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1949-11-18 第6回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十八日(金曜日)     午後一時五十一分開議  出席委員    委員長代理理事 角田幸吉君    理事 北川 定務君 理事 高橋 英吉君    理事 石川金次郎君 理事 梨木作次郎君    理事 大西 正男君       古島 義英君    松木  弘君       武藤 嘉一君    山口 好一君       吉田 省三君    田万 廣文君       上村  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         (検務局長)         検     事 高橋 一郎君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月十七日  中津簡易裁判所岐阜地方裁判所及び家庭裁判  所の支部を併置の請願岡村利右衞門紹介)  (第四三二号)  住民登録法制定に関する請願江崎真澄君紹  介)(第五〇一号)  小湊町に国立少年院設置請願笹森順造君外  五名紹介)(第五二八号)  釧路地方裁判所網走支部地方裁判所昇格の  請願林好次紹介)(第五八九号)  大年寺山少年院設置反対請願高橋清治郎君  外八名紹介)(第五九二号)  戸籍事務費全額国庫負担に関する請願橋本龍  伍君紹介)(第六八〇号)  登記法回線に関する請願八百板正紹介)(第  八五七号)  不動産登記事務を市町村に移管の請願八百板  正君紹介)(第八五八号)  岐阜地方裁判所大垣支部昇格並びに定員増加  の請願加藤鐐造君紹介)(第八九〇号) の審査を本委員会に付託された。 同日  商法の一部を改正する法律案要綱に関する陳情  書(第  二一八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑事補償法案内閣提出第二号)  裁判官報酬等に関する法律の一部改正する法  律案内閣提出第二五号)     ―――――――――――――
  2. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより会議を開きます。委員長が所用のため理事の私がかわつて行います。きようの日程は昨日に引続いて刑事補償法案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案一括議題といたし、昨日に引続き質疑を続行いたします。  まず刑事補償法案議題として質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。石川金次郎君。
  3. 石川金次郎

    石川委員 刑事補償法案について前回に引続いて質問をいたします。この第五條国家賠償法五條との関係についてお伺いいたしたいのであります。国家賠償法の第五條によりますと「国又は公共団体損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。」とありまして、国家賠償法関係においては、刑事補償法において賠償を受けた者は国家賠償法による損害請求できないかのごとき規定があるのであります。しかし昨日来明らかになりましたように、刑事補償法においては、補償原因がありました場合にこれを請求する。故意過失がありました場合には、さらに国家賠償法に基く賠償を求め得るという御説明でありましたが、その点を明瞭にしておきたいのてあります。
  4. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまのご質問に示されましたように、刑事補償法国家賠償と両立するものと考えております。刑事補償法は、国家賠償法規定による国家損害賠償と並行して行われることは、法案の第五條によりまして明らかであると思うのであります。たとえば郵便法の六十八條などに、かくかくの場合に限つて国損害賠償するというよう規定がありますが、こういう場合には、国家賠償法においていわゆる他の法律に定めるところによるということに該当いたしますので、国家賠償を適用する余地がないと考えておりますが、そういう郵便法の第六十八條とは違うのである、規定の上からもさよう解釈すべきものであるというふうに考えておるものであります。言いかえますれば、刑事補償法規定国家賠償法五條特別規定ではございません。このことは本法案五條によりまして、先ほど申し上げたように明らかであるというよう考えておるのであります。
  5. 石川金次郎

    石川委員 その点を明らかにしていただきましたから、第五條はよろしいといたしまて、次に六條を中心としてお伺いしたいと思います。刑事補償を求むるところの手続でありますが、刑事補償請求権を有する者は第一條規定された者、あるいは第一條規定された者がなかつた場合、死亡した場合は第二條規定せられた者、それらの規定せられました請求権者が、第六條に基き無罪の裁判を受けたところの裁判所請求して行く、そこで裁判所は第四條に定めるところの審理をなしてこれに決定を與える、こういう順序になろうと思いますが、その通りでありましようか。
  6. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 おつしやる通り考えます。
  7. 石川金次郎

    石川委員 そこで裁判所請求の――これは申請になりましようが、請求申請がありましだ場合に、その請求申請は一体どういうものでしようか。請求申請がありました場合に裁判所が、額の決定をしなければならない。その額の決定にあたつては、第四條に書いてありますように第二項における審理、第三項、第四項における審理をしなければならない、第三項において書いてありますように「財産上の損失額証明された場合」とありますから、この場合には証拠が入つて来なければならないのであります。おそらくその趣旨であろうと思う。証拠が入つて来るといたしますと、証拠手続は一体どうしてなされるのてしようか。
  8. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 裁判所請求を受理いたしましてとります手続につきましては、この法案の第二十三條で「この法律決定即時抗告異議申立及び第十九條第二項の抗告については、この法律に特別の定のある場合を除いては、刑事訴訟法準用する。期間についても、同様である。」という規定を置いてございますので、証人の取調べという点につきましては、当然刑事訴訟法を適用して参ることになると思うのであります。
  9. 石川金次郎

