運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1949-11-15 第6回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十五日(火曜日)     午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 中島 守利君    理事 大泉 寛三君 理事 川西  清君    理事 川本 末治君 理事 野村專太郎君    理事 久保田鶴松君 理事 藤田 義光君    理事 立花 敏男君 理事 田中  豊君    理事 大石ヨシエ君       大内 一郎君    河原伊三郎君       清水 逸平君    淵上房太郎君       吉田吉太郎君    龍野喜一郎君       大矢 省三君    門司  亮君                 床次 徳二君  出席政府委員         地方自治政務次         官       小野  哲君         地方自治庁次長 遠山信一郎君         地方自治庁行政         連絡部長総理府         事務官     鈴木 俊一君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君 十一月十二日  地方起債拡張に関する陳情書  (第一号)  警察機能発揮に関する陳情書  (第一三号)  都道府県衞生部存置陳情書外六十五件  (  第一五号)  町村吏員恩給組合に対する国庫補助増額陳情  書外六件  (第二〇号)  地方自治法一部改正陳情書  (第二九号)  地方自治法普及徹底に関する陳情書  (第三〇号)  地方自治法の一部改正陳情書  (第四〇号)  国庫補助事務費引上陳情書  (第四一号)  地方自治法に関する陳情書  (第四三号)  地方財政法に関する陳情書  (第四四号)  地方財政危機打開に関する陳情書  (第四七号)  地方財政負担軽減陳情書  (第五一号)  地方自治法附則改正に関する陳情書  (第五二号)  自治体警察協力に関する陳情書  (第五四号)  地方自治法の一部改正に関する陳情書  (第五五号)  治安維持確立に関する陳情書  (第六八号)  警察運営に関する陳情書  (第七〇号)  不動産取得税廃止に伴い不燃建築家屋税減免  に関する陳情書  (第  七八号)  自治体警察に関する陳情書  (第八二号) 同月十四日  公共事業費地方起債わく拡張に関する陳情  書(第一三二号)  北海道庁に陸運局分室並びに通商産業局分室編  入に関する陳情書(第  一四一号)  現行自治体警察制度の全廃に関する陳情書  (第一四  九号)  水産業に対する事業税撤廃陳情書  (第一五七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二七号)     ―――――――――――――
  2. 中島守利

    中島委員長 会議を開きます。  これより地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出第二十七号を議題として質疑に入ります。通告順によりまして質疑を許します。河原伊三郎君。
  3. 河原伊三郎

    河原委員 小野政務次官にお伺いいたします。民主政治確立のためには、議会政治議会権威を保つこと、議会機能を高揚することをはかることが、きわめて大切なことでありますことは、中央地方を通じてかわらないところと存ずるのであります。つきまして議会機能の高揚をはかるために、中央におきましても、地方におきましても、議会事務局既成の事実として設けられておるのでありますが、中央における議会事務局にありましては、すでに法律上の明文において整えられておるのでありますが、都道府県方面にありましては、既成の事実として事務局そのもの設置されておりますが、中央措置として法律上の扱いはきわめて不親切なる状態にある。ほとんど認められておらないような状態にある。これにつきまして全国都道府県議会よりは熱烈なる要望もありまして、事実上すでに既成事実としてなつておるものを、中央の方の措置においても、はつきりとこれを明文化してもらいたいという希望が参つておるのであります。これは地方中央措置を待たずして出過ぎた行き方であると言いますよりも、むしろ地方のこの行き方がほんとうであつて中央措置が遅れておるのであるとみなすべきであると思うのであります。これにつきまして、この地方自治法の一部を改正する法律案は、議会の面におきましては、議会権限拡張する線に沿うての改正とうかがわれるのでありますが、こういつたことをいたします際、この地方議会の本質に触れた点につきましても、適当な配慮を加えることが、妥当と存ずるのでありますが、この点に関する当局の御所見を伺いたいのであります。  なおもう一点は議会権威を保つ上におきまして、都道府県議会に與えられました予算執行に関しては、執行当局の監督並びに干渉を受けることなく、議会の責任において自主的にこれを執行し得るような道を講じますことが、議会権威を保つ上におきしまして当然のことであり、妥当のことと存ぜられるのであります。この点につきましてもまた全国より都道府県議会議長一致要望として、請願が参つておるので上ありますが、この全国的な要望に沿うような措置を講ずるのが適当と存ずるのでありますが、この点に関する当局の御所見はいかがでありますか。以上の二点についてお伺いいたしたいのであります。
  4. 小野哲

    小野政府委員 ただいまの御質問に対してお答えを申し上げたいと思います。  ただいま御指摘のごとく、民主政治確立につきましては、議会権能なり、あるいは運営につきまして、一段と強化拡充して行かなければならないということは、まつたく同感でございます。  御質問の第一点といたしましては、今回の地方自治法の一部改正法律案の中に、各都道府県議会方面から要望されておるところの地方議会事務局を、法制化することをいかに考えておるか、また織り込んでおるか、こういうふうな御質問であつたように思うのでございます。地方議会事務局設置につきまして、これを法制化するということにつきましては、私どももかねてから都道府県議会議長から強い要望があることは承知いたしておるのでございます。御承知のごとく国及び地方公共団体財政需要の点から申しまして、だんだんと地方財政需要が増加して参つておるのが、現在の状況でございます。従いましてこの増加に伴つて国民負担がまたたいへん加わつてつておるというふうな際でございますので、行政機構の縮小及び人員整理措置をとつておりますような段階におきまして、地方議会事務局法制化するということは、現在すでに事実上都道府県及び五大都市等におきましては、議会事務局も置いておるのでありますから、ただこれを明文化するだけではないか、こういうふうな御意見もまさしくごもつともであると存するのでありますけれども、やはり総体から考えまして、機構なり、人員なりを膨脹させるというようなことが避けられないような状況に相なると考えられますので、一応今回の地方自治法の一部改正法律案の中におきましては、見合せることにいたしたような次第でございます。  右のような立場からではなく、ただ純粋に地方議会事務局法制化ということの当否の問題から考えますと、これらの議論を別といたしましても、実際運営上の必要からは、さような機構は必要であろう、地方議会権限に伴いまして、私どもといたしましてもさような機構を設けるということは、法制化することの当否は別といたしまして、実際の運営上の問題から申しますと必要であろう、かように考えておるような次第でございます。  なお議会権能の問題につきまして、予算執行に関してただいま御指摘がございましたが、この問題につきましても種々研究をいたしておるような次第でございますが、今回の地方自治法の一部改正法律案におきましては、これを織り込むにつきまして、なお検討を要するのではないか、かような考え方から、実は御要望等承知しつつ、この法律案改正中には取入れておらないような実情でございますので、この点をあわせてお答えをしておきたいと思います。
  5. 河原伊三郎

    河原委員 簡單に重ねてお伺いいたします。  第二点の議会予算執行に関する点については、現にお考え中ということでありますから、これは抜きまして、第一の点でありまする地方議会法制化の問題でありますが、これを法制化しない理由の重要なるものとして、現に行政整理をやつて国民負担軽減をはかつておる際に、これを法制化することによつて都道府県事務局膨脹を来すおそれがある、こういうふうなお考えのようでありますが、行政整理だけの点より考えまして申しますならば、行政整理というものは十ぱ一からげに必要なものも不必要なものも、天引的にみな縮めてしまう、そうして一方において行政整理をやるのであるから、必要なものであつても新規なものは、一切これをやらないというような、さようなきゆうくつなものではないと存ずるのであります。ただ傾向としてそういう場合であるから、抑制的な空気を伴うことは、これはやむを得ないといたしましても、しかし十ぱ一からげに必要なものも不必要なものも、何でもかんでも萎縮してしまうという行き方は、どうかと思うのであります。特に今回の法制化の問題は、これによりまして、都道府県議会事務局膨脹をはからんためではなく、既成事実をそのまま国として当然認めるべきものを認めて行くという措置をとつてもらいたいという要望であり、私の質問の趣旨もそこにあるわけであります。  もう一つこれを突き進んで言いまするならば、国がこれを不必要といたしまするならば、よろしく廃止を命ずべきであり、必要とするならばよろしく法文化すべきである。端的に言えば、そういう気持における質問でありまして、都道府県事務局膨脹をはかる意味でない精神のもとに、この事務局設置を明文化するという必要を痛感する次第でありまして、重ねてこの点について御意見を伺いたいと存ずるのであります。
  6. 小野哲

    小野政府委員 お答えを申し上げたいと存じます。ただいま御指摘のごとく地方議会運営拡充いたしまして、かつ能率的にこれを取運んで参るということは、私もまつたく御説と同感でございます。  なお先ほど御答弁の際に申上げましたごとくに、私自身も地方議会権能拡充に伴いまして、かくのごとき機構が必要であるということは、是認いたしておるのでございますが、ただ現下の情勢から判断いたしまして、法律によつて必ず置かねばならないということをきめますことは、地方財政需要考え合せましていかがなものであろうか、むしろ民主政治確立の線に沿い、かつ地方議会権限拡充に伴いまして、自然発生的にこれらの機構が、当該都道府県に置かれることは、これは政府といたしましても決して否定するものではございません。むしろ地方団体がその必要に応じまして、また地方議会がその必要を認めまして、自主的にこれを設置して行くということは、最も肯定をいたさなければならない問題であろうと存じますので、これをしも政府といたしまして拒否する、やめさせるというふうな態度に出ますことは、かえつて地方自治体の自主性を妨げるおそれがあろうかと考えますので、むしろ法律の上ではつきりときめませんで、現在ありますように、その必要に応じてつくられておる姿を見るということの方がよいのではなかろうかと考えておる次第でございます。なお重ねて地方議会拡充に伴いまして、かような事務局の必要につきましては、運営上望ましいものであるということは、私もまつたく同感でございます。
  7. 河原伊三郎

