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1949-11-10 第6回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十日(木曜日)     午後二時三十三分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 石川金次郎君    理事 梨木作次郎君 理事 大西 正男君    理事 佐竹 晴記君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       古島 義英君    松木  弘君       眞鍋  勝君    武藤 嘉一君       山口 好一君    吉田 省三君       猪俣 浩三君    田万 廣文君       上村  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         (法制局長)         人事院事務官  岡部 史郎君         法務政務次官  牧野 寛索君         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         (検務局長)         検     事 高橋 一郎君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 十一月八日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二五号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣総出第二六号) の審査を本委員に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  刑事補償法案内閣提出第二号)  少年法の一部を改正する法律案内閣提出第三  号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二五号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二六号)  国家公務員政治活動制限に関する人事院規則  の適用に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず刑事補償法案少年法の一部を改正する法律案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法事の一部を改正する法律案について政府より提案理由説明を求め、続いて国家公務員政治活動制限に関する人事院規則について説明聽取並びに質疑を行いたいと存じます。  それではまず付託議案について政府より順次提案理由説明を求めます。法務総裁殖田俊吉君。
  3. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 ただいま上程になりました刑事補償法案提案理由を御説明いたします。  現行刑事補償法は、昭和六年法律第六十号をもつて制定せられ、昭和七年一月一日から施行されたのであります。しかして爾来今日まで寃罪者の救済に不十分ながらその役割を果して参つたのであります。  しかるに新憲法は、その第三十一條から第三十九條までの多くの規定により、刑事司法について、事前愼重手続をとることを要求し、過誤を未然に防止するに努めるとともに、第四十條において「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」と規定し、もし愼重手続にもかかわらず、刑事司法が誤りに陷つていたときは、国に対する補償請求権を認め、もつて事前、事後の両面相まつて人身の自由の保障を全からしめんとしているのであります。  しかるに、現行刑事補償法内容とこの新憲法第四十條の規定とを対比いたしますと、その補償原因及び補償不成立條件について改正を要する点があるばかりでなく、民法改正に伴い、補償を受けるべき者の順位及びその相互の関係について改正を要する点があり、国家賠償法制定に伴い、同法による補償との調整をはかる必要もあり、さらにまた拘禁による補償金額が一日五円以内という現行法規定はいかにも現状に適しないのであります。かくして、すでに昭和二十一年秋の臨時法制調査会においても、現行刑事補償法改正すべきものとしてその改正要綱の答申があり、政府においても、引続きその全面的改正準備を進めて参り、刑事訴訟法改正の終るのを待つて昨年暮の第四回国会刑事補償法改正する法律案として提案したのであります。ところが不幸にして審議未了となりましたので、当時の国会における論議を参照しつつ、再検討を加えた結果、ここにあらためて本案提案する運びに至つたのであります。  そこで、本案内容の御説明に入ります前に刑事補償本質について簡單に申し述べておきたいと思います。この問題は、刑事補償国家賠償とその本質を異にするかどうかという面から論ぜられていたのでありますが、本案においては、刑事補償はそれが損害の填補である点において国家賠償とその本質を同じくするものといたしました。従つて刑事補償国家賠償と異るのは、国家機関故意または過失補償の要件としないこと及び補償の額が定型化されていることの二点にとどまるのであります。国家機関故意または過失がある場合には、刑事補償を受け得るばかりでなく、刑事補償によつて填補せられない損害については、国家賠償を受け得ることになるのであります。  次に本案内容について現行法相違するおもな点を御説明いたします。  第一点は、補償原因の拡張であります。現行法においては、刑事訴訟法上の未決勾留及び刑の執行についてのみ補償すべきことを定めているのでありますが、本案では新憲法第四十條の趣旨にのつとり、刑事手続上のすべての抑留及び拘禁、刑の執行並びにこれに伴う抑留及び拘禁のすべてについて補償をすることといたしました。少年法及び経済調査庁法規定による抑留及び拘禁もそれが後に刑事手続に移る場合がありますので、これも補償原因に加えたのであります。  第二点は、補償不成立條件の整理であります。現行法第四條においては補償不成立條件を相当広く規定しており、この規定によつて、運用の実際においても補償をはばまれる事例が少くなかつたのであります。しかるに新憲法は、無罪裁判を受けた者には、特別の場合を除き必ず補償をすべきことを要求している趣旨と解されますので、現行法第四條に規定する補償不成立條件を整理し、單に「一、本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作為することにより、起訴、未決抑留若しくは拘禁又は有罪裁判を受けるに至つたものと認められる場合」「二、一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪裁判を受けても、他の部分について有罪裁判を受けた場合」のみを補償不成立條件とし、しかもこの場合にも裁判所の健全な裁量によつて補償の一部または全部をしないことができるものとしたのであります。第四回国会提出案では、この点に関する辞句がやや不明確でありましたので、今回はこれを修正して明確を期することといたしました。  第三点は、補償請求権相続対象とした点であります。これは、前に申し述べましたように、刑事補償本質一種国家賠償と考える以上、現行法のように補償請求権相続対象としないことはその理由に乏しいからであります。相続対象とする結果、相続順位相続分その他相続に関する点はすべて民法規定に従うことになるのであります。  第四点は、補償金額引上げた点であります。現行法では、身体を拘束した場合には一日五円以内、死刑執行による場合には裁判所の相当と認める額を補償することとしているのでありますが、今回は、身体を拘束した場合には、一日二百円以上四百円以内とし、死刑執行による場合には五十万円以内で裁判所の相当と認める額を補償することといたしました。