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1949-11-26 第6回国会 衆議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十六日(土曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 原   彪君    理事 岡延右エ門君 理事 高木  章君    理事 圓谷 光衞君 理事 水谷  昇君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君    理事 稻葉  修君 理事 今野 武雄君    理事 小林 信一君       伊藤 郷一君    甲木  保君       佐藤 重遠君    渡部 義通君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君  出席政府委員         文部事務官   久保田藤麿君  委員外出席者         議     員 坪内 八郎君         文部事務官   森田  孝君         文部事務官   福田  繁君         法制局参事   福原 忠男君        專  門  員 横田重左衞門君 十一月二十六日  委員尾関義一君辞任につき、その補欠として高  木章君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事柏原義則君の補欠として高木章君が理事に  当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  私立学校法案内閣提出第三八号)  六・三制完全実施に関する決議の実行に関する  決議案野坂參三君外三十五名提出決議第一  号)  科学技術研究振興に関する決議案苫米地義三  君外二名提出決議第二号)  古美術保存に関する決議案野坂參三君外三十  五名提出決議第三号)     —————————————
  2. 原彪

    原委員長 これより会議を開きます。  私立学校法案を議題とし、審査に入ります。全般質疑を許します。質疑は通告順によつてこれを許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 私学関係から長い間待望されておつた学校が、ようやくできたわけでありますが、文部大臣の御説明にもありましたように、一年余りにわたつて、この法律案制定につつて私学団体連合会とも打合せをされておつたということでありますが、それほど長く打合せをされたにかかわらず、先般最初に発表された文部省の案に対して、私学団体連合会から十箇條修正要求が出て来たような始末でございます。その間どういういきさつで、突如としてああいう十箇條要求が出て来るようになつたのか、この間の事情を少しく御説明願いたいと思います。
  4. 久保田藤麿

    久保田政府委員 文部省の一応の原案が閣議に出まして、閣議の御決定を得たわけでありますが、それに対して、突如として起つて来たかのような感を抱かれたこと自体が、実は非常に遺憾なことでありまして、私ども予算決定の時期と、この法案自体決定していただく時期において、むしろ法案の方があとになつてくれれば、ああいう問題はおよそ起らなかつた考えるのでございます。御承知通り、不幸にして予算の方が遅れ、法案の方が国会提出する時間の関係で先に進めなければならなかつたということ、また本年度の本予算で、私立学校に対する分は全部削られておりました関係から、この法案の成立することが、その意味において予算を獲得して行く一つの條件でございましたために、監督事項なり、また公の支配に属するといつたような性格をなるべく強く出す必要が法案にあつたという意味よりは、むしろ予算的な意味において非常に強くあつたということが、そもそもの原因でございます。そうして私立学校連合会の方でも、確かに公の支配に属するという形を出せば、予算をどの程度までとれるかということについての見通しが、私ども関係においても、また私立学校側においても、予算のぎりぎりのところまでやらなければよくわからなかつたということのために、最後に予算がいよいよこの辺まで来れば、大体この程度條項の盛り方で満足ができるだろうという見通しの問題が、ちようどその時期にかかつたというふうに御了解いただけば、全貌がおわかりいただけるのではないかと考えます。
  5. 稻葉修

    稻葉委員 ちよつと議事進行について——。私学校案が今ここで質疑段階に入るようになつた次第でありますが、この私学校案を提案するにあたつて文部大臣私立学校教育振興することは、わが国教育全般振興をはかる上からも、ゆるがせにすることのできない重要問題であるということを強調しておられました。本日この法案がいよいよ質疑段階に入るにあたつて文部大臣出席しておられないということは、この問題の重要性について、みずから言われたこととたいへんに矛盾するわけでありますから、文部大臣出席できないのかということを、委員長から突きとめられて、委員会に報告を願いたいと思います。それまで本法案審議を中止して、暫時休憩していただきたいと存じます。
  6. 原彪

    原委員長 ただいま文部大臣はこの国会に上程されております二つ法案につきまして、この法案関係のある大臣と御協議中でございまして、遅れているわけでございます。その御協議が終り次第、御出席になることとなつておりますので、その点御了承をいただいて、審議を進められることに御同意願いたいと思います。
  7. 稻葉修

    稻葉委員 委員長お話は、たいへん了とするところがありますけれども、ただいま松本君から御質疑なつたような点については、全般に関する重要問題であつて文部大臣の御所見をじかに承らなければ、とうてい解決のできない問題でありますから、質疑を継続いたしましても、むだではなかろうかと思うのであります。
  8. 原彪

    原委員長 大臣に対する質疑あとまわしにされて、局長に対する御質疑を先に御進行願いたいと思います。大臣ももう三十分以内に御出席になるはずです。
  9. 稻葉修

    稻葉委員 大臣がみずから答弁なされる必要のないような事項についての質疑はよろしゆうございますけれども、今松本さんから質問ざれたような点については、ひいてはわが国教育界の全体に重大な関係のあることであります。たとえば文部省私立大学団体との関係文部行政教育との関係というような、施策の根本に関する問題でありますので、どうしても文部大臣が来て、みずから答弁なされないことには、質疑に対する回答にならない。ですから、文部大臣がそういう御事情でお出になれないというのならば、それまで待ちますから、その間の質疑はそういう重大問題でなく、説明員でも十分答弁のできるような点についての御質疑に限られてもけつこうですが、それで進行できますか。そういうコントロールができればよろしゆうございますが……。
  10. 松本七郎

    松本(七)委員 私も稻葉委員の御意見には賛成ですが、文部大臣見えてから、またあらためて大臣に特に答弁を求めなければならぬ場合には質問いたします。それから大体文部省の意向を局長からでも伝えていただいて、その上でまた必要があれば質問いたしますから、私は続行していただいてけつこうです。
  11. 原彪

    原委員長 稻葉君松本君の御質疑は、大臣に対するのをあとまわしにして、質疑を続行したいというのですから、御了承願います。
  12. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がございませんから、この機会文部省としての私学に対する基本的な考え方を承つておきたいと思います。それは例の憲法八十九條と関連した問題ですが、元来私学というものは、基本的にいえば、この間参考人として我妻博士が述べられましたように、公の支配に属さないものとして、完全な自主性を持つてつて行けるということが最も望ましいと思います。そこで文部省としては、憲法解釈というか、現在憲法の問題となつている点は別として、まつたく公の支配に属さないものとして、将来完全に自主性を尊重して育てて行く方針であるか、あるいは公の支配に属するものとして、できるだけ監督を少くしてやつて行こうという考えであるか、この点をひとつ伺つておきたい。もしも公の支配に属さないものとするならば、先般問題になつたように、何らか私学に対する教育金庫というような、憲法解釈の方もからみましたけれども、そういう方向解決できるように、打開の道を講ずる必要があるのではないか。この根本的な考え方によつて、今後の努力方向が定まつて来ると思いますので、文部省の基本的な考え方を伺つておきたい。
  13. 久保田藤麿

    久保田政府委員 文部省は少くも憲法制定以来、私立学校は公の支配に属するものという考え方のもとに、また一方現在の私立学校の財政的な状況ということもからみ合せまして、絶対に助成を要し、しかも私立学校の財政的な基礎ができるだけ強固なものでなければならぬという建前から、本質的な助成をいたさなければならぬという建前で進んで来ております。
  14. 松本七郎

    松本(七)委員 その公の支配に属するものと考えられる根拠は、やはり公共性という観点からそういう建前をとられるのか、お伺いします。
  15. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御説の通り公共性という点からでございます。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 一般的な質問はこの程度にしておきまして、あと逐條審議終つてから後に、一般的な質問の留保だけしておきます。
  17. 原彪

  18. 今野武雄

    今野委員 私は主として大臣に対して質問したいと思うのですけれども、その前に政府委員に対して、一般の点について、ごく簡單な質問をいたします。  第一は、この法案の出されたいきさつを見てみますと、私立学校経営が困難である、それでそれに補助金を出すことが必要なために、何かその公の支配とか公共性とかいうことを非常に強調しておるように見えるのであります。しかし現在の私立学校経営状態を見ておると、たとえば国立の場合には、東京大学などでも授業料が一箇年三千六百円である。ところが私学の場合には、最低九千円、最高一万七千円といつたような状態であり、なおかつそれでも教員の俸給なんかは非常にわずかであります。私自身もある私立大学に最近まで関係しておりましたが、もうほとんど給料とは言えないような給料しか教授に対して出ないわけであります。そういうような非常に困難な経営状態にあるのです。従つて現在予算措置として考えられておるようなものをもつてしては、とうてい私立学校経営は成り立たない、こういうふうに考えられるのですが、その点についての所見はいかがなものでしようか。
  19. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御指摘通り、現在の私立学校財政状態が非常に苦しい、従つて授業料の面でも、官立の場合と比べて私立学校の方が割合に高く、俸給関係では、ただいまおつしやるように非常に薄いといつたような事実が、確かにあるのでございます。そういうような点を考え合せて、免税の問題にしろ、また收益事業を認めて行くにしろ、そういつた意味努力をいたしておるわけであります。
  20. 今野武雄

    今野委員 文部省としましては、私立学校経営というのは、授業料本体としてやつて行くことが望ましいと考えておるのか、あるいはそうでなくして、何か別途な方法が、特に日本において可能であると考えられるのか、その点をちよつと聞きたい。
  21. 久保田藤麿

    久保田政府委員 授業料自体私立学校経営できないということは、官公立学校状態をながめて、これが教育の問題でありますだけに、不可能だということはわかつております。従つて、もし学校に特別な基金的な性格のもの、またその学校を運営して行くに必要な收益を生み出し得るような收益事業ができ上つて、それらがむしろ本体で、授業料がそれをカバーして行くような形になるというのが一応筋だと考えております。
  22. 今野武雄

