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1949-11-11 第6回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十一日(金曜日)     午後一時五十七分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 小玉 治行君 理事 高橋 英吉君    理事 石川金次郎君 理事 梨木作次郎君    理事 大西 正男君       佐瀬 昌三君    古島 義英君       松木  弘君    眞鍋  勝君       武藤 嘉一君    山口 好一君       猪俣 浩三君    田万 廣文君       上村  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         人事院総裁   淺井  清君         国家地方警察本         部次長     溝淵 増己君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         厚生政務次官  矢野 酉雄君  委員外出席者         文部事務官   田中  彰君         厚生事務官   小島 徳雄君         厚生事務官   内藤 誠夫君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十一月十日  戸籍事務費全額国庫負担に関する請願山本猛  夫君紹介)(第六号)  遺失物法の一部改正に関する請願山本猛夫君  紹介)(第二三号)  碧南市に簡易裁判所並びに検察庁設置請願(  中野四郎紹介)(第三九号)  吉田町に簡易裁判所設置請願山本久雄君紹  介)(第一二七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  少年法の一部を改正する法律案内閣提出第三  号)  国家公務員政治活動制限に関する人事院規則  の適用に関する件     ―――――――――――――
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程は、昨日に引続き国家公務員政治活動制限に関する人事院規則適用に関する件及び少年法の一部を改正する法律案であります。  まず少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。
  3. 石川金次郎

    石川委員 少年法の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。提案理由説明の中にもありましたように、本法が制定されますときには、少年事件は約二倍以上に増加するだろうとは予想せられておつたのであります。爾来一年、この本則にのつとることを延期してあつたのでありますが、この十箇月間に、政府はどのよう準備に努力せられたか、また何が実現のできなかつた一番の原因であるかを承りたいのであります。
  4. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 本年一月一日から新しい少年法実施せられるにあたりまして、少年年齢を従来の十八歳より二十歳に引上げるについては、まつたく準備ができておりませんでしたので、お願いいたしまして、この一年間は従来通り少年を十八歳というふうに、暫定的に特例を設けていただいたのであります。しこうして一月実施になりましてから、鋭意受入れ態勢準備いたしたのでありまするけれども、まず第一に家庭裁判所建物、それから家庭裁判所裁判官の充実ということが思うように参りませんので、現在でも家庭裁判所裁判官定員にはるかに満たないのであります。建物の方は、従来の通常裁判所の一部を間に合わしておりまするので、どうやら間に合つておるようでありまするけれども裁判官の充員ということが一番間に合わない理由一つになるのであります。  その次に、法務府の関係でありまするが、少年院及び少年観護所少年鑑別所建物を建設することに努力いたしておりまするが、本年の予算をもつてしましても、現在の激増する十八歳未満少年を受入れるだけに、まだ足りない状態でありまするので、明年からただちに二十歳まで引上げますれば、少年院少年観護所鑑別所建物も間に合わないことは明らかでありまするので、この点もぜひもう一年延ばしていただきたいのであります。  なお少年院少年観護所鑑別所の点につきましては、建物ばかりではなく、それに伴う衣類その他の施設も十分でありませんし、また職員もさらに養成して充員しなければならぬ現状でありますので、かような点からも、ぜひもう一年延ばしていただきたいと存じまして、この法案を提出した次第であります。
  5. 石川金次郎

    石川委員 一年間少年法本則にのつとることを延期いたしまして、政府では、この一年過ぎれば、来年、再来年からはやれるという御確信がございましようか。ただいまの御説明にもございました通り参考資料を拜見いたしますと、今日の法制上、判事は少くとも判事補五年以上の経験を経なければならないというために、その急速なる充足は困難であるとしまして、判事が非常に足りないというように書いてあるのであります。この一年間に、第一番に裁判官の補充がつかれるというのか、どうしてつけられるというのか、この点をお伺いしたいと思います。  次には少年観護所状況でありますが、これもまた参考資料におきまして、職員定員千三名に対し、現員は五百六十四名である。少年鑑別所の勤務は特殊技術を要するため、その急速なる充足は困難であると言われている。この一年間において、五百名に近いところの職員をどうして補充せられるお見込みであるか、まずこれらをお聞きしておきたいのであります。
  6. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 参考資料に示してあります欠員状態でありますが、現在少年院及び少年観護所等の設備がまだ整つておりませんので、教養訓練はいたしておりまするけれども、本官に採用することのできない職員候補者も相当残つておりまするし、さらに明年度は、明年度予算において新たに職員を補充いたしまして、それを適当な期間教養訓練いたしますれば、この欠員状態はある程度充足できると思うのでありまして、理想通り全部できるというふうには、今お引受しかねるのでありますが、大体間に合う程度に充員できる見込みであります。
  7. 石川金次郎

    石川委員 判事の方をおききしたいのでありますが、少年事件処理には判事百五十名、判事補百五十名を必要とすると言われておるのでありますが、この点は裁判所とお打合せなさつて、これらの必要人員は来年度補充し得る、もしくは近い将来補充し得るという御確信がありましようか。
  8. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 その点につきましては、裁判所とまだ打合せはいたしておりませんが、私の考えでは、もし家庭裁判所の專任の裁判官としてどうしても欠員を満たすことができない場合には、通常裁判所裁判官に一時兼務していただけば、何とか間に合うのではないかというふうに考えております。
  9. 石川金次郎

    石川委員 なるほど兼務はけつこうでありますが、裁判所におきます事件が非常にたくさんございまして、あなたも御承知ように、判決がなかなか出て参りません。ある人は、今裁判所があまりに多く事件がたまりましたために、破産みたいな状態になるのではないかと憂えておられるのであります。その中からなおかつ兼務を求めて参りますことは、とうてい困難ではなかろうかと思うのであります。私のお聞きしたいことは、一年々々と区切つてこれを延期いたしますよりも、政府はこういう国の最近の情勢から、遺憾ながらあと何年間はできそうもないということを率直に申された、そうして新たにこの法案をお出しになつたらいかがかと存じます。一年また一年ということになりますと、本来この法律が制定されましたときには、この法律に書いてある期日に必ず実施されるものであるということを国民は信じておるのであります。来年また一年ということになりますと、再来年の一月一日からは必ず実施になると信ずるのは当然なのであります。そのときもまた国民期待に沿い得ないということになりますれば、あまりにわれわれも不明であり、政府御自身も誠意がなかつたということになりはしないかと存じます。ほんとうに御確信がありますならば、私たちはこれに賛成することは少しもかまわぬのでありますが、その点、断じてやり得るという御確信がありますれば、それをお聞きいたしたいと思います。
  10. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 いろいろな手違いがありまして、私ども予想通り実施の運びにまで参りませんでしたために、たびたび延期法案を提出いたしまして皆様に御迷惑をおかけしておることに対しましては、衷心恐縮に存ずるのであります。明年一年延ばしていただきますれば、ただいま申し上げたように各方面で努力いたしまして、明後年は必ず理想通り満二十歳まで引上げて、少年の対策ができるようにいたしたいと思います。
  11. 石川金次郎

    石川委員 最後にもう一点お聞きしておきますが、来年度の予算でありますから、これはまだおきめにならないと思いますが、今度の補正予算あるいは来年度の予算において、これが完成するよう大蔵当局とすでにお打合せ済みでございますか。これも非常に心配でありますのでお聞きしておきます。また必ずこれを実現するだけの予算をとり得るという法務府の御確信がございますか、これもお聞きしておきます。これはむりかもしれませんけれども、お聞きしておきませんと、これをただ簡單に一年また一年と延ばすことはどうかと思いますので、お聞きしておきます。
  12. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 少年院少年観護所少年鑑別所その他の施設につきましては、大蔵省経済安定本部との間に予算折衝が確定しておりませんので、その点ははつきり申し上げかねるのでありますが、私どもの要求している額を幸いにして安本の方で認めてくださるならば、明年で全部完成いたしまして、明後年からは満二十歳までの少年を必ず引受けられる態勢ができることになつておるのであります。すでに明年度予算として、職員その他の経費につきましては大蔵省予算折衝をいたしましたが、この点は成人に対するよりも少年に対する経費が非常にかさばりますので、大蔵省でその点の了解を得るのに非常に困難を感じたのであります。われわれの理想通り予算は認められなかつたのでありまするが、少いながらも認められた予算の範囲内で、必ず受入れ態勢が完成できるように努力いたしたいと思つております。
  13. 石川金次郎

    石川委員 非常にくどいようでありますが、これは一年延期いたしましたならば、明後年の一月一日からは実施ができると信ずるのでありますが、われわれの信頼に対しては、必ず裏切らないことを佐藤さんからここで明らかにしていただきたいと存じます。
  14. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 その点はただいま申し上げましたように、われわれはできるだけ努力いたしまして、受入れ態勢を完成して、明後年また延ばすというようなことのないように、皆様の御期待に沿うように努力いたすつもりであります。
  15. 石川金次郎

    石川委員 なお、一言いたしますが、法務府の予算はそうでありましても、裁判所では予算が必要かと存じます。裁判所でも予算がとれますように、法務府では御努力せられておるかどうか、その点をひとつお聞きしたいと思います。裁判所は国会となかなか結びつきが悪いのでありまして、もしその点に懸念がありますと何にもなりませんが、法務府はどのように努力しておるか、また努力せられるかということを明らかにしていただきたい。
  16. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 裁判所の方で、この少年事件に対する処理に要する予算明年度どういうふうになつておるか、実は私の方では存じておらないのであります。裁判所が独立して予算を要求するようになりましてから、全然法務府との連絡がないのでありますが、聞くところによりますれば、裁判所予算は、行政各省予算よりも大蔵省においても割合に楽に認められておるのではないかというようなうわさも聞いておりますので、おそらく裁判所において少年事件処理について必要な予算は、十分大蔵省においてすでに認められておるのではないかと想像いたしております。
  17. 山口好一

