見があるならば、参考のためにお伺いを申し上げておきたい。こう考えておるのであります。
  58. 花村四郎

    花村委員長 政府で何か発言がありますか。
  59. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 仙台は御承知のように東北の文化の中心でありますので、従来そこに少年院を設けたいという希望があつたのでありますが、なかなか適当な土地が見当りませんので、今日まで仙台には少年仙が一つもないのであります。従つて宮城県で発生した不良少年は、男は福島、女は東京に一々運んでおるのであります。ところが東北から参ります子供は、やはり郷里に近い方がよいものとみえまして、東京の女の少年院、福島の男の少年院で逃亡するのは、いずれも宮城県から来る少年少女なのであります。こういうところから考えましても、私どもはなるべく郷里に近いところに少年院を設けて、矯正教育を施した上、更生した少年少女をその地元にお返ししよう、こういう方針を立てて、仙台市にもぜひ少年院をほしいというので、新しい少年院法ができましてから極力土地を探したのであります。これは庄司さんもあるいは御承知かもしれませんが、県及び市に連絡いたしまして、その土地のあつせんをお願いしました。ただいまの国見山峠も第一の候補地として市から提供せられたのであります。その当時技官の者も向うに派遣しまして土地の状況を見ましたが、その通路は峠でありまして、なかなかトラツクの通うような峠ではなさそうでありまして、材料を運ぶように道路を直すには相当多額の費用がいるというようなことを当時市会の一部の方は申されておつたそうであります。そういうような関係で、国見山峠の方は資材を運ぶのに思うように行かない、つまり條件が不適当であるために、その当時やめになつたのであります。ほかに市からも一、二あつせんされたのでありますが、当時の責任者である矯正保護管区本部の方では、見た上でどうも適当でないということを御連絡申し上げることに、幾らか手違いがあつたやに市の当局から聞いているのであります。一方ではあれは不適当と言つたはずだ、片方では聞かないというような行き違いがありまして、その点は市の当局に対してまことに申訳ないのでありますが、かようにしてごあつせんの労をお願いしましたけれども、適当な土地がない。たまたま仙台市の昔の殿様、伊達家の所有地たる問題の大年寺山を、伊達家の方では少年院の方に売つてもよろしい。それじやぜひお願いしようというので、売買契約が成立したのであります。十万坪の土地の売買契約が成立いたしまして、いよいよ工事にとりかからんとする矢先に、地元の方から反対がございまして、これは本年の夏でありますが、地元の反対の声もごもつともでありますので、私どもはただいま庄司さんのおつしやるように、地元の協力なくしてはかような少年保護の事業がうまく行かないということは、重々承知いたしているのでございますから、できるだけ地元の了解のもとに工事を進めたいということで、それでは大年寺山が反対ならば、ほかに適当な土地を御心配していただけないでしようかということをお願いいたしました。市の方でも、それではあつせんしようというので、二、三箇所知らしていただきました。それはそれぞれ專門の技官が見に行きまして、どうも條件がかなわないというので、これもだめになつたのであります。そうしている間にもう月日も十一月になつてしまいまして、早く工事を始めなければ本年度の予算で年度内に完成することができない。ことに仙台は東北の寒いところでありますから、日の短かい冬に工事を始めましても、なかなかこれは三月一ぱいに竣工する見込みが立ちませんので、だんだん月日の制約を受けまして、もう最後まで押し詰まつたけれども、適当な土地がないということで、先般私は県庁並びに市役所、地元の方々に御了解を求めに参つたのであります。一体大年寺山に仙台市民が特に反対でありますのは、仙台市民の風致の場所として大年寺山があるので、たとい伊達家の所有地であるとはいえ、仙台市民が大年寺山をあこがれの遊覧地として保存したいというお気持は、十分私どもは尊重しなければならぬのであります。そこでこれは知事にも申し上げたのでありますが、その風致地区として十万坪のうち七万坪を設定しよう。県庁では非常に風致地区を広げられてしまつたので、私どもとしては十万坪を買つて、三万坪が非風致地区で、風致地区七万坪に手をつけられないというのでは、私どもは非常に損ではありますけれども、少年の教育のためには、山林を保存しておくということもまた教育の一助にもなりますから、それでは風致地区の七万坪については、これは木を切れば風致も害する、あるいは治山治水にも影響あるということは、われわれしろうとでもよくわかりますから、それでは風致地区に手をつけない。風致地区以外の三万坪、これは裏山になりておりまして、すでに伊達家の方では三万坪については、木を切つております。裏山の三万坪は裸山であります。この三万坪については、一本の木を切らないでも建築ができるのであります。