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1949-11-17 第6回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十七日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 中島 守利君    理事 大泉 寛三君 理事 川西  清君    理事 川本 末治君 理事 野村專太郎君    理事 久保田鶴松君 理事 藤田 義光君    理事 立花 敏男君 理事 田中  豊君       生田 和平君    河原伊三郎君       清水 逸平君    龍野喜一郎君       大矢 省三君    門司  亮君       床次 徳二君    鈴木 幹雄君  出席政府委員         地方自治政務次         官         (地方自治庁連         絡行政部長)  小野  哲君         総理府事務官  鈴木 俊一君  委員外出席者         総理府事務官  長野 志郎君         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 十一月十六日  地方配付税法特列に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三六号)  地方行政調査委員会議設置法案内閣提出第三  七号) 十一月十五日  消防団員災害補償制度制定請願石原圓吉  君紹介)(第三六八号)  市町村独立税税目拡充に関する請願石原圓  吉君紹介)(第三六九号)  地方起債大幅許可償還期限延長並びに利率  引下げの請願石原圓吉紹介)(第三七〇  号)  地方自治法の一部改正に関する請願石原圓吉  君紹介)(第三七一号)  地方配付税配付率復活請願石原圓吉君紹  介)(第三七二号)  同(吉川久衛紹介)(第三九九号)  町村吏員恩給組合に対する国庫補助請願(吉  川久衛紹介)(第四〇二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第二七号)  地方配付税法特例に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三六号)  地方行政調査委員会議設置法案内閣提出第三  七号)     —————————————
  2. 中島守利

    中島委員長 これより会議を開きます。  昨日理事会を開会いたしましたその経過の概要を御報告申し上げます。  昨日理事会におきましては、現在提出されている法案並びにこれより提出さるべき予想を持つておる法案に対しまして、審議の方法あるいはその他について協議をいたしました。ついで先般委員長に一任されました行政整理に関する委員派遣の件をお諮りしまして、大体今月下旬ごろにおいて関西方面に二名、関東方面に二名、計四名の委員を派遣したいというようなことに決定いたしました。以上御報告申し上げます。  本日の日程は、地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号、地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三六号、及び地方行政調査委員会議設置法案内閣提出第三七号の三件であります。  日程の順序を変更いたしまして、まず去る十五日本委員会に付託されました地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案及び地方行政調査委員会議設置法案を、順次政府よりその提案理由説明を聽取いたしたいと考えますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中島守利

    中島委員長 それでは日程を変更しまして、さようとりはからうことにいたします。まず地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案について、政府提案理由説明を求めます。
  4. 小野哲

    小野政府委員 ただいま議題となりました地方配付税法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  今年度地方財政は国、地方を通ずる総合予算均衡徹底するために、極端に圧縮を余儀なくされたことについては、ここに申し述べる必要のないところでありますが、なかんずく地方配付税がその法定率三三・一四%を地方配付税法特例に関する法律によつて一六・二九%に切り下げられたことは、今年度地方財政運営をして困難きわまりないものとしたのであります。地方団体としてはやむを得ず経費支出に極度の切詰めを行つたにもかかわらず、各種災害が相次いで起り、これに伴う財政支出をも余儀なくされるに及んでとうてい地方財政均衡を保持することができなくなりましたので、政府としては今回補正予算において九十億円の地方配付税増額をすることとし、別途御審議を願つている次第であります。しかして右に伴い、ここに地方配付税法特例に関する法律の一部を改正する法律案提出することといたしたのであります。改正案内容は、昭和二十四年度限り配付税の額が所得税及び法人税徴收額の一六・二九%とあつたのを、当該徴收額のうち六百六十七億八千七百五十一万八千円に改めたことであります。六百六十七億八千七百五十一万八千円と申しますのは、一六・二九%で算定した本年度地方配付税額が五百七十六億八千七百五十一万八千円、これに補正予算計上分の九十億を加えた額であります。  なおこれを定率によらずして定額といたしましたのは、明年度以降は御存じのごとく地方配付税を廃止して、新たに地方財政平衡交付金制度を創設することとなりましたので、全面的にこれに切りかえる必要があり、定率制をとる結果、地方配付税の額に増減を来すことは、適当ではないと考えたことに基くものであります。  最後に一言すべきは、この程度地方配付税増額をもつてしても、窮迫の極にある地方財政にとつては、とうていその十分なる需要をまかなうに足りないのでありますが、不足分は歳出の節約によつて相殺するごとく指導する方針でございます。  以上簡單でありますが、本改正法律案提案理由並びにその内容について御説明申し上げた次第であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに議決せられんことを希望いたします。
  5. 中島守利

  6. 小野哲

    小野政府委員 地方行政調査委員会議設置法案提案理由及びその内容概略説明いたします。  地方自治を拡充強化することは、新憲法基本方針一つでありまして、新憲法の施行以来、この線に沿つて地方自治法地方財政法地方税法等制定改正が行われ、着着その成果を見つつあることは、各位の御承知通りであります。しかしながら今日までの地方自治制度の改革によりほぼその成果をあげ得ましたのは、主として地方公共団体の機構及び運営に関する部面における民主化徹底についてでありまして、地方公共団体の処理すべき自治事務、及びその裏づけとなるべき財源の賦與等部面につきましては、遺憾ながらいまだ十分な成績を收めておらず、新憲法の理想といたしまする地方分権の確立は、まだまだ不徹底のそしりを免れない状態にあるのであります。  先般来朝したシヤウプ使節団は、この地方自治欠陷を指摘して、わが国民主化を推進するためには、強力な地方公共団体をつくる必要があること、そのために地方公共団体財政力を強化する方策と並んで、国と地方公共団体事務配分を再検討し、まず市町村に、次に都道府県優先権を置き、国は地方公共団体では有効に処理することができない事務のみを引受けるように、事務の再配分を行うべきことを勧告しているのであります。そしてこの事務の再配分の目的のために、五人の委員からなる特別の委員会を即刻設置すべきことを勧告しているのであります。政府はこの勧告趣旨を尊重いたしまして、思い切つて地方分権を断行し、地方自治を充実強化して国政民主化を推進する見地から、地方自治基底とする市町村都道府県及び国相互間の事務配分調整等に関する計画につき調査立案し、その結果を内閣及び内閣を経由して、国会勧告する任務及び権限を有する地方行政調査委員会議を設置するこことし、これに関する法律案今期国会提案いたすこととしたのであります。  次にこの法律案内容概略説明いたします。  地方行政調査委員会議は、国家行政組織法第八條第一項の規定に基いて、総理府機関として臨時に設置するものとしたのでありますが、その任務重要性にかんがみて、総理府に置かれる各種審議会のごとき従属的性格を帯びる総理府附属機関とすることなく、日本学術会議と並び、相当独自的性格を持つ機関とすることとしたのであります。  会議は、地方分権の本旨にのつとり、地方自治を拡充強化して、国政民主化を推進するため、地方自治基底とする市町村都道府県及び国相互間の事務配分調整等に関する計画につき調査立案し、その結果を内閣及び内閣を経由して、国会勧告することをもつてその任務とするものであります。その計画内容となるべき事項をさらに具体的に申し上げれば、市町村都道府県及び国相互間の事務配分調整及び地方公共団体機関に対する委任事務調整、並びにこれらに照応する国庫補助金等に関する制度改正、その他事務配分調整に伴い起るべき必要な事項であります。従いましてこの事務配分調整に関する計画立案伴つて、たとえば府県市町村等の規模の適正化ということについても、研究を進めることになるであろうと予想せられるのであります。なお会議勧告に基いて、もし内閣において直接それを具体化する法律案を作成し、国会提出するという場合におきましては、できる限りその勧告を尊重するように明記したのであります。  次に会議組織でありますが、会議内閣総理大臣が任命する委員五人で組織することとなつておりますが、五人の委員のうち、三人はシヤウプ報告書に従い、全国の知事、市長及び町村長の各連合組織代表者が、それぞれ推薦する者でなければならないものといたしております。なお会議内閣に対する勧告のみならず、国会に対する勧告権をも有しており、かつその立案にかかる計画は、わが国将来の国政及び地方自治方向に、重大な影響を及ぼすものでありますので、委員の任命については両議院の同意を経ることとして、愼重を期することとしたのであります。会議所掌事務の遂行のためには、関係行政機関及び地方公共団体と密接に連絡するとともに、適時資料を收集する必要がありますので、調査立案のため必要があるときは、参考人の出頭及び意見を求め、または関係行政機関もしくは地方公共団体等に対して、記録の提出を求める権限を認めるとともに、関係行政機関または地方公共団体の長に対し、職員のうちから、会議関係行政機関または地方公共団体との連絡にあたる者の指名を求めることができることとしたのであります。  最後に、会議に、專門的事項調査させるため、專門調査員二十人以内を置くとともに、会議事務を処理させるため、事務局を置くこととしたのであります。專門調査員は、会議の特異な性格にかんがみ、重大な職責を有しておりますので、広く適材を得るため非常勤とすることができることといたしております。  なお、会議所掌事務は、すこぶる広範囲にわたつており、かつ短期間にその任務を終えなければなりませんので、事務局には相当数職員を配置する必要があると存じますが、政府といたしましては、行政整理を断行した直後のことでもあり、新規に定員を増加することは極力避けなければなりませんので、とりあえず総理府定員のうち、新給與実施本部の廃止によつて減少する定員六人を、会議事務局に配置することとしたいと存じます。  以上地方行政調査委員会議設置法案提案理由及びその内容概略説明いたしました。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願いする次第でございます。
  7. 中島守利

