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1949-11-21 第6回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十一日(月曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 竹尾  弌君 理事 仲内 憲治君    理事 戸叶 里子君 理事 並木 芳雄君    理事 野坂 參三君 理事 犬養  健君       中山 マサ君    玉井 祐吉君       北  二郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君  出席政府委員         賠償政務次官  橘  直治君         賠償庁次長   島津 久太君         (政務局長)         外務事務官   大野 勝巳君         (條約局長)         外務事務官   西村 熊雄君         (管理局長)         外務事務官   倭島 英二君  委員外出席者         議     員 河原伊三郎君         総理府事務官  勝野 康介君         外務事務官   小田部謙一君         通商産業省通商         監       小滝  彬君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 十一月十九日  元小笠原住民の帰島促進に関する請願菊池義  郎君外一名紹介)(第九二〇号)  北鮮残留者引揚促進の請願船田享二紹介)  (第九七四号)  在外胞引揚促進請願小川原政信紹介)  (第一〇三八号)  対日講和に関する請願加藤充君外四名紹介)  (第一〇五四号)  同(戸叶里子君外二名紹介)(第一〇五五号)  同(春日正一君外四名紹介)(第一一八八号)  アジア婦人会議代表派遣請願松谷天光光  君紹介)(第一〇九八号)  同(田島ひで君外二名紹介)(第一一三九号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件  賠償問題等に関する件   請 願  一 在外胞引揚促進請願河原伊三郎君紹    介)(第一五二号)  二 在外胞引揚促進請願鈴木善幸君紹    介)(第五四四号)   陳情書  一 在外胞引揚促進に関する陳情書外十八件    (第一九号)     ―――――――――――――
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  賠償問題等に関する件を議題といたします。仲内委員より発言を求められておりますので、これを許します。仲内委員
  3. 仲内憲治

    仲内委員 わが外務委員会は、わが国外交政策樹立のための基本的な研究として、第一国会以来本第六国会に至るまで、各国会ごとに、国政調査として国際経済に関する総合調査講和会議に関連する諸問題の二項目につき、継続的に審査を続けて来ておるのであります。わが国現下の政治的、経済的情勢にかんがみまして、講和会議に関連する諸問題の研究調査の一環として、わが国賠償問題の調査研究に特に注意を向けることとなり、第五国会昭和二十四年五月十一日の委員会において、第五国会後の閉会中の期間において、わが国賠償問題に関する審査を継続し、この資料を収集するために、各地の賠償指定工場視察を行うべき旨を決議し、議長承認を得たのであります。わが外務委員会の期するところは、賠償指定されたわが国代表的工場視察して、わが国産業水準賠償問題がいかに関連し、またわが国国民経済生活水準国民経済的利害賠償問題にいかに密接に関係するかを見て、わが国策の樹立に資せんとするにあつたのであります。それでわが委員会では派遣委員を第一班、第二班にわかち、第一班は近畿、中国、九州地区、第二班は東北北海道地区を担当したことは、諸君のすでに御承知通りであります。私はここに第一班派遣委員岡崎菊池、佐々木、戸叶、仲内、五名を代表して、第一班の視察概要を御報告し、議長に提出される予定になつている国政調査報告の補足をいたしたいと思います。視察の詳細な内容数字等は別に記録としてありますので、ここではほんの概要を述べて、政府当局に若干の点につきただしたいと思います。  私ども第一班はまず舞鶴に行き、旧日本海軍工廠舞鶴造船所視察したのであります。