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1949-11-29 第6回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十九日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 竹尾  弌君    理事 仲内 憲治君 理事 戸叶 里子君    理事 並木 芳雄君 理事 野坂 參三君    理事 松本 瀧藏君       栗山長次郎君    塩田賀四郎君       玉井 祐吉君  出席政府委員         外務政務次官  川村 松助君         (政務局長)         外務事務官   大野 勝巳君         (條約局長)         外務事務官   西村 熊雄君         (管理局長)         外務事務官   倭島 英二君         (引揚援護庁援         護局長)         厚生事務官   田邊 繁雄君         経済安定本部副         長官      山本 米治君  委員外出席者         議     員 加藤  充君         議     員 田島 ひで君         議     員 船田 享二君         議     員 松谷天光光君         通商産業事務官 日向 精藏君         通商産業事務官 影山 衞司君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 十一月二十八日  委員北二郎君辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件   請 願  一 元小笠原住民の帰島促進に関する請願(菊   池義郎君外一名紹介)(第九二〇号)  二 北鮮残留者引揚促進の請願船田享二君紹   介)(第九七四号)  三 在外同胞引揚促進請願小川原政信君紹   介)(第一〇三八号)  四 対日講和に関する請願加藤充君外四名紹   介)(第一〇五四号)  五 同(戸叶里子君外二名紹介)(第一〇五五   号)  六 同(春日正一君外四名紹介)(第一一八八   号)  七 アジア婦人会議代表派遣請願松谷天   光光紹介)(第一〇九八号)  八 同(田島ひで君外二名紹介)(第一一三九   号)     —————————————
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  請願の審査をいたします。まず日程第一、元小笠原住民の帰島促進に関する請願菊池義郎君外一名紹介、第九二〇号を議題といたします。紹介者説明を求めます。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 この問題については前の委員会においてもちよつと触れたのでございますが、小笠原から内地引揚げて参りました住民は約六千人でございます。向うには現在米英系住民が百三十何名しか残つておりません。アメリカ軍隊も一人として駐屯しておらないという実情がはつきりわかつておるのであります。これまで時折政府からも帰島の陳情をしたそうでありますが、向う返事によりますと、北緯三十度以南になつている。それがために帰されないという、ただそれだけが理由になつておる。ところがこれは理由にならぬので、沖縄と大東島は同じ北緯三十度以南にありながらやはり帰しておる。同じ米軍占領地区にあるようなわけなのでこれは理由にならぬ。結局政府陳情、懇請がまだ熱が足らないその結果であるとわれわれは考えておるわけでございます。この小笠原島は硫黄島と違いまして——硫黄島は平たい島で飛行場向うの手によつて建設せられておる。その硫黄島をとるためには、アメリカといたしましても、ほとんど地形がかわるほど爆彈を落して、草木の種が絶えたといわれるくらい激烈な痛撃をやつたのでありますが、小笠原島は戰略的にもほとんど価値がない。山また山で平地がほとんどない。小さな飛行場日本がつくつてつたにすぎないのである。アメリカ軍隊飛行場にはほとんど適しないというので、戰略的価値向うで認めまして、その小笠原島にはほとんど関心を持つておらない。どういうわけで帰さぬかと申しますと、この前申しましたようにマリアナ司令官の所轄になつておりまして、向うの方ではちようどマリアナ群島の諸島と同じような考えをもつてつておるのではないかということを外務省のある人が私に話しました。それでこの考え方を改めさせさえすれば、向うに帰すことができるであろう、この点に主力を注げということを私に言つた人がありましたが、あるいはそうではないかと思うのであります。最近小笠原島から参りましたわれわれの知合いが、今度マリアナの方にまわつて小笠原に帰りますが、そのついでに向う司令官陳情しろということで送別会を開いて出しましたが、その返事がまだこちらに参つておりません。相当の日数がかかります。この小笠原島民内地に参りまして、熱帶地から参りましたので非常になれない、こういう冬あり、夏ありのかわつた気候の場所に参りますと、からだにも非常に支障を来しまして、病人が引揚者の中に大分出ております。肺病になつた者もたくさんおります。今ルンペン生活をやつて辛ろうじて親戚、知合いをたよつて生活しているというありさまでありますから、可憐なる六千人の同胞向うに帰すようにお骨折りを願いたいと思うのであります。これらの人々が帰りますと、向うでもつて特有の産物でありますところの砂糖を栽培することができる。砂糖をうんと栽培いたしますならば、東京あたり砂糖には困らぬと思う。小笠原砂糖は本格的の南洋砂糖きびとまつたく同じで、孟宗竹と言つては誇大でありますが、この太さくらいの砂糖きびがどしどしできるのであります。南洋、台湾と少しもかわるところはありません。砂糖向うの特産でおります。それに次いではバナナあり、パインアップルあり、それからシヤシヤンポ、マンゴー、——やしの実はとれませんが、そういう産物がたくさんあります。野菜もたくさんあります。それをこの冬中にも南方野菜類東京に送ることもできるようなわけでありますから、内地砂糖不足を補わんがためには、ぜひとも向うに帰していただきたい。またそれらの産物ちよいちよい二見港に立寄つて来るところの米軍に供給せんがためには、アメリカ軍人たちもそれを希望しているのでありまして、下級軍人希望がどうも上層部にまだ通じてないと見えて、その運びに至つてないようであります。また小笠原島から硫黄島にかけては有名な鯨の集散地でありまして、一定の時期を限つて鯨がその水域に集まるのであります。それは交尾期に集まりますが、その交尾期が終りますと、彼らはまた七つの海を目がけて散つて行く。そういう鯨の集散地でありまして、これまで小笠原島には父島と母島に、有名な日水、林兼の二大水産会社の鯨の製造所がございます。ここに島民帰還を許されますと、鯨を製造するのに非常に都合がよい。日本食糧不足を補うにも非常に役立つと思うのでございます。硫黄島、小笠原附近から鯨を引いて来ると、その引いて来る間に鯨が腐つてしまう。金華山沖の鯨はあの近海で引いて来ますから腐らないのでありますが、二日、三日、あるいは四日ぐらいかかりますと、鯨が腐つてしまう。どうしてもとつた現地において製造をしなければならぬ。そういつたような意味からして、ぜひとも小笠原島民帰還のためにお骨折りを願いたいと存じます。以上であります。
  4. 岡崎勝男

    岡崎委員長 本件に対して政府の所見を求めます。
  5. 倭島英二

    ○倭島政府委員 ただいま菊池委員から御説明のありました点、まことに政府の方としましても同感でございまして、政府の方といたしましても、現在日本におられて、しかも帰還を待機しておられる方々実情も聞いておりますし、何とかしたいものと従来も努力して来たわけでございますが、実はこの点につきましては、昭和二十一年七月一日に司令部から覚書が来ましたのが、先ほど御説明にもありましたような、米英系の子孫で、日本政府日本へ強制的に移した者以外は、帰還は現在のところ許されておらぬという覚書であります。それ以来は、この覚書にもありますように、現在のところ許されておらないという状況が爾来続いております。しかしながらこの覚書も、現在のところ許されておらぬという書き方でありますので、その後も政府といたしましては、先ほど御説明のような点等申出まして、何とかしてもらいたいということを頼んでおるわけでありますが、残念ながら現在までのところ、やはり帰還についての許可が出ない状況であります。しかしながら今後も、先ほど御説明のありましたような趣旨をさらに敷衍、説明いたしまして、何とか帰れる道が開けるように努力したいと思います。
  6. 菊池義郎

    菊池委員 なおつけ加えて申しますが、この小笠原島は御承知のごとく東京都に属しておりまして、現在でも小笠原支庁東京都の中に存在いたしまして、引揚げております人々は、東京都内にある小笠原支庁連絡をとつて引揚げておりますし、事務も継続しているようなわけであります。支庁長も依然まだ存在しております。そういうわけでございますから、どうか根気強く、何十回でも重ねて陳情していただきたいと思います。そしてマリアナ司令官の方にも手を延ばしていただくことを、切にお願いいたしたいと思います。
  7. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  8. 野坂參三

    野坂委員 関連質問になるかどうか、南方の方の抑留者の問題について簡單質問したいと思いますが、お許しになりますか。あるいは別にやりますか。
  9. 岡崎勝男

    岡崎委員長 多少関係があると思いますので、簡單ならよろしゆうございます。
  10. 野坂參三

    野坂委員 実は数字の問題でありますけれども、いわゆる南方地域言つても、これは非常に広いのですが、今まで政府発表された統計の中には、基本数とそれから引揚者数と、残留者数、こうありますけれども、引揚者数が年々ふえて行くのは当然ですが、実は基本数がふえているのです。たとえば最初厚生省などで発表された終戰当時基本数は六百三十七万四千云々と、こうなつております。ところが一九四六年六月には、基本数が増して六百六十一万云々、こうなつております。それからその後も四八年、四九年とずつと統計がありますけれども、この基本数というものが常にぐるぐるかわるので、この基本数ということが全然意味をなさないと思います。これはどういう事情になつておりますか。また現在大体においてどのくらいの残留者があつて、それからこれに対する引揚げの見通し、それからどういう状態にあるか、こういうふうなことについてお聞きしたい。  なぜ私がこの問題を出すかと申しますと、実は数日前シンガポール刑務所にいるある日本兵士から、私にあてて手紙が、どうして来たかその過程は知りませんけれども届いたのです。これによりますと、そこにはまだ日本人相当いるらしい、これはいわゆる戰犯として処罰されている、その生活状態とかいろいろなことがありますけれども、これは略しまして、彼の文面によりますと、自分は單なる一個の兵士にすぎなく——将校ではないらしいのです。しかもこれが刑を言い渡されて刑務所生活をしなければならないというふうな、彼の心情を綿々と述べて来ているわけであります。こういうものを受取つたので、私はもう一度、いわゆる南方における引揚げ問題について、政府側からできるだけ正確な材料をいただきたいと思つたわけであります。
  11. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今の野坂委員の御質問にお答え申し上げます。従来日本政府が根拠としている数字は、従来も申し上げておると思いますが、司令部発表数字であります。南方の方の関係で、引揚げ対象基本数という区分けの中にあげられております数字は、その時期によつて多少かわつている、むしろそれはふえているというのは、この随時発表せられる表をごらんになるとその通りでございますが、われわれのこれについて了解しておりますところは、司令部と各関係の国との通信その他によりまして、この引揚げ対象になる数がだんだんと明瞭になつて来たためであると思います。最初持つてつた引揚げ対象になる基本数字が、だんだんと引揚げなし得る状況になりますと、それが判明して参りますと、ふえて来たということで、そういう変化があつたものと思つております。  それからなお現在の残留数でございますが、それはこの委員会でもお配りしたかとも思いますが、十一月三日の司令部発表した表がございます。それがお手元になければ差上げることにいたしますが、その表で現在の状況はごらん願いたいと思います。なお本年南方から引揚げました状況は、大体戰犯関係現地に残つておられた方々が、一つ戰犯の容疑が晴れるとか、そういうことのために引揚げが可能になつ方々と、それから戰犯刑期を終えられた関係帰還が可能になつたという方々が、ほとんど全部でございます。政府承知しております数字といたしましては、本年一月から十月までの南方方面から引揚げて来られたのは、合計二百七十一名になつております。その大体の内容を申しますと、オーストラリヤから十八名、蘭印から百十二名、仏印から四十五名、中部太平洋、これはグアムでございますが四名、フイリツピンから四十一名、ビルマ、シンガポール等の東南アジアから五十一名、計二百七十一名、これはほとんど全部今申し上げましたような戰犯関係せられて現地に滯留せられた方々が、その原因が解けて帰還が可能になつて帰つて来られた方々でございます。今後もこういう関係帰還が可能になればお帰りになる。現在大体南方の方に戰犯関係でとどまつておられる同胞の数は、現在われわれの方で判明しておりますところでは、約一千六百余であります。これもまだところによつて司令部と各関係国との通信なりその他連絡がはつきりすれば、さらにこの数字もあるいは多少は変動があるかもしれませんが、現在のところでは大体そういう見当になつております。
  12. 野坂參三

