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1949-11-21 第6回国会 衆議院 文部委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十一日(月曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 原   彪君    理事 岡延右エ門君 理事 水谷  昇君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君    理事 稻葉  修君 理事 今野 武雄君    理事 長野 長廣君 理事 小林 信一君       甲木  保君    木村 公平君       佐藤 重遠君    千賀 康治君       高木  章君    森戸 辰男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君  出席政府委員         (大学学術局         長)         文部事務官   剱木 亨弘君         (調査普及局         長)         文部事務官   辻田  力君         (管理局長)         文部事務官   久保田藤麿君  委員外出席者         議     員 眞鍋  勝君         文部事務官   森田  孝君         参  考  人         (明治大学法学         部長)     松岡熊三郎君         参  考  人         (早稻田大学法         学部長)    大濱 信泉君         参  考  人         (東京大学教         授)      我妻  榮君         参  考  人         (中央大学法学         部長)     片山 金章君         参  考  人         (中央高等学校         教員)     堀内  操君         (日本教職員組         合法制部長)         参  考  人 江口 泰助君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 十一月十九日  新制中学校建設費助成に関する請願坪内八郎  君紹介)(第九一九号)  同(門脇勝太郎紹介)(第一一五五号)  樋合島新制中学生徒通学費国庫補助請願(原  田雪松紹介)(第九二五号)  教育予算増額並びに定員定額制廃止に関する請  願(上林與市郎紹介)(第九四八号)  同(前田正男君外三名紹介)(第九四九号)  同外二十五件(今野武雄君外一名紹介)(第九  五〇号)  同外三件(渡部義通紹介)(第九五一号)  同外七件(柄澤とし子紹介)(第九五二号)  同外一件(坂本實紹介)(第九五三号)  同(池見茂隆紹介)(第九五四号)  同(河野謙三紹介)(第九五五号)  同(苅田アサノ君外二名紹介)(第一一〇一  号)  同(鈴木善幸紹介)(一一〇二号)  同(今村忠助紹介)(第一一〇三号)  同(今野武雄君外三名紹介)(第一一〇四号)  同(大石ヨシエ紹介)(第一一〇五号)  同(鈴木善男君外一名紹介)(第一一〇六号)  大村市に国立学校設置請願岡延右エ門君外  一名紹介)(第九九三号)  厳島大鳥居修理費国庫補助請願山木久雄君  外五名紹介)(第一〇〇七号)  奈良県に国立美術研究所設置請願前田正男  君外五名紹介)(第一〇二五号)  育英資金予算増額請願今野武雄君外一名紹  介)(第一〇七九号)  同(松本七郎君外二名紹介)(第一〇八〇号)  比波山巨石遺跡跡を史跡に指定の請願(稻田  直道君紹介)(第一〇八三号)  私立学校法案撤回に関する請願川崎秀二君  紹介)(第一一三六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  六・三制完全実施のため全額国庫負担陳情書  (第二三九号)  文化財保護に対し国庫補助増額陳情書  (第二  五九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  教育委員会法の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号)  私立学校法案内閣提出第三八号)     ―――――――――――――
  2. 原彪

    原委員長 これより会議を開きます。  私立学校案を議題といたします。本法案一般から関心を持たれている重要な法案であります。これより本法案について参考人より意見を徴することにいたします。  この際お諮りいたします。明治大学法学部長松岡熊三郎君、早稻田大学法学部長大濱信泉君、中央高等学校教頭堀内操君、東京大学教授我妻榮君、中央大学教授片山金章君、なお日本教職員組合よりも一人参考人としてお呼びすることになつておりますが、まだお見えになりませんので後ほど申し上げたいと存じます。以上六名を参考人指名いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原彪

    原委員長 御異論なしと認めます。それではさよう決定いたしました。これより参考人の御意見を承ることにいたします。  日本私学団体連合会明治大学法学部長松岡熊三郎君。
  4. 松岡熊三郎

    松岡参考人 松岡でございます。私学団体連合におきましては、従来私学に対するいろいろな法規によりまして、非常に多数の監督を受けており、またその学校経営する私立学校法人は、民法財団法人でありまして、民法においては教育事業だけでなく、その他一切の公益事業を目的とする法人についてかなり詳しい規定をいたしており、その中に監督規定も非常に多かつたのあります。  従来置かれたこの私学立場が、新憲法実施と同時に、まず民主的なものにならなければならぬというような情勢から、新しい構成のもとに私学が置かれるようになるが当然であろうという空気が、日本国全体並びにGHQの方面にも考えられたのでありまして、最初GHQCIEから、私学は将来どういう方針をもつて進むか、まつた私学の本来の面目上、自主独立立場で進むか、あるいは従来通りの官憲の支配のもとに進むか、ないしはその間に中間的のものも考えられるだろうが、どういう態度で進んだ方がいいと思うかというようなサゼスチヨンがありました。われわれの方でも、その出発点をどこに置くかということについて、十分慎重審議いたしました結果、この法案のような立場において進むことに決定いたしたのであります。その目標のもとに法案をつくり始めたのでありますが、従来文部省そり所管管庁でありましたので、これを新しい法案として出す場合には、文部省とよく協議して出すことが妥当であるということで、文部省と協議いたしまして、案は私学連合文部省と協議してつくつて行くが、法案としては文部省提出法案として出そうということに一致しました。それからだんだんと法案をつくりつつ進んだのでありますが、そのこまかい経過は時間がありませんから述べません。よく文部省と協議を遂げまして、今上程になつておる案に意見がまとまつたのであります。そういう状態でありまして、この法案は従来の私学立場を新しい立場で規整して行くという案でおりまして、現在のわが国における私学状態としましては、今上程されておるこの法案が最も妥当であると、われわれ私学連合考えておるのであります。でありまするから、この案をぜひ皆様の手で愼重御審議くださいまして、この議会を通過することを希望いたすのであります。  こまかい点につきまして、もし御質問がございましたら、後刻これに応じて御説明申し上げたいと思うのであります。
  5. 原彪

    原委員長 この際お願いしておきますが、御意見の御発表は、時間の関係もありますので、お一人大体十分程度にお願いしておきたいと思います。  次に日本私立大学協会、早稻田大学法学部長大濱信泉君。
  6. 大濱信泉

    大濱参考人 御指名によりまして、日本私立大学協会としての意見を申し上げたいと思います。  今松岡氏からお話がおりましたように、私学校案は、現在私立学校学校教育法民法財団法人規定基礎を置いておるわけでありますけれども、両法とも私学に対する行政庁干渉権相当広いので、根本においては、この二つ法律を背景として私学というものは立つのでありますが、できる限り私学自主性を尊重するという立場から、行政的の範囲を狭めるということを一つ目標にしておるのであります。  いま一つ目標は、私学終戰後窮乏経済のもとに相当経営に悩んでおりますし、ことに戰災の復興等につきましては、どうも独力だけでは十分復興ができませんので、国または地方公共団体から補助をいただきたいという運動をいたしておるのでありますが、憲法八十九條との関係上、公の支配下に置くことが必要であるということが常に問題になつておりますので、そこでこの法律の中に国または地方公共団体私学に関して補助助成をなし得る法的基礎を明確にするということを目標にいたしておるのであります。  第三には、現在の私立学校は、すべて民法財団法人によつて経営されておるのでありますが、この財団法人に関する民法規定は、学校立場から申しますと、非常に不完全なものである。たとえばその機関につきましては、一人または数人の理事だけが必要機関になつておりまして、そのほかに監事評議会といつたようなものは、置いても、置かなくてもいいというようなことになつておりますので、極端な場合には、一人または一家族の支配下学校経営されるということになります。それでは十分公益性を発揮することができないという考え方から、この法案におきましては、財団法人機関を、理事監事、それから評議員という三つの機関を鼎立させて、その機関構成の数あるいは選出系統等についても種々の制限を設けまして、一方に偏しないように、なるべく民主的に、学校経営が明瞭化するようにということを目標にして立案されたものであります。  第四に、私学経営上最も関心事にいたしておりますことは、免税の問題でありまするが、できるだけこの規定の中にも私学に対する免税規定を明確にしてもらうということで、一方の規定がこれに入つておるのであります。  そういつたような目標でこの法案がつくられましたので、私立大学側といたしましても、この案がこのまま通過することを希望しておるのでありますが、ただ大学協会なり、あるいは大学教授の一部の間から、多少この法案に対して議論がないわけではないのであります。その議論を伺つておりますと、大体二つあるのであります。一つは、私立大学というものは、他の学校違つて教育機能のほかに研究機能を持つたものであり、やはり特殊的なものであるから、これは一般学校から分離して、私立大学については別個の法律を制定すべきであるという御議論があるのであります。それは協会理事会におきましてもいろいろ伺つたのでありますけれども、そういう必要があるならばその法案通つて後でもできることであり、必ずしもそういうことの妨げにならぬから、協会としてはこの法案が今国会を通過することを希望するというふうに方針をきめたので、あります。  いま一つは、審議会構成について多少御要望があるのでありますが、協会側は、二年にわたつていろいろ検討した結果、その結論を得ましたので、変更の必要はないという考えであります。  簡單でありますが、以上をもつて私の公述を終ります。
  7. 原彪

  8. 堀内操

    堀内参考人 御指名をいただきましたから、時間の許す範囲において申し上げたいと思います。  私どもの、日本私立中学高等学校連合会というのは、教職員半分、校長、理事者半分、あるいは地方によつて生徒の父兄の入つておるところもございますが、そうした会員によつて、しかも下から選挙という方法で選ばれておるところの団体でございます。ただいまのわが中高連の枚数を申し上げますと、千八百四十八校、その教員数は三万七千二百四十名、全国生徒数に至りますると、六十七万八千五百八名という数を持つておるのであります。特に本日は静岡、愛知、大阪などを初めといたしまして、各地区協会代表の皆さんがここにおられて、その方々のお立会いの上で私が申し上げるのだということを、つけ加えたいのであります。  まず結論から先に申し上げますると、私ども私立学校は、いわゆる何らの法的根拠もない、無軌道のままで行かれるとは考えておりません。従つて教育委員会法ができましたときに、われわれの私立学校法というものも同時にできる、またでかさなければならないと考えておつたわけであります。従つてわれわれが私立学校法をつくろうと努力をいたしました過去の日月も、また二年有半に及んでおります。そこでいよいよ今期国会に上程されたのでありまするが、とにもかくにも私ども私立中高連といたしましては、総意をもつてぜひ今国会において成立させてほしい、ここにわれわれの、重点があるのでございます。ただいまの大濱先生お話にもありましたように、いろいろとほかから御意見もあります。しかしながら、私どもは過去五十数回にわたつて、この法案を練りに練つて来たわけでありまして、その間あるいはガリ版刷りに、あるいは活版刷りにして公に出したこともあります。しかしながらこの時分には、これぞというような御意見もなかつたわけでありますけれどもいろいろ対象なつておりまするところの二、三のことについて、時間の関係もございまするから簡單に説明申し上げますと、私学審議会でありますが、昨年の夏ごろ――私ここに持つてつておりまするけれども、三章五節四十九條からなつた私立学校法案においては、私学教育委員会というものをつくる構想であつたのであります。しかしてこの委員会はそれぞれの面から出るようになつておりまするし、その選出方法選挙をもつてやるということになつてつたわけであります。しかしながらこれはCIE等勧告によりまして、公立委員会があり、私立委員会がある、そういうような二本建にしなければならぬという理由がわからない。特に公立のまねをして、そういうような委員会をつくつて私立学校一つのわくに入れなければならぬ理由が、どこにあるかというようなことになりまして、現在の審議会ということに進んでおるわけであります。  それから第七條にあります教科書検定とか、教職事員免許状に関しましては、最初、これはあくまで公の機関と申しますか、いわゆる官庁にあるべきものだということを主張されました。私どもはこの説に対しては、最初から猛烈に抗争いたしまして、そうしてこれはあくまでわれわれの面でなければ、他人の選んだ書物、他人によつて首をすげかえられるようなことによつて私立学校が進んで行けるものではないということを強調いたしまして、これもまたわれわれの手にとつたものであります。しかしこの條文をちよつとお読みになられて、教職員や、教科書検定役所によつて自由になされるというふうにお考えになられる向きもあるようでありますけれども役所事務をなさる、それだけであります。また法律の定めるところによつてする免許のことなり、教科書なりを、公の費用をもつてその事務をやることは、理の当然ではないでございましようか。しかしながらその方法その他については、現在われわれの方から適正なる委員選出いたしてやつておる次第であります。かつての、われわれ私立学校が一人の教員を採用するについても、一々認可を得なければならない。一冊の教科書を採用する、あるいはこれを変更するについても、書類を出して認可を受けなければならない。こういうことから考え合せてみますると、まことに思い半ばに過ぎるものがあるのでございます。  さらに進みまして、今私ども中高連では、東京を初めといたしまして、各地区教育契約金というものをとつております。これは従来は補助金という名前であつたのでございます。昭和二十三年に文部省の方から約六箇月にわたつて、いろいろと折衝していただきましたけれども、なかなか思うようにも参りませんでした。しかしながら、そうした文部省のお方々の大きな御努力基礎といたしまして私ども民主主義教育を大幅に受持つて行かなければならないところの私立学校が、しかも従来相当補助金なり先生奨励金なりをとつてつたものが、今とれないということは、どうしても腑に落ちないということを、CIEやGSにわれわれ出してそれらの多くの人々の御指導によつて教育契約という方法で、過去二年間、いわゆる契約金を獲得して来ておるわけであります。われわれ私立学校は、この一つの足がかりができなければ――今年度などにおいでも、各地区においてこの契約金についてはなかなか議論があるわけでありますが、私立学校法ができることによつて、この契約金ははつきり生きて来るわけであります。ある論者は、貸付金にしろ、そういう契約金にしろ、すでに実績ではないか、そんなものは、私立学校法ができるできぬにかかわらず、とれるのだというお説も承りまするけれども、私ども過去二年間そうした献身的な努力研究とによつて獲得し得たこの金が、單にできるというだけでは、われわれはその言を信ずるわけには参りません。これもまたぜひ私立学校法を成立させていただいてそうして私どもの得らるべき金は当然得さしめなければならないと考えるのであります。  以上申し上げましたことによつて御了解をいただけるかと思うのでありますが、とにかく繰返しますけれども、われわれ生徒にしても六十七万余り、教員にしても四万に近い教員、この私立中高――連私ども教育を愛し、私立学校のために今まで研究研究を続けて来たわけであります。もちろんでき上りましたところの法律が完璧であるとは、だれも申すことはできないでございましようから、将来大いに順を追つて民主的にこれを改めて行かなければならぬと考えるのでありますが、ものには順序があるのでありまして、その順序を踏まずして、ただ一方的にいいものをどかんとつくり上げようということが、はたして民主主義的であろうか、あるいは独裁的であろうか、賢明なる方々の当然おわかりになられるところだと考えるわけでございます。どうぞよろしく今国会において、この私立学校法が成立いたしますように御願いいたす次第であります。
  9. 原彪

