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1949-11-17 第6回国会 衆議院 図書館運営委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十七日(木曜日)                 水谷  昇君  が理事に当選した。     —————————————  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 水谷  昇君       多田  勇君    圓谷 光衞君       受田 新吉君    渡部 義通君  委員外出席者         国立国会図書館         長       金森徳次郎君         国立国会図書館         司書      岡田  温君 十一月九日  委員橋本龍伍辞任につき、その補欠として千  賀康治君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員伊藤憲一辞任につき、その補欠として渡  部義通君場が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員森戸辰男辞任につき、その補欠として受  田新吉君事が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国立国会図書館運営に関する報告聴衆     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは、たいへんお待たせいたしましたがこれより会議を開きます。  本日の日程につきましては、すでに御案内のごとく、国立国会図書館運営経過報告の聴取、国立国会国会組織規程の一部を改正する規定案及び国立国会図書館法による出版物納入に関する規程を御審議願うことになつております。御承知通り国立国会図書館法第十一條によりまして、図書館運営委員会は、少くとも六箇月に一回以上これを開会し、図書館経過に関する館長報告を聽取し、図書館の管理上、館長の定めるる諸規程図書館予算及びその他の事務につき、詳細に審査をし、委員長はその審査結果を議院報告するということになつておりまして、すでにその時期になつておりので、今会期中にはその報告を行わねばならないと存じます。その点御了承の上、本日の御審議を願いたいと存じます。  まず図書館長より、図書館運営経過に関する報告を求めます。
  3. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 国立国会図書館業務の大要につきましては、前年度属しまする部分は、いろいろ機会におきまして御説明を申し上げております。そこで今回は、本年の前半期につきましての図書館動き方の概略を申し上げたいと存じます。  まず第一に、おおづかみにこれを申しますれば、図書館は設立しの本旨に従いまして、昨年から一貫した方針をとつておりまして、漸次それを改善して来ております。この年度初めの大きな問題は、図書館法改正が行なわれまして、国会の方でその法律改正をしてくださいまして、その結果として、従来非常に納本制度が不十分でございましたのが、ほぼ予想しおります形に順当になつて、新しき君物もおそらくは完全に近い程度に入るようになつておりますし、また全日本出版目録の類も比較的完全なものができるであろうと考えておりますすが、これが一番大きな問題であります。漸次各項目にわたつて説明を申し上げたいと思います。  第一に図書館職員の問題であります。これは本年度予算は、職員をふやさないという方針堅持されておりましたために、今年度になりましても予算がふえたことはございません。全体としては行政整理の影響を受けまして、ほんのわずかでありますけれども、縮少をしておる形になつております。人数は現在館長以下四百九十一人でありましてその主業以上が百八十九人、雇傭人にあたりますものが三百二人という数であります。従つて実際責任をとり得る人数はかなり少いといふうに申し上げられると思います。幾分人事等にも変更はありましたが、それとても特に申し上げる必要もないかと思いますので、省略させていただきます。  それから現に仕事をしております場所は、従前の方針に従いまして、ほんとうの図書館建物をつくりたいという希望は持つておりますけれども、今日にわかにそれに及ぶこともできませんので、結局敷地を選定し、漸次その建設の計画を立てて行くという段階であります。従つてさしあたりはごくあり合わせな方法によつて図書館運営しているということよりほかにいたし方もございません。現在直接に中央館と申しておりますが、国立図書館の本件が働いておりますところは、三つの場所であります。第一は旧赤坂離宮において図書館仕事をしている。第二は国会議事堂の中に分室を設けまして、図書室も設けておりますし、閲覧室も設けてあります。また調査及び立法考査事務、つまり議会の御要求に応じて各種の問題を調査する仕事の一部も、この国会建物の中でやつているわけであります、第三には、さらに本年の九月から三宅坂に庁舎を建築いたしまして、それを図書館分室といたしまして、今まで議事党内でやつておりました調査事務の大部分をそこに引越しまして、立法考査局仕事を、大部分そこでいたすことになり、また国際業務部と申しまして、外国との交換業事務もそこでやつておりますし、官庁出版物閲覧事務もそこでやつております。従つて現在は直接には赤坂御所と、議事堂内と、三宅坂分室と、この三箇所でやつております。これは現在のところかようなふうにいろいろの苦心をして、必要に応ずるように進んでおりますが、将来は—と申しましても、長い将来はもとより新しいところができますが、近い将来においては、漸次三宅坂分室、つまり新しくこしらえました旧参謀本部の焼跡の部分を整理いたしましたところに、だんだんと調査立法仕事を移しまして、かつまた、その他法律関係をいたしまする一切の図書閲覧利用業務を、そこに移して行くというような方向をとりまして、なるべく国会と接近する場所で、密接な関係を持つて奉仕をしたというふうに考えております。  次に今私ども図書館の持つておりまする蔵書数のことについて申しますが、漸次各方面の協力を受けまして、九月末日の現状におきましては、図書及びパンフレットは、三十五万七千冊余であります。雑誌類は三千五百八十五種を備えておりますし、そのほか新聞通信類も四百二十九種持つておりますし、それから地図とか音楽の楽譜とか、あるいは録音せられた録音盤のたぐいを合わせますと、それが千二百七十二点ばかりございまして、累積の量は決して多くはございませんけれども、漸次順調に増加しつつあるわけであります。本年度先ほど申し上げました新しい法律改正によりまして、新しき出版図書がここに納本せられ、または寄贈せられるという改革の結果として、いろいろ資料がゆたかに流れ込んで来ておりますが、その計数はおまわしをしておきました数字の表がございまして、そこの中で表の第一、第二、第三というものがその数字を示しております。ただ図書館技術と申しますか、そういう計数の特別の技術がございまして、この数だけを突き合せになりましても、ちよつとおわかりにくい点もあろうかと思いますが、大体はそれによつて納本等が順調に入つて来ているという姿が示されております。ことに納本とは申しますが、その実寄贈書類が非常に多いのでありまして、法律納本義務を定めまして、もしも無償書物図書館寄贈せらるるならば、その納本義務規定を適用しないということになつておりますが、実際の行き道は、ほとんど出版社寄贈でありましてそれに対して賠償を拂つております場合はごくわずかであります。七、八、九と三箇月を通じて、ほんの一万何千円という程度でございます。なお雑誌新聞等につきましては、現在のところ無償寄贈せられるものが主になつております。つまりあの法律は非常に順当に、図書館立場から見ると非常に都合よく動いていると、申し上げることができるわけであります。  次に図書館活動面のことを申し上げまするが、図書館の働きは御承知のように幾つもにわけることができようと思います。大体大づかみにわけますると、この際四つにわけることができると思います。第一は国会に対する奉仕であります。第三は行政司法の各部門に対する奉仕でおります。第三は一般国民に対する奉仕であります。第四は外国との間の図書交換業務ということになります。そのほかに数えたてますると、第五に日本の全体の図書館事業図書館人の利益をはかるという業務がございますけれども、これは今のところまだあまり手はついておりません。今後いろいろの適当な方法考え努力するつもりでおります。そこでその初めの四つ部分についてわけて御説明を申します。  第一に国会に対しまする奉仕は、これをわけますと、観念的には二つになろうと思います。