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1949-11-18 第6回国会 衆議院 水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十八日(金曜日)     午後一時五十四分開議  出席委員    委員長 石原 圓吉君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 夏堀源三郎君 理事 平井 義一君    理事 松田 鐵藏君 理事 佐竹 新市君    理事 林  好次君 理事 砂間 一良君    理事 小松 勇次君       小高 熹郎君    川端 佳夫君       田渕 光一君    玉置 信一君       冨永格五郎君    長谷川四郎君       奧村又十郎君    水野彦治郎君  委員外出席者         参  考  人         (安下庄漁業協         同組合長)   浦上 喜一君         参  考  人         (島根会水産         副委員長)   安達忠三郎君         参  考  人         (大分漁村振         興会委員長) 四井 廣夫君         参  考  人         (定置漁業者代         表)      山本 秀雄君         参  考  人         (旋網漁業者代         表)     宇佐美松兵衞君         專  門  員 小安 正三君         專  門  員 齋藤 一郎君     ――――――――――――― 十一月十八日  委員押谷富三君辞任につき、その補欠として坂  木實君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十七日  漁業法案の一部修正に関する請願外一件(鈴木  善幸紹介)(第五四七号)  同(大森玉木紹介)(第六〇四号)  同(鈴木善幸紹介)(第六四六号)  同(鈴木善幸紹介)(第六七九号)  漁業法制定に関する請願鈴木善幸紹介)(  第七六三号)  漁船法並びに漁船船員法制定に関する請願(小  高熹郎君紹介)(第七八〇号)  徳島県下の漁港修案国庫補助請願岡田勢  一君外四名紹介)(第五二六号)  萩漁港修築請願佐藤榮作君外五名紹介)(  第五五四号)  長洲漁港修築請願永田節紹介)(第六二  四号)  漁港施策に関する請願鈴木善幸紹介)(第  五四八号)  三厩村漁港拡張工事促進請願山崎岩男君紹  介)(第四七一号)  増毛漁港拡張工事施行請願佐々木秀世君外  一名紹介)(第八一五号)  様似漁港等設費全額国庫負担請願篠田弘  作君紹介)(第九〇八号)  木直船入ま築設の請願田中元紹介)(第五  四〇号)  久遠船入拡張工事施行請願冨永格五郎君  紹介)(第六七七号)  漁業権に関する請願佐竹新市紹介)(第六  四七号)  追直浜に船入ま築設の請願篠田弘作紹介)  (第九〇九号)  久慈港に船だまり築設の請願鈴木善幸君紹  介)(第五四二号)  大浜湾に船だまり築設促進の請願内海安吉君  紹介)(第六三九号)  志和岐浦に船だまり築設の請願岡田勢一君外  四名紹介)(第七二五号)  室蘭市に北海道水産試験場支場設置請願(篠  田弘作紹介)(第九〇七号)  香川県観光水族館建設費国庫補助請願(田万  廣文紹介)(第五八一号)  旋網漁業許可方針確立に関する請願小高熹郎  君紹介)(第七七六号)  魚族資源維持培養に関する請願小高熹郎君  紹介)(第七七七号)  漁業金融に関する請願小高熹郎君紹介)(第  七七九号)  内水面漁業に関する請願松本一郎紹介)(  第八一六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  国立水産研究所南九州に設置の陳情書  (第二二二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  漁業法案内閣提出、第五回国会閣法第一八六  号)  漁業法施行法案内閣提出、第五回国会閣法第  一八七号)     ―――――――――――――
  2. 石原圓吉

    石原委員長 これより水産委員会を開きます。  昨日に引続き、漁業法案及び漁業法施行法案を議題といたしまして、参考人各位より御意見を聞くことにいたします。  この際一言参考人各位に申し上げます。本両案は、申すまでなく現行漁業生産に関する基本的制度を根本的に改革せんとするものでありまして、今後の漁業のあり方、ひいては水産業界に及ぼすところまた甚大なるものがあると思うのであります。かかる重要法案審査にあたり、多年の御経験と御研究に基く各位の御意見を拝聽することによつて本案審査に万全を期したいと存ずるのであります。参考人各位におかれましては、本案についてあらゆる角度から忌憚なき御意見を御発表くださるようお願いするとともに、万一にも利己的な意見が公述され、そのため真相をつかみ得なかつたならば、わが国水産界に影響するところ甚大なるものがあろうかと思うのでありましてあくまで公明正大なる御意見発表を切に希望いたします。  会議を勉めるにあたりまして、念のため参考人各位に申上げておきますが、参考人各位発言は、その都度委員長よりの指名とすること。参考人一人の御発言時間は大体十五分程度とし、御発言発言台でお願いいたします。まず御発言の際には、必ず御職業とお名前を述べていただきます。また委員諸君参考人に対する質疑は、各参考人の御意見発表後ただちに十分ずつ行うことにいたします。以上あらかじめお含みおき願つておきます。  なお参考までに本日の参考人各位の氏名を申上げます。   浦上 喜一君  安達忠三郎君  宇佐美松兵衛君  山本 秀雄君   古賀 榮吉君  四井 廣夫君であります。  まず浦上喜一君にお願いいたします。
  3. 浦上喜一

