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1949-11-26 第6回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十六日(土曜日)     午後一時五十分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 石川金次郎君 理事 梨木作次郎君    理事 佐竹 晴記君       佐瀬 昌三君    古島 義英君       松木  弘君    武藤 嘉一君       山口 好一君    吉田 省三君       猪俣 浩三君    上村  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         (検務局長)         検     事 高橋 一郎君         (特別審査局)         検     事 吉河 光貞君         (民事局長)         検     事 村上 朝一君  委員外出席者         議     員 林  百郎君         議     員 宮腰 喜助君         最高裁判所刑事         局長      岸  盛一君         最高裁判所総務         局第二課長   磯崎 良譽君         專  門  員 村  教三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  人権擁護に関する決議案志賀義雄君外三十五  名提出決議第八号)   請願  一 遺失物法の一部改正に関する請願山本猛    夫君紹介)(第二三号)  二 碧南市に簡易裁判所並びに検察庁設置の請    願(中野四郎紹介)(第三九号)  三 吉田町に簡易裁判所設置請願山本久雄    君紹介)(第一二七号)  四 地方法務局及びその支局独立庁舎建設の    請願中村幸八君紹介)(第三〇五号)  五 長野地方裁判所諏訪支部並びに長野家庭裁    判所支部昇格請願(林百郎君紹介)(第    三四五号)  六 未成年女子刑務所設置請願山口好一君    紹介)(第三五三号)  七 住民登録法制定に関する請願江崎真澄君    紹介)(第五〇一号)  八 小湊町に国立少年院設置請願笹森順造    君外五名紹介)(第五二八号)  九 釧路地方裁判所網走支部地方裁判所に昇    格の請願林好次紹介)(第五八九号) 一〇 大年寺山少年院設置反対請願高橋清治    郎君外八名紹介)(第五九二号) 一一 登記法改正に関する請願八百板正君紹    介)(第八五七号) 一二 不動産登記事務市町村に移管の請願(八    百板正紹介)(第八五八号) 一三 秋田地方法務局事能代支局焼燒失に伴う復    旧事業費全額国庫負担請願宮腰喜助君    外一名紹介)(第九三五号) 一四 靜岡市高等裁判所支部設置請願猪俣    浩三紹介)(第一〇一六号)   陳情書  一 戸籍事務費全額国庫負担陳情書外十七件    (    第四号)  二 同外二件    (第一〇号)  三 農地改革に伴う登記事務費国庫負担陳情    書(第    六四号)  四 犯罪者応急保護法制定に関する陳情書    (第八三号)  五 三国町に簡易裁判所並びに検察庁設置の陳    情書(    第二七号)  六 戸籍事務費全額国庫負担陳情書    (第一二四    号)  七 同    (第一五一号)  八 農地改革に伴う登記事務費国庫負担陳情    書(第一五八号)  九 戸籍事務費全額国庫負担陳情書外一件    (第一六六号) 一〇 商法の一部を改正する法律案要綱に関する    陳情書    (第二一八号)     ―――――――――――――
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず昨日に引続き請願審査をいたしますが、昨日審査いたしました請願のうち、本日の日程第二、碧南市に簡易裁判所並びに検察庁設置請願文書表第三九号、日程第三、吉田町に簡易裁判所設置請願文書表第一二七号、日程第四、地方法務局及びその支局独立庁舎建設請願文書表第三〇五号、日程第八、小湊町に国立少年院設置請願文書表第五二八号、日程第九、釧路地方裁判所網走支部地方裁判所昇格請願文書表第五八九号は、いずれもこれを採択いたし、採決の上は内閣に送付することを適当と認めることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  4. 花村四郎

    花村委員長 それでは、これより請願審査に入ります。日程第五、長野地方裁判所諏訪支部並びに長野家庭裁判所支部昇格請願文書表第三四五号を議題といたし、紹介議員説明を求めます。林百郎君。
  5. 林百郎

    ○林百郎君 本請願趣旨請願書にある通りであります。実は長野地方裁判所諏訪支部が今乙号になつておるのでありますが、これをせめて甲号に上げてもらいたいというのであります。これはどういうことかといいますと、この支部のある諏訪諏訪市と岡谷市と二つ市が並んでおるところであります。諏訪の方は諏訪湖を控えて観光地として有名なところであります。岡谷市の方は生糸で有名な岡谷市であります。両方合せますと、人口が十万近くになるのであります。ところがここの裁判所が、遺憾ながら支部簡易裁判所で、しかも地方裁判所としては支部乙号というので、一番小さい村や町にですら当然あるような形になつておりまして、これはもし甲号事件が起きますと、二つの市がある、十万も入口がある地域でありながら、一時間半も汽車乘つて松本というところへ行きませんと、どうにも事件処理ができないというので、実は非常に困つておるのであります。これは事件扱い数から言いましても常に乙号件数を越えまして、よその甲号よりももつと数が多いという状態であります。これは委員長なども十分御存じだと思いますが、各関係者とも非常に不便を受けておるところであります。最高裁判所も、高等裁判所も大体了解してくださつているのでありますが、ただ大蔵省の方で予算が組めないために、長岡裁判所関係では認められておるのでありますが、予算がどうしてもとれないということで、予算をとる意味で、やはり最高裁判所の方の意見としましても、国会請願を出して、請願採択してもらうということが、大蔵省ヘ交渉する有力な材料なのでありますから、ぜひ請願を出すようにということを、実は最高裁判所からも勧告されまして、地元の各市町村長代表者七名ほどで請願をした次第であります。これを昇格していただくことによつて地方民は非常に便利になりまして、裁判を受けるために一時間半も汽車へ乘つて行かなければ裁判が受けられない、ほんの小さな事件でも一時間半も汽車に乘らなければ行けない。しかも地元には二つの市が並んであるというようなところで、村にもあるような裁判所しか持たないということは、非常に関係民一同が不便いたしておるのであります。どうかひとつ皆さんの御助力で、乙号甲号にしていただきまして、地方民希望に沿つていただきたいと思うのであります。建物もちよう検察官審査会を入れるということで今増築しておりまして、建物内部事情も、これが昇格いたしましても十分まかなえるような状態になつているようでありまして、判事乙号のために單独判事で、とても事件がたくさんたまつてしまつてどうにも処理ができないという状態であります。それからもう一つは、最高裁判所の方では、わざわざ乙号甲号に上げた場合に備えて、県外へ移転を命ぜられている判事さんを、一人だけこれが昇格したらそちらにまわすようにといつて、特別に長野県の中に一人余分に待たしておるような状態にまでしてある状態であります。そういう事情でありますから、ぜひひとつここで御採択を願いまして、大蔵省の方から予算もとりまして、地方民便宜に備えたいと思いますから、どうぞ御審議の上御採択をお願いいたします。
  6. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  7. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいまお申し述べになりました請願の御趣旨は十分了解いたしました。政府といたしましても、御不便の事情はよく承知いたしておりますが、裁判所支部に関する事項は、最高裁判所権限に属しておりますので、最高裁判所には御趣旨を伝達いたしまして、十分考慮を願うことにいたします。
  8. 花村四郎

