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1949-11-18 第6回国会 衆議院 水産委員会公聴会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十八日(金曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 石原 圓吉君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 夏堀源三郎君 理事 平井 義一君    理事 松田 鐵藏君 理事 佐竹 新市君    理事 林  好次君 理事 砂間 一良君    理事 小松 勇次君       小高喜一郎君    川端 佳夫君       田渕 光一君    玉置 信一君       冨永格五郎君    長谷川四郎君       奧村又十郎君    水野彦治郎君  出席公述人         報告水産株式会         社常務取締役  上田 哲夫君         機船底曳網業  藤田 松藏君         神奈川鰹鮪漁業         協同組合長   寺本 正市君         日本釣魚会連盟         会長      掘田 正昭君         全国漁業協同組         合学校学生   網師  勝君         日本施鋼漁業協         会理事長    菅原 順平君         漁     業 關  笹市君 委員外出席者         專  門  員 齋藤 一郎君         專  門  員 小安 正三君     ————————————— 本日の会議に付した事件  漁業法案及び漁業法施行法案について     —————————————
  2. 石原圓吉

    石原委員長 これより昨日に引続き水産委員会公聽会を開きます。  この際公述人各位に対し一言御挨拶を申し上げます。本委員会漁業法案及び漁業法施行法案審査にあたりまして、特に公聽会を開いて、両法案について、利害関係者及び学識経験者その他一般方々より広く意見を聞くことといたしましたのは、申すまでもなく、右両案はわが国基礎産業一環をなすところの漁業生産に関する基本的制度を、根本的に改革せんとする画期的なものでありまして、これが今後の漁業あり方、ひいては水産業界に及ぼすところまたはなはだ大なるものがあり、全国漁民の重大なる関心はもちろん、この漁業制度改革のねらいたる漁業生産力発展と漁村の民主化とは、わが国産業経済再建の重要な一環をなすものとして、国民一般関心及び目的を有し、かつ深い利害関係を持つていると認められるところであります。  すでに御承知のごとく、本法案は、前第五回国会に内閣より提出され、水産委員会において審査を行い、第五回国会閉会中も、特に院議をもつて委員会において継続審査を行い、今国会に、あらためて本委員会に付託され、目下愼重審議をいたしておるのでありまして、本委員会といたしましては、特に本案專門の小委員会を設置し、同小委員会におきましては鋭意検討の結果、本案に対する修正案について一応の成案を得ておるのであります。かかるときに際しまして、本案審査に広く国民の輿論を反映せしめるとともに、多年の御経験と御研究に基くところの各位の御意見を拝聽することによつて本案審査に万全を期したいと存ずるのであります。公述人諸君におかれましては、本案についてあらゆる角度から、忌憚なき御意見を御発表くださるようお願いする次第であります。しかし万一にも利己的な意見公述され、そのため真相をつかみ得なかつたならば、わが国水産界に影響するところ甚大なるものがあろうかと思うのでありまして、あくまで公明正大なる御意見の発表を切に希望いたします。  次に議事の進め方について申し上げておきます。公述人諸君発言は、その都度委員長よりの指名とすること、時間の関係から、公述人一人の御発言時間は大体十五分程度とすること、御発言発言台でお願いすること、御発言の際には必ず御職業とお名前を述べていただくこと、また委員諸君公述人に対する質疑は、各公述人公述後ただちに十分ずつ行うこと、以上あらかじめお含みを願つておきます。  なおこの際公述人各位に申し上げますが、衆議規則第八十二條、第八十三條及び第八十四條によりまして、公述人の御発言の場合は委員長許可を要すること、並びにその発言意見を聞こうとする事件を越えてはならないことになつております。委員は、公述人に対する質疑はできるのでありますが、公述人より委員質疑はできないことになつておりますので、念のため申し添えておく次第であります。  なおお諮りします。春日信市君が出席不能のため、日本施網漁業会理事菅原順平君を代理にされたい旨申出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石原圓吉