    石川委員 そこで二十三條に飛ばなければならぬですが、二十三條におけるこの法律規定であります。この法律において決定すべきものとせられた場合であります。この法律においての即時抗告であります。この法律における異議申立であります。このようなものについては、なるほど刑事訴訟法が適用されると書いてありますが、証拠についてはいかなる手続を適用して行くかということが明確になつておりません。二十三條で明らかにならないのであります。
  10. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 本法案の第二十三條の問題でありますが、これによりまして、決定について刑事訴訟法準用されます結果、刑事訴訟法の第四十三條第三項で「決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調をすることができる。」という規定なつております。この取調べ方法につきましては、裁判所規則もきまつているのでありますがこういう刑事訴訟法によつて、あるいは規則が適用されて、実際の取調べ支障がないというよう考えております。
  11. 石川金次郎

    石川委員 それではこう聞きましよう決定ということはあなたがおつしやる通りだと思うが、決定前の申請はどうなつておりますか。その手続は書いてありません。
  12. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 申請手続のこまかい点などにつきましては、この法律施行裁判所ルールにおいて定められるものと考えておるのであります。しかしながらルールが定められませんでも、現行の刑事訴訟法におきましても、手続に関してはこれより詳しい規定は一切ございませんで、しかも現実には手続支障なく運んでおつたのでありまして、ルールができます前にも、しかるべき手続でやつて十分裁判所はこれを受理し、決定をいたすことと考えておるわけであります。
  13. 石川金次郎

    石川委員 それではもう一つ聞いてみたいと思いますが、一体刑事補償請求権というものは、権利の分類からみればいかなる性質でしようか。私権でしようか、公権でしようか。一体とういう権利をお考えなつてこ法案をおつくりになつたか。もしもこれが私権としたならば、私権にはおのずから私権救済方法があるのであります。どういう見方立案なつたかお伺いしたいと思います。
  14. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまのお尋ねの、請求権公権なりや私権なりやという議題は非常に困難な問題でありまして、学説その他におきましても、相当異論があることのようではありますし、第一何をもつて公権とし、何をもつて私権とするかという点も問題があると思うのであります。ただこの法案立案に際しましては、この場合において、この刑事補償請求権公権なりや私権なりやということをまず定めなければならないかどうか、公権なりや私権なりやを区別する実益というものが実は発見できないのであります。そういうふうな解釈上の問題について疑問が起りますような分につきましては、この法案において特別の規定を設ければ足りるのではないかということで、私どもといたしましては、公権なりや私権なりやの見解を特設に定めておりません。
  15. 石川金次郎

    石川委員 さらに進んで、今度に第二條にもどつて参ります。第二條規定でありますが「前條の規定により補償請求は、相続人からすることができる。」この規定は、請求権者が持つてつたところの権利は、そういうふうに死亡ということの原因で打切つて行くのが、第二條に定めたから、相続人が明らかにその権利相続するのか、その点をひとつお聞きしてみましよう
  16. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 第二條第一項の場合、すなわち請求をすることのてきる者が、その請求をしないで死亡した場合には、元来本人が持つていた請求権相続人によつて相続されるという考えであります。
  17. 石川金次郎

    石川委員 そこで相続の対象になることでありますならば、従来の考え方が、主として私権であるということになるてはないでしようか、たとえばこれは損害賠償請求額損害請求するところの一つ債権であります。それであるがために相続というものを認めて来たと思うのであります。そうなればこれを私法上の権利だと、あなた方言明なさることにおいて、少しも躊躇する必要がないと思うのであります。もしそうだとすれば、刑事補償請求手続において、これを民事訴訟準用することを明らかにする方が便利ではありませんか。
  18. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 私権なりや公権なりやという問題につきましてのわれわれの考え方は、先ほど申し上げた通りでありますが、ただいまお尋ねの、相続される以上は、私権としてさしつかえないのではないか、またそうなれば民事訴訟にそのまま適用すれば、かえつてはつきりしていいではないか、こういうご質問ように承つたのでありますが、この法案立案の過程におきましても、一応そういう考え方をとつてみたことがございました。しかしこの刑事補償手続をきめます場合に、私どもが第一に考えますことは、実際に故意過失などが当該公務員について認められます場合には、当然民法上の損害賠償請求権もありますし、また国家賠償法による保護も求められるのであります。で刑事補償のない場合において、この損害補償というものを定型化して、これを補償する、すなわち故意過失の立証もありませんし、また金額につきましても裁判所が判断をしますについて、一定金額のわくがございます。そしてできるだけ簡單手続で、早くこれによつて損害を受けた者に対して金を拂うことができるようにいたしたい、こういうことで、通常民事訴訟ような慎重な手続に頼る必要がない。すなわち立証すべき事項も限定されておりますし、事柄が定型化されておりますから、従つて手続ももつと簡單でよい、それによつてできるだけ早く金を拂い渡すことができるようにしよう、こういう意味で、民事訟訴法による方針をとらないで、別途手続を定めたわけであります。おそらく実際に動かしてみて、この方が民事訟訴よりは簡易迅速に行くのであろうと考えておりまして、そういう意味におきましては、従来の私訴のような効果を持つものであろうと考えているわけであります。
  19. 石川金次郎