同所飯野産業株式会社保全管理下にあるものでありまして、目下その転用許可を受けた同社が、民間造船所として旧工廠本廠地区使用し、船舶修理、救難、解撤掃海具製造廃兵器熔解及び鉄道車両造修等目的として発足したのであります。しこうして同造船所戦災をまつたくこうむつていないのであります。舞鶴市長の言によつてみましても、同造船所の所長は、舞鶴人口経済生活に対して、重要な影響を及ぼすものであることを理解することができたのであります。なお舞鶴では外務委員会と深い関係がある引揚げ施設視察いたしたことを二言申し添えておきます。  ついで京都の株式会社島津製作所視察いたしたのであります。同所理化学及び精密器具レントゲン装置人絹ノズル炭鉱用機械及び電気計測器工業計器などの生産にあたつておるのでありまして、六月には月産一億二千万円程度であります。賠償撤去中止が本ぎまりとなれば、一部老朽品のとりかえをはかるほか、化学繊維機械理化学レントゲン機械積極的増産を計画しており、当社わが国精密機械生産工業の優秀な会社一つということができるようであります。  次に大阪における株式会社中山製鋼所船町工場視察いたしました。当製鋼所は、昭和二十一年十月大阪軍政部より操業許可され、電気炉工場線材工場中型工場操業を始め現在に至つておるのであります。熔鉱炉が稼働すれば一基千二、三百人の従業員を必要とするということでありました。  次に神戸川崎重工業株式会社艦船工場視察いたしました。当社事業内容は、各種船舶新造並びに修理船用諸機関並びに機械類造修各種産業機械造修車両用電気部品造修船用並びに帆用電気機器造修、鉄骨、橋梁その他の鉄構工事等であります。当社は戦時中より営繕用資材の配給が僅少であつたため、屋根窓ガラス等腐敗、破損はなはだしく、機械設備保全相当困難の状態でありましたが、最近では改善されて来たということであります。  次に神戸三菱重工業株式会社神戸造船所であります。当社におきましては、昭和二十一年三月再建生産計画樹立して、在来の船舶造修陸船用機補機のほかに、新たに食料加工機農工機械製塩装置タバコ機械その他一般民需機械製作修理に進出しておるのであります。  次に旧呉海軍工廠。旧呉海軍工廠及び十一空廠では、施設の諸機械目下管理工場において保全あるいは一時使用に供されておりますが、この大部分は終戦後いち早く進出した播磨造船呉ドック尼崎製鉄呉作業所水野造船所等管理の任に当つておるのであります。この工場賠償指定解除の及ぼす影響につきましては、旧呉海軍施設に対する賠償指定解除決定し、諸施設が他に搬出されることになりますれば、旧施設を現に管理している諸工場は、その操業を中絶しなければならず、遂には経営の閉鎖もやむなきに至り、従つて施設機械の一部を管理する中堅層の諸経営壊滅的打撃をこうむることになるでありましよう。  呉市における工業関係従業者は二万三千四百九十八名で、このうち賠償機械の一時使用により稼働経営しておる工場に従事する者は約八千名を算し、その三割三分を占めておるのであります。なおその家族数は約三万五千名であつて、これは呉市総人口十八万八千の一割七分を占めております。  次に旧岩国陸軍燃料廠。旧岩国陸軍燃料廠にて利用価値のあるおもなる装置は、原油精製装置変性装置附帯装置等でありますが、返還利用地及び賠償地域を含めて約二十五万坪に対し、以前より具体的転用方法研究されておりましたが、今回アメリカ賠償取立中止声明によりまして、急速度に進展しつつあるのであります。各社ともこの成行きを注視し、一時使用可能とならば、ただちに建設に乗り出さんとする意気込みであります。その会社名前等をあげて見ますれば、日本紙業株式会社大豊化成株式会社興亜石油株式会社東京物産株式会社等であります。  次に九州三菱化成工業株式会社黒崎工場視察いたしました。福岡県において連合軍から賠償工場として指定を受けた人造ゴム工場は三箇所であります。福岡県における化学部門設備機械六千基が賠償指定物件となつております。このうち二千四十基が占領軍許可を得て使用され、生産復興に寄與しておるのであります。三菱化成黒崎工場はこの稼働工場一つであります。  次に日本製鉄株式会社八幡製鉄所であります。日本製鉄八幡製鉄所は、昭和二十一年八月二十四日に賠償指定工場となつておりますが、これも物件指定ではなく、能力指定となつております。  以上をもつて簡単ながら第一班の視察旅行の御報告を終ります。  これに関連いたしましてこの際政府に二、三お尋ねいたしたいと存じます。  その第一は舞鶴海軍工廠造船設備はまつた戦災をこうむることなく、完全な状態にあるのでありまして、目下飯野産業株式会社管理下にあり、船舶修理その他に稼働しているのみであります。