一つは御命令に応じましていろいろ立法に関しまする調査をする。それから第二は国会の中にごく便利な図書館を設けまして、それを議員の方に直接に利用していただく。この二つ仕事であります。その調査立法考査事務、いろいろのお尋ねに応じまして、それに対してお答えを出したり、あるいはお尋がなくても、何かのお役に立つであろうという考えのもとに調査書を出しまする事柄は、別刷りにしてありまする書類の中の表の四のところに、おおよその数字が出ております。四月から九月に至ります間に、お尋ね従つて考査したのは百十六件であります。そのほかいろいろの調査書類をこしらえまして、何かのお役に立てようといたしましたもののおもだつた事項は、やはりその表の次のところに大体列記してございますが、この立法調査事務につきましては、私どもの方は何とかして主力を注がなければならぬということを考えまして、そのために先にちよつと申しましたが、三宅坂の所に分室をこしらえて、そこで法律に関しまする書類蓄積するということを計画しております。日本には立法に必要な図書館はほとんどないと言つていいと思います。裁判所は裁判に必要な図書館はある。大学にも学問として法律を研究するに必要な図書館はございますけれども、一国の立法をきわめて完全に、かつ敏捷になし得まするためには、外国現行法も知らなければならない。国内各地域の條例等現行法も知らなければならない。日本の古くからの法典類の正確なものも整備しなければならない。またこれのインデックスを、最も都合のいいものにつくり上げなければならないという各種事務がございまするので、そういうことを中心といたしまして、いわば法律図書館が生まれなければならないわけであります。アメリカ国会図書館はかなりなものとして発達しておるらしいのでありますけれども、私ども図書館は、まだ実は手がついておりません。そこで三宅坂分室ができますることを機会として漸次基礎を固めて行こうと思つておまして、いろいろの予算やり繰り等をして努力いたしておりますので、次第にこれが完備することと考えております。  それから第二にこの建物の中の国会分館としての図書室の問題でありますが、これは私の考えまするところ、私の不徳—不徳といいまするか、不注意と申しまするか、昨年の二月に新図書館ができましていわばここの議会の中にある図書室と、図書館本館とは、同一体として融通自由なるものとして発展すべきものであるということは、図書館法の中におおよそ予想せられておりましたけれども、いろいろ沿革もございまして、それをうまく理想通りにやつて行くことはできませんでございました。しかし漸次整いまするにつれて、今の計画といたしましては、ここの国会分館の中にありまする書物が多少もう古くなつております。現在の用途にぴつたりと当てはまらないという感じがございまするので、今の部屋の余地の許します限り、新しい書物をもつて充実し、さらにあまり使い道のないものは本館の方にまわしてその空間をまた、ごく新しい、実用に適するものをもつてとりかえるという方法で、漸次力を注いでおりまするので、これも今の継続事業が完備いたしましたならば、面目も改めることになろうかと考えております。これが国会に対する奉仕であります。  次に行政及び司事法の各部門への奉仕につきましては、本年の六月一日施行の法律ができました、それは図書館運営委員会の側で御起案を願つてでき上つたものでございまするが、それによつて最高裁判所大蔵省という、各支部の図書館職員を、特別にふやすというわけではございませんけれども基礎をしつかりいたしまして、一時の調子で人数を減らしたりなどしないようになつたのであります。その法律に基きまして、各官庁と相談をして、理想的とはもう絶対に申しかねるのでありますけれども別刷りの中にありまする行政司法支部図誤館業務一覧表という印刷物の中にありまするように、一かどの職員を正式に備えることができまして、おそらくこの線におきまして、だんだんと改善されて行くであろうと確信をいたしております。  次に一般国民への奉仕という項目でありまするが、これは一口に申しますれば、普通の意味図書館仕事ということになります、私ども図書館は、場所関係もありまするし、まだ書物も何と申しましても一年有余の蓄積でありまするので、思うような書物は手に入つておりません。そこで一般国民への奉仕といたしましては、とても十分とは申されませんので、いわば大きくたるもののその初めの姿でありまするので、理想を遠ざかること遠いのでありまするが、現在は閲覧者の数も非労にふえ、とても初め予想いたしました職員設備ではやり切れないという状況になり、遺憾ながら望んで来る人が入れないという姿でありまして、これを何とかくふうをして、およその希望者は、この図書館利用できるというふうにしなければならぬと考えております。ただ思うにまかせぬ事情もございます、日曜開館、あるいは夜間の開館、貸出しというようなことまでも考えは及ぼしておりまするけれども予算関係、人員の不足、あるいは公務員法の厳密なる規定というようなことによりまして、今日まだ着手することができません。これも何らかの方法を講じたいと考えております。  外国との図書交換事務でありまするが、これはかなり進展をいたしまして、大体この法律の基本の趣旨から申しますると、政府刊行物外国へ必要に応じて送つてやる。そのかわり外国政府刊行物をこちらにもらい受けるということが骨子になつておりまして、これも根本の條約などは、実はそうはつきりしたものは、ございませんが、いろいろ実際的な面から、この方に力を、伸ばしておるのでありまするが、アメリカは、公の出版物の、おそらくは大部分であろうと思いますが、それを全部われわれの方に送つて来ております。私の方もまた官庁出版物の全部を送つております。アメリカばかりでなく、漸次これが今の非常時のもとにおきましても拡張されて行きまして、たとえばベルジュームなどからも、相当交換文書交換書物を送つて来ておるという状況であります。それからまた各大学、それは外国大学日本大学の間に、いろいろ研究書類交換するということもございまして、そういうことの交換のセンターをやつておるということもいたしております。さらにまた最近の問題といたしましては、ユネスコ関係におきまして、ユネスコ本部から日本に対しまして、若干の連絡がありました。それはまだ日本ユネスコに入つてはいないけれども、しかしユネスコ関係出版物は、日本図書館に送るときには、私ども国会図書館に一組これを陳列することを希望しておりまするし、またユネスコ関係交換書物は、私の方の図書館で世話をしてお互いに融通するということも言つて来ておりまして、できるだけその任務を果すというふうにいたしております。それからまたひとつ喜ぶべき姿といたしましては、外国から書物日本へ送つてくれるという風潮がかなり多くなりました。たとえばアメリカ日刊新聞三十種ばかりは、現にGHQの好意によりまして、私の方の図書館に飾つております。飾るという言葉は失礼でありますが、利用に供しております。最近にはロックフエラー財団が、かなりたくさんの書物を、送つてくれる予定なつておりました。現在到着いたしましたものは、アメリカ中心といたしまする文学書類の優れたコレクシヨン五百冊ほどを送つて来ておりまするし、漸次自然科学書物。あるいは社会科学書物が到着するであろうという予想を抱いております。  右のような事情でありまして、立ち上りましてから一年半ではございまするけれども、ある程度までは形を整えて来ております。ある程度と申しますと、はなはだ不完全な言い現わし方でありまするが、実際のところは建物不足根源になりまして、発展しようにも発展することができないのであります。図書館ばかりは、建物が主になりまするので、どうしてもその点に重点を置かなければならぬというわけであります。それから書物を集めまするのに、なかなかうまく買いましても思うように買えるものでは、ございません。経費の問題もあるし、書物を集めるということの困難もございまして、これについてもいろいろ考えなければならぬ点がございまするが、これも幾らかずつ、世間の好意によりまして、道がつくのではないかと思つております。たとえば日本明治憲政史と申しまするか、国会ができた、あるいは内閣の制度が発達したという基礎に、明治以来の多くの人の努力が入つておりまして、伊藤博文文家とか、伊東己代治家とかいうようなところに、多くの貴重な文献の蓄積がございまするが、そういうふうなものが、漸次私どもと連繋をとることができるようになつて、比較的楽にこれを見せてもらえるというような仕組みまで生れんとしておるわけでございまして、その面におきましても、図書館の持つておる一つの機能が伸びて行くものと考えております。大要申し上げますると、そのくらいのことになりまするが、なおお尋ねに応じましてお答え申し上げたいと思います。
  4. 水谷昇