    原委員長 次に日本学術会議東京大学教授我妻榮君にお願いいたします。
  10. 我妻榮

    我妻参考人 私は日本学術会議会長龜山直人氏の推薦によつて、出頭した同会の副会長我妻榮でありますが、本日、学術会議代表者として本法案に関する学術会議意見を申し述べるのではなく、私の個人的意見を述べるのでありますから、そのように御承知願いたいと存じます。しかしその前に、学術会議の本法案に対する態度を一言説明いたすべきかと思います。  学術会議は御承知のように、日本学術会議法によつて全国科学者から選挙された会員によつて構成される合議体でありまして、科学ないし学術発達向上に関して政府勧告することをも、その任務の一つとしているものであります。そして昨年いわゆる国立大学管理法案なるものが、文部省試案として発表されましたときには、学術会議は非常な関心を示し、総会の決議を経て、政府に対して強力な勧告をいたしましたが、この私学校案に対しては、学術会議全体としては、何らの意思表示をいたしておりません。ただ、過日京都において、学術会議構成する七部のうちの数部が部会を開きましたときに、第二部(法律学政治学)と第三部(経済学商業学)が部会決議をもつて意思を表明いたしました。その両部決議はこうであります。    第二部決議   私立学校法案として現在発表されているものは、私立大学を過度に文部省監督下におき、学問独立を危くするものであると認める。よつて大学特殊性を考慮して適当に改めらるべきである。   右決議する。    第三部決議   政府起案私立学校法案は、私立大学を全面的に文部省監督下におくことになるが、これは大学特殊性を認識しないものであり、学問独立を危くするものである。私立大学については、別途に私立大学校を設けることを至当と認める。   本部は、政府が今回の法案撤回し、改めて民間識者を加えた審議会を設け、民主的方法により起案することを要望する。  このほか、第六部(農学)もこの問題を審議しましたが、これは決議に至らず、問題の重要性にかんがみ、愼重に審議さるべきであるという趣旨意見の一致を見たというだけであります。  その後、七部中の他の部も部会を開催しましたが、どの部からも決議のあつた旨の報告を受けておりません。  第二部及び第三部の決議と第六部の報告を受領した会長、副会長としては、運営審議会を臨時に招集して、学術会議としての意見をまとめるか、あるいは第二部と第三部の連合部会を招集して、この両部違つた決議に連絡をつける方法を講ずることも考えたわけであります。しかし両部会事情を聞いたところによりますと、容易に一致した決議を得ることができない考えられました。のみならず、時日が切迫しておりますので、会長としては、両決議をそのまま取次ぐこととし、それに次のような添書をいたしました。これは、日本学術会議の第二部及び第三部の決議内容は多少相違しているが、政府案として伝えられているものを修正しなければならないという点では、意見が一致しているから、政府においてしかるべく善処されることを希望するという趣旨であります。以上のようなことをくどく申し述べましたのは、これによつて次事情を推測していただけると存じたからであります。  第一に、学術会議会員の多数の者は、本法案に対して、私立大学学問研究の自由、逆に言いますと、いわゆる官僚的統制の排斥を必要とするという立場から、非常な関心を有している。  第二に、政府原案として発表されたものでは、私立大学に関する右の理想にもとる点が少くないから、その点は必ず改めらるべきだとする点においては、大多数の者の意見が一致している。  第三に、しかしこの点を改めれば、必ずしも法案自体に反対はしない。すなわちその法律となることに対して異議は述べないという者も相当多く、法案自体撤回を要望する者が多数だとも言いかねる。  これ以上申し上げますことは、私の私見を入れることになるおそれがありますから、学術会議に関することは以上にとどめまして、私の意見を申し上げることにいたします。  私の結論を申しますと、ただいま問題とされている原案なら、格別異論はない、むしろ国会法律とされることを希望するというのであります。この原案は、以前に新聞紙上で承知したものとは、大分変更されておりまして、私立学校全体として見ても、特に私立大学として見ても、格別非難すべき点はないように思います。学術会議の第二部会及び第三部会が、前に申し上げたような決議をいたしましたときば、この原案よりも、もつと政府監督権の、強いものを、政府案として考えていたのでありました。私は副会長であると同時に、第二部会会員でありますから、当時部会に出席しておりましたが、ここに示された案についてなら、前に述べましたように、修正を必要とするという趣旨決議が成立したどうか、はなはだ疑問である。むしろこう修正して原案とするなら、今日の情勢では異議を唱えない方がよかろうという空気支配したのではないかと想像いたします。もちろんこれは私一個の推測でありますから、そのことは十分お留意の上お聞きを願います。  さて右のような私の結論格別異論はない、むしろ国会法律とされることを希望するという結論に到達するまでの経緯についての所見を申し述べます。それは第一、学校法人、第二、教育行政、第三、助成についての三点であります。  第一に、この法案私立学校教育行政学校法人二つ内容を含んでおりますが、学校法人に関しては、民法法人規定特例をなすものと見るべきであります。ところでこの法案学校法人に関する規定を、民法公益法人に関する規定特例として見ますときに、これはきわめて妥当なものであると考えます。もつとも、その助成に関する規定すなわち法案第五十九條は、最も問題となる点と思われますので、これは後にあらためて申し上げることにしてまず一言にして申しますと、この法案学校法人に関する規定は、民法規定の根本原則に即してその不備不完全を補い、学校法人としての特殊性を明らかにしたものということができると考えます。  まずその設立に所轄庁の認可を要するものとする点(法案三十條)は、民法がおよそ公益法人の設立には主務官庁の許可を要するものとしている(民法三十四條)ことから見ても、学校法人というものの性質から見ても当然でありましよう。ことに本法案学校法人認可に必要な資金や設備の基準を法律で定めることにして(法案二十五條)、認可が所轄庁の手加減となることを防ぐだけでなく、さらに私立学校審議会、または私立大学審議会意見をあらかじめ聞くべきものとして(法案三十二條二項)、所轄庁の一方的意見に偏することを防ごうとしている点は、学校法人特殊性にかんがみて民法規定を修正したものでありまして、きわめて妥当な措置であると思います。  次に、学校法人の管理機関としての理事の選任に関する基準を明らかにしたこと(法案三十八條)、監事及び評議委員会を必須機関としたこと(三十五條、四十一條)及びそれらの選任の基準の内容(三十八條、三十九條、四十四條)を定めるにあたつて学校法、人をして設立者ないしは少数の者の独断専行とせず、教職員、卒業生、関係者等の意見がしかるべく参画するように考慮したことなどは、おおむね妥当なものといつてよいと存じます。  次に、一般監督規定として、收益事業の停止(六十一條)と解散命令(六十二條)とがありますが、前者はもとより当然のことでありましよう。後者とてもその命令の発動に愼重な要件が加えられておりますから、所轄庁の不当な干渉となるおそれはまずないと安心してよかろうと思います。  本法案中、学校法人に関する私の所見を以上で終り、第二に、本法案教育行政に関する部分についての所見に移ります。  この点については、この法案学校法人法として、教育行政に関する規定は別の法律とすべきだという説があるやに聞いておりますが、私はその必要はないものと思います。まずこの法案教育行政に関する部分を見ますと、所轄庁の権限が三つあります。一は私立学校の設置、廃止及び設置者の変更についての認可権を有すること、二は私立学校に対し閉鎖命令を出し得ること(以上法案第五條)、三は教育の調査、統計その他に関し必要な報告書の提出を求めることができること(法案六條)であります。このうち最後のものは問題とするほどのことはなく、問題は一と二でありましよう。しかしこの一と二もすでに学校教育法の四條と十三條に規定していることでありまして、この法案としては、その所轄庁の権限の行使に対して、私立学校審議会及び私立大学審議会意見を聞かなければならないとしたこと(法案八條)に重点があると見なければなりません。しかるにこの両審議会構成については、私の見るところではまずまず穏当なものと思います。もつとも学識経験者の中から、都道府県知事または文部大臣が任命する場合(法案十條二項二号、十九條二項二号)については、その選考の基準について、もう少し具体的な基準が示されている方がよいのではないかとも考えられます。しかし運用のいかんによつては弊害なきを期し得るものと思いますので、しいて不当というほどでもないでありましよう。  私立学校教育行政に関する事項を本法案から除いて、別に法律をつくるべしという論者の意見内容の詳細のことは存じませんが、もしこの論者が私立学校教育行政について、もつと詳しいこと、たとえば校長ないし学長、教授会、評議会などの権限、学校教職員の人事、予算などについても規定すべきだ。言いかえれば、教育委員会法規定すること、または、目下審議中のいわゆる国立大学管理法に規定することを予想されるようなことまでも規定すべきだというのでありますれば、私としては反対せざるを得ません。なぜなら、この法案は、さようなことは、当該私立学校の自治的運営にまかせようとするものでありまして、これこそ私立学校特殊性を尊重するゆえんだと信ずるからであります。言いかえますと、この法案は、私立学校教育行政については、その私立学校を運営する学校法人について、前に述べたような監督を加えただけで、その他は教育基本法と学校教育法教育職員身分法などの官公私立学校に共通した大きなわくの中で自由にやらせ、ただ最小限度の監督権として、設立の認可と最悪の場合の閉鎖命令権だけを留保するのでありまして、まことに当を得たものと考えるのであります。  また一部の人達は、この法案の中から私立大学教育行政に関する部分を除いて、これを国立大学及び公立大学と一緒にして、大学管理法ないし大学行政法一本によつて規律すべきだと主張しておられるようであります。これは一見きわめて妙な議論のようでありますが、実はこれは特別の理由があるのであります。と申しますのは、それらの人々は大学の管理法について、一種特別の構想を持つておられます。それはまず各大学の管理は当該大学の教授、職員、学生の三者それぞれの代表者からなる合議体によつて、自治的に管理すべきものとし、次いで中央に全国を一区とする公選によつて選挙された大学委員会ともいうべき合議体を設け、これに各大学の自治を調整する権限を與え、学校行政をしてまつたく文部大臣の権限から切り離そうというのであります。なるほどかような――各大学における教授、職員、学生三位一体の自治、中央における公選議員による委員会という構想をとれば、もはや国立、公立私立の区別なく、すべての大学を一本の管理法で規律するという主張もうなずけるでありましよう。しかしかような構想に対しては、私はとうてい賛成いたしかねます。かような主張は教育行政の本質にもとるものであり、国立と私立それぞれの大学の特色を失わしめるものであると存じます。しかしこれについてこれ以上申し上げることは本日の私の任務外に出ると考えられますから、差控えますが、私は右に述べましたいわゆる大学管理法についての文部省に提出されている起草協議会の委員長をいたしております関係上、一言いたしたいことがあります。この委員会は目下審議の途中でありまして、各大学の管理機関として教授、職員、学生三位一体のものを設けるかどうかということも、中央に全国一区の公選による大学委員会を設けるかどうかということも、まつたく未知数でありますのみならず、この委員会の作成する案が、たといさようなものでありましても、私立大学においては、各私立大学事情によつてしかるべく定めることにするのが、至当であると信じます。またこの委員会の案による中央の委員会が、万一本法案私立大学審議会と一本とした方がよいようなものになりましたら、このときにこの法律を、改正してそう改めても決しておそくはないと思います。要するに、この法案中の私立大学に関する部分を国立大学管理法が未だ制定されていないということを理由として、この法案から削除するという必要は全然ないと、私は考えるものであります。  以上で本法案教育行政に関する部分についての所見を終り最後に第三としてこの法案中の助成に関する部分、すなわち本法案第五十九條についての所見を申し上げます。  この点に関する本法案規定については、私は率直に言つてはなはだ遺憾に存じます。と申しまし七も、助成の場合の條件が厳格過ぎるとか、所轄庁の監督権が強過ぎるとかいうのではありません。補助金を交付するためには、この法案の定める條件ないし監督は必ずしも、強過ぎるとは言い得ないでありましよう。私はこの法案考え方自体ないしは、行き方自体について、遺憾の念を禁じ得ないのであります。  この法案の第五十九條は、あらため出て申すまでもなく、憲法第八十九條との関係において定められたものでありましよう。御承知の通り憲法第八十九條は、「公金その他の、公の財産は、――公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と言つています。まことに冷厳な規定であります。本法案はこの規定を解釈して、教育事業を担当する私立学校についても、公の支配に属しないものに対しては、何らの助成――すなわち補助金の交付はもちろん、有利な條件による貸付さえしてはならないとなし、反対に補助金の交付ないし低利貸付をするには、これを公の支配に属さしめなければならないとするものであります。その結果、いやしくも国家の低利資金の貸與を受ける私立学校は、公の支配に属するものとなります。「公の支配に属する私立学校――まことに奇妙な観念でありましよう。  私立学校とは、公の支配に属さないことを生命とするものではないでしようか。公の支配に属する私立学校とは、これ自身矛盾を含む観念ではないでしようか。私は何とかして、かような概念を避けることはできなかつたものかと考えざるを得ないのであります。もちろん私といえども、今日のわが国の私立学校が、窮乏の底におることを承知しております。私自身、私立の中学校と高等学校と各種学校を経由する財団法人に緊密な関係を持つておりますので、身をもつてその窮乏を感じておるものであります。昨年交付された低利資金を基礎として焼失した校舎を新築しましたら、今年は低利資金の交付がないというので、私自身金策に奔走せざるを得ない実情であります。従つて私一個の私情から申しますと、公の支配に属そうが属しまいが、助成がほしいのであります。しかし飜つて考えますと、一時の窮乏のために、公の支配に属したという刻印を押されることは、私立学校の矜持を捨てることであります。私の関係する微々たる学校はしばらくおきます。早稻田、慶応を、初めとして、わが国の伝統を誇る私立大学が、多くもない助成金か低利資金のために、公の支配に属するものとされることを、わが国の文化のために悲しむものであります。のみならず、私立学校に対する助成は、戰災の復興に限るべきだと私は思います。経営費をみずからまかなつて行けない私立学校までも、国家の助成で存続させることは、決してなすべきではないと信じます。従つて單に戰災復旧のために、補助金ではなく、單に低利資金の貸與をすることにして、これを公の支配に属させないで、すなわち憲法第八十九條の制限にかからないものとして実行する方法を講ずることができなかつただろうかと考えるのであります。たとえば、かつて伝えられた私立学校金庫などの道をもつと推し進めることができなかつたものかと思わざるを得ないのであります。しかし私としても事態の緊迫していることを理解しないではありません。また私立学校金庫案などという構想についても、内外の情勢の必ずしも容易でないことを十分に理解しております。なおまた憲法第八十九條の不当であることを今日論じましても、今日の窮乏の救済になり得ないことをさとらないではありません。  かようにして私は、いろいろ悲しみ、いろいろ迷いながら、本法案のこの点に関する規定をもつて、今日の情勢上やむを得ないであろうという結論に達するのであります。最初に私は、この法案に対する所見の結論として、格別異論はない、むしろ国会法律とされることを希望するという煮えきらない責任のがれのようなことを申しましたのは、決して断言することによつて生ずる責任を回避しようがためではありません。この法案の骨子ともいうべき第五十九條の助成についての規定に関して、かような、何と申しましようか、暗い気持になることを禁じ得ないためなのであります。  以上をもつて私の所感を終ります。
  11. 原彪

