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1949-10-28 第6回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十月二十七日       大上  司君    北澤 直吉君       小峯 柳多君    小山 長規君       島村 一郎君    前尾繁三郎君       川島 金次君    荒木萬壽夫君       林  百郎君  早稻田柳右エ門君       内藤 友明君 が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十四年十月二十八日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 大上  可君 理事 北津 直吉君    理事 小峯 柳多君 理事 小山 長規君    理事 島村 一郎君 理事 前尾繁三郎君    理事 川島 金次君 理事 林  百郎君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    佐久間 徹君       高間 松吉君    塚田十一郎君       中野 武雄君    三宅 則義君       山口六郎次君    田中織之進君       河田 賢治君    深澤 義守君  出席国務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         大蔵政務次官  水田三喜男君  委員外出席者         厚生事務官   友納 武人君         労働事務官   海老塚政治君         労働事務官   龜井  光君         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君     ————————————— 十月二十八日  食糧輸入税を免除する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第六号)(参議院送付)  印紙をもつて歳入金納付に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第一二号)(参議  院送付)  日本專売公社法の一部を改正する法律案内閣  提出第一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  未復員者給與法の一部を改正する法律案内閣  提出第五号)(予)  食糧輸入税を免除する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第六号)  印紙をもつてする歳入命納付に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  国政調査承認要求に関する件     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き未復員者給與法の一部を改正する法律案食糧輸入税を免除する法律の一部を改正する法律案、及び印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案の三法案を、一括して議題として質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。林百郎君。
  3. 林百郎

    ○林(百)委員 委員長の許可を得て質問いたしたいと思いますが、この失業保險印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案ですが、これに関して労働省政府委員質問したいと思います。現在の日本日雇い労働者失業者はどのくらいあるかということを、まずお聞きしたいと思います。
  4. 海老塚政治

    海老塚説明員 結局現在の日雇労働者就職状況ということになるであろうと思います。現在公共職業安定所に登録いたしております日雇い労働者は大体十四万人でございまして、それ以外の日雇い労働者を合せますと、約七、八十万人の日雇い労働者があるのではないかと思つております。これの稼働日数でございますが、最近におきましては月平均十八日ないし二十日間くらいということになつております。
  5. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで今失業保險積立金というのですか、日雇い労働者失業者に対する保險金総額、これは今どのくらい用意されておりますか。
  6. 龜井光

    龜井説明員 日雇い保險は十一月一日から施行されまして給付の始まりますのは来年の一月一日からでございます。これに関しますフアンドと申しますか、給付に要します基金はまだ積み立てていないわけであります。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの失業保險法に基く日雇い労働者保險給付額は、どのくらいでございますか。
  8. 龜井光

    龜井説明員 一般の被保險者は八月におきまして約六億円の給付額を支給しております。九月におきまして約八億の給付額を支給しております。
  9. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると一人一日どのくらいになるのですか。
  10. 龜井光

    龜井説明員 平均いたしますと一月に約三千五、六百円でございます。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 これがたとえば六箇月たつと打切りになるとかいう制度になつているのですか。
  12. 龜井光

    龜井説明員 さようです。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで失業保險印紙をもつて納付するというのですが、この印紙をもつて納付するのと、直接納付するのと、あるいは普通の印紙をもつてするのと失業保險印紙をもつてするのとどういう差違があり、どうしてこの法律改正する必要を政府としては感じておつたかという事情を、ひとつ説明していただきたいと思います。
  14. 龜井光

    龜井説明員 失業保險におきまする保險料納付方法につきまして御説明するのがわかりよいかと思います。一般常用労働者につきましては、毎月支拂われます賃金につきまして保險法で定めておりまする百分の二の保險料率をかけまして、そうして保險料額を算定いたします。それを事業主が申告をするとともに、その額を納付いたします。しかるに日雇労働者につきましては、毎日事業主がかわりますし、また毎日賃金の額がかわつて参りますので、そういう一般常用労働者のような方法では非常に保險料徴收が困難でございます。従いまして今回十一月一日から施行になります失業保險法改正によりまして失業保險印紙によつて毎日働いた日ごとに、保險料を納めて行くという方法をとつたわけでございまして、一般印紙とは関係ございません。特別失業印紙というものをつくりまして、それによりまして保險料徴收するという方法をとつておるわけであります。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 この失業保險印紙をもつて納付するというのは一つ方法でしようが、これをもつてして、最近のような非常に中小企業が整理されたり、事業が困難なる状態にあります際に、先ほどつたような失業保險法で規定されている保險金給付するだけの保障が、單なるこういう改正だけで一体できるかどうか。もつと根本的な方策政府としては考えなければならないのではないかと思いますが、その点はどうですか。最近の日雇い労働者雇用主保險料納付金額の変化だとか、それが非常な国難な状態になつていると思いますが、そういう状態を救済する一つ方法として、技術的に失業保險印紙ということを考えたのであろうが、雇い主保險料納付趨勢はどうなつておりますか。
  16. 龜井光

    龜井説明員 ただいまの失業保險印紙をもつて保險料徴收いたしまするのは、事業主保險料負担能力が困難であるという点から、そういうふうにいたしたのでございません。日雇い労働者に毎日支拂いまする賃金から、その本人負担部分である保險料、すなわち賃金百六十円以上のものは三円、百六十円未満のものは二円という保險料を差引くのに、一般常用労働者のように、月の末日に締め切りまして一月間における賃金を出しまして、その賃金保險料率をかけて賃金から差引くということが、非常に技術的にむずかしいものでございますから、従いまして毎日々々印紙保險料を納める。もつとわかりやすく申し上げますと、たとえば一日の賃金が二百円でございますと、その二百円を事業主本人支拂います際に、その労働者負担部分である三円の保險料を差引きまして百九十七円を本人に渡す。そして事業主負担部分の三円と合せて、六円の失業保險印紙を、被保險者手帳に貼付するという納め方で納めるわけでございます。この保險料事業主負担能力の問題は、先ほど申したように十一月一日から施行されますので、まだ事業主において負担能力があるかどうかという実績としては、現われて参つておらぬのであります。ただわれわれの仕事といたしましては、わずか一人について三円の事業主負担でございますので、それほどの困難はないのじやないかというふうな推測をいたしております。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで私の聞きたいのは、最近日雇い労働者失業者が漸増して行きますが、これを今言つた一つ失業保險印紙をもつて納付するというようなことを考えているようですが、このような姑息的な方法だけで、失業保險法保障すべき保險料支拂いが雇い主保險料納付額でまかなえるかどうか。その根本についてお聞きしたいと思います。
  18. 龜井光

    龜井説明員 これにつきましては三円と二円という労働者負担部分と、事業主負担部分でございまする三円と三円、すなわち失業保險印紙は一級六円、二級五円という二種類にわかれるわけでございますが、この五円と六円の保險料額を算出するにつきましては、将来の日雇い労働者失業趨勢その他を勘案いたしまして保險料率を算定する際に十分検討いたしましてきめたものでございます。われわれといたしましては、相当の失業者が出て参りましても、十分この保險によつてカバーし得るだけの財源を確保し得ると考えております。数字的に申し上げますと、毎日十三万人の日雇い労働者に対しまして、保險金を支給することができる財源といたしまして、率を定めたような次第であります。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど日雇い労働者失業者趨勢ですが、今の政府委員説明によりますと、毎日十三万人というのですが、労働省調査によりましても失業者の数が大体一九四九年—今年の一月、二月ごろもうすでに三十一万、四十万というような—これは労働省の推定だけでありますが、もう一つの材料によりまして、安定所事業速報から調べてみますと、本年三月、四月になりますと、求職者の数が五%ずつだんだん増加して行きますし、就職できなくて再来する者が五〇%ずつ増加して行く、一方求人の数は四〇%ずつ減少して行く、失業保險請求者は九九%ずつ増加して行くという数字が私の方で出ているのですが、こういう趨勢に対応する策として、この程度彌縫策でいいかどうか。この根本的な方針、たとえば一般会計から政府補助が必要なら補助するというような方策を考えておるかどうかという点、技術的に一つ改善策としてこういうことも考えられますが、もつと大きな趨勢として失業保險に対してどう考えておるかという問題。もう一つは、今言つた失業者数の問題を掘り下げて聞きたいと思います。
  20. 龜井光

    龜井説明員 失業保險全般の問題に関連いたすと思いますが、ただいま御質問にございました失業者の数の中には、おそらく常用労働者の数も含まれているのではないかと考えております。私が先ほど十三万人と申し上げましたのは、日雇い労働者だけの失業者につきまして日雇い労務印紙をもつていたします保險料の收入によつてまかない得る保險給付というものは、十三万程度であると申し上げましたのは、日雇い労働者だけでありまして、一般常用労働者につきましては、昨二十三年度の決算におきまして約五十七億円の積立金剰余金をもつておりますし、本年の予算におきましては相当の給付金の額を計上いたしております。従いまして一般関係におきましては、今後四十万程度受給資格者すなわち失業者に対します給付財源的な能力を持つておるのであります。従いましてただいま御質問にございました点は、われわれとしましては将来におきましても、失業保險によつて十分その程度のものはカバーし得るのではないかという確信を持つておる次第であります。ただ失業保險適用を受けます者に一定の限界がございまして、たとえば一般の場合におきましては、一般常用労働者につきましては、五人以上の労働者を雇用いたします事業主だけが適用される。従つて五人未満のものは適用されない。あるいは潜在しております失業者が顯在した場合にも適用がないというふうに、失業保險適用を受けない失業者も相当あるわけであります。従つてそういう失業者に対してどういう対策を講ずるかという問題になりますと、これは失業対策事業あるいは公共事業という面におきまして、これを吸收して行くという計画を持つておるわけであります。
  21. 海老塚政治