    石原委員長 御異議なきものと認め、さようとりはからいます。  それでは公述人上田哲夫君に御発言をお願いいたします。
  4. 上田哲夫

    上田公述人 公述人上田哲夫でございます。  まず結論から先に申し上げますと、私は政府提出にかかる修正漁業法案反対でございまして、次に申し上げますることを改正されんことを希望いたします。第一に新しい漁業法施行せられることによつて消滅する漁業に対する補償金は、漁業免許料漁業許可料によつてまかなうことになつておりますが、これは当然国庫負担によつて補償されたきこと。第二に漁業免許優先順位に関する点は、漁業調整委員会漁業免許または許可に関する勘案事項とされたきこと。第三に漁業調整委員会制度を整備するとともに、漁業民主化の線に沿つて、強力かつ積極的に動き得るように、委員会所管事項を明確にされたきこと。第四に政府提出原案は、新法の施行によつて現在の漁業権を一律に消滅させることとなつておりますが、消滅あるいは調整すべき漁業権を、理由のないのにかかわらず休業しているもの、不適格者経営するもの、自分漁業を行つていない者の所有しているもの、不当一な集中によるもの、不当な慣行による專用漁業権だけを取上げて整理の対象とされたきこと。  以上申し上げたことは、改正すべき要点のみを漁業者立場から率直に申し上げたものでありますが、その理由を総合的にここに申し述べたいと思います。今回の漁業法改正法案根本精神は、漁業漁民大衆への解放、漁業生産力発展漁民による漁場管理、これであると言われておりまして、きわめて進歩的な漁業民主化思想に出発したものと思われます。しかしここにはなはだ興味あることを御報告いたしたいのであります。私の会社は、北海道におきまして、にしんの定置漁業を数箇統経営いたしておるのでございますが、昨年と本年の二回にわたりまして、本社から、学校を卒業したばかりの若い社員を数名現場に派遣したのでございます。これらの社員は最近の教育を受けたのでございますから、思想的にはどちらかと申せば、はなはだ進歩的な社会主義的な傾向を持つている者たちがおつたのでござは円滑に運ぶのでございますから、おおむね自分出身地から、近親者とか、あるいはその土地の人々を連れて乘り込んで来るのであります。従いまして土地仕事は、その土地人間優先、させるというような考え方は間違つておるものと思われます。  第三に定置漁業の漁、不漁は船頭の手腕とともに、さらに大きく自然條件に左右されるのでございます。従つて漁場を一箇統だけ経営することは最も危險を伴うのでございまして、毎年安定した経営を続けるためには、危險分散の意味において、なるべく各地に分散して多数を経営することが望まれるのでございます。従いまして、不当に集中したものであるかどうかなどをきめる場合は、特にこの点に留意を要すると思うのでございます。以上の諸点から政府案優先順位というようなものは、單なる理想主義でありまして、これを廃して、経営能力のある者に与えることが当然であると考えるわけであります。  次には、原案によりますと優先順位は、第一順位協同組合自営、第二順位生産組合をあげております。協同組合自営は、名目的にはきわめて時流に合した漁民第一主義となつておりますが、しからば組合内に必ず経営適格者を得られるかどうか、漁業技術の優秀な者を得られるかどうか、資金の見通しを確実に立て得るかどうか、あるいは漁民が真に共同事業精神に徹して、勤労意欲を発揮すかどうか、そのような具体的な問題に対しまして、何人が自信をもつてこれにこたえらるでありましようか。今資金の点についてのみ考えてみましても、国家は必要とするその資金を与えることは困難でございましようし、市中金融機関としても、協同組合を簡單に融資の対象として取上げるとは思われないのであります。当局としては、漁民必要資金を闘い取らねばならぬと説いておりますが、事業に着手あるいは継続できるかできないかというような根本的な重要問題を、闘い取るというようなまるで労働組合アジビラ的表現で逃げていることは、その態度があまりにも無責任きわまると思うのであり、むしろかかる法案を立案した人の頭の置きどころに再検討を加える必要があり、私どもにわかに承服し得ないところでございます。かつまた漁業協同組合の実情を見ますると、新たな協同組合法法によつて設立された漁業協同組合は、その出資額が五万とか十万、多くとも数十万円を出ないのであります。その組合が数百万円あるいは一千万円を越えるというような漁業を、しかも重大な危險を冒しながら自営できるかどうかは、言わずして明らかであると思うのであります。このような組合自営方策を全面的に押し進める場合は、巨大資本の手がこれに延びまして、いつの間にか実権はこれらの手に握られてしまい、單におどる漁民となるであろうことは火を見るよりも明らかであります。政府原案によれば、今回の漁業法改正の趣旨とまつたく逆の現象が現われるものと断じたいのであります。  次に指定遠洋漁業についてでございますが、第一に指定遠洋漁業許可定数を定めねばならぬというのを、定めることができるとすべきでありまして、これは漁業調整委員会勘案事項といたされたいのであります。役人といえども良識に富んだ方々が多いのでございまするから、法律によつてこのようなことを一概に縛りつけるというようなことはせないで、役人良識漁業調整委員会勘案にまつて決定することが、最も公平にして妥当であると存ずるのであります。  第二に、許可定数は、隻数とトン数の点にまで触れて来るのであろうと思われるのでありますが、代船建造等の場合に、従来のものよりも大型建造をもくろむときは、不足するトン数を探さねばならず、これは優秀大型漁船出現に大きな障害となるのであります。従いまして操業能率を増進させるための十トンや二十トン程度増トンは、これに対して、彈力性のある行政措置を講ずる余地を残して置くべきであると考えのでありまして、これをしやくし定規的にやる場合は、漁業者のごまかし的な苦心策を増長させる結果となるばかりであつて、誠意のある漁業者の、新しい優秀な企画の芽をつみとることになると思うのであります。  第三に免許料及び許可料のことでございますが、これを具体的に申しますならば、定置漁業では毎年水揚げ高の六ないし七%、指定遠洋漁業のうち以西底びきでは一相当り八十万円近くを納めねばならぬと聞いております。現在の制限海区内において合理化すべき点を極度に研究しつくし、漁獲能率の増進にも最高度の努力が拂われているにもかかわらず、なおかつ相当の欠損を示しておる今日において、将来漁区の拡張が認められ、所要資材質量ともに十分の手当が可能にならねば、とうてい負担能力はないのであります。なおまた一部の漁種を除き、大部分のものに引続き統制が加えられておるのでありますが、これらの統制がはずされて生産原価にマッチした適正な値段で魚が販売できるようにならなければ、許可料どころか、事業継続さえもあやぶまれるということが現実の事態でございます。ことにわが国経済が平常化した場合などを考えますと、かような莫大な免許料許可料を今後約二十五年間の長きにわたつて引続き納め得るでありましようか。おそらく将来これは当然国庫負担となるであろうことは、想像にかたくないのであります。なおまたこの免許料許可料をもつて補償行政費の一部をまかなうというに至つては、もはやこれは論外でありまして、かかる負担金をとるのは、わが国にあつては他に類例がない点から考えても、漁業者のみにかかる負担を負わしめることには絶対に反対でございます。第四に、指定遠洋漁業新規許可は、くじ引きでこれをきめることになつておりますが、これはきわめて乱暴であり、多くの弊害を伴うものと予想されます。なぜかならば、かりにくじ引きにより当選し、新規許可を獲得したものは、船をつくつた後ただちにこれを他に売却することができるでありましようし、またそういうことをする人が現われると予想せられるのでありますから、出願者の中に真の漁業者でない、いわゆる利権屋の暗躍する余地を多分に残しておるのであります。従つてくじ引案を廃止いたしまして、漁業調整委員会の主要なる勘案事項とするのほかはないと思うのであります。  以上をもちまして、修正を要すると思われる諸点説明を終ろうとするものでありますが、当初発表せられたる政府原案は、あまりにも急進的であり、おそらく先進各国にもその例を見ないのであります。もしこのような改正法案がこのまま通過施行せられるものとかりに考えてみますと、生産は急激に減少し、沿岸漁業は救うべからざる混乱に陥り、指定遠洋漁業は衰微してしまう。世界に誇るわが国漁民の勤勉さは、一朝にしてくずれ去る。こういうような思うだにはだ寒い感じのする事態の生ずることが予見されるのであります。幸いにして当水産常任委員会には、知識、経験の豊富な方々がおそろいでございますから、十分当法案審議を盡され、單なる空想的机上論を廃止して、今申し述べましたような諸点をしんしやく勘案され、現状に即した漸進主義を採用されんことを希望して、私の公述を終りたいと思います。
  5. 石原圓吉

    石原委員長 質疑はありませんか。——質疑なしと認めまして次に移ります。藤田松藏君。
  6. 藤田松藏

    藤田公述人 私は子供のときから漁業をやつておりまして、こういう席上で皆さん自分のお願いしようと思うことをはつきり伝えられるというような立場でありませんので、自分の申し上げることが非常におわかりにくいことであろうと存じますが、その辺は賢明なる皆さん方がよろしく御推量くださいまして、お聞き取りのほどをお願いいたします。  私は子供のときから漁業をやつておりまして、真の実業者でありますが、申すまでもなく漁業というものは、広い海面で多数の漁業者が入りまじつて漁業をするものでありますから、その漁区も非常に明確でないと思うのであります。従つてこの点は土地を耕作する農業とは、根本的に違つたところがあると思うのでございまして、今度の漁業法案わが国漁業根本法でありまして、この法律によつて漁業あり方が定められることがありはせんかと思うのであります。この改正法を通覧しまするに、いたずらに理想に走つて漁業の実態に即しないものが多少あるのではないかと考えております。極言すれば、この法によつて漁業の取締りをやられることは、結局混乱を来し、生産を低下するおそれが非常に多いのじやないか。本日は各代表者が、それぞれ專門的に説明されると思いますから、自分は底びき網のことだけについて二、三意見を申し述べさせていただきます。  大体今度の法案は一部を修正して賛成することができると思うのでございますが、自分たち修正を要したい点は、法の精神資源維持目的を強調されたい。原案漁業資源対象として行われると思うのでありますが、本法の精神には資源維持のことが明確にされていない。この点を法文の上にはつきりと明確にしていただきたい。  第二には以東機船底びきの許可証は、昭和七年までは地方長官がこれを許可したものであつて、その後順次船の形も大きくなりまして、そこで数県にわたつて漁業をなすようになりました関係上、農林大臣許可するようになつたと聞いておりますが、この法案のうちにはそこがはつきりしていない。これもひとつ機船底びき網漁業許可は、農林大臣許可をするということをはつきり明記していただきたい。  第三は、この法の第五十八條の四項に、許可または起業の認可をしなければならない数が規定により定めた数を越える場合はくじ引き云々ということがあります。これは前のお方からもよく説明されましたが、その説明同感であります。  第四に、第七十五條の、許可する漁業に対し行政費をまかなわすというようなことが書いてあるように思いますが、これも前のお方はつきりと説明されましたから、ここで詳しく申し上げることはない、前の御意見に賛成であります。  以上述ぺまして以東底びきの代表者の言葉にかえる次第でございます。
  7. 石原圓吉