建ててあとに空地に木を植えまして、治山治水の補助にしようということを考えておりますが、はげ山になつている裏山の三万坪について建築して、風致地区の七万坪には手をつけないから何とか御了承願いたい。それから建築するについては、治山治水に影響のないように、專門家に設計していただこうということをお約束いたしましたところが、佐々木知事は快く御了承くださいましたのであります。そのほか市役所の市会議長、副議長並びに市の助役等に御了解を求めたのでありますが、市の三役の方々は、市長がいないからはつきりした返事は申し上げられないが、お話だけは承つておこうというので、別に反対のことは申されなかつたのであります。ただ反対される理由は、これは陳情の趣旨にもありますように、風致地区に影響がある、それから治山治水に害がある、つまり木を切れば治山治水に害があるということなのでありまして、なるベく私どもは風致地区に手を触れないように、そうして治山治水に影響のないようにして建てよう。建物も刑務所や何かと違いまして、高い塀をめぐらすとか、あるいは醜い建物を建てようという意味ではない。風致地区の中にはすでに学校もあり、感化院もあります。この学校や感化院に劣らない、美観を損しない建物をお約束できるのであります。さような方法で陳情の御趣旨にも合うようにして、大年寺山に工事を急ぎたい。こういうので先般皆様の御了解を求めようとしたのでありますが、地元の大年寺山附近に長町という部落がありますが、この部落民の方々は直接私に面会を求められまして、反対を申し出られました。そこでそういう反対の趣旨もわかるから、それではこちらも工事を急がなければならぬので、工事にさしつかえない程度で、ほかにあなた方はかえ地があると言われるけれども、今まで三箇月待つてもかえ地がないのであるから、一週間内にかえ地を持つて来てくださるならば、また考慮しましようと言つておわかれしたのであります。その一週間の最後に持つて来られましたのが、ただいま御紹介の国見山峠であります。国見山峠はただいま申し上げましたように、第一の候補地として、最初に本年の初めに調査したところでありまして、技官の報告によりますと、国見山峠の二キロばかりのところは山道で、とうては建築資材も運搬するトラックの通ずる道でない。この道路をまず建設して、そうして工事に着手するということになれば、とうてい予算年度内において工事を竣工することはできないし、そうしてまた建設費用も相当かかるというような、條件としてはどうも応じがたいという專門家の報告がありますので、私どもとしては、仙台市民の反対の理由については十分尊重いたしまして、風致地区にはほとんど手を触れないように、風致を害さないように、そうして治山治水に影響のないようにして、裏山のはげ山になつている三万坪の相当な、醜くない程度の建物を立てれば、何とか御趣旨にも合うじやないか。今工事を始めなければ、とうてい予算年度内において工事をするということが不可能なところまで追い詰められているのでありまして、できますならば、一日も早く工事に着手することができるように、皆様の御了解を願いたいと存じているのであります。     —————————————
  60. 花村四郎

    花村委員長 次に人権擁護に関する決議案を議題といたします。北川定務君より発言の通告がありますから、これを許します。北川定務君。
  61. 北川定務

    ○北川委員 本決議案に関しまして、政府並びに提案者でありまする梨木委員に伺いたいと存じます。決議案を拜見しますと、その内容として逮捕状の濫用、不当長期勾留拷問による自白の強制、その他人権蹂躪というようなことが掲げてございまするが、そのおもなる事件の概要と、その件数につきまして伺いたいと思います。
  62. 梨木作次郎

    梨木委員 件数などは、これは法務府の方から資料を出してもらいたいと思うのでありますが、われわれは民間にありまして生活しておつて、特にはなはだしいと思うものを目撃しておつたのであります。その一つを申し上げますと、これは私が提案理由の説明の中で、具体的な例として申し上げたのでありますが、去る七月十五日の三鷹における暴走電車の事故があつた際に、十七日に山本久一並びに飯田七三の両名が殺人の容疑——たしかそうだと思いますが、逮捕されておるのであります。御承知のように逮捕状というものは、刑事訴訟法によつて、罪を犯したと疑うに足る相当理由がなければならないのであります。ところが実際はあの事故が起つたのは七月十五日の午後九時二十三分だといわれれている。当日はわれわれの調べたところでは、何も調査はされておりません。翌十六日の十一時から電車の解体並びに復旧の工事が行われております。その前に国鉄当局が調べたらしい。ところがあの無人電車というものの事故は、一体人間が走らせたのか、それとも自然発車かということは、綿密かつ愼重に調査した上で、これはどうも自然発車ではなくて、人為発車ということが大体確定されて、そう疑うに足る相当理由が出て来て、初めてここで犯罪の捜査というものになる。