    中島委員長 両案に対する質疑は次回に讓ることにいたします。     —————————————
  8. 中島守利

    中島委員長 これより地方自治法の一部を改正する法律案に対し、質疑を継続いたしたいと存じます。  まず通告順によりまして質疑を許します。鈴木幹雄君。
  9. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 私は昭和二十三年度法律第百七十九号にありますところの、いわゆる戰時中合併いたしました市町村分離の問題につきまして、政府調査に基く結果をお聞きいたしたいと思うのであります。前の本委員会におきまして、戰時中合併いたしました市町村分離に関しまして、今日まで問題になつ案件を数字的に承り、そのうちにおきまして府県会議決によりまして、分離の問題がその当該市町村投票の結果と合致するものと、相反するものとの数字の一応の結果を拜聽いたしたのであります。それによりますると、分離を希望いたすにもかかわらず府県会議決要件となつておりますがゆえに、多く希望に反するところの結果が出ておる。ないしはその案件審議未了のままに今日に至つておる実情が相当あるのであります。そのときに何がゆえに分離を希望しておるにもかかわらず、府県会がこれと反対議決をいたしたか。もしくは今日まで審議決定を見ないかということにつきまして、政府の方において一応事調査をお願いいたしたように記憶をいたしておるのであります。私は大体個人の意見といたしまして、戰時中町村合併が行われた事実は、全国的に顯著なるものがあります、そのうちには今日の異なりました社会情勢経済政治情勢のもとにおきましては、戰時中合併したものを分離するというやむを得ざる理由、もしくはそれの方に、より合理的な理由があろうと認めるものであります。従つてこの分離に関しまして、府県会議決要件といたしまするがゆえに、希望いたしており、もしくは合理的の理由がありましても、その分離ができないというような結果が、非常に多いといたしますならば、私はこの特例につきまして改正を用意いたさなければならないかと思うのであります。かような意味におきまして自治方面におきまして、調査の結果がわかつておりますならば、この機会に拜聽いたしたい、かような趣旨から質問申し上げたのであります。
  10. 小野哲

    小野政府委員 ただいまの鈴木委員からの御質問に対しましてお答えをいたします。市町村分離問題に関しましては、先般本委員会において御質問がございまして、私からも見解を御説明申し上げたのでございまするが、なおただいま鈴木委員から市町村分離問題に腐して地方実情に関する調査、特に地方議会議決に関する点についての、調査説明の御要求がございましたので、この点につきましては鈴木部長から御説明を申し上げたいと存じます。
  11. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 附則二條分離に関しまして、関係区域投票が成立をいたしまして、府県議会においてその議決を経るという際に、どういうような審議状況になつておるか、否決の理由あるいは可決理由はどういうことであるかというようなお尋ねのように存じますが、これはそれぞれの市町村につきまして、いずれも理由は若干異なつておるようであります。手もとにある府県から報告をいたして参りました資料によりまして、代表的なもの二、三件につきまして申し上げたいと存じますが、大体その審議中心は、はたしてその戰時中の編入あるいは合併が、いわゆる官憲の強力なる要請、あるいは当時の関係した軍等の強力なる要請というものに基いて行われたものであるか。それとも真に自発的、自主的なる合併であつたかという点を、やはり審議の一番大きな重点にいたしておるようであります。この点につきしまして、分離の請求をいたしております側の方は、そこに当時の官憲あるいは軍部の強力な干渉があつたというふうに主張いたしておりますし、また否決いたしました議会側といたしましては、そういうような事実は認められない、関係地方団体議会あるいは部落常会等においても、全員一致でこれは承認せられたものである、強力の要素はそこに認められないというようなことで言つておりますし、また可決をいたしましたものは、そういう事実があつたということを、まず第一に判定をいたしておるわけであります。この点が一番大きな議会審議の項目になつているようであります。それから次は、分離の結果がどのような影響を今後に及ぼすかという点を、やはり審議中心にいたしておるようであります。分離の結果非常に小さな町村がまた新しくできるということになつて地方自治制度改正も、非常に多くの事務的な、また財政的な負担を担当しておる町村としては、ことに自治体警察を持ち、あるいは新制中学を持たなければならぬというような、そういう状況においては、あまり小さくなることは好ましくない。また経済九原則からいつて、全体の行政費というものは、できるだけ節減をして行かなければならぬのに、分村をするということは、そういう方面にも反することになるというような理由を、主として否決いたします場合の理由として掲げているようであります。そういうようなことを県会意見書として、政府側の方へ要望して来ているような向きもございます。これに反しまして、可決をいたしましたものにつきましては、やはり分離後におきましても、その関係町村は十分独立して行ける、自立して行けるという事実を認定いたしておるようであります。大体大ざつぱにわけますと、はたして過去にそういう弊害があつたかどうかということと、今後自立できるかどうかということ、この二点を中心にして審議をいたしておるような次第であります。
  12. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 大体ただいまの鈴木政府委員説明によりまして、事情は一応原則的にはわかるのであります。できますれば今日起つておりますものは三十数事件あるように聞いておりますが、その梗概を資料として配付していただくように、委員長からひとつごあつせん願いたいと思います。
  13. 中島守利

    中島委員長 鈴木委員の御要求資料は、專門員の方と連絡いたしまして提出することにいたすそうであります。
  14. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 お願いいたします。
  15. 中島守利

  16. 川西清

    川西委員 私のお尋ねしたいことの第一は、やはりただいま鈴木君がお尋ねになりました附則二條に関することでありますが、ただいま自治庁当局より議会議決理由実情その他について御答弁があつたのでありますけれども、それとちよつと角度をかえまして、自治法その他わが国各種法律におきまして、住民投票ということはその物事をきめる最終的なものでありまして、憲法住民投票に付するとか、その他いろいろございますけれども、住民投票は最終的な決定をなすものでありまして、その他にその後においてまたこれを左右するという何らかの段階があるという事例は、ほかにないと思うので、ありますけれども、それに対する法理的な御見解をまず第一点としてお伺いいたしたい次第でございます。  それとは大体反対方向からの質問にまたなるのでありますけれども、戰時中合併した町村分離に対しまして、これが道府県会議決を要することに現在なつていることは、今申した通りでありますが、これに対して現在二つの議論があることは御承知通りでありまして、一部におきましては、戰時中合併ではありますけれども、この合併によりましてでき上りました既存の形態、すでに統合されて現在一つ区域になつてつている行政を、さらに変更することは、当該市町村行財政上執行不能に陷りまして、回復すべからざる事態を生ずるおそれがあること等を考慮いたしまして、当該地方公共団体議会をして、これを適正に決定せしめんとする現行法趣旨が、妥当であるという考え方も少くないのであります。これを分離いたしました際に、行財政上の混乱から執行不能に陷るような混乱が起るのでありますが、それについて当局の予想される、またお考えになるところの御見解、様子をお聞きしたいのであります。さらに分離した市町村の復元について、議会議決要件とする規定の削除についての反対理由といたしまして、シヤウプ勧告によつて町村合併を非常に慫慂するような方向をたどつている際に、これを分割する方向へ向うということは、ちよつと逆行ではないかというのでありますが、これは昭和十二年七月七日から昭和二十年九月二日に至るまでの間についての特例でありますけれども、その時期以外の町村におきましても、非常に特殊の事情によりまして分離したいところがあるのであります。それを第二條におきまして、戰時中合併町村に限りまして非常にわかれやすい、わかれるのに有利な條文が加わつたのでありますけれども、これは都道府県議会議決を経るという文句を削除いたしますれば、戰時中戰時中以外の同じ問題に対しますところの均衡の幅が広くなると思うのであります。それについてのお考えを伺いたい次第であります。まずその辺のことについて御答弁を願います。
  17. 小野哲