    花村委員長 最高裁判所より発言の申出がありますから、これを許します。磯崎最高裁判所説明員
  9. 磯崎良譽

    磯崎説明員 長野地方裁判所諏訪支部甲号昇格するようにとの請願の御趣旨、まことにごもつともと存じます。最近特に事件の激増の様子、甲号事件の現所轄庁でありますところの松本支部への距離等から見まして、最高裁判所甲号昇格必要性は十分に認めておるのでありますが、ただいま紹介者のお言葉の中にもありましたように、その予算的裏づけができませんために、御要望に沿い得なかつたような次第であります。今後当委員会の御支持、御協力を得まして、予算的措置をも講じ、請願の御趣旨に沿うよう努力いたしたいと思つております。
  10. 花村四郎

    花村委員長 御質疑はありませんか。――なければ次に移ります。     ―――――――――――――
  11. 花村四郎

    花村委員長 日程第六、未成年女子刑務所設置請願文書表第三五三号を議題といたし、紹介議員説明を求めます。山口好一君。
  12. 山口好一

    山口(好)委員 本請願趣旨は、現在の未成年女子刑務所は、大部分成人刑務所にごく付随的に設置されておりますが、年少女子に対しては、成人女子と分離して、独立施設で適切なる教育、訓練などを実施する必要があります。つきましては男子については、すでに独立した少年刑務所が数箇所設けられておるのでありますが、いまだ日本には独立した女子少年刑務所というものがありません。しかし女子少年につきましても、犯罪は逐次増加いたしておりまして、どうしても独立した施設を設けることは、あらゆる見地から必要なのでありまする全国を地区的に二箇所ないし三箇所に区分しまして、各地区ごと未成年女子刑務所を独立して設置されたいというのがこの御請願趣旨でございます。皆さんの御賛成をお願いしたいと思います。
  13. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。牧野政府委員
  14. 牧野寛索

    牧野政府委員 わが国の女収容者の占める男収容者に対する比率はきわめて少く、たとえば本年九月末日現在で、全体的には約二%で、一千六百九十八名であり、女子少年受刑者は全少年受刑者の約四%強で、二百七十八名に過ぎないのであります。しかもこれが全国的に散在しているので、予算や、職員の不足及び保護便益等理由によつて大通支所(北海道)仙台、栃木、笠松、和歌山、三次、麓(佐賀)等の成人女子刑務所の一部に、分離して、その部署において少年処遇をしている次第であるが、終戰後女子少年犯罪増加分類処遇重要性にかんがみれば、一日も早く男子少年刑務所のあるように、女子女年刑務所を特設することが必要であつて請願の御趣旨はごもつともであると考えられます。  当局としては早急に計画を立て、予算的処置を講じた上に、できれば明年度から一部ずつでも実行に移したいと考えております。
  15. 花村四郎

    花村委員長 御質疑はありませんか。     ―――――――――――――
  16. 花村四郎

    花村委員長 なければ、次に日程第一四、靜岡市高等裁判所支部設置請願文書表第一〇一六号を議題といたします。紹介者説明を求めます。猪俣浩三君。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは請願書に詳しく書いてあるのでありますが、その請願書に書いてあります理由の一端を申し上げたいと思います。  われわれは新憲法の施工によつて国民権利は一段と保障せられ、裁判所法施行によつて何人も公平にして迅速な裁判を受くるの機会に惠まるものと確信していたのであります。しかるに裁判所法施行に伴い、地方裁判民刑第一審判決に対する控訴は、高等裁判所において審理せらるることとなり従つて靜岡地方裁判所判決に対する控訴事件は、すべて東京高等裁判所の所管となつたのでありますが、その結果を実際について見るときは、従来県内の各区裁判所事件に関する控訴が手近かな靜岡地方裁判所において審理せられておつたことと対比して、地理的、時間的並びに経済的の諸点において、被告人及び訴訟当事者等にきわめて著しき制限を加えることとなり、大多数の被告人及び訴訟当事者は、それらの制約のために事実上控訴権の行使が不可能または著しく困難となり、結局新憲法が保障する基本的人権と、何人も公平な裁判を迅速かつ簡易に受け得べき新制度の精神に逆行することとなり、旧憲法下におけるそれよりも、国民裁判を受ける権利はかえつて著しく制限せらるるの結果を招来しておるのであつて、きわめて遺憾かつ放任すべからざるゆゆしき重大事であると信ずるのであります。すなわち今靜岡地方裁判所管内裁判所昭和二十三年度一箇年間における事件数を見るに、第一審新受理事件民事件総数五百四十三件、うち簡易裁判所事件六十一件、地方裁判所事件支部を含む)四百八十二件、刑事件総数一万二百三十件、うち簡易裁判所事件八千二百二十七件、地方裁判所事件二千三件、簡易裁判所判決に対する控訴として靜岡地方裁判所の受理したもの、民事事件二件、刑事々件二百十五件、地方裁判所判決に対し東京高等裁判控訴したもの、民事々件七件、刑事々件四百八件。右のごとくであつて、新制度において、旧区裁判所事件のうちきわめて軽微なものは簡易裁判所において処理せらるるも、そのおもなるもの大部分については、地方裁判所が第一審として所管する結果と、日を追つて事件増加の傾向にかんがみ、新制度後、靜岡地方裁判所の第一審事件判決に対する控訴件数はますます増加しつつある次第であります。しかるにこれ等控訴事件がすべて東京高等裁判所に繋属することとなる結果、被告人訴訟当事者、証人、親族その他の関係人東海道沿線に居住する比較的便利な者でも、東京高等裁判所に出頭するためには最少二泊三日間を要し、沿線から相隔たる地域居住者のごときは、一回の出頭に数日を要し、それに弁護人訴訟代理人との打合せ等のための上京を合すれば、交通費宿泊費等実に莫大の金額を要し、ことに地方居住者が食糧を携滯して、地理不案内にして、交通困難の東京において旅館を求め、裁判所との間を往来するの精神的、肉体的痛苦をあわせ考慮するときは、結局資力の十分でない者、世故に通じない者、婦人、幼年者等においては、事実上上訴の権利を抛棄して、真実の主張を貫徹するの機会をおのづから捨て去るのやむなき結果となり、十分の主張と立証とをなし得ない結果となつて裁判複審制度もついに空文と單なる形式に堕すべく、かくては基本的人権確立のための新憲法も、その運用の点においてまつたくその光彩を滅却するの結果となるものと言わなければならないのであります。かような趣旨におきましてこの請願がなされたのであります。あとは省略いたします。
  18. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  19. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいまの請願最高裁判所権限に属しておりますので、この請願の御趣旨最高裁判所へ伝達しまして、重ねて十分の考慮を煩わすことにいたしたいと存じますから、さよう御承知願います。
  20. 花村四郎

    花村委員長 最高裁判所意見を求めます。
  21. 磯崎良譽

    磯崎説明員 靜岡市東京高等裁判所支部設置するようにとのただいまの請願の御趣旨は、まことにごもつともに存じます。予定されますところの受理件数、その他の事情すべてただいまのお話にありました通りでありまして、最高裁判所といたしましても、その必要性を感じているのでありますが、東京高等裁判所管内におきまして、さらに靜岡附近よりも不便と思われます新潟、長野の両市からも、高等裁判所支部設置してもらいたいという要望がありまして、これらの支部設置するにつきましての予算的措置がなかなか思うように参りませんところから、いまだに靜岡の方へ支部を置いてもらいたいとの御希望に沿いかねているようなありさまであります。最高裁判所といたしましても、今後大いに努力いたしまして、請願の御趣旨に沿うようにいたしたいと存じております。
  22. 花村四郎

