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1949-12-01 第6回国会 衆議院 通商産業委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月一日(木曜日)     午後三時二十四分開議  出席委員    委員長代理理事 神田 博君    理事 有田 二郎君 理事 小金 義照君    理事 澁谷雄太郎君 理事 村上  勇君    理事 今澄  勇君 理事 有田 喜一君    理事 川上 貫一君 理事 山手 滿男君       阿左美廣治君    岩川 與助君       門脇勝太郎君    首藤 新八君       高木吉之助君    中村 幸八君       福田 篤泰君    福田  一君       前田 正男君    加藤 鐐造君       田代 文久君    河野 金昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  稻垣平太郎君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         (通商振興局         長)         通商産業事務官 岡部 邦夫君         資源庁長官  進藤武左衞門君         (資源庁石炭生         産局長)         通商産業技官  田口 良明君  委員外出席者         法制事局長   入江 俊郎君         法務府事務官  西村建次郎君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 大石 主計君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十一月三十日  村上勇君が理事に補欠当選した。 本日の会議に付した事件  特別鉱害復旧臨時措置法案内閣提出第四二  号)     ―――――――――――――  一 十津川村電化事業費国庫補助請願前田    正男君外一名紹介)(第五四号)  二 鳥取県に通商産業局分室設置請願門脇    勝太郎紹介)(第一三一号)  三 大津市に通商産業局分室設置請願河原    伊三郎君紹介)(第一七八号)  四 見立鉱山鉱毒防止に関する請願佐藤重    遠君紹介)(第一八八号)  五 瀬田川の発電計画に関する請願河原伊三    郎事紹介)(第一八九号)  六 機械工業行政の一元化に関する請願(小峰    柳多君紹介)(第二三七号)  七 中小企業に対する融資促進請願石原圓    吉君紹介)(第二三八号)  八 九州電力危機緩和に関する請願川野芳    満君紹介)(第二五五号)  九 山口炭鉱救済に関する請願佐竹晴記君紹    介)(第二五六号) 一〇 東北地方電力編成に関する請願(志田    義信君紹介)(第二五七号) 一一 伏木港に貿易事務所設置請願橘直治君    紹介)(第二六〇号) 一二 電気銅価格差補給金廃止に関する請願外二    件(佐々木盛雄紹介)(第二七九号) 一三 荒尾市周辺の鉱害復旧促進請願寺元齋    君他三名紹介)(第二九三号) 一四 瀬戸市に電気試験設備設置請願早稻田    柳右エ門紹介)(第四七二号) 一五 天然ガス開発事業に対する融資請願(神    田博紹介)(第四八〇号) 一六 上絵燒付陶磁器製品取締緩和に関する請    願(岡村利右衞門紹介)(第四八二号) 一七 同(早稻田柳右エ門紹介)(第四八三    号) 一八 中小企業金融対策に関する請願江崎真    澄君紹介)(第四九七号) 一九 度量衡法の一部を改正二関する請願江崎    真澄紹介)(第五〇三号) 二〇 上水道供給用電力割当制度改正請願(江    崎真澄紹介)(第五一七号) 二一 只見川開発事業実施請願江花靜君紹    介)(第五一九号) 二二 東北地方電力編成に関する請願(鈴木    善幸君紹介)(第五四五号) 二三 炭鉱向け電力割当に関する請願岡田春夫    君外二名紹介)(第七〇〇号) 二四 夜間学校緊急停電措置から除外の請願(    福井勇紹介)(第七〇五号) 二五 十椎葉の電源開発促進に関する請願(上林    山榮吉紹介)(第七〇六号) 二六 寒冷地に対する衣料品等特配請願(牧野    寛索紹介)(第八二五号) 二七 電気事業編成に関する請願若林義孝君    外五名紹介)(第八三〇号) 二八 開拓地電気導入施設費国庫補助請願(    若林義孝君外五名紹介)(第八三一号) 二九 漁業用資材価格差補給金存続請願(小    高嘉郎紹介)(第七八一号) 三〇 電気事業編成に関する請願外一件(赤松    勇君紹介)(第九六五号) 三一 蹴上発電所復元に関する請願高木吉之助    君外五名紹介)(第九八二号) 三二 助産婦等業務用必需品配給請願(吉田    省三君紹介)(第九九五号) 三三 ネオガスロンの増産及び普及に関する請願    (庄司一郎紹介)(第一〇一七号) 三四 松尾鉱山鉱毒対策費国庫補助請願(山    本猛夫君紹介)(第一〇三二号) 三五 自動車輸出促進に関する請願春日正一    君外一名紹介)(第一〇五二号) 三六 電源開発等に関する請願石野久男君紹    介)(第一〇六九号) 三七 自動車産業に対する月賦販売資金融通の請    願(春日正一君外一名紹介)(第一〇七四    号) 三八 同(田中織之進君外一名紹介)(第一〇七    五号) 三九 同(三宅則義紹介)(第一二二一号) 四〇 舞鶴市に競輪場設置に関する請願大石ヨ    シエ君紹介)(第一〇八九号) 四一 広畑製鉄所再開促進請願河本敏夫一君    紹介)(第一一九八号)   陳情書  一 電気事業編成反対陳情書外七件    (第一七    号)  二 電源開発促進陳情書    (第五〇号)  三 中小商工業者金融援護等に関する陳情    書(第    五三号)  四 電気銅価格調整補給金等に関する陳情書    (第七五号)  五 築上火力発電所再開陳情書    (第八五号)  六 中小商工業金融対策に関する陳情書    (第八六号)  七 自家用火力発電運転再開陳情書    (    第九七号)  八 通商産業局冨山県設置陳情書    (第一〇一号)  九 特別鉱害復旧制度存続陳情書    (第一〇二号) 一〇 只見川水力開発促進に関する陳情書    (第一〇三号) 一一 東北電気事業確立に関する陳情書    (第一一八号) 一二 銅補給金存続陳情書    (第一二三号) 一三 同    (第一五二号) 一四 冬期間電力確保に関する陳情書    (第一四七号) 一五 中小企業者金融援護に関する陳情書    (第一六一号) 一六 電気事業編成に関する陳情書    (第二一六号) 一七 商工会議所法制化陳情書    (第二三一号) 一八 中小企業に関する陳情書    (第二六一号) 一九 物資の割当に対する手数料の徴收に関する    関する陳情書    (第二七九号)     ―――――――――――――
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。  前会に引続き私が委員長の職務を行います。  ただいまより特別鉱害復旧臨時措置法案を議題として審査を進めます。質疑を継続いたします。福田一君。
  3. 福田一

    福田(一)委員 本法提案理由が、昭和二十三年四月九日の閣議決定に基いて、今まで配炭公団でもつて経費負担しておつた。それが配炭公団がなくなつたので、別にまた法人をつくつてそこで経費負担して国が一部補助をして災害復旧をしたい、こういう提案理由説明があつたのでありまするが、昭和二十三年四月九日の閣議決定事項というものは、現内閣決定したものではありませんけれども、この法案を提出するについては重大な関係がありますので、この閣議決定事項内容について、一応政府の御見解を伺いたい、かように思つて前回質問をいたしたのであります。その要点は昭和二十三年四月九日の閣議決定事項のうちの六に、「鉱業会社負担する復旧費については、今後炭価改訂の際価格中に織り込むか、またはその他適当な措置を考慮するものとする。」こうあるのであります。その結果どういうことになつたかというと、一トンについて十六円十一銭というものを炭価のうちに含めて、そうしてその十六円十一銭を復旧費に充てられておつた。かように政府委員から御説明があつたのでありまするが、通産大臣はその前の閣議決定については適法であるかどうか。すなわち公定価格をきめる場合において運賃その他の諸がかりをその中に入れるということは、私は不合理はないと思います。たとえば今考査特別委員会で問題になつており、あるいはまた刑事問題にまで発展しようとしておるのに、大豆増産奨励金というものを大豆価格のうちに入れまして、その金を大豆協会がかつて使つておるというのが、非常に今法制上の疑義が生じ、考査特別委員会もこれを取上げて、審議をしておるのでありまするが、この場合十六円十一銭を炭価のうちに入れられたについての法律上の根拠を、現内閣として一応どういうふうにお考えになつておるか、またその間の経緯がわかつておりまするならば、この点について御説明を願いたいと思います。
  4. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 その当時の経緯は詳しく存じませんが、とにかくこれを原価の中に加算したということになつておるのでありまして、これを原価の中に含ますことは、普通原価構成がどういうもので成立つかという解釈になると思うのであります。原価のことにつきましては、たとえばこういうことはよくある問題で、大きな意味から言つて一つ減価償却いわゆる償却という形にも考えられ得まするし、また実際に共通して起る問題については、それを全般的なコストの中に織り込むということは、通常の考え方からして私は一向さしつかえないものだというふうに考えるのであります。それで原価構成の一部分であるという考え方については、私は肯定され得るものだと存じております。法律的にはここに法制局長官がおいでになりますから、お答え願いたいと思います。
  5. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま大臣からお答えいたしました通りであると存じます。これらのことは価格政策上当然のことであつて、法的には疑義のないものと考えます。
  6. 福田一

    福田(一)委員 法制局長の御説明大臣と同じでありますというのでは不明瞭ですから、もつとはつきりとおつしやつていただきたい。
  7. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知の通り物価統制令そのもの建前といたしましては、さようなこまかい規定をくぎづけにいたしておりません。従いましてこれは結局先ほど申しましたような価格政策公定価格を設けるなりその他物価の問題ということに相なるのであります。法律的の拘束がないということであります。
  8. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの大臣の御説明によりますと、そういうものは入れてもいい。こうおつしやるのでありますが、九州炭鉱被害があつた場合に、石炭というものが九州だけから出ておるものならば、石炭増産するという建前からいつて、その価格の一部にこれを加えるということは当然だと私も考えておるのでありますけれども、全然鉱害関係のないところの石炭にまで、それを全部かけて出さなければならなかつたということは私は妥当を欠いておる、かように考えるのであります。大臣はいかようにお考えでありますか。
  9. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 これはこの前の一般のときに御説明申し上げましたように当時共助精神に基いて各業者が一致してこれを認められたものでありまして、同時にまた今後起り得る——たとえば戦争中の災害は別問題といたしまして、何らかの場合に共助精神からこういつたものをこめるということについて、当時の業界が認められ、そうして全般的に承認されたということになりますれば、これは原価の中に入れることは一向さしつかえないと、私はかように存じております。
  10. 福田一

    福田(一)委員 それならば戦争中の災害は打ち切るという原則は、確立しておるのでありまするが、その戦争中の災害を打切るという方針がきまつておるのに、この問題についてのみ石炭一トン十六円十一銭というものをかけなければならなかつたということは、その前の大原則を破つたという意味において、非常に大きな問題であります。これは社会的に見ましても、たとえば通産関係においては、織物の機械のごときは全部戦時中にはスクラツプになつてつた。ずいぶん休業したりあるいは商売をやめてしまつた人もある。そのために失業者もたくさん出ておる。非常に困つておる。こういう事情があつた。また有田委員からも指摘されましたけれども、戦争によつてたくさんの未亡人ができた、あるいは帰つて来る人も非常に困つてつて来ておるというような非常に大きな社会問題が起きておる。こういう意味から言いまするならば、石炭の問題だけ、戦時中の災害について特に考慮をして、石炭以外の問題については触れないということが政治の上——法制上の問題はここで一歩を置くとして、政治上の問題としては必ずしも正しい措置でなかつた。またそれをやるのであれば国民に十分納得させて、そのことだけはいたし方がないからやるのだということを納得させる意味において、これを発表してそうしてやるべき政治的な責任があつた考えておるのであります。これについてはいかようなお考えを持つておりますか。
  11. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 それはこの前に私が考え方について申し上げたことを繰返すことになると思うのでありますが、なるほど戦争災害で今お話のような社会的な問題とすれば、種々なる問題が起つていることは、私はよく承知いたしております。そこでただ問題といたしましては、この問題については昨年の閣議決定のときにも論ぜられたように、一方において戦時補償が打切りになつた。そこで鉱害者自身金銭賠償だけの責任しか鉱業法においてはございません。しかしながら実際に災害が起つたということは、一つは社会問題でもあります。同時にまた経済問題といたしまして、こういつた場合に炭坑業者が何らかの措置をとらないということは、ことに坑内地下仕事をやつている。地上の問題についてはいろいろ危惧の念を、その近辺の住居民にも与える、こういつたことを考慮いたしまして、一面いわゆる社会問題の解決ということもありますが、同時に業界自体の将来の経済的な考え方というものと彼此相まつて共助精神からこれをやつて行こうということであつたと思うのであります。その考え方を今日引き延ばして来た、こういう考え方であつて、私はそのときに申し上げましたように、もしこれが事業者団体法というような制約がなくて、鉱業界というものが従来通りの形でやつておれば、必ずこれは内輪でお講じになる問題であるのでありますが、不幸にしてそういうものがないから、政府としては法案として、ここにこういつた措置をとることがいいのではないか、かように考えておる次第であります。
  12. 福田一

