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1949-11-22 第6回国会 衆議院 人事委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十二日(火曜日)     午後二時十五分開議  出席委員    委員長 星島 二郎君    理事 小平 久雄君 理事 藤枝 泉介君    理事 吉武 惠市君 理事 赤松  勇君    理事 加藤  充君 理事 逢澤  寛君    理事 木村 俊夫君       高橋 權六君    橋本 龍伍君       柳澤 義男君    土橋 一吉君  出席国務大臣         内閣官房長官  増田甲子七君  出席政府委員         人  事  官 山下 興家君         (法制局長)         人事院事務官  岡部 史郎君         (給與局長)         人事院事務官  瀧本 忠男君  委員外出席者         專  門  員 安倍 三郎君         專  門  員 中御門經民君     ————————————— 本日の会議に付した事件  政府職員の新給與実施に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一号)  国家公務員職階制に関する法律案内閣提出  第二九号)  特別職職員給與に関する法律案内閣提出  第一八号)(予)     —————————————
  2. 星島二郎

    ○星島委員長 これより人事委員会を開会いたします。  前会に引続き政府職員の新給與実施に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給與に関する法律案国家公務員職階制に関する法律案、以上三案を一括議題として質疑を継続いたします。加藤充君。
  3. 加藤充

    加藤(充)委員 きようは浅井総裁が見えませんので、山下人事官にお聞きしたいと思います。まずこれは職階制の問題にも関連いたしますからお聞きするのですが、ごく下世話な問題で新聞に言われている、そして十二日付で淺井さんも談話発表されているいわゆる高級官吏試験の問題なのであります。さつそくお聞きいたしますが、談話の中では人物考査というような問題には特にふれておらなかつたのですが、新聞では何か内閣方面横やり、と言つてはおかしいが、意見があつて人物考査を加味して、試験の運営を妥協的にやることに相なる模様だというような報道が記載されておりまするが、そのことについて人物考査ということは、どういう問題なのか。今後そういうものを人事院がおやりになる試験の中に、やつて行くつもりであるかどうかということを、まずお聞きしたいと思います。
  4. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまの加藤さんの御質問につきまして、私からお答えいたします。それは筆記試験だけではその人の統轄する力とか、あるいは人格というものはなかなか査定しがたいのであります。それで何とかして人物を考査する必要があるのであります。それの一つ方法といたしましては、やはり面談といつたようなこともある。それから今官職にある人々だけでありますと、考課表その他の人物査定方法があるのであります。しかし今回は民間の方からも応募ができるのでありますから、普通の考課表といつたようなものは、比較になかなかなりにくいのであります。それでただいま考えておりますのは、調査をやりまして、その調査はどういう調査かといいますと、そのときになりましたらこまかくどういう事項、こういう事項ということをきめてやろうと思いますが、大体においてその人の評判あるいは部下に対する扱い方、またはその人格的の不評判があるかないか、そういうことを相当調査いたしまして、それを筆記試験に加えて査定して行こう、そういうふうに考えでおるのであります。
  5. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると人事院事務総局発表十一月十三日付の国家公務員法附則第九條による試験についてという事柄については、人物考査というようなものは一つも言われてなかつたのですが、ああいうものが急に何か談議を訂正したり何かして、特別に加えるということになつたのは、そういうことをうかつに人事院で拔かしておつたからなんですか、あるいは談話発表の中に、どこか落度があつたということを反省されて、気がつかれてそういうことを訂正して、発表される段取りになつたのですか。
  6. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまの御質問でありますが、実は十二日に発表しましたのは試験となつておりまして、ただ試験といつても、もう少し詳しくないと、どうもどういうことを試験ということが意味するかということがはつきりしないのであります。前々から筆記試験だけではいけないということを十分承知しておりまして、そういうような調査をやりたい。実は面談でありますけれども、非常にたくさんな人を一々面談することは時間もかかりますし、また面談によつて知るということはなかなか骨が折れますから、そういうものを全部加えるということを計画しておつたのであります。しかし最初発表しましたときには、そういうことは当然やるものという考えでおつたのでありますが、しかし問題が多少それはどうだということになりますと、私ども筆記という字を入れずに、ただ試験としておつたのに、少し疑問がありますから、あの試験というのは筆記試験と改めまして、それに人物考査とか何とかいうものをつけ加えまして、それが今までの試験だという意味に書いたのでありまして、われわれの考えを変更したということは毛頭ございません。
  7. 加藤充

    加藤(充)委員 変更したかしないかではなくて、そういう落度のあつた発表を、いやしくも試験問題についてなされて、それから旬日たつてから直されるということは、人事院としてはまことに不見識の至りだと思う。それが幸いにして内閣方面から、あるいは民自党方面から、やいやいといろんな反発があつてから後に、ああいう訂正が出たということになりますと、これは私は人事院中立性の性格の問題から、非常にゆゆしい影響をみなにもたらしておると思う。ですからどうもいいかげんに発表されて、あとから言われてみれば、そうか手落ちだつたということは、人事院の一切の今後の行動について、十分に注意されてやつてもらいたいと思う。いたずらに世の疑惑を招くだけであります。それでそのことに関連いたしまするが、二十八條の第二項の給與を決定する諸條件というのですが、これもある條件は入れないで見ていた、あとから言われて入れるように訂正した。本来抜けておるべきものじやなかつたのだけれども、ついうかうかしておつたということになると、明確を欠きますので、この際給與を決定する諸條件とはどういう條件であるか。今まで人事院考えられた條件を細大漏らさず御発表願いたい。
  8. 山下興家

    山下(興)政府委員 二十八條給與ベースの問題でございますが、給與ベースにつきましては、昨年六千三百七円を定めました後、あの当時はまだ給與局が十分な態勢を整えておらなかつたのであります。その後非常に努力いたしまして、適当な人間を相当数入れまして、六千三百七円を決定いたしましたときのいろいろな給與基礎條件があるのであります。     〔委員長退席藤枝委員長代理着席〕 その同じ線に沿いまして、続いてずつと研究を続けております。それにはどういうことがあるかと申しますと、たとえばいわゆるCPSとかCPIとか申します消費者価格調査、また消費者価格指数というようなものは、今わが国で発表せられておりますが、これは経済情勢を知る上からいつて一番有力なものであります。そのほか民間給與推移を知る必要もあるのであります。それからカロリーの消費というようなもの、これは理論生計費によつて、ある一人の生活費がどうなるか、食糧はどうなるか、あるいはその人の衣服、居住、そういうものの費用は、どういう推移をたどるかというようなことを全部考えに入れて、研究しなければならぬのであります。そういうものによつて、われわれは注意深く毎月ずつと研究を続けております。そういうことの変化によりまして、給與べ一スをかえなければならぬかどうかということの判定をする次第でございます。
  9. 加藤充