    今野委員 この法案において、学校自主性ということと公共性ということとが、何か矛盾するように考えられておるのは、今お答えのあつたようなことから出るのではないかと思うのです。特に今まででも世間では、いわゆる学校屋という言葉があつたほどであります。学校が何か営利機関であるがごとく考えられることもあつたわけであります。そういうものであるから、これは監督しなければいけない、こういうふうな観念が基礎にありはしないか。これでは日本教育を健全に発達させて行くということは、とうてい不可能であるというふうに考えられるわけであります。その点で、私立学校というものに対して、もつと根本的な措置、特にたとえば私立大学の場合などは、これはぜいたく物であるとか何とかいう問題ではなくして、これなくしては高等教育というものを現状維持することが不可能であるといつたような、そういう必要物に対して、一方では国立大学の場合には授業料三千六百円、他方では一万七千円、そういつたようなたいへんな授業料の違いが、出て来て、教育機会均等ということが非常に失われやすいということに対して、もつと根本的な措置が必要のように考えられるのでありますが、文部省ではそういう措置に対して、今どういうふうに考えておられるか伺いたいと思います。
  23. 久保田藤麿

    久保田政府委員 むしろ私立学校が営利的であつて、その営利的なことについての監督文部省がしなければならぬという建前のために、こうした監督事項また監督的な権限といつたようなものを持つ建前を、この私立学校法で出しておるのでは毛頭ございません。監督関係の仕事は、できるだけ自律的な考えで行わるべきだという建前のもとに、私立学校評議員会式のものを持つて来て、なるだけ役所的な形でなく、自律的な形を出して行きたい。一方私立学校審議会私立大学審議会といつたものも、まつたくただいま申したと同じ観点から、自律的な行動をお互いにとれるような形に持つて行きたいという建前をとつて出るのでございます。
  24. 今野武雄

    今野委員 あと質問は後にいたします。
  25. 原彪

  26. 稻葉修

    稻葉委員 文部大臣がお見えになつてからにいたします。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 この法案では、大学から幼稚園までを一本にして対象にしておるようですが、文部省としては、今後なお引続いてこういう態度私学に臨まれるのか、それとも大学だけでも切り離してやるというようなお考えがあるのか。
  28. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいま公立大学につきましての管理法が、委員会にかかつておりまして、それの進行なり、それによつて規定されて来る事実からその問題に発展しないと、明らかなことをお答えする段階でないと考えておりますが、この法案自体は、一応私立大学もそれ以外の学校と一括して考え態度になつております。
  29. 原彪

    原委員長 全般に対する御質疑はありませんか。  なければ逐條審議に入ります。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 逐條審議委員長から指定されますか。
  31. 原彪

    原委員長 全般審議をして逐條審議をして、そのあとでまた全般と個別の條項について再びおただしになるという行き方で行きたいと思います。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 委員長から條文を指定してやりますか。
  33. 原彪

    原委員長 指定してやります。
  34. 今野武雄

    今野委員 議事進行——これは全般に関する質疑で、大臣のが大分残つておりますから、一応これで打切つて出席を待つた方がいいではないですか。     〔「進行々々」と呼ぶ者あり〕
  35. 稻葉修

    稻葉委員 逐條審議に入られる場合には、全般審議を盡してからやられた方が、かえつて早く行くと思うのです。逐條審議をやつてから、また大臣が来られて全般審議をやりますと、逐條審議終つた箇條についても、どうしてももう一度逐條審議をやり直さなければいかぬという点が多々出て来ると思うのであります。それでは時間を二重にも三重にも使うことになりますから、かえつて進行は遅れるのじやないかと思います。ですからここで打切られて、先ほど理事会で日程に追加することになりました三つの決議案についてここでやつてしまつたらどうでしようか。
  36. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 今委員長が宣言されたあとでありますから、蛇足を加える必要はないと思いますが、御承知通り会期は非常に切迫しております。またこの私学校案を通してもらいたいという要望は、ほうはいとしてあるのであります。また実際の問題といたしまして、ちよつと休憩いたしますと委員会の部屋がとれないとか、速記がとれないとかいう関係もありますから、あるいはダブる点が出て来るといたしましても、大臣がいなくても進められる点について審議を進めるという方向で、委員長宣言通りにしていただきたい、こう考えます。
  37. 原彪

    原委員長 それでは逐條審議に入ります。  第一章について御質疑はありませんか。
  38. 松本七郎

    松本(七)委員 第一章の二條の問題です。これは第二章とも関係がありますが、ここで質問してみたいと思います。この私立学校に関する教育行政云々は「法律に別段の定がある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」とありまして、別段の定めがある場合は、それが優先するような規定になつているわけですが、そうすると教育行政に関するその次の規定は、ほとんど学校教育法條文をそのまま持つて来ておるような條文がここに出ております。この第二條規定によつて学校教育法というものが全面的に拘束力を持つて来る、このような解釈をしてさしつかえないか、この点をまず伺います。
  39. 久保田藤麿

    久保田政府委員 学校教育法が一応全面的に拘束することを避けるために、私立学校に関する教育行政及び学校法人について、この規定が先行するという態度を第二條は出したわけでございます。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、たとえば学校教育法の十條のごときも当然適用されることになりますか。
  41. 久保田藤麿

    久保田政府委員 適用するのでございます。
  42. 稻葉修

    稻葉委員 第一條の「この法律は、私立学校特性にかんがみ」とありますが、「私立学校特性」というのは、公立学校に対していうのか、あるいは私立学校というほかの、学術技芸に関するいろいろな団体で、学校でないものがありますが、その学校でないものと学校との特性考えて言つておるのか、特性ということはどういう意味であるか、お伺いしたい。
  43. 久保田藤麿

    久保田政府委員 この特性といたしました意味は、ただいま御指摘両方意味を含んでいるのでありまして、たとえば学校法人の問題が、民法の財団法人の問題だけでは不十分であるということを申しておりますのは、特に学校が他の公共団体というようなものとの特性考えておるわけでありますし、私立学校自体が、数の上からいつても、また現在果しております役割の上からいつても、特別な意味を持つておりますことを示したのであります。
  44. 稻葉修

    稻葉委員 他の法人との関係についての特殊性をも意味した法律というお話ですが、そうすると、ここにいう私立学校というのは、私立学校なのか、私立学校法人なのか、どちらの意味ですか。
  45. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ここで申しますのは当然第一次的には私立学校学校をさすわけでございますが、その本体を出して行きますために、学校法人というものがあるのでありますから、第二次的にはそういうものが出て来るものと了解願いたいと思います。
  46. 稻葉修

    稻葉委員 そういたしますと、第一條の「私立学校」というのが、二つ意味を持つているとすれば、もう少し明確に私立学校及び私立学校法人特性にかんがみと、なぜしなかつたのですか。
  47. 久保田藤麿

    久保田政府委員 私立学校自体は、学校教育法要求に基いて、一応その設立を特定の法人にしなければならぬという関係が出ておるわけでありまして、他の條文がまたその法律的要求を受けて、私立学校に対する法人関係と、学校自体関係などを出して行かなければならない。私どもが第一次的に考えます問題は、学校自体でありますので、第一條では「私立学校」だけで十分ではないかと考えたのであります。
  48. 稻葉修

    稻葉委員 そうしますと、これは不明確ではありますが、「私立学校特性」ということは、主として国立学校に対する特性をここに意味しているのじやないかと思います。その両方を含むというのですが、今の御回答ではどうも私立学校特性、すなわち国立学校に対する意味においての特性にかんがみという方に重きを置かれておるようです。それならば国立学校私立学校との本質的な差別はどこにあるのか、どういう観点から特性ということを特にここにあげられたのか、お聞きしてみたいと思います。
  49. 久保田藤麿

    久保田政府委員 国立学校私立学校の差異に特に重きを置いて第一條ができていると申し上げたつもりではございませんで、第一條は、その意味ももちろん持つておりますが、それ以外の面、第二の学校以外の社会的な団体、社会的な構成といつたようなものに対しての特性意味していると、先ほど御返事申し上げたと思うのであります。わざわざ国立学校との関係だけを限つて説明をしろということでありますので、私立学校の場合には、私立学校を規制するものは、私立学校自体が行う寄付行為、あるいは学校の中の学則といつたようなもの以外には、この法案と、現にあります特別な学校についての一般法的なもの以外にはないのであります。ところが国立関係公立関係学校では、その予算性格なり、あるいは政令などから来る特別な拘束が、それぞれについているわけでありますので、ここで言いますあらゆる拘束的な関係というようなものは、国立との間には全然無関係であるというのが焦点であると考えます。
  50. 原彪

    原委員長 第一章総則に対する御質疑はありませんか。
  51. 稻葉修

    稻葉委員 ありますが、大臣がお見えだから、逐條審議をやめたらどうですか。
  52. 原彪

    原委員長 第一章に対する御質疑を終了してからにいたします。
  53. 今野武雄

    今野委員 第一章第一條に「その自主性を重んじ、公共性を高めることによつて私立学校の健全な発達を図る」と、こう書いておりますが、その自主性を重んずることと、公共性を高めるということは、この内容をずつと読んでみますと、何か矛盾するような、ぶつかり合うようなところがあるように考えられるのであります。具体的なこの法の適用の場合に、公共性を高めるというような、そういう主張のために、自主性が阻害されるといつたようなことが起つた場合には、一体どちらが重んぜられるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  54. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいまの御質問は、自主性公共性が矛盾する場合を、どう考えるかというお尋ねと考えるのでありますが、私立学校自体が持つております自主性自身が、実は公共性の範疇に入つておる、むしろ公共性の方を主に考えて行くべきだと思います。
  55. 今野武雄