    小野政府委員 ただいま川西委員からの御質問は、主として市町村戰時中に統合いたしましたものの分離に関する問題でございまして、御質問の中には法理論の問題もございますし、また実際分離した場合において地方行政、特に市町村行政の面において、混乱を生ずるおそれがないかというような点もございましたし、またシヤウプ勧告の線に沿うて事務の再配分を行いまして、市町村等地方公共団体配置分合等をも研究しなければならない場合において、分村との関係をどういうふうに調和をとるべきであるかというような、種種なる御質問があつたのでございます。この点につきましてはあとで鈴木部長から詳細御説明申し上げたいと存じますが、地方自治法附則二條において、地方議会議決規定いたしておりますことは、住民投票が実際に行われます場合において、それがはたして適正に行われておつたかどうかという法の運営を保証するための、いわば監視的な機能を地方議会に與えられているものと考えられるのでございますので、従いまして必ずしも都道府県議会議決が、法律的には全然必要がないということは言えないのではないか、かように思うのでございます。  その他の問題につきましては、鈴木部長から説明いたしますから、お聞きとりを願いたいと思います。
  18. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまのお尋ねの第一点は、政務次官から御答弁申し上げましたので、第二点以下につきまして申し上げます。  分権をいたします結果、地方財政上どのような混乱を生ずるかという点でございますが、この点は先ほども申しましたように、自治法制定以来市町村に対しまして、相当程度新しく事務を処理する権能が認められて来たわけであります。いろいろの行政事務の処理とか、あるいは教育、警察消防等につきまして、従来国の権限相当程度分権いたしておるわけでありますが、そういうような仕事を処理いたして行くためには、やはり相当程度能力を持つ市町村であることが必要であるわけであります。そこで警察とか消防とか、あるいは新制中学等につきましても、都市としてそれぞれ新しく移讓せられた権限に基いて、一定の計画をつくりまして、予算的あるいは行政的な措置をとりつつ進んでいるところに、途中で分村が行われることになりますと、たとえば新制中学校を維持して行く場合に、分離せられて行つた新しい町村は一体どうするか、結局分離はいたしましても、何か組合というような形で、前の市と関係を持たないと、なかなか自立して新制中学をつくるということが、困難な場合が多いのではないかというようなことが、やはり一番問題になつておるようであります。ところが、もちろん分離をいたしますと、感情的にもやはり前の市と同じような組合をつくることは、困難になるというようなことで、いろいろの問題が起つておるのではないかと思います。まあ一番大きな問題は、そういう新制中学の維持というようなことになつて来ておると思いますが、自治体警察も、従来は都市として自治体警察を持つておりましたものが分離いたしましたために、今度は国家地方警察になる、こういうことになるわけであります。このことは、経費の点から申しますと、国が警察費用を負担することになつて、その経費は軽くなるわけでありますが、しかし自治能力の点から申しますと、警察関係が処理できないという点は、やはり後退のような形になるわけであります。そういうような点が困難の最も著しい例ではないかと思うのでありますが、そのような点にも十分たえ得るような部分が市から分離するような場合には、分離する町村は自立できるのでありますが、残存の市部の方は、そういう有力なる部分が拔けることによつて、非常に市の経済が困難になるというような例もないではないのであります。ただそういう困難があるにもかかわらず、戰時中に行われました強権的な措置というものは、やはり連合国の一つの管理政策として是正する必要があるというようなところから、こういうような形のものが生れて来たように思うのであります。大体困難と予想せられるものは、以上のようなものであろうと思います。  それから第三点のお尋ねの、シヤウプ勧告から申して小さな町村をつくることは逆行ではないかという点であります。この点はまつたくお説の通りでございます。将来、ただいま御審議中の地方行政調査委員会議というようなものにおきまして、相当地方分権の案が考えられ、市町村が多くの事務を担当するということになつて参りますと、勢い行政的、財政的能力の相当ある市町村でなければならぬと思うのでありまして、そういう点から申しますならば、分村ということは、原則としては好ましくないということが言えると思うのであります。ただそういう要求と、戰時中行われました不当なる干渉による合併というものがありましたならば、そういうものを是正するという問題は、これはやはり別個の見地から考えて行かなければならぬものであろう、こう考えているのであります。それから、なお戰時中合併以外のそれ以前に行われました合併等で不適当なものについては、容易に分離できるような制度がないのは権衡を失していはしないかという点でありますが、この点は、結果といたしましては、お説の通り権衡を失しているわけであります。戰時中に行われました不当なる干渉に基く合併の是正ということは、これはやはり今日の日本の置かれております情勢から、当然に第一次的に是正の方法が立法的にも考えられなければならぬと思うのでありますが、戰時中以前のものにつきましては、これはそういう見地を離れまして、やはり考えるべきであろうと思うのであります。戰争前の場合におきましても、不当なる干渉による合併が全然ないとは申せない、だろうと思うのでありますが、そういうようなものについて、一般的な制度として考えることの必要はないというふうに考えまするし、また今後の町村の規模の拡充というような点から考えましても、そういうようなことを促進するような制度を、この際新たに設ける必要はないのではないかというふうに考えておる次第であります。
  19. 川西清

    川西委員 大体御答弁趣旨は了承いたしましたが、一番初めの問題につきまして政務次官は、住民投票が嚴正公平に行われたかいなかを都道府県議会が監視するために、こういうふうに都道府県議会議決を要するということにしたというお答えでございましたけれども、嚴正公平にするということと、都道府県議会議決で愼重を期するということとは、ちよつと問題が違うような気がいたすのであります。直接請求は改正條文の第七十四條によつて嚴正に行うべきでありまして、住民投票自治法その他の構成上最終的な意味があるのではないかという感じがいたしますが、ただいまの御説明ではその考え方をかえるという感じを起さないのであります。これは本日でございませんでも、もう一度お考えを願いたいと思います。  それから先ほど一点聞き落としたのでありますけれども、附則二條昭和二十五年七月をもつてその効力を失うものでありますが、今かかる改正を行つて復元を容易化することは、新たに問題を惹起するものであつて、一部の政治的支配欲を有する者の策動を誘発して、住民を不安定状態に陷れ、ために地方行政の紛糾を招来するおそれがあるという考え方も一部にあるのでありますが、そういう懸念があるかないか、それについても御答弁をお願いいたしたい。  さらに戰時中のいろいろな措置の復元ということに関連して、もう一点お伺いしたいのでありまするが、シヤウプ勧告は税制に対する勧告でありますけれども、この税制に対する勧告を通じ感ぜられることは、大体消費税とか流通税というものは府県事税にまとめ、直接税、府県税のようなものは市町村税としてまとめるその他、あらゆる條文に流れておる考え方から読みとられるものは、今後の地方行政地方自治は、市町村が自治の基本体である。そして府県は、いわば市町村の連合体、あるいは市町村のせわ役というような位置に下るべきである。現在までは、内務省の官僚機構の考え方は、府県には非常に信頼がありましたけれども、市町村ははなはだ信頼が薄うございました。しかしこれからの地方自治は、市町村を自治の基本体として運営して行くように、だんだんかわつて行くべきであるというような考え方が、このシヤウプの税制改正勧告から読みとれるのであります。そういう考え方から推して参りまして場、地方事務所と申しますものは、現在ではいろいろな任務を有しておられますけれども、これは昭和十七年、戰時中に中間機関と銘打つて、郡役所以来何もなかつたものが、特に新たに設置せられるようなことになつてでき上つたのであります。各府県知事あるいは自治庁などにおいては、出先機関の廃止ということを盛んに主張されておるのでありまして、私もそれに賛成でありますけれども、まず府県当局みずから地方事務所のような出先機関を—これは郡役所廃止以来、十五年か何年か忘れましたが、長らくの間何もなかつたものが、戰時中に特に新らしく設置された機関でありますが、これをやはり常態に復元するという考え方から、何とか処理するお考えはないのか。それについての御見解をお伺いしたい次第でございます。
  20. 小野哲