    浦上参考人 私は山口安下庄漁業協同組合浦上喜一でございます。小さいときから漁業を営んで参りましたので、こういう場席に出まして、参考意見を申し上げることはいかがかと存じますが、今日ははばからず意見を述べさせていただきます。  漁業法改正は、農地改革とともに民主的にできるものと私は考えておつた次第であります。この法案につきましては、私たちは第一次案を最も希望するものであります。しかしながら、第一次案の方では組合員加入脱退を自由にするということにおいて難点ができましたので、ある方面からの注意がございまして、第二次、第三次、またその後の改正ということになりまして、漁業制度改革案の講義を読んでみますると、政府当局がこの問題について非常な御苦心をいただいたという意のあるところがありありとわかるのでございまして、この点については私は当局に感謝申し上げる次第なのであります、けれどもこの法案改正にあたりまして、私どもが最もいけないと思いますのは、農地法と違いまして、個人に免許するところの漁業権は、農地法で申しますと大地主的の存在と考えられるほかないと思います。農地におきましては、ある程度の土地しか耕作できないということになつておりますが、何十人、何百人という従業員を使役して個人が営む権利は、これは農地法とは反対の現象を起すのではないか、かように考えるものでありますが、これが事業の上におきましてやむを得ぬとしましても、この権利を民生的に漁業協同組合にいただいて、自主的の協議によつて操業をするという行き方が、一番民主的ではないかと私は考えるものであります。先ほども意見がありましたが、漁業協同組合にこの権利をやつても、漁業者の中には船頭をする者がないとか資本が云々とかいう御意見がありましたが、三十日から九十日の間において漁獲をして来た者が全部組合員になれるということにおいてできました組合法組合員の中に、漁業の上において船頭をする者がないということは、何たる考え方であろうかと私は存ずるのであります。資本の方においても、なるほど弱小の漁業者は一人や二人では何百万円の資本は動かし得ないと考えられますが、ここに組合団結心をもつて民主的な漁業を起さなければ、いつまでたつて資本家に利益を搾取せられまして、とうてい大衆漁業者というもは、生きて行くすべかないのではないかと考えます。しかしながら、四次案まで行つたものを一次案にかえすこともできませんので、私はこんど修正せられましたところの共同漁業権の中に延縄漁業と一本づり漁業とを加えていただきたいことを希望するのであります。この理由については、先ほど申された意見と同一でございますので、省略いたします。  次には定置漁業の水深でございますが、これも非常に当局が御苦心なさつた上に、十五メートルというふうに原案をつくつておられますけれども、十五メートルでは漁業協同組合が特つところの定置としての価値が非常に少ないのでありまして、いろいろの面に支障がございます。これは参議院の方の青山さんとかの意見は、深水三十七メートルというような意見も持つておられたとかいうことが、水産新聞にも出ておりましたが、わが山口県としては、沿岸線より七百メートル沖合までを共同漁業権に入れていただきたいということに意見が一致しております。この点につきましても喋々申し上げますことは釈迦に説法のように考えますので省略いたします。     〔委員長退席夏堀委員長代理着席〕  次に五種の共同漁業の中に、前御発表になりましたから理由は省略いたしますが、河川を入れていただきたいということを希望申し上げます。  最後に、免許料許可料のことでございますが、今まで再々この問題については御意見がございました。なるほど国家の財政面から見まして、補償金を出して免許料やら許可料を拂わなければ、政府の予算の上に非常に支障を起すということと、農地法政府が買上げて小作人に売るということについても均衡がとれないということから、かようなことに案ができたとは考えますが、しからば委員会行政費まで漁業者がこれを負担するということはいかなる理由であるか。言語道断なる案であるとしか私には考えられないと思うのであります。戰時この方、漁業者は政治的のレベルが低いと申しましようか、そういうことによりまして、統制強化面におきましては、魚の価格は農産物の値上りの倍数ほどにとても値上りをしておりません。それから一昨年からできましたところの事業税においても、米麦かんしよというような主食につきましては事業税が課されないのに、税制と公定でもつて供出して行きましたところの鮮魚については、事業税がかかる。このことについて私は県当局係官に話しましたところが、これは私どもがつくつた税務法ではないのだ。あなた方が選挙せられたところの代議士がつくつた税務法だから、代議士に言うてくれ、私はあなたの言う通りに賛成だ、米麦かんしよが事業税対象にならないのに、供出し、犠牲にたつて出したところの魚が事業税対象になるということについては、私もあなたの意見と同感である、というようなことを聞きまして、それならば、そのことがわかれば、決定額において考慮してくれということを申しましたけれども、現在の額、割当てられたところの範囲内におきましては、こうもこれが少くならなかつた漁業者は御承知の通り教育程度が低いのでございまして、税金の方におきましては、ほかの業種面とは違つて日々の記帳というものができておりませんから、非常にむりな決定をされまして、も、泣寝入りに寝入るというような行き方に今までなつて来たのであります。話が少々横に曲りましたが、この免許料許可料、というようなものは、一つのこれは税金と考えて、事実においては間違いない、かように私は考えるものでありますが、現在の調査の上では、平均において水揚高の三・七%に当るということでございます。これは漁業水揚高がいかにありましても、水産は非常に必要経費がよけい要る職業であるということと、ほかの産業に比較しますならば、資本の流動が比較にならない、想像のつかないほどの消耗の早さであるということにおきまして、漁業者はある程度漁獲はあげましても、純益になる部分というものは非常に少ないものであります。現在漁業者が金に行き詰まつて、につちもさつちも行けないというのが、この前からの実情なんであります。こういう漁業方面平均三・七%になるような許可料免許料を取られたんでは、とうてい漁業者生活ができないと私は思うのであります。ところがまだもう一つ悪いことは、各町村においてしかりと思いますが、これを町村に取立てさせるということになりますと、各町村においても費用に困つておりますので、附加税の十割はこれをとつて行く、これはいずれの町村でもしかりと思うのであります。これが矛盾しているからというて、これについて附加税をかけさせないというような政治力は、漁業者にはありません。そうすれば、補償金が一定の程度とします。これについて二割の徴税費をかけた十二割を、免許料許可料でとるとしますならば、この十二割のうちの十割を町村において附加税にとられるならば、補償金に対して二十四割の免許料なり許可料を漁師はとられる、こういうしまつになるのであります。そこで私は、従来の漁業権税程度免許料許可料を徴収することにしていただくことを希望いたします。この漁業の性質からかんがみまして、これ以上の負担をいたしましたならば、とうてい漁業者生活ができ得ないということは、私が申すまでもないと思うのであります。それで現在は、陸の方におきましてあらゆる犯罪が起つております。この捜査とか逮捕に便利な陸上でさえも、これほどの犯罪が起つておるように、海上におきましては、引揚者とか復員者とか、かような人たちが、水産の方では資本が少なくても食べて行きよい。ほかに転職するという方法がないために、たくさんの船をつくりまして、いろいろな漁業をやつております。これは統計にも明らかなことでございますが、この面におきまして、海面における操業回数というものは、戰時、戰前の幾倍かにふえておるのにもかかわらず、海上の取締りが不十分でありますために、近くは爆弾を使う、ダイナマイトを使つておる漁業とか、違反漁業をどしどしやりまして、海は荒廃してしまつておるのであります。こういうことにおきまして、漁業者生活は、漁業をしなければ食べられぬからやつてはおりますけれども、実際漁業をなして生活を楽にやるとか、文化知識の向上というような方面まで向いて行くだけの余力が、漁業者にはないのでありまして、よろしくこの免許料許可料というものについて、当局の厚い御考慮を賜わり、従来の漁業権税程度を越えないところの免許料許可料をとつていただくことを希望いたしまして、意見といたします。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 御質問ありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 それでは次に安達忠三郎さん。
  6. 安達忠三郎

