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1949-11-21 第6回国会 衆議院 大蔵委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十一日(月曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  司君 理事 小山 長規君    理事 島村 一郎君 理事 前尾繁三郎君    理事 川島 金次君 理事 荒木萬壽夫君    理事 林  百郎君       江田斗米吉君    岡野 清豪君       佐久間 徹君    田中 啓一君       塚田十一郎君    西村 直己君       三宅 則義君    宮幡  靖君       中崎  敏君    松尾トシ子君       宮腰 喜助君    河田 賢治君       中村 寅太君  出席公述人         全国財務職員労         働組合中央執行         委員      徳島米三郎君         労働調査協議会         研究員     永野 順造君         日本絹人絹織物         商協会專務理事 沼田 義雄君         全国指導農業協         同組合連合会農         政部長     平尾卯二郎君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法臨時特例等に関する法律案  物品税法の一部を改正する法律案  織物消費税法等を廃止する法律案     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより大蔵委員会公聽会を開催いたします。  本日の公聽会におきまして意見を聞く問題は、本委員会において審議中の所得税法臨時特例等に関する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び織物消費事税法等を廃止する法律案の、税制改正に関する三法律案についてであります。今回の税制改正に関しましては、現在まで種々の論議が闘わされて参りましたが、本日御出席公述人方々におかせられましては、本日の問題について十分忌憚のない御意見開陳お願いいたしたいと存じます。  本日の公聽会におきまして意見を述べていただく公述人方々は、朝日新聞論説委員土屋清君、労働調査協議会研究員永野順造君、日本絹人絹織物商協会專務理事沼田義雄君、全国指導農業協同組合連合会農政部長平尾卯二郎君、全国財務職員労働組合徳島米三郎君、それに商工会議所より一名、全部で六名であります。公述の順につきましては、いまだ出席されてない方もございますので、御出席の順に発言を願いたいと存じます。なお公述人の時間につきましては、一人三十分以内にしていただきたいと存じます。それではこれより公述人意見を拝聽いたすことにいたします。まず全国指導農業協同組合連合会農政部長平尾卯二郎君の発言を求めます。平尾卯二郎君。
  3. 平尾卯二郎

    平尾公述人 全国指導農業協同組合連合会農政部長平尾でございます。主として所得税法臨時特例等に関する法律案に関して、農業団体として考えておりますところを申し上げて、御参考に供したいと思います。  第一の点は、シヤウプ勧告におきまして、農業者等事業所得者に対しまして、勤労所得であるという点を認められまして、一年に一五%の勤労控除を行う。すなわち十月から十二月の三箇月分で三・七五%の勤労控除が認められるということを承知いたしたわけでありますが、今回提出されました法律案にはその点が載つておりません。私たちはこの農業所得性質に関しまして、一般源泉徴收をされます勤労所得等と同じく、勤労所得性質を持つておるという点を前から主張いたしまして、シヤウプ使節団に対しましても、農業団体要望といたしましてこれらの点をお願いをした次第であります。但し一般勤労所得のように二五%を要求するということは、大体むりであろう。それは農業者におきましては、特に主食その他を自分でつくりまして、一般消費者消費者価格で買うわけでありますが、農業者の場合は生産者価格で買うというようなこともございますし、そういう点から二五%はむりかもしれない。二〇%ないし一五%の勤労控除を当然認めるべきであるという主張をいたして参つたのであります。それがシヤウプ使節団の全面的な税制勧告の中に幸いにして取上げられ、認められたわけでありますが、今回の臨時特例に関する法律案には、この点が全然考慮をされていないのであります。これにつきましては、あるいは一月から食糧その他の価格が上るということで、一般俸給生活者が非常に生活の困難が増すという点は認められるわけでありますが、農業者につきましてもやはり同じ事情がございます。四月以降あるいは全面的の税制改革の中で、この勤労控除性質が認められるということは予想されるわけでありますが、少くとも現在の段階におきましても、シヤウプ勧告の示しておりますような農業所得に対する勤労所得性質というものを十分お認めを願いまして、適当に考慮をしていただきたいと考える次第であります。聞くところによりますと、申告税が非常に成績が悪い。だからその罰の意味で、農業者に対しては勤労控除を認めないというようなお話を聞くのでありますが、はなはだ心外なことでありまして、われわれとして特に農業協同組合等は、他の農業団体と協力いたしまして、国家の財政上必要な税金の問題については、全面的に協力いたしまして、現在のところ十月末に二二%ぐらいというお話でありますが、今ちようど米収穫も終りましたし、特に農業につきましては、所得が毎月々々平均して入るということでなくて、収穫のあるときに偏在して収入があるわけでありまして、そういう点は今後協力いたしまして、十分な税収の上るようにいたすわけであります。それを罰則的な考えとして、農業者に対する勤労控除を認めないということについては、はなはだ多くの不満を持つておるのでありまして、重税に悩む農業者に対して、この点についてさらに御考慮お願いいたしたい。この経過につきましては、全国農民は大きな期待を持ちまして、その経過を現在注視しておるところであります。  次に帳簿の整理の問題について簡單に申し上げたいと思います。法律案の第二條に帳簿に関して「記載事項その他必要な事項を定める」というふうに出ておりますが、現在の申告納税は二十二年以降に始まりまして、農業団体はこの申告実施がうまくできるようにいろいろ指導して参り、帳簿記帳運動というものをすでに展開しております。そのために必要な帳簿国税局ごとに、全国農業団体がすでに共同で印刷に付しまして、来年の一月からつけるということに運んでおります。従つてこの法律案によりますと、一月以降にいろいろな措置がとられるように受取られるのでありますが、一月からつけますためには、帳簿を十一月あるいは十二月中に配付をいたしまして、それの記載についていろいろ指導をし、研究をしなければならないのであります。従つてこれらの決定については、なるだけ早くお願いをするということが、われわれとしては望ましいところであります。法律案が通過すると同時に、命令その他によつて定められる事項につきまして、同時に農民の手元にわかりますようにお願いをしたいのであります。  第二点といたしまして青色申告の基礎として、これらの帳簿が必要になつて来るわけでありますが、シヤウプ勧告によりますと、これらの帳簿をつけた者は、この帳簿を見なければ更正決定ができない。減価償却等もこの帳簿をつけた者だけが認められるというふうに勧告されておるわけでありますが、これらの帳簿あるいは青色申告等の内容が、非常に嚴密であるということになりますと、シヤウプ勧告の中で認められますように、一般農民すべての者がこれらの帳簿をつけ得るということは、現在きわめて困難な段階にあるわけであります。従つて経理的な、あるいは税の必要上非常に嚴重な、記載事項その他の必要な事項が定められますと、普通の農民はその恩典に浴さないということが予想されるわけであります。従いまして帳簿についての記載事項その他が、どんな農民でもつけられるように簡單なものにいたしますか、あるいはもしこれらの記載事項が非常に嚴密なものが要求されるということでありますならば、他の一定の標準によつて帳簿をつけるために得る更正決定及び減価償却という二つ恩典を、帳簿をつけ得ない農民に対してもやはり與え得るように、適当に御考慮お願いしたいと考える次第であります。  きわめて簡單でございますが、今回の臨時特例等に関する法律案について意見を申し上げた次第であります。どうぞ十分御考慮の上、御審議をお進め願いたいと考えております。
  4. 川野芳滿

    川野委員長 牛尾君の意見開陳は終りました。ただいまの御意見に対して御質疑があればこれを許します。  御質疑がなければ、次に日本絹人絹織物商協会專務理事沼田義雄君にお願いいたします。
  5. 沼田義雄

