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1949-11-19 第6回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十九日(土曜日)     午後一時四十六分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 高橋 英吉君 理事 石川金次郎君    理事 梨木作次郎君 理事 大西 正男君    理事 佐竹 晴記君       佐瀬 昌三君    古島 義英君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    田万 廣文君       上村  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         (法制意見第四         局長)         検     事 野木 新一君         (検務局長)         検     事 高橋 一郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      本間 喜一君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  刑事補償法案内閣提出第二号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二五号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二六号)     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程刑事補償法案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案でありますが、本日の日程に入ります前に、昨日梨木委員よりの質疑に対して保留されておりました答弁を、この際求めます。高橋検務局長
  3. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 それでは昨日梨木委員からお尋ねのありました、横浜海烈号事件で、法務府の報告を受けました内容を御説明いたします。犯罪の日時は、本年八月十七日、場所は川崎市扇町所在日本鋼管大島工場でありまして、被疑者中国側合計八名、船長その他船の乗組員や、それ以外の商業その他に従事しておる人たちでありまする日本側被疑者合計六名でありまして、その氏名は阪田誠盛三上卓板垣清橋本武志間忠兵衞大窪謹男という人であります。以上十四名であります。捜査の端緒は、八月十七日に前に申し上げた大島工場埠頭において、被疑者の一人であります阪田が、その場所警備の任に当つております第二公安警備司令部警備員に対して、荷物を運搬したいんだが便宜を與えてもらいたいということで、十万円を贈賄しようとして発覚したのであります。犯罪事実の内容は、阪田と申しますのは、満州事変以来中国各地日本軍側に協力し、いわゆる支那通として活動したもののようでありますが、終戦後中国から引揚げ極東経済研究所というものの幹事長に就任して、現在に至つておるようであります。その者が従来自分の部下であつた板垣清が、先般中国国営招商局所属船海烈号に乗つて、香港から日本に帰つて参ります際に、船中から電信で連絡をいたしまして、今回の密輸協力方を頼まれたもののようでございます。それで阪田知合いの三上に相談し、さらに知合いをたどつて大窪及び志間忠兵衞と相談をし、志間運搬関係について橋本に話を持ち込み、結局橋本がトラックを用意して、八月十七日、問題の埠頭におもむいた際に発覚したということになつております。当時陸揚げしようとした物資は、米国製ペニシリン、ストレプトマイシン及びサッカリンがおもなものであつて、個数は三百六十五個、総見積り価格は二十万米ドル相当と言われております。阪田は八月十四日に、板垣を通じまして荷主でありますところの中国人側から、運動資金として現金、小切手を合せて百九十五万円ばかりを受領し、それぞれ分配しておるようであります。本件の捜査は、日本側では全然やつておりませんで、占領軍側横浜第二公安司令部において担当いたしております。その後本人たち身柄につきましては、阪田保釈金百万円をもつて在宅になりましたが、同様百万円で在宅なつ中国人の劉というものが逃走した関係で、その保釈を取消され、他の者と同様現在勾留されておるもののようであります。この問題に関しまして、こちらでわかつておりますことは以上の通りであります。
  4. 梨木作次郎

    梨木委員 この密輸事件に関連いたしまして、特に今度逮捕された人々は、この以外にも相当多額の密輸計画し、また実際成功しておるということをわれわれは聞いておるのでありますが、この点について、検察庁はどういうような捜査をし、どのように事実が判明しておるか、これを伺いたいと思います。
  5. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 その点につきましては、現地の検察庁でもおそらくそうであろうと思いますが、法務府といたしましては、ただいま申し上げたことのほかには事情を知つておりません。
  6. 梨木作次郎

    梨木委員 この事件で逮捕された三上卓、これは御承知のように五・一五事件関係者であります。こういう人がこの密輸関係しておる。そうして彼が逮捕されて語つたところによると、この密輸によつてもうけた金で、かねての志を実現しようと考えておつたということは、とりもなおさず軍国主義的な、国家主義的な計画を実行しようということだと思うのであります。そうすると、こういうような人々計画的に、つまり軍国主義的な計画を実行するために、軍資金を集めるための運動がなされておつたということが、これによつて明白であります。そこで特に最近いろいろと原因不明の奇怪な事件が起つておる。たとえば下山事件だとか、あるいは今度の三鷹事件だとか、松川事件だとか、これらは現在検察庁が手を入れたところによると、何か共産党関係があるようなことが宣伝されておるのでありますが、たとえば去る十月二十九日に、国鉄信濃川送電線が何者かによつて妨害された。このために東京地方においても、幾らかの間停電しておつたという事実があるのでありますが、この事件犯人として検挙された上村達雄という人間がおります。この上村達雄という人間は、過般の国会の本会議におきまして、問題となりました新亜通商、これは大体われわれの調べたところによりますと、密貿易を主として目的としてつくられた会社のように思われる節があるのでありますが、この新亜通商中心人物であるところの今成拓三という人の分家にあたる今成クミという人の家に身を寄せて、お世話になつてつたということが判明しておるのであります。この人間がこういう信濃川送電線妨害をやつておる。しかもこれは現在捜査の進められておる段階におきまして、この事件が起ると同時に、やはりこれは共産党がやつたのじやないかということで、いろいろとそういう調査が進められておるのであります。しかしこれは上村という人間がつかまつたので、右翼系統人間がやつたものだということがほぼ明らかになつたようでありますが、下山事件にいたしましても、すべてまだ明確になつておりません。そうすると、こういう密貿易から、地下組織を通じていろいろな軍資金が出て、その軍資金におどらされて、いろいろな原因不明の事故や事件が引起されるということが歴然としておると思うのであります。しかもこの新亜通商の立役者と言われておるところの今成は、こういうことを言つております。現在いろいろ原因不明の事件が起つておる。これはわれわれの聞いたところによりますと、どうもこういう地下組織の連中のやりそうなことだという趣旨のことを言つておる事実があるのであります。そうしますと、これは非常に重大な問題だと思うのであります。でありまするから、この点についてまず私が伺いたいのは、この信濃川送電線妨害事件犯人上村達雄今成拓三との関係を、どういうふうに調べられておるか。この点を伺いたいと思います。
  7. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの点につきましては、ただいま手元資料を持つておりませんので、お答えができません。
  8. 梨木作次郎

    梨木委員 それではその次に、新亜通商というのは、実は中国との貿易で、約四億円ばかりの砂糖密貿易に成功しておるということも、われわれは聞いておるのであります。こういう点について、法務府には一体どういう報告が入つておるか。検察庁はどうい捜査を進めておるか。これを伺いたいと思います。
  9. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 前の御質問同様、ただいまちよつとお答えしかねるのであります。
  10. 梨木作次郎

    梨木委員 そうすると、あなたの報告のあつた事件だけを見ましても、これは重大な事件であります。特に右翼的な三上卓であるとか、支那通と言われて今度の戦争に協力した戦争犯罪人的な人物との連絡のもとに、こういう密貿易が行われておるということは、これは重大な事件であります。この事件を契機といたしまして、最近こういう密貿易の大がかりなものが行われたという事実が、われわれ民間人の耳にさえ入つておるのに、取締り当局に何ら今日までそれがわかつておらぬということは、これは重大な怠慢だと思うのでありますが、一体これは全然調べておらないのか、知らないのか、調べようともしないのか、これをひとつお答え願いたいと思います。
  11. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 上村達雄の問題につきましては、検察庁調べ、あるいは報告をしておらぬという意味ではなくて、私がただいま手元資料を持つておりませんのでお答えをいたしかねると言うにとどまるのであります。もちろん検察庁においては、重要なる事件につきましては、熱心にこれを捜査いたしておるものと考えるのであります。
  12. 梨木作次郎