    花村委員長 御質疑がありませんか。     ―――――――――――――
  23. 花村四郎

    花村委員長 なければ、次に日程第一三、秋田地方法務局能代支局焼失に伴う復旧事業費全額国庫負担請願文書表第九三五号を議題といたし、紹介議員説明を求めます。宮腰喜助君。
  24. 宮腰喜助

    宮腰喜助君 本件は請願書類に出されてある通り昭和二十四年の二月二十日の能代の大火におきまして、非常なる風速のために、書類はほとんど焼失してしまつたのであります。そこでこの問題を焼け元の市町村が負担するという問題について、よりより協議したのでありますが、御承知のようにああいう寒い單作地滯であり、農村財政は非常に窮乏しておりまして、その他一般収入関係から地方配付税を再三お願いしておりますが、なかなか御承認を得られませんので、特に国家事務である関係上、ぜひ政府全額国庫負担を願いたい、こういうことで請願申し上げておる次第でありますから、何分よろしくお願い申し上げます。
  25. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  26. 牧野寛索

    牧野政府委員 御請願にかかる戸籍副本の再製に要する経費は、現制度のもとにおきましては、やはり地方公共団体がこれを負担すべきものと考えられるのでありますが、戸籍事務の国の行政事務たる性質にかんがみ、また地方的特殊事情をも考慮いたし、何らかの救済策を講ずるのを相当と考え、現制度のもとにおきまして可能な方法により請願の御趣旨を実現いたしたいと、目下検討を加えておる次第でありますから、何とぞ御了承をお願いいたします。
  27. 花村四郎

    花村委員長 御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、本日審査いたしました請願のうち、日程第五、長野地方裁判所諏訪支部並びに長野家庭裁判所支部昇格請願日程第六、未成年女子刑務所設置請願日程一三、秋田地方法務局能代支局焼失に伴う復旧事業費全額国庫負担請願及び日程第一四、靜岡市高等裁判所支部設置請願は、これを採択いたし、採択の上は内閣に送付するを適当と認めることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければさよう決定いたします。  以上昨日及び本日採択いたしました請願報告書の作成に関しましては、委員長に御一任をお順いいたします。     ―――――――――――――
  29. 花村四郎

    花村委員長 次に陳情書審査に入りますが、陳情書日程中、第一、第二、第六、第七、第九の戸籍事務費全額国庫負担陳情書は、昨日採択いたしました請願と同趣旨でありますから、その審査を省略いたし、日程第四、犯罪者応急保護法制定に関する陳情書議題といたし、便宜文書表朗読いたさせます。     〔朗読犯罪者応急保護法制定に関する陳情(第八三号)   陳情者 司法保護団体全国協議会犯罪前歴者に対する社会感情を融和して再犯を防止し更正を促すため必要なる根本的立法措置を講ぜられたい。
  30. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  31. 牧野寛索

    牧野政府委員 いわゆる刑余者に対する更生保護は、御意見通り刻下まことに重要な問題でありまして、政府におきましては第五国会において成立し、去る七月一日より施行せられました犯罪者予防更生法によりまして、仮釈放及びこれに続く保護観察制度の公正妥当な運営をはかることにより、少年法による保護観察に付されている者、十八歳未満で懲役または禁錮につき刑の執行猶予の言渡しを受け猶予中の者、少年院の仮退院者及び仮出獄等について保護の手を差延べることになつたのであります。この法律施行後日いまだ浅く、その運用未熟で、かつ予算的裏づけも十分でないうらみがありますが、逐次その効果を発揮して参つておるので、今後その充実をはかりたい所存であります。しかしこの犯罪者予防更生法による保護観察の対象は、いわゆる刑余者等犯罪前歴者の一部であり、一般満期釈放者、刑の執行猶予者、または起訴猶予者等に及ばないのでありますが、これらの者も刑事上の手続による身体の拘束を解かれた直後、短期間ではありますが、生活困窮状態にありなから、一般生活保護法による援護の措置が整えられるまでの間、何らかの方法による一時保護、または収容保護措置が国の責任において與えられなければならないと考えられますけれども、これを担当すべき現行の司法保護事業法は、この法律による保護の限界、ないし生活保護法との連繋、またはその予算的裏づけ等の点にわたり不備欠陥が多く、ほとんど無力に近い状態にありますので、目下これにかえて実施すべき司法保護法ともいうべき法案を研究中でありまして、御意見に沿うよう努力中でございます。
  32. 花村四郎

    花村委員長 御質疑はありませんか。     ―――――――――――――
  33. 花村四郎

    花村委員長 なければ次に、日程第五、三国町に簡易裁判所並びに検察庁設置陳情書文書表第一一七号を議題といたし文書表朗読いたさせます。     〔朗読三国町に簡易裁判所並びに検察庁設置陳情(第一一七号)   陳情者 福井坂井郡三国町長       宮川秀雄福井坂井三国町は本郡文化交通、経済の中心地として行政機関を有しているが、法務機関のみは明治三十五年廃庁以来福井裁判所管轄となり今日に及ぶも、地域広大なる郡民の不利不便は甚大であるから裁判所及び検察庁を当町に設置して、郡民復活熱望地方治安維持及び民法の運営に遺憾なきを期せられたい。
  34. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  35. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいまの陳情の御趣旨は十分了解いたしました。福井県の坂井郡は、全部福井簡易裁判所管轄になつているものでありますが、同郡内の金津町からも、すでに同趣旨請願がありまして、競願の形になつておりますから、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう御承知願います。
  36. 花村四郎

    花村委員長 最高裁判所意見を求めます。
  37. 磯崎良譽

    磯崎説明員 ただいま政府からも御説明のありました通り坂井郡を管轄する簡易裁判所といたしまして、金津町におきましても簡易裁判所設置要望いたしておりまして、このいずれを選ぶかということは非常にデリケートな関係がありますので、法務府と連絡協議の上で、陳情の御趣旨に沿うように努力いたしたいと思つております。
  38. 花村四郎

    花村委員長 御質疑はありませんか。次に移ります。     ―――――――――――――
  39. 花村四郎

    花村委員長 次に日程第一〇、商法の一部を改正する法律案要綱に関する陳情書議題といたし、文書表朗読いたさせます。     〔朗読商法の一部を改正する法律案要綱に関する陳情(第二一八号)   陳情者 大阪大阪商工会議所会頭 杉道助 今回「商法の一部を改正する法律案要綱」が発表せられたが、次の(一)株式会社の発行する株式の「数」 (二)会社設立の際の発行株式総数 (三)株主の提起する訴訟 (四)転換社債 (五)株主の資格 (六)取締役の選任 (七)株主会社の帳簿、書類閲覧権及び謄写権 (八)資本準備金利益準備金 (九)転換社債 (十)株主総会等諸点につき、我が国の実情にがんがみ妥当と認めがたい点があるから、右につき善処されたい。
  40. 花村四郎