    福田(一)委員 私の言つたのは、この法律をつくらなければならなくなつた理由をお聞きしておるというよりはむしろ戦時中の災害は見えないのだということがきまつておるににかかわらず、この前の閣議でもつて見ておるということは、間違いではないかということを聞いておる。
  13. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 間違いである、間違いでないという問題は、水かけ論になると存ずるのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、これが一つの陥没によつて自会的な問題を起しておる。この社会的な問題を起しておるという問題だけであるならば、社会的な問題はずいぶんと起きておるのでありますが、業界自身が今後石炭工業をやつて行かれる上において、こういつたようなものについて、業界事体が無関心であるということは、業界の経済的な今後の保護自分自身仕事保護という建前から言つても、これを実際に復旧するという形をとることがいいのではないかということで、その当時私は業界人たちの御同意を得て、ああいつたような閣議決定が行われたと思うのであります。その考え方は私は政治的に言つて非常に鉱業界りつぱな形であつて共助精神を発揮されるということと同時に、炭鉱業というものが地下仕事をやつておる。不時の災害地上に及ぼすことがあり得る。そういう場合においても、われわれはこういう態度をとるのだという一つのゼスチユアをとるといたしましても、私は業界のその当時の考え方は、実にりつぱであると考えておるのであります。その考えを今日まで延長することが私は業界の今後のためにもけつこうなことではないかと、かように存じております。
  14. 福田一

    福田(一)委員 それではその業界人たちが十六円十一銭の負担現実にしておるという証拠がありますかと申し上げることは、この十六円十一銭かの負担というものは結局国民一般、決して鉱業権者負担したのではない。鉱業権者がしたならば今おつしやる通り十分納得します。しかし十六円十一銭というものは、結局は炭価の中に入れて、われわれ国民全部が負担しておる。鉱業権者負担したのではないと思うのであります。その点はどうなんですか。
  15. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 私は今の場合でも同じことであろうと思うのでありますが、これはなるほどいかなる場合でも、炭価の中にそれが入つて行くということは、これはある意味から言えば消費者に転嫁したことになります。またある意味から言えば、自分自身経費をそれだけつずめたことになるのでありましてこの点は消費税なら消費税という形でかけたならば、これは全部転嫁ということがないことがはつきりいたすのでありますけれども、業者としては自分自身の立場を保護するという意味において、経費を節約したといつて、十六円十一銭をかけたのかもしれませんから、あるいはこの問題についてそれだけ自分としてのある整備といいますか、いろいろなくふうによつてこれを割出してやつたということも言えると思うのでありまして、この点の限界は私はこれが全部どちらの分から出ておるということは言えないと思うのであります。それは一体十六円十一銭の消費税としてかけられるのならば、これははつきり基本の通りだと思います。その点においては当時業者としての考え方がいずれであつたかは、私業者の人の腹の中へ一々入つて見ないからわからぬけれども、しかしながら少くとも自分らがこれは負担するのだという形でおやりになつたんだと存ずるのであります。
  16. 福田一

    福田(一)委員 前の大臣の答弁は、いかにも鉱業権者が非常に共助精神を発揮して、まことにりつぱなことをしているというふうに言われるから、私は今のような質問をしたのであります。決して私は全部鉱業権者負担したものだと思つておらない。いわば消費者に転嫁した分も多分にあるものと考える。これはもちろん水かけ論ですが、しかし水かけ論にならないようにするためには、各炭鉱会社々々の内容をしさいに検討して、そうして十六円十一銭、それに当る分だけを鉱害のためにこういうふうにして出したんだということが、ちやんと決算面に現われているならば、それは大臣のおつしやるのはごもつともですが、そうではないと思う。おそらくはこれはやはりわれわれは炭鉱として負担した部分の中に多分に入つていると思う。そこに今度この立法の根本的な問題が出て来るわけであります。われわれは消費者負担においてやつたようなことのしりぬぐいを、ここでその理由でもつてしなければならないとは考えておらない。これは同僚議員からしばしば言われております通り、この問題は社会問題として当然しなければならない。こういう意味においてはわれわれ民主自由党同僚議員も皆同じ意見であります。ぜひともこれはやつてあげたいものである。かように考えているけれども、しかしこれが消費者負担になる、あるいはまた全然鉱害関係のないようなところの人たちまでも、この負担を負わなければならないということの原因がどこから出ているか。これに疑義がある。これが今度の法案疑義になつている。それをお聞きしたいから、この前の閣議決定をお聞きしたのである。このことは水かけ輪になります。また現内閣がやつたことでもありませんから、取上げてみてもどうにもならないかもしれないが、私は消費者負担においてやつたとい前内閣措置は、あまりいい方法ではなかつた、やむを得ない方法であつたかもしれぬが、いい方法ではなかつた考えざるを得ないのであります。そういう意味合いから申しまして、この法案はやはりどうしても社会立法である。今度新しくこの問題を取上げてやるという場合になれば、前の継続として考えないで社会立法として考える。こういうふうな意味でわれわれは考えてみたい。かように考えているわけであります。そこで社会立法として考えて行くときに、私は一つ大きな疑点が起きるのであります。それは今度の法案内容によりますと、復旧工事施行者原則として加害鉱業権者、こういうことになつております。そうすると加害鉱業権者に対して国からある程度の補助があつた場合でも、加害鉱業権者というものは、復旧工事施行者になる場合が起ると思うのであります。その点についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  17. 田口良明

    田口政府委員 この復旧工事施行者になるのは、公共事業につきましては主として主務大臣の指定する府県とか、そういう面が施行者になるわけであります。なお公共事業に属しないような工事につきましては、原則として被指定者がなるということにいたしているわけであります。
  18. 福田一

    福田(一)委員 それではその被害というもの、鉱害というものは炭鉱自体のいわゆる炭坑を掘つて来たために、今にも落盤が起きるというような炭鉱内の問題と、それからその炭坑をそのままにしておけば被害が起きないけれども、現実地表に現われた被害が非常に大きい、こういう場合と二つにわけることができると思うのであります。その場合における工事施行者はどういうふうになりますか。
  19. 田口良明

    田口政府委員 ただいまの二つにわけるお話につきましては、私どもは地表に現われる鉱害のみを特別鉱害といたしておりますが、地表被害復旧するということに限定されるわけでありまして坑内はこの対象にはなつておりません。
  20. 福田一

    福田(一)委員 地表に現われるもののみをもつてやるという場合ならば、主として公共団体復旧工事施行者なつた方がいいのではないかと考えますが、御意見はいかがですか。
  21. 田口良明

    田口政府委員 お説の通りでありますが、ただこの復旧工事内容には、先ほど申しましたように橋梁とか、あるいは道路とか、あるいは堤防とか、あるいは上水道、下水道、こういうような公共事業に属するものがございますので、この点はそれぞれの主管官庁においてその施行者を指定する。ただ非公共的な事業と申しますると、たとえて申しますと家屋とか、あるいは墓地とか、あるいは私有の耕地、こういうようなものにつきましては、これは主としてこの鉱害を出した炭鉱と、この被害者は密接な関係にあるわけであります。従いまして被指定者にこれが復旧工事施行を命ずるのが最も妥当であり、またその間の復旧工事についてのあらゆる面における妥当性が付与されるのじやないかというふうに考えているわけであります。
  22. 福田一

    福田(一)委員 それならば私は、これは法案を修正する場合の問題になるかもしれませんが、むしろ今言われたようなことを建前にして置かれた方が非常にいいじやないかと考える。というのは、大体民主自由党などというのは、いつも資本家手先のようなことばかり言われている。われわれ決して資本家手先でも何でもない。この法案によるとややもすれば鉱山へ特別の補助をしてやる。そうしてその補助金鉱山の方でうまく使つて、さやをはねるような場合も考慮されるのであります。われわれは何も資本家手先になるためにやつているわけじやないから、当然鉱山もそんなものをもらわなくてもいいわけだから、公共団体がその費用を全部とつてつたら、こういうよう疑問を受けない。われわれはこの点において非常な不満を持つ。これは復旧工事施行者原則として加害鉱業権者とするということに書いてあるから、何かいかにも石炭会社にわれわれが一ぱいでも飲ましてもらつたような疑問を受けるかもしれぬ。むしろこういう社会立法に基くようなものは、これは当然公共団体が主体である。やむを得ざる場合には鉱業権者にやらせるとすべきである。本末を転倒した立法のやり方と私は考える。この点ははなはだ遺憾であります。これはまた別の問題、この法案を修正する場合にまた考えるといたしまして、その次にはこの前からよく問題になつているのでありまするけれども、この法案の根拠というものは、法案の第一条、第三条等によりまして、被害のなかつた炭鉱もやはりこれを負担しなければならない。大体トン当り二十円くらい負担してもらうことになつており、その前提として特別鉱害復旧団というものができると聞いておりますが、これはもうすでにできておりますか。
  23. 田口良明

    田口政府委員 復旧団は、この法律の成立によつてできる建前になつておりまして、まだできておりません。
  24. 福田一

    福田(一)委員 いわゆる戦時災害をどうこうするということからこの法律はできており、関係のない鉱業権者がおれはこの法律ができたとしても、われわれは私有財産を認められておるのだから、こんなことに参加したくないこういう意思表示をした場合の罰則を規定しております。そうすると憲法とこの法律関係が出て来るのでありますが、その点についてはどういうお考えを持つておりますか。
  25. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 直接関係のない鉱業権者をも含めまして、全般的にこの負担が及ぶという点についての、憲法上の御疑念のように拝承いたしましたが、どういうふうに御説明いたしましようか。便宜憲法の条文に即して申し上げた方が、あるいはよろしいかとも存ずるのでございます。まず種々の雰囲気を別にして、あるいは言葉のあやというものを一応全然取除きまして、純粹の法律技術屋的に申し上げた方が、かえつて率直でよいかと思うのであります。  御承知のように、憲法の条文でこれに当りますものを探しますと、結局第二十九条の財産権の問題じやないかというふうに考えます。財産権についての問題は、御承知のように大原則が一項に掲げられており、その隣りに二項、三項とこれをモデフアイするような条項が設けられているわけであります。同じこの二項に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という条文があるのでございまして、結局この法律で規定しております納付金というものは、石炭鉱業権、こういう財産権の内容と申しますか、こぶと申しますか、そういうようなものとしてできておるものであり、鉱業権についての一つ負担というふうに考えるわけであります。従いましてこの二項に当てはめて考えますと、「公共の福祉に適合するように、」という条件がまずなければならぬ。そこで本案のねらつておりますところが公共の福祉に適合するかどうか、これは私今日初めて参りましたけれども、当局の方からたびたびその必要性は述べられていると思いますから、詳しく申し上げませんが、災害の防止とかあるいは交通の確保、住居その他民生の安定というような見地から、この特別鉱害復旧が今日喫緊の要務であるということは、何人も御異存のないところであろうと思います。従いまして公共の福祉という関係の条文には、該当していないというふうに思うのであります。ところで財産権と申しましてもいろいろございます。所有権というようなものも財産権である。今日この法案の対象といたしております鉱業権というものは、これまた申すまでもないところでございますけれども、所有権などとはよほど性格の違うものでありまして、本来鉱物というものは国が持つておりますから、それを採掘いたしまする権能は、国が一々個別的に折衝して供与するということによつて出て来る権利でありまして、天賦人権に近いような所有権とはよほど違う。その点から見ても、二十九条の二項は所有権の一般の場合とは違つて、むしろ気やすさと申しますか、安心感を持つているわけであります。で特別国から設定される権利に伴うものとしてある種の負担を課する、しかも今申しました公共の福祉ということから、やむを得ない負担を課するという方が説明が楽ではないかと思う。ごく最近漁業法を成立さしていただきましたが、漁業権というものと鉱業権とは法律的にはよほど似ていると思います。これにも法案にございましたように、漁業権者に負担を課して、一定額を年々納めさせる。しかもこれが一種の補償のための債権になるようなことの明文を法律自身が置いております。そういう点から見ましても、実は漁業法の場合と偶然ではありますけれども符節を合わしたような形になつておりまして、憲法上も同様に問題がないと考えております。  なお言葉のあやで申しますと、いろいろ申し上げることがあります。たとえば今回の特別鉱害というものは、本来ならば全炭鉱が負わなければならぬが、たまたま輸送等の関係から、一部の者がその全責任を引受けなければならぬようなことになつて来ます。その反面、他の地方の炭鉱はその負担を免れるというような場合の一種の公平の原則、そういうような面からの説明もできると思いますが、それまで立入つて私が申し上げる義務もないと思いますので、法律説明だけを申し上げておきます。
  26. 福田一

    福田(一)委員 ただいま申されました説明の中で、公共の福祉とはしからばどういうことであるかということを、もう一度明かにしていただきたいと思います。
  27. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは権利の制限なりあるいは負担を課しまする関係法律につきましてはいつもお尋ねがあり、御審議が慎重に行われている言葉であります。要するに、この場合に即して申し上げますれば、やはり災害の防止、民生の安定というような意味において、まさに公共の福祉という言葉に当てはまつているというふうに、確信いたしている次第であります。
  28. 福田一