    梨木委員 私が申しましたこの新亜通商の問題も、一回四億円何がしかの砂糖密貿易に成功したというのですが、この点はわれわれ民間人の耳にも入つておるのでありますから、この点は一体検察庁調べておられるのか。今わからないというのならば、次会までに御報告を願いたいと思います。  それからまたこの三上卓だとか、あるいは坂田誠盛だとかいう人たちと、他の地下組織との結びつきというものについて、どういう程度調べ法務府はやつておるか。これをひとつ明確にお知らせ願いたいと思うのであります。私は一時質問を留保いたしまして、さらにその御答弁を得た上でお伺いしたいと思います。
  13. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 上村達雄関係につきましては、承知いたしました。海烈号関係につきましては、いわゆる裁判権行使に関する問題でありますけれども、現在勅令三一一号というのがございまして、それの第一條に定める事件につきましては、日本側では公訴を提起してはならない、こういうことになつております。この勅令の根拠になりましたのが、昭和二十一年二月十九日付の刑事裁判権行使に関する覚書でございますが、その覚書によりますと、日本側裁判権行使し得る犯罪でありましても、占領軍側におきまして、これは占領軍軍事裁判所で管轄するのであるというふうに、具体的の事件について認定いたしました事項につきましては、やはり日本側には裁判権行使が禁止されているわけでございます。従いまして、現段階におきまして海烈号関係について検察庁捜査をするということは、穏当でないとわれわれは考えております。
  14. 梨木作次郎

  15. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 勅令三一一号と申しまして、連合国占領軍占領目的に有害なる行為に対する処罰等に関する件という勅令がございます。これによつて向うのやる事件とこちら側とがわかれておりまして……。
  16. 梨木作次郎

    梨木委員 それはわかりました。しかしこちらといたしましては、できるだけ占領目的違反犯罪についても捜査しなければならぬ。いよいよ捜査しまして、あるいは事件によつては、連合軍最高司令部の方でこれを裁判するということになるかもしれませんが、私はこういう日本民主化を非常に阻害するような犯罪については、日本の官憲といたしましても、極力捜査を進めて行かなければならぬという見解のもとに立つて、どの程度のお調べをしておられるかということを伺いたいし、これはやはりしなければならぬものだと考えておるのであります。  それから今成拓三という人は、われわれの聞いたところでは、元ビルマ首相のバーモ氏をかくまつたという経歴の人のようでありますが、この人は一体公職追放か何かになつておるのでありましようか。その点お伺いしたいのであります。     〔委員長退席高橋委員長代理着席
  17. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまお尋ねの点は、特別審査局の所管になりますから、私からお答え申し上げかねます。
  18. 角田幸吉

    角田委員 議事進行について。付託された法律案先議炉ていただきたいのであります。もし相当長ければ讓つていただいて、ここで付託された法律案を審議していただきませんと、忘れてしまうので、そういうような御処置をお願いいたします。
  19. 梨木作次郎

    梨木委員 私はもうこれで打切ります。     —————————————
  20. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 それでは昨日に引続きまして、刑事補償法案を議題といたしまして、質疑を続行いたします。
  21. 石川金次郎

    石川委員 それでは、昨日に引続きまして、刑事補償法案質問をいたします。  冒頭に返りまして、第一條であります。第一條によると請求権者決定されておるのでありますが、請求することのできる権利者は、無罪裁判を受けた者としてあります。ところが無罪裁判を受けた者と同様に取扱わなければならないものが、刑事訴訟法規定にあることは御承知通りであります。すなわち刑事訴訟法の三百三十九條の第一項第二号公訴取消しせられたとき、この場合には公訴が棄却せられるのであります。ところがこのような場合において、刑事補償法による救済を必要としなかつた理由、これをまずお聞きしたいのであります。
  22. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 私ども立案に際しまして、まず憲法四十條を第一に念頭に置いたわけでありまするが、これによりますると、抑留拘禁を受けたのち無罪になつた者、こういうことになつておりまして、この精神はもちろん裁判所無罪ということにはならなくとも、それに近い場合まで押し進めることが、人権の保障の上から申しまして、まことに望ましいのでありますが、憲法は直接それを申してはいないように考えております。それで本法案は、公権力の行使による国民に損害のあつた場合のすべてをカバーするものではもちろんございませんで、その中で特に裁判ではつきり無罪なつた、いわゆる冤罪者に対して国民がともに泣こうという法案なつたわけであります。それで今御指摘の刑事訴訟法第三百三十九條の、たとえば第一項第一号「起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。」この場合においては公訴棄却裁判があるわけでありますが、このような場合には無罪と同一視すべきであるから、やはり刑事補償をすべきではないかというような御趣旨でありますが、第三百三十九條第一項第一号は、起訴状の書き方がたいへんまずい。なるほどほんとうのことを書いてあるけれども、そのことが実は罪にならないことを書いてあるというような場合をさすものと考えるのであります。そういう場合には、公訴棄却になつたのちに起訴状を書きまして、罪となるべき構成要件を備えたものを出せば、やはり有罪として裁判を受ける可能性があるわけでありまして、またそれによつて抑留拘禁を受けるということが、実は非常に稀有の場合、むしろ考えられんではないかと思います。しかしいわゆる在宅事件で、罪とならないようなへたな起訴状を出した場合には、この場合に当りますが、その場合に身柄を逮捕勾留しようとして令状を求めるということになりますと、令状の記載事実が罪とならない事実などが書いてあつたのでは、裁判所令状を出すということはとうてい考えられないのであります。従いましてそういうようなおそれは、これは考えないでよろしいのではないか。またかりにその点は別といたしましても、この場合には無罪ということにはならない。やはり有罪であるけれども、手続の関係で一度公訴棄却になるというようなことが考えられますので、刑事補償対象といたさなかつたわけであります。それから同じく第二号の「公訴が取消されたとき。」と申しますのも、これは既判力を有しませんで、次の第三百四十條等によりまして再起訴をすることが考えられるわけであります。さような関係で、これらの場合はいわゆる無罪なつた場合と同じに考えることは適当でない。またこの程度のことを考えるものであれば、まだほかにもいろいろ問題になることがありまして、それをどこで切るかということは、理論の問題と申すよりは、むしろ政策の問題でありまして、結局は国会で御決定を願うほかはないのでありますが、いろいろな観点から総合的に判断をいたしまして、まずこの本法案に定めた裁判無罪になつて、はつきりした冤罪者というような程度に補償することをもつて十分と考えたわけであります。
  23. 石川金次郎

    石川委員 今刑事訴訟法第三百三十九條の一項二号が問題になつたのでありますから、この場合一つ御見解を承りたいのであります。つまり公訴が取消されたときに、非常に大きな犯罪の嫌疑をこうむりまして拘留せられた。拘留ぜられたが非常に長かつた。ところが審理の結果、有罪の確信が検察当局にはなかつた。それで取消された。これは稀有の場合でありますが、そういうことがありました場合の救済方法は、現行法考えられますかどうか。
  24. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 まことにごもつともの御質問であります。私どもはその点についてはかように考えております。それは刑事補償を抜きに考えましても、一般に裁判を続けて行くよりも、早く公訴取消した方が有利なのではないかというふうに観念しがちでございますが、実は違うのではなかろうか。すなわち公訴取消しということは、実体をきめずに打切つてしまうことであります。ところがたとえばほかに新犯人が出ますとか、その他の理由によりまして、公訴維持が困難になつた場合におきましても、むしろ裁判をそのまま続けて行つて無罪裁判を受ける方が刑事補償を離れても被告人のために有利になるのではないか。もちろん訴訟のために、被告人の方で受けるいろいろな煩わしさというような問題は十分考慮しなければならないのでありますが、実体関係についてはつまり無罪である、こういう確認を受ける意味において、そのように考えるわけであります。従いまして公訴取消しということは軽々になすべきものではない。また反面これを軽率にやりますと、むしろ起訴する場合に軽率になるような副次的な弊害も伴いますし、何よりもただいま申し上げたように、まず被告人ほんとうの利益ということを考えれば、ただいまのように公訴維持が困難になつたというような場合には、むしろ無罪裁判を受けるべきではなかろうか、そうすれば当然刑事補償の方もかかつてくるわけでありまして、公訴取消し運用につきましては、従来から非常に厳格にやつておりますが、今後といえどもその方針はかえないつもりでございます。
  25. 石川金次郎