    野坂委員 私が今申しましたのは、向うからもらつた手紙の中で、戰犯となつて、そして彼と同じような運命の人が相当まだいるというのでございます。それに対して彼が言つているのは、自分戰犯にされる理由は毛頭ないということを訴えて来ているわけです。こういう問題に対して日本政府側が手を打つ方法がありますかどうか。
  13. 倭島英二

    ○倭島政府委員 各地で、特に南方方面にいわゆる戰犯関係で滯留しておられる方々の本人の請願なり、あるいは一緒におられた同僚なり同胞関係方々請願その他ありますので、その請願は現在のところでは、直接司令部の方にお出しになつて司令部からその関係向きへ伝達される場合と、それから政府の方にこれをそういうふうに伝達をしてくれという申出があります際には、政府の方から司令部の方へそれについて考慮していただく、あるいは適当の関係向きの注意を喚起していただく、あるいはそれについての処置をお願いするというふうに取次いでおります。
  14. 野坂參三

    野坂委員 まだこの問題は、少しこかまく手続の問題をお聞きしたいことがありますが、これはここでやらず、あとで倭島さんにお聞きします。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 引揚げに関連して、私は北の方のことでありますが、ソ連地区に生死不明の同胞が三十万まだおるわけであります。ソ連政府機関紙タス通信の報道によると、残留者数九万五千となつておりますから、司令部発表と三十万の食い違いがあるわけです。これだけの大なる相違を放任して、この数字を確かめることもできないということは、日本国会威信にも関することと思う。それでありますから国会といたしましては、これを司令部陳情いたしまして、国会から各党の議員を選んで、ソ連に直接渡つて、その実情を調査してもらうべく司令部に懇請してはどんなものか。これをひとつ政府としても考慮していただきたいと思うのでありますが、いかがですか。
  16. 並木芳雄

    並木委員 今の菊池さんの御要望と関連したことは、私も今日質問として出してあるのです。この日程を見ますと、第二、第三に引揚げ促進請願が出ておりますから、その方で一括して取扱われんことを望みます。
  17. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまの菊池委員の御発言については、政府としてもなかなか重大問題で、即座に返事ができるかどうかわかりませんので、御発言は御発言として、一応政府の考慮を促すという程度でいかがでございましようか。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 それを司令部請願してみてはどうかと思います。少しもさしつかえないと思う。
  19. 岡崎勝男

    岡崎委員長 政府側は何か御意見ありませんか。
  20. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この問題は、国会の方の御意思決定の問題であるように存じますし、この際政府といたしましては、意見を申し上げることは差控えておきたいと思います。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 国会威信に関する問題であるばかりでなく、日本政府威信に関する問題である。三十万同胞の家庭には、さらにそれに加えて何百万の同胞があるわけですから、日本政府威信に関し、日本国会威信に関する重大問題であります。これを陳情折衝するくらいの骨折りはしていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  22. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今申し上げましたのは、政府威信ということでありませんで、意思——そういうふうな請願をされることになるかどうかという問題については、国会でおきめいただく問題だと思いますし、その意思国会の方で御決定になりましたあと政府の方でそれについてお手伝いをする、あるいはさらに交渉を進めるという点がありますならば、これについて政府のできることは何でもしたいと思いますが、国会でいかにその問題を御決定になるかということについて、政府側意見を申し上げることは御遠慮申し上げる次第であります。
  23. 岡崎勝男

    岡崎委員長 日程第一は、菊池君の御紹介になる元小笠原住民の帰島促進に関する請願でありますが、今御発言になりましたことはその程度でよろしゆうございますか。
  24. 菊池義郎

    菊池委員 よろしいです。
  25. 岡崎勝男

    岡崎委員長 本件は内閣に送付すべきものとして、これを採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。     —————————————
  27. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に日程第二、北鮮残留者引揚促進の請願、第九七四号を議題といたします。紹介者説明を求めます。
  28. 船田享二

    船田享二君 北緯三十八度以北の一則鮮地区残留する同胞引揚げ促進をやつてもらいたいという請願趣旨を、紹介議員として簡單に御紹介申し上げまして、御審議を煩わしたいと思います。  終戰当時北鮮におりました同胞は、満洲からの避難民を加えまして約三十三万人といわれておりますが、そのうち約一割が昭和二十一年春ごろまでに死亡したと伝えられておりまして、それから八割七分は脱出いたしまして、昭和二十一年十二月にアメリカソ連との間にとりかわされた日本人送還協定北朝鮮に実施されたときに残つておりました同胞は、技術者及びその家族を主として約八千人だといわれております。この八千人はその後六回の引揚船でほとんど帰還いたしまして、昨年の七月六日の引揚船宗谷丸北鮮からの引揚げは一応完了いたしましたので、そのためかその後は司令部発表北鮮地区残留邦人の数は、ずつとゼロになつております。しかし実際には、そのうちもまた日本人北鮮地区に残つているのでありまして、現に今また宗谷丸——最後引揚船帰つてからでも、現在まですでに約七十人北鮮地区から帰還しております。現在北朝鮮にどれだけの日本人がいるのか、われわれ正確に知ることができないのでありますが、いると思われる人の名前と、残留事情が明らかになつている人といたしましては、技術者が十七名、それから平壤の人民教化所——刑務所ですが、人民教化所に監禁されている者が十六人、合計三十三人、但し平壤の人民教化所にいると思われる人たちの中の二名ばかりは、終戰直後に三年とか、三年半とかの刑期を言い渡されておるのでありまして、すでにその刑期を終つておるのではないかと思われます。ところが昨年の秋に御承知のように北朝鮮民主主義人民共和国が生れまして、昨年の末にソ連軍が撤退してしまいましたので、北鮮地区はまつた送還協定の外の地域になつてしまつたといいますか、そのためソ連司令部も、直接にその北鮮残留する邦人帰還について、権限も責任もないというようなありさまになつたようなのであります。人数も少いというようなことも原因となりまして、われわれ日本人の間でも、これらの北朝鮮残留者を忘れたようなありさまになつておるのであります。そこで残留者家族たちはお互いに連絡をとりまして、ことしの春以来ソ連代表部にすでに六回も嘆願に参りまして、またソ連代表部意見に従いまして二回嘆願書を出しておる。司令部に向つてもいろいろと手を盡しておるような次第でありますが、まだ何ともはつきりした結果に到達しておらないような状態であります。これらの最後引揚船の後に北朝鮮から帰つて参りました人たちは、南鮮通つて佐世保に上陸いたしますので、佐世保援護局でそれらの人の数を聞きまして、その情報外務省の方にも集められておるようでおりますが、外務省として今までどういうことをされたのかよくわかりませんが、まだその効果も現われていないような状態になつております。そこで請願者はあらゆる方法を盡しましてもまだその希望が達せられませんので、この上は国会にたよりまして国会が問題を取上げて、早急に何らかの手段をとつてもらうほかはないというところから、請願を提出いたした次第であります。  ソビエト領内、あるいは中共地区残留邦人引揚問題につきましては、人数も多いので各方面で熱心に今取扱われておるのであります。ことに最近御承知のようにアメリカの総領事の事件をきつかけに、たとえば朝日とか毎日などの新聞にも同胞を救え、あるいは世論の力というふうな題で、もつと輿論を喚起させなければいけない。そういう投書もありましたことは、皆さん御承知のことと思います。こういうことは道理当然のことと思うのでありますが、それと同じように、あるいはそれより以上に北鮮地区がとりつく島もないような、引揚問題に関して離れ小島のような状態に陷つてしまつておりますし、また人数が少いと申しましても、言うまでもなくこれを何とかいたさなければならないのでありますので、本委員会におかれましては、この請願趣旨を十分におくみとりくださいまして、有効適切な方法を講ずるように御採択の上、御審議をお願い申し上げたいと思うのであります。  なお今申し上げました引揚援護局で集めたような北鮮情報は、外務省の方にも集められておることと思いますので、この際そうした現在北鮮残留同胞状況等につきまして、外務省においてわかつておる点について、この委員会におかれましても御聽取願つて外務省北鮮地区残留同胞引揚げについてどういうことをしておるか、またどういうことをするかということにつきましても御聽取を願いまして、御審議をくださるならば幸いと存ずるのであります。以上簡單に御紹介申し上げます。
  29. 岡崎勝男