    安達参考人 私は島根県八束郡裏曇町で漁業を営んでおりますかたわら、県議会の水産委員長をやつております安達忠三郎であります。  本朝いろいろ御意見を拜聴しておつたのでありまして、私の申し上げたいこともすでに盡きておるのでありますが、二、三点この法案修正に対する希望意見を、きわめて簡單に、重複を避けて申し上げてみたいと思います。  まず第一点は、定置漁業兼についてであります。定置漁業権の共有の主体、これをどこに置くか、端的に申しますれば、漁業協同組合に持たしていただきたい。これは今度の新しい漁業協同組合が、非常に性格的に以前の漁業協同組合なり、漁業会なりとはかわつて来ておるのでありまして、そこに多少の難点がないこともないのであります。たとえて申しますれば、二つ地区に何個もの漁業協同組合ができるとか、あるいは加入脱退が自由であるとか、こういう面から多少の難点があるのでありますが、これについてはある程度條件を附してもよろしいと、私は考えるのであります。すなわち私の考えておりますその條件と申しますのは、地区内漁民の自由と自覚によつて漁民の四分の三以上が加入しておる漁業協同組合、すなわちほとんど漁民が全部加入しておるものであります。同一地区二つも三つもあるというようなものは、これは対象として考えない。それからいま一つは、漁業調整委員会において、貸付けてもこれは何らの弊害がないと認めた場合、つまりこれに貸付けても、これによつて何も弊害が伴わないと認められる場合、あるいはこれは今日の時代にはあまり適合はいたさないかもしれぬが、貸付のときは事前に官公庁に届け出るとか、事前に認可を受けるとか、こういうような條件を付しても、あるいはいいではないかと考えるのでありますが、これの貸付を認めてもらいたい。特にわれわれ従来沿岸で小さな定置漁業経営しておりました経験から考えて見ますと、個人資本家経営をまかせますときに、いろいろ小さな問題ではありますが、弊害が起つておるのであります。それは碇をおろす場合に、地元の漁民はぜひ土俵でやつていただきたい。砂だまりでやつていただきたいというような希望を持ちましても、経営者の都合によつて、これを石を沈める。その石が累積して非常に大きな障害となつて、次の定置漁業綱入れにさしつかえるとか、あるいは小漁業、一本づり漁業などに支障を来すとか、そういうような弊害も私ども経験したところであります。それからまた一本づりとかはいなわ用えさの問題であります。定置漁業によつて漁獲されたものをえさにする場合に、えさは高いんだ、こういう観念をもつて、普通のその日の取引価格の二倍、三倍をとられる。こういうふうな弊害も過去において私ども非常に経験しているのであります。こういうような問題を考えてみましたときに、あるいはまた漁業協同組合経営の面から申しましても、定置漁業漁獲物をその協同組合生産のほとんどとしているような漁業協同組合では、個人の大資本家がこれを経営しまして、沖からただちに自分の船で持つてつて陸上げするというようなことになりますれば、協同組合共同販売面から生ずる收入というものを唯一財源としているような場合には、協同組合経営上ゆゆしき問題が起るのであります。さらにまた将来憂慮されますことは、この定置漁業を従来唯一事業としておつた協同組合では、あらゆる共同施設定置漁業から生ずる財源目当として起債をし、借金をしてやつているというものが、非常に困る問題が起つてくるのではないか。こういうこまかい問題は別といたしまして、とにかく協同組合にこれを持たしていただきたい。こういうことを希望いたします。  それから第二番の問題は共同漁業権についてでありますが、これも今朝来いろいろ方から御意見が出たのであります。現行専用漁業権から魚類が除かれて「海草貝類又は主務大臣の指定する定着性水産動物」となつて何か七種類ぐらい指定されているようでありますが、これは他の魚類でありましても、暗礁でありますとか、あるいは人工による投石、築いそ等によつてその区域内にある程度定着し、一般の小漁業者漁業の目的となるものがたくさんあるのであります。一本づり、はいなわ、魚つき等対象になる魚類がたくさんありますので、この共同漁業権にもつともつと広く—午前中もどなたかの御意見にありましたように、こちらから申請して、そのものに対してはとらしていただく、こういうような方向に行かしていただきたいと思うのであります。  それから第三の問題は、これも今朝来いろいろ御意見があつたのでありますが、内水面漁業の問題であります。内水面、なかんずく河川漁業に対しても、第五種の共同漁業権を與えていただいて、お互いの自主的な申合せにより、自主的な計画によつて増殖をはかり、濫獲を防止するように、合理的に運営さして行きたい。かように考えるのであります。  それから第四の問題は、これもいろいろ御意見が出たのでありますが、補償金免許料許可料行政費の問題であります。補償金の期限をもつと短縮をしてもらいたいということが第一番の希望であります。それとともに、その短縮がきわめて困難であるならば、これに金融的な裏づけのできる措置を講じていただきたい。これを中金に持つて行けば、必ずその額面とか、あるいは額面の八割を出すというような、金融上の裏づけのある措置を講じていただきたい。それから免許料許可料の問題につきましては、これは従来の漁業会から新しい協同組合に構ずべりするものに対してはとらない。これを廃止してもらいたい。もちろん行政費などというようなものは、当然国庫負担していただきたい。  大体この四つの点について修正していただきたいという希望を持つております。きわめて簡單でありますが、これで終ります。
  7. 玉置信一

    玉置(信)委員 安達参考人に二点お伺いいたしますが、安達さんがただいま公述された中に出た定置漁業は、自営できる組合には許可をしてもらつた方がいいんじやないか、こういうように受取つたのであります。次に組合経営のできないものは、貸付を認めるという方法に持つて行けばいいんじやないかという御意見であります。そうして自営できるものとできないものとを区別した、ここに法的な根拠を求めて、法案をつくつてもらいたいという御意見でありますか。  もう一つついでに。その次はえさを買う場合に、個人経営の人から買うと非常に高い。これを組合共同販売ということにすれば安く買えるのじやないかというように受取れたのですが、そうしますと、これから漸次統制のわくがとれて、将来あらゆる鮮魚自由販売になるという場合においても、なおかつ組合はその組織力によつて共同販売ができるという見通しのもとにおける御意見でありますかどうか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  8. 安達忠三郎