    石川委員 なるほどこの公訴取消しはやらないのだ、こうおつしやれば刑事訴訟法公訴取消しというこの権限がいらなくなつて参りますが、今の三百三十九條の第一項の二号もいらなくなつて参りますし、かりにやつた場合にやり得るのであります。やつていいのであります。むしろ途中で公訴維持が困難になつた場合、検察官があつさりと下げてくださるという場合、ところが被告の方では無罪だと確信しておつて自分の方では裁判維持してくれということは、刑訴上には何らの規定はありません。検察の方ではめんどうだから下げようということになつた場合の救罪方法は、どんなことなのかお伺いします。
  26. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 無罪裁判まで行かずに公訴取消した場合に、公務員側故意過失があれば、もちろん国家賠償対象となり得るのでありますが、そうでない場合には、刑事補償対象とはなりません。それでは非常に不公平ではないかということも出て参りますけれども、やはり公訴取消しというものは、取消しをするものの取消しの動機や何かが、これでは有罪裁判を受けられない、あるいは被告人側の方で、自分裁判がどこまで行つて無罪であるというような場合もあるかと思いますけれども、やはりはつきり無罪と確定されたというわけには行かないのでありまして、無罪と確定された場合と比べて、やはりその間に差異があるのではないかというふうに考える次第であります。
  27. 石川金次郎

    石川委員 その場合、検事公訴を取下げた、取下げることは有罪の見込みがない、従つて被告刑事補償を受けないということを認識して、これを取下げたのであるから、故意過失ありとして国家賠償法による救済ができない。しかし何らかの救済方法を立てておくことは妥当ではないかという考え方を、当局ではいたしておくことが必要ではないか。
  28. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの点でございますが、結局どこで切るかということは、どこまでも国会で御決定をいただくよりしかたないことでありますが、私どもといたしましては、やはり裁判無罪と確実に認定された場合と、そうでない場合とは差異がある。従つて無罪の場合には刑事補償がなされ、この場合にはなされないということは、必ずしもふつり合いではないというふうに考えている次第であります。
  29. 石川金次郎

    石川委員 なるほど御説はわかりました。無罪という裁判上の確定を得て刑事補償がなされるという原則をおとりになるということはよくわかりました。先ほど申しました通り公訴取消した場合の救済方法現行法規では当局として考えられないかという点であります。それを今御意見求むることはむりかもしれませんけれども刑事補償法をこしらえて参りますときに、そういうことが起つたならば、たとえば刑事訴訟法三百三十九條というものは当然お考えなつたろうと思う。それではどうしてこの場合に救済して行くか、救済せぬでもよろしいかということはお考えなつたろうと思う。三百三十九條の一号、二号の場合における救済方法はどう考えられたか。救済する必要なしと考えられたか。また救済する法規があるからかまわないと考えられたか。これを聞きたい。
  30. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 この公訴取消しの問題は、立案の際に十分論議したところでありますが、結局先ほど申し上げたように、公訴取消し運用の問題においてこれを注意する、こういう結論なつたわけであります。別途法案中において、何らか特にこの点について救済方法を設けるというようなことまでは必要ないではないかという結論なつたわけであります。
  31. 梨木作次郎

    梨木委員 ちよつと、その問題と同じ質問を私したいと思つてつたので、お伺いしたいのでありますが、たとえば公訴棄却判決を求めます。この公訴棄却判決というのは、いろいろ理由が三百三十八條規定されております。私たちは特に重要視したいのは、第四号の公訴提起の手続きがその規定に違反したため無効であるとき」ということ、この点を理由にして公訴棄却判決を求める場合が非常に多くあると思うのであります。というのは、御承知のように、捜査過程において、拷問がなされた場合におきましては、これは御案内のように憲法によつて拷問は絶対に禁止されているのでありますが、捜査過程におきまして、いささかでも拷問があつた場合においては、その捜査そのものは無効であります。従つて、その拘束も無効であります。従つて、この三百三十八條によりまして公訴棄却判決をせねばならぬ。特に憲法が禁止しているところの拷問の問題、これは現在三鷹事件におきまして、非常にこれが問題になつているのであります。ところが告訴された検察官に言わせると、この事件について拷問をしたという検察官が告訴されていますが、その告訴された人々調べた高検の検事の話によると、被害者調べてみたが、被害意識がないというようなことを言つているのでありますが、どういうことが拷問なりやいなやという問題であります。たとえば、なぐつたり、ひつぱたいたり、そうするとこれはもちろん拷問でありますが、しかしながら人権思想普及発達件つて、そういう有形的な暴力だけでなくて、実際身体を拘束したり、それから読書をさせなかつたり、あるいは言葉の上で死刑だとか無期だとかいうようなことでおどかしたり、お前さんのお父さんや親類や、そういうものが非常にお前のことを心配しているとか、またその人の思想的な、社会観的なものをことさらに動揺させるようないろいろな脅迫的な、あるいは懐柔的な尋問をやり、非常な精神的な苦痛を加える、これも一種の拷問だと思うのであります。こういう拷問がなされた場合におきましては、これは憲法第三十六條によつて明らかに禁止されています。憲法三十六條では「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」となつています。従つて捜査過程におきまして、少しでも拷問があれば、その捜養というものは無効なんです。そういう捜査を基礎にした起訴も無効なんです。だからこれは公訴を棄却しなければならぬものだと思う。こういう事例が今後どんどん出て来ると思うのであります。またこれをやらなければ拷問というものはなくなりません。拷問というものは絶対に禁止されたというこの観点から捜査当局捜査を進めて行かなければ、人権尊重の思想というものは普及しません。ですから、この問題に関連して、特に公訴棄却判決があつた場合におきましては、また公訴棄却決定があつた場合において、これを救済する方法をつくらないということは、刑事訴訟法の建前から行きましても、御案内のように、刑事訴訟法は公共の福祉を維持するとともに、個人の基本的人権の保障を全うしながら、事案の真相を明らかにすることが目的である。そうして刑罰法令を的確化し、迅速に運用、適用するのが目的でありますから、それでなければこの人権の保障ができません。こういう観点から行きまして、今の政府の御説明では、なるべく運用の面で公訴取消しとか、公訴棄却というものをやらないようにするとおつしやるが、むしろどんどん控訴棄却であるとか、あるいは公訴取消しというものをやるようにした方が、より刑事訴訟の本来の目的を達成することになると思うのでありまして、これはどうかもう一ぺん考え直してみていただきたい。ぜひこれはこの中に入れていただきたいということを、私は非常に熱望するのでありますが、もう一度そこの点に関する所信を伺いたいと思います。
  32. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 三鷹事件の取調べは、現在裁判進行中でありますが、すでに法務総裁が、あの問題については検察官に不法はないということを、当国会においても言明されておるのでありますから、この具体的問題については、私からは何ら触れるつもりはございません。ただいま御質問趣旨は、公訴取消しをむしろ活用し、またそのために刑事補償法にも、その場合に刑事補償をすべき旨を定めてはどうかというふうに承つたのでありますが、ただいまたとえにお引きになつ拷問になる証拠によつて起訴し審理をするという場合に、公訴の手続がこの規定に違反した場合というのであるか、あるいは証拠の価値がなくて無罪となるべきものであるか。すなわち手続的なものであるか、実体的なものであるかについては、どうも手続的というよりむしろ実体の問題でありまして、そのような証拠によつてはとうてい有罪裁判が得られない。公訴の手続が違法ということで、公訴棄却をすべき場合ではなくして、裁判をやつて無罪なら無罪、こうすべき場合のように考えるのであります。従つてそのような点を御心配になつて公訴取消しを活用せよということは、私としては適当ではないのではないかというふうに考えておる次第であります。
  33. 梨木作次郎