    沼田公述人 私は日本絹人絹織物商協会の專務をいたしております沼田と申します。所得税法臨時特例等に関する法律案等は私の專門外でありますので、他の方々の御意見にお譲りいたしまして、私は主として織物消費税法等を廃止する法律案、並びに物品税法の一部を改正する法律案のうち、特にメリヤス製品物品税撤廃する件につきまして述べることにいたします。  織物消費税並びにメリヤス製品物品税撤廃は、業界が多年要望したところでありまして、特に昨年来これが貫徹方につきまして、業界をあげて関係当局に対して強力に要請しつつあつたのであります。今般シヤウプ博士勧告に基きまして、今国会にこれが撤、廃の法案が提出されるに至りましたことは、国民の負担を著しく軽減せしむるとともに、織物類輸出向け内地向けを共通せしむる点におきまして、国家経済上まことに御同慶にたえない次第でありまして、本法案の成立をひたすらこいねがうものであります。この織物消費税並びにメリヤス製品物品税が同様撤廃されますこと自体は、業界多年の要望が実現せられたわけでありまして、まことに業界の福音であるのでありますが、ただその反面において、まことに遺憾なことは、シヤウプ博士勧告原案の発表が、あまりにも早過ぎたということであります。これによつて業界に非常な波紋を生じました。また派生的に現われたもろもろの悪材料が、業界に與えた影響はまことにおびただしいものがあるのであります。これによつてわれわれ業者は去る八月の二十七日、シヤウプ博士勧告の概要が発表されますと同時に、行動を起しまして、引下げまたは撤廃を一刻も早く実施していただきたいということと、さらに実施日現在における業者手持品に対する、引下げ税額に相当する交付金交付について、関係要路に陳情を続けて参つたのであります。この実施日の問題につきましては、なぜそれを希望するかと申しますと、シヤウプ勧告案の中に明年一月一日、現行四割の織物消費税を一割に引下げ、さらに四月一日にはこれを撤廃する。但しもしそれが可能であれば、できるだけ早くこれを実施することを勧告する。さらに特に絹、人絹織物については、それがたやすく行われるならば、九月一日に遡及して引下げるべきであるということがあるからでありまして、このまま勧告文に明記されました一月一日まで放置されておくというようなことがあるといたしますと、まず第一に一般消費者は、引下げまたは撤廃の後まで買控えをいたしまして、取扱い業者もまた当用買いに終始いたしまして、取引停滞するということが一つ。それから取引停滞によつて生産者は苦しまぎれに脱税品の出荷をあえてするようになること。第三にこの脱税品が出まわつて参りますと、正常なる取引価格が、その税なしの安い価格に引きずられて参りまして、業界に無用の混乱を惹起するおそれがある。いま一つ脱税品出まわりによつて、まじめな業者は、いわゆるグレシヤムの法則にのつとりまして、市場外に駆逐されてしまうおそれがある。この四つの理由をもちまして、できるだけ早く実施していただけるようにお願いをいたしたのであります。しかるに今回国会に提出せられました原案を拝見いたしますと、一月一日をもつて全廃ということが明記されております。これははなはだわれわれの遺憾とするところでありまして、できるだけ早く、十二月一日にも御実施を願いたいというように考えているものであります。  ここで特に早期実施の問題について、一言申し上げておきたいと存じますことは、生産並びに卸関係のわれわれ各団体が一致いたしまして、早く実施してくれるようにお願いをいたし、また各方面に要請して参つたのでありますが、さてこれを一歩つつ込んで考えてみますと、生産、卸、小売、または第二次製品生産、卸業者、第二次製品と申しますと、洋服の既製服であるとか、あるいはワイシヤツ等規格製品でありますが、その個々の立場立場によつて、たま同じ卸にいたしましても、絹、人絹卸売業者、あるいは毛織物卸売業者、あるいは既製服卸売業者メリヤス製品卸売業者というように、それぞれ各品種別によりまして、必ずしも同一でないのであります。すなわち生産者織物生産して、その売買契約ができまして出荷する折に、初めて消費税を納税してもよいという立場に置かれておるのであります。従つて税金を納めた、いわゆる税済品手持ちをかかえているというようなことは、避けようとすれば十分避けられ得るのでありまして、消費税が明日撤廃されましても、何らの損失も痛痒も感じない。従つて一刻も早く撤廃希望するのが当然であります。しかるに販売業者の場合におきましては、納税済品ストックをかかえております。また多くの商品をタンクいたしまして、買手の希望に応じまして、選択にまかして商品を供給することが販売業者の使命でありますがゆえに、常時相当量ストックがあります。それがために消費税引下げもしくは撤廃の時期は、できるだけ手持ちの少い時期を希望するのが当然でありまして、必ずしも早期実施希望せない向きもあるのであります。しかるにもかかわらす販売業者が、この生産者方々と歩調を一にして、早く実施してもらいたいということを要望して参りましたことはなぜかと申し上げますると、それは引下げまたは撤廃実施日現在における業者手持品に対して、その税額に相当する交付金交付せられるという前提のもとにおいて同調したわけであります。なおこの交付金交付せられるという建前のほかに、やはり早期実施をせられることによつて、明朗なる取引ができるということも一にはありまするが、業者といたしましては、すでに税済品を多数にかかえておりますので、その実施日現在における交付金交付はぜひともお願いしたい。なおまたそれを前提として、早期実施に賛成して参つたのであります。しからば何ゆえに交付金交付せよというぐあいに主張するのかと申しますと、過ぐる昭和二十一年の九月一日に、従来一割五分でありました絹、人絹織物並びに毛織物を材料としてつくりました第二次製品織物消費税が、一気に四割に引上げられました。またメリヤス製品物品税三割が庫出税変更されました際に、その日現在における販売業者手持量調査いたしまして、その引上税の差額ストツク課税として徴収した現実に照しましても、消費税引下げられました際は、そのストツク品に対しまして、その引下げ税額を返還すべきが当然である。これがすなわち交付金交付せよと主張する第一の理由であります。織物消費税及びメリヤス製品物品税は、消費者負担すべきものを、徴税が容易であるという便宜的な理由から、庫出税になつております。従つて生産者もしくは販売業者が代拂いをしておるのでありまして、これが引下げまたは撤廃されました際には、代拂い税額を代拂いした者に返還することは、あまりにも自明の理であります。これすなわち交付金交付せよと主張する理由の第二であります。  織物消費税撤廃は、政府行政措置変更によるものであります。政府行政措置変更によつて、善意の業者に不測の損害を及ぼすのでありますから、これによるところの損失は当然政府が補償すべきでありまして、切捨てごめん民主主義の現在におきましては、とうてい許さるべきではないと考えます。これすなわち交付金交付せよと主張する理由の第三であります。  なお終戰後酒造税引上げがありましたあと、供米のリンク制として配給すべき酒であるという理由をもちまして、旧税と新税との税差額業者に返還した事実があります。こうした前例をもつていたしましても、もどし税もしくは交付金交付ができぬ理由はないと思います。これすなわち交付金交付せよと主張する理由の第四であります。  そこでそのストツクの量並びにこれが税相当額はどのくらいあるかと申しますると、九月末現在の推定でございますが、現在四割課税をされておりまする絹、人絹並びに毛織物、これを使用いたしました第二次製品布庫総額は大体九十二億円、これが税額概算現行消費税四割、メリヤス製品の三割を、各一割に引下げたといたしまして、その引下げ税相当額は十八億三千二百万円、さらにこれが撤廃されましたあかつきには、残された一割が加算されるわけでありますが、この一割に相当いたします額が大体六億一千万円に当つております。かような巨額の損失は、業界がとうてい負担にたえないところでありまして、特にそのストツクの大部分が、政府命令生産によつて業者がむりにつくらされ、むりに背負わされた品質のきわめて粗悪な品物においておやであります。ぜひとも交付金によつてこの損失を補償されるようにお願いをいたします。  さきにわれわれ業界代表が、大蔵省をおたずねいたしまして、またあらゆる機会に当局に面会いたしまして、この交付金の件を要請したのでございますが、大蔵事務当局といたしましては、第一番目に事情はまことにもつともであるから、目下研究中である。しかし交付額を算定することが技術的にきわめて困難であるということ、それから消費税及び物品税撤廃することによつて、はたしてその価格が下るかどうか疑問である。価格が下らないのに交付金交付するということはおかしい。この二つ理由のもとに、これが実施を回避しようとする傾向にあるのでございますが、この第一の件につきましては、調査並びに算定の四難なことは少しもないのであります。業界はすでに税金引下げまたは撤廃実施日現在の在庫を、明確に捕捉し得る体制を整えておりまして、今や待機の姿勢にあります。各団体におまかせを願えば、何らの支障なく明確に調査、算定してごらんに入れます。その具体的方法をここで述べますと、あまりにも長くなりますので省略いたしますけれども、技術的に困難なりと言うことなどは、いわゆるこれを回避せんとするところの一つの遁辞にひとしいものでありまして、去る昭和二十一年九月引上げの際には、業者をしてあのめんどうな技術的操作をあえて行わしめた当局の頭のよさから考えますならば、まことにたやすいことであると言わなければなりません。  それから消費税物品税を廃止しても、はたして価格が下るかいなか疑問であるというような件につきましては、消費税物品税撤廃の問題が公表せられましてからすでに今日まで三箇月、この消費税問題の未解決によりまして、極端な買控え取引停滞、それに加うるに安値のいわゆる脱税品出まわりなどによりまして、自由価格の絹織物のごときは公表前に影響いたしまして、はなはだしきは五割以上、少くとも二、三割方の暴落を来しております。マル公のある商品でありましても、二割以上の値下りを来しておるものがあるのでありまして、消費税撤廃されましたことによりまして、さらにこの暴落に拍車をかけまして、おそらく年末から年初にかけて、相当数倒産者が出るだろうことが憂慮されておる実情であります。なおこの衣料品というものは、春夏秋冬おのおのその品質流行を異にするものでございまして、シーズンを逃しました場合には、翌年のそのシーズンまでストツクせねばならず、翌年のシーズンにはもう流行がかわつてしまうということになりまして、どうしても見切つて売らなければならぬ。従つて本年消費税関係手持を余義なくされましたならば、もう安値の見切り売りを覚悟せねばならないというのが実情であります。かような実情でありますが、しかし税を撤廃しても価格が下らなければ、交付金交付する必要がないというような言い方は、何としても納得ができかねるのであります。税を引上げたときに、税差額を徴収したのでありますから、税を下げた場合には、その価格が下ろうが上ろうが、そんなことに関係なく返還するのが当然であります。かりに価格が下らずに、交付金によつて利益が生じた場合があつたといたしましたならば、そのときは営業面の税でこれをとり立てればよろしい。この問題につきましては、業界は非常な混乱状態にありますので、通産省繊維局などにおかれましても、この税の撤廃によりまして、業者ストツクに対する損失をいかにして少からしめるかということに、非常に関心を寄せられまして、去る八月以来熱心に御心配をいただいて、ストツクを少しでも多く売り抜けさせようとの親心から、これが策対といたしまして、去る九月二十一日から四割課税のものに限つて、特に暫定措置といたしまして、明年二月末日まで衣料切符の対象からはずして、購買力を喚起するという新しい措置をとられたことは、もうすでに御承知の通りでありますが、なおまた最近は二重価格制度を設けて、この損失をカバーしようと考慮されているのであります。二重価格制度と申しますのは、消費税撤廃と同時に、生産者マル公消費税なしの価階に改めまして、販売業者マル公は税込みの従来の価格に当分の間すえ置いて、そうして手持を売らして行こうという案でございますが、消費税撤廃されましたあと生産者から税抜きの安い価格織物が出て参りますれば、当然安い価格正常価格のものが馴致されますことは当然でございまして、予期の効果は決して期待できないということで、この案はわれわれの方から御返上を申し上げたのでございますが、通産省当局がこのように熱心に業界のためにあれこれと御心配を願いますのは直接業者に接触しておられる関係から、目下業界のみじめな状態を痛切に御承知になつておられる結果にほかならないのでありますが、これに対しまして、大蔵省の御当局ばこの成行きをあまりにも甘くごらんになつているのではないか。われわれの代表大蔵省の御当局に、この業界の衷情を言葉を盡して訴えましても、倒産者が出たら何とかしてやろうと、こう言われるのでありますが、倒産者が出てしまつたあとではもう間に合わないのであります。恐慌を未然に防いで、業者もしくは民衆をしてその堵に安んぜしめるということが善政である。かように考えます。何とぞこの点をひとつよろしく御了承をいただきまして、早く実施していただくということとあわせて、一月一日まで延ばさないで、一刻も早く、実施していただくということとあわせまして、交付金の問題を十分ひとつ御審議お願いいたしたいと存じます。
  6. 川野芳滿

    川野委員長 沼田君の御意見開陳は終りました。ただいまの御意見に対して御質疑があればこれを許します。
  7. 三宅則義

    三宅(則)委員 今織物に関しまする御開陳がありまして、私実は席をはずしておりましたが、前から承つているわけでありますが、実際来年の一月からということがさきに発表せられましたために、往々にして取引が不円滑になり、業者が非常に困つておりますことは、今の説明でもわかつているわけであります。つきましては政府当局は、今おられませんが、私の希望といたしましては、来月の十二月一日から何らかの手を打ちたいというような構想もあるわけでありますが、それに対しまして、業者の方の代表者意見をもう一ぺん承りたいと思います。
  8. 沼田義雄

    沼田公述人 十二月一日にぜひ実施していただきたいと存じます。但しそれには先ほど申し上げましたように、交付金の問題もあわせてお願いをいたしたいと思います。
  9. 三宅則義

    三宅(則)委員 十二月一日から実施するにあたりまして、たとえて申しますと、十二月からは一割くらい、あるいは来年の正月からは全廃、こういうような試案はどうかと思いますが、それに対する構想がありますれば承りたいと思います。
  10. 沼田義雄

    沼田公述人 シヤウプ博士勧告の中にありますように、もし十二月一日から実施するといたしましたならば、ぜひ一割まで下げていただきます。そうして明年一月一日からゼロにしていただきたいということをお願いいたしたいと思います。
  11. 三宅則義

    三宅(則)委員 ただいま沼田公述人の御意見があつたわけでありますが、私どもといたしましては、政府ともよく打合せますが、司令部との関係考慮いたしまして、率直に申し上げたわけであります。なるべく御希望に沿いたいと思つておりますが、今後も資料等がありましたならば、われわれ委員の方にもひとつみんなに配付していただきたいと思いますから、それも参考までに申し上げたいと思います。
  12. 川野芳滿