    岡崎委員長 右につきまして政府意見を伺います。
  30. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今北鮮残留者引揚げの問題について御説明がございましたが、政府といたしましても、この問題につきましては最も心配していることの一つであります。先ほど朝鮮に行つてつた同胞並びにその後の引揚げ数字のお話がありましたが、現在まだその数字発表する段階には参りませんが、留守宅家族の届出によりましても、まだ北鮮相当数の方が残つておられる家族関係から申しますと、ある程度数字が出るのでございますが、その中で先ほども御説明がありましたように、技術者だとか、人民教化所というようなところへ入つておられると想像される人名等も、諸般の情報政府の方でも承知しております。従つてこの引揚促進につきましては、従来関係当局に対しまして、何とかその促進方についてならぬだろうかということでお願いしておるわけでございますが、説明のありました通りに、現在司令部北鮮で政権を持つております政府との連絡関係が、直接つけがたいという現状でございまして、実際問題としては、これを積極的に促進する方法がない状況でございます。ただ最近は南鮮との間に用務を帶びて往復する人もふえて参りましたので、政府としては、そういう南鮮の当局の人、あるいは民間の人等と接触する機会を利用いたしまして、結局あの三十八度線を越えて南鮮の方に出て来れば、南鮮でいろいろせわをして、こちらへ返してくれておりますが、そのせわの問題等について頼んでおる状況でございます。北鮮引揚げについて、積極的にこういう名案がありますということを申し上げることができないのは、はなはだ残念に思いますが、実は引揚げられた方々から、相当つております。その実情司令部の係官の方にはるる伝えております。早くこの引揚げ促進の実現せられるようになることを、政府としても心配し、祈つておるのでありますが、本年現在までのところ、まだ直接あそこから引揚げるという方法のない状況でございます。
  31. 船田享二

    船田享二君 ちよつとお尋ね申し上げたいのですが、この引揚促進の問題について、政府としても名案がないということは、やむを得ないことかとも思うのでありますが、なお先ほど私が申し上げた数字以外に、何か材料があられて、どのくらい北鮮に残つているかということの推定もつかないものでしようか。何人くらいいるかということについて、外務省当局のおわかりになつておる程度でお教え願いたいと思います。
  32. 倭島英二

    ○倭島政府委員 外務省が現在持つておる情報は、これは引揚げて来られた方々から聞いた情報が、ほとんどその全部であります。しかもその引揚げて来られた方々は、各地を通つて来られ、あるいは各地のある部分の方に会つて来られたことは確かでございますが、その見積り等が、大体の見当なり勘というようなことでありまして、情報は区々まちまちであります。従つてこの数の問題については、いろいろ研究中でございますが、現在これくらいのところになつておりますということは、まだ申し上げかねるわけであります。ただ現在向う残留しておられる邦人は、大体どういう方々が多いかという区別といたしましては、第一は技術者関係で、現場でいわゆる留用されておられる方、それから先ほども御説明がありましたが、何らかの関係で刑を受けられた関係の方、それから各地で結婚をせられて、結婚の関係から残つておられる方々、それから中共、つまり満洲の地区から脱出して北鮮まで来られた方。この結婚せられた方とか脱出せられた方等については、諸般の関係で名前を、あるいは朝鮮名、あるいは満洲名を用いられておられる方が相当あるように聞いております。これについても調査中でございまして、まだ確たる報告をするところまで行かない状況でございます。
  33. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ほかに御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、本件は内閣に送付すべきものとして、これを採択するに御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  34. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     —————————————
  35. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次は日程第三、在外同胞引揚促進請願でありますが、これは前会において審査いたしました請願と同趣旨でありますので、審査を省略し、前会の請願と同様に取扱いたいと思いますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではさようとりはからいます。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それに関連して、請願のときに質問をしろという先ほどの打合せでございましたから、引揚げ一般の問題、特にソ連からの引揚げについて質問をいたします。実は外務省の方で留守家族の調査をしておるということになつて、この前の引揚促進特別委員会でしたか、近くその数字がはつきりするということを、倭島管理局長から答弁があつたと思います。その日の一日も早く来ることを待つてつたのですが、その的確なる数字発表の段階になつたのであるかどうか、まずそれをお伺いいたします。
  38. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この前も御説明申し上げたと思いますが、外務省で調査をいたしておりますのは、一般邦人関係でございます。その関係につきましても調査中でございますが、残念ながらまだその結果をすぐ御発表する段階になつておりません。
  39. 並木芳雄

    並木委員 一般邦人以外の者に対するそういう調査のものはどういう運びになつておりますか、援護局長がお見えになつておるようでありますから、御答弁を願います。
  40. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 本件は復員局で所管しておりますが、お尋ねの件につきましては、目下復員局とも鋭意調査を進めております。ただいまのところ、まだまとまつた数字がないようであります。
  41. 並木芳雄

    並木委員 その調査が相当正確なものができ上らないと、なかなか数の点で解決が困難でないかと思うのです。いろいろ政府の方としても残留数発表しておるようでおりますが、あくまでそれが正確だという信念があるならば、やはりその残留しておる数というものを根拠にして、最後の一員まで引揚げを完了するように努力すべきであると考えております。しかしながら政府の最近の状態を見ておりますと、何だか確信がないような感じがする。そうして今年もまたとうとう冬になつてしまう、しかも留守家族の中には、うちのせがれはまだいると手紙も来ているのだというような場合が、今後の場合には出て来る。そういうことに対して現政府は非常に怠慢であると思つておるのですが、この点について引揚げの懇請状態、それから今後の見通し等について確たる御答弁をお願いいたします。
  42. 倭島英二

    ○倭島政府委員 並木さんの御質問に対してお答え申し上げますが、第一に政府が確信がないようだと申されますけれども、従来政府の基礎にしておる統計は総司令部数字でありまして、これは最もわれわれの信じ得る数字と思つておりますし、その残留数字に現われておる同胞引揚げ促進につきましては、何ら不安を持つているとか、あるいは確信を持つていないとかいうことよりも、何とか一日も早く、一人でも多く引揚げができるように努力をしておるわけでありまして、これについて確信を失つたというようなことは毛頭ございません。  それから引揚促進の問題でございますが、この点につきましては御承知通り、現在日本政府といたしましては、司令部に対して懇請するという道一本でございまして、司令部の係に対しましてはこの点をほとんど毎日連絡をしておりますし、われわれが持つております引揚げられた方からの情報、その他参考になります点は提出をいたしまして、引揚げ促進についてあらゆる努力をしておる状況でございます。
  43. 竹尾弌

    ○竹尾委員 並木委員質問に関連して一つお伺いいたします。政府同胞引揚促進に関して努力をされているということは私どもも認めます。私も與党の一員でありますから、あまり御迷惑になるような質問はいたさないつもりであります。ところで政府があらゆる努力をされておるということは、具体的にどういうことになるか、そういう点を具体的に御説明を願いたいと思います。  それからこの間参議院で全国引揚同胞の皆さんの大会がございましたときに、ああいう人たちの御意見はごもつともだと思いますけれども、われわれが出席をしても最後にカン詰にされそうになりまして、どうも政府とそうした関係者の関係がしつくり行つておらない、あれだけ熱心に関係者が政府に対して要求しておるのにもかかわらず、その要求に対して具体的にこたえるところが非常に少いというふうに考えておりますが、その点につきまして、政府はどういうお考えを持つておられるか、その点を御説明願います。
  44. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほども御説明申し上げましたが、現在政府引揚げ促進についてお願いし得る筋は総司令部でございます。総司令部に対してどういう要求なり、お願いをしているかということが、あるいはその具体案になるかと思いますが、それについては政府としまして、帰つて来られる方々から、たとえば残留数残留状況あるいは向う事情等を聞きましたのを参考にいたしまして、こういう状況であり、こういう事態のように思われるから、何とかこれについて善処をお願いしたいというふうに事情を明らかにいたしまして、その都度われわれの得た情報なり、考えを提供しているのがその一つであります。なおそのほか引揚げの問題については、さらにその考えについてお願いをしておる点もございますが、それはどういうふうに司令部の方で取上げられるか、実行せられるかというような問題についても、方法だとか時期だとかいう問題がございまして、従来政府司令部の方へお願いした内容については、ここでまだ申し上げにくい点もございます。いずれそういう点については、具体的になる時期もあるだろうと存じますが、具体的に政府がどういうふうに頼んでおるかという点につきましては、事情をよく説明して促進をお願いしておるという点で、はなはだぼんやりとしておりますが、御勘弁願いたいと思います。
  45. 野坂參三

    野坂委員 関連質問をします。先ほど倭島局長は、今まで発表された引揚げに関する——これはシベリア、満洲も含めますけれども、あの数字司令部統計だというふうにおつしやつたのですが、これについて二つお聞きしたいのです。第一は司令部統計というものは何を根拠につくられているだろうかということ、もし政府として答えにくければしかたがありませんけれども、ちよつとお漏らし願いたいと思う。第二の点としては、日本政府自体の数字はどういうものか、これをお聞きしたいのであります。
  46. 倭島英二

    ○倭島政府委員 従来政府でよりどころにしておる数字は、連合軍総司令部発表数字であります。この数字の根拠と申しますものは、いろいろな点が考慮せられているだろうと思いますが、この際こういう点が根拠でありますと、具体的に説明する材料を私今持ち合せておりませんが、諸般の事情が考慮せられているものだろうと存じます。日本政府関係数字は、あることはあると思いますが、現在まで日本政府発表しておりません。
  47. 野坂參三

    野坂委員 どうして日本政府は、自分の責任で、そういう数字があるならば、御発表にならないのですか。
  48. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在は占領下の状況にもありますし、その数字司令部の御参考には出ております。この司令部発表の中にはその考慮の一つとして取入れられているものだと思いますが、現在の状況ではこの司令部発表数字をよりどころとすることが一番よいと信じておりますので、現在発表しておりません。
  49. 野坂參三

    野坂委員 先ほど並木委員からも言われましたように、政府に何か自信がないようなということは、こういうところにも現われていると私は思いますから、私はここの委員会委員として政府にお願いします。政府の持つておられるという統計を、できるだけ早い機会に発表していただきたい。いろいろな理由でかりにできないとすれば、この委員会にはぜひ発表していただきたいと思います。何か今の局長のお話の中では、われわれに理解できないような複雑な事情があるように思います。こうした複雑ななぞの数字を基礎にして引揚促進とか、ソ連政府発表がどうというような論議をやるのは、非常に危險だと思いますから、政府の責任ある数字をぜひ発表していただきたいということを要求いたします。委員長はこれをひとつ取上げていただきたいと思います。第二に簡單な問題でお聞きしたいことは、ソ連、中国も含めると思いますが、残留者家族をお調べになるということについて、並木委員も今お述べになりましたが、この調査についてずさんらしいといううわさが、具体的な事実について見なければわかりませんが、いろいろ世間に飛んでおります。そこでお聞きしたいのは、この調査というのは、いつごろまでに大体終る予定であるかということです。
  50. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほども御説明した通りでありますが、確信がないとか、自信がないとかいうことは、政府はそう考えておりません。なお日本政府の持つておる数字発表するという点につきましては、御意見を承つておくことにしたいと思います。それから調査をいつ発表するかという問題につきましては、これは適当な機会が来れば、発表される段階になるだろうと承知しております。
  51. 野坂參三

