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鈴木(俊)
政府委員 第一の選挙管理
委員会は事務だけをやる。
それが詐偽、強迫に関する
ような意思表示についての決定をするということについては、根本的な性格の変更ではないかという
ような点でございますが、
立花委員が仰せになります事務というのは、執行事務と申しますか、あるいは行政事務と申しますか、そういう
意味だろうと解釈いたすのでございますが、選挙管理
委員会の仕事を分析して
考えてみますと、そういう各種の選挙の執行につきましての純粋の
意味の、行政的な、執行的な事務と、それから
先ほど来いろいろお話が出ました準司法的な決定をするところの事務、投票の効力の決定おるいはその他の各種の
異議の決定、訴願の裁決という二
通りの権能が現在あると思うのであります。それで詐偽、強迫に関する意思表示というものは、これは民法上も無効あるいは取消しという
ような原因になる意想表示とな
つておりますから、公法上の
署名という
ような意思表示につきましても同様な原則を持
つて来て、神聖なる選挙人の意思を強迫する
ようなものであるかどうか判定する必要があるのでありまして、その認定は、どの機関にさせることが立法政策として適当だろうかということにな
つて来るだろうと思うのでありますが、これは
先ほども
岡咲政府委員からお話がございました
ように、裁判所が初めからそういう仕事をおやりになるということも、もちろん
考えられますけれ
ども、この
ような相当分量のありまする仕事を裁判所がおやりになるということも、なかなかたいへんであろうと思いますし、また事柄がまず一応投票の執行の前提になる行為でございますから、行政機関において一応の決定をして、それが違法であるという
ような場合におきましては、裁判所の再審を待つ、こういう形にするのが適当であろうと
考えまして、選挙
委員会がそういう詐偽とか、強迫の意思表示かどうかということを決定する。こういうふうにしたわけであります。この点は單なる單独の独任制の機関がそういうふうな決定をするということは、古いわが国の戰前の制度におきましてはたくさんございましたけれ
ども、それは必ずしも適正を期するという点から行きますと、適当でないと思うのであります。選挙
委員会は、御承知の
ようにそれぞれの
地方議会が選挙をいたしまして、選ばれる機関であります。そういう
会議制の機関が準司法的な行為をするということは、ほかの法令にもしばしばあることでございまして、一向特別な珍らしい制度を設けたということにはならぬ。むしろ今の全体の行政制度から申しますと、調子の合
つた制度であるというふうに
考えておる次第であります。
それから第二点のお話の簡素化されたというが、一向簡素化されないではないかというお尋ねでございますが、簡素化という
言葉は昨日申し上げたかとも存じますが、あるいは表現が不適当であ
つたかもしれませんが、なお補足をして御説明申し上げたいと思います。御指摘の
ように期間が短縮せられたということが、一番大きな今度の
改正の重点であろうと思うのであります。お配りいたしました資料の一番しまいの紙の中に、期日、期間がどのくらい短縮せられたかということの
数字を掲げてありますが、現在は何ら期間の制限がございませんために、昨日も申し上げました
ように、長い例では百十日もかか
つておる。六十日、八十日四十余日という
ようなことでありまして、大体五、六十日かかるというのが、最も通常のケースの
ようでございます。その点を法律上
はつきりと四十一日というふうに進行の限度をきめました点が、やはり何と申しましても一番大きな簡素化の線に沿
つた改革であろうと思います。その他縦覧という
手続は従来なか
つた手続でありまして、これを新しく認めたという点はございます。さらに
署名の適正を期するために、
署名につきましても
異議の決定、あるいは訴訟を認めております。この点も従来なか
つた点でございまして、縦覧、
異議の決定、訴訟という
ようなことは、むしろ簡素化ではないと言えると思います。しかし
署名の公正を期するという見地から申しまして、どうしてもこの
ような制度によ
つて公正にとり行うことが必要であろうと
考えたのでございます。しかしそういう争いのために投票が遅れる
ようなことがありません
ように、一般の行政事件訴訟特例法の原則に従いまして、
異議の決定が済みましたならば、ただちにこれは執行に入るわけであります。こういう
建前にな
つておりまするので、そういう争いの制度を認めましたために、進行が遅れることはない
ようにな
つておるわけであります。
それから第三点のお尋ねの著名の詐偽、強迫によりまする場合に、これを無効にするという
ようなことは選挙
委員会がやらないで、むしろ裁判所にやらしたらどうかという御趣旨のお尋ねの
ようでございまするが、第一点について申し上げました
ような趣旨で、やはり選挙管理
委員会が、選挙に
関係ある仕事としてやりますのが一番よろしい。と申しますのは技術的に申し上げますと、選挙人名簿は選挙管理
委員会が管理しておるわけであります。もしも裁判所がそういう
ようなことを
最初からやるということにいたしますと、選挙人名簿をまたわざわざ裁判所に送付しなければならないという
ような複雑なめんどうなことになりまして、いよいよ
署名の早期適正なる執行をやるという点から申しますと、非常に適正にはなるかもしれませんが、遅延して来るのではないかと思います。この点はやはり選挙人名簿を所管し、選挙人に関する各種の事務を管理しております選挙
委員会が、同じ種類の仕事として処理するのが能率的にも一番いいというふうに
考えておる次第であります。