    川野委員長 ほかに質問がなければ、次に全国財務職員労働組合徳島米三郎君にお願いいたします。
  13. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 徳島でございます。私の申し上げる立場二つございます。一つはこの改正になる税法を実際に実施するところの税務官吏の立場、もう一つは今非常に問題になつております官庁従業員の賃金ベースの問題にからんで、はたして今度の減税案によつて実質賃金が向上するかどうか、こういう二つの観点を中心にして申し上げたいと思います。  その前に、今国会でいろいろ論議されておりまする補正予算に対する質疑を、新聞等によつて拝事いたしますと、こういうふうにシヤウプ勧告によつて税金の問題が非常に大きく取上げられている現在の状態にもかかわらず、やはり税金の問題についてはまだあまり理解が行きわたつていない。国会議員にもまだ十分その理解が行きわたつていないということを痛感するのであります。その一例を申し上げますと、財政演説に対する質疑では、自然増収ということが非常に疑惑を持たれて論議されております。これは大蔵大臣の答弁にもありましたけれども、これを簡單に申しますと、これは結局年度初めにおける見積りを、最近の状況によつて訂正したというのが自然増収でございます。しかしながら今度の自然増収を見てみると、そういうほんとうの状況の変化というよりも、むしろ当初予算のときに、一つの作為的なものがあつた。それを現在修正しておるというふうなことが感じられるのであります。その例を申し上げますと、今度の自然増収のうちで一番大きなものは何かと申しますと、法人税の自然増収が二百二十七億八千九百万円あります。それから勤労所得税を中心にした源泉徴収分の増収が百四十九億五千万円、それを酒税の自然増が百二億、この三、つが大体自然増の中心でありまして、国会に提出されました自然増は二百十三億でございますが、それを内訳で見てみますと、増加するものが五百三十億九千七百万円、それからかえつて反対に減少するもの、つまり見積りを訂正して予算を減少しなければならないものが三百十七億八千五百万円ございまして、差引二百十三億の自然増ということになつております。その五百三十億の自然増の中で、今三つ申しました税金が四百七十九億三千九百万円で約九割、従つて自然増の問題は、この三つの税金がはたしてどういうわけで自然増になつたかということを調べれば、すぐわかるわけであります。ところがこの三つの税金の中でも、中心になつておる法人税の二百三十七億八千九百万円の増収ということは、これはもうすでに今年の四月ころに、当初予算を決定した当時にわかつておつた問題でありますが、この点につきましては私の所属しておる全財でも、当初予算が決定されたときにこの問題を取上げまして、歳入予算の中に法人税が非常に過少に評価されておる。あまり苦労せずに、現在の予算の二倍はとれるということを批評しておきましたが、これは何も労働組合の立場から言うのではなくして、大蔵省の主税局でもこういう見解を持つてつたのであります。その証拠には、大蔵省の人が非常に関係されております財政経済弘報という週刊の雑誌がございますけれども、これにもはつきりと出ております。これは五月九日号の財政経済弘報でありますけれども、これによるとこういうふうに書いてあります。つまり法人税は二百七十二億円であるが、これは最も過少に見積られておる。これは予算額の倍額五百億円は十分徴収し得るよう努力したい。こういうのが大蔵省の見解でございます。従つてこれはもうすでに当初予算が組まれたときに、最初からこの見積りが少い。十分当初予算の倍くらいはとれるということが最初からきまつておつた。この原因は何かと申しますと、最近国民所得の計算が改訂されて発表されておりますけれども、それによリますと、当初予算のときに決定されておつた国民所得の見積りは、法人所得として七百五十億、ところが最近発表された国民所得の計算を見ますと、法人所得は千百九十億になつております。従つて差引四百四十億増加したために、この自然増になつたというのでありますけれども、この四百四十億がなぜふえたか。この理由をいろいろ探究してみますと、いろいろの原因がありますけれども、一番大きな問題は、いわゆる資産再評価の問題ではないか。つまり当初予算のときにもすでに論議されておりましたけれども、それは決定にならなかつた。しかし決定にならないにもかかわらず、すでに当初予算の計上のときにおいては、この資産再評価というものがいつでもやれるように、最初から資産再評価があつたものとして、こういう予算が組まれておつたというふうに考えても、大きな間違いではないと考えます。それからそのほかの源泉徴収の税金にしても、酒税についても、いずれもこれは先ほど申しました財政経済弘報を読みますと、予算額以上徴収できるということが書いてございます。従つてこの問題は当初予算のときに、すでにもう予想されておつた問題でありまして、特に取立てて論議する必要のなかつた問題であります。もし論議するとすれば、なぜ当初予算のときに当然訂正しなければならないものを、ほつておいたかということに向けられるべきであつたと思います。そういうふうに、こういう自然増というような論議一つを見ましても、税金の問題がほんとうに理解されていない。従つて今度のシヤウプ税制の問題にいたしましても、いろいろ問題が含まれております。そうしてそれに対する大蔵大臣の答弁を見てみましても、今の大蔵大臣は税金の專門家で、税金のほんとうの事情を知つているにもかかわらず、答弁は非常に一面を強調して、政府の政策に都合のいいように、今度の場合は貸金くぎづけを押しつけるために、ちようど都合のいいような面だけを強調して、そしてうまく行かなかつた点については、ほほかむりをしてしまつておるというふうな答弁が見受けられるわけで参あります。  その一例を申し上げますと、所得税の今提出されております臨時特例等に関する法律案でございますが、これによつて勤労所得税は非常に軽減になる。新聞によつて答弁を拝見いたしますと、減税は各職種を問わず一律に実施する考えで、特に労働者に対しては思い切つた減税をはかりたいということが、産業経済に出ておるわけでありますけれども、しかしながら今度のこの臨時特例等に関する法律案というのは、まつたくシヤウプ税制の一環としての特例であります。つまり二十五年の一月からの所得に対して、新しいシヤウプ税制を実施するための、一つの暫定的な措置であります。従つてこの根拠になつておるものは、もちろんシヤウプ税制そのままであります。従つてシヤウプ税制全体を考えてみた場合に、いろいろな職種の中で一番減税の恩典にあずかるところの少いものは、労働者でございます。これはいろいろな解説をごらんになればよくおわかりになるように、今度のシヤウプ税制によつて一番損をするのは労働者であります。その根拠を申しますと、今まで二五%認められておつた勤労控除が、今度は一〇%に下ります。そうして現行税法との軽減割合は、労働者の場合が一番割が悪いのであります。そういうふうなシヤウプ税制にもかかわらず、大蔵大臣はこういうふうに特に労働者に対して、思い切つた減税をはかりたいと言つておる。これは明らかに国会議員を愚弄した答弁ではないかと考えます。  次に問題を所得税あるいは織物消費税物品税あるいは取引高税の撤廃、こういう三つの改正案を中心にして、はたして労働者の実質賃金は向上するものであるかどうか、この点について考えてみたいと思います。先般大蔵大臣は参議院におきまして数字をあげて、実質金は、確かに向上するという案を示されております。この根拠につきましてはまだ詳細に聞いておりませんので、私の推測した範囲で申し上げますと、この案は税金の中では、直接税では大体所得税だけを取上げて、地方税について触れていない。これは四月から実施するから触れないというふうに考えられるのでありますけれども、しかしながらこの問題もやはり大きな観点で考えなければならない問題でありまして、現在住民税等におきましても、住民税の課税の基礎になつておるのは、一年の所得でございます。従つて現在立案せられているように、もしかりに地方においても現在の住民税が、今度は地方所得税とかわつて所得税の附加税的なものになり、そうして源泉徴收実施されるということになれば、また別問題でありますけれども、今のように源泉徴収がむずかしくて、やはり一年に二回にわけて徴收されるということになれば、当然一月からの所得に対しては、地方税が新しい改正案によつて非常に増加してかけられるということを、当然考えなければならないわけであります。そうした場合においては、今拂わなくても当然あとでわかつて来るところの税金考慮しなければ、議論にならないというふうに考えるわけであります。大蔵大臣の説明に対しては、その点が中心ではないかと思います。つまりシヤウプ博士が繰返して強調しておるように、今度の税制というものは、ただ一つをつかまえて論議してはならない。つまり税制全体を論議しなければならないという問題であります。今度の減税案は、所得税の中では、勤労所得税たけが補正予算の上では減税になつております。しかし、だからと言つて、これは勤労者に対してのみ減税の恩典があるというふうに考えるわけには行かないのであります。と申しますのは、一月から三月までの所得に対しては、勤労者は毎月とられておるために、もう一月からすぐに減税の恩典があるかのように見えております。しかしながらほかの事業所得の場合におきましては、これは一月から三月、あるいは一月から五月までの所得に対するこの税金、これは六月の終りまでに拂えばいいのであります。つまり勤労者の場合は、税金を営業所得者、あるいは農民の場合よりも、先まわりして税金を納めてしまつておる。従つてこの予算の面では、一足先に減税が実施されておるように見えるけれども、実際問題としては、営業者それは以上の減税が一税金を納める時期はもちろんおそく、そういう面も非常に有利でありますけれども、ともかくもこの補正予算を眺めて、そうして今度の減税案が勤労所得税だけ減税になつておるかのような印象を受けるのは、非常な間違いであります。この減税の恩典は当然営業者全般に、あるいは農民全般にかかる。勤労者以上の減税の恩典が、ほかのものにはもたらされるわけであります。  そういうふうにこの所得税法臨時特例等に関する法律案一つを取上げてみましても、これを慎重に御検討願わないと、次の通常国会に提出されますほんとうのシヤウプ税制の改革案、この問題が当然これにひつかかつて来るわけであります。つまりこの臨時特例は非常に暫定的な、おざなりのような法案であります。しかしながらこのもとになつておるものは、当然シヤウプ税制そのままの案が、この暫定案に現われておるわけであります。この案が決定されるまでには、政府の方から新聞等に発表されておりましたいろいろなシヤウプ税制以上の減税案というものが、全部だめになつてしまう。そうして結局はシヤウプ税制に落ちついてしまつた。従つてこの案の審議というものは、当然あとに予想されるところの本格的な税制改革に対する前哨線のようなものであります。従つてこの点については愼重に御検討あらんことをお願いするわけであります。  その次に今度の減税の中心は間接税であるというふうに、新聞等に論じております。減税の金額から申しましても、その中心は間接税に置かれているようであります。その中でも一番大きな金額が取引高税、それに物品税織物消費税がついて行くわけであります。この間接税の撤廃あるいは軽減が、実際に労働者の家計、あるいは農民の家計に、どれぐらいのいい結果をもたらすかという点については、よく検討して見ないと、非常に大きな誤解を生むもとであります。この前発表されましたシヤウプ案をもとにして、以前、取引高税の撤廃が生計費の上に、どのくらいの変化を與えるものか、一度試算して見たことがございます。その結果によりますと、その資料といたしましたものは、産別の理論生計費、一九四九年の七月分の成年男子の独身者の生計費を基礎にいたしまして計算してみますと、総生計費に対する取引高税の税額が、〇・九%というふうな数字が出たのであります。この計算は一つの仮定でありまして、いろいろ議論があると思いますけれども、いろいろな考え得る限りの方法を使つて計算してみますと、今のような結果が出たのであります。しかもさらに問題は、この取引高税が撤廃されて、はたして物の値段が安くなるかというと、われわれとしてはとうていそういうことは考えられない。と申しますのは、現在この取引高税というのは、消費者に転嫁することを予想した税金でありますけれども、今の購買力の低下、あるいはこの取引高税がわずかに一%という、税率が低過ぎるために、消費者に転嫁せずに、小売商人の負担になつてしまつているような現状であります。従つてこの取引高税の撤廃が、生計費にどれだけ影響するか。これはほとんど考慮にも値しないほどのものではないかというふうに考えられるわけであります。そのほかの織物消費税あるいは物品税の問題にいたしましても、こういう織物消費税のかかる物、あるいは物品税のかかる物を、ほんとうにわれわれの生計費の中からはじき出してみますと、非常にわずかなものであります。つまり現在の生計費というものは、非常に切り詰められておつて織物消費税のかかるような服とか衣類というものは、われわれとしてはなかなか買えない。従つてそれに対する税金は、一年間を通じて見ますとあまり大きなものではない。従つてこれが生計費の上に與える影響も、ほんとうに微弱なものであるということが言えるわけであります。そういうふうな観点から眺めますと、今度の減税というものは、決して労働者の実質賃金を向上させるようなものではない。反面においていろいろな要素から、物価の騰貴が予想されております。もうすでに米価が引上げになることが決定されておりますし、そのほか運賃の引上げ、あるいは電力料金あるいはガス料金、さらに価格補給金の撤廃以外の原因によつて、たとえて申しますと、今度の資産再評価よつて、やがてはいろいろな物資に影響が及ぶ。そのほか取引高税の撤廃にかわつて、今度は新しい事業税というものが、大体取引高税と似たような性質をもつて消費者に転嫁されることが予想されます。この問題は、先ほど取引高税は現実の問題として、あまり転嫁していないと申しましたけれども、この新しい事業税の最も多くかかるのは、大きな工場であります。たとえて申しますと、現在金属工場では、取引高税は売上高に対して一%でありますけれども、これを新しい事業税、附加価値税に直して計算してみると、大体売上高の三%くらいの税金がかかるというふうな計算を立てております。従つて大工場あるいは独占企業の製品が、この新しい事業税、附加価値税を製品に転嫁して、値段を上げて来るということになれば、この面からも物価騰貴が予想されるわけであります。そういうふうにいろいろな面から、今後物価の騰貴が予想されますので、この前大蔵大臣が国会で御答弁になつたような、実質賃金が向上になるということは、長くは続かないわけであります。こういう状態は間もなくくつがえつてしまうわけであります。  次に問題を税務行政の面に移しまして、今度の改正案を論議して見たいと思います。この法案によりますと、青色申告書の制度が一月から実施できるように、法案の整備がされております。この青色申告書によつて、はたしてシヤウプ博士が考えておつたような、いろいろな税務行政面の改善が実施されるかどうかということを、直接税務官吏の立場から考えてみたときに、これは非常に大きな疑問があるのであります。と申しますのは、これとやや似た制度が、現在でも行われております。現在税務代理士がやつておる納税申告の場合に、これは戰時中から継続された制度でありますけれども、税務代理士が全責任を負うものと、納税者が提供した資料だけによつて作成した書類と二つにわけまして、青色と黒色にわけて、責任の限度を明らかにするような制度が、戰時中から実施されております。しかしながらはたしてこれがうまく運営されておるかというと、当初考えられたようにはなかなか実施されていない。税務官吏もそれを信用しないというふうな現状であります。この原因は何かと申しますと、一番大きな理由は、税金が高過ぎるということであります。この帳簿指導ということをシヤウプ博士がやかましく言われましたときに、私はシヤウプ博士に申し上げたことがございます。帳簿指導とか、あるいはガラス張りの営業というものは、いろいろな制度をこしらえたり、あるいはいろいろな罰則をもつて強制しても、実行できるものではない。その一番大きな基礎になるものは、どうしても合理的な税制である。つまり納税者が納められる限度の税制にしなければ、決してこういうものはうまく行かないということを申し上げたのでありますけれども、今度のシヤウプ案による所得税その他の税法を眺めてみると、はたしてこれでうまく行くかどうかについては、大きな疑問があります。私はなかなかうまく行かないだろうと思います。またこれを監視するところの税務官吏にしても、現在の陣容では十分監視できない、こういうふうな現状であります。  この機会に現在の税務機構の現状を申しますと、シヤウプ勧告では、この前行政整理の一環として実施された税務官吏の行政整理、予算定員の二割の首切りを元に返すように、つまり前の人員以上の人員で、税務行政をやらなければならないという勧告がございましたが、これはまだ政府の方に受入れられておりません。この行政整理の時期が済んでから最近になつて新しく專門学校程度以上の卒業者を対象にして、税務官吏の募集をやつております。ところがこの募集に対しては、すでに二、三日前の大阪新聞では、応募者の中に会社から派遣されたスパイがまじつておるというふうな、すつぱ抜きの記事が大きく出ておりました。これは何も今に始まつたことではなくして、戰後からこういう問題がやかましく言われておるのであります。われわれもまた往々にして、そういう事実のあるのに気がついたときもあります。つまり会社が蔭で応援して税務署に入れて、そうして税務署のいろいろな内容を探つたり、あるいは税務署がどういうふうな調査をやろうとしておるかというようなことを探しておる。これはなぜこういう悪例が出たかといいますと、戰後非常に税務官吏の増員が叫ばれ出して、そうしてどんな人でも応募する者さえあれば、みんな採用しておつた。こういう点が非常に悪い例を残しまして、現在でもまだこういう習慣が続いております。そうしてまた現在の応募者に対しましても、この失業のさなかでありますけれども、やはり官吏全体の賃金ベースが低いために、税務官吏については特別職が與えられておりますけれども、それでもやはりほかの民間と比べると給與ベースが低いために、あまり優秀な人が集まらない。これが現在の税務行政を非常に阻害している点であります。  時間がございませんので、簡單に結論をつけたいと思いますが、もう二、三点簡單に申しますと、今度の首切りの中に非常に清廉潔白な者がたくさん首を切られて、現在汚職の摘発を盛んに行われておりますけれども、こういう人が首を切らずに残つておる。こういう非常におかしな行政整理がやられた。この中には署長自身が、君は絶対に汚職をしない。あるいは人の二倍も三倍も仕事をするということはよく知つておるが、しかし言えない事情で首を切るのだというふうな者もあります。あるいはもうボロボロのオーバーを着て、一生懸命にやつておる者もある。こういう人がもう数え切れないほど首を切られておる。そうして今税務官吏の半分ぐらい汚職者が出ておるという税務署もあるほど、この汚職事件が盛んになつて来ておる。また税務署の内部、あるいは国税局の内部では、もうボスの取引所と同じような、非常に嘆かわしい現状もまま見受けられるのであります。こういうボスの暗躍というものか、非常にこの税務行政を阻害しておる。こういう点をほんとうに改善する。現存の税務官吏の現状では、どうしても民間のもつと大きな協力がなければ、完全な税務行政はとうてい考えられないのであります。従つてこれを補強するために、どうしても民間の大きな協力がなければならない。こういうことをわれわれは常に主張し、その実現のために努力して参つたのでありますけれども、今度の勧告案ではその点が排斥されまして、税務官吏を増強する。あるいは税務署の調査能力を増強するという点に主力が注がれておりますけれども、これは言うべくしてなかなか実行のできない点であります。従つてこういう問題につきましても、今度の青色申告制その他の税務行政の改善事項に付随して、十分御検討あらんことをお願いして、私の公述を終りたいと思います。
  14. 川野芳滿