    石原委員長 質疑はありませんか。——寺本正市君。
  8. 寺本正市

    寺本公述人 私は神奈川県三浦郡三崎町の遠洋漁業者でございます。長い間この仕事をやつておるものでございますが、現在の情勢にかんがみて、今度の漁業法案が変更されることにつきまして、一応公述したいのでございます。  それは許可料の件であります。法律第七十五條第三項の関係のことでございまして、許可料を廃止したいという私の意見でございます。理由は、仄聞するところでは、許可料徴收は従来の方法と異りまして、毎年水揚げの幾分かを徴收される由と聞きましたが、かかる税金の二重取立てのようなこの制度は絶対反対であります。現在の遠洋漁業者状態は、統制下においていろいろの苦難をしのいで、ようやく生産にいそしんでおる状態でございますが、その内容はなかなか他で想像するようなものではありません。幾多の難関を切拔けようとするその漁業者の声は、すでにお聞きになつておることと思いますが、これは世界的漁業でございますし、また日本としても、優秀な漁業としてこれを取上げていると思います。われわれはこの情勢等をかんがみて大いに自覚し、いくら苦しくても、たとえ倒産のはめに陷るとも、現在の国情にかんがみてこれを切拔けなければいかぬという強い信念から、この事業を遂行しているのでありますが、現在のこの経済的情勢に対して、なかなかこの仕事が完遂できないという状態でございます。一つ税金一の重課、それに保險——われわれは戰争においてほとんど全部の船を失つた。私個人としても五艘以上の船を失つております。それを終戰後復興金融金庫、あるいは勧業銀行あたり資金を借入れまして、ほとんど全部が借金で船をつくつておる状態であります。それがために金利は大きな数字になつております。その上船体保險は今日は著しく向上しまして、堪えがたい状態であり、修繕料は天井を貫くような高い料金を拂つている。これはやみというか何というか、高い料金を拂つておる。そのほかいろいろの漁業資材も、配給のみではとても足りませんので、やはりやみのものも買わなければいかぬ。綿絲によらず、あるいは油によらず足らない。その他一般資材も足りないのであります。所得税は他と比べると一層高い税金がかかつている。その上許可料を毎年々々水揚げによつてとるということは、業者をして生産をとめるという一つの原因になりはしないか。今でも持ちかねる、やり切れないという状態である遠洋漁業者を、何とかして幾らかでも政府がこれを助けて行かなければ生産が上らぬということを考えないで、さらにこの上重課するところの税金と同じような許可料をとるということは、漁業者をして仕事をやめろということになる以外に考えられぬのでございます。よつてそういう意味からこれは絶対反対したい。  なお許可有効期間を長くすることを要望したい。原案の五箇年では事業者船員の生活安定上からいつても、短か過ぎて不安となる。般主並びに船員がおちついて事業に專念できるように、期間を長くすべきではありませんか、こういうことであります。これはもう強調すべき必要はないと思いますが、五年くらいでは、もし現在のような赤字を続けているときに、五箇年どうなりこうなり持つたが、あと五箇年によつて何とか打開できるという多少五箇年の経験によつてあと五箇年、あるいは十年のうちに、何とか自分倒産を食いとめる、食いとめてものにしようという計画が、すべて事業家の常だろうと思います。三年や五年は、あちこちしておるうちにまず相当な資産を食い込まれて行くのであります。そして財産をだんだんなくするうちに自分経験が得られて来て、あとはうまく事業が円滑に行ける、こういうことが普通になつております。この事業性質から言つても、五箇年くらいでやめてしまわれる、またその許可を与えるだけの資格がないというようなことでやめさせられたならば、現在の状態では倒産者が相当出るのであります。それでは遠洋漁業者はますます衰微し、かつ漁獲高の減退は言うまでもないことになります。そういう意味合において、許可有効期間をもつと長くしてほしい。以上公述いたした次第でございます。これをもつて終ります。
  9. 石原圓吉

    石原委員長 質疑はございませんか。
  10. 夏堀源三郎

    夏堀委員 ただいまの寺本さんの御意見の中で、許可料は廃止してもらわないと事業は成立たないという御意見でありました。それはいかなる場合においても、どうしても廃止してもらいたいという御意見であるのか。業者許可料を出しても、それによつて漁業がむしろ安定性をもつて発展するというような方向に向つて行く場合には、よろしいのであるか。どうでもいいのであるか、その点をお伺いいたします。
  11. 寺本正市

    寺本公述人 私の意見は、漁業というものはこれを生かして、どこまでも国家としては、盛り上げて行かなければならぬ大事の漁業であるという点において、現在非常な苦しみをしている漁業者立場を、幾らかひつぱり上げようと政府は考えるべきが当然ではないか。ただもうとればいいということは、漁業者をつぶすという意味合いになりますから、今夏堀さんのおつしやられる通り、それは将来円滑に仕事ができて行くんだということに対しては、私は反対の意を表する必要はないと思います。
  12. 夏堀源三郎