    河原委員 重ねてお伺いいたします。地方自治拡充の線に沿うて、自然発生的にそういうふうなもののできる方が望ましい、こういうふうな御答弁でございますが、さよういたしますれば、国の法律に定めないことでありましても、地方自治拡充の線でありますれば、何事をやりましても肯定なさる御所存でありますか、お伺いいたしたいのであります。
  8. 小野哲

    小野政府委員 お答え申し上げます。私の言葉が少し言い過ぎであつたか、あるいは足りなかつたか、どちらかでございますけれども地方自治はやはり国の統治の一環をなしておりますもので、また国の施策と全然遊離いたしまして存在するものでもございません。私の申しますのは、地方議会権能拡充されにつきまして、さような機構が設けられておるような姿そのものは是認すベきであるけれども、無制限に放任するようなことはいかがなものであろうか、そこにはおのずから国全体の施策なり、あるいは方針なりとお互いが相関関係において考えらるべき一つの限界と申しますか、さようなものがあるのではなかろうか、地方の部局につきましても、法制化いたされておりますような点を考え合せましても、この間の事情を物語つておるものではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  9. 中島守利

    中島委員長 次は大泉寛三君。
  10. 大泉寛三

    大泉委員 私の質問したいと思つたことは、大体河原君から質問されておりますので、省略いたしますが、今回のこの改正案は、私どもの年来希望しておつたところの要点をよく改善され、この点について非常に満足しておるのでありまするただいまの河原委員からの質問は、地方議会事務局法制化する意思があるかないかということに、大体重点を置かれたようでありますが、ただいまの政務次官の御説明で大体了承いたしました。ただ一昨年来のこの画期的な地方制度改正にあたつて、あまり顧みられなかつた地方議会に対して、もう少し検討する必要がある。こう認めておつたのであります。たまたま地方審議会の各議員から非常な強い要望もありましたので、この際特に地方議会権威を高めるために、また地方民要望議会に反映せしめて、行政部門に対して民意を反映せしめるという立場からも、これは法制的にまずがつしりしてやつた方がよろしいのではないかと思うのであります。ただいまの政務次官お話によりますると、自治体はどこまでも自治の本領を発揮して、みずからの力において、望むところによつてそれを定めた方がよろしい、むしろ中央ではあまり制定しない方がよろしいというように聞きましたが、これはやはり規模の大小は別として、ただ現在のように行政部門一つ議会係あるいは議会局というような小さいものでなく、もつと権限拡充して、たとえば一般の行政部門に対する県民なり、あるいは都道府県住民が望むところは、何々施設をしてもらいたいとか、道路を直してもらいたいとかいうように、非常に予算膨脹面陳情が多いが、一面また議会に対してはつとめて予算に対する減額、いわゆる税の引下げを要望する、こうした面を見ましたときに、やはり予算膨脹と一面また予算縮減というような立場に立つている一つ地方機関が、必ずしも政務次官のおつしやるように、議会権限拡充するということが予算膨脹を意味するとは私は思わない。むしろ都道府県税のいわゆる地方税縮減を私は来すのではないかと考えます。どこまでも行政部門をある一定の力において制肘することが必要ではないかと思うのであります。この一応において地方議会事務局をまず法制化して、議会意思においてこの人事の任免をするというような方式にやつてもらうことが、一番今日の情勢に適応しているのではないかと思うのであります。御答弁はもうすでに河原委員質問に対してお答えになつておられますから、ただ私は事務局法制化を、一段と高い立場において御研究願いたい、こういうことを要望申し上げて私の質問を終りたいと思います。
  11. 立花敏男

    立花委員 質疑に入ります前に質疑準備的な質問といたしまして、二、三お伺いいたしたい。今年のある地方住民税の問題ですが、住民税納入が非常に悪いということを聞いておるのでありますが、それに関しまして自治庁の方で何か資料をお持ちでございましようか。
  12. 小野哲

    小野政府委員 ただいま立花委員から御要求になりました住民税納入状況に関する資料につきましては、ただいまちよつと手元に持つておりませんので、いずれ取調べて御返事申し上げたいと思います。
  13. 立花敏男

    立花委員 もう一つ、大体シヤウプ博士勧告案が出ておりますが、その中には地方税に関する部分が非常に重要な部分を占めておりまして、特に地方税の各種目にわたる増徴が勧告されておるのでございますが、自治庁でお考え地方税制概要を少しお漏らし願いたいと思います。
  14. 小野哲

    小野政府委員 お答えをいたします。御承知のごとくシヤウプ使節団勧告書が発表いたされまして、地方税制改正を行わなければならぬわけでございますが、この点につきましては地方税の所管の官庁といたしまして、地方自治庁がいろいろ検討を加えておるような次第でございます。御承知のごとく今回の税制改正がわが国においては画期的なことになつておりますので、これが法制化をいたすにつきましても、十分な研究をいたすことが必要である点が多々ございます。従いまして目下自治庁財政当局において研究をいたし、かつ将来の法制化準備を進めておるような次第でございますので、いまだ確定的な案としてここで申し上げるまでには至つておりませんけれども、適当な機会にもし御要求がございまするならば、財政当局からシヤウプ使節団勧告書に伴う地方税制の改革に対する自治庁の目下行いつつあるところの準備状況を、御説明申し上げてもよいのではなかろうか、かように存じますので、この点お答えを申し上げておきたいと思います。
  15. 立花敏男

    立花委員 実は私今回の自治法改正は、非常に地方住民の期待しておりますところと逆行しておるのではないかというふうに考えております。と申しますのは、今お尋ねいたしました二点でございますが、各地方におきましては、特に住民税を中心といたしまして負担の過重に苦しんでおります。ことしの市民税納入率は数パーセントにしか達していないということを私ども聞いております。私の住んでおります神戸におきましても、すでに市民税納付書の返上が数千件に達しておりまして、市民市民税に対する適正課税要望が非常に強い。これは東京でも、横浜でも、各大都市で起つておる問題でございますが、現在そういう問題が各地方に起つておる。さらに今小野政務次官お話によりますと、大体シヤウプ勧告による地方税の過重というものが当然予想される。そういう地方税増徴、あるいは地方自治団体財政権拡充、こういう場合に考えなければなりませんことは、やはりそれに伴つて地方行政に対する人民の発言権の強化と申しますか、より一層民主化される方向に、自治法改正を進めなければいけない、こう思うのでございますが、お出しになりました案はこれと逆行する。なるほどきのう小野政務次官から御説明いただきました提案理由説明の中にも、地方公共団体自主性及び自律性をさらに徹底するというお言葉がございますが、実際におきましては、この言葉とは逆の方向に行つておるということを考えております。特にこの委員会におきまして昨年六月でございますか、市民税その他の手数料とか、そういう問題に関しまして、條例の改廃の請求ができないというふうに規定されておられますが、これなんかも非常に遺憾なことだと思つておりますが、さらに今回の改正にあたりましては、それを一層全般的に広げまして、あらゆる直接請求権に対しまして、非常に大きな制限を加えておられる。これは実質的な地方行政行き方と逆行して、地方自治法においては逆の方向がとられておるというふうに考えるのでありますが、この点は根本的な点でございますので、具体的な問題に入ります前に、次官のお考えをお伺いいたしたいと思いまする
  16. 小野哲

    小野政府委員 立花委員の御質問に対してお答えいたしすます。ただいまの御質問要点は、今回の地方自治法の一部改正法律案によつて、むしろいわゆる基本的な権限について抑制を加えることになつておるのではないか、こういうふうに拜聽いたしたのでありますが、今回の改正法律案提案理由並びにその概要につきましては、昨日御説明を申し上げて置いたのでございますが、その中におきまして触れておいたと存じまするが、今回の改正の内容といたしまして、そのうちのおもなものの一つとしては、地方自治の公正かつ効率を高めて行くための措置を講じて行きたいということを申し上げたように存ずるのであります。特にその際において触れました問題は直接請求の問題でございます。ただいま立花委員からもおそらくこの点についてお触れになつておるものと存ずるのでございますが、今回この改正法律案考えておりますのは、直接請求署名の効力についての改正でございまして、最も基本的な権限として尊重いたさなければなりませんところの直接請求権そのもの制限を加えようという意図は持つておらないのでございます。言いかえれば直接請求手続改正を主眼としておるのでございまして、あくまでも正しい直接請求権住民基本権として保障することはもちろん必要でございまするが、不正の手段に訴えてこれを行おうとするようなものを、必要最小限度規制を加えるにとどめる、こういうふうな方針のもとに今回の改正法律案の重要な一つの問題として、取上げておるような次第でありますからして、直接請求権そのものを抑制して行こうという意図を持つていないことを申し上げておきたいと存じます。
  17. 立花敏男