旧案と異なるのは、死刑執行による補償について一万円以内とありましたのを、いかにも低きにすぎますので、五十万円以内とした点であります。  第五点は、国家賠償との調整をはかつた点であります。旧案によりますと、完全な国家賠償を受けても、刑事補償請求があれば、なお百円以内のノミナルな補償をすることになつていたのでありますが、これも刑事補償国家賠償一種と考えれば、必要のないことになりますので、本案では、かような場合には、補償をしないことといたしたのであります。  第六点は、補償決定をしたときは、申立により決定要旨を官報のみならず新聞紙にも掲載して公示すべきものとした点であります。この点は、現行法制定当時から要望のあつた点でありますが、今回不十分ながらその一部の実現をはかることといたしました。  以上簡單ながら、刑事補償法案内容を御説明いたしました。なお、本法による補償は新憲法施行の日以後補償原因の生じた場合にもさかのぼつて適用することとし、本法制定が今日まで遅延いたしたため、寃罪者のこうむる損害最小限度にとどめる措置を講ずることといたしました。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。  次は少年法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  少年法昭和二十三年七月十五日法律第百六十八号)は、本年一月一日施行されましたが、同法第二條少年とは二十歳に満たない者と規定しておるのであります。旧少年法は、十八歳未満の者を少年といたしましたのに、新法はこれを引上げたのであります。この規定通り実施いたしますと、旧法時代に比し少年事件は、約二倍以上増加することが、予想されたのであります。  ところが本法施行当時における家庭裁判所少年院、少年観護所及び同鑑別所等少年事件取扱機関の人的物的の設備の実情と、犯罪者予防更生法がその後七月に施行される予定であつたことより、この激増する少年事件に対する受入れ態勢がきわめて不十分であつたのでありました。そこで少年法第六十八條により、同法施行後一年間は、少年法は旧法同様十八歳未満の者とするということにいたし、この一年間に二十歳未満引上げる場合の受入れ態勢整備に努めることにいたしたのであります。ところがすでに同法施行後十箇月になりますが、この受入れ態勢整備工作の進展が裁判所側法務府側とも十分でなく、今日では昭和二十五年一月一日より少年の年齢を新法の常則通り二十歳未満引上げた場合には、とうてい激増する少年事件を滯りなく処理し得ないものと思われますので、さらに一年間少年法の常則にのつとることを延期し、その受入れ態勢整備をなし、少年事件の処理に遺憾なからんことを期したいのであります。  以上が改正要旨であります。愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を便宜一括して御説明申し上げます。  裁判官報酬等に関する法律及び検察官俸給等に関する法律は、昨年六月第二回国会において成立し、同年七月一日から施行せられ、その後、同年十二月第四国会において、それぞれその一部が改正せられ、同年十一月一日にさかのぼつて適用せられて今日に及んでおりますことは御承知通りでありますが、この第四国会における両改正法は、政府が同国会の当初に提出した「昭和二十三年十一月以降の政府職員俸給等に関する法律案」と題する職員平均月收五千三百三十円を基準とする一般政府職員給與に関する法律案の例に準じて立案せられたものであリました。しかるにその後御承知のような経緯によつて一般政府職員に関する「昭和二十三年十一月以降の政府職員俸給等に関する法律案」は、職員平均月收基準が五千三百三十円であつたのを六千三百七円に改め、この基準による「政府職員の新給與実施に関する法律の一部を改正する法律案」に修正され、この修正法案が両院を通過成立して、本年一月一日から施行せられておるのであります。そこで裁判官及び検察官につきましても一般政府職員の例にならい、その給與基準引上げる必要がありますので、この両法律案を提出いたした次第であります。  この両法律案別表にかかげる報酬または俸給の各月額現行法別表と比較しますと、認証官たる裁判官及び検察官判事、二号以上の簡易裁判所判事並びに四号以上の検事報酬または俸給月額については何らの変更がなく、その他のものについてのみ一般政府職員俸給月額増加に準じて月額二百三十七円から一千十二円までの増加になつており、その増加率は一分六厘から一割四分となつております。  この両法案におきましては、右別表改正のほか、他の法律改正に伴う法文の字句の修正及び別表俸給月額増加に伴う副検事特別俸給月額増額等に関する規定を設けてありますが、これらにつきましては特に御説明いたすまでもないと存じます。  以上簡單にこの両法案について御説明いたしました。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  4. 花村四郎

    花村委員長 この際申し上げておきます。人事院総裁は間もなく見えられることと思いますが、ただいま人事院法制局長が来られておりますから、さよう御了承願います。  次に公家公務員政治活動制限に関する人事院規則について質疑の通告がありますからこれを許します。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法務総裁に実は久しぶりにお目にかかつたのでありますので、二、三お尋ね申したいと思うのであります。法務総裁内閣法律顧問という立場にあらせられるのでありますから、さようの意味におきまして、この人事院規則に関連いたしました点、あるいは公労法に関係いたしました点につきまして二、三御質問を申し上げたいと思うのであります。  この人事院規則憲法違反であるという論者があるのでありますが、これに対しまして人事院総裁は、これは憲法第十五條によつて、合憲的なものであるという説明をせられておるのであります。ところが私どもはこの憲法第十五條がこの人事院規則、あるいはまたその母法であります国家公務員法それ自体を合憲化するところの根拠として、十五條を引用されることに対しまして、はなはだ疑問があるのでありまするが、もちろんこれはすでに法律としてできておりまするし、今まで人事委員会その他において論及された点でありますので、これをむし返すようなことになりまして恐縮でありまするけれども法務委員会といたしましては初めて取上げる問題でありまするがゆえに、なおこの点についてはつきりした観念を得たいと思うのであります。この憲法第十五條は、私どもの考えるところによれば、成立の歴史的意義と申しますか、そういう点から解釈いたしますると、これは決して国家公務員法、あるいは人事院規則を合憲化するような根拠になる條項ではないのである。今までの日本官僚はいわゆる財閥軍閥その他特権階級奉仕者であつた。昔の官吏服務紀律の第一條には「凡ソ官吏ハ天皇陛下及天皇陛下政府ニシ忠順勤勉ヲ主トシ」ということが第一條に述べられておりまして、官吏というものは天皇陛下及び天皇陛下政府勤勉忠順にやればいいので、国民などには関係ない。国民に対しては支配者地位に立つ。そのような長い間の日本官僚制度を打破して、官吏国民奉仕者である。財閥あるいは軍閥はなくなりましたが、現われて参りました政治勢力としてあるいは多数党、そういうふうな一部の特権政治勢力に奉仕するものではないのだ、国民全体の奉仕者なんだという意味を明らかにするために第十五條というものができて来たことは、学者の学説を見ましてもほぼ一致しておるところでありまして、美濃部博士などはそれを強調せられておるのであります。これが国家公務員法及び公務員政治活動を禁止いたしまするところの規則根拠にされるということは、相当ゆがめられたるところの解釈じやないかと私どもには考えられるのであつて、この十五條国家公務員法、あるいは人事院規則根拠にされるということに対しては、この民主憲法根本精神から考えてはなはだ歪曲せられたる解釈じやないかと存ずるのでありますが、法務総裁の御見解はいかがでございましようか。