そしてこれをやつたと疑うに足る相当理由があつて、初めて逮捕状の請求並びにその発布というものが許可されるものだと私は考える。しかしそういう事実がない、やつておらない。しかも実際はその後の経過が明瞭にそれを証明しておる。山本久一君は中野電車区の労働組合の分会長、飯田七三君は三鷹電車区の労働組合の分会長、しかもこの二人が共産党員だ。その共産党員というものと電車の事故を結びつけて、犯罪を犯したと疑うに足る相当理由でも何でもないのに逮捕状を出しておる。しかもその逮捕状というものは、出される二時間前に朝日新聞によつて、逮捕状が出されておるということが報道されたという事実がある。そしてこの山本久一君は電車事故の容疑で逮捕されて、調べられて何ら関係がないということが明瞭になつた。その間二十日間勾留されておつたが、この勾留より解放されて、その後全然別の、中野電車区の以前にあつた何か中野駅の責任者との団体交渉の過程における一つの問題をとらえて、公務執行妨害とか何とかで、一ぺん釈放されたが新しくそういう容疑でまた逮捕され調べられた。その後釈放になつておりますが、こういう事実というものは、明らかに逮捕状の濫用であります。しかもあの三鷹事件のごときは、全世界の関心を集めた重大事件です。これほどの重大事件に、こういうように軽々しく逮捕状が出されておることに、私は逮捕状の濫用ということが言えると思うのであります。  さらにこういうことがあります。昭和二十三年の十二月末に、山口県の下松市東洋鋼鈑株式会社におきましての労働争議の際に、労働組合の幹部十二名を逮捕して投獄しておるのであります。この労働争議はこういう逮捕並びに投獄のために、ほとんど壊滅してしまつたのでありますが、裁判の結果これは無罪になつております。ところがこの逮捕状は警察におきましては、山口地方検察庁の次席検事が警察に出張しましてその場において作成したものでありますが、こういう事実を発見した。検が自分で逮捕状をこしらえた。これは今職権乱用の嫌疑で告訴されておりますが、こういつたような例であります。まだまだたくさんありますが、大体顯著な例はそういうことであります。  不当に長期の勾留は、これは平事件におきましても、福島事件におきましても、また三鷹事件におきましても、非常に不当の勾留が長く続いておる、こういう点を指摘したいと思う。それから拷問による自白の強制。この拷問というのはぶつたり、なぐつたり、けつたり、水をぶつかけたり、これはよく戰争中に共産主義者に対してやつたことでありますが、今はそういうような形における拷問があるということを、私は指摘しておるのではありませんが、しかしながら拷問というものに限られたことでなくて、人権の思想の発達の度合いに従つて拷問考え方というものはどういうものかということはかわつて来るはずである。現在の新しい憲法下におけるところの拷問、それは要するに被疑者、調べられる人間が精神的に物質的に非常に苦痛が加えられるということ、そうしてそういう苦痛を加えながら希望する供述を引出そうとするのが拷問だと思う。被疑者を三十回から四十回調べている。一体被疑者を三十回も四十回も調べる必要がありますか、被疑者の自白は、今日において唯一つ証拠として、有罪の資料にすることができないことは憲法上でもはつきりしている。これを三十回から四十回も調べている。しかも朝の九時から午後の十時、十一時の深更まで、毎日ぶつ続けに行つている。しかも、隔離された身柄拘束されたままにおいて、朝から晩までお前がやつたのだろう、お前がやつたのだろうというように、ぶつ続けにやられたら、これは精神錯乱の状態に陥ります。しかもその調べ方の中には、たとえば、お前はそんなに共産党に義理立てしているが、しかし共産党の本部は警察によつて襲撃されてなくなつてしまつているのじやないかというようなことを言つたり、お前は共産党に除名されているというようなことを言つたり、だからこそだれも弁護士が面会しに来ないじやないか。事実は自分たちが面会させないでおいて、そういうことを言つておる。たとえばお父さんが病気でもないのに、非常な親思いの被疑者をつかまえて、お父さんは非常に重い病気だ、だからお前さんは今自白すればまあ出られるかもしれない。そうすれば生きてお父さんに会える、だから自白しろ。こういうような形で自白の強要をしている。それから府中の刑務所におきましては、独房には普通の窓があるが、三鷹事件などでは、その窓に七分目までも目隠しをつくつておる。これでは晝でも暗くなつてしまうので、これは警察や刑務所の言い分を聞くと、通謀をおそれて、通謀防止のためと言つておるのでありますが、しかしながら一体被疑者を刑務所にまでぶち込んでおいて、しかもまだ通謀防止のためこういうひどい目隠しをつくらなければならないということは、今日のわれわれの常識から言つたならば、明らかに一つ拷問です。それから監獄法上からも、明らかに毎日独房の人に対しては一時間以内——これは毎日雨天でない限りは三十分、独房拘禁者に対しては一時間以内という規定になつておりますが、必ず運動をさせなければならない。