    立花委員 お言葉通り直接請求権を直接制限しようという意図はないという御意図はそうだろうと思いますが、実際におきまして昨年の六月の改正には市民税の問題に関しましては直接請求権を直接制限せられるという決定をなされております。これは事実だろうと思う。だから今回はそういう形では現われていないとお言いになるかししれませんが、実際の面におきまして事務的な処理そのものが間接的にではあるが請求権制限をしておる。しかもこの制限が非常に苛烈な形で行われておりますので、直接請求権を直接制限するところまで行つておるのじやないかと私ども考えております。と申しますのは、一例を上げますと、昨日の鈴木部長説明の場合にも、第七十四條の二の場合にいろいろの選挙管理委員会証明手続あるいは縦覧手続などがつけ加わりまして、その期間を経てから初めて請求ができるという御説明がありましたが、これなども明らかに今までの直接請求権の中に、選挙管理委員会という事務的なものが介在して参りまして、それの証明とか、あるいは縦覧というような非常に煩瑣な手続を経て、初めて地方請求することができるのでありまして、さらにこの上に争訟の問題が入つて参りますと、はたしていつ地方に対して直接請求権を提起できるのか、非常に大きな問題になつて参りまして、しかもこの期間が正当に参りましても二十七日間、さらに争訟の問題百日が入つて参りますと三月や四月は手続で過ごされてしまうということになつて参ります。非常にこれは間接的な問題ではありますが、直接請求のようた緊急を要する問題から考えますと、本質的に直接請求権制限しておると言つて言い過ぎではなと思うのであります。こういう問題で実は小野政務次官は直接請求権制限しようとはしないとおつしやいますが、事実上制限した形になつていると考えるのでございますが、この点につきまして、具体的な問題は、追つて逐條の場合にやりたいと思いますが、本質的な問題についてお答え願いたいと思います。
  18. 小野哲

    小野政府委員 お答えをいたします。立花委員の御指摘になりました前国会でございましたか、国会において御可決になりました直接請求権の一部の制限の問題でございますが、これは国会として十分御審議の結果、さような御改正を御可決に相なりましたので、この点につきましては、私からここでとやかく申し上げることは差控えたいと思います。  なお直接請求手続改正のために、基本権である直接請求権自体に大きな制限を加えるのではないか、こういうふうなお話でございまするが、問題は署名の問題でございまして、私どもといたしましては、正しい署名によりまして、正しい直接請求権が行使されることを最も希望いたし、かつ期待いたしておるのであります。従いまして必要な法定署名がはたして正当に求められているかどうかということに関しまして、所要の手続をとらしめるということが、いわゆる基本権である。直接請求権もまたその権利の行使に当りまして、権利の濫用になることは、つとめて避けなければならない問題でございますので、今回の改正におきましても、本質的に署名の効力の問題につきまして、所要の手続をふむことが妥当であるというふうな考え方から、先ほど御指摘になりました点を織り込んでおるのでございますので、御了承を願いたいと存じます。  なおこの点に関しまして、補足的な説明は連絡行政部長からいたさせたいと存じます。
  19. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 署名手続に関しまして、いろいろ制限を加えた結果、直接請求権自体についても、制限を加えたことになつているのではないかというようなお話でございますが、ただいま政務次官から御答弁申し上げたように、全体の考え方は直接請求権につきまして、法を逸脱して濫用いたす者につきまして、これを正常の軌道に乗せようというだけのことでありまして、何ら実体について制限を加えるという意図はないのであります。また証明の問題等が入つて来たり、選挙管理委員会の審査というようなことが入つて来たりして、非常にめんどうになつたということでありますが、これはむしろ従来もこういうようなことは事実、法の規定に従いましてやつておつたわけでありますが、その根拠の規定がありませんでしたために、かえつて各種の混乱を起しておつたわけであります。その点を明確に法律の上に規定いたしまして、審査の基準、証明の方法、証明期間というようなものも明瞭に規定をいたしまして、むしろすみやかに的確に規定するようにいたしたわけであります。また救済の方法として異議の決定、訴願、争訟を認めたわけでありますが、これも従来の現状のままで参りますと、非常に長期な争訟が起ることになりまして、かえつて事柄を早く決定するゆえんでありません。不正確な事実に基きまして投票に入りますと、そのために多額の自治体の経費を使うということにもなりますので、署名自体が有効適正なるものであるということを前提にして、投票に入るというふうにいたしたわけでありまして、すべて正当なる権利の行使はこれを絶対に保障するとともに、ただ濫用を抑制する。こういう建前で改正案提案いたした次第であります。
  20. 立花敏男

    立花委員 もう一つ、この改正要点の第三番目でごいざますが、監査委員会権限拡充したとあるのでございますが、実はこれも非常に実質上は制限されておると考えます。と申しますのは、これは地方自治庁は御存じないかもしれませんが、各地方地方自治体の不正腐敗の問題が非常に多数に上つており、その実情からいたしましても、目をおおわしめるものがあるのでございます。たとえば神戸市に問題をとりましても、市会議員あるいは市の課長連中、署長連中が一つの事件に連坐いたしまして、その連累者が八十数人もおるというような実情が現在起つております。しかもその結果市に対しまして数千万円の損害をかけておるというような事態が起つておるのでございます。これは單に一つの例でございまして、今度はこの問題が神戸市から兵庫県庁に移つておりますが、こういう問題は決して神戸市あるいは兵庫県だけではなしに、大阪でも横浜でも東京でも、あらゆるところで起つております。これに対しまして監査の権限拡充するということは、なるほどごもつともだと思いますが、しかし実質上はその監査に対する住民請求権制限することによりまして、実際はこれが発動できない、特権を失して発動できないというような実態になつておりますが、こういう問題に関しまして、自治庁はこの地方自治体の現状をいかに御認識になり、それに対して監査権の拡充によつて有効適切にこれを遂行し得るかどうか、どういうふうにお考えになつておるか、御答弁願いたい。
  21. 小野哲

    小野政府委員 お答え申し上げます。今回の地方自治法改正法律案の中で、監査委員の権限拡充考えておりますことは、ただいま仰せの通りでございます。特に当該地方公共団体が補助をいたしておりますような場合におきましても、監査権を及ぼすことに相なつておるのは、都道府県を初め地方公共団体の財政機能を正当に行使させることが必要でありますことはもちろんでございますので、できるだけこれらの地方公共団体における経理会計の運営の適正化をはかるという意味におきましても、監査委員の監査権を拡充して行くということは考えなければならない当然の措置であろう。かように考えておるような次第でございます。ただいまお話がございましたように、現下の各都道府県を初め地方公共団体における財政経理の面について、いかように考えておるかというふうな御質問でございますが、今回かような点にまで配慮いたしまして、この改正法律案の中に規定を設けようといたします意図を御了察願いますならば、地方自治庁といたしましても十分に連絡調整をはかり、また適当な指導をやつて行きます点意図のあることを御了承が願えるのではなかろうか——かように存ずる次第でございます。
  22. 立花敏男

    立花委員 次に地方公務員の立場から二点お尋ねいたしたいと思うのでございますが、自治庁でお考えになつている地方公務員法には、現在問題になつております公務員の地方政治活動禁止の人事院規則をそのまま持つて来られまして、地方公務員の活動が非常に制限されようとしておるかに聞いておりますが、一方こういうふうに地方公務員の政治活動を人事院規則に準じて制限するかたわら、お出しになりました地方自治法改正案によりますと、地方公務員のうちの一般公務員でない市長あるいは助役、收入役というような特別職の連中に対しましては、人民の側からの行動に対する監査請求権制限されておるのでございまして、従つて特別職川の地位を擁護するという立場をおとりになつておられます。この行き方は明らかに一般職と特別職とを逆にお考えになつておられまして、一般職員に対しては行動の制限を非常にきつい形でやろうとされておるが、特別職に対しましては、今まで人民が持つておりました請求権すら制限しようというお考えを、端的に露骨に現わしておられると考えるのでございますが、この点について次官のお答えを承りたいと思います。  もう一つ同じく公務員といたしまして見逃すことのできないのは、最後の方にありますところの賠償の責任を一般職員に負わしているという問題でございます。これに対しましてもやはりさいぜんと同様のことが言えると思うのでございますが、さいぜんあげました地方自治団体の不正腐敗は、主として特別職の連中の土建業者との結託とか、あるいは金融業者との結託から起つておりますし、あるいはそういうでたらめな行政から一般住民に損害をかけていることは、はかり知れないものがあると思うのでございますが、これに対する人民の請求権を緩和しておきながら、しかも一方一般職員にまで損害賠償の責任を負わしているということは、地方公務員のうちの一般公務員といたしまして、非常に不満があるだろうと思うのでございますが、以上二点に関しまして、地方公務員の一般職にある者としての立場から、政府のお考えを承りたいと思います。
  23. 小野哲