    水谷(昇)委員 おまわしいただいた図書館資料の、図書受入れ数とその登録数というものは一致しないものですか。どういうふうな……
  5. 岡田温

    岡田国会図書館司書 御説明申し上げます。図書購入数はことしの四月から九月までの数でありまして、登録数は前年度の二十三年度の分までも登録をいたしておりますので、それが若干入つておりますから、数字が一致しておりません。
  6. 水谷昇

    水谷(昇)委員 先刻、館長の御説明によりますと、七、八・九ですか、図書購入金高を一万円とかおつしやつたように思いますが、その点ちよつともう一ぺん説明してください。
  7. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 図書館書物をつくつて参りますには、いわゆる納本制ばかりではとても間に合わぬのであります。私どもの方の立場から言えば、少くとも目ぼしい書物は、議院の中にある分館一つ置かなければなりません。それから中央館に置かなければなりません。ものによりましては上野図書館に入れなければなりません。なお特別な調査に供しますために、もう少し要るということでございますから、一つのものにつきましても、数部必要なわけであります。そこで一部だけは納本として入つて参りますけれども、他の必要なものは全部購入をしなければなりません。その意味購入は、予算の許す限り相当努力しております。ただ納入義務の方の部分につきましては、出版社が非常に好意を持つてくれまして、実際はただで寄贈をしてくれますために、それに対して賠償として拂いますのは、七、八・九の三箇月を通じまして、一万五千三百六十一円しか拂つていない、こういう状況であります。
  8. 水谷昇

    水谷(昇)委員 その他に購入している金高相当あるのですか。
  9. 岡田温

    岡田国会図書館司書 二十四年度の金額は八百万円でございます。
  10. 水谷昇

    水谷(昇)委員 幾ら使つていますか。
  11. 岡田温

    岡田国会図書館司書 大体その半分くらい、この節は三箇月ずつ参りますから、大体半分使つております。
  12. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  13. 圓谷光衞

    圓谷委員 昨年参度図書費は七百万円ですか。
  14. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 今私の記憶しておりますところは、昨年度は四百万円と思います。
  15. 圓谷光衞

    圓谷委員 二十四年度は……
  16. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 本来が八百万円、そのほかに上野図書館購入が二百万円、合計一千万円の計算になつております。
  17. 圓谷光衞