    石川委員 しかし法務総裁の御説明の中には、国家賠償とあつた。あなたのおつしやつた民事上の損害賠償国家賠償と、その本質は同じかどうかということですね。そういたしますと、本質が同じで目的が同じものに行くということになりますと、それは手続をできるだけ簡便にして、みんなの利益をはつて行くということは、これは当然しなければならぬことであります。しかしそうなれば、特殊の準用を持つて来なければならない。民事訴訟法におきましては、非常に時間が長くかかるというのですが、それはやりようでありまして、縮めて行けば幾らでも縮まるのです。裁判所申請人とが協力さえすれば、幾らでも縮まる。現に仮処分なんか一日か、二日ですぐ解決できるでにありませんか。そういうわけでありますから、これで動くかどうかということです。動かしてみて、証拠申請をやる、そうすると何條に基いてこれをやるのか、いや條理があるからやれるのだけれども、さてこの証明ということを立案の場合にお使いになつたら、この証明というものは民事訴訟法における証明と同じであると思う。そうなつて参りますと、いろいろこの民事訴訟法で足らないところは刑事訴訟法準用する、こうお書きになることがかえつて法を動かすのに便利ではないかと思われるのであります。
  20. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 総裁提案理由におきまして、この刑事補償国家賠償と同じよう性質のものであるということを御説明申し上げましたのは、損害填補であるという点において同様のものであるということを申されたと考えるのであります。すなわち前に提出いたしました旧案におきましては、従来の考え方で、国の方から恩惠的にやるというような感じがまだ残つてつた点を、当委員会においても御指摘なつたわけでありますが、従つてそういう考え方を捨てまして、そうして損害填補として、かつ国民の当然の権利としてこれを請求することができるという考え方にしたのでありまして、その点を特に強調して御説明なつたと了解しておるのであります。それでこの刑事補償はまさに損害填補であるという、補填であるという点におきましては、民法上の損害賠償あるいは国家賠償と同じてありますけれども、しかしはつきり違う点がございます。それは損害賠償の場合におきましては故意過失原因としておるのでありますが、刑事補償の場合には、そういう故意過失を前提といたしておりませんので、民法上の、あるいは国家賠償の原理から言いましては、当然その損害を支拂うべきものがないわけであります。そういう場合に国が、言いかえれば国民全部がそのもののために共に泣こう、こういうようないわば社会保障的な性質制度でありまして、損害補填という意味では国家賠償同一でありますけれども、社会保障的な制度てあるという点においては、この刑事補償は特別なものであるというふうに考えておる次第であります。それで先ほど民事訴訟法を適用した方がすべての点でわかりやすいのではないかというお尋ねでありますけれども、その点私どもは、民事訴訟法準用する場合にも、全部の規定を特に設けることはあり得ないのて、やはり準用規定になると思いますが、この法案刑事訴訟手続準用しておるのでありまして、すなわち二十三條において規定してあるのがそういう趣旨であります。先ほど説明にありました刑事訴訟法の第四十三條などが、すベてこの二十三條によつて当然準用されるものでありますから、手続の微細な点に至るまで決して澁滞を来すことはないというふうに考えておる次第であります。結局は民事訴訟法によるか、刑事訴訟法によるかというような点に帰着するものではないかというふうに考えるのでありまして、附帯私訴的なものと同じよう手続によりまして、迅速な結果を得たいという考え立案いたしたのであります。
  21. 石川金次郎

    石川委員 その点はさらにあとて疑問が起りましたらお伺いすることにして、今度は二十二條と二十條に移つて行きたいと思います。そこて二十二條を見て参りますと、「補償請求権は、譲り渡すことができない。補償拂渡請求権も、同様である」とお書きなつております。この刑事補償法から出て参りますものは、補償請求権補償拂渡しの請求権と二つのようでありますが、これは二本でありますか。
  22. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 刑事補償法におきまして補償決定を得るものが狭義意味補償請求権でありまして、その決定確定して、一切の拂渡しを受けるものが拂渡請求権というふうに観念いたしておるのであります。従つて拂渡請求権というのは、要するに確定した決定の公報をもつて裁判所に受取りに行く、それによつて拂い渡してもらえるという権利てあつて、特別深い意味を持たせてあるわけてはありません。
  23. 石川金次郎

    石川委員 そうするとひとますそれにおいて、さらに明らかにしたいと思いますが、補償請求権裁判長に対して補償責任ありやいなやの確定を求めるところの権利、こうなりますね。  それから拙いもどしの請求権がその裁判長決定によるという法事実に基いて、新しく発生して来たところの請求権である、こう見れはよろしいのか。
  24. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようにわけて考えてよろしいと思います。
  25. 石川金次郎