    川野委員長 徳島君の意見開陳は終りました。ただいまの意見に対して御質疑があればこれを許します。
  15. 大上司

    ○大上委員 ただいま徳島公述人によりまして、いろいろ参考になりましたが、特に二、三点お尋ねしたいと思います。  その第一は、まず実質賃金におきまして、今次の改正の諸法案が、労働者については割が悪いというお言葉を使つておられましたが、なるほど一応は肯定できる点もあるし、否定しなければならない点も多々見受けられたのであります。こういうふうな数字は、ごらんの通り特に数字をもつて表わせるものでありますから、特にこれが割が悪いというお言葉でなくて、数字的な書類を頂戴したいと思います。  その次に、他事業におきましては、いわゆる事業所得—勤労者は来年の一月からできる。ところがほかの事業は来年の三月にきまつて、納税時期が六月である。従つて勤労者の方におきましては何らこれでは恩典に浴していないで、事業者の方に恩典があるのだというお言葉でありますが、なるほど税法の施行上から見ますとそうなりますが、われわれの感覚で申しますと、勤労者並びに各事業者は同一的な取扱いであるが、特に勤労者だけに恩典がないというようには考えられないのですが、その間のお考えを聞かせてもらいたい。  その次に、生計費より割出しますと、物品税あるいは織物消費税を軽減しても、大した関係がないという言葉を使つておられましたが、特にこの中にわれわれが生きて行くという感覚から申しますと、衣食住とよく言われておりますが、特に衣類関係がある。この点についてもあまり大したことはない。非常に微細であるという言葉を使つておりましたが、もちろんこの言葉は受取りにくい。この計数的なものをお聞かせ願いたい。  その次は、青色申告制度の問題、すなわち税務代理士が全部責任を負うというようなことによつて、徴税したこともよく存じ上げております。そうすると今次の場合について、何かあなたに特別な御意見がありましたならば、お聞かせ願いたい。  その次に、これをやるにつきましては、今度の予算定員を元に返すというお言葉がありました。これを見ておりますと、特に本年の八月でございましたか、われわれが予算委員といたしまして、徴税目標の調査のために大阪財務局へよく行きましたが、実際の実情を見ておりますと、財務局の人員は約一万人、それで二十四歳以下の人が約七割、しかも実務の経験のある人が同じく七割、こういう実例がありまして、税務行政を実際やつて行くのに、このように年齢がうんと低く、経験が少い人で、予算定員を元にしてやつても、事務運行に不可能はないだろうかと考えておりますが、これに対する御意見をお聞かせ願いたいと思います。  最後に、会社に内報するために、いわゆる応援すると申しますか、そういう税務官吏がおるというお言葉がありました。これは非常にゆゆしき問題であると思います。もしもかような徳島公述人のおつしやるような制度が事実あるならば、われわれがいかにまじめに国会議員として、国民のために法を審議したつて、これが運用で、あるいは会社内部に職員が部分的にでも秘密事項を公表するということになると、大きな問題であろうと思います。税務行政にそういう実例があることは、われわれ国会議員としてゆるがせにできない問題であろうと思いますので、ぜひこれは実例をあげてもらいたい。  もう一つお話でございますが、潔白な者が首切られて、汚職の者が首を切られていないというお話の中に、ボロボロの洋服を着、オーバーを着つつやつておるというお言葉がありました。これは少し見方がどうかと思います。徳島公述人と同じように大阪財務局に不省大上もおりましたが、これで非常に考えて行かなければならぬことは、家の財産といいますか、お父さんの所得等において、自分の月給をもつて生活費を見なくてもいい人は何人もあると考えます。家庭の事情におきまして、十分体面を保てるだけの服装ができる役人もあろうじやないかと考えます。私も現在の全財連ですか、勤務しておつたときのことを考えておるのでありますが、どうもこれは受取れないように考えます。  以上述べましたことについて、参考資料を頂戴するか、あるいはお答えをお願いしたいと考えます。
  16. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 第一の勤労所得の軽減と事業所得の軽減について、具体的な数字を示して書類を出してもらいたいという御意見でございましたが、この点につきまして大蔵省には今度のシヤウプ勧告に付随して、いろいろ計算資料がございます。それには勧告による所得税の軽減税額及び軽減率という表もあります。これを見ますと、この点がきわめてはつきりと出ております。たとえばこの表の中では勤労所得税の場合、軽減割合の一番高いもの、つまり所得に対する軽減税額の高いものから順番に申し上げますと、年所得が二十万円で、夫婦及び子供三人の場合が、所得に対して七%の軽減、これが一番軽減の高いものであります。二番が六・一八%、それから三番目が五・八%、こういうのが一番軽減が多い。ところが事業所得の場合におきましては、軽減割合の多いもの、年所得三十万円以下について見ましても、多いのは一二%、あるいは一一%というふうに、勤労所得の場合に比べますと軽減割合がかなり高いわけであります。  その次の御質問の、勤労者だけが軽減がないというふうに私が申したように御質問されたんですが、この点につきましては、今度のシヤウプ勧告による所得税の軽減は、勤労者の場合でも、どのような勤労者にとつても必ず何らかの軽減は行われておる。その軽減が税率の点において、基礎控除の点において、勤労所得の点において、この三つがうまくかみ合わされて、どの勤労者の場合にも必ず何らかの、たとい一円でも十円でも軽減になるような案になつております。従つてこういう点からいうと、軽減にならないということは間違いでありまして、必ずだれでも軽減になる。しかしその金額が問題であります。  その次の御質問は、衣食住に対する間接税の撤廃が、些細なものであるという私の公述に対して、そうではないという御質問でありますけれども、これは正確な家計簿、あるいはいろいろな公表された書類がない以上、はつきりした結論は出ないのでありますけれども、今われわれの手元にあるものでは、産別の理論生計費がかなり詳しく品目別にいろいろな家計費支出の案を出しておりますので、それに基いて計算すると、われわれのたとえて申しますと洋服にしても、くつにしても、そういうものに一年間に支出する金額というものはほんのわずかなものである。たとえば洋服にすれば、現在のような情勢では五年もあるいはそれ以上も着ておる。従つてこれを一年間に割当てて見ると、そんなに大きなものではない。従つてこの件につきましては、もし御必要があればあとで私どもの計算した資料を差上げますけれども、われわれとしてはそういう計算をやつたわけであります。  その次の御質問は、青色申告につきまして、何かほかにいい案があれば申し述べよという御質問でありますけれども、これにつきましては先ほど申しましたように、一番根本的な問題は、納税者が納められる限度に税法を改正するということであります。われわれの見るところでは、現在のこのシヤウプ税制ではなかなか青色申告が理想通りにできないのではないか。もちろん先に例として申し上げました税務代理士が今つけておる色別による責任限度の表示、これはうまく行つておりません。それにはいろいろな強制的な点もなければ、罰則の規定もない。非常に不完全なものであります。これに比べると青色申告の制度は、さすがにいろいろな罰則の強化、あるいはそれに対する恩典というものが、非常に考慮されております。従つて前と同じような例にも行きませんけれども、しかし根本的な問題が解決されない以上は、やはりこれは人間のやることでありますから、うまく行かないのではないかというふうに考えたわけであります。  次の御質問は、現在首切りで税務行政がどうこういうのでなしに、首切られる前からすでにもう現在の税務官吏の質とか、あるいは量というものが非常に脆弱ではないか。従つてこれは首切りはそう大きなものではないというふうな御質問でありましたけれども、これはいかにも御質問の通り首切る前から脆弱なものであります。しかしその脆弱な税務機構の脆弱な税務官吏の中でも、われわれの眼から見ると、優秀と思われる者が比較的たくさん首を切られておる。中には汚職嫌疑で首を切られておりますけれども、その以外に非常に優秀な者が首を切られておる。従つてこの脆弱な税務機構を一層弱体化さすようなこの首切りに対しては、われわれは反対したわけであります。  次の御質問は、スパイとして税務官吏になつておる者、非常に重大な問題であるというふうに言われましたが、もちろんわれわれも非常に重大な問題だと思います。これは昔から自分の家の税金を安くするために、あるいは自分の親戚の税金を安くするために、税務官吏になつている者もあるというふうなことまで、われわれの職場では話に出たこともあります。具体的な実例と申されましたけれども、この点については具体的にだれがどうということは非常にさしつかえますし、大阪新聞に出ました記事も大きな見出しで出ておりましたので、大きな見出しと中をちよつとのぞいただけで、特に私が注目したのは、この問題を納税者が非常に真劍に考えておるということ、この新聞が出ましてから二、三の納税者の方に会いますと、どの人もこの問題を話題としている。そういう意味からこの問題を特に注目したわけであります。従つて実例については確実につかんでおりません。  最後の御質問の、今度税務官吏の行政整理の中に、ボロボロの服を着ておると言いましたが、これは多少表現が悪かつたのであつて、たとえて申しますと、大上委員のごく近くにおられます神飾税務署で、今度野村愼一という税務官吏が行政整理の対象になつております。この人は奥さんが女医さんであつて、家もそう悪くはない。自分は絶対に納税者からは汚職をしない、収賄をしない。自分は自分の月給だけで生活するのだということを信條にしておりまして、オーバーなんかも破れておるところはつくろつて、それを平気で着て歩いている、こういう人であります。しかしその人は思想的な理由で、今度は行政整理の対象になつたわけであります。そういう実例を申し上げて、一応御質問にお答えしたいと思います。
  17. 川島金次