    小野政府委員 お答えを申し上げます。地方公務員の問題でございまするが、これは目下政府におきまして種々検討を加えているような次第でございます。地方公務員の中で一般職の問題についてお触れになつているのでございますが、御承知のように現状におきましては、地方公務員に関する十分なる法律上の保障がないのでございます。さような意味合いにおきましてなるべくすみやかに政府といたしましては、地方公務員に関する法制的な措置を講じまして、地方公務員諸君が安んじて住職全体の奉仕者としての使命を果し得るようにいたしたい。かような念願のもとに目下極力これが準備を進めているような次第でございます。その場合におきまして、一般職の地方公務員に対しては、いろいろ過重な負担があるのではないか、たとえば渦般発表されました人事院規則による政治活動の制限等があるにかかわらず、これに反して公選もしくは議会における選挙、あるいはその承認によつて選ばれました特別職については、相当緩和されているのではないか、これは片手落ちと思うがどうか。こういう御質問のように伺うのでございまするけれども、一般職である地方公務員につきましても、不利益処分につきましてはつとめて保障をいたす道を開いておりますことは、いまだ法律策として御説明もいたしておりませんけれども、私どもはさような道を開くことを考えている次第でございます。この点につきまして御了承を願つておきたいと存じます。  なおまた賠償責任の問題につきましても、これは出納長、あるいは收入役、その他の職員にも適用があるので、あまりに過重な責任を負わせることになりはしないか、こういうふうな御所見のように伺つたのでございますが、これとてもあるいは金銭の取扱いなり、あるいは物品の毀損等の関係から考えまして、現行法では必ずしも実情にそぐわない点がありますので、これを実情に合うように、今回の改正法律案で明らかにすることが適当であろうという考え方から、この改正法律案の中に織り込むことにいたしたのでございまして、決して特に一般職の職員に対して過重な負担をかけよう、こういうような意図から出たものでないということを御了承願いたいと存じます。
  24. 立花敏男

    立花委員 最後に今お答えのありました点は、重大だと思われますので、もう一度確かめておきたいと思います。地方公務員に対しましては法律上の保障がないということを申されましたが、政府といたしましては今地方公務員に対する不利益処分の問題で、はつきりしたものをつくりたいと考えているとおつしやつたように承つたのでございますが、現在地方公務員に対しましては、ポツダム政令二〇一号が適用になつていると思いますが、二〇一号の第一條に、地方公務員の利益保護については、臨時人事委員会が責任を持つという言葉があると思いますが、そういう点で地方公務員の法律上の保障が一応されているのではないか。あるいは不利益処分につきましても、ポツダム政令二百一号が生きておる以上は、政府は責任を持つてやらなければいけないのじやないかと思うのでございますが、この点の次官のお考えを承りたいと思います。
  25. 小野哲

    小野政府委員 お答えをいたします。地方公務員の処遇につきましては、御指摘のごとく現在政令二百一号が効力を持つておりますことはお説の通りでございます。ただこれに対していかなる救済の道が講じられておるかということにつきましては、法律としては明らかなものが今日ないということを、先ほど申し上げたのでございまして、全然救済の道がないということを申し上げだわけではございません。従いまして国家公務員との均衡等をも考えまして、地方公務員に対しましては、すみやかに法制的な措置を講じて参らなければいけないということを、私ども考えておるような次第でございまするので、現在においても地方公務員の不利益な取扱いに対して、全然救済の道が開かれておらないということを、私は申し上げたわけではないことをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。なおこの点に関しては、私の答弁の足りないところを補足的に連絡行政部長からお答えをいたしたいと思います。
  26. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの地方公務員の処遇につきましての不利益なる処分を審査をし、その利益を保護するという制度は、ただいま政務次官から御答弁申しましたように、法制上直接地方公務員を対象にいたしました明確なる規定はないわけであります。御指摘の政令二百一号の関係で臨時人事委員会と言うておりますその機関は、その後人事院に改組せられたわけでありまして、そういう臨時人事委員会の処理いたしておりました仕事が、人事院の方に当然に移管せられておるかどうかという点が、政令の解釈といたしましても明確を欠いておりまするし、また国家公務員法の中に規定をいたしてございます人事院の実体的な権限の中に、地方公務員のそのような利益保護につきましての、直接的規定というものもまたございませんので、この間の解釈につきましては、人事院の方の見解等に徴しましても、やや明確を欠いておるように思うのであります。法律上はいろいろ解釈論も立つと思いますけれども、明確に人事院が利益保護機関になる。こういう点の解釈がただちに立つかどうかにつきましては、いささか疑問があるように思つております。
  27. 立花敏男

    立花委員 これは非常に重大な問題だと思うのですが、今不備だから完備した法案をお出しになるということはわかるのでございますが、なぜこういうように不備な形になつたのか。二百一号が出たときには、はつきりと地方公務員に対しましても臨時人事委員会が責任を持つというように、責任の機関がはつきりとあつたわけであります。法文にはつきりと規定があると同時に、それに対する機関があつたわけなのですが、それがいつの間にかうやむやになつてしまつておるということに対する責任を、政府はどういうふうにお感じになつておるか。この点は非常に重大だと思いますのでお伺いいたしたいと思います。
  28. 小野哲

    小野政府委員 先ほど鈴木君から御答弁を申しましたような事情でございますので、実は地方公務員に関しまする何らかの根本基準を定める法律を早くつくる必要があるということは、地方自治法の御審議の際にも、国会において大いに論議があつたことを記憶いたしておるのでありますが、その間当局といたしましては、できるだけすみやかに收運んで参りたいというので、種々折衝して参つたにかかわらず、今日にまで相なつておるような事情でございます。これは適当な機会に、また本委員会に御説明を申し上げる機会をお與え願えるのではなかろうかと存じます。従いまして今御指摘になりましたような政令二百一号の第一條において、臨時人事委員会がその保護の責に任ずるということについての解釈の問題につきましては、ただいま鈴木君から申し上げました以上のことを、私から申し上げることはいかがと存ずるのでございまして、あるいはこの点につきましては、人事院当局からお答えすることが適当ではなかろうか、かように思いますので、一応御質問に対してあるいは正確な御答弁ではないかと存じますが、私の考え方を申し。述べました。
  29. 立花敏男

    立花委員 当委員会といたしまして、この問題は非常に重大だと思うのです。こういう問題をほつときまして、他の問題に移りましても、実は十分審議できないのじやないかと考えるのでございます。前の委員会にも私この問題を出しまして、特にこの問題は決して法制上だけの問題ではなしに、あるいは国家の機関の不備というだけの問題ではなしに、現在そのために地方公務員が非常な苦境に陥つているという事実を、全国的に列挙いたしまして私は訴えたのでございます。その際委員会でも御承認になり、理事会でも実情調査をやるというところまで行つたのでありまして、それが委員長一任になつておりまして、その後うやむやの形で、現在に至るまで何らの措置もとられていないのでありますが、これは委員会として、やはり委員会の面目にかけても、はつきりと御処置願いたいと思います。これをお願いいたしまして、最後にもう一つ政府に希望したいと思いますのは、前国会條例改正に関する件が委員会審議なつたから、委員会の責任だというふうに小野政務次官はおつしやるのですが、なるほど委員会の責任には相違ないのでありますが、やはり法案は政府がイニシヤテイーヴをとつてお出しになつて條例改正をおやりになつているというところから考えまして、これは委員会だげの責任でもないと考えますし、今度の改正に対しましても、委員会政府が一至いたしまして、地方民の民主的な権限の伸張のために、審議をしていただきたい、かように考えます。九十八議会でございましたか、この民主的な権限の問題は、全会一致で成立しております。それをその後第二国会におきまして、一部の反対を押し切つて、ああいう改惡がなされ、さらに今議会で——おそらくこれは全会一致にならないと思いますが、私ども考えておりますような、いわば反動的な自治法の改惡がなされるということは、九十八議会に全委員が一致して通しました民主的な自治法の、いわば汚点になると考えますので、愼重に御審議願いたいと考えます。
  30. 中島守利

    中島委員長 川本君。
  31. 川本末治

    ○川本委員 政府は今般地方自治法の一部改正を企てられまして、監査委員制度についても第百九十九條の第五項におきまして、一点適切な改正を試みられておりますことはまことに喜ばしいと思いますが、しかし私はさらに一歩を進めた改正を希望しておるのでありまする簡單に三つの点について政府当局の所信を伺いたいと思います。  まず第一に大都市の事務、事業は、その規模及び財政関係におきまして、都道府県のそれと優劣がない、公企業経営の面におきましては、府県のそれよりも重要性を持つておると思うのであります。従つて大都市におきまする監査委員制度の重要性が、都道府県のそれに比較して劣るということは絶対にないはずであります。しかるに現行の地方自治法におきましては、都道府県についてのみ必置機関として、大都市につきましては普通一般の市町村と同じように任意設置機関としておりまするが、政府当局としましてはいかなる理由によつて、この大都市の監査委員制度を任意設置機関としておられますか、その理由をお伺いしたいと思います。また大都市の事務、事業の規模や、財政等におきまする重大性にかんがみまして、都値府県と同様必置機関としてやる御意思があるかどうかということを、まず第一に伺いたいと思います。  次に監査委員は常時、すなわち普通地方公共団体住民は所轄の行政庁から監査の請求がなくとも、機関委任の事務を監査し得るように、地方自治法改正されるお考えはないかどうかをさらにお尋ねいたしたいのであります。私の見解におきましては、普通地方公共団体の長、五大都市の区長及び選挙管理委員会、教育委員会等の委員会または委員の権限に属します事務、すなわち機関委任の事務については、自発的に監査をなし得ないということは、まことに遺憾に思われるのであります。何となればこれらの事務の良否は、住民の利害に重大な関係を持つことは申すまでもなく、実はこれらの事務は、普通地方公共団体の事務、事業と密接な関係にある場合が多いのでございまして、機関委任の事務の監査をしないでは団体の事務、事業の監査を十分になし遂げ得ないと考えるのであります。これらの機関委任の事務につきましては、それぞれ法律の規定によりまして国の行政機関の面接の監督とか、監査とか、または検査を受けるのでありましようけれども、国の監督や監査の空隙を満たして、その円滑なる事務の執行を期するためにも、また一面には監査委員の所轄行政庁または住民要求があるときは、機関委任の事務を監査しんければならないのでありますから、かかる場合においても十分監査報告をすることのできるように、常時この監査を行うことができるようにしたいと思うのであります。これが第二の私のお尋ねしたい点であります。  さらに第三点といたしましては、監査委員が実際にあたつて職務を遂行する場合に、関係者の証言また記録の提出等を必要とすることが往々あるのでありますが、これらの事情にかんがみまして、監査委員が監査の職務と行う上に必要があると認めるときには、関係人の証言または記録の提出を請求することができるように、地方自治法改正をされたいと思うのでありますが、この点に対して政府当局の率直明確なる御所信を承りたいと思います。
  32. 小野哲