    梨木委員 この点は非常に重要な問題なのでありまして、今の検務局長の御答弁だと、拷問があつた場合においては、それはこの証拠の証明力の問題で、むしろそれは実体的な手続の中でやるべきであるというような御答弁でありますが、こういうことになりますと、憲法拷問を絶対に禁止しておることは一体どういうことになるのか。この拷問捜査過程において少しでもあれば、それは無効です。これは憲法第九十八條に「この憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」ということになつておるのでありまして、つまり公訴提起の手続処分と言いますか、これは一切憲法に違反しておるから無効です。こう解釈しなければ、憲法が絶対に拷問を禁止しておるというこの精神が徹底しないのです。この点については、われわれの間においても、いかにこの拷問というものが人権を蹂躙するか、またそれが民主主義の発展を阻害するかということについての認識というか自覚というか、それが非常に不徹底だと思うのでありまして、これは憲法におきましては、絶対にこれを禁止するという言葉は、私もあまり詳しく調べてありませんが、ほかにないと思うのであります。この拷問の点だけが絶対にこれを禁止するとなつておる。ということは、これがあつたら最後、その手続は全部無効だというように、私たちは解釈しなければ、憲法趣旨が徹底しないし、人権の擁護と民主主義の発達が期待できないと思うのでありまして、この点もう一度しつつこいようでありますが、お伺いいたしたいと思います。
  34. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 問題をたいへん拷問に重きを置いておられますが、拷問の場合には、当然当該公務員が刑法上の特別公務員職権濫用罪をもつて起訴せられますし、また当然故意があるわけでありますから、国家賠償法によりまして、あえて刑事補償を待たずに賠償をなし得るわけであります。その場合に、刑事訴訟法公訴棄却すべきものかどうかというような点はともかくといたしまして、絶対に拷問を受けながら、補償も受けずにそのまま泣き寝入りをしなければならないのだということは絶対にございません。そういう意味憲法規定は嚴然としておるわけでありまして、拷問に関する限りは御心配がないと考えるのであります。
  35. 梨木作次郎

    梨木委員 令の検務局長の御答弁だと、拷問したその公務員は処罰されるからそれでよろしい。憲法趣旨は徹底するとおつしやられるが、それでは一つの例を申し上げます。  たとえばある事件が起きて、警察官が拷問をしておる。その拷問をした人間は処罰せられる。しかしその捜査は有効であり、この拷問によつて得た捜査や、証拠というものは有効であつたということになれば、この人はそれによつて有罪判決を受けるということになりますれば、今一つの政治的な背景を持つた事件を、時の権力を持つた政府は、公務員の一人や、二人は犠牲にして処罰する。しかしその捜査過程において拷問があつても、その拷問によつてでつち上げた証拠は有効だということになつて有罪ということになりますれば、これは憲法規定が無効になる。これは重大であります。そういうことをなくする、絶対に禁止するという趣旨であると私は解釈する。だから、これはその公務員だけを処罰しても、人権を守り拔こうという憲法の精神は徹底できないと思うのでありまして、これはいささか政府当局考え方が間違つているのではないかと思うのであります。
  36. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいま刑事補償法案の御審議をお願いしておりました関係上、私の説明もその場合公務員の責任なり、あるいは損害の補償という点に限られて参りまして、誤解を招いたかと思うのでありますが、もちろんおつしやる通り拷問によつて得ましたような証拠は、憲法しまつたく無効でありまして、そのようなものは裁判に付すことができないことはおつしやる通りであります。
  37. 上村進

    上村委員 これは無罪というだけにとどめておくということは、非常に狭いと思うので、梨木君、石川君も言つた通り公訴棄却も、免訴も入れなければならないと思うのですが、何ゆえに無罪ということを、いわゆる刑事訴訟上の字句の問題にするのか。それとも勾留されておるから罪とならなかつた、罪せられないで釈放されたものであるというふうに解釈するかどうかということが非常に問題になつて来る。そこで私はやはり刑訴の三百三十七條免訴の場合も入れるべきだと思うのです。たとえば統制法などは順次わくをはずしていますが、起訴されて半年も勾留されて統制のわくがとれた場合には、法律が廃止されるわけです。これはいろいろな議論がありますけれども、そうするとこれはやはり免訴にするのです。ところが半年もぶち込まれて法律が廃止になつて免訴になつた人が、国家の賠償を受けないということは意味をなさないのです。ですからこれは討論ということになるかもしれませんが、いろいろあるわけです。長い間入れられておつて時効が完成してしまつたり、あるいは長い間拘束されて大赦があつた。そういう場合に免訴にしたものに補償が受けられない。そういうことではあるまいと思うので、この無罪ということを、今政府委員の方でしいて狭いいわゆる三百四十條の無罪——免訴、刑の免除、こういうものと区別して、この無罪だけだということになれば、この賠償法の趣旨が徹底しないと思う。ですからわれわれは、そうなれば修正案を出すのですが、政府がどこまでも刑事訴訟法の三百四十條等にあるいわゆる狭い意味無罪であれば、これは非常に意味をなさないものだ。いわゆる人権蹂躙されたり、刑務所へぶち込まれたその補償だというのに、同じ半年も一年もぶち込まれて免訴になつた場合、あるいは公訴棄却なつた場合、これを無罪と違えるというのはどこから来ておるか。こういうことを承りたい。この免訴が入るか。具体的に言えば三百三十七條の場合、三百三十八條の場合、それから三百三十九條の場合というものが入つてしかるべきだと思うが、それを狭く解釈して入れないというのはどういうわけであるか。
  38. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 人権保障の建前から申しますれば、捜査に限らず、こういう国家公権力の拘束によりまして国民が損害をこうむつた場合には、それぞれそれ相当の損害の補填を受けるというところまで行けば、これはもう非常にけつこうであると思うのであります。しかし現実の制度の問題といたしましては、とうていそういうことは実行不可能であろうと思うのです。そこでどこまで保障し、あるいはしない、その限界を定めるかということになりますが、私どもはこの法案立案いたします際に、ただいま御指摘のような場合をいろいろ考えてみたのであります。そこで憲法の第四十條におきまして抑留、拘禁を受けた者が無罪なつたときということがありますが、この精神はなるほどできるだけ広く解釈することが望ましいとは思いますけれども、当面ここに規定してありますのは、制度として無罪裁判を受けた者については、その抑留拘禁に対して補償をしなければならないという国の義務を定めたものでありまして、それはやはり裁判によつて無罪ということが確認された場合というふうに解釈しておるのであります。従いましてこの法案はその要件は十分に満たしてあるわけであります。それ以外に、たとえば今御指摘になりました三百三十七條の犯罪後の法令によつて刑が廃止されたとき、あるいは大赦があつたときというような場合は、これは実際にその当時違法とされたことを行いまして、その後において刑が廃止され、あるいはたまたま大赦が行われるというような場合が通常でありまして、そのような場合にまで補償をするという必要はないのではないか、この辺になりますと、理論の問題と申しますよりは、政策の問題でございまして、もちろん国会において御決定を願わなければならない点でありますが、われわれといたしましては、そのような場合にまで刑事補償をする必要はないのではないかというふうに考えまして、これを補償の対象とし、補償原因といたさなかつた次第であります。
  39. 上村進

    上村委員 ちよつと議論になりますけれども憲法四十條の規定無罪ということは、刑事訴訟法の狭い意味無罪でないことは明らかです。結局罪されない行為、こういうような形で、つまりひつぱつて行つて勾留してみたが、結局釈放しなければならない裁判、こういうことになるわけであります。そうして無罪なつたよりも、その後法律によつて刑が廃止されたということは、これはもつと国家としては償いをしなければならない性質のものです。無罪というよりも、むしろ法律自体がなくなつたのですから、それを区別するというのは、ことさらに区別するたけの話でありまして、補償法から言えば、まつたく精神に反するものであるから、われわれはどうしてもこの三百三十七條は入れるべきだと思うのです。
  40. 大西正男