    福田(一)委員 私は、公共の福祉というのは、もつと一般的なものをいうのであつて、ある一部分に起つたような事態を、ただちにもつて公共の福祉というふうに断定できるかどうかということは、非常に疑問を持つておりまする。これについては、どういうようにお考えになつておりますか。
  29. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おそらく公共ということになると思いますけれども、たとえば全国的なことに限るというふうには考えておりません。地方的の場合でも、公共の概念に該当する場合があります。たとえば災害救助というような場合、公共の福祉のもとにいろいろな負担が命ぜられる法律があるのでありますが、それらにつきましても、地方の行う災害救助を公共の福祉と考えております。その他商法の関係で卑近な例もたくさんあります。全国的なものであり、何ヘクタールの地域であるというような機械的な限定はないと申すほかは、ないではないかというふうに考えております。
  30. 福田一

    福田(一)委員 今の御説明でははつきりしないのであります。公共の福祉という言葉の意味からいつても、一地方的なものを、どの程度まで公共の福祉といつて限定して行くかということは大きな問題です。この問題だけのことじやない、これは法制上の重大問題である。およそ公共の福祉というような意味は、やはり全国的に見るというようなことが、原則としてきめらるべきものだと私は考えます。しかし法律の定義をやつて行きます上には、法律解釈というものが出て来ます。その法律解釈を順次やつて行くうちに、また法律をかえて行かないでも、この程度に認めて行つたらいいじやないかという意味で、だんだん慣習的に、公共の福祉というものが地方にまで及んで来ておるというのが、ほんとうの実情ではなかつたかと考える。この意味合いから行きますと、私は一地方に起つたような問題を、公共の福祉という言葉で片づけるということは、ちよつと私は納得が行かないのでありますが、この点についてもう一度御説明を願います。
  31. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一般的の問題は先ほどお答えしました通りでございますが、ただいまの福田さんのお話によつて実は私啓発されたのでありますが、かりに今回の問題についてこれを見まするならば、一地方的ではありますけれども、やはり全国的に関心を持たざるを得ない問題であろうと思います。そういう意味合いにおいて、ただいまのお言葉にも合致することになるではないかというふうに考えております。
  32. 福田一

    福田(一)委員 私はこれ以上この問題を追求してみましても、あるいは意見の相違ということになると思いますから、追求しませんけれども、およそ法の解釈というものには限界があるべきものだと思うのです。すべてだんだん引延して解釈して行きますと、立法精神にはずれたような法律の適用をしてしまうという故障を起す可能性が多分にあると思うのです。こういう意味から行きますと、公共の福祉に合致するとお考えになること自体については、私はこの問題に関しては少し疑義があるじやないかと考えておるのでありますが、一応この問題はこの程度にとどめます。そこでただいまも申し上げましたように、関係のない業者が、この法律案ができた場合に断つた。そんなものに自分たちは入る必要はない、この問題は明らかに憲法と牴触する、われわれの財産権を侵害するものである。こういうような訴訟を起した場合には、この訴訟を起している期間は、その負担金は払わないでもいいと思うのですが、これはついてはどういう御解釈を持つておりますか。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは一般原則でございますが、訴訟を起しましても、元の義務、この場合で申しますれば納付しなければならぬという義務、この義務を履行させる執行権といいますか、そういうものは停止しないというのか一応原則になつております。但しこれは裁判所の見るところによつて停止することはできる行政事件訴訟特例法という一般法の規定がございまして、一般負担金の場合と同じ扱いになるのではないかというふうに考えております。
  34. 福田一

    福田(一)委員 そういうような訴訟を起し得るような疑義のある建前において、この工事をやつて行くということになつて、その鉱害復旧工事自体が非常に遅れたり、あるいは今度この法律が出たらうまく行くんだと思つたが、うまく行かないというような問題が起ると思うのであります。こういう意味からいつても、この法案はもう少し別個の立場で、こういうような疑義が起きない、また協力できる人たちが協力するような形に持つて行くべきものじやないかと、かように私は考えておるのであります。これに対して通産大臣はいかようなお考えを持つておりますか。
  35. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 これは私前からたびたび申し上げておるような考え方で、その関係者だけということになりますと、法的にははつきり金銭賠償ができないという問題に陥るわけであります。そこでこの法案が必要になつて来たゆえんであり、しかもそれが、私どもの先ほどから繰返して申し上げておるような、従来の鉱業界内部の共助的な考え方で、ここへ持つて来ていただきたい、こういう考え方から起つておる。おそらくはこういう鉱害者だけということになれば、金銭賠償だけということになつて、実際問題として災害復旧ができないという結論になるだろうと、かように存じております。そのためにこういつたような形に持つてつていただくことを希望いたしまして、この法案を出したようなわけであります。
  36. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、配炭公団があつた時分には、業者人たちは非常に円満にやつておられた、これはむりもない話でありまして、当時は統制が行われておつたのでありますから、石炭を掘るにしても、また売る場合にも、みんなが仲よくやつていたということは一応わかるのであります。今度は統制がはずされまして、そうして個々の公団々々が自分の立場において事業をやることになつた。そういたしますと、先ほども申しましたような統制の場合における互助の考え方とは大分考え方がかわつて来ておるのではないか。現にこの問題については、方々の公団から、直接関係のない公団からも、こういうような不景気な時代になつて、われわれの業務自体がうまく行かなくなつているときに、またこの負担をかけられるのは非常に迷惑であるというようなことがしばしばわれわれの耳にも達しておるのであります。このことについて、今でも昔と同じような相互の援助の気持が、業者の間にあると、通産大臣はお考えになつておるのでありますか。
  37. 稻垣平太郎

    稻垣国務大臣 今日もそういう考えがあると思うかどうかということでありますが、これは統制のわくがはめられる以前の時代においては、一般石炭業界はかなり、何といいますか、統制のとれた、そうして互助的な考えが強かつたと私は存じております。そこで統制の時代を経て、今度は今日の業態からいつて、なかなか困難な時代が来たということも、十分察せられるのであります。そうかと言つて、それで、はもう石炭業界は、隣りの炭鉱業者はおれは知らぬといつたような気持であるとは、私は必ずしもさようには存じないのでありまして、中には今度のこの問題についても、やむを得ぬ、むりからぬことだという考えも、全然鉱害を受けない所で表明せられておられる方もありますので、この点は私はいずれとも申し上げかねますけれども、昔の統制以前における石炭業界のあのうるわしかつたお気持がなお残つているものと、われわれは期待いたしておるのであります。ただ例の二十二条の第三項で、特別の御事情によつては、通産大臣が減免の規定を適用し得るということを考えておりますので、おそらくは業界の方々の御相談合いを参酌して、その御相談合いの会とでも申しますか、御相談の筋書に従つて、われわれにおいてかつてに裁定して行くということも、なかなか問題でありますので、従来の互助の精神を失われていないものと存じまして、そうしてその話合いによつて、この方面のこの炭鉱はひとつ減免の規定を適用しろ、こういうふうな話合いがつきました場合に、われわれとしてはそれの筋に従つて、あの規定を適用して行きたい、かように考えておるようなわけであります。
  38. 神田博

    神田委員長代理 ちよつと福田さんに御相談いたしますが、憲法問題におきまして、違憲かどうかということにつきまして、両有田君から関連して質問したいと言つておりますが……
  39. 福田一

    福田(一)委員 わかりました。  それでは大臣が退席されましたから、私は委員長に希望として申し上げておきます。およそ法律をつくるときには、大臣のおつしやることは非常にごもつとものように思われる。しかしその法律施行するようになつているいろいろな疑義が生じた場合には、下の役人がかつてにこれをきめてしまうという弊害がままあるのであります。この法案によりますと、特別なことがあれば通産大臣が第何條の第何項かによつて、こういうものは除外ができるということになつている。こういうようにきめておいても、法律がきまつてしまうというと、今度はお前の方は条件に合わないというような理由をつけて、いやおうなしに関係のない者、あるいは負担の資力のない者、あるいはそういう意思を持つていない者までも、まきぞえを食わしてしまうというような場合がまま起つておるのであります。これはちよつと考えると非常にいいようであつても、実際に適用すると、いろいろな不公平な問題や、あるいはまた非常に不合理な問題が起きる原因になるのであります。ただいまの大臣の御説明によると、そういうことについてはみんな一緒の気持でやつてくれるだろうということであります。われわれはあの御説明だけではわからない。むしろこの際は、この前も申し上げ、同僚委員からも言われておりまするように、証人として各地区の鉱業をやつておられる人を委員会に呼んで来られて、一体この法律について諸君はどういうふうな考えを持つておられるかという意見を聞いてあげないというと、この法律ができてしまつた上に、こういうふうに法律ができたから、お前はちやんとその条項にはまるのだということになつて、今度はそれを納めない限りは罰則を適用されるというようなそういう刑事被告的な法律を、われわれはここでかつてにきめるわけに行かない。われわれは鉱害によつて非常に困つている人たちの立場を十分に同情する、ぜひ何とかしてやりたいと思いますが、この法律によつてやるべきかどうかということについては非常に疑義を持つ。ですから私はそういう意味において証人を喚問して、この面でも慎重に調査を進めるように、委員長においてとりはかられたいという希望を一応述べておきます。  私の質問に関連して同僚委員の御質問があるそうですから、しばらくの間私は発言を控えます。
  40. 神田博

    神田委員長代理 ただいま福田委員の御発言の委員長に要望の点、十分了承しておりますから、さよう御了承願いたいと思います。では有田二郎君。
  41. 有田二郎

    有田(二)委員 特別鉱害の原因は戦争中にあるのでありますが、鉱害の発生は戦事後にも多くありまして、しかも鉱害を加えたのは国の命令によつて加害炭鉱がやつたのであつて被害者は全然これに関係なく、まつたくお気の毒なものであることは申すまでもないのであります。ただいま佐藤法務意見長官の御意見によつて、またこれらの見地からも風水害による被害と同一視して、公共事業費の中から国家が工事費全額を負担すべきであるというような考え方もできるのでありますが、これに対しての御意見を承りたいのであります。
  42. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私ども法律屋といたしましては、今仰せになりました方法法律的に考えられるということを、申し上げる程度であると思いますから、御了承願います。
  43. 有田二郎

    有田(二)委員 通産政務次官からも、福田委員からもお話があつたが、国家がこれらの風水害と同じような考え方をもつて公共事業費の中から復旧工事費全額を負担するというような考え方が、政府として考えられないだろうか、この点の御意見を承りたい。
  44. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この問題は先般来しばしば御議論のあるところでありまして、特にこの特別鉱害に対してのみならず、御指摘になつたような風水害その他不可抗力的な事情によりまして起つたものも、将来同様に政府は見て行くかというお尋ねだつたと思います。大臣からお答え願うことにいたしておきましたところ、やむを得ない用事で退席せられたので、かわつて申し上げます。  この法案につきましてはいろいろ疑問もあり、しかも前例に乏しいような法案でありまして、この点は提案者といたしましても十分考えていることであります。ただこの鉱害の特徴としては、この鉱害の原因となつている石炭の採掘行為をやつた時期から、数年後に地表の上に現われて来るという特殊性があります。台風が来たり、地震が来たりすることによつて被害を食うのは、比較的率直簡明に現われる。ところがこれはそういう乱掘という行為をやつてから数年たつて発生するものでありまして災害としてはまつたく特殊なものだと考えます。従つて他の災害と同じような見方をするのはどうかというように考えている。また同じように戦時中の災害というようなものがありましても、それはこの特別鉱害とは深刻度合が相当違つております。戦災で燒かれてしまつたというようなことも同じく考えられますけれども、現在社会問題として取上げられております事情等を、そのまま受入れると仮定いたしますれば、深刻度においてかなり違うものがあります。そういうことで特別鉱害として、他の災害考え方を異にいたしまして、本法を立案したわけであります。従いましてこれと同樣程度の特殊性というものがあるような災害が、もし不幸にして起つたといたしますれば、その事態について考慮すべきものであつて、現状におきましては、この特別鉱害になぞらえて他の一般的に災害を考慮いたそうとは考えていないような状況であります。これにつきましては、官房長官からお答えすることになつておりましたが、ただいま非常に忙しくてここにおられず、お答えできませんので、私が官房一長官の意見をも附加して申し上げたわけであります。御了承いただきたいと思います。
  45. 有田二郎