    原委員長 次に全国大学教授連合会、中央大学教授片山金章君にお願いいたします。
  12. 片山金章

    片山参考人 全国大学教授連合は、十月十二日に協議会を開きましてその協議会の席上での申合せに基いて、一つの声明文を、採択いたしたわけであります。その声明文の内容を、ここで私からかいつまんで御説明を申し上げたいと思います。  まず第一は、この私立学校法制定にあたりまして、この法案のあるべき性格はどんなものでなければならぬか、こういう問題が第一に取上げられておるのでありますが、それには、およそ私立学校というものは、それぞれ建学の精神と独自の学風を持つておるのでありまして、そういう精神なり、あるいは独自の学風のもとにおいて、十分にその特色を発揮しなければならぬのであります。それがためには、極力行政的な干渉を排して、私立学校自主性を十分に尊重しなければならぬということ。ことに私立大学につきましては、その機能が研究その他独自のものを持つておりますので、そこでは十分なる自由と創造が尊重せられなければならぬ。従つて高度に各大学自主性を、認められなければならぬ、こういうことがとらるべき法案の性格として論究せられておるわけであります。  第二は、助成の問題に触れておるのでありますが、私立大学の公共的任務の重大性にかんがみまして、ことに現下の窮乏経済のもとにおいては、戰災の復興等について、国家はできる限りの助成策を講じなければならぬ。しかしながら補助を條件としていたずらに監督を強化するというようなことは、絶対に避けられなければならぬ。ことに憲法八十九條の規定を、監督強化のために利用せられてはならぬものであろうというような趣旨が、第二に助成の問題として取上げられたわけであります。  しかし結論といたしまして、今議会に上程せられております私立学校法案に対しては、大学教授連合として別段これを阻止するという有力な意見は出ておらないのでありまして、結局将来私立学校法案のような、国民の利害に最も関係の深い重大な法案を作成するにあたりましては、関係者のほかに各方面の識者を加えた公正な機関をつくつて審議せらるべきであろう、こういう結論が出されておるわけであります。  これだけを大学教授連合代表といたして申し述べておきたいと思います。
  13. 原彪

    原委員長 この際お諮りいたします。日本教職員組合代表、法制部長江口泰助君を参考人指名するに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 原彪

    原委員長 それではさよう決定いたしました。日本教職員組合法制部長江口泰助君にお願いいたします。
  15. 江口泰助

    ○江口参考人 私学校案につきまして、私の見解を申し述べます。  私が属しております日本教職員組合が先般臨時大会を持ちました際、この私学校案につきまして、非常に重大な関心を持つて決議をいたしました。特に單独の決議をあげまして、私学校案内容は、幾多のわれわれとしては賛成できない点がありますので、反対の決議といたしまして今後これに対する修正の行動をとつて行くことを決定いたしたわけです。私がただいまから申し述べますことは、おおむねその意図の中に含まれているものであります。  まず全般的なことから申しまして、この私学校案の起草にあたりましては、巷間いろいろな風評が立つております。私も大学校の起草委員会委員になつておるわけでありますが、文部省が立案しましてこれを発表しましたところ、非常に世論が沸騰して反対を見たわけでありますが、この私学校については、何らそれだけの手続を経ずして国会に提出された次第でありまして、これに対しても、やはり民間において十分、起草委員会でもつくつて、事前に一般大衆の意見を聞いて立案すべきではなかつたろうかというようなことも考えられるのであります。  それから我妻先生がいらつしやいますが、大学校委員長をやつておられますが、私立大学校との関係につきましては我妻先生とは少し見解が異なる次第でありまして、大学校の起草委員会はまだ決定的なものはほとんど出ていないのであります。一番問題になるのは、私立大学の問題につきまして、官公立大学との関係を、いかに調整して行くかというようなことであります。全然大学校を無視して、私立大学の問題だけをこの法律の中に盛り込んで行つたならば、将来必ずこれは修正せなければならない段階が来るのではないかということは、我妻先生自身言つていらつしやるのでありますが、できますならば、この法律は今国会で早急に打上げるというような手をとりませずに、大学校の進行過程とにらみ合せて、十分そのバランスを考えながら次の国会で愼重な討議をしていただき、その間各方面の意向を聞いてあるいはできますならば、修正できるところは修正していただけるようにしたらどうかと考えておるわけであります。  以上、一般的なことを申しましたが、次にこの法律内容につきまして、逐條私の見解を申し述べて行きたいと思います。時間も限定されておりますから飛び飛びに要点だけ申し上げます。  まず第一番目、第四條に関係することでありますが、この私学監督といいますか、所轄といいますか、これを都道府県知事に置かなければならない理由が、どうしてもわかりません。それからこれも先刻私が一般的に申し上げたことと同じでありますが、私立大学の所轄を文部大臣にしているところも、大学校の審議の過程から考えて十分うなずけないわけであります。地方にはせつかく民主的に公選された教育委員会がありながら、ことさらに教育委員会の所轄に置かないで、公立学校に関する権限は何ら持たない、端的に言えばその都道府県の教育に対しても何ら責任を負わない知事のところに、私立学校だけの責任を持たせるというようなことについては、どうしても私はわからないわけでありまして、できますならば、この点は教育委員会が、私立学校にどれだけの権限を及ぼすかということはさておきまして、その所轄だけは教育委員会のもとに置くようにした方が、その地方教育の総合的な観点から考えても、好都合ではないかと考えております。私立大学の所轄をする文部大臣に関しても、やはり大学校の起草委員会と平行して考えて行つて、今中央の国立大学に対しても、中央の審議会を設けてやつたらという意味もわれわれの委員会の中で強いのでありますから、それとの関連をにらみ合せて、この所轄問題を解決して行つたらと思つております。  次は第五條以下第七條までに関係することでありますが、私立学校の設置廃止及び設置者の変更の認可、あるいはその閉鎖を命ずること、それからなお先に行きますと、教職員免許状に関すること、並びに教科用図書の検定に関することまでも、知事の権限にしていることについては、一つの面としては、あまりにも知事の権限が私立学校に対して強大になるのではないかということを、専門的な免許状に関することや教科用図書に関することを、知事の管轄下に持つて行くことについては、どうもうなずけません。これは知事が所轄するといいましても、あるいは知事の下に私立学校審議会というものを置くといたしましても、その私立学校審議会事務局というものは、何ら規定されていないと私は考えております。私立大学事務局は、文部省の管理局ですかが扱つておりますが、地方私立学校審議会は、事務局もない。もし設けられるとするならば、あるいは知事の下に設けられると思いますが、知事の下に設けて、はたしてそういうふうな專門的なことが十分審議できるものであるかどうか、それから十分事務執行ができるものであるかどうかが疑わしい次第であります。それでこの点から考えても、権限があまりに大きいのとともに、あまりに専門的になつて行く。だから私は権限を縮小するとともに、一面やはり教育委員会との関連を十分考えていただかなければいけないのではないかと考えております。  その次は八條に関係することでありますが、一地方都道府県の私立学校審議会のことであります。この私立学校審議会の第八條の一項には「意見を聞かなければならない」となつておりますが、私は「意見を聞かなければならない」とすることにつきましては、どうしても賛成できないわけでありまして、私立学校審議会には、事実的には決定する権能までも與えるようにして行くのがいいのではないかと考えております。知事がしろうとの立場から大きな力を持つて私立学校に臨む、その一つの緩衝機関として審議会を持つているのでありますけれども、私としては、形式的に知事が持つということにはうなずけますけれども、やはり事実的な決定権は、私立学校審議会で持つて行くのが、正しいのではないかと考えております。それから私立学校審議会では、こういうふうな知事の権限とか事務に関する重要事項について「建議することができる」とありますが、建議ということは、明らかに知事の諮問機関、言いかえれば御用機関になるようなおそれがあるのではないかと考えております。それからずつと先に営利事業を行うことができるような規定がありましたが、私はこの営利事業を行うことができるという規定を、はつきりと、その営利が営利のための営利に走らないように私立学校審議会がそれに対して厳正なる監督権を持つているような規定を、どこかに一項目入れておかなければならないのではないかと、考えております。  それから次は九條、十條に関係することでありますが、私立学校審議会委員選出方法であります。おそらくこういうふうな委員の選定の仕方では、ほとんどが理事者側が絶対多数を占めるようなことになるのではないか、こういうふうに私たちは考えております。そこで委員構成の問題、これには今二つからなつておるのであります。校長、教員あるいは学校法人理事一つ、もう一つは、学識経験ある者、こうなつておりますが、私としましては、校長を含めた意味においての理事者側がまず一つ。私たち労働組合の関係から言いますと、私立学校は、あるいは今では労働組合法の完全な適用を受けておるわけでありまして、私立学校の職員組合はストライキでもできるというような、一般の工場と違わない権限を持つておるわけであります。そのときに校長は明確に使用者側の立場にあるわけです、理事者側の立場にあるわけです。そういう点から考えて、私は私立学校の仕組が、労資の対立的な考え方から厳密に委員を出すというわけではないのですけれども、現実にこういうふうな委員会が動き出すと、どうしても大多数の教員意思、あるいは職員の意思が無視されがちです。そういう点からやはりおもしろからぬいろいろなトラブルが起つて来ることが多々あるわけであります。そこで私としましては、まず校長を含めた意味の理事者側が一つ、それから教職員の側から一つ、そうして理事者側、教職員側双方協議して、第三者の学識経験者を選んで行く、そしてそれらを知事が任命して行くという構成にする。しかも理事者側が出し、教職員側から出す者は、すべて互選にして行くような形をとるということにすると、相当民主的な委員が出て来るのではないかというふうに考えております。  それから第十一條でございますが、第十一條は一項から六項まであるわけです。この規定について、私は一つの明確な結論は持たないのでありますが、何かしらぬが、この中にはある意図が含まれているのではないかと考えられるのであります。ある意図と申しますのは、明確に申すことは差控えますが、その委員の中には、あるいはこの私立学校協会、あるいはこの団体、あるいはこの組合というふうに、私立学校関係の各種団体が競い合つて、この原案作成中に、おれのところからも委員、おれのところからも委員というような形で、委員選出法律でもつて優先的に規定してもらいたいというような意図があるような感じがするわけであります。非常にその間微妙であり、しかも非常に複雑であります。ことに四項と五項の関係などは、一般しろうとが法律を読んだだけでは、どういう意味かわからない。四項で言つて、また五項で同じようなことを言つているようでもあるし、打消しているようでもある。それであるから、この第十一條はもう少しすつきりしてもらいたい。言いかえたならば、もつとつつこんで言いますと、私がさつき言つたような委員の選定をするならば、こういうような第十一條の候補者の選定方法規定はいらないというふうに考えております。  まだ小さなことは、たくさんありますけれども、時間も来たようでございますので、以上を申し上げて、もし御質疑がありましたらお答えいたしたいと思います。
  16. 原彪

    原委員長 これより参考人に対する委員の質疑を許可いたします。大体一人当り五、六分でお願いしたいと思うのであります。
  17. 若林義孝

    ○若林委員 いずれも最も御関係のある法案でありますので、真剣なお気持があふれておる御意見に対しては、深甚なる敬意を表して拜聽いたしたのであります。  それでここにどなたでもいいと思うのでありますが、総括的に御発表になりましたのは、私学団体の総連合じやないかと思いますので、松岡さんにお尋ねいたしたいと思います。そのお立場での御意見がきわめて濃厚に現われてのお話であつたのでありますが、経営者だけの学校でもなければ、教授だけの学校でもないまた学生だけの学校でもない、いわゆる公益性を持つておるものでありますが、その中に学生諸君の方からきわめて熾烈なる意見の開陳があるのであります。それを総連合会あたりで、どういうように取扱われておるか、またお聞きになつたかどうか、またそれに対してどういうような態度をおとりになつたか。われわれといたしましては、直接学生が国会へ押しかけて来ることを好まないのでありまして、学内の意見は学内でまとめて国会へ持つて来てもらうように、学生諸君には言つておるのでありますが、松岡さんなり、あるいは教授連合の方なりの、特に学生に接触面のある先生から承れれば、けつこうだと思うのであります。
  18. 松岡熊三郎

    松岡参考人 私学団体連合といたしましては、各私立学校のつくつておる協会連合でありますから、学生のことは、各学校でそれぞれ折衝していただくものと思つております。私の属しておる学校といたしましては、ときどき学生から質問があり、これに対しては説明を行つております。
  19. 片山金章

    片山参考人 中央大学におきましては、大学管理法案並びに私立学校法案についての特別委員会をつくりまして、そこに教授並びに学生諸君が若干選ばれまして、合同でこの問題について検討を続けておるのであります。しかし必ずしもその活動は活発とは言えないので、私立学校法案に対してこういう結論になつたということを、まだ私のところまで報告が出ておりませんが、しかし検討されておるという状態であります。なおこの法案ができました際に、若干大学内における教授と学生諸君との間において、十分な連絡がついていなかつたというような事実が、多少あつたのではないか。これは少くとも私らの耳に若干入つておるので、私立学校法案というような重大な法案でありますから、本来申しますならば、各私立大学において教授並びに学生諸君が、この法案に対して十分なる関心を持つて検討を続けるということが、もう少しあつてしかるべきではなかつたかというような印象は、私個人として持つておるわけであります。
  20. 若林義孝

    ○若林委員 大濱氏のお話であつたと思うのでありますが、その内容の中に、二年間この私学校を練つたというお話があつた。まことにその御苦心のほどに敬意を表するものであります。この二年間練りに練られた中に、やはり学生の意向を御参酌されたものだと思うのでありますが、突如として――片山先生が今おつしやるように、個々別々に当つたと思うのでありますが、国会へは日本全国の学生がこういう意見を持つておるのだというような建前で、違つた意見を持つて来るわけであります。私たちは、少くとも学内のことは学内でまとめられて、私学全体でまたまとめられて国会にお持ちを願うように学生諸君に話しておるのでありますが、少くとも学生の気持は、教授を通して国会に持つて来るのが理想ではないかと思うのであります。現在のところは、この私立学校法というものを民主的にやつて行きたいという御希望は、どなたの御意見にもあつたわけであります。しかしここまで参ります間に、いわゆる学生を除外する傾きがあつたということは、御自身民主的だということを希望せられておりながら、その実態においては、非民主的であつたと学生諸君から言われてもしかたがない。同時に、そのきらいは、国会が非民主的だ、文部省が非民主的だという声が、学生の間から出て来るのではないかと思うのでありまして、そう急にも、間には合わぬと思うのでありますが、私たちは学生の意見に敬意を表して、過日来時間をさいて聞いたのであります。今日の皆様の御意見をも貴重な御意見として参考といたしたいと思いますが、将来かくのごとき法案がもし問題になりますときには、ぜひとも学生諸君が單独に政治運動のごとき行動に――政治運動とは私は思いませんが、しかし政治運動に類似するがごとき運動となつて現われて来ることのないように、ほんとに民主的にということを国会に希望せられるのなら、学内においてもその気分でひとつ実際やつていただきたいことを希望いたしまして私の質疑を打切ります。
  21. 渡部義通