    海老塚説明員 失業者数字につきましては安定所の窓口に現われましたものの数がございましたので、その数を申し上げます。この数の中には先ほど説明がありました新しく失業保險金を受けるようになつた者、これはたとえば本年の八月におきましては六万人内外の数字を示しておりますが、その後新しく失業保險を受けるようになつた者、それから従来失業保險を受けている者で安定所に参つておる者の数、それから失業保險適用を受けないで安定所常用求職申込みをした者、それから先ほど申し上げました安定所に登録をいたしております日雇い労働者十二万、十四万の数、これら全部を含めた数字でございますが、安定所に参つております求職者の数を申し上げますと、六月は六十万人、七月は六十八万人、八月は七十九万人と逐月増加いたしております。そのうち就職いたしております者の数は六月が十三万入、七月が十二万人、八月が十三万人、こういう状況でございます。従いまして未就職として残ります者の数は六月が四十七万人、七月が五十六万人、八月が六十五万人となつております。それからこれは別の総理府統計局で行つております労働力調査におきます失業者の数は、六月が三十六万人、七月が三十八万人、八月が三十五万人、こういう数字になつております。
  22. 川野芳滿

    川野委員長 ちよつとこの際御報告をかねましてお諮りをいたします。印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案、及び食糧輸入税を免除する法律の一部を改正する法律案の二案につきましては、現在まで予備審査として審議して参りましたが、ただいま本付託と相なりましたので、これを本審査に切りかえて質疑を続行いたしたいと存じますが、この点御異議、ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  23. 川野芳滿

    川野委員長 御異議がないようでございますからさよう決定いたします。質疑を続行いたします、林百郎君。
  24. 林百郎

    ○林(百)委員 大体失業者の数の説明がありましたが、そこでもう一つ数字があつたらお開きしたいのですが、今度は失業者のほかに定安所数字でもしわかりましたら新規求職者、それから求人の方、それと失業保險請求件数、これがもしわかつたらこの数字をひとつ……
  25. 海老塚政治

    海老塚説明員 求人の数を申し上げます。安定所に参つております求人の数を申し上げますと、四月が四十一万一千人、五月三十三万人、六月二十六万八千人、七月二十四万九千人、八月二十四万九千人となつております。それから新規安定所求職を申し込みました数字は今手元にございませんので、明日でもお配りいたしたいと思います。
  26. 龜井光

    龜井説明員 失業保險関係におきまして安定所離職票を受けつけました件数を申し上げますと、四月二万九千七百三十九、五月で三万八千五百四十八、六月で五万百七十八、七月で六万七千九百八十二、八月で六万八千六百八十、八月の分が一番新しいと思います。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 ついでに伺いますが、このうち実際に失業保險給付するようになつた数は幾らですか。
  28. 龜井光

    龜井説明員 これらのものが初めて給付を受けるようになりました数を、関連いたしまして申し上げますと、四月で二万三百七、五月で三万五百四十九、六月で三万五千七百四、七月で五万三千七百六十八、八月で六万三千百二十八という数字になつております。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 私ばかりであまり長くなつても何だと思いますが、どうですか委員長、一法案ずつ質疑をするようにしていただけますか。私一人ということになると、三法案質問して行きまして大分長くなりますから、一法案ずつにしていただいて交替して、質問一つずつ続けるということでどうですか。
  30. 川野芳滿

    川野委員長 ただいま林君から一法案ずつ質疑を続行したいという動議が出たのでございますが、いかがでございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 川野芳滿

    川野委員長 御異議がないようでございますので、そういうことにいたしまして、まず印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたしまして、質疑を続行いたします。
  32. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に厚生保險特別会計の方であります。これは積立金を使用したいというのですが、この積立金がどのくらいありますか。
  33. 友納武人

    友納説明員 ただいま積立金は五億一千五百万円でございます。
  34. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでその他の経費財源として使用したいというのだが、積立金を充てたいと思うその他の経費というのはどのくらいになつていますか。
  35. 友納武人

    友納説明員 ちよつと御質問の趣旨がわかりませんが、その他の経費とおつししやると何ですが。
  36. 林百郎

    ○林(百)委員 従来は積立金健康保險事業福祉施設費のみに限定されておつたので、これをその他の経費財源、たとえば保險医に対する施設とか、—そういうことだと私は思う。そこで、積立金を流用したいと思う健康保險事業福祉施設以外の、赤字になつている経費はどのくらいあるかというのです。
  37. 友納武人

    友納説明員 よくわかりました。その他の経費と申しますのは、御承知のように医師に対する支拂いに充てたいのです。従つて保險給付費ということであります。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 それが大体どのくらいですか。
  39. 友納武人

    友納説明員 総額全部を充てるわけでありますので、五億一千五百万円を全部その経費に充てられる。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 充てられる方が五億で、赤字で五億ならちようどいいのですか。
  41. 友納武人

    友納説明員 本年はそういう予想であります。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 保險医に対する給付金で不足と考えられるものは五億程度ですか。積立金だけで補充すればあとはいいという考えですか。
  43. 友納武人

    友納説明員 本年度歳入の大部分でありますが、歳入全部を百四十六億と予想しております。その中で百四十億を保險料收入によつてこれを得まして、残りの五億一千五百万円を積立金から充当したいというのが案であります。従いましてこの歳入に見合いまして、歳出の方もその合計が百四十六億になるわけであります。ただこれは本年の見通しでありますので、年度末にどういう結果が出るか確定的にはわかりません。昨年におきましては約十四億の赤字が出ました。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 この保險医に対する保險料金支拂いは、非常に問題になつておりますし、保險医の方も大きな関心を持つている。われわれの計算するところによりますと、昨年はこれが十四億でしたが、今年はおそらく三十億以上くらいになるのではないかという数字も出ている。これを五億程度積立金を流用することによつて解決し得るかどうか。この点はどうですか。
  45. 友納武人

    友納説明員 ごもつともな御質問でありますが、社会保障制度審議会というのがございまして、ここに厚生省の方から説明を求められて出した資料によりますと、約二十二億の赤字が出るだろうということであつた。三十億と申しますのは、保險料率が三十億の資料を出したときよりも現在は上つておりますので、差ができております。現在におきましては千分の五十五の保險料率になつておりますので、約二十億前後の赤字というふうに予想したのであります。その後いろいろ大蔵当局等研究をいたしました結果、これをどうやつて埋めるかという問題につきましていろいろ案を練り直しました。あるときには国庫補助金の増額によつてこれを埋めるべきであるというような経過もたどりましたが、いろいろ研究の結果、保險料をとる基準になる労働者標準報酬というのがございますが、これは事業主労働者賃金健康保險法なり、厚生年金保險法なりに規定いたしております等級表にあてはめまして、申告するものであります。これが実際の賃金よりは低目である。従つて歳入が少いのではないかというような点も問題になりました。それからまたいわゆる滯納と称しておりますが、保險料をとる歩合につきましても、徴税官庁旅費等を増額したならば、現在の二十億円の赤字が出ているとき以上にとれるのではないかという点も、いろいろ研究いたしました結果、この五億一千五百万円の積立金を充当いたしますならば、一応赤字は埋まるという計算になつたのであります。しかしこれは現在そういう目標のもとにいろいろ努力中でありますすので、もしどうしてもこの目標が達成されないというような場合には、その場合また考えなければならぬと思いますが、現在のところにおきましてはこういう標準報酬を適正にする。それから滯納もなるべく少くするというような努力を拂いまして、大体收支バランスをとり得るという見通しのもとに、努力をしているわけでございます。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 厚生保險保險料支拂い状態はどういうふうになつておりますか。
  47. 友納武人

    友納説明員 これは昨年よりも少し悪うございます。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 各月別数字が出ておりますか。
  49. 友納武人

    友納説明員 各月別資料はここに持つておりませんが、いりましたら別途また提出することにいたします。ただいまのところ大体保險料徴收成績と申しますものは、ここ二、三年の大体の現象といたしまして年度の初めごろが悪くて、終りごろに九割前後に上つて来るという経過をたどつております。本年も大体この経過をたどつておりまして、現在約六割五分から七割というところに達しております。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとその趨勢はだんだん徴收率は低下して行くのですか。
  51. 友納武人

    友納説明員 これは過去の経験あるいは本年の見通しといたしましては、今後はこの率は上る。年度末には九割以上にはなるという見通しを持つております。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 今までは下つて来た。
  53. 友納武人

    友納説明員 今までも四月、五月、年度の初めを勘案しますと、初めは三割とか四割というひどい時代もありましたが、だんだん上つて参つております。これは例年そうであります。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 実はこの積立金ができているということは、昭和二十三年度には余剰金があつたのだと思いますね。だからこの積立金ができた。ところが本年度至つて二十三年度余剰金を使わなければならないということは、二十三年度に比べて二十四年度保險料徴收が非常に困難になつたのではないかというように、われわれは想像されるのですが、あなたの言われるような楽観的な観測でいいかどうか、お伺いいたします。
  55. 友納武人