    山口(好)委員 ただいま上程になつております法律案の一年延期趣旨は了承いたしたのでありまするが、少年法におきまして、二十歳というふうに十八歳から年齢を高められまして、これらの者に対しては特別な審理等処置が講ぜられなければならないということになつたのでありますが、現在の段階としましても、十八歳未満という限度において、できるだけその趣旨を活用しなければならないと思うのであります。ところが私が実際少年事件について検討いたしてみますのに、少年に関する事件が検挙されまして、警察取調べを受け、次に検察庁の方へまわりまして、ここで取調べられて、さらに家庭裁判所の方へ回付をいたし、そうして家庭裁判所審判をいたすことになりますが、その間に十八歳という限度が切れまして、すなわち十九歳に入つてしまうということが多々あるようであります。そうしますと結局少年事犯ではありますが、その審判の途中において不開始の決定をして、通常裁判所の方へまわすとか、検察庁の方に回付をして、そうした決定をまたいたさなければならないことになります。これはやはり相なるべくは、少年のときに犯された犯罪は、家庭裁判所において少年事件として適切なる処置が講ぜられなければならないと考えます。そこで私お伺いしたいことは、今日政府当局の方で調べられたところによりますれば、大体警察に検挙されまして、それから検察庁で調べ、家庭裁判所にまわつて審判を受けて、その審判が終了するまでどれくらいの期間が必要とされておるか。通常どれくらいを要しておるかというようなことがおわかりだつたらこれを伺いたい。
  18. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいまお尋ねの点でありますが、その点はまだ正確に調べた資料はございませんので、早速取調べの上、御報告いたしたいと思います。
  19. 山口好一

    山口(好)委員 それではそれは後によく調査していただいて、その統計と申しましようか、そういうものを出していただきたいと思うのであります。私の取扱いました事件などから見ますると、警察において検挙されて審判の開始されますまで、相当時期を経過するように思われるのでありまして、これは今日の新しい刑事訴訟法の理念から申しましても、警察においても早速取調べをして検察庁にまわし、検察庁においてもこれをできるだけすみやかに調べて、少年犯罪である場合には家庭裁判所に早くまわして、十八歳という年令の切れない前に―やはり二十歳にまで高めようとしておるその法意をくみまして、今日の段階においてもなるべく早くこれを処理して、最も年齢の若い者の犯罪について、これに適切なる処置を講じなければならないと考えるのであります。実際はなかなか事務も煩多であるというようなこともありますが、しかしこの事件についてさらに熱意をもつて、その年齢の切れないうちに、やはり少年として適切な処置を講ずる、こういうふうにいたしてもらわなければならないと痛感いたす一人であります。この点についてただいまの統計的な必要日時というものが正確にわかつておらないようでありますから、当局においても詳細な御説明ができないと思いますが、その点についての政府の御所見を伺いたいのであります。それは私が最近扱いましたごく軽微な事件でありまして、少年が二人共犯で小麦粉を二袋ばかり盗んだという事件であります。一人はその審理の過程において十九歳になつてしまいまして―一人は二月ほど違う生れでありましたが、一人はやはり少年事件として不処分という決定を受けました。ところが審理の途中で十九歳になつてしまつた片方はさらに検察庁の方にまわされまして、そうして本裁判所の公判にかけられ、懲役一年但し執行猶予三年というような言渡しを受けるに至つたのであります。両方とも情状は同じようであります。ただ生れ月が二月ほど違つておりました。そのために片方少年は不処分決定を受けまして、片方本裁判にまわつて執行猶予になりましたが、懲役一年というような言渡しを受けた事件も見ておるのであります。そういう事件から見ますと、どうしてもこの十九歳になつたかならぬかで、その少年の一生の経歴の上に非常な差異を生ずることになり、ひいてはその二人の少年の上に非常な将来の差異が生じて参りますことは、いかにも気の毒であります。少年に対する処置として適切でないということが痛感されます。その点の政府のお考えを伺いますと同時に、この点についてはまた管轄官庁から下級官片、あるいは地方裁判所などに対する何か適当な訓令でも出していただきたいように思うのであります。その点もあわせてお伺いいたします。
  20. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいまお話のような例になりますと、少年であるか、少年年齢を越えた成人になつているかどうかということによつてその取扱いが全然違いますので、その間まことに不均衡な結果になるおそれがありますので、満十八歳に近いものが少年事件として家庭裁判所に送られた場合、あるいは警察において家庭裁判所に送る場合、あるいは検察庁から送るような場合でも、すべて取扱いの係官におきまして、少年事件はなるべく少年時代処理することのできるように、迅速な取扱いをしなければならぬということはもちろんであります。ことに新少年法精神から申しましても、本来満二十歳までは少年として扱うべきところ、便宜受入れ態勢ができていないために十八歳と縮めておるのでありますから、その年齢の者に対しては、新法の精神従つて、なるべく少年法適用を受け得るように迅速な取扱いをしなければならぬものと存ずるのであります。御注意の点につきましては、警察あるいは家庭裁判所等連絡を十分にいたしまして、その間齟齬のないように愼重に取扱いたいと思うのであります。  なお身柄拘束事件は、御承知よう少年観護所には二週間收容することができ、特別の場合にはその期間を一回だけ更新するというよう制限規定もございまするので、身柄事件は二週間以内に審判ができるようにいたしておることと考えておるのでありまするが、もし事務の輻輳その他の関係で、この原則通り二週間という期間が守られないというようなことがありまするならば、少年人権尊重という建前から申しましても、はなはだ遺憾なことでありまするから、その点も十分に関係官庁連絡をとりまして、遺憾のないようにいたしたいと存じます。
  21. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 これはこまかい法律問題になりますが、少年成人かを判定する時期はどこに求めるか。少年法解釈の上からいつて少年の扱いをすべき者はなるべく広く少年の中に入れるというのが、年齡引上げばかりでなく、具体的な取扱いの上から必要であろうと思うのであります。ただいま山口委員から示された例の場合でも、たとえばそれが事実審の一審の判決時に少年であつたけれども、その後控訴審あるいは上告審判決を言い渡す時期には、すでに成人になつているといつたような場合に、これはなお少年として取扱い得るかどうか、従来その点については二つの大審院の判例が、矛盾をしたよう取扱いをしている例があるのであります。私は将来少年法を運営する上において、その点をこの際明確にしておく必要があるのではないかと思うので、この点政府行政的解釈としてはどうなつておるかということを承つておきたい。
  22. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 被告人裁判を受けますときに、少年かあるいは成人かということをきめられるのは、最終の事実審の裁判当時においてきめられるのではないかというふうに、私ども解釈いたしておるのであります。お説のように、なるべく少年時代犯罪をした者は、どこまでも少年として特別な取扱いをするという方針は、これはまつたく同感でありますが、ただ少年院等で実際少年を取扱つている実情を見ますと、裁判のときに少年であると偽つて、たとえば二十二、三歳の者が、からだが小さくて、そして裁判所裁判をするときには、被告人の言う通り十八歳未満として少年裁判をし、そして少年として少年院に送つて、他の少年取扱いを同じにしておきますと、あとから実際は二十二歳、二十三歳であるということがわかつた場合には、これをすべての少年と同じように待遇をし取扱うということは、他の多くの少年に悪い影響を及ぼすということも考えられますので、実際の段階としては、実は困つている問題があるのであります。ところが現在の少年法におきましては、立案当時私どももそこまで気がつかなかつたのでありますが、さよう裁判所少年年齡を誤つて裁判したものが、あとで成年であるということがわかつた場合に、これをどうすることもできない、救済規定が実はありませんので、近い機会において皆様の御協賛を得て、この点は少年法改正を加えなければならぬのではないかということを目下研究いたしておるのであります。さように実際の取扱い方から見ますと、あまり年齡の差のある者を少年と一緒に取扱うことは、非常に不便なことがあるのであります。しかしながらただいまお尋ね少年かどうかということをきめるのは、事実審の最終判決当時においてきまるのではないか、かよう解釈いたしております。
  23. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 これは私一個の意見でありますが、元来少年であるかどうかということを暦の上の年齡決定するということは、もはや非科学的であつて精神年齡を基礎にして、その青少年心身発育状態が実態的にどうなつているかというよう心理的考査の上で決定して行くことが、最も合理的であると考えるのであります。しかしこれは日本の現在のあらゆる角度における水準から言つて、そういう制度を設け運用することは、ただちには可能でないために、私どもは一応現在の少年法を肯定するものでありますが、この点は将来政府においても十分顧慮してほしいと思うのであります。  それからこのあと警察当局者説明を伺うそうですが、その際特に留意していただきたい点を、二、三申し上げておきたいと考えます。警察の取締りの対象となる青少年犯罪は、終戰以来とみに増加して来ておりますが、その犯罪の種別が時代的にどういうふうにかわつて来ておるかという点、ことに最近財産犯の計数も青少年犯罪として相当増加しておるように見えますので、この財産犯の範疇に入る犯罪について、なるべく数字的にこれを示していただきたい。これを私の質問の要点としてお願いしておきます。     ―――――――――――――
  24. 花村四郎

    花村委員長 他に御質疑はございませんか。―他に御質疑がなければ溝淵国家地方警察本部次長の最近における青少年不良化並びに犯罪に関する動向について御意見を承りたいと存じます。国家地方警察本部次長
  25. 溝淵増己