    夏堀委員 それでわかりました。許可の五箇年ということは同感であります。そうすると何年でやればよいのかということなんです。これを伺います。
  13. 寺本正市

    寺本公述人 事業性質から申しまして、少くとも十年以上あるいは二十年ということを与えられることがいいと思います。
  14. 石原圓吉

    石原委員長 質疑がないようですから次に移ります。堀田正昭君。
  15. 掘田正昭

    堀田公述人 私は日本釣魚会連盟会長をいたしております堀田であります。  ただいま私がここで述べさせていただきます意見は、スポーツつりを行うつり人立場からの本法案に対する意見であります。われわれつり人の主張の根拠は、もちろんつりが最も民衆的な健全娯楽であり、それが国民健康保持体位向上参に重要な役目を持つているということがわれわれの意見根拠であります。これにつきましては特に詳しく申し上げるまでもないと思いますが、ただつりが、たとえば年齢から申しますれば、小学校に行つておりますようなごく幼年の者から、古稀を過ぎた老人にも及び、またつりをやつておりますものの職業社会的階級というような方面から見ましても、あらゆる階級——各工場の勤労者から俸給生活者その他職業のいかんを問わず、また貧富の差別もなく、このつりによつてわが国民が知らず知らずの間に楽しみつつ体位を保持しておるということは御承知通りであります。統計がありませんので、数学的にはつきりどれだけの人間つりをしておるかというようなことは、申し上げられませんけれども、しかしわれわれが感じましただけでも、おそらく日本におけるつり人の数は、何百万をもつて数えるほどの多数であると存じております。その見地からいたしまして、つりはしばしば隠居者の道楽であるかのごとくに誤解されまして、たとえばつり用具は、他のいろいろな運動用具とは異なつて、ほとんど奢侈品であるかのごとき高税の目的となつておる、いろいろな方面からつりは非常な誤解を受けておりました。しかし幸いこのたびここに御審議になつております漁業法案におきましては、われわれつり人立場に理解ある態度がとられておる。従つてわれわれつり人といたしましては、この法案が一日も早く成立いたしますように希望しておる次第でございます。われわれがこの法案に対しまして申します意見は、この法案の最も重要部分であります海面の漁業につきましては、何もないのであります。それはつり人が海につりに行かないというわけではないのであります。海にも盛んにつりに行くのでありますけれども、海における職業漁業、それからスポーツとしての海のつりとの間には、はつきり性質上区別があります。従つて現状におきましても、またこの新法案のもとにおきましても、スポーツつりとしてのつりは、海面に関する限りは何ら不当な障害を受けておらないのであります。しかしながらこの海つりと反しまして川のつり、すなわち内水面のつりにつきましては、現在におきましては、各地において漁業組合というようなものが、かつてに入漁料を徴收したり、その他いろいろな制限を加えております。われわれとして国民健康保持の点から言いましても、非常に重要であると思いますが、いわゆるしろうとのつりは、ひどく不当な圧迫を受けておるのが現状であります。その圧迫がこのたびの法案第百二十七條によりまして除去される。すなわち法案第百二十七條によりまして、内水面に対する今のような不当な圧迫がなくなるということが、われわれつり人として本法案を衷心から歓迎いたし、賛成いたす理由であるのであります。この第二十七條に対しましては反対論もあるようでございます。すなわち内水面におきます漁業権が、あたかも地元民の生活権であるかのごとくに書かれておるようでありますが、これは当を得ない調査であると存じます。第一に、内水面におきましていわゆる職業漁業に従事しておる方は、それを專業としておるという場合は、きわめて特殊な場合で、また少数であります。その多くは、概して申しますれば、片手間な季節的な副業にすぎないのであります。この第百二十七條によりまして内水面における共同漁業権免許しないということは、決してこれは地元民の生活権に関係するような問題ではなく、その本質においては、ただ今の地方の漁業組合が、漁業権の名のもとに、われわれしろうとつり人に入漁料を徴收する。これははなはだ根拠のない入漁料を徴收するために、つりができなくなるということが、実はこの内実であるのであります。  内水面におきましては、海におきますと異なりまして、魚族の保護とか増殖ということには特別の施設その他いろいろなことが必要であるのであります。海のように広い部面でありませんから、濫獲をいたしますれば、たちまち魚族は絶滅するおそれがあるのであります。従つて過去におきましても、政府または地方庁におきまして、河川内水面の魚族の保護増殖等には、いろいろ施設されて来ておるのであります。それには非常に費用が必要である。ところがわが国の現在におきましては、それに十分な費用を割当てることができない。従つてその費用を一般つり人負担させようというのが、この新法案一つの注目すべき点であると思います。われわれつり人といたしましては、みな喜んでこの料金負担したいと考えております。われわれが考えますところによりますれば、もし内水面の魚族保護等の施設を、各地方の漁業組合等に一任して、そこで入漁料をとつて適当に行つて行くというようなことにいたしますならば、とうてい実効をあげることはできないと考えます。それはいろいろな点からそういうことになるのでありますが、この内水面の魚族保護というものは、ごく限られた地方で行うことはできない。たとえば内水面の魚族として漁業目的になりまする大きなもの、たとえばあゆとかますとか、これらはすべて移動して歩くものでありまして、ごく狹い地域の、そこだけでどうすることもできないのであります。従つてある河川の漁族保護ということにつきましては、かなり広い範囲に対する計画が立てられなければならないのであります。従つて限られた地方の人にそれをまかせるということは、とうていできないのであります。また今までの実績から見まして、われわれつり人から見ますと、各地方にあります漁業組合等は、この事業負担する適格者ではないように考えております。それは今の入漁料というものが、結局何のために使用されるかということには何ら監督の道もなく、まつたくそれがその地方民に、ただ何のことなしに使われてしまうというように考えられるのでありまして、現在までの実績から見ましても、われわれは各地方にあります漁業組合等がその適格を持つておるとは考えません。どういたしましても、いわば全国的な、少くとも大きな広い地域的な計画を立てて、そうして学術的にも技術的にも、十分な研究をされた上で行われなければならない。内水面の魚族保護というようなことは、国家もしくは地方庁がその責に当つて、その費用については、広くわれわれつり人がこれを負担する。私が聞いておりますところでは、内水面の職業漁業者者の数は約二十万ということであります。われわれ数百万のつり人がその料金負担して、それによつて内水面の今のような施設に充てるということになりますと、これは十分なことができるわけであります。そういう点からいたしましても、このたびの法律案は適当なものであるとわれわれは考えております。この法案によりますと、内水面の魚族保護等の費用は、われわれつり人負担することになるのであります。従つて第百三十條以下に規定されております内水面漁場管理委員会におきましては、つり人発言権が尊重されなければならないと考えます。このたびの法案は、その委員会の構成の中に、つり人を入れることを予見してつくられておるものと、われわれは了解いたしておりましす。われわれとしても、実はこまかい点になりますと、この法案に対してやや不十分であるような点があるようには考えておるのであります。それはたとえばただいま申し上げました第百二十七條において、内水面に共同漁業免許しないというものから、湖沼等が一般的原則として除外されておるのは、これは少し行き過ぎでないかというようにわれわれは考えております。また現行法と同じように、今度の法律におきましても、爆発物であるとかあるいは有毒物を使用して濫獲することを禁止する規定はありますが、しかしながら最近非常に流行しております、たとえば電気を水に通して濫獲するというようなことに対しては、禁止規定が入つておりません。これはおそらく主務大臣もしくは地方長官の命令規則で行われるのでありましよう。しかしそれは罰則の軽重がありますから、できるならばそういうものも十分規定していただきたいと、われわれは考えます。しかしいずれにいたしましても、先ほど申し上げました通り、内水面における共同漁業免許されないことになりまして、そうしてつり人に対して内水面が解放されたということによりまして、われわれはごの法案に賛成でありまして、一日も早くこれが成立いたしますように希望する次第であります。
  16. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑はありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑なしと認めまして、次は網師勝君。
  18. 網師勝

