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加藤充君
簡單に御
説明申し上げて、皆様の御協力と絶大なる援助をお願いしたいと思うのであります。
請願の要旨を申しますと、これは労働者から出されたものでありますけれども、
日本国民のひとしく持
つておる気持を現わしておると思います。講和の日が一日も早いことをわれわれはひとしく要望しているけれども、一、二の特定国との單独講和については問題がある。講和は全世界の国々と結んでこそ、ほんとうの講和が成立つのであ
つて、特定国とのみ講和を結んで、他の国とは依然交戰
状態に置くというようなことになりますと、
日本の地位が不安定であるばかりでなく、特定国の保護を受けるようなことにも相なりまして、わが国の自主性がほとんど半恒久的に失われることになる。だから全面的な講和を即時や
つていただくようにしていただきたいというのが
請願の要旨であります。また私どもは、敗戰の條件ありますポツダム宣言の嚴正な履行の精神から申しましても、世界の平和と民主主義と同時に、
日本民族の独立ということ、これは大眼目であると同時に、このポツダム宣言に端を発して出て参りました
日本憲法の戰争放棄、民主的文化国家の建設というのは、これは
日本憲法の大精神だろうと思うのであります。またそれは国民の決意でもあり、同時に責任でもあろうと思うのでありますが、最近の国内政策、あるいはまた日独通商協定とか、あるいは英日の通商協定とかいうようなものを見ますと、どうも
政府の政策が低賃金と低米価と重税で、この負担を働く者の負担にまかせて、これを切抜けて行こうというふうに見受けられるのでありますが、ここで申し上げたいと思うのは、こういうようなやり方は、当然に国際市場の狹隘化にな
つて参りまして、いわゆる相対的な過剰恐慌というようなことにな
つてしまうのでありまして、これが世界的に見ましても、国内的に見ましても、いわゆる巷間で言われております一千億の滯貨問題とな
つて現われて来ておると思うのであります。こういうふうなことから見ましても、全面的な講和條約の設定ということは、單に観念的な思い上りのものじやなくして、国民の日常生活、生きて行くことに非常な関連を持
つているものでありまして、この点から申し上げましても、第二次世界戰争の直後の資本主義諸国家のいわゆる恐慌
状態というものは、
日本のこの当面している問題が、資本主義諸国家だけを相手にしてお
つたのでは、とうてい解決がつかない
一つの大きな例証であると思うのであります。そういう点から見ましても、それは資本主義の諸国家を相手にするばかりでなく、広く民主主義の国々、あるいはソ同盟、あるいは中国というようなものを相手にしなければ、この相対的過剰恐慌の資本主義社会の持つ矛盾というものは、
日本としても解決のできない
一つの問題に頭打ちをして来ている。こういう点で全面的なこの国際的な講和條約の設定の問題は、強くわれわれの関心事とならなければならないと思うのであります。またそういうようなことでなしに、資本主義の国々を相手にしておりますれば、結局においてストックは山と積まれ、世界中そうなんでありますから、勢いはいわゆるソーシヤル・ダンピングの方向に持
つて行き、それは侵略の方針に、走らざるを得ないのであります。こういうやり方は、現在の特定国以外の連合諸国家の、あるいは世界の国々の反感と危惧の念を増大し、また逆手に
自分の方に振りもど
つて参
つて、貿易の再開とか、あるいは平和的、民主的な
方法によるストツクの解消ということにはならないのであります。
以上の両点から見ましても、この全面的な講和條約の一日も早き締結が、大切な問題であると私どもは思うのであります。
そういう点で思い出しますが、吉田氏が、いわゆる
アメリカの独立の実例を見てみろ、あの歴史的な経験を考えたらいい、植民地になるようなことがあ
つても、それは大したことでない、
あとで取返すのだ、というようなことを
言つておりますが、私はここで喋々を要しないと思いますが、インドの例を見ても、中国の例を見ても、南米その他の世界の各植民地の歴史を見ても、これは明らかなことでありまして、最近において
南方諸
方面における植民地民族の血の解放運動というものが、一旦植民地
状態に陥
つてしまえば、とうていこんりんざい不可能にも近いものであり、同時にそれははなはだ犠牲の大きいものであることを、われわれはこの際
日本民族として銘記しなければならないと思うのであります。
そういう
意味におきましてここに
請願が出て参り、私どもがその
紹介者と
なつた
理由でもありますが、ここに二十七日に、
東京芝の中央労働会館で開かれたアジア労働者
日本大会の決議のことがありますので、その点を申し上げて、私の
紹介の言葉を終りたいと思います。その決議文というのは、「一、われわれは、
日本、朝鮮、インド、マライ、その他のアジア諸国が帝国主義的侵略の基地となり、それらの国の労働者が戰争のための道具として使われることに反対する。一、われわれ労働者を戰争にかり立て、人民の犠牲によ
つて帝国主義的支配を確立しようとする單独講和の陰謀に対しては、世界の恒久平和のために、ソ同盟と中華人民共和国を含む全面的講和條約の即時締結を要請する。一、われわれは吉田反動内閣の売国的産業破壊政策によ
つて行われる首切り、労働強化、低賃金、高物価特に貨物運賃の値上げに反対する。」終りの方は思わず蛇足で言い過ぎましたが、こういう
状態でありまして、これは労働者の大会でありますが、ポツダム宣言に基きましても、いわゆる
日本の民主化の背骨としての労働者あるいは労働組合の使命は、国際的に承認されているところなのであります。その労働者の寄合いでこの決議がなされたということは、われわれがも
つて看過してはならないところだと思います。
そういう
意味合いで出されたものでありますから、これは決して單なるイデオロギーだとか、立場の違いだとか、見解の相違だとか
言つて済まされる問題ではないということを確信いたします。どうか当外務
委員会におきましても、
請願の
趣旨を
つたなく申し上げましたが、よろしく御採択あ
つて、適切妥当な処置を切にお願いいたします。