    圓谷委員 昨年の図書館の総予算が一億二千万円、その中の図書費が約七百万か八百万と記憶しておつたんですが、そのときに私は、図書館使命図書購入でなければならない、それが一割にも足らない図書費では、非常に図書館使命達成の上に少いではないかと言つた場合に、館長からは、創設のときであるので種種設備やその他にかかるし、また人件費等もかかるので、図書の方にはまことに少ないかという御説明があつたことを記憶しておりますが、本年度予算においても一千万ということであれば図書館使命はどうして達成されるか、図書購入を一割に足らない予算をとつて、そうしてその他をどういうふうに使うかということについて、図書館経営をされる館長のお考えをひとつ承りたい。
  18. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 昭和二十四年分の予算は、三千五百万円の図書購入費を、大蔵省に求めておるのでありますが、いろいろの交渉の結果、中央図書館に八百万円、上野図書館に二百万円、合計一千万円ということで落ついて、現在それでもつて運営をしておるのであります。これは決して理想的ではございません。そのほかに図書を得る方法といたしましては、なるべく無償で得られる方法ということを考えておりまして、従来良書配給方面から、およそ日本出版物の全部とは言えませんでしようが、無償で交付を受けておるという形になつておりまして、本年できました法律によりまして、納本義務を定めると同時に、実際出版業者に頼み、連絡をつけまして、寄贈の形でやつてもらつております。こういうところで幾分づつ補つておりますけれども図書館といたしまして備えなければならぬところの新しいもの以外に、中堅になります貴重な本を買うというためには、実際経費不足でありまして、これをできるだけ充実させて行かなければならぬことはお説の通りであります。私ども努力はいたしておりますけれども、その努力がなかなか実現することができませんために、実は非常にほしいと思う書物も見送つて、次の年度等まで延ばしておかなければならぬという状況なつております。
  19. 圓谷光衞

    圓谷委員 本年度計画、それから本年度予算についての全貌と、その他の費用をどういうふうに運営されて行くかということをぜひ知りたいと思つておるのですが、できるならば本日プリントでもあれば拝見いたしたいと思います。二十五年度の……
  20. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 来るべき二十五年度予算につきましては、関係当局と大体了解を遂げております数字はもとよりそれは完全に参りませんけれども、普通の用に足る程度にはできております。あとであるいは印刷して差出したいと思いますが、今までの経過概要を申しますると、全体の経費が一億四千万円、これは現在の一億五百万円に比べまして三千五百万だけふえております。それから図書購入費は、色色のものにわかれておりまして、若干ふえて一千六百三十一万ばかりになる予定でございまして、あとで印刷して差出したいと思います。
  21. 千賀康治

    千賀委員 今年度当局理想も、図書購入費が一割より若干多いようですが、一割五分にも達しない。図書購入費は、われわれ内外漢から考えれば図書館運営主体であるように思うけれども、どうやらあなた方の認識はそうでないようだと思います。そうすると人件費主体であるか、あるいはその八割五分以上のものは何にお使いになるのか。二十四年度分の今日までの経過を伺うことも、二十五度分の予算の内容をうかがい知るよい資料でもありますし、二十五年度分はもちろん予算審議をするのに知りたいのでありますが、大体二十四年度分も一億円のところで、一千万円の図書購入費、九割は図書購入費以外に使われている。その使われている概要を伺えば、われわれ新しい委員も、図書館運営というものの理想がわかると思うのですが、それをお伺いしたい。
  22. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 国立国会図書館はいろいろの任務を持つておりまして、さきに述べました国会のために立法調査資料を提出する。これがおそらくは一番重要な論点であろうと思つております。それにつきまして現在のところ五十七名の職員立法調査の方に割当てているのであります。ここにおきまして、たとえば外国の憲法の制度がどうなつているか。外国の選挙法がどうなつているか、あるいは経済上の問題といたしましては、租税制度その他のことがどうなつているか、こういう調査をしておりますいわば一つ調査機関でありまして、これは書物はもとより利用いたしますけれども、主としてそういう調査機関でありまするがゆえに、書物と関ございません。その五十七人の人件費はそういうことに使われております。ここで研究いたしました結果が、今まで出しました出版物について見ましても、たとえば世界の新しい国にはどういうよりな憲法をつくつて来たが、日本がつくつた後の情勢というような出版物をこしらしえておりますと、これの出版費も相当に大きくなつているのであります。それから外国との交換書物交換事務等に、ただで書物が入つては来ますが、しかしその仕事は文化交流の面におきまして、今実際はたくさんの人は使つておりませんが、相当高級職員外国事情を知り、外国の言葉をよく理解するというような人によりまして、国際交換事務が行われておりますので、これにも多くの経費が用いられておるというようなわけであります。  なお図書館建物を必要といたしますので、たとえば参謀本部あとに、ちよつと見ますと見苦しいと言われるようなバラックをつくりましたけれども、それでもただちに五百万円ぐらいはすぐ飛んでしまいまして、現在人件費が約六千万円用いられております。それから物件費が四千五百万円になつておりまして、この二つの組合せによつてできておるのでありますが、私の方の今の図書館の働きは、アメリカから来られたクラツプ、ブラウン助言に基きまして、いろいろの仕事が予想せられておりまして、それを実行して行きますと、どうしても人件費と申しますか、人数がよけいいることになることはやむを得ないと思います。図書の方の足りないのは、非常に遺憾といたしておりまして、始終もがいておりますけれども、今月思うように行つておりません。
  23. 千賀康治

    千賀委員 日本がこういう焼け場の中にもがいておる民族であるということで、物件の足らざるところを人件で補うという弊害に陥りやすいことは、同情しないわけではないのでありますが、われわれより先進国と見られる英米であるとか、フランスであるとかいうようなところの図書館人件費と、物件費との割合がどんなふうになるか、これをお調べになつたことがありますか、これを伺います。
  24. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 私はその点につきましては、実は詳しい調査はしておりませんが、大体外国図書館では、全体の経費の二割五歩が書物購入費に使われているというのが、まず平均的な結果であるように聞いております。私ども図書館は今のところそうは行つておりません。
  25. 千賀康治

    千賀委員 それはどこですか、アメリカですか。
  26. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 国会図書館立法調査を持つておりますが、そういう立法調査というような特殊な仕事を持つていない、普通の図書館事業をやつておるアメリカの大図書館数字であるというふうに聞いております。
  27. 千賀康治