    小野政府委員 御質問に対してお答えいたします。ただいまの御質問は監査に関する問題と拜承いたしておるのでございますが、今回の改正法律案中におきましても、第百九十九條の関係として、監査委員の監査機能拡充という問題を取上げていることは御了承の通りでございます。その場合におきまして、主としてただいま御指摘になりました大都市の監査委員の問題につきましても、いろいろ御意見を拜聽いたすのでございますが、濫査委員の問題は一応一律には、市町村はその定数二名ということになつておりまするが、しかし必要に応じて四名を置くことができることに相なつていると思います。大都市のような、その規模なり、あるいは財政能力その他の点から考えまして、必ずしも一般の市町村と一律に考えることは妥当でないという御意見は私も同感でございます。なおまた監査委員の任務の中で、機関委任の仕事についての監査を行うことが必要ではないか、こういうふうな御意見も承つたのでございますが、監査の問題につきましては、なお今回の法律改正が公正な行政を保障する、こういうことを大きな目的として監査機能拡充強化するという点にございまするので、ただいま御質問のありました三点の問題につきまして、なお詳細な点は鈴木政府委員から御答弁いたすことをお許し願いたいと存じます。
  33. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 監査委員の問題につきまして、大都市の監査委員の定数を四人というふうにはつきり書いたらどうか、都道府県と同じようにしたらどうかという点でございましたが、これは地方自治法の建前といたしまして、大都市があるいは都という形になり、あるいは特別市というような形になりましたならば、これは当然に四人ということになるわけでありまするが、市町村という形におきましては、原則として大体同じような法律上の規定を設けているのが、この自治法の一般原則でございますので、市町村は原則として二人、ただ條例で四人とすることができるというふうに、これはたしか過般の国会で御修正になつたように記憶しておるのであります。市にあつて條例で四人とすることができるということになつておりますのは、おそらく大都市をまず第一次の必要性があるものとして考えて、こういうふうにいたしたと思うのでありまして、この点は大都市要求には実質的には十分沿つておると思うのであります。なおその上にはつきりと五大都市だけは委員を四人にせよというふうに規定いたしますことは、はたしてその必要がありますかどうか、さらに研究を要する点ではないかと思います。  それから機関委任の仕事につきまして、現在住民の直接請求によります場合には監査ができるようになつておりまして、監査委員自身が機関委任の仕事について監査できないという点は、不都合ではないかというお話でありますが、現在の地方団体の仕事のやり方は国が委任をいたしております。その委任の方法として二つあるわけでありまして、団体自体に委任したものにつきましては、これはすべて団体の自治機関によつて執行し監査する。こういう達前になつておるのでありますが、機関委任の仕事は、いわば古い地方制度時代からの行き方をそのまま踏襲しておる事務処理の方法でありまして、これにつきましては地方自治法におきましても、特に主務大臣の指揮監督権を認めておるわけであります。そうしてまたこれに関します国費の支出につきましては、一般の会計法なり、会計検査院法の適用がありまして、会計検査院の検査が行われるということになつております。また会計検査院の検査につきましては、法律上の要求といたしましても、相当嚴重な監査を要求しておりますために、地方団体としては会計検査のために割く時間が相当多くて、忙殺されておるというような状況でございまして、そういう国の機関の系統による指揮監督並びに会計検査というようなことによつて、機関委任の仕事を公正に執行して行くというのが、今の機関委任制度の建前であります。しかしこういう機関委任制度の行き方地方自治の本旨から考えますと、必ずしも適当な制度でございませんので、これはシヤウプ勧告の線に従つて、やはり今後そういう制度自体を再検討せらるべき運命にあるものと考えておるのであります。従つてそういうような是正が行われました際におきましては、地方団体の機関の執行するものについては、すべて自治監査機関が監査をする、こういう形になつて行くべきものであろうと思います。  第三の監査委員に対して記録提出等の権限を認めたらどうかという御意見でありますが、この点も一応ごもつとものように存ずるのでありますが、ただ議会がいろいろ議案の立案、審査をするというような場合と違いまして、監査委員はやはり現地に出向いて現地の業務執行状況を実質的に、実地に監査をする実働機関という性格が非常に強いわけでありまして、記録の提出等を待ちもうけて求める。そうして審査をし、あるいは立案をするというような機関とは、やはり根本的に性格が違うわけでございます。現地にむしろみずから出て行つて監査をする。監査の際に必要に応じて記録を閲検する、あるいは監査上必要ありと認めて提出を命ずるということは、もちろん現状においてできるわけでありまして、こういう規定を入れることがかえつて監査委員の性格から見て、誤解を招くゆえんではないかというふうにも考えられるのであります。
  34. 川本末治

    ○川本委員 ただいまの御答弁によりまして、大体の御趣旨は了承いたしましたが、第三点の監査委員が関係者の証言または記録の提出を求める点でありまするが、これらの点につきましては実際その衝に当つておりまする大都市の監査委員協議会の方から、国会の方へ請願も出ておりまするし、なお陳情書も出ておると思いまするので、当局の方においてはよく御承知のことと思います。過般京都、大阪、横濱、神戸、名古屋、福岡、仙台、札幌の八大都市の監査委員協議会からも、詳しくその実際に臨んで、非常に不便で困るというような意見陳情されておりまするので、この点につきましては政府当局としましても、ただ一片の机上の論だけでなく、事実監査委員が実際に仕事を行う上において、現状で十分であるかどうかということなどにつきましては、いま一段と実際の調査、御研究を願いまして、第一点、第二点、第三点ともにでき得るだけ実質に伴なつ方向に、進まれるように希望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  35. 川西清

    ○川西委員 私は直接請求について簡單にお尋ねしたいと思います。これにつきましては、ただいま立花君が触れられたのでありますけれども質問いたします気持は、私は立花君と反対の方向からお尋ねしたいと思うのであります。地方自治法におきまして、地方住民は選挙によつて議会の議員や、長を選び出し、それを通じて間接に地方行政に参與するという間接民主主義と申しまするか、代表的民主主義と申しまするか、この間接民主主義を終戰後の地方行政の原則としておるのであります。この欠陥を是正する方法といたしまして、リコールとか、條例の制定、改廃の直接請求というような直接的民主主義の方式を取入れておることはけつこうではありますけれども、要するにこの直接請求の制度というものは、民主主義の地盤がある程度かたまつて、初めて適切に運営をされるのでありまして、現在のように国民一般がまだ十分に民主的訓練を経ておりませんと、いたずらに煽動者の用具に使われましたり、やじうまの先棒をかつぐなどの混乱を惹起し、政争を激化するという結果を来すだけで、民主政治の進展に何ら貢献するところはないというのが、現在の実情であります。かような現状にかんがみまして、今回直接請求を嚴正、明確に行うように條文の改正をされましたことは、まことに時宜に適したことと思うのでありまするが、この制度につきまして次にお尋ねいたしたいと思うのであります。  面接請求の現状は大体現在御承知の通りでありまするが、戰後、先ほども申しましたように、わが国の政治情勢中央地方を通じて代表的民主主義と申しますか、議会中心の行政政治、これを原則としておるのであります。これを補完いたしますために、ある程度直接民主主義を採用しておるのでありまするが、本質的に申しまして、この議会中心主義と申しますか、選挙によつて長、議員を選んで、これを中心に政治、行政を運用して行く制度と、直接請求のような直接民主主義とはずつと原理的に考えて行けば、背反するもののように思うのでありますが、この二つの制度をどういうふうに調和さして行こうと考えられておるのでありまするか、この直接制度の持つ異議並びに限界につきまして、根本的と申しますか、原理的な当局の御見解を一度お尋ねしたいのであります。さらにこまかい問題でありまするけれども、今度署名などにつきましても、署名の審査基準をこの第七十四條の三で示してありまして、従来は昨日鈴木君から御説明なつたように、形式的なもののみ審査し得たのであります。今般は「詐偽又は強迫に基く旨の異議の申立があつた署名で市町村の選挙管理委員会がその申立を正当であると決定したものは、これを無効とする。」というように、この第七十四條の三の二項におきまして、実質的な審査も行い得るように、條文が改正なつたのでありますが、実質的な審査をなしますためには、相当選挙管理委員会に強制力がありませんと、実質的には審査ができないのであります。その第三項におきまして、「市町村の選挙管理委員会は、署名の効力を決定する場合において必要があると認めるときは、関係人の出頭及び証言を求めることができる。」と書いてありまするが、これは非常に遠慮したような書き方でありまして、ただこれだけでほんとうに二項の実質的な審査ができるかどうか、その点についてひとつ伺いたいのであります。  次に現在のリコール、直接請求の様子を見ておりますると、一旦署名した署名の取消しとか、またその取消しの取消しなどが少くないのでありますけれども、これはこういうふうに書く人が信念がない、ふらふらであるから、そういう結果を来すのでありまするが、一旦署名したものをまた取消したりするようなことができるのでありますか。選挙などにおきましては、一旦投票したものをまた別の人に書きかえるなどということは絶対にできないのでありまするが、その点につきましてお答えを願いたいと思います。  それから副知事、助役、出納長、收入役、これは主要公職でありますけれども、これらの公職にある人が、住民の公僕であることはもちろん違いがないのでありまするけれども、かかる人は議会の同意に基いて長の任命したものでありまして、住民に対して直接政治責任はないものでありまするが、これらにつきましても、リコール制を現在採用しておるのでありますけれども、こういうものを将来除外される考えはないのでありまするか。  それからこの署名によつて発案されましたものを、議会に付議する場合と、住民投票に付する場合とありまするけれども住民投票に付する場合には、何らかの定足数を設けるとか、特別多数の制度を設けるお考えはないのでありましようか。やはりこれは初めから白紙状態でものを決するのではありませんで、一旦決定したものをくつがえすのでありますから、慎重な考慮を要すると思うのであります。それについてのお考えをお伺いしたいと思います。
  36. 小野哲