    ○渡部委員 ただいまの若林君の意見には、非常に傾聽すべきものがあつたと思うのであります。その意見が当然法案の中にも反映されなければならないような重要な要素を持つておると思うのでありますが、今まで私立学校法案については、その学校特殊性、それから自立性あるいは独立的な性格、また公共性ということが非常に強調されていた。もちろんこの三つの性格を今日の私立大学が持つておることは当然であり、持たなければならぬのであるが、自立性または自主性ということの中には、今若林君の発言にもあつたように、單なる学校独立あるいは自立性というだけではなくて、その自立性というものが民主的な自立性であり、民主的な自治でなければならぬと思うわけであります。すなわち学校経営あるいは運営の上で、学校当局や教授や、学生の意見が、十分に正しく反映されるような形での自治が、大学及びその他にとつてはぜひとも必要なのであつて、そういう性格が機構の上に反映されなければならぬ。ところがこの法案全体を通じて、そういうような民主的な自治というものが、機構の上に反映されておるという片鱗さえも見えていない。ことに学生諸君が、今日非常に窮乏生活で、大部分がアルバイトでなければ生活できないような状態に置かれているときに、学校経営上の学費の問題で、学生にとつては、ことに重大になつて来ておるのである。こういう面から見ても、また今日学生や教授に対する学界一般の傾向として、当局の干渉や思想等の弾圧が非常に行われようとする状況のもとにあつて、やはりこういう面からも、教授や学生の意見が、十分に学校経営の上に、あるいは運営の上に反映されるようなものでなければならないと思うわけであります。ところがそういう民主的な自治の機構というものが、この法案の事に少しも見えておらない。我妻君は現に大学管理法というようなものについて審議中であるから、私立大学の問題がもしそれと関連して取上げられみようになつたならば、そのときに初めて法案を改正することが考えられてもいいのではないかという意見を吐かれたようです。しかし現在のように私立大学そのものが少しも民主的な自治になつていないときに、若林君の言われたように、私立大学当局があるいは二箇年間にわたり、あるいは五十数回にわたつて審議に審議を重ねたという結果が、このように非民主的な法案ができ上らなければならないような状況のもとに審議されておる。それほどまでに大学当局の考えというものが、学生や教授諸君の間から浮き立つておるというような現実の状況のものでは、そういう民主的な自治の機構というものが法案の中に盛られることによつて学校の民主的な自治というものが助成されるようにならなければならぬ、こういうところに法案の重要な意味があるのではないか。この点をひとつ我妻君に質問したいのであります。  次にこの法案を見ますと、私立学校審議会というものが、構成そのものにおいてすでに問題があることは、先ほど日教組の江口君が言われた通りでありますが、この私立学校審議会というものは、構成そのものにおいて、文部大臣や知事に対してまつたく権限のない存在になつておる。委員の任命が大臣や知事において行われるのではなくて、この任務が單なる諮問機関である。しかも知事が教職員の任免に関する問題から、さらに教科書の問題までも取扱うというのに至つては、知事が明らかに学校教育行政あるいは教育方針の上にまで干渉し得る余地が、十分にここに残されておる。こういう事柄を私学総連の方々はどういうふうに考えられるのか、この点を私学総連の責任者の方にお聞きしたい。  学校の公共性に関しては、これは学校教育法規定されておる範囲内で十分なことであつて、それ以上に規定を設ける必要はないのに、この法案の中にはあらゆる面でその規定が特に述べられている。こういう点についても、どういうふうに考えられておるのか。それから公の支配に属する、つまり憲法に関する問題でありますが、公の支配に属するということについて、私立学校としてははなはだおかしいのじやないかというふうな我妻君の御意見でありましたが、これは單に補助金助成という面に関するばかりではなくて、この法案全体の中に、たとえば教育行政に関する問題でも、その他でもやはり公の支配に属するというよう面が非常に出ているのであつてこの点については我妻君はどういうふうに考えられるのか。以上三点のことをまずお開きしたいと思います。
  22. 我妻榮

    我妻参考人 御質問にお答えいたしますが、私が先ほどいわゆる国立大学の管理法ができたあとで、本法案を改める必要があれば改めてもおそくはないだろうということを申しましたことにつきましては、多少私の言い方が不十分なせいか、徹底していない点があるように思いますので、その点を最初私は弁明いたします。  私が申しましたのは、この法案の中から大学に関する部分を除いて、やがてできるであろうところの国立大学管理法、あるいは行政法というものと一本にせよという説がある、その説に対して私は二つのことを申したつもりであります。その一つは、今度できる国立大学に関する法律案の中に、教授会あるいは評議会あるいは学長というものの権限、あるいは組織、あるいはその他人事というようなことを規定するであろうが、そういう点については、私立大学に関して適用しない方がいい。私立大学はそういう法律規定に、よらないで、自主的にまかせた方がいい、こういうわけであります。  それから第二点は、この法案によつて私立大学審議会というものが中央に一つできる。それと今度は大学管理法で中央に何らかの委員会ができると、同じ大学について、私立大学に関する中央の会議体と、国立大学に関する中央の会議体と二つできるのはおかしいじやないか、それは一本にしてもいいのじやないかという説があるが、私は必ずしもそうは思わないけれども、万一でき上つてみたものが一本にした方がいいようであれば、この法案のその部分を改めてもよかろう。それでもおそくはないだろう、こういうふうに申したのでありまして、先ほど渡部さんの前の委員の御意見の中にも、私は、この法律を今つくつて、そして必要となつたならばあとで改めてもよかろうと、一般的に言つたかのごとく御理解になつたようでありますが、それは私の本意ではない。私の本意とするところは、大学の行政全部に関するものについて、国立大学私立大学とは、あくまで別であるのが妥当だ。ただ中央に同じ委員会二つつては困る、それはむしろ一本の方がいいのではないかという説が出たなら、必ずしも私はそうは思つていないのですが、その部分をそのときに改めてもおそくはなかろう、こう申したのであります。  それから渡部さんの他の御質問で、この法案は民主的でないという御質問だつたと思いますが、なるほど問題はその点に関して二つになると思います。それは私立学校審議会及び私立大学者議会の構成の問題と、それから各学校法人理事評議員の問題と二つあると思います。私は結論を申しますと、どつちもまあまあこの法案でいいのじやないかというふうに考えるのであります。この法案の各学校法人に置かれる理事あるいは評議員というものには、職員が相当入るようになつておると理解しております。それからまた学校審議会の方では、なるほど職員は評議員に入つて来ないようでありますが、しかしその点は学識経験者を入れるというところで、ある程度までいろいろな人が入るのであります。ただその学識経験者の選択の基準に関して、もう少し具体的な規定があつた方がいいかもしれぬということは、私先ほど申し上げたのでありまして、その点はそう思うのでありますけれども、しかしその次に申しましたように、運営のいかんによつては、必ずしもそうとは言えないのじやないかというふうに考えておるわけであります。ことに経営者側に重点が置かれるのだというお考えのようでありますけれども、その経営者すなわち理事者には、最近は各大学の教授が相当お入りになつておる実情のように伺つております。この法案はそのことを前提として、各大学学校法人理事には、教職員が入るようにちやんと名簿もできておりますから、それらの実情から、必ずしもそうではないだろうと思うのであります。  それから一つおいて、最後にお聞きになつた点は、御質問の要旨があまりよくのみ込めなかつたのでありますが、公の支配という問題であります。これは見解の相違かも存じませんが、学校行政というものに対して、国家が全然手放しでなければならぬということは、憲法のどこにもないのじやないか。この法律私立学校の設立の認可、設置者の変更の認可、あるには最悪の場合における閉鎖命令というような権限を所轄庁に保留いたしましても、教育に関する憲法規定に違反しておるとは思いません。ただそのやり方がいいか悪いかということは、またさらに問題になるだろうと思いますけれども、事いやしくも教育行政に関しては、公の支配があつてはならないということにはならないのじやないか。従つて問題はもつぱら八十九條の低利資金を貸すにも、公の支配をしなくちやならぬかどうかという問題に限定される。そして私の考えは、先ほど申しましたように、なるほど補助金を出すということは八十九條に違反するだろうけれども、低利資金を出すということになれば、その低利資金の出し方を考えれば、必ずしも、公の支配に属したものではないというふうな見方がなし得るのじやないか、というような考えを申し述べたわけであります。
  23. 松岡熊三郎

    松岡参考人 所轄庁の権限が非常に大きい、それから学校教育法との関係がどうなるかというお尋ねにお答え申します。先ほど最初に申したように、従来は各種の私学に関する強力な監督規定があつた。それが学校教育法というものが新たにできて、そこで官公立学校と一緒に新しいまとまつたものができたということになつておりますが、あの学校教育法ができた際は、非常に早々の際につくられたのでありまして、決して学校行政に関する民主的ないい法規であるとは言えないのであります。そこで学校教育法にある監督規定をできるだけしぼつて、やむを得ないものだけを私学校の中で所轄庁の監督事項にするという建前でできておるのであります。その事項は五條の一号と二号でありまして、一号の設置廃止、設置者の変更、これはもちろん学校教育法にある規定ですが、この規定はどうもやむを得ないのじやないか。現段階において、私学は一応国家とのつながりをここに求めておく方が妥当ではないか。ことに御承知の通り私立大学におきましても、現在においては学校に関する教育基準ができ、それから私立大学設置審議会がありまして、そこで基準に合するかいなか等を審査して、合格したものだけが文部省認可を得るという法制になつておるのですから、そうなれば、だれでも自由自在に学校を、設置できるのでなくて一定の基準に達したものだけが、審議会を経て文部大臣の認可を得るという制度になつておるのでありまするから、私学校においても、現在としてはこの認可のつながりを持つ。従つて設置者の変更があれば、もちろんそれについても認可を得なければならぬのは当然であるということであります。  さらに二号は閉鎖でありまするが、すでに国家とのつながりを持つて認可を得てつくつた学校であるのですから、それが法令違反をやつたということになれば、閉鎖を命ぜられるのもやむを得ないはずであるというので、この二つを最小限度として残して、あとの学校教育法にある監督規定は一切これを排除するという建前でできておるのであります。  次の規定で、教員免許状教科書の権限が書いてありまするが、これは高等学校以下の方の問題で、よく存じておられる堀内先生からひとつ御説明願いたいと思います。
  24. 堀内操

    堀内参考人 ただいま松岡先生から、所轄庁のことについて御説明がございましたが、私どもも、最初は所轄庁というような役所でなく、権威ある機関という意味で進む方針でやつて来ておつたわけですけれども、まだ日本の現状においては、権威ある機関という言葉で言い表わせる団体というか、そういう機関というものはどうもむりだろう。従つて監督庁とか所轄庁というような役所の名前をここへひつばり出さなければならぬということになつたわけでありまして、将来は権威ある機関というようなぐあいにかわつて行くのが望ましいのではなかろうかと考えております。  それから私学審議会のことでございますが、特に今まで多くの方々から論ぜられておりまするその論点は、大学に非常に比重がかかりまして、高等学校、中等学校というような面のことは、お忘れになつた観があるのではないかと思うのでありますが、われわれ高等、中等、こういう学校においては、審議会というもの――これが諮問機関であるか、決定機関であるかということはわかりきつたことでありますが、その審議会決議機関になつてもいいものでありましようかどうでしようか。もしそういうような非常に強力な線があるならば、たいへん望ましいのではなかろうかと思うのであります。今まで日教組のお方からの御説明によりますと、教育委員会私立学校の、いわば監督価というものを持つて行くのが最もいいんだというふうに私は聞いたのでありますが、これはすでに教育委員会法が審議されるころから、私どもとしましては、絶対に賛成しかねていたというところであります。もしもそうであるとするならば、私どもも喜んで教育委員会代表も送り、その支配下に属することであつたでございましようけれども、そうでなかつたということは、全面的に賛成できないものがあるということを御承知おきいただきたい。もしも、かりに教育委員会に入つたといたしますると、公立学校教育考えるべき、――あるいは公立でなくして教育全体とおつしやるかもしれませんけれども、とにもかくにも公立学校教育考えてつくられている委員会に、ほんのちよぴつとつけれてしまつたのでは、十ぱ一からげ式に考えられるし、委員会はなるほど公選の委員の方ではあるけれども、七名の方がおりましてそこへ私立学校という特殊性のあるもの、特に自主性を強調しなければならないものが、ひまがあつたらめんどう見てやるよというようなことに対しては、どうしても賛成することはできないのであります。前へもどるようでありますけれども、いわば権威ある機関によつて私立学校監督されるべきであるけれども、現段階においては、所轄庁という役所の名前を出して来たければならぬというふうに考えられておるわけであります。  なお、先ほど教科書及び教職員、特に教職員の任免にというふうに私は承つたのでありますが、これは教職員免許状を交付するその事務をやられるということでございます、教科書検定をするその事務役所がやるということでございます。私先刻も御説明申し上げましたように、單に事務をやらせるんだ、当然その下に公正な委員会ができて、そしてやつて行くべきであるということは、言うまでもないわけであります。特に先ほど私学審議会委員選出について、いろいろお言葉がございましたけれども、われわれの団体といたしましては、当然互選の方法で行くべきであろうというふうに考えておるわけであります。
  25. 原彪

    原委員長 時間がありませんから、質疑は要点だけを簡単にお願いいたします。
  26. 渡部義通

    ○渡部委員 この法案を、私の言つた民主的な自主性というものの上から考える上に重要なことは、学校の運営あるいは経営の上で、助教授や学生等の地位をどういうふうに考えるかという点に関連して来ると思うのです。それれでいろいろの議論もそこから出て来るわけなんですが、この点については、大学行政法の達成に協力しておられる我妻氏から、学校経営あるいは運営上における教授、助教授、学生、というものの地位の重要性について、どういうふうに考えておられるか。この重要性の程度において、機構の上にどういうふうに反映さるべきものであるかという点について、お聞きしたいと思います。  それから先ほど私学総連の方に質問した点について、最も重要な点のお答えがいただけなかつたわけですが、法案成立において非常に長い間愼重審議されたにもかかわらず、学生たちの間、あるいは各学校における教授間に、いろいろな異論が出て来ている。つまり法案の作成にあたつて、長い過程において、広汎な教授たち、あるいは学生諸君の意思を、一体どれだけ反映される措置を講じて来られたのか、この点についてお聞きしたいと思う。  第二には、早稻田大学大濱氏にお伺いしたいのですが、早稻田大学の中には、教授団及び学生の合同の意思において、かなり広汎な反対の動きがあるように聞いておるが、これはどういうふうな事情であるのか。大濱氏の代表されておる意見というものは、早稻田大学の広汎な動きとどういうふうに関連があるのか、この点をお開きしたいと思います。  それから私学総連の答えていただいた方に、教科書等々のことについてですが、これは知事や大臣が、教科書検定に関して権威ある機関であるというふうにお考えになつておられるのかどうか。知事や大臣が、教科書検定する上に権威ある機関だと考えておられるというその考え方こそが、私学が従来ほんとうの意味での自主性独立性、特殊性を持ち得なかつたゆえんではなかろうかというふうに考えられるわけです。この点についてはそれは單に杞憂だとおつしやるけれども事務こそが事実は問題なのであつて、この審議会にそういう機構がないために、こういう事務こそが問題であるのですから、この事務ということについて、どういうふうにお考えになつておるのか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  27. 我妻榮