    今野委員 公共性が主ですか。憲法に保障されている数々の基本的な人権というようなものの一部分が、やはりここで言われている自主性であると私は考えるのであります。そういたしますと、この公共性というのはそういうような自主性を促進するようなものでなければならない、こういうふうに考えるのでありまするが、もしそうでなくして、今のように公共性を高めるというようなことになると、これは憲法論議ではありませんから、詳しくは申しませんけれども、いわゆる福祉国家的な考え方といいますか、警察国家的な考え方、こういうようなものになるおそれがあるように考えられますが、その点はどういうように考えておるのですか。
  56. 久保田藤麿

    久保田政府委員 そのことの解決を端的にはかる形を出すために、私立学校に特に従来あるよりも多い役員を要求したり、また評議員会をつくつたり、私立大学のために私立大学審議会を、一般私立学校のために私立学校審議会を置きまして、その間の調節をし、また公共性が高まるに従つておのずから自主性もそこに持ち得るといつた形をそこに出したのであります。
  57. 今野武雄

    今野委員 重大な問題でございまするから、重ねて確かめておきたいのですけれども、そうするとこの二つのものの中で、公共性が優先するというお考えをお持ちであると、こう解してよろしいのでありますか。
  58. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 公共性自主性との関連というような問題は、学問的になかなかむずかしい問題ですが、われわれの解釈といたしましては、自主性というものは、やはり公共性を含めて考えられていると思うので、あまりそうはつきり公共性を含まない自主性というようなことは、考えておらないのであります。従つて一応そこには調節、が必ずつくものとして考えております。
  59. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 実は先ほど文部大臣に対する質問が留保されておりますが、その点についてであります。実は今日で委員会が十回か十一回目でありますが、委員会最初段階におきまして、文部大臣に対する全般的質疑、すなわち文部行政に対する全般的質疑は終了しておるのでありますから、本日は文部大臣に対する質疑とは申せ、この私立学校法案関連のある部分のみに対する質疑に限定していただきたい、委員長において適当に御処置を願いたい。
  60. 原彪

    原委員長 ただいまの岡君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 原彪

    原委員長 それではさよういたします。  文部大臣が御出席になりましたので、文部大臣に対するこの法案を中心とした全般的な質疑に入りますが、第一章の質疑はこれで……。
  62. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 先ほどから松本君が御質問せられたのでありますが、第二條の「私立学校に関する教育行政及び学校法人については、法律に別段の定がある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。」こういう規定でありますが、これは後段における規定解釈の上において非常に疑義を持つのでありますから、この第二條は削除した方がはつきりするように思われるのであります。この点について当局の意見を伺いたいと思います。
  63. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいま御指摘通り、第二條は第五條及び第七條との関係において、多少あいまいな点がございますので、一応第二條は削除して、第五條の上に第二條の削除から来る当然の不足分を補うことで解決をはかりたいと考えております。
  64. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 私はそういうことを希望いたします。従いまして第三條が第二條ということになるわけでありますが、第三條の四項を創りまして、次の一條として第四項を第三條にする、こういうようにした方がはつきりすると思いますが、この点についても御意見を伺います。
  65. 久保田藤麿

    久保田政府委員 お指摘通り修正させていただいたら、明確になろうと考えております。
  66. 原彪

    原委員長 それでは第一章に対する質疑はこれで終了いたしました。  文部大臣に対する質疑を許します。
  67. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 松本氏からこの点も御質問があつたのでありますが、私もこれに関連いたしまして大臣に御質問申し上げたいと思います。  この私立学校法案大学、高等学校、中学校、小学校、幼稚園を一括しての私立学校法案でありますが、大学は学術研究の機関として他の学校と異なる特殊の使命を持つておるのであります。この点から大学とその他の学校を一本の法律規定することはおもしろくない。具体的には、一本で規定するがゆえに、第五條第二号の規定や、事理や評議員の規定、また第五十九條の規定のようなことになるのでありますが、大学だけを別の法律規定いたしますると、この点がかわつて来ると思うのであります。  次に、大学の所轄庁は文部大臣であり、その他の学校は地方庁であるということ、また審議会につきましても、大学とその他の学校とは、この私立学校法においても別々に規定されておるのでありますが、こういう点は、別の法律規定した方がよいように思われるのであります。また貸付を受くる場合は、大学は担保を設定いたしまして、その担保物件には火災保険をかける、かつ五分五厘の利子を付して返済するものであります。これに対しまして第五十九條第三項の一号ないし三号の監督を受けることは不適当であると思います。  また私立大学審議会の構成及び構成の方法について、各大学の意思及び各大学教授会の意思が反映するように措置をしてもらいたいという希望が多いのであります。これについても、大学だけは別に法律規定することが望ましいのであります。また大学は学術研究の機関として特殊性を持つているので、大学の権威の上からいつても、各種学校や、幼稚園と同じ一本の法律規定されることは適当でないと思うのであります。またこの私立学校法案の中から、以上申しましたような理由で大学規定だけを抽出して、これを大学の本質から、再検討して、私立大学校をつくつてもらいたいという希望が非常に多いのでありますが、この点について大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
  68. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お答えいたします。文部省といたしまして、この法案の中に、すべての学校を含めて規定をいたしました理由は、大体この法案の骨子は、法人に関する監督、こういう点が中心になつておるところから来ておるのであります。法人という立場から言えば、大学もその他のものも同じであるというところに中心があるわけであります。従いまして、今お話のような点も、確かに学校のグレードによる相違ということも考えなければならないことでありますけれども、そこは内部の規定によりわけて、全体としては一つの法律にしよう、こういうことでできておるわけであります。しかしお話がありましたように、常識的に考えましても、幼稚園というものと大学というものとは、根本的にその内容、性質の違う点がありまするので、その点はよく研究をいたしまして、今お話のような点を考慮して、文部省といたしましては、大学については特に、なお研究考慮をすることにいたしたいと思います。
  69. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 ただいまの大臣の御答弁により、大体了承するものでありますが、私ども私立大学につきましては、大学の本質にかんがみまして、別途の法制的措置を講ずるように当局に要望したいのであります。必ず別途の法制的措置を講じてもらいたいということになりますと、いろいろ支障があるかと思いますが、講ずることを特に当局において御考慮をしていただきたい、私はこういう要望を持つているのであります。この点御意見をお伺いいたします。
  70. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 この法案の構想については、先ほども申した通りでありますけれども、ただいま水谷委員のおつしやつたような意見希望が各方面で非常に強く出ておるということを考えますと、なお考慮すべき点がおると思います。従いまして、ただいまお話大学について別途の法律措置を講ずるという点につきましても、文部省としてよく考究をすることにいたしたいと思います。
  71. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 了承いたしました。
  72. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいま文部大臣の御答弁によりますと、法人を対象にした場合であるからこれを一本にしてよい、しかし教育行政というものが主になつて来れば、大学を別途に考慮する余地が大いにある、このような、お考え承知してよろしゆうございますか。
  73. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 大体そういう考えであります。ただしかしながら、私立学校学校行政については、文部省としても、自主的な運営を希望しているわけでありまして、この点は国立大学に対する管理法というようなものとは、全然違つたものでなければならないと思うのであります。大体大学に対する法律措置を特に考究するという意味は、大学は他の学校に比べて特殊な性質地位を持つているという点から、文部省学校との関係につきましても、別途の考慮が必要である、こういう意味であります。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 自主性公共性ということにも関連するわけですが、この法案中にある例の審議会の性格、これを諮問機関にしないでもつと強力な決議機関にするような構想はお持合せないのですか。
  75. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 ただいまのところは、その考えは持つておりません。
  76. 今野武雄

    今野委員 大臣にお伺いいたしたいと思います。先般朝鮮人の建てた私立学校に対しまして、解散命令とか、あるいは法人の設立に対して種々なる條件、たとえば法人の役員等がある団体の者であつてはならないというようないろいろな條件がついておるのでありますが、この法案などを通覧いたしましても、そういう條件をどういう法的根拠に基いてつけるか、非常に了解しがたいのであります。一体どういう法的根拠によつてああいう條件をつけたのか、その点についてお伺いいたします。
  77. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいま御指摘財団法人を設立いたしますについての條項は、この法案からは、およそ出て来ないのが当然でございまして、現在財団法人監督規定といつたようなものがありますのと、もう一つは、団体等規正令から出て来ます関係において、一応拘束される條件をつけたにすぎません。
  78. 今野武雄

    今野委員 たとえば、今後日本人が私立学校を建てる場合についても、やはりそういうような団体等規正令の拘束を、法人設立について受けるのかどうか、お伺いしたい。
  79. 久保田藤麿

    久保田政府委員 解散を命ぜられた団体関係でございますので、日本人の場合も朝鮮人の場合も、まつたく同様に扱わざるを得ないと考えております。
  80. 今野武雄

    今野委員 その点はあとにいたしまして、次に大臣に、先ほど政府委員にお伺いしたのですけれども、重ねてお伺いいたしたいことは、現在日本私立学校というものは、財政的に非常に困難がある、ことに基礎が十分でないというのが定評であります。そのために、いわゆる学校屋という言葉が社会に通用しているような状態でありまするが、こういうような法律をきめ、またそれに従つて国家で補助を與えるというだけでは、そういう状態は決して救済できない、こういう見解を持つものですけれども大臣は、日本学校教育というものを確立する観点から、私立学校に対して、もつと根本的に考え直すお考えはないかどうか、お伺いしておきたい。
  81. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私立学校については、いろいろの私立学校がありまして、お話のように教育的見地から申しますと、非常に運営に欠陥のあるような学校も、確かにあることは事実であります。それらは文部省といたしましては、学校教育法等に準拠いたしまして、その内容を充実し、りつぱな学校にして行くように、指導して行きたいと思つております。また学校設立等の場合には、設立者の点、あるいは財政的基礎の点等を考慮して、文部省としては態度をきめなければならない。それらの点について今まで十分の考慮が拂われなかつた点もあつたのじやないかと思います。そういうような点からも、文部省は、やはり私立学校法案で、教育的な見地から私立学校に対してある程度の助言監督のできるような地位にあることが必要だと思つております。
  82. 今野武雄