    溝淵政府委員 青少年犯罪につきましては、各方面非常に御心配を願つておる問題でありますし、警察といたしましても最も関心を持つておる問題でございます。実は統計数字の示すところによりますと、昭和十八年ごろにおきましては、全刑法犯罪の約十八パーセントを占めておりましたものが、昭和二十三年におきましては四八%、全犯罪の約半数を占めておるというような勢いでふえておるのでございまして、その間ほとんど増加する一途であります。二十四年度におきましても、上半期の数を調べますと、このパーセンテージは決して下つておりません。  これらの犯罪はあらゆる犯罪にまたがつておるのでございますが、試みに昭和二十四年の上半期青少年犯罪一私の方で青少年と申しておりますのは、二十五歳以下を数字にあげておるのでございますが、一番多いのは強盗でございまして、全体の強盗の数の約八十パーセントを占めております。その次が強姦で、六九%、それから強盗傷人、六五%といつたよう数字を示しておるのでございます。ただいまお尋ねのありました窃盗の方は、全窃盗犯罪の五八%を占めておるというよう状況でございまして、その他強盗殺人殺人、詐欺、賭博、猥褻といつたような、犯罪のほとんど全領域にわたつておるのでございます。  これらの犯罪原因が那辺にあるかということは、もはやすでにおわかりのことと存じますが、終戰後のいろいろの問題、ことに青少年の戰争中における環境と急変した社会環境、あるいは経済的な問題、いろいろあると存じますが、その間にありまして、これらの青少年使つて犯罪を行うというようなものも相当あるようでございまするし、また中には一つのグループをつくつて、いわゆる犯罪団体式になつておるものもございまして、なかなかこの犯罪の区別をするのは容易でないと存じます。従いまして私どもの方におきましては、いろいろの方法で犯罪の撲滅を期しておるわけでございまするが、何しろ警察官の数も少い上に、多くは都市に集中しておる犯罪が多いのでございまして、いわゆる新警察制度下におきまして、都市の方面の犯罪検拳につきまして、連絡その他、従来のように行かない面もありまして、かなり困難を来しておりまするが、この問題に関する限り、全国の自治体警察も、同一歩調をとりまして、これらに対処しております。最近は大都市におきましては、少年犯罪の專門の係を設ける。また国警におきましても少年係を設けまして、その取締り指導に当つておるわけでございます。いずれにいたしましても、この犯罪の撲滅と申しまするか、改化遷善と申しまするか、そういうことにつきましては、警察だけの力でやれるわけはないのでございまして、その意味におきまして、最近各省また各界の関心が非常に高まつて参りますし、国会における決議の次第もあり、非常に熱が入つて参りまして、私ども非常に喜んでおる次第でございます。これに即応いたしまして、われわれといたしましては極力関係の官庁その他と連絡をとる。それから特殊な犯罪を犯しました青少年に対する特別な指導と申しますか、補導に留意いたしますとともに、青少年使つて犯罪を犯す者等に対する取締りを強化したいと存じております。  なお最近の情勢としましては、都市の不良青少年が農村を荒すというようなこともよく聞いておりますが、この方面に対する取締りも徹底いたしたいと存じております。
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 ただいまの統計は、大体検挙されたものを基礎にされたものと思うのでありますが、現在の警察力の上から見て、そういうよう青少年犯罪に対する検挙率というものは、概算的にどういう程度に見ておられるか。その点を伺つておきたいと思います。
  27. 溝淵増己

    溝淵政府委員 青少年だけに関する検挙率をとつたものはございませんが、全体の犯罪から割出しまして、強盗とか、殺人とかいうものにつきましては、大体八五%ないし九〇%ぐらい検挙いたしております。窃盗その他になりますると、ことに窃盗は、これは非常に申訳ないのですが、検挙率が非常に低いので、五〇%ないし六〇%というところが大体の数字だと承知いたしております。
  28. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 犯罪の傾向として、非常に青少年を使つている者が多いということを承つたのですが、なお青少年の集団犯罪というような形態をとるものは、どういう状態になつておるか。
  29. 溝淵増己

    溝淵政府委員 青少年犯罪のグループの問題でございますが、これもその犯罪の種類がいろいろの方面にわたつておりますが、窃盗団とか、強盗団というごくありふれたものでございまするし、中には昔の何というか、ボス的な町の、私どもの方ではチンピラと言つておりますが、チンピラ仲間の恐喝その他をやるグループがあるようでございます。私の方にはつきりした統計はありませんが、全国に六百くらいそうした団体、または団体らしいものがあるのではないかというふうに見ております。
  30. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 検挙された後に、警察から送致される率といつたようなものはどの程度になつておりましようか。
  31. 溝淵増己

    溝淵政府委員 送致されました数は、統計が実は今整つておりませんですが、少年犯罪はいずれにいたしましても、大部分送致いたしております。これは保護処分その他の関係で、正確な数字ではありませんので、あとからお答えいたします。
  32. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 戰後成人及び青少年犯罪は概して増加しておるのでありますが、その上昇率を成人青少年とを比較してみたら、どういう結果になつておるか。もし警察統計をお持ちになつておつたら、その面からお示しを願いたい。
  33. 溝淵増己

    溝淵政府委員 私の方でお配りしました資料の中に載つておりますが、刑法犯の総数が昭和十一年に約四十四万、それが昭和二十三年度に五十五万になつております。このうちで青少年犯罪数が昭和十一年の四万六千から次第に増加して、昭和二十三年に十二万にふえております。全体の数は、むろんこれも検挙した数でありますが、五十五万で、わずかに二割程度の増加でございますが、青少年犯罪におきましては、四万六千から十二万にふえておるという数字になつております。
  34. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 刑法犯に該当するもの以外に、その予備群と申しますか、一歩手前にあるいわゆる不良青少年といつたものは、先ほどの御説明の中に漏れておつたようでありますが、そういつたものは、どういう状況のもとにあるか、簡單に御説明願いたい。
  35. 溝淵増己

    溝淵政府委員 この点は犯罪数で想像するより以上に、私の方で統計的にとつたものはございませんですが、一般的に悪いということは言えると思います。ちよつと数字があげにくいのでございます。
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 別に強制的措置は、法律に許された範囲内しかできないのですが、何か輔導的なことを、警察行政の面でも実際におやりになつておられますかどうか。
  37. 溝淵増己

    溝淵政府委員 青少年の輔導取締りということは、私ども警察的立場では、実は犯罪の検挙取締りという面以外につきまして、非常に手を出したい面があるのでございますが、ただ新しい警察としまして、出過ぎることがいけないし、そうかといつて警察犯罪を検挙すればいいということも言えないわけでございまして、非常にむずかしい対象だと考えております。従いまして現在までのところ、検挙と取締り、そうしてそれを送致するということが中心になつておりますが、それでは関係官庁への連絡その他もうまく行かぬというようなことでございますので、今後におきましては、犯罪を犯しそうな環境、あるいは状態等にあるものについて、またそうした不良に落ち込みそうな状況にあるようなものにつきましては、極力それぞれの主管のところに連絡して、それぞれの主管の事業を発動してもらいたい。かように存じております。
  38. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 もう一点お伺いしておきたいのですが、そういう点は非常に警察の困難な立場は十分理解し得るのでありますが、青少年犯罪に対する対策として、従来警察警察法務府は法務府、厚生省は厚生省、あるいは文部省は文部省といつたような立場々々からの施策に終つておつた。ただいまお話のように、警察の立場から不便を感ぜられるがごとくに、何かそこに総合的な施策というものがなければ根本的な解決にはならぬと思います。最近そういつたような制度の一つとして、ボーイス・タウンといつたようなものの設置が外国あたりで行われておるのでありますが、警察の面から見て、やはりそういつた総合的対策が非常に必要ではないかと思うのであります。それに対する御意見警察を代表した意味において、ここでお伺いしておきたいと思います。
  39. 溝淵増己

    溝淵政府委員 ただいまの御意見は非常に私どもの気持とぴつたりしておるような感がするのでございまして、われわれが今日まで担当検挙いたしましても、その措置が警察の措置と、ときにはマッチしないような場合もあり得るし、また警察も他の官庁の仕事に十分の理解がなかつたという面が、今日までなかつたとは言えないのでございます。今回政府におきましては、国会の御決議に基き、全官庁を網羅して対策を練つておられますので、私どもも單に警察の立場に立てこもるというだけでなく、その一環の事業としまして協力し、また協力してもらいまして、この犯罪をなくすることに努力したいと存じております。     ―――――――――――――
  40. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。一なければ第五国会におきまして青少年犯罪防止に関する決議が本院を通過したのでありますが、その決議に、次期国会においてこれに対する施策並びに措置の結果につき報告すべきこととなつておりますので、政府側より順次報告してもらいたいと存じます。  厚生省よりお願いします。矢野厚生政務次官
  41. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 厚生大臣にかわつてお答えをいたします。  去る第五回国会における不良化防止に関する決議に基きまして、内閣に青少年問題対策協議会が設けられたわけでありますが、その決議事項中、本年度内に実施すべき緊急対策として、閣議決定された項目の中で、厚生省に直接関係があるものは、御承知のごとく児童相談所、一時保護所、教護院等兒童福祉施設の整備をはかることでありまして、これについてはその実現をはかるべく、予算につきまして目下極力努力中であります。また来年度の予算におきましても、相当程度整備強化がはかれる見込みであります。なお都道府県及び市町村の青少年問題対策協議会の組織運営につきましては、都道府県知事、市町村長等があつせんに当ることになつておりますので、これが督励に努めております。近く行われます青少年保護育成運動の実施母体として発足する準備は整つております。  そのほか青少年不良化防止につきましては、常に一般家庭の啓発、兒童福祉司、兒童委員の活動の促進等に努めておりますが、今回の青少年保護育成運動に当りましては、都道府県を督励して、兒童相談所の巡回相談、兒童福祉司、兒童委員の家庭訪問、子供会、兒童指導班の結成促進、優良兒童文化財の推薦等を重点的に実施して参りたいと考えております。  なおただいまの議員の御発言の中に、厚生省、あるいは警察、あるいは文部省その他関係の各行政官庁が有機的の連関を持つて不良化防止に当るというような計画をしたらいかがかというような建設的な御意見がありましたが、これは最も適切な御意見でありますので、厚生省におきましても兒童局長等を督励いたしまして、各官庁に呼びかけて、厚生省みずからがその会合が開かれるようにごあつせんして、貴意に沿いたいと思つておる次第でございます。
  42. 花村四郎