    ○大西(正)委員 今の点に関連をしまして、簡単にお伺いをします。裁判において無罪の言渡しを受けたものだけを取上げられておりますが、そのほか各委員からいろいろ御意見がありましたが、一ぺん起訴されたものについての、あるいは公訴棄却とか、あるいは免訴というようなことでなしに、捜査段階におきまして、起訴せずに、超訴猶予というならば問題はありませんが、罪とならずとか、あるいは嫌疑なしとかいうふうなことで、検察局において釈放されたというような場合におきましては、なるほど御説明によりますと、憲法第四十條によりまして、これは無罪裁判でも何でもありませんので、ただいままでの御説明の御趣旨によれば、憲法の何も保障していないところだというふうなことが言えるかも存じませんけれども憲法は最低の保障を定めたものであつて、その精神はあくまで全然罪にならない人が、捜査機関その他によつて抑留をされ、あるいはまた世間的に非常な名誉の毀損、損害を受けたというふうな場合に、これを救済しようというのが憲法の精神でありますことは、これまた異論がないと存ずるのであります。さような意味合いから言いますと、裁判を受けて無罪判決を受けた場合には、その名誉が救済され、また財産的な救済を受ける、こういうことになりますが、検察庁段階において、起訴をされずに、罪とならないということで釈放されたというふうな場合を考えますと、これはむしろ起訴してもらつて無罪判決をもらつた方が名誉を回復する道もあれば、あるいはまた勾留その他に対しての財産上の救済も受けるということになるのであります。かような場合は、今日の検察当局の各職員の方々は、りつばな方々であるということも確信をいたすのでありますが、万が一間違つてそういうことがなされることが往々にしてあり得ると存ずるのであります。そこでさような場合に、もし検察官が告訴をした人間と結託したり、あるいはまた何らかの事由によつて告訴がない事件でありましても、職権を濫用してやる場合におきまして——なるほど職権を濫用してやれば、これは明らかに刑事補償法によつて救済されなくても、その他の法律によりまして救済をされる道があるのでありましよう。しかしながらその証明というものは非常に困難ではないかと思います。故意過失を立証するということは、その冤罪をこうむりました者にとりましては、非常な困難を伴うのではないかと存ずるのであります。さような意味合いにおきまして、故意過失を論ぜず、これを救済する道が当然開かれなければならないと存するのでありまして、さような意味合いにおきまして、起訴されない場合の、今申し上げましたような嫌疑の入とか、あるいは罪となるというようなことについても、一応御考慮を煩わしていただいたものであるかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  41. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 まことにごもつとものお尋ねでありまして、その点も免訴あるいは公訴棄却と同様、立案に際していろいろ議論した点でございます。結局検察官の不起訴決定といいますことは、裁判におけるがごとく犯罪事実の有無を確認するという点におきまして、有権的なものでございません。事務の性質上自然やむを得ないところでありますが、そういうふうになつておるわけであります。またどこまでも刑事補償というものが、冤罪者に対する国の補償であるという点から言いまして、必ずしも当然憲法上やらなければならないものではあありませんし、やつてやればけつこうであることはけつこうなのでありますが、これにつきましてはいろいろ制度として非常な経費と、時間と労力を要するとか、そういうような点も十分考慮をいたしませんければ、にわかにその場合刑事補償に含めることは適当ではないということで、この法案には含めていないのであります。
  42. 石川金次郎

    石川委員 御答弁の中に、ちよつと気にかかることがございましたから、お伺いいたします。運用の面において弊害をなくすとおつしやいました御趣旨は、公訴取消しは途中においてしない、こういうように承つたのであります。ところが公訴を何ゆえ取消す規定を置いたかということになりますと、いろいろ議論がございます。少くとも原告官が、検事がこれは罪人にならないなという確信を持ちましたならば、自分の良心において当然公訴維持はできまいと思います。公訴取消しは幾多の理由があるにいたしましても、その思想的背景というようなものがあるにいたしましても、やはり良心の問題をからんでおるので、これはできない、これはこうやることが人としての道でない、こう考えるゆえに公訴取消しという問題が出て来るだろうと思います。そういたしますと、あなたの御説明を聞いておりますと、検事の良心、人としての良心を発現する余地をなからしめるということに聞えるので、まことに遺憾であります。この点はやはり依然として運用によつて刑事補償法がせつかくこしらえました公訴取消しはできるだけさせないことによつて無罪判決を得て、しかるのち刑事補償ということにしようというお考えでございましようか。
  43. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 実例をもつて申し上げますと、たとえば殺人事件で甲が起訴されまして、ところが実はそれは間違いでありまして、甲の審理中に新犯人の乙という者が名乗り出たというようなことが考えられます。その場合に、前に起訴した甲の方は、どうもだれが見ても無罪必至というような情勢にあるといたします。その場合に検察官としてどういう方法があるかと申しますと、実際の問題として、身柄はその場合に保釈あるいは執行の停止等の方法によりまして必ず釈放いたします。さてその上で公訴取消しをするか、あるいは非常に簡單ではありますが、実際の裁判が簡單にできますので、裁判無罪の論告をいたしますか、この二つがございます。実際問題としては、身柄をとめて置いたりしては絶対にいけませんし、また良心的にできませんけれども無罪の論告をして、無罪裁判を受けるということが実例としてやはりあるのであります。でありますから、そういう点は、公訴取消しにする方が非常に人道的であつて無罪裁判までわざわざ持つて行くのは人道的でないということは、実例上そういうふうには感ぜられないのであります。ただ誤解のないように、身柄の方だけはその場合に決してとめておきませんし、またそれをとめておきましたならば、それこそ故意過失がある、不法拘禁があると言われてもしかたがないと思います。
  44. 石川金次郎

    石川委員 御説よくわかりました。私の質問はあるいは感情に走つたかもしれませんが、しかしこう聞いておきます。公訴検事取消した。その取消したときに、過失の推定か何かやることによつて国家賠償法による救済の道ありとお考えにならなかつたでしようか。それで実は原案をせつかくおつくりになつたのでありますが、私が今申し上げたように、刑事訴訟法第三百三十九條の一、二号まで拡張して行きたいという気持ちが、議員のみならず、たくさんの国民にあるだろうと思いますから、その救済方法を現在の法でできなかつたのか。あなたもそれは気の毒だとおつしやつておるのでありますから、あれば別に用意があるかということをお聞きしたいのであります。     〔高橋(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 具体的にくふういたしまして、いいくふうがなかつたのでございまして、もしそれがありますれば、私どもは決してそれをやつてはならないというようなことは考えておりません。
  46. 石川金次郎

    石川委員 その点はそこにとどめまして、次には十五條に入つて参ります。十五條は非常に簡單なようでありますが、ちよつとお聞きしたいのであります。「補償請求の手続が法令上の方式に違反し、」とこうなつておる。そこで法令上の方式はどこから現われて参りますか、何を予定しましたか、どういう方式を……。
  47. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さしあたつては、補償の請求を無罪裁判をした裁判所以外の裁判所にするという、六條違反の場合でありますとか、あるいは所定の疏明資料を添付しなければならないという八條違反の場合が、第十五條にいう補償請求の手続が法令上の方式に違反する場合というふうに考えております。
  48. 石川金次郎

    石川委員 後段に参りまして、補償の請求が第七條の期間の経過後にされたときは、請求却下になりますが、この十五條による請求却下は、形式的に不備があつた場合になされる裁判でありますか。
  49. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようであります。
  50. 石川金次郎

    石川委員 そうすると、十六條は実質的に補償請求権がなかつた場合の裁判ということになりますね。
  51. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようであります。
  52. 石川金次郎

    石川委員 ところで十五條の「補償の請求が第七條の期間の経過後にされたとき」これは十六條の請求の棄却の場合になるのではないでしようか。権利の性格から来る問題であります。
  53. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 仰せのように、第十五條の後段の期間の経過の場合も、また第十六條の場合も請求権の有無が判断されるという意味においては、実体的なものと言うことができるかもしれませんが、ただ期間経過の場合には、補償の請求の理由があるかどうかというような実体問題に入らずに、期間経過ということだけで門前拂いをするという意味において、第十五條に一括規定した次第であります。
  54. 石川金次郎