    ○川島委員 簡單に二点だけこの際お伺いしておきたいと思います。  今度の所得税の臨時特例に関する徳島君の批判を伺つたわけですが、この賃金のくぎづけ、一方物価の上昇、そしてこの程度の所得税の軽減では、勤労大衆の必ずしも実質的な賃金の確保にはならない、こういう点についてはきわめて同感であります。そこでお伺いしたいのは、全財の組合として、現在の経済の実情段階において、勤労所得税をいかに具体的に軽減すべきか、その目標がさだめしあろうと思うのであります。その目標についての具体的なものがありましたならば、この際に示しておいていただきたい。たとえば勤労所得の基礎控除の問題、扶養控除の問題、勤労控除の問題、こういつた問題についての組合としての具体的な施策案があろうと思いますが、それがありましたならばお示しを願いたい。  それからついでにお伺いしたいのですが、よく議会で論議されて今日まで来ておるのですが、政府もしくは国税庁等から全国国税局を通じて、さらに全国の税務署に対して、一定の徴税目標額を通達をするというふうにわれわれはよく聞いておるのでありますが、そういう事柄は実際に行われておるのかということと、それにあわせまして、ことに農業所得等の査定等につきましては、反当収量をあらかじめ財務局で標準を定め、その定めました反当収量の標準によつて税務署長に通達をし、そうして税務署長をして、農業所得の査定をほとんど一律的に行わしめておるというふうにわれわれは感じておるのでありますが、そういう事柄が実際にあるのかないのか。その点だけをひとつこの際お尋ねしておきたいと思います。
  18. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 まず最初の御質問にお答えいたします。企財としては、今度のシヤウプ使節団に対して意見書を提出しております。それは大体全財の大会で決定した全財案でございます。それによりますと、大体考え方としては、構想はシヤウプ案とほぼ似たところはございますが、現行税法と違つて、中小企業あるいは農民を対象にして、少額の事業所得についても勤労控除を認めるという案でございまして、そういう前提のもとに、まず基礎控除、これは年額六万円で勤労控除二五%、これが基礎になつております。これによりますと、現在の給與水準では、特に高いところでは若干税金がかかりまするけれども、官吏の場合にはほとんど税金がかからない、こういうふうな案であります。なぜ勤労控除を別にしたかと申しますと、これはやはり税率の操作の関係で、特に低額所得に対して低い税率を適用できるように、こういうふうな二本建の案を考えたわけであります。こういう案はすでにアメリカの税制でも一時用いられたことがあります。  その次の御質問は、前のように割出目標というものが、現在でもやられておるかどうかという点でありますが、これはごの前の国会で非常な問題になりまして、それ以後国税庁の方でも、今年は目標制度をやらないというふうに申しておりますし、公式的には署長あるいは局長等からも割当がないのだというふうなことも申されております。しかし実質的にはやはりこれに似たようなものがやられておる。つまり一定の徴収見積りというものを各署から国税局に出し、国税局はさらに国税庁に出す。そしてその見積りについても、国税局が納得しないような見積りであつたならば訂正させられる。従つて実質的にはやはり割当に近いようなものがいつでもやられておる。従つてこれが原因となつて、非常にむりな徴税が行われておる。一方においては農業の場合に言われましたように、反当収量というような一本の率が、国税局によつてきめられておる。同じようなごとが営業所得の場合にも、その業態に応じて標準率というふうなものがつくられておる。従つてそれを適用して課税する場合、あるいは各署間の権衡をとると申しまして、低い税務署はこれを引上げるように、国税局の方から指示されるというふうな点で、ある程度の一律的な取扱いが現在でも行われております。従つて現在非常にたくさんな審査未処理件数を残し、そうして非常に多額な滞納を持つておる。これは結局こういうふうなむりな点にもある程度の原因があるわけであります。これは現在非常に大きな問題になりまして、大阪国税局関係では、大阪が全国一に成績が悪いのでありますけれども、その責任者として署長が大体四名ほど、今度の馘首の対象になるというふうな話も聞いております。あるいは責任者が処罰されるようにも聞いております。しかしその原因は何かと申しますと、やはりそのもとは、こういうふうな国税局から一律的な標準が強制され、そうしてそれに基いてそれを達成するために強行した。そのむりが結局こういうふうな滞納額、あるいけ審査未処理ということになつて現われて来たのではないかと思います。
  19. 三宅則義

    三宅(則)委員 私は一、二簡單に御質問いたします。ただいま御説明を伺つたのですが、私の考えております自然増収ということを言つてみますと、自然増収という事柄はどちらかと申しますと、目標額以上に決定することで、自然増収ができるのだというように考えておりますが、その点をお伺いしたい。  もう一つ、はなはだ失礼な話でありますが、今の平均年齢は二十二、三歳くらい、経験年数も二年半というような、弱体の税務行政であると考えておりますが、これを打破するためには相当法人税等について経験を持ち、学識あり、人情、風俗、これに対しましても富んだ知識を持つた者にやつてもらいたい。そうすると二十五、六歳から三十歳の者が中心になつてつてもらいたいと思いますが、これに対する全財の方の実情をお伺いしたいと思います。
  20. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 まず第一の御質問でございますが、自然増収については、これが目標額以上に税金をとるために起るものではないかということでありますが、この点については、今度の自然増収の一番大きいものが法人税、その次が勤労所得を中心とした源泉徴収の所得税、その中で源泉徴収による所得税というのは、これは税務署がほつてつても自然に徴収されて来るわけであります。よけい水増ししてとろうと思つても、所得のないところにはこれはどういうふうにしたところでとれないわけであります。従つてこれを目標額以上にとろうとしてもとれない。また幾らたくさん見積つても、所得のないところにはとれないわけでありますから、これは今の御議論に対して一つの参考になると思います。  第二の法人税の問題でありますけれども、これは先ほど申しましたように、当初予算がきまつたときから低過ぎるということは、法人税関係の者ならだれでもわかつておつた問題であります。現在十月末の徴収実績を調べてみますと、大体当初予算に対して九三・七%、これは去年は十月末現在で予算に対して三七・九%、こういう状況から考えると、これは当然予算額の二倍以上とれるということは、この数字からはつきりわかるわけであります。今度自然増として見積られた金額を、当初予算に加算いたしますと、法人税の改正された予算では、五百億六千万円の予算見積リになつたわけであります。これに対して十月末現在の徴収実績が二百五十五億五千二百万円ありますが、これを改正された予算見積りに対する歩合を見てみますと、五一%になります。従つて前年の十月末の実績三七・九%、これに対しても非常に成績がいいし、またもう一つ考えることは、昨年の三七・九%という徴収実績にもかかわらず、昨年は大体五月末の集計で打切るわけでありますが、実際の収入は三月末でありますけれども、いろいろな手続の都合で五月末に最経的な決定がわかります。そのときには、二十三年度は予算に対して大体一五%以上の徴収があつた。十月末にはわずか三七・九%の徴収しかなかつたが、年度末には一五〇%以上も徴収されたというふうな実情から見ると、今年の自然増の見積りは、決して多額のものではないということがはつきり言えるわけであります。これは別に税務署がむりをしてとろうとしなくても、法人税の方は自然にとれるわけであります。と申しますのは、法人税の中心は何と申しましても、現在国税局で調査を担当しでおります資本金三百万円以上、あるいは所得金額三百万円以上の法人の税収というものが、全法人税収の大体七割以上を占めております。こういう法人についてはあまりむちやをやろうと思つてもやれない。相手が大きな会社であるし、相手もかなり力が強いから、むちやをやれない。従つてこれについてはそう非難されるような問題はないわけであります。  その次の問題は、現在の税務行政が非常に弱体である。これを是正するために、経験者を雇い入れる。あるいは年配者を雇い入れるという御意見でございましたが、この点については私どもも賛成であります。しかしはたしてそういう優秀な人、あるいは経験のある年配者が、今のような給與状態で喜んでやつて来るだろうかということを考えた場合に、この問題は非常に困難ではないかと考えます。従つて現在かかえている人員については、それをなるべく理想に近いように訓練するということが重大な問題でありまして、そしてできるだけそのほかに外部から雇い入れるということも、これに付随して必要になつて来るわけであります。この問題の根本的な解決は、やはり給與その他の関係で、そういう根本的な問題を解決しない限り、なかなか理想通りに行かないということを申し上げたいのであります。
  21. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 簡單に一点お尋ねしたいと思いますが、最近国民の間に税に対する考え方として、税務署員の態度はきわめて不親切である。われわれも何とか税金をごまかそうという気持が、非常に強いと思います。さらに税務関係者の考え方としては、国民はまた非常にごまかすものである。ほんとうの所得申告などというものはするものではないというような考え方によつて、当つているということが考えられておるのでありますが、これは私は一つの常識として認められると思うのであります。そこで税務の実務に当つておられる関係の方たとして、どういう方法でこの国民の考え方をすなおな面に引き直し、さらに税務担当者の考え方も、大衆に対して親切な態度に引き直し得るかという一つの考え方について、具体的な委でもお持ちになつているといたしましたならば、担当者としての御意見を承りたいと思います。
  22. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。現在税務官吏の態度が非常に悪いということは、これはだれに聞いてもその通り言うことでありまして、私どももこれはある程度その通りだと思います。その中でも特に今評判の悪いのは、個人所得税の関係、あるいは取引高税の関係が一番非難が多いだろうと思います。これに比べると法人税関係の方は、まださまでそう非難が起つていないのではないか。ただ態度が横柄だとかどうとかいうことは問題がありますけれども、主として非難は、その態度の横柄に加うるに、非常にむちやな決定をする。実情を見ないで決定をするということに対する非難だと思います。この原因は何かと申しますと、今申しましたように、一つの大きなわくがあつて、たとえばこの業者ではこれくらいの利益があるのだ。あるいはこれくらいの人を使つておればこれだけの收入があるのだという、一つの大きなわくがあります。従つてなるべくそのわくに近い決定をしなければ、その人の成績が悪いということになる。そうすると、どうしても納税者がそのわくに近づいて申告をしないと、これはだめだ。そして自分の與えられた標準に従つて決定しないと、どうしてもぐあいが悪い。課金に対しても、署長に対しても、なかなかぐあいが悪いというところから、やむを得ず、だれもすき好んで税金を高くかけたい者はありませんけれども、自然にそうなつて来る。従つてこういう点についてはある程度一法人税の方では、いわゆる予算額も少いし、そしてうしろからしりをたたかれることも少い。自然仕事の面ではそうむりをしない。これが個人の税金と法人の税金が非常に違う点ではないかと思います。これを是正する道は何かと申しますと、この点の根本的な解決はシヤウプ勧告の中にはつきりと書かれておりますが、税務官吏は納税者を信用しない。そして納税者の方では税務官吏を信用しなくて、いくらまじめな申告をしても、税務官吏はその通り書かないから、最初からさじを投げて、うその申告をする。こういうことがシヤウプ勧告に出ておりますが、その悪循環を断ち切る第一歩は何か。これはシヤウプ勧告にはつきり出ているように、税率を引下げることである。つまり税法をもつと納税しやすく、軽減することであるということが、第一の出発点であると出ております。われわれも当然そうなければならぬと思います。そういうふうに税制全般を合理的にして来れば、当然税務官吏もそんなむりをする必要もないし、またそうあせる必要もないわけであります。また決定にいたしましても、そう何もむりにその年度内に処理することをあせる必要もないし、その能力に応じてやつて行けばいいというふうな余裕ができて来れば、そういう非難はだんだん解消されるのではないかと思います。従つてこういう根本的な問題を解決しないと、今のようなやり方では、いくら教育をいたしましても、なかなかその態度は改まらないのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。
  23. 川島金次