  6. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 国家公務員法及び人事院規則憲法に違反するのじやないかというようなお話は、この法律制定の当時から出ました御議論でございまして、その当時十分に論議を盡しまして、憲法に違反するものではないとの御決定なつたものと承知しておるのであります。  さらにお尋ねでありますからお答え申し上げますが、私は国家公務員法従つて人事院規則というものの根拠といたしましては、單に憲法五條のみではなく、やはり十二條規定もあわせてごらんを願わなければならぬのじやないかと思うのであります。憲法五條も特に問題になります点は第二項でありまして、その趣旨は、公務員国民全体の信託のもとに、全社会福祉のために奉仕すべきものであり、一政党、一階級、一業界というような一部の利益のために奉仕すべきものであつてはならないということを名言したものと考えるのであります。従つて今回の人事院規則に関連して申しますれば、一般公務員政治的中立性というものがそこから導き出されるのでありまして、無制限な政治活動が、全体の奉仕者としての地位と相いれないということを、この條文は明らかにしておるものと考えるのであります。それからこれに関連いたしまして憲法二條規定する公共福祉のためにする基本的人権制約ということと、十五條規定とは相表裏しておると考えるのであります。本来全国民の負担において、社会全体の公共利益のために奉仕すべきことを信託され、要請されております公務員が、その本分を逸脱して一部の利益のために奉仕し、ことに政治運動に狂奔してその公正中立性を失うがごときことは、その職分から申しまして、公共福祉に著しい害悪を及ぼすものであることは言うまでもないことでありまして、猪俣議員お話通りであります。しかしながら公務員もまた国民である以上、基本的人権が尊重せられるべきことは当然でございますけれども、先ほど申し上げました点からいたしまして、ある程度の制約は、その地位に照してやむを得ないものと言わなければならないものであります。憲法みずから公務員公正中立性を要請しております以上は、かかる制約もまた憲法みずから期待しておるところであると考えます。従つて今回の措置憲法の期待するところにかえつて適合するものではないかと考えておるのでございます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 憲法の十五條及び十二條官吏中立性規定したもののような御説明でありますが、私はさような意味には解釈できないのであります。十五條はさつき申しましたように、官吏中立性規定したのではない。国民主権のあり方をここに明らかにしたものでありまして、官吏中立性とは別問題だと考えるのであります。なお官吏中立性ということでありますが、これは一面もつともらしく聞えることなんであります。しかしながらわれわれの歴史の教えるところによりますならば、第一次大戰後ドイツにおきまして、この官吏中立性が非常に論及せられた。そうして時の内務大臣プロイスは、中立性を非常に高調し、社会民主党のコーンはこれに対して非常に反対いたしまして、激烈なる論争をいたしたのでありますが、遂にプロイス議論が勝つてドイツ官吏政党から締め出されたのであります。これがいかなる結果を来したかと申しますならば、御存じの通りナチスヒトラーが現われますと、このヒトラーの最も忠実なる官僚群となり、ヒトラーのマイン・カンプにおきまして、実に無比なる忠実なる官僚群という激賞をされるがごとき官僚群に転落し、しかして第二次世界大戰に突入することに相なつたのでありまして、官吏中立性それ自体につきましても、私もさような官吏中立性国家の運命にとりまして絶対的にいいものだと断定できない。ある場合においてはこれがフアショの城砦になる。このことは歴史がすでに証明しておる。いわんやこの憲法官吏中立性を十五條において規定しておるというがごときは、われわれとることができないのであります。しかしこれは見解相違でありますからこれくらいにとどめまするが、現在の日本民主化はわれわれが地方を遊説して歩いておりましても、また中央におきましても、前途はなはだ道遠いことは法務総裁もお認めであろうと思うのであります。しかし終戰後におきまして、今までの何百年という封建思想を駆逐いたしまして、この民主化を盛り上げました先頭に立ちましたのはインテリ階級を含みますところの官公労働組合、いわゆる今日の公務員として政治活動を禁止せられましたる一団の職員組合人たちであります。これが指導者となりまして日本民主化をやり、日本官僚性が非常に打破せられたのであります。これは上級官吏にとりましては非常に脅威であつたでありましようけれども日本に長い間蟠居いたしましたるところの官僚陣を切りくずし、そうして日本民主化をはかつたその功績は偉大なるものがあると私は認定いたしまするが、法務総裁はさようなことに対しましてはいかなる御意見を持つておられますか、承りたいのであります。
  8. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 私は十五條は、つまり公務員本質も明らかにしたものでありまして、何も中立性のみをうたつたものではありません。全体の奉仕者であるということをうたいます以上は、そこから中立性が生れて参つたものと考えておるのであります。お話のごとくドイツ官吏ナチスに忠実であつた。だから官吏中立性はあまりおもしろいものではないというお話でありますが、それは中立性の濫用でありまして、ナチスがいけないのでありまして、中立性が悪いとは私は考えないのであります。今日の日本におきましては、真に民主的な国会国権を代表するものでありまして、この国会政治決定する、その政治を忠実に実行するのが官吏であります。その官吏の監督、コントロールは国会が持つておられるのでありますから、私は国会が健全である限り、中立性を堅持する官吏もまた健全であると確信をいたしておるのであります。また日本官吏終戰後大い政治的活動をいたした。その結果の日本国家民主化を促進したというお話でありますが、あるいはさようなことがあつたかも存じませんが、これが行き過ぎますれば、官吏公務員という地位によりまして国政を左右することがありまして、下手をすれば官吏專制にも陷りはしないかという疑いを生ずるものであります。はたはだ危險なる原因を蔵すると考えるのでありまして、私はやはり公務員公務員として中立性を堅持し、そうして国権を代表するところの国会の意思に従つて忠実に行政に当るべきものと考えるのであります。これも見解相違と申せば相違でありますが、私はかような公務員法を設け、かような人事院規則によりまして、純正なる官吏の特質を発揮いたさせまして、一層国政の上に、民主化の上に寄與させることができるであろうと考えております。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 官吏政治活動を許すならば、官吏專制を来す危險があるというようなことは、これは意見相違でありまして、高級官吏にとつては非常に迷惑なことでありましようけれども国民と一体をなすところのいわゆる官僚民主化という点におきましては、私は非常に重大な意義があつたものだと思うのであります。危險どころか、それが危險と感ずること自身が、やはり高級官僚一種の性格から来るのでありまして、政府あるいは高級官僚、あるいは保守性人たちから見るならば、非常に危險なことだと思われるのでありますが、日本民主化のためにはそうあらねばならぬと考える一人であります。これは意見相違でありますからこの程度にとどめます。  先ほど法務総裁は、憲法の第十二條公務員法あるいは人事院規則根拠とせられたのでありまして、十二條公共福祉という言葉を用いられておるのであります。この公共福祉という言葉は、表面はなはだけつこうな言葉でありまして、われわれの基本的人権公共福祉のためにこれを使用する責任を負うということに対しては、もちろんしかるべきことであると思うのであります。しかしながらこの憲法の十二條の文意から考えましても、この公共福祉という言葉をとつて、ただちに基本的人権を抑圧する法律の封建性を弁護する一つの條項に引くということは、私はいかがなものであろうかと考える。