    加藤(充)委員 今あげられたような要件が、どういうふうにしんしやくされるかは別ですが、それがしんしやくされる要件のすべてですか、そのほかに加わる要件がありましたら教えていただきたいと思います。
  10. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまのところ、私の記憶にあるところはそれでございます。ただたとえば民間給與との比較といいましても、簡単な比較ではないのでありまして、民間仕事の中で官吏と同じような仕事をしておる者の給與を、比較にとらないといけないのでありまして、現実にわれわれが今研究しておりますのは、四千ぐらいの位置につきまして、それが民間給與の何級に当るかということを、こまかく調べまして、そういう実態を調査しております。大まかな点はただいま申し上げましたことで、大体盡きておると思つております。
  11. 加藤充

    加藤(充)委員 この前の委員会で、人事院は今まで職員福祉利益を保護するということになつておるのに、何をしたかという質問に答えて、人事院は過ぐるときに六千三百円のベースを実現した。あのときに人事院がときをあやまたずに、あの瞬間あの時期において六千三百円の勧告をやつたからこそ、六千三百円は低いとか安いとか言つているけれども、一応通つたのだ。人事院のこの功績は、だれが何と言つても否認はできまいと言つて、胸はたたきませんでしたけれども、えらく鼻を高々とされたのであります。これは問うに落ちず語りに落ちたたぐいだと私は思う。それが人事院ほんとうの腹だと思うのですが、それでお聞きしたいことは、今公務員ベースがきわめて低過ぎるということは、何回か人事院が表明した最近の意見であり、結論でありますが、しかも予算編成の好機を失して、年に少くとも一回ということがあるにもかかわらず、その起算点が、御意見の相違で来年に延びたり、今年の十一月の初めに終つてしまつたりいろいろしておりますが、少くとも年に一回の勧告を二十八條に基いて人事院はなさつておらない。前の浅井さんのその発言気持から見ると、今のような條件のもとに、このときに二十八條勧告がなされないどいうことは、淺井さんの論理を春秋の筆法をもつて逆論するならば、まさしくきわめて低過ぎる公務員の六千三百円のベースを、いまだに改訂せずに年を越し、四月になるというような事柄は、人事院のきわめて政治的なやり方が、公務員の犠牲となつて現われているというように、私ども解釈をするのですが、これについては、詳しい御答弁はけつこうですが、浅井さんの話から言うと、それを前提にすれば、私ども結論なり判断は、それ以外にないのですが、簡單に御意見をお聞きしたい。
  12. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまの給與ベースのことにつきましては、御承知のように、二十八條でわれわれは義務づけられておるのでありまして、先刻申し上げましたように、六千三百七円を勧告いたしましてから後、すつかり陣容を整えて、注意深く研究しております。ただその当時の資料よりも、もう一層科学的な資料が必要なのでありまして、次たにそういうこまかな資料によつて考えておりますが、そのうちの一つといたしまして、地域給の問題があるのであります。地域給については、物価の高低その他によつて詳しく研究をして行くのでありまして、今のところ五月分のCPS及びCPIにつきまして、統計局研究を進めました。そして今までの二十八都市でなく、三百八十一都市について研究をしておる。それだけのことでも、いまだに完成したと言えないくらい骨が折れる。それでできるだけ早く給與ベースについては勧告すべきであり、またわれわれはすべきものと十分に信じておつて、非常に努力しておるのでありますが、諸般事情のためになかなか最後の案を発表し得るような状態に達し得ないのでございます。そういうことで、われわれは怠慢であるとは実は思つておらないので、一生懸命やつておりますが、まだそういう時期に達しておらないということを申し上げて、お詫びをする次第でございます。
  13. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、先ほど第二項の給與を決定する諸條件変化の分析が、まだ足りなかつたということに相なるのですか。
  14. 山下興家

    山下(興)政府委員 いやそういう意味ではありません。ただいま申し上げた地域給は派生的なことでございますが、御承知のように、今は特地は三割でありますし、甲地乙地、二割、一割となつておりますが、これは輸送状態がだんだん変化して来ますと、いなかと都会との間の物価の差に非常な狂いが起つて来る。それで今までがあまり科学的でなかつたから、これも科学的にやらなければならぬというのでやつておりますが、ただこの問題は、地域給特地甲地乙地のおのおのが今までとかわつて来るわけです。そうすると、ある土地考えますと、差のあるところがあり得る。結局そういうのは地域給だけで実行して行きますと、下る土地があつて、まことに困るから、そういうのは給與ベースが上るときに同時に行わないといけないという特別な問題が起つて来るわけです。そういうために、給與ベース地域給というものは、同時に発表したいと今思つておるわけなんです。一例として申し上げた次第であります。
  15. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、新聞並びに本会議淺井総裁が、勧告をおつつけ発表する。今にも発表するというような発言を再三おやりになつたことについては、何かそういうような問題で、発表することができないのに、たとえてみれば半ば恫喝的な意味で、責任のある発表もまとまつていないのに、発表する段階に至つていないのに、発表するぞ、もうできたぞ、こういうことを恫喝的にやつていたと、私どもには受取れるのですが、そうなんですか。
  16. 山下興家

    山下(興)政府委員 そうおとりになると困るのでありまして、決してそういうわけではありません。たとえば給與ベース幾ら幾らにするということがきまりましても、それを実行するまでの間に相当期間がありますから、それに間に合わように、いろいろのものをそろえてやるわけであります。ただ過去においてうたとえば二箇月なり、三箇月なり、四箇月なりなぜ実行しなかつたかと言われますと、そういういろいろな調査が、まだでき上つていなかつたということでありまして、今になつてそういうものがまだでき上つておらぬから、発表しないのだというわけではないのでございます。
  17. 加藤充

    加藤(充)委員 それでは発表したらどうです。
  18. 山下興家

    山下(興)政府委員 どうも諸般事情のために、まだまだ発表し得る時期には達しておりませんけれども、御承知のように、二十八條がありまして、われわれはどうしても発表することに義務づけられておりますから、それで発表するということにおいては間違いないのであります。
  19. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると、その諸般事情を国会に明らかにしてほしいと思うのですが、試験問題のように、内閣筋横やり諸般事情ですか。それとも何か諸般事情というのは、わかつたようなわからぬようなことですが、どういうことですか。
  20. 山下興家