    網師公述人 私は全国漁業協同組学校生徒の網師であります。  現在漁業協同組合学校におきましては、各地の漁村から集つて来た二十数名の者が学んでおるのでありますが、私たち、漁村の生活を直接に左右いたしますこの漁業法案が、今回公表せられまして以来、沿岸漁民とこの法案と結びつけまして、いろいろ検討を加えて来たのでございます。たまたま今日は漁民を、漁村を愛せられ、日夜本法案と取組んでおられまする水産常任委員の皆様に、親しく私たちの微衷をお訴えする機会を与えられましたことを、お礼を申し上げるものであります。  私どもは、この漁業法案が目標といたしますところは、非常にけつこうなこととうれしく思うのでございますが、この内容に立ち至りますとき、何がなんだか、きつねにつままれたような気がするのであります。この法案がいやしくも二百万沿岸漁民の生活を、また沿岸漁業の実情を知つて法案であろうかと、疑わざるを得ないのであります。現在の沿岸漁民は、漁業の科学化、機械化とともに、その生産力は減退の一途をたどり、また資力がないため、手をこまねいてわが身をしやぶつて生活して居る現実であります。このような現状におきまして、法案が沿岸漁場をうるさく規定して、しかも共同漁業権とかに浮魚をはずして、零細漁民を本島岸辺に押えつけておきながら、反面許可漁業におきましては、その資源の枯渇を心配しながら、またその沿岸零細漁業との統争の絶えないのを知りながら、何らの明確なる規定が無いことは、この法案の最も大なる欠陥であると言わなければならないと思うのであります。  次に法案の内容に対しまして私どもの希望といたします諸点について、述べてみたいと思うのであります。  第一に、第一條の目的でございますが、漁業生産力も民主化も、わが国の水産資源の実情を思いますとき、この資源の保護増殖なくしては、とうてい望み得ないものでございますし、またわが国漁業が、掠奪漁業として他国より嫌惡せられております国際的観点に立ちましても、水産資源の保護増殖をはかる旨の規定を、第一條にはつきりと明文化していただきたいと思います。   第二に、漁業権の保有主体の問題とその内容でございますが、漁業民主化とは、多数の漁民が経済的にも封建的身分関係からも解放せられまして、生活の安定を期するということだと思うのですが、このために漁場の総合的高度利用をはかろうとするならば、あらゆる漁業権漁民団体のみに免許するのが妥当であると思うのであります。かようにすることが、また一昨年制定せられた水産業協同組合法の施行せられました趣旨に合致するものだと思うのであります。かかる観点に立ちますならば、法案漁業権が、現在行われている漁法、漁具を中心に規定しておりますがゆえに、その分類と内容におきまして、複雑難解を免れ得ない結果となるのでありまして、これを現行の專用漁業権のように、一定沿岸漁場を定めまして、この漁場内の利用、管理は一切この地元漁民団体に総合的に、合理的に使用せしむべきが最も良策であると思うのであります。この場合、現実的に資金等の制約によりまして、その漁場内の漁業が営むことができないために、生産力に大なる影響を及ぼすようなおそれがあります場合には、本法案の適格性とか優先順位を簡明に整備修正いたしまして、これをあとで述べます地区漁業調整委員会勘案事項といたしまして、個人とか団体に利用料を徴放いたしまして、特定の漁業を営ましめる道を開くべきであると思うのであります。これを具体的に申しますならば、法案の第六條の漁業権の規定を全部廃止しまして、これらのすべてを含めまして單一共同漁業権のみとするのであります。   第三に漁業調整の問題でありますが、さきに述べました單一共同漁業権の総合的利用をはかるために、各漁業單位の関係地区へ、地区漁業調整委員会を新たに設けるべきであると思うのであります。また海区漁業調整委員会に関してでありますが、現法案におきましては、都道府県知事諮問機関として認められているにすぎないのでありますが、漁民民主化を願いつつも、都道府県知事に決定権が与えられているということは、実に不可解に思うのであります。もし單に委員会を諮問機関といたしましたならば、委員会と官庁との間に、その決定事項に関して責任の所在が不明朗ともなりまして、また委員自体にその職務遂行の熱意が減退し、官僚まかせの結果、官僚独善の弊風を惹起するおそれが、多分にあることを心配するのであります。調整委員会は、全員漁民より選ばれました委員により構成せられることといたしまして、しかも決定機関になすべきであると思うのであります。專門委員は別途に、調整委員会に対しましてその資料の提供等によります強力な補佐機関として、存置すべきであると思うのであります。また初めに述べましたるごとく、資源保護の規定によりまして、よろしく許可漁業に関する明確なる規定を設けまして、許可の権限を一切調整委員会に一任すべきであると思うのであります。またこの許可にあたりましては、漁民団体の自営を第一優先順位に置きまして、完全なる漁業の調整と相まつて、本法案を名実ともに漁業の憲法とならしめますようお願いするものであります。またこのような重要なる委員の人材を求めまするとき、結果は仏つくつて魂入れずとか、この人材の養成には、国家として万全なる措置を講じていただくことを特に切望するものでございます。願われますれば、全国漁業協同組学校性質、内容からいたしまして、この養成機関といたしますることが、最も適当ではないかと信ずるものでございます。  最後に、漁業権補償に伴う免許許可料の問題でございますが、漁業権の單純化によりまして、それに含められる個人持ちの漁業権のみを補償するようにいたしますることが、財源とか行政上の問題が簡單に行くのではないかと思うのであります。またこの補償の財源を現在漁民に課しますことが、いかに困難であることかは、漁民の実情をよく御存じの諸先生には、十分おわかりのことと思うのでございます。これはよろしく国庫の全額負担としていただきたいと、お願いするものでございます。特に本法案におきまして、行政費漁民に賦課するというがごときは、言語道断ともいうべき処置であると思うのでございます。  以上本法案に対しまして、私たちの希望するところを述べたのでございますが、戰後労働者、農民に対しては、国家立場において、相当なる救済保護の手がさし伸べられておるのでございます。それにもかかわらず、ひとり最低生活に甘んじて、家族の労働力にむち打ちながら、漁業生産に従事しておる漁民に対しては、何らその救済の手がさしのべられていない現実なのでございます。私たちの生活を、最もよく御存じであります水産常任委員の諸先生におかれましては、何とぞ本漁業制度改革に対して、特に多数零細漁民の保護、救済のため温情心によりまして、わが国漁業発展と、二百万漁民の生活安定向上のために、御賢明なる御判断をお願いせるものでございます。
  19. 石原圓吉

    石原委員長 御質問ございませんか。
  20. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 網師君に御質問申し上げます。組合学校の学生諸君が、真劍に熱心に御研究になつた結論が、漁業権は働く漁民がつくつておる組織に与へるべきであるということについては、私ども敬意を表するものであります。ただこの中で二、三お尋ねしたいと思うのでありますが、一切の漁業権を共同漁業権というものに総括いたしまして、これを協同組合に与えようという御意見と、その総括的共同漁業権の中に含まれておる定置漁業、その他の漁業を営む場合に、地区調整委員会の決定に基いて、それを行使せしめる。その行使にあたつては、協同組合自営する場合に第一優先とするという御意見であつたようでありますが、総括的共同漁業権協同組合に与えますならば、協同組合が自主的に漁業権の管理、運用をなすべきではないか。それを別の調整委員会によつて運営するというところに、漁業権の管理主体にあらざるものによつて、それが運用されるというところに若干の矛盾を私は感ずるのでありますが、その点を明確にしていただきたいと思います。
  21. 網師勝

    網師公述人 ただいま私の話しましたことが非常に不十分だつたと思うのでありますが、大体現実的にみますときに、海区調整委員会において、單一共同漁業権というものを設けましたあかつきには、どうしても現状におきましては、その地区に二つも三つも協同組合ができ得る場合が多々あるのであります。その場合におきまして、これを協同組合だけが管理主体となり、調整するということは、非常に困難だろうと思いますが、これを地区の調整委員会に限りましては、その單一漁業権一つ協同組合に与えられる時期が来るまで、一応地区調整委員会がその管理主体となるべきではないだろうかというのであります。
  22. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 そういたしますと、結局協同組合は、自主的に漁業権者としてそれを管理、運用するということでありませんならば、政府原案と現実においてはかわりがない結果になりまして、その運用にあたつては、調整委員会意見に基いて決定し、その行使の優先順位はやはり調整委員会によつて決定される。ただ形式的に一応協同組合免許されているという形だけであつて、実体的には政府の案と何らかわらない結論になるのではないか。なお免許料許可料は当然全額国庫負担とするということでありますれば、漁業協同組合漁業権免許を受けるということは、何ら根本的に政府原案とかわりないようにちよつと感ぜられるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  23. 網師勝

    網師公述人 政府案を見まするときに、優先順位を法文に明確化いたしましたが、現在の漁民資材資金というような現状に立ち至つてみますれば、実際的には、漁民団体にその漁業権などが来ない結果になるのではないだろうかと思うのであります。一応全部これを地区調整委員会に与えまして、そうして自由にその場内における漁業権に対する発言権を持たせ、それに対して一定の利用料を徴收いたしまして、構成員たる漁民たちの福祉厚生とか、あらゆる経済的、社会的地位の向上をはかるという点において、私たちの見解と政府案なるものの見解とは、相当な開きがあるのじやないかと思うのであります。
  24. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 今の政府原案の、自営の場合の第一優先ということについては、協同組合漁業権が行かない場合が多い。これはその通りであります。ただ協同組合漁業権を持たせるということは、その漁業権を、民主的な協同組合が自主的に運用するというところに、持たせる価値があるのでありまして、それを協同組合の内部的な漁業権管理委員会というようなものでなく、外部の調整委員会によつて、その行使をやはり優先順位勘案事項等でやられるということであれば、ただ与えられたという形式だけであつて、自主的に協同組合が運用するのでないということに、矛盾がありはしないか。こういうことです。
  25. 網師勝