    野坂委員 その適当な時期はいつごろかと聞いておるのです。
  52. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その適当な時期については、今私から申し上げる時期にまだなつておらぬと思います。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 引揚げの問題に関連して、私も一つお伺いしたいと思います。中共地区からの引揚促進に対しては、どういうような手を打つていらつしやるかということを伺いたい。たとえば対日理事会を通して、中国人民共和政府の方へでも、何かお願いするような措置をとることができないかどうかということ。それからあちらに残されている人は、希望残留の形で残されているようですけれども、実際問題としては希望残留ではなくて、希望残留という形をとらされておるということを聞いております。いずれにいたしましても、日本に残つている留守家族から見ますれば、一刻も早く帰つて来てほしいと望んでおると思いますが、引揚げせられるまでの暫定的な処置として、それらの人と家族との文通が許されるようなことも嘆願されたことがあつたかどうかということ、それからもう一つは、嘆願される場合に、大体において技術者希望残留の形で残されておりますが、今後それらの技術者向う行つて納得できるような待遇であつたならば、あるいは集団的な技術者の移民というような形でも行かれるのであるから、一応この際返してほしいという内容をもつて嘆願までされているかどうか、というようなことについてお伺いしたいと思います。
  54. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在中共地区、主として満洲方面でございますが、現在向うへ残つておられる方々が、大体どういう状況かという点につきましては、一部の方は軍あるいはその他留用せられた関係で、今も御説明もございましたが、自発的に残つたような形式をとられた者もあるし、あるいはそういう形式をとつていない人も相当多いと思います。なお自発的に残つておられる方も相当部分あるようで、婦人の方、特に向うで家庭に入つておられる方、それから向うで職業についておられる方、こういうのはやはり実際上自発的に残つておられる方もあるようであります。  それから文通の問題でございますが、これは現在はなはだ不完全で、そうしばしばはできませんが、現在やはり手紙が行き来しております。天津の方から英国船あたりで来る場合もございますが、香港の方まで出かけて行つて、香港をまわつて来る場合もございます。交通は不完全であり、なお相当金がかかるということになつておりますが、はなはだ不満足な状態でありますが、行つたり来たりしておるようであります。時間は相当かかるようであります。  それから技術者の点につきまして、特にまだ現在中共の当局と直接交渉する方法がありませんので、この引揚げ関係につきましても、日本政府としましては総司令部にお願いしておる状況でありまして、先ほどお話のような具体的な交渉はまだする段階になつておりません。なお満洲方面からの引揚げの問題も、はなはだ困難ではございますが、この前もちよつとこの委員会で御紹介申し上げたのでありますが、政府が総司令部にあててお願いしました手紙の中にも、終戰当時満洲にあつた日本人の処理についての責任は、同地を占領したソ連軍の負うべきもので、また今回の——今回のといいますと、この前の引揚げのとき中共地区から帰つて来られた例かありますが、あの例にもある通りに、ソ連の当局がその気になれば引揚げを援助することができるという状況でもあるから、今後もソ連当局が満洲におる邦人引揚げに援助協力して、一人でも多く返してもらうように日本政府希望しておる。こういう点も考慮して、ぜひひとつ引揚げ促進の手を打つていただきたいということを頼んでおります。この関係についてどういう手が打たれたかという点については、直接にまだ返事をもらつておらぬ状況であります。     —————————————
  55. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それは次に、日程第四、第五、第六の対日講和に関する請願、文書表第一〇五四号、第一〇五五号、第一一八八号を議題といたします。紹介者説明を求めます。
  56. 加藤充

    加藤充君 簡單に御説明申し上げて、皆様の御協力と絶大なる援助をお願いしたいと思うのであります。  請願の要旨を申しますと、これは労働者から出されたものでありますけれども、日本国民のひとしく持つておる気持を現わしておると思います。講和の日が一日も早いことをわれわれはひとしく要望しているけれども、一、二の特定国との單独講和については問題がある。講和は全世界の国々と結んでこそ、ほんとうの講和が成立つのであつて、特定国とのみ講和を結んで、他の国とは依然交戰状態に置くというようなことになりますと、日本の地位が不安定であるばかりでなく、特定国の保護を受けるようなことにも相なりまして、わが国の自主性がほとんど半恒久的に失われることになる。だから全面的な講和を即時やつていただくようにしていただきたいというのが請願の要旨であります。また私どもは、敗戰の條件ありますポツダム宣言の嚴正な履行の精神から申しましても、世界の平和と民主主義と同時に、日本民族の独立ということ、これは大眼目であると同時に、このポツダム宣言に端を発して出て参りました日本憲法の戰争放棄、民主的文化国家の建設というのは、これは日本憲法の大精神だろうと思うのであります。またそれは国民の決意でもあり、同時に責任でもあろうと思うのでありますが、最近の国内政策、あるいはまた日独通商協定とか、あるいは英日の通商協定とかいうようなものを見ますと、どうも政府の政策が低賃金と低米価と重税で、この負担を働く者の負担にまかせて、これを切抜けて行こうというふうに見受けられるのでありますが、ここで申し上げたいと思うのは、こういうようなやり方は、当然に国際市場の狹隘化になつて参りまして、いわゆる相対的な過剰恐慌というようなことになつてしまうのでありまして、これが世界的に見ましても、国内的に見ましても、いわゆる巷間で言われております一千億の滯貨問題となつて現われて来ておると思うのであります。こういうふうなことから見ましても、全面的な講和條約の設定ということは、單に観念的な思い上りのものじやなくして、国民の日常生活、生きて行くことに非常な関連を持つているものでありまして、この点から申し上げましても、第二次世界戰争の直後の資本主義諸国家のいわゆる恐慌状態というものは、日本のこの当面している問題が、資本主義諸国家だけを相手にしておつたのでは、とうてい解決がつかない一つの大きな例証であると思うのであります。そういう点から見ましても、それは資本主義の諸国家を相手にするばかりでなく、広く民主主義の国々、あるいはソ同盟、あるいは中国というようなものを相手にしなければ、この相対的過剰恐慌の資本主義社会の持つ矛盾というものは、日本としても解決のできない一つの問題に頭打ちをして来ている。こういう点で全面的なこの国際的な講和條約の設定の問題は、強くわれわれの関心事とならなければならないと思うのであります。またそういうようなことでなしに、資本主義の国々を相手にしておりますれば、結局においてストックは山と積まれ、世界中そうなんでありますから、勢いはいわゆるソーシヤル・ダンピングの方向に持つて行き、それは侵略の方針に、走らざるを得ないのであります。こういうやり方は、現在の特定国以外の連合諸国家の、あるいは世界の国々の反感と危惧の念を増大し、また逆手に自分の方に振りもどつてつて、貿易の再開とか、あるいは平和的、民主的な方法によるストツクの解消ということにはならないのであります。  以上の両点から見ましても、この全面的な講和條約の一日も早き締結が、大切な問題であると私どもは思うのであります。  そういう点で思い出しますが、吉田氏が、いわゆるアメリカの独立の実例を見てみろ、あの歴史的な経験を考えたらいい、植民地になるようなことがあつても、それは大したことでない、あとで取返すのだ、というようなことを言つておりますが、私はここで喋々を要しないと思いますが、インドの例を見ても、中国の例を見ても、南米その他の世界の各植民地の歴史を見ても、これは明らかなことでありまして、最近において南方方面における植民地民族の血の解放運動というものが、一旦植民地状態に陥つてしまえば、とうていこんりんざい不可能にも近いものであり、同時にそれははなはだ犠牲の大きいものであることを、われわれはこの際日本民族として銘記しなければならないと思うのであります。  そういう意味におきましてここに請願が出て参り、私どもがその紹介者なつ理由でもありますが、ここに二十七日に、東京芝の中央労働会館で開かれたアジア労働者日本大会の決議のことがありますので、その点を申し上げて、私の紹介の言葉を終りたいと思います。その決議文というのは、「一、われわれは、日本、朝鮮、インド、マライ、その他のアジア諸国が帝国主義的侵略の基地となり、それらの国の労働者が戰争のための道具として使われることに反対する。一、われわれ労働者を戰争にかり立て、人民の犠牲によつて帝国主義的支配を確立しようとする單独講和の陰謀に対しては、世界の恒久平和のために、ソ同盟と中華人民共和国を含む全面的講和條約の即時締結を要請する。一、われわれは吉田反動内閣の売国的産業破壊政策によつて行われる首切り、労働強化、低賃金、高物価特に貨物運賃の値上げに反対する。」終りの方は思わず蛇足で言い過ぎましたが、こういう状態でありまして、これは労働者の大会でありますが、ポツダム宣言に基きましても、いわゆる日本の民主化の背骨としての労働者あるいは労働組合の使命は、国際的に承認されているところなのであります。その労働者の寄合いでこの決議がなされたということは、われわれがもつて看過してはならないところだと思います。  そういう意味合いで出されたものでありますから、これは決して單なるイデオロギーだとか、立場の違いだとか、見解の相違だとか言つて済まされる問題ではないということを確信いたします。どうか当外務委員会におきましても、請願趣旨つたなく申し上げましたが、よろしく御採択あつて、適切妥当な処置を切にお願いいたします。
  57. 仲内憲治

    ○仲内委員 ただいま紹介議員の御説明を承りましたが、本請願につきましては、私どもはもつと研究調査いたしたいと思いますから、本件の審査は次会まで延期せられんことを望みます。
  58. 岡崎勝男

    岡崎委員長 仲内君の動議に御異議ありませんか。
  59. 野坂參三

    野坂委員 ここには同じような請願がさらに二つ載つております。これは吉田総理自身この国会で、全面講和賛成という意思を表明されておりますし、この問題についてわれわれとしては何ら研究の余地もないように思いますから、私の方としては、きようここでこの重大な問題をやはり採択するというふうに決議していただきたいと思います。
  60. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは採決いたします。仲内君の動議に御賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 岡崎勝男