    今野委員 お答えが私の質問と少しずれたように考えられますので、さらに詳しくお伺いしたいのですけれども、先ほども申したのですが、現在国立大学授業料は三千六百円、私立学校の場合は最高が一万七千円というのがあるようであります。こういうような状態でいながら、教員の給與はまことにお話にならないようなものである。千二百円とかあるいは二千円とかいうような、教授であつてそういう俸給を受けておる者が多数あるのです。そういう状態でありますし、一方学生は非常な困難に陥つて、多数の者がいわゆるアルバイトをしなければならない、それでもなおかつ学業が続けられない、こういうような状態である。主としてこういう経済的な問題について、もつと助成する方法がないものかどうか、それについて助成するには、学校というものに対して、もつと根本的に考え直さなければいけないと思うのだけれども、その点はどうかという、主として経済的な問題についてお伺いしているのです。
  83. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私は私立学校というものは、やはり自主独立でやれるような基礎を持つのが理想的だと思う。ただ日本は敗戰の結果、現在はいろいろな特殊な事情が起きておりますし、経済的にも特別に例外的に困難な事情もありますので、国庫の補助もぜひ必要な場合が相当あると考えますけれども、現状といたしましては、やはり私立学校というものは財政的にも独立をして、独自の立場で独自の校風をつくつてやるのが理想的であります。従つてりつぱな私立学校をつくつて行こうという目的でもつて国庫が補助をすることは、適当でないと考えております。
  84. 今野武雄

    今野委員 その点に関して、たとえば私立学校財団に対する寄付行為などに対する免税といつたようなことは、一体考えられておるかどうか。またいつそういうものが実現できる見込みがあるか、こういう点について伺います。
  85. 久保田藤麿

    久保田政府委員 寄付に対する税金の関係、これは私立学校の財政関係について一番基本的な問題でございますので、かねがね文部省でもこれが必要な措置をやつて来ておるわけでございますが、幸いに先般のシヤウプ勧告の線にも、この点は明確に指示されておりまして、ただいま私ども関係者との間で、次の通常国会までには、そうした関係を明確にしたいという段取りで進めておる次第でございます。
  86. 稻葉修

    稻葉委員 ただいまの点にも関連いたしますが、本法は私立学校公共性を高めることを目的といたしておるのでありますが、その公共性に害がありはしないかという疑いを起させる点があります。その最も重大なものとしては、学校法人に対して財政的基礎を強固にする一つの助けとして、教育上支障のない限り收益事業を営むことができる、——收益事業と申しまするか要するに営利事業を公共性ある学校法人が営むということは、いろいろな弊害が起りはしないかという点が危惧されますが、この点について、文部大臣はいかようにお考えになつておられるか承りたいと存じます。
  87. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お話のありましたように、学校の財政的基礎が十分確立されておるならば、そういうことは、むろんしない方が、教育上いいだろうと私は思つております。けれども、財政的基礎がそれほど十分でない場合には、教育上支障のない限りは、これを許すことも必要であろうという立場で、こういう規定ができておるのであります。しかし教育上支障のないという限界がありますから、どんな営利事業をやつてもいいというわけではありません。それで、どういうことが教育上支障があり、また支障がないかということは、審議会等において十分愼重に考えることになるだろうと思います。
  88. 稻葉修

    稻葉委員 教育上支障のないという限界が、いかなる範囲まで許されるか、その認定は、審議会に諮問するけれども、結局文部大臣の認定によつて決定されることになりますれば、この点から、失礼ながら文部当局の官僚主義的な強い制限が、また再び私立大学等に逆に加えられて、自主制が破壊せられるチャンスを與えて、そうして常に文部省私立学校、殊に私立大学との間に紛争の起る源をつくるように思います。この点は、わが国教育上常に平和を保つことができないゆゆしい問題でありますので、愼重な考慮を要する点だと思いますが、そういう点で、先程今野委員からも質問なつた、あるいは松本委員ですか、質問せられました、少くとも大学審議会につきましては、これを諮問機関とせずして、決議機関とすることによつて、この点に関する官僚統制と私学自主性との紛争を遮断するという用意があつてしかるべきだと存ずるのでありますが、この点について文部大臣の意見を承りたいと思います。
  89. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 その点につきましては、最初の御質問の場合とちようど逆のような御意見になるのじやないかと思うのです。最初の御質問は、私立学校の中で、それをむしろ濫用して、教育上悪い影響を及ぼすということを起しはしないかという御心配のようであつたと思います。そういう危険も確かにあるのです。ですから、やはり自主性が——ほんとうにそういう心配がなくやられるという場合ならばいいのでありますけれども、実際はなかなかそう行つておりませんから、やはりそういう弊害のある場合に対しては、何らか防ぐ方法を講ずる必要があるわけで、文部大臣がそれを認定するといたしましても、審議会の委員の意思に反してやるということは、今日の時代においては、もうなかろうと思つております。また文部当局が官僚的と言われますけれども、前は存じませんが、このごろでは相当頭も切りかえておりまして、決してそんな独断的なことをやることはないと考えておりますので、審議会があつて、その意見を十分聞いてやるという程度が一番いいと私は思つております。
  90. 稻葉修

    稻葉委員 ただいまの点につきましては、真に濫用を防ぐと同時に、その濫用を防ぐやり方が行き過ぎると、自主性を害する。それで文部大臣の今の御答弁は、今日の文部当局は、決して諮問機関の答申を無視してやる意思はないと言われますけれども、私は制度としてそういうことがいけないと言うのであつて、将来そういう——今の文部大臣は決してそういう官僚主義的じやないという点は認められても、文部大臣がかわられて、官僚主義的な人になつた場合、制度としてそういうことが可能であり、しかもそれが合法的になるということでは、非常に困る、こういう点をお尋ねしているのでありまして、私の質問の真意はおわかりと思います。
  91. 渡部義通

    ○渡部委員 やはりその点関連してですが、この私立学校審議会委員の任命から議事の手続、その運営に至るまで、都道府県知事の承認を経てなされるという点は審議会そのものの性質を非常に官庁的な、あるいは官僚的な形で制約するという結果になりはしないか。たとえば委員の選挙においても、委員の構成においても、私立学校から選挙されたそのものだけでいいのじやないか、選挙だけでいいのじやないか。従つてそういう審議会の議事の手続とか運営とかということも、まつたく自主的な形でなされてもいいのじやないか。こういう点が公共性だというならば、公共性というものの性質が官僚的な統制ということになりはしないか。この点を第一にお尋ねします。
  92. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 審議会の議事の手続とか運営ということは、第十七條では「都道府県知事の承認を経て、私立学校審議会が定める。」こういうことになつておるわけでありますから、都道府県知事が横暴にかつてにこれをきめるということはないと私は思つております。
  93. 渡部義通

    ○渡部委員 さきに申し上げた私立学校審議会というものを、知事や大臣の任命によるのではなくて、選挙である方がいいのではないか。選挙によらないで任命するというところに、公共性を持たせるという意味が含まれておるのだとすれば、このような公共性は、私立学校に対する官僚的な統制を意味するのではないか、この点をお伺いします。
  94. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 その点は、意見の違いだと思いますが、あまり今までのやり方がよくなかつたという点があつたという点から、都道府県知事とか、文部省というものを信用なさらぬということも、行政の秩序という点から言うと、おもしろくないことでありまして、そういう乱暴な知事、大臣があつたならば、やめてもらえばいいのでありまして、(笑声)相当やはり信頼して行く必要があろうと思います。
  95. 渡部義通

    ○渡部委員 先ほどの朝鮮人学校関連しての問題ですが、朝鮮人学校が閉鎖されたのは、主として朝鮮人連盟が団体等規正令によつて解散されたことに関連しておるのか、あるいは私立学校に関する法規に抵触するところがある、その制約を受けなければならぬという点から、解散あるいは閉鎖を命ぜられたのか、この点をお聞きします。
  96. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 その点は私たびたびお答えしたと思うのですが、朝鮮人学校に対する措置に二種類ありまして、第一種の方は、朝鮮人連盟の直接設立経営にかかるものに対する措置であります。これは団体等規正令によりまして、朝鮮人連盟が解散された結果といたしまして、経営、主体がなくなりましたので、廃校になるわけでありますから、ただちに閉鎖を命じたわけであります。  第二種の方は、朝鮮人連盟の直接設立経営にかかわらぬものであります。これは朝鮮人連盟が解散されたからといつて、当然に閉鎖されるというものではありません。しかし団体等規正令によりまして、解散団体の構成員四分の一以上を持つておる団体として、同じようにされるというような規定になつておりますので、これを排除しなければいけない。それからまたそれらの学校におきましても、解散団体の朝鮮人連盟の教育的な支配が事実相当にあつたのであります。これを排除しなければいけない。それから学校教育法に基きまして、いろいろの整備すべき條件がありまして、それが満たされておらないから、これを満たすように——それができないというところから閉鎖を命じたのでありまして、第一種につきましては、解散の結果、自然にそういう結果になります。第二種の方は、学校教育法規定に基いて閉鎖を命ずる、こういうことになつております。
  97. 原彪