    友納説明員 御答弁が悪うございまして非常に楽観的にお聞きになつたかもしれませんが、決して楽観しておるわけではございません。ただ、ただいまのお話で昭和二十三年度にこの五億一千五百万円の余剰金ができたというふうに聞えたのかと思いますが、これはずつと多年の累積でありまして、御承知のように健康保險が非常に利用されない時代がございまして、その時代に累積されたものであります。むしろ昭和二十三年度よりも二十四年度の方が、保險財政見通しとしては楽になつておるということは事実でございます。と申しますのは昭和二十三年、すなわち昨年度におきましては、昨年度の後半期に当ります八、九月ごろから健康保險利用率が直線的にふえて参つたのでございます。従いまして二回も三回も保險料率の改訂をしましたが、とうとうバランスをとつてなおかつ追いつかなかつたというような事情がありまして、先ほど申し上げたような赤字が出たのであります。今年はある程度覚悟いたしまして事前に措置を講じたと申しますか、そういうような関係上昨年よりは対策は講ぜられておるので見通しがいい。ただ本年で困りますのは、昨年度不測の大きな赤字を出しましたのが、それが持ち越されておりますので非常に困つておるのであります。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 それから保險事業福祉施設費に限定されたものを、その他の経費に使うというのですが、この積立金を流用していた保險事業福祉施設というのはどういうものですか。
  57. 友納武人

    友納説明員 これは通称社会保險病院と呼んでおりますが、工場の密集地帶等社会保險の病院を建てておるものに限つております。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの方への流用金保健医支拂いの方にまわされますと、福祉施設の補強というか改善というか、その方はおろそかにならないのですか。
  59. 友納武人

    友納説明員 その点御説の通りでありまして、ただ健康保險といたしましては、まずこれらに対する支拂いを第一に考えなければなりませんので、確かに御説の通りにそういつた保險者のために、社会保險の被保險者が行つて心配のないような病院を建てるという面には、将来は従来のように手がまわらないという面が出て来ると思つております。
  60. 川野芳滿

  61. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ御説明を伺つてはつきりして参つた点もあるのでありますが、まだはつきりしない点もある。すなわち林委員からもちよつとお尋ねがあつたのでありますが、お尋ねされた点にはお答弁がなかつたように私は伺つてつたのです。それは林委員がなぜ一般の收入印紙でなしに、失業保險の特別の收入印紙を使う必要があるのかというお尋ねをされたように思うのです。それに対して印紙を使う必要があるという御説明にはなつたが、失業保險印紙をお使いになるという御説明がなかつたようでありますが、その点をひとつ……
  62. 龜井光

    龜井説明員 失業保險印紙を用いますのは、失業保險歳入はすべて失業保險特別会計の歳入に入るわけでございます。従いまして收入印紙等による歳入財源とは違う財源になる。そういう意味で特別の失業保險印紙というものをつくつて、その收入はすべて失業保險特別会計に入るという趣旨であります。
  63. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこでこの問題を見ますときに、私ども取引高税印紙の場合のことをじきに考えるのでありますが、こういう措置をいたします場合にしばしばたくさんの印紙をお刷りになる。そのうちに制度がかわつてまたいらなくなるということになつて、非常にむだが出て来るということがよくあるのであります。この失業保險印紙の場合にも、やはり例の税制勧告にこれらのものをとりまとめて、社会保障税という形をとろうという案が一つあることは、政府も御承知だと思うのでありますが、こういう場合の考慮を十分にされてあるかどうかということをひとつ……
  64. 龜井光

    龜井説明員 社会保障税の問題の対象になりますのは、一般常用労働者の納めまする保險料が当然その対象になると思います。日雇い労働者につきましては、先ほども申し上げましたように、一般常用労働者のような徴收方法では技術的に困難でございまして、そういう意味でこの制度といたしましては、印紙でなければ技術的に徴收が困難でございますので、シヤウプ博士の勧告がありましても、日雇い労働者につきましては引続き印紙徴收する。但し徴收の責任といたしましては、やはり社会保障税と同じような方向に持つて参るということになつております。
  65. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこで非常にこまかいことをお尋ねするようでありますが、この印紙によつて收入をあげて行かれる場合に、徴收のための費用がどのくらいかかるものか。ことに取扱い郵便局などにも一定の報酬をお出しにならなければならない。そういう経費を取除いたものが、失業保險特別会計の收入になるというように御説明になつておるのですが、その費用の見通しをお伺いします。
  66. 龜井光

    龜井説明員 その費用につきましては売り上げました印紙の代金の五分を郵政特別会計に繰り入れましてそれを事務費といたし、郵政省において郵便局に配付するという形になつております。来年度の予算の上におきましては、約三億八千万円の予算を見込む予定であります。
  67. 塚田十一郎

    ○塚田委員 今おつしやつた数字は、印紙の印刷代なんかの費用は、全部郵政省負担ということでできている数字なんですか。
  68. 龜井光

    龜井説明員 ただいま五分と申しましたその五分の中には、印刷費は含まれていないのでありまして、販売に要しまする事務費であります。印刷費は労働省失業保險特別会計の歳出予算の中に含まれております。
  69. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そうしますとその手数料やそういう費用を含めて税金の場合で行きますと徴税コストというものがあるのですが、そういうものはどのくらいになるのですか。
  70. 龜井光

    龜井説明員 このコストは、御承知のように失業保險におきます事務費は、建前としまして国が負担するという建前になつておりまして、保險料率の中にはコストとしては含まれてないのであります。ただわれわれが予算上見当をつけまするのは、郵政当局に出しまする先ほどの売上代金の五分と、そのほかに約一分か二分半程度のものを予算として見込んでおります。
  71. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に厚生保險のうち健康保險の勘定に関するものでありますが、私ども今度の政府の考え方を率直に批判申し上げて、この考え方はどうもその場を何とかごまかして行こう、その場をつくろつて行こうというような考え方が中心になつて保險事業というものに対する本質的な考慮が十分拂われていないのではないか。大体過去においてできた積立金を現在の欠損に使うということ自体が、この過去の積立金は過去の保險料を納めた人が、当然それに対して何らかの恩惠を主張し得る立場にあるのであつて、現在の人たちと負担の時期的の区分の関係が私たちは違うと思う。過去の人たちが積み立てたものは、当時積み立てる場合にかりに積立てができれば、福利施設その他に使うという予定ではあつたのでありまして将来の欠損というものにそれが使われるということは、おそらく当時の人たちは考えていなかつたと思う。それをこの時代になつてそういうことに使うということ自体が、本質的に非常に私たちは疑問がある。  それから大体この健康保險事業というようなものは、これは今年一年で終るものではないのでありますから、もし欠損が生じるならば、どうしてその欠損が出て来るのか、またどうしたらばこの健康保險事業というものが、そういう状態が起らずに健全にやつて行けるものなのかということを、もうすでに社会も安定して来ておる今日でありますから、十分検討されて、そういうような本質的な恒久策をお考えになる方がむしろよいのではないか。ここで五億ばかりの過去に積み立てたものを、しかもただいま林委員からのお話によれば、その積立てをそういうように使えば、結局福利施設などが十分に行われなくなるというような状態にあるのにもかかわらず、現在の穴埋めに過去のものを使うという、そういう考え方にどうも健全でないところがあるように思うのでありますが、そういう点に対しての政府のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  72. 友納武人

    友納説明員 ごもつともな御質問でありますが、先ほども御説明申し上げましたように、この積立金と申しまするものをもつて保險バランスをとるという考え方は、これはある意味においては、保險バランスをとるという建前から言えば、邪道であるということは当然であります。ただ先ほど説明申し上げましたように、本年度バランスはとれておるけれども、昨年度見込み違いをしてそこにアンバランスができておる。これを埋めるという一時的の問題であるから、過去の積立金をこれに充ててもよいではないか、こういう考え方なのであります。  それから積立金は過去の者が積み立てたものであつて、現在の者がこれを使用するのはおかしいじやないかという点でありますが、これもある意味ではお説ごもつともと思うのであります。しかしこの特別会計法の改正をいたしません現状におきましても、そのことは予想しておりました。すなわち決算上不足があつた場合には、まず第一に赤字積立金から埋めるというふうに現在なつておるのであります。ある意味で過去のもの、将来のものが、縦に、時代的に保險し合うという意味も兼ねておるのではないかと思うのであります。  それから制度の根本問題も考えたらよいではないかという点も、ごもつともでありましてこの点もすでに取上げられておりまして、立会保險制度審議会というものが法律に基いてございまして、ここで現在きわめて熱心に、愼重に御検討になつております。不日結論が出まして、その線に沿つて根本的な問題は解決されると考えております。
  73. 川野芳滿