    石川委員 そこて聞いておきたいことがあります。さてそういう権利が個々の上に現われて来たのてありますが、補償請求権がこれを三年間放置することによつて権利が消滅する、いわゆるこれは特殊な時効を定めるわけてありますか。これは第七條てあります。
  26. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 お尋ねように三年たてばこの請求権は消滅するのてありますけれども、これは時効というふうには考えておりません。時効でありますれば、時効中断というような問題も生ずるのでありますが、そういうものではなく、三年こつきりであと請求ができない、いわば除斥期間とても申すべきものと考えております。
  27. 石川金次郎

    石川委員 そこで第二段に生まれて参りました拂いもどし請求権は金をとるところの権利でありますから、これなら普通の債権になりますね。
  28. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようでございます。
  29. 石川金次郎

    石川委員 そうするとこれは十年間ということになりますか。
  30. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 それは通常債権でございますが、国に対するものてあります関係て、会計法規定によりまして時効は五年てあります。
  31. 石川金次郎

    石川委員 はなはだ失礼ですが、私会計法を調べて参りませんし、はたしてそうなるかどうか、この点はこの権利見方時効考え方もかわつて参りますから、はつきりお教えを願いたい。
  32. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 会計法規定は三十條でございます。
  33. 石川金次郎

    石川委員 ところで今度は補償請求権相続できる。補償拂渡請求権もまた相続できるわけですね。
  34. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さよう考えております。
  35. 石川金次郎

    石川委員 そこてこの補償請求権に対するところの相続は、この法ではつきり規定なつておりますが、補償拂渡請求権については、何も書いてございません。これは民法原則従つておる、こういうことになりますか。
  36. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようであります。それで特に二條におきまして、特別な規定を置きましたのは、こういう場合において、あるいはつまり補償請求をすることのできる者が、その請求をしないで死亡した場合には、その請求権相続されないのではないか。請求してあれはよろしいけれども請求しないて死んだ場合には、相続されないのではないかというふうにも解釈のてきる大審院判例がありましたので、そういう疑問を残さないために、特別な規定を置いたのでありますが、すべてこの辺は民法原則によるつもりでありますから、拂渡請求権も当然相続されると考えております。
  37. 石川金次郎

    石川委員 その時効は十年ということになりますか。
  38. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 時効は、やはり国に対する債権でございますから、五年てあります。
  39. 石川金次郎

    石川委員 ところで請求権は三年という除斥期間を置き、これは五年ということに書かれておるが、さて今五年と仰せになりましたけれども権利本質からして、これはあと裁判の問題になりますよ。一体今御指摘になりました時効、公法上の金銭債権消滅時効というのが問題になつて来る。十年になるかならぬかはまだ裁判確定しなければなりませんが、私のお聞きしたいのはこういうことなんです。一箇の請求権ができた。裁判ではその請求権存否確定をやる。その請求権損害補償を受けて消滅する。こういう行き方て一貫してさしつかえないのてはありませんか。
  40. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの点は、すべて民法原則による趣旨でございまして、同じようなことが民法上の損害賠償請求権につきましても起り得るのてはないかと考えるのであります。すなわち損害賠償請求権時効は、民法加害者及び損害を知つたときから三年ということになつておりますが、その三年内に請求をして、その債権確定いたしますと、今度は一般債権時効で十年ということになるわけでありまして、そういう関係とまつたく同様であるというふうに考えております。
  41. 石川金次郎

    石川委員 そうするとこうなりますね。補償請求権は三年。それから裁判があつた。いわゆる法律事実があつたことから発生して来た拂渡請求権は五年、こうお聞きしていいのですね。
  42. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さようでございます。
  43. 石川金次郎

    石川委員 それで先ほど申し上げましたように、裁判はこれを確定したのだ。確定ということをとつて請求ができることになつたのだという、民法からわいて参りましたところの普通の請求権と、どうして同一に取扱わなかつたか。補償請求権とは裁判上の一定給付請求する権利裁判を求める行為になります。裁判上の一定給付請求する権利行為補償請求権ですね。それは訴権と似たものになつて来わしませんか。従来の観念から言つて補償請求権というもの、補償を求めるところの権利そのものだと言わなければならぬ。一つ裁判を求める権利なのです。一つ裁判があつたから給付を求める権利。どうしてこうめんどうくさくやらなければならぬのですか。
  44. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 先ほども二十二條に関連して申し上げたのでありますが、補償請求権というのは、要するに国から刑事補償金を受ける権利であつて財産上の請求権であるというふうに考えておるのであります。それで特に拂渡請求権ということを書き上げました関係で、狭義のいわゆる請求権というよう意味でまず決定を求める。今度はその決定確定した場合に、拂渡を受けに行くものが拂渡請求権であるというふうに先ほど申し上げたのであります。刑事補償法請求権本質は、そういう損害補填を国から受けるところの財産上の請求権というふうに観念しておるのであります。
  45. 角田幸吉