現下日本状態として、かような比較的完全な造船設備施設をフルに運転するならば、わが国産業にとつても、労働の雇用にとつても、有利と思うが、かつて軍工廠であつたゆえにその制限解除することについて、政府は努力するの意思ありやいなや。またいかにせば制限解除して、かような設備をフルに運転し得るのであるか。  第二はわが国の地勢上、毎年季節的台風に襲われるところにおきましては、それによつて受くる被害は大きく、賠償指定工場におきましても、屋根その他に被害を受け、保管施設設備被害を與えるがごとき状態に立ち至つているものがあると思われるが、これに対して政府経費を支出するの意思があるか、また現在はいかにしておるか。  第三には保管基準引下げと並行して、本年度予算における賠償施設管理費二十三億二千二百万円のうちから、約十億円を削減して、別途転用されたということであるが、これはどういうことになつておるか。  第四は、マツコイ声明以来、賠償指定工場施設手入れ基準が引下げられたということであるが、一方転換許可については、政府はいかなる程度まで促進することができたか。  第五点は、賠償指定機械施設賠償施設であるがために存する諸制限があるのであるが、管理保全支障なき限り、稼働移動処分等につき、その緩和政府は懇請しておると思うが、どの程度までその目的を達しておるか。  第六は、在外資産賠償との関係はどうなつておるか。  最後に第七、旧軍工廠賠償指定施設を利用する民間企業人入社に対しては、いかなる條件でこれを使用せしめているのか。たとえば無償で使用せしめているのか、使用料をとるとせば、その使用料はいかなる標準で計算されているのであるか、またその場合の保全管理費はどうなつておるのか。以上お尋ねするところであります。
  4. 橘直治

    橘政府委員 仲内委員の御質問お答えする以前に、本年夏休会中を利用していただきまして、非常な御多端な折にもかかわりませず、わが国賠償施設関係に関しまして御視察を願いまして、いろいろと今後わが国賠償問題解決に対しまして、外務委員会としての御協力をいただきましたことを、心から感謝いたしておる次第であります。  さて御質問の第一点の舞鶴海軍工廠転用の問題でありますが、これは御説の通り、現在飯野産業株式会社転用いたしております。特にこの舞鶴工廠転用の結果といたしまして著しく効果のありましたことは、連合国返還船舶修理に非常な功績があつたということなのもあります。舞鶴工廠は主として返還船修理に今日まで働いて参つたのでありますが、引揚船もおいおいと少くなりました今日といたしまして、お話の通り一面舞鶴市民生の大きな問題をも包蔵いたしまして、本件に関しましては、賠償庁としても深甚の注意を拂つておるようなありさまであります。ただ御説の通り、少くとも戦災を受けておらず、優秀な造船、造機の施設を持つておりまする舞鶴海軍工廠をフルに活用いたしたいと考えまして、賠償庁といたしましても関係方面折衝を重ねております。おりますが、現在の段階におきましては、新造修理いずれの面におきましても、民間工場相当の余力がありまする結果といたしまして、かつて軍工廠におきます作業開始に対しましては、いまだ全面的の了解はいただいてはおりません。かつまた旧海軍工廠賠償解除とかなんとかいうふうな関係は、これは対日賠償問題の根本に触れております問題でありまして、今日いまだわれわれの期待しておりますほど、迅速に事態が進んでおらないことを遺憾に存じておるような次第であります。しかしこれらの諸点に関しましては、賠償庁といたしましても極力御説のごとく、最も能率のよい施設を最も有効に活用して行くのが、日本経済回復の早道でもあり、かつまた経費を節約するゆえんでもある、こういうふうな理由で極力折衝を続けておるような次第であります。この点に関しまして、どうか本委員会の絶大な御支援のほどをお願い申し上げたいと考えておるような次第であります。  第二点の台風被害工場に関する復旧費の問題でありますが、本件は十月二十一日付の総司令部のCPCの覚書によつて賠償工場台風等によつて被害をこうむりましたような場合、すなわち緊急の場合は、日本側地方官庁民事部の指令を待たずに、これが復旧経費見積り額樹立いたしまして、民事部承認を受けて、しかる後中央官庁へ支拂い予算の要求をいたす、こういうふうなかつこうに相なつております。賠償庁は総司令部に対しまして右の申請の承認を得たる後に、大蔵省承認された金額の範囲内で経費の支出の手続をとつておるような次第であります。本年に入りましてからの復旧費は、総司令部承認を得たものは現在十数件に相なつております。