    山下(興)政府委員 それはいろいろありまして、複雑でございますから、今ここではつきり申し上げる機会に達しておらないのは残念であります。
  21. 加藤充

    加藤(充)委員 どうもまことに残念な話です。まあわからないこともないのですが、それではそういうかんじんかなめの、そうしてみんなが待望しており、法律解釈からいつても、もう遅れて早過ぎることはない。人事院もそうお考えになつているのは大体間違いないと思うのですが、そういう問題のときに、しかもこの二十八條スライド制をそのまま持ち込んだのではなくて、スライド的なものだというようなことを言つておりながら、そういうふうに時をかせがれたのでは、公務員の諸君はたいへんだし、また人事院看板手前法律手前、まつたくこれは情ない話なので、何か違う方面にそういう独立の看板をかけないでも、わら人形みないなものだつたら、楠木氏の千早城の戰術みたいなことはやめにして、整理したらどうなんですか。その方が人事院としても気持がいいし、まつたく語るも涙、聞くも涙ということにならないで済む。その方がもつと明瞭になるのじやないでしようか。
  22. 山下興家

    山下(興)政府委員 ごもつともでございまして、私どももできるだけ早く発表し得る時期になりたいものだ。これは法律によつて義務づけられておるばかりでなく、私どもは衷心そう思つておるわけでございますから、しばらくの間ごしんぼうを願います。
  23. 加藤充

    加藤(充)委員 どうも私の方は人事院がない方が——そうして二十八條などというようなものが、もつと合理的に改正されなければ、職員の待遇なり、生活なりというものは守られないし、第一條にまつ先にうたわれている職員福祉及び利益を保護するために適切な措置をやるという人事院機構法律そのものが、私は職員生活なり給與を守つて行くものでないという結論を持たざるを得ない。しかしそのことについては、もうこれで打切りにしますが、ほかの職階制やその他の問題に関連いたすことですから、この際お聞きしたいのですが、試験についての淺井人事院総裁談に、旧来日本ビユーロクラシーの弊を除きという舌をかむようなことで、要約されておるのですが、これも人事院お話をとくと承らないと、人事院日本ビユーロクラシーの弊いうのと、われわれが考えている日本ビユ一ロクラシーの弊というのが一致しないかもしれませんので、この点を包括的におつしやらずに、具体的に述べていただきたいと思います。
  24. 山下興家

    山下(興)政府委員 日本ビユーロクラシーの弊と一言に言いましても、なかなかむずかしいのでありますが、たとえば一例を申し上げますと、高文制度がある。高文制度をパスすれば一生を保障される。それからあと特に勉強しないでも一生が保障されるというようなことは、これは封建制度であろうと思うのであります。それで小学校を出なくても、その人のほんとうの力量さえあれば、どこまでも発達して行けるという状態に達したい。それにするのには履歴というものによるわけに行かないから、どうしても試験ということが必要になつて来るのであります。試験をするのには、その職に合うような、その職業に適合するような試験でなくてはならぬのでありまして、学校の試験のような試験をすることはできないのであります。それで結局仕事を分析して行くということも必要になつて来、それがすなわち職階制一つの大きな目標であります。仕事一つ一つの性質、むずかしさというものをこまかく分析して行く。そういうのが今御審議願つておる職階制の非常に重要な点でございます。それでは今度の附則九條による試験がそれかと言われますと、必ずしもそれではないのであります。これから先われわれは十分にこの職階制を発達させて行つて研究して、ごく適切な試験をして行きたいというわけでございます。それによつて今までの封建制度をやめて、ほんとうに有能な公務員を養成して、それによつてほんとうに国民に対するサービスをして行こうというのが、われわれのねらいでございます。
  25. 加藤充

    加藤(充)委員 高文試験制度もさることながら、端的にいうと日本ビユーロクラシーの弊というのは、いわゆる官吏制度というものではなしに、官僚制度である。官吏制度というものと官僚制度は違うように、私自身考えておるのですが、日本の既成の官僚機構なり、あるいは最近格付という言葉で言われておりますが、そのポストにはまつておる官吏なり、特別にこの高級官僚中心にしたあの職制で押えつけた、締めつけた制度で、その能率その機能というものは、一口にしていえば天皇制官僚制度というものが、新しい憲法ができても、それを執行する権力の中に依然として独特の勢力を持つて蟠居しておる。こういうようなものが、私は日本ビユーロクラシーの弊だと理解しておりますし、これはどうしても日本民主化のために、ほんとうに打破しなければならないということを考えておる。これは良心的な民主的な、高級官僚を除いての現在の日本官僚機構の中に入口、その中に格付されておる、とりわけて下層の官公吏諸君のひとしく民主的な熱情であり決意であろうと思うのであります。簡単に言いますと、要するに現在の官僚制度民主化するということは、民主的な官吏制度を実現するということが、私はいわゆる旧来日本ビユーロクラシーの弊を除くという淺井さんの談話の内容でなければならない。抽象的な、一般的な日本ビユーロクラシーの弊というようなことを言つて、いいものはいいのだ、悪いものは悪いのだというようなことでは、淺井さんの談話としては、私は無責任きわまるし、責任の転嫁だと思うのでありますが、その点はどうですか。
  26. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまの加藤さんのお話もつともと存じます。私どもが今思つておりますのは、従来は加藤さんのおつしやるように、官吏というものは天皇陛下の官吏である。それで民間仕事に誤りがあればそれをただす、すなわち法律違反であればただすという仕事が、おもなものであつたように思います。しかしわれわれはこれから先そういうことではいけないのでありまして、ほんとうサービスをするのには、世の中のことを十分に理解することが、まず必要であろうと思うのであります。物を知らないのが官吏だという考え方よりも、その事柄については十分に知つておる。そしてかゆいところに手が届くように、世の中のためにサービスをするというところに、初めて必要さ、たつとさがあるように思うのであります。それでこれから先の官吏は、今までと違つて、なるべく仕事に事は專門化して、民間からいろいろな要求を受けないでも、かゆいところに手が届くようにして仕事をして行くには、どうしても仕事を知らなくてはならぬということがあるわけであります。それでただ法律ばかりでなく、その従事しておる一つの課であれば、その課に最小限知つておらなければならない知識があるわけです。そういつたようなものも、今度の試験ではある程度調べてみようというような考え方でおります。
  27. 加藤充