    有田(二)委員 この鉱害による被害者に対しては、まことに同情にたえないのであります。たまたま戦時中に炭鉱地帯に居住していたために美田を荒廃させられ、祖先の墳墓は水没せしめられ、かつ家屋倒壊、地磐陥落の危険に日夜さらされておるのであります。この気の毒な多数の被害者を救済し、かつすみやかに安堵させなければならぬということは、超党派的に考えられることだと思います。また農耕地や交通関係復旧等も、食糧増産その他の見地から、一日も早くやらなければならぬことだと思うのであります。ことに鉱害地をそのままに放置すれば自然破損のために、鉱害はひとりでに拡大するのでありまして、これらの観点からもすみやかにこの社会的大問題を、一日も早く解決されなければならぬことは論をまたないのであります。このために被害者が安堵し得るような万全の復旧態勢を整えることが必要だと思います。加害炭鉱負担能力以上の負担をさせるといる建前をとることは、必ずしも被害者を安堵させるものではないと考えます。さらに復旧工事負担に関する国あるいは公共団体、あるいは加害炭鉱あるいは非加害炭鉱等の分担に関しても、最も妥当合理性のある建前をとることが、絶対に必要であると私は思います。しかも先般の委員会、でも質問いたしました通りに、他の戦争による被害というような面も勘案いたしまして、十分これは慎重に、しかもすみやかに立法さるべきものである、かように考えるのであります。しかも先般厚生委員会に、身体障害者に対する法案が出ました際に、運賃を半額にするというような一項がありましたために、運輸委員会からも疑義が出たのでありますが、身体障害者が運賃が半額であるということは、どう考えてもわれわれは妥当と思うのでありますが、地との比例、すなわち運輸委員会は運輸委員会としていろいろな事情があるのであつて、そういうようなことも十分厚生委員会としては運輸委員会と連絡をとつてやるべきだつたと同じように、この問題についても非常に重要であつて、しかも拙速をたつとばなければならぬことは、よくわかるのでありますけれども……
  46. 神田博

    神田委員長代理 ちよつと有田君に御相談しますが、憲法問題に関連してとなつておりますので。……
  47. 有田二郎

    有田(二)委員 そういう意味合において、すみやかにこの法案が通らなければならぬということも、われわれはわかるのでありますが、他とのいろいろの関係があるから、こういうような見地から、政府は、もしもこの法案——あと余すところ明日と明後日、二日より会期がない。しかもこれを修正した場合には、関係方面のOKもとらなければならぬというようないろいろな観点から、もしも万一本国会においてこれが通らないとする場合においては、来国会においてすみやかにこの法案を提出する意思が政府にあるかないかということを、ひとつ承りたいと思います。
  48. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまのところでは、原案をぜひ御審議の上、成立いたしますような御配慮をいただきたいのであります。万が一にもこの審議が済まないというような事態は、はなはだ押しつけがましゆうございますが、ただいまは考えておらない。あとわずか二日間の問題でありますが、その場合に臨みましてから考えさしていただきたい。ぜひ原案によりまして御審議をいただきたいことを、くれぐれもお願いいたします。
  49. 神田博

    神田委員長代理 次は有田喜一君。
  50. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は、先般も質問いたしたのでありますが、一日も早くこの復旧を急いで、そうして今の被害者を救つて行くということは、きわめて緊要と思うのであります。ただこの問題を解決する上におきまして、先般来いろいろと問題になつておる憲法問題、この根本の問題が疑義を残しておつては、どうしても本件も打開することができない。     〔神田委員長代理退席、有田(二)委員長代理着席〕  そこで、先ほど福田委員からも、本件について御質問がありましたが、私いま少しく疑問が残つておりますので、この際政府から明確なる御答弁をいただきたいのであります。  昨年の閣議決定は、これは稻垣大臣も御答弁になりましたように、とにかく業界全体としての同意あるいは了解のもとにやつた。そこで本件については法律問題は起らない。ただしかし、ただいま提案のこの法律案は、関係のない炭鉱業者に対しても、この法律によつて一方的に義務を負わしておる。ここに私は問題が起ると思う。そこで佐藤法制長官は、憲法第二十九条の二項に、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」とあるんだからさしつかえないあるいは鉱業権の性質からいつて、先般の漁業法と同じような考え方で行けるだろうというような、御趣旨だつたのでありますが、私は憲法第二十九条第二項の財産権の内容云々の規定は、これは公共の福祉のために財産権の内容をいろいろ制限されるということはわかる。ところが全然これと関係ない方面の炭鉱業者にも、そういうふうに一方的に、二十円以内に採掘量を乗じたものに持つて行くということは、必ずしも二十九条の二項に該当しないと思う。たとえば九州鉱害を与えておる。その炭鉱業者の採掘権とか、何とかが制限されるということはわかりますけれども、どうもその点が明確でないと私は思います。ことに漁業権の問題がありましたが、あれは御承知の通り、新しく漁業権として許可される、その際にあれだけの免許料を払う。しかもそれが旧漁業権を消滅させる意味において免許料を払うのでありまして、初めからそれがわかつておる。しかるに本件のごとく、いかに鉱業権といえども、途中からこういうものを課するのだということは、いかにも私は疑問があると思う。こういうことがかりに許されるならば、たとえば電気事業に例をとつてみますと、今日関東配電の水力工作物が大風水害によつて破壊した。そのために地方の住民に大損害を与えた。それを何とか復旧しなければならぬ。そういう場合において、それなら関西配電も、北海道も、九州も、こういう法律によつて全部負担をかけるのだ、こう言つたときに、私は常識的に見ても、そういうことは許されないのだと思う。法制長官の鉱業権云々の問題へ行くならば、今私が例をとつて言いました水利権云々の問題と同じだと私は思う。そういうことが許されるかいうのならば、財産私有権の保障ということは、非常に疑問になつて来ると思う。この点は、依然として私の頭では疑問が解けないのです。ひとつそういうことに対する御回答をお願いいたします。
  51. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 有田委員のたいへん鋭い御質問で、敬服するのでありますが、先ほど申し述べましたプリンシプルのもとに、ただいまのお尋ねの点についての私の考えを申し述べたいと存じます。  この第二項に関連いたしまして、鉱業権そのものに関係ないというお言葉でございましたけれども、元来この納付金は鉱業界全般に関連しての問題でありまして、鉱業権と実体的に関係のあることは申すまでもないことであります。のみならず鉱業権の範囲と申しますか、第二項の言葉で言う範囲ということから申しますと、いわゆる範囲を縮めるというふうな意味における平面的な縮め方という意味ばかりを、ここで指しておるのではないと思います。一種の負担をこれに課することも、一種の縮め方であるというふうに考える次第であります。  それから、漁業権の例がどうもいかぬじやないか。これは新しい、最初の免許のときの話でというお言葉、これはまことに、その点に関する限りはその通りでありますけれども、りくつを申し上げてたいへん恐縮でございますが、先ほども触れましたように、何年毎年金額を納めさせる。これは、きわめて卑近なりくつで恐縮でございますけれども、最初は百円か二百円とることになつてつても、あるいは周囲の情勢その他の関係から、この百円の納付金の額を絶対に引上げることができないかと申しますと、あるいはやむを得ない事情がありますれば、次の年度からはこれを二倍に引上げるということも、理論上不可能であろうというふうに存じます。従いまして、最初であるからとか、あるいは途中であるからということは、純粹のりくつ上の問題にはならないのではないかというふうに考えております。  それから電気事業の例をお引きになりまして、ちよつと私耳によく入りませんところがございましたけれども、今回の問題は、先ほど申しました漁業権の例にも近い鉱業権というものをめぐつての問題でございます。電気事業の方は一種の許可事業と申しますか、ちよつと事業の性質が違つておるように思いますので、あまり頭のよいお答えをいたしかねますけれども、御了承を願います。
  52. 有田喜一

    有田(喜)委員 どうも私合点が行かないのですが、その被害を与えた炭鉱業者から幾らかとるというのなら、これはある程度わかるのですが、全然それと関係のない炭鉱業者の、いわゆる財産権の内容が制限される。そこからとれるということに、非常にむりがある。そこに私は疑義があるのであります。先ほど言いました電気事業の例をとつても、あれは御承知の通り水利権というのがあるわけであります。私はその水利権というものは、鉱業権と同じような性質のものだと思います。ところがその水利権によるところの水力工作物が破壊して、その地域にたいへんな損害を与えます。これもやはりこの例で言えば、いわゆる公共の福祉云々に該当するので、田畑は流され、家屋は流失し、その損害を復旧しなければならぬ。その場合には、たいがいその水力工作物を持つている会社負担して行くことが、一般のわれわれの常識なんです。ところが関東でそれが起つておるのに、それと全然関係のない関西配電に、お前も出せ、九州から出せ、北海道から出せというような立法がされたといたしますと、はたしてわれわれ穏当だと思えるかどうか疑問が起る。そういうことは憲法第二十九条第二項に対して憲法違反ではないというならば、どこまで財産権は保障されるのか、私は財産権の保障から、そういうことが許されるというならば、不安にたえられない、こういう感じがするのであります。
  53. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 わかりました。関係のないものというのは、人間の者という意味と取違えておりましたために、少し先ほどのお答えがとんちんかんであつたと思います。この関係のない者に対してそういう負担をさせるのかどうかということになりますれば、これはやはり先ほど申しましたことに帰着いたしますけれども、今回の私の説明は少くとも人を相手にいたしませんで、鉱業権というものを話の対象として申し上げておるわけであります。従いまして木で鼻をくくつたようなお答えを申し上げますれば、第二十九条の第二項の権利の問題として私は申し上げておりますから、それがどうであろうと問題ではございませんというふうになるように思います。しかし今度は合理的であるか不合理であるか、関係のないものにこの負担をかぶせるということは、法律問題ではないにしても、非常に不合理なやり方ではないかということは、大いに傾聴すべき問題であろうと思います。その点は先ほど触れましたように、それについての合理性というものは、戦時末期における全国にわたるべき増産の全責任が、たまたま輸送等の関係で、一部の業者の方に集中してしまつたというわけで、それに関係のない地方の業者の方々は、その立場をまぬかれることができたという、その点は、固苦しい言葉でいえば、一種の消極的の受益者的の地位というものを、当然ここで考えてもよろしいのではないか、そこに公平の原則というものも働き得るのではないかということから見れば、合理性から見ても不合理ではないと考えられる。これは法律論ではありませんけれども、立入つていえばそういう気持を持つております。従つて水利権の問題と同じようなことになります。
  54. 有田喜一

    有田(喜)委員 そういう解釈が許されるならば、私は非常に財産権に対して不安にたえられない。そこでせつかく入江法制局長もおられますから、法制局長の御意見もあわせてこの際承つておいて、われわれの審議を進める上の参考に資したいと思います。
  55. 入江俊郎

    ○入江法制局長 ただいまの憲法問題は私も先日来研究しておりますが、相当むずかしい点がある問題と思つております。この法案の中で憲法問題になる点は、憲法第十四条の、国民は法のもとに平等であるという原則に対して特別鉱害復旧のための費用を、石炭鉱業権者負担させることがどうであろうかという問題と、それからもう一つは、憲法第二十九条の私有財産権の制限に対してはたしてこういうような立法が可能かという問題になると思うのであります。それで第一点の法のもとに平等であるという原則に対して、この一定の納付金を石炭鉱業権者に負わせるという点は、これは事実問題に多分にかかつておると思いますけれども、戦時中起つた特別鉱害及びその復旧ということが、今日公共の福祉維持のためにさしおきがたきものであるということは言えると思うのでありますが、それと先日まで配炭公団等において、復旧の操作をやつてつたというようなこと、それとさらに石炭鉱業権者というものが、特別鉱害復旧という事柄に対して、社会的及び経済的にどういう関係を持つてつたかということをしさいに点検しまして、そしてその間の必然性を認め得るかどうかを判定すべきであると思うのです。私は鍵はそれらの関係について、詳しく事実関係を明らかにしておりませんので、またこれは法律問題というよりも事実問題でありますから、そういう点において、はたして石炭鉱業権者特別鉱害復旧という今日さしせまつた問題に対して、どれだけの責任と申しますか関係があるかということ、そういう点の御認定をまずしていただいて、そこに社会通念上確かにこれは石炭関係鉱業権者にそれだけの関係があるということになるならば、私は憲法十四条における「法の下に平等」というものに対して、若干の例外を認め得ると思つております。それから第二の憲法二十九条の財産権の侵害の問題でありますが、これは今度の法律の二十二条のように、一般石炭鉱業権者石炭を売つた金の中から、一トン当り二十円未満の金額を出す、ただそれだけを考えますと、これはまさに私有財産権の侵害でありましてこういうことは憲法二十九条の三項から見ても補償なしにはできないことと思いますけれども、しかしながら、あるいはまた先ほど申しましたように、特別鉱害復旧石炭鉱業権者に密接な社会的関係がありまして、それである程度負担することがきわめて合理的であるというような結論であるならば、これはまた考えようもあると思います。それから最後に今問題になつておりました二十九条二項の鉱業権の内容法律できめるというような行き方で考えられるかどうかの点でありますが、私は鉱業権の内容法律できめ得るという場合の、その内容というものはやはり鉱業権というものの本質と、それからそれの運用行使ということに密接な関係のある事柄についてでありまして、それと関係のない事柄を新しくどんどん法律でもつて権利の内容をつけ加えることは憲法は予想しておらぬと思います。そこで今度のような問題につきまして、一定の納付金を石炭鉱業権者復旧団に納めるということにつきまして、今これを一種の石炭鉱業権の内容考え得るかどうかという点、これは全然関係のないものを新しく負担したと見ないで特別鉱害復旧という仕事と、石炭鉱業権者との社会的関係から帰納しまして、石炭鉱業権というものは、当分の間そういう関係を社会的に持つべきものであるというように考え得るならば、先ほど佐藤法制意見長官のおつしやつたように、そういう考えが成立つのではないかと思うのであります。ただその法律はそこまで考えてできておるかどうかについて私はわかりませんが、ただ卒然読みますといきなり、これは財産権を侵害するがごとき感を抱くのですが、しかしさらにしさいに点検しますれば、そういう実質さえ認定できれば、そういう線に沿うて二十二条の負担関係を鉱業権の内容として、ここに認めてもいいのではないかと思います。はなはだ不徹底でありますが、事実関係多分に前提になつておりますから、それについての公正妥当な御判定をいただきました上で、憲法論がやはりそのいずれかになるというように、お答えするほか私としてはこの際申し上げることがないのであります。
  56. 有田喜一