    ○千貫委員 そこで国会資料調査は、今年度すでに百数十件やつておいでになるという御報告でありますが、これは何人が頼むのか、国会の各常任委員会の専門員等が依頼した件数が、こういう数字になりますか。あるいは議員が各個人として依願したものが多くてこういう件数になるのか。その点の分類はいかがですか。
  28. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 大体今のところは、国立国会図書館法の中には、だれが依頼するということがわけて書いてありして、委員長が要求せらるることもあれば、国会議員の方が要求せらるることもあるというふうに定まつておりますが、今ここに出ておりまする数字は、だれという分類はここにはできておりませんので、各種の要求—議員の方もありますし、委員会からの希望のものもありますが、專門調査員から要求せられるということは、直接にはないと思つております。ただお話合いですることはございましようけれどももそれは正式ではございません。
  29. 千賀康治

    千賀委員 現在法案として国会に送られるようなものは、主として專門員の手にかかるものが多いのでありまして、議員個人がやられる場合はすこぶるわずかであります。そうしますと、百二十数件の大部分は、議員個人が調査を依頼されるもので、むしろそのまま法案になつて行くような重要性を帯びたものと比べまして、参考程度の軽いものが多いのではないかと思いますが、その程度のものに—五十七名全部ではございませんでしようけれども、それが六箇月間に百二、三十件というと、一箇月に二、三十件ぐらいのもので、一日に一件ぐらいの程度ですが、その程度調査にこんなにたくさん人間がかかつておるということは、ぼんやりタバコを吸つている人が多いのではないかというような疑いをわれわれは持つのですが、この人たちあまりすき間のないように、国民のために館長として督励して使つていただけば、かなりほかの仕事までやれるのではないか。あるいはもつと減員してもやれるのではないかというような考えも持ちます将来議会の依頼が非常に多くなるから、将来を待つて今待機しているのだという意味ならまた別でありますが、現在までの実際に利用した数と整備されている人の数を比べてみて、どうも能率がたいへん悪いように考えますが、この点どうだつたのでしよう。
  30. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 この一国の調査機関というものは非常に困難なものでございまして、政府でやつておる調査、たとえば大蔵省の一部分の金融とかいうだけでも現在は存じません。一年前の知識でございますが、百人以上の相当高き知識の人を活用しつつ、ごく限られた専門のことについて調査計数を出しまして、それで初めて調査ができるものでございまして、実際調査というものは、結果はわずかになつて参りますが、いろいろ困難な点は人間は平素から知識をためていなければ、ものの判断はできません。結局調査ということは專門にわかれまして、ある限られた事柄は、この人でなければならぬというよりに、自然に分岐発達して行くものでございます。名官庁は、今度の整理で局から部になりましたけれども調査統計局、あるいは調査統計部というものを持ちまして、その官庁仕事をして、ある程度まで業績をあげしめております。私どもの方は各官庁にわかれておりません。全部の官庁の一部の職務に属する範囲にわたつて、ある程度の專門知事識を持つ者を持たなければなりません。その見地から申しますと、相当数多い專門家が必要になつて来るわけです。ここで五十七人と申しましても、そのすべてがすぐに調査判断のできるわけではございません。その助手をやり、あるいはごく簡易な事務だけする者がございましても、その中心なつている人物たちは、大体言えば高等教育を受けている者であるわけでありますが、私の方で実際やつておりますると、たとえば財政という問題につきましても、だれに聞いてもすぐわかる財政は、あまり国会では御用に立ちません。どうしてもある程度深入りした財政の現実の問題というときに、いかなるところにその調査適任者を求むべきか、これは非常に困難な問題でございます。最初考えましたのは、大学の現在の專門の教授と、国会図書館の專門の調査者との間を、漸次交流させるという道はないだろうか。一年交流とでも申しますか、一面において大学で教授とたり、一面においては、時をかえて図書館において実務とにらみ合せて調査をする、こういうふうにできないものだろうかというように考えておりまして、従来あちらこちらとあたつてみましたけれども、そういうことも、とても実際できないということになりますと、どこからこういう人をとつて来るか。今のところは創業の際でありまするから、なるべくその人が立法仕事をなし遂げると信じ得られる既成の人物を特つて来るというところに重点を置いて、そこで私どもといたしましては、学界または官界、社会における業績をあげられた方、そうして現実には一般的な調査につきましては、大学の助教授というような人を若干とつて来る。第二には、新しく学窓を出て来る人の中から、人事院その他のコースをとりまして、厳選する、こういうようにしてやつておりまして、これが実際非常に困難な問題でありまして、各專門を持ちつつ、いつでも議会からの御要求に応じて答えのできるというものだけは備えておきませんと、急場の間に合ません。ところがそれだけ備えておきますと、それでは今仰せになりましたように、その人がすぐに仕事をして、毎日必要なる要務を持つておるかということになりますと、そうばかりとは言い切れませんので、議会の方から御注文になることの多い部門もありますしそうでない部門もあります。そのある部門は多少の余裕を生じて来るのであります。そこで国立国会図書館法の中にありますように、およそ議会で必要とせらるるであろうと思うことを、御要求なくして積極的に調査をいたしまして、それを準備しておるわけであります。それがここの中に出ております多くの自発的調査項目の中に現われて来ておるのでありまして、今のところ私のところの職員が、理想はもとより高く持たなければなりませんけれども、決して気楽な生活をしておるわけではございません、あらゆる研究機関の研究職員と、ひけをとらない程度に、こつこつ勉強をも、一面においては自己の知識と能力を増すという方面をやつておりますし、一面においては必要なる場面の要求に答えるということをしております。たとえて申しますと私ども図書館では、法律に書いてありますところによつて日本法律数の完全なインデックスをこらしえなければならぬということになつておりますが、これがなかなかむずかしい仕事でありまして、こういうことをほんとうに完全にやつておるところは、現在そんなにないと思います。それは内閣等に少しはありますけれども、これとても特殊な考えから来ておりまして合理的な網羅的なものはございません。そういうこともここで現にやつておりまするし、また将来完成しようとしておりますが、そういうことになりますと、とても五十人やそこらの人でできることではありませんので、実は当初この図書館計画を立てましたときは、百五十人の人をいただきたいということで、あちらこちらにも御相談をいたしました。百五十人は空なことではありません。仕事を分数して行きますと、たくさんな項目にわかれるので、その項目をたとえば五人で一団としてやるということになりますと、各省の数だけでも相当な数がありますし、各省だけではございません。議会委員会の数がかりに二十幾つあるといたしまして、それに各委員会と連繋をとるために、五人ぐらいでつくりました部局をこしらえますと、どうしても百五十人いることになります。五人の部局というものは、やはり監督、指導をする者二人ぐらい、またその手足となる者が二人ぐらい、それにまたいろいろな使い歩きをするもの一人ぐらいということになりますと、どうしても百五十人となるので、決してなまけてはおりません。それを御承認願いますためには、これもあまり大きなことを言うとちよつと恥かしくなりますから申し上げかねますが、私の方で今まで調査しているもの、多くの場合謄写版でやつておりますし、ある場合は印刷じておりますが、そういうことを見ていただきまして、この上の御指導をいただきたいと思います。
  31. 千賀康治