これは全部出そろつておりません関係上十数件でありまして、大体の金額の見当は約五、六百万円と相なつて行くかと考えております。  第三点の保全管理費用の節減の十億円をどのように転用したかという御質問でありますが、これは大体賠償施設撤去費用の方へ転用いたしておるような次第であります。  それと最後に御質問のありました日本在外資産賠償関係の御質問でありますが、在外資産処理に関しましては、外務省と大蔵省が取扱うことになつております。賠償庁といたしましてはやはり賠償との密接な関係がある必要上、その推移に十分注意を拂い、かつまた研究もいたしております。わが国在外資産処理に関しましては、昭和二十年九月の降伏後における米国の初期対日方針によつて連合国決定によりまする処分にゆだねられております。そういうふうに定められておりまして、昭和二十二年の七月極東委員会決定いたしました対日基本方針において、その賠償條項在外資産に関する各国政府の見解を制約をしないことに規定をいたされておるのであります。しかしその取扱いについては、いまだ極東委員会の意見が完全に一致をいたしたということは聞いておりません。しかし本件に関しますイタリア先例を見てみますと、イタリア平和條約におきましては、連合国にあるイタリア資産は、單純に賠償として取立てられるのではなくして、戦争に基きまして所在国が有しまする資産及び債権の取立てに充当されております。もし在外資産のそういつたような取立て等をいたしまして、なお残余がありますれば返還をいたされるということに相なつております。その後イタリアアメリカと締結をいたしました協定によりましては、大体返還をいたされておる、こういう先例があるのであります。わが国の場合はやはり同様でありまして、平和條約によつて最終決定を見て行くであろう、かように考えておるわけであります。残余の御質問に対しましては事務当局からお答えをいたさせます。
  5. 島津久太

    島津政府委員 御質問の第四点のマツコイ声明以来、保守手入れ転換許可程度促進状況いかんという点につきましてお答えを申し上げます。マツコイ声明が発表されました以後、割当通知が出されました撤去施設以外のものは、大体今後の産業再建のため活用されるという方針のもとに、従来の管理保全程度が再検討されまして、保守手入れ基準を総司令部から指示せられましたので、七月以来その線に沿いまして取扱いを実行しております。第一は休止しております指定施設保守手入れは、過去三年間十分にいたしまして、その間相当経費資材使用されておりますので、今後は現状を維持するだけでよい、従来のごとく定期的な大手入れというようなものは廃止されたのであります。但し事故などによつて特に再手入れの必要があるというような場合には、民事部から指示がその都度出されるということになつております。第二点は稼働しておる施設は、その使用者が常に良好な状態を保持するために限り手入れをする必要があるのであります。これは普通は毎日機械使つたあと二十分間手入れをするということになつておりますが、これは従来の取扱いと大差がないのであります。目下のところ、以上のような取扱い支障なく行われておりまして、経費資材、労力が大分節約されております。  以上が第四点の御質問でございますが、第五点の賠償工場制限がどのように解除されておるか。その稼働ないしは移動について、どういうふうにかわつて来ておるかという御質問でございますが、転換につきましては、五月中旬以来、申請しました件数が六十四件でございます。そのうち四十四件はすでに許可されておりまして、残りのものも近く引続いて許可される予定であります。大体生産転換許可は従前よりもはるかにすみやかに、かつ多数行われておる状況であります。但し特殊な立場にあるものもあるのであります。先般御質問がございました広畑の工場のようなものは、賠償の面からの許可の遅延ということよりは、むしろそのほかの一般産業生産面の問題で、多少遅延しておるというような関係があるのであります。そういうような関係で、生産転換許可が遅れておりますものが二、三ある状況でございます。  それから移動その他の制限でございますが、これも最近に至りまして相当緩和されております。移動必要目的を十分に明らかにせられたものは、許可になりつつある状況であります。また一部分老朽施設をスクラツプ化いたしまして、その目的のために、賠償の対象からは除外されるということもぼつぼつ行いつつある状況であります。  第七点の軍工廠貸與の條件、その他使用料実情いかんという御質問でありますが、これは主管官庁たる大蔵省で取扱つております。詳細は、私ども賠償庁では承知していないのであります。たとえばその施設価値の何パーセントというものを使用料に充てられておるように承知いたしております。