    花村委員長 厚生省の報告に対し御質疑はありませんか。一御質疑がなければ、次に移ります。  文部省の田中説明員。
  43. 田中彰

    ○田中説明員 青少年不良化防止につきましては、文部省におきましても従来からいろいろ手を打つておるのであります。たとえば学校を中心といたしまして、社会学級というようなものを設けまして、青少年の收養の向上をはかり、いい者はますますよくし、悪くなるおそれのある者はこれを正しい方に導いて行くというような方法を講じておるのであります。それからまたたとえば兒童愛護班といつたような社会教育運動を奨励いたしまして、兒童生徒に対して健全な娯楽を與える。かたがた学校外における補導につとめておるのであります。これは東京都ほか全国的に実施をされまして、相当の効果をあげておるとわれわれ信じておるのであります。今回内閣に置かれました青少年問題対策協議会の一メンバーといたしまして、この十四日から行われます強調週間にも呼応いたしまして、啓蒙宣伝にカを入れまして、たとえば座談会をやり、それを新聞紙上に発表いたしまして、大いに一般の人々の協力を仰ぎ―それから何分にも予算がありませんので、十分なことはできませんが、各都道府県の教育委員会に依頼をいたしまして、この運動の普及宣伝に努めてもらいたい。そのほかPTAに呼びかけまして、学校外におきまして、兒童、生徒に対する補導の徹底をはかつてもらう。あるいは学校教師による兒童、生徒の家庭訪問の励行、あるいは学校内部におきますところの本問題に対する生徒会の自発的な活動を促すとか、兒童、生徒に酒あるいはタバコをのむような悪い弊害をやめさせる、あるいは社会教育団体がございますが、たとえば青少年団体であるとか、あるいは婦人団体に呼ひかけまして、兒童、生徒の校外の補導の強化、徹底をはかる。さらにはこの六月に制定公布されました社会教育法に基いて置かれましたところの、社会教育委員の街頭進出によつて、あるいは講演を行う、あるいは紙芝居といつたような方法によりまして、青少年教護思想の普及徹底をはかる、あるいは文化団体の協力を得まして、読書指導をしてもらう。さらに公民館といつたような社会教育施設を用いまして、全町村民が一体になつて青少年問題の根本的な解決にあたるといつたような、いろいろな方法を考えまして、これらの事項を都通府県の教育委員会に活発にやつていただくように実は依頼をいたしておるのであります。  文部省として従来までやり、また今後やろうといたしておりますところの概略は、以上でございます。
  44. 花村四郎

    花村委員長 ただいまの文部省の説明に対し、御質疑はありませんか。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 簡單にちよつと一点お聞きしたいのでありますが、学校、ことに新制の中学及び高等学校において性教育をなさるようになつておるのであるか、あるいはさようなことは画一的でなくて、各学校にまかされておるのであるか、もし性教育を実施しておるとすれば、どのような方法でやられるのであるかを承りたい。
  46. 田中彰

    ○田中説明員 性教育―文部省としては純潔教育と申しておりますが、この問題につきましては、文部省に委員会を設けまして愼重審議をいたしておりまして、一応昨年純潔教育に関する基本要綱をつくつて、今年度は男女間の交際、礼法といつたようなものについて今研究を重ねつつあるのでありますが、御質問の学校における性教育という問題につきましては、実は相当むずかしい問題でありまして、カリキュラムとか、方法とかいうものにつきましては、まだ一定のものはございません。適当な方法で学校で教育を行うようにされておるのでありますが、しかしまだこれは新しい問題でありますので、十分な効果をあげておるということは言えないと思います。今後のこれは相当大きな研究問題であるというところで、まだはつきりしたこういつた方法、こういつたカリキュラムというようなことは、実は残念ながらできておらないのであります。
  47. 梨木作次郎

    ○梨木委員 新制中学や高等学校の生徒の犯罪を犯しておるよう統計ですね、こういうものはありましようか。
  48. 田中彰

    ○田中説明員 小学校、中学校だけの統計は、実はわれわれ持ち合せておりませんです。
  49. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これらの学校、特に中学校の生徒は最近非常に悪くなつているということを父兄から聞いておるのでありますが、その原因一つに、文部省あたりがスポーツを奨励し過ぎておる。たとえばべース・ボールを非常に奨励するとかいうようなことから―そういう運動の道具はなかなか経済的に買えないというような場合に、そういうところから犯罪を犯す。それからそういう仲間同士が、どうも勉強をほとんど放擲して、そういうものに熱中してしまつて、そういうところから非常は不良化という問題が起つて来ておるように父兄は歎いておるのでありますが、こういう点についての実相を伺いたい。
  50. 田中彰