    千賀委員 ときどきいろいろな調査、たとえば外国の選挙法だとか、今いただいたものを全部ここで数え上げるほど記憶しておりませんが、いろいろな有意義な調査を拝見しております。但しわれわれの図書館に期待するのは、これは図書館に対する考え方が違うのかどうか知りませんが、図書館は文献によつて調査のできる範囲内、だから大体過去のあり方について一応知つておきたいというような場合に調査を御依頼する場合が多いと思います。各省に調査機関がものすごい大きなものがあるじやないかということは、ごもつともで、またそうでなくてはならぬと思います。各省のものは、生きたデーターとまず結びつかなければなりませんので、学者的ではありません。農業の一枚の調査ができるためには、全日本の農業協同組合の末端組織に至るまでも動員して初めてできるような調査が多い。そんなようなものがあるから、図書館つてたくさんいるんだということは、どうもこれは別箇の話をくつつけるようなわけで、私どもはどうもそれは承服しがたいのであります。しかし日本におきましても、たとえば一つ法律をつくるのに過去の事例を確かめるというようなわけで、あなた方の手を煩わし調査を願うというような場合も、将来いくらでもありましようけれども、現在はそういうような場合は、主として衆議院の中にあります法制局の方方が、大体それを担任してやつておられますが、あれだけの弱勢でありながら、大体議員提出の法案等は、この人人の手によつてつくり上げられ、また議員の多数で、ある法案を修正しようというような場合、その思想を統一して一つの文章にまとめて行くというような仕事も、あの弱勢な法制局でやられて行くことを考えますと、あながち人の多いばかりが機能を、発揮するということにも行くまいと思います。だんだん国会図書館調査の有意義性を議員が認識し、また調査依頼が多くなるに従つて調査人員をふやして行く、要員をふやして行くということも一つの道でありましよう、だから非常に大きな組織で注文の来るのを待つている。品物をたくさん店へ並べて、お客の来るのを待つているというのも一つ方法でしようけれども、貧乏な商人はそう行かぬ。だんだん勉強して安いものを売つてお客がたくさん来るのに従つてもうけて、品物をよけい仕入れて行くということのやり方でなければ、小さい商人は大きくなれないわけで、現在の日本なら弱勢な人で勉強してもらつて、できるだけ議員の認識の向上とともに、こちらも優勢にしてもらうということも、むりな注文じやないのだろうと私は思います。これはまあその程度にとどめますが、それにしても五十七名で六千万円からの人件費は、この五十七名が一万円平均としても、七八百万円あればたりるのですから、相当にたくさんあるのですが、この図書館の数がこれだけあるということになると、小使までずつと並べてみたが、やはり数が多くなるのでしよう。しかしやはり人件費は、図書館経費をなるべく物件費、物件の活動力を大きくしようということになると、やはり人件費に目がつくということは、これも当然だと思います。できるだけやはりその線に沿つていただく方がいいのだと私は思います。それからやはり調査の中で行われたことだと思いますが、われわれこのごろちよつとうわさに聞いております。図書館の中で共産主義の出版物をやつたとかやらぬとか、配布したとかせぬとか、配布してまたこれを集められたとか、いろいろうわさがあります。もちろんこれにもいろいろ考え方はありましよう。はたから見て、あれは共産党の運動だというのを、あなた方御自身は学者として外国の文例を翻訳して研究したんだというような考え方をせられておるそうですが、われわれ門外漢で一向知らない。このてんまつについて一応の御報告をこの際していただきたいと思います。
  32. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 前段に仰せになりました図書館調査職員の数の問題でありますが、これは仕事関係からしましていろいろの説明はつくと思うのです。ただ議会の各委員会の数に応じましては、一つ委員会に対して二人ぐらいしか、この調査の人が当つておりません。委員会がみな專門のお仕事をお持ちになるのに、それに対して二人で必要な御注文を受けておるということは、実際人が少いというようにお考えを願いたいと思います。  次の段階になりまして、内部の書類のやりぐあいについてのお尋ねがありましたが、これの筋道はかようになつております。私の方の図書館は、つまり国の手足として調査をしておりますので、実際調査は各官庁のやつておる調査と大分似たような程度のことをしておるのであります。たとえば外務省が調査しておる、あるいは法務府が調査をしておるということと、同じような面のことも自然に起つて来るわけであります。今問題になりましたのは、上海で出版しておりますところの文報という新聞紙がありまして、その新聞紙の本年の五月の終りごろから、六月の初めにかけて載つておりました四月分の記事を翻訳いたしまして、それを謄写版に載せたということが事実の実態であります。その新聞は今日日本に正規の道を経て入つて来ておるものでありまして、ひとり私の方の図書館に入つておるばかりではないと聞いております。三、四の官庁及び進運社等にも入つておるもののように開いております。そこの中に若干の月表といいますか、時間的に事実起りました事柄を、項目別にした表がありまして、その表をわかりやすくするために日本語に直した、こういうことでございます。その目的はいわば過去五年ばかりの間に中国に起つた事実の、一つの一覧表を持ちたいということが一つ、それからまたそれを利用いたしまして、今後調査をいたしますときに、こういう事件がいつ一体どうだというときに、その事件を調査いたします手がかりとして、いわば事件調査に便利な意味でそれを活用する、こういう意味のものであります。その事件表は特殊な思想を特に主張しようというものではございません。過去五年間に起りました目ぼしい事柄を、何月何日にどういうことがあつたという記事を書いたものでありまして、これは日本でも現に出版されておりまするある書物には、中国の事情についてさような月表もあるのであります。ところが、ただこの場合に新聞紙に載つておりしますものを、そつくりそのまま忠実に翻訳をいたしましたので、その一覧表の持つておりました一種の特殊性というものは、この翻訳の中に大体乗り移つておる。これは機械的に翻訳いたしましたからそういうことになつております。さようにしてガリ版にいたしましたものを、そういうことを調査する人人の参考に使うというわけで、二十四部だけ、一切これを外に持ち出さない、内部だけの使用にするということで、番号を明らかにいたしまして、それからこれを受取つて預かつている人の名前を明らかにいたしまして、そうして館外には一冊も出しません。二十四部だけこれをつくつてつた。これが事実の本体でございます。これに対しましての批評はいろいろありましよう。その御批評のことまでは差出ませんが、ただ自分たちの立場といたしましては、今われわれは中国の動きを、ある程度まで詳細に調べてみなければ今後の批判はできません。それに対していろいろな材料を保存しておくということは、決して理由なきことではないと思つております。これはまつたく宣伝の意味であるというようなことは一つもございません。責任者が明らかにこれに名を四人連ねましてやつていることで、動機の上に少くとも暗いところはないと思つております。それが世の中に出ますと、多少のまた思わしくない結果もあろうと思いまして、それを二十四部だけ中の責任者にわけて、その人の利用に供している。その責任者と申しますのは、そういう事柄を扱つて調査する人々及びそういう文献を扱つている人たちであります。それでやつておりますが、それが幸か不幸か、その中にきわめて少数、おそらく三部であろうと思いますが、それが何らかの道順を通つて図書館以外に持ち出されたという事実があるのであります。これはその点においてはなはだ遺憾な点があつたと思つております。でありますから、その取扱いの点におきましては、私は決してそこに不都合な点はないと確信いたしておりますが、ただ、できましたものが、一種の道を通つて外に出て物議を生じたという点につきましては、はなはだ遺憾であると思つております。
  33. 千賀康治