    花村委員長 政府意見を求めます。
  41. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいまの陳情書の御趣旨は十分了解いたしました。同要綱は本年八月十三日法制審議会に諮問いたしまして、目下同審議会において愼重審議中でございますが、御指摘の諸点についても、その審議の過程において十分検討せられております。法務府といたしましては、今回の商法改正につきましては、さきに貴会議所会頭より御建議になりました商法の一部改正法案要綱に関する意見、その他各界の御意見を十分参酌いたしまして、わが国実情に適するよう、商法の一部を改正する法律案を作成いたす所存でございますから、さよう御了承願います。
  42. 石川金次郎

    石川委員 お聞きいたしますが、国会には前例国会に御提出の予定でございますか。
  43. 牧野寛索

    牧野政府委員 次の第七国会提出いたします。
  44. 花村四郎

    花村委員長 以上をもつて陳情書審査を終了いたします。     ―――――――――――――
  45. 花村四郎

    花村委員長 次に人権擁護に関する決議案議題といたし、提案者の趣旨説明を求めます。梨木作次郎君。
  46. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは人権擁護に関する決議案をまず朗読いたします。   基本的人権が侵すことのできない権利であることは、憲法の明記するところである。   しかるに最近政治的な差別待遇が行われ、思想の自由、集会、結社、言論の自由、学問の自由が圧迫されていることは公然たる事実である。   さらに逮捕状のらん用、不当な長期勾留、ごう問による自白の強制、弁護権の制限、客観性なき見込捜査による人権じゆうりん、また検事の予定する供述をしない証人を法廷で偽証罪の現行犯逮捕をするという暴挙まで行つている。   さらに犯罪捜査にあたり、検察官、警察官が故意に証拠を隠滅して、重大事件を政治検挙に利用している。   終戰後、内外の民主勢力によつて獲得された基本的人権がこのように圧迫されていることは、民主国家として再建すべき日本にとつて悲しむべきことである。   よつて政府は、人権擁護のため、これらの人権じゆうりんの責任者を処罰し、且つ今後絶対にかかる事態をじやく起せしめざるよう措置すべきである。   右決議する。  提案の理由を御説明いたします。まず決議案の内容において言つている事実を指摘したいと思うのであります。政治的な差別待遇が行われている事実、これは第一に最も顯著な事実を一つ二つ申し述べます。去る七月十九日に発表されました国鉄の従業員の整理にあたりまして、国鉄労働組合の中央闘争委員は全部で三十五名あつたわけで、ありますが、そのうち共産党員は十二名を占めておつたのであります。ところがこの整理にあたりまして、共産党員の十二名は全部解雇されております。そうしていわゆる民同派といわれていた人は一人も首切られておらないのであります。革同派と称せられておつた人は九名中五名が馘首されております。  次に八月十二日に発表された全逓の整理におきましても、中央闘争委員三十六名中二十九名までが整理されて、そのうち共産党員である中央闘争委員十六名は、全員解雇の対象になつているのであります。もつとも当局の説明によりますと、整理の理由は、こういう人たちは協力的でなかつたというようなことを理由にあげているのでありますが、これは全然一つの弁解、逃げ口上にすぎないのでありまして、労働組合の役員が組合員の労働條件の改善のために闘うのは当然である。その過程におきまして、当局と協力的であり得ない場面があることは当然であります。もしこういうことでありますならば、組合活動が全然できないことになるのでありまして、これは労働組合を戰争中の産業報国会のようなものにしてしまうということを意味するのであります。こういうような整理のやり方というものは、これは明らかに政治的な信條、また思想の自由の蹂躙にもなると思うのであります。つまり共産主義的な思想を持つているということによつて、差別的な扱いをしているということの明白な現われであると思うのであります。これが一つ。それからこれはやはり政治的な差別扱いとも関連するし、同時にこれは思想の自由、学問の自由に対する大きな圧迫の現われと見ることができるのでありますが、たとえば人事院の例の公務員の政治活動禁止に関する規則、これなども明らかに国家公務員の政治活動の禁止という形を通じて、実はこれは共産党の党員の政治活動をことさらに禁止することをねらつたものであつて、事実この人事院規則ができました後におきまして、共産党のいろいろな活動というものが非常に制約されて来ている。またこれを理由に強制的に辞職を強要されている事実もあります。これは前会の当委員会においても、私が人事院総裁に質問したところの事実においても現われておるのであります。国家公務員の政治活動の禁止に関する人事院規則、この規定を見ますと、なるほど政治的な目的と政治的な行為というものをわけております。政治的な目的というものは、特定の内閣を支持し、あるいは支持しないというような、そういうことなのだ。この目的がなければ、いろいろの政治活動はこの規則の対象にならないというような、こういう観念的なわけ方をしておる。しかしながら政治活動というものは、時の権力に対して賛成するか反対するか、どつちかなのであります。具体的に共産党は今吉田内閣に反対しておる。だからすべての活動というものは、政治的目的を持つたことになる。従つてあの人事院規則にきめられておるほとんど広汎なあらゆる政治的活動というものは、全部政治目的を持つたということになつて、この人事院規則の対象になつて来まして、非常な重い罰則をもつて抑制されておる。こういうことは戰争中の東條軍閥でもやらなかつたはずなのであります。こういうことが行われておる。そうして結果といたしまして、この人事院規則を利用いたしまして、盛んに政治的圧迫というものが行われておる。職場で壁新聞を張つたということだけで辞職を強要されたり、あるいは共産党員であるということで首切りの対象にすでにあげられておる。新潟大学におきましては、職員組合の委員長であつた医学部の助教授の三上美樹という人が首切りになつておる。同時に副委員長で、理学部の助教授村川新十郎、さらに理学部の助教授關根榮雄、この三名が新潟大学で首切り解雇をされておる。これはすべて共産党員であります。それから新潟第一師範におきましては横田伊佐秋教授が辞職を勧告されておる。他に看護婦二名、これも共産党員でありますが、辞職を勧告されておる。それから科学博物館におきましては、学術会議員であり、理学博士である井尻正二氏、これに対しては高瀬文相が二十九日に中井館長を通じて馘首の勧告をしたというのであります。これが馘首されておる。井尻氏は中井館長の言によりましても、博物館の運営上なくてはならぬ人であるが、共産党員の親玉であるから、これは切らなければならぬということで首を切られておるのであります。こういうことが平然と行われておるのであります。  それからさらに朝鮮人学校の閉鎖、これも政治的な差別扱いであります。それに大阪府教育委員会におきましては、教職員の整理基準の中に、特定の政党に入党している者、または入党しておると認められる者、あるいは影響あると認められる者、こういう者を整理基準の一つにあげておるのであります。特定の政党とは言わずもがな、これは共産党を指しておるのであります。こういうことが行われておる。さらに結社の自由の制限に至りましては、たとえば朝鮮人連盟に対する結社禁止のごとき、これは団体等規正令によつて解散さしたというのでありますが、たれが見たつて終戰以来今日まで、あの例の解散まで、朝鮮を日本軍国主義が植民地にして以来というものは、どれだけ日本の支配者たちが朝鮮人に迫害を加えて来たかということは、われわれ自身がよく知つておる。この日本が敗戰と同時に、朝鮮の諸君が、この長年の日本の軍国主義に対する憎悪から解放された一つの喜びの爆発の過程の中において、どんな騒ぎが起るかも予想もされないような事態が考えられたときに、内地の朝鮮人諸君に一定の組織と秩序と安定性をもたらしたものは、これは朝鮮人連盟ではありませんか。これは日本政府もその他地方公共自治団体も認めておるところなのであります。どれだけ日本政府並びに地方公共団体に協力して来たか、これは周知の事実であります。なるほど終戰時の混乱において、日本人から見れば目に余るようなこともありました。しかしながら朝鮮人連盟がこれらの人々に、日本の内地でいろいろの紛争や混乱を起さないように秩序と組織を與えて来たというこの功績というものは、否定することはできないと思います。そうして日本の民主化に協力して来ているということも、この団体は民主的な団体であるということも、これは何人も疑うことができないと思います。これを一片の政令で、暴力的な団体であるということで、あるいは非占領軍的な団体であるということで、行政庁の一認定によつてこの結社が禁止されてしまつた。そうしてきのうの新聞によりますと――これは法務総裁にも伺いたいと思うのでありますが、この団体等規正令は、今後もちよいちよい発動するだろうというようなことを聞くのであります。