旧明治憲法におきましては、法律によるにあらざれば何々することができないと、われわれの権利義務を保障したものの、必ず頭に法律によるにあらざれぼ何々することがでない、こういう規定がある。その反面法律さえつくるならば、どんな彈圧でもできる。基本的人権などはふつ飛んでしまう。明治憲法のときにおきましては、人民の権利義務としてりつぱな條章があつたにもかかわらず、ほとんどわれわれの基本的人権はふつ飛んでしまつて、治安維持法というような法律さえできた。この法律の中身を見れば、多数党によつて容認せられる法律をつくることによつていかなる基本的人権も剥奪することができることになつて憲法基本的人権の保障というものはほとんど空文にひとしいものになつて来た。この明治憲法に対して今日民主憲法によりまして、奪うべからざる基本的人権が確立せられて、法律によるにあらざればという文句がとられたのでありますが、しかるにこの法律によるにあらざればという文句のかわりに、今度は十二條公共福祉ということを持つて来ると、結局同じことが起つて来るのでありまして、何でもかんでも公共福祉ということを持つて来れば、その法律憲法違反にならない。それによつて基本的人権が抑圧せられるということになつて来ますと、結局民主憲法と称せられますところの日本憲法もまた明治憲法と同じように、この基本的人権というものがお飾りにすぎないということに相なつて来る。真に民主的憲法たるゆえんを発揮するには、この公共福祉ということを、基本的人権を抑圧するような意味になるべく使わないことが、この民主憲法の精神でなければならぬと思うのであります。御承知通りヨーロッパにおいても、十八世紀時代に公共福祉、これを唱えた国家福祉国家と称せられ、これは絶対王政、絶対政治の行われたときの国家福祉国家と言うのであつて、またこの別名は警察国家と言う。この福祉という言葉を強調いたしますと、それが警察国家になり、福祉国家になり、なおひいてナチスの公益優先の思想になり、なお日本の東條の滅私奉公の精神に相なり、これがファショの思想に容易に転化するのでありまして基本的人権というものは、この公共福祉の思想ということからみだりにこれを抑圧するものではない。いわんや公務員政治活動禁止を、公共福祉というような論拠をお用いになるというようなことは、これは非常に考えものであつて、もしかような論法を持つて来るたらば、ふろ屋の取締りも公共福祉、床屋の取締りも公共福祉ということに相なつて来て、いかなることでも公共福祉ということに論理づけられないことがないことになる。ロジックさえもてあそぶならば、何でも公共福祉に結びつけられることになる。かようなことに相なりますれば、憲法基本的人権というものを掲げたことが、空文にひとしくなることを憂えるものでありまして、近時公共企業体労働関係法、この根拠をこの第十二條公共福祉ということに持つ来ておる。そして憲法に保障せられた団結権、あるいは団体交渉権をみな剥奪してしまつておる。かような傾向が行われると、いつ何どきまた明治憲法時代に逆転しないとも限らぬということが、われわれ心配せられるのでありますが、この公務員政治活動禁止を十二條公共福祉を用いられるということは、私は法務総裁から初めて聞くのでありますが、さような観念で一体間違いがないのでございましようか。
  10. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 お話でございますが、基本人権は公共福祉のためにこれを用いなければならぬということは、ただいまおつしやいましたように、十二條規定するところであります。ただ基本人権と公共福祉といずれが重いかという社会的価値の考量になるのであります。その社会的価値の考量と申しますのは、これは国会がなさるのであります。国民がするのであります。これはいかに精神に規定しても、憲法法律もよく規定し得ないところであります。従つてただいまのお話のごとく、いかに公共福祉が大事であろうが、基本的人権はさらに大事である。従つて公共福祉を濫用してはならぬという御説は、まことにごもつともであり、御同感でありますが、私はただいま公務員法人事院規則のできた趣旨において、公共福祉ということが考えられているということをはつきり申し上げたのであります。公共福祉の名において、いかなることもかつてにしてよろしい、こういうわけはむろんありません。いわんや今日の国家は主権在民の民主的国家であります。従つて国会は最も重きに任ずるわけでありますから、国会がみずから御判断になつて、自由におきめになつていいことでありまして、その趣旨において今度の法律従つてそれに委任されておる規則もできておるのであると考えます。ただ人事院規則内容があまりに広汎かつ過重である。であるからこれはその根本的な趣旨から逸脱しておるというお話であろうと思うのであります。私どもは、それはそうでない、公務員というものの本質に最もよく合した適当な法律であると考えております。さらにその詳細については、多分人事院総裁からお話があろうと思います。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお人事院の性格について、憲法との関連について一、二お尋ねしたいと思うのでありますが、何だか内閣のほかに今一つ内閣ができたような感じを国民は受けるのであります。憲法の七十三條によりますれば「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」としてその第四号に「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」とあるのであります。この憲法規定と、人事院というものがあることと、これをどういうふうに調和なさろうとお考えになつておりますか、承りたい。官吏に関する事務は内閣でやるように憲法規定されておるのに、ほとんど大半は人事院でやるような現在のやり方が、憲法に違反しないのかどうかということについて御意見を承りたいと思います。
  12. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 いかにも人事院は内閣から離れて、独立したかの感を抱く方も多いのでありますが、これは人事行政の公正を期するために、特に人事院というものに過度の独立性を付與いたしたわけでありまして、このためにかえつて人事行政が公正に運用され、内閣の責任としてもいい結果を来すと考えて、かような制度ができたのであります。しかもそれは法律に基いてこの制度ができ、法律に基いてこの制度が運用されておるのであります。その法律国家公務員法でありますから、人事院は内閣からかつてに離れて、内閣の意思に反し、あるいは国会の意思に反して自由なる活動をするとということはとうてい考えられません。やはり国会の負託にこたえ、また内閣の方針に従つて運用されるものと考えております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、人事院と内閣関係は、これはまつたく並立したものでありますか、あるいは内閣のもとに人事院というものがあるのでありますか。内閣総理大臣と人事院総裁との関係はどういうことに相なりますか、承りたいと思います。
  14. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 人事院総裁内閣総理大臣のオーソリティのもとにあるのであります。しかしながらその独立性を尊重いたしまして、むやみには干渉できない。ただ選任に当りましてあるいはこれを罷免する場合におきまして嚴格なる條件は付しておりますが、その條件に従つて内閣は監督し、これを運用するということにいたしたわけであります。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、内閣は人事院を監督なさるのでありますか。
  16. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 ある條件に従つて監督しております。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 その條件というのはどういう條件ございますか。