    角田委員長代理 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止
  46. 角田幸吉

    角田委員長代理 その点は、こまかい法律論に入りますから、留保しておいていただいて、あとでお答えがはつきりできるように願いたいと思います。
  47. 石川金次郎

    石川委員 それでは、あとで伺うことにいたしまして、次に二十二條譲渡禁止理由をお伺いいたしたいと思います。
  48. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 刑事補償請求権は、ただいま申し上げましたよう財産上の請求権であり、一般民法原則によつて相続され得るというふうに考えながら、ここに譲渡禁止規定を置いておるのでありますが、これは刑事補償性質から申しまして、補償を受ける本人に直接に国からお金を差上げる。そうして遺憾の意を表する。これが最も刑事補償を有意義ならしめるものでにないかという考慮から、こういふうにしたのでありまして、ほかに格別の意味はございません。それで先ほども、ちよつと刑事補償は社会保障的な制度考えておることと申し上げたのでありますが、いろいろ社会保障的な、労働者災害保險法でありますとか、その他そういう法律には、やはりこれと同じよう制度を設けておるように存じておるのであります。
  49. 石川金次郎

    石川委員 社会保障制度考え方を御援用なさつたことについては反対しせんが、もう少しむずかしく言うと、損害賠償考え方が入つて来るのではないですか。私はそういう気がします。しかしそれはこの法案に直接的に関係はございませんから、それてよいとして、譲渡を禁止されたことに対しては賛成します。しかしそうなつたら、この譲渡という意味でありますが、私の解釈するところによれば、誤りかもしれませんが、譲渡というのは、当事者の意思表示の合致による権利の移転だと思うのです。そういう御趣旨でこの譲渡をお書きにならなかつたのでしようか。
  50. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 さよう考えます。
  51. 石川金次郎

    石川委員 そうなると、今度はこれが強制執行、差押え、いわゆる法律処分の対象になることを許すのですか。そうなりますと、せつかく譲渡禁止いたしましたことも、意味がなくなりはしませんか。
  52. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 譲渡がてきないということで、当然差押えの対象にはなし得ないというふうに考えております。
  53. 石川金次郎

    石川委員 ところが、そう行きましようか。これはほかの国でありますが、参考にいただきました刑事補償法の参考資料、オーストリアの賠償法の第二條であります。これには、「賠償請求権は、法律上の扶養請求による外、強制執行又は保全処分を受けない。強制執行文に保全処分が許されない限度で譲渡、指図、差押又はその他の法律行為による請求権利者自身の処分も法律上の効力を有しない。」こうなつておりまして、やはり譲渡禁止だといつて、ただちに差押えできないということになりましようか。もし意思表示により云々ということを見て参りますならば、ちよつとそこが問題になつて参りはしませんか。
  54. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 これは譲渡禁止によりまして、当然差押えの対象にならないというふうに考えております。その根拠規定を今ちよつと探しておりますから、ちよつとお待ちを願います。
  55. 角田幸吉

    角田委員長代理 それじや、その問題も次にお答えを願います。
  56. 石川金次郎

    石川委員 今度は、第一條の……。
  57. 角田幸吉

    角田委員長代理 ちよつと御相談ですが、あなたは今からどのくらいかかる御予定てすか。実は本会議も始まつておりますし、もう一つは、ちよう法務総裁がおいてになるから、検務行政に対する質問をしたいという梨木委員、上村委員の申し出があり、付託法案の審議が優先すべきものだから、許すまいと思つてつたらですが、特に許してくれという通告がありますので……。
  58. 石川金次郎

    石川委員 それでは私やめて、またあとで続けましよう裁判官報酬等に関する法律案について、一点法務総裁にお聞きしたいと思つておりますから、お願いしておきます。     ―――――――――――――
  59. 角田幸吉

    角田委員長代理 検務行政について梨木作次郎君及び上村進君より質疑の通告がありますので、法案の審議の途中でありますが、これを許します。まず梨木作次郎
  60. 梨木作次郎

    ○梨木委員 法務総裁に検務行政に関してお尋ねいたしたいと思います。それは去る八月十七日かに、横浜の港におきまして、海烈号という中国の舟が密輸の嫌疑で検挙されて、例の五・一五事件に関與した三上卓等十四名かの人たちが検挙されたという、いわゆる海烈号事件というものが新聞に報道せられております。まず私が法務総裁に伺いたいのは、この海烈号事件というものの概要をお伺いいたしたいと思います。
  61. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 今のお尋ねの件は、実は進駐軍で取扱つておりまして、私の方は報告は聞いておりまするけれども、直接これに当つておりませんので、詳細なことはわかりかねます。報告を聞いておりますところは、検務局長が心得ておりますから申し上げたいと思います。
  62. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その総裁が受取つておられる報告の内要をお伺いいたします。
  63. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 検務局長より報告いたさせます。
  64. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいま手元に持つておりませんので、次の機会にいたさせていただきたいと思います。
  65. 梨木作次郎