    有田(喜)委員 入江局長の話を聞いてみますと、相当やはり憲法上の疑義を持つておられるように私は見受けるのです。しかし問題は先刻お話がありましたように、はたして事実問題が関連があるかどうかということにかかつておるのです。これはわれわれは特別の考えがございますけれども、ここでこれを繰返しておつては時間が経つばかりであると思いますので、この問題は論じませんが、そこらの問題をとくと考慮した上で、最後的の結論を出したいと思います。なお本件と多少関係するのですが、先ほど稻垣通産大臣が答えられたその補足として、田口政府委員から鉱区とか墓地とかは公共事業としては今出せないというような御答弁があつたように私聞いたのであります。先般私はこの点が気にかかつて宮幡政務次官に聞きますと、家屋、墓地その他の点も、公共事業として国から出せるように努力するというように私承つたのであります。そこで本件を解決する上において、相当いい答弁を得たと思つて、腹の中で喜んでおつたのであります。きようの政府委員の御答弁は、多少食い違いがあつたように思うのでありますが、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。政府からひとつ責任ある答弁を承りたい。前の宮幡政府委員の御答弁でいいというのなら、それでけつこうであります。
  57. 田口良明

    田口政府委員 従来までは公共事業と非公共事業とにわかれておつたのでありますが、これを今後公共事業とするかしないかは、さらに関係方面と折衝して、問題はきまるだろうと思います。ただ私の申し上げましたのは、従来の取扱いがそうであつたということを申し上げたわけであります。
  58. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま政府委員からの説明がありました通り、気持といたしましては、先般の委員会でも申し上げた通り、いわゆる国民一般からの税負担でやつておることでありまして、国家負担でやる面を、なるべく多くしたいという気持は今もかわつておりません。従つてただいま説明いたしましたような基本方針に基いて、今後とも努力をいたしたい、こういうことを先般申し上げ、現にその努力を続けておる。少し大げさになるかもしれませんが、そういう考えでやつているといことを御了承願いたいのであります。
  59. 有田喜一

    有田(喜)委員 特別鉱害復旧工事として一番たくさんの金がかかるのは家屋の問題であります。先般宮幡政務次官は相当積極的に大いにやるんだという御答弁であつて、私は心ひそかに満足しておつたのでありますが、きようは多少その辺があいまいになつた。努力はするがということで、どうもあいまいになつたように思うのでありますが、口先だけのことを聞いておるのではなくて、何とか解決したいというほんとうの気持を聞いておるのです。もちろん関係方面との折衝の問題も、相当むずかしいこともわかつておりますが、これは熱意と迫力と国会の関係で進むと思いますから、政府の所信をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  60. 宮幡靖

    宮幡政府委員 たいへん、ごもつともなお話であります。少し食い違いがあるということでありますが、有田委員の御指摘になつておりますところの私の答弁がどの部分でありますか、はつきり今わかりませんが、そのときは、それによつて非加害炭鉱までも御負担を願うようなことになつておるが、国家としてこれをやるべき面も相当あろう、しかし公共事業とその他しからざるものとの間に、相当困難なところもあるので、今確定的に数字はこまかく言うことはできないが、今組まれておる予算の中でも相当程度を考慮いたしまして、この額をもつとさらに拡大して行くような方向に努力したい、こういうふうに申し上げたと思います。あるいは言葉の言いまわしが違つておるかもしれませんが、そういう趣旨で申し上げたつもりでおります。その気持は速記録に残つておると思います。今重ねて同じことが言えないというだけでありまして、別に今かわつた気持は持つておりません。速記録に載つております前に申し上げました通りで、現在政府の方針は違つておらないことを御了承願います。なお速記録によりまして、ただすべき点がございましたら御意見に基いてこれを補足して行きたいとし思います。
  61. 有田喜一

    有田(喜)委員 速記録云々がありましたが、政務次官、はなはだ失礼ですが、今私の聞いておる内容を御了承なんでしようか。これは言うまでもないことなのですが、今までの復旧工事負担を見ますと、土木、耕地、水道、家屋、墓地その他、鉄道、こうなつておるのであります。それでこの中で一番大きい金額が家屋なんです。それから墓地その他という二つのものに対しては、公共事業費は何にも出ていない。一番大きいものが公共事業費で出ていないから、これを公共事業費として政府が大いに負担する余地はかいかと言つたら、政務次官も大いにやるんだと言われた。ところがただいまは多少あいまいである。そこを懸念して伺つておるのですが、所信があるがごとくにしてなきがごとく、やはりあいまいに聞えるのですが、もつとはつきりおつしやつていただきたい。
  62. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点は前会の御答弁にも申し上げた通りでかわつておりません。言葉の言いまわしで、あるいは誤解を受けたかもしれませんが、当然公共事業費になるベきものについては、問題はなかろうと思います。しからざるものについてはなお進めるという気持——ちよつと申し上げにくいのですが、関係方面との関係もありますが、有田委員のお考えと同じであります。ただ少し深く入り過ぎたような感じがありますので、先日お答えしましたような気持で進めて参りたい。言いまわしが惡くて御了承いただけないかもしれませんが、そういう気持であります。
  63. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は政府として先般私の気持に対して御答弁くださつたと同様に、家屋その他のものについても政府は非常に熱意を持つてやるんだというような御答弁と解釈いたします。また政府の所信がそこにあるというふうに政府を信頼して私の質問は打切りますが、この点確認されて、一層の御奮闘あらんことを切望いたします。
  64. 福田一

    福田(一)委員 これは先ほどから出ておる憲法上疑義があるという問題に関連すると思うのですが、一体石炭の問題について、こういうような災害が起きたならば、こういう措置を講ぜられるというなら、石炭以外の鉄鋼その他の銅、鉛、亜鉛というようなものを増産するために鉱毒が非常に流れ、そうして飲料水に困つた、あるいは魚がとれなくなつて、水産業者が非常に困つておるというような話も、全国には二、三例があるのであります。こういうものもこの種の法律を出してお救いになるお考えがあるかどうか。
  65. 宮幡靖

    宮幡政府委員 福田委員のお尋ねもこの前ありまして、それと同じ趣旨であると思いますが、これは法律によつた特別の鉱害で、先ほども他の鉱害とは趣を異にするということを申し上げておきましたが、たとえば鉱毒によりまして、漁業関係に与えました影響、あるいはわれわれの生れた地方にもありますが、化学繊維の汚水による影響というものがあります。これはおおむね特別法令のあるものは特別法令、一般法令に準拠するものは一般法令によりまして、金銭賠償によつて解決すべきものでありまして、現状復旧をねらいといたします特別鉱害とは趣を異にしておる。いろいろこの法律を適用いたしまして、他の災害にも損害補償等を考えようとはただいま考えておりません。
  66. 福田一

    福田(一)委員 そこで公共の福祉という問題を、ここでもう一ぺんむし返さざるを得なくなるのです。公共の福祉というものを認めるということになれば、やはり一地方に起つたような問題もこれを救済しなければならない。社会的にも、政治的にも、経済的にもこれは救済すべきが当然だと思う。われわれから言えば、実を言うと戦争中に起つたような被害は、どこの問題も全部これは救済してあげたいという気持は多分にあるわけです。しかしわれわれが今置かれておりますところの立場から見まして、そういうことは私言うべき筋合いではないと思つて発言しないので、いわば公共の福祉というものによつて、こういうような鉱害による人々をもし救済できるのならば、できるだけこういう法律というものは、これは演繹して考えることの方が私はいいのではないか、かように考えておるのであります。そこで鉱毒の問題を一言申し上げたのでありますが、同僚の両有田議員から御質問がありましたように、この問題の憲法上の疑義というものは、まだ委員の間にほんとうにはつきり割り切れておらないというところは、十分政府当局においてもお考えを願いたいところであります。しかしこういうような災害が起つておるのに、これをわれわれが放任しておいたらいいという気持ではないのであります。そこでこの法案が、そういうような、一般の国家的な、また国民全般の問題としてやはり一応考えなければ、公平の原則に反するという立場で、われわれは審議いたしておるのでありますけれども、現実に起つておるところの被害を何とかしてあげたいという意味においてはわれわれは等閑に付していいというような気分は少しもないのであります。現在工事をやつておられまして、今中止をされておりますが、この配炭公団の金の一部によつてつておられた復旧工事費は、今年内には一体どれくらい今後使わなければならないことになるのですか。
  67. 田口良明

    田口政府委員 二十四年度の復旧工事の計画は、九億二千万円程度だと考えられます。これはお手元に資料を差上げてございます。そのうちで配炭公団のプール資金の方から、この約半年でございますが、九月十五日までに復旧いたしました数字が大体二億四千万円程度になつております。従いまして先ほど申しました九億二千万円というのは、全体の工事計画の費用でございますので、この中から、大体におきまして国庫負担分が三億円、地方の公共団体からの出し前が一億足らずの約六千万円、鉱業権者負担分が五億六千万円程度であります。従いましてただいま申し上げました三億四千六百万円というものが、上半期において公団によつてすでに処理されており、残る額が五億六千万円から二億四千五百万円を引いた約三億円程度、鉱業権者負担分が残つておるわけであります。これを今後負担金としてとる場合に、二十二条の減免の規定によつてどの程度落すかという問題、それから前回の委員会に申し上げましたように、下半期の出炭が一体どの程度であるかという点を見合せて見なければならぬわけであります。ところが下半期の出炭見込は千九百五十万トン、約二千万トン程度でございます。それによりまして、もし減免の規定によつて大幅に納付金を取立てる額が少くなつて来るということに相なりますと、勢いこの工事計画を下半期においては圧縮しなければいけないということに相なると思うのであります。もちろんこれは二十四年度の計画について数学的に申し上げたわけてあります。先ほど有田委員からのお話もありましたように、この工事内容において家屋とかいう方面が、相当多額な数量を占めておりますことを考えまして、できるだけこういう方面に公共的な解釈をくだし、さらに国庫負担分というものが増額されるに比例して、鉱業権者負担分が減つて来ることは当然なことであります。
  68. 福田一

    福田(一)委員 そこでお伺いしたいのですが、直接鉱害関係のある炭鉱の出炭量と、関係のないところの出炭量の比率は、どれくらいになつておりますか。
  69. 田口良明

    田口政府委員 直接関係のある炭鉱の出炭量は、全出炭量の四五%を占めております。
  70. 福田一

    福田(一)委員 私は、これは有田議員と同様な希望を申し上げることになるのでありますが、特にこの際緊急を必要とするものについては、国家から何らかの貸出をするなり、あるいは個人に貸付をする、あるいは公共団体に貸付をするとかいうような方法によつてでも、一応こういう人たちの窮状を救う。こういうような処置が講ぜられてしかるべきものだと思う。風水害によるような場合におきましては、そういうことをやつておるのに、鉱害のような問題について、やはりこれは一応公共的なものであるという解釈を政府がとられるとしたならば、当然こういう人たちにもこの種の便宜的な措置法律によつては、ただちに救済できないでも、これは何らかの形において、われわれは救済してあげなければならないということでは、みな一致しておるのでありますから、これに対して何らかの便宜の措置を講ぜれる御意思はないかどうか承りたいのであります。
  71. 宮幡靖

    宮幡政府委員 福田委員の御説はきわめてごもつともだと思いますが、現在では御意見のようなことを考えておらないと申し上げる以外に、お答えの言葉がないわけであります。どうぞ御了承いただきます。
  72. 福田一

    福田(一)委員 提案者である政府当局にこういうことを言えば、ただいまのような御答弁があるのは当然なことだと思います。ごむりもないと思いますが、私はおよそ政治というものは、やはり見通しをつけておやりになるのがほんとうじやないか。私は答弁は求めませんが、そういう意味から言いますと、こういうような困つておられる人たちを何らかの方法で救うように、いわゆるわれわれがこれを社会立法として考えた方がいいのじやないかというような点から見ましても、適宜の措置をとられることについて政府当局の猛省を促しまして、一応私の質問を打切ることにいたします。
  73. 田代文久