    ○川島委員 時間がないようですから、簡單に先ほどの質問に対するあなたの後答弁に関連してお伺いしておきたいのですが、徴収目標額の割当制というものは、形式的には本年度はない。しかしながら実質的には、お話によると引続き行われているように承つたのですが、先ほどのお話の中で、税務署長の方から、大体国税局の方へ徴収目標額を提出する。この目標額を提出するという前提は、各国税局から命令があつて、その命令に答えて、大体の徴収額を出しているのかどうかということが一つ、それから、その税務署長が提出しました大体の目標額に対して訂正がある場合に、局の方からその合理的な基礎と合理的な算定というものの根拠が明示されて、訂正されて来るかどうかということが一つ、第三番目には、よく申告所得税に対して徴収額が、その目標額をある程度超過する、予算を超過する。そうすると超過された場合に、一体税務署長を通じて税務署員に報奨金を出しているかどうか。もし出しているとすれば、そういう報奨金の率はどういうふうになつておるか。そういう報奨金を出すことによつて、非常に弊害があると私は思うが、その弊害があるかないかということについて所見があれば、それもお願いしたい。それから、そういうことによつて非常にまたむりが生ずるのではないかと思うのですが、それに対する御意見、第四番目には、税率を下げれば税金がとりやすいのだと、シヤウプ勧告にも明らかにされているのですが、今度の特例によりまして、五万円以下二〇%から三十万円までは小刻みに五五%に急上昇する。そしてなるほど形の上においては税率は非常に軽減されたことになつているけれども、はたして三十万円を標準に打切つて五五%という税率の設定の仕方というものが、あなた方の実際の税務行政の実務に携つている立場の者から見て、公正適切な税率になつているかどうかということに対する考え方がありましたらば、この際聞かしていただきたい。
  24. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 まず第一の御質問は目標額—これはいろいろ言葉がありますけれども、ともかく年度初めに税務署の方で見積りをつくつて国税局に出し、国税局はさらにそれを国税庁の方に出す。これは昔から税務署でやられていたのでございます。しかしこれが非常にきびしくなつた。つまり強制的なものがこれに加味されて来たというのは戰後からであります。なぜきびしくなつたかというと、戰争中あるいは戰争前は、税金が今のようには重くなかつた。納めにくくはなかつた。従つて税金問題もそう大きな問題にはならなかつたけれども、特に現在のような徴税困難な時期になると、この目標を強行するということが非常に大きな弊害を伴うということから、この問題がやかましく論議されるようになつたわけであります。問題は、それでは税務署の徴収見積りに対して、国税局はそれを訂正さすが、それに合理的な根拠があるかというと、これはほとんど根拠らしいものは示されません。ただいろいろな勘もありましようし、あるいはその納税者数とか、あるいはその税務署の状況にもよりますけれども、この点についてはほんとうに税務署が納得して訂正するものもあるし、あるいはそうでないものも非常に多いわけであります。ただ一言誤解のないように申し上げたいのは、これは表面は決して強制的でないということが言われます。まことにその通りでありまして、ほんとうに税務署長がそれをつつぱる腹なら—自分の正しいと思うものを最後までつつぱる腹ならば、やはりそれでもやつて行けるわけであります。しかし大部分の税務署長というのは、やはりそれだけの信念も力もないので、国税局から言われるとたいがいはそれに従つてしまう。従つていろいろ陰ではぶつぶつ言いながら、署長会議のような公式的なところでは、ほとんど発言をしないというような点で、これが決定されてしまうことになるわけであります。  それから報奨制度の件でありますけれども、この点についてはシヤウプ勧告の中でも目標額に伴ういろいろな弊害を指摘して、こういうものをきめなければ報奨制度が実施できないというのは誤りであつて、何もこういう目標額をきめなくても、そのほかのいろいろな資料をもとにして、報奨制度は実施できるというふうなことを勧告しておりますが、あれを見ましても、今まではこの目標額が報奨制度の重要な基礎になつて実施されておりました。今回は大体シヤウプ勧告の趣旨に従つて、報奨制度の根拠もかわつてくるだろうと思います。先ほど例に申しました大阪局で四名ほど署長が首を切られたという表面の理由は、目標額突破とかどうとかいうことではなしに、あくまでも審査の未処理の件数の多いところ、滞納件数、あるいは滞納金額の多いところ、こういうのが理由になつて罰を受けたようであります。しかしその根本的な原因は、先に申しましたようにやはり見積りにむりがある。それがこういう原因になつているということが言えるわけであります。  最後の御質問は、税率の刻み方の点であります。特に最高を五五%と押えたことがいいかどうかという点でございますが、この点についてはシヤウプ勧告の中で最も大きな矛盾が、この税率の点に出ているのではないかと考えるわけであります。シヤウプ勧告は非常に合理的にできておりますけれども、この五五%で打切つたという説明は、かなり苦しい説明をしている。ごくわかりやすく申しますと、なぜこの五五%の低い税率にしなければならないか、最高を五五%に押えなければならないかという理由として、シヤウプ勧告があげているのは、まず第一に今高額所得者は税金が高いから、ほとんどみな脱税をしている。従つていくら高い税率をきめても、とれない税金ではしかたないじやないか。従つてこれを五五%に引下げても、所得の捕捉を確実にしてとれば、それの方が実質的にはいいじやないか。こういうのが大きな理由になつております。従つてもし税務機構が非常に完備しておつて所得をうまく捕捉できるならば、この税率は八〇%でも、あるいは九〇%でもいいというふうな意見を述べております。ところがまた別の箇所では、これと反対の意見を出している。と申しますのは、現在五五%に引下げたかわりに、富裕税というものを新たに設けたわけでございますけれども、この富裕税を補完税にしてこの五五%に附加して税金をとる。従つて富裕税の方がうまく行くようになれば、つまり税金をよけい上げてくるようになれば、今度はこの五五%はまだ高過ぎるから、これをもつと引下げるようにしてはどうか。つまりこの所得税と今までの住民税、これを合計して五〇%以下にするように引下げる必要がある。将来はそうしなさいという勧告であります。これは明らかに前の意見の矛盾でありまして、こういうふうにシヤウプ税制というのは、所得の捕捉の上でいろいろなくふうをこらしておりまして、従つてこれをその通り実行して行けば、今までよりは確実に所得の捕捉というものが充実して来るわけであります。充実して来ればある程度この税率を引上げても、すなわち税金はとれるわけであります。しかし充実して来れば、今度は反対に税率を引下げろという意見でありまして、この点非常に矛盾した説明をしておると考えるわけであります。われわれとしてはこの五五%というものは行き過ぎで、やはりシヤウプ勧告でもああいうふうに、日本の現状では富の集中ということを非常に攻撃しておりますけれども、その点からいつてもやはり税金所得税で十分とるべきである。富裕税でとるものと、所得税としてとるものとは、かなり所得の対象も違いますし、またその作用も違いますので、所得税はあくまでも所得税として、正しい税率をきめなければならないと考えるわけでありますので、勧告の一番大きなねらいは、これは外人の税金関係でありまして、今でもアメリカでは、シヤウプ案でも、日本のアメリカ人に対する課税は高過ぎるというふうな不平が出ておるようでありますが、五五%に引下げたという最大の原因は、私の考えますのには、外人に対する課税考慮して、こういう税率をきめたのではないか。従つてわれわれの立場から考えますと、五五%に打切るということは、これは理論的にはあまり合理的な説明がつけられない。不合理であるこういうふうに考えるわけであります。
  25. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 今の川島君の質問の点に関連するのですが、税務署が出す自主的な徴税目標と、国税局でもつて出す目標との差が、非常に大きいものであるかどうか。これに対する見通し、自主的に税務署にやらした場合に、現在国税庁の考えでおる程度の数字は、どうしても出ないという見通しかどうか。実務に携わつておるあなたとしての見解を聞きたい。
  26. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 この点については、一概に全部に当てはめるような御答弁はできないのでありますけれども、たとえば農民課税の場合、これはあまり大きな割当を押しつけましても、実際所得がなければとれないし、またそういうことも実際はあまり行われておりません。差がありましても、それはそう大きな差はありません。一番問題になるのは、やはり営業所得の場合であります。農民の場合でも特に問題になるのは、近郊農村と純農村との開きであります。この差が少な過ぎるというふうな点もあります。それから営業所得の場合において、盛大な業種とそうでない業種との差が少い。こういうふうな点から、非常に不公平な割当が押しつけられる場合がある。従つてある税務署によつては楽々と目標額がとれるところもあるし、いくら一生懸命にやつて税金がとれない税務署もある。従つて税務署ごとに非常に状況が違うわけであります。
  27. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 今のお答えは少し違うのですが、そういうことがあるから、税務署によつては楽々ととれるところもあるし、困難なところもあるという実情ですから、自主的にやらした場含に、全体としては一応ある点まで行けるのじやないか。行けるのなら今言われるような、実質的にむりな割当を上から押しつけるということはやめなければならぬ。しかしそれができないということならば、今やつておる方法もある程度認めねばならぬのじやないか、かように考えられるから、その点を聞きたいのです。
  28. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 この点もやはり予算に関連して来ると思います。昔からそういう見積りを局に出し、局では昔もある程度の訂正をしておつたわけであります。それが大きな問題にならなかつたのは、予算がその当時の担税力に比較して、現在ほど苛酷ではなかつた。従つて多少のむりで大体押し通して行けたのが、現在では税法通りではとれても実際の担税能力から言うととれないのがたくさんある。そこで問題になつたわけです、やはりこの問題は予算と関連して、たとえて申しますと、昨年度の予算でも、最初の政府原案と最終的に国会決定された案とでは、かなり大きな所得税の開きがあります。この一つを見ましても、最初の政府原案は現在の担税力を考えてかなり低い案であつた。従つてこういうふうに突然所得税の予算を変更してしまうと、それに応じて国税庁あるいは国税局では、責任上非常に大きな割当を押しつけるということになるわけです。
  29. 河田賢治

    ○河田委員 今度の改正案で、帳簿の整備の問題でありますが、帳簿をつけてない人が大分あると思う。またその能力のない者もおると思うが、大体において推定でけつこうですが、申告所得について、営業あるいは農業等においては、大体どのくらいまでが現在帳簿を大まかにつけておるかということを、おわかりでしたらお知らせ願いたい。
  30. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その点あまり正確な資料を持つておりません。感じは個人業者の中で、農民の場合は、ほとんど大部分が帳簿をつけてない。営業者の場合でも、帳簿をつけておるのは、メモ程度ならどの業者も必ず何かつけておるのですけれども、実際税務署が行つて提出するような帳博をつけておる者は、一人もないじやないか。これは私の勘ですが、最近の事情はよく知りませんけれども、大体そうじやないかと思います。
  31. 佐久間徹

    ○佐久間委員 先ほどあなたのお話のうち、優秀官吏が整理されるという言葉がございましたが、その優秀官吏ということについてちよつとお尋ねしたい。あなたは物的方面のことをおつしやつたが、私は優秀官吏というものは、物心両方面から考えなければならぬ、こう考えておる。ところがあなたは先ほど優秀官吏のうちに、物的方面の馳走だとか、収賄とか、そういう面についての説明は承りました。しかし精神的方面の話については、遂に開くことができなかつたのでありますが、税務官吏は常に公平無私でなければいかぬとわれわれ考えておる。ところが初めから思想的に、あるいは異なつた観念をもつて徴税に臨む場合が考えられる。そういう場合でも、そういう人を目して優秀官吏であると考えられるかどうか、この点をひとつ……。
  32. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 精神的な面について、何も言わなかつたという御質問でありますけれども、先ほどいろいろな服装のこととか、汚職関係のことを申しましたのは、結局そうした汚職をしない。あるいは服装なんかでも今の収入に応じた服装をしておるということは、そういう人が清廉潔白であるという精神状態を現わしておるのじやないか。ほんとうに今の収入ではそうぜいたくできない。またりつばな服装もできないというのが実情であります。従つてあとで申されました公平無私とか、思想的にどうこうということでありますけれども、公平無私というのは、やはり清廉潔白でなければ公平無私な態度はできない。税務署はとるところであり、たくさん税金をとるのが仕事であります。従つて税金をたくさんとろうとすれば、やはり金持から担税力に応じてとるのが第一の務めであります。従つてこれを思想的な考え方からどうこうというよりは、むしろ現在の税法に従つて、また担税力に応じて課税するということが、税務官吏としては一番必要な精神的な心構えではないかと思います。この精神的の中には、能力的な問題もありますけれども、この点についても現在整理されておる者の中には、たとえば税務署が経験者を講習生にして、毎年講習会をやつておりますけれども、その講習会の成績が一番、二番という者が、やはり整理されておるのでありまして、能力的に言つても非常に優秀な者でも、やはり今整理の対象になつておる。それは思想的な点が非常にたくさんありますけれども、しかしそういう思想的な影響のある人が、はたして現在の徴税を曲げておるかというと、決して曲げていない。そういう人ほど現在の金持からは税金をとり、そうして現在の担税力に応じてあまり苛酷なことをやらないように、納税者の実情に応じた課税をやろうとしておるのは、こういう人ではないかと私どもは考えておつたわけであります。従つてもしかりにこういう思想的な偏見のために、不公平な取扱いということになれば、それは今御質問の趣旨とは反対な行政整理が行われておるということが言えるのでないかと考えます。
  33. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 実は税務査察官の待遇の問題について、この委員会にも陳情書が参つておるのですが、一般の税務署員よりは一階級だけ待遇するという公約があつたそうですが、そういう事実があつたかどうかということ、それから現在の税務署では非常に年齢が若い。経験年数が少いので、徴税関係の教育も相当しなければならぬというのですが、その点について各税務署長なり、直税課長なり、そういう方法をとろうとしても、ほとんどひまがない。そういうような関係から言つて、国税局の総務課あたりに教育係というものを設けまして、税務署をぐるぐるまわつて教育するということが必要でないか、こういう考えを持つておりますが、いかがですか。
  34. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 第一の査察官の待遇の問題につきましては、現実に一般の税務官吏より以上の職階を與えられております。第二の御質問でありますが、税務署をぐるぐるまわつていろいろな指導をしておるのは、監督官という制度がありまして、それが大体全部、国税局におる者でも、東京の国税庁の配下になりまして、まわつております。それはいろいろな税務の能率増進のために設けられた制度でありますけれども、今盛んにやつておるような実情です。この点につきましても、いろいろ税務署でも問題を起しております。仕事の面で意見の対立があつたり、いろいろな問題がありますけれども、しかし税務監督官というものは、税務職員の能力の向上という点よりも、むしろ税務行政のやり方について改善をやつております。税務官吏の能力の向上については、毎年臨時的あるいは定期的に、講習会というものをやつております。これについても非常に大きな非難がありまして、非常に無責任な講習をやつておる。この前広島市の国税局へ行つたときに、講習生が組合の方へ来でそういう不満を申しておりました。つまり実務的なものを聞こうとしても、講師はそんなことは知らぬ。ほかの講師に聞いてもらいたいと言う。ところがその講師に聞くと、おれの関係外だから知らないというように、非常に無責任なことをやつておる。局長に言つてもらえないかというようなことを、講習生が言いに来たこともあります。こういうことはやはり講習生が実質的に、そういう講習会の運営についての意見を出せるような雰囲気をつくらなければだめだと思う。今非常に組合の力が弱くなつて、そういう点がなかなかうまく行かぬ、こういう実情であります。
  35. 佐久間徹