    小野政府委員 川西委員の御質問に対して、私からお答えを申し上げ、さらに鈴木君から御説明をいたしたいと思いますが、直接民主制の問題につきまして、先般川西委員からも御質問がございまして、私からお答えいたしたのでありますが、この人民投票を実施する。言いかえればわが国地方自治考え方に、またこれを実施する上に、直接民主主義の考え方が相当加味されて来たことは御説の通りであります。ただこの中で特に直接請求制度地方自治法の中に取上げられまして、この法律の制定以来すでに各地において実行いたされておるのでありますが、ただ問題はこの種直接請求制度が適正に行われておるかどうか。また適正にか行うために一般地方住民が十分民主的な訓練ができておるかどうかというような点が、この制度運営が適正に行われておるかどうかということの、一つの尺度になるのではないかと思うのであります。従いまして具体的に市町村分離問題に関する一般住民投票に関して、さような事実があるか、どうかということにつきましては、全面的にさような事実がなく、公正に行われておるのであるということを断言いたすことは、あるいは困難ではないかという実情があるように見受けられておるのでございます。  なお地方事務所の問題につきましても、川西委員から種々の御意見を拜聽いたしたのでございますが、私の説明に加えて、さらに具体的な問題につきましては、鈴木部長から御説明申し上げたいと思います。
  21. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方事務所の問題でありますが、これは戰時中いわば府県の現地出先機関といたしまして、国と町村との間の連絡をはかるということを主たるねらいとして、設けられた機関でありますが、その後各地方におきましては、これを府県が條例によつて一つ事務所として設けるという形になりましたので、大体従来の地方事務所がそのまま踏襲せられて、今日に至つておるわけであります。お話のごとくシヤウプ勧告趣旨がいよいよ実現するということになりますならば、市町村が第一次的な行政單位になり、市町村において処理できないようなものが、府県において処理せられるという形になつて参りまして、府県としては従来のような地方行政の根幹組織であるという点が、いささか地位がかわつて来るわけでございますが、その点地方事務所はいかなる機能をシヤウプ勧告の結果に基きまして、府県が持つであろうかということと、非常に大きな関係を持つて来ると思うのであります。また同時に今日の地方事務所の実際の機能は、どういう点にあるかと申しますれば、食糧の供出、その他やはり統制経済が行われております段階におきまして、その統制の裏づけをして行くような機能を持つておるわけでありまして、もし将来そういうような各種の統制経済が逐次撤廃せられるというようなことになりますならば、そういう面におきまする地方事務所の機能というものは非常に縮小せられ、あるいはその必要がなくなるということも考えられるわけであります。しかしながら一面この府県市町村との関係が、シヤウプ勧告に基きまして、できるだけ別箇の機能において活動して行くということになりますと、たとえば税の徴收等につきましても、独立した一つ機関府県が持たなければならぬということになりますならば、地方事務所の実態というものは、そういう税の徴收というようなことが、やはり非常に大きなねらいの機関になつて来ると思うのであります。これを要するに、地方事務所というのは府県の下の町村等の区域において処理いたしますいろいろの行政を、現地で処理するという必要が非常に強く認められる場合におきましては、どうしてもこれは必要だと思いますし、またその必要がだんだんと薄らいで来るというような情勢になりまするならば、これは必要がなくなつて来ると思います。今日の大体各府県状況を見ますと、一部の府県におきましては地方事務所廃止というようなことが、審議会等の研究の結論として出ておりますが、まだ現実に地方事務所を廃止したというところまでは至つていないようであります。それと申しますのも、食糧供出その他の点におきまして、何らかこのような機構がある方が、能率的な行政処理ができるというようなところからであろうと思うのであります。ただ地方事務所は町村を監督するというような考え方で、これを運営するということは、もちろん今日の状態としてはこれはすべからざることであろう、かように考えておる次第であります。
  22. 中島守利

    中島委員長 ちよつと御相談いたします。木村国務大臣が御欠席で、小野政務次官もやむを得ない用事で退席しなければならぬということです。質問は大臣もしくは政務次官がおらなければ困るのですが、鈴木政府委員がおいでになりますから、事務的な質問だけにして、さらに次の機会におきまして要点は御質疑なさるように願つて、政務次官の御退席を承諾いたしたいと思いますが、いかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 中島守利

    中島委員長 それではさようにいたします。
  24. 川西清

    川西委員 ただいま一応の当局からの御答弁を承りましたが、地方事務所は戰時中の産物であることにはかわりないのでありますから、戰時中の諸措置を復元するという意味におきまして、現在ただちにとは申しませんけれども、これが廃止の方向に向つて行くべきものであるという考え方を持つておるものでありますから、機会あるごとに考慮していただきたいということを付言しておきます。  次に事務的なことにつきまして二、三点お伺いいたしたいと思うのでありますが、今回の自治法改正條文の百五十六條におきまして、現在までは法律のみによつてつたのでありますが、「法律又は條例の定めるというところにより、保健所その他の行政機関を設けるものとする。」というふうに、條例という字句が新しく加わつたのであります。現在中央地方を通じて行政整理が行われておりまして、昨日もわれわれ委員の者より質問いたしました議会事務局の法制化につきましても、難色のあるような御答弁でありまして、諸種の行政機関を新設することを極力押えるという方向に、今考えておられるということは十分に了承したのでありますけれども、條例によつて行政機関を新設しようという條文をここへ加えますことは、それと背馳するものではないかと考える次第であります。終戰後の諸立法はなるだけ詳しく法律化いたしまして、これを政令その他に委任することは極力避けておるのでありますが、この百五十六條の條例で特に予想せられておるものはどんなものでありまするか。特に條例によつて地方的特色のあるものを予想せられておるのでありまするか、それについてお伺いいたします。  次に百二條におきまして、従来は地方公共団体議会は、定例会を六回以上開くことになつてつたのでありますが、この改正條文によりまして、都道府県は四回以上と改められたのであります。これはなるだけ議会中心地方政治、地方行政を行うという考え方に逆行するものでありまするが、これはどういう趣旨でかように改正なつたのでありますか。この夏われわれ委員が各府県を視察いたしました際にも、府県当局の意向は、この條文を四回以上に変更してほしいというような意見が強かつたのでありますが、その同じ問題を府県会議員に聞きましたところが、そうする必要はない。やはり六回以上の現行法のままがよろしいという反対意見が、逆に強かつたのでありまして、現行法を特に民主主義とは逆行的に改正する必要性を、私はあまり認めないものでありますが、それについての御見解を承りたい次第でございます。
  25. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方自治法百五十六條の改正によりまして、條例で行政機関が設けられるようになることの結果、なるべく行政費を圧縮して行こうという全体の考え方からして、必ずしも適当でないのではないかというお尋ねのようでございますが、現在府県のいわば下部的な組織といたしまして地方事務所というような、府県庁で処理をいたしておりまする仕事の全面的、総合的な出先の処理機関一つあるわけであります。それが百五十五條で地方事務所が置けるというふうに書いてある点でありますが、これは條例で設置、廃止が自由にできるようになつておるのであります。これに対しまして特殊な行政を処理しますための特殊部門だけの出先の行政機関というものを置きます方法としては、現在百五十六條に法律によつてのみこれが置けるようなことになつておるのであります。その最も顯著なものは保健所でありますが、全体の考え方といたしましては、地方事務所というものがもし存続しておりますならば、ばらばらの機関をいろいろつくりますよりも、できるだけ地方事務所においてまとめて処理するような仕方にした方がよいわけであります。しかしながら特殊な行政上の必要からして、地方事務所と別個の何らかの行政機関を設けなければならないというようなことも府県としてはあるであろうと思うのでありまして、必ず法律を一々出さなければそういうことができないというような形にいたしますよりも、やはり條例でそのような特殊な行政機関をつくられるという建前にいたしておいた方が、自治の本旨から言つて適当であろうということで、こういうふうにいたしたのもあります。またシヤウプ勧告等から申しましても、都市区域においでの府県税の徴收というようなものが、市役所の機構を通じて徴收してもらう、このようなかつこうで行きますならば、現状通り特別の必要はないわけでありますが、もしも府県の仕事と市の仕事の処理を、できるだけ系統を別にして処理して行くというようなことによつて、責任の紛淆をなるべく来さないようにしようという、一種のシヤウプ勧告の中にくみとられます精神を拡充して参りますと、やはり市の区域府県が税金をとります場合には、あるいはそのための税務出張所というようなものを、市の中に特別につくらなければならぬかもしれないと思うのであります。そういうようなことも予言せられなくはございませんので、そのようなものも一応考えました上で、こういうような條例の定めるところで、特殊行政機関が置けるというようにいたしたのであります。  第二のお尋ねの、都道府県の定例会を六回以上とありますのを、四回以上というふうに減らしました理由は、どういう理由であるか、これはやや逆行ではないかというお尋ねでございますが、これはやはり都道府県議会は、府県内の各地から相当議員が選出せられておるわけでありまして、都道府県議会を頻繁に開くということは、やはり相当の経費を要するわけでございますし、また執行機関部面といたしましては、議会がございますと勢い各事務を処理しております局からの、追加予算の要求というようなこどもございまして、その処理のために二十日なり、あるいは大きな所では一月も、いろいろの問題が起つて、そして予算を編成して議会へ出すことになるようなことでありまして、勢い経費の膨脹を馴致するというようなこともないと思うのでありますが、また自治執行機関といたしましては、そのために事務能率を、事務分量を相当下げなければならないというようなことがございまして、頻繁に都道府県会を開きますよりも、むしろ一回の会期を相当長くして、回数を少くするという方が、少い経費で能率もよりよく上げていただくことができるであろう。執行機関側もその方が都合がよくはないかというようなところから、大体四回ということにいたしたのであります。この回数を決定するにつきましては、各地方団体の執行機関議決機関両者の代表で構成しておられます地方自治委員会議におきまして、十分意見を練つていただきました上で、政府といたしましても四回が適当であろうということにいたした次第であります。また常任委員会というものは、議会が閉会中でもあるわけでございまして、必要に応じて継続審議もできまするし、また理事会はいつでも緊急事件がありますならば開会できるわけでありますから、四回ということにいたしましても実際上の支障は起るまいというのが、政府のこの改正案提案いたしました理由でございます。
  26. 中島守利