    網師公述人 私は現在個人に与えられております共同漁業権に対しまして、いかに自由にその生産力を伸ばしていると言いましても、現実的には、その漁業権なるものの独占排他性という強力なる権利によりまして、その周囲の漁民の意思とか何とかが、非常に圧迫されておるのではないだろうかと思うのであります。その点におきまして、もし漁業権漁民団体にありましたならば、その行使方法につきましてもいろいろ制約を加えますと、一部漁業権者のみに限らず、多数の漁民の幸福が得ちれるのではないであろうかと思うのであります。
  26. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 御趣旨はよくわかつているんです。わかつているんだが、組合に持たせるという以上は、その持つた組合が自主的に運用するというところに意味があるのであつて漁業権はとつたが、その運用については組合外部の調整委員会で運用されるということでは、持つた意味がなくなる。であるから、あなた方のねらいが、漁業協同組合に総括的な共同漁業権を持たして、そうしてそれは組合の内部に設置されるところの漁業権管理委員会なりで、組合の責任において自主的に運用するということなら、論理一貫しておるということなのでありますが、ねらいはわかつておりますから、この程度質疑を打切ります。
  27. 川村善八郎

    ○川村委員 網師さんに二点だけをお伺いいたします。一点は、よく漁民団体と申しておりますが、漁民団体には、協同組合法によりまして二つの法的団体があります。一つはいわゆる協同組合一つ生産組合でありますが、そのほかに最近何か、法的にはどうかと思いますけれども、漁民組合というようなものもあるようでおります。あなたの漁民団体というのは、この三つの点のいずれを指して言うのであるか。あなたは協同組合学校におられるんだから、多分漁業協同組合であると私は考えますが、この点を明らかにしてもらいたい点が一点。  もう一つは、免許料許可料は全部国庫負担にしろ、補償料も同様、そして免許料許可料補償料等は、個人だけの負担にしろ、いわゆる補償をしろ、こういう御意見であつたようでありますが、これは個人の権利を、全面的にこの法案では買上げをするということになつておりますので、その場合は個人のものだけにいわゆる補償もし、さらに個人が受ける場合は個人が免許料許可料を出せ、こういうのか  それからもう一つは、漁業協同組合の場合は、專用漁業権はすなわち今度の共同漁業権というものになりますので、いわゆる現在の漁業会の漁業権というものを協同組合に移管するという目的のもとに、いわゆる国家全面的買上げをやめて、協同組合にこれを与えろ、その場合には、補償料も免許料もとらなくても、やらずとらずの方がいいじやないか、こういう御趣旨なのか、この二点だけをお伺いします。
  28. 網師勝

    網師公述人 第一点は、生産組合組合員も当然協同組合に入られる道が講ぜられておりますから、私の漁民団体と言いますのは、協同組合をお指しするのであります。第二点におきましては、川村先生が言われましたように、個人持ちの漁業権だけを補償いたしまして、あとの現在持つておる漁業会の漁業権は、一切協同組合に移管するというような趣旨であります。
  29. 川村善八郎