この団体等規正令というものは、最近におきましては、国民の民主主義的な常識から言えば、これは実際だれが見ても民主主義的な団体だと思われるものが団体等規正令で解散されるのでありますから、こういう程度のことがちよいちよいやられたのでは、まつたく結社の自由というものは風前のともし火である、ふつと吹きさえすればふつ飛んでしまうような、そういう不安定なものであるというような感じを受ける、そういう事態に今あるのであります。集会の自由のごときも、たとえば前進座が佐賀県におきまして県下を巡業しようとしましたら、前進座の公演には県下の学校施設を使用してはならない、こういう通告をしておる。せつかく観劇に集まつた人々に解散を命じてしまつた、仕方がないから場所をかえて野外で歌舞伎をやつた、これは一例でありますが、前進座の公演については、全国的にこういうふうな会場に対する妨害というものが加えられております。これも明らかに集会の自由に対する妨害であります。また私はこの間ある会合へ行きましてびつくりしたのですが、東京都の條例というものが出ている。その東京都の條例というもので、消防上の必要があるからというわけで、七日前に集会の届出をして、許可がなければ集会ができないのだ、こういうことをやつておる。まつたくむちやくちやです。それから例の公安條例のごとき、これは前国会におきまして、当法務委員会におきましても問題になつたのでありますが、全国的に公安條例というものが地方におきまして制定されまして、これによつて憲法が保障しているところの集会や結社の自由というものは、だんだんだんだん狭められて行き、これによつて基本的な自由というものが抹殺されようとしております。こういう一般的な政治的な自由、思想、集会、結社、言論、学問の自由というものを抑圧、制限されようとしておる。この傾向の中で最も端的に露骨に現われて来ているのが、裁判と検察であります。すなわち逮捕状の濫用です。逮捕状は、申し上げるまでもなく刑事訴訟法におきましては、罪を犯したと疑うに足る相当の理由がなければ逮捕状の請求もできないし、裁判官はまたこの逮捕状を発行してはならないのであります。ところがこの逮捕状がみだりに請求され、またみだりに発行されておる。その一番ひどい例というのは例の三鷹事件におきまして、一番先に逮捕されたところの山本久一君の場合であります。これは御案内のように、三鷹事件、無人電車の嫌疑者として逮捕されておるのであります。ところが二十日も勾留の後におきまして、全然三鷹事件関係がないということで釈放されておるのであります。あれほど三鷹事件というものは全日本の関心を呼だ事件であります。事件の実際の捜査の過祥を見てみますと、電車がつつ走つた、これは無人電車なのであります。だからどういう原因でこれが発車したかということは、調べて見なければわからぬはずです。調べて見て、これが人為発車であるということがわかつて、初めてこれには何か犯罪があるということで、犯罪の捜査が始まるはずであります。ところが一体これに対して、どれだけ人為発車か自然発車かということで捜査がなされておりますか、七月の十五日午後九時二十三分にこの事件が起つて、同夜はほとんど調査は行われておらないのであります。翌七月十六日の十一時からもうすでに電車の解体、復旧工事にとりかかつております。われわれの情報では、その前はわずかに国鉄当局が調べただけであります。今までの常識から言いまするならば、国鉄で一つの事故が起ると、その事故の原因はどこにあるかという究明のために、三日も五日も一週間も、ひどいのになると一月もかかつて原因の究明に專門家がとりかかつておるということを聞いておる。あれほどの大きな事故を起しておきながら、これに対するどんな原因でこの事故が起つたかという調査というものは、ほとんどなされておらない。そしてしかも私の情報によれば、十六日の十八時前に何か東鉄の電車区の方で調べたそうでありますが、その捜査報告書なるものは、何ゆえか検察庁の手によつて公表がとめられておる。こういう状態のもとにおいて、逮捕状が山本久一君と飯田君に発行されておるのであります。しかも発行される前に、二名に対して逮捕状が出されたという新聞の号外まで出ているというような事態が起つている。これは最も明らかな逮捕状の濫用であります。私の聞くところによると、山口県におきましても、ある争議団を彈圧するために、検事正自身が、自分で逮捕状を書いて、そしてそれによつて逮捕したという事件があつた。これは職権濫用罪で告訴されたのでありますが、被告人は無罪になつております。こういうことも行われておるのであります。  それから不当な長期勾留、これは平事件におきましても、三鷹事件におきましても、非常に不当な長期勾留が行われておる。それから拷問による自白の強制、これは三鷹事件あるいは福島の列車顛覆事件、こういうものに端的に現われている。今日われわれは拷問というと何かけつたりなぐつたり、そういうことをしなければ拷問でないように考える、しかしながら拷問とはそういうものに限つたわけではないのでありまして、要するに調べる相手方から自分の希望するような供述を引出すために、精神的なあるいは肉体的な苦痛を與えることが拷問です。この点については三鷹事件におきましては、すべての被告諸君が公判廷で述べておる。齢四十の飯田君があの公判廷において、いかに検事からひどい脅迫おどかし、そういうものを受けたか、それを切々と涙を流して述べておる。こんなことは芝居でできることじやありません。二十そこそこの若い労働者が涙を流して、この検事の調べ方に憤激を持つて、拷問の事実を明らかにしている。これは決してなぐつたりけつたりとは言つておらない。しかしながら、お前は今白状しなければ死刑か無期刑になる、白状すればまあ三年か五年か七年くらいで出られるだろうと、検事が自分で裁判するようなことを言つておる。それからもう証拠は全部上つている、ほかの人はみな陳述している、しないのはお前だけだ、こういうやり方だ。それから親思いの被告だとすると、この親思いであるということを巧みに利用して、お前の親は今病気で非常に困つている、うんうんうなつている。こういうことを言つて、被疑者の心理の弱みにつけ込んで、そしてむりな自白を強要されておるのであります。でありますから、拷問というものは人権思想の発展とともに、民主主義の発展とともに、そういう行動が拷問であるか、これは時代とともにかわるのであります。今日三鷹事件に加えられたこれらの行動というものは、明らかに拷問であります。独房にせつかくある窓を七分目か八分目まで目隠しすると、部屋の中がまく暗になるでしよう。それは共謀通牒を防止するためにやつておるのであります。身柄まで拘束している。今日の基本的人権尊重の建前から言つて、これほどまでのことをしなければならぬということは、われわれはとうてい肯定することはできません。  弁護権の行使のごときもそうです。検察官は、憲法弁護人被告人との面会、交通を禁止することは絶対にできないことになつております。ただ捜査の必要上、ある程度時間を指定することができるという規定を利用いたしまして、検察官の指定のない限り会わしてくれないということで、弁護人との交通を妨害しておるのである。松川事件のごときにおきましては、被告人は七人かおつたのでありますが、弁護人がその被告人全部に会うのに一週間もかかつておる。こういうことでどうして弁護権の十分なる行使ができるでありましようか。  それから客観性なき見込み捜査による人権蹂躙――三鷹事件、松川事件など明らかにそうです。今日その事実が、公判廷において具体的に現われておる。竹内被告は、自分の単独犯であると言つておるではないか。それをむりやりに共犯ということでみんなひつぱる。検察官が自由法曹団の弁護士をことさらに、あれは天下の大うそつきだというようなことを言つて、断らしている。そうして検察官が立会いの上で、弁護人を竹内被告に紹介をして、そうして弁護をつけておる。こういう差出がましいことをやつておる。差出がましいというより、これは実に悪質なやり方です。これは今朝の都下の新聞に出ておるはずであります。ほかの新聞は見ておりませんが、朝日新聞には出ておりました。これは客観性なき見込み捜査をやつたがために、こういうむりをしなければならないことになつて来ておるのであります。  それから検事の予定する供述をしない証人を、法廷で偽証罪の現行犯で逮捕する。これは千葉県で行われておる。千葉県におきまして、法廷におきまして偽証罪の現行犯で逮捕されたという事実がある。それから三鷹事件におきましてもそうです。石川君と金君と二人は、高相会議に中座した者があるかないかと言われて、中座した者がありませんと言つた。そうすると、お前は偽証罪だと言つてこれをひつくくつておる。こういうことが平気で行われることになりましたならば、どうなる。ここに一つの犯罪があつたとします。たとえば火災が起つたとする。一方その附近に検事からにらまれておる人間がおつたとする。よし、その機会だとばかりこれをひつぱる。ひつばられて来た嫌疑者が、いや、私は放火などしませんと言つて、いろいろ自分の無実を証明する証人を出す。すると、その証人を一々、お前は偽証だとして検挙し起訴するということになつたら、この嫌疑者はどうして自分の無実を証明する手段がありますか。ないじやありませんか。このことを三鷹事件の被告諸君は、実際涙を流して訴えているのです。ほんとうの事を言つても、それは偽証だ偽証だ、それはうそだと言つて、その証人を全部ひつぱる。おどかしてひどいのになると、十五回もひつぱる。そうして調べて、検事の要求するような供述をしないからというわけで、十五回もひつばつておる。こんなに証人として呼び出されたら、だれだつていやになつてしまう。
  47. 花村四郎