    加藤(充)委員 私は今お話を聞いて、これは新しい職階制や、科学性や、合理性や、能率を論ずるよりも、そういうこともわかりますが、むしろ一皮むいて、古い儒学に、いわゆる東洋的な名君主義、そういうふうな善良官吏主義というものを、今のお話の中から感じたのは、私の一方的な感じ方かもしれませんが、どうもそういう感じ方を強く持つたのであつて、それは確かに問題の一つ意味しておると思うのです。それはさておきまして、個人知識官吏自身能力という問題も、もちろん重大でありましようけれども、これは人民官吏に対して統制力を有するということが、民主的な官吏制度の核心であると思うのであります。もし法律の執行が、自分が知つておる、自分が勉強したということだけで、官吏自身公衆意見希望を大いに聞くことなしに、そういうことはわかつているのだ、自分責任でやる。そうしてやつたら、自分間違つてつても、自分が惡いのだということで名君ぶりでやつて行く。要するに公衆意思希望責任を持ち得ない。そういうことが累積されますと、いわゆる人民意思希望を蔑視するに至つて、お前たちはそんなことを考えているけれども、おれの考えている方がましなんだという思い上りが出て参ります。従つてデモクラシーというものは、個人の心構えではなくして、制度的なものの中に、それが実現されて行かなければだめであると思う。そうではなしに、もしお話のように、何か官吏個人能力知識、子の良心というものだけをやつておりますと、これは戰争の途中に出て来た新官僚への道にひよつとすると通ずるものでありまして、これはデモクラシーという制度言葉の中に、單にその看板だけをかけているのであつて、結局民主主義とほど遠いものに相なつてしまうものだと思うのであります。ですから、その官吏制度機能の拡大だとか、地位の恒久化だとか、あるいはいわゆる合理的、科学的、能率的という意味合いだけから、官吏制度、もしくは日本の現状から言えば官僚制度をいじくりまわすことだけでなしに、結局羊れが人民に対して責任を持つのだ、人民の公僕であるということを、制度的に実現して行くこと、従つて現在行われておる残存高級官僚中心にした職制で下を押えつける。そうして上の者が思いつて間違つたことをやらないこともあるが、おれのやつたことは間違いがない。人民どもよりはおれたちの方が気のきいたことを考えておるのだといううぬぼれ、こういうような非民主的な考え方を拂拭してしまうということ、人民の公僕であるということ、人民責任を持つのだということの一点が、制度上はつきり確立しなければ、職階制だ、格付の合理化だ、試験が何だかんだと言つてみたどころで、とうていそれは人民の上に超越し、権力を執行するところの官吏であり、官僚制度に相なつてしまうと思うのであります。そうすると、これはアメリカ人も言つておるようでありますが、干渉的な、横柄な、煩瑣な、秘密主義な、有害なる官僚制度、かつて人類に苦痛を與えることを許された一切の政治形態のうち、最も圧迫的、浪費的にして、最も堕落し、かつ人間の幸福を蹂躙し、人間の価値を害するものは官僚制度であると言われたことを、同じてつを踏んで、アメリカ人自身が幾多の官僚制度、あるいは猟官運動と鬪いながらやつてつたとどのつまりに、この見解なり、認識を発表されているアメリカ人自身の経験と同じようなてつを、われわれが踏んでしまうことに相なると思うのでありまして、これは單に総裁が日本ビユーロクラシーの弊を除去するという一片の抽象的な言葉のあいさつでは、終らないのであります。こういう意味合いにおいては自信のある、責任のある、自主的な、日本的な、民主的な、官吏制度の実現を、給與ベースの改訂が遅れ、二十八條を無にされて、食うや食わずで、一切の鬪う武器も方法もなしに、まる裸にされて、ただひたすら勧告の出るのを待つておるという職員の要望にこたえて、その点からも私は人事院に重大な戒告を呈したいと思うのであります。
  28. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいま加藤さんから、いろいろお述べになつたことは、まことに御同感に存じます。私が実は申しましたことについて言葉が足りなかつた点が多少あつたように思います。私の申し上げたのは、昔の官吏は一年かそこいら一つ仕事をしていて、また次にかわるといつたようなことで、官吏というものはその仕事、職業が民間事業を十分に理解をしていないという欠点が、実はあつたのであります。官吏をそれにならすためには、民間の努力というものは非常なものであつた。結局戦争中に統制経済が成功しなかつたのも、その点にあると思うのであります。私が今申しましたのも、官吏というものは仕事を次から次にかえないで、なるべく一つ仕事を扱つて、それのエキスパートになる必要があると申しますのは、それによつて民間の人よりもおれの方が知つているというような思い上りが、もしもあつたならば、非常に大きな間違いでありまして、民間からの声をほんとうに理解するためには、その道のエキスパートでなくては理解ができないのであります。これは御異議がないことと思いますが、民間の声を聞いてほんとうに理解し、それのサービスをしようとするには、相当長年その道に従事し、十分なエキスパートである官吏になる必要があると思うのであります。その意味におきましてこれから先の官吏ほんとうに民主的であり、民間仕事サービスをするということのために、專門であることが必要だと申し上げたのでありまして、專門であるから、民間の言うことは聞かないでもいい、おれ一人で命令ができるというような気持で申し上げたのではありませんのですから……。
  29. 加藤充

    加藤(充)委員 そういうふうなことで、技術的な面について官吏が持つ、あるいは官吏制度が持つ機能というもの、あるいは職責というものは、お話を承つて大体わかるのでありますが、どうもそういうお言業の中にこのたびの職階制の提案なんかでも、二十九條の関係から見て、どうせお前たちがやるよりおれたちがやるのがよいのだ、おれたちがやつておることに因縁をつけて来たつて、お前たちに何の権威があるかというようなことで、ばかにされたようなものである。私たちが出されてびつくりして見てみますると、どうも履行事項にもなつていないようなことになつていると思うのですが、そういうふうな点に今後とも一層——とりわけて人事院などは次々に規則などの点で、むりな苛烈なものを出して来ますが、そういう点について公聽会を開くなり、もつ日本的なもの、あるいは実際上のいわゆる日本のビユ—ロクラシーの弊を除外するという意味に立脚し、そしてもつと愼重に職場の声を聞き、あるいは末端の声を聞いて立法され、行動されていただきたいということをお願いしておきます。そして最後に、大臣も見えたようですから、一点だけ技術的な点をお伺いいたしますが、進駐軍の要員の給與関係は、どういうことになつておるのでしようか。大体法律第二百七十一号によつて労働省が告示をして、給與の改訂をやつているというようなことになつておるようなんですが、これについて何かお聞きになつていることはありませんか。
  30. 藤枝泉介