    原委員長 委員長から渡部君の質問関連して一言お聞きしたいのですが、朝鮮人学校の事後処理につきまして、文部省はいかなるお考えを持つておられるか、新聞紙上によれば、文部省より通達を発せられて、各小学校にその児童を吸收するように、また吸收し切れないものは分校をつくるようにという達しがあつたやに承るのであります。たとえば昨日は岡山県から陳情が参つたのでありますが、岡山県では朝鮮人の兒童が約二千名、どうしても分校をつくらなければならない、分校だけで五校もつくらなければならぬということを陳情に参つておるのであります。もし分校をつくろうとすれば、地方財政だけではとても困難でありましようし、これに対する予算措置ということも、考えなければならぬと思うのでありますが、そういうことについて、どういうふうな事後処置をお考えになつておるか、ちよつとお聞きしたい。
  98. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいま御指摘の、朝鮮人の收容についてでございますが、一応文部省から地方にお願いいたしましたことは、およそ人種なり年齡なり性別といつたようなことで区別しないという建前をとります関係から、おのずと学区に従つて分散されて收容されて行くのが、本筋でございますので、そういう形で收容していただくことをお願い申したのであります。ところが、ある大きな集団があつたり、またその建物の利用関係から考えまして、むしろ分校をつくつた方が双方に好都合であるといつたような関係の場合に限つて、分校をやむを得ず認めて行く、ただいま申しました第一の原則に対して、やむを得ず認めて行くという形で行かざるを得まい。そうした場合の分校についての予算的な始末、また非常に多くの人を收容する関係から、たとえば一つのクラスに三人入つて来たから教員が一人ふえるといつた事実はございませんが、たまたまそこに大きな集団を引受けるという問題になりますと、そこにすぐ教員の問題が起つて来るわけであります。それらのものにつきましては、一応予算的な始末をだんだん進めて行きたいと考えまして、建物の関係につきましては、ある程度措置ができると考えております。ただ定員が増しましたについて、教員が増して行きます関係については、本年度の予算の補正関係では、多少時間的に間に合いません関係から、十分な始末ができておらぬかと考えております。
  99. 渡部義通

    ○渡部委員 今の委員長質問が、私の質問の第一の内容になつてつたわけでありますが、同時にそれに関連いたしまして朝鮮人側では、今述べられたような事情から、非常に混乱を来しておる。他面では依然としてやはり私立の学校をつくることを求めておる。これは朝鮮人一般の非常に強い要求でもあるわけであります。このような場合に、もしこの私立学校法が成立しまして、朝鮮人の私立学校にこの法案が準用されるような形をとる場合には、朝鮮人独自の私立学校というものが承認されるのかどうか、この点を大臣からお聞きしたいと思います。
  100. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 この前も松本さんから、やや似た質問がありまして、文部省としては、朝鮮人の学校を全然禁止しなければいかぬという態度で行つておるわけではございませんで、学校教育法にのつとつて、十分に義務教育がやれるということであれば、これは認めるという方針で行つておるわけであります。従つてこの私立学校法等も、朝鮮人についても同様に考えられるわけでありますから、日本私立学校についても同じように、十分の基礎と内容を持ち、そうして義務教育をやるについて少しも心配がないという條件があれば、むろんこれは認める方針であります。
  101. 渡部義通

    ○渡部委員 義務教育でない場合、日本私立大学とか、高等学校、中等学校というような場合にもごの法案によつて同じ権利義務を持ち、従つて国庫補助等も與えられる、こういうのですか。
  102. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 義務教育以外の私立学校についても、同じに考えております。
  103. 稻葉修

    稻葉委員 先ほど、大臣がおいでになる前に、松本委員から御質問なつた点でありますが、憲法第八十九條の解釈問題について、公の支配に属するというのが、文部当局の御解釈として決定されておるようであります。かつて私学の財政的基礎を強固にするために、国会において教育金庫法というものが立案せられたことがありました。そのときに、ほとんど衆参両院とも意見が一致して通過の運びになつた時代がありましたが、関係方面から、この点について、私学は公の支配に属しないという解釈のもとに、教育金庫法が遂に上程を見るに輩らなかつたいきさつを私どもは聞いております。そうしますと、その後文部省関係方面との折衝の結果、文部省解釈の、公の支配に属するものであるという点について、関係方面の完全なる了解があつたのでありますかどうか、その点について、もし御交渉がありましたならば、お聞かせ願いたいと思います。
  104. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 憲法規定の、公の支配に属するという点で、私立学校考えて、補助等ができるかどうかということにつきましては、意見が実は一致しておらないのであります。日本人の間でも、必ずしも意見は一致しておりませんし、あちらも意見が一致していない。しかしこの法案ができますれば、これによつて当然憲法違反でなく補助ができる、こういうことになるわけで、この点は関係方面とも十分に了解がついております。  それから教育金庫法についてのお話がありましたがあれは公の支配とは、実はあまり関係がないことであります。国庫から補助するという場合に、公の支配との関係から非常に困難があるというような点で、ああいう金庫をつくつて貸し出すということになれば、これは公の支配関係なくできるという意味でもつて計画されたわけであります。しかしそれは、現在でも文部省は、そういうことも必要だということは考えておりますけれども、今までのところは、財政的その他の事情でもつて、実現されない状態であります。
  105. 稻葉修

    稻葉委員 そうすると、この私立学校法が通ることによつて、この私立学校法案についてはオーケーをよこしたわけでありますから、これが制定されることによつて関係方面の私立学校に対する見解も、憲法第八十九條のいわゆる公の支配に属するものとして、将来これについては国庫金の助成をなし得るものという解釈が確定するわけでありますか。
  106. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 この私立学校法案によりまして、私立学校については、憲法のその規定に合致するものと、向うも認めておるわけであります。
  107. 原彪

    原委員長 時間が切迫しておりますので、簡単に願いたいと思います。
  108. 今野武雄

    今野委員 先ほど大臣は非常に重大なことを言われた。それは、大臣や知事や、いわゆる官僚を信用されないようになつては困るというようなことを言われたのですが、先日も自由討論において、民主自由党の某氏が言つておられたのですが、どうも官僚は、衆議院や何かに出て来れば処女のごとく、その他の場合においては、まるで傲然たる支配者のごとき権利を持つておる、こういうようなことを言われた。それで、その実情を見ましても、朝鮮人学校の解散の問題にしても、解散させておいて、そのあとの始末は何もしないということが現実としてある。六・三制の問題でもそうです。二十二年度、二十三年度の建築にかかるもので、非公共事業になつているものが二万二千教室、これは補助を受けている。最初から補助を受けているものの三分の二に達する。しかもそういうものに対して二十四年四月三十日以降のものしか今度の追加予算では認めない。こういうような無責任な態度をとつておるというようなことから、その他あらゆる場合に、たとえば教育費の配分の場合に文部省に参りますと、地方の人はぺこぺこ頭を下げて、文部省の課長が傲然としてそれに応対しておるというようなところを見ましても、実際信用しがたいような実情があるわけでございます。現実の問題として、そういうことを考慮して考えると、この監督的な規定が非常に強く響くわけだからこそ、物議をかもしているわけだ。その点を文部大臣は声明なり何なりで、はつきりさせていただきたい、こういうように感ずるのであります。
  109. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 もし文部大臣あるいは文部省当局に、そういうはなはだ不親切な官僚的な横暴なところがあるとすれば、むろん是正されなければならないのでありまして、そういう点については、あくまで私は是正するという態度でやつております。     —————————————
  110. 原彪

    原委員長 この際委員会の構成の問題につきまして、一言申し上げたいと存じます。  理事の柏原義則君が辞任されましたので、ただいまより理事補欠選挙を行いたいと思います。  理事の選挙はその手続を省略して、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 原彪

    原委員長 御異議なしと認めます。それでは高木章君を理事に指名いたします。(拍手)     —————————————
  112. 原彪

    原委員長 なおお諮りいたします。日程を追加いたしまして、野坂參三君外三十五名より、六・三制完全実施に関する決議の実行に関する決議案苫米地義三君外二名より、科学技術振興に関する決議案及び野坂參三君外三十五名より、古美術保存に関する決議案提出されております。以上三案は、いずれも十一月二十二日本委員会に付託された議案であります。これより三案を一括して議題とし、提出者の提案理由の説明を求めることにいたしたいと思いますが、右日程の追加に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 原彪

    原委員長 それでは提案者の理由の説明を願います。まず今野武雄君。
  114. 今野武雄

    今野委員 では指名によりまして、六・三制の完全実施に関する決議の実行に関する決議案の趣旨弁明をいたします。  最初決議文を読み上げます。    六・三制の完全実施に関する決議の実行に関する決議案   教育振興の基本制度である六・三制は現在未曽有の危機に直面し、全国的に深刻な不安と混乱を惹起している。   政府は、この現状とその将来に及ぼす影響を考慮し、前国会において本院で満場一致可決した「六・三制完全実施に関する決議」の主旨を実行するため、本国会会期中に、六・三制完全実施のための有効適切かつ強力な予算措置を講じ、全国民の要望に応えるべきである。   右決議する。  以下趣旨を申し上げます。六・三制の完全実施が重要な問題であることは、申すまでもありません。それでこの前の第五国会においても、満場一致で完全実施に関する決議案を採択したわけでございます。ところが今度政府は、追加予算として十五億、次の予算としましては二十五億とかあるいは四十五億とかいろいろと説がございますが、ともかく四十億ないし六十億程度予算を計上して、事によるとそのままそれだけで予算が打切られるのではないかというふうにも考えられておるわけであります。文部当局の説明を聞きましても、あるいは予算説明書などを見ましても、四十億あれば必要な最小限度だけはともかく整う、こういうことがうたつてあるのでございます。  しかしながら現実に申しますと、この二十四年度の当初予算が打切られたために、非常にたくさんの地方財政の犠牲が出ておる。その資料を文部省に求めましたところが、それに基いて勘定してみますると、二十二年度、二十三年度において建てました新制中学のうち、非公共事業になつておるものが二万二千四百教室あるのであります。これに対する補助額を勘定してみますると、半額国庫補助といたしまして大体六十七億のものが補助を受けてないことになるわけであります。このことは、非常な苦労をして熱心に学校を建てた、その結果個人的な借金まで負つたような人たもあるわけでありまするが、そういう公共団体や個人を犠牲にし、たいへんな目にあわせておるわけであります。  のみならず、現在の中学校の生徒数を見ますると、大体四百九十万、これに必要な教室を勘定してみると、およそ十一万教室でありまするが、予算措置の講ぜられた教室数は三万三、四千にしかすぎません。そういたしますと現在各地において新制中学が独立校舎としてどこでも建てられておる、またそういうことが積極的に進められておる、こういうような現状において考えますと、ほとんどその残りのものが補助なしに建てられることになるわけでございます。そこへもつて来て十五億円というものがここに出て参りましても、わずかに四、五千の教室ができるにすぎない。それではとうてい焼け石に水であります。  そこで第一には二十二年度、三年度に建てた——二十四年度の予算でもつて補助をするというようなはつきりした約束ではなくても、そういうような建前で建てたもの、そういうようなものに対して補助を急速に與えること、これによつて政治の信用というものを回復しなければならないと思うのであります。  それから第二には、現在非常にたくさんのものが不足しておるのだが、そういう教室を急速に建てて、そうして六・三制を完全に実施する。そういう二つのことをぜひともやつて行かなければいけない。  これが六・三制の完全実施に関する決議の実行に関する決議案をあらためてここで提出する理由であります。  簡單でありますが、これで趣旨弁明を終ります。     —————————————
  115. 原彪