    我妻参考人 各私立大学で、教授会にいかなる権限を認めるか、あるいは学生の意思をいかに反映するかというようなことは、各私立大学でそれぞれその大学の伝統と特色に基いておきめになつてしかるべきだと考えております。
  28. 渡部義通

    ○渡部委員 そういう法案考える上に、どういう考えを持つておられるかによつて、あなたがこの法案について意見を吐かれる場合に、あなたがどういうお考えを持つておられるかということが非常に重要なので、その点をお聞きしておるわけです。
  29. 我妻榮

    我妻参考人 私の考えは、それは私立大学にまかすべき問題なのだから、この法案にはその点に関しては何も書く必要はない、そういう意見でございます。私立大学に関しては、それらの点は各私立大学にまかすべきであつて私立学校法には書く必要がないことだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  30. 渡部義通

    ○渡部委員 一般的に教授や学生の、大学経営の上における地位や重要性について、あなたがどういうふうにお考えになつておられるのか、あなたのそのお考えこそが、この法案についてのあなたの見解の基礎になるわけですから、この点をお聞きするわけです。
  31. 我妻榮

    我妻参考人 ちよつと了解いたしかねるのでありますが、私は各大学について、教授会について相当の権限を認めるべきだと考えておりますし、また学生の意見は反映させるように、いろいろ方法を講ずべきだと、一般的には思つております。しかし私立大学については、またそれぞれ特色がありましようから、私が一般的に考えておるよりも、もつと強く反映させるところもあるだろうし、あるいは私の考えておるよりは、やや弱く反映させるところもあるだろう。しかし私立大学については、法案でどうしろということを言わない方が、むしろいいというふうに考えております。
  32. 堀内操

    堀内参考人 私ども教科書検定なり、それから教員免許状なりについて、知事や文部大臣を置いた方がいいということは、毛頭考えておりません。それから事務という点については、現在の教職員免許状について、その條文などをガリ版に刷つたり、それを配布したり、今私学振興協会というようなものを持つておりますが、そういうようなものを広く通知させるような仕事をやらせておるわけでありまして、われわれの適正なところの委員によつて検定免許状のことも研究したり、やつたりして行きつつあるわけでございます。
  33. 松岡熊三郎

    松岡参考人 先ほども申したのでありますが、私学連合は、各私学団体連合会でありまして、私学団体代表者が集まつてすべてをやつておるのであります。教授、学生等の意見をいかにして反映させるかということは、各学校の問題であり、各学校が集まつて私立大学協会私立高等学校中等学校協会私立学校協会私立幼稚園協会というものをつくつておるのであります。それぞれの協会でも、それぞれの学校方針を反映して協議されておるでしよう。各学校、各協会でそれぞれやつておられるのですから、その代表者が集まつて連合のことをやることは、すべてその下を通じて協会学校、教授、学生に通じてのものであるから、その代表者が集まつてやることは自由である、そういう意味で民主的にやつたと申したのであります。
  34. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 私は六名の参考人から簡明率直に最終的結論を伺いたいと思います。すでにそれを表明された方もありますが、すなわち本法案国会は通過せしむべきかいなか、その点についてお伺いしたいと思います。もとより非常に大きいバツクを持つておられる方々ばかりでありますから、公人として、あるいは最終的結論を申されることができない方もあるかもしれませんけれども、公人と個人とにわけてひとつお答えを願いたい。着席順に松岡さんから願いたい。
  35. 松岡熊三郎

    松岡参考人 最初に申し上げました、通り、この法案をぜひ今議会で通過させていただきたいと存ずるのであります。個人といたしましてはなお今後において検討を要すべき点は少からずあると思うのでありますが、これはこの法案を通過させてから後に愼重検討をいたして、さらにいい法案に改正して行くという点はあろうと思います。しかしこれは検討の上できめることでありまして、今どの点ということは申し上げかねます。
  36. 大濱信泉

    大濱参考人 私は私立大学協会の副会長といたしまして、協会側としてこの法案今期国会の通過を希望いたします。なお個人としましては、この法案の中に一、二この国会において、もしお願いができれば御修正願いたい点があるのであります。第五條の第二号、第六十二條、これはこの法案の理想として掲げております私立学校自主性を確保するという観点から、削除が願えれば仕合せと私は思うのであります。それ以上は別にありません。
  37. 片山金章

    片山参考人 大学教授連合といたしましては、先刻申し上げましたように、本法案の上程に対してこれを阻止するというような、積極的な声はほとんどなかつたと申し上げてもよろしいのであります。むしろこの法案国会に上程せられるベきであるという意見の方が強かつたということを申し上げておきます。私自身としては一応この法案国会通過をお願いして、さらに将来の時期において、ことに大学校案といたしましては検討を要する、こういうふうに考えております。
  38. 我妻榮

    我妻参考人 私は先ほど申し上げましたように、今日の情勢から、この法案を通過なさることを希望いたします。そのときにも申し上げたように、学術会議代表としての意見は非常に複雑でありまして、申し上げかねます。先ほど二つ決議一つ意見とを申し上げましたから、御想像願いたいと思います。
  39. 堀内操

    堀内参考人 重なりまして恐縮でありますけれども、私ども日本私立中学高等学校連合会では、千八百四十八校もあり、生徒にしましても六十七万――七十万に近い生徒を持つておるわけであります。そうして本席には各地区のそれぞれの代表者が集まつておるわけでありまして、これらの方々は、十一月十九日、理事長兒玉九十氏の名において声明しました通り、一刻も早く成立を期待しておるわけであります。当然教育委員会法とともにできなければならなかつたものが、一年有半にわたる空白状態に置かれたために、われわれ私中高連は非常な苦しみにあつたわけでありまして、そういう点からも、ぜひとも今議会において成立を見ていただきたいということが念願であります。私個人といたしましては、もちろん完璧な法律だとは考えられませんので、今後修正に修正をしてでも、いいものにして行きたいということは、当然考えるわけでありますが、団体といたしましては、総意によつてぜひ今議会に上程され、しかも成立してほしいという結論でございます。
  40. 江口泰助

    ○江口参考人 私は、公にしましても、個人にしましても、この法律案は今次国会では審議未了にして、次の通常国会において大学管理法と並行して、その緊密な連絡のもとに愼重審議して通過さすべきであると考えております。
  41. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それでわかりましたが、我妻先生は先ほど学術会議決議がある云々と申されましたけれども、それは七月初旬でありまして、その当時発表されておつた文部省試案と、二、三日前にこの委員会に提出されましたところの私学校というものは、あの従来非難された監督の面がほとんど削除されておるのであります。もしこの削除されたものが、学術会議において論議されたと仮定したならばどんなであつたか、推定でよろしゆうございますから……
  42. 我妻榮

    我妻参考人 その点は先ほど申し上げましたように、第二部、第三部が決議をし、そうして第六部が意見の一致を見たのでありますが、私は副会長であると同時に、第二部の会員でありまして、当時第二部の決議のときに参加しておりました。先ほど申し上げましたように、そのときに問題になつたのは、新聞紙上で発表になつたものと、ただいま拝見するものと非常に違つておる。ただいま拝見したようなものであれば、第二部の会議では必ず修正しなければならぬ、これは私立学校の独自性を危うくするものであるとは言わなかつたのであろうと推測されるということを、私は初め申し上げました。その際にも注惹いたしましたように、私個人の推測であるということを、あくまでも御留意願いたいと思います。
  43. 今野武雄

    今野委員 我妻先生にお伺いしたいのでありますが、先ほど若林君から、非常に学生の問題が出たのですが、第一條に「自主性を重んじ、公共性を高める」という二つが並んでおるのです。文部大臣の説明を聞いても何を聞いても、公共性という点が非常に強く出ておるのですが、私の考えでは、ほんとうの民主的な意味の自主性を高めることが、同時に公共性を増すゆえんであるというふうに考えるのでありますが、その点我妻さんはどんなふうにお考えでありましようか。
  44. 我妻榮

    我妻参考人 時間がありませんときに、非常に重大な問題をお聞きになりまして、簡單に申し上げて誤解の生ずることをおそれるのでありますけれども、それをあえて申し上げますと、大学を民主的にするということについて、学生の意見を、法制上教授会その他の中に加えなければならないとは思つておりません。大学を民主化するということは、学生の意見をできるだけ聞いて、それに即したような教育をすべき教育の大方針を言つておるのであつて、法制の面においても、それと何  それではこの程度で休憩することとし、午後二時より再会いたしたいと思  いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 原彪

    原委員長 それではさよう決定いたします。   休憩いたします。     午後零時三十六分休憩、      ――――◇―――――     午後二時五十六分開議
  46. 原彪

    原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  教育委員会法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  なお大臣に対する御質疑は、大臣がお見えになつてからこれを許します。  それでは質疑に入ります。
  47. 松本七郎

    松本(七)委員 この前の委員会のときにも、ちよつと触れた点もありますが、教育委員会教育長の関係で、教育委員会法が制定される当時に一番問題になりましたいわゆる助言と推薦のこと、これに関しては、教育委員会の力をできるだけ強くする、そうして教育長は専門的な点について、これを補助するという建前に立つてつたはずである。それで教育委員会法制定当時に、最初文部省から出て来ました案では、教育長の教育委員会に対する発言力が強くなり過ぎるおそれがあるの、で、わざわざ衆議院も、参議院も、全会一致で「教育長に対し、助言と推薦を求めることができる」、こういうふうに、教育委員会の方を強くする修正にかえたわけであります。それを今回の修正案によりますと、またもとにもどして、教育長に対し助言と推薦を求めるということに逆行させておる。これはこの間の辻田局長の答弁でも、なるほど法文の上から見れば、必ずしも教育長の権限が強化されておるようにはとられないかもしれませんが、実際の運用の面で、今までの教育委員会の実績に徴してみますると、こういう規定をすることによつて教育長がだんだんに力を持つて来ることになるのではないか。特に修正案を見てみますと、教育委員会会議を開く場合に、教育長は必ず出席しなければならぬようになつております。第五十條の規定を見ましても、教育長は教育委員会のすべての会議に出席しなければならぬ、こういうふうな規定あれば、だんだん実質的には教育長の力に依存して行くような結果になるのではなかろうか。この点教育委員会をこれから強化しなければならぬという方針と、矛盾逆行するおそれがあると思いますので、この点に対する政府の御見解を伺いたいと思います。
  48. 辻田力

    ○辻田政府委員 教育委員会教育長との関係につきまして、今回の改正によつて教育長の権限を非常に強化するのではないかという御質問でございますが、これは一昨日の会議のときにも申し上げましたように、現在の四十九條の中から但書を削除いたしまして、これを五十條の三といたしまして、第三章の教育委員会の職務権限をここにまとめまして、教育長の権限等につきましては、これを全部一つの別のところにまとめるという法の整備をいたした関係でございます。  なおこの前の政府原案と今回の改正との関係につきましては、これも先ほど申し上げましたように、さきの政府原案におきましては、教育長の助言と推薦というのは、教育委員会が仕事をする場合の必須の條件であつたのでありまするが、今回におきましては、さようなことは規定してないのでありまして、教育委員会におきましては自由に仕事をなし得るのであります。ただ教育長といたしましては、その職責の特殊性から考えまして、今回の五十條の三におきまして、教育長が専門的な職員であり、かつ補助機関であるという立場におきまして、教育長の方から適切な資料を提供して参考に供するということにいたしている次第でございます。  なおすべての会議に出席するということにつきましては、現在の法規を見ましても、教育長は教育委員会の仕事のすべてについて事務を執行する機関になつているのであります。教育長がさような立場あるいは職責を持つておりまする以上は、会議に出席して、どういうふうな経過によつて結論が出たか、方針がきめられたかということをよく承知していなければ、事務を執行する場合に、委員会の定められた内容に反するようなことになつては相なりませんので、すべての会議に出席いたして発言をすることができるのであります。しかし選挙なり、または議決なりに加わることができないのは当然でありまして、あくまでも教育委員会教育委員会自体において最後の決定をされるわけでありまして、教育長の発言ないしは助言推薦というものは、補助的な役目をなす次第であります。
  49. 原彪

    原委員長 大臣がお見えになりましたので、過日御通告がありました緊急質問に移りたいと思います。
  50. 渡部義通

    ○渡部委員 今日は私は大体二つの問題について大臣の御意見をお聞きしたいと思います。第一は学問の自由の問題であり、第二はそれに関連して現在起つている教職員の解雇の問題であります。  学問の自由ということが今日ほど学界及び一般民間の間においてさえ強調されていることは、かつてなかつたように考えます。このことは、今日学問の自由というものが満足の状態にないということ、あるいはそれがはなはだしく制約され、あるいは自由に関する危機が招来される憂いのあるということを、学界及び一般民間においてさえ、強く痛感して来ているという事実を証明するもののように思いますが、この点についての大臣の見解を伺います。
  51. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 学問の自由が、一国の学術の発展文化の振興に大切であるということは、まつたく同感であります。現在学問の自由と関連していろいろと論議されておりまするが、一つの点は、先ほどお話がありましたような、各大学における教授の身分に関していろいろの問題があつたということと、一つは、人事院規則によつて公務員の政治活動の制限が行われたということ、この二つの点と関連して現在特にやかましく論ぜられておるのだろうと思います。それらの点につきましては、むろん大学教授の身分というものを、軽率にむやみに処置する、こういうことは当然慎まなければならない問題でありますし、また政治活動の制限につきましては、これが濫用されまして、学者としての純粋な活動に対しても、これが政治的な活動であるというようなことで制限されるようなことがあつてはならない、そういう意味においても、私はその問題について十分に関心を持つているわけであります。
  52. 渡部義通