    石川委員 これで運営の面においてはさしつかえないから、いずれでもよろしいのでありますが、私の申し上げましたのは、民事訴訟法と対照して、そうしてできるだけ法律的用語は一致なされたらどうかというような気がいたしましたからお尋ねしたのです。長い間御丁寧に御答弁くださいまして感謝いたしますが、最後に附則第四項、これは「日本憲法施行後この法律施行前に無罪裁判を受けた者に係る補償については、この法律施行後三箇月以内に、この法律規定により補償の請求をすることができる。」まことによくお考えくださいました。ただ一つ私はお伺いしておきます。この三箇月の猶予だけでなく、もう少し延ばしていただけますまいか。みんなの意思でありますならば、延ばしても御異存はありますまい。と申しますのは、最初に承りましたように、現在まで無罪裁判を受けた者の数も、それによつて支拂うであろうところの金額をも、すでに予算に組まれてあるやに承つたのであります。そういたしますと、三月くらいでありましては、せつかくのこの法律も、そしてまた憲法がかわりましたことによりますありがたさも徹底しないうらみがあるかもしれません。この点は三箇月と限らずに、半年なり一年なり、もし国会の意思がそこにあるならば、御当局は御異存なかろうと思いますが、御見解を伺つておきたいと思います。
  55. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 仰せの通り、まつたく異議ございません。
  56. 石川金次郎

    石川委員 それでは私は終ります。
  57. 花村四郎

    花村委員長 次に裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  この際お諮りいたしますが、国会法第七十二條により、最高裁判所事務総長より発言の申出がありますので、これを許したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 花村四郎

    花村委員長 御異議なしと認め、それでは木間事務総長。
  59. 本間喜一

    ○本間説明員 それではこの報酬に関する法律改正案について、裁判所意見を申し上げたいと思います。  第二国会裁判官報酬等に関する法律、それから内閣総理大臣等の給與に関する法律及び政府職員の新給與実施に関する法律が二千九百二十円の給與水準のもとに成立しました。これらの法律によれば、判事の報酬月額は一号一万四千円、二号一万三千円、三号一万二千円、四号一万一千円、五号一万円と定められ、判事五号の報酬月額は、政府職員の給與実施に関する法律における一般俸給者十四級の六号の俸給月額に当つております。これは次官級は十四級第六号に該当して格づけされております。同国会の会期後半において、給與水準が二千九百二十円べースから三千七百九十一円に変更され、これによつて前記三法律に基く裁判官の報酬月額は、内閣総理大臣等の給與月額、一般政府職員の俸給月額と同様、一齊に三割増しになつたのであります。第四国会においては、裁判官の報酬及び内閣総理大臣等の俸給は、政府が当初維持していた五千三百円のベースによつて定められたが、一般の政府職員の俸給の方は、同国会のおしまいになつて政府が採用するに至つた六千三百七円の給與水準によつて高額に決定され、両者の給與のベースを異にしたまま今日に至つておるのであります。そうして二千九百二十円、三千七百九十一円のベースの場合においては、次官級の一般政府職員の俸給月額は判事の五号の報酬月額と同等であつたにもかかわらず、六千三百七円の給與水準においては、十五級職として四階段に格づけせられ、その俸給月額は判事の五号の月額をはるかに上まわつて、その一号ないし四号の月額と大差ない程度に定められておるのであります。かくのごとくして、第二国会において裁判官の報酬が、裁判官の職務と職責との特殊性からして一般の政府職員よりはるかに上まわつた額を定められたにかかわらず、第五国会においては、一般政府職員の俸給表に十五級職が定められ、しかも政府独断の措置によつて——それは新給與実施本部長の定めるところによつて、従来十四級職六号に格づけされておつた次官級の職員を十五級職に変更格づけすることによつて、判事の俸給と大差のない俸給を支給するようになつたのであります。ここに至つて第二国会において樹立された判事の俸給に対する原則は完全に破られたような次第であります。さようなわけでありまして、この際において裁判官の報酬と一般政府職員の俸給とのバランスを、第二国会において審議し定められたような原則のごとく、今度の改正案においても貫かれるようにしていただきたいということが裁判所の主張でございます。どうぞ御審議をお願いいたします。
  60. 花村四郎

    花村委員長 質議の通告があります。これを許します。魚田幸吉君。
  61. 角田幸吉

    角田委員 私は最高裁判所事務総長に質疑をいたしたいのでありますが、質疑の前に資料の提出方を求めておきます。一つは法務庁に、一つは裁判所に、法務庁側に対しましては、検事の勤務年限と俸給とがどういうふうに扱われておるかという資料を出していただきたいのであります。これは検事の特から十二号まで、年限でどの程度支給をしておるかという資料を至急出してもらいたい。それから裁判所側に対しましては、判事の一号から五号、判事補の一号から六号、これがいずれも勤務年限に割当てまして、どういうふうに支給しておるかという資料を至急御提出を願いたい。  その資料の御提出を願つた後にもなおお尋ね申し上げたいのでありますが、この機会に事務総長にお尋ねしておきたいのは、先般裁判所において判事の定員の増員をしたはずでありますが、その増員の配置はどういう状態になつておるかということを、この機会においてまず承りたいと思います。
  62. 本間喜一

    ○本間説明員 二十四年度予算において増員されました判事の配置状況は、次の通りであります。高等裁判所において十二人、地方裁判所裁判官において判事二十五人、判事補二十一人、家庭裁判所及び簡易裁判所裁判官については、判事合計二十六人、判事補合計二十八人、それから簡易裁判所判事三十五人であります。
  63. 角田幸吉

    角田委員 今度増員されましたこの判事の兼務等はないのでありましようかということであります。それからもう一つは、高等裁判所の判事が最高裁所の局長、あるいは課長を兼務しておるというようなことがあるかどうかということを、お聞きしたい。
  64. 本間喜一

    ○本間説明員 兼務しておることはあります。ことに家庭裁判所等においては、ほとんど地方裁判所の判事と兼務しなければならぬ場合があるようであります。なおその他の高等裁判所の判事が最高裁判所の事務総局に司法行政事務を行つている判事もあります。
  65. 角田幸吉

    角田委員 私はまだよく承知しておりませんので、この際教えを請いたいのでありますが、東京高等裁判所の判事が別な裁判所、すなわち最高裁判所の事務局長、あるいは課長というところに兼務されるところの法律上の根拠がどの辺にあるのですか。
  66. 本間喜一

    ○本間説明員 裁判所の司法行政事務は、憲法の七十七條によつて裁判所がやることになつております。その司法行政事務は、その主体として裁判官会議がこれを行うことになつておりますが、個々の司法行政に関しては、そのうちの数人の委員に一任することも会議できめることができますし、また一人に委任して、ある程度のことをさせることも便利であります。すべて裁判官会議で一々こまかいことまでやるということは、司法行政に携わる面において、非常に不便になることがありますので、その面においては一般の事務官、そのほか裁判官をして、司法行政の方面もやらせておるような次第であります。これは裁判所が司法行政事務をやり、裁判官会議が司法行政というものの主体であるという建前からして、裁判官が司法行政事務の一部を特にもつぱらやらなければならぬという事態も起きて来るわけであります。そういう建前から、判事をして司法行政の仕事をさせるということが起きて来る次第であります。
  67. 角田幸吉

    角田委員 裁判官が司法行政事務を取扱うことができる、それは承知しておりますが、裁判官会議で司法行政事務を取扱う、これもまたある程度その通りあります。ただ別な裁判所の行政事務を取扱わせるということが適法かどうかということを、承つておきたいのであります。
  68. 本間喜一

    ○本間説明員 それは別に禁止する規定がありませんから、さしつかえないと思います。
  69. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  70. 古島義英