    安達参考人 多少私の言の足りなかつたところがあると思いますが、第一点の問題は、自営できるできぬの問題にかかわらず、とにかく協同組合に與えてもらいたい。自営し得ないものには貸付けてもさしつかえないじやないか、こう思うのです。第二のえさの問題であります。これもちよつと私の言が足りなかつたと思いますが、かりに漁業協同組合定置漁業権を持つてつて貸付けをする場合に、一つ條件をつけ得るのです。俵は必ず土俵を用うること、砂俵を用うること、あるいはつり漁業のものに対しては、その日の時価により特別の価格をとらない、そういう精神であります。そういう條件をつけられるから、沿岸漁業を保護し得る、こういうような考え方であります。
  9. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 御質問ありませんか——では次に四井廣夫君
  10. 四井廣夫

    ○四井参考人 私は大分長洲町の漁民井廣夫であります。今回はからずも、今日のこの公聽会参考人として意見を申し述べる機会を得ましたことは、私の最大の喜びとするところであります。私は学識のないただ一介の生産勤労漁民でありまして、漁業法漁業権制度改革につきましては、法的にかくかく意見を申し述べることはできません。また先般来、先輩各位公述人並び参考人が、われわれ漁民の言わんとするところを言い盡されておるのであります。ただ私は家代々が漁業でありまして、私も依然として漁村に育ち、この年になるまで漁民として生きて来ております。私の実際の経験を通じて、まつたく赤裸々の漁民として、いかに新漁業法また漁業権がありたいかを、率直に申し述べたいと思うのであります。  終戰以来幾たび漁業制度改革が叫ばれ、その間種種の曲折を経てようやくにして新しき漁業法が立案され、国会上程への運びとなり、今日そのためにこの公聽会が開催されるに至つたことは、漁民としてまことに快哉を叫ぶものであります。それも真に漁民を封建の桎梏より解放し、漁村民主化し、真に漁民一人々々が、安んじて漁業を営み得る、それはあたかも農地改革によりそれぞれ農民に耕地が與えられ、他に侵害されることなく、安んじて自己耕地を愛と最善の創意くふうと努力をもつて耕し、その自己生産により、自己生活をゆたかにし、同時に社会全般に貢献でき得るようなぐあいに、新しき漁場秩序が制度化される漁業法、いわゆる漁業規範が打立てられねばならないと信じます。かくしてこそ初めて漁村民主化もでき、漁獲の増産も可能なのであります。しかるに現在の沿岸漁場はいかがでありましようか。そして漁民生活は。漁場はますます修羅場化し、酷漁濫獲はその極に達し、まつたく荒廃の一途をたどつています。この原因こそは、漁業制度の不備によるものでありまして、今日いわれる日本の漁業の掠奪的である根本原因は、この制度の不備に由来するのであります。これを真に改革しない限りは、大きくは世界水産人として平和の産業人としての仲間入りができないと信じます。  さてそこでわれわれ沿岸漁民は、今度の新憲法による漁業法改革には、最大の関心を持つているものであります。もとより浅学者ばかりでありまして、政府案などは、新聞とか系統団体の機関紙などで見るのでありますが、字句の解釈など間違いもあるとは思いますが、ただいまの政府案では、それは決して漁村のために、漁民の幸福を招来し、漁村民主化をもたらすものと、自信を持つて言えないのであります。目下の漁村の客観情勢を考慮に入れるならば、新漁業法案には、漁業に関する金融、労働、資材、保険等の問題は、当局はまつたく黙して、單に漁業権漁業調整委員会に関する規定を扱つているにすぎないようでありまして、單なる漁場調整法にすぎず、この点におきまして、おもむろに極言せば、現漁業法より退歩しているように思われるのであります。総じで免許漁業のことを詳述し、許可漁業のことはほとんど触れておらないように思うのであります。そしてこれら許可漁業は、農林省令や県の規則にまかせており、つまり官僚にまかせ、調整委員会にまかせておらないのであります。かつての無動力船時代におきましては、沿岸漁場調整法がすなわち漁業法でありましようが、現在のごとく技術的に、かつ社会経済的に進歩せる時代においては、沿岸漁業調整は、單なる一つの目標にしか考えられないのでありまして、漁業権に関する漁業漁業全体において占める比重は、昔より非常に軽くなつていると思うのであります。かように考えて参りますと、農地改革における土地制度の役割と比較して、漁業権制度の役割はあまりに小さ過ぎるように思われます。漁業生産手段がまつたくものを言うことを知らねばならないのであります。この狭ま過ぎる小さな漁業制度の中で、わずかに根付け漁業権すなわち共同漁業権のみが漁業協同組合に付與されておるのでありまして、依然この中には浮魚がはずされております。これでは実際に沿岸零細漁民は、その生活の糧の足しにもならないのであります。浮魚をはずしておることは、私ども沿岸漁民は絶対に承服できないのであります。  さて次に定置漁業権の優先順位につきましては、協同組合が先になつておりますが、この点はある程度納得できますが、前言に申し上げました、生産手段の裏づけたる、すなわち資金、資材の法的処置が御考慮願えない限り、この原案の優先順位は本末顛倒の策にひとしいものと言わなければならぬのであります。私は断固としてこの定置漁業権こそ漁業協同組合に付與されると同時に、生産手段の裏づけたる金融、資材の法的処置の実現方を、政府当局並びに国会に、沿岸生産勤労漁民のためにお願いするものであります。もし定置漁業権を付與されたる協同組合が、物質的條件漁業を自営でき得ない場合のときは、そのときこそ真に漁村に理解のある資本家と労資一致、資本家は資金、協同組合は與えられたる漁業権と、われらの資本たる筋肉労力と、伝統的なる漁撈体験と、不屈なる漁民魂を提供して、真に民主化したる明朗なる、搾取もなければ奴隷的労働もない漁業経営ができ得ると私は信ずるのであります。  次に漁業調整委員会につきましては、絶対に、市町村漁業調整委員会をぜひ置くよう措置していただきたいのであります。地元漁民意見を、直接に反映されがたいような海区調整会は無意味であります。そして調整会の委員には、協同組合の正組合員を過半数を出せるようにしていただき、そして中央審議会委員は調整委員の互選にしていただきたいのであります。  以上であります。まだ申し述べたいことは山積いたしておりますが、公述もまことにずさんと存じております。いまさらくどくどと申し述べてもむだと思いますが、最後にぜひとも私はお願いいたしたいことは、水産日本の将来のため、かつまた魚族繁殖保護の見地からも、現在沿岸漁業組合に與えられておる専用漁場の漁業権は、新漁業協同組合へぜひとも付與されんことを切望する次第であります。その理由は時間の関係上ごく簡單に申しますが、一部特殊な深海魚族以外の魚族は、ほとんど沿岸の浅海に産卵して、稚魚となつて一応深海に下り、成魚となつて再び浅海に産卵のために遊泳するのでありまして、われわれ漁民は、永年の経験上よくその原理を把握して、農民が農作物を愛すると同様に、われわれ漁民も幼魚を愛して自主的に各海区に応じて一定の繁殖時には休漁し、あるいは禁漁区を定めて、魚族の繁殖を保護し、もつて水産日本の永続性を維持しておる次第でありますので、この意味からいたしましてわが国の水産に卓越なる識見と、御理解ある水産常任委員の御先生方に、私のいままで申し述べました趣旨を取入れられまして、民主日本にふさわしき新民主文化漁村のでき得るような漁業法場案の立法方を、ひとえにお願いして私の公述を終ります。
  11. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 質問ありませんか。
  12. 川村善八郎