    千賀委員 そこで、館長の信念は伺つたのですが、集めてしまつたのはどういうわけですか。信念でやられたのならば、依然としてそのままあなたの信念は貫徹されるわけですが、現在は集めてしまつて、あなたの手にそれがあるといううわさを聞いておりますが、そうではないのですか。
  34. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 私はそこまでこまかいことを自分でやつておりませんから存じませんが、今係りの者から聞きますと、それは集めてはおりません。ただ、その人の責任で、番号をつけて、取扱い注意という判を押して、おのおのの人に交付せられている、その二十四部のものを、現在それを確実に持つているかということの調査はいたしました。そういたしましたら、その中の若干の部数がないということになりまして、いかなる道順によつてかくのごときものを管理している者がその手から離したかということにつきましては、多少の調査をいたしております。
  35. 多田勇

    ○多田委員 ただいまの千賀さんの質問に関連して一応お伺いいたしたいのでありますが、国会図書館は一党一派に偏しないということが、最も重要な要件になつているのであります。ただいま問題になりました中共時代年表が、千賀さんの言われたようなうわさに上つているということから類推して、共産主義の一つの宣伝のような意図を持つて行われたというようなうわさがあるということで質問された。それに対しまして館長から今御説明をいただいたのでありますが、今の説明をお伺いしますと、図書館では、上海で発行された新聞の翻訳を、正直にそのまま日本文に翻訳して館員に配付をしたのであるというお話であります。千賀さんの言われました共産主義に関係のあるというような質問に対しまして、その内容として今のお話があつたのでありますが、この出版物ははたしてそういつた内容を盛られておるかどうか。この点についていま一度お伺いしておきます。
  36. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 その出版物は、中国の今日から見れば、普通の一般新、聞と言われる程度の新聞であると聞いております。けれども時代が時代でございますから、それが現代の色彩を持つておるということは言えると思います。ただ書かれておりまするのは、歴史的な事実を、時代別に書いたというだけでございますから、その事実をまさか一つの主義によつてつておるということはないと思いますけれども、事実を扱つておりまする態度においては、それは時代の影響として特殊な見方が加わつておるであろうと推測することは正しいと思つております。ですかろその中に現われておりまする色合は、確かに一つの時代の色彩を含んでおることは考えられます。私どもの方の出版物におきましては、これがそういう出所を持つておるということは、実は注意書きはしておりましたが、そのもの自身は一つの片寄つた判断を持つておるということは言えようと思います。
  37. 多田勇

    ○多田委員 そうしますと、支那の問題を検討するために、図書館職員が研究する一つ資料にするという意図のもとに印刷されたものであるとすれば、別段こういつた主義主張は、思想活動が禁止されておるというような日本の現状ではありませんので、館外に持ち出すことはまかりならぬとか、あるいは極秘扱いをしろというような取扱い方をされたことは、どういう意図のもとにそういう取扱いをされたか。非常に私ども理解に苦しむのでありますが、その点につきまして御説明願います。
  38. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 私どもが、純粋にある知識を持ちたいと思いまするために、読みます書物はかなり広い範囲のものでありますけれども、それを日本語に直しますと、少しく味わいが違つて来るものでありまして、だれでもこれを手にして読むということになれば、どこかでおそらく現代では支障の起る余地があろうと思つております。つまり言論の自由な時代ではございますけれども、ある種の者は広くこれが行き渡ることを好まないという点も確かにあろうと思います。普通官庁で取扱い注意といたしまするものの中には、そういう系統のものが含まれておるに相違ございません。中に書いてありますことは、支那の新聞としてそのまま日本に来てはおりますけれども、しかしそれはあまり読めないから、堂堂と動いておるのであつて、それを一般の人が読みますれば、まつたくそこから誤解を生じておもしろくないので、限られた人にのみ配るということは考えられると思います。現に私どもの手にしておりますほかのある種の外国のことを書きました材料でも、やはりこれは限られたところにおいてのみ取扱われるという制限が、事実くつついておるものもございます。私どももやはりそういう気持でありまして、不注意な人が読みますれば、何か錯覚を起す危険なしとしない。従つてこれはガリ版にはいたしましたけれども、要すにおのおのが新聞を読んでわかりやすくしたという程度のものと心得まして、二十四部というものはそのことを取扱つております部局の係長、それからこれに近接しております他の部局の、少数の責任者だけに限定したわけでありまして、ほかに他意あるわけでは、ございません。
  39. 多田勇