    小野政府委員 川西委員の御質問に対してお答えをいたしたいと存じます。  まず第一の問題といたしまして、川西委員から、わが国の地方自治制度が一面直接民主制をとつているとともに、一面間接民主制、あるいは代表民主制をとつているが、この間の調整をどう考えているか、また直接民主制の限界はどうであるか、こういうふうな御質問であつたように伺つたのでございます。お説のように、わが国の地方自治制度が間接民主制、言いかえれば、代表民主制を基本といたしまして、それに配するに直接民主制、すなわち直接請求を中心とした制度を立てていることは、御指摘の通りでございます。この問題は、直接請求権の行使の限界の問題ではなかろうかと思うのでございます。その点に関していかなる意図のもとに両者の調整をはかつて行くことになるかという点が、問題になるのではなかろうかと存ずるのでございます。直接請求権の行使が住民基本権の行使であることは申すまでもないのでございますが、同時にまた、その行使が自由でなければならないということも多言を要しないのであります。しかしながら自由であるがゆえに放任していいということには相ならないと思うのでございまして、従つて直接請求権の行使、言いかえれば直接民主制の運営にあたりましては、やはり自由であるとともに、放任であつてはならないという意味においては、一つのわくがなければならぬと思うのでございます。言いかえれば、地方住民の公共の福祉というふうなことが、一つのわくとして考えられるのではなかろうかと存ずるのでございます。今回の地方自治法改正法律案の中で考えられておりますことも、署名の問題を重視いたしまして、権利の濫用にならないように、また詐偽もしくは強迫による署名によつて、惡質な直接請求権の行使が行われるようなことのないように、これを防止して行きたい。正しい直接請求権の行使によつて、正しい民主政治確立方向に持つて行きたいというふうな点が織り込まれていることは、御説明申し上げたような次第で御了承願えることと存じます。従つて今回の改正法律案考え方からいたしまして、直接請求権の要件を拡充し、またはその効果を削減するような改正は、牽も行つておらないのではございますが、先ほど申しましたような放任行為としての直接請求権の行使を認めることは、これは避けなければならないし、また権利の濫用は十分に愼まなければならないことは当然でございますので、その限度においていわゆる法治国における自由も、法のわく内において初めて自由たり得るという限度において、違法ないしは権利濫用の自由は認めることができないという点が、この直接請求、言いかえれば、直接民主制の一つの限界として考えなければならない点ではなかろうか、かように思うのでございます。そういうふうな点から考え合せまして、今回の法律改正の中にも織り込まれているということを御了承願いたいと存じます。  なお署名の問題その他の御質問の点につきましては、鈴木政府委員から御答弁をいたしたいと存じます。
  37. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 署名の点に関しまして、詐偽または強迫による意思表示が無効であるというふうに規定をいたしたわけでありますが、はたしてそういう事実があるかないかということについての実質的の審査権が七十四條の三の第三項で許されておる権限だけでは、はたして十分にやれるであろうかどうかというお尋ねのようでございますが、詐偽または強迫による意思表示というものは、実質的の問題でありますから、署名簿に現われておる署名だけからは全然わからないわけであります。そこで署名の審査が終了いたしますと、一応これを一週間縦覧に供するわけでありますが、その縦覧期間内に必ず詐偽または強迫の意思表示であるということを、本人なり、あるいはその事情をよく知つておる者から申し立てて来るわけでありまして、そういう申し立てがあつたものについてのみこれを審査し、詐偽または強迫の事実の有無を確かめるわけであります。そのことだけでありますので、第三項の関係人の出頭、証言ということは、要するに裁判等の証拠を調べる際の方法と同じことでございまして、こういうような権限を認めることによりまして、今申し上げましたような限度の詐偽または脅迫の意思表示を調べるためには実質的審査が可能ではないかというふうに考えるのでございます。  それからその次の一体署名の取消しを認めるのかどうかという点でございますが、これはお話のように、いやしくも特定の公職にある者を罷免する、あるいは條例の制定をするということにつきまして、責任をもつて自己の署名をいたしますならば、これをみだりに坂消すということは適当ではありません。またこの署名行為は、要するに多数人が集まりまして、一つの合同的な行為としてある事項を請願をする、請求をするということになるのでありますから、その点から申しましても、その中の者がかつてに自己の署名を取消して他の署名者に対していろいろな影響を與えるということも、これはまた適当でないと思うのであります。これらの点から考えまして、署名の取消しについてはおのずから制限がある。またもつと根本的には、およそ公法上の行為に対しては、私法上と同じような意味の意思の自由——私法上の契約の自由ということと同じ意味の公法上の自由というものはないのではないかと考えられるのであります。これらの点から考え合わせまして、署名の取消しを絶対認めないという論も、学者の論としては成立つと思うのであります。しかしながら実際問題として、その署名に基いて一つの公法上の手続が開始せられますまでの間は、これは取消しもある程度認めることが実情に合うのではないか。そこでどこに線を引くかということでございますが、一定数の署名をとむまして、選挙管理委員会署名の審査の要求を出すというとき、すなわち証明を求めるために署名簿を選挙管理委員会に提出するときに、そこから公法上の行為が開始せられるわけでありますから、それ以後は署名の取消しは認めない。しかしその前の段階におきまして、すなわち請求代表者あるいはその、委任状を持つております者が、まだ署名を集めておる段階におきましては、そういう者の了解を得まして自己の署名を取消したいと申し出た上取消すことは、これはまだその段階ではさしつかえないというふうに考えるのであります。それからリコール制度の適用の範囲を、直接選挙によらないところの副知事とか、あるいは福出納長、各種の委員というものにまで及ぼすことについては、多少疑問がありはしないかというお尋ねでございます。これは選任にあたつて住民の直接選挙によつて出て来た者に対して、また住民がこれを呼びもどしてその公職から去らしめるという意味のリコールが一番ぴつたりと来ることはその通りであります。しかしながら議会の同意を得て選ぶものあるいは議会が選挙するというようなものは、やはり非常に重要な公職におるわけでございまして、そういうようなものに対しましては、單純な一般職の地位にある者と違つて地方団体の重要な行為に関係をするものでありまするから、これにリコールを認めるということは、やはり地方自治の本旨から申しましても適当なのではないかと思うのであります。外国の立法例等ではむしろ公務員一般に、すべてリコール制を認めておるというようなところもある次第でございますが、そこまで行きますのはいささかどうかと考えまして、主要公職に関するもののみが、現在リコールの対象になつておるのではないかと思うのであります。  それから第五のお尋ねで、リコールの請求が受理せられましてから、住民の投票が行われるわけでございますが、その投票の際に特別に多数の投票者の要求をしたらどうか、あるいは一定の定足数を定めたらどうかというお尋ねのようでありますが、この点も特定の投票に参加する者の限度を定めるということになりますと、どうしてもある程度の投票強制というようなことを予想せざるを得ません。また住民の三分の一以上の者が署名をいたしておりまするような重要な行為について、投票の定足数に達しないために何回やつても遂に投票が行えない、最終的に事がきまらないということになりましても、これまた困ると思うのであります。また投票、選挙等の原理から申しまして、かりにそれに参加いたします’る者がいかに少くありましても、それに参加することはやはり自由の権利でございまするから、その権利をみずから放棄した者がありましても、これはやむを得ないわけでありまして、投票に出て参りました者だけで、事柄を全体の意思として決定するということは、どうも選挙なり投票の基本理論から申しましてやむを得ない結果だと思うのであります。そういう意味で、投票について特に定足数を設けるということは適当ではない、かように考える次第であります。
  38. 川西清