    川野委員長 ただいま鈴木労働大臣がお見えになりましたが、実は関係方面にまたおいでになる予定になつておるそうでございますので、労働大臣に対する質疑をまずしていただきたいと存じます。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 労働大臣に失業対策の問題について、一、二お尋ねしておきたいと思います。  この前閉会中の予算委員会で、二十四年度の補正予算と、それから二十五年の予算編成にあたつて失業対策の輪郭を大臣から伺つたのでありますが、けさの時事新聞でありましたかに、労働省と安本との一致した失業者の数の概数が出ておるわけなのであります。しかしこの前労働大臣より伺つた数字と、多少食い違いが出ておるのでありますが、その来年度における失業者の予定の数字、さらに政府の方では定員法の関係ではないとは申しておりますけれども、いわゆる行政機構の簡素化に伴いましてさらに十万内外の、農林あるいは公団関係等からの整理者も出す七うなことが、すでに二十五年度の予算で一応政府が策定したものの中には、織込み済みだというようなことも新聞に出ておるのであります。そういうよう関係から、この際あらためて来年度における失業者の数の、労働省として見ておりまする数字について伺つておきたいと思うのであります。
  75. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 今朝の一部の新聞に出ておりました数字、あれに似たような方法でもつて、安本当局と目下数字を検討中なのは事実でございます。しかしまだ両者でもつて意見が一致して、これというところには—ごく近い将来に行くと思いますけれども、完全にそういうところまでは行つておりません。けさ私もちよつと見ましたけれども、全然方向違いのことを書いておるようでもありませんけれども、正式に発表したはずはもちろんありませんし、私自身があの数字はまだ政府として決定した数字だとは考えておりませんから、この点につきましてはそう遅れないうちに、おそらく臨時国会の審議が始まるまでには十分間に合う程度に、数字は固まつて来ると思いますけれども、本日までのところではそういう状態にありますので、私から責任のある決定的な数字を申し上げることは差控えたいと存じます。  それから二十四年度から二十五年度にかけての失業者の出て来る見通しという問題は御承知のように現在の日本の持つておる調査力におきましては、きわめて困難な問題でありまして、この前の国会にも、前提を置いて推定すればこの程度ということを、しばしば申し上げて来たつもりであります。その後の実際出て来ておる数字というものを見ておりますると、大体著しい相違はないような形でもつて推移して来ておるように思います。  それから決定的の数字は申し上げられませんが、よく双方でもつて誤解の起きる点は、たとえば五十万、六十万の失業といたしまししても、われわれの数字は二通りにわけてつくるのでありまして、一方では失業者が出て来る。一方ではいかなるときでももちろん雇用があります。差引してどこの雇用の面にも入れなかつた、最終に残つたところの失業者をさして申し上げる場合がありまするし、いわゆる失業者と申しますよりも離職者、つまり職を離れ、すぐ翌日から就職する人もあり、一箇月後に就職する人もありますけれども、そういう場合に職を離れる人が全体でどれだけあるかということを、その人たちがどのくらい就職するかということを確定せずに発表する場合と、二通りございます。あとの場合には非常に数が多くなるのでありますけれども、そういうような状態でありまして、あの四、五十万という数は—もちろんその数自身も決定的なものではありませんが、考え方はごく狭い意味でもつて失業者がたくさん出て来る。一方でもつて就職、雇用というものがある。けれどもその就職、雇用に応じ切れずに、最後にある段階に失業者として残る。こういう人たちの推定をしつつあると思うのでありますが、いずれにしてもその数は開きがあるわけでございます。  それから来年度どれくらい出るであろうかという問題も、実は非常に困難な仕事であると同時に、いろいろな関係等がありましてこの席上から今ごく大ざつぱな私の見通しを申し上げることは、差控えさしていただきたいと存じます。但しわれわれの持つておるところの資料その他は別個にお届けして、あるいは違う機会にこの委員会で申し上げてもよろしゆうございますけれども、もう少し固まつたものを、いろいろな関係の方面とも考慮しまして申し上げたいと存じます。漫然と今来年度見通しというものを申し上げるには、私自身も少し無責任のように存じますが、この点御了解願いたいと存じます。
  76. 田中織之進

    ○田中(織)委員 まだ固まつたものではないから、できるだけ早い機会に—これは当然来年度失業対策の予算的な処置と関連を持つわけなので、予算を編成するときに見たものが実際にかわつて参りますれば、それだけ予算の補正ということも当然行われる道があるわけでありますから、むりのない点だと思いますし、また失業対策全般については、この前の閉会中の委員会からまだ時日も経過いたしておりませんから、それ以上具体的に進んだものを伺うこともむりかとも思いまするので、その点は後日に譲ることにいたします。さしあたり問題になりまする、この印紙をもつてする歳入金納付に関する法律改正に伴いまして、実施せられる日雇い労務者に対する失業保險関係でありますが、先般の労働大臣の御説明によりますと、来年度においては日雇い労働者失業保險としては、十三万人分を計上しているということでございます。しかしわれわれの理解することろでは、これは十一月の一日から本年度行われる分についてはどういうようになるものか。また来年度の十三万人分というものが、先ほど政府委員の方から林委員質問に対してお答えになりました数字との関連で、非常に内輪な見積りのようではないかという気がいたすのでありますが、その点について……
  77. 龜井光

    龜井説明員 事務的な面だけ私から申し上げます。十三万人と申しますのは、これは来年度予算におきましても同様、今年度の予算につきましては、目下予備金からこの給付金を支出するか、あるいは補正予算で提出するかという問題につきまして、関係方面と折衝いたしておりますが、数そのものにつきましては、大体十三万人という見当が組まれると思います。十三万人という数は内輪の数ではないかと言われたのでございますが、われわれの推定から申し上げますると、この十三万人という数は、毎日十三万人とか毎月十三万人とかいう帶で参ります数字でございますから、見積りとしまして、少い見積りと言いますか、また多い見積りというか、私どもは適当な見積りではないかと存じます。従いましてこれは大体保險料の方にも同じような関係で見積る。六円、五円という保險料を算出しましたのは、この十三万人というものを基礎にして見積りました。
  78. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は、先ほど申しました来年度に出て参ります失業者数字との関連がありますので、この問題も本日それ以上掘り下げることはむりだと思います。この際日雇い労務者に対する失業保險制度の点で、これは失業保險という制度の建前から見て、日雇い労務者が保險料の一部を負担することは、保險制度そのものから見ると当然のことだと思うのでありますが、かりに日雇い労務者が就労している場合においても、その收入というものは、現在の経済状態のもとにおいはその生活をささえ、労働の毎生産費用をまかなうにははるかに及ばない、きわめて微々たるものだという見解を、われわれは持つているのであります。そういう意味において日雇い労務者自身の負担する保險料の点については、これはもう少し社会政策的な見地からわれわれは国でむしろ負担してやるべきものではないかという見解を持つているのであります。ことに最近新しく失業者となり、安定所を通じて日雇い労務に入ります新しい失業者の生活態度を見ますと、いろいろ作業衣その他地下たびとか、そういうような関係についてもきわめて不十分なものである。そういう意味で、せつかく朝早く安定所に並んでも、その日の仕事にありつけないというような関係、また雇う方の立場から見ますならば、足元のしつかりした者からより抜いてとるというような実情が出て参ります。そういう日雇い労務者に対するいろいろな生活、あるいは作業関係の必需品の増配というようなことについても、われわれ先般から安本にも、また労働省方面にも陳情に参つているようなわけでありますが、そういう見地からも日雇い労務者の失業保險について、労務者自身の負担する保險料について、これはむしろ国で負担するというような点について今後考慮される余地はないものか。われわれは当然やはりこれは保險制度の本体から言えば、問題のある点だと思うのでありますが、日雇い労務者の現在の経済状態から見て、考慮されなければならない二面があると思います。保險料は微々たるものとは言うものの、これはやはりこれらの人々にとつては、ゆるがせにすることのできない問題だと思います。この点について労働大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
  79. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 まず先ほどのお尋ねの、来年度でなくして、今年の十一月なり十二月から実施する場合の予算的裏づけができておるかという御質問でございましたが、これはできております。補正予算が通りますれば、できるようになつております。  それからただいまの御質問の点、ほかの保險と違つて、あの人たちの立場から考えて、田中委員のおつしやるような点、ごもつともの点もございます。しかし保險全体の考え方といたしまして、また御承知のように日雇い保險というものは、非常に技術的にむずかしいし、とにかく最近の情勢に照し合せてスタートしておかなければいけないという形で、この春の国会に皆様の御審議を得て成立したのでございまして、ある意味では試験期にあるとも言えると思います。大体において私どもとしては、でき得る限り綿密な調査と計画のもとに打立てたのでございますが、ほかの失業保險はもう世界的に方式も試験済みでありますけれども、あの日雇保險につきましては、虚心坦懐に実行につれて訂正すべき点がありましたならば、将来訂正しつつ充実して行きたいという一般的の考えを持ております。しかしただいま御指摘になりました、あの人たち自身の保險料を引下げたらどうかという御質問に対しましては、今のところ政府はそういうふうな考えをもつて、改訂をするという考えを持つておらない。とにかくあの程度負担は、あの当事者の当人たちにもしてもらうことが、保險の建前から言つて正しいと考えております。
  80. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この点は、実は政府の施政全般に対する方針として、労働政策全般に対していろいろ伺わなければならぬ点があるわけなのであります。施政方針演説が行われ、また当然この国会の中心になつております補正予算の関係において、そうした政府の労働政策全般に関する方針が、この国会に正式に表明されておらない現段階において、こうした議会にわれわれは本来それをたださなければならない立場にあるのでございますが、その点につきましては、この法律の成立を今月中にぜひともやつてもらいたいということを、昨日大蔵政務次官からも委員会に要請せられておりますので、われわれはその他のたとえば労働組合に対する政策の問題でも、政府の施策全般にわたりましてやはり民主的な労働組合の育成というようなことについて、むしろ政府が逆なコースをとつておるようなあらゆる現象を見受けるのであります。こういう問題について、本来この委員会においても、こういう機会にわれわれは政府の方針をたださなければならない立場にありますけれども、今議案になつている法案とは—実際には関連を持つておるわけでありますが、離れるような、多少隔たりを感じられますので、そういう点は後日の機会に譲ることにいたします。私の労働大臣に関する質疑の点はこれで一応終ります。
  81. 深澤義守