    ○古島委員 私は判事、検事の俸給を改正することには賛成でありますが、もちろんこの判事、検事の俸給を改正するとともに、書記の待遇をなぜさらに一段と上昇するようにしないのか。事件の統計を見ますと、いかにもふえておるようである。しかもあの統計をわれわれに示したのは、事件がそのようにふえておるから、この際どうしても判事も検事も俸給を上げなければならぬというようなことを暗示するために、あの統計は出したのだと思うのであります。ところがあの統計によつて実際骨の折れるのは、判事、検事も骨が折れるであろうが、実際は裁判所の書記というものが非常に苦労をいたしておるのであります。しかも裁判所の書記は今日税引き三千円とる者はないのであります。三千円を欠ける俸給を今日とつておるというものは、一労働者でもありません。裁判所の書記というものは、しかもシャツのままで出るわけに参らぬ、ボロながら服も着て出ねばならぬという今日の境遇であるにもかかわらず、どの裁判所に参りましても、実に悲惨な状況であります。こういう場合には、まずあの判事の俸給もしくは検事俸給等法律を改正するという問題を出す前に、書記の手当を上げておいて、それからやるというのが道ではなかろうか。しかも判事なり検事なりというものは、いずれも二級官以上であります。少いとは言いながら相当とつております。書記のごときは、ただ忙しいだけで何らこれに報いられるところがない。今日ではほんとうに悲惨の極にあるのでありますが、これを早急に上げるだけの考えがあるかどうか、これを承つておきます。
  71. 本間喜一

    ○本間説明員 書記の俸給の低いことはまことにお説の通りであります。予算的措置が十分できれば、どうかして俸給を上げたいと私は存じておるのであります。今書記は、名前は書記官または書記官補になつておりますが、これは特別職ではなくして、公務員の一般職になつておりまして、おそらくこの議会か次の議会に職階制の問題が起きると思いますが、その際に書記に高い格づけをしていただけば、俸給も従つてつて参るのでございますから、どうぞ一般職の職階制の問題の場合に、書記官を高いところに格づけしていただくよう、今からお願いしておきます。その一般職たる関係上、ここで特別な俸給をつけるということは困難となつております。その際において特別な御考慮をお願いしないと存ずる次第であります。
  72. 古島義英

    ○古島委員 まことにけつこうでありますが、これは何らかの名義をもつて早くやりませんと、どの裁判所でもほとんど書記に採用される者がないという状況であります。書記をやつておりましても、ほかの方に転職してしまうので、どの裁判所でも困つておる。判事はそれほどではありません。検事もそれほどではない。しかるに書記だけは何と申しても、どこにでも五千円なり六千円なりをくれるところがあるのでありまして、それを三千円内外でがまんをしておるということは、ほんとう自分の身を犠牲にしてやつておるのであります。何らかの名義をもつて、何とか俸給を考えてやらなければならぬ。どこの裁判所でも書記が足らぬというので、事件が進捗しないのであります。判事や検事が足りないで進捗しないのではない、書記官が足らないで進捗しないというのが実情である。この点は十分愼重にやつていただきたいと思います。
  73. 本間喜一

    ○本間説明員 まつたくお説の通りでありまして、もちろん国会におきまして、判事の俸給を今のように高い地位に上げてもらつたおかげで、その当時、俸給を上げる前に、毎月十人以上も判事がやめて行くというような状態をようやく食いとめることができまして、その点はお説の通り書記についても同様であると思います。事務局においては、その点についていろいろ立案いたしておりますが、今度の公務員法の職階制の場合において、特に注意をして高い位地につけるようにするのが一番いい機会だと思つて、それぞれ準備して、人事院等に交渉するつもりであります。
  74. 石川金次郎

    石川委員 裁判所にお伺いしたいのでありますが、裁判所の書記官もしくは書記官補の出張の旅費はどのように拂つておりましようか。私、岩手県でありますが、岩手県の場合におきましては、旅館にとまることができなくて、出張先の裁判所の同僚のところにとまらねばならぬというようになつております。そのような状態でありましては、何とも気の毒にたえません。どのくらい拂うことになつておるか、旅費はあなた方の裁量によつて増してやることはできないのか、それを伺いたい。
  75. 本間喜一

    ○本間説明員 ただいま書記は、一番上の方は一級官と同じような者もあります。一級、二級、三級官とありまして、それぞれ俸給の額は一般職と同じ俸給の何号俸かをもらつておるわけであります。一般の役人の出張の傷合には、何級職の場合は幾ら、何級職の場合は幾らというように、日本の全体の公務員が同じ標準にきまつておりまして、その標準の旅費を支給しております。それで特に書記だから低いということはない、俸給の給及び号、それから一級、二級、三級というようなふうに支級の標準がありますので、それを一般に準じてやつております。
  76. 梨木作次郎

    梨木委員 今の問題に関連してお尋ねしたいと思いますが、裁判所書記に対して、時間外手当、深夜手当、日直手当、宿直手当、こういうようなものを支給できるようになつておりますが、われわれ書記から聞きますと、これが規則通り支給されておらないのであります。現在書記一人当りに一箇月平均、時間外手当だとか深夜手当だとか、日直手当、宿直手当あるいは旅費、こういうものが本法以外にどの程度平均支給されておるかどうか、これをお伺いします。
  77. 本間喜一

    ○本間説明員 日直手当、宿直手当というのは、規定の時間通りみな支給しております。それから時間外勤務手当は、これは予算の範囲内において、その予算のある限度において時間外勤務を命じて、その命じた時間外勤務の限度においては、勤務手当を出しております。ただ実際問題として、予算がないために、時間外勤務を命ずることができないにかかわらず、書記はその職務を行うに熱心のために、命ぜられた勤務時間外にもみずから仕事をする実情があると思いまして、これは当人に対してはなはだお気の毒ではありますが、予算を請求しても——これは全国の公務員も同じと思いますが、この時間外勤務手当の予算が制限されておるのでございます。それを各自が、自分の欲するままの時間外の仕事をしようとしても、その欲する通りの時間外の仕事を命ずることができないような状態でありまして、命じた限りにおいては、その勤務手当を出しております。
  78. 梨木作次郎

    梨木委員 そういう御答弁ではどうも納得できないのでありまして、それでは実際の例を申し上げます。私は石川県の金沢におりますが、書記の人から始終こぼされておる。裁判所は労働基準法に違反して、時間外手当を少しも出してくれないと言う。公判が済んだあと、どうしても次回の公判期日までに、その公判のいろいろな調書を作成しなければなりません関係から、その書記の人が自発的にやる、あるいはやらざるを得ないのであります。そうして公判もいろいろ訴訟関係人の都合で、時間外に延期されることが多いのであります。ところがそういう場合に、全然支給を受けておらないと言つて、ごぼしておるのであります。そういう関係上から、公判というものは、実際被告人人権擁護のためにも親切丁寧な審理をやるべきものが、ややもすると、おろそかになるという結果を来しておるのであります。これは私は実情についてお伺いしたいのであります。事実この超過勤務手当は一人当り一箇月どの程度出ているか。そうして今申し上げましたそういう事実について、あなたの方では、はつきり自発的以外に、陣間外に勤めた者に出しておるのかどうか。この点、私は事実に基いてお尋ねしておるのであります。
  79. 本間喜一

    ○本間説明員 一般職である関係上、朝八時半から午後五時まで、土曜日を除いては勤務しておりまして、五時以後に公判が継続しているような場合には、その分の勤務手当の出ない所はないと私は思います。ただ書記の仕事の分量が多いために、家に帰つて仕事をしなければならぬということもあり、またそういうこともしているようでありますが、そこ肇磨れくの方は命じてやれということは言えない。その関係上勤務手当が出ていないのが実情じやないかと思います。実際時間外に非常にたくさんやつておる書記に対しては、まことにお気の毒だと言うほかはありませんけれども、ただ正式に職員組合等から、そういうものまで出してもらいたい、時間外勤務手当を出してもらいたいというような話がいろいろありまして、こちらの予算上の措置をいろいろやつていますが、金のある範囲においてはそういうことをさせ得るのでありますが、われわれとしては金がないのに働けということは言えませんから、そういう場合には仕事をしなくてもしかたがない、事件が延びてもしかたがない、むりにそれを仕上げてもらいたいということは要求しないというふうに組合等には話してあります。
  80. 梨木作次郎