    岡崎委員長 起立多数。よつてただいまの三件は今後引続き審査することに決します。
  62. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それに関連して、政府当局並びに外務委員長の御意見を私は承りたいと思うのであります。  吉田首相が講和問題についてしばしば御答弁されておりますが、要は日本の国民は大いに信頼に値するような行動をとつて、国民外交の実を上げなければならぬ、こういうようなことをおつしやつておられるようであります。そこでこの委員会でもあるいはそういう御意見が出たかもしれませんが、しかし今外交がないなどと言うのはとんでもない話でありまして、今こそ大いに国民外交の実を上げるべきときだろうと思います。その意味におきまして、われわれは国民の代表でございますが、われわれ外務委員会を中心というと、ちよつと語弊がありますが、国民外交の実を上げるために、ここに一つの大いなる国民外交の機関を設ける必要があると私は思うのであります。この間私はいろいろ政府当局にお尋ねして、少しいやがられたかもしれませんが、政府当局といたしましても、これだけ優秀なる局長方がおられるのでありますから、大いに手をかえ、品をかえまして、われわれの希望向うに伝達することは一向さしつかえない話であるので、この意味においてわれわれと政府当局とが渾然一体となつて、ここに大いなる国民外交の実を上げるような行動をとられる用意があるかどうか、ただ大いに国民外交をやるとおつしやつても何にもならない。これを具体的にやるべき手段方法を考えなければいかぬと思う。その点について政府当局と委員長の御意見を承りたい。
  63. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまの竹尾君の御意見につきましては、今承つたばかりでありまして、なおよく研究いたしまして、私のお答えをいたします。
  64. 川村松助

    ○川村政府委員 竹尾さんの御意見はごもつともでありますけれども、政府といたしましては、具体的にどういう方法をもつて行こうということに対しましては、十分に研究いたしたいと思います。
  65. 菊池義郎

    菊池委員 議事進行について……。ただいまの單独講和を排して全面講和をやるという請願について、ここでもつて論議を続けたらいかがですか。
  66. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これはただいま仲内君の動議によりまして、引続き内容について審査をいたすことになつておりますから、その審査を待ちまして、さらに論議をいたしたいと思います。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、それはこの次の委員会に出されるということですか。
  68. 岡崎勝男

    岡崎委員長 審査研究の結果の進行と思いますが、なるべく次会に出すつもりでおります。
  69. 玉井祐吉

    ○玉井委員 ひとつそのときにお願いしたいのですが、審査をしたいと申しましても、先般来のような政府側の御答弁ですと、單独講和の方がいいのか、全面講和の方がいいのか、ちつともわけがわからない、望むことは望んでおられるようですけれども、その様子がわからない。資料も何も出さないでおいて、いずれあとでというようなことは、やらぬつもりだと言われてもしようがないと思う。はなはだ失礼な言い方ですが、この際こういう問題を審査する以上は、ひとつ政府側も十分に資料を提供されて、そうして未来の問題、仮定の問題といわないで——過去の問題は歴史の扱うところであります。政治は常に将来のことを扱うのでありますので、その面からぜひとも誠意ある御調査と、われわれの質問に対する御答弁をお願いしたいということをお願いいたしまして、今の御意見に対しまして賛成の意を表します。
  70. 岡崎勝男

    岡崎委員長 玉井君にお答えいたしますが、私の申しました審査をするというのは、先般栗山委員から御発言がありましたように、この委員会が主体となりまして、政府意見は参考に聞くことはありますが、委員会として審査するつもりでおります。さよう御承知願います。     —————————————
  71. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に日程第七、第八のアジア婦人会議代表派遣請願、文書表第一〇九八号及び第一二三九号を一括議題といたします。紹介者説明を求めます。松谷天光光君。
  72. 松谷天光光

    松谷天光光君 本請願は、来る十二月一日より七日に至りまする間、中国の北京において開かれる国際民主婦人連盟が主催をいたすものでありまして、この国際民主婦人連盟は組織を大体八百万といたしておりまして、本部はパリにあるのでございますが、この主催によるアジア婦人会議に対しまして、日本婦人の代表の出席を強く要請されておるのでございます。自由と平和と独立のために、国際民主勢力との提携の重大な一環として、右会議に対する代表派遣請願するというものでございまして、この請願は民主婦人協議会の幹事長を初め、その会員、ことに多くの組合代表によつてなされておりますが、これは單に全逓であるとか、あるいは国鉄であるとか、あるいは全財であるとか、また民間の組合であるとか、そうしたただ單なる組合の女性ばかりの請願ではございませんで、これこそ全日本の女性の真の叫びであろうと考えるのでございます。  今日日本の女性がいかに生活の苦境のまつただ中にあるかということは、いまさら説明するまでもないのでございますが、特に働く立場にある君たちが、その首切りであるとか、あるいは賃下げであるとか、あるいはまたそれにのしかかつて参りますところの重税であるとか、こうした問題に、その日その日を非常に悲惨な状態のうちにあえいでおります状態であり、あるいはまた一方においては、かわいい子供たちを十分に教育をしたいと願う母親が、青空教室に子供を送らなければならなくなりましたり、そうしておりますやさきに、また次々と種々なる地方ボスあるいは権力などからの一つの圧制によりまして、多くの寄付が要求されている。たとえば警察後援会の寄付であるとか、あるいはまたそうした建築費等に対しましても、寄付を強要されまして、一枚々々はぎながら、その子供のために、あるいはその周囲との交際のために、いらざる努力をしなければならないというような環境に今日置かれているような、まことに悲惨な状態でございます。あるいはまた先ほどから問題になつておりました引揚げを待たれるところの、その留守家族人たちの心境も、またわれわれは深くこれを考えさせられるのでございまして、父を待ちわびる子供であるとか、またその子をかかえる妻あるいは母の姿というものが、今日われわれの目の前に示し出されている実情でございますが、こうした苦境に追いやられておりながらも、私ども女性の中に燃えます一つの願いは、一刻も早くこの苦労を踏台として、そうして真の平和日本を築きたい、真の平和の明日を築いて行きたい。そうしてうららかな世界の平和を早く実現したいというのが、子供とともに泣きながら一つの喜びを目ざして歩んでいるところの女性の姿であると信じております。  こうした状態の中におきまして、国際民主婦人連盟は自由と平和と独立のために、また婦人の権利を真に守りますために、あるいはまた子供の明日を守つて参りますために、中国首都の北京で、アジア諸国の植民地あるいは半植民地の婦人たちを代表いたしまして、アジア婦人会議を開くことに決定いたしたのでございます。これには全世界の婦人たちが、この権利を守つてほんとうの平和を確立しおのおのの国の独立とまた団結のもとにおきまして、真の世界の平和を築き上げて参りたいという念願のもとに行われるものでございまして、この招請を受けましたわれわれといたしましては、実に心おどる感を抱いておるのでございますが、またポツダム宣言の完全なる実施によりまして、ただいまも問題になつておりました全面講和への一つの歩みも、こうした女性たちの心の和からまた道が開けて来るというような点も、見出されるのではないかとさえ考えざるを得ないのでございます。先ほど来、これからまた十分なる御審議が当委員会においてなされるということを伺い、その実現を願う一人でございますが、私どもが真に明日の日本は平和に生きたい、永世の中立に日本を進めたいと願います以上は、どうしてもこの全面講和へと日本の今後の歩みを進めて行かなければならないだろう、あるいはまた世界がそうなつていただかなければ、ほんとうの日本の中立、また各国の真の平和は維持されないという立場から考えましても、このアジア婦人会議日本の代表を送ることを、本委員会において十分に御審議をいただきまして、全面的な御支持を願いたいと、心からお願いをいたすものでございます。すでにこのアジア婦人会議に派遣をいたします私どもの代表十名も選ばれております。その経過につきましては、同じ請願紹介者であられる田島議員からこまかな経過の御報告があろうと考えますので、私はそれを省きますが、何とぞ、ほんとうは日本の明日の平和を望んでくださると信じておりますこの外務委員の各位におかれましても、どうかこの私ども日本の女性の真劍な、また心から熱望いたしておりますこの叫び声をお聞きくださいまして、十分なる御支援を與えられんことを心からお願いいたす次第であります。
  73. 田島ひで

    田島ひで君 本請願につきましては、ただいま松谷議員から詳しく趣旨の御説明がございましたので、私は詳しくは申し上げませんが、簡單に経過を御説明いたしますと、代表派遣につきましては、去る六月国際民主婦人連盟から日本の民主婦人協議会を通じまして、日本の婦人代表をアジア会議に出席させ、日本の婦人と子供とが、日本の民主化にどのように努力しているかということを報告するように要請をして参つたのでございます。全国的にこれが準備がなされて参りまして、その準備の過程には大体五百万の婦人が参加しているのでございます。労働組合、地域的な婦人組織、あるいは專門家など、広汎な婦人がこれに参加しております。いろいろな調査も進みまして、派遣する代表といたしましては、民主主義擁護同盟の羽仁説子さん初め、ただいま松谷さんの申されましたように、各団体の代表の婦人が十名選出されているのでございます。私どもはこの十名の婦人をアジア婦人会議に出席させまして、日本の婦人と子供が、日本の民主化にどのように努めているかということを報告してもらいまして、原子爆弾の禁止、全面講和締結、また日本への視察団を派遣していただきまして、世界の婦人に、日本の民主化がどういうふうになされているかということを見ていただくということをも、ぜひお願いいたしたいと思つているのでございます。長い間アジア諸国の婦人たちは、御承知のように外国の侵略主義、それから国内の買弁的な反動勢力によつて、その圧制のもとにほとんど自由もなく、平和もなく、独立もない非常に植民地的な、あるいは半植民地的な中で、特に婦人はひどい生活をして参つたのでございます。このことは詳しく申し上げる必要もないと思います。こうした世界で一番遅れた、しいたげられたアジアの婦人が、一堂に会しまして、手を握り合い、顔を合せ、そうしてお互いに語り合つて、世界の平和、ことにアジアの平和を語り合うということは、歴史的に見ましても、ある意味で画期的な会合でないか、こう申し上げることができると思います。日本の婦人は心ならずも、あの日本の軍閥政権のもとに、アジアのお隣の国々を血によつて、多くのアジア諸国民に犠牲を與えるというような、こういうような汚点を、悲しむべきことを、心ならずもさせられて参つたというのは何かと申しますと、実は国内へとじ込められておりまして、特に婦人が世界の情勢を知らず、世界から切り離されていたので、私どもはまるで世界を見ることができずに、知らずして、こういうような意に反することに参加いたしまして、今日この敗戰の悲劇を見ているのでございます。こういう点から日本を早く救うためにも、ぜひともこの機会に、日本の婦人を国際的な舞台に参加させていただきたい。なおいろいろ申し上げたい点もございますが、私は詳しいことは申し上げません。この問題につきましては、先日この団体の代表が議会を御訪問なさいましたときに、各党の代表の婦人がお会いしました。社会党の代表の、ここにおられます戸叶さんはもちろんのこと、民主自由党の中山マサ代議士も喜んで双手をあげて御賛成くださいました。私は男子の議員の方が、もちろんこれには御賛成くださることと確信いたします。アジアのみならず、全世界の婦人を喜んで代表に参加させていただきたい、このことこそが私は日本を民主化し、ほんとうに世界の平和を守り得る根本であるということを申し上げまして、どうぞこの請願に心からの御賛成あらんことをお願いいたしまして、蛇足をつけ加えます。
  74. 松谷天光光