    花村委員長 梨木君に申し上げます。提案の趣旨説明を簡單にお願いいたします。
  48. 梨木作次郎

    ○梨木委員 承知いたしました。こういうような現行犯逮捕が行われていること。それから東京地方検察庁においては、石川という検事が司法修習生に向つて被告人並びに弁護人側の証人と検察官側の証人とが、同一の事実について違つた供述をした場合には、検察官側の証人が真実を語つておるのである。だから相手は偽証しているんだ、こうしなければならぬというようなことを講義しておるのであります。特にこれをやらなければ危險千万だ、三鷹事件のごときは特に危険だ、こういうような講義をしたということが、われわれの情報に入つている。それかあらぬか。三鷹事件においてこれが具体的に行われておるのでありますから、実に乱暴な話であります。  それから犯罪の捜査にあたつて、検察官や警察官が故意に証拠を隠滅し、て、重大事件を起している例がある。これは三鷹事件、松川事件にはつきり現われている。現に何ら人為発車か自然発車かということを捜査しないでおいて、これは初めから人為発車だということで検挙しておるのであります。証拠隠滅をしたのはだれです。国鉄当局並びに復旧操作にとりかかつてもよろしい、あるいは解体にとりかかつてもよろしいということの許可を與えたのは、検察当局だと言われる。そうすれば、検察当局自身証拠を隠滅しているじやありませんか。証拠を隠滅するということは、その犯罪に利害関係がない限りは、こんなことはやるはずがない。その証拠を隠滅しておる当局こそ、むしろこの事件関係ありと言われても弁解の余地がないようなことまで行つておる。松川事件のごときもそうです。
  49. 花村四郎

    花村委員長 梨木君に御注意申し上げます。提案理由説明を簡單に願います。
  50. 梨木作次郎

    ○梨木委員 わかりました。現場から見つかつた例の犬くぎを抜くためのスパナーとかいうものを――これは現場のたんぼに突き刺してあつたそうですが、これを水で洗つて、わざわざ指紋のとれないようにしてしまつたのは当局です。こういうことを行つています。裁判や検察の面において、こういうことが行われるのは、一般的傾向として、先ほども申しました政治的ないろいろな圧迫、思想、言論、集会、結社の自由が狭められて来て、その頂点として裁判検察の上においてこれが現われておると、われわれは見ておるのであります。今日新憲法下において與えられたわれわれの基本的なる人権というものは、私が申し上げるまでもなく、戰争という、特に敗戰という悲しむべき事態の中から開かれたものであります。その裏には、多数のわれわれの同胞の尊い血が流されている。その結果として開かれたのが民主主義の道であり、人権確立の道なんだ。ところがこの基本的な人権、民主主義と自由というものが、今や、こういうような形において、片つぱしからくずれて行こうとしておるのであります。であるから、われわれは今こそ、あくまでも憲法を守る建前の上において、このくずれ行こうとする基本的人権を確立しなければならない、擁護しなければならない。憲法において與えられているところのこの基本的人権を今こそわれわれ自身しつかりと身につけなければならぬ、われわれのものとしなければならぬということを、国会並びに全日本国民に訴える。そうしなければ、再びあの軍国主義的な時代に見られたような、拷問や検束のむし返しや、政治的ないろいろな圧迫、無権利状態、奴隷の状態が再現するということを全国民に訴え、そしてほんとうに基本人権の擁護の必要性を呼び起すため、すべての自由と民主主義と人権を守ろうとする人々の力によつて、かかる傾向と闘わなければならないという必要性を感じて、この提案をいたしました次第であります。
  51. 花村四郎