    ○川村委員 四井さんにお伺いいたしますが、漁業権はすべて漁業協同組合ということは私も納得できます。そこで現在の持つておる漁業協同組合、その他個人のものもありましよう、それらをいわゆる無償で與えろというのか、あるいは現法案にありまするように、政府買上げをして、そうして協同組合がさらに免許料許可料を拂つて、全部漁業協同組合に免許あるいは許可しろ、こういうのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  13. 四井廣夫

    ○四井参考人 お答えいたします。われわれはもとよりこの法案が実施されるというときに、われわれ沿岸漁民といたしましては、漁業権の一応の政府買上げは、無償で買い上げていただきたい。そうして無償で拂い下げていただきたい、かように私どもは主張したのであります。その理由といたしましては、御承知の通り、現在の漁業権は相当休んでおるのでありまして、もとよりこの漁業に従事するものは、資本家といえども全部がやつておるのであります。またこれを無償で政府で買い上げて、無償で拂い下げて、現在やつているところの生きている漁業権はそのまま下付されるものと考えておるのであります。しかしそのときに、農林省の係の方にも質問したのでありますが、どうもそういうことは政府としていけない、あらゆる見地から検討していけないということで、われえわれももとより一介の漁師でありますので、学識とかさような法的なことはわかりませんから、それはどうもわれわれふに落ちないという程度で、現在に至つておるのであります。この点でき得れば、ただで買い上げて、ただで下げていただきたい。そうするとやつておるものも、ただでもらうのだからあまり時間もからなければ、政府も金がいらないというわけであります。
  14. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 質問ありませんか。それでは次に山本秀雄君。
  15. 山本秀雄

    山本参考人 私は北海道の日本海の方に面しております、にしん地帶の増毛から出て参りました山本でございます。諸先生方には、連日全国各地から集まりまして同じようなことを申し上げておるのでございますが、非常に御熱心にお聞き取りくださつておりますその熱心な姿を拜見いたしますと、まことに感謝感激しておる次第でございます。実は私が申し上げたいのは、北海道から選出されておられる先生方にではなく、その他の先生方に聞いていただきたいのでございます。今拜見いたしておりますと、北海道から出ておられる諸先生方、皆それぞれ北海道に帰られますと、自分で漁業経営されておられまして、私たちの大先輩なのでございます。従いましてとうていそういう方々に私の意見を聞いていただくというような、おこがましい考えは持つておりません。私は本修正案の広汎な議案につきまして、一々意見を申し述べる時間の余裕を持つておりませんので、これをきわめて小さく縮小いたしまして、私の経験のありまする定置漁業につきましてのみ、お話したいと思います。なぜこういうことを申し上げますかと申し上げますと、北海道の定置漁業権は、内地のそれと非常にその性格を異にしております。従いましてこの点を、私地方の沿岸漁業の実体を基礎といたしまして申し上げたい、かように存じております。修正案の箇條々々につきましては、先ほど以来皆さんの最も関心を寄せられておりまする諸点の中から三つ取上げまして、第一番目には今の免許の優先順位、第二番目には免許の期間に関すること、第三番目には漁業の証券と申しますか、今の買下げる問題につきましてのこの三つの点を申し上げまして、私の責めを果たしたいと思います。  申し上げる前に、ひとつ私はざつくばらんに、率直に、しかもかた苦しくなく申し上げたいと思います。従つて非常に脱線するようなこともございましようが、どうかそのときには委員長さんから御注意を願いたいと思います。  まず申し上げる前に、遠い私たちの小学校の時代、あるいはまた中学生だつた時分のことに返りまして、その時分に習え覚えました歴史の第一ページを私は広げてみたいと思うのであります、一体この日本の国はどうして生れたのかということを、今さら私が申し上げるのはおかしいのでありますが、私の当時教わりました歴史の本の中には、神武天皇様が突然この日本の国に神の国からおいでになりまして、大和は橿原の都におきまして御位につかれ、そうしてこの日本の国は豊葦原端穗国だ、こういうように名づけられたそうでございます。ちようど不幸にいたしましてその当時の人口問題とか、あるいは国勢調査とかいうような基本的な資料の持合せがございませんので、一体その当時の人口が、どのくらいあつたか私にはわかりません。しかしながら男女の比率の関係は一体どつちが多かつたかということは、あらかじめ想像がつくのです。それはどういうところから想像がつくかと申しますと、私は、あの三種の神器を見たならばわかるのじやないかと思います。三種の神器から私の考えはヒントを得たのであります。いかなる時代におきましても、どんな善政をしきましても、やはり不平不満、あるいは自分の意に満たないような方々もあるのであります。そこで神武天皇様がいかに善政をしかれても、やはりときによつてはいろんな不平を言い出す女もあるでありましよう。そういうときには、さつそく首飾りである八坂瓊勾玉を持ち出して、その威力によつてその不平不満を言う女を封じてしまつた。また他に不平不満を言う女性が出て来たならば、今度は八咫鏡という鏡を持ち出して、この威力によつて封じてしまう。しからば男の方はどうかと申しますと、草薙剣一本やりでこれを封じてしまうというようなぐあいで、どうも三種の神器の中に女性に関する宝物が多いので、私は、これは女の方が多かつたのじやないか、かように考える次第でございます。  そこで、豊葦原瑞穂国でありますから、決してお前たちは心配ない、どんなことがあつても、どんなに悪い條件にあつても、腹の減るようなことはないとそのとき仰せられたので、女は多いし、腹は減らない、ましてその当時はそう大した仕事もなかつたのだから、そういう時代に遭遇いたしますと社会の現象はどうなるかと考えますと、これはいろいろ考えられますが、私が想像いたします範囲内では、これはきつと子供が生れるのじやないか、腹は減らないし……
  16. 夏堀源三郎