    藤枝委員長代理 加藤君に申し上げますが、特別職給與については大蔵省の方から提案になつておりますので、その際に御質問を願うことにいたしまして、赤松君の官房長官に対する質問が留保されておりますので、この際これを許したいと思います。赤松君。
  31. 赤松勇

    ○赤松委員 官房長官はお忙しいそうでございますから、きわめて簡單に要点だけ御質問をしてみたいと思います。  まず第一点でありますが、公共企業体労働関係法の第三十五條に規定いたしまする「仲裁委員会の裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。但し、第十六條に規定する事項について裁定の行われたときは、同條の定めるところによる。」と規定いたしまして、御承知のように十六條二項におきまして、このような協定をなしたときは、「政府は、その締結後十日以内に、これを国会に付議して、その承認を求めなければならない。」こういうふうになつているのでございます。この十六條の二項の協定という字句でありまするが、官房長官はこの協定というものをどのように解釈されておるか。それからこの三十五條の、ただいま申し上げました「仲裁委員会の裁定に対しては、当者双方ともこれに服従しなければならない。」としてあるのでございまするが、この関連性をどのようにお考えでありまするか、御質問してみたいと思います。
  32. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 赤松さんにお答え申し上げます。十六條の二項と当事者双方を拘束するという仲裁委員会の裁定についての御質問にお答えいたします。われわれは仲裁委員会の裁定によつて拘束される当事者とは、一方は国鉄であり、一方は国鉄という公共企業体に従事しているところの労働者である。こういうふうに考えております。従いましてこの協定を締結するのは片や国鉄であり、片や国鉄労働者、こういうふうに考えておじます。それから政府と……。
  33. 赤松勇

    ○赤松委員 その協定とは何ですか。
  34. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 一応申し上げますが、政府というものが直接この際出て来るというふうに、実は考えていない次第でございます。但し第十六條の第二項によりまして、国鉄と国鉄労働組合との間におきまして、協定が締結された場合には、政府はこの協定の締結を所定の期間内に国会に提出することが必要であると考えております。
  35. 赤松勇

    ○赤松委員 どうも私の質問に少しはずれているようです。まあそれはよろしい。そこで御案内のごとくただいま仲裁委員会におきまして裁定が行われようとしておるのでございます。この裁定がどのような結論を出すか、今のところわかりませんが、当然この裁定が行われましたならば、十六條の第二項が規定するような所定の手続を経まして、政府はこれを国会に提出しなければならぬのでございますが、はたしてそういうことでございましようか、重ねて御質問いたします。
  36. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 これはあまりまだ研究をいたしてございませんし、あるいは労働大臣、あるいは運輸大臣から御答えした方がよろしいかと思いますが、三十五條によりますと、仲裁委員会の裁定は当事者であるところの国鉄労働組合並びに公共企業体であるところの国鉄自身を拘束いたします。従いまして協定は締結しなくてはならぬ。こういうふうに考える次第でございます。しかしながらその協定は政府を拘束するかどうかということについては、疑問があるのでございます。すなわち第十六條の第一項前段によりまして、政府は拘束されないというふうに考えるのでございますが、はだしてしからば協定自身を締結してよいかどうかというような点につきましては、あるいは締結しないでもよいじやないかという考えも、第十六條第一項前段によつて、まだ疑問として残つておるのでありまして、まだ最終的の法令関係の決定をいたしていないような状況であります。
  37. 赤松勇

    ○赤松委員 第十六條の「公共企業体の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」ということになつておるのでございます。但し当然これは予算または資金的措置を伴わない場合におきましては、国鉄と国鉄従業員との間で解決できる問題であると思うのであります。今度の仲裁案が、はたして資金上及び予算上の措置を伴うものであるかどうかは、今のところわかりません。わかりませんが、当然われわれの常識から判断いたしましても、予算的措置を伴うものであるということは、大体予想できるのでございます。従いまして、仲裁委員会が出しました仲裁案に対しまして、政府はこれを尊重いたしまして、そうして所定の手続をおとりになるかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  38. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国鉄の賃金ベースは、おそらくその賃金べ—スについての裁定がございましよう。そういたしますと、私どもはいわゆる公平の法則というものを全公務員に適用すべきである。こういうふうに考えております。そういたしますと、予算上非常な大きな問題になるのでございまして、現在の予算をもつてしては、とうてい新しいべ一スの設定ということは考え得ない状況にございます。従いまして、直接政府自身でなくても、政府の営む企業体の問題につきましては、愼重に考えなくてはならぬ。この裁定は国鉄を拘束するかもしれない。従つて国鉄は協定案を結ばねばならぬかもしれません。あるいは結ばないでもよいという解釈は、第十六條の第一項の前段の解釈によつて、それはまだ法律上の決定は終局的には政府自身もいたしておりませんが、かりに協定——一種の労働協約だと思いますが、その労働協約が締結されたといたしましても、予算上の関係は政府を拘束するものではない。従つて予算上政府が拘束されなければ、財政上の支出をなすところの予算を国会に提出するということはいたさないつもりでございますし、また無理な財政関係であるならばい協定を締結しないでもよろしいという解釈がつけば、第三十五條との関係において、多少あいまいな点はございますけれども、協定自身もしばらく延ばしておく。その延ばしておく理由は十六條の第一項の前段である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  39. 赤松勇