    ○深澤委員 労働大臣にお伺いいたしたいと思いますが、御承知のように、政府の行政整理によつて失業者は相当ふえております。さらに中小企業状態におきましても、産業の崩壊状態の中に失業者がますますふえて行くことは、間違いない事実であります。これに対する万全な失業対策というものは、憲法によりましても最低生活を保障するという立場において、当然であると考えられるのであります。そうした全般的の問題は別の機会にいたしまして、特に日雇い労務者の問題に限定いたしまして、お伺いしたいのでありますが、最近における日雇い労働者状態におきましても、非常に就職難というようなことからますますその数がふえ、さらに失業状態が半永久的な状態になつて行くという可能性が多分にあるのであります。こういうような状態の中に、現行の六箇月で失業保險は打切つてしまうという、こういうことによつてはたして失業救済の目的が、十分に達し得るかどうかということが、非常に問題になつて来るのであります。従つてこの六箇月の期間を、さらに政府は延長するというような対策を持つておられるかどうかという点が一点。  もう一つは、日雇い労働者保險金が、大体百七十円程度と聞いておるのであります。これによつて失業しておる日雇い労働者の最低生活を保障するということは、はなはだ困難であることは常識的に考えられるのであります。従つて政府はこの最低生活を保障し得るような保險の額を支出する必要があるという点から、この百七十円をもつ政府負担によつてふやして行く考えがあるかどうか。この二点について、労働大臣の御答弁を願いたい。
  82. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 保險の六箇月の問題であります。これはその問題自身も吟味の対象となるのでありましようが、日雇い労働者の人たちの失業保險に関しては、六箇月という問題は関係ございません。これは出たり入つたりした一つの帶のような形で行く保險でありますから、一般失業保險の方の問題でございます。一般の方の失業保險の六箇月の問題でありますけれども、簡單に申し上げますと、この期間を延長することは困難であると考えております。  それから日雇いの方の問題でありますが、百七十円あるいは三階級にわけておるところもございますが、それを今引上げるという考えは、政府といたしまして現段階として持つておりません。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 鈴木労働大臣にお聞きしたいのですけれども、本日の法案、ことに印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部改正法律案、これを見ましても、失業保險並びに厚生保險特別会計等におきましても、やはりこれは将来むしろ一般会計の方から相当の金額を援助することなくしては、完全な対象が講ぜられないように私としては考えておるのであります。そこで労働大臣の責任として、少くとも本年度の補正予算の中に、この失業関係の予算を幾ら織り込んであるかということを聞きたいのであります。補正予算中で、鈴木労働大臣の責任において失業問題にまわすべき金額です。
  84. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 林委員の御質問の意味は、單に保險だけの意味でなかつたように思います。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 保險だけでない。
  86. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 全体の失業をさしておるように思います。保險の方の問題でありましたならば、これはいわゆる国家の義務費でありまして、何らかの形で出しますし、さつきも申しましたように、何らか予算的裏づけをしてありますからこれはさしつかえないと思います。それから失業に対する考えが、どの程度補正予算に盛られておるかという御質問が中心であつたと思います。これはお答えする前にあらかじめお断りしておきますが、先ほども田中委員御自身からおつしやいましたように、案でありまして固まつておらないのでございますから、数字があとで変更されるということはあり得ることでございまして、その点はあらかじめ御了承を願いたいと思います。今すでに一般に発表された原案によつてだけ御説明申し上げますと、大体私どもの失業に対する考え方、失業対策の考え方という問題の根本は、結局国民経済の建直しによつて新しい雇用面を開拓して、そこに最終的に失業者を收めて行くということが根本的の考え方であつてこの政策が失敗してしまつたならば失業対策の根本はくずれるのであり、大部分はここにウエートがかかつておると思います。従つてこれは皮肉ではありませんが、ごく大きく言えば予算全体が失業対策であります。こうも言えると思いますけれども、それではあまりにぼんやりしてしまいますので、それはそうでありますが、分析して行けばどういうふうになるかと申しますと、やはりその中で比較的失業対策として重要性を持つておるのは、公共事業だということになると思います。この公共事業に対しましては、御承知のようにかなり多くの金額が—私今ここでもつて明確な数字を覚えておりませんから一々数字をあげませんけれども、相当多くの災害復旧費等が計上されておりますから、この方面には相当の失業者の吸收力はあると思います。それから一番端的に問題になりますのは、緊急失業対策費でございます。これは二十四年度の当初予算において八億八百万円かであつてそうして二億円ずつ四半期ごとにわけて使つて行くという形をとつて来ましたが、八月ころから情勢が逼迫したと見ましたので、関係方面とも折衝して繰上げしようという方法をとりまして、第四・四半期の分を第三、四半期に繰上げて使つております。従つて十月からは日雇い的な人たちの吸收力は、今年の四月ごろに比べて倍以上になつておると考えます。そういたしましてそれ以後の分はどうするかというのが補正予算でありまして、補正予算には原案としては八億五千万円計上されてございます。としますと、一年間に八億だつたものが三、四箇月に八億ということになるからして、年間に直しますと、三十億前後になつたと言えると思います。そのほか五億円が緊急失業対策の中には織り込まれておりませんが、同じような意味において公共事業費の中に都市復興費として計上されております。これは一般公共事業と違つて都市の復興にのみ使用するという意味でございまして、ねらいは都市の失業対策であります。これは労働大臣が必要と認めたとき、必要と認めた場所で、建設大臣にその事業を展開してもらう、そういう約束になつております。だから広い意味で申しますると、見方によつては合せて十三億五千万円の緊急失業対策的なものが、補正予算の中に含まれておるということが言えないことはないと思います。それから近く始まる日雇い失業保險の予算的措置、これもあるわけであります。狭い意味の失業対策はそういうものであります。それから広い意味の失業対策は、今申しましたように公共事業に主力を注いで、二十五年度を待たず補正でもつて相当計上されておる、こういう実情でございます。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 これは労働大臣も十分認識しておると思いますが、実は西ドイツでは見返り資金を—私の方としてはもちろん見返り資金の制度というものは党としては反対しておりますが、この見返り資金のうちから大量にこれを失業救済の面へつぎ込むという方策がとられております。そこで吉田内閣としても、この見返り資金特別会計というのは打出の小づちだというので、非常に宝のように大事がつているのですが、将来見返り資金のうちから失業救済の方面に、ある程度の資金をまわすというような考えを労働大臣は持つておるかどうか。またそういう動きをされる意思があるかどうかという点を、参考までに聞いておきたいと思います。これは西ドイツにその例があるから聞いておきたい。
  88. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 見返り資金は基幹的の産業を維持し、積極的にこれを拡大して行く。たとえば造船業のごときにはすでに数十億がつぎ込まれておりますし、将来造船とか電源開発につぎ込まれて行きますから、直接的と申しまするか、かなり直接的に失業対策としては重要な性格を持つております。そういう方面ではどんどんと進んでおるのが現状でございます。ここに詳しい数字を持つておりませんが、特に下半期になりまして相当の量と速度を持つて、見返り資金が基幹産業につぎ込まれております。林委員の御指摘になりました、直接的に失業対策の方にこれを持つて行くという考え方でございますが、私どもはそれができたならば、それは金額いかんにかかわらず、労働大臣としては非常にけつこうと思いますけれども、見返り資金は建設的な生産的の面に向けて行く。しかも一定の利子をとつて、そうして貸付のような形でもつてつて行くという日本の見返り資金の現在の性格からいたしますと、西ドイツにおけるがごときやり方に持つて行くということは、相当困難ではないかと思つております。私たちはむしろ見返り資金が手続その他を簡略化して、急速に大量に基幹産業の拡充強化の方に向けられて行きましたならば、それによつて失業対策としての重要な使命を果し得ると考えておるでございまして、今ただちに直接的な失業対策の方に見返り資金を向けるという考え方は、その希望は持つておりますけれども、相当困難なことであると思います。しかしできるのであるならばけつこうでありまするから、努力をするという気持は持つております。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 第五国会で、社会党民主野党派各党の失業対策に関する質問に対して鈴木労働大臣は、将来輸出を振興することによつて失業救済の大きな根幹にしたいということもしばしば答弁されておる。これは労働大臣も記憶にあることだと存じますが、この輸出振興による失業救済という方法は、その後労働大臣の考えておるような方向で実現されておるかどうか、また将来実現し得る可能性があるかどうかということを、この際聞いておきたいと思うのであります。これは労働大臣の失業白書においても、最近の四、五十万の失業者は吸收し救済する方針も立つておるようなことを聞くのでありますが、これは政治的な意図もあると思いますので、どうも鈴木労働大臣の失業救済政策というものは、われわれ考えてみて少し甘いのじやないかというようなことが考えられるので、その典型的な形として輸出振興による失業救済というのは一体実現しておるかどうか、また将来実現する可能性があるのかという点についてお聞きしたいと思います。
  90. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 失業救済は先ほどからいろいろ申しまするように、幾つかのたくさんな方式を総合的に組合わせて、最終的処理をはかつて行くというのが根本でございますから、その幾つかの方式の中には、かつて計画の中に入つてつても、内外の諸條件の変化によつてそれが変化して来ることは当然であり、またそういつた場合にはそれに対応して行けばいいと思うのであります。御指摘になりました輸出の問題のごときはその代表的な例であつて、たしかいろいろな諸條件の変化がその後においてあつた。しかし第二の将来の見通しはどうか。もちろん現在の政府は、ただいまもそういう変化された條件のもとにおいての輸出振興の新しい対策を、どしどしつくつておるのでありまするし、また下年期に入つてからの輸出の状態というものは、イギリスのポンドの問題である程度停滯ぎみにはなりましたけれども、相当の成績をもつて—予定通りには行かないけれども、しかしいろいろな変化があつたにしては、相当の成績をもつて終るような情勢にあると通産省大臣からも聞いております。なお今後の問題につきましては、これらの問題を克服して幾つかの新しい輸出政策を累積して行くことによつて、もちろん所期の目的を達しまするし、達しなければならないのでもありまするし、達し得ると確信しております。  それから輸出の問題について、この前の輸出の方面に失業者を相当吸收して行きたいと思うというこの考え方は、今後も同様でございます。ただ了解していただきたいのは、たとえば何万あるいは何十万を輸出方面でもつて吸收するとこう言いましたことは、輸出の方面から失業者が出て来ないということを申し上げたのではないのでございまして、いかなる部門においても、一方では失業者が出る、一方ではまた新しい雇用が生れて来る、こういう関係にあるのでございまして、輸出の方面から相当の失業者も出たことは事実でありますけれども、新しい雇用のあつたことも事実でございまして、決してことしの五月に計画した通りにこの部門における計算は出ておりませんけれども、今後の努力によつてやはり依然として輸出振興による国民経済の雇用の引上げという問題を、大きな政策の一つとして取上げて行つて、誤算が起きて来るような情勢に、内外の情勢が根本からくずれ去つたというふうには考えておらないのでございまして、これは私の専門ではないのでございますけれども、通産省その他の大臣に十分ふんばつてもらおうと思つておりりす。
  91. 川野芳滿