    夏堀委員長代理 山本君に御注意申し上げます。衆議院規則の第八十三條には「公述人の発言は、その意見を聽こうとする事件の範囲を超えてはならない。」とあります。これは参考人にも適用されます。この漁業法についての御発言を願います。
  17. 山本秀雄

    山本参考人 承知いたしました。そこで私は実は北海道の定置漁業の沿革史を申し上げる前提といたしまして、今引例をしたのでありますが、従いまして国内の人口がふえて参ります。このはけ口をどこに求めるかというようなことになつたのでございましようが、本州の北の方には、その当時えぞ地という相当広汎な物資、資源の豊かな土地がある。この方に向つて進んだならば、必ずこの窮地を脱するはけ口があるのじやないか、かように考えられました結果、しからばどういう人間を向うにやつたらいいか、それにはまず第一に船に乗れる人間でなければ渡れません。あそこには津軽海峡という大きな障害がありますので、まず第一に船に乗れる人、それから向うに着きましても、すぐに食糧の輸送ができませんから、野放しにしておいても死なないような人間ということを考えますと、これは漁師が一番適当ではないか、こう考えられたのであります。従つてわれわれ漁民の先祖が、まずその特攻隊になりまして、海を押し流されながら向うに渡りまして、大いに海岸伝いに奥地に進出して、今日の北海道開発の礎になつたのは、われわれ漁民の先祖の努力であると私は信じて疑わないものであります。  そこでこの定置漁業権の問題になりますが、最初は、もちろん私たちの祖先は、漁業資材などもございませんから、あるいは手やりであるとか、竹かごとかというものを用いまして、大いにその地方に寄せ集まる魚をとつてつたのでございましよう。それがだんだん改良せられ、あるいは刺網にもなり、角網にもなつたのであります。その当時の角網はいきなり綱と申しまして、人が立つているところでもかまわず、そのままおつかぶせるとか、海上は非常に混乱をきわめておつたそうでございます。毎日流血の惨事に見舞われておつた。これではいかぬというので、自分の本拠をまず土台にして、お前はここの土地に綱を立てろ、お前はこつちだ、君は向うでやれというので、一定の場所を與えられて、これが定置漁業になつたのだと私たちは先祖から聞いております。しかしここでひとつお考え願いたいのは、せつかく位置は指定されましても、海の底はこの東京の市中のように鋪装され、平坦ではありません。大きな岩も、大きな石もあります。そういう所にわれわれの先祖は綱を立てに行く。あるいは自分で入れない所は違く小樽、函館方、面より潜水夫を雇い入れまして、網をすえつけられるようにこしらえたのでございます。それも一代では、できないで、その息子に譲り、さらにまたその孫に議るというように、船業権をいただいたのは、無償でいただいたように言われる方もございますが、これに要した費用は実に莫大なものでございます。私はあそこにおきまして、ちようど私で四代この定置漁業経営をしておりますが、どうやらこうやら満足に網をを立てられましたのは、ちようど私の親の代だつたそうでございます。そうしてようやく私の手に移りまして、どうやらこれから本格的に力を入れて、大いに生産増強に当ろうと思うやさきにおきまして、いろいろと社会の情勢がかわつて、少し待つたというような号令がかかつたのであります。はたしてこうした状況にあります定置漁業権が、こうした方法によりまして再配分されるということが、現下の厳正なる意味における民主主義のやり方であるかどうかということを、もう一ぺん賢明なる先生方に御再考を願いたいと思うのでございます。  次に逐條的の問題に入つて行きますが、この第一の優先順位の問題でございます。これは先ほど以来申し上げましたように、私の方の町で、沿岸八里にわたつておりますが、この町だけでもにしん定置漁業は百箇統余りございます。しかも先ほど以来休業統というようなことも言われておりますが、北海道には特に繁殖保護規則が施行せられておりまして、その関係上、立てたくても、立てられない、強制的に休業させられておる場所もあるのであります。そういうふうな関係で、私たちの町では、ただいま約九十箇統立て込んでおりますが、これに要しまする費用は、現在の漁船、並びに海面の施設をそのまま使つたといたしましても、その経営費に少くとも一箇統七十万円はかかる。幸いに中央金庫を通じまして、本年は一箇統当り十五万円の漁業資金の貸付を受けられましたが、残余の約五十万円に余るものは、自己資金を使つたのでございます。その自己資金を獲得するにあたりましては、いろいろと艱難辛苦もございますが、とにかく何とか自分たちでもつてくめんをして立てたのでございますが、この修正案にもありますように、もし優先的にこれを漁業協同組合にやるといたしましても、われわれ地方におけるのみの漁業資金さえも、すでに一箇統五十万円たらず、まいの五十万円にいたしましても、四千五百万円の漁業資金はいるのであります。こんなような莫大な資金、しかもその間にはさけ、ます、さば、その他たくさんのいろいろな種類の定置漁業権がございます。こんなものが一ぺんに漁業協同組合にころげ込みましても、とうていその資金のまかないはできるものではございません。御承知の通り漁業協同組合は、加入脱退は自由であります。しかも有限責任でありまして、こうしたような漁業資金のくめんは、一体だれがするのか。どんなぐあいに、どんな方法で持つて来るのか。漁業は絶対にもうかるものである、決して損をするものでないという建前から申しますならば、あるいは金融機関で貸してくれましよう。しかし私は、私の代になりましてからは連続三箇年、にしん一尾もとらないでえらい苦労したこともございます。そういう歴史を持つておりますが、個人的の経営でありました関係上、親戚、知己あるいは友人等の援助によりまして、どうやらこうやら持ちこたえて来たのではございますが、これが一つの団体となりますと、とうてい維持することはできなくなる。もう加入脱退自由でありますから、もぬけのからの協同組合が現出されるのではないか、かように考えておる次第でございます。従いまして、しいて優先順位をつけなければならぬという御規則ならば、ここで声を大きくして言いたいことは、漁業協同組合とかあるいは個人とか言わずに、ほんとうに自営のできる、力のある、しかも漁業に長い経験と知識を持つておる、生産の拡充のできる適格者にこれを與えるのが、ほんとうの民主主義的の方法でないか、かように考えております。  時間がございませんので、どんどんはしよつて行きますが、第二番目の問題につきましては、いろいろと漁業権を十分に活用するにあたりましては、ただ船や綱のみがあつたのではいけないのです。海面施設には相当いろいろな施設を要します。従いましてこの免許期間を三年や五年頂戴いたしましても、十分にその施設をすることができない関係上、漁獲も十分にできない、かように思われるのでございます。そういうような関係上、今まではこの免許期間が二十箇年であつたのでございますが、二十箇年はあまりに長いと言われますならば、せめて十箇年、十箇年はどうしてもいただかないと、十分な施設はできない、かように考えておる次第でございます。  第三の漁業証券の問題につきましては、これは劈頭より私は、乱暴しごくのものだと断定するものでございます。どこの世界をさがしましても、こういうときにあたりまして、人のものを三十箇年の、しかも今経済状態の変動の激しい時期にあたりまして、三十箇年の先つけ小切手—その間に年々償還はするのでございましようが、そういうものを與えて自分の売る品物は現金だ、こういうような取引はどこの国をさがしてもないものだと私は信じております。どうぞ賢明なる諸先生方には、こうした漁師を困らせるような案は撤回されまして、買うものも売るものも現金というようなあんばいにやつていただきたいと思います。  どうもいろいろ取りとめのないことを申し上げて、たいへん時間をつぶしまして恐縮いたしました。
  18. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 山本さんに御質問申し上げますが、山本さんの御意見の大部分は、現在まじめに営々として自営しておる漁業権は、むしろ取消しをするとかいうようなことをせずに、そのまま認めたらどうかという御意見の要旨と思うのであります。もしもしいて優先順位をつけなければならぬのであれば、実際に自営能力のあるものに與える。しかし根本的な考え方は、現在まじめに経営しておるものについては、そのまま與えておいてくれという御意見のようでありますが、     〔夏堀委員長代理退席、委員長着席〕 もしも御希望のようになつた場合、そうして不当に集中しておる漁業権であるとか、あるいは個人で持つておりながら、それを貸し付けて不在地主的な賃貸漁業権になつておるものとか、あるいは不適格者の経営する漁業権であるか、あるいは理由なく休業しておる漁業権であるとか、そういうよ方なものだけを取消して、そうして再配分する場合には優先順位については、協同組合第一優先でもさしつがえないという御意見を持つておられるのであるか、その点をお伺いしたいと思います。
  19. 山本秀雄