    ○赤松委員 これは官房長官といたしましても、私の質問にお答えしにくい点があると思うのでございます。それというのは、公共企業体労働関係法をいろいろと読んでみまして、三十五條と十六條との関連性において、法の不備がある。こう。いうふうに考えまして、官房長官はきわめてお答えしにくいということは、よくわかるのでございます。しかし十六條の二項の、このような協定をなしたときは、政府は締結後十日以内に国会に付議して(承認を求めなければならないという義務が、政府に負わされておるのです。従いまして、このような協定を国鉄と国鉄従業員とが行いましたときには、十日以内にこれを国会に付議する意思があるかどうか。さらにこれは国会の会期の問題でございますが、御案内のように昨日私は官房長官の御出席を、議院運営委員会でお願いいたしましたが、官房長官は御出席にならないで、山口国務大臣がかわつてお見えになつたのでございますが、私どもの反対にもかかわらず、昨日は会期一週間延長ということで、議院運営委員会では会期の問題を決定いたしました。そこで会期は今月一ぱいということになるのでございまするが、十日以内にこれを国会に付議して、そうして当然予算を伴うものでございましよう。ただいま官房長官は政府職員の賃金ベ—スとも関係があるので、そういう立場からこれを考えなければならぬとおつしやいましたが、当然大きな予算が伴うことはわかるのでございます。その際政府は当然これは国会に付議いたしまして、そうして国会の承認を求める。その際に政府がこれを受諾するものであるかどうか。たとえば予算編成権は政府にあるのでございまして、従つて政府といたしましては、この法案に規定されておりますように、十日以内に国会にこれを付議しなければならぬという責任と義務がある。ところが予算編成権は国会にございません。予算を審議する審議権はございますが、予算編成権の責任はわれわれにはございませんので、そういう場合これは当然政府の責任において受諾するかどうか。受諾するといたしますならば、追加予算の御用意をなさらなければならぬということになるのでございますが、当然近く仲裁案が出るのでございまして、それに対して政府はいかにお考えになつておるか。この際その点を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  40. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 赤松さんにお答え申し上げます。この十六條の第一項と三十五條との関係において、政府は法理上の終局的な解釈は、まだ決定いたしておりません。しかしながら御指摘のように法の不備とか、あるいは不明瞭な点が相当あるということまで、私は読んでいないのでございます。ともかくも御指摘のごとく、予算あるいは財政に非常な影響のある問題でございまして、裁定が賃金以外の他の労働條件に関する場合でしたらへこれは財政上の影響は何もない次第でございまするが、今回の裁定は賃金ベースに関する裁定でございますから、従つて、財政上影響がある、こうい今ふうに考えております。ところで一般公務員の賃金ベースについては、総理大臣が過般施政方針演説において明らかにいたしました通り、われわれはただいまのところベース変更の意思はないのであります。その理由というものはここで継説はいたしませんが、そういたしますと、この協定自身がかりに締結をしなければならぬというふうに、三十五條の規定から相なりましても、その協定は予算編成というような責任を持つておる政府を拘束するものではない。これはかりにという前提を置きましてお答えを申し上げますが、そういたしますと、協定自身はなるほど十日以内に国会に提出して承認を得なければならぬ。但し予算編成はしないでもよろしいという変な矛盾する解釈になりますが、法律というものはそういう矛盾があるように読むべきものではないのでありますから、結局第十六條第一項前段の、政府が予算編成関係において全責任を持つておるけれども、提出権を持つ政府が拘束されるような協定は結ばないでもよいというように、三十五條と第十六條第一項の前段との関係は読むべきではないかというふうに、ただいまのところでは思つております。まだ終局的の決定はいたしておりませんが、だんだん考えつつある状況でございます。
  41. 赤松勇

    ○赤松委員 政府がもし協定をなすべきではないというような見解、そうしてその法の精神と違つたような解釈をいたしまする場合には、この公共企業体労働関係法そのものの規定が死んでしまうことになるのであります。その際当然法の正しい解釈につきまして——これは聞くところによれば、末弘さんも官房長官とは違つた意味で相当この点では疑問があるようでありますが、そういう際に政府はたとえば、国鉄と国鉄従業員との間の協定をさせないような方針を、おとりになるのでございましようか。そういたしますと、この法に規定してあります国会が開会中であるならば、十日以内に付議しなければならないという政府の責任と義務が、果されないということになるのでありますが、その点はいかがでございましようか。
  42. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 赤松さんの御指摘の点を文理的だけに読みますと、三十五條のいわゆる当事者は、片や国鉄であり、片や国鉄の労働組合である。そこでその裁定は一方において公共企業体自身、すなわち国鉄を拘束するということになります。そこで第十六條の一項前段になりますが、協定をかりに締結したといたします。そうすると第二段によつて十日以内に国会の承認を得るために、国会に提出しなければならぬということになります。ところが第一項の前段に帰りまして、その協定がもし財政上不可能であれば、政府はきかないでもよろしい、こういうことになりますから、この形式的の解釈によつて行きますと、協定は締結する。そうして国会に提出する。但し政府は財政上不可能の理由を示して、政府はその協定に拘束されないということを、さらに国会において明示する。こういう解釈になります。しかしながら一面また十六條第一項前段の精神は、その場合三十五條の当事者を拘束する場合の例外にもなるのではないかというような解釈にもなりつつある。これはまだ決定的ではありませんが、決定したということで、私を御糾問あそばされぬようにお願いいたします。
  43. 赤松勇

    ○赤松委員 私は少し官房長官と見解が違うのであります。十六條には明白にこう書いてある。予算上不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も政府を拘束しない。このことは官房長官も私も法の解釈においては一致しておるようでございます。ただこの政府を拘束するものではないということは、政府がこの協定を国会に付議する必要はないということではないのでありまして、そのあとには明白に、国会によつて所定の行為の行われるまでは、このような協定に基いていかなる資金も、あるいは予算上の措置もしてはいけない。こういうのでありまして、必ずしも政府がこれを国会に付議することを妨げるものではないと思うのであります。この点はいかがですか。
  44. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 第十六條第一項後段の方は、私は両方入つていると思います。財政上可能な支出または不可能な支出——もつとも不可能な支出については、もう政府は予算案を出しませんけれども、実益のある、また財政上支出可能なものならば、財政上支出可能な協定であるとして、その協定の予算的具現化に努めて、そして国会に提出じました場合でありましても、国会が承認しなければ支出することができない。こういうふうに解釈しております。
  45. 赤松勇

    ○赤松委員 官房長官のおつしやいます財政上可能なものというのは、一体何でございましようか、どういうものを指しておつしやるのですか。たとえば今の補正予算の中で動かし得るものであるかどうか、あるいは国鉄の特別会計の中で動かし得るものを指しておつしやるのでございましようか、どうでございましよう。もしそうだといたしますならば、私は補正予算の中にも、あるいは国鉄の特別会計の中にも、そういう財政上の余裕というものはないというふうに、解釈しておりますが、もしそうだと官房長官がおつしやいますならば、今度の補正予算の中にも、そういうものが含まれている、いわゆる余地があるというふうにも解釈できるのでございますが、いかがでございましようか。
  46. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 予算は、御承知のように数多くの特別会計と一つの一般会計とに分れておりますが、財政は国家全体の財政というふうに私どもは見たい。いわゆる総合均衡予算のつくられるゆえんでありますが、しかし各企業体、企業体は将来は独立採算がとれるようにやつて参りたいのでありますが、ここに言ういわゆる財政という言葉は、一般会計、特別会計あるいは企業体を通じての財政というふうに、私どもは見たい、こう思つております。
  47. 赤松勇