    ○梨木委員 詳しい点は、それでは次会に報告してもらつてよろしゆうございますが、大体今答えられる程度のところだけでも答えてもらいたい。
  66. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 うかつでありますが、今内容を申し上げる程度に、具体的に記憶しておりませんので、申し上げかねるのであります。
  67. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは早急に報告を、次会にでもしてもらいたいと思います。この密輸事件に関連いたしまして、これはわれわれが聞いたところでは、横浜港の日本鋼管の波止場から荷揚げしたということが報道されておるのであります。そこで一体検察庁では、いろいろ密輸事件がありまするので、こういう方面についての取締りについてどういう配慮をしておられるか、この点です。つまり日本鋼管の波止場の方の取締りの責任者には、一体だれがなつておりますか、これをお伺いいたしたいと思います。
  68. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまの日本鋼管の波止場の整備というような問題は、一般整備の問題、あるいは管理者の整備責任の問題と考えるのでありまして、検察庁では直接これにタッチしておりません。
  69. 梨木作次郎

    ○梨木委員 密貿易の問題につきましては、われわれの聞くところによりますと、横浜あたりから毎月一隻とか二隻出ているというようなことを聞きますが、これについて検察庁はどういう報告をとつておられるか。
  70. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 密貿易の取締りにつきましては、大蔵省の関税当局あるいは海上保安庁と連絡を密にいたしまして、さような事件のいわゆる捜査、訴追について遺憾のないようにしておりますが、ただいまお尋ねような、横浜から定期的に密貿易船が出航しておるというようなことは、まだ存じておりません。さような具体的なことがありますれば、これを調査したいと考えます。
  71. 梨木作次郎

    ○梨木委員 どうもしらじらしい御答弁なんで何ですが、これは私ある業者の会合に出たときに、公然と言われていたことなんてありまして、こういうことがわからあにとか、聞いておらないとかということでは、一体密貿易を取締つておるのか、取締つておらないのか、そしてこれは公然と許すのか、許すのなら許すという方針をとつておるのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  72. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 その実際の現場の取締りは海上保安庁の責任でありまして、海上保安庁あこれに当つておるのであります。それが犯罪だということがはつきりわかりまして、そして訴追をするというようなことになれは、むそん検察庁の責任でありますし、また捜査上が不十分でありますならば、検察庁が出て参ります。さしあたりにおきましては、これは海上保安庁の権限であり、職務であります。それから陸上の税関構内、あるいは税関構外でもでありますが、陸上に入つて参りますと、一般警察官、税関構内においては税関の取締り官というものが当の責任者であります。検察庁といたしましては、その現場の取締りについては、直接これにあたることができないのであります。
  73. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この海烈号は、この前にも一回密輸をやつて成功しているということを、われわれは聞いております。そういう点についても、この次の報告に、そういう点があつたかなかつたかということを伺いたいのであります。  それからこういうような密貿易のもうけによつて、日本における右翼関係の地下組織に資金を提出し、右翼的な陰謀をたくらんでいるという事実をわれわれ聞いておるのでありますが、これらについて、こういう密輸と右翼的な地下組織との動きにいて、法務府において、今までわかつている程度のことを、報告してもらいたいと思います。
  74. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 さような風説をしばしは聞きますので、注意しております。そして具体的に何々商会がやつたとか、あるいは何々という人がこれをやつたとかというようなことを聞きましたので、十分に注意して探究しておりますけれども、そういう問題で具体的にこれをつかみまして、これを犯罪といたして捜査する段階に至つたものがないのてあります。これは海上保安庁におきましても、実は監視船が足りない、人手が足りないというために、長い海岸線を監視しまするのに非常に骨がおれます。その監視船のすきをねらいまして行われている密貿易が、かなりたくさんあるだろうと思います。せんだつてのごときは、監視船が大砲で撃たれたような例もあるのであります。実にそれは遺憾に考えております。特に海上保安庁の監督は運輸大臣がいたしておりまして、運輸大臣がその点につきまして非常に心配いたしておりまして、予算の増額等を要求しております。そして新造船をたくさんつくりたい、それから速力の出る船をつくりたい、また装備もやりたいということでありますけれども、武器を持つことは実にできませんし、たくさんの船もにわかにつくることはできないようなわけ合いて、密貿易取締りが実ははなはだ不十分なのてありまして、そのためにさようないろいろの問題が出て参りまして、はなはだ残念に思つております。政府といたしましては、なるべくすみやかにこの欠点を直しまして、完全な取締りをいたしたいと考えておるのであります。税関構内等もまだはなはだ不十分でありまして、たとえば横浜、神戸にいたしましても、大部分の地区は進駐軍のまだ占拠するところてありまして、日本政府の管轄下にありませんのて、いろいろな取締り等につきして不十分な点が多いのであります。お話のようなこともありますので、今後十分に注意いたしまして、取締りいたしたいと考えております。
  75. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは今のこういう密貿易の取締り、検挙状況、またその対象となつておる人々がどういう人々であるか、こういう点をあわせて委員会に御報告を願いたいと思います。それはいつごろ御答弁を願えるかを伺いたい。
  76. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ただいま申しましたように、現場の第一線の監視は海上保安庁でしておりますから、私の方も十分手元にあります資料によつて御報告をいたしますが、できましたならば、海上保安庁の直接の責任者をお呼びくださればよくおわかりになりはせんかと思います。
  77. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私のお伺いしたいと言うのは、検挙数、それから検挙された人々が日本人か、日本人以外の第三国人か、こういう点を伺いたいわけであります。
  78. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまお尋ねの程度のことでありますれば、ただちにお答えできると思います。  ごく概略を申し上げますと、密貿易関係法令違反事件の検察庁における受理処理別でありますが、昭和二十一年の受理が八百八十五名、昭和二十二年が千三百五十九名、昭和二十三年が千四百九十二名、本年の七月まででありますが、千九百七十二名ということになつて、だんだん増加して参つております。その受理中起訴した者の数を申し上げますと、昭和二十一年が八百八十五名中四百二十三名、昭和二十二年が千三百五十九名中六百三名、昭和二十三年は千三百九十二名中八百三十五名、本年は七月まで千九百七十二名中七百二十七名を起訴いたしております。  それから国籍別でありますが、これに本年六月までの統計でありまして、かつ検察庁の統計ではございません。警察側の統計でありますけれども、これによりますと、合計二千三百八十二名検挙を見たうちで、おもなるものを申し上げますと、朝鮮人が密輸出八百九十一人、密輸入二百八十三人、密輸出入六十七人、日本人が密輸出百七十四人、密輸入七百八十九名、密輸出入二百四十七名ということになつております。数の目立つて多いのは大体この二つであります。以上簡單に御説明申し上げました。
  79. 梨木作次郎