  18. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 人事官の任命権を総理大臣が持つております。それから一定の條件に従つてこれを罷免することもできるのであります。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおあとは人事院総裁にお聞きいたしますが、国家公務員法の十六條に「人事院は、この法律執行に関し必要な事項について、人事院規則制定し、人事院指令を発し、及び手続を定める。」というような広範なるところの権限を附與する委任立法がなされておるのでありますが、戰時中は、御承知通り国家総動員法というとんでもない委任立法がありまして、戰時中といえどもこれに対して執拗な反対があつた。民主国家の今日におきまして、かような広範なるところの委任立法をもつてそれに基きまして今日公務員政治活動を全面的に禁止するような人事院規則というものができた。一体かようなものは国民基本的人権に関するものであるから、たとえ憲法の十五條、あるいは十二條根拠にいたしたといたしましても、重大な問題であるから、国会において法律でもつてつくるべきが至当であると考えるのでありますが、法務総裁はさようなことについていかなるお考えがありますか、承りたいのであります。
  20. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 それは御見解ごもつともでありまするが、かような広範なる委任をいたしましたのも、主として公務員法第百二條が最も広範な委任をいたしておりまするが、これは公務員法の成立するときに国会において十分に論議されましたところでありまして、御意見のごとく、これを非常に行過ぎであるとする意見と、人事院をして十分に公正なる行政を行わしめるには、かような広範な委任が必要であるという両方の議論がございまして、その後者の議論通りましてかような法律ができたと思います。すでに法律ができておりまして、人事院はこの法律に基きまして、その法律の委任の範囲内において人事院規則をつくつておるのでありまして、法律を逸脱しておるとは考えておりません。ただこの法律の委任の仕方が適当であるかどうか、これは国会でお考えくださるほかに道がないと思います。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 政府人事院規則のごときものを法律でつくるように、この百二條改正するような御意思があるかどうか。これは申すまでもなく、委任立法というものがだんだん出て来ますことは、結果において官僚制の復活を誘致するものでありまして、イギリスの有名な学者もさようなことを言つているのでありまして、委任立法が出ることは、官僚制の危險信号だとというこを言つておるのであります。政府といたしましては、この百二條改正するような御意思はあるのかないのか承りたいのであります。
  22. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 御意見ごもつともでありまするが、政府といたしましては今後の情勢を見きわめまして、その情勢によりまして、あるいはこの法律改正しなければならぬかというようなことを考えるときもあろうかと思います。ただいまのところこの法律改正いたします考えはございません。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは私あらかじめ御通告申し上げなかつたのでありますが、公共企業体労働関係法の三十五條にあります、現在起つておりまする国鉄労組の給與べースの問題であります。これは仲裁委員会にかかつておるのでありますが、この仲裁委員会の裁定に対しましては強制力を持つておるのであります。そうすると、もし仲裁委員会でもつて裁定が下されましたならば、労働組合及び国有鉄道は、その強制を受けるということに相なるかとも思うのでありますが、かような場合に対しましては、政府はどういう立場に置かれるのでありますか、御説明願いたいのであります。
  24. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 第十六條は「公共企業体の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」こういうふうになつております。従つてせつかく裁定ができましても、この條文によりますれば、必ずしもその通りには実行できないと考えております。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると十六條によつて公共企業体の予算上または資金上、これは独立会計になつておりますから、その会計上支出が許されることが明らかになれば、政府はこれに対して干渉はできないはずだと思いますが、いかがなものでありますか。
  26. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 それはその法律條文に拘束されないような状態になります。公共企業体がそれに応ぜられるということであれば、政府としては干渉はできないものと思います。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると公共企業体の予算上または資金上一体不可能かどうかまだわからぬ際に、政府として仲裁委員会において裁定があつても応じられないということを御発表なさることは、どうもいかがかと思うのでありますが、法務総裁の御意見はいかがでありますか。
  28. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 さような発表があつたかどうか存じませんが、おそらく発表があります以上は、公共企業体と十分に協議を遂げまして、さような結論に達したものと考えます。
  29. 梨木作次郎

    ○梨木委員 法務総裁に伺いたいのですが、九月十九日付で出されました人事院規則は、御承知のように非常に広い範囲で国家公務員政治活動を禁止しておるのでありますが、この点について、私は今猪俣委員からも質問がありましたように、こういう人事院規則というものは憲法に違反するものであるという疑いを強く持つておるのであります。この点を伺います前に、憲法規定されているところの内閣が発し得る政令、各省が発し得る省令、人事院規則、この関係についてまず伺いたいのであります。というのはもう少し具体的に申しますと、人事院規則と政令との関係はどちらが優先するのか。つまり政令と人事院規則との法的の優越性の点についてまず最初に伺いたいと思います。
  30. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 政令と人事院規則とは別なものでありまして、人事院規則国家公務員法に基いて制定いたす規則であります。あるいは御質問は、政令と重複したときにはどちらが優先するのかということでありましようか。
  31. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは私の質問をもう少し具体的に申します。御案内のように憲法第七十三條の六号で、内閣は政令を制定することができるとなつております。ところが憲法上は、人事院規則というようなものについては規定はないと思います。私は寡聞にしてないと思いますが、これは人事院規則という名前になつております。これは一体憲法第七十三條第六号に言う政令と憲法上は同じ地位を占めるものであるかどうかという点を伺いたいのであります。
  32. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 人事院規則は、公務員法という法律に基く委任によりまして制定された命令であります。従つて今の政令とは別なものであります。ことに公務員に関しては、公務員法が最も優先をするわけでありまして、事公務員に関する限り、法律かあるいはこの委任立法によらなければ、政令は出さないのがあたりまえになつております。ですからこれは重複する、あるいは交錯することはないと考えております。