    ○田代委員 この問題に関してでありますが、先ほどの次官の答弁では、もしこの法案がこの臨時国会で通過しない場合に、どうするかという福田委員の御質問に対しまして、政府としては何らの考えがないという御答弁でありますが、これは被害者その他にとりましては、実に重大なる問題でありまして、何とかこれを臨時国会において通したいという気持で、私たちも審議しておるのでありますが、これがこういう形で荏苒日を送つて、会期が延長になつておるにもかかわらず臨時国会で結論が出ずして、通常国会に持つてつても可決されるかどうかわからぬといううわさが、大分あるのでありますが、これについて当局の御意見を承りたい。
  74. 宮幡靖

    宮幡政府委員 田代委員の御説ごもつともであります。先ほどもただいま委員長席におられる有田さんからも、これがもし通過しなかつたらどう考えるかという御質問がありました。私どもといたしましては、ぜひこの原案を御審議の上、成立させていただくようにお願いしたい。その他のことはその時期になつてみなければただいま申し上げられないということをお答え申しておきました。しかしながら、それでは答弁としては形にはまつておるかもしれませんが、心持は決して自分でも満たされておるものではないのであります。そこでただいま非公式ではありますが、理事会等をお開きになることを委員長代理までお申入れしてありますが、その席におきましてこの問題はひとつ御相談をいたしたい、これがほんとうの気持でありますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  75. 田代文久

    ○田代委員 先ほどの福田君の質問に関連するわけでありますが、実は本年度計画としましては、配炭公団が九月十五日に切られるということの予想がつかずして、御承知のように復旧工事なんかは一年間を四つにわけ、そうして三箇月ごとに小きざみに解決するというようなふうには行かないのであります。川の堤防が切れておるとか、あるいはまた家屋の復旧の問題におきましても、即刻やらなければいけないというようなことで、政府の金が来ないうちに府県なんかがむりをして立てかえて、一年間の四期分を一期分に片づけてしまつておるような例が、ありまして、すでに金は先に使い込んで工事は完成しておるとか、また工事が進行中であるというような点があるのでありますが、これに対してその穴を大体どういうふうにして埋めて行くお考えであるかという点の御回答を願います。
  76. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまのところは御審議を願つております法律が、幸い施行される段階に達しました場合には、第二十二条の免除規定の中に、先般もその項目だけは申し上げておきましたが、さような立てかえ工事のものに対しましては、救済的な——納付金全部はなかなか長期間を要するのでありましようが、そういう方法で緩和したいいということたけは考えております。そのことは項目として先般申し上げた通りであります。
  77. 田代文久

    ○田代委員 この法案によりますと、昨日来これが非常に問題になつておりましたが、実際の鉱害はなおはつきり調査しなければならない。大体この内容としましては、五十億見当に圧縮し五箇年間、一箇年十億という計画のようになつておりますが、これは調査しますと、場合によりましては、これが九十億もあるいは百億、それを越すという場合も出て来ないとも限らないのであります。そういう場合に、この計画によつて進みます場合には、そこにどうしても金が不足して来るわけでありますが、そういう場合における対策はどうであるのか伺いたい。
  78. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ちよつとお伺いいたしますが、それは五箇年間やつた以後の問題ですか、毎年々々の計算においてでございますか。
  79. 田代文久

    ○田代委員 それは毎年々々全鉱害復旧するという立場からです。
  80. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点につきましては二十円を越えて加害炭鉱、非加害炭鉱に御負担を願わなければならない事態ができたとすれば、これは例外でありますが、結局所要の復旧費を見込みました納付金の額をトン当り十八円なり、十六円なりあるいは十五円になりますか、算出いたして参るわけであります。大体において意外な事実さえできなかつたならば、その年度の計画はそれによつて進められるわけであります。ただ例外的に考えられますのは、出炭量が極度に減少したりあるいはその他の原因によりまして、トン当り二十円以上の賦課をしなければ、所要の復旧ができないということになりますれば、これは根本的な誤差になろうと思いますが、それ以外においては、結局復旧費の総額と見合つての計画になりますので、計画にそごのない限りは年度ごとがよろしかろうと考えております。
  81. 田代文久

    ○田代委員 そうすると結局予算によつて鉱害が制約を受けるということになりますか。つまり予算のいかんにかかわらず、実際の特別鉱害と認定されるものは、これは徹底的に復旧するのだという建前か、その点がはつきりしないのですが……
  82. 宮幡靖

    宮幡政府委員 それは見方の相違になるかもしれませんが、ただいまの状況におきましては、大体年十億、五十億でもつて特別鉱害が現状回復ができるものだという前提のもとにやつておりますから、そういう議論になります。しかしあるいは実地調査等の関係によりまして、特別な事情が生れて参りますれば、当然金復旧を目標としておりますので、何らか変更の措置をとらなければならないと考えております。その点はゆとりを持つて考えております。
  83. 田代文久

    ○田代委員 実はそのゆとりが問題なんです。何か出そうな気持もするのです。実際にその不足分が出た場合においては、国家が補償するなら補償するという点が、被害者にもはつきりしないことには安心がならないのでありまりが、その点をなおはつきりご答弁願いたい。
  84. 宮幡靖

    宮幡政府委員 国家が補償することが許される状況なら、いろいろ御議論をちようだいいたしますところの政府原案はここに出ておらないわけであります。でありますから国家が補償するかということの言質を、この際差上げるわけには参りませんが、これは事態に即応して善処すべき問題でありまして、これを抛擲しようとか、放任しようとか、途中でやめてしまおうとかいうような考えは、通産当局として持つておらないわけでございます。どうぞその点御了解いただきたいと思います。この席で通産省としては国家補償であとをやるのだというようなことは、何といたしましても申し上げることのできない状況であることは、たとえこれが国家予算で施行しておりましても申し上げにくいことだろうと思います。いわんやかような納付金を課してのものでありますから、みだりに申し上げることができないことを御了承いただきたいと思います。この点につきましてもまた委員長代理に申込みました理事会の席等で、御懇談することは決していとつておりませんので、その席で御意見等を承つて、申し上げたいと思つております。
  85. 田代文久

    ○田代委員 それから復旧工事の進み、あるいは復旧がどの程度であるかという査定の問題で、中央と地方に今まで——またこの法案によりましても復旧鉱害対策委員会というようなものができる。その中に地方におきましては被害者の代表者も一応入つておる形になつておりますが、中央の機関におきましては被害者の代表者が入つていないのですが、これはどういうわけですか。
  86. 田口良明

    田口政府委員 この特別鉱害の原案につきましては、すでに御承知の通りこれはたいてい地下採掘によつて起きたのであります。従いまして鉱害自体につきましては、特別な採掘方法あるいは特別な採掘区域というところを採掘したために起つたので、ほとんどこの原因につきましては技術的な、ことに坑内技術の問題が、特に考えられるわけでありまして、この鉱害対策審議会のメンバーはいきおい、その方面の学識経験者、特に最高技術の権威者、こういう人たちを主体と考えております。ただ従来の鉱害対策協議会におきましては、加害者、被害者、この方面からの参加も願つておりまするので、当然この対策審議会は中央と地方につくらなければならぬと思つております。従いまして地方におきましては主体はあくまで鉱害の学識経験者を主体としたいと思つておりまするが、やはり関係被害者及び加害者の代表を参加させるのが、適当ではないかと考えております。なお中央におきましては、すでに地方においてかかる構成によつて、この特別鉱害の認定なり、その後の措置についての対策を講ずるわけでございまするから、中央においてはやはり主体がいわゆるその道の学識経験者、特に技術者を主体といたしたいと思います。
  87. 田代文久

    ○田代委員 そこにはやはり私は問題があると思うのでありますが、これは意見は別としまして、結局鉱害復旧するという、その対象なるものが被害者でありまして、過去の実績から見ましても、被害者の発言というものが、ほとんど軽視されておりまして、むしろこれをほんとうから申しますと、遂に中心的にその被害者の発言を重要視し、それに基いてどんなにするかという点が取上げられませんと、ほんとうの目的は達せられないわけであります。また被害者の方々の気持ちもそれでは解決しませんし、事実そういうことになつておるのでありますが、なお中央、地方とも十分そういう被害者の代表を積極的に入れて、そうして構成する。被害の原因がいかにして起つたかということも大事でありますけれども、それよりはそれによつて受けたところの被害者の苦衷というものを、いかに反映させるか、それが絶対に必要となつて来るわけであります。それに対する御見解をなおはつきりしていただきたいと思います。
  88. 田口良明

    田口政府委員 ただいまの田代委員の御意見はごもつともと思います。ただ今の御意見のように、被害者を非常に多数入れるということにいたしますると、被害者としては、何人といえども、なるべく多く、なるべく早く工事復旧を希望することは当然であります。しかし私どものねらいは、はたしてこれが特別鉱害なりやいなやという厳格な認定をいたす場合におきまして、これが認定はあくまでも技術的な面から、公平にこれを認定して行く、厳選して行くということにならなければなるまいという考えを持つておりまするので、ただいまの被害者を非常に多くという点につきましては、よくわかりまするが、この特別鉱害復旧工事は国の費用なり、あるいは鉱業権者の血の出るような金を集めての工事でありまするので、できる限りこの特別鉱害というものを公平にしかも厳正に、これを認定いたしたいという考えから、ただいま申しましたようなこの対策審議会の機構を考えておる次第でございます。
  89. 田代文久

    ○田代委員 公平にまたは厳正にやる必要があればこそ、実際の被害者の実情を聞いていただきませんと、技術者の立場からやるならば、全部がはつきりするのだという御説のようにも見受けられますけれども、実はそうではないのでありまして被害者は実際において、これは特別鉱害として自分被害を受けていると思いながらも、切られてい場合がしばしばあります。そういう場合において、中央の対策審議会において、被害者の代表が一人も入らないということは、非常に間違つておるのではないかというふうに考えますが、これに対してどういうふうにお考えになりますか。
  90. 田口良明

    田口政府委員 御趣旨は十分わかつております。できる限り御趣旨に沿うように、地方におきましても善処いたしたいと考えております。
  91. 田代文久

    ○田代委員 それからこれも先ほど問題になりました被害復旧工事施行者なんですが、これは加害者が原則的に当るということになつておりますが、実情としましては、実は被害者は非常に弱いのでありまして、つまり加害者が鉱害の程度を判断し、あるいはそれに対する復旧計画を立てられ、そうして工事をせられるということになつております場合に、被害者よりはむしろ加害者の利益という立場から、一方的にこの復旧工事が進められつつある実情であります。そういう場合におきまして、私たちは先ほども意見が一部ありましたが、むしろこれは加害者が工事施行者になられるよりは、公平に第三者がその施行者になられる方が、被害者にとりましても、また全体的に見ましても、客観性のある、ほんとうの復旧工事がなされるということを、私たちは実際に被害者の方々からも聞いております。また事実そのように思つております。これに対して修正される御意見はないかどうか。
  92. 田口良明

    田口政府委員 この本法案の中におきまして、この工事復旧につきましては対策審議会において十分審議いたしまして、そうして主務大臣がその施行者をきめることになつております。先ほど原則としてこういうふうな点において、一部誤解があつたように考えられまするが、主として公共団体がこれに当るという方針には間違いないのでありまして、これは本法案の五条に「復旧工事施行者は、他の法令に定のあるときは、それによるものとする。」それから同条第三項に書いてありまするが、それ以外のものについては施行者は被指定者になる。こういう建前になつていますから、おおむね田代委員の御意見に、この法案は沿うておると私は解釈しております。
  93. 田代文久

    ○田代委員 プール資金によりまして、仕事を相当やつて来られましたが、プール資金が全部使い切られたとは考えられませんが、大体いくら残つておりますか。
  94. 田口良明

    田口政府委員 九月十五日までのトン当り十六円十一銭のプール資金は、全部使い果したことになつております。
  95. 田代文久

    ○田代委員 これは私が調べた資料によりますと、まだ残つておることになつておりますが、それは間違いじやありませんか。はつきりなくなつておりますか。
  96. 田口良明

    田口政府委員 公団の方のプール資金については、私どもの方の手前におきましては、全部使い切つたことになつておりますが、ただ手続上現地までこれが届くのは、追加加算額を最近追加した実例がございますから、現場にはまだ届いていないのが、若干残つておるかと思います。ただこちらの公団の方の手は離れたということを申し上げたのであります。
  97. 田代文久

    ○田代委員 大体これで打切りたいと思いますが、その点がまだ非常に問題であると思いますので、はつきりした清算の事実、実際なくなつておるかどうかということの資料を提出していただくことをお願いして、一応打切ります。
  98. 今澄勇