    中島委員長 門司亮君。
  27. 門司亮

    ○門司委員 きわめて事務的なものだけを一応聞いておきたいと思いますが、ただいまの川西君からお聞きになりました問題については、今の鈴木政府委員意見と、全然われわれは反対意見を持つているのであります。それは先ほどからもお話がありました通り、單に理事者の事務的の都合、あるいは議員の私的の都合によつて、最近非常に都道府県の問題の多い時期に、これが回数を減らされるということは、まつたく時代に対する一つの逆行であると、われわれは考えるよりほかに考え方はないのであります。従つてわれわれといたしましては、従前の法律通りでいいというように一応考えております。答弁は聞きましたので、一応その点の押問答は避けたいと考えております。  それから次にお聞きしておきたいと思いますことは、いろいろ問題になつておりまする戰時中合併された市町村分離の問題であります。理論から申し上げますならば、住民投票に対して、都道府県会議員の議決によつてこれを決するというようなことは、当然許さるべきでないと考えているのであります。真の自治体の意向は、いわゆる住民投票という住民の意向で左右されるべきもので、われわれはどこまでも住民投票というものを尊重すべきものであると考えているのであります。ただいま杞憂されておりますものは、この法律によりますと、附則の二の五項に有効投票の過半数という文字があるのであります。従つて住民投票とは言いながら、実際の住民の過半数の意見がまとまつたかどうかということは、一応疑問があると考えられるのであります。私どもはもしこれが実際上の住民投票の効果あらしめようとするならば、この有効投票ということでなくして、これを住民の選挙権を有する者の過半数の意見をもつて決することに改めるならば、県会の介在する余地は全然なくなると考えているのでありますが、この点に対してどういうふうにお考えになつているかということであります。  それからお聞きしておきたいと思いますことは、東京都の区の自治制の性格の問題であります。自治法附則の二の五項によりますと、大体東京都の区は自治区——多少意味は違うかもしれませんが、現在はそういうふうに考えられて、そういう行政が行われておる。ところが施行令の方に行きますと、その自治区であるべき区の吏員については、都庁がこれを配属する。そうしてその事務を区長のもとで行わしめるということになつておる。従いまして、問題の起りまするのは、完全自治区でない。その長である区長だけが公選によつてなされておる。その公選でなされておる区長のもとに働きまする吏員も、これを東京都長官が配属するということになつておる。さらに條例あるいは法律内容等におきましても、区の事務に対しては條例でこれを定めることができるような規定が設けられておる。従つて区の自治制というものはまつたく表面だけの問題であつて、十分な行き方をしておらない。さらに問題は、それの裏づけとなりまする財政の問題になつて参りますと、財政的の権限というものをほとんど持つておらない。それでせつかく公選された区長の抱負経綸も行われないということになつて、現在の東京都の区というものは、半身不随の形になつておる。しかしながらそうだからと言つて、今いろいろうわさされておりますように、都の二十三の区が完全に独立して、二十三の市が東京都にできるということになると、これも行政上の面からやつかいなものをこしらえるというふうに考えられる。そこで問題は、東京都の各二十三の区が、自治区としての大体の構想と、大体の事務的な処理のでき得るような組織の変更が、この際必要ではないかというように考えられるのでありますが、その点についての政府の御見解がありまするならば、一応お聞かせを願いたいと思います。
  28. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第一のお尋ね戰時中合併をいたしました町村分離投票の方法につきまして、有効投票の過半数がありました場合に、請求が成立するというふうにしないで、選挙人の総数の過半数の賛成があつたときに分離投票が成立する、こういうふうにしたらどうかというお尋ねのようでございますが、これはある投票につきまして、一定の定足数を要求するという制度考えられなくはないと思うのであります。たとえば最高裁判所の裁判官の国民審査の際におきましては一定の最低限度の票というものが要求をせられておりまするが、しかしながらこれは特殊の性格からいたしまして、むしろ非常に特例的なものであろうと思うのであります。一般の投票なり、選挙の原則といたしましては、選挙投票の自由が與えられておりまする限りは、棄権をすることは、やはり選挙人の自由でなければならぬと思うのでありまして、その中の一定数の者が必ず参加しなければ投票というものが有効に成立しないという建方をとりますることは、これはやはりどうも一般の投票の理論から申しまして適当でないのではないか。その結果といたしましてある程度投票強制というようなことが、かりに法制化いたしませんでも、事実上行われるようなことになりましては、投票理論といたしましても、どうも適当ではないのではないかという考え方から、とにかく有効投票の過半数で事を決するというのが、大原則と考えられますので、その一般原則に従う方が適当であろう、こう考えておる次第であります。  それから特別区の問題でございますが、特別区につきましては、御指摘のように現在の制度が必ずしも全体として首尾一貫していない点があるように考えられるのであります。今後予定せられております一つの問題といたしましては、シヤウプ勧告に基きまして、地方行政調査委員会議というようなものにおきまして特別区にどういう事務配分するか、あるいは都にどういうふうに事務配分するかというようなことは、当然問題になつて来ると思うのであります。そういうような研究によりまして、一つの根本的な原則が決せられましたならば、これに基いて特別区についても法制上の地位というものを再検討すべきであろうと、こう考えております。シヤウプ勧告に至ります前の段階におきまして、今御指摘の特別区におりますところの都吏員を、区の吏員として区長が自由に任免するようにしたらどうか、というような点を含めてのお尋ねのように存じましたが、この点は特別区というものの性格にやはり結びついておる点だろうと思うのであります。現在の政令におきまして、都吏員が特別区に配属されるというような形をとりましたのは、特別区の性格の点もございますが、なおいま一つは、これに従事いたしております職員の地位の安定、あるいは職員の都全体の今までの過去の扱いというようなものを考えましても、従来一人の市長なり、知事によつて任命されました都吏員であつたものが、特別区に配属せられた結果、まつたく別別の所遇を受けるということになり、恩給とかその他の点につきまして、いろいろ厚薄の扱いが出て来るということでは、職員全体の生活安定というような点から申しましても、必ずしも適当ではないというような点も加味せられまして、政令では現在やはり依然として都吏員で、都知事が任免するという形になつておるわけであります。これはやはり将来特別区の性格を根本的に再検討をいたしまするときに、あわせて検討いたした方がよいのではないかというように考えております。
  29. 門司亮

    ○門司委員 さつきの問題でありますが、なおお聞きしておきたいのですが、なるほど選挙の建前から申しますならば、一応そういう理論は成立つかと思います。もし部長の意見のようでありますならば、都道府県並びに市町村の境界の変更というものは、第七條ではつきり規定しておるわけであります。従つて第七條で行けば事は足りるのであります。特に附則を設けたという原因は、これは特別の区なるがゆえに、法律制定当時のことを考えますと、かくのごときものがあつたと私は考えておるのであります。従つて附則二條というものは明らかに一つ特例法でありまして、ことに現状を見ますと、全国で相当数、三十あるいは四十というふうに私ども聞いておりますが、多くの訴訟沙汰がこれによつてつて来ておつて、依然としてこれが解決されていない。来年一月までの期間でありますので、その間においてはつきりした黒白をつけないと、うやむやに葬り去られる危險が多分にある。将来こういう問題が起つて来る。従つてこういう問題はなるたけ特例特例のような考え方で処理して行くのが、よいというふうに考えておるのであります。この点御答弁が願えればなおけつこうだと思いますが、一応私どもの意見だけを申し上げたいと思うのであります。  その他の問題につきましては、行政区画の変更その他でもお聞きしたいこともありまするが、これはいずれ大臣なり、あるいは次官なりのお見えになりましたときに、なおお聞きしたいと思うのであります。
  30. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 分離投票の場合の問題でございますが、やはり私どもといたしましては、投票理論と申しますか、選挙の理論から申しまして、有権者の過半数が参加しない場合には、その投票が無効になるということになり、あるいはその多数が参加しない限りは、いつまでたつて分離が最終的にきまらない、請求が成立たないということになりまして、それ自体としてもやはりお話のように、いろいろ問題があるように思いますので、この点は現状のままの方がいいのではないかというふうに考える次第であります。
  31. 中島守利