    山本参考人 鈴木先生の御質問にお答えいたします。私は不在地主的な、あるいはまた不適格者が経営しておる漁業権とか、あるいは法的に休業を命ぜられておるのではない、真に休業しておる場所とか、あるいは人に賃貸をいたしまして、その間のマージンをとつておるとかいうような漁業権につきましては、御説のようにどなたに免許されてもさしつかえないと思います。またことさらにこれを漁業協同組合に優先するということではなく、先ほど申し上げましたように、そういう漁業権でも、もし適格者があつて、今までやれなかつた個人がありましても、それが適格者であるとするならば、その人にやつてもいいのではないか、漁業組合が優先だとか、あるいは個人が優先だとかいうようなことはないようにしたいと思います。
  20. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 これはちよつと愚問にわたるようであります。と申しますのは、北海道におきまして定置漁業権の優先順位の問題は、非常に大きな問題であります。全道漁民の重大な関心事であるわけであります。そこで重ねてお尋ねするのでありますが、現在自営をしておる、不当の集中によらないで、まじめに経営しておる漁業権が尊重されるのであれば、その他の漁業権の再配分については、あの優先順位については、北海道の特例等についてあながち固執するものではないかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  21. 松田鐵藏

    ○松田委員 関連して……。山本さんの御意見の中に、日本の歴史を説いてお話でありましたが、この法案の中に、北海道の特異性を認めることになつておるのであります。つまり日本の歴史は、現在のアメリカにおいて、アメリカの開拓者というものに対してアメリカは非常な尊敬の念を拂つておるのである。北海道は内地の府県と違いましてただいま申された御意見の中に、北海道の定置漁業者は、あのアメリカの開拓者と同様な苦労をもつて漁業経営開拓して来たのである、ゆえに北海道の特異性をどこまでも認めて行かなければ、北海道の現在の実情と非常に異なる点が出て来るのであつて、つまり北海道の秩序を撹乱するおそれがある、というような御意見のように聞きましたが、いかがなものでしようか。  それからそれに関連して、鈴木先生の言われるように、北海道の特異性に対するもう一つの議論は、現在北海道には協同組合が結成されておるが、この協同組合は、資力の点において、また将来の金融の点において、現在の段階とししは、なかなかお互いの気持にびつたり合わぬ、実情に合わぬような状態になつておる。ゆえにまじめなる業者の経営しておる漁業権に対しては、この法案通り特異性を認める、こういう御意見のように聞えますが、この点お伺いしたいと思います。
  22. 山本秀雄