    ○田中説明員 御質問のスポーツに熱中したあまり不良化しておるというのは、私寡聞にして実はあまり実情を知らないのでございます。実はその度を過ごすのが、これが問題の点であろうと思います。ただスポーツそのものは、これは不良化防止の上には非常にいい方法だとわれわれは思つて、スポーツその他のレクリエーシヨンは、余暇善導という意味合いにおきましても、奨励をいたしておるのでございますが、それが度を過したために害になつたという実例は、実は私は存じませんので、ここで実情を申し上げることができないのであります。その点は御了承を願います。
  51. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。―なければ次に法務府の御説明を求めます。
  52. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 青少年問題対策協議会の経過の御報告をいたしたいと思います。少しこまかくなり過ぎまして長いかと思いますが、お聞取りをお願いいたします。  去る第五国会におきまして、各党共同提案にかかわりまする青少年犯罪防止に関する決議案が、衆議院の本会議で満場一致可決されました。その際政府を代表いたしまして、私がお礼の言葉を述べました関係上、その直後私は事務当局をして、大蔵省、文部省、労働省、厚生省、国家地方警察本部、最高検察庁、最高裁判所関係係官の懇談会を五回にわたつて開催いたしまして、青少年問題対策協議会設置要綱案と、青少年保護矯正に関する総合対策案の二つの案を決定いたしたのであります。そこで私から青少年問題対策協議会設置要綱案を閣議にはかる手続をとりまして、右要綱は去る六月十四日の閣議によりまして決定いたしたのでございます。青少年問題対策協議会と申しますのは、すなわち青少年の指導、保護及び矯正に関する総合的施策を樹立いたしまして、その適当な実施をはかるために、内閣官房に設置をいたしたのでございますが、本協議会の委員には内閣の官房長官、同じく官房副長官、大蔵次官、文部次官、厚生次官、労働次官、国家地方警察本部次長法務府の刑政長官、中央更生保護委員会委員長、最高検察庁次長検事、最高裁判所事務総長のほかに、青少年の問題に関係のありまする民間有識者といたしまして、佐藤利三郎、内村裕之、中川望、藤林敬三、守屋東女史の五氏を委嘱いたしまして、内閣官房長官を委員長といたしまして委員会を組織いたしました。その事務処理いたしまするために幹事といたしまして、内閣官房副長官、大蔵省主計局長、文部省初等中等教育局長、文部省社会教育局長、厚生省兒童局長、厚生省社会局長、労働省婦人少年局長、労働省職業安定局長、国家地方警察本部刑事部長、法務府矯正保護局長、中央更生保護委員会事務局長、最高検察庁保護係検事、最高裁判所家庭局長を委嘱いたしまして、内閣副長官を幹事長といたしまして、幹事会を組織いたした次第であります。  この協議会は設置以来青少年の問題に関する政府施策の検討、青少年問題に関する総合的施策の樹立、右施策中緊急に実施すべき項の具体化策の樹立とその予算的措置の樹立のために、幹事会を六月十八日を第一回といたしまして前後十九回、委員会を七月十八日を第一回として五回開催いたしました結果、八月二十二日の委員会におきまして青少年問題対策協議会決定事項を可決いたしたのであります。右決定事項は総合的連絡調整機関の設置、青少年調査所の設置、関係各省庁の機構の強化、その他具体的措置、その他の一般的措置の五大項目に分類をいたしました。そのうち法務関係の事項をあげてみますれば、犯罪者予防更生法の完全実施、矯正保護施設、釈放者の保護援護施設の設置、少年観護所設備の整備、少年鑑別所の検査器械の整備、少年院施設及び設備の整備、少年観護所少年院及び少年刑務所收容者の副食の改善、犯罪者予防更正法の対象少年及び矯正施設に收容中の少年の家庭に対する生活保護法の大巾適用、司法保護委員の手当及び補導費の大巾増額等であります。この決定事項は内閣に提出されたのでございますが、内閣といたしましては右の決定事項に基きまして八月二十九日の次官会議におきまして、青少年不良化防止のためとるべき措置を決定いたしたのであります。この措置の中には、法務府として特にとるべき措置はございませんけれども、八月三十日の閣議で決定いたしました青少年問題対策協議会決定事項中、本年度内に実施すべき緊急対策要綱の中には、法務府といたしまして緊急の事項であります。少年観護所少年鑑別所少年院の收容者の分類及び矯正教育設備の整備強化と問題、少年に対する犯罪者予防更生法の完全実施が取上げられたのであります。右の次官会議と閣議の決定事項の具体的をはかるため、青少年問題対策協議会に参加の関係各省は、二十四年度の補正予算と二十五年度の予算の作成に着手をいたし、それぞれ大蔵省折衝を重ねたのでございますが、法務関係で二十四年度の補正予算として大蔵省に提出いたしましたのは、少年観護所少年鑑別所少年院等の整備拡充に要する経費二千二百四十九万九千九百九十円、問題青少年に対する犯罪者予防更生法の完全実施に要する経費九千九百四十五万九千円でありますが、いずれも不幸にして大蔵省の承認を得ることができなかつたのでございます。そこで青少年問題対策協議会の委員会にかけて態度を決定することといたしたのでありますが、各省とも補正予算の承認を得られない状況でありましたので、緊急に実施すべき対策はやむなく二十五年度の予算によつて実現することといたしたのであります。しかしながら少年観護所の整備は一日の遷延を許さない現状でありますので、経済安定本部折衝の結果、法務府の二十四年度経費中、刑務所の営繕費から一億三千五百万円を移用し、合計二億七千九百万円を少年観護所の営繕費に充当いたすことになつたのでございます。さらに二十五年度の予算案の内容につきましては、目下大蔵省において関係方面と折衝中でございますので、その計数をお話するまでに至つていませんことは、遺憾にたえない次第でございます。なお現在少年院の收容定員は、八月現在三千六百八十一人でありますが、二十四年度予算で予定しています工事が完成いたしますれば、その定員は六千六百余人となりますし、前に申し上げました刑務所の営繕費からの転用によりまして、少年観護所の本年度工事が完了いたしますと、現在の收容定員八百三十人が千九百余人になるわけでございます。法務府といたしましては、右のよう予算状況でございますけれども、現在の予算の範囲内で少年院少年観護所等の適正な運営をはかり、また問題青少年に対する犯罪者予防更生法の強力な運用をはかるため、種々努力いたしている次第でありますが、各位の御支援によりまして、その運営と予算的措置をさらに一段と適正にいたしたいと存じているのであります。  さらに青少年問題対策協議会におきましては、青少年問題対策協議会決定事項中、本年度内に実施すべき緊急対策要綱中の地方調整機関設置の問題と啓発宣伝措置の問題を具体化するため、再三委員会、幹事会を開きました結果、地方青少年問題協議会設置要綱案と青少年保護育成運動実施要綱案ができ上りましたので、右二案を内閣に提案いたしましたところ、九月二十六日の次官会議決定を見ましたので、右の要領と要綱は内閣官房長官から地方長官に対し、また青少年問題対策協議会参加の関係各省からはそれぞれの地方官庁に対して、右協議会の設置と右運動の実施方を依頼通牒いたしたわけでございます。地方青少年問題協議会は地区内における青少年の指導、保護及び矯正に関係のある公私の機関の統一的にして有機的協働をはかるとともに、地区内住民の青少年不良化防止活動を自主的に展開するために、都道府県單位と市区町村單位にそれぞれ設けられ、その地区内の青少年問題に関係のある官公署、民間団体の代表者を会員とするものでありまして、地区内の問題青少年の指導、保護及び矯正に関係のある各種情報資料の交換、收集、地区内の青少年の指導、保護及び矯正に関する具体的対策の樹立、地区内の青少年の指導、保護及び矯正に関係のある公私の機関の活動の調整促進、地区内の青少年の指導、保護及び矯正に関する実施事項の批判検討等の仕事をするものであります。青少年保護育成強調運動は、青少年不良化の温床を排除し、青少年の自覚を促進するとともに、青少年の指導、保護、矯正のために施策を強力に実施するために、官民合同のもとに十一月十四日から二十日までの間地方青少年問題対策協議会が中心となり全国的に実施するものでございます。  さて青少年問題対策協議会は、内閣決定によりまして法的な永続機関となりましたので、今度は第五回国会における衆議院の青少年犯罪防止に関する決議、参議院の青少年不良化防止に関する決議に基きまして、青少年問題対策協議会の委員会が八月二十二日に決定いたしました問題青少年に関する総合的施策を着々実施して行くことになつております。その運営につきましては、さらに各位の積極的な御鞭撻を賜わりたいと存ずるのであります。はなはだおわかりにくかつたと思いますが、これをもつて私の説明を終ります。
  53. 花村四郎

    花村委員長 法務府の説明に対し御質疑ありますか。
  54. 角田幸吉

    ○角田委員 法務総裁あるいは刑政長官がおいでになつておりますので、お伺いいたすのでありますが、ただいま青少年不良化防止ということが問題になつております。不良化を防止するためには、結局教育ということになる。教育という面から申しますると、文部省でやつているいわゆる文教型の教育、法務府でやつている行刑型の教育、あるい厚生省でやつておりますから厚生省型の教育ということになろうと思います。その際におきまして、まず第一に法務府では青少年の感化教育をして行こうという場合に、どういうことに重点を置いて、たとえば文教あるいは厚生と異なつた特異性としてどういう方向に教育せんとしておりますか、そのことを承りたいのであります。
  55. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 青少年不良化防止につきましては、ただいま角田委員の仰せになりましたように、もつぱら青少年の教育にまたなければならぬと存ずるのであります。法務府におきましては、法務府の手に入つて来る少年に対しましては、たとえば少年院少年観護所少年鑑別所等におきましては、もつぱら規律ある生活のもとに勤労に親しませて、そうして悪いところを直し、よいところをだんだん伸ばして行こうというような矯正教育を施しております。
  56. 角田幸吉

    ○角田委員 きわめて私どもも啓蒙されるお答えがあつて満足の至りでありますが、そこで法務府におきまして、どの程度に行つたときに不良化がなおつたという御観察をするものであるか、お答え願いたいと思います。
  57. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいまの御質問を受けまして、私どもこれまで矯正教育を施しているものといたしましては、はなはだ汗顔の至りでございます。実は少年院等に收容いたしました少年については、完全に矯正教育の実があがつてから退院させるというのが本旨ではありまするけれども、これまで施設が不十分であつたために、まだ十分ではないが、たいていこれなら社会に出しても更生できるであろうというような一応の見込みで仮退院をさせておるのであります。従来の在院期間は大体六箇月以上、一年または一年半に及ぶ者もありまするが、短い者は半年くらいで大体矯正教育の実があがつたと見て退院させておるのでありまするが、その退院者の間からまた再び少年院に入つて来る者も間々あるのであります。その率は、大体少年院におきまして二度以上入つて来た者を調べますと、約一割ないし二割程度でございます。これらの一割ないし二割程度の者が再び入つて来ないようにするためには、矯正教育の期間を持つと長くしまして、十分その効果をあげたいと考えておるのでありますが、最近は皆さんの御協力によりまして、施設もだんだんに整つて来ましたので、できれば在院期間は少くとも一年間くらいに延ばして、完全な教育の実をあげたいと考えております。
  58. 角田幸吉

    ○角田委員 ただいま承りたいと思いましたのは期間の問題ではなしに、どういう者が一応釈放してよろしい、なおつたという見定めはどういう点でおはかりになつておるかという点を承りたい。法務庁では、たとえば規律ということもおつしやつている、勤労ということもおつしやつておるのであります。どういう程度の者が一体不良化がなおつたというようにお考えになるのか、そのお考えの標準を承りたい。あるいは心理学的なお話が承れればなおけつこうであると思います。
  59. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 矯正教育の方針としましては、先ほど申し上げましたように規律ある生活のもとに勤労精神を涵養させる、そうして将来更生のできるような教育をしようという方針で運営いたしておるのでありまするが、実際少年院において仮退院をさせる場合に、この少年が具体的に矯正教育が大体実があがるだろうという見込みをつける。その標準につきましては、各矯正院にそれぞれ教育者もおりまするし、心理学者もおり、またお医者もおります。各方面から検討してその判定をするということでありまして、私はそういう方面の專門家でありませんので、おそらく御質問に対して御満足ができるような標準についてのお答えができないのをはなはだ残念に思うのであります。     ―――――――――――――
  60. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質問はありませんか―それでは昨日に引続き国家公務員政治活動制限に関する人事院規則適用に関する件を議題といたします。質疑の通告がありまするからこれを許します。猪俣浩三君。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 浅井人事院総裁は官僚出身でもあらせられ、また学者であり、ことに憲法学者であり、貴族院議員として新しい憲法の審議に当られた方であります。その憲法問題について簡單に御意見を承り、そうして人事院規則の各箇條について御意見を承りたいと思うのでありますが、この国家公務員法及び人事院規則、これの合憲性の説明として、憲法十五條二項を援用されておるのであります。これはこの憲法審議に当られた浅井総裁も御記憶があろうと思うのでありますが、私どもの記憶によれば、今までの日本の官僚は、官吏服務紀律第一條に規定されておるように、天皇陛下及び天皇陛下の政府に対して忠誠を盡すということに主眼があり、国民とは関係がないというふうな性格のものであつたので、国民主権制の一つの現われとして、昔の官僚制度を打破するためにこの十五條二項というものが置かれたのであつて、これが結局において日本の官僚機構の民主化をはかる一つの基準になつたと思うのであります。これを労働者の基本的人権として持つておる団体交渉権や団結権等を制限する規定に援用なさることは、少し曲解ではないかというふうに考えられるのでありますが、この点について、憲法学者としての総裁はいかにお考えになりますか承りたい。
  62. 淺井清