  33. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私の理解しているところでは、省令というものは罰則がつけられないと理解しておるのでありますが、人事院規則というものは省令と同じ憲法上の地位を占めるものであるか、この点をどういうように御理解になつておるか伺いたい。
  34. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私からお答えいたします。憲法自身は、御指摘のように法律以外の命令の形としては、政令というものを取上げておりますが、それ以外に省令とか、あるいは人事院規則とかいうようなものをどう考えておるかという点を、まず先にお答え申したいと思います。これは申すまでもなく憲法の八十一條に、最高裁判所の例の審査権の規定がございますが、法律、命令、規則または処分というようなことであつて、省令のほかにも命令なり規則というものがあることを予想しておるわけであります。ただ政令というものだけ名前をつけて憲法で取上げておる。それ以外のものは個々の法律によつて、あるいは行政官庁の組織法の系統から省令ができたり、府令ができたりするということになる。国家公務員法の系統から人事院規則というものが出るというふうに御理解願つてよろしいと存ずるのであります。従いまして憲法自身は政令を取上げておりますが、それ以外の命令の点には触れておりませんからして、これは立法機関が法律をもつてその名前と根拠をおきめになり、あるいは場合によつては限定した罰則を実現されるということもあり得るわけであります。お尋ねの趣旨を取違えておるかもしれませんが、一応そういうようにお答えいたします。
  35. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一点伺いたいのですが、そうすると憲法上の法的な地位と申しますか、それは省令と同格と理解されておるのでありましようか。
  36. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは今申しましたように、法律の授権によつて出て参りますから、今の人事院規則の例で申しますと、御指摘の国家公務員法で、これこれは人事院規則で定めるという名ざしをして委任をしておるわけであります。従いましてそこへ横やりが出て来て、政令なり総理府令なりが入つて来る余地はない。人事院だけが法律で名ざしで授権されたのでありますから、ほかの府令だとか省令だとかいう規則との間の分野がはつきり別になつておるわけでありますから、優先関係、優劣関係は起らぬというように理解しておるわけであります。
  37. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど猪俣委員からもお尋ねがありましたが、憲法第七十三條の第六号によりますと、憲法並びに法律を実施するために、内閣は政令を制定することができる、こうなつております。但し罰則を設けることは、法律の委任がなければできないということになつておるのであります。ところが国家公務員法におきまして、人事院規則の定めるところによりとして、それから三年以下の懲役とか非常に重い罰則が入つております。法律の中で人事院規則に定めるところによりとして、そうしてこれは人事院で一切その内容をきめられるということにして、こういう重い三年以下の懲役とかいうような罰則のある規定内容を、一行政官庁である人事院にまかせるというようなやり方、こういうやり方は戰時中国家総動員法といいますか、この国家総動員法という法律をつくつて、すべてあとは命令で官庁で出せるようなあの方式によつて国民の基本的の人権はまつたく官庁の專制的な認定によつて抹殺されて行つたということは、われわれのよく知つておるところであります。従いまして憲法第七十三條の六号の精神から行きますならば、なるほどこれは法律の委任があると申しますけれども、しかし実際においては行政官庁が罰則のある政令やあるいは省令や、あるいは人事院規則を出せると同じような効果を持たせておる。これは換言すれば脱法行為なのでありまして、つまり法律の正面には抵触しないけれども、他の方法で法律が禁止すると同じような効果を達成しようとする、これを俗に脱法行為と言つております。従いましてこの人事院規則、つまり国家公務員法第百二條に基いて出された人事院規則は、明らかに憲法第七十三條の第六号をくぐつて、つまり脱法しようとする法律であり、規則であるということが明白であります。だから私はこの点から、この人事院規則憲法に違反すると考えておるのであります。この点でわれわれの特に考えなければならぬ点は、もしもこういうことを国会が、また政府が放任しておきますならば、必ずや国家総動員法の轍を踏むにきまつております。これでは法律で全部委任すれば、こういう広範な憲法上認めている基本的人権を一朝にして取上げてしまうようなことが可能になるのでありまして、そんなことを認めるならば、憲法も何もいらなくなつてしまうということになるのでありまして、この法律の委任によつて憲法上の基本的な人権をほとんど抹殺するような、こういう広範囲な人事院規則は、憲法違反ではないかという点について法務総裁の御見解を伺いたいのであります。
  38. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 それはこの国家公務員法の成立しますときに十分に論議された点でございまして、従つてこの委任が広範に過ぎるではないかというような御議論もあつたものでありまするから、当時人事院総裁は、人事院の腹案として持つておりました人事院規則をごひろういたしまして、こういう規則をつくるつもりであるということまで申し上げまして、この委任立法が成立いたしたのであります。でありまするから当時もすでにさようなことを考えられまして、あまり広範である、しかしながらこれは法律ではとうてい精細に規定することがむずかしい、それよりも人事院規則に委任して、個々に具体的に定める方が実際的であるというお考えから、あの條文が成立いたしたのであります。梨木さんのお考えごもつともでありますが、それはすでに論議し盡しました上で、それは違憲ではない、これは委任立法にした方がいいということにおきめになつたのでありまして、今日ではもはや議論の余地はないと思うのであります。しかしながら国会がまたこれは改正する必要があるとお考えになれば、それは御改正になつても一向さしつかえないことであろうと思います。
  39. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今の総裁御答弁の、前の国会におきまして、この百二條の人事院に委任する内容についての一応の輪郭が出されたということは私も承知しております。しかしながらその内容と、それから今度出された人事院規則の実際を見てみますと、これはそれ以上非常に広汎に、かつまたこまかく詳細なところまで規定しておるのであります。これは私は煩瑣にわたりますからここでは申し上げません。総裁も御承知だろうと思うのでありまして、五項にわたつておるのでありますが、今度出たものはもつと詳しいものでありまして、しかもこの点は私の聞いたところに誤りがないとするならば、これも一応国会へ諮るというような、国会の意思を何らかの形で聞くということになつておつたというように伺つておるのでありますが、それすらもなされず、しかも当時出された試案よりももつと広汎なものを出されているという点から見ましても、政府憲法規定しておる基本的人権を擁護するという建前、憲法を擁護するという建前に対する熱意といいますか、憲法を守るという熱意に対する非常な疑惑を私は持たざるを得ない。この点をどうお考えになつておるか。つまりもつと具体的に申せば、前に提示されたものよりもつと詳しく、もつと具体的になつている。この点を伺いたいのです。特にひどいのは、大体今度出されました人事院規則によると、勤務時間外の行動までこの規則で縛ろうとしている。すなわちち私的生活への影響力までもこれは禁止するということになつておるのでありまして、こういうことは前の試案の中には全然なかつたことであります。こういうことの中に、私ははたして政府がこの新憲法をほんとうに忠実に遵守する意思があるかどうかということを疑わざるを得ない。もし私の疑いが杞憂でありますならば、それを釈然とさせるために、明確な御答弁を願いたいと思うのであります。