    山本参考人 鈴木先生の問題と、松田先生の第二問は大体連関しておりますので、一緒にお答えしますが、私は先ほど来申し上げましたように、際際自分でまじめにその業に携わつておる人間の漁業権を尊重していただければ、決して固執はいたしません。現行法でけつこうだと思います。なお第二問の松田先生のお話を申し上げますと、なるほど私がさつき申し上げたかつたのはその点なんでありますが、この北海道の開拓使にあたりましては、われわれ漁民の祖先、おじいさんやおばあさんが、全道沿岸各地にわたりまして、将来開拓を入れるくさびになつた、その足場の打ぐいになつたということをよくお考えくだされば、何とか内地の漁業者とはかわつて、国に多少なりとも貢献せられておるこの特異性を生かして、やつてもらいたいというのが、私たち一般漁業者意見であります。
  23. 石原圓吉

    石原委員長 質疑がないようでありますから、次に移ります。宇佐美松兵衞君。
  24. 宇佐美松兵衞

    ○宇佐美参考人 私は茨城県久慈町の漁民宇佐美であります。数日来のどを痛めておりますので、私の申し上げることは、さだめしお聞き苦しいことと存じますが、その点どうぞ御了承願います。私が申し上げるようなことは午前中皆さんからるる申し上げてあるようなことでございますので、簡單に二、三御意見を申し上げ、参考に供したいと存じます。  御承知のように茨城県は、霞ヶ浦、北浦を初めその他湖沼、河川が多数にありますので、二、三参考のために、特に内水面漁業権の問題について申し上げてみたいと存じます。まず内水面漁業権は、今回の制度によりまして全面的に漁業権を失うことになりますが、それでは河川における漁業の秩序維持が非常に困難になるのみならず、二県二郡にわたるような河川にありまして收拾することのできない混乱に陥るまうなことが予想せられますので、河川漁業権は現状に即したるところの方法によりまして、漁業協同組合漁業権を與えてもらいたいのであります。  次には共同漁業権の問題であります。この共同漁業権の免許は適格性があるようになつておりますが、この制度は漁業協同組合を弱体化し、ひいては本制度改革に逆行するものでありますので、この條文は削除していただきたいという考えを持つております。  次には定置漁業権の問題でございます。定業漁業権免許について適格性の問題でありますが、定置漁業権漁民全体の自営にとらわれず、漁業協同組合へ與えてもらいたいということが希望でございます。それは前の人が申しましたが、沿岸漁民漁業権、小漁業者との相剋摩擦を調整することができようと存じますので、定置漁業権はぜひ漁業協同組合許可していただきたい、このように考えておるものでございます。  次に漁業調整委員の問題であります。漁業調整委員の定数は、漁民が七、学識経験者が三、合計十名となつておりますが、一律に十名とすることは、漁業の実情、漁民の密度等を考慮に入れてこれはもつと増員すべきであつて陸上の農地委員のごとく、各町村漁業調整委員というものを置くことを、一般漁民希望しております。  次に海区漁業調整委員の資格でございますが、一年に九十日以上漁船を使用して漁業を営んでおる者、または漁業者のために船舶を使用しておる者とありますが、これは漁業協同組合の資格のように、三十日以上ということにぜひ改めていただきたい。  次に許可漁業漁業権制度の問題でありますが、これは密接不可分の関係があつて、切り離すことができない問題だと思いますので、許可漁業の方はそのまま見送つておりまして、沿岸漁業制度のみを改正しておるというようなことは、はなはだ遺憾のことであると存じます。先ほど岩手県の菅原君から申されましたように、許可漁業の分で各府県が思い思いに許可しておりましても、入会協定という難問題がありますので、許可漁業のもの、いわゆる回遊魚のものは、やはり全国を何区かにわけて入会の状態をあまりむずかしくないようにしていただきたいというのが、われわれの念願でございます。  次には漁業権の制度の問題でございます。漁業権の制度は、実施期間の発布後二年を予想しておるようでありますが、この二年間というものは長過ぎるので、これは急速にこの制度を実施していただくことをお願いしたいものでございます。はなはだとりとめのないことを申し上げましたが、私の申し上げることは、午前中より皆さんがるる申し上げましたので、私は簡單ながら一言申し上げまして参考に供したいと思います。
  25. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑はありませんか。
  26. 川村善八郎

    ○川村委員 漁業調整委員会委員の選挙については、三十日以上漁業に従事している者であればよいというふうな御趣旨かと解釈できますが、これは北海道に例をとりますと、三十日以上と言えば、もちろん六十日も三十日以上にはなりますが、いかつりとか、こんぶとりとかいうものは、本業としてでなく、先生でも床屋さんでも、鍛冶屋さんでもげた屋さんでも、三十日以上漁業に従事しておる者が非常に多いのでありますが、三十日以上漁業に従事しておれば、何人でもよいという御意見ですか。これは漁民の定義ということから、漁業権の問題と非常に関連性を持つので、これを一応お伺いします。
  27. 宇佐美松兵衞

    ○宇佐美参考人 ただいまの川村先生の御質問でありますが、要するに漁業協同組合員であれば三十日以上ならよいというふうに私は申し上げたつもりであります。
  28. 川村善八郎

    ○川村委員 協同組合員であればよいということになりますと、漁業協同組合員も同様でありまして、北海道に例をとつてはなはだ狭い見解かもしれませんが、先ほど私が申しましたように、副業的にやつている者が相当にあるのであります。そうした者まで調整委員会委員を選任する資格を持つというと、結局漁業権を持つ資格を有することになります。これは本業でなければならないというお考えか。それとも副業でも何でもよいから、三十日以上漁業に従事している者であれば、選挙権もあるし、漁業権を受ける資格もあるということになるのか。その点について伺つておきます。
  29. 宇佐美松兵衞

    ○宇佐美参考人 重ねてお答え申し上げます。私は本業を指して申し上げたのでありますから御了承願います。
  30. 石原圓吉

    石原委員長 他に御質疑もないようでありますから、以上をもちまして本日出席の参考人各位の御意見発表は終りました。  なおこの際明十九日出席予定の岩田留吉君が、都合により出席できなくなりましたので、その代理として北海道紋別郡雄武町、漁業者三國賢三君が出席したい旨申出がありましたが、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 石原圓吉

    石原委員長 それではさようにいたします。なお明十九日出席予定の京都大学教授須貝脩一君が欠席する旨の申出がありましたので御了承願います。  散会するに先だちまして長時間にわたり、御熱心に御意見発表くださいました参考人各位に対しまして委員会を代表いたしまして厚く感謝の意を表します。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十五分散会