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金森国会図書館長 国立国会図書館の
業務の大要につきましては、前
年度属しまする
部分は、いろいろ
機会におきまして御
説明を申し上げております。そこで今回は、本年の
前半期につきましての
図書館の
動き方の概略を申し上げたいと存じます。
まず第一に、おおづかみにこれを申しますれば、
図書館は設立しの本旨に従いまして、昨年から一貫した
方針をと
つておりまして、漸次それを改善して来ております。この
年度初めの大きな問題は、
図書館法の
改正が行なわれまして、
国会の方でその
法律の
改正をしてくださいまして、その結果として、従来非常に
納本制度が不十分でございましたのが、ほぼ予想しおります形に順当に
なつて、新しき君物もおそらくは完全に近い
程度に入るように
なつておりますし、また全
日本の
出版目録の類も比較的完全なものができるであろうと
考えておりますすが、これが一番大きな問題であります。漸次各
項目にわた
つて御
説明を申し上げたいと思います。
第一に
図書館の
職員の問題であります。これは本
年度予算は、
職員をふやさないという
方針堅持されておりましたために、今
年度になりましても
予算がふえたことはございません。全体としては
行政整理の影響を受けまして、ほんのわずかでありますけれ
ども、縮少をしておる形に
なつております。
人数は現在
館長以下四百九十一人でありましてその
主業以上が百八十九人、
雇傭人にあたりますものが三百二人という数であります。
従つて実際責任をとり得る
人数はかなり少い
といふうに申し上げられると思います。
幾分人事等にも変更はありましたが、それとても特に申し上げる必要もないかと思いますので、省略させていただきます。
それから現に
仕事をしております
場所は、従前の
方針に従いまして、ほんとうの
図書館の
建物をつくりたいという
希望は持
つておりますけれ
ども、今日にわかにそれに及ぶこともできませんので、結局敷地を選定し、漸次その建設の
計画を立てて行くという段階であります。
従つてさしあたりはごくあり合わせな
方法によ
つて、
図書館を
運営しているということよりほかにいたし方もございません。現在直接に
中央館と申しておりますが、
国立図書館の本件が働いておりますところは、三つの
場所であります。第一は旧
赤坂離宮において
図書館の
仕事をしている。第二は
国会議事堂の中に
分室を設けまして、
図書室も設けておりますし、
閲覧室も設けてあります。また
調査及び
立法考査事務、つまり
議会の御要求に応じて
各種の問題を
調査する
仕事の一部も、この
国会建物の中でや
つているわけであります、第三には、さらに本年の九月から
三宅坂に庁舎を建築いたしまして、それを
図書館の
分室といたしまして、今まで
議事党内でや
つておりました
調査事務の大
部分をそこに引越しまして、
立法考査局の
仕事を、大
部分そこでいたすことになり、また
国際業務部と申しまして、
外国との
交換業事務もそこでや
つておりますし、
官庁出版物の
閲覧事務もそこでや
つております。
従つて現在は直接には
赤坂御所と、
議事堂内と、
三宅坂の
分室と、この三箇所でや
つております。これは現在のところかようなふうにいろいろの苦心をして、必要に応ずるように進んでおりますが、将来は—と申しましても、長い将来はもとより新しいところができますが、近い将来においては、漸次
三宅坂分室、つまり新しくこしらえました旧
参謀本部の焼跡の
部分を整理いたしましたところに、だんだんと
調査立法の
仕事を移しまして、かつまた、その他
法律に
関係をいたしまする一切の
図書の
閲覧利用の
業務を、そこに移して行くというような方向をとりまして、なるべく
国会と接近する
場所で、密接な
関係を持
つて奉仕をしたというふうに
考えております。
次に今私
どもの
図書館の持
つておりまする
蔵書数のことについて申しますが、漸次各
方面の協力を受けまして、九月末日の現状におきましては、
図書及びパンフレットは、三十五万七千冊余であります。
雑誌類は三千五百八十五種を備えておりますし、そのほか
新聞通信類も四百二十九種持
つておりますし、それから地図とか音楽の楽譜とか、あるいは録音せられた
録音盤のたぐいを合わせますと、それが千二百七十二点ばかりございまして、累積の量は決して多くはございませんけれ
ども、漸次順調に増加しつつあるわけであります。本
年度先ほど申し上げました新しい
法律の
改正によりまして、新しき
出版図書がここに
納本せられ、または
寄贈せられるという改革の結果として、いろいろ
資料がゆたかに流れ込んで来ておりますが、その
計数はおま
わしをしておきました
数字の表がございまして、そこの中で表の第一、第二、第三というものがその
数字を示しております。ただ
図書館技術と申しますか、そういう
計数の特別の
技術がございまして、この数だけを突き合せになりましても、
ちよつとおわかりにくい点もあろうかと思いますが、大体はそれによ
つて納本等が順調に入
つて来ているという姿が示されております。ことに
納本とは申しますが、その実
寄贈書類が非常に多いのでありまして、
法律は
納本義務を定めまして、もしも
無償で
書物を
図書館に
寄贈せらるるならば、その
納本義務の
規定を適用しないということに