    原委員長 古美術保存に関する決議案の趣旨弁明を願います。渡部義通君。
  116. 渡部義通

    ○渡部委員 古美術保存に関する決議案についてまず決議案文を読みます。    古美術保存に関する決議案   われらの父祖が、ゆう遠な歴史の経過に創造し伝えて来た民族的文化遺産たる古美術を完全に保存して、後代に伝えることは、われわれの民族的義務である。   しかるにその古美術は荒廃のままに放置され、政治や国民的関心の外におかれている実情にある。この状態こそ法隆善、松山城、松前城に起つた不幸の根本原因であつた。   よつて政事府は、この現実を直視し、この民族的義務を回避することなく、古美術保存のために、有効適切な措置、特に予算措置を本国会会期中に講ずべきである。   右決議する。  説明は、時間もございませんから、略して、御質問があれば答えます。     —————————————
  117. 原彪

    原委員長 次に科学技術研究振興に関する決議案の趣旨弁明を求めます。稻葉君
  118. 稻葉修

    稻葉委員 科学技術研究振興に関する決議案の趣旨弁明をいたします。苫米地義三君外二名の提出であります。  まず主文を朗読いたします。    科学技術研究振興に関する決議案   科学技術の振興は産業興隆の基事盤であり、人類福祉の源泉である。又、科学技術研究のかくかくたる成果がいかに国際親善に寄與し、いかに国際文化の発展に貢献するかは、ノーベル賞の受賞者湯川秀樹博士のかがやける業績に徴して、既に明白である。   わが国が優秀な科学技術研究者を多く国内に擁しながら、その成果の未だ必ずしも世界各国に比して、充分でないゆえんは、研究施設や研究費の極めて貧弱微々たるがためである。政府は、平和日本の重要な責務が科学技術による世界的貢献にあることを認識し、科学技術振興のため、至急左の措置を採ることを要望する。  一 科学技術の研究、試験、工業化及び発表に関する交附金、補助金、奨励金を飛躍的に増額すること。  二 民間研究所の窮乏を打開するため、大幅の助成措置を講ずること。  三 研究用機械、図書の輸入を促進すること。  四 研究者の待遇を至急改善すること。  五 政府は次期国会において、採りたる措置を衆議院に報告すること。  右決議する。  趣旨を簡単に弁明いたしますと、わが国の科学技術の研究者が、非常に国内には多いけれども、その研究費等がきわめて少いために、生活に追われて、研究に没頭できない。また研究施設も少い。これを増強するならば、その産業振興への寄與貢献はきわめて莫大なものがあつて、たとえばペニシリンの研究のごとき、わずか四百万円を投じたことによつて非常に生産も上り、その値段も非常に安くなり、国民の健康の上に非常な貢献をしたことは、すでに実績によつて明白である次第であります。  そういうわけでありますから、文部省といたしましては、この補正予算が組まれる際でしたか、二十五年度予算においてでしたか、はつきり覚えておりませんが、十一億何がしの科学技術振興助成金を要望したはずである。しかるに予算面にはこれが大幅に削減せられているということは、はなはだ私どもの遺憾にたえない次第でありますので、この際この決議案を上程いたし、国会の科学技術振興に関する熱意を明らかにしたいというのが、本決議案の根本的の趣旨であります。  その具体的な内容に関しましては、もし御質問でもあれば、資料を持つておりますから、申し上げたいと存ずる次第であります。
  119. 原彪

    原委員長 これより三決議案の審査に入りますが、審査は後に譲ることとし、午前中の審議はこれにて瞬時休憩いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 原彪

    原委員長 それではこれにて休憩することにいたします。午後は部屋がとれ次第、二時より開会いたしたいと思います。     午後零時五十八分休憩     午後四時十二分開議
  121. 原彪

    原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  私立学校法案に対する逐條審議を継続いたします。第二章私立学校に関する教育行政について。
  122. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 さきの第二條を削り、第三條を修正をするといたしますと、それに関連して第五條でありますが、これをこんなふうにひとつかえなければならぬと思うのであります。すなわち「第五條 所轄庁は、私立学校について学校教育法第四條及び第十三條の規定にかかわらず、左の各号に掲げる権限を有する。」こういうことに修正せなければならぬと思うのであります。  それから同條の第二項といたしまして、これもまた第二條を削除いたしますると、第二項として次の一項を加えなければならぬと思うのであります。それは「学校教育法第十四條は、私立学校に適用しない。」こういうふうにしなければならぬと思うのでありますが、当局の御意見を伺います。
  123. 久保田藤麿

    久保田政府委員 第二條の修正に伴いました当然の結論でございまして、第五條が規定しております趣旨に一致するものでございますので、御修正に同意いたします。
  124. 渡部義通

    ○渡部委員 第七條の「都道府県知事は、この章に規定するもののほか、私立大学以外の私立学校に関して、左の事務を行う」というところの一、二号でありますが、この点については、前会にわれわれが、もし知事が校長、園長及び教員の免許状に関する事務や、教科書の検定に関する問題を取扱うことになれば、これは学校行政の上に、さらに教育方針の上に重大な關與をすることになるがどうかということを質問したときに、文部省側では、これは單なる事務であると言われたが、しかしながらこういう事務を取扱うのは、教育委員会の事務局において扱い得ることであつて、特に知事がこういう事務を扱うべき理由はない。ところがこういう條項を設けておるということは、説明に関する限りは矛盾するのではないか、この点はどうなんですか。
  125. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これは免許法の当時に審議されたというお話を伺いますが、この点の考え方も、従来とかわつた考え方をいたしておるわけでありませんので、その当時の考え方と全然矛盾したものではありません。
  126. 渡部義通

    ○渡部委員 それではなぜ教育委員会における事務当局が、こういう事務を扱わないのか。
  127. 久保田藤麿

    久保田政府委員 すでに免許法制定当時、そのことが論議せられて現在のできました免許法制度の中にそのことがすでにきめられておる、その形をそのままここに受けて来ておるわけであります。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 先ほど水谷委員の御質問に対する局長答弁で、非常に重要な箇條、総則の二條と、それから第五條の修正をするといたしますると、問題は解決するわけですが、これほど重要な條項があつたものを、そのまま文部省が出されて来た意図というものに、非常にふに落ちないものがあります。たとえば修正しない前のままですと、第五條についてですが、当然学校教育法の十四條は、優先適用されるということに相なるわけですか。
  129. 久保田藤麿

    久保田政府委員 第五條の「私立学校について有する権限」といつた言葉の解釈になろうかと思うのでありますが、この第五條では、そういう処分権を伴つたような、そうした権限の事項は、この修正をする前の五條に書きましたところに、限定的な規定をあげたという解釈でありまして、十四條はただいま申した処分的な権限の事項でありますので、この五條は十四條の適用がないもの、十四條は排除されたものという考え方で原案をつくつたのでございます。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 なおこの第五條の第二号に、学校教育法の十三條とほとんど同じ文句が規定してあるのです。ただ学校教育法においては「法令の規定に故意に違反したとき」こうなつておりまして、ここでは「法令の規定に違反したとき」と、こうかわつておりますが、そこに何か区別がありますか。
  131. 久保田藤麿

    久保田政府委員 おつしやる通り学校教育法には「故意に」とありまして、こちらの方は「故意」の字が落ちておるわけでありますが、これを審議いたしまする時分にも、いわゆる刑法的な一般的な考え方からしますれば、「故意」の規定があること自体、特別の意味があるわけではありません。「故意」があるとないとは、法律上の扱いとして、またそれに対する措置として格別な差異がありませんので、むしろ「故意」の二字を落したという意味でありまして、両者の間に重みの関係また刑罰的な意味での取扱いの差異といつたものを前提にした区別ではございません。
  132. 松本七郎

    松本(七)委員 それから私学自主性という建前からいたしますると、同じ規定の中に「法令の規定に基く所轄庁の命令に違反したとき」というこの規定は、少くとも除外すべきだと思うのでありますが、この点に対する見解はいかがでありますか。
  133. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御説の通り、格別多くの事態をこの中に考えられることはないと考えますが、端的なものは次にあります第六條の報告書の提出といつたようなことが、具体的なものの事例でございます。
  134. 今野武雄

    今野委員 第七條の検定の問題でありまするが、私立学校では、御承知でもありましようが、戰前においても国定教科書を使わなければならないということで、非常に困つた例が多いのであります。成城その他の非常な理想的な教育をやろうとする学校では、自分自分の学校で教科書をつくり、そうしていろいろな実験的な意味で、そういうものを扱うということをずつとやつて来たわけであります。しかしこういうふうに自由を許されなくなるということになると、どうも特色のある教育ができないように考えられるのでありますが、文部省のそれに対する所見はいかがでしようか。
  135. 久保田藤麿