    川野委員長 ちよつと林君に御相談申し上げますが、ほかにまだ質疑の通告がたくさんございますので……
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは私はもう一つだけで打ち切ります。  先ほど実は社会党の田中委員から質疑があつて、非常に重要な問題だと思うのですが、実は失業者の数について今労働大臣としてはまだはつきり固まつたコンクリートしたことは、発表できないという答弁があつたのであります。ことに安本との連絡もあるということですが、これは実は一九四七年の国勢調査の例でありまして、国勢調査労働省の方の発表は失業者が四百六十四万、ところが安本では潜在も加えて一千万人だというようなことで、労働省と安本との数字の食い違いがあります。この場合、労働省の方では失業対策費からむしろ逆算して、失業者の数を出すのじやないかということも—これは思い過ぎかもしれませんが、世間から言われている。そこで戰前の一九三〇年から三一年に、日本の国の失業者が三百万から五百万あつたということは、国際的にも認められている数字でありますが、これが先ほどのたしか労働大臣のおいでになる前の政府委員説明ですと、八月でせいぜい七十九万人という数字が出ているのであります。一九三〇年の三百万が七十九万に非常に減つているということも、われわれ納得できないのでありますが、少くとも一九四七年、今から二年ほど前に完全失業者が六十七万、潜在失業者が三百九十七万というのも、その後ほとんどかわりないということも、われわれの常識から考えられない。たとえば引揚者の数だけでも千五百万くらいの人が、半失業状態で帰つて来ておるのでありますが、これが加わつておるにもかかわらず、今から二年ほど前の六十七万人の失業者と、そうかわりないということは考えられないのであります。大体労働者の考えとしてもちろんこれははつきりしたことはわからないと思いますが、完全失業者の数がどのくらい、潜在失業者の数がどのくらいという大体の目途を、労働大臣としてわれわれに発表してもらいたいと思います。
  93. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 失業者の定義のとり方によつて、たとえば内閣総理府の統計でやつておりますような、非常に厳重な形でもつて失業者を定義してやつて行くと、少くもなつて参ります。労働省の現在調査しておる考え方から行きますと、失業者も出て来る、就職者も出て来る、結局就職せずに残つているところの人たちは五十万前後の数字になるのではないかと思つております。それを固めて五十万と申すのであります。潜在失業者の推定については事務局から申し上げます。
  94. 海老塚政治

    海老塚説明員 結局潜在失業者ということの定義になるわけでありますが、同じく総理府の内閣統計局の調査の結果によりますと、労働時間、就業時間によりまして、たとえば失業者が一週間のうちどの程度働いているかという就業時間によりまして部分失業者というようなことで一応調査したのがございます。それによりますと、大体追加労働を希望する者、こういう数字でございます。現在仕事にはついているけれども、いろいろの理由でもつと働きたいという者の数字が出ておりますが、労働時間によつていろいろでございます。たとえば一週のうち三十五時間以上さらに働きたいとか、あるいは二十五時間以上さらに働きたいとか、あるいは十時間未満さらに働きたいとか、そういう労働時間の区別がございますけれども、とにかく追加労働を希望している者の数は大体—くらいあるであろうという推計は出ております。ではこれ以上にどういう者を潜在失業者と言うかということになりますと、これはまた所得の面だとか、あるいは労働時間の面だとか、いろいろそういう面から申しまして、定義のしようによつて潜在失業者が出て来ますけれども、今あります限りにおきましては、追加労働を希望する者という意味での数字がある程度でございます。
  95. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私はこの法律の後段の部分の十厚生保險特別会計に関して、質問をいたしたいと思うのでありますが、基本的な考え方は林委員なり、あるいは塚田委員から指摘されたこととまつたく同意見でありまして、国民健康保險制度そのものに対する政府の基本的な態度が、われわれきわめて納得できないのであります。そういう意味で具体的な点を二、三伺いたいのであります。特別会計のうちの健康保險勘定の赤字補填の意味で、積立金をその財源に使い得るような道を開くことになるのだと思いますが、これは厚生保險特別会計健康保險勘定の積立金を、健康保險関係赤字補填に使うという意味なのか、それとも厚生保險特別会計全体の積立金健康保險の方の赤字補填に使う、こういうことになるのか、その点をまず明らかにしてもらいたいと思います。
  96. 友納武人

    友納説明員 前段の健康勘定の積立金を健康勘定の寄付金に充てる、そういう意味でございます。
  97. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういたしますと、先ほどの林委員からの質問に対しまして健康保險勘定の赤字は約二十二億あると言われたのでありますが、われわれの調べたところによりますと、二十二億六千四百万円ある。そのうちで五億千五百万円のこの積立金を流用した残りの部分を、どういうようにして補填して行く考えであるか。この際伺つておきたいと思います。
  98. 友納武人

    友納説明員 二十二億の不足分から五億を引きますと十七億になるのでありますが、この十七億をどういうふうに埋めるかということであります。これは先ほども申し上げましたように、十七億のうちの七億円は事業主が届け出る労働者賃金の届出を、適正にするという意味におきまして何とか処理を講じてきめる。残りの十億円につきましては、先ほども申し上げましたように、保險料徴收につきまして必要な経費を十分に計上いたしまして滯納の整理を十分にやつてこれを埋める考えであります。
  99. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういたしますと保險料滯納が幾らになつているかということも、明らかにしてもらはなければならないのでありますが、厚生委員会で、これは第五国会の閉会中の審査であつたと思うのでありますが、別のような方針をもつて少くとも十億は予備金である。それから残りの七億六千万円程度のものにつきましては、一般会計からの繰入れの問題ついて大蔵省と折衝をするのだ、こういうような方針を明らかにされたように、われわれ社会党では理解しているのでありますが、今承りますと事業主からの届を適正にする。それで七億を生み出す。残りの十億は保險料滯納を徹底的に徴收することによる、こういう形だと思うのであります。これはただいま申し上げましたように、健康保險制度というものに対して政府の基本的な態度が不明確なところから、こういうその場のがれのやり方をやるのでありまして、われわれの賛成できない点なのでありますが、まず十億は保險料滯納を徹底的に徴收することによるといたしますならば、保險料滯納分が現在どれだけあつて、大体どのくらいの期間に十億のものが回收できるかというようなことについての見通しを伺いたいと思います。
  100. 友納武人

    友納説明員 現在の保險料滯納でありますが、先ほども申し上げましたように約三割ございます。これは金額で申し上げますと約十五億円あるのであります。これをこの会計年度の一番終りであります四月三十日、出納閉鎖期までにとる。こういうことであります。
  101. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういう形で現在ま、でいろいろの手を講じられて十五億の滯納が出ておるものが、四月三十日までにそうたやすくできるものではない。ことにこれは本年度はどうにか赤字が出ないような処置を講じておる。そのことが問題なのです。それはたとえば最近も厚生省の方からいわゆる保險給付の内容に対して、医療内容についての制限をやつておる。そういうようなことが健康保險そのものに対する政府の方針が—一体広汎なる社会保障制度というものが確立されていない場合において、やはり国民健康の点から最も頼みになる健康保險というものに対して、医療給付の内容を制限する。たとえばペニシリンについては二十万單位以上のものを使つてはならぬという、そういうことをやつておるから、結局保險料滯納というような問題も出て来ておるのだと私は思うのでありますが、この根本的な赤字補填の問題につきましては、大蔵政務次官も見えておられますが、政府としては、健康保險制度というものは、社会保障制度が根本的に確立されるまでは当然続けなければならぬし、また国民もこれに大きな期待を持つておるという面から見て、こうした赤字補填の問題あるいは医療給付の内容制度というようなことをこの際撤廃いたしまして出て来た赤字は国民全体の健康の増進の点から、一般会計でめんどうを見るということについて、厚生省としては大蔵当局との間にどれだけ熱意を持つて折衝しておるかどうか。また大蔵省としてはその点について、いろいろ財政需用の多いときでありますけれども、やはり重要な社会政策だと私は思いますので、その点について大蔵当局の見解とをあわせて伺いたいと思います。
  102. 水田三喜男