    ○川西委員 最初に申し上げました直接民主主義の限度について、政務次官から御説明を伺つたのでありまするが、もう少しつつ込んだ、両者の調和といいますか、原理的な立場を伺いたかつたのでありまするが、本日はそれ以上お問いいたしません。あとの具体的なことにつきましての御答弁も大体了承いたしましたけれども、詐偽または強迫に基く異議の申立てがあつたときに初めて実質的審査をする、申立てがなければ放つて置くというのは、條文から解釈すればそうなりますけれども、これは少しおかしいことはないでしようか。  それから立つたついでに、直接請求とは話が違いますけれども、第四條について、お尋ねいたしますが、「地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、條例でこれを定めなければならない。」次に現在までは議会において出席議員の二分の一の議決によりまして、事務所を決定できたのでありますが、今回の改正によりまして地方政治の安定という見地から、三分の二以上の同意がなければならないというように改正條文はなつておるのであります。現在ある役場を変更する場合には、この三分の二以上の同意を要するということはけつこうでありますけれども、二つの村が合併いたしまして新しい村ができた場合に、新しく役場を設けるというような場合には三分の二以上の同意がないとだめだというのでありますれば、北部と南部、東部と西部というようで役場争いなどをやることがございますけれども、ちようど同数でありますれば、両方とも三分の二以上得られないわけでありますから、論理的に法律に即して役場を設置することは絶対にできないということになるのであります。これにつきまして、やはり何とかはけ口といいますか、抜け道を設けておきませんと役場の位置を永遠に定めることができないということになります。これについて御見解を伺いたいと思います。
  39. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 第一点の詐偽または強迫による意思表示につきまして、異議の中立てのあつたもののみについて審査するというのでは不徹底ではないか、狭過ぎやしないかというお尋ねでございますが、この点は実質から申しますと、まさにその通りでありますけれども、これは詐偽または強迫によりますものも、自己の意思に基いて署名しておるわけでありまして、ただその意思を持つに至りました原因が詐偽または強迫による、こういうことでございます。そこで本人あるいはその事情を知つております者から、特に申立てがない場合においては、やはり本人はその意思表示をもつて自分がよろしいと見ておる、こう見なければならぬと思いますので、特に申立てがない限りは、それを無効にするということは必ずしも必要がないのではないか。また意思表示の自由という点から申しますと、そこまで抑えて行くのはどうであるか。一般の意思表示の理論から申しましても、ことにまた方法上の扱いの問題といたしましては、そこまで行く必要はないように思います。要するに縱覽という一つの機械において言うべきチヤンスを與えまして、そのチヤンスにおいて言つて来ないものは、やはりその表面に現われておりまする意思によつて法律上の効果を與えて行くというのが、やはり行き方ではないであろうか、こう考えております。また実際問題といたしましても、実質的に数万の者を全部調べるというようなことは困難でありますので、そういうふうにいたしたわけであります。  それから第二点のお尋ねの、第四條の地方団体の事務所の位置を定める場合、初めて市町村が合併に上つてできた、あるいは分村によつてでき上つた場合はどうなるかというお尋ねでございます。結局、新しく地方団体ができます場合には、まず地方団体の長の役割というものをきめなければなりませんが、これは地方自治法の施行令によりまして、どういう者が長の仕事をするかということはきまつております。その長が、地方団体ができたならば、ただちにその事務を開始するわけでありまして、あらかじめその事跡所を定めなければ——この場合はまだ選挙が行われませんから、議会がないわけでございまして、結局議会が成立しない場合におきましては、その地方団体の長の職務を執行する者が專決処分によりまして、まず事務所を定める、こういうことになると思います。その議会が成立されました場合に、その事務所が不適当でありますならばこれを変更する、こういうことになりますので、第四條第二項が働いて参ります時期と申しますものは、結局議会が成立してから後のことであり、かつすでに事務所ができ上つている状態においてこれを定めるということが、予想せられるのであります。
  40. 川西清

    ○川西委員 さきに問いましたところの、詐欺強迫による分のお答えは、まだちよつと不審でありますけれども、これはまた日を改めてお尋ねいたすことにいたしまして、第四條の專決処分によつて、定めました役場というものは、これはほんとうの役場でなくて、かりの役場ではございませんか。かりの役場ないしは建物はございますけれども法律的に申しますれば專決処分によつてそこで事務をとつているというその役場は、ほんとうの役場ではないのじやないですか。
  41. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 新しく市町村ができました場合において、役場の事務所の位置を專決処分の定めによりまして、長がこれを決定するわけでありますが、その決定は法律上有効な事務所の位置の決定になるのであります。これは第百七十九條を基礎にして、議会において議決すべき事件を專決処分というのでありますから、有効に決定されるわけでありまするただその第三項にございますように、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならないことになつております。この点は、もし次の会議において承認を得られないという場合におきましては、これは長といたしましてはこれを変更するという政治的の責任を負うことになるのでありますが、しかしその場合はすでに議会が成立いたしておりますから、これは條例によつて行う。從つて必ずしも長がその條例提案する必要はないわけでありまして、議会が長の定めました報告を否認いたします場合に、あわせて事務所の位置に関する変更の條例を制定せられればよいわけであります。
  42. 川西清

    ○川西委員 條文に即されての御説明は大体わかりましたけれども、実質的に申して、新しく役場を決定する場合の方が、変更するときよりかえつて重要な問題であろうと思うのでありますが、それにつきまして片方は專決処分、片方は三分の二以上の同意ということは、均衡上少しおかしいのではないかと考える次第でございます。これにつきましては今日ただちにではございませんが、御研究を願いたいと存ずる次第であります。  最後に、また立ちましたついでに申し上げますが、この地方自治法に直接関係したことではございませんけれども政務次官、次長がおられますのでお願いしておきますが、今般シヤウプ勧告によりまして、大体千二百億という数字を示して一般平衡資金を計上することを勧奨しておるのでありまするが、その千二百億の中に補助金的支出のいろいろなものが、どんどん入つて参りまして、伝え聞くところによりますれば、五百億も補助金的な支出が加わつて参りましたがために、ほんとうに純粋に配付税にかわる分は、わずか七百億くらいかないということであります。この七百億でありまれば、さきの議会でほとんど半減されました五百七十七億に対して、今度の補正予算で増額されまする九十億を加えた六百六十七億に対してほんのちよつぴりの増加でありまして、地方財政は強化拡充されるどころか、世間には非常に安定し、強化されたように宣伝され、またシヤウプ勧告におきましては、口をきわめて地方財政の強化を説いておるのでありまするが、その趣旨にもはなはだもとるような結果になると思います。現在各省と自治庁におきまして御折衝の最中か、あるいはどの程度の准行状態でありますか任じませんけれども、今年度におきましても、配付税は、本来千百億余あるはずのものであつたのでありますが、大体その程度の配付税にかわるべき部分が、平衡資金においてもあつてしかるべきものと考えておる次第でありまして、現在正確にはもちろんきまつておしませんでしようけれども、そのもやもやした状態を本委員会に打明けられまして、連絡されまして、本委員会といたしましても、これは私個人の意見でありまするけれども、なるたけいろいろな配付税が入つて来るのを防ぐかあるいは総額において増額するか、どちらかの方法によりまして、純粋に配付税にかわる部分を、ある程度の額を確保したいと考えておる次第であります。近い機会におきまして、その状態委員会説明せられたい、この点お願いする次第であります。
  43. 床次徳二

    ○床次委員 三点ばかり御質問申し上げたいと思います。  第一は、地方議会事務局の問題であります。先ほど政務次官より地方自主性を尊重するがゆえに、あえて法制化せぬというようなお話であつたのでありますがその必要につきましては十分認めておられるようでありますが、私の意向をもつていたしますならば、地方において今日すでに十分に要望しておるのでありまして、この要望しておる事実に基きまして、これを法制化するということは、何ら地方自治性を破壊するものでもないと私は考えておるのであります。これを十分御調査になりまして、もうすでに資料はおありになると思います。小さな町村を除きましてほとんど大部分のところが、全部ができておると思うのでありまして、これはむしろ自主性を尊重しまして、この際法律化されることが適当である、私はかように考えております。この点について御当局意見を伺いたい。  第二点といたしまして、この府県の機構の中の農地部の問題であります。今日農地行政というものが非常に重大な役割を果して、特に農地法の施行に関しましてその仕事をいたしたことにつきましては御承知の通りであります。しかし今後の農地の民主化という問題に関しましては、まだまだ相当残された役割があるように思うのでありまするが、過般承りますと、農地部というものの存在に関しまして、しばしば議論があつたように承りておるのであります。私ども考え方からいたしますると、将来の農地の正しいあり方に対しましては、もつといわゆる農民組合その他の指導の面におきまして、また農業経営の面におきまして、なすべき点が多いのでありまして、これは單に経済部だけの問題ではなしに、やはり農地部あるいはもう少し広い意味の機構において、これを全面的に十分に管轄して行かなければならない余地があるように考えておるのでありますが、これに関しまして当局の御意見を承りたいと存じます。  次に今回の改正法の附則にありまするが、出先機関の整理の問題でありますが、出先に対しまして今回二つの事務所が整理せられることになつているのであります。今日までこの出先機関の問題は非常に強い要望があつたのでありますが、各種のものが依然としてなお残つておるようにも存じます。過去におきまして整理せられましたものがその後いかように運用せられておるか、予期したような効果をあげておるかどうか、あるいは今日まで整理せられておらないものは、いかような理由でもつて整理不可能であるふということについて、あとで報告を承りたいと存じます。  なおもう一つお願いいたしたいのでありますが、ただいま川西委員からお話がありましたように、今日地方自治法というものが非常に詳細をきわめました改正を加えまして、非常に完備しつつあるというふうに見受げるのでありますが、これは要するに形でありまして、その内容といたしまするものは財政の裏づけであると思います。しかしてこの財政の裏づけをなしまする一番重要なものは、ただいまもお話がありましたところの平衡資金その他の問題でありますが、例の問題になつております地方行政調査委員会設置法案、こういうものの経過がどうなつているか、ただいまの税の問題でありますが、こういうことがわかりませんと、非常にりつぱな輪隔だけを私どもいじつておりまして、その中身がちつとも入らない。実は地方自主性を本当に尊重するとすれば、財政の問題に対しましてもつと根本的に、私たちはゆつくり時間をもつて研究いたしたい。地方要望を十分盛り込み得るような審議をいたしたいというように考えておりますが、この法案の提案に対しましてどのような状態にあるのか、この機会にお答えをいただきたいと思います。
  44. 小野哲