  40. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 すでにこれは論議されたことでありまして、あらためて論議を重ねる必要もないかと思いますが、ただいまお話の、勤務時間外の問題にまで立入るということでありますが、公務員というのは一種の身分であります。何も勤務時間中の勤務のみ規制すべきものではないのであります。これは公私ともに規制をされるのが当然であります。  さらに今の人事院規則内容等につきましては、実は先ほども猪俣さんのお話にありましたごとく、政府は人事院を單に監督はしておりまするけれども、その行政の仕方について一々指揮する権能を持つておりません。従つて人事院規則人事院総裁のお考えでできておることでありますので、その点につきましては人事院総裁から、あらためてお聞き願いたいと思います。
  41. 梨木作次郎

    ○梨木委員 だから私はそこで政府の最高の法律顧問である法務総裁に、こういうように広汎に国家公務員政治活動を禁止することは、何とも行き過ぎじやないかという点について、法律顧問としての御見解を伺いたいと思う。
  42. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 その資格におきまして、私は行き過ぎではないと考えておるのであります。
  43. 上村進

    ○上村委員 今の点に関連して—この人事院規則ですな。これは私の見解では俗にいう省令になると思うのです。政令よりもつと一段下の官庁が出すところの省令である。その省令に基本的人権を制限する箇條がたくさんあるのです。これが憲法違反でないということは、文字の上から言いまして何人も断言することはできない。今梨木君の指摘し、またさつき猪俣委員の指摘したような基本的人権というものは、ちやんとわかつておる憲法の各條に照して何が基本的人権であるか、これは私が言うまでもなく、法務総裁はよくわかつておるわけです。そうすると、こういう基本的人権を侵すところのあらゆる法律、あらゆる命令、あらゆる処分が無効であることは、憲法九十八條に炳として規定しております。そうするとこの公務員法が、さような憲法違反の委任をするはずがない。私は当時国会議員でありませんので、詳しい討論を承知しておりませんが、おそらく当時の国会議員諸君も、憲法違反法律をこしらえようとしておつたのではないのではなかろうかと今推測するのであります。そうするとこの委任立法という、いわゆる官僚專制を来すところの非民主的な立法が、前の国会において行われておるとは思えない。でありますからこの委任立法の法理観念というものは、旧憲法時代のいわゆる官僚性憲法の遺物的な思想であります。こういう議論はさらりとやめなければならないというのが新憲法の民主的憲法原論であります。そうしますと、どうしてもこの人事院規則の中で、人事院総裁に與えられたところのものは、おのずから憲法の根本原則、あるいは民主化法律によつて十分の制約を受けて、その基本的人権を侵さない範囲においての公務員の実務の執行と、従順性を要求するだけにとどまるものでなければならないと思う。またそういうふうに解釈して、それに基いて省令が制定さるべきであつたのだと思うのです。この点どういう考えで、どういう点から、さようなだれが見ても憲法より一段下の政令、政令より一段下の省令というようなものに、憲法違反條項を許したということになりますか、こういう点を明確にお答えを願いたいと思います。
  44. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 上村さんのお考えの通りでありまして、国会憲法に違反するような立法をするわけがないのでありまして、これは昨年の国会がおきめになつたことでありますから、私はこれは憲法違反は決してしておらぬ、こう考えております。また法律とか省令とか、昔はあたかも段階があるかのような考え方であつたのでありまするが、しかしながらこの人事院規則は、公務員法二條によりまして人事院が公正と考えるところによつて定めてよろしいということをちやんと委任しておるのでありまして、その委任の範囲内において私はこの規則が定められておると考えるのであります。従つてこれは規則であろうが公務員法であろうが、その点については径庭はない。そしてこれは憲法違反ではない。国会の委任に基いて国会の意思を体して定めた規則であるのであります。
  45. 上村進

    ○上村委員 法務総裁のお答えは実に矛盾しておる、私の質問はそういうところにあつたのではないのです。現に各公務員人事院規則によつて制約を受けておるのです。そしてその制約を受けておる事項は、憲法に違反しておる事項がたくさんあるのです。これがいわゆる憲法違反でなくて何であるかということを伺いたい。そういう意味のことを委任立法なんだという古くさいいわゆる官僚性憲法の遺物的な思想でこれを考えてどんどんやつたのでは、たいへん民主主義というものは妨害を受けるわけだ。でありますから法律というものは決してそういうものではないのだ。いわゆる憲法というものが民主憲法であるならば、どこまでも法律も、命令も、政令も、すべてその根本の法則に従つて発展、展開して行かなければならない。これは法律の運用であろうが行政の運用であろうが、司法裁判の運用であろうがそうなんだ。これが忘れられて憲法というものがある人の—つまり勢力によつてつてにいろいろなことをされるようなことであれば、憲法というものはいらない。憲法が大事なのは、どんなことがあつて基本的人権を侵してはならないというところに憲法憲法たる効力があるのです。それを末端の行政官や総理大臣が出て来て、ヒトラーみたいなものが出て来てやるというなら憲法の価値はない。でありますから人事院規則憲法違反をしていないかどうか。われわれはこれはしているという前提なのですが、御説明願いたい。
  46. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 そこに私どもと上村議員との見解に著しい相違がございまして、私どもはこの人事院規則憲法に違反しておるとは考えておりません。実質的にも違反しておらざるのみならず、形式的にもその手続においても違法がない、こういうことを申しておるのであります。
  47. 上村進

    ○上村委員 違反していないというけれども、現に公務員のいわゆる基本的人権がこの規則になつて侵されておることは、何人も異論がないのです。でありまするからその点を私どもはどこまでも追究いたします。
  48. 梨木作次郎

    ○梨木委員 極東委員会の労働組合組織に関する十六原則によりますと、労働組合員は政治活動をすることを奨励するということになつておるのであります。ところが国家公務員に対しては、政治活動というものはこの人事院規則によつてほとんど禁止されてしまつたのであります。極東委員会の決定というものは、日本憲法と同じ程度にわれわれはこれを忠実に実行しなければならないものだと思うのです。この点については政府は、極東委員会の労働組合組織に関する十六原則に違反しておるのではないかという疑いを持つのでありますが、この点について総裁はどう考えられますか。
  49. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 労働組合についてのお話はその通りでありますが、国家公務員は私企業の労働者ではないのでありまして国家公務員という特別の身分を持つものであります。従つて一般の私企業の労働者とはその取扱いを異にするのはやむを得ないのであります。また極東委員会の根本原則は、私どもは直接それに従つて政治をやりますが、それに基いてそれを演繹しつつ立法し、あるいは法令をつくるというのではないのであります。その間に総司令部がありまして、われわれは立法をいたします場合、一々総司令部に伺いましてその同意のもとにその立法をいたしておる。総司令部はその極東委員会の原則を十分に検討された上で、われわれに同意を與えられておるのであります。私どもはその点につきまして総司令部の考えを忖度する権能はないのであります。