    ○川村委員 わかりましたが、その個人の持つておる漁業権、それを国家補償して、それを漁業協同組合に無償で与えろという御趣旨かどうか。
  30. 網師勝

    網師公述人 そうでございます。
  31. 川村善八郎

    ○川村委員 わかりました。
  32. 石原圓吉

    石原委員長 ほかにありませんようですから、次に菅原順平君。
  33. 菅原順平

    菅原公述人 私は日本旋網の理事をしておる公述人菅原順平であります。  今日問題になつており、われわれが熱心に考えなければならない漁業上の問題と申しますと、水産資源の保護育成と、それをどういう形において合理的に行うか、こういう二つの点が考えられるのであります。この二つの点が今後われわれが漁業法を実施してもらう場合の大きなねらいになる、こういう面から考えて行きますときに、前公述人の方からもお話がありましたように、まずわれわれは、現在提案中のこの漁業法案の第一條に対して疑問を抱かせられるのであります。第一條は、漁業生産に関する基本制度であるということと、もう一つ漁業調整機構によるところの民主化ということを言うておりますが、依然として旧来の漁業あり方に基いてそれを考えておる。今言うように、漁業資源の保護育成ということが落ちたということは、これは大きな欠陷ではないか。もう一つ第一條について申し上げますならば、漁業の基本制度は、今日においては私どもは漁業民主化にあるというふうに考えておるのであります。それが順序をはき違えた形で載せられておるということが、あの第一條を見たときに、私どもとしましては非常にさびしい感じがするのであります。ただ形式的に順序を並べたのではないか、こういうふうに考えられる点であります。第一條には、気持の上の問題は別問題として、私も水産資源の保護育成ということを強くうたつていただきたい。  次に今回の漁業法案を通覧して見ますときに、現行漁業制度が明治三十四年において果し得なかつたことを、この漁業法案においてなしとげようとするような努力の跡が認められるのであります。それはけつこうでありますが、そのために、はなはだしく現行漁業法の範囲にとらわれ過ぎてしまつている。その結果が、法案全体を見て行きますと、免許漁業に関する規定は非常にやかましく規定されております。あんなふうにこまかに技術的にいじくらなければ、従来現行漁業法におけるところの免許漁業の不備な点、いわゆる封建性を拂いのけて漁業の近代化をはかるといろ場合には、あれだけのことをやらなければできなかつたのだろうかというような感じを抱かせる反面、現在最も問題になつて来ているところの許可漁業については、現行漁業制度をそのまま寫し書きをしたようなぐあいになつている。こういうことは基本制度であるという名前にすでに満足な回答を与えておらない。私どもは旋網の関係におりますので、以前にもまた今日においても、この許可漁業あり方というものについては、別に議会の方にも請願をしておるようなぐあいでありまして、この許可漁業の規定について現在の法案で考えられますことは、まず指定遠洋漁業漁業調整の章の両方にまたがつて許可漁業の問題が取上げられております。これは指定遠洋漁業とあえて銘を打たないで、漁業許可もしくは許可漁業というふうに一章にまとめ上げて、指定遠洋漁業漁業調整の項目について修正をやつてもらいたい。その場合におきましても、もう一つ申し上げなければならないことは、漁業許可は中央許可、いわゆる、主務大臣の許可と都道府県知事の許可と二つにわかれて来ます。この場合において何が中央の許可になり、何が地方許可になるかということが、現在の法案においてはつかみどころがないのであります。それで現在法案に載つておりますところの指定遠洋漁業はつきりしておりますからそれにしまして、指定遠洋漁業以外の許可漁業であります。これについては、ことに回遊性の魚族を考える場合において、行政区画をもつてこれを切つてしまうということは非常に不合理であります。そういう関係から持つて来まして、数府県にわたつて回遊するところの魚類を対象とする漁業で、一定の規模以上の漁業においてはこれを中央で許可をする。こういうふうな形で、指定遠洋漁業以外に、旧来あいまいになつていたところの中央許可に移すべきものの性質を明らかにして行つていただきたい。その場合におきましては海区が当然問題になると考えます。中央許可なつた場合にどこでもいいのか、こういう場合も一律には参りませんので、一応その場合においては漁業調整の可能な点を考慮いたしまして、これを一つの單位海区にして許可をするような方法をとつてつてもらいたい、こういうふうに考えられるのであります。  以上は漁業許可の面の問題でありますが、私ども旋網をやつておるような場合でありましても、とかく沿岸漁民との摩擦相剋をいたすのであります。ことに私は日本旋網の方から出まして私ども岩手県一県のことを申し上げるのははなはだ恐縮なんでありますが、私の方の県の実情を申し上げますと、旋網のような漁業に従事している者は、反面において沿岸漁民なのであります。そういう関係が非常にはつきりしていないことが、自分自身に矛盾を感ずるような場合がありますので、この旋網漁業のようなものは、今日におきましてもある意味の資本漁業でありまして、資本漁業立場を主張していながら、反面沿岸漁業のことも常に考えなければならぬという点を加味しまして、次には沿岸漁業の面について申し上げたいのでありますが、沿岸漁業については、前公述人からもお話がありましたように、できるだけ漁民の自主管理ができるような方向に持つてつてもらいたい。これは現行法案においても、漁業調整委員会等の措置によつて相当考えられているのでありますが、提案されている法案については私たち疑問を持つております。なぜならば、従来沿岸漁民專用漁業権の中で与えられておつたところの定着性の水産動物が、一々主務大臣の指定を受けなければ自分たちが共同漁業権として出願することもできない、こういうことは私は改めていただきたい。この第一種共同漁業権の中の「主務大臣の指定する」というこの言葉を削除してもらいたい。單に定着性の水産動物として、しかも主務大臣が指定するというような規定をやつた反面においては、全国的な立場からながめて、共同漁業権というものは認めて行かなければならないという意味が含まれているように考えられますので、これは従来の專用漁業権がそうであるように、共同漁業権については主務大臣の免許にする、こう改めて行つていただきたい。そうして定着性の魚類については、一一主務大臣が指定しなくても、地方漁民の判定によつて、申請なり出願ができるようにしてもらいたい。  それから次にわれわれが考えられますのは、定置漁業権の免許の條件の中に、従来それによつて生活していた者が、新たに免許されることによつて生業を奪われる、その奪われるものを使用する程度という言葉が出ております。これははなはだ露骨じやないか。なぜならば、反面においては漁業権免許するために沿岸漁民の生業を奪うことすらがあるというふうにも解釈されるのであります。またこれは私どもには直接あまり関係がないのでありますが、真珠の養殖業の中にも、それと同じような規定が出ております。こういうことは、漁業調整委員会を通じて広汎に行政上の権限を与えたような規定をしておきながら、反面においては、従来沿岸漁民自分たちの権利として持つていたものを取上げられて、しかも一々中央の方まで頭を下げてお伺いを立てなければならないということになつたのでは、これはもう骨抜きである、こういうふうに考えられるのであります。  次にいろいろな沖合漁業等の許可問題にも関連して来るのでありまして、漁業調整上の問題でありますが、私はこの法案によりますと、漁業調整委員会は海区單位の漁業調整委員会を規定しております。海区單位というのはどういう海区を言うのかと申しますと、私が聞いているのでは郡單位にその海区を定める。郡單位に定めて行くということになりますと、これもはなはだ恐縮なんでありますが、私は自分出身地の例を取りますと、私の方の郡には、沿岸町村が十二箇町村あるのであります。十二箇町村の中から七人の海区調整委員というものを、公選で漁民代表として出している。そういう場合には、かりに一町村から一名ずつ出て行つたとして見ても五箇町村から出ないことになります。こういうことになりますと、まずこの面においても漁民の手からこの漁業の調整、管理というものが脱けて行つてしまう、縁遠いものになつてしまう。これはやはり市町村の漁業調整委員会を認めてもらいたい。そうして調整委員会の員数は、できるならは階層別にも出し得るように、もつと員数をふやしてもらいたい。ここでさらに一言付言いたしますならば、市町村なり指定された地区を地区としておるところの地区漁業協同組合が、現在の法案に見えておりますような形においてでもけつこうでありますが、選挙権を有する漁民の全部を含んでおる、こういうような場合には、その地区の協同組合に対して漁業調整委員会の権能を与えてもらいたい。こういうことにすることによつて、先ほど申し上げたところの漁業免許に際して、主業を奪われるような場合のないように持つてつていただきたい。こういうことを提案したいのであります。  それから漁業調整委員の権限でありますが、これも單に行政機関の補助的な役割しかしておらない。全然積極面がないということは、今後の漁業調整上における一つの問題を惹起する。というのは、單なる諮問でありますと、行政官庁の意思によつてそれに答えるだけであります。それがどういうふうに取扱われるかということについてはわからないのであります。でありますから、調整委員会の権限の中には、漁業調整上の問題についての調査権であるとか、水産資源の保護育成のための漁業取締り上の意見の具申であるとか、それから法規に示されておるところのこの漁業取締り上の問題についての申告というようなものも与えて行き、場合によつては、もつと広汎な権限を付与してもらいたい。そうしてこの漁業調整委員会が、真の漁民の機関としてみずから動き得るというように持つてつていただきたいのであります。  それからときたまさけの問題にひつからみまして、これも内水面の問題とよく旋網が抵触する場合があります。旋網の内水面のことに触れたいと思うのでありますが、内水面については共同漁業権というものが与えられないように現在の法案ができておりますが、これは私どもの地元の河川漁業とも関係しておりますところから見ますと、一県に一つ漁業管理委員会をつくつて、半ば国営のような形で河川の増殖をはかろうということは、夢物語りではなかろうか、おそらくは明治八年の太政官布告の二の舞をふむようなことになる。私どもは河川に対しても、海と同様に共同漁業権を与えて行つて漁民自分たちの漁場をみずから管理できるような方向に持つてつていただきたい。もし全面的にそうすることができないということならば少くとも地元の河川の協同組合が増殖をやるという場合には、その條件を与えて行つてもらいたい。そうして漁民みずから自分たちの漁場を管理するような方向に持つてつてもらいたい。  最後に免許料許可料についての問題でありますが、先ほど申し上げましたように、現行漁業法をまつこうから否定して行くことによつて新しい制度を生み出そうとする、こういう一種の画一主義的な考え方が免許料を高くしておる。ということは漁業権を取上げて、新たに免許するという場合に、私は何も全部を取上げてしまつて、それに全部の補償金を拂つて、また片方でやるという、計算上のめんどうなことはやらなくてもいいのじやないか、との面につきましては現在漁業法意味しておるとこちの問題を解決しようとしている、つまり不在地主的なこの漁業権とか、それから不当に休業しておるとか、公益上支障があるとか、あまりにも集中しておるとか、こういう解決されなければならない漁業権だけ持つてつて、これを処理して、補償金の額をできるだけ減らすようにする。そして三十年などという長い期間かかつて補償金を支拂つて行くよりも、もつと短期間に支拂うような方法を講じたらいいのじやないか。それからもう一つの面でありますが、私は免許料許可料をもつて行政費をまかなうことになりますと、これは形をかえたところの税金である、こう考えたいのであります。現在われわれが直面しておる問題は、一つ税金の重圧であります。その税金の重圧がまだ合理的に解決されていない矢先、今度は免許料許可料などというもので行政費用までもまかなつて行かなければならない。この行政費用を免許料許可料をもつてまかなうということに対しましては、私どもは反対なのであります。現にいわゆる漁業補償問題等も出ておるのでありますから、許可料のごときはできるならばそういう補償のようなものに振り向けまして、行政費からはこれを取除くというふうにしていただきたい。以上が私の述べたいと思つてここに参りました内容なのであります。
  34. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 菅原さんの御意見の中で、調整委員会の権限を強化せよ、むしろ漁民の自主的管理という線に沿うて、調整委員会の広汎な権限を強化すべきであるという御意見がありまして、具体的には資源の保護の問題、あるいは漁業取締りの問題、その他漁業調整上の広汎な意見の具申を認めること、あの定置漁業権等に規定されておりますところの優先順位、ああいうものを法律でこまかに確実に規定してあるが、今の菅原さんの御意見に沿うて、民主的な調整委員会の自主的権限の強化を尊重して、これの免許許可の基準は、調整委員会が各地方の実情に即して、調整委員会に自主的に決定させるという行き方がいいのであるか、この点をお伺いしたいのであります。
  35. 菅原順平