    ○渡部委員 憲法の二十三條に、学問の自由が特筆されて保障されているのでありますが、この学問の自由ということは、英文では多分アカデミツク・フリーダムということになつていたようですが、このアカデミツク・フリーダムということは、どういうことであるか、その本質的な概念について大臣の見解をおつしやつてください。  なおこれまでのこうした問題についての質問の場合に、大臣の御答弁はしばしばかなり政治的考慮をもつてお答えになつているようでございますが、学者たちは、今單に自分たちの身分上のことに関してだけではなくして、日本の学問科学教育という問題が、非常に重大な危機に瀕するのではないかという印象から、あるいはそういう現実の認識から、非常に強い学問教育科学に対する愛情と、またその将来に対しての危惧を持つているのでございますから、大臣といたしましても、大臣はもともと経済学者として、りつぱな科学者の出身者であられ、また大学総長をやつておられた方であるわけでありますし、こういうふうな学界における、あるいは科学者たちの間における気持というものについては、十分に了解せられているはずだと存じますから、かなり客観的に、学問的な見地に立つてとつお答え願いたいと思います。
  53. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 アカデミツク・フリーダムについての議論ということになりますと、詳しいことになれば、ずいぶんいろいろと議論があると思いますが、簡単に私の理解しているところを申し上げすれば、学術研究の自由、教育の自由、こういうことを表わしているのだろうと思います。
  54. 原彪

    原委員長 これは委員長の私見でありますけれども、ここは研究室で論争すべき学問的探究の場所でありませんので、ひとつ簡潔に質問の御趣旨を御質問願いたいと思います。
  55. 渡部義通

    ○渡部委員 委員長のお言葉ではありますが、私たちはそういうことは心得ております。しかしながら本質的な問題に触れることなくしては、われわれは今日どのような立法的な行為をする場合にも、十分事を行うことができないのでありまして、われわれとしては、やはりそういうところから出発して、現在の客観的な実情と考え合せて立法する要がある。それでそういう質問をするわけなのです。  次に学問の自由ということが、そういうふうなお考えであられると、その答えられた範囲内においては、もちろん私は正しいと思いますが、これに関連しまして新潟大学の開校式にイールズ陣士が、共産主義者は教育者者たるにふさわしくないという意味のことを述べられた。理由として、それは彼らはもはや授業をし、研究を行う真の自由を持つていないからであるということ、あるいは共産党員は思考の自由を持つていない、彼らは共産党に入党したときにその自由を放棄したものである、こういうふうに述べております。しかしわれわれはこの見解ははなはだ非常識であり、少しも科学的な客観的な根拠を持たない意見であるというふうに考えておるわけですが、この点についての大臣の見解はいかがですか。
  56. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 イールズ博士がそういう講演をされたことは事実でありますし、また先ごろニユージエント中佐がほぼ同じようなことを新聞に発表されております。それから日本人の学者の中にも、それとほぼ同じような見解をもつて意見を出しておられる方もあります。事実もし共産党員なるがゆえに、共産党の指令によつてすべて言動を支配されるということであれば、イールズ博士の見解は正しいと私は思います。しかしこれは事実どうであるかの問題なのであります。従いまして私としては現在まだその点は研究を要すると考えております。     〔委員長退席、若林委員長代理着席〕
  57. 渡部義通

    ○渡部委員 日本学術会議第四回総会は、国立大学教授及び研究者を人事院規則から除外する件を京都大学学長鳥養氏を除く全員をもつて決議いたしました。大臣はこの決議に対してどういうふりにお考えになつておられますか。
  58. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 先ほども申しましたように、国家公務員たる身分と関連して、政治活動の制限が人事院規則によつて規定されたわけであります。しかし政治学経済学、社会学というような、社会的な諸科学を専攻しておられる学者の、ほんとうの学問的良心による研究の結果の発表というようなことが、そういう政治活動の制限と混同されるおそれがないわけではないとしいうところから、学界にいろいろの議論、非難が出ておると思います。それについては、人事院総裁が相当明瞭に、学者がその専門とする学術研究の結果を発表するということであれば、あの規則に触れないということを、解釈とし明らかにされております。また文部省といたしましても、その点についてに十分に考える必要がありますので、具体的ないろいろ場合につきましては、人事院の解釈をはつきりしておきたいということで、ただいまいろいろ折衝をいたしております。それらによりまして、心配されるような点はなくなるのではないかと私は考えておりますので、これを必ずしも特例として認めなければならないとは、現在考えておりません。
  59. 渡部義通

    ○渡部委員 この学術会議及び大学教授連盟において、大学学術研究機関の人事は、政党や所属の党を事実上の理由として処置すべきではないということを、特に強調されたわけですが、この点についての、大臣の御意見、つまりこれに賛成であられるのか、反対されるのかについてお伺いします。
  60. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 その点は先ほどイールズ博士の声明についての私の見解をお尋ねになつた場合にお答えしたので、大体わかつておられるのではないかと思います。つまり原則としては、ただ政党所属というようなことだけでもつて、教授の職に不適格であるということは、言えないと思います。けれども、ある特定の政党がもしその所属員に対して、政党の支配にどうしても属さなければならない、その思想等が政党によつて必ず制肘されるのだということが事実であるとしますれば、それに基きまして考慮をしなくてはならないと思います。
  61. 渡部義通

    ○渡部委員 人事院の十月二十二日の各省大臣にあてた通達の説明の中に、先ほどちよつと触れましたが、やはり大学教授はその専門する問題について、研究論文その他を発表し等々のことは、人事院規則の国外にあるというふうに書かれてあるのでありますが、しかしここに重大な問題があるのではないか。たとえばいかなるその専門部分に属しない問題であつても、それが学界全体の問題であり、学問の自由に関する問題であり、あるいは日本の将来に関する問題であるというような事柄について、たとい自然科学者であつても、政治的な発言をその論文においてなり、言論においてなりに主張するという場合には、それはどうなるのか。ここで私たちが考えてみなければならぬことは、もしもあの戰争のときに自然科学者あるいはいろいろの科学者教育者たちが、自由にその政治的見解を発表することができて、このような戰争には反対である、あるいは科学を戰争のために用いるべきではなくて科学は人類の福祉のために、社会の進歩のために用うべきであるというふうな発言が強力になされたならば、おそらくあの戰争の勃発することに関して大きい影響があつたと思います。この影響は、今日から見れば日本に望ましいところの影響でなければならぬのである……。
  62. 若林義孝

    ○若林委員長代理 渡部君にちよつと申し上げますが、他にも大臣に対する質疑の通告があるのでありますから、大体五分以内に結論をつけてください。
  63. 渡部義通

    ○渡部委員 そうだとするならば、すべての科学者なり教育者なりが、この重要な問題について自由な意思の発表をするということは、今申し上げたような意味で、日本にとつて、あるいは日本の幸福にとつて、重要なことではないかと考えられるわけですが、これが人事院規則に違反するということになると、事は重大だと思うのです。この点について御見解を承りたい。
  64. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 人事院規則というものは、国家公務員たる身分に関連しての政治活動の制限がありまして、国家公務員でない人については、そういう制限は付せられないわけであります。国家公務員たる身分にある者は、原則としてある制限を受けることは、その身分の上からいつて、適当であると私は考えているわけであります。ただ学者が学者の良心をもつて研究をし、その研究の結果の発表という場合には、これは政治活動の制限にはあてはまらぬという点で、人事院規則に対する人事院総裁の解釈が発表されたのだと思います。自然科学者が、政治の問題あるいは経済政策の問題を論ぜられるという場合には、それはあてはまらぬということが一般的には言えると思う。ただしかし、自然科学者でありましても、一方において経済学専攻をしておらぬとは限らない、また政治学者であるという場合もあるかもしれません。そういう場合は、單なる自然科学者ではなくて、自然科学者であると同時に、政治学者であり、経済学者である場合であろうと思います。政治学経済学というものを、大学教授として専攻する程度に研究をしておられるということであるならば、これは問題は別ではないかと思う。ただしかし、そうではなくて、自然科学者である方が、自分の専攻する学科としてやられるのでなく、ただ一般的に政治を論じ、経済を論ずるという場合は、あてはまらぬと思うのであります。
  65. 若林義孝

    ○若林委員長代理 先ほどから申しますように、他に質疑の通告がありますので、あまり長くなりますと……
  66. 渡部義通

    ○渡部委員 もうあと三、四項目です。
  67. 若林義孝

    ○若林委員長代理 簡単に要点を願います。制限をするわけではありませんが、あまりほかのことを、言わないように願います。
  68. 渡部義通

    ○渡部委員  簡単にやります。  今回のは論文の問題ですが、次に実際の行動の問題についてお伺いしたいと思います。たとえば、研究者や科学者が、その進歩ということに非常に熱心であり、そのために科学あるいは教育等の進歩を阻害しているような條件を取除く、あるいは促進するような條件を設けるために活動するというような場合、たとえば学術会議が先ほど申し上げたような意見決議し、あるいは大学教授連盟が、政党所属によつて、云々すべきではないという決議をしているような場合の行動、こうしたものは政治活動であると考えられるのかどうか。あるいはこうしたことに類似する活動というものが認められるのかどうか、この点をお聞きします。
  69. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 そういう具体的な問題になりそうな点につきましては、いろいろの場合を考えて、現在文部省が人事院と折衝をして明らかにしたいと考えておるところであります。
  70. 渡部義通

    ○渡部委員 文部省考えておるというならば――結論を出されるまでになつていないとおつしやるならば、それまででありますが、私は、今申し上げたような点は、科学者がその進歩のために、それを抑制しているような條件を取りのけるために活動し、あるいは進歩的な諸條件をつくり出すために活動するということは、科学者あるいは教育に関するならば、科学者あるいは教育者お任務に所属しているところの活動であると考えざるを得ないと思うのですが、この点について大臣の個人の御見解を伺います。
  71. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 そういうように、具体的にいろいろな場合について、考えなければなりませんので、私個人の意見をここで今申し上げることは、差控えておきたいと思います。いずれ人事院と折衝後、その上で具体的ないろいろな場合について、はつきりした解釈を明らかにしたいと思います。
  72. 渡部義通

    ○渡部委員 大臣は先ほど、單に政党に所属し、あるいは特定の政党員であるということのために、人事院規則に抵触し、あるいは解雇等々のことがあるべきでないという大学教授連盟の意見に、大体において賛成であるということを述べられましたし、その見解については、参議院においても述べられ、新聞においても発表され周知されていることでありますが、現に教職員の首切りは、そういうことに関連して行われているという例が多々あるのであります。首切りには、いろいろな形が現にとられている。第一には一定の基準を設けて行つているところがある、たとえば大阪、京都、東京等がそれでありまして、第二には、定数條例によつて行われているところがある、静岡、三重、石川等々がそれであります。第三には、教員としてふさわしくないという一本やりのみで、何ら一定の基準を設けないでやつているところが大部分であるわけであります。そのうちの一つの問題としてお伺いしたいわけですが、たとえば大阪、京都、東京その他におきましては、特定の政党に入党している者、またはそう認められる者、または影響ありと認められるもの、こういう基準のもとに教員の首切りが行われている。このことは、大臣の表明された信念とも、あるいは人事院規則の解釈とも、あるいは学術会議及び大学教授連盟の決議等々とも、まつたく矛盾する條項であるように考えられるし、明らかにそうであるのでありますが、この点について、大臣はこの矛盾をどうお考えになりますかり     〔若林委員長代理退席、岡(延)委員長代理着席〕
  73. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 そういう点につきましての私の見解は、先ほど申した通りでありまして、原則としては、私は、政党に所属いたしましても、その政党によつて思想を制限されるものではないと考えて、それならばさしつかえないという考えを、持つているだけであります。しかし、もし事実、ある特定の政党に所属いたします者が、特定の政党のイデオロギーなり支配に属しなければならない、従つて思想の自由もないということであるとするならば、これは別個に考えなければならないと思つております。これは、先ほど申した通りであります。しかしそれは事実の問題でありますから、はたしてそうであるかどうかの問題であります。  それから各地方でもつて、今おあげになりましたようなことを、基準の中にあげておるという話でありますが、これも私は新聞だけで、そんなようなこともあるように聞いております。しかし私の考えているところでは、各地方でもつて整理が行われておる場合は、いろいろの具体的な事情に基いて教育の効果を上げ、教育の能率をお上げるというような意味で実行されておると考えておる次第でおります。
  74. 渡部義通

    ○渡部委員 私は個々の問題についてお伺いしているのではなくて、人事院規則という規則やその他と、今申し上げたような、條項が矛盾しておるのではないか、また大臣はこの点について矛盾を感ぜられておるのではないか、この点お聞きしているわけです。原則的にです。
  75. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 その点は、さつきお答えした通りでありまして、事実特定政党に所属される人たちが、そういう拘束を受け、制限を受けておるかどうかという問題なので、私としては、まだその点は考究すべきである、こう考えておる次第なのであります。
  76. 渡部義通

    ○渡部委員 大臣の御説明は私の問いただしている事柄と、多少ずれているように考えるわけです。人事院規則その他においても、先ほど申しましたような事情で、特定の政党に入党しているとか、そういう事実を理由として、首切りの標準を設けられてはならないというときに、特定の政党に加入している者はもちろんのこと、そういうふうに認められている者、あるいは影響ありと認められている者さえも、首切りの基準として設けられている、基準そのものが問題なのであつて、この基準が大臣の表明されておるところの信念と矛盾してはいないかという、この基準についてお伺いしているわけです。
  77. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 先ほど御答弁いたしました通りでありまして、基準としてとられたところのものが、はたしてそういうものを唯一の基準としてそれが整理の基準になるかどうか、これは私は事実まだ知りません。知りませんが、もしそうなつておるのだとすれば、つまり特定の政党に属しておるということによりまして、教育の自由あるいは思想の自由というものが拘束を受けるという見地でやられておるのではないかとも思います。
  78. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 ちよつと渡部君に申し上げます。人事院の責任者の出席要求がございましたが、人事官はいずれも緊急の要件で人事委員会に出席中でおりますの、適当な機会にできるだけ出席していただくように、委員長においてとりはからいたいと存じます。
  79. 渡部義通