    ○水田政府委員 ただいまの御質問の問題ですが、この保險の建前からむやみに赤字一般会計から補填してやるということは、これは絶対にできないことでありまして、現在の赤字の内容をわれわれの方で見た結果によりますと、相当濫診、濫療というような、改善すべき問題がまだまだたくさんある。こういうことをもう少ししつかりやつて、そうして今の滯納のような問題も解決する方法を講じたら、これはりつばにやつて行けるのではないか。そういうことで、とりあえずこの事務費の補助というようなものは増額しよう。来年は政府の方は三割を五割に上げるし、一般国民健康保險の方は五劇負担しておりましたものを七割だけ補助する。そういう事務費の補助というようなものは考えますが、そのほかに赤字一般会計から補填するということは、われわれとしてはやりたくないというので、これは厚生省からも非常にいろいろな希望がございましたが、大蔵省としてはそれはやらないという方針になつております。
  103. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今日は齋藤さんの葬儀もあるようでございますから、これで私の質問は一応終りますが、厚生省の関係官に伺つておきたいのは、最近になりまして健康保險関係の医療給付の内容について制限を行つている。こういうような面で、この健康保險の経営を赤字から出ないような形にやつて行くというような消極的なことでは、一体社会政策、ことに国民の保險医療というような問題を取上げられる厚生省として、きわめて私は厚生省本来の使命にそぐわないようなやり方のように考えるのでありますが、最近出しましたようなそういう通牒等を撤回して、もつと積極的な方策を講ずる御意思はないかどうか。このことがわれわれのこの法案に対する態度決定の重要な点でございますから、その意味で、これはむしろ厚生大臣から伺いたいのでありますが、厚生省の関係の方から少くともその熱意があるかないかは、この際明らかにしていただきたい。ただいま水田大蔵政務次官は、医療内容ということについて、濫療その他をやつているというようなことでありますが、どうも国民健康保險のいろいろな施設の内容を、よく調査されていないような口吻のように私承りましたので、この際厚生省からその点を明確にしていただきたい。同時にこの問題は、先ほど私が第一問で質問いたしましたときに、健康保險勘定の積立金をこの方面に使うのだという点ではつきりいたしたのでありますが、われわれは厚生保險特別会計全体の積立金がこういうような面に使われるということになれば、なおさらこれは重大な問題として取上げなければならない。しかしその点は一応先ほどの答弁ではつきりいたしておりますが、最近厚生省が出しました医療給付の内容制限に対する通牒を撤回して、もつと積極的にやるという形によつて保險料徴收、拂込みというようなものがスムースに行くような積極的な政策をとる意思があるかどうかということを、厚生省の関係の方から御答弁願いたいと思います。
  104. 友納武人

    友納説明員 医療給付の制限をするような通牒を出したのではないかというお話でありますが、これは何かの誤りでありまして、医療給付の内容を制限するような通牒を出したことはございませんし、将来も出す気はございません。ただそういう誤解が生じました点は、先ほど大蔵政務次官も御説明になりましたように、適正な診療以上の診療が実際問題としてままあるという点につきまして、適正以上の診療というものをしないようにというような意味で、いろいろな施策を講じておりますことが誤解されたのであると思います。厚生省といたしましては、適正なる診療を制限するというような意味におきまして通牒を出したり、将来そういうような方向をとるということは絶対にないことは申すまでもないことであります。
  105. 川島金次

    川島委員 なるべく簡單に一、二この機会に尋ねておきたいと思います。この問題は日本の社会保障制度の広汎な総合的な本質的の問題が、いまだ未成熟の過程にあるので、その問題はわれわれといたしましても、いずれ適当の機会において質問をいたし、あるいはわれわれの考え方を政府に申し上げたいと思うのですが、そのことは別といたしまして先ほどの御説明によりますと十五億の滯納がある。実はこの滯納の内容が私ども問題になるのであろうと思う。たとえば事業主滯納が十五億円あるのか。その事業主負担すべき滯納十五億のうちで、労働者、言いかえれば被保險者自体が納付すベき保險金滯納が、集積されて十五億になつておるのか。労働者はすでに月月給料から差引かれていることが全般的な例であります。労働者自身は給料から月々差引かれているにもかかわらず、その責任者である事業主滯納が全体において十五億にも積つて来たということは、内容によつては私は重大な問題だと思うのでありますが、その内容についてこまかい数字がありましたならば、この機会に発表しておいていただきたい、こう思うのであります。
  106. 友納武人

    友納説明員 これは各保險共通でございまするが、この保險料滯納の十五億のうちの何がしか被保險者負担の分が滯納しておる、何がしか事業主の分が滯納しておるということはないのでありまして、十五億滯納しておりますれば、その半々すなわち七億五千万円になりまするか、それが事業主の分、その他の分が被保險者の分ということになつておるのでありまして、現在の保險法をもつてしますれば、事業主の分たけ納めるとか、あるいは被保險者の分だけを納めるとかいうことは許されておらないのであります。従いましてこれを区分した数字というものはございません。
  107. 川島金次

    川島委員 その説明は形の上ではわれわれも十分承知の上であります。しかし政府当局も保險料金徴收の実態というものをすでによくわかつておる。私は今申し上げましたように、この十五億の滯納というもののうちの半分に値する七億五千万円の被保險者の直接に納付すべき金額というものは、多少の例外はあるでありましようが、ほとんど被保險者が直接に負担済みであるということは断言できると思う。そういう労働者の犠牲において事業主事業の資金のやり繰りのために、労働者の膏血をしぼつた形にあるという現実の問題を、政府が等閑に付するようなことがあつては、これは重大な問題だと私は思うので、ことさらに聞いたのであります。従つて現実の問題としては、七億五千万円が当然十五億になれば、労働者が納むべきものを納めてないのだと、一言には片づけ得られないものがあろうと私は思う。そういう事柄についても政府は特段の力を注いで、一体十五億の滯納の中で、事業主労働者からとりながらも、すでに滯納しておるものが、労働者が直接にもう負担済みであるにもかかわらず、事業主だけがその納付を怠つておるのか。そのくらいの分析をしておくべき責任があろうと私は思いますが、そういうことは数字の上で十五億だから、これは労働者も、事業主も半々の責任だということは、私ははなはだ穏当でない解釈たと思うのです。現実の問題はどうなつておりますか。それはわかつておるのか、おらないのか、それをお聞きしておきたいのです。
  108. 友納武人

    友納説明員 よく実情を御承知の上での御質問と申しまするか、御意見であると思うのでありますが、この十五億の滯納の中にそういうものが含まれておらぬということは断言できないと思います。先般こういうこともあるからということからいたしまして、各方面の要望によりまして、事業主が被保險者負担分の保險料徴收しておきながら、他の用途にこれをまわしたというようなものにつきましては、体刑を科するという改正法律案を前の国会におきまして御議決を願いました。これの実際の適用方、すなわち告発したりあるいは処分を関係方面に要求をするという点につきまして、現在関係方面とたびたび折衝しておりまして、十分その辺も考えてやつておるつもりであります。
  109. 川島金次

    川島委員 実情も当局ではよくわかつておるのでありましようから、そういうものの分析したものがあれば、この法案採決のあとでもよろしゆうございますから、明細にとつてある統計がりますすれば、ひとつわれれれに明示していただきたいと思うのであります。  それからもう一つお尋ねいたしますが、この十五億の赤字というもの、滯納というものは、結局それが保險医の方の未收入ということにかかつて来るだろうと思う。都会地の事柄は、大分不満足ながらも保險医の医療費の回收がどうやらなさねておるところもありますが、国内全体の上から見ますと、はなはだしいのは半年、あるいは十箇月たつてもまだ保險医の方に金が入つて来ないという実情があるということを、私はしばしば聞いておるのであります。従つてこの十五億というものは單なる未納代金であつて一般の総合的な保險医の方に支拂うべき金額の滯納というものが、一体どのくらいになつておるのか。おそらく私はこの十五億の滯納金を基準にして考えますと、相当その額は厖大なものになつておるのではないかと思いますが、そういう事柄についての内容がわかつておれば、この際明示していただきたいと同時に、その方面に対する対処はどのような形において行うのかということとあわせて、もう一つ元の話にもどりますけれども、労働者自身がすでに負担しておるにもかかわらず、事業主が他にその金を流用しておる、もしくは資金繰りの関係で怠つた場合は、体刑に処するというあの明確な法律を施行した後において、そういう事態が起つたことを発見したことがありますかどうか、発見した場合はどういう処置を今日までとつて来たかという問題と、今後どういう形においてそれを急速に処理するのか。問題は單に十五億の金を使つて徴收を奨励するという問題にとどまらないと思うのでありまして、この保險制度の本質的の問題になると同時に、労働者にのみ犠牲を拂わしておるところの保險制度の実体にまで、深く突き入つて研究しなければならぬ問題であると思いますが、一応その三点について当局に調べがありますれば、また考えがありますれば、それを承つておきたいと思うのであります。
  110. 友納武人

    友納説明員 保險医に対する支拂いの問題でありますが、現在の実情を申し上げますると、これは政府官署の健康保險が問題になつておるので、それを申し上げますが、現在八月分をほとんど拂つております。残額が約一億四千万円ばかりございますが、約総額が八億四千万円ばかりであります。現在七億近くの金を八月分として拂つております。従つて八月分はほとんど完了しておるようなかつこうになつております。八月分と申しますのは、規定によりますと九月三十日までに支拂うべきものでありますので、現在十月末でありますから、九月分がまず支拂い遅延になつておるわけであります。九月分がどれほどあるかということはさだかに数字はわかつておりませんが、やはり八月分と同額程度あると思います。八月分は八億四千万円というふうに考えられますので、約八億三、四千万円というか、五千万円くらいと申しますか、そのくらいの保險医に対する滯納がある、こういうことが申せるのではないかと思います。  それから後段の点であります、これはなかなかむずかしい問題でありまして、事業主が被保險者負担保險料徴收しておきながら、これを他の用途に使つておる分が幾らあるかという点の数字をはつきり出すということは、事の性質上非常にむずかしいとは考えますが、御意見の通りこれは重要な問題でありますので、将来何らかの方法をもちましてこれを調査いたしまして、できましたならば御報告申し上げたいと思つております。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 水田さんが見えておるのですが、実は健康勘定補正予算の中に一般会計から七億予算が組んであるのです。それから五億円の積立金よりの受入金も補正予算に組んであるのですが、七億を十二億にすれば、積立金からやらなくていいのですが、なぜ七億にしたのか。それから一体この七億、は出すのかどうかということ、補正予算としてそれをはつきりしておきたいと思います。
  112. 水田三喜男