    中島委員長 立花敏男君。
  32. 立花敏男

    ○立花委員 請求権の制限の問題でありますが、請求権に関しまして、大体選挙に準ずるものとして、お扱いになつているように考えられますが、そういたしますと、署名簿の縱覧という言葉があるのでございますが、これは非常に問題ではないかと思われます。御承知のように、選挙の祕密の保持ということは憲法にも保障されておりまして、選挙における投票の祕密はこれを犯してはならないということがはつきりあるのであります。もし署名を選挙に準じてお扱いになり、それに関する取締りあるいはその他の規定を選挙法に準じておやりになるとすれば、縱覧ということは非常に不適当ではないか。これは表面上非常に合法的のように見えますが、合法的な形で選挙権の、行使に対する非常な圧迫になるのじやないかと考えられます。署名と申しますことは、投票にいたしましても記名投票と無記名とありますが、記名式の投票に準ずる、それに近いものだと考えられますが、記名ということは決して縱覧させてもいい、公表してもいいという意味の記名ではございません。投票した者は何のたれがしだという記録上の責任を明らかにしたものだと思いますので、この縱覧ということは非常に投票に準じた署名の圧迫になり、従つてリコール活動そのものの非常に大きな制限になると思うのであります。この点に対してまず御説明を承りたいと思います。
  33. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 署名が選挙と類似する行為であるかどうかという点でありますが、これは選挙とは似た点もあり違つた点もある。一口に言えばそういうふうに言えると思うのでございますが、多数の選挙人が参加をしなければ成立たない行為であるという意味におきまして、これはやはり選挙ときわめて類似した関係のある行為であると思うのであります。しかしながら根本的に違います点は、選挙はあくまでも祕密に行う、記名投票を廃しまして無記名投票で、しかも何人もこれを監視していない所において投票函に投ずるというのが選挙の本質であります。それを憲法が保障いたしておるわけでありますが、署名と申しますのは、むしろ堂々と自己の住所、姓名を書きまして、こういう点に対して請願をする、憲法上の一つの権利に結びつけて考えますならば、これはいわば請願の権利で、請願というのは、堂々と住所と姓名とを署して、意見を具申するのでありますから、これはいわゆる投票の祕密という原則が、ここには当然及んで来ないというふうに考える次第であります。
  34. 立花敏男

    ○立花委員 選挙とは違う面もあり、同じ面もあるとおつしやるのでございますが、実際上この規定によりまして、選挙の取締り、あるいは選挙に関する訴願あるいは提訴の規定を準用になつておられまして、ほとんど選挙と同じような扱い方をなさつておられますし、私どもの考えるところによりますと、本質的には選挙と同じような性格を持つているのではないかと考えておりますので、一面においてそういう選挙に準ずる規定をお入れになり、あるいは一面において選挙の本質とは違うような、縱覧というような規定をお入れになることは、いわば有利な面だけをとつて、不利な面だけはとらないというふうなことを、なさつているのではないかと考えます。実際の問題といたしまして、たとえば町村におきまして町のリコールあるいは村の首脳部のリコールというような問題になつて参りまして、裏長屋のおかみさんたちが、ふだん偉い人だと思つている方、あるいは多少ともお世話になつているような方のリコール署名をいたしまして、それを縱覧に供されるような場合には、これは非常に大きな無言の圧迫があるのでありまして、こういうものを、選挙と違う面があるから縱覧させてもいいのだというような形式的なことでおやりになつては、実質上の署名運動が成立しないではないかと考えます。この点ここで問答しても仕方がありませんので、もう一度お考えおきくださるようにお願いを申し上げます。  それからもう一つは、私少し計算をして見たのですが、この間逐條的に部長が御説明なつた場合に、この署名簿の署名の証明、あるいは縱覧の期間を経て、あるいはその後の訴願の決定を経て、初めて長に対して請求することができるとおつしやいましたのですが、最惡の場合、長に提出するまでに要する期間は、私の計算では約七箇月ぐらいになるのでございますが、部長の計算では一体どれくらいになりますが、参考のためにお聞きいたしたいと思います。
  35. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 正式に署名に関するすべての問題が解決して受理されるまでに、どれくらいかかるかというお尋ねでございますが、その点はなお行政課長から詳しく申し上げるようにさせていただきますけれども、大体署名を非常にぎりぎりにとりまして、必要な署名数の、たとえば五十分の一あるいは三分の一という数をとります場合には、やはりある程度のミスを計算いたしまして、一割なり二割なりの署名を余計とるというのが、請求運動の原則的な行き方だろうと思います。一割、二割余計とりますならば、かりにその中に五分や大分の署名の違法なるものがございましても、そういうようなものは実は何ら争う実益を生じないのであります。三分の一有効なる署名さえそろえますならば、あと問題は起らぬのでありまして、有効署名が三分の一に達しないという場合において、残りの五分なり六分なりの署名を、あくまでも最後まで争つて、そして三分の一に達するようにするということになるわけであります。そのために相当期間はかかることはかかりますが、今までの一般の訴訟の原則から申しますと、とうていこの一年以内には最終決定ににはなりません。ほとんどぎりぎりに詰めまして、各種の争いの期間を短縮いたしたわけであります。従つて短縮はいたしましたけれども、やはり訴訟をするということになりますれば、相当費用がかかるような場合もございますから、おそらく小さな町村等で請求をするに必要な署名を得ますためには、むしろまたあらためて署名をやり直す方が、費用もかからず簡單に行くという結果にもなると思うのでありまして、非常に争いの期間が長いということのために、直接請求に制限を加える結果にはむしろならないというように考えておるわけであります。  なお期間の点につきましては、行政課長から御説明を願います。
  36. 長野志郎

    ○長野説明員 ただいまの署名の争いの間の期間の計算でございますが、七十四條の二に規定いたしておりますように、まず署名の効力を市町村の選挙管理委員会決定をいたしますのに二十日かかります。その次にその日から七日間に一般の選挙人の縱覧に供するのでありますから、それで二十七日かかるわけでございます。その次に縱覧の期間中に異議のあるものは、署名について異議の申立てをいたしますが、申立てをいたしましてから十四日、これは縱覧の一番最後の日に異議を申し立てるといたしまして、その次に十四日を加えたといたしますと、これで四十一日かかるわけでございます。その次に市町村の場合でございますと、その異議の決定にかかるのは、さらに地方裁判所に十四日までに訴訟を提起するわけでございますので、これで五十五日かかります。地方裁判所が裁判をいたします場合には七十四條の二の最後の項にございますが、訴訟の判決は百日以内にこれをする。この場合にはそれに百日加えますので、従つて百五十五日かかる。これをさらに控訴はできないが上告はできるということで、さらに最高裁判所まで持つて行くということになりますと、それに上告期間の十四日、それから裁判期日の百日というものを考えなければならぬ。従いまして二百六十九日かかるということになります。この場合には行政庁の署名簿の署名に対しますところの証明が一応きまりましたならば、これに対しまして不服がありましても、不服のあるものは地方裁判所に持つて行きましても、直接請求の手続としては通常そこから発足をいたしますので、最初の二十日と七日それから十四日を入れました四十一日を過ぎましたならば、通常の場合にはその選挙管理委員会の署名の証明が、たとえば住民の選挙権を有するものの三分の一ないし五十分の一の有効署名があるという証明がありましたならば、ただちに請求の手続が開始できるということになるわけであります。
  37. 立花敏男