この運動を人手不足の理由で制限しておるというようなことをわれわれは聞いておる。それから読書の問題にいたしましても、隔離された状態のもとにおいては、本も読めないということは——今日われわれは活字とまつたく密接な生活をしているにもかかわらず、本も読めないということは非常な苦痛であります。しかしそれは刑務所や検察庁の言い分によると、官本を與えていると言いますけれども、われわれが本を読みたいというのは、自分の希望する本を、希望するときに読める、それが読書の自由であります。あてがいぶちの本を與えられ、読みたくもない本を與えられても、決して読書の自由を與えたということにならないと思う。そういうようなことも、証拠隠滅だとか通謀防止のためだと称しますが、検閲しておるから、何も通謀ということはあり得ないのです。しかも起訴された後においても、これがされている。三鷹事件においても松川事件におきましても、そういうことがたくさんあります。それから弁護権の制限、主として弁護人との面会の自由を妨害しておるのであります。これは原則として、憲法上被疑者は弁護人との面会、交通の自由が認められておるにもかかわらず、捜査の必要ということから、弁護人との面会の日付を指定されるのであります。ところが指定をもらおうというので検事を追いかけても、主任がいないということで会わせない。福島の松川事件のごときは、全被告に会うために一週間かかつております。私なども東京からわざわざ行つて、二日もかかつております。検事が実際なんとかかんとか言つて、居どころをはつきりさせないから会えない。こういうような形において弁護権の制限というものが行われております。客観性のない見込み捜査による人権蹂躙ということは、そういうことです。三鷹事件でもそうです。これは実際犯罪か犯罪でないかということを科学的に捜査して、証拠を握つて捜査に着手したのでなくて、初めから調べないで、むしろ保全すべき証拠を全部隠滅しておいて捜査に着手した。こういうことは、明かに見込み捜査と言われても弁解の余地がないと思う。そうして特にはなははだしいのは、この犯罪の捜査に当つて検事考えていること、検事の見込みと弁護人や被告人の言つていることとが一致しない場合、つまり検事側が申請した証人と被告や弁護人側の申請した証人とが、同一の事実について食い違つた供述をした場合には、検事側の証人が真実を語つているということで、片つぱしからこの被告人、弁護人側の証人を偽証で起訴したり、おどかしたりしている。現に三鷹事件におきましては、石川君というのと、金君というのは偽証罪で検挙されている。これは要するに、検事は高相会議というその会議の途中で中座した者があると言つている。ところが、いや中座した者がないと言つたことが偽証だという。この調子で偽証罪で逮捕されたり、この調子でやられたら、これは検事の見込みと合致しない供述をした人は、すべてこういうような偽証の起訴をされる。偽証の起訴をされないまでも、おどかされるから、しようがなく検事の言う通りに迎合するというようなことになつて、まつたく客観性のない捜査、つまり検察專制、検察フアシヨというものが、実現して来る危険性がきわめて強いと思うのであります。大体こういうようなことが、この人権擁護決議案の内容で、こういう具体的な事実に基いてかような表現をしておるのであります。
  63. 八木新治

    ○八木説明員 ただいまの梨木委員の御質問に対してお答えいたします。主として三鷹事件について御質問があつたようでありまするが、三鷹事件につきましては、被告側からの言い分もありまするので、人権擁護局としては重大な関心を持つておる次第であります。それで情報の収集は絶えず怠りなくやつておるような次第でございまするが、何分にも事柄が重大でありまするために、單に被告側だけの言い分でも事を決しかねるのでありましまして、検察庁、警察、鉄道、その他一般市民の情報を集めた上、確実なる資料に基いて具体的な調査を始めたいと思つております。しかし現在のところは、具体的には人権侵犯と認められるような事実をまだつかんでおりません。従いまして情報による調査も相当時日を要することであろうと思います。これをもつて御答弁にかえます。
  64. 花村四郎

    花村委員長 政府委員に申し上げますが、ただいま北川定務君のご発言の中で、本決議案に盛られておりまするような問題について、資料を出してもらいたいという御希望があるようでしたが、なければないでいいのですが、たとえば逮捕状の転用、不当の長期勾留拷問による自白の強要、弁難権の制限、客観性なき見込み捜査による人権蹂躪、あるいは思想の自由、集会、結社、言論の自由、学問の自由等が圧迫されておるというような事件が起きておりまするならば、その件数並びにいかなる事件の内容であるかという意味の資料を出してもらいたいというのですが、なければないでいいのですが、一応そういう意味に含んでおいてください。  本日はこの程度で散会いたします。     午後四時三十一分散会