なつておりますが、実際の行き道は、ほとんど
出版社の
寄贈でありましてそれに対して
賠償を拂
つております場合はごくわずかであります。七、八、九と三箇月を通じて、ほんの一万何千円という
程度でございます。なお
雑誌新聞等につきましては、現在のところ
無償で
寄贈せられるものが主に
なつております。つまりあの
法律は非常に順当に、
図書館の
立場から見ると非常に
都合よく動いていると、申し上げることができるわけであります。
次に
図書館の
活動面のことを申し上げまするが、
図書館の働きは御
承知のように幾つもにわけることができようと思います。大体大づかみにわけますると、この際
四つにわけることができると思います。第一は
国会に対する
奉仕であります。第三は
行政司法の各
部門に対する
奉仕でおります。第三は
一般国民に対する
奉仕であります。第四は
外国との間の
図書の
交換業務ということになります。そのほかに数えたてますると、第五に
日本の全体の
図書館事業、
図書館人の利益をはかるという
業務がございますけれ
ども、これは今のところまだ
あまり手はついておりません。今後いろいろの適当な
方法を
考えて
努力するつもりでおります。そこでその初めの
四つの
部分についてわけて御
説明を申します。
第一に
国会に対しまする
奉仕は、これをわけますと、観念的には
二つになろうと思います。
一つは御命令に応じましていろいろ
立法に関しまする
調査をする。それから第二は
国会の中にごく便利な
図書館を設けまして、それを議員の方に直接に
利用していただく。この
二つの
仕事であります。その
調査立法の
考査事務、いろいろの
お尋ねに応じまして、それに対してお答えを出したり、あるいはお尋がなくても、何かのお役に立つであろうという
考えのもとに
調査書を出しまする事柄は、
別刷りにしてありまする
書類の中の表の四のところに、おおよその
数字が出ております。四月から九月に至ります間に、
お尋ねに
従つて考査したのは百十六件であります。そのほかいろいろの
調査書類をこしらえまして、何かのお役に立てようといたしましたもののおもだ
つた事項は、やはりその表の次のところに大体列記してございますが、この
立法調査の
事務につきましては、私
どもの方は何とかして主力を注がなければならぬということを
考えまして、そのために先に
ちよつと申しましたが、
三宅坂の所に
分室をこしらえて、そこで
法律に関しまする
書類を
蓄積するということを
計画しております。
日本には
立法に必要な
図書館はほとんどないと
言つていいと思います。
裁判所は裁判に必要な
図書館はある。
大学にも学問として
法律を研究するに必要な
図書館はございますけれ
ども、一国の
立法をきわめて完全に、かつ敏捷になし得まするためには、
外国の
現行法も知らなければならない。国内各地域の
條例等の
現行法も知らなければならない。
日本の古くからの
法典類の正確なものも整備しなければならない。またこれのインデックスを、最も
都合のいいものにつくり上げなければならないという
各種の
事務がございまするので、そういうことを
中心といたしまして、いわば
法律図書館が生まれなければならないわけであります。
アメリカの
国会図書館はかなりなものとして発達しておるらしいのでありますけれ
ども、私
どもの
図書館は、まだ実は手がついておりません。そこで
三宅坂に
分室ができますることを
機会として漸次
基礎を固めて行こうと思
つておまして、いろいろの
予算の
やり繰り等をして
努力いたしておりますので、次第にこれが完備することと
考えております。
それから第二にこの
建物の中の
国会分館としての
図書室の問題でありますが、これは私の
考えまするところ、私の不徳—不徳といいまするか、不注意と申しまするか、昨年の二月に新
図書館ができましていわばここの
議会の中にある
図書室と、
図書館本館とは、同一体として融通自由なるものとして発展すべきものであるということは、
図書館法の中におおよそ予想せられておりましたけれ
ども、いろいろ沿革もございまして、それをうまく
理想通りにや
つて行くことはできませんでございました。しかし漸次整いまするにつれて、今の
計画といたしましては、ここの
国会分館の中にありまする
書物が多少もう古く
なつております。現在の用途にぴ
つたりと当てはまらないという感じがございまするので、今の部屋の余地の許します限り、新しい
書物をも
つて充実し、さらにあまり使い道のないものは
本館の方にま
わしてその空間をまた、ごく新しい、実用に適するものをも
つてとりかえるという
方法で、
漸次力を注いでおりまするので、これも今の
継続事業が完備いたしましたならば、面目も改めることになろうかと
考えております。これが
国会に対する
奉仕であります。
次に
行政及び
司事法の各
部門への
奉仕につきましては、本年の六月一日施行の
法律ができました、それは
図書館運営委員会の側で御起案を願
つてでき上
つたものでございまするが、それによ
つて最高裁判所や
大蔵省という、各支部の
図書館の
職員を、特別にふやすというわけではございませんけれ
ども、
基礎をしつかりいたしまして、一時の調子で
人数を減らしたりなどしないように
なつたのであります。その
法律に基きまして、各
官庁と相談をして、
理想的とはもう絶対に申しかねるのでありますけれ
ども、
別刷りの中にありまする