    ○梨木委員 重ねてお尋ねしたいのは、先ほどの私がお伺いした点についての御報告は、いつごろお願いできるかということを法務総裁に伺いたい。
  80. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 次の委員会の機会に申し上げたいと思いますが、ただあらかじめ御了解を得ておきたいのは、きわめて簡單な報告であり、かつわれわれの方で特にわからない点を調査するようなことのできない関係にございますので、その点はあらかじめ御了解を得たいと思います。
  81. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それではもう一点伺いたいのですが、それは最近検察に当りまして、検事の申請した証人と被告並びに弁護人側から申請した証人と、この両方の証人が同一の事実について違つた証言をした場合には、被告人並びに弁護人の申請した証人の証言は、偽証である、うそを言つているのだ、こういう建前でこれらの人々を検挙し起訴し、ひどいのになると、法廷で偽証罪の現行犯として逮捕する、こういうことを検察庁がやつております。このことはまつたく検察專制の復活そのものだと私は思うのであります。なぜならば、こういうことが公然と行われるということになりますならば、身柄を拘束されている被疑者が、自分の無実を証明するためにいろいろと証人を出す。ところがこれらの証人と、検察庁が見込んだ証人と証言が食い違つた場合は、すべて被疑者側の証人が偽証だというKとで、全然自分の無実を証明する手段がなくなつてしまいます。たとえば、ここで一つの火災が起つた。その現場に平素検事から憎まれているある一人の労働者がおつたとする。そうすると、もしこの検事が、平素から憎んでいるこの労働者をやつつけたいということになつたら、まずこの労働者をひつぱる。労働者は自分は何ら火事とは関係がないと言つて、いろいろと自分の無実を証明するために証人を出したとすると、それが全部偽証だということでやられたら、特に身柄を拘束された被疑者は、自分の無実を証明する何らの手段もない。こういう乱暴なことが行われておる。しかも公開の法廷におきまして、現行犯として証人が逮捕された。千葉県の千葉地方裁判所において、そういう事実があります。現在また世間の関心を呼んでいる三鷹事件におきまして、現在二名の者が偽証罪として起訴され、今公判にかかつておる。こういうやり方は、少くとも現在の刑事訴訟法の精神から行きまして、事件の真相を究明して行くということからおよそ離れているもので、こういうことを検察の面においてやるということに、私はどうも不当であると思いますが、これに対する監督の立場にある法務庁といたしまして、どういう見解を持つておられるか、伺いたいと思います。
  82. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 お話のような事実はあるまいと私は考えますけれども、もしあれば、それははなはだ不都合なことだと思う。おらく具体的な問題につきましては、いろいろ事情もあろうと思いますから、検務局長の知つておる限り、お答えをさせたいと思います。
  83. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 ただいまお尋ねの千葉の事例は、私具体的に存じませんが、一般的に申し上げますと、重要な証人であつて、虚偽の証言をした場合には、公訴の実行に重大なる支障がございますので、これを偽証罪で起訴する場合がございます。それは検事が自分の気にいらない証言をする者を、どんどん偽証で縛つて行くというようなことはあり得ないことでありまして、偽証罪といえども、これを逮捕する場合には、その嫌疑が別の証拠によつて必ず立証されなければならないのであります。他の証拠によつて、客観的に偽証であると疑うべき嫌疑がある場合に限つて、そのようなことが行われておると了解するのであります。     ―――――――――――――
  84. 角田幸吉

    角田委員長代理 この際裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案議題として、質疑を許します。石川金次郎君。
  85. 石川金次郎