    ○淺井政府委員 お示しの点は、まことにごもつともに存じます。ゆえに公務員は、公正なる地位を要求せられるものであろうと思います。もし公務員が、公平なる地位を要求せられるといたしますならば、彼らが官庁の内部において、特定の政党の活動を自由にいたしましたり、特定の内閣の打倒を叫ぶということは、その地位と相いれないものと存じます。ゆえに十五條は曲解ではなくて、お説のごとく解しますれば、やはりそのようになろうかと存じます。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは昨日も論じたことでありますし、議論になりますから、私は今の人事院総裁説明には満足しないことだけを表明して打切ります。  次に人事院の性格でありますが、これは浅井現総裁のような方が現職にあられる限りは、われわれの杞憂はないのでありますけれども、総裁も人の身でありますから、いつ御退職なさらぬとも限りません。そこで何か非常に野心を持つような人物がこの人事院総裁の地位に置かれたとして、国家百年の大計から考えまして、かような人事院というものが存在すると、これが官僚の大きな一つの牙城になるのではないか。この人事院が存在し、国家公務員法が存在する―もつとも日本のいわゆる高級官僚、官僚と称せられるのは下つぱの連中を言うのではなくて、高級官僚を私どもは言うのでありますが、この高級官僚は、いわゆる下の連中の職員組合からの圧迫もなし、また内閣からの圧迫もなし、その地位まことに安固である。安固であることはけつこうであるが、安定したところには腐敗が生じ、またそこに一つのボスができる。これを野心のある総裁が統括しておるようなことに相なりますと、ここにわれわれがおそれるところの、戰前のような官僚閥がまた現出しはせんか。これは杞憂にすぎないのであればいいのでありますが、さようなことも考えられるのであります。浅井総裁は自分がこの職を退いたときに、かような制度がはたして円満に、そうして日本の民主化に役立つような存在として残るであろうかということに対して、どういうふうなお考えを持つておられるか伺いたい。
  64. 淺井清

    ○淺井政府委員 まことにお説の通りでございます。そこで人事官の任命には、国権の最高機関たる国会の同意、しかも衆議院と参議院と一致した同意を必要としておるのでございますから、国会の御権威が保てておりまする限り、そのような野心家は人事宮にはなれないはずでございます。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお、昨日も法務総裁に伺つたのでありますが、まだはつきりいたしませんので、憲法七十三條における内閣の官吏の人事に関する規定と、人事院とは矛盾することはないかどうか伺いたいのであります。
  66. 淺井清

    ○淺井政府委員 お示しの点は、憲法七十三條に、内閣の事務として規定されてございまするものを、人事院という官庁がやることが憲法違反でないかという御議論のように存じます。しかしながら、ごらんの通り七十三條には、官吏のことに関するのみならず、いろいろなことが規定してございます。もし御論議の通りでございますれば、この七十三條に書いてございまする外交のことに対し、外務省を設置することも憲法違反であろうかと存じます。予算のことに関しまして七十三條に書いてございまするが、予算のために大蔵省を設置することも憲法違反であろうかと存じます。そこで憲法には用意がございまして、立法の場合には、国会をもつて唯一の立法機関と規定しておりますし、司法に関しましては、すべて裁判所で行うと書いてございまするが、行政に限りましてすべて内閣に属すると書いてございませんのは、その用意からであろうと存じます。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 但し「行政権は、内閣に属する。」と書いてございまするが、これはその意味ではないのですか。
  68. 淺井清

    ○淺井政府委員 私の申し上げましたのは、立法の場合には、国会を「唯一の立法機関」と記してございます。裁判所の場合は、すべて司法権は裁判所に属すると書いてございまするが、行政の場合は「行政権は、内閣に属す」と書いて、すべて内閣に属するとは書いてございません。近代行政の進歩と複雑化にかんがみましても、内閣ですべてがやれるものでないということは、御了承くださるだろうと存じます。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 行政の中の人事権というものは、非常に重大な部分だと思うのであります。今の総裁の御説明も、すべてという字がないからとのことでありますが、実質的見解からいたしますると、人事ということは重大問題である。憲法七十三條によれば、とにかく「官吏に関する事務を掌理する」と書いてある。これの大半を人事院に移すというようなことは、行政権は内閣に属するという趣旨精神的に多少抵触するのではなかろうかというふうに考えられるのでありますが、人事院総裁は抵触するという御答弁をなさらぬであろうと思いますから、この程度に止めておきます。  次にこの国家公務員政治活動制限に関する人事院規則を、箇條を追いまして二、三疑問のある点をお聞きいたしたいと思うのであります。  政治的行為の中の適用範囲に一項、二項、三項とありますが、三項の中には「法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。」つまり刑法で言いますと、間接制限を認めているような規定であります。そこで職員がみずから選んだ人の中に国会議員があつて、その国会議員が職員組合の意思を代表いたしまして行動をやつた場合に、その国会議員を選んだ職員組合がやはり責任を負うことに相なるかということを伺いたいと思います。
  70. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちよつと御質疑の点がはつきりいたさないのでございまするが、ここで職員がみずから選んだ代理人と申しまする場合は、その代理人が職員でございましようとも、非職員でございましようとも、その点はかまわない、その選んだ者が責任を負う、そういう意味でございます。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 でありまするから、その選ばれた人が国会議員であつても同じことだという御解釈になるわけですか。
  72. 淺井清

    ○淺井政府委員 さようでございます。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そう私の言うことが不明なことはないと思うのだが……。それから今度は政治的目的の定義の項になりますが、この「規則十四―五に定める公選による公職の選挙」規則十四の五というのが、私が人事院からもらつて来ましたこの中にもないのでわかりませんが、これは公安委員が含まれるのでありますか、含まれないのでありますか。
  74. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいまそのところを読み上げます。ただいまの規則十四の五、公選による公職の範囲と申しまするのは、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の長、地方公共団体の議会の議員、教育委員会委員、都道府県及び市町村の農地委員会委員、但し、選挙によることなくして選任される委員を除く、これだけに限定をいたしましたので、お示しの場合はこの中に含まれないと存じます。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、県の農業調整委員も含まれないわけなんですな。その中に入つておりませんが……。
  76. 淺井清

    ○淺井政府委員 さようでございます。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから「特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。」こうなつておるのでありまするが、これは候補者が特定した場合、その特定した候補者を支持し、または反対すれば、政治的目的というこのことに入るのでありますが、候補者がまだだれであるといつて特定しておらない場合において、ある人間を支持しまたはこれに反対するという場合は、これに入らないかと思うのであります。そしてその特定するというのは、結局候補者が立候補の届出をしたようなときを言うのであるかどうか、その点について伺いたい。
  78. 淺井清

    ○淺井政府委員 それはお示しの通りでございまして、ここに特定の候補者と申しまするのは、それぞれの選挙法その他の規定によりまして、届出または推薦届出をいたしまして、候補者ということがはつきりと法律上にきまりましたあとに起る行為のみを、ここで対象といたしましておりまするので、これからまだ候補者になろうとする場合には適用がないものと、かように存じております。
  79. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから同じ今度は三号でありますが、「特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対する」この特定の政党その他の政治的団体という中に、いわゆる近ごろは盛んに反共連盟とか反共団体とかいうものがある。共産主義に反対するということを一つの目標にしておるところの団体ができておるようでありますが、これは政党その他の政治的団体という中に入るのであるか、入らぬのであるか、お尋ねしたい。
  80. 淺井清

    ○淺井政府委員 この点は、実は猪俣さんの方がよく御存じであろうと思うのでありますが、つまり私の方でここで政治的団体と申しておりますのは、いつか国会で御立法に相なりました政治資金規正法による政党、町会その他の団体、大体あれと同じことと御了解を願いたいと思うのであります。その場合ただいま仰せられたものが入るかどうかは、それぞれ所管の機関があつてこれを判定するのだろうと思いますので、ちよつと私から申し上げかねると思います。
  81. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると今人事院総裁は、政党その他の政治的団体というふうに認定するには、政治資金規正法の政党またはその他の団体であるかどうかによつて認定するということはわかるのでありますが、そうすると、これは人事院が判定するのじやないのですか、どうですか。
  82. 淺井清

    ○淺井政府委員 この問題は人事院だけで判定はできないと思います。もしも人事院がこれをかつてに判定をいたしまするならば、非常な影響を及ぼすこともあろうかと存じまするので、それぞれ政治資金規正法の運用をつかさどつておりまする機関などと十分打合せてやりたいと存じております。
  83. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると今私が申し上げましたような、共産主義それ自体を排撃することが政治的団体であるかどうかということは、人事院だけでは判定できず、ほかのいろいろの機関と相談の上結論を出す、かように承つてよろしいですか。
  84. 淺井清

    ○淺井政府委員 お示しの通りでけつこうと存じます。
  85. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからその四号の、「特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。」というのがありますが、内閣の構成員でありまする国務大臣、各省大臣、たとえば農林大臣に対しまして、農林省の職組がその農林大臣のやり方を排撃いたしまして、これに対して活動をやるというようなことは、この第四号の「特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。」に入るのでありますかどうか。
  86. 淺井清