    小野政府委員 床次委員の御質問に対してお答えいたします。まず第一の地方議会事務局法制化の問題でございますが、これは先ほどお答えいたしたように、今回の地方自治法の一部改正法律案といたしましては、これを法制化することを避けておつた。しかしながら実際運営上の支障の点につきましては、われわれも十分に認めておるということをお答えいたしたのでございますが、さような意味合いにおきまして、この法制化の点につきましては政府としては、この際法制化することを避けるということにいたしましたことを、ここでお答えいたしておきたいと存じます。  第二点の農地部の問題でございますが、これは床次委員から御指摘のように、農地に関する事務が、なお各都道府県におきましてもございますので、諸般の事情を十分に勘案いたしまして、この改正法律案におきましては農地部は依然として、これを必置部として設けるということに相なつておるわけでございます。  次に出先機関の整理状況でございまするが、御承知のように出先機関の移讓の問題は、種々なる経過をたどつておりますることは、私から重ねて申し上げる必要はなかろうかと存じまするが、ただいまその状況についてどういうことになつているかという御質問であつたように存じまするが、出先機関の整理後、言いかえれば地方庁へ移管後の状況は、目下報告に接しつつあるような状態でございますが、おおむね円滑に進んでおるように見受けられるのでございます。なお詳細の点につきましては、主管部長から御説明をいたしたいと存じます。  最後に御指摘になりました地方自治の強化については、地方財政の裏づけが必要ではないか、この点について一面あるいは事務の再配分等を調査立案いたします地方行政調査委員議会の問題、あるいはまた地方税制改正の問題等について、十分に検討を加える必要がある。こういうふうな御所見のように拜聽いたしたのでございますが、私もまつたく御同感でございます。まず地方行政調査委員会議を設置いたしますことは、シヤウプ使節団勧告書に基きまして、目下準備を進めておるのでございますが、これにつきましては、この国会地方行政調査委員会設置法案を提案いたしまして、御審議をお願いいたしたいと存じております。この内容につきましては、いずれ詳細に御説明申し上げる機会があろうかと存じますが、要は現行の国、都道府県及び市町村相互間の事務の調整の合理化をはかりますとともに、またこれに関連いたしまして、国の補助制度の改正等をも調査立案いたしますために、この調査委員会議を設けまして、内閣及び内閣を経由して国会に勧告をし得る道が開かれておるのでございます。この調査委員会議の任務は、まことに重大であると考えておりますので、シヤウプ使節団勧告書によりますれば、五人の委員をもつて構成することに相なつておりまして、この法律案におきましても三人はそれぞれ地方団体の長の連合会から任命するというふうなことで、詳細はいすれ法律案によつてごらんを願いたいと思うのでございますが、目下関係方面との間で所要の手続を進行中でございますので、近くこの国会提案をいたしまして御審議を仰ぎ得るものと考えておる次第でございます。  なお地方税制改正等につきましても、お求めによりましては、本委員会において財政当局から御説明をいたす用意をいたしておることを申し上げておきたいと存じます。
  45. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの御答弁でありますが、事務局法制化に関しまして、これを法制化ることによつて、今日政府では何か都合の悪いことがおありでしようか。  それから農地部の問題につきましては、今日農地部の活動が、農地法施行その他によつて一段落をしたような感じをしておりまして、あまり活発でないのではないか。将来ほんとうにあるべき農地の民主化の方面に対しましては、あまり意識が低調なのではないかという感じを受けるのでありますが、今後どういうふうにこの点をやつて行かれますか、この点につきまして、も、その方針について承つておきたいと思います。
  46. 小野哲

    小野政府委員 重ねて事務局並びに農地部の点について御質問がございましたが、事務局法制化することが、政府において非常な不都合がある、こういうふうな意味には考えておらないのでございます。ただ先ほど申し上げましたような諸般の事情を十分に考えますと、この際は事務局法制化するということは避けて行きたいという考え方でございます。  次に農地部の問題は、これにはいろいろの経過がございまして、結局のところは農地部を驚くということに結論は相なつたのでありまして、これをいかに今後運営して行くかということは、それぞれの都道府県状況によりまして、必ずしも一概には言い得ないのではないかと考えますし、また私の口からかように運営することが妥当であるということを申し上げますことは、いかがかとも存じますので、将来の、この法律改正後におきまして、農地部の運営の問題につきしましても、われわれといたしましては十分にその推移を見守つて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 床次徳二

    ○床次委員 農地部の問題に関しましては、これは今の自治庁関係では、あるいはお答え困難かと思いますが、農林当局その他の方面におかれまして、地方の農地部の今後のあり方の重点的なものに関しまして、御説明を適当な機会にいただきたいと思います。
  48. 大泉寛三

    大泉委員 きのうも国家公安委員問台について触れたのですが、きようは地方議会の同意によつて主要公務員が就任した場合、これに対して議会がその人物なり、あるいはその責任の立場において、どうも適当な人物でないと認めた場合には、これは不信任をもつて解任することができる、またできるようにしなければならぬと私は思うのでありますけれども、また一面、この議会の構成が改選せられて、つまり改まつた場合、議会意思が前回同意を與えた人物に対して、どうも適任でないというような意思表示をした場合には、解任するのが当然ある。こういうふうに私は思うのでありますが、今日もまだ議会がきわめて物足らない場合において、今後地方議会の強化のために、こうしたいわゆる複雑きわまる公務員のリコール制などをとる必要のないものまでも、リコールをもつて当るというよりも、議会意思によつて解職できるというような方向に行つた方がよろしいのではないか、こうした自治法改正については、政府においてこれの改正意思があるかないかということをお聞きしたいのでありますが、きようは時間もありませんので、次回の委員会の席上で、御答弁を願えればけつこうであります。一応私の要望を申し上げて、御答弁を煩わす次第であります。
  49. 中島守利

    中島委員長 お諮りいたします。ただいま御配付いたしました地方自治法の一部を改正する等の法律案というのは修正案であります。前には法律案として出そうと思つたから、こういう計画になりました。どうかこれは修正案と御理解を願いたい。この第一点は、すでにお諮りをいたしました長不信任の問題について、その後新しくできた議会の不信任の議決権の協議であります。その次は分村の問題で、都道府県の議決を経る必要がないというこの二点であります。  もう一つ御相談申し上げたいのは、都道府県議会並びに特別な大きな市に対する議会事務局設置に対しまして、ただいま種々質問応答がありまして、委員会意思としましては、これを新しく法制化することが適当であろうと考えております。すでに法案は大体坂調べてできております。これを委員会の名によつて修正いたしたいと考えます。この三点であります。しかしこれは諸君の決議権を拘束するものではありません。ただ大体そういう方向に向つて進んで行きたいというのであります。これを御承認を得たいと考えます。  その次には地方税法の一部を改正する法律案としてお手元に配付しました入場税及び不動産取得税の廃止、この二点でありますが、この問題は過日も申し上げましたように、順次事務的に進行したいと考えます。どうかこれもあわせて御承認を得ておきたいと思います。  なお聞くところによりますと、近く地方公務員法も政府の方から提案されるようであります。二三日うちには出るものと思つております。そのためにこの地方自治法の一部改正案を、なるべく早く結了したいと思うのであります。そういうわけでありますが、しかしとにかくきのう初めて委員会に提出されたわけでありまして、きのう説明を聞いたばかりであります。  なお明日は本委員会を休みまして、明後日大体の質問を終了いたしたいと考えます。明日は午後一時から理事会を開きまして、重要な問題についてお打合せをしておきたいと考えます。明後日の午前十時から本委員会を開きまして、なるべくならば、その一日で大体の質疑は終了いたしたいと考えます。どうか提案されました法案に対しましては、十分御研究を願いたいと存ずる次第であります。  本日はこれで散会いたして御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 中島守利

    中島委員長 それでは本日はこれで散会いたします。     午後零時五十三分散会