    石川委員 今議題になりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について、法務総裁ちよつとお伺いしたいのであります。まずそれは昨日でしたか、一昨日でしたか、法務総裁は、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について、角田委員から質問があられまして、同法の第十條について、かようにお答えになつたと承知しております。それは今度提出せられた裁判官報酬等に関する法律の一部改正案に、一号から五号の判事の報酬を上げなかつたのは、判事と相対応した行政官の俸給が上らなかつたのだから、今度も上げなかつたのだという御趣旨に伺つたのでありますが、私の記憶が誤りでございましようか。
  86. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 さように申したと覚えております。
  87. 石川金次郎

    石川委員 ところで相対応した行政官というのは、何でしよう。判事と相対応した行政官とは何でしよう
  88. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 あれは認証官が全部てあります。それから検事でございます。ほかの行政官はそれよりはるかに低いのであります。検事は高いのです。行政官のうちで検事が一番高いのでありまして、その検事よりまた裁判官は高いのであります。その検事も、判事に相応します検事は、全部上つておりません。それでまあそう不公平はないと思います。実は何もかもぶちまけて申し上げますが、全部上げてもらいたかつたのであります。しかし大体ならば判検事は高い。ペース云々の問題でない。予算のない際に上げないでもいいのじやないかという話があつたのであります。しかしどうもそれじや困る。やはりペースというものは考えてもらわなければ困る。そこで下の方の階級だけでも、少し上げてもらいたいということを話しまして、今日実は御承認を得たいというわけで、はなはだわれわれは困つておるところでありますから、御了承願いたいと思います。
  89. 石川金次郎

    石川委員 総裁の御苦心はわかつて参りましたが、こういう趣旨で十條ができ上つたことを御了承くださると思います。裁判官が他の行政官より高き地位になければならないのだ。そうすることで日本を新しい建設に持つて行けるのだ。こういう建前で、この法案をこしらえますときには、非常に苦労したのであります。そして第二国会におきまして、ここにおられます民自党の諸君がわれわれと同調いたしまして、ぜひそれを確保しなければならぬのだ、こういうので第十條ができ上つて来たのであります。そこで常に裁判官が、あらゆる他の行政官より高き俸給をもつてつて行くことにおいて、裁判官として、国家に対する一つのより強い責務を持つて行かなければならぬという趣旨で、でき上つたのであります。ところが今いろいろの御苦心があるといたしましても、これを無視されますことは、私たちが裁判官に対して約束したことが実現できないのみならず、国民として、裁判官に国会を通じて約束したことが履行できないというかつこうになるのであります。そういたしますならば、私たちは判事、裁判官に対して、裁判官に相当する責任を求めていないということになりはしないかということを憂えるのであります。この法律ができ上つて参りましたところの趣旨をくみとられて、総裁はもつといろいろな御事情があることだろうし、その筋のこともあるかどうかと存じませんけれども、この十條を生かしてくださるように御努力願えないでしようか。
  90. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 御意見ごもつともでありまして、努力を今後とも続けて行くつもりでありますけれども、実はこの妥協によりまして、ようやく下級の方が確保されました。そうでないと、大体この法案すらも認められなかつた。やむを得ず実は妥協いたしたのであります。ペースを五千円とする、六千円とすると言いながら、それは下級の官吏のみであつて上級に及ばないということは、どうも不合理だと思うのであります。しかしながら実際の情勢がさように参りませんので、上級の官吏は依然として三千円のペース、下の官吏は六千円のペースというと、どうもそこの調和がはなはだ悪いのであります。いずれは直ると思います。しばらくの間はごかんべんを願いたいと思います。努力は十分いたします。
  91. 石川金次郎

    石川委員 ところが行政官の方になりますと、種々給與がかわつて参りますほかに、新しい給與法に基いて、自然に裁判官に接近して来てしまつたじやないか。そういうぐあいになりますと、どうもこの項をこしらえました趣旨とまつたく異なつてしまつて、だんだん行政官の方が裁判官と同じようなつてしまう。そういうことがないようにしてもらいたい。それは行政官もしくは検事を私が侮辱する意味ではちつともございません。ただそのときそうやつて置くことが、裁判官に対するわれわれの勤めだと思つたのです。そうやつて置くことが、裁判官に対する責任を私たちが要求することができる、こういう考え方から、今のように技術的に、すでに行政官の方が上つて、判事の俸給はそのままになつておるというのでは、どうもこの十條がまつたく消されてしまうことになるから、お考え願いたい。
  92. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 さようでございます。行政官が上つて参りまして、判事と行政官の差が減つて参りました。しかしまだ差があることはあるのであります。いずれはまたもとの通りに差が大きくなつて参りましようし、また参るように努力いたすつもりでありますから、ここしばらくはがまんを願いたい。
  93. 石川金次郎

    石川委員 今度の補正予算に組み得なかつたならば、二十五年度の一般予算には組んでいただきたい。これはぜひ実現して参りますよう、法務府も一生懸命御努力を願いたい。私たちも陰で一生懸命やりますから、この法律を殺さないように願います。
  94. 角田幸吉

    角田委員長代理 本日はこの程度において散会いたします。明日は午後一時より開会いたします。     午後三時十二分散会