    梨木委員 今お尋ねしたのは、一人当り本俸以外にどれたけ出ているのか、お尋ねしたいのです。
  81. 本間喜一

    ○本間説明員 今私正確に覚えておりませんが、予算面においては、公務員の一人について時間外勤務手当は一箇月二時間と思います。二時間を予算面上どこの役所にも同じように繰込まれておる。その範囲内において、裁判所においては事務の繁閑に応じて、予算を忙しい裁判所にはよけいに配給し、忙しくないところには少く配給して、時間外勤務についての公平な割振りをするというような立場をとつておりますから、具体的に何のなにがしが幾らもらつておるということになれば、調べはすぐにつきますが、全般的には全職員に多分二時間の割合の時間外勤務手当が予算上成立つておる。これはすべての官庁は同じじやないかと思つております。その範囲内において各裁判所の繁閑に応じて分配する、こういう状態です。
  82. 梨木作次郎

    梨木委員 それでわかりましたが、実際の実情は、一箇月二時間くらいでは断じてありません。このことが結局超過勤務手当を拂つておらないという反証になると思うのであります。  その次に伺いたいのでありますが、それではこういう裁判所書記の給料や、またこの超過勤務手当を予算上もつとふやすということについて、最高裁判所はどういう具体的な努力をして来たか、これをお伺いいたしたい。
  83. 本間喜一

    ○本間説明員 予算の編成の交渉の際には、非常にたくさんの額を要求しておりますが、大蔵省が各省における時間外勤務手当の比率を考えて、なかながたくさんよこしてくれない。この点は極力私の方は大蔵省には交渉しておりますが、私どもの期待するようにたくさんはよこしてくれない、こういう実情です。さつき私が二時間と申し上げたのは、一箇月五時間だそうです。
  84. 梨木作次郎

    梨木委員 もう一点、そこでこういう職員の間からも、もつと給料や手当をふやしてもらいたいという、これは職員組合からどんどん要求が出ておるのであります。ところがこういう要求をする職員を裁判所は首を切つている、こういうことをやつておりますが、そういうことになると、こういう待遇改善の要求をしている人が首を切られて行けば、あとは首切られるのはおつかないものだから、だれも要求しない。そうなればますます書記や、こういう裁判所職員の待遇が低下して行くということになるのでありますが、この点についてあなたの方はどういう見解でありますか、伺いたい。
  85. 本間喜一

    ○本間説明員 そういう要求をする職員を首切るというようなことは、裁判所ではいたしておりません。
  86. 梨木作次郎

    梨木委員 事実東京地方裁判所でそういうぐあいにして首を切られておるのです。それはこの次に資料を持つて来て、だれとだれが切られたかということを具体的に申し上げますから、この点についての御答弁次会に留保しておきます。
  87. 石川金次郎

    石川委員 昨日も伺いましたが、政務次官がおられますから、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。この法律によりますと、第十條にきまつていますように、一般行政官が給料が上ります場合には、裁判官全体も上ることになつております。今度提案された案には、判事以上は増額せられることになつておりません。恩惠をこうむることになつておりません。これはいろいろ御事情のあることは総裁から承りましたが、昭和二十五年度の予算にはこの法通りの予算を必ず獲得する、そうして裁判官に支拂うのだという御確信がありましようか。またそのように御努力くださることとは存じますが、必ず努力して実現するようにお努めになるという、あなたの御言明を願いたいと思うのです。
  88. 牧野寛索

    ○牧野政府委員 昨日もこの問題につきましては、法務総裁からいろいろ事情を申し上げました通りに、実は法務府としては、一律に上の方まで上げたい希望で、いろいろ折衝いたしたのでございましたが、しかしながら前回はとうとう許可されなかつたのであります。今回におきましても、関係方面からこの全部に対して許可をとるということについては、非常に危ぶまれたのでございます。いろいろ折衝した結果、ようやくこの下級の裁判官の俸給だけについて妥協しまして、そうして認められたのでありますが、私らといたしましては、こういう変則なことはできるだけ是正をいたしたい、そうして二十五年度の予算は今組まれておりますので、おそらくは補正予算の方面においてできるだけとりまして、この変則な状態を改めて行きたいという考えを持つております。その点についてできるだけの努力をいたします。
  89. 梨木作次郎

    梨木委員 検察官の俸給の値上げの問題に関連してお伺いしたいのであります。給料は確かに低いから上げなけれぱならぬと思うのでありますが、その反面におきまして、国費を非常に濫費しておる事実がある。この点についてこういう事実がある。名古屋高検の検事長であります有安堅二、この人が九月二十七日に金沢の地方裁判所管内を視察に来ております。二十七日、二十八日、二十九日の三日間視察しておるのでありますが、三日間に視察したのは、小松区検察庁とか、あるいは七尾区検察庁、こういうところを十分ないし五分視察しただけで、あとは山中温泉、和倉温泉、こういうところで遊んでおる。しかも当日視察にあたりましては、検察庁ではほとんどの者が仕事を休んで出迎えに行つて、あるいはごちそうのいろいろのしたくをしたり、饗応のしたくをしたりなんかして、まつたく戰時中の軍人がいろいろ地方を視察するのと同じようなことをやつておる。こういう事実がある。一体こういう費用はどこから出て来るのか、しかもこういうことは検察官の俸給の値上げと関連いたしまして、非常に下級の検察官が給料が安いために困つている事実があるにもかかわらず、監督的な責任ある地位の人がかようなことをやつたのでは、これは綱紀の粛正の面から言つても非常に弊害があるし、また検察という重大な職務を遂行する面から行きましても、きわめて弊害があると思うのでありまして、この点についてどういう考えを持つておられるか。それからまた、それに対してどういうふうに今後監督して行こうとされているか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  90. 牧野寛索

    ○牧野政府委員 私といたしましては、ただいま御指摘のような問題につきましての報告を、今持つておりませんので、どうこうと言つてお答えすることはできませんが、おそらく御指摘のような、そういうような濫費をやるというような事実はないと思います。もしも大切な国費をそういことによつて濫費をするようなことがありましたならば、これは相当是正することにいたさなければならぬ。当然われわれといたしましては、責任を問わなければならぬと考えております。ただしかし現在におきましては、何ら報告を受けておりません。また私としましては、そういうような濫費をした事実はあろうとは思つておりません。
  91. 梨木作次郎

    梨木委員 濫費をなさらないとおつしやいますが、このごろ検事長一行が温泉でとまれば、なかなか相当の費用になると思うのでありまして、これは事実われわれは金沢におりまして、この事実を知つているのでありますから、これはひとつ調べていただきたい。こういう費用はどこから出て来るか、もし国費を使わなかつたというのならば、民間からごちそうを受けたということになる。これは綱紀粛正上非常な問題である。これはぜひお調べを願いたいと思います。こういうことをやつておきながら、金沢の地方検察庁の山崎宗吉氏という人は料理屋で酒を飲んだということで、これを理由に、検察事務官の品位を害するということで退職を強要された事実がある。これは上の方の者が視察に名をかりて温泉で遊びまわつて、そうして下級の人がちよつとお酒を飲んだということで、官吏の品位を害するということで首にするということでは、監督上からも、検察の行政の面からもきわめてよくないことだと思うのでありまして、こういう点につきまして、十分お調べの上御答弁を願いたいと思います。
  92. 牧野寛索

    ○牧野政府委員 ただいま山崎某の酒を飲んだために辞職を強要せられたという事件も、今存じておりませんので、取調べてみますが、おそらく酒を飲んだくらいで辞職を強要されるというようなことはないと私は信じております。おそらくは何らかほかに辞職を勧められるような事態があつたものと私は考えております。それらについて御要求に応じまして、よく調べて、いずれわかりましたら御報告したいと思つております。
  93. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ本日はこの程度にいたし、次会において質疑を継続いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 花村四郎

    花村委員長 御異議がなければ、本日はこれにて、散会いたします。次会は明後二十一日午後一時開会いたします。     午後三時四十四分散会