    今澄委員 私は通産大臣に質疑をする予定でありましたが、通産大臣はこの重大な鉱害の問題をよそにして、いまだに姿が見えません。私は当初四点の問題を留保して、この問題に対する質疑を行つたのでありますが、私が留保した四点の質疑については、同僚議員からるる長時間質問があつて、大体わかりました。私はこの際二、三点残しておりますが、まず第一点はとにかくきようのこの委員会の雰囲気では、どうも同僚議員の発言その他を総合して、この特別鉱害法は今国会の会期中には成立する見込みはなさそうです。しかして九州、山口の一部においては非常に基大な被害を受けて、この通過を待ち、あるいは政府の施策を待ち望んでおる被害炭鉱の人々は、非常に気をもんでおる。これらに対して政府は今聞けば、まだそれはどうしたらいいか考えておらないというような答弁でありますが、これでは通産省はこのような石炭問題に対して、どうして通そうかという熱意なきものと断ぜざるを得ないのであります。私は少くともあらゆる法案について、たとえば食確法その他の問題についてとられた民主自由党並びに連立派与党と政府が協力したあの姿と、この特別鉱害法に対する今日の答弁とを比べてみると、これらの鉱害その他についての熱意なきものと断ぜなければならないが、これについて大臣はおられぬから、遺憾ながら宮幡政務次官の御答弁を願いたい。
  99. 宮幡靖

    宮幡政府委員 大臣の代理、相勤まらぬかもしれませんが、今澄委員の御質問に答弁さしていただきます。それは先ほど有田委員からもお尋ねになりましたように、熱意がないどころではありません。ぜびともこの原案を御審議の上、あと二日しかございませんが通過さしていただきたい。これを繰返し申上げておるわけでありまして、熱意がないというおしかりをいただきましたことについては、表現の方法が悪いので、これはおわびをいたしておきます。しかもそれにつけ加えて、この委員会が開会せられて、本問題を審議に移していただきまして以来、くどくも繰返し繰返し申しておる言葉がもう一つあります。それは委員会の御意見は尊重いたしますということであります。どうぞその点におきまして、国の最高権威である方々のお集まりになる委員会が、委員会独自の立場においてさらに政府を御鞭撻いただきたい。そして政府の足らざるところをぜひ補足していただきたいということを逆にこちらからお願いする次第であります。当局といたしましては、あくまでも原案につきましては通過を期すべく努力を続けてやつております。
  100. 今澄勇

    今澄委員 今の政務次官の答弁でありましたが、大体今までの政府のとつた熱意から見て、この法律案につきましては国ではなるほど審議を希望するというようないろいろな話が出ておりますが、政府与党である民自党の方々の本日の意見においても、この法律案の中に含まれた憲法違反的な疑義の問題、あるいはその他数々の不備な問題というようなことから、あと二日の会期では与党である民自党の方々にしてもどうであろうかということを私はきようの空気で、大体察知したのであります。これらの根本原因は配炭公団の廃止のときに、これは速記録をごらんになればわかるけれども、配炭公団をこのようにあわてて廃止したということは—石炭の自売態勢の問題、融資の問題あるいは日本産業再建の問題のみならず、石炭事業については国家公共的な立場において引受けなければならないという問題等多々残つておるが、これらの問題を何ら考えずして、しかもこれを国会に諮らずしてあわてて打切つたということは、すなわち政府石炭事業に対する見通しを誤り、そして配炭公団が取扱つてつたこれらの鉱害の費用を、今日このようなずさんな法律で、しかも会期のあと二日しか余さないところで、審議未了になろうかというのに、政府は何らこれに対して公共事業費による応急策あるいは貸付による応急策等の考えを持ち合せておらないということは、配炭公団の廃止は、ただ単に貯炭をなくするやむを得ざる政府の逃避行であつたということを、今日のこの事態において再確認をする次第であります。宮幡通産次官はこのような鉱害について、少くとも配炭公団を廃止するときには、これらの問題に対する対策を慎重に考えられておつたのかどうかという点について、ひとつの御答弁を願いたいと思います。
  101. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御意見通り考えておりまして、なお及ばざるところがはなはだ多くて、この点につきましては委員会及び全国各業者に対しまして、まことに衷心から遺憾の気持を持つておるものであります。そのようなことにつきましての御批判は、今澄委員の御意見といたしまして、つつしんで承つでおきたいと思います。
  102. 今澄勇

    今澄委員 さらに本法案について、きようは関係事務当局の方が出ておられますから、あしたの理事会に諮る点を二、三お尋ねしておきます。  この前宮幡次官は特別鉱害の認定について、通産大臣の認定にもし不服なる場合には、その不服なるものは何度も申立てをすればよい。こういう答弁で、裁判所にこれを訴えてもそれは無効であるというようなお話で、ございましたが、これは憲法の第十条並びに十四条の国民の権利及び義務を無視するものではないかと私は思う、そこでこれはあるいはこの前、聞き間違えておつたかもわかりませんが、この特別鉱害の認定について不服のあるものは、どのような措置をとつてそれらの不服を裁定をしてもらう道が残つておるか、もう一度お聞きしたいと思います。
  103. 宮幡靖

    宮幡政府委員 今澄委員の御疑問はごもつともでありまして、先般今澄委員からお尋ねのありましたとき、事務当局は裁判所に提起することは困難であろうという見解を申したのでありますが、これはその席において私がかわつて取消しておきましたように、認定でありますから、認定の申出をすることは、何回繰返していただきましても、これはけつこうであります。しかしながらたとえば不認定というような決定がありました場合には、やはり一般法規によりまして裁判所へ御提訴くださることは決してさしつかえないわけであります。この問題につきましては、さらに御意見もありましたので、法務府の方とも連絡をいたしまして、一応さような結論を出しておきましたので、先般申し上げました速記に残つておる私の意見の方が正しいのであります。どうぞさよう御了承願います。あくまで認定でありますから、一ぺん認定されなかつたのだからまずいだろうというので放棄されずに、重ねて申出を願うことを希望しておることは事家でございます。
  104. 今澄勇

    今澄委員 それからもう一点特別鉱害復旧について伺います。それの法人格のことでありますが、財団法人でも社団法人でもないということになると、どういうような法人格であるか。それから先般の政府の答弁では、職員の給与は政府が支出すると言われたと思つておりますが、それも重ねてもう一度お伺いいたしたい。
  105. 宮幡靖

    宮幡政府委員 これは特殊な民法上の法人だと思います。しかしてある意味におきましては、また民法との関連におきましては、御疑問の起るような法文上の不備もあるのではなかろうかという気持も持つておりますが、民法で考えられます一つの法人である。しかも既設の特別法、一般法によつてできますところの法人ではなく、登記によつて初めて生れますところのほんとうの特殊法人であると解釈いたしております。職員の給与は会計上いろいろ御議論のありますように、納付金を加害炭鉱と非加害炭鉱と合しまして御納付を願うという、社会問題を解決する策といたしましても、なかなかむずかしい議論を含んでおるわけであります。従つて集められました資金は、最小のもので最大の効果を収めるという欲の深い話でありますが、さように考えております。そこでその中から事務費等を支弁すべきでないと考えておりまして、一般予算におきましてその措置を講じまして、各地区にこれに要します定員は、大体百名を予想しておりまして、これに対する所要の経費は予算措置を講じてありまして、この納付金の中からさようなものを支出いたさない経理をいたして参りたい、かように考えおります。
  106. 今澄勇

    今澄委員 それでは職員の給与等につきましては、予算的な措置ができておりますね——その点については一応了承いたしました。それからもう一つ、きのう有田委員に答弁されたという話でありますが、大体この法案をめぐつて北海道、常磐については運用の面で大体何とかする。それから中小炭鉱という基準でできておるところのものについては、きのういろいろ委任事項についてお話がありましたが、その点について、この際簡単でよろしゆうございますから、どういうふうにするのかという点を、明確に一ぺん聞いておきたいと思いますが、それ以上明確になりませんか。
  107. 田口良明

    田口政府委員 ただいまの御質問の減免の規定についてお答えいたしたいと思います。  まず第一に、低品位の問題につきまして、これを減免するということにいたしておるわけであります。その低品位とはしからばどの程度をさすかという問題でありまするが、この低品位というのはすでに前国会におきましても問題になりましたように、ただいま考えておりますカロリーの基準を北海道、九州につきましては四千カロリー、常磐につきましては三千七百カロリー、宇部につきましては三千五百カロリー、こういう一応の基準がございまするが、この品位の問題につきまして、この前国会のときと、また最近におきまする品位の状況がかわつてつておりまするので、さらに規格を上げるというようなことも考えられるわけであります。その点はどちらであるかということを、たしかここで申し上げる段階にまだ至つておりません。  第二点の、コストが特に高いという場合、また減免の規定が適用されるわけであります。しからば生産コストにに対して販売値がちようど見合つておる場合かそれ以下の場合に、この減免の規定を適用するか、あるいはここにトン当り二十円という納付金がございますが、生産原価と販売価格との差が、その納付金の二十円と同額か、あるいはそれ以下の場合に適用されるであろうと思いますが、それを越えた場合にのみ納付金を課する。言いまわしが下手でありまするけれども、要するに販売価格と清算価格とがとんとんの場合か、あるいはそういう納付金を生産価格の上に積み上げたものが販売価格と見合つた場合に、初めてこれが減免の理由になるということについては、ただいままだ考慮中であります。  さらに地域内の問題でありまするが、当該炭鉱と非当該炭鉱とがございます。これは先ほど来法制局の長官からもお話がありましたが、もともとこの問題は国家にも責任はないが、国の要請によつてつたんだから、これを全部国で負担すべきであるということに対しては、事務当局としても当初からそういう考えを持つておりまして、今もつてその考えにはかわりはないのでありまするが、もし国でこれを負担することができても、なおかつ工事費の関係上不足を生じたという場合には、国家に全額を課すという建前から見ましても、これは一炭鉱あるいは当該炭鉱に限定さるべきものではない。やはり公共団体なりあるいは石炭業界全部で、その不足分をひとつ見てもらう。その建前から申しまして、これは地方的に納付金に差をつけるべきではないと思う。いわんや当該炭鉱と申しましてもピンからキリまでありまして、その被害状況というものは、非常に異つておるわけであります。多いものもあるし、非常に少いものもある。それでは少いものからはもう少し少くとつたらいいではないか。当該炭鉱のみについても問題があるのです。従つてこれを全炭鉱からとるという建前を事務当局としては持つておるわけでありますが、しかし何と申しましても全然関係がないという議論も大分出まして、先ほど来の憲法論議や何かになつたわけでありますが、やはり石炭業界でこれを負担するという場合に、若干にこに関係の濃度の問題があるだろうと思う。関係が薄いか関係が深いか、その場合に、これは戦争中に今の他の地域にも全体にかかつた問題でありまするが、不幸にして当該炭鉱は、今犠牲になるということで、私どもはあくまでもここに差をつけるということにはまだ納得が行かないのでありまするが、関係の薄いところと深いところに若干の差をつけるというようなことも、一応の考え方ではないかということも考えられるわけであります。その点につきましては、なお業界方面の意見を尊重するということは、先ほど政務次官からも申された通りであります。その点につきましては、まだ多々疑問の存するところであります。  第四点は、すでに復旧工事をやりまして、工事の方がすでに余計に仕事をしたというために、まだ未払いのその工事費の全額を払つてないところもあるかと思うのであります。そういうところは減免の規定によりまして、今後においてそれを調節するということは、先ほど政務次官から申された点に合致すると思うのであります。以上の点が大体減免の規定の中において考えられておる点でありまして、ただいまの御質問に対して、はつきりした結論をここに申し上げられないことを遺憾に思います。
  108. 今澄勇