    ○赤松委員 そういたしますと、そういう余裕があれば、裁定案に対しては考慮してよい。こういうことになるのでありますか。この十六條には財政という言葉を使つてないのです。十六條には、予算上または資金上という言葉を使つているのでございますが、これはどうでございましよう。
  48. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 財政という言葉は使つてありません。その点は間違いました。予算上、資金上という意味におきましては、やはり全体を通じて支出が不可能である場合は、その協定は政府を拘束しない、従つて予算措置を講じないでよろしい、こういうふうに私は考えております。
  49. 赤松勇

    ○赤松委員 不満足でございますが、論争しておつても仕方がありませんから、この程度にしておきまして、あとは仲裁案が出ました際に、私どもはこれに対処して、適当な方針をとりたいと思つております。  そこで国家公務員法の第二十八條には「給與を決定する諸條件変化により、俸給表に定める給與を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」とあるのでございますが、この「給與を決定する諸條件変化により」ということは、いかようなものを指しているのか、政府の御解釈をお伺いしたいのでございます。
  50. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 この場合は経済上の各種の條件でございますが、主として消費者の生計費指数、あるいは諸物価と申す方がよろしいかと思いますが、この諸物価の指数の変動というようなことが、條件のおもなるものではないか、こう思つております。
  51. 赤松勇

    ○赤松委員 民間の賃金ベースとのつり合いはいかがでございましようか。
  52. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 民間賃金ベースとある程度の調和がとれていることは、もとより必要である、こう思つております。
  53. 赤松勇

    ○赤松委員 人事院は、勧告の基礎になる経済上の諸條件の時期につきましては、大体昨年の七月というふうに踏んでいるのでございます。この点官房長官はいかようにお考えでございましようか。その時期が適当であるとお考えでございましようか、いかがですか。
  54. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私どもはこの点について閣僚同士相談もいたしたのでございますが、まだこれも確定的ではございませんが、六千三百七円という新賃金べ—スの設定が、形式的になされたのは十二円であり、名実ともに六千三百七円が設定されたのはこの四月である。こういうふうに考えております。従つて十二月ないし四月といつたようなところの各種の経済條件を勘案すればよろしい。こう考えておる次第でございまして、必ずしも七月というところには、こだわつていない次第でございます。
  55. 赤松勇

    ○赤松委員 先般私人事院総裁にこの点を御質問いたしましたら、人事院総裁は、当然昨年の七月を基礎に考えるべきである。またことに前の給與局長でございました今井さんは、人事院の公聽会において、政府の見解を明らかにされた際にも、やはり人事院と同じような見解をとつておられる御答弁をいただいたのでありますが、そこに給與局長山下人事官もおられますから、この点どうお考えですか、承りたいと思います。
  56. 山下興家

    山下(興)政府委員 ただいまおつしやいました、昨年七月を基準にして行くかどうかということにつきましては、昨年六千三百七円を勧告いたしましたときに書いてありますように、あの六千三百七円の計算の基礎は、昨年の七月をもつてその基準としておるわけであります。その後給與ベースばかわつておらないのでありますが、それから毎月CPSCPIその他をずつと計算して研究しておりますが、しかしながらその後インフレからデフレに多少かわりつつある相当複雑な状態にありますからして、なかなかはつきりとは申し上げられないが、しかしとにかく六千三百七円は昨年七月を基礎として出してある。それであるから、もしもそれを変更するならば、昨年の七月を基礎として計算すべきであるということは、私どももそう信じているわけであります。
  57. 赤松勇

    ○赤松委員 ただいま人事院の御見解を述べられましたが、まるで政府とは違うのでございます。私ども人事院の見解を支持したいと考えております。そこで重ねて官房長官にお尋ねいたしますが、しからばもし政府の方で六三ベースの実際の実施は四月である、こういう御解釈をなされますならば、一体四月当時の生計費、そういつたものは大体どれくらいになつてつたのでございましようか。
  58. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 四月を一〇〇といたしますと、この生計費指数が九九・二ということになつております。
  59. 赤松勇

    ○赤松委員 張年の七月を一〇〇として言つてください。
  60. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 去年の七月を一〇〇といたしますと、一二九・八になつております。
  61. 赤松勇

    ○赤松委員 それは四月でございます
  62. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 今年の九月でございます。十月はこのCPIが多少下つております。
  63. 赤松勇

    ○赤松委員 四月はいくらですか。
  64. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 四月は一三〇・八であります。九月が一二九・八であります。これはあるところの計算では九月が一四〇が出ており、十月が一三三といつたような数字もございます。しかしながらなるべく確かなところの数字をとりまして、四月が一三〇・八、九月が一二九・八、十月はこれよりも多少下つております。
  65. 赤松勇

    ○赤松委員 これは私少し驚いたのですが、人事委員会の專門員の方から出されております統計よりは、むしろ政府の方が高くなつているというふうに思うのでございます。もしそうだといたしますならば、たいへんけつこうだと思います。従つてこれは人事院勧告いたしますベースそのものの額に対しても、非常に大きな参考資料になると思うのでございます。重ねて官房長官にお尋ねいたしますが、先ほど川下人事官が人事院の見解を述べましたが、これに対して政府の方はいかようにお考えでございましようか。
  66. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 この法律にある百分の五以上の俸給を引上げなくてはならぬという点につきましては、人事院がたとえばCPIが百分の五上れば、ウエージが百分の五上るというふうに考えていらつしやるかどうか、そこはわかりません。あるいは百分の七上つた場合は百分の五となるか、必ずしもこれは一方の五が他の五にならなければならぬということはないと思いますが、その点は一応省略して考えますと、私どもは名実ともに賃金ベースが設定されたのが、今年の四月である。十二月に予算上は設定されておりますけれども、いわゆる旧拂いでございまして、その総額は赤松さんも御承知のごとく当時の補正予算二百六十五億円以上は出してはいかぬ。こういうことでございましたから、泉山案の設定せんとしておりましたところの五千三百三十円と、金額において少しもかわるところはありません。スタンダードにおいてかわらないだけでなしに、金額においても少しもかわらない。十一月はそれだけを拙い、一月には一円もらつたり、人によつては十五銭しかもらわぬという者も出て、結局は四月までは実質的に賃金ベースは設定されなかつたというふうに考えます。私の申し上げるのはそこから来る次第であります。そうして四月には御承知のごとく形においても実質においてもすべて六千三百七円ベースが設定された次第であります。そのときから見ますと今日はCPIがだんだん下りつつあります。しかも政府の各般の施策によつて減税あるいは取引高税の撤廃による物価の値下りというようなこと、あるいは厚生施設というような各般の施策によりまして、CPIの低下にともなつて、またそれにプラスいたしまして実質賃金を上げて参りたい。こう考えておる次第でございまして、むしろ四月がGPIは一番高かつたのでございますから、賃金ベースの変更を要求するならば、新しく名実ともに設定されんとする六千三百七円案なんかではだめである。これこそまさにこのときにおいて改正すべきであるというふうに声を大にして叫ぶべきではないか。こういうふうな考えをいたしております。しかしながらこれは別問題でございますが、今やだんだんいわゆる低物価政策、あるいは安定政策によつて物価を低くしようとしておる状況でございます。また赤松さんよく御案内の通り、一般産業労働賃金がくぎづけか、あるいは下るという傾向にもあるときでございまして、もとより非常な隔たりがあることは私どもはよろしくないと思つております。しかとそういう傾向にもある次第でございますから、この際は名目賃金は上げたくない。そのかわり実質賃金は何とかあらゆる方法を講じまして考慮いたしたいと考えておる次第でございます。それが先般来総理が、あるいはボーナスのことを考究せよと言い、あるいは宿舎のことを考えろ、あるいは交通費のことを考えろ、あるいは超過勤務のことを考えろというようなことで、せつかく政府が一生懸命努力いたしております。公務員が昭和五三九年に比べると、実質賃金が六十数パーセントであるということは事実でございますから、できるだけ早く昭和五一九年に達したい。また達しなければお気の毒であると、こういう心持のもとに努力しておる次第でございます。
  67. 赤松勇