    松谷天光光君 もう一つつけ加えさしていただきたいと思います。ただいま田島議員からも申されておりましたように、私ども衆参の全婦人議員は、これに全面的に賛成をいたしております。なおまたさきころは、この衆参の全婦人議員が結束いたしまして、司令部に行きまして、全面講和と永世中立への一つ嘆願を、本委員会委員戸叶里子代議士を中心にいたしまして、すでにいたして参りました。こういうふうな衆参の議員の空気もひとつ御了承いただきまして、何とぞ御審議をいただきたいと思います。
  75. 仲内憲治

    ○仲内委員 ただいま紹介議員の御説明を承りましたが、本請願につきましては、私どもはもつと調査研究いたしたいと思いますから、本件の審査は次会まで延期せられんことを望みます。
  76. 松谷天光光

    松谷天光光君 ただいま、なお延期して審査をしてくださるという御意見が出ておりますが、御承知のように、先ほど申し上げました通り、この会議は十二月一日から七日間の間に開かれるものでございまして、もはや議会もすでに終ろうといたしております。先に延ばして御審議をいただいておりますと、せつかくの好機を逸するようなことになりますので、この期日とひとつにらみ合せまして、御審議をいただきたいのでございます。この点いかがでございましようか。委員長の御意見を伺いたいと思います。
  77. 田島ひで

    田島ひで君 私もただいま松谷さんが言われましたように、あとに延ばして御審議いただいて、これが結果を見る問題でなく、もう日にちが目の前に迫つております。ぜひとも皆さんのここで御賛成を得たいと思います。婦人の代表をアジア会議に出すということは、單に婦人だけの問題ではございません。先ほどから問題になつておりますように、中日の関係、中国に残留しております同胞の問題、あるいは今後の貿易問題が非常に重要になつて参ります点、中日貿易の促進の面におきましても、婦人の代表をこの機会にこの会議にお送りいただくということは、非常に私は好結果になるのじやないかと思います。ぜひともこの外務委員会が、この機会に全員あげて、御賛同いただきたいということを切にお願い申し上げます。
  78. 仲内憲治

    ○仲内委員 重ねて紹介議員のご希望もありますが、この請願は、要するにこの請願を付託されたからといつて期日にすぐ間に合うというような、請願の本質からいつて筋のものでないのであります。また問題は、非常にデリケートな点もあると思うので、もし政府委員から何か言うことがあれば、それを聞いた上で採決願つたらどうかと思います。
  79. 川村松助

    ○川村政府委員 別にこれに対しまして、政府としては発言意思はありません。
  80. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは採決いたします。仲内君の動議に御異義ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認めます。本問題はさらに研究審査いたすことといたします。     —————————————
  82. 岡崎勝男

    岡崎委員長 時間も大分過ぎましたが、次に国際情勢等に関する件について発言を求められておりますからこれを許します。並木芳雄君。
  83. 並木芳雄

    並木委員 まず次官にお伺いします。先日来、吉田外務大臣が渡米するというようなことを一部に伝えられておりますが、次官として吉田総理兼外務大臣の渡米に関して、何か開いているところがあるかどうか。
  84. 川村松助

    ○川村政府委員 吉田総理の渡米につきましては、何ら聞いておりません。
  85. 並木芳雄

    並木委員 最近また講和條約後の日本の管理について、十三箇国の大使会議が設置されるかもしれないというような一部海外情報がありましたが、それにつきまして、私たちとしてぜひ参考までにお伺いしたいのですが、第一次大戰の後に、ドイツの監視に当るためにパリに設けられた大使会議、これはどういうふうな構成で、どういうふうに運営されたかということを知りたいと思います。御説明願います。
  86. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 第一次大戰後、パリに設けられました大使会議というものは、対独講和條約には明文上は関係がございませんし、またドイツ監視のために設けられたものでもございません。この大使会議について概略説明申し上げます。  ベルサイユ平和会議におきます同盟及び連合国側の最高機関は、英米仏日伊の五国首席代表からなつておりました最高会議でありました。平和会議がその事業を終了する前に、一九一九年十一月十三日の決議で、対独平和條約実施後におきます同盟及び連合国側の最高機関といたしまして、條約によつてではなくて、パリ大使会議の設置を決定しております。この大使会議は英米仏日伊の五国大使をもつて構成される予定でありましたが、米国がベルサイユ平和條約の当事国となりませんでしたために、爾余の四国の大使をもつて構成されました。しかし米国大使は問題によりまして、断続的にオブザーバーという資格で会議に参加したようであります。また一九二〇年三月以降ベルギー問題に関しましては、ベルギー代表の参加が認められました。この大使会議はパリの外務省で開かれまして、仏国の代表が議長となつておりました。  次にこの大使会議の任務と権限でありますが、この大使会議は同盟及び連合国のために、対独平和條約の解釈と実施に関する問題を、最高機関として審議決定するということが任務であります。もつとも国際連盟とか、賠償問題に関しまする賠償委員会であるとか、陸軍海軍及び航空條項の実施監督にあたります国際軍事監督委員会、これは三つにわかれております。陸軍監督委員会、海軍監督委員会、空軍監督委員会、こういうような平和條約で認められました委員会に付託されます事項につきましては、それぞれの機関が権限を持つておりまして、大使会議の権限からはむろん除外されております。大使会議はまたその任務遂行にあたりましては、連合国軍事委員会や、今申しました国境確定とか、領土問題とか、鉄道、財政など、各分野におきます專門委員会の協力や助言を求めることができるような仕組みになつております。  この大使会議の実績を申し上げますと、この大使会議は一九二〇年一月二十九日に第一回会議を開きましてから、一九三一年三月三十一日に至るまでの十一箇年に合計三百二十七回の会合を開催いたしまして、二千九百五十七個の決議を採択いたしまして、対独平和條約の解釈や実施に関連する諸種の問題について、連合国側の最高の決定をしております。以上であります。
  87. 並木芳雄

    並木委員 国際連合関係でちよつとお伺いしたいのです。その一つは国際連合の警備隊というものが創設されたというようなことを聞いておるのですが、この国際連合の警備隊の構成とか、目的とか、任務、そういうものについてお願いいたします。  それからもう一点は、国際連合の中の社会事業計画として日本関係するものがございます。たとえば奨学資金の問題だとか、あるいは技術顧問の派遣をするとか、不具者に対する医療器材の提供といつたようなもの、それからまた一九五一年すなわちさ来年からは講習会を開くというような計画があるといわれておるのですが、その講習会はどういうような講習会で、その計画などはどんなふうに進捗をされておるか、そういう点についてお尋ねいたします。
  88. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 私から第一点の最近の新聞報道にありました国際連合警備隊の創設につきまして御答弁申し上げます。最近設置を報道されました国際連合の警備隊と申しますのは、国際連合憲章の四十二、四十三、四十五條に規定してありますいわゆる紛争の強制的解決のための武装軍隊、この武装軍隊は陸海空三軍からなりまして、軍艦とか航空機その他の銃兵器を持つものと予定されておりますが、それとはまつたく違つたものでありまして、国連諸機関の警備保護、国連関係の人命、財産の保護、交通通信の維持確保、国連の命じた停戰とか休戰の維持、人民投票の実施、会合の秩序維持などをおもな任務といたしまして、いわば警察官の役目を果すものであります。その人員は三百名でございます。別に二千名の予備員の名簿を保有して、必要に応じまして送派できることになつております。その装備はピストルに限られております。冒頭に申し上げました国際連合憲章に、国際連合軍事参謀委員会のもとに、安全保障理事会が設置すべきことになつております世に言う国連軍隊というようなものはまだでき上つておりません。この警備隊の設置につきましては、リー国際連合事務総長が昨年提案されまして、それに基きまして今年の四月、十四箇国からなります一つの特別委員会を設けまして準備させました結果、今度の総会で本ぎまりとなつた次第であります。総会は特別政治委員会をしてこの問題を審議させまして、先月の二十七日、同委員会を通過した警備隊設置案が、今月の二十三日の総会本会議で可決されたことを新聞は報じております。その際ソ連及び東欧諸国は、この国際連合警備隊というものは、国際連合憲章にあります国連軍隊を偽装したもので、従つてこの決定は安全保障理事会を無視するものであり、この警備際はアメリカの一部の人の手先に用いられるものであるというような趣旨から反対していたようであります。以上であります。
  89. 川村松助

    ○川村政府委員 国連の社会事業の計画につきましては、ただいま並木委員が言われた通りでありまして、その他のことについては、まだ当局として聞いておりません。もし多少つけ加えて申し上げますれば、今の兒童福祉の問題でありますが、これに対しましてははつきり計画を持つておるようであります。それから奨学資金を受ける学生に対しましては、二十名を限度としましてパルサル博士が試験して決定するということになつております。そのほかのことは別にわかつておりません。
  90. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点だけお伺いしますが、昨日参議院でしたか、吉田総理兼外務大臣より、第二次大戰後の講和條約の後に駐兵が行われた例があるというような答弁があつたのであります。御参考までに聞くのですが、第一次大戰後に実際にどういうふうな駐兵が行われたか、その点についてご説明願いたい。
  91. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 即座に記憶をたどつて申しますので、あるいは正確を期しがたいと思いますが、一応御答弁申し上げます。  第一次大戰後の対独平和條約におきましては、保障という一章がございます。その保障の篇をごらんになりますと、おわかりになりますように、ドイツによる平和條約義務履行の保障としまして、十五箇年間連合国はラインランドを軍隊をもつて占領いたしました。その條項によりますと、ドイツの義務履行の程度に応じまして、その十五年間に段階的に撤兵することとなつております。それからもう一つ、同じく保障の篇におきまして、ドイツが賠償上の義務を全都または一部履行を懈怠した場合には、連合国は何どきにおいてもこのラインランドに兵を入れることができる。そのラインランドを占領することは、十五箇年の期間経過後といえどもそうであるという規定になつております。そうして事実ドイツによる賠償履行の懈怠が行われましたときに、ポアンカレー内閣のときにフランスがラインランドに兵を入れたことは、皆さん御承知通りであります。なおこのベルサイユ條約によりますと、十五箇年のラインランドの占領というものは、十五箇年の期限終了前、フランスのブリアン外相、ドイツのストレーゼマン外相によつて遂行されました独仏提携政策の結果、十五箇年の終了を待たずして連合軍は撤退することになつた、これまた皆様御承知通りであります。
  92. 竹尾弌