    ○立花委員 今のお話によりますと、最高二百七十日かかるというのですが、この二百七十日の上にまだ実は九十日かかります。と申しますのは最初に署名代表人の証明書をもらわなければいけない。それからその間に署名をとる期間が一箇月間あります。それで七十日ぐらい。最後に長に出しましてから議会に送るのに二十日かかる。だから二百七十日の上に九十日でありますから、実際に署名に着手いたしましてから、三百六十日、ちようど一年かかる。これでは直接請求のような緊急な問題が実はその効力を失うのじやないか、それを議会に出されるのが三百六十日目でありまして、議会審議が長引きますと二年越しになる。こういうことは当然予想されますので、これはもつと何とかいたしませんとせつかくの直接請求権が何にもならないのじやないかというふうに言えると思います。この点ももう少しお考えくださつてはどうかと思います。  それからもう一つ質問いたしたいと思いますが、実は選挙管理委員会性格の問題でございます。選挙管理委員会事務的なものであるということは、今の地方自治法にもはつきりうたわれておりますし、それから本第六国会にも、前の第五国会にも、選挙法を制定する特別の委員会がございましたが、この委員会が各党一致してつくりました選挙法案内容を見ましても、選挙管理委員会事務的なものだというふうに、はつきり規定されております。ところがこの提示されました改正案によりますと、選挙管理委員会は單に事務的なものでなしに、実質的に非常に大きな権限を持つて来ておる。特に目立ちますのは七十四條の三の二項にありますところの選挙管理委員会による実質的な審査の問題です。これは司法面とも関係して参りまして、一度法務総裁にでも来ていただいて、お聞きしなければわからないのじやないかと思うのですが、「詐偽又は強迫」についての訴えを実質的に審査いたしまして、それによる署名の有効、無効を決定するという重大な権限が、事務的であるべき選挙管理委員会に新たに與えられておるのでありますが、これは司法権の侵害ではないか、従来の地方自治法あるいは前国会、本国会でやつておりますところの、新しい選挙法案規定するところの選挙管理委員会性格と、大分違うのじやないかと考えられます。この点についてぜひ法務総裁の御意見を承りたいと思うのですが、自治庁としての御見解を承りたいと思います。
  38. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 最初の署名が有効に成立いたしますまでの期間の問題でございますが、この点はちよつと誤解をしておられるように存じますので、念のために申し上げさせてもらいたいと思います。最高裁判所で最終的に署名の有効、無効が決定いたしますまで持たなければ、請求が受理せられないということではなくて、選挙管理委員会におきまして署名の審査が終り、異議がありますものに対しては、異議の決定をいたしますが、その異議の決定がありましたならば、それによつて行政権の行為は終るわけであります。それによつてただちに署名の有効、無効の基礎ができまして、署名を受理するかしないかをきめるわけであります。あとの争いは司法権の機関によります争いになつて参りまして、そういう司法裁判所の行為によつて行政権の執行を停止せられておるという行政事件訴訟特例法の原則に従いまして、かりに訴訟が起つておりましても、それはそのまま署名請求の受理の方はやつてしまうのであります。そうして投票もやつてしまう、こういうことになるわけであります。従いまして今の全体の計算は、いわば理論的な計算でありまして、こういうようなことが実際起るということはますます考えられませんし、かりに起りましても、今申し上げましたように、最初の審査期間の二十日、縱覧期間の七日、決定期間の十四日、合せて四十一日ありますれば、かりに争いがありましても、そこできまつてしまつて、その前提に基いて投票が行われる、こういうことになるわけであります。この点は誤解がないように、ひとつお願いいたしたいと思うのであります。  それからいま一つの、選挙管理委員会性格から申しまして、詐偽または強迫による意思表示を無効とするという審査をすることが、不適当ではないかというような趣旨お尋ねのようでございますが、この点につきましては、実は現行法におきまして、何ら規定がございませんために、市町村の選挙管理委員会自身が強迫に基いたような署名につきまして、これを無効であるというような形の審査をしておるようなものもあるように見受けられるのであります。そういうようなことでは適当でありませんので、はつきりとそのような事実質的審査をする限界を法律の上に定めまして、その手続、方法を明確に規定をいたしたわけでありまするが、選挙管理委員会のやりますことは、あくまでも署名の効力の決定という行為でありまして、これは裁判権の行為とは何ら関係がないのであります。裁判所が詐偽、強迫によりまする意思表示につきまして、民事上の効力を決定するということは、これは別個の問題でありまして、ここにおきましては、行政権の行為といたしまして、選挙管理委員会が署名の有効、無効を法の定めました手続に従つて、これを決定するというだけでございますから、これは選挙管理委員会性格が、何も憲法等において決定せられておるわけではないわけでありまして、国会におきまして、法律においてこういうような権能を選挙管理委員会にお與えになりまするならば、選挙管理委員会としては何ら問題なく、こういう事項は処理できるのであろうと思うのであります。
  39. 立花敏男

    ○立花委員 大体御説明によつて了承いたしましたが、それなればよけいに正式の裁判所に訴えるまでに、すでに行政的な効力が発生するとするなれば、よけいに私は七十四條の三の詐偽または強迫による署名取消しということを、選挙管理委員会決定することは、非常に危險であると考えます。部長の説明によりますと、国会が與えれば成立するのだというようなお考えであるということを言われたと思いますが、私どもはこれを與えることは非常に危險だと考えるのです。なぜなれば何ら十分な手足も持たない事務的な機構としてつくられておる選挙管理委員会が、どうして詐偽あるいは強迫ということを認定するのか、非常に大きな問題でありますし、選挙管理委員会自体としても大問題だと思います。これをやらすならば、自治法の中における選挙管理委員会自体の規定まで根本的にかえなければ、こういう権限は選挙管理委員会に持たせられないのではないか。單に七十四條の三を挿入することによつてのみ、選挙管理委員会性格を根本的にかえることは行き過ぎではないかというふうに考えますが、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  40. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 詐偽または強迫による意思表示は、これは民法上も無効である。あるいは取消し得る。こういうことが民法の規定にあるわけであります。公法上のある特定の公職にありまする者を罷免するとか、あるいは條例を制定するというような、その行為の基礎になります場合の署名という一つの意思表示につきまして、民法において行われておる原則と同じような趣旨の原則を取入れて、詐偽または強迫に基く意思表示を無効にするということは、これはいささかも不審ではないと思うのであります。そこで実際問題といたしましても、全然別個の事実を提示して署名を求めるというような例が、相当あるのでありまして、そういうようなことでは公正な請求権の運用はできないと思いますので、実際上から申しましても、そういうようなものを無効にする必要があると思うのであります。しからば詐偽または強迫という事実を、だれに認定させるかということであります。選挙管理委員会に認定させることができないといたしますならば、これは結局裁判所に認定させるというようなことになると思いますが、かりにそういうような行為を今の裁判所の機構組織でやれるかと申しますと、これはとうてい裁判所の能力に余ることであると思うのであります。のみならず期間がいよいよ長引きまして適当でありませんし、またそういうような第一次的な行為の決定を裁判所がやるということは、やはり裁判権と行政権との根本の分界から申しましても、適当でないと思います。従つて署名の効力の決定ということは、形式的審査は少くとも現在におきましても、選挙管理委員会が選挙に関する事務、あるいは投票に関する事務としてやつておるわけでありまして、実質的署名の効力の審査を選挙管理委員会がいたしましても、これはさしつかえがないのであります。また選挙管理委員会に関する根本規定から申しましても、選挙管理委員会は選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理するということが、百八十六條に明示せられておるわけでありまして、これは選挙自身に関係のある事務投票関係のある事務であろうと思いますし、かりにそうでないといたしましても、少くともこれに関係のある事務であるということは言えると思うのでありまして、現在の選挙管理委員会性格をこれによつて変更するものでは全然ないかように考える次第であります。
  41. 立花敏男

    ○立花委員 これ以上は見解の相違になるのですが、今部長がお述べになつた百八十六條でございますが、百八十六條におきましてもこれに関する事務、あるいはこれに関係ある事務と書いてありまして、詐偽あるいは強迫による実質的な審査などをやるということは、どこにも書いてないと思う。しかし部長のお言葉によりますと、裁判所がやるよりも選挙管理委員会がやつた方が、早くできるというような便宜主義では、これは片づけられない問題だと思います。大きな選挙権にも準ずるような特別請求権の効力を決定するというふうな、いわば根本的な人権に関する重大な問題でありまして、これを一事務機関である選挙管理委員会が、実質的に決定するということは、重大な問題であろうと思います。この問題は当然法務府の意見も聞かなければわからないと思いますので、委員長の方で適当に法務府の意見が聞けるようにおはからい願いたいと思います。大体直接請求の項だけの質問を以上で終りまして、あとの項に関する質問は次に讓りたいと思います。
  42. 中島守利

    中島委員長 大泉寛三君。
  43. 大泉寛三

    ○大泉委員 私はこの前議会の同意を得て就職した公務員が、議会議決によつて解職を要求された場合に、どうなるかという質問をしたのでありますが、これに対して政府から私の希望に沿うようなお答えを求めるために、時間を置いてあつたのであります。  それからそれに関連してつけ加えておきたいのは、地方自治警察が設置せられてから、公安委員というものは有効な業績をあげておらぬというように思うのであります。それは何だというと、やはり公安委員警察に対する力がなさ過ぎる、また公安委員性格警察の力に上まわるほどの力がないからであります。そうして公安委員の資格に対する法規がきわめて嚴粛であつて、一党一派に偏してはいけないとか、あるいは一党から一人以上の委員を出してはいけないとかきわめて嚴粛な制限を加えておる。その結果何らかの団体に属しておるとか、政党に属しておるとかいうと、いろいろな法規に抵触するから、つとめて団体や政党に参加していない坊さんとか、あるいは医者とか、女だか男だかわからないような人をみんな公安委員にしておる。その結果どうも警察に対するにらみがきかないということが見られるのであります。こうしたことを改正する意思があるかないかということも、つけ加えて聞きたいと思います。
  44. 中島守利