    ○佐久間委員 法人税のことでちよつとお尋ねしたいのでありますが、法人税をつくる予算組立ての当時に、すでに今日の自然増をわれわれは見込んでおつたのだというあなたのお話でしたね。それはどういう根拠についてそういうことをお考えになつたか、その内容を示してもらいた。
  36. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その根拠になりますものは、先ほど申し上げましたように、法人税収の基礎は、今国税局の所管になつてつて、税務署の手を離れた資本金三百万円以上、あるいは純益金額三百万円以上という、税務署でいうと大法人が、実際に税金を納めるかどうかによつて、この法人税収は非常に大きく左右されるわけです。昨年まで法人税の見積りが非常に少なかつた。これはいろいろな資料を検討してみますと、大体戰時中までは法人税あるいはそれに付随した臨時利得税というものを合計しますと、個人の所得税よりむしろ多かつた年度がたくさんあります。大体とんとんであるというふうな状況でありましたが、戰後これががらりとかわりまして、大体所得税の一割程度しか法人税収を見込んでいないというような状況であります。それはなぜかというと、大法人がほとんど欠損であつて、小さな法人だけで法人税収をまかなうという予想のもとに、こういう低い法人税の見積りが立てられたわけであります。ところが昨年の中ごろから、この様子ががらりとかわりました。その原因はいろいろありましようが、たとえば査察部ができて、だんだん大法人についても査察の手が及んで行つた。従つてそれに付随して、大きな法人でもある程度それにやられないような程度の申告を出すようになつて来たことも、一つの原因であります。それから増資するために、ある程度の利益を出さないと、うまく資金が集まらない。そういう原因から、かなり表面上も利益を出すようになつて来た。そういう点もございます。結局昨年の法人税の徴収成績は、前半と後半とを比べてみますと、後半の成績がよくなつておる。先ほど例に申し上げましたように、昨年度では、十月末は予算に対してわずかに三七・九%であつたけれども、これが後半になりますと年度末では一五〇%以上になつておる。そういうわけで年度の前半と後半を比べても、様子ががらりとかわつて来た。そのがらりとかわつて来た原因は、今申し上げましたように大法人の申告成績がよくなつて来たこと、その原因の中には査察部の活動とか、あるいは増資するためにいろいろな利益を出すとか、そういう原因によつてかわつて来た。こういう状況は本年度は当初から当然予想された問題であります。この点につきましては二十三年度の税収についても、われわれが大蔵省の主税局の人と会つていろいろ話をしてみると、昨年度もとろうと思えば大体五百億くらいの税金がとれたんじやないか。二十四年度ももちろんあまり苦労せずに、五百億くらいの税金がとれるということを申しておりました。従つて先ほど申し上げましたように、資産再評価をやつて、大巾に大法人の税金を軽減をしない以上は、最初からとれることは予想されておつたと私は考えます。
  37. 川野芳滿

    川野委員長 午前はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と、呼ぶ者あり〕
  38. 川野芳滿

    川野委員長 それでは午前はこの程度で休憩いたしまして、午後二時から再開いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  39. 川野芳滿

    川野委員長 それでは休憩前に引続き会議を開きます。  引続き公述人の御意見を拝聽いたします。労働調査協議会研究員永野順造君。
  40. 永野順造

    永野公述人 私が今御紹介にあずかりました永野でございます。実は土曜日に公述人になれという御通知を受けて、机の前にすわつてしをひねつていたのです。そうしたら私のところの一番小さい坊主が、お母ちやん、お父ちやんは何しているの。お父ちやんは議会で税金の話をしてくれというので勉強しているのだよ。そうしたら、何だ、税金か、賃金値上げをしなくちや税金なんか拂えつこないじやないか。その話を聞いて、私の頭がすつかりまとまつて、ここでお話することの内容もきまつたわけなんです。まさに負うた子に教えられて浅瀬を渡る式なんですが、実際税金というものは生活費から出て来るのですから、いかに少い税金でもその税金は苛斂誅求でありて、それからいかに厖大な税金であつても苛斂誅求であり得ない場合がある。ですから今度の税制改革でも、少しでも国民の生活を楽にするようにしていただきたい。しかし遺憾ながらそういう面が非常に稀薄であると私は考えます。お話を伺いますと、代議士さんたちの歳費というものは二万八千円だそうですね。これで代議士さんたちの職業的な支出をお支拂いになつて生活がどうでしよう。八千円を職業的な支拂いに差引くと、二万円になります。今二万円の生活というものは、そんなに楽な生活じやないはずです。それからさつき所得税の自然増収という問題があつて、これが見込まれておる。しかし失業者がどんどんできて行つているのです。労働者の数は少くなつておる。それでどうして自然増収ができるか。そうするとここにいろいろな問題があると思う。退職賜金に対して税金をかけられておる。ところがこの退職賜金というものは、失業したあとで失業者がそれによつてつて行く金だと思うのです。なるほど失業保險はありますが、今のような安い賃金の六割しか失業保險はくれません。     〔委員長退席、前尾委員長代理着席〕 ですから失業の明けの日から、失業保險では食えないのです。退職賜金もまた同時に食いつぶさなくちやいかぬ。そうすると、現在退職賜金は出されても、三万円ないし五万円程度なのですが、失業保險が切れるときには、退職賜金も完全に食いつぶされていると見なければならぬと思うのです。そうして今失業したら、半年やそこらで就職ができると考えるのは、よつぽどどうかしている。しかるに生きて行くか生きて行かないかというようなせとぎわを支配するところの、この退職賜金からの税金が自然増収になつておる。私は失業者には税をかけるべきじやないと思うのです。まだほかにも司ると思う。最近失業者が出て来ると、だんだん労働強化をやる。長時間労働が出て来ると、そこに税金がかかり、そこから自然増収が出るのですが、労働者は、もう超過勤務はいやだ、長時間労働をやつても、みんな税金に差引かれてしまうという声を出しているのです。こういうぐあいに所得税の自然増収も、はなはだまゆつばものである。  それでは労働者は今どんなふうに生活しているか。私は東京都内のある大きな工場へ行つて話したことがあります。君たちの生活はどんなふうに苦しいかといつたら、非常に苦しい、一日も早く賃金値上げをやつてもらわなければ困るというのです。一体あなたの収入は幾らですかというと、八千五百円だ。それであなたの世帯は何人ですかというと、五人世帯だ。それではどんな生活をしていますかというと、もう配給だけで、何もとれない。やみ米なんか絶対に買えない。それでは毎日の献立はどんなものですかというと、米があつたら米、なければ麦、そうして副食物は、配給のみその汁に配給のじやがいもが二つつている。これが一家五人の副食物です。そうしてそれが三度々々同じものなのです。これが月収八千五百円の生活なのだろうと思います。ところが今度の控除額では、七千円からの控除で、こんな生活をしている人たちにも、一万三千どれだけかの勤労所得税がかかつている。今度の改事で三百八十円かが軽減されている。ですからこんな生活をしている人でも、やつぱり一万二千数百円の税金がかかつているということです。ですから勤労所得税は、なるほど賃金から差引かれていますが、その足りないところはたけのこ生活をやらなくては、どうにもやつて行けない。それでこの八千五百円の五人世帯の労働者は何と言うかといいますると、もうぎりぎりまで来た、家財もなくなつた、もうどうにもならぬところまで来ていると言つております。ですから勤労所得税が、賃金から現金で差引かれますが、その実はたけのこで支拂われている。家財を売つて支拂われているのだということを、はつきり認識していただきたい。  またある工場で、生活実態調査を私の方でやりました。そうしたらどういう結果が出たかというと、九千円ベースで、ここの労働者は賃金収入の三割が赤字だ。三割は内職で稼ぐなり、副業をやるなり、売り食いをしなければ、どうしても生活ができない。こういう人たちに税金がかかつている。元来勤労所得税が一般化したのは、第一次世界戰争後だろうと思うのです。そしてこれが一割ないし五分に対しても、非常に労働者は苦痛を訴えた。それが日本ではもつと高い勤労所得税がかけられたが、最近ではこの勤労所得税はなるほど次第に少しずつ軽減されている。しかしそれが間接税、消費税にまわつている。これはあとお話したいと思うのです。ですから二万円の生活でも苦しいとなれば、ある程度の生活水準をきめて、それ以上のところで勤労所得税が加わるならともかく、勤労所得税が実は家財を売り拂つて拂われているという事実を、よく認識していただきたいと思います。  第二に織物消費税撤廃なのですが、今労働者たちは食うことに奔命これ努めていますが、着るものに対しても非常に困つている。そして作業衣もつぎが当てられないくらいに困つている。もう着がえがないという声を出しているのが、非常に多いのです。もつと悲惨なのは、ある未亡人の場合ですが、一家が病気で、自分自身いつ死ぬかわからない。そういうところでどういうことを言つているかというと、目をつぶる前に子供たちに一ぺん寝巻を着せて、ゆつくり寝せてやりたいということを言つているのです。着た切りすずめなのです。そういうところに織物消費税撤廃していただくことは非常にありがたいのですが、ここで逆の面が考えられなければいけないと思うのです。織物消費税撤廃されると、飯が食えないときに交換屋へ持ち込むわれわれの衣類が、値段が下るのです。実際そんな人は着物を買うなどということはないので、むしろ着物を売る立場にある人たちです。それで織物消費税撤廃しても、むしろこのたけのこに影響が来る方がはるかに多いのじやないか。昔から国有物資の無料拂下げということがありますが、それが事業団体に拂下げられている。しかし失業者だの、九千円ベース以下の労働者たちにこそ、私は拂い下げらるべきものじやないかと思う。そしてそれは無担保で拂い下げても、どうせ御回収になるのなら、税金の形でも何でも回収できるはずだと思うのです。  最後に物品税の問題ですが、これがずつと見ましたところ、ぜいたく品の税率の下げ方が多い。そうして生活必需品に対する税率の下げ方が少いということが、一つの特徴だと思います。もう一つの特徴は、生産手段の原材料あるいは事務用品の物品税撤廃されているにもかかわらず、消費生活に要するところの物品に対して、まだまだ税金がかかつている。これは一言にして申しますならば、資本家のためには非常に有利な価格ができているのだけれども、労働者にとつてはますます不利な価格ができて行く。こういうふうな価格をつくつて行きますから、通貨というものが国民全体の中をぐるぐるまわらないで、独占資本に独占されてしまつて行く。私は最近の金詰りは、こんな税金関係、こんな物価の関係から、次第に大銀行へ、独占資本の方へ行つてしまうと思うのです。昔は独占資本というものは、生産原料を独占していましたが、今や通貨を独占している。だからこそわれわれの手に通貨が入らないのだ。そこからわれわれ労働者たちの生活の苦しさが生まれている。議員さんたちの二万円ではそういうことはありませんが、われわれサラリーマンの給料というと、昔は二十日間ぐらいは使えた。ところが今は十五日しか使えない。あるいは十日ですつからかんだ。こういうことで急速に、使える日にちが縮まつている。実質賃金が横ばいだ。あるいは上つているなんていいますが、われわれの現実の生活では、実質賃金はどんどん切下げられて行つている。実質賃金が切下げられているばかりでなく、ここの三階から見渡しているとそうでもないのですが、ちまたの陋屋に行くと、人間が今や死にかかつている。至る所餓死者が出かかつているのじやないか。それで私はここで子供のつづり方を読みたい。それはくつみがき屋さん一家なんです。それがいつの間にか、半年たつかたたない間に一家全滅している。それが尋常校の四年生のたどたどしい筆で、描写されている。しかもそこに親子の愛情がにじみ出ていて、読む者をして涙を催さずにはおかない。私は何度か泣いた。ちよつと読んで見ます。   ぼくはいつも、あさかわくんちへ、あそびにゆきました。あさかわくんのおうちは東武線のりつきようのそばでした。   あさかわくんにはお母さんがいなくて、お父さんは、くつみがきやさんでした。あさかわくんと、五つくらいなちいさいいもうととうちでまつているのです。   あさかわくんのお父さんは、ときどき、ちびちやんをつれて、学校へきて、あさかわくんやぼくたちをまどからみていました。いつでもくつみがきのはこをもつていました。かえりには三人で、おうちへかえりました。   きよ年のふゆ、あさかわくんのお父さんは死んでしまいました。あさかわくんは、すつかりやせてげんきがありませんでした。それからあさかわくんが学校へこなくなつたのでぼくがあそびにいつたら、いなかのしらないおばさんがいました。   ちびちやんが、「兄ちやんは死んじやつたよ」といつたので、ぼくはびつくりして、つまんないので、かえつてきました。それからぼくはあさかわくんちへいかなくなりました。   いつかお友だちにきいたら、ちびちやんも死んでしまつたそうです。どうしてみんな死んじやつたのかしら、かわいそうだなあ。  それでお父さんが死んだ前に、生活苦のためにお母さんも死んでいるはずなんです。そうしてお父さんが死んだときには、もう子供もすつかり参つている。そうして淺川君が死んで、今度ちびちやんが死んでいる。実際生活保護法で親子五人五千円で暮している。未亡人の所にも調査に行きましたが、これは生活が保護されているのじやなくて、即刻餓死するのを三箇月か半年延ばさせるくらいにすぎない。今八千五百円にしましても、みそ汁にじやがいもが三度々々の副食物にしかならぬ世の中なんです。それでこういうぐあいにみんな生活のためにあつぷあつぷしている。おぼれかかつている。それで税金は、こんな土左衛門になりかかつている国民の足をひつばるようなものであつては困る。幾らおとりになつてもいいから、ある程度の生活をやらせてほしい。それでないと日本人は、非常に多くの人が、戰争では死ななかつたけれども、戰後の経済のために、三年、五年近くの間に、戰争で死んでおるよりもつと多くの日本の人が死ぬのではないか。私はこれをいつも憂えておるのです。繰返して申します。小さい税金も苛斂誅求になるし、九〇%の税金でも苛斂誅求ではあり得ないことがあるということです。こうした観点から、もう一ぺん税制の改革ができるものなら、考え直していただきたい。私はこう考えます。一応私の公述をこれで終らせていただきます。
  41. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 ただいまの永野君の公述に対して、御質疑がありましたら、これを許します。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 小さい税金も苛斂誅求になるし、九〇%の税金も苛斂誅求になり得ない場合があるということ、これは具体的に言うと、どういうことをいうのですか。
  43. 永野順造

