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上村委員 そこで、
犯罪は突然起きるといえば、
犯罪は突然起きるのですが、よく検討すれば、
犯罪は犯されるべくして犯されて来るのです。それでありますからして、少
事年犯罪は突然できて来るものもあるが、まず大体よく観察しておれば、来るべきものが来たというような
傾向が多いわけです。そこで私
どもは多年弁護士をや
つておりますが、昔支那の学者の晏子という人が言
つておりますが、知らしめないで殺すのは虐と言
つておる。すべてよく知らしめて、これはこういうものである、あれはああいうものである、これはいいことである、これは悪いことであるということをよく教えて、しかもそれを犯した場合に殺すというならば、それは
虐殺ではない。
少年などは特によくわからないで罪を犯す者がある。知らしめないでおいて、犯さしておいてそれを殺してしまうということは、これは
虐殺です。言葉がひど過ぎるかもしれませんが、特に
少年の
犯罪防止として、今
法務府で、
佐藤さんの御
説明にな
つたように、もつ
ぱら後者の方をやるということでは、
少年に対して非常に気の毒なんです。その悪なるゆえんを教えて、そうして犯した場合にこれを殺す。一旦起訴されるということは、これはその人間にと
つては非常な
致命傷です。一代にと
つて致命傷であるし、同時に少
事年時代に若々しい二葉を汚されるということにな
つて、なお一層
致命傷のものな事のです。ですからして、
犯罪事
防止というからには、むしろ私は後者でなくして、私の問うた
質問の前者に特に力を入れるべきではないだろうかと
考えるのであります。そこで話は希望的な問題のようになりますが、事ともかくもどの階級においても、
犯罪がふえて来ることは明らかです。
予算なくて困る困るというふうにして年齢を引延ばして、すでに
犯罪を犯した者を再び犯さないように
防止する
意味の刑事政策をおとりにな
つて、しかも一旦
犯罪を犯した者でも不親切な教え方をして二十歳までを包含するよりも、むしろ
少年犯罪というものの特殊性をよく把握して、満十八歳なら十八歳に縮めて、その範囲においてそんなに延ばしたり引ず
つたりしないで、丁寧にゆつくりと教えてやることが、
少年犯罪というものを特別に扱うゆえんではないかと私は
考える。だからここで一年延ばすとか何とか言わないで、十八歳なら十八歳にして、まだよく善悪の分別がついていない者を、国家の力で親兄弟になりかわ
つて丁寧に教えて、郷里へ帰すべきではないかと私は思う。その
意味において、この案にはわれわれは賛成しておきますが、しかし根本的に、もう少し
法務府において、
少年犯罪防止法というものについて御検討を願いたい。こういう希望を申し上げておく次第であります。