    ○多田委員 どうも館長の御説明をお伺いしますと、非常に了解に苦しむ点が多いのでありますが、今お話の通り、あるいは一部の一般の人がそれを読んだ場合には、誤解を招くおそれがあるというような点も、一応心配としては考えられる点だろうと思いますけれども、共産主義にしましても、資本主義にしましても、あるいは社会主義にしましても、少なくとも自由にわれわれはこれを思索し、検討することができるのであります。しかも国会図書館使命とするところは、議院立法の補助をするということを建前にしておりますので、少なくとも国会図書館で出版されます出版物につきましては、一般に公開するかしないかという問題はありましようけれども、それを單に図書館のおもなる人たちの中に独占して、一般議員にもそういつた出版物を供給することが、議員の考え方を惑わすとか、あるいは一つの問題を生ずるというようなことを考えておられるようでありますが、これはもつとざつくばらんに、館長から御説明つた方がいいと思うのであります。先ほど館長は二十四部出版されまして、それが順次番号を付されて極秘扱いにされておるというお話でありますが、二十四部の出版物の配付先と、そうしてこれは一番から二十四番まで、一連番号を付されておるものであるか、あるいはその間途中抜けておる番号があるかどうか、これらの点もはつきりいたしませんと、どういう意図のもとに出版され、どういう意図のもとに取扱われたかという点ついているいろいろ誤解を招くおそれがあると思うのであります。私どもの聞いておる範囲では、番号がたとえば七十番なり、あるいは八十番なりというような番号を付されておるものがあるということを聞いておるのであります。そういたしますと、二十四部しか出版されていない、しかも特に館内の館員だけの間で、極秘に取扱われるという條件で出版されるような、非常に取扱いを注意しなければならないものに対して番号を付された場合に、一番から二十四番というようなことにしないで、あるいは五十番から七十番、八十番というような番号のつけ方をしたらどうか。今の御説明からお伺いしますと、先ほど千賀委員からお話がありましたように、相当部数印刷したけれども、一部から問題が起つたために、この印刷物を回收して、館員の二十四人の責任者だけに配付したというようなことで、あとで二十四部しかつくらなかつたんだというような実情になつたのではないかというような疑問を、一般では持たれておるのであります。私はむしろ取扱いの注意をすべき出版物でないようなお話をお伺いいたしましておりますし、何も議員にまで極秘扱いをする必要は毛頭ないと思いますので、その点についてもつとざつくばらんに説明していただいた方がけつこうだろうと思います。
  40. 金森徳次郎

    金森国会図書館長 私の申し上げましたところがあるいは言葉が足りなかつたかと思いますが、私は二十四部しか刷らないとは言わないので、二十四部だけ配付したということであります。実情を申し上げますと、私の判断も加わつておりますが、私の方の中国のことを研究する人々は、割合に中国文がよく読めまして、熱心家なのであります。私自身から申しますれば、中国資料を取扱つてつた四人の人は相当勉強家でありまして、仕事の余暇におきまして中国の年表というものが、中の調査の上には非常に便利だろう、こういうように考えまして部の中で責任者が会議を開きましてこれを翻訳したらどうか、こういうような話を進めて、いわばほめられるつもりで翻訳したとでも申しますか、何の支障なきもののごとくに思つて翻訳をしたのです。ただそのときに、外務省あたりの翻訳物の内容等のつり合いも聞きまして、この辺のものは普通に翻訳しておるのだ、こういうふうに聞いて翻訳をして、百四十九部だけガリ版にしております。その百四十九部ガリ版にしておるときに気がついたのは私でありましてそのときに、このもの自身は、一つの目から見ますれば、それは中国の事情を明らかにするという見地から意味ないとはいたしませんけれども、またある見地から見れば、それが必要だということも言えましようけれども、ただこれが鹿を追う猟師山を見ずというか、その中に書いてありますことは、外の欠点をもやはり持つておるようである。中国で発行した新聞であれば、一応支障がないかもしれませんが、日本でそれを取上げますことは、そういう問題を離れまして、他の障害が起るのではなかろうかと考えましたから、私はこれを外に出すことをとめたのであります。だから、できます当時はそこまで深く考えていなかつたと判断した方が実は確かだと思います。それでなければ百四十九部刷るということはございません、これは私がとめました。とめまして、その関係調査する人にだけ二十四部やつております。番号は、私の記憶では、飛んでおるというのではなくて、途中から二十三部ばかり出しております。一部は当初私が中味を見るために受取つておりまして合計二十四部ということになりますが、そのほかに他意はございません。つまり、これはちよつと申しかねますけれども、一番こわいのは、鹿を追う猟師山を見ずと申しますか、一方でこういうものは必要だと思つてつて行きますと、その中には今日の国際情勢のもとにおきまして、どうも外に出しにくい語句が含まれております、だから信用がないとうつかりこれは出せないというわけで出さなかつただけであります。とめたのは私があとからとめたのでありまして、秘密にしたということに責任があるということになれば、私に責任があるのでありまして、製作者の意図ではなかつたのであります。
  41. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ちよつと御相談します。実はきよう参議院議長の告別式が一時から執行されるそうでありまして、館長初めお手伝いに参られることになつているそうでございますので、ただいまの問題は次の機会に御懇談願うことにしたらいかがでしようか。
  42. 多田勇

    ○多田委員 この問題は私どもももう少し検討してみたいと思いますので、この出版物委員全部に御配付願いたいということと、なるべく近い日に委員会を開いていただくことをお願いして、きようは打切ります。
  43. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 明後日午前十時から開くことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時十六分散会