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金森国会図書館長 お答えいたします。まだ
予算は、実は私の方としてはいろいろな希望を出しておりまするけれ
ども、それに対しましてはつきりした結論を示されておりません。大体いろいろな
交渉の結果はわか
つておりまするけれ
ども、私
どもの方の土地を買うとか、あるいは本
建築に関します基礎的な準備をする
経費というものは全部拒絶されまして、そういう
経費は出ておりません。大体現状維持という形で行きまするのと、それから旧参楳本部のあとに新しき
建物を修築したり、あるいはかりのものをこしらえるということに当りまするような
経費が、五百万円新しく与えられるというような道行にな
つております。
それから私
どもの方でたいてい大丈夫だろうと思
つております
一つの
経費に、
国会の方の御希望もございましたけれ
ども、
日本の議会制度が発達して来ました歴史についての資料が漸次散逸して行く傾きがございまして、明治の始めから非常に貴重な資料が名家の手に残
つておりましたのが、大きなところではある
程度保存せられておりまするけれ
ども、小さいところに散逸してしまう。大きなところにございまするものも、なかなかいつまで完全に保存されるかわかりません。そこで今度の
予算はございませんけれ
ども、いろいちな工夫をいたしまして、今のところそういう目録をつく
つて、その散逸を防ぐという
計画をしておりました。来年度の
予算におきましては、ことによりますとそういう資料を集めまする
経費が、はつきりしたことはわかりませんが、数百万円手に入るということになると存じます。そうすれば二度と再び世の中に出て来ない唯一の文献が多少収集できまして、今私
どもの腹案では、議会の中の
図書館の
一つをあけまして、そこにあちらこちらのものを、いわば
保管するような形で持
つて来まして、漸次これを集積し、また所有権を移そう、こういう
計画を
予算の
関係で立てております。
それからもう
一つ、新しい問題として、私
どもの方の立場として、一番はずかしい思いをしておりますのは、今日
国会が
立法の府であるということでありましても、それに対しまして一番必要な法律に関する
図書は非常にわずかでございます。アリリカからはある分量、向うの政府刊行物として法典も参りますが、イギリスからにほとんど手に入
つておりません。そのほかの国ももとより手に入
つておりません。それから
日本で出ておるものとても、どうも標準的なものは揃
つておりません。そこでひとつ議会をねらいどころにいたしまして、議会の一番必要な法律の
図書室としまするか、小さい
図書館のようなものをこしらえようというひとつの
計画を持
つております。これに最高裁判所とか
法務庁などにもかようなものがございますけれ
ども、実際は流儀が違いまして、向こうでは裁判に必要なものをお集めにな
つている、私
どもの方では
立法に必要なものを集めなければなりません。しかし、
よそでは政治とか
行政とかいうことに関してのものはあまり持
つておりません。どうしてもこしらえなければならぬ。いわば大きく言えば、法律
図書館というものに基礎を固めて行こうというので、それに対しまして資料を買いまして、今のところ金額にいたしますと二百万円、人員五人ということでございますから、規模は小でございますけれ
ども、これが漸次完成して行きますれば、今の
国会に一番近い旧
参謀本部の焼跡のところに漸次
設備をして行く、こんなふうに
考えております。要するに本格的なものはあまりございません。小さいものが集積せられています。なお、それにつけ加えましてもう
一つ考えますのは、これはこの
図書館ができるときからの運命的な任務でございましたけれ
ども、
日本中の
書物の目録を
一つところに集めまして、私
どもの
図書館に目録を見に来ますれば、
自分の欲しい本は
日本のどこにあるか、掌に指さすがごとくにわかるという、いわゆる総合カタログをつくらなければならぬということにな
つておりまして、これも非常な
予算を要しますので、思うように参りません。
大蔵省も十分の
経費を出してくれませんが、いくらかずつその
方面に手を入れることができようと思います。そうすれば、時間はかかるかもしれませんが、所定の目的に達しまして、これにまあ次の年度の
相当大きな問題になります。
それからちよつと、これももとよりはつきり既定し得る時期まで来ておりませんが、
日本の科学的論文でございます。学問上のといいますか、主として科学に関しまするものは、どこの国でも
書物にな
つてから読むのでは二年も三年も遅れておりまして、非常に進歩の早い問題を扱いまのに、結局遅れてしまうわけです。そこで、どこの国でも、おたがいに人の
研究を、中途半途であ
つてもこれをよく
承知して利用して行く、これが科学発途の根本であるわけてす。外国にはそういう制度が発達しておりますが、
日本には発達しておりません。
簡單に言えば、
研究論文をうまく
整理をいたしまして、だれがどんな
研究をしているかということを、同じようなことをや
つている人が容易に理解し得るような
設備をする。
図書館の仕事に当てはめて申しますれば、いわゆる考査事務、デイフアレンス・サービス、そういうものをやる。これが
日本ばかりではございませんで、やはりアメリカ等からもそういう
お話がありまして、これも
予算さえ得られるならば、来年から、今のところたくさんににございませんが、そういう科学的論文の要綱をつく
つて、それを諸国の間に交換して、学問の発達に資そう、こういう
方向にな
つております。
それからもう
一つ、やはり初めから
図書館に与えられました問題は、印刷カードということでございました。
日本で発行されましたすべての
書物につきまして、
図書館らしくよく整つたところのカードを印刷にするということをいたしますると、
日本全国の
図書館でカードをつくらなくてよろしい。カードを
整理する人間を全部省くことができます。そのために非常な利益が得られる。これに外国から非常に助言せられており現在や
つておりますが、しかしそれも四百万円ほど
予算がもらえますと
相当大規模にやれる。そうして外国でも
日本の印刷カードをほしが
つております。これがよくできて来ますと、
地方の
図書館は本屋から買う。カードはわれわれの方から買
つて行くということになり、もうそれ以上何もなくて
りつばな
図書館の
経営できるわけでありまして、非常に有効なことだと思
つております。そんなようなことをただいまのところでは
考えておりますが、結局それらを総合いたしましても現在の
予算にわずかかわる
程度になりまして、私
どもの方の腹勘定といたしましては、一億四千五十万円見
計画のものになるのではなかろうか、こういう労え方をしておりますが、これでは正直なところを申しますと、分の働きにいささかつけ加えるというだけでありまして、
考えております大きな
図書館の
建築などということは、当分見送りをしなければならぬというふうに思
つておりす。