    ○水田政府委員 これはさつき説明しました通り、出さないという方針であります。
  113. 海老塚政治

    海老塚説明員 先ほど私から、追加労働を希望する者の数字を申し上げましたけれども、あの数字は実は調査方法その他に関しまして一般に公表をしないことにいたしておりますので、速記録から落していただきたいと思います。
  114. 川野芳滿

    川野委員長 ただいま御説明のありました数字を、速記録から消してもらいたいという意見ですが、消すことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 川野芳滿

    川野委員長 では削除することにいたします。  ほかに質疑の申込者もございませんので、印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案に対する質疑は、これにて終了いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 川野芳滿

    川野委員長 それでは質疑終了といたします。  これより印紙をもつてする歳入金納付に関する法律等の一部を改正する法律案議題として討論採決に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。小峯柳多君。
  117. 小峯柳多

    小峯委員 失業保險健康保險等に関する問題は、各委員から御意見なり御質問があつたのでありまして私どもも実は問題があるわけでありますが、この法案に関する限り事務処理的なものであるということによりまして民主自由党を代表いたしまして賛成いたします。
  118. 川野芳滿

    川野委員長 田中織之進君。
  119. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は社会党を代表いたしまして、この法案に対して反対の意見を表明することにいたします。  この法律の前段は失業保險制度に関するものでありまして、これはこの委員会の審議においても明らかになつておりますように、印紙制度によつて保阪料を徴收するということにつきましては、相当そういう方面の徴收に関する経費を要するのでありまして、何らか別な方法によつてこうした経費をかけないような方法を講ずべきであると考えるのでありますが、この点は日雇い労働者に対する、ことに失業保險を一日も早く実施するという見地から、われわれはこの部分に対しては必ずしも反対するものではありません。しかし後段の厚生保險特別会計に関する部分につきましては、われわれはこうした形において健康保險制度赤字補填を行うということに対しましては、遺憾ながら賛成できない。ことに特別会計の赤字補填の問題につきましては、おそらく今国会における一番重大な問題であろうとわれわれは予想しておるのであります。薪炭特別会計の、あのきわめてでたらめな、目下清算の過程において、はたしてどれだけが真の赤字であるかどうかというようなことについて明確でないにもかかわらず、五十四億七千万円という厖大なる金額を一般会計から特別会計に繰入れて赤字補填をやろうとする政府の態度にかんがみて、国民の全般にとりましてきわめて深い関係にありまする国民健康保險に関しまして出て参りました赤字についは、いろいろ検討しなければならぬ点が残つているといたしましても、これは当然私は一般会計から補填する処置を講ずべきである。現に厚生省の方ではそうしたことを大蔵当局に対して要求しておるにもかかわらず、何らの考慮が拂われておらないという点が第一点。  それから、川島委員から指摘いたしました、赤字のうちの十五億円の滯納分につきましては、これはその半額の七億五千万円は被保險者である労働者はすでに拂い込んでおるものだと、われわれは見ておるのでありまして、それがことに小さい事業体なら金額も大したことはないという点でこれを納めておる。大きな事業体に限つて労働者からは会社として一応保險料納付させておきながら、これを他に流用するというような形で滯納が現われておる。それが怠納の十五億円のほとんど大部分であるという見地から、そうした面を積極的にやるという政府努力が欠けておる点が第二点。  さらに来年度において若干の増額はされますけれども、健康保險制度そのものに対する社会政策的な、国としての配慮がきわめて不十分である。事務費の補填にいたしましても、それの国からの支拂いがきわめて遅れておるというような実情にある点から見て、こうした形において赤字を補填するということに対しては、われわれは賛成できないのであります。  従つて前段はあえて反対はしないが、後段の賛成はできない。こういうようなきわめて矛盾した形において、われわれがこの法案に対する態度を決定しなければたらないのは非常に遺憾であります。ことにこの点につきましては、私は毎回指摘するのでありますが、関連のない法律を一本の法律改正しようとする立法技術上の、政府としてのまずさというものが現われて来ている。この印紙をもつてする歳入金納付に関する法律失業保險法との関係は、これは相関関係があるのだから、一本の法律改正でもつて行くのも適当だと思いますけれども、第四條の厚生保險特別会計法の問題は、何らこの印紙をもつてする歳入金納付に関する法律とは関連がない。こういうようなまずい、ある意味からいえばずるい立法技術をもつて国会に臨もうとする政府の態度が、われわれとしてこうしたきわめて遺憾な態度をとらざるを得ないことになつたということを最後につけ加えまして、遺憾ながらこの法案に対しましては反対の意思を表明するものであります。
  120. 川野芳滿

    川野委員長 林百郎君。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方の党も五つの理由で簡單に申し上げますが、反対いたします。なお反対と言いますけれども、先ほど田中委員からもありましたように、失業保險法の一部改正厚生保險特別会計法の一部改正、この二つの独立した形の法律改正を一本の表をもつていたしますと、印紙をもつてする歳入金納付に関する法律は、七つばかりのものをこの中に含んでいると思いますので、非常にまずいと思います。それで前半の失業保險の点につきましては、これはまつたく技術的な点でわれわれ文句はないのですが、この印紙の仮面をかぶつて実は夜叉の材料がこの厚生保險特別会計法の中に含まれておるということが発見されたのであります。そこでわれわれは本質的にこの法律に一部賛成、一部反対ということもできませんから、反対するといことになつたのであります。  そこで反対する理由の一つとしては、積立金というものはやはり過去の蓄積、これは要するに厚生保險施設改善するというこの事業の健全化をはかるために、せつかく過去に努力して蓄積されて来たものが、滯納徴收ができないとか、政府一般会計からの補填ができないからというので、大事な蓄積金を流用するということには、まず第一反対しなければならない。これは事業の健全化のためにとつておくべきものであつてそうしたときの政策的な理由によつて流用するというような、安易な使途に使わるべきものではないということが第一点。  第二点としては、これを医者の診療費の方へまわしますと、医療機関が完全に荒廃されて来てしまう。もちろん医者も大事でありますが、医療機関の拡充強化ということも非常に必要な点でありますから、一方を犠牲にして一方を成り立たせるというような方法には、第二点として反対したいと思います。  第三点としては、一般会計に七億要求しておりますが、水田さんのお話によるとこれも出さぬという。それから積立金からの五億円でありますが、これを合せましてもわずか十二億ばかりのことだと思います。これくらいのものは大事な三百何十万という労働者の健康のことでありますから、健康を考慮して—日本の国の再建の大事な礎になる労働者諸君の健康の問題でありますから、わずか十二億くらいのものは、水田次官の努力によつても出そうなものだと私も考えるわけであります。ですからそういう意味でこれは当然一般会計から補填すべきだ。こんな過去の労働者の苦労して蓄積した積立金を流用すべきではないと考えます。  それから第四といたしましては、これは社会党の川島委員から言われますように滯納徴收であります。これはおそらく事業主の方の滯納がそのまま看過されておる。これは労働賃金の方から保險料は前引きでとられておりますから、結局事業主がこの保險料滯納をしておる。それを政府が大目で見て、その事業主の怠慢を過去の積立金の流用ということでごまかそうとしておりますが、これは当然滯納徴收を十分すべきものだと思うのであります。これが第四。  最後に、私の方の党としてはやはりこうした労働者の健康あるいは保險事業というものは、将来は完全に国営にすべきものである。これを單なる労働者とか、あるいは事業主とか、こういう個人的な負担と責任にまかすべきものではない。国家が当然責任を負うべきものである。これはあらゆる方面から言つて政府が全責任をもつてなすべきもので、保險事業の国営という点から行きまして、私どもの方はこの法案に賛成することはでないのであります。  以上五点をもつて、私どもの方の党ははなはだ遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。
  122. 川野芳滿

    川野委員長 討論は終局いたしました。これより採決に入ります。本案を原案の通り可決することに賛成の諸君の起立を求めます。     〔「賛成者事起立〕
  123. 川野芳滿

    川野委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお報告書作成その他の件は委員長に御一任願います。
  124. 川野芳滿

    川野委員長 なおこの際お諮りいたしたいと存じまするが、閉会中審査事件として特に議員より付託せられました税制に関する件、及び復興金融金庫に関する件の二件につきましては、去る十日二十四日の最終日に審査未了の報告書を議長のもとに提出いたしましたが、第六国会においていかがとりはからうことといたしましようか。
  125. 田中織之進

    ○田中(織)委員 本委員会の活動にきわめて重要な案件でありまするので、本国会においても引続き国政調査として継続せられんことを望みます。
  126. 川野芳滿

    川野委員長 ただいまの田中君の動議のごとく決定するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 川野芳滿

    川野委員長 後異議がないようですから、さよう決定いたします。  なお議長のもとに提出いたしまする国政調査承認要求書の作成及びその提出手続等につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じます。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 川野芳滿

    川野委員長 次会は明日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十五分散会