    菅原公述人 ただいまの御質問でありますが、ああいうこまかな固定的な規定をすることは、将来弊害を残す危險があるのではないかという意味におきまして、社会経済的な事情の変遷に伴うて、自主的な解決ができるような方向に持つてつてもらいたい。そういう意味におきましてただいまの御質問の中にありましたところの、調整委員会等によるところの自主的な取扱いに持つてつてもらいたい。参考事項としてああいうことを述べることはいいけれども、むしろそういうものは政令や何かで出して行つて、本法においてああいう固定的な規定をやることは、技術上からも私は賛成できないと思います。
  36. 砂間一良

    ○砂間委員 ちよつと一言お伺いしたいと思います。菅原さんの御意見ですと、調整委員会の権限を強化するということもありますが、その場合に、漁業調整委員会というのは、先ほどの公述の中にもありましたように、市町村にまで置いてもらいたい、あるいは階層別に委員を出す、そういうような方法によつて民主化された調整委員会というものを前提として言うておられると思うのでありますが、ほんとうにそういう漁民漁場管理という精神が貫かれるために、そういう民主的な調整委員会の権限を許可して行くということについては、私も同感、賛成でありますけれども、もし調整委員会が一府県單位に置かれて、階層別というふうなこともなくして、ただ一般的に調整委員を選挙するというようになつた場合においては、現状のもとにおいて県單位の一つの調整委員会か、はたして民主的に選出され、構成されるであろうかという点については、どういうようなお考えを持つておられるか、簡單にお伺いしたいと思います。
  37. 菅原順平

    菅原公述人 お答え申し上げます。私は一町村から一名くらいしか出るか出られないという調整委員会であつては、おそらく今の漁村の状態から行きますと、地元の有力者しか出て行かない。そうすることが結局は自分たちが地先でとつている漁場管理までも放棄してしまうようなことになります。こういうことを私は一番懸念しておるのであります。
  38. 砂間一良

    ○砂間委員 県單位になつた場合にはどうですか。
  39. 菅原順平

    菅原公述人 県單位になつた場合においては、ますますその弊害が強くなりはしないかと思うのであります。でき得れば、私は市町村に設けてもらいたいということは、やはり自分の地元において論議する場合には、漁民が非常に熱心になる。それが自分のひざ元から離れて行つてしまうと、おざなりになつてしまつて、しまいにはどうでもいい。そこで濫獲競争が激しくなつて来る原因になるというふうに考えられるのであります
  40. 石原圓吉

    石原委員長 それではほかに質疑がないようでありますから、關笹市君にお願いします。
  41. 關笹市

    ○關公述人 私はただいま御紹介にあずかりました愛媛県越智郡宮窪村の關という一漁民であります。今回は政府提案による漁業法案並びに漁業法施行法案修正案について、賢明なる水産常任委員長さんより、参考人としてお招きにあずかりましたことは、私としてこの上もなき喜びとして、つつしんでお礼を申し上げる次第でございます。つきましては、漁業法案並びに漁業法施行法案修正については、いろいろ意見もありますが、貴重な時間を与えられておる関係上、その時間も考慮せねばならぬと考えておるものであります。また数日前よりこの公聽会において、種々な賢明な御意見があつたであろうと考えるものでありまして、私の述べんとする意見は、現在まで述べられた意見と重複する懸念もありますが、県下漁民のその声、その叫びに対しましては、いかに重複するとも御参考に供したいと思うのであります。  そこで、この新法の施行の際に現に存する漁業権は、地区別または漁業権の種類別に、新法の施行法には二箇年に政令の定める期日において一率にこれを消滅させて、それと同時に計画的に新免許を行い、全面的に漁業権の整理をするということでありますが、この整理をする漁業権に対して政府補償金を交付する。その補償金はお話によりますと、三百何十億という額に聞き及んでおりますが、その中の約六〇%が漁業権による補償金で、他の行政費といたしまして約四〇%でありますが、いずれにいたしましても、三百幾十億の総額を、いかなる方法によつて支出するかということをお聞きしたことがあるのでありますが、この支出方法は、漁業免許料許可料をもつてまかなうということであります。これがためにこの金の徴收方法につきましては、ある一定漁業以下の零細漁業に対して、年内の水揚高の五、六パーセント、以西底びき網一相当りで七、八十万円見当というようなことを承つておりますが、かくのごとく多額な高率な負担金を課せられるということは、漁業経営に非常な困難を生ぜしめるということを感ずるものであります。これがために愛媛県下の漁民は、現在農地法の改革案にのつとりまして、この精神を考慮して、従来漁業会の存続している漁業権やなお何十という組合の共有権のもとにある共同団体的な專有権は、このまま漁業協同組合にゆだねて、その他の漁業権者であつて常に漁業に従事していないという漁業権や、現に休業状態を持続している漁業権、なおインチキ的な利権あさりの漁業権もあるやに見受けるのであります。なお封建時代の慣行による個人の專有権というものを整理の対象とすべきが妥当ではないか、民主的な調整ではないかと感ずるものであります。決して全面的に改正すべきものでなくして、かようなものを対象とすれば、政府補償金の総額の何分の一で整理もできることもあるし、またこの補償金徴收方法に対する、免許料許可料の軽減もできるであろうと思うのでありまして、さすれば一挙両得の間に、円満に円滑に目的が達成できるものであるということを叫ぶものであります。  これにつけ加えまして、その補償金たるや二十何年というようなことも出ておりますが、前公述者からもだんだん述べておられます通りに、これは短期間、最高三年か五年をもつて、しかも現金をもつて交付せられるよう、賢明なる水産常任委員会でおはからいあらんことを切にお願いする次第であります。  また一つは、これは水産法案、あるいは漁業法施行法案とは切り離しての問題になるかは知りませんが、この機会に特に御考慮願いたいと存ずるのでありますが、いわゆる海のギャング、すなわち違反漁業の取締りの件であります。御承知のように、漁業の取締規則が明治何年に制定せられたものであるか知りませんが、現在の立場において、かかる取締規則は穏やかでないということを考えるのであります。その理由は、御承知のように終戦直後主食の遅配とか、あるいは欠配に伴いまして、副食物の増産ということを奬励いたしまして、またその筋におきましても、默認式の精神によつてか、八馬力以下の小型漁船の増加したことは御承知であろうと思うのであります。これはただ一郡、二郡でなくして、全国的に増加しているということは御承知であろうと思うのであります、しかしこれを現在の取締の規則に当てますると、八馬力以下にもせよ、漁場の往復のみに利用するということは、違反ではないかもしれませんが、三馬力にもせよ、動力で操業した場合においては、機船底びき網に該当する、こういうことに解釈するのでありますが、全国的に見て八馬力以下の小型動力、こぎ綱類、えびこぎ網と申しますか、無数に増加しておりますので、これを取締規則に照して実行するならば、愛媛県下のみならず、全国的に見て漁民の生活を脅かすということになりはせぬかということを考えるのであります。これがため実行のできない取締規則ならば、これを改正せられまして、その改正の要点は、八馬力以下の動力に対するえびこぎ類はこれを許可するとか、あるいは九馬力、十馬力以上はこれを認めずとか、但し八馬力以下なる動力にもせよ、二隻をもつて操業するものは、機船底びき網に該当してこれを罰するというようなことを、この機会に御考慮にあづかりまして、取締規則の改正に御努力せられんことをお願いする次第であります。  かような意見でありまして、どうかよろしく御参考に供していただきたいと存じます。
  42. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑はありませんか——ないようであります。  以上をもちまして、本日出席の公述人の御意見の発表が終りました、米澤大藏君が出席しませんから、明日に讓りたいと思います。  散会するに先だちまして、委員長より委員会を代表して、長時間御熱心に御意見を御発表くださいました公述人各位に対しまして、厚く感謝の意を表します。公聽会はこれにて一旦とじます。午後一時半より水産委員会を開きまして、参考人各位の御意見を聞くことにいたします。ではこれにて散会いたします。     午後零時二十五分散会