    ○竹尾委員 議事進行につきまして……。時間も大分経過いたしましたから、きようはこれにて散会されんことを望みます。
  93. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいま、もう時間の関係もあると言われましたが、通告の順序は戸叶里子君になつておりますから、ひとつ簡單にお願いします。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 簡單にお尋ねします。先ほども全面講和に対する請願が延期されましたので、この際一応私の希望言つておきたいと思うのですが、大体講和條約というものは連合国の意思によつて決定されるものでしようけれども、しかし日本国民の意思が全然無視されることはなかろうと思うのです。それで考えられますことは、ポツダム宣言の趣旨と、それを母体としてできた日本国憲法の精神によつての講和というものが結ばれなければならない。それが大体講和條約の常道であろうと思うのです。そうした観点から見るならば、全面講和が望ましいものでありますし、外国の駐兵を許したり、あるいはまた軍事的基地を提供するということは、この講和の原則に反するものではないか、私はこんなふうに考えられるのです。そこで先ほど並木さんもおつしやいましたが、吉田総理が、條約の実施状況を見るために駐兵もあり得るということをおつしやいました。これはなるほどとうなずけることなんですが、そしてまた今御説明がありましたので、よくわかつたのでありますけれども、私ここに思い出しますのは、全然これと違うかもしれませんが、一九三二年に日満議定書というものが締結されて、満洲の独立後に日本の軍隊を満洲にやつて、そうして満洲の安全を保障するという立場で駐兵せしめた例があつたと思います。そのときに日本は諸外国の輿論から非常にたたかれて、そうして孤立化して、遂に国際連盟を脱退しなければならないというようなはめに追い込まれたことがあつたと思うのです。これともちろん違いますけれども、しかしこういうふうな軍隊が駐兵するということになりますと、あるいはある国とはよく行くかもしれませんけれども、他の国との間の対立の激化は免れない。そこで新憲法の精神とも反するものであろうと思います。そうした観点に立つてお考えになつたときに、政府はどういうふうにお考えになるかということと、もう一つは、單独講和になつても、そういうことは心配ないというふうにお考えになるかどうかというようなことを、伺つておきたいと思います。
  95. 川村松助

    ○川村政府委員 日本国民の意思を無視されまいというお話でありますが、私どももそう思つておりますが、それ以上につきましては、ただいまどうこうということを差控えたいと思います。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 どうこうということは差控えられますけれども、もしそういうふうな場合には、非常に日本の憲法の精神に反するような状態に置かれはしないかどうかということ、そのお考えのほどを伺いたいと思います。
  97. 川村松助

    ○川村政府委員 そうしたことは、具体的にぶつつかつたときでなければ、御答弁しがたいと思います。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうな御答弁でなくて、そういう観点から見ても、やはり全面講和が望ましいというような信念はお持ちになれないでしようか。
  99. 川村松助

    ○川村政府委員 全面講和はもちろん望んでおります。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの問題はこのくらいにしまして、安本の方から多分おいでになつたと思いますから、外資導入のことでちよつと伺いたいと思います。
  101. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ちよつと戸叶さん御相談しますが、今時間で約束して菊池さんが待つておられるのですが、ちよつと先に質問させて、そのあとでいかがですか。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 それじや……。
  103. 菊池義郎

    菊池委員 日本の商船隊のことでございますが、今度米、英、仏の西欧諸国は、西ドイツに対しまして、二十四日に遠洋商船隊の建造を許しております。日本も戰前の五百六十万トンから今日の百六十万トンに激減しておりますので、当然司令部に対しまして、何か要請しておらなければならぬはずだろうと思うのでありますが、これはただいまどういうふうになつておりますか、これをお伺いいたしたい。同時に日本商船隊の外国航路就航につきましても、当然に要請しておらなければならぬはずでありますが、これがどうなつておりますか、お伺いしたいと思います。
  104. 山本米治

    ○山本(米)政府委員 商船隊の建造に関しましては、日本は非常に熱烈な希望を持つておりまして、先般来始終司令部に懇請しております。そうして今年度計画たしか三十万トンぐらいということで進んでおりますし、これに関連いたしまして、見返資金からこの造船資金を出してもらいたいということで、そういう計画になつております。船の方へも相当見返資金が行くことになつております。また来年度も大体三十万トン程度の外洋就航船舶を建造するというような案もあるようであります。なお最近司令部との会見におきまして、マーカツト少将の方から、ひとつA型の戰時標準型の船を改造してはどうか、この方が手取り早いのではないかという話がありまして、四十隻のうち二十九隻を改造することになつておりまして、これに対しても見返資金が出ることになつております。二十九隻というのは、各会社から申出をさせた結果、四十隻のうち二十九隻となつているのでありますが、これによりますと、大体一隻が二億円ぐらいで改造ができるという話であります。
  105. 菊池義郎

    菊池委員 向うからの通信によりますと、すなわち日本の新聞に発表されたところによりますと、日本政府が四百万トンの商船保有を司令部に懇請しておるということでありますが、これはどうでございますか。
  106. 山本米治

    ○山本(米)政府委員 私はその点について存じません。
  107. 菊池義郎

    菊池委員 それからもう一つお伺いしたいのでありますが、今回日本政府から、パキスタンや米国に対しまして、通商官を派遣するということが伝えられております。新聞の報道によりますと、その下馬評に上つておりますところのメンバーは、いずれもみな官界の人々ばかりである。それではまことに心細いのでありまして、どうしても通商貿易の実情に通じた相当に経験のある人、それからまた外国におりましてその外国の世態、人情、国情に通じておる民間の人々からも、ぜひ選んでもらいたいと思うのでありますが、これにつきまして政府側の御意向をお伺いしたい。
  108. 山本米治

    ○山本(米)政府委員 この点は、参議院の外国貿易及び外国為替管理法案の審議におきまして、やはり同じ質問がありまして、これに対して通産大臣のお答えがありましたが、その御希望はごもつともであり、今後十分考慮して行くというお答えでありました。そのことをちよつと……。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 外資の導入は日本産業復興にとつて、大切であることはわかつているのですけれども、その受入れ態勢が大切であろうと思います。その外資の導入にあたつて政府としての受入れ態勢を、どんなふうにしてとつていらつしやるかということがまず一つ。  それから聞くところによりますと、タバコ民営の名のもとに外資を入れようとしている、これに対して全国的にタバコ耕作者が非常に圧迫されるものであるという反対運動が起きておりますが、それでもなおそういう話があつた場合に、タバコに対しての外資導入をなさるかどうかということと、それから米トラストのような形の外国資本家との間に、すでにこのタバコ民営のことに対しての確約があつたということも伝えられておりますが、はたしてそういうことがあつたかどうか、この際はつきり伺つておきたいと思います。
  110. 山本米治

    ○山本(米)政府委員 第二点及び第三点は大蔵省の所管に属しますので、その方から答弁していただくことにしまして、第一点だけにつきまして私より申し上げたいと思います。  まず簡單に今までの状況を一口に御説明しますと、この外資導入に関しましては、この春外資委員会というものが設置されておるのでありますが、それが十月末日までに扱いました案件が二百二十九件であります。それからその金額は五億六千万ほどになつておるのであります。ごく簡単に申し上げますと、その内訳は株式が四億二千五百万、それから不動産が一億三千六百万、こんなになつております。全般的に申しまして外資導入は、芦田内閣時代以来非常にやかましく言われておりますが、まだ今日までのところは、ほとんどこれというものがないのであります。これには御承知通り、いろいろ現在の日本経済と関連いたしましたむずかしい問題があるのでありますが、資本というものは安全性と有利性がなければ必ず来ないのであります。非常に臆病な性質を持つておるのでありますが、今日の日本の経済に対して、アメリカの事業家あるいは資本家が投資するかどうかという場合に、第一に問題になるのが、日本の経済の今日の状態がどうであるかということでありますが、この点に関しましては、日本の経済は終臓後ついこの間まで、インフレヨシヨンが上昇の一途をたどつて来た、非常に経済の基盤が弱くかつ浮動しておる、不安定である。こういうところには外資が来ないというのが、これは経済上の原則であります。なおこまかいことを申しますと、いろいろな障害がありますが、第一点は税金が高過ぎるというような問題があります。この点に関しましては、先般シヤウプ博士が来られまして、非常にいろいろなアドバイスをして行かれました。これに従つて政府はやつておりますので、今後徐々に改善されて行くものとは思いますが、なお全般的に見まして、日本の税金は非常に高い、こういうことでは外国資本はせつかく入つて参りましても、日本政府に税金としてとられてしまうということで、なかなか入らないのであります。なお貿易上独占禁止法その他いろいろな外資の日本誘導に対しまして、障害になるような法律がたくさん存在しております。こういうものももちろんいわれがあつてできておるのでありますが、これを徐々に解いて行かなければ、なかなか外資は来ない。また外国資本が入ります場合には、必ずその利子利潤の本国送金ということに対して、非常なインタレストを持つわけでありますが、その点におきまして、今日まだ日本には為替管理法というものが確立されていない。今たまたまこの臨時国会に外国貿易及び外国為替管理法ができておりますけれども、まだ日本に投資して、どれだけの利子利潤を外貨でもつて返してもらえるかということが、きまつていないのでありまして、これが返してもらえない。外貨で返らないということになりますれば、せつかく日本に投資しましても、その利子利潤を円で積んでおかなければ1円でもつて日本の中に置いておかなければならぬ、つまりブロックされるわけでありまして、それでは外国資本として入ることを躊躇するのは当然であります。こういう点も今後改善して行かなければならぬ大きな要素でありまして、今度の為替管理法におきましても、外国投資の利子利潤に対しては、最優先的に考えるという趣旨を持つておるはずであります。それでまたアメリカ方面におきましても、これに関してはいろいろな問題があるのであります。トルーマン大統領が欧州開発の方針を、世界に宣明したことは御承知通りでありますが、これによつてアメリカ政府は、終戰後ずつと政府のクレジットという形で、諸外国を援助しておるのでありますが、これは通常の状態ではない、どうしても民間の資本をもつて、世界の再建復興に乗り出すのが本格的でありますが、これが今までできなかつたのであります。そこで今後アメリカ政府としては、いつまでもアメリカ国民の税金によつて、外国を援助するということはまずいから、これを民間資本に切りかえようと非常に努力しておりまして、この春あたりも、たしかソープという人を委員長といたしまして、この方の法律その他を審議しておるようであります。アメリカ側で外国に投資した場合、その投資の元本がとれなかつた場合、あるいは利子利潤の送金を受けられなかつた場合に、アメリカ政府がドルで補償してくれるかどうか。あるいは二重課税の問題があります。外国で税金を一ぺんとられて、またアメリカで税金をとられる、こういうような点が種々問題になつておりますが、まだアメリカ側としての対外投資態勢も整つておらないようであります。日本側が先ほど申しましたような状態であり、アメリカもまた民間投資にほんとうに切りかわるまでに行つておらないのでありますので、外資導入は残念ながらこちらの期待通りに今日まだなつておりません。また目先ただちに非常に有望だとは見えないのでありますが、これは河よりも日本経済の安定が大事でありまして、日本経済がしつかりしたものになれば、もうさしてこちらから招かずとも、外国資本は来るものと思つております。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 それではあとの方の問題は、御答弁していただく方がいらつしやらないのでしたら、この次の機会にいたします。
  112. 玉井祐吉