    今澄委員 私もくどくは申しません。ただ私は今の御説明によつても、この法律案がどうなるかという重大なときに、きのうの話では命令に定める基準に従えという、その基準は一ぺんこれを発表するとか、いろいろな話がありましたが、これらの問題についても、今言つたようにまだはつきり申し上げることができないのが遺憾であるという、この状態こそ私が先ほどから指摘した、非常に政府はこの法律案について不熱心であり、実際鉱害を受けておるところのこれらの炭鉱に対するほんとうの熱意があるかどうかを疑う原因なのであります。私は、今聞くところによると、炭鉱関係もストライキがいよいよ始まり、全国的にストライキがあるいは始まろうかというような決議が、各労働組合においてなされたらしい。中小炭鉱はこれまた復興金融金庫の融資だとか何とかいうことで、いろいろお題目をとなえて引張つてつたが、望みの綱も切れて、大体整理されつつあり、人員が首切られつつあることは御承知の通りであります。少くとも私は配炭公団を廃止してから今日までの現象は、今日それを総合的に見るときに、鉱害の問題についてかくのごときありさまである。首切りについてもそういう状態で、非常に炭鉱経理が悪い。労働者がこぞつて立ち上るというような状態に追い込んだ全責任はあげて今の政府炭鉱行政の失敗であると断定せざるを得ないのであつて、これらについては御列席の政府委員の方といえども、一言もあるまいと私は思うのであります。いろいろ考えた結果は本法律案については非常にこれは不備である。いくら私が問答を繰返しても、正確なそれらのものに対する御答弁はいただけないものと思つて私の質問を打切る次第であります。
  109. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問は簡単であります。法案内容その他については、田代委員がいろいろお尋ねしましたから申しませんが、第一番に聞きたいことはどうもこの委員会はこの法案を流してしまうために開いた委員会だ。これがもしも資本家にくれてやる法律であつたら、こんな委員会にならなかつたに違いない。ところが被害者が地方の住民、人民である。これにやるということになると憲法論が出る。今まで多くの場合に、憲法論が出たことがない。大体先日通つた為替管理委員会、あの問題なんか、あれだけの委任立法が憲法上許されるかどうかということは大問題だ。ところがこれは憲法問題が出ない。ところが一たび人民に金をくれてやる問題になるというと飛び出して来る。まさに私はこれは違憲の疑いがはつきりあると思う。しかし問題はそこにあるのじやない。政治というものはどうして勤労人民大衆の利益をはかるかということになくちやならぬ。ところがいろんなものが出て来る。これは民主自由党政府のやおちようだと思う。その結果これはどうです。会期はもう一日よりない。間に日にちがありませんから、継続審議ができない。これはもうこれで流れてしまう。流れてしまつてあとどうしますかという田代委員質問に対して、政府当局はどうするかわからぬと言うている。これは何ということですか。来国会にはぜひ通さなくてはならない。もしもこの委員会で流してしまつたら、どうしてもやらなければならぬのだから、必ず次の国会に出しますと政府はなぜ言えない。先になればどうかわからぬ。なぜこんなことを言うのです。これは不都合きわまると思う。そこで私は、さきに宮幡政務次官は田代委員質問に対して答弁をされましたが、はつきりしてもらいたい。もしこの委員会で審議未了に終つて、これが継続審議ができなくなれば、政府は来国会に是が非でもこれを通すつもりであるのか、これをはつきりしてもらいたい。明確にひとつここで答弁して、記録に残してもらいたい。
  110. 宮幡靖

    宮幡政府委員 川上委員の御説は、しごくごもつともでありまして、御所論に対しては同感の点がはなはだ多いのであります。それで先ほど田代さんの御質問は、福田委員からの御質問と申しましたが、これは有田二郎氏の質問のときでありまして、そのときには原案を必ずひとつ通してもらいたいということをはつきり申した。しからばもし通らなかつた場合にはどうするかということは、ただいまでは申し上げない。その場におきまして、その事態となりましたときに、もうあと二日しかないことでありますが、ひとつ対処して行きたい、こういう意味のことを申し上げました。今川上委員の激励的な御意見、これに対して明日理事会でとくとこの問題について御相談をいたしたいことを、神田委員長代理まで申出ておきましたので、午後一時から理事会を開くというおさしずをいただいておりますが、せつかくのお尋ねでありますから、方針を明らかにしておきたいと思います。それはもちろん会期の関係その他各委員の御意見が、この報告に現われました空気のように、必ずしも一致しておらない。もちろん反対と賛成が法案についてあることは当然のことでありますけれども、通常の反対、賛成とは少し趣の違つた空気が出ている。これも事実であります。そこでぜひ現在の政府のことに通商産業省といたしましては、どうしてもこれを通したい。しかもいろいろ御指摘をいただくように、必ずしも万全の法律ではないということも呶々繰返して御説明してありますが、しかし事ここに至りました経過につきましては、冒頭においてあるいは石炭消費税の問題、国家が出資いたしまする復興金融金庫の問題、こういう問題をたどつて来て、ここに来たということは申し上げてあることでありまして、そういう経過でせんじ詰まつてここまで持つて来た。これをどうしてもひとつ可決成立させていただきたいということを念願しておりますことは、これは絶体的な問題でありまして、そうしてもしこの国会において不幸にいたしまして通過することができなかつたという事態になるならば、政府当局としましては、次の国会の冒頭において、重ねて提案するという心持は、完全に持つております。そうしてぜひとも悪いところをお直しになる——ことにこれを提案いたしました当時の状況さながらの気持で申し上げますならば、実は現地も調和しなければならぬ。公聴会も開かなければならぬ。辛うじてその筋の承認を得た法案でありまして、さようなことにもし日時を費してしまつたならば、第一回延長の三十日にはとうてい通過せぬ。このことについてまず当局は苦慮いたしました。一ぺん通しておいていただいて、現地調査その他公聴会等もお開きくださるのは、もう委員会の御自由でありますので、おやりを願つて、そして足らざる部分をさらに次の国会で補足するというような措置はお願いできないものであろうか。これがほんとうの気持であります。従いまして、川上委員のお尋ねはまつたく適切であります。政府といたしましては、もしこの法案が審議未了に至りました場合には、客観的情勢の許す範囲におきまして、今日の法案なり、もつと研究した法案なりを、重ねて提出いたしまして、この社会問題解決のために、ぜひ努力させていただきたいことを、ここにはつきり川上委員にお答えいたしておきます。
  111. 川上貫一

    ○川上委員 その点は明かになりましたのでよくわかりましたが、第二点には、本法案については宮幡政務次官より、委員会にとにかくまかせるということが、たびたび言われており、政府の方でもそういう態度になつておられるのですが、かつて今まで法案を出されて、われわれはいろいろな法案にたびたび反対しておる。この法案に反対があるからと言われますが、どの法案にも必ず反対があつた。但しそれは野党の反対であつたにすぎない。ところが与党に反対がありそうな時分には、いつも政府はおかしくなつてしまう。しかし野党の反対がなんぼあろうとも、むちやくちやに多数を頼んでやつてしまう。これが実際の実情だ。どういうわけでこの法案だけ委員会にまかせるまかせると言われるのですか。ほかの法案はことごとく委員会にまかせるところの話ではない。強引に政府はこれを押切ろうとしておる。食確法などどうですか。あの形になつても押し切る。きようやつちまえというようなことを言つておる。それにもかかわらず、この法案委員会にまかせますという。まるでどうも責任委員会に持つて来ておる。この理由をちよつと明らかにしてもらいたい。
  112. 宮幡靖

    宮幡政府委員 これはなかなかむずかしい答弁でありまして、しかも川上委員の腹の中がよくわかつている、と言つては悪いですが、そういうさくい言葉で言つた方が意味が適切でありますから申し上げますが、なぜそういうことを言わなければならないかという私の気持を腹を割つて話しますれば、ほかの法案というものは、おおむねの形におきましては、各政党のお持ちになつています主義主張なり、その政策なりを織り込んだもの、これに対する反対賛成の討議だろうと思います。ところがこの法律は皆さんの党からもしばしば聞くように、これは超党派的な法案であるというので、この超党派的な法案に対しまして異論がありますものは、これは委員会で御調整を願うのがしかるべきではなかろうかという意味を、そういう言葉で申し上げたのであります。どうぞさように御了承をいただきたいのであります。
  113. 川上貫一

    ○川上委員 この問題で、今の言葉について下手に責めるのはおとなげないと思いますが、超党派的は実際は当らない。為替管理委員会の規則なんかは、速記録を見てもわかりますが、私はたびたびこれは超党派的な問題であつて、われわれは反対するということを言うておる。われわれか超党派的だと言うのは一つも考慮しない。ところが民主自由党が超党派的だと言うと、すぐ政府はそれに乗つて委員会におまかせしますなどと言う。実に不愉快な委員会だ。やおちようもほどがある。だからこの問題は実際憲法論などになる。これは質問ではないが、私はここではつきりと言うておきたいと思う。もしもこの法律が三井、三菱に金をくれてやるという法律であつたら、きよう通つてしまつておる。人民大衆を保護するという法律だからこんなことになる。今まで何ぼの金を出した。政府石炭に対しては前国会に百七億の金を一ぺんにころつと出しておる。われわれは反対したけれども、今度の薪炭の赤字、あの大やみをやつている。大不正をやつている。十億円もわけのわからぬことにやつている。こういう薪炭の赤字五十何億をぺろつと出している。民自党はことごとく賛成している。これを金額国庫で出せば五十億だ。被害が九十何億あつても、なぜ政府は全額国庫から補償しないか。なぜ出さないか。出さないから違憲問題が起つて来る。ところがきのうからの答弁によると国家も責任がない。地方団体も責任がない。ところが配炭公団の時分に出したことはありやしない。あれは商工大臣はぬけぬけしいことを言うておるが、商工大臣はいつもぬけぬけしいことを言う名人である。なかなか答弁はうまい。またいつもほめている。実にぬけぬけとうまい。そこへ行けば宮幡政府次官は正直で少し失敗しておる。あれはなかなか大したものだ。そこでどう言つたか。これは申合せでありますからと、こう言つておる。ところが申合せであるか知らぬが、あのけつをどこでぬぐつておるか、価格調整費でぬぐつている。国が価格調整費でしりをぬぐつておる。これは何ぼでもぬぐえる。政府が出している。消費者負担に転嫁してはおりません。これは実際上人民の税金でやつておる。今まで政府こう来ている。ここで公団打切りになつた場合に、なぜ政府はこのあとを政府責任においてやらないか。これを社会問題とかなんとかいつて、何ら政府責任がないと妙なところに持つて行くから違憲問題が起つて来る。これは当然政府が全責任を負つて解決すべき問題だと思う。これに違憲問題とかなんとかいう妙な問題を持ち出して来て、いかにして人民に金をくれてやるかというようなことを考えることをやめてもらいたい。そこで問題をさかさにしなければだめだ。これは質問ではありませんが、次の国会に提案なさる時分には、次の国会では必ず審議しやしません。民主自由党は、絶対多数をもつてその気でやつておるんだから、実際これは通りやしない。共産党がいくらがんばつて通りやしない。そこで今度の国会には全額国庫負担で出してもらいたい。そうでなければ、またぞろ違憲問題だのなんだの、必ずこんなことになつてしまう。どうにもならぬというので一番難儀するのはあの被害地の人たちだ。それは実際に被害地の人々は、この委員会に対してその成果がどうなるか、それは資本家が金をとる。自分じやない。深刻な生きるか死ぬるかでやつておると思う。これは非常に重大な問題だと思う。政府の方々は、これは来国会にはどうかわかりませんというような問題でない。ほんとうに腹を締めて、この被害に対して重大なる決意で、政府は全額国庫負担の形で出してもらいたいということをはつきり申しておいて、私の質問を打切りたい。     —————————————
  114. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 次に請願及び陳情書の審査に移ります。  この際請願及び陳情書の審査の方法についてお諮りいたします。今会期に本委員会に付託されました請願は総数四十一件、送付を受けました陳情書は総数十九件でありまして、日程に掲げた通りであります。会期もあとわずかに二日間に切迫いたしておりまする上に、特別鉱害復旧臨時措置法案、輸出信用保険法等、重要法律案について慎重審議を続けておりまする今日、これら多数の請願陳情について一々審査を行うことは、時間的に不可能に近いことと存ぜられるのであります。しかしまたこれらはすべて国民の偽らざる声でありまして、大いに尊重すべきことは申すまでもありません。この点、その取扱い方について一昨日来、理事諸君とも種々協議をいたしました結果、これらの請願陳情書の趣旨につきましては、委員各位におかれては、すでに配付されておりまする文書表によつて十分了承せられておることと拝察いたしまするし、これらに対する本委員会の可否決定の態度につきましても、これまでの法律案の審査並びに国政調査の経緯によつて、おおむね決定し得るところと存ぜられまするから、この際紹介議員説明並びに政府側の意見を聽取すること、及び委員の質疑をすべて省略いたしまして、日程全部を一括議題として、ただちにその可否を決することといたしたいと思いますが、この取扱い方に御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 御異議なしと認めます。それではまず請願日程全部を一括議題としてその可否を決します。
  116. 有田喜一

    有田(喜)委員 請願日程中第二、第三、第九、第一〇、第一二、第一六、第一七、第二一、第二二、第二七、第二九、第三〇、第三一、第三五、第三六及び第四〇の各請願は種々問題がありまするから、後日に延期し、その他の各請願については、その趣旨はおおむね至当と認められまするから、議院の会議に付して採択の上、内閣に送付すべきものと議決せられんことを望みます。
  117. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 ただいまの有田喜一君の御意見に御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 御異議なしと認めます。よつて本日の請願日程中第二、第三、第九、第一〇、第一二、第一六、第一七、第二一、第二二、第二七、第二九、第三〇、第三一、第三五、第三六及び第四〇の各請願は後日に延期し、その他の各請願はこれを議院の会議に付して採択の上、内閣に送付すべきものと決しました。
  119. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 引続き陳情書日程全部を、一括議題といたします。
  120. 有田喜一

    有田(喜)委員 陳情書全部は、先例によりまして委員会の審査または調査の参考にするという意味において、本委員会において了承することと決せられんことを望みます。
  121. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 ただいまの有田喜一君の御意見に御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 御異議なしと認めます。よつて陳情書日程全部は、本委員会において了承することと決しました。  本日の議事はこの程度にとどめまして、明日は午後一時より理事会、午後一時三十分より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十八分散会