    永野公述人 それはたとえば九〇%の税金を納めても、生命に異状がない。肉体的に破壤されない。何とかこの際を暮して行ければ、それは労働者の立場からいえば苛斂誅求ではないと思います。ところがここに五十円か百円の税金でも、それが結局においては、たけのこをやらなければ拂えないとなれば、これは苛斂誅求じやないか。あるいは必要とあればいつでも出しますが、労働者の中には一食抜いておる人たちが相当多い。失業者に至つては、あぶれた日にはほとんど飯を食つてない者さえおる。そういうときに、そういう人たちの買う品物に税金がかかつておるとしたら、それがいかに少くても苛斂誅求になる。そう私は考えます。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで今度われわれの委員会へ提案されました税制改革の柱は、三つあると思うのでありますが、一つは源泉徴収、これは勤労所得でありますが、源泉徴収の自然増が百四十九億あるわけなんです。源泉徴収の自然増が百四十九億あるということは、名目賃金がずつとそれだけ上つて来ておるのか、あるいは名目賃金はそう上らなくて、退職金というような不時な課税対象がふえたために、本年度の上半期で源泉徴収の勤労所得が、百四十九億の増徴というのが出たのか。まずこの点について意見を承りたいと思います。
  45. 永野順造

    永野公述人 私は税金関係はあまり詳しくないので、その点ははつきりしません。しかしさつき申し上げましたように、退職賜金の課税、それから超過勤労の課税、それからもう一つあります。大体所得税の控除額が全額になつているところが、五人世帯ですと七千円ないし七千五百円になつていたかと思います。ところがさつき申しましたように、八千五百円でもどうしても食えない。おそかれ早かれ賃金値上げをせざるを得ないのです。そうするともう所得税の控除額というのは、はるかに非現実的なものとなつて、適用を受ける者はほとんどいない。そうして一方物価がこれほど上つているのですから、おそかれ早かれ賃金が値上げされる。賃金が値上げされたところで増収になつて行くんじやないかと思います。そこで増収の中には、ある程度の賃金値上げを予想しているのてはないか。むしろ先にまわられている。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこういうことになると思うのですが、この政府源泉徴收勤労所得に対する自然増の百四十九億というものは、大体退職金とかそういうこともあるだろうが、かりに百歩讓つて政府は名目賃金が上るということを予定しているかもしれない。しかしその名目賃金の上る原因は、一つはやはり生活の必要から名目賃金が上るのだから、それへまた税率がかわつて来て、税金でとられてしまつては、せつかく名目賃金が上つたことの意味をなさないではないかということが一つと、もう一つは、その名目賃金が上るについては、実質的に労働強化やいろいろなことが行われておるので、従つて労働強化と名目賃金との比率を見ると、全然従来よりは実質的な賃金は上らないことになるけれども、ただ税金がそれへかかつて来るから、名目賃金は少しくらい上つても、労働階級に対する負担はかえつて重くなるのだ。要するに労働強化による名目賃金の少しの値上りに対して税金をとられるということは、生活の必要から名目賃金が少し上つたにもかかわらず、それへまた税金がかかるということになれば、この政府の本年度百四十九億の勤労所得の自然増というのは、勤労階級全体にとつてはむしろ血と肉をはぎとられるような自然増のように、われわれは考えるのです。そういう名目賃金が上つた裏には、労働強化だとか、そうした生活の必要から出ておる。それが税金にとられるということになると、労働者の手元へ来るものはまた大したものではないので、かえつてだまかされているような形になる。そういうような実情というか、一般の趨勢はどういうようになつているか。御存じであつたら御説明願いたい。
  47. 永野順造

    永野公述人 皆さん御存じのように、名目賃金が上るに従つて実質賃金は下つております。ただその中に一時停滞的な傾向がありました。それは電産の争議あたりから、給與審議会のできる直前あたりまで、若干の違いはありましたが、一貫して、名目賃金が上れば上るほど実質賃金は下つております。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 ところがこれは数字のとり方でいろいろ違うと思うのですが、政府の方は、勤労階級の実質的な賃金は向上しているのだという意見なんですが、国会で出している統計の要覧を見ましても、どうも昭和二十三年の十二月、昨年の暮が実質賃金が頂上であつて、その後ずつと下つているのです。これは国会でつくつている統計です。これを見ても政府の考えている名目賃金も上るし、実質賃金も上つているのだということの意味が、よくわれわれにはとれないのですが、それはあなた方の方ではどういうようにその点考えておられるか。
  49. 永野順造

    永野公述人 実質賃金は上つたか上らないかというような、指数関係で示しているだけです。何ら実質的に説明されていない。そうしてこれは皆さんも御存じのように、戰争以来の政府の手です。戰争が推し進められるに従つて、国民大衆の生活が苦しくなりましたが、内閣統計局の生計費指数で貸金指数を割つた数字というものは、五年間近いですが、一貫して百です。それで実質賃金指数が百になるように、生計費指数も賃金指数もつくられている。私はこう思います。また終戰後の賃金指数、OPSというのは非常に込み入つていますから、はつきり科学的な根拠をつくことは今のところまだできません。しかしだれに間いてごらんになつてもよいと思います。さつきも申しましたように、月給がかつては二十日間は何とか暮せた。二十五日は何とか暮せた。ところが最近では十五日しか暮せない。ある人たちは十日しか暮せない。もつとひどいところになると一週間で右から左にすつ飛んでしまう。ですから内職をやる。物を手離す。それから自分の実家へ応援を頼む。それが今のサラリーマン、労働者の実情であろうと思う。ですから実質賃金指数がどうあろうとこうあろうと、実質賃金指数は急速に低下している。私は断言してはばからないと思います。
  50. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 ちよつと注意しておきますけれども、さつきの御意見に対する質疑にしてください。その範囲を越えないようにお願いいたします。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 御意見に対する質問だと思いますが……。それからもうひとつこういうことを御検討なさつたことがあるかどうか。年末にかけて実は安定帯物資に対する補給金が廃止になつて、それからこれに基いてガスだとか、電気だとか、貨物運賃は上るでしよう。主食の米なんかも来年の一月から一割ほど上つて来るのですが、そういうようにずつと物価が上つて来る。それへ今度の税制によつて、わずかではあるが税金が減ぜられるというのですが、勤労階級全体から見れば、別に滅ぜられるとは思いません。具体的な個人の俸給生活者に対する今度の税制改革による減税の負担減と、そうした年末にかかつて来る物価のいろいろな値上りとを比例してみた場合に、今度の税制が実質的に勤労者の個々的な生活に対して、そうした物価の値上りをもカバーしてプラスになるか。あるいはそういうものを考えると、決して今度の税制改革程度ではプラスの面は浮き上つて来ないのだというような点を、御検討になつたかどうか。実は一昨日の平田主税局長の御説明では、大体生計費三・五%くらいは、今度の税制改革でプラスになるのだと言つておる。そういういろいろな面を入れまして……。ところがわれわれの方は、今言つたいろいろな要素を入れ、さらに地方税の増額、あるいは資産再評価の問題も出て来る。こういう要素を入れると、やはりこれからも吉田内閣の財政政策が遂行される限り、この程度の税制改革では、家庭生活にプラスの面が出て来ないというような結論を持つておるわけです。この点も国会外の権威者である皆さんの方の御意見を、参考までに聞いておきたいと思いますが、どんなようにお考えになりますか。
  52. 永野順造

    永野公述人 私は軽減できないと思います。軽減できないのみか、急速に過重になつている。それは物価か何か知りませんが、先ほどから何度も言いますように、とにかく生活費が非常によけいにいる。幾らしんぼうしてみても、この二、三箇月の詰り方は、科学的に説明できないような詰り方をしている。そうしてそれが少しも緩和されていない。議会中になつたり、いろいろな問題があると、主食配給などは割合によく、それで多少は楽にならなくてはいけないのだが、この秋からこちらというものは、国民の生活は急速に苦しくなつているのではないかと思います。その点は過去四箇年のうちでも、非常に特徴的な傾向を示しているのではないか。主税局長さんは三・七%軽減されるとおつしやつたのですが、私はむしろ急速に過重されていることが認められなくてはいけないと思います。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 政府側では、家計がこれから先プラスの面が出て来るというようなことを、数字の面では操作しているが、生活の実感からいえば、そういうことはとうてい信ぜられない。生活実感からいえば、加速度的に生活が急迫に陥つているのだということを、意見として述べられるのですか。
  54. 永野順造

    永野公述人 そうです。それも実感ではなくて、家計簿をごらんになりますとわかると思います。ただそれを収入の面で補つているのは、たけのこをやつたり、ぶつぱなしたり、借金をやつたりしているのだと思います。  またさつき問題になつておりました実質賃金のことについて、もし御質問がございましたら、何でも御質問に応じたいと思います。私は実質賃金は急速に猛烈な勢いで下つていると思います。それは実質賃金指数なんかの問題ではないと思います。これだけつけ加えておきます。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 指数でなくて、何か具体的な資料とかの説明があるのですか。もしあつたらいただきたいと思います。
  56. 永野順造

    永野公述人 生活必需品の値段は、指数でなくて、実際に買つてみたらある程度わかるのではないかと思います。  それからもう一つは、四年間国民は着物も買わなければ、かさも買わない、修理もしない、そういうふうでやつて来たのです。ここのところでどうしてもくつを修理しなければ、お勤めに行けない。あるいは着物を何とかしなくては、お勤めに行けないというので、どかんと六百円、千円というような支出が、急速に舞い込んでいるのではないかと思います。くつも新調しなければいけないということになりますと、相当な負担になるわけです。それで單にそうした物価という面だけではなくて、生活の流れといいますか、生活の様式といいますか、そういうものからも、数字面には現われない実質低下が来ているのではないか。生活の膨脹が来ているのではないか。そこから実質賃金が急速に低下しているのではないかと思います。
  57. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長代理 ちよつと御報告いたしますが、本日の公述人中、朝日新聞論説委員の土屋清君及び商工会議所からの一名の方は、出席できない旨の通知がありましたので、御了承願います。  以上をもちまして、本日予定いたしておきました公述人中、土屋清君及び商工会議所からの一名を除き、全部の御意見を拝聽いたしました。  ちよつとごあいさついたします。公述人方々におかれましては、長時間にわたりまして熱心に御意見開陳せられ、当大蔵委員会といたしましても己憚のない御意見を拝聽することができ、税法三案に対する審議に裨益するところ、非常に大なるものがあつたことを、衷心から感謝いたす次第であります。  本日の公聽会はこれにて散会いたします。     午後二時五十五分散会