  50. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この人事院規則憲法違反であるかないかという点について、法律的な議論はこれ以上進めませんが、しかし今日日本人のすべて—これは政府もまた一般の国民も、ポツダム宣言並びにポツダム宣言を忠実に実行するために出された憲法、これらがすべて何を目標にしておるかといえば、日本を民主主義化するということです。従つてこの人事院規則というものを出して、日本民主化に役立つかどうかということを事実の上において伺いたいのです。それは日本の現状は遺憾ながら、一般の国民生活の中においても、またこの官僚機構もまだまだ民主化されておりません。この民主化されておらない現状のもとにおいて、国家公務員政治活動を禁止するような規則が出ることによつて、結果はどうなるかといえば、むしろ民主化をはばんで、官僚的な、非民主的な機構を温存することに役立つ。私は具体的な例を申し上げます。これが出てから後にどんなことが行われておりますか。これは一労働組合でありますが、国家公務員であり、また官公庁の労働組合に所属しておる一人が、その職場でこういうビラを張つたというのです。政府のとる保險料には納入が遅れると日歩二十銭の利子がつく。これが政府のやり方です。こういうビラを出した。これがもうすでに政治活動禁止に触れるということで、首切りを脅迫されたという事実がある。国家公務員法によつても批判することは自由であると書いてある。これは批判かどうかも問題だと思うのですが、これだけのことで事実長い間まじめに公務員として勤めて来た人が、首を切られるということが行われておる。しかも一方どうですか。ことしの夏には外務省の高級官吏である調査第三課長曽野明、報道課長法眼晋作、政務課長の斉藤鎭男といわれる方々が全国を宣伝して歩いた。その宣伝の内容はまつたく反ソ的な、反共的な宣伝をやつておる。これは現在の政府が一つの国民運動として、反共運動をやろうとしておることに歩調を合せてやつているとしか考えられないような行動をやつておる。これは明らかに国家公務員法の違反でありますが、現在放置されております。しかも人事院規則というものは、特別職のものには適用がないということになつている。そして一般職員について人事院規則の適用があるのです。ところが特別職は御承知のように、内閣総理大臣、各省大臣というような人たちでありますが、えて高級官僚というものは、こういう特別職の人ときわめて緊密な接触を持つて、ほとんど不可分の関係にあるといつてもさしつかえないと思うのであります。こういうような高級官僚の行うところの政治活動はそのまま放置されまして、しかも下級の公務員がちよつとビラを張つただけで、政治活動禁止の規定に触れるということでは、結局は現在の民主化されない官僚機構を温存するために、まつたくこれは利用されているということになるのでありまして、こういう観点から見ましても、明らかにこれは現在の日本民主化するためにはじやまになる。民主化を阻害するようなものである。この観点から見ましても、政府はこういう人事院規則はやめるべきだというように私は考えるのであります。総裁の御意見はいかがですか。
  51. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 特別職はただいまお話がありましたが、多くは政治関係する職に当るものでありまして、われわれ特別職であります。従つてこれは政治に関與するのが当然の義務である。しかし一般職は政治に関與すべきものではありませんから、従つて人事院規則によつて政治活動は禁止いたしたのであります。一般職と特別職の区別をはつきりしてあるのであります。今の外務省のお話は私もよく存じませんが、決して官吏の本旨に反するような行動をとつたのではないと思います。もしそれが宣伝の旅行に歩きましたならば、それは外務省の命令をもつて、一定の宣伝というとおかしうございますが、外務省の意思を世間に知らせるべく歩いたものと思います。しかしそれらの点につきましては、人事院にさらにこまかくお尋ね願いたいと思います。
  52. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今の点は、こういうように人事院規則を適用して来るならば、外務省の高級官吏は明らかに人事院規則に違反していると思うので、この点についての検務長官の御意見並びにその施策に対する御意見を伺いたいと思います。
  53. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 外務省の官吏の地方に出ての行動が、人事院規則違反になつておるかどうかということは、私のところではまだ何ら資料がありませんので、それに対する意見は述べかねます。
  54. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それは調べてから御報告願いたいと思いますが、いかがですか。
  55. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 この公務員政治活動の制限、または禁止に関する規則違反の事件が起きました場合には、法務府の一般検察方針としましては、なるべく当該官庁において調査して当該官庁の行政処分をまず先にやる。それから愼重に違反事件について検察を行う、こういう方針をとつております。外務省の方において、その当該官吏の違反かどうかわかりませんが、そういう疑わしい事件については、当然調査し、また違反があれば行政処分があることと思いますので、十分に緊密な連絡をとつて愼重に検察を行いたいと考えております。
  56. 上村進

    ○上村委員 今の点をちよつと法務総裁に念を押しておきたいと思います。これはいろいろの行為がこうありますが、これについて事務的にはいろいろな解釈が出て来て、議論があると思いますが、大体こういうふうに承つてよろしいですか。あなたは先ほど、人事院規則憲法違反でないと言つている。そうすると、ある公務員があることをやつて問題が検事局へ行つた場合に、われわれが弁護する。そうするとそのある公務員の行つた行為が憲法違反であるならば、この規則に違反しないのだ、こういう逆の結論を出していいのですか、その見解をちよつと確かめておきたいと思います。
  57. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 私はどうも少し頭が悪いのでございまして理解できませんが、こういうことでございますか。これは憲法に違反しておらぬ。従つてある行為が人事院規則に違反しても、これが憲法に違反したときは、人事院規則はもうさしつかえない、憲法偉反のときにはこの規則の根本と反するのだから、それはこの規則と反してもさしつかえない、こういうことでございますか。
  58. 上村進

    ○上村委員 そういう意味です。
  59. 殖田俊吉

    殖田國務大臣 私はどうもそれは理解いたしかねます。憲法違反であれば、もちろんいけないと思います。しかしながら人事院規則に反するのでなければ、それはまた別な問題であります。人事院規則の問題ではございません。しかし人事院規則に反する以上は、それは人事院規則憲法違反の問題を別にいたしまして、必ずそれは犯罪になると思います。でありますからどうも人事院規則に反しながら犯罪でないというのは、ちよつとあり得ないように考えます。
  60. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。—なければ本日はこれにて散会いたします。  明日は午後一時より委員会を開き、少年法の一部を改正する法律案並びに人事院総裁に対する質疑を継続いたしたいと存じます。     午後四時七分散会