○田中(織)
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本
改正法律案に対して
反対の意思を表明するものであります。本来日本專売公社並びに日本国有鉄道法は、新しい企業形態としての発足をいたしたものでありまして、專売公社法の中にも、これは日本国有鉄道とともに、
経理については公共企業体に通ずる
経理に関する
法律を制定するということを、明記しているのでありまして、公共企業体の共通した問題といたしまして、そうした
経理に関する單行法を制定すべきであるのであります。その本来の公共企業体のいわゆる独立採算制に基いたところの、
経理の自主性を中心といたしました
法律を制定しなければならないにもかかわらず、従来の專売局の会計規則をそのまま踏襲するというところに、まずわれわれが
反対する根本の
理由があるのであります。ことに日本專売公社は、御
承知の
通り本
年度におきまして千二百億、明
年度におきましてもほぼ同額の益金を出しまして、日本の国家財政に寄與するところの特殊なる企業でございます。従いましてこの企業を継続するという建前に立ちまするならば、
経理の面におきましても、他の部門と違つたところの、
相当彈力性のある行き方をさせるべきであることは当然であります。ところがこの
改正法律案にはそういう点がことごとく抹殺せられておるのでありまして、われわれはその意味におきまして最小限度といたしまして、專売公社が策定いたしました
予算につきまして、大蔵大臣がこれを調整するにあたりましては、專売公社のいわゆる民主的にしてかつ企業能率の向上に資するような点を、十分考慮しなければならぬという点を、三十四條の二項に但書としてつけ加えること。
また公社は、もちろん
予算に予備費を計上することにな
つておるのでありまするが、予定いたしました予備費でなおまかない切れない場合が生ずるのでありまして、そういうような場合における予備費に不足を生じた場合の規定も、これだけ事こまかに
経理に関する規定を制定いたしまする以上、当然やらなければいかぬ。ことに專売公社と同時に発足いたしましたところの日本国有鉄道につきましては、今回の
改正案にそうした規定があるにもかかわらず、予備費が不足した場合の規定が本
改正案にはないのであります。そういう意味におきまして、第三十六條の二項といたしまして、新たに公社の予備費が不足した場合におきましては、「
予算の定めるところに従い、專売品の売上額の
増加により
収入の見積りを越える
収入に
相当する
金額を事業のため、直接必要とする経費に使用することができる。」という旨の規定を挿入すべきである。
さらに專売公社の従業員の給與が、絶対に赤字の出ない必す黒字を出すという特殊な性格を持つ專売公社におきまして、なお他の企業体である鉄道公社よりも待遇が惡い。さらに一般の公務員の給與にもはるかに及ばないというような
状態に陥
つておる関係から、われわれは專売公社に働く職員並びに一般従業員の努力によりまして、
生産原価の
引下げが行われ、またこれら職員の努力によ
つて売上量が
増加した等によりまする利益金の
増加分につきましては、待遇改善を含めましたところの職員の厚生施設、その他福利増進のためにこれを使用することを規定する旨をも
つて、四十三條の十三の第四項として、「專売品の
生産原価の
引下げ、売上量の
増加等による利益金の
増加分については、職員の厚生施設その他福利増進に寄與するように使用することに努めなければならない。」という訓示規定を挿入すること。
さらに、
改正法には專売公社の所有する重要なる財産を譲渡し、または交換しようとするときは、必ず国会の議決を経なければならないという規定が挿入されておりまするが、この点は、專売公社は御
承知の
通り公共企業体として、全額国が出資いたしておりまするところの、いわば
国民のものであるという建前から、譲渡もしくは交換する場合のほか、あるいはこれを担保に供する、あるいはまた貸しつけるというような場合においても、当然国会の議決を経なければならぬという規定を挿入すべきであるという点。
さらに最も重要なのは、四十三條の二十一におきまして、專売公社の職員に対する給與準則を定めなければならぬという規定につきまして、われわれは当然公社に給與準則を持つことには
反対するものではございませんけれ
ども、四十三條の二十一の後段におきましては、この給與準則については一事業
年度の国会の議決を経たところの
予算の中で、しかも給與総額を越えてはならないということで、国庫から
予算をも
つて專売公社職員の給與をがんじがらめに縛ろうとすることができる規定を持
つておることに対しまして、これはきわめて不当である。ことに專売公社の職員につきましてはその公共企業性にかんがみまして、憲法で保障されましたところの労働者の基本的権利であります罷業権が奪われておる。そういう代償といたしまして公共企業体労働関係法という單行法が制定されまして、罷業権を奪つたかわりに強力なる調停
委員会、あるいは仲裁
委員会によるところの待遇改善の機会を與えておるのでありまするから、現に專売公社の労働組合から、この公共企業体労働関係法によるところの調停を申し立てられておる段階である。当然給與ベースその他の労働條件が変更されるような
状態にある矢先でありまするから、
予算をも
つて、ことに国会の議決を経た給與
予算で、かりに
補正予算等を出す形による救済方法があるにいたしましても、こういう規定を挿入することは、法制的な点から申しましても不適当であるという見地から、四十三條の二十一の後段を削る。
以上五点の最小限度の修正をわれわれは
考えておるのでありますが、この点につきましては
委員会の
質疑を通じて、
政府側にこれらの点についての修正を行う意思がないかということを、われわれはたびたび質問をいたしたのでありまするが、
政府側ではこの点について明答を與えない。修正に応じられない態度を示されておるのであります。
政府側が現在の段階におきましても、われわれが最小限度專売公社の企業の独立性と
経理の自主制を確保する見地、さらに三万八千余、臨時職員を合せまするならば、四万を越えますところの專売公社職員の福利増進のために、最小限度必要だとするところの修正に応ぜられるならば、われわれは本案に対してあえて
反対するものではありませんけれ
ども、現在の段階におきまして、われわれの最小限度の修正
意見をも
政府側はのむことができない、こういう建前に立ちまするならば、われわれは本
法律案は專売公社の設立の
趣旨を没却して、いたずらに国庫
収入に重要なる関係を持
つているという面で、官僚の会計規則を專売公社に押しつけるところの悪法である。ことにこの点は專売公社法に規定をいたしておりますところの、公共企業体の
経理に関する單行法を制定しなければならない義務を放擲いたしまして、従来の專売局の会計規則を、そのまま公社に押しつけようとするところの惡法であるという建前におきまして、本
法案に対しましては遺憾ながら
反対をするものであります。