    ○渡部委員 先ほど大臣に、答弁の上で御注文申し上げました通り政治的な配慮からお答えになるというのでなく、こういう基準が設けられるというようなことは、かなり原則的な問題であるのでありますから、こういうふうな原則を設けて、首切りが行われるということの重大性を、われわれは指摘しなければならないと思うわけです。私は何回か申し上げましたように、このような基準は基準そのものとしては、首を切るある個人に対しての具体的の場合はともかくとして、基準そのものとしてこのようなものを設けているとすれば、これは人事院規則の内容にも、解釈にも、大臣の信念にも矛盾しているはずではないか、この点をお聞きしているわけです。この点を答えてもらえればよいのです。
  80. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 その点はさつきお答えした通りです。
  81. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 それ以上お答えがないそうです。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 六・三制の問題については補正予算十五億、来年度の本予算で四十五億が見込みがあるということで、まだまだ足りませんけれども、御同慶の至りに存ずるところであります。ただこれが配分の仕方についてなお文部当局において御研究のように承つておりますが、地方によつては特殊の事情のために高等学校の統合等が十分に行われておらないというようなことのために、高等学校つて学校、小学校が非常な犠牲をこうむつておる、そのために、配分にあずかれないというような不合理が生ずるおそれが多分にあるようであります。こういう点については、地方からも陳情に伺つているかと思いますが、今後そういう点の調整をどういうようにされるのか、その御方針を承つておきたいと思います。
  83. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 ただいまお尋ねの、高等学校にスペースが多いために、小・中学校のスペースがいかにもあかのような錯覚を呈したような場面が地方によつて起るから、この調整を高等学校の現状につきまして、たとえばその通学区域がどうにも動かぬといつたような場合のところに、〇・七坪の計算の場合に、はずして行きたいと考えておりますが、たまたま大都市にありますようなもので、その通学の関係から申しますと、必ずしもそのスペースを高等学校のみのものと計算することは、必ずほかの場合とバランスの上から言つても、むしろ調整しなければならぬ。高等学校ではあるけれども、小・中学校の面積と共通さして計算しなければならぬといつたようなものが相当ございますので、それらは厳重な方針通りの線で行きたいというふうに考えておりまして、この予算がある程度固まりますと同時に、できるだけ早く配分の線をきめて行きたいと考えますので、厳重にその方の調査に今かかつております。いろいろな故障がありまして、まだ具体的なところまでは参つておりません。
  84. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 ちよつと松本君に御相談ですが、特に文部大臣にお尋ねしたいことがあれば、その方から先にしていただきたいと思います。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 この間今野さんから指摘されて、文部大臣が御答弁になりました例の首切りの理由の問題ですが、方々地方で、理由が明示されないで辞職勧告が行われているという例がたくさんあります。この前の答弁によりますと、懲戒免職というようなことは、よほどの理由がなければ、なされないはずである。こういうお話であつたのですが、思想の弾圧の問題とも関連するのです政府では思想弾圧のつもりでなしにやつてつても、受ける方では、それが思想弾圧と解せざるを得ないような状態、これは結局理由を明確にして――一辞職勧告する場合にも、そういう点を明確にしないために、そういうことが起つて来るであろうとおもいます。せんだつても政務次官の御答弁で、そういうことはあり得ないと思うが、万一そういう問題が起つた場合には、文部省としても、これからはもつと積極的に調査するなり、あるいは方針考えようという御答弁があつたのです。これまでも大臣にいろいろ問題でお話を伺うと、これは一切大学当局にまかせてある、あるいは教育委員会にまかせてあるから、自分の方にはわからない、こういうお話であつたのです。ところが実際の問題として、そういうふうに首を切られる方にとつては不満が多い、理由が少しも明らかにならない。こういう場合には、教育委員会のことだからというので放置されずに、今後は積極的に事情を調査するなり、あるいはこちらから事情を申して行つた場合には、文部省としてもこれに何らかの対策を立てるという方針で臨まれるお気持があるかどうか、この点を伺つておきたい。
  86. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 御承知のように、大学に対してはできるだけ自治を認める、また地方に対しましても、教育地方分権というものをできるだけ尊重するという建前に現在なつているわけであります。従いまして、今度のような問題にいたしましても、文部省が希望するところは、教育の秩序を確立し、学園の平和を確立する、それに必要な法規は嚴重に励行する、こういうことを希望しているわけでありまして、それに基いて各大学なり地方において処理が行われているだろうと思います。その場合に、むやみに文部省が各大学なり各地方にくちばしを入れますことは、原則的な大学の自治、地方分権ということに反する結果になります。従いまして、それは軽卒にやるべきものではないと、私は考えておるわけであります、しかし、どんなことがあつても、全然そういうことはやらぬということではないのでありまして、文部省として、はつきりこれは不可解だ、調べなければならぬという場合のは、むろん調べなければならぬと考えておるわけでありますが、今までのところ、別にそれだけの理由を発見しておらないのであります。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 これは教育委員会法の改正案の審議にも関係いたしますので、もう一度念を押しておきたいとおもいますが、教育委員会の方で、理由を明示しないで首を切る、辞職勧告をやる。勧告を受けた方がその理由の明示を迫つて、そこで対立して、どうしても明らかにならないような場合に、やはり文部省としては、原則としてなるべく乗り出さない、こういう御方針だと解してようございますか。
  88. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 不服があります場合には、それぞれ訴願をする手続もあるわけなのでありますから、一応はそれでやるべきじやないかと思います。
  89. 松本七郎

    松本(七)委員 次の問題は、先般の朝鮮人連盟解散に引続いて、朝鮮人の学校の問題が非常に紛糾いたしまして、文部省の大体の御方針はわかつておるのですが、その後公立学校として朝鮮人の学校が残つておる所があるのであります。ここでもやはり教員を元の教員にしてもらいたい、あるいは教科書が全部接收されてしまつて全然ない、これを何とかしてもらえないか、あるいは朝鮮語、地理、歴史というようなものを、少くとも正科でやれるようにしてもらえないかというような声が、子供の中からも痛切に起つておるわけであります。この問題は、ただ單に教育ということだけでなしに、やはり将来の日本人と朝鮮人の親善を促進する上から、非常に重要な問題であると思います。おとなに望むことは、なかなか旧来のやり方からしてむずかしいのでありまして、ただ頼るところは子供同士、これによつて朝鮮と日本の親善を促進しなければならぬ非常に重要な任務跡を帶びておるのですから、こういう苦しい状態にあるときに、もう少し朝鮮人の立場に立つて、朝鮮人が満足できるような行き方をすべきではなかろうか。そういう点について、これもまた公立学校ならば教育委員会のすることだというふうな冷淡な態度でなしに、もう少し思いやりのある態度を、文部省が示す必要があるのではなかろうかと思います。そういう点についての今後の御方針を承つておきたいと思います。
  90. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 朝鮮人の学校が閉鎖されました場合の朝鮮学童の收容につきましては、文部省としてもできるだけの心配をいたしておりまして、地方とも連絡をして、差別待遇とか、あるいは教育の機会が非常に少くなるとかいうことのないように、十分に協議をいたしてやつております。ただしかし、一時に多数の学童を既存の公立学校に收容しなければならないという場合には、いかに努力いたしましても、多少そこで一時的には不便が生ずるということも免れません。しかしそれをできるだけ早く円滑に行くように努力すべきことを、文部省としては各地方庁に話をいたしておりますから、いずれ円滑に行くようになるだろうと思つております。  朝鮮語とか朝鮮の歴史等につきましては、別に禁止する考えはないのでありまして、これはむろんやつてもさしつかえないが、ただしかし義務教育はどうしても完全にやらなければならない。義務教育というものは、御承知のように日本に居住する人間といたしまして、どうしてもこの程度の教養は持たなければならないという、最小の限度を示す教育でありますから、朝鮮の学童も、それについてはどうしても完全にやつてもらわなければならないのであります。そのほかの時間を充てて朝鮮語とか朝鮮の歴史をやることはさしつかえないのだ。こういう方針をもつてつております。今まで朝鮮人の学校でもつて教えておられた先生の人たち等にときましても、いろいろと文部省考えております。大部分の人は日本での教員の資格を持つておらないのであります。教員の資格を、朝鮮人でも持つておられれば、むろん普通の講義ができるのでありますが、それがないのでありますから、これは朝鮮語だけの先生とか、朝鮮の歴史だけの先生として適当な人たちは働けるようにしてあげたいと考えております。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 それは朝鮮人の私立学校を、なるべく私立学校として、存立するようにして行こうというのが基本方針ですか。あるいは日本の学校に收容して行こうというのが方針になつているのですか、いずれに重点を置かれるのですか。
  92. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 ただいまの御質問は、多分朝鮮語とか、朝鮮の歴史についての教育の問題だと思いますけれども、義務教育の時間以外に、朝鮮人の経営でもつて各種学校として朝鮮人や朝鮮の歴史を教えたりすることも、教育の秩序をしつかり守つて、そして日本の法令に従つてやられるということならば、それをできるようにして行きたい考えであります。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 私のお伺いしたいのは、この間閉鎖になつたあと、やむを得ないから日本人の学校に一緒に收容しようというような方針が一応立てられた。そういう方針で今後も行かれるのか、あるいはなるベくそれを避けて、朝鮮人の私立学校をできるだけ多く認可するようにされるのか、それを聞いているのであります。
  94. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 今のお話ですと、義務教育に関連して、朝鮮の私立学校を将来どんどん奨励して行く考えであるかどうか、こういう御質問のように伺いましたがそうでございますか。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 朝鮮人の私立学校が、今まで認可されておつたものがあるのです。それから認可申請しておつてなかなか許可されずにいたものがある。設立について、今までより以上にむずかしい條件がいろいろ加わつて来ているのであります。そのために設立したくともできないものが、たくさんある。そういう條件をできるだけ緩和して、私立学校として設立できるように、促進する努力をしていただけるか、その点をお伺いいたします。
  96. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 文部省といたしましては、今度の措置におきましても、しいてむりにどうしても朝鮮人の学校をやめさせるという方針で処置をいたしたわけではありません。ただしかし朝連の解散と関連しまして、どうしても処置しなければならない点ができておりますし、それらの点をはつきりと整備した朝鮮人の私立学校というものは、現在の事情においては非常に困難な事情にあるだろうと私は考えております。従いまして、文部省は何もしいてこれをつぶそうという考えではありませんけれども、実際の実情から申しまして、朝鮮人の私立学校として義務教育をやるということは、よほど例外の場合でない限り、非常に困難な事情にあるだろうと思つております。
  97. 今野武雄

    今野委員 大臣の御出席を得まして、二、三の点についてお伺いいたしたいと存じます。第一は六・三制の経費の問題でありますが、先般文部省より配付されました二十二年度、二十三年度の学校建築のうち、非公共事業としてやられたものの坪数を見ますと、それを三十五坪一教室で換算いたしますと、約二万二千教室というものが非公共事業になつております。そうしてそれの経費は、現在の文部省の経費資金で参りますと、約百三十四億円ばかりになります。もしもこれを半額国庫負担にいたしますと、六十七億になるわけでございます。こういう数字が、必ずしもその通りではないかもしれませんが、ともかく多数の学校が非公共事業として建てられておる。中学校が非公共事業として建てられておるということは、事実でございます。しかるにこれに対して今年の四月三十日以前に建てられたものに対しては、今度の公共事業の補助は得られないというようなことになつて、六・三制建築の問題が中があいてしまつたようなかつこうになつておるわけであります。そうとすれば、これは單に現内閣だけではなくして、今までの政治に対する不信というものが、非常に地方に起るというようなことが感ぜられるのでありますが、大臣のこれに対する御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  98. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 六・三制に対する建築費の補助が、今までといえどもはなはだ不十分であり、また一応今年度の本予算では削除されたというような関係から、補助なしでもつてつくられた学校がどうしても相当にある。そういう場合には、たとい予算がとれましても補助ができないということになると、非常に不公平になるのじやないか、こういうような趣旨での御質問ではないかと私は思うのであります。確かに一面から申しますと、教育に非常に熱心でもつて補助がなければやむを得ないからというので、苦労して建てたところは、建てたからといつて補助がもらえない、補助がもらえないならば建てないのだという不熱心なところは、起てなかつたために、予算がとれたから補助がもらえるというようなことになつて、正直者がばかを見るというような結果になつて地方に対して悪い影響がないかというお考えであろうと思います。私もそういうことがありはしないかということを心配しております。ただしかし法律上では国庫は補助するわけでありまして、地方団体が財源を持ち、あるいは地方団体努力によつて寄付を集めて、国庫の補助なしにできるという場合には、国庫は補助が出来ないことになつておるわけであります。そこで非常に矛盾ができして来る。文部省といたしましては、そういう法規の制限は、これはむろん尊重しなくてはならないと考えておりますが、実情をよく調べまして、やはり調節すべきところは、できるだけあまり不公平のないように調節をしたいということで、現在いろいろと考究いたしておるわけであります。
  99. 今野武雄

    今野委員 その点につきましては、たいへん御丁重な御答弁をいただいたのですが、二十四年度の当初予算が削られたために、どうもその補助は得られなくなつたというように見られるところも、多々あるでございましようから、十分に御調査の上、そういう人たちに失望を與えないようにしていただきたいというふうに考える次第であります。  次に最近十一月十一日の新聞によりますると、広島において学校に、配属警官というような名前ではないけれども、ともかく監督警部補をきめて、そして学校と一緒になつて生徒の善導に当るというようなことが出ておりましたので、さつそく国警本部に参りまして、何か調べたものでもありましたらと言つたところ、その調べが防犯課長のもとに参つておりました。それによりますと、最近中学生の間に凶悪な犯罪が起つて、そうして学校と父兄並びに警察が協力して、協力の会議を催し、そうして今のような一人ずつ警部補を配置するというようなことをきめた、こういうことであります。なお市警当局から各警察署に渡しました指令には、最後に括弧して、かつての配属将校にならないようにという注意書がございましたけれども、その注意書があること自身、そういうおそれがあるということを十分示しているわけでございます。こういうことが一般化いたしますと、現在のところ少年犯罪が非常に多いですから、一般化する可能性も多いわけでありますが、かつての配属将校のようなものになるおそれが十分あるわけでございます。その点について文部大臣はいかがお考えになりますか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  100. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 この問題につきましては、文部省としても実情をよく調べております。しかしまだ私は詳しいことは、よく手に入つておりません。しかしかつての軍事教官と同じような意味に、毎日特定の警官がある学校に勤務して、やるというようなことではないのじやないかと思つております。少年犯罪を防止するというために、学校と警察が緊密な連絡をとるということは、今までもやつてつたところでありまして、これはやはり必要なことだと思いますから、こういう今日の時代においては特に十分の連絡をとつてやらなければならないと私は考えております。ただしかし、生徒教育の問題になりますと、これは学校の校長及び職員の責任であります、警察の仕事ではないのであります。ですから、警察官が学校の中の普通の教育の問題まで関與することになることは、決して望ましいことでもないし、避くべきことであると考えているわけであります。ただ警察にも少年犯の予防係のような係はあるわけであります。しかも相当專門的に少年の不良化に対するいろいろな研究もし、予防活動もしているのでありますから、これと緊密な連絡をして、少年の犯罪予防に協力するという意味ならば、それは適当なことじやないかと考えております。
  101. 今野武雄

    今野委員 たいへんありがとうございました。その点についても、少年犯罪の起ること、並びに最近の国立研究所の調査によるひどい学力低下、これは現在の教育が非常にさんたんたる状態にあることを示すものでありますから、大臣におかれましても、十分関心を持つて、それに対して十分な根源的な措置を講ぜられるようにお願いしたいと考えております。  次に、やはり最近起つた事件でありますが、東京の教育委員会において、成田元教育委員長が、部下の課長を十数回にわたつて殴打するというような事件が起りました。そうしてこのことが問題になつて、一応成田氏は教育委員長をやめることになつたのでありますが、教育委員はまだやめていない、そのままでございます。聞くところによると、成田氏は、そのことに対して少しも反省せずに、少しだらしがないから、硬教育をしなければならぬ、こういうことを申しておりますが、もしそういうことがありとすれば、もしも東京都の教員たちが生徒たちを殴打するような事件があつたときに、教育委員会は、これに対して何らこれを静止するような手段を講ずることができないように考えられるわけで、ございます。そこでこういうような教職員生徒を殴打するようなことがいいのか、悪いのか、そのことについて、文部省としての御見解をひとつ述べていただきたい。  ついでに、なおもう一つつけ加えますが、教育委員会において、現在東京都の教員の整理の基準案を作成しておるわけでございます。この作成する基準につきましても、いろいろと問題ありましようけれども、ともかくそういうような教育理念といいますか、硬教育をやらなければいけないというような教育理念、さらに成田委員長の場合にはヒトラー・ユーゲントなどを讃美した言葉をたびたび吐いておるのでありますが、そういうような理念のもとにこの整理基準がつくられて、整理がなされていいものかどうか、こういうことについて御意見をお聞かせ願いたい。
  102. 高瀬荘太郎