    花村委員長 次に政府意見を求めます。
  52. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 梨木さんのいろいろご意見を承りました。いろいろの事実をあげられまして、人権が蹂躙されておるというお話でありまするが、これは御意見でありまして、一々お答えを申し上げませんが、私のただいま伺いましたところでは、今おあげになりました事実は、多くは何かのお考え違いでありまして、決して人権は蹂躙されておらないと思うのであります。もつとも基本的人権は、御承知のように各人の人権が競合いたしますために、そこに社会の公共の福祉というものとの関連が生じて参ります。従つて個人の基本的人権と社会の公共の福祉とは何らかの調和を見出さなければなりません。その調和がつまり法律であります。従つて各人は基本的人権を確保するとともに一定の制限を受けるのであります。その制限を一々基本的人権の蹂躙であるというわけには参らないのであります。だんだん申して参りますと、議論になりますから私はこの辺でやめますが、基本的人権の尊重せらるべきことは、もちろん近代国家といたしまして当然のことでありまして、ことに終戰後の日本におきましては、最も尊重されなければならない問題であります。私どもは今日ただちに人権蹂躙という事実が、この日本から姿を消すことを最も期待をいたしておるのであります。そのために私どもは、先般の国会におきまして人権擁護委員法という法律を御制定願いまして、全国津津浦々に人権擁護委員というものを任命いたしまして、人権蹂躙の事実につきましてこまかいところまで注意をいたしまして、その救済なり絶滅なりを期しておるのであります。もつともこの法律は今年の国会で御制定になりましただけでありますから、まだ二万一千人の擁護委員も完全には任命を果しておりません。しかしこれは重要の職務でありますから、その人選には最も意を用いまして、いずれ全部の委員ができ上りますのも遠からざることと考えるのであります。この委員会は本年一月から最近までの期間におきまして、約四千七、八百件の人権蹂躙問題を取上げまして、これを研究いたし、相当の処置をいたして参つたのであります。ある場合には、これが検察庁に告発をされまして、起訴になつたものすらも相当あるのであります。われわれは人権擁護について決して人後に落ちるものでなく、最も進んでこの仕事を完成したいと考えておるのであります。でありますから人権擁護のために国会において一層御要望のありますることは、私どもは進んでこれをお受けいたしたいと考えるものであります。
  53. 岸盛一

    ○岸説明員 先ほどの御発言の中で、多少裁判所関係のある点と思われるものは、逮捕状の濫用の件と不当の長期の勾留のこの二つの問題だと思います。しかし具体的なしかも現在進行中の事件を基礎としての事柄は、この際意見を申し上げる筋でありませんので、その点は控えまして、一般裁判所運営状態を基礎として、一言御説明いたしたいと思います。逮捕状に限らず、すべて令状を出しますときは、係の裁判官は、決してその捜査機関の要求をうのみにすべきでないということは、新刑事訴訟法のもとにおいて、運用上各地の裁判官は十分心得ているはずのものであります。刑事訴訟規則の中でも、特にその点は明文を設けまして、令状を発布するときは、令状発布の要件が備わつておるかどうかという点について確かめるということになつております。なお実務家の会同の際なんかでよく話に出るのでありますが、最近逮捕状の請求が検察官を経由しないで、直接警察から来る場合が非常に多い。そういう場合に非常に要件の不備なのにかかわらず請求があつて裁判所としても非常にそれに困つているというような話も出ておるくらいでありまして、旧刑訴の二百五十五條の、例のあの規定のもとにおいて、裁判官が捜査機関の手先になつておつたというようなああいう非難は、新刑訴のもと、新憲法のもとにおいては、絶対に繰返されてはならないということは、裁判官も十分心得ておるはずであります。最近の統計によりますと、捜査機関からの逮捕状の請求に対する却下の数がだんだんふえておりまして、今年の一月は全国でわずか五十五件の却下がありましたものが、八月になると百三十九件、九月には百四十一件というふうに、半年前と比べますと非常に著しい増加を来しております。なおそのほか拘留の取消とか、あるいは保釈、執行停止というものの割合も、この新刑訴の施行六箇月の経過を見ておりますと、非常にふえて来ております。ことに保釈の点につきましては、新憲法で例の刑事保釈という新しい規定がありますので、その運用については万全を期したいということから、昨年の九月と今年の九月の二回にわたつて最高裁判所から刑事保釈の運用については十分粗漏がないように、通達を全国裁判所に出しておる次第であります。御参考までに申し上げますが、裁判所は、むろん御承知の通り政府から独立しており、なお検察官とも独立しておりまして、この独立の立場で裁判をいたしますが、最近の裁判においては、無罪の件数増加しているとい点を御留意願いたいと思います。終戰後は、戰前に比べまして非常に無罪がふえて来ておりまして、昭和二十二年には七百八十五件の無罪がありましたものが、昭和二十三年になりますと、昨年一箇年に二千四百五件もの無罪を出しているのであります。今年は一月と二月たけで六百三十八件に達しております。これを見ましても、検事の起訴された事件のうち、無罪にすべきものはどんどん裁判所は無罪にしておるということがおわかりになると思います。先ほどの御発言のうちで、裁判所関係のあると思われる事柄については、ごく抽象的ではありますが、以上のようなことであります。
  54. 花村四郎