    ○淺井政府委員 それは入らないと存じております。内閣と申しまするのは、すなわち内閣のことでございまして、個々の国務大臣をさすものではございません。ただ内閣総理大臣の場合には、内閣と同様な取扱いをする所存でおります。これは憲法上、内閣総理大臣を除外して内閣は考えられないからでございます。
  87. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 たとえば供出後の米券制度のごとき、これは内閣において政策を決定されるのでありますが、その主管大臣は農林大臣であります。この米券制度反対というようなことに対しまして、あるいはタバコ民営に反対することに対しまして、農林省の所属職組が米券制度反対、そして内閣自身でなくて、まずその主管大臣である農林大臣を排斥するというようなことをやると、今の内閣は御承知通り連帶責任制度でありまするから、その内閣において決定した政策を批判するようなことに相なるのでありますが、それでもよろしいのであるかどうか。
  88. 淺井清

    ○淺井政府委員 そういうことは決してよいとは私は思つておりませんが、ただ問題は、お尋ねはこの規則の適用外の問題でございまするから、これは法理論であろうと存じます。そこでお示しの場合は、この四号には入らない、このように存じております。つまりここで特定の内閣を支持し、または反対すると申しまするのは、特定の内閣それ自体が存続するように、または存続しないようにすることを言つているのでございまして、個々の閣僚は問題にならぬと存じます。
  89. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 次に第五号に「政治の方向に影響を與える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。」とあるのでありますが、この「政治の方向に影響を與える意図」ということは、人事院で御解釈になりましたのを読んで見ますと、刑法の朝憲紊乱の目的というようなものにあてはまるような、日本の民主化の基本制度というふうに理解できるのでありますが、これは刑法の朝憲紊乱というような報告に相なるのであるかどうか。
  90. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちよつと前置がございますが、この第五項で定めてありますることは、政治的行為ではなくて、政治的目的なのでございます。つまり第五項のような目的でもつて第六項のような行為をする。こういうことになろうかと思うのであります。ところがただいま御指摘になりました第五項の第五号に限りまして「政治の方向に影響を與える意図で」この意図ということはやはり意思でございまして、これも目的の表象を伴うものでありますから、第五項に限つて二重に目的でしぼつてあるということになるわけであります。つまりこの五項を広義に解釈いたしますと、これは非常にあつちこつちに影響を及ぼすことになるのでありまして、人事院といたしましては、これを二つの目的でしぼりまして、嚴正に解釈をする。そういう立場に立つておりますので、お手元にあります民主主義政治機構の根本原則をかえるもの、そういうところにしぼつて解釈をする。そういうふうに存じておるのであります。
  91. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、刑法の朝憲紊乱というようなことにあてはまるんじやないかと思われるのでありますが、さよう解釈してよろしいかどうか。
  92. 淺井清

    ○淺井政府委員 私は刑法のことを忘れてしまいましたので、朝憲紊乱の定義をただいま失念をいたしておりますが、それは御解釈にまかせるほかないと思います。
  93. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 やはりこの五号でありますが、天皇制を廃止するというような主張は、政治の方向に影響を與える意図ということになりますかどうか。
  94. 淺井清

    ○淺井政府委員 これも現在の天皇制が、民主主義政治機構として国民の象徴として掲げられてございますから、やはりこれに該当するものと考えます。
  95. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 次に第六号の場合に「国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は條例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。」とあるのであります。これはこの中に県知事の訓令のようなものが含まれるものであるか、また県知事の訓令のようなものが政策ということになるのかどうか。これは実例をあげた方がはつきりすると思うのでありますが、総裁も御存じのように、小林靜岡県知事が、地方公務員法もできないうちに、さつさと職員の政治活動を禁止する訓令だか通牒だか出して、政治活動一切まかりならぬということをやつた。そこでこういう訓令に対しまして、職員組合が反対をいたしました際に、これがこの六号に入るのか入らぬのか。
  96. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいまお示しの問題は、たしかに六号に掲げますところの地方公共団体としての政策であろうと存じます。その下に括弧いたしまして(法令、規則又は條例に包含されたものを含む。)と書いてございますが、この法令は説明するまでもないこと、ここに規則とございますのは、これは他の人事院規則の定義に基きまして、人事院規則だけをさしたもので、最高裁判所の規則とか、会計検査院の規則とか、そういうものはささないのでございますが、この括弧の中に掲げてございますものだけを限定する意味はございません。従つてお示しの場合が訓令の形で現れたといたしましても、それは本号に該当する政策であろうかと存じます。ただ問題といたしまする点は、実施を妨害する点ということになろうかと存じますが、この妨害と申しますのは、やはり実力を行使することを必要といたしますので、單に反対意見を述べるようなことは含まれない。このよう解釈しております。
  97. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますと、いまの靜岡県知事の場合でありますが、地方公務員法ができないうちに、国家公務員法と同じよう趣旨の訓令を出しておる。これはどうしても私は違法だと思うのでありますが、この違法の訓令に従わずして、その政治活動をやはり継続してやつておる。結局これは実施を妨害したことになるのかならぬのか。一定の訓令に対して、その訓令を守らずしてそれに違反したことをやつておることが、訓令の実施を妨害したことになるのかならぬのか。
  98. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちよつと問題が二つにわかれると思うのでありますが、ただいまお示しの場合は、政策としてきめられてあるということで、これを訓令の形でやることがはたして合法であるかどうかということは、別問題であろうと思います。私がお答えをいたしましたのは、これが政策としてなされておるかどうかという引例になされておりますので、その方面からお答えをしたのでございます。
  99. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この県知事が職員の政治活動を禁止するということが、政策であるかどうかということを最初お聞きした。ところが総裁はそれは政策であろうという御答弁がありました。さればその政策に従わぬで政治活動をやつておつたということが、実施を妨害したことに当るのか当らぬのか、あるいはまたただいまの具体的事件ような、明らかにこれは総裁もおつしやつたように、憲法違反の訓令だと思うのでありますが、さような明らかに憲法違反の規則だというものに対して、反対をして、やはり政治活動をやつておつたというような場合、二つ問題があると思う。明らかに法律なり憲法に違反しておるという訓令でも従わなければならぬのであるか。またその違反しておることを理由にして、その訓令の趣旨と反対な、禁止された條項をやつておる場合に、この実施を妨害したということになるのかならぬのか。この二つの点においてお答え願いたい。
  100. 淺井清

    ○淺井政府委員 それはどうきまりましようとも、靜岡県の職員には何の影響もないことでございます。なぜならば、これは国家公務員中一般職に対する職員だけに適用せられますもので、靜岡県の職員には適用ないと存じます。
  101. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実は地方公務員法が出ること必至でありまするために、あらかじめそういう法律解釈法律学者としての総裁にお尋ねしたのであります。しかしできた上でなければということならば、この程度にとどめますが、これは今地方公務員に例をとつたのでありますけれども国家公務員にもかようなことがあろうと思うのであります。さような場合に一体どうなさるか。例を靜岡県知事にとつたから、今総裁はそういう答弁をなさつたが、これはおわかりになるように例をとつたので、国家公務員がかよう考えのもとに行動した場合にはどうなるかという御答弁を求めるわけであります。
  102. 淺井清

    ○淺井政府委員 国家公務員の場合には、お示しのような実例は、起つて来ることが考えられないのでございますが、いかがなものでございましようか。
  103. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 起つて来ることは考えられないというのですが、法律家は万般のことを予定して考えておかなければならぬからお聞きしたのでありますが、起つて来ることは考えられないということになれば、これ以上答弁を求めると、答弁を強要したことに相なりますから御遠慮申し上げます。  それから政治的行為の定義のところの六項の一号でありますが「政治的目的のために、職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。」こういう條項があるのであります。そこでこれは「公私の影響力を利用する」しからば一体影響力がなければ、この中に入らないということになるのでありますが、公の影響力というのはある程度わかるような気がしますが、私の影響力というものは、たとえばどういうことに相なりますか、ちよつと御説明願いたいと思うのであります。
  104. 淺井清

    ○淺井政府委員 この私の影響力にもいろいろございまして、あるいは親族関係でございまするとか、あるいは債権者と債務者の関係でございまするとか、学校の先輩後輩の関係でございまするとか、同郷の先輩後輩の関係とか種々あろうかと存じます。もしもこのよう関係を一種の政治的目的に利用いたしまするとなれば、それは職員の公正さを欠くことに相なりまするので、この「私」の方の影響力もこの中に含めた、こういうわけでございます。
  105. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういたしますと、非常に下つぱの者で大したどうも影響力がない。とにかく職名といいましても、非常に下級の吏員であつて、大した影響力もない者ならば、やはりこの職名を使つても、別にこの一号には該当しないということになるのでありましようか。
  106. 淺井清

    ○淺井政府委員 職名を用いまして、その影響力が実際あつたかなかつたかということは、これは刑法上不能犯であるかどうかという問題に帰着するわけでございますが、これは影響力を利用すること自体を適用の対象といたしまするので、その結果その影響力が効果を発したかどうかということは問題にいたしておりません。影響力を利用いたしました行為自体を対象としておるのでございます。
  107. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、影響力があるかないかよりも、職名ならどんな下級の人間でも、その職名を使うと、すぐ一号の規定に当てはまるということに相なるのでありますか。
  108. 淺井清

    ○淺井政府委員 しかし職名を使いますると、ただちにこれに該当するということになりますと、もはや職名を入れました名刺は使用できないということに相なりまするので、そのようなことを申しておるわけではございません。これはここに書きましたように、政治的目的のために、職権、職名を利用することを禁止いたしておりますので、たとえば官庁の上役がその部下のために就職の運動をいたしてやつたといたしましても、それは一つもこの規則にはひつかからないのでございます。そのこと自体のよしあしは別といたしまして、その就職運動ということは、第五項に掲げましたどの條項の政治的目的にも該当しないからであります。
  109. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 わかつたようなわからぬよう状態になつておりますが、この政治的目的という言葉はずいぶん出て来ておりますが、一体政治的目的のための行動であるか、しからざる行動であるかということは、実際問題としてなかなか区別が困難な場合に立ち至ろうかと考えるのでありますが、この政治的目的のためにやつたということは、何人に立証責任があるのでありますか。
  110. 淺井清