    ○高瀬國務大臣 むろん生徒のしつけ、規律ということは、厳重にやらなければならないと私は考えております。ただそのやり方の問題につきましてむやみに殴打してやることは、むろんよろしくないと考えております。それから教育委員会内部の問題でありますが、これはやはり教育委員会の内部の問題でありますから、文部省が直接タッチすべき問題ではないだろうと思つております。
  103. 稻葉修

    ○稻葉委員 先ほど渡部君の学問の自由に関する質問に対する高瀬文部大臣のお答えに、二、三不明の点がありますから、もう少しお伺いしてみたいと思うのであります。党員たる大学教授、ことに共産党員たる大学教授が、ドクター・イールズの講演によれば――私はあの日じかにイールズの講演を聞いた一人でありますが、大学教授としての適格性を失つておるという話であつた。それに対して渡部君は、それは間違いであると思うが、文部大臣の所見はどうであるかという問いに対して、文部大臣は、党員であるということだけで、大学教授として適任ではないというわけにはいかないけれども、党則があつて、その大学教授を党則によつて縛るというような事実があるとすれば、ドクター・イールズの見解はその点において正当である、こういうふうにお答えになつたようでありますが、党則によつて縛られるというとは、一体どういうことであるか。いやしくも政党というものは、あるイデオロギーを持つて、政策を揚げて、政治に寄與するものでなければならぬのであります。政策に共鳴する、なお一歩進んでイデオロギーを支持し、その党員として活躍するためには、あらゆる機会、あらゆる場所、あらゆる方法において、そのイデオロギーの展開をはからなければならぬ。党員たる大学教授は、その大学おいてそういう活動をすることは人生観を吐露して全人格をもつて教育をすべき人間の当然のことじやないかと思うのです。私も民主党員として、中央大学教授として、民主党のイデオロギーを学問的に研究しながら、常に講義をいたしておる一人であります。そういうことは、文部大臣のいわゆる党則に縛られておる行動として思想の自由を有しない行動であるというふうにお答えになつたのであるかどうか、ちよつと承りたいと思います。
  104. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 つまり思想の自由、学問の自由というものが、党の意思によつて制限されるかどうかという問題であります。学者が自分良心に従つて研究をし、結論を出すのが自由であります。初めから結論が出ておつて、そうしてそれをやらなければならぬというようなことでは思想の自由もなく学問の自由もないのだ、こういう拘束があるかどうか、こういう問題でおります。
  105. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまのお答えの中に、学者の良心というお言葉がありまして、学者の良心を拘束されていない場合は縛られていないのであり、学者の良心が拘束されている場合は縛られている。つまり講義なり研究をすることの自由、その研究を発表することの自由な場合に、発表の方法学問方法であるならば、縛られていない、こういうお答えのようですが、学問的な方法というのは、ただいまのお答えでは初めから結論がきまつてつて――私はしかしながら初めから結論がきまつてつていいと思う。長年研究しておつて、まだ結論も出ないような、そういう不安定な講義をやつてつてはいかぬと思う。結論はきまつておるけれども、その結論に行く道程を、原因によつてこれを説き明かす、つまり反対の思想についても一応の説明をして自分のこれに対する立場を明らかにして行くという方法がとられるならば、共産党員の共産主義の講義であつても、それはアメリカにおいてはどうでおるかしらないが、日本の大学においては学問の自由に入るべきであつて従つて新潟大学におけるドクター・イールズのこの点に関する見解は、多少誤りがあるというふうに私どもは思うのであり、私どものみならず、大学教授連合においては、そういう見解をとり、その見解は南原学長によつて発表せられておるということも事実であります。そういうイールズの見解と、いわゆる南原学長によつて代表せられるところの大学教授連合の見解と食い違いがあるということを、文部大臣はお認めになつておるかどうか、一致しておるとお考えになつておるかどうか、明確にお答えを願いたいと思います。
  106. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 南原学長の意見は、新聞に発表されましたように、イールズ博士と違つておるものであります。しかしイールズ博士と同じような見解を持つておる日本の学者もあります。従つていろいろな意見がある。私どもとしましては、それらについては考究を要すべき段階である、こう考えております。
  107. 稻葉修

    ○稻葉委員 もう一つ、縛られておる事実がありとすれば、ということに関して、目下調査中である。日本の政党の中に初めからもう結論だけを言つて、反対の学説については一歩も入れてはならぬ、むしろこれをことさらに非学問的な方法でこきおろして、そして自分の結論だけを大いに宣伝をせよというような政党の綱領を掲げておる、あるいは秘密綱領にそういうものがあるということをいつ調査をされたのか、われわれの方にはまだ調査をしにおいでにならぬようでありますが、調査中であるとおつしやられますが、いつその調査の結論は出て来るのか。もし鉄のカーテンをおろして、そういう調査を――これは重要な調査であると思うのですが、拒否しておる政党があると思うのです。そういう点もお伺いしておきたい。
  108. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 アメリカでは、御承知のようにアメリカ教育協会でもつて学者、学長の自主的な協会において討議された結果、ああいう結論に達したわけであります。日本ではまだ一般的にそういうことがない。文部省としては文部省が独断でもつて、かつてな判断でもつてこういうことはきめるべきじやないと思います。やはりいろいろな人の意見考え、また研究もしてやるべきであつて、現在結論に達しておるわけではないということを申し上げたわけであります。
  109. 稻葉修

    ○稻葉委員 その結論に達しないという意味は、つまり党員たる大学教授は、大学教授として不適格であるという結論に達していないという意味ですか。それとも思想の自由を縛りつけるような党則があるという事実があれば、そういう事実を、調査中だから、そういう事実を持つている政党があるかどうかの結論を出していないという意味ですか、どつちですか。
  110. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 イールズ博士の声明は、思想の自由という問題と関連してでありますが、そのほかにマルクス主義というものは暴力肯定であるといつたような意味で、いろいろ議論を申されております。  また共産主義というものは思想と実践ということを切り離すことはできないのだ。従つて思想だけはこうだが、活動はしないのだということを共産主義については言えない、こういう議論もあるわけであります。いろいろな議論がこれと関連してあります。しかしそういうことは、やはり十分に研究もし、また事実にも徴して考えるべき問題であるということで、現在では文部省はその段階にあるわけであります。
  111. 稻葉修

    ○稻葉委員 よくわかりました。大体この点に関しては文部省の御見解はわかりました。  その次に人事院規則に、大学教授に関する特例を設ける意思はないかという渡部君の質問に対しまして、文部大臣の御答弁は、目下のところ大学教授に関しては特例を設ける意思はない、こうお答えになつたと思いますが、はなはだ私不可解な点があるのです。それはあの人事院規則については、大学教授側を南原総長が代表せられて人事院総裁と会見され、そうして両者の間には、解釈上の一致を見て、おる。従つて大学の教授がその専門とする学問に、ついて、学内においても学外においても、ある政党を支持したり、しなかつたり、あるいは政府の政治を批判したり、しなかつたり、そういうことについては、決して人事院規則に触れるものではないという解釈上の意見の一致を見た、こうありますけれども、それはあくまで解釈上の問題であつて、現に争いある事実を、他の機関、すなわち検察当局が取り上げてこれを問題にする場合には、別個な解釈が、成り立つわけです。従つて形式的には大学教授のそういう言論が人事院規則に触れて、そうして大学を追われるという大学教授の地位の不安定が残されているわけでありますから、人事院規則に大学教授に関する特例を設け、そうして安定した状態において学問の自由、思想の自由を擁護するというような任務を持つている文部省としては、それではたしてよろしいのかどうか。
  112. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 特例という意味が人によつて違つておるかと思います。学者はあれからはずさるべきだという意味で、特例を主張される人もあるだろうと思います。その場合でありますと、今おつしやつたように人事院総裁の解釈くらいでは追いつかないことになります。私は学者も公務員であります以上は、はずすべきではないのだ、ただ学者たる活動については、はつきり解釈をしておかないと間違いが起きるというわけで、解釈が必要だ、そういう意味では特別な解釈と言えるかもしれません。御心配になりましたような点についての解釈は、最後の決定権というものは、人事院の解釈にあるのでありますから、どういうことが起きましても、人事院のはつきりした解釈が明らかにされておれば、御心配はないのだろうと思います。
  113. 稻葉修

    ○稻葉委員 先ほども質問された問題でありますけれども、ちよつと違つた見解を持つておりますので、お伺いしたいのですが、各県で行われる公務員たる教員の首切りの問題であります。ことに著しい例としては、過去に、おいて組合員であつたとか、あるいは政治活動をしたとかいう理由を明示されて首切られておる者があります。人事院規則は、御承知のように九月十七日に発表になつて、十九日から施行されたと記憶いたしておりますが、その中にいろいろな政治的目的をもつてする政治活動ということが揚げられておる。ところが九月十九日以後施行せられたのだから、それ以前にその規則に該当するような政治的目的をもつてする政治活動をいかに猛烈にやつた者といえども、刑罰的な法規不遡及の原則が適用さるべきものであり、この人事院規則施行後これを遡及させて、そういうことを明示して、過去においてこういう行動があつたのだというやり方は、法の適用を誤られると思います。この点に対しては、法務総裁に伺つた方がいいかもわからぬけれども、とにかくお伺いしてみたいと思います。
  114. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 九月に公布されました人事院規則は、むろん遡及する理由はございませんので、あの規則によつて処断されるということは、九月以後の行動についてであります。私の聞くところでは、現在までのところ、あの規則によつて処断された者は、一人もないと聞いております。その後できたかしりませんが、一月ほど前に聞いたときには、ないと聞いておりました。地方で行われておりますのは、別にあの規則によるというわけではございませんで、教育基本法第八條第二項の教育活動の中に、一党一派に偏するような政治活動をすることは禁止されておる、それと関連して考えられておるのだろうと思います。
  115. 渡部義通

    ○渡部委員 私は先ほど文部大臣に対して、学術会議大学教授連盟が先ほど申し上げた決議をしたのは、一つの現職にある者としての行動である、実践である。ああいう形での実践、言いかえるならば、学問を抑圧しているような條件を排除するための行動、あるいはよりよい学問的な諸條件、環境をつくり出すための行動、これは学者の、あるいは現職にある教授たちの任務の範囲内における当然の行動ではないかという点について質問したのであるが、大臣はそういう個々のことについては、個々の場合に考えなければならぬとおつしやる。しかしながらこういういろいろな問題を解決するあたつては、一々個々の場合を見るための原則、基準というものがなければならぬのであつて、その基準について問うておつたわけなのです。この点を大臣は答えられていないが、どうなのですか。
  116. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 法律解釈の問題になりますと、私は法律学者でないので、しろうとでありますから、あまりこまかいことを明言して、間違つていたということになつてはいけないと考えますので、さきに申し上げたようなお答えをしたわけであります。そういう疑問になりますような点については、法律専門家ともよく意見を聞いて、はつきりした結論を出して明らかにした方がいいだろうというつもりで、人事院とよく相談をしてはつきりさせたい、そういう折衝をしておる、こう申し上げたのであります。それが私のお答えであります。
  117. 渡部義通

    ○渡部委員 大臣はそういう法律的な問題ではなくて、こういう事柄は学者としての常識として、あるいは知識人としての常識としても考え得る問題であるが、こういう点について、政治的な配慮のためか明確に答弁せられない。それから共産党員の意思の自由の問題、その点について稲葉君から妥当な、あるいはかなり明確な質問をされたにもかかわらず、考慮を要すべき段階にあるというふうなお答えのようですが、こういう事柄について文部省が考慮しておる間に、教育者に対する、あるいは学者に対する弾圧がどんどん行われておる、首切りがどんどん行われておるのであつて、すでに十一月十七日現在で、七百六十四名がこの種のことに関連して首切られておる。大臣は先ほど政党に加入しておるという理由によつて、あるいは人事院規則発表以前における行動によつて首切られた者を聞いていないとおつしやつたけれども、至るところこういう事実を見ることができるのであつて、もし大臣がこういう報告に接しておられないとするならば、あるいは聞いておられないとするならば、それは非常に怠慢のように思うのです。むしろ大臣としては、こういう事柄について明確な考え委員会の席上に発表せられて、われわれが立法上に関する客観的な状態との関連をはつきりすることができるように、ここに説明せらるべきだとわれわれは考えておるわけなのです。私は今日は一々事実はあげませんが、その事実は無数にあります。ここに揚げてあるのは、七百七百六十四名に関する日教組の調査であります。この調査はすべてが私どもの強調しており、危惧しておる首切り問題であるわけであります。もしそれ以前になされた行動によつて首切られた者、あるいは單に政党に参加しておるという事情基いて、言いかえれば、大臣がそれならばよいのだとおつしやるような事情に基いて首切られた者に対して、その後大臣の報告にそういう形がはつきり現われたときには、大臣はこれに対してどういう態度をとられるか、その点を伺いたいと思います。
  118. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 ただいまのお話は、ちよつと間違つておるところがありますから、訂正をいたしておきます。私がさつき稲葉さんの御質問に対してお答えいたしましたのは、人事院規則の適用による解職というものは、九月以前にはないのだ、こういうことを申し上げたのであります。政治活動等に関連して解職されたものが全然ないと、こう言つたわけでは決してありません。ただ根拠とする法律違つておるのでありまして、教育基本法を根拠として行われておるのだろうと思います。七百何名かに上る解職者につきましては、個々にいろいろ事情があるだろうと思います。そうして実際今まででも、毎年教育界の粛正を行いますために、整理が行われたわけでありますから、今回に限つたわけではないのであります。いろいろ具体的な事情によつて行われておる。文部省といたしましては、先ほど申しましたように、地方教育分権によりまして、地方の問題は地方教育委員会に大体まかせてやつておるのでありますから、そういう点については、信頼をしておるわけであります。
  119. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 それでは皆様にお諮りいたします。教育委員会法の一部を改正する法律案及び私立学校法案の審査を急いでおりますので、議題外にわたるところの質疑は、衆議院規則第六十八條によつて一人五分以内といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 御異議なしと認めます。さように決定いたします。  大臣に対する本日の質疑はこれにて打切り、委員会はこの程度で散会し、明日午前十時より開会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員長代理 御異議なしと認めます。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十七分散会