    中島委員長 第二段の御質問は樋貝大臣か増田官房長官の所管に属する仕事でありますから、御質問の要旨は両方に通じましていずれお答えをしてもらうようにいたします。
  45. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 前回の委員会における大泉委員からのお尋ねでございますが、知事が都道府県議会、あるいは市町村場長が市町村議会の同意を得まして、任命をしたような各種委員につきまして、議会が不信任議決とか、その他の方法によつてこれを罷免するというような制度考えられないかというお尋ねのように承知いたします。これはひとつのお考えであると存じますが、現在住民の請求によりまして行うところの、罷免のための直接選挙という制度をとつておりまして、同時にまた知事が委員等の非行をあげまして、あるいは不適当なるゆえんをあげまして、議会に訴えて彈劾をして、これの罷免を議会によつて決するという制度は、公安委員につきましては現在警察法の中に規定せられておるように思うのであります。そこで任命にあたりましては、知事あるいは市町村長が議会の同意を得て選ぶということに関連して、議会の方から直接的に委員を罷免するという発議をいたすという制度も、考えられないことはないと思いますが、任命権が知事あるいは市町村長という執行機関に與えられている以上は、かりに議会議決によつて罷免の制度考えるといたしましても、知事、市町村長からその事実をあげまして、ちようど今の警察法の公安委員についての規定と同じような規定で、議会にこれを提示して彈劾をしてもらう、こういう形の方が今の執行機関議決機関との関係から申しますと、適当ではないかと思います。但しこれもいずれもりくつの問題で、ぜひともそうでなければならぬということではございませんが、公安委員等につきましてはそのような制度もございますし、そういう形がお考えを実現する方法としては、より適当ではないかと考えます。
  46. 中島守利

    中島委員長 大矢省三君。
  47. 大矢省三

    ○大矢委員 ごく簡單に二、三お伺いします。参考資料を見ますと、多くのリコールが行われている。しかもその理由というものは、きわめて薄弱なものが相当あるのであります。リコールされる原因は、この参考資料によつてよくわかりますが、リコールされた後における状態は知ることができない。そこでもしそれらに関しての調査ができておりますならば、それをひとつお聞きしたいと思います。  それからリコールが公平に行われるような改正が、内容に盛られておりますが、町村のリコールという問題について、かりに投票の過半数ということをきめますと、三分の一しか投票のない場合に、その過半数というと、さらに少くなるのでありまして、自治体住民の意思を尊重するためには、どうしても実質において、もつと考慮しなければならぬと思う。先ほど来の立花君の質問に対して、非常に簡素になつたという答弁をしておられますが、一体どういうふうに簡素になつたのか。リコールは日なお浅いのであつて、十分効果を上げておりませんけれども、住民の権利として新憲法に定められておるから、あくまでも尊重しなければならぬという建前を私はとつている。そういうことについて具体的にどれほど簡素になつたか。あるいはこれによつてどういう弊害が除去されたか。私が今申しましたような逆の結果を来しているような事実はないかどうか。それから七十五條のいわゆる監査請求権ですが、大臣の説明書にも公安委員ということが新たに書いてあり、この間承つた説明もそうなつておる。この点は選挙管理委員会、教育委員会だけでなく、「その他法令又は條例に基く委員会」云々と書いてあり、公安委員会は條例に出ておるのであるからして、当然権限には入るのでありますけれども、この二つを入れておきながら、條文には公安委員会が拔いてあるのですが、説明通りこれに公安委員会を加える意思があるかどうか。あるいは故意に落したのか。私は説明通り入れてもらいたいという希望なのでありますが、その点どうお考えですか。
  48. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 リコールの原因となる事実等の資料はあるが、リコールが成立した後の市町村の状態はどうなつておるかということの資料がないから、その点の資料を出せというような御趣旨のようでございますが、実は地方自治庁といたしましても、リコール成立前のいろいろの原因、その他につきましての調査はあるのでありますが、リコールが一応成立いたしましてから後の状態は、まだあまり調べたものがございませんで、断片的な報告等を聞いておる程度でありまして、差上げるほどのまとまつた資料はありませんので、はなはだ遺憾でありますが、この点は御要望に応じかねると思うのであります。  それから第二点の選挙の際に得ました投票よりも、より多く罷免を不適当だと認める投票がある。いわば選挙のときよりもより多くの支持された投票があるにかかわらず、なおかつ罷免投票が多くて罷免された、そういうような例があるというお話でございます。そういうような例も棄権者のいかんによりましては、理論的にも出て来ないことはないと思うのでありますが、その場合に、先ほど門司委員からも仰せになりました、投票につきまして一定の定足数を要求するというようなことにすれば、そんな不都合がなくなるのじやないかというような御趣旨のようであります。しかし分離投票の場合は、分離をするかしないかという事実を決定するための投票でございますから、過半数に達しなければ投票が無効だといえば、結局分離をするかしないかという事実を決定することができないことになりますから、これは定足数を法律上あくまでも要求するということは、むりだろうと思うのであります。  ところがリコールの方につきましては、最高裁判所の裁判官の罷免につきましては、これはたしか選挙権者の百分の一の者が参加しなければ、その投票というものは成立たない、こういうことになつております。成立たないということは、結局現状のままその地位が持続されるという決定になるわけでありまして、従つてこれにつきましては、理論的に申しますと、かりに定足数を設けましても、さしつかえないといえばさしつかえないわけであります。しかしそういうようなことは、今の国民審査法自体につきましても、裁判官の地位をなるべく安定させるという意味から申しますと、そういう定足数を設けることがいいのでありますが、投票理論から申しますと、どうもそういう定足数を設けるということは、適当ではないという、また逆の論があるわけでありまして、地方公職にあります者のリコールについても、そのような制限を設けることは、選挙の大上段の理論といたしましては、どうもやはり適当ではないのじやないかというふうに考えられるのであります。  それから第三のお尋ねの、どの程度一体簡素になつたかということでございますが、これは資料の中にも二、三現在の直接請求のために、どの程度一体期間を要しておるかというのが、差上げてあると思いまするが、その中で署名の審査だけについてみましても、一番短かいのが二十四日、一番長いのは百十日かかつております。この法律では二十日間に市町村委員会は審査せよ、こういうようにしてありますが、現在ではどうなつておるかと申しますと、最低が二十四日、長いのが百十日というのが、私どもの方に来ておる例であります。平均いたしましても、大体五、六十日見当はかかつておるような状態であります。そういうように非常に短縮できて参りますし、訴願、訴訟ということになりますと、裁判にはいつまでに裁判をせよという制限が現在は全然ございません。ところが今度は百日間でやるように努めろ、こういうように書いてありますので、この点も非常に短縮せられることになるわけであります。その他もし御必要であれば、現状と改正後の状態との比較表のようなものを、つくつて差上げてもけつこうだと思います。  監査請求権でありますが、これは特別の他意があるわけではございませんで、公安委員会というのは、たとえばリコール等の場合には警察法との関係で、ぜひこつちに書いてくれというようなことがありまして、現にもうすでに入つておると思うのであります。この監査請求につきましても、お話のように法律上は当然「法令又は條例に基く委員会」として、その対象になるわけであります。
  49. 大矢省三

    ○大矢委員 今お尋ねしましたように説明書の中にも明らかに入れてあるが、公安委員会は非常に一般に関心を持つておる、普通の委員会とは違うのであります。従つてこれを監査できることが法文の上で、すぐに見ることができるならば、いわゆる法文の説明内容にふさわしい文面になりますが、説明には加えて、この法文にはのけている。のけるなら教育委員会も選挙管理委員会ものけて、法令で定むるものは全部と見られるように、「法令又は條例」とだけ書けばよいのでありますが、これを入れてさしつかえないかどうかをお聞きしたいのであります。
  50. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは選挙管理委員とか、それぞれ、自治法の中に本来的な規定がありますものは、必ず関係のありますときには拔き書きをするようにいたすのを原則にいたしておりますが、教育委員会とか、公安委員会というような特別法によりまして設けられた地方団体機関につきましては、必ずしもすべて自治法の中に掲げることはしないという原則をとつております。しかし一々全部きちようめんに書き上げることにいたしましても、もちろん実際としてはさしつかえないと思つております。
  51. 中島守利

    中島委員長 今日は質問はこの程度にいたしておきたいと思います。明日は午前十時から委員会を開会いたしまして質疑を続行いたします。  これで散会いたします。     午後零時五十九分散会