    久保田政府委員 お説の点をむしろ出したいために、こうした委員会を、私立学校等のために、別に持たせる形をつくつたのでございます。
  136. 高木章

    高木(章)委員 ただいまのに関連してでありまするが、第七條第二号の教科書の検定であります。この規定を拝見いたしますると、学校教育法の四十九條によつて文部大臣が検定されるように伺つておるのであります。しかして、ただいま審議中の教育委員会法四十七條にも、教科書の検定、採択の件があるのでありまするが、この教育委員会で採択検定される教科書は、公立学校のみで採用し、しかして教育法第四十九條によつてできまする教科書が私立学校で用いることになるのでありましようか、その点お伺いいたします。
  137. 久保田藤麿

    久保田政府委員 私立学校で用います教科書の関係は、この七條の関係でございます。
  138. 松本七郎

    松本(七)委員 少し先に行きますが、同じ三章の中の第二十二條の中に「委員は、その職務に対して報酬を受けない。但し、職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる」という規定があるのでありますが、この費用の弁償の額その他を、どこできめるのですか。
  139. 久保田藤麿

    久保田政府委員 各府県の條例で、きめていただくつもりでやつております。
  140. 松本七郎

    松本(七)委員 その次に支給方法、これを文部大臣が大蔵大臣協議して定めるということになつておけますが、こういう内部関係の問題を、法文で明らかにするというのは、少し行き過ぎじやないかと思います。いかがでしようか。
  141. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これは給與実施本部の一般的な統制の関係から出て来る、やむを得ない当然の規定になつております。
  142. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 松本君よりあとにもどるのでありますが、「第十一條都道府県知事は、前條第二項第一号に規定する者のうちから委員を任命する場合において、当該都道府県の区域内にある私立大学以外の私立学校教育一般の改善振興を図ることを目的とする団体で」と、こうあります。これですとPTAの会もこの中に入ることになつていると思われますが、この点は御意見はどうでありますか。
  143. 久保田藤麿

    久保田政府委員 この規定は、私立学校を対象に書いたものでございまして、PTAはこの中に一応入らないと考えておるのであります。
  144. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  145. 渡部義通

    ○渡部委員 第十條の、委員は知事が任命するというような事柄が、審議会の性格関係するのですが、この場合に、知事がどういう範囲から任命するのかという点で、二つの場合があげられておる。一つは小学校、中学校、もしくは高等学校の校長、幼稚園の園長、これらの学校の教員、または学校を設置する学校法人理事、一つは学識経験のある者、こういう二つ方向から任命することになるわけですが、この場合に、この法案を立案されるに際して、学校経営の上で、非常に広い一般の教職員や学生というものの意思がどんなに重要であるかということについて、考慮してみられた上で、こういうような結論が出たのか、あるいはそういうことが考慮されなかつたのであるか、その過程を伺いたい。
  146. 久保田藤麿

    久保田政府委員 教職員につきましては、御存じの通り重要な構成員であります関係で、十二分に考慮に入れた計算であります。学生については、文部省は、一応学生の身分が教育を受ける関係のものにあります建前から、この中に参加させることは、むしろ否定した計算で、この審議が進められたと考えております。
  147. 渡部義通

    ○渡部委員 その文部省の見解は、おそらく全国の学生諸君の反対するところだと思うのです。そればかりでなくて、重要なことは、現に大学校に対する学生の反対運動が起きたときに、すでに学生が何を求めておるかということがはつきりしておると思う。これをノーと言われるのは、ああいう事実を認められないからこそ、ノーと言われるのだろうと思う。明らかに大学校案については、そういうふうな運動が非常に大きく起きた。そういう動きが現に学生諸君の中にもある。そういう点を考慮されないのでは、この任命という事柄さえも、非常に一方的な方面から、しかも知事がこれを任命するというような点で、官僚的な統制が非常に強化される憂いがあるのではないか。文部省はそういう憂いがないものという考え方から、これをつくられたのであるかどうか、この点をお聞きしたい。
  148. 久保田藤麿

    久保田政府委員 学校関係におきまして、それぞれ学生の扱いをどういうふうにするかといつたようなことは、十分研究していただいてあつたはずでありまするその限度においては、計算に入れたことは事実でございます。
  149. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑がなければ、第三章、学校法人、第一節、通則だけを御質疑願います。——第一節について御質疑はありませんか。
  150. 今野武雄

    今野委員 これは、先ほども一般のときにちらと伺つたのですけれども、二十六條の「学校法人は、その設置する私立学校教育に支障のない限り、その收益私立学校経営に充てるため、收益を目的とする事業を行うことができる。」こういうことがありますが、この條項は、現実の大学や何かの経営と、どういうふうにかわつたものができて来るのか、その見通しをお伺いしたいと思います。
  151. 久保田藤麿

    久保田政府委員 現在もその收益を目的とした事業が、学校の正式の形においてではありませんが、事実相当に行われておる場面もありまして、それらが公的に、また学校法人の正式な看板でやれるように進めたいという趣旨でございまして、これからある程度收益があがり、午前中も申し上げました片方の寄付といつたような形についての免税などから、財政的な基礎が強固になつてもらうということをねらつておるわけでございます。おそらくこうしたことが学校基礎を固める上に必要であり、また適当なことだと考えておるのでございます。
  152. 今野武雄

    今野委員 その收益を目的とする事業というのが、たとえば学生を対象にする出版事業を興して、そうして教科書をつくつて、学生にそれを使わせるとか、あるいはいろいろな日用品、あるいは飲食とか、そういうようなものをやるとか、こういうようなことになりますと、收益という目的と、学生の利便、厚生をはかるというような目的とが、相反しはしないかというふうに考えられるのでありますが、その点はいかが考えられますか。
  153. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これは、たとえば出版の関係にいたしましても、一般的な、普通世間の收益を目的とした業者の場合と、学校がみずからの学生を相手といたすとするならば、その間には、同じく收益をあげるといたしましても、そこに学校的な考え方から来る恩惠が、学生に対してあつてしかるべきだと考えます。食堂の場合においても、まつたく同様の考え方であつてほしいと思います。
  154. 原彪

    原委員長 ちよつと私から申し上げますが、第二十六條の、「私立学校教育に支障のない限り」と書いてありますが、支障のある事業というのは、ほんのわずかの範囲ではないかと思うのでありまして、教育に支障のある事業というのはどういうことか、ひとつ御説明を願いたい。
  155. 久保田藤麿

    久保田政府委員 事業の事実について審査するより、方法がないと思いますが、そのために、できるだけ審議会の意見を聞いて、それらについての始末をいたしたいと考えております。たとえばダンスーホールといつたようなことが考えられるのでありますが、それらは教育に支障のない限りの範囲から申せば、必ずしも適当な事業ではないと考えられます。
  156. 原彪

    原委員長 第一節通則に御質疑がなければ、第二節、設立について御質疑を願います。  第二節、設立について御質疑がなければ、第三節、管理。
  157. 高木章

    高木(章)委員 第三十八條の四項の役員の項でありまするが「役員のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族が一人をこえて含まれることになつてはならない。」とい項があるのでありますが、これは一つ財団のうちに、二名以上の親族が入つてはならないという規定解釈してよろしゆうございますか、伺いたいと思います。
  158. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいまの御意見の通りに御解釈つてけつこうと思います。
  159. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 第四十一條学校法人に、評議員会を置く」この項でありますが、評議員の選出の方法は、どういうふうになつておるのでありますか、ここにはつきりしておらぬようでありますが。
  160. 久保田藤麿

    久保田政府委員 前の方にもどりますが、第三十條の第六号に「評議員会及び評議員に関する規定」というのがありまして、これを受けて参りまして、この規定によつて選任されて行く形になります。
  161. 松本七郎

    松本(七)委員 三十五條に理事と監事を置かなければならないという規定があるのであります。この理事の選任については、三十八條に規定があるのでありますが、監事の選任については、何らの規定がありません。これは理事の業務決定でやるのであるかどうか、その点をお伺いいたします。
  162. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これも同じく第三十條の関係におきまして、第五の「役員に関する規定」というところがございます。これの内容を受けて選任されて来る形になります。
  163. 松本七郎

    松本(七)委員 それから四十一條評議員会の項ですが、四項に「評議員会に、議長を置く」こうなつておりますが、議長の設置規定もやはり同じですか。
  164. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいまのと、まつたく同じでございます。
  165. 松本七郎

    松本(七)委員 それから四十二條評議員会の意見を聞くの規定について、「理事長において」という規定がありますが、ちよつとこれを見ますと、あたかも理事長に権限があるかのごとく誤解を生ずるのであるが、これは法人が聞くのが当然であると思いますが、どうですか。
  166. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御指摘通り法人が聞くわけでありますが、法人の法的代表者としての理事長という意味で、置いたわけであります。
  167. 松本七郎

    松本(七)委員 理事長が法人の代表者であることは当然で、わざわざ「理事長において」とこう特に書かれたところに、何か理事長に権限があるかのごとく誤解を生ずるおそれがあると思う。そういう誤解をなくする方法はありませんか。
  168. 久保田藤麿

    久保田政府委員 法人の各理事を窓口にしまして、それらが個々にやり得るという形をとらずに、むしろ理事長を窓口という形で、明確にするという趣旨で、考えておるのでございます。
  169. 松本七郎

    松本(七)委員 第四十三條の一番最後のところに「諮問に答え、又は役員から報告を徴することができる」とありますが、役員個々が報告するのか、それとも役員全体でするのか、この点を明らかに願います。
  170. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいまの御指摘の件は、双方とも含むと解釈しております。
  171. 松本七郎