    ○玉井委員 時間もありませんので簡單にお伺いしたいと思いますが、日英通商協定によつて、先般来の取引後生じておつたところの例の輸出超過の分千九百五十万ポンドがあるわけですが、それの処理を今後どういうふうにして行かれるのか、その点を承つておきたいと思います。
  113. 日向精藏

    ○日向説明員 お答えいたします。六月末に約一千六百万ポンドばかり日本が出超になつておるのでありますが、これは一千万ポンドのキヤツシユとそれから約六百万ポンドの契約の残、日本の出超の契約があるわけなのであります。そしてこれを支拂い状況によりますとドルにかえることになつておるのでありますが、ドルにかえるということは、日英貿易をかえつて阻害するという観点に立ちまして、この一千万ポンドだけは輸入運転資金として日本側の手持ちで絶えず持つてつて、たとえば綿花を買うとかあるいは羊毛を買うとか、そういつた大屋の季節的な買付に不自由なく使えるように、運転資金として確保しておく。そのほかに輸出契約残の約六百万ポンド、これを新しい協定で、将来契約残として出て来るかもしれないという九百五十万ポンドの大きなわくをつくつておきまして、そのわくの中で新しい年度の輸出の中に織り込んで行く。従いまして九百五十万ポンドはキャッシュで日本の手持ちになるわけではありません。新しい輸出契約の中に織り込んで行きまして、次年度つまり新しい年度の輸入契約もまた今どんどんできておりますから、それと相殺して行くわけでありまして、キヤツシユとしては大して残らない予定でおります。
  114. 玉井祐吉

    ○玉井委員 そうすると一億四千万ポンドの中に、九百五十万ポンドを一応計算としては入れておいて、それだけの輸出入の増額になるのですか。輸出入の増額という面から見ると、九百五十万ポンドだけ増加する、こういうふうに考えていいわけですか。
  115. 日向精藏

    ○日向説明員 新しい輸出入の計画は、輸入が五千五百万ポンドなのであります。そして日本の輸出が新しい輸出契約で四千五百五十万ポンドなのです。しかし昨年度の九百五十万ポンドの契約を、新年度の輸出契約として繰越して来るわけなのです。ですから新しい契約として見て行くわけなのでありまして、契約上は何らさしつかえは生じないわけであります。
  116. 玉井祐吉

    ○玉井委員 そうするとやはり一億四千万ポンドのうちに見て行けばいいわけですね。今のお話だとそうじやないですか。
  117. 日向精藏

    ○日向説明員 一千万ポンドのキヤツシユは別わくになるわけであります。日本の輸出入の貿易から全然別わくにしまして、九百五十万ポンドだけを新しい輸出契約に入れたわけであります。
  118. 玉井祐吉

    ○玉井委員 新しい輸出契約の方に入れるとおつしやる意味は、今後やる方に入れるという意味なのですか。
  119. 日向精藏

    ○日向説明員 今後やる方に入れる意味であります。
  120. 玉井祐吉

    ○玉井委員 わかりました。
  121. 影山衞司

    ○影山説明員 先般玉井委員から、小瀧通商監に対して輸出契約に関するクレームとキャンセルに関する質問がございました。そのときに事務当局になお研究させて、後ほど答弁をさせるというお答えがございましたので、答弁させていただきます。第一点は、サプライヤーが民間貿易業者である場合の貿易庁契約をやる貿易庁の責任ということについてでございますけれども、これは非常にデリケートな問題でありますので、本件についてはなお目下鋭意検討中でございますけれども、この制度の趣旨とかその後の運営の実態とか、それから国内のサプライヤーと貿易庁との間の国内の売買契約書、それに支拂い條件が船積み後の支拂いを條件とするというふうなことが書いてありますので、今のところどうも貿易庁は單なる名義人としての、名前を貸しているだけだというふうにも考えられるのでありますが、なお研究いたしまして今後具体的な問題につきましては、非常にサプライヤーにお気の毒な点もございますので、具体的な点につきましてサプライヤーの方ともよく相談をして、具体的に解決して行きたいと考えております。  それから第二点におきまして、通商白書におけるクレームの件数が非常に少いではないかという御質問がございましたが、通商白書に記載してございますクレームの件数は、通商産業省が正式にクレームとして受付けましたものでありまして、その正式に書類として受付けましたものにつきましては、常に司令部の方とも密接な連絡をとつておりますので、司令部の方の統計とも全然齟齬はないわけなのでありますが、なおただ正式にクレームとして提議はされませんけれども、当事者同士の間におきましてクレームが起りまして、それを前では円貨のリベート、次の契約における多少の値引というふうなもので当事者間で解決をされたものが正式に提議されたもので、約六倍くらいあるだろうという司令部あたりの観測なのであります。それは單純なる推計でありますので、当時通商白書に書きますときには、その程度のことを書こうかと実は原稿には書きましたが、單純な推計のものでございますから、全然それは載せなかつたようなわけであります。御了承願います。
  122. 玉井祐吉

    ○玉井委員 最初の方のお答えなんですが、実は契約がFOB契約になつていることは確かにそうであります。ところが私はこういうふうに考えております。FOB契約として積み込むまでの間に瑕疵のあつた場合には、それはサプライヤーの責任だと思います。ところが積み込むこと自体についての障害は、もはやFOB契約でいつでも積めるようになつているにかかわらず、船が来ないという場合には、船舶会社の方の責任でしようが、さらにそれからそこに至るまでの契約上の瑕疵の問題があれば、私はやはり現在の通産省の方の責任になる、こういうことを考える。つまり善意無過失の面がどこにあるかという問題であつて、FOB契約だということが書いてあるから、とにかく積んでしまわないうちはだめだといつて積込みに一生懸命——妨害しないでしようが、かりに妨害する場合があつた場合、積めないからしようがないというようなことになれば、とんでもないことになるのではないか。そこまでの関係において、どちらに瑕疵があつたという観点に立つて解釈すべきではないかと思います。私の方の考えでは、どうもやはり通産省の方にある程度責任を持つていただかなければならない面が、相当に出て来るのではないか、サプライヤーの方に相当手落ちがあれば格別ですが、そうなつていない場合が多いのですから、特にその点をもう少し御研究願いたいと思います。  もう一つただいまのクレームの数なのですが、この数字はそう言つては失礼ですが、私非常に自信を持つている数字なのです。今年五月十一日付の本会議の記録の官報を見ていただきますと、何の件で、河ドルのクレームというように、全部條項をあげてここで御説明申し上げたことがありますが、特に私お尋ねしたいのは、通産省に出た書類がGHQの方にまわつて行くのでございましよう。そうするとGHQの方で押えた数字は通産省を通つているはずでございますね。はつきり言いますと、私は向うで押えているのです。だから通産省を通過していないということは言えないのだ。推定されるところでは、個人的な解決をしてしまつたものはおよそ六倍くらいあるだろうとおつしやるのは、私も大体それくらいあるだろうと思います。しかし私のつかんだ数字はそうではなくて、正式にクレームとして向うに入つてつたものの数字だけをとらえてあるわけなのでありまして、繰返しますと、五月十日現在で総計六百四十一件、そのうち解決したものが百四十四件、ペンデイングになつているもの、懸案中のものが四百九十七件のはずであります。それが二百九十九と、かれこれ約二百に近い数字が足りないじやないかということを申し上げているのですが、この点ひとつお調べいただけば、大体間違いないところがおわかりと思います。  それから時間がありませんので、もう一点だけ簡單にお伺いしたいのですが、この日英通商協定の中に貿易外收支約千五百五十万ポンドという数字が出ているのですが、これが先ほどお話になつたところの輸出超過の帳じりと、実は数字がぴつたりと言えば何ですが、非常に近いのです。その方に関係があるのですか。それとも貿易外收支、これだけの面が独立しているとすれば、どういうようなものが貿易外收支になつているかということをお伺いしたい。
  123. 日向精藏

    ○日向説明員 先ほどの数字、既契約の繰越分は九百五十万ポンドであります。そうして新規輸出の契約見込みで四千五百万ポンドありまして、そのほかに協定国でなくて支拂協定に参加しているビルマ、パキスタン、イラン、イラク、その非協定国に対する割当が約一千四百万ポンドばかりあります。その差額が貿易外收支で約三百万ポンド、日本の輸出とそれから輸入が三百万ポンド、相互に相殺するようにバランスされているわけであります。貿易外收支は別になつているわけであります。
  124. 岡崎勝男

    岡崎委員長 今の数字はこまかいことでありますから、書面で玉井さんに出していただきたいと思います。
  125. 玉井祐吉

    岡崎委員長 今の数字はこまかいことでありますから、書面で玉井さんに出していただきたいと思います。
  126. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは時間も大分経過しましたので、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時五十四分散会