    ○赤松委員 まだいろいろお聞きしたいのでありますが、当時官房長官は佐藤榮作さんでございまして、これはしばしばマッカーサー司令部の方へ折衝いたしまして、その当時の事情はよく御承知だと思うのでありますが、折衝いたしました責任の衝に当つた私といたしましてこの際一言申し上げます。それは二百六十億の予算というものは、予算上の問題でございまして、法案そのものは十二月一日から実施されておるということ。そしてまた向うの考え方もやはり昨年の七月を基礎にして、そうしてこの法律は十二月一日から実施さるべき性質のものである。ただ問題は予算の大きなわくを動かすことができないというので、ああいう形になつたということを御了解願いたいと思います。  それからもう一つでございますが、ちようど今賞與の問題、諸手当の問題、あるいは住宅の問題、あるいは実質賃金をこのように充実するのだというお話がございました。先般池田大蔵大臣は減税によつて云々ということを言つておられましたが、ああいう子供だましの議論には賛成できません。今官房長官は非常に具体的に賞與あるいは諸手当等によつて、実質賃金を充実して行くということをおつしやいました。私たちも別にこれは反対をいたしません。この際一言だけお聞きしておきたいのは賞與なり、そういう手当というものは、一体どういう法律に基いてお出しになるのでございますか。
  68. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 赤松さんにお答え申し上げます賞與の関係は実はここにも人事院の方もいらつしやいますが、新給與制度の関係上研究いたしましたが、出しにくいことに相なりました。将来給與制度自身を改正するかどうかという問題が残つておりますが、総理が賞與制度を復活したいというのは、昔は年の暮にふところが多少温かになりて、もちつき代もあるし、あるいはお雑煮も食べられるしというような意味で、一月分くらいはいつももらつたものでございました。そういう昔の方がかえつてよかつたというような声もあり、かたがた何とか温かい処置ができるかどうか考えてみようというわけで、せつかく研究いたしましたが、現在の給與制度のもとにおいては困難でございます。そこでほかの方法で、従来政府が踏み倒しているものがありはせぬかというわけで探してみましたが、これは周知の事実でございますが、超過勤務のごときは、十時間くらい超過勤務をいたしましても、予算がないという理由で三時間くらいしか拂わない。こういうことは政府自身が借金を踏み倒しておることで、まことによろしくないから、実際勤務しただけ超過勤務手当を予算上実質的に支拂いをする。そういたしますと、ある程度の潤いがつきはせぬかという状況に、ただいまのところなつております。それから交通費等も支給したい。これは実際いることでございます。このことはまだボーナスのごとくサジを投げずに、研究を続行中でございます。その他住宅関係につきましても、朗年度においても多少ではございますが、住宅関係の費用がきまりまして、実行予算としましては、今年度まだ実行が遅れておりますが、二十三億円の住宅費が出されることになります。それから減税の関係から申しますと、ここに数も出ておりますが、減税をいたしますと、十五万円の所得者、公務員、労働者ですが、これが夫婦、子供二人ありますと四%だけ実質賃金が上つたことになつております。少いところは〇・八九%、多いところは四・二%まで実質賃金は上つて来るということになつておりますから、大蔵大臣が言われることは、やはり根拠があるわけでございますから、御了承願いたいと思います。
  69. 赤松勇

    ○赤松委員 実質賃金の充実は、これは超過勤務手当を拂わなかつたのを、これから拂つて行くのだということも、一つの要素だとおつしやいましたが、たいへんけつこうであります。ただしかしこのことは拂わなかつたのを拂つただけでありまして、何も実質賃金の充実にはならない。こう思うのでありまして、こういうことは聰明な官房長官といたしましては、まじめな御答弁であるとは考えられないのでございます。  もう一点だけお尋ねいたします。それは先ほどいろいろな御答弁を承つておりますと、要するに実質賃金充実のために、賞與を出したいと思つたが、諸般事情からこれはだめになつて従つて超過勤務手当あるいは交通費、住宅手当等において考慮したいというお話でありますが、今の国鉄仲裁委員会が出します仲裁案、これは先ほどしばしば御答弁をいただきましたが、官房長官のお答えでは、政府職員全体のベースの問題とも関連するので、予算の伴わないものはこれを拒否する態度である。こういうふうにわれわれは解釈しておいてよいでございましようか。
  70. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 結局予算上不可能であるというふうに、ただいまのところ考えておりまするそれからもう一つ申しますと、現在の給與ベースを国鉄職員に拂つてつて、ようやく貨物運賃を八割上げまして独立採算制がとれる。赤字がようやく解消する。こういう状況でございます。
  71. 赤松勇

    ○赤松委員 なおいろいろな点は、大蔵大臣また官房長官に機会がありましたら、質疑するといたしまして、本会議も始まつておりますから、私の質問は一応この程度で打切りますが、保留にしておきます。
  72. 藤枝泉介

    藤枝委員長代理 それでは質問は、なおこの次の委員会に継続することといたしまして、次会は、明後二十四日の午後一時から開くことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十一分散会