○三橋
政府委員 ただいまの
請願の
趣旨といたしますところは、東京市吏員として東京都制施行の際に東京都の官吏に
なつた、それが先般の憲法施行に伴う
地方自治法の
改正によりまして、東京都は新しい自治団体になりましたが、この自治団体に
なつた東京都の職員にな
つた者につきましては、
昭和二十二年法律第七十七号
恩給法附則第十條を廃してしま
つて、こういうような人に対しては
恩給法の適用を除外し、言いかえますれば、国でも
つて恩給を支給することを廃止して、都においてしかるべき
退職給與金なりが支給されるように條例できめ得るように、法律的措置を講じてもらいたい、こういうことにあるのではなかろうかと思います。これにつきまして問題となりますところは、第一、国の官吏であ
つた者に対しまして、国が
恩給を出さないで、都に
恩給に
相当する
退職與金を出させることを、法律で規定することができるかどうかということが、まず第一に問題になると思います。
恩給は使用者と被用者との
関係におきまして、使用主である者が被用者に対しまして、
退職後一定の金を支給するのでありまして、
国家が官吏に対して
恩給を支給しますのは、結局
国家が使用人として官吏を
国家の
事務に従事せしめるから、そこに
恩給を支給するのであります。これは当然
国家の義務であります。この
国家の義務を
国家が果さないことを法律で規定し、しかもそれを
関係のないところの
地方自治団体の義務に負わせるがごとき法律をつくるということは、これはよほど
考えなければいけない問題ではなかろうかと思います。
第二点といたしまして
考えなければいけないことは、官吏になります者の前身を
考えてみますと、あるいは東京市の吏員から官吏にな
つた者も、今まで多くの官吏の中にはあ
つたのであります。また大阪市、神戸市その他の市町村の吏員からな
つた者もたくさんございます。また都道府県の吏員から、あるいは会社の社員等から官吏にな
つた者も少くないのであります。こういうような官吏になります前の前職について、その前職に設けられておりました
退職給與制度というものを
考えますと、官吏の
恩給制度よりもいい
退職給與制度の備わ
つているものもあれば、また官吏の
恩給制度よりも劣
つておるような
退職給與制度のところもあります。たとえば大阪市のごときは、
相当いい
退職給與制度を持
つておるのであります。そういうような官吏になる前のいろいろな
退職給與制度があ
つて、その
退職給與制度の恩典に浴してお
つた者が官吏と
なつた場合におきましては、これは官吏
関係におきまして全然考慮していないのが従来の取扱いであります。これは筋といたしましては、官吏
関係には全然
関係ないものでありますから、
考えないのが至当ではなかろうかと思うのであります。従来からそういう取扱いをいたしております。ただ東京都制施行の際におきましては、従来の東京市の吏員を
相当多数一時に東京都の官吏にいたしました
関係上、本人の承諾を前提といたしまして東京都の官吏に
なつた東京市の吏員につきましては、
恩給の在職年に東京市吏員としての在職年を通算するとりはからいをいたしたのであります。これはもちろん本人が承諸しないで、東京市吏員として退隠料條例の恩典に浴したいという意思表示をしたならば、そのような取扱いをしたのであります。そういうようにしておりますので、この東京市吏員から東京都の官吏にな
つた者だけに特別に取扱いをするがいいかどうかということにつきましては、これはまたよほど
考えてみなければいけないと思います。またこの
請願の
趣旨とするところは、東京都の職員で現在
地方自治団体である東京都の職員をやめた者に限るのでありまして、東京市の吏員から引続いて東京都官吏にな
つた者の中には、あるいはほかの県に官吏として転任して行
つた者もありますし、あるいはまた国の機関の官吏として残
つた者もあるのでありまして、そういうようなものをいろいろ
考えてみますと、ただ東京都という現在の
地方自治団体の職員にな
つておる者だけに限るがごときことも、これも
考え直さなければいけない問題ではないかと思うのであります。いずれにいたしましても、官吏になる前身の職においていろいろな
退職給與制度があつた、その
退職給與制度の恩典によ
つて、官吏にな
つてから後もその恩典にとやかくの差をつけるようなとりはからいをすることは、よほど
考えなければいけない問題ではなかろうかと思います。
それから第三に問題になりますところは、
地方自治法の施行に、伴いまして、従来の都道府県が
地方自治団体となりました。そこで
地方自治団体である都道府県に勤務しておりました官吏は、
地方自治法の施行によりまして、従来の官吏の身分から吏員の身分に切りかわつたわけであります。その身分の切り
かわります際に、厳格に言いますならば、これは国の使用人でなく
なつたわけでございますから、そこで
恩給を計算してしま
つて、将来吏員にな
つてから後のことは見なくていいはずでございますけれども、その当時におきまして、現在でもそうでございますが、
地方自治団体である都道府県の
退職給與制度というものが、まだ整備された状態にな
つていないのであります。そこで新しい
地方自治団体にふさわしいところの
退職給與制度が整備されるまでのとりあえずの
処置といたしまして、現在のごとく、従来の
国家の官吏と同様な取扱いをして来ておるのでありますが、現在今申し上げますように、従来の官吏と同様な取扱いをしておるのを、東京都だけ特別な取扱いをするかどうかということが、また問題になるわけであります。しかしたまたま
地方自治法の施行されましたときに、その者が官吏として東京都におつたか、あるいはまた北海道におつたか、あるいは大阪府に勤務しておつたか、ただそれだけのことによ
つて差別を設けることはどうかと思うのでありまして、やはり全官吏に対しては、同じような公平な取扱いをするのが至当ではなかろうか、私たちはこういうような見解に立
つておりまして、これは東京都だけの職員に限
つてはずしてしまうことはいかようなものか、実はこういうふうな
考えをも
つて、これを
請願の
通りの取扱いをするという結論までには、いまだ至
つていないような
実情でございます。