    花村委員長 他に御発言はありませんか。――なければ本決議案についてはこの程度にいたします。     ―――――――――――――
  55. 花村四郎

    花村委員長 次に昨日に引続き猪俣君に質疑を許します。叫俣浩三君。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本が平和主義を徹底的にとりまして、憲法に明示せられておるということは、私ども感激をもつて身にしみておるものであります。世界の人類の理想を、日本がまず先がけて憲法に明記したということは、実にわれわれ日本国民の誇りだとわれわれは考えておるのであります。そこでこの日本の平和主義というものは、徹底的に推進して行かなければならぬのであつて、これにいささかなりとも曇りを生ずるような行動につきましては、断固その取締りをやつてもらいたいという考えから質問するのでありますが、先般当委員会におきまして、元華北派遣軍司令官である根本博という中将が渡台いたしまして、国民党軍に参加したということが外電に伝えられておる。そこでこの問題につきまして法務府に私は質問をいたしたのでございますけれども、まだ取調べ中ではつきりわからぬという御答弁であつた。なお最近の新聞を見ますと、この根本と一緒に渡台したと称せられておる吉川という中佐が日本に再び帰つて来て、これに対して法務府では調査をしておるような新聞記事が見えるのでありますが、もう私の質問しましたときから相当の日がたつておりますし、この根本元中将らが渡台の真相につきましても、調査が相当できておることと考えますので、この点につきましての真相を御発表願いたいと思うのであります。
  57. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ただいまの御質問の点でありますが、その後調査をいたしましたから、その結果を詳しくお答えをいたしたいと思います。  中国国民軍に元日本の軍人が参加しておるといううわさにつきましては、かねてから各種の情報を耳にしておりまするし、最近新聞紙上や雑誌記事を見ましても取扱われておるのでありまして、深い関心を持ちまして、法務府におきましては特別審査局をして、追放者の動靜監査として調査を進めさせておるのであります。現在までにわかりましたところでは、日本人義勇軍というようなものが、日本の国内において編成されておるというような事実はまつたくないようであります。この問題に関しまして、元正規の陸軍中将であります根本博という者が、中国国民政府の募兵運動に関係しておるという風評がまず伝えられたのであります。同人の居住地につきまして調べましたところ、同人は現在不在であります。日本におらないようであります。家人には旅行先を告げずに家を出て行つたということであります。それから吉川と申しますのは吉川源三という人らしいのでございます。これは元陸軍の中佐であります。この人もどうも根本博と一緒に台湾に渡航したという情報が入りまして、調査を進めておりましたところ、何でも先般国外から日本へ帰つておるということがわかりましたので、同人について目下調査をいたしております。この吉川と申しますのは、昭和二十年の三月ころから、第六軍の参謀として中国の杭州に駐在しておつたそうでありますが、復員後杭州出身の李鉎源という青年が東京へ参りまして、今年の一月にある人の宅でその人に会つた。その後同人からしばしば中国に渡つてほしいと勧誘されましたので、吉川はこれに応ずる意思を表明いたしました。そういたしまして、今年の五月の初めに右の李鉎源のあつせんによりまして根本博と会見いたしまして、同人と一緒に中国へ渡ろうという決意を固めました。そうしてただちに根本と李と今の吉川の三人で東京を出発して、福岡におもむいたのであります。そうして六月の下旬宮崎県延岡市の沿岸から、台湾籍の三十トンくらいの汽船に便乘いたしまして、台湾に向けて渡航をいたしました。同行者は根本博、吉川源三、岡本秀徹、照屋林蔚、中尾一男、吉村某、浅田某の七名であつた。一行は七月十日に台湾の基隆に到着いたしました。その後八月の半ばまで台北郊外の北投温泉の宿屋に滯在しておりまして、中国側の指示を待つたのでありますが、湯恩伯の要望によりまして、一行のうちで根本ら六名は福建省におもむき、吉川は福州におきまして、湯恩伯の軍隊に身を置き、厦門作戦にも参加した。しかしながら同地の対中国共産軍との戰況は、国民政府軍に不利であつて、福建の命数も予測にかたくない状態に置かれましたゆえに、帰国したいという意思を伝えまして、湯の許可を得まして、吉川、照屋、中尾の三名は、九月下旬に中国船に便乘して日本に帰つたと申しております。これは吉川の陳述であります。そのほかいろいろと調査させたのでありまするが、日本の国内において、ただいま申し上げましたように、日本人義勇軍が編成されたという事実はどうも発見されないのであります。要するに李を中心とする日本人募兵運動は、李らの策動によりまして、一部の日本人がこれに応じて渡航するに至つたというにとどまるようであります。従つて大規模な募兵運動ではなかつたということは確実であります。本件の運動に関與しました者の処置につきましては、覚書該当者の政治活動といたしまして、これは目下鋭意調査を進めておるのであります。吉川、照屋、中尾らの、国外渡航に関する適法の旅行証明書を持つておつたかどうか、こういうことにつきまして、別に調査をする準備をただいま進めておる次第であります。今まで判明いたしましたところはこの程度であります。さよう御承知を願います。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 今総裁からも最後に触れられたのでありますが、幸いにして日本内地に大規模な募兵なんというものがなかつたということは、仕合せであると思うのであります。私は日本の民族性というものに対しては、ことにフアシヨ的ないわゆる好戰的な民族性というものに対しては、まだ非常な危惧を持つておるものでありまして、ことに経済の不安な今日、利をもつて誘われると、こういう誘惑に陥る可能性も十分ある。これが今講和会議を前にいたしまして、さなきだに日本人のフアシヨ思想というものに対しましては、多大の疑惑がぬぐわれていないことは、私の申すまでもないまことに重大な点であると思うのでありますが、かような際におきまして、たとい一人でも二人でも、ことに元中将とか中佐とかいうような指導的な軍籍にあつた者が、かようなことで他国の戰乱の地におもむいて行くようなことが起りますと、これは日本にとりましてはゆゆしき問題であると思うのであります。ことに永世中立というようなことが今輿論として起つているこの際におきまして、嚴にそのような盲動は封殺しなければならぬと思うのでありますが、しからばもしあの根本らのような行動をとる者が続々現われて、それが発覚した際に、これに対処するいかなる法律上の制裁があるのかをなお明らかにしていただきたいと思います。それが追放された軍人の場合、しからざる者の場合、多々あろうと思う。これに対しまする取締りの規定というものがどういうふうになつておるのであるか。もしその不備がありまするならば立法措置も講じなければならぬ。これに対する法務府のお考えがどうであるかを承りたいと思うのであります。
  59. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 ただいま猪俣委員の仰せのごとく、講和会議を前にしまして、ことにフアシヨ思想が台頭することのないように、お互いに警戒しなければならぬという御意見はまつたく同感でございます。日本の国内から外国に渡航する者につきましては、海外に旅行ずる日本人に対する旅行証明書に関する覚書というのが、一昨年の四月十四日に日本政府に司令部の方から交付されておりまするので、この覚書に基きまして、旅行証明書なくして海外に旅行する者がありましたならば、覚書違反として嚴重に処罰されることになります。これは軍人たると軍人にあらざるとを問わないのであります。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 この覚書違反というのは、結局どういう制裁になつておりましようか。
  61. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 これは御承知のように、指令違反については勅令三百十一号が制定されておりまするので、三百十一号違反として十年以下の懲役、七万五千円以下の罰金という制裁があります。
  62. 猪俣浩三

    猪俣委員 勅令三百十一号ですか。
  63. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 そうです。
  64. 猪俣浩三

    猪俣委員 これによつて処断するということに相なるわけですか。それから覚書及び勅令三百十一号を私まだよく研究しておりませんが、それは渡航せんと準備をした者にも適用になるのですか。たとえば刑法で言いますなら予備とか、そういう段階にも適用になるのですか。また渡航した者に適用になるのであるか、もう一点、そういう募兵運動のようなことを内地においてやつた内地人の責任及び外国人の責任はどうなるのであるか、さようなことについて御意見を伺いたい。
  65. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 お尋ねの旅行証明書なくして海外に渡航した場合に制裁が課せられることは、ただいま申し上げた通りでありまするが、海外に旅行証明書なしに渡航せんとして、国内において予備陰謀をなしたという程度においては、おそらく覚書違反にはならないだろうと思うのでありますが、いまださような覚書違反の事例によつて処罰した例もございませんので、その点はとくと覚書の趣旨、処罰の範囲については研究いたしたいと存じます。
  66. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま一つ、私のお尋ねしましたのは、結局根本らのような目的をもつて同志を募つて歩くという行動が、今何らかの規則によつて取締り得るものなりやいなや。これは覚書には包含せられないと思うのでございますが、覚書は渡航ということだけに限られておるのですか。私はこの目的を転化しても、つまり外国の軍隊に参加する、あるいは作戰に参加するような目的で同志を募るというような運動に対して、何らかの取締りがあるやいなや、お考えをお尋ねしたい。
  67. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 旧軍人が――つまり覚書該当者が、国内においてさような募兵運動に参加するということは、団体等規正令にいう政治活動といえるかどうか、その点が問題だろうと思うのであります。その点については目下研究いたしております。
  68. 花村四郎

    花村委員長 本会議の定足数が足らぬとのことでありますから、本日はこの程度で散会し、次会は明後二十八日午後一時より開会いたすことに御了承願います。     午後三時二十五分散会