行政司法支部図誤
館業務一覧表という印刷物の中にありまするように、一かどの
職員を正式に備えることができまして、おそらくこの線におきまして、だんだんと改善されて行くであろうと確信をいたしております。
次に
一般国民への
奉仕という
項目でありまするが、これは一口に申しますれば、普通の
意味の
図書館の
仕事ということになります、私
どもの
図書館は、
場所の
関係もありまするし、まだ
書物も何と申しましても一年有余の
蓄積でありまするので、思うような
書物は手に入
つておりません。そこで
一般国民への
奉仕といたしましては、とても十分とは申されませんので、いわば大きくたるもののその初めの姿でありまするので、
理想を遠ざかること遠いのでありまするが、現在は
閲覧者の数も非労にふえ、とても初め予想いたしました
職員と
設備ではやり切れないという
状況になり、遺憾ながら望んで来る人が入れないという姿でありまして、これを何とかくふうをして、およその
希望者は、この
図書館が
利用できるというふうにしなければならぬと
考えております。ただ思うにまかせぬ
事情もございます、日曜
開館、あるいは夜間の
開館、貸出しというようなことまでも
考えは及ぼしておりまするけれ
ども、
予算の
関係、人員の
不足、あるいは
公務員法の厳密なる
規定というようなことによりまして、今日まだ着手することができません。これも何らかの
方法を講じたいと
考えております。
外国との
図書の
交換事務でありまするが、これはかなり進展をいたしまして、大体この
法律の基本の趣旨から申しますると、
政府刊行物は
外国へ必要に応じて送
つてやる。そのかわり
外国の
政府刊行物をこちらにもらい受けるということが骨子に
なつておりまして、これも根本の條約などは、実はそうはつきりしたものは、ございませんが、いろいろ実際的な面から、この方に力を、伸ばしておるのでありまするが、
アメリカは、公の
出版物の、おそらくは大
部分であろうと思いますが、それを全部われわれの方に送
つて来ております。私の方もまた
官庁出版物の全部を送
つております。
アメリカばかりでなく、漸次これが今の非常時のもとにおきましても拡張されて行きまして、たとえばベルジュームなどからも、
相当の
交換文書、
交換の
書物を送
つて来ておるという
状況であります。それからまた各
大学、それは
外国の
大学、
日本の
大学の間に、いろいろ
研究書類を
交換するということもございまして、そういうことの
交換のセンターをや
つておるということもいたしております。さらにまた最近の問題といたしましては、
ユネスコの
関係におきまして、
ユネスコの
本部から
日本に対しまして、若干の
連絡がありました。それはまだ
日本は
ユネスコに入
つてはいないけれ
ども、しかし
ユネスコの
関係の
出版物は、
日本の
図書館に送るときには、私
どもの
国会図書館に一組これを陳列することを
希望しておりまするし、また
ユネスコ関係の
交換の
書物は、私の方の
図書館で世話をしてお互いに融通するということも
言つて来ておりまして、できるだけその
任務を果すというふうにいたしております。それからまたひ
とつ喜ぶべき姿といたしましては、
外国から
書物を
日本へ送
つてくれるという風潮がかなり多くなりました。たとえば
アメリカの
日刊新聞三十種ばかりは、現にGHQの
好意によりまして、私の方の
図書館に飾
つております。飾るという言葉は失礼でありますが、
利用に供しております。最近には
ロックフエラー財団が、かなりたくさんの
書物を、送
つてくれる
予定に
なつておりました。現在到着いたしましたものは、
アメリカを
中心といたしまする
文学書類の優れたコレクシヨン五百冊ほどを送
つて来ておりまするし、漸次
自然科学の
書物。あるいは
社会科学の
書物が到着するであろうという予想を抱いております。
右のような
事情でありまして、立ち上りましてから一年半ではございまするけれ
ども、ある
程度までは形を整えて来ております。ある
程度と申しますと、はなはだ不完全な言い現
わし方でありまするが、実際のところは
建物の
不足根源になりまして、発展しようにも発展することができないのであります。
図書館ばかりは、
建物が主になりまするので、どうしてもその点に重点を置かなければならぬというわけであります。それから
書物を集めまするのに、なかなかうまく買いましても思うように買えるものでは、ございません。
経費の問題もあるし、
書物を集めるということの困難もございまして、これについてもいろいろ
考えなければならぬ点がございまするが、これも幾らかずつ、世間の
好意によりまして、道がつくのではないかと思
つております。たとえば
日本の
明治憲政史と申しまするか、
国会ができた、あるいは内閣の
制度が発達したという
基礎に、
明治以来の多くの人の
努力が入
つておりまして、
伊藤博文文家とか、
伊東己代治家とかいうようなところに、多くの貴重な文献の
蓄積がございまするが、そういうふうなものが、漸次私
どもと連繋をとることができるように
なつて、比較的楽にこれを見せてもらえるというような仕組みまで生れんとしておるわけでございまして、その面におきましても、
図書館の持
つておる
一つの機能が伸びて行くものと
考えております。大要申し上げますると、そのくらいのことになりまするが、なお
お尋ねに応じましてお答え申し上げたいと思います。