    ○淺井政府委員 この規則の中には、「政治的目的のために」という表現をしておりますのと「政治的目的をもつて」という表現をいたしておりまするのと「政治的目的を有する」という表現をいたしておりまするのと、ただ一箇所ではございますが「政治的目的をもつ」という表現をいたしておるのと、合計四つに書きわけておるつもりでございます。そのうちで「政治的目的のために」とか「政治的目的をもつて」というのは両方とも同じことでございまして、その政治的目的があるかどうかということは、行為者自身について判断するという趣旨でございます。それから「政治的目的を有する」といいまする場合は、文書、図画あるいは演説等にかかつておりまするので、それはいわゆる形式犯と申しますか、その政治的目的の有無ということはその文書、図画それ自身について判断する、こういう趣旨でございます。それからただ一箇所ではございまするが、六項の第二号の中の「政治的目的をもつなんらかの行為」これはただいま申し上げましたすべての場合を含めて、「もつ」と言つておる次第でございます。そこで御質疑の、一体だれが判断するのかということでございまするが、これはもしも懲戒処分等の問題になりまするならば、任免権者において判断をいたしましようし、それが人事院へ訴願をいたしまするならば、人事院が判断いたしましようし、また罰則の適用が問題になりまするならば、検察当局あるいは裁判所において判断されるものと存じます。
  111. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 次に第二号でありますが、「政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給與その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を與え、與えようと企て又は與えようとおびやかすこと。」とあるのでありますが、これはどこで区切るのでありますか、実ははつきりしないのであります。「政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せず」これが一つの條項になるのでありますか。「その他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、」このずつと後段までにかかるのでしようか。任用、職務、給與その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、政治的目的のために寄附金を集めた、それ自体いけないというつもりであるか、なおまたその以外にその「代償又は報復として、任用、職務、給與その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすること」にかかるのであるか、この点をお聞きしたい。
  112. 淺井清

    ○淺井政府委員 この第二号は非常に文章がわかりにくくてまことに恐縮なのでございます。これは猪俣さんの御指摘の通りでございますが、これしか書き方がなかつたものでございますから書いたので、決してよくできておるとは存じておりません。はなはだ恐縮な次第でございますが、ただいまお示しの場合は、政治的目的をもちましていろいろなことをやる、またはやらないことに対する代償あるいは報復としてなんかやつたこと、そういうふうになるのでございまするから、さいぜんお示しのごとく「政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せず」そこで切れて「その他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、」こういうふうに続く次第でございます。
  113. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 第十五号にあります「政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる、旗、腕章、記章、えり章、服飾、その他これらに類するものを製作し又は配布すること。」これは勤務時間以外にかようなことをやつてもいけないということになるのでありますかどうか。
  114. 淺井清

    ○淺井政府委員 勤務以外にもいけないことになるわけでございます。
  115. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお勤務時間以外におきまして、公務員がある政党の政策を主張し、あるいはある主義を主張するようなことは、この政治行為に入りますか、入らぬのでありますか。
  116. 淺井清

    ○淺井政府委員 勤務時間の内外を問わず、この規則の適用を受けるのでございますから、もしお示しの場合がこの規定のどこかに抵触をいたしますれば、それはこの適用の範囲内であると存じます。  ここで一言申し上げたいのでございますが、この規則を勤務時間の内外を問わず適用するということに対しまして、それは酷である、勤務時間中は国家公務員であろうが、勤務時間外は一般国民として政治的活動の自由を認めなければならないというような主張もあるやに伺つておるのでございますが、もしかような主張を推し進めますれば、勤務時間外に賄賂をとりました国家公務員を收賄罪をもつて罰することもまた不合理ということになるわけであります。国家が勤務時間の内外を問わず公務員を保護する義務を持つておりますならば、公務員もまた勤務時間の内外を問わず、この身分関係は存続すると思います。これを封建的な奴隷的な扱いだというような論議も聞くのでございますけれども、いかなる民主主義国家におきましても、勤労者の契約と申しまするものは、持続的な地位を勤労者に與えるものと存じております。
  117. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今総裁の引例なすつたことははなはだ不適当だと思います。收賄というのは一つの自然犯罪、刑法上の犯罪であります。これは憲法十四條にわれわれが保障されている平等な政治活動の拘束の規定なのであります。公務員なるがゆえに勤務時間中を制限するということは、ある程度納得が行く点もあるのでありますが、これは国家公務員法にも勤務時間中だけがあれであつて、それ以外は拘束するものではないという規定がどこかにあるはずであります。それが公務員の根本的性格ではないかと思うのであります。勤務時間外で、勤務に何らさしつかえないにかかわらず、なおこの政治活動を全般的に禁止することは、公務員が收賄した場合、勤務時間中でなくても收賄罪になるのと同じだという御引例は、法律学者たる浅井さんに似つかわしくない御引例ではないかと思うのであります。そういう頭でこの政治活動を見ておいでになりますと、これはたいへんな違いではないかと思うのでありまして、憲法十四條の人種、性別を問わず平等に付與せられましたる政治活動を、まつたく禁止することになるのであります。賄賂をとるなんということは、いかなる政治機構のもとにおいても自然犯罪であります。さようなものと比較することは非常に当らないと思うのでありまして、私は時間外においてもなおかような活動を停止されるということに対しては、はなはだ不満を持つものでありますが、すでにこれはできてしまつておりますがゆえに、私の質疑はこの程度にとどめておきます。
  118. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今の浅井人事院総裁の答弁では、公務員の政治活動禁止については、勤務時間の内外を問わないと言われ、その引例として職務外においての行動をも制約しなければならないと言われ、その例としていま涜職の問題と賄賂の問題を例にあげられましたが、少くとも政治活動を禁止される理由の引例としては、これは非常に失言だと思うのです。これは取消された方が総裁のためにいいと思うのですが、取消す御意思はありませんかどうか、伺います。
  119. 淺井清

    ○淺井政府委員 これは言葉じりの問題でございますから、私は一向に気にとめておりませんけれども、いかなる民主主義社会におきましても、勤労契約というものは、勤務時間の内外を問わず持続的な身分を勤労者に與えるものであるということを申したのが目的でございます。收賄罪については、その一つの例に引いたまででございますが、それがどのように重大なる影響をいたしておりますか、それを伺いまして再びお答えをいたしたいと思います。
  120. 梨木作次郎

    ○梨木委員 收賄罪というものは法律によつて禁止されている。ところが国家公務員の政治活動というものは、憲法によつて保障されている権利なのである。この権利を、公務員という地位に付随して何か人事院では拘束しようとしている。この基本的に許されたものと、刑法に禁止されている問題とは全然質的に違うにもかかわらず、公務員の政治活動を制約し、禁止しなければならない理由の根拠に、こういう刑法上禁止されているところの賄賂を――それは勤務時間外においてとつた場合においても禁止されるのだからという理由で待つて来るということは、浅井人事院総裁は、公務員は基本的には政治活動が禁止されているのだということだけを前提にとつているのであり、あなたのそういう御議論ならば、これは憲法を全然認めないという意味であり、憲法を無視する考え方の上に立つていると言わざるを得ないのであります。少くとも公務員というものは、憲法を守らなければならぬ義務が規定されている、そういう地位にある公務員である。ところが憲法に対してたてつくような、憲法を蹂躙するような発言は、少くとも私は取消さなければならぬものであると考えます。
  121. 淺井清

    ○淺井政府委員 私の発言のどこが一体憲法を蹂躙しているとお考えになりますか。もう少し詳しくおつしやつてください。
  122. 梨木作次郎

    ○梨木委員 收賄罪というものは刑法において禁止されている。そうしてだれが考えても收賄罪というものは禁止すべきものである。しかし国家公務員の政治活動というものは、憲法上保障されている基本的な人権なのだ。これをこの人事院規則によつて制限しようとしていろいろの理由をあげている。たとえば公務員は全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者でないとかいろいろなことを言つている。基本的には許されているのだが、そういう点から制約しようということで、あなたの方では人事院規則を持ち出された。われわれはこれはむちろん憲法違反であると思う。この規則の基本であるところの国家公務員法の百二條も、憲法違反の規定だと私は考えますが、それはともかくといたしまして、基本的には国家公務員の基本的人権といたしまして政治活動は認められておる。この認められておるものと、だれが考えても賄賂罪というものは、禁止されるべきものであるということは当然なんですが、客観的に見てこのこととを一緒にするということは、少くとも民主主義的な考え方でないということ、そして同時にこの観点に立つならば、憲法の精神にも合致しない、これは明白だと思う。こういう点からあなたの見解を伺いたい。
  123. 淺井清

    ○淺井政府委員 私はこの規則を制定する場合に、決して賄賂罪を根拠として申したわけではございません。それは私の申しますことの、いわば末端とも申すべき例に一つ引いただけでございますから、それをもつて私の考えの全般をお推しになるということは、根本的に御了解が願われてないのだろうと思います。また基本的人権々々々々と仰せられますけれども、基本的人権というものも、憲法上一定の限界があるということをお認め願えるだろうと存じます。もしも基本的人権を無制限に御解釈になりますならば、憲法十二條において「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ということを何と御解釈になるのでございますか。
  124. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はございませんか。一なければ本日はこの程度でもつて散会いたします。     午後四時三十二分散会