    松本(七)委員 その次の四十五條の寄付行為変更の認可の規定ですが、これは所轄庁の権限事項であるために、むしろ設立規定あとに持つてつた方が妥当ではないですか、こういうところにぽかつとこれを置くよりも……。
  172. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これはその置き方の問題でありまして、寄付行為の変更というようなこと、決算といつたようなこと、こうしたものをどこに置くかという意見の違いだけかと思います。
  173. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑がなければ、第四節、解散。
  174. 松本七郎

    松本(七)委員 五十條第一項の三号に「目的たる事業の成功の不能」ということがありますが、これは一体だれが判定するのか。それから判定の基準を一体どこに置くのかということを、明確にしてもらいたいと思います。
  175. 久保田藤麿

    久保田政府委員 これは民法の現在の財団法人関係と、まつたく同一の形を持つて来たにすぎません。判定の関係は、寄付行為のきめ方にもよるのでありますが、たとえば寄付行為の方法で、理事会が一応そういうことをきめ得るようにし、またそのために主務官庁との認可とか、承認とかいつたような関係をつけてあるのが普通の場合でありまして、双方の協議としての形がここにも成り立つと考えております。
  176. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑はありませんか。  なければ第五節、助成及び監督
  177. 松本七郎

    松本(七)委員 助成及び監督で、五十九條の第三項です。これに「国文は地方公共団体は、前項又は第五十三條第三項の規定により」云々たとありますが、この中に当然第四項を入れなければならぬじやないかと思います。この点御意見を伺います。
  178. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御指摘通り第四項が一応いるかのように見えるのでありますが、私どもはその文章の中の「国又は地方公共団体は、前項又は第五十一條第三項の規定により」と読んで参りまして、前項の関係で四項は包括されておる、その中に含めてこれを読ませるという形で四項をわざわざはずしてあるわけでございます。
  179. 松本七郎

    松本(七)委員 この点についてはちよつとはつきり意味がわかりませんので、委員長にお願いしておきたいですが、法制局の御意見をあとで徴していただきたいと思いますので、保留しておきます。
  180. 原彪

    原委員長 それは衆議院の法制局の意見でよろしゆうございますか。
  181. 松本七郎

    松本(七)委員 けつこうです。
  182. 原彪

    原委員長 それでは法制局第二部長に発言を許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 原彪

    原委員長 法事制局第二部長。
  184. 福原忠男

    ○福原法制局参事 ただいまの五十九條第二項のうち「前項又は第五十一條第三項」の次に「もしくは第四項」と入れた方が事案自体は明確になると思います。しかしながら、前項の中に含むという今の文部省の御解釈も、あながちむりだとも申し上げかねるものですから、その程度でいいのではないかとも考えます。
  185. 松本七郎

    松本(七)委員 同條の三項三号「当該学校法人の役員が法令の規定、法令の規定に基く所轄庁の処分又は寄付行為に違反した場合において、当該役員の解職をすべき旨を勧告すること」この役員の人事権にまで所轄庁がとやかく勧告するということは、行き過ぎではないか。たとい何か不正な使用その他があつた場合でも、これはやはり学校が自主的に役員をかえるというように、自主性を尊重すべきものではなかろうかと思いますが、この点文部省の御意見をお伺いします。
  186. 久保田藤麿

    久保田政府委員 御説の通り、なるたけ学校が自主的にそういう始末をなさることが、私ども最も希望するところでありますが、たまたま法令の規定に違反しておるとか、法令の規定に基く処分なり寄付行為なりに違反をしておる、その事実を学校側がどの程度に知つておるかということもあろうかと思いますが、自分の方でそれでいいという見解でおられるような場合を言うのであります。そうした場合に、むしろこれは勧告でありまして、その始末をするにしましても、審議会との関係を重大に置いておりますので、行き過ぎとは考えておりません。
  187. 松本七郎

    松本(七)委員 六十二條の解散命令のところですが、「他の方法により監督の目的を達することができない」とある。特に「監督」の字を入れたことに対しては、私学としては、非常に今までの長年の文部省のやり方からして、はなはだ見識にかかわるという意見が強いので、聞いておるのですが、この点はいかがでしようか、何か特に必要があるのですか。
  188. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ここにあります。「監督」の文字が、好ましくないという御意見のようでありますが、むしろこれはそうした関係のものを限る限定的な感じを出しているのでありまして、監督という言葉自体がいい、悪いという問題よりは、そのものを限つておるということに御注目をいただきたいと思います。
  189. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑がなければ第四章、雑則であります。  第四章について御質疑がなければ、第五章、罰則について御質疑はありませんか。——なければ、附則について御質疑はありませんか。
  190. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 附則の第十八項中「私立学校法第三條第四項」を、前の関係上、「私立学校法第三條」に改めるとせなければならぬと思います。それから附則の第二十一項中「第三條第四項の学校法人」を「第三條の学校法人」と改める、こういうことにしなければ、前のとつり合いがとれないと思いますが、当局のお考えはいかがですか。
  191. 久保田藤麿

    久保田政府委員 前段の修正に伴いました当然の結果でございまして、御趣旨の通り御修正に同意いたします。
  192. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑がなければ、これにて逐條審議は終りました。  なお全般的なこと及び各條項について特に御質疑があれば、これを許します。
  193. 今野武雄

    今野委員 先ほど全般的な質疑をいたしました際に、現在の学校並びに学生の困難な状態について言及したのでありますが、実は学生の問題については、十分のお答えがなかつたのですけれども、現在の学生の生活が非常にひどいということは、皆様のお認めの通りであります。先ほども早稻田の新制大学の学生が参りまして、今年度の育英資金の申請をしたが、いまだに何のさたもない。ほんとうに行き詰つて来て、昨日からご飯も食べられないということになつておるというのであります。学生生活はそういうようにまつたく破壊しており、授業料も滯納が多くてどうにもならぬ。こういう状態に対して、文部省としては、どういう処置をとられるつもりか。そういうことについて明確にお答えを願います。
  194. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 実はこの私立学校法について、ただいま逐條審議をやつたのでありまして、ただいまの委員長の宣言は、総括的質問というお言葉で、この法案に直接関係あることを総ざらい的に質問するという趣旨であるはずであります。従つてただいまの今野君の質問は議題外と思いますから、これは答弁の限りではない。またそういう質問は禁物であるということを、明確にしていただきたい。
  195. 原彪

    原委員長 ただいま岡君の発言の通り、この法案に関して総括的な質問でなければならぬと思いますから、この法案を中心として質疑していただきたいと思います。関連するといえば関連するかもしれませんが、会期も切迫しておりますので、その点御了承を願います。
  196. 渡部義通

    ○渡部委員 今、岡君の方から、今野君の質問に対して抗議的な動議が出たのでありますが、しかしわれわれが法案審議する場合には、單に法案の項目等々についてだけ考えてはいけない。われわれはあらゆる諸條件考えて、私立学校法案ならこの私立学校法案をどのような形で考えなければならぬかというので、初めて批判の問題が出て来るのであります。従つてわれわれの質問というものは、單に一見篠目にかかわらないように見えても、それはこの法案を批判する上の基礎的な問題にかかわる場合が、しばしばあるわけです。そういう点は、了承を得ておかなければならぬと思います。
  197. 原彪

    原委員長 総括的の質問は、この法案審議する当初に、すでにやつておりますが、逐條審議をしたあとで、全体を見て総括的な御質疑をいただきたいのが趣旨でありますから、その点御了承をいただきたいと思います。
  198. 松本七郎

    松本(七)委員 最初に総括質問をやつておりますが、場合によつては抜けることもあるので、もう一度総括質問委員長は許されたのだと思います。そこで答弁その他で長くなれば、委員長からも御注意もありましようけれども、一応答弁していただいたらどうかと思います。
  199. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ただいまのお話は、育英会の関係の事務が澁滯しておるではないかというように了解いたしたのでございますが、育英会の方では、本年度の予算が御存じの通り増額を認められておりませんで、補正予算で幾らかでもそれを補いたいという考え方のために、多少事務の澁滯があつたのではないかと思います。あそこの状態は、私どももよく承知しておりますので、その関係を疎漏のないようにやりたいと思つております。
  200. 原彪

    原委員長 私から一つ御質疑したいのですが、第六十條の免税の規定でありますが、「学校法人の所得で收益を目的とする事業から生じたもの以外のものについては、所得税及び法人税を課さない。」これは、現在学校は公益法人であつて、所得税、法人税を賦課されていないのでありまして、いかにも特典であるようにここに書いてありますが、現在の私立学校経営の困難は文部当局も非常におわかりだと思います。税法上ここにどういう特典があるか、その点について御説明願いたいと思います。
  201. 久保田藤麿

    久保田政府委員 ここにあげております税の関係では、明らかに現状通りでございますが、次の通常国会に間に合せるために、シヤウプ勧告の線に沿つて、税制の規定を私ども関係の方で整理をしております。次の国会に間に合せることになるのでございまして、そのときにこうした分が改正になつて参ります。
  202. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、質疑はこれにて終結いたしました。
  203. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 本会議関係もありますので、私立学校法案に対する質疑はこれにて打切り、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  204. 原彪

    原委員長 岡君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 今野武雄

    今野委員 その前にちよつと——たびたび申したのでありますが、この二十二日に本委員会に付託されました六・三制の完全実施に関する決議の実行に関する決議案その他二件の決議案は、午前中にすでに趣旨弁明を終つて審議決定するばかりになつているわけであります。これをすみやかに取上げてやらなければ、何にもならないわけでありますから、即刻それを取上げることを希望いたします。
  206. 原彪

    原委員長 ただいまの御発言は、御趣旨ごもつともであります。しかしこれは本委員会の議事運営上のことでありますので、理事会に諮つて決定いたしたいと存じます。  それではこれをもつて散会いたします。     午後五時四分散会