  6. 橘直治

    橘政府委員 この機会におきまして、先日の委員会において菊池委員から御質問のあつたドイツにおける賠償問題に対しまする国民の声が非常に大きかつた。であるから賠償緩和なつたといつたような御趣旨の御質問があつたかと存じております。実はドイツの場合とわが国の場合とは、相当内容を異にいたしておりまして、ドイツの場合は、民間工場から相当賠償施設を撤去いたしておりますが、わが国におきましては、民間工場からは今日——おそらく今後といえども——一物をも取立ててはおらないのであります。わが国の場合は全部軍工廠に限られておるのであります。そういうような本質の相違があるわけでありまして、この点御了承を願いたいと思います。
  7. 岡崎勝男

    岡崎委員長 仲内委員、よろしゆうございますか。
  8. 仲内憲治

    仲内委員 よろしゆうございます。
  9. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に竹尾委員より発言を求められております。
  10. 竹尾弌

    竹尾委員 賠償指定工場視察にあたりまして、われわれは第二班として六月二十三日から七月二日まで、約十日間東北北海道方面視察いたしました。その視察概要をごく大ざつぱに御報告申し上げまして、仲内委員同様、私も一、二政府当局にお尋ねを申し上げたいと思うのでございます。  賠償指定工場は、これは御承知でもございましようが、日本全国で八百四十四ばかりありますが、そのうち北海道は十一、東北は六十三というぐあいになつております。私どもはごく限られたる時日の間に視察をいたしましたので、北海道におきましては六工場東北においては仙台地方の代表的な工場工場視察して参りました。そこでごく簡単に視察した工場状況を御報告申し上げたいと思います。  まず私どもは六月二十六日に北海道江別という町にある王子航空機株式会社江別工場視察して参つたのであります。この工場最初冨士製紙江別工場として発足をいたしましたが、それが昭和八年王子製紙に合併されまして、昭和二十一年五月連合軍からいわゆる賠償工場指定されました。その登緑機械の台数は九百九十、そのうち五百十五台の使用許可を得まして、現在操業を続けておる次第でございます。従業員は七百八十名ばかりありまして、将来はセメント、肥料用の袋、そういうものの大量生産も計画いたしておりまして、昭和二十五年の十一月には操業を開始するというような段取りになつております。そのときには年産三万トンを目標としておる、こういうような状態であります。  第二番目に、六月二十六日に日本発送電江別発電所というものを視察いたしました。これは登録されたセツトが百五セットで、総司令部継続生産許可によりまして、火力発電行つております。火力発電関係においては、北海道では唯一の指定工場なつ工場であります。  それから六月二十八日に、有名な日本製鉄所輪西製鉄所視察いたしました。これは明治四十二年に北海道炭礦汽船会社製鉄事業を開始いたしまして、それに端を発して北海道製鉄会社となりまして、これが日本製鋼所と合併したのでございます。ここはさらに輪西製鉄会社として独立いたしまして、事業拡充整備行つておりました。それが昭和九年日本製鉄会社がこれを引継ぎまして、数次の拡張を行つて今日の大工場となつたのであります。この会社は背後にいろいろ有利な立地條件を持つておりますので、将来相当発展を期することが明らかであると思われるのであります。それからこれも有名な日本製鋼所の室蘭製作所を六月二十八日に視察いたしたのであります。この工場も本年二月には月産合計二千百三十三トンに生産が達しておる、こういうような非常に活発な生産を続けておりますが、この会社厚生施設方面にも非常に力を入れておりまして、従業員は現在四千名に達しておる、こういうような実情でございます。それからさらに同日、六月二十八日に、函館ドツク室蘭製造所というものを視察いたしましたが、この会社生産状態はあまり芳ばしくないのでありまして、今後の経営の仕方によつて、あるいは相当発展を見るかもわからないのでありますが、現在においては従業員は七百六十六名従業しておるような状況でございます。それから私どもはさらに帰り道に、六月の三十日でございましたが、仙台の方に参りまして、東京の第一陸軍廠兵廠仙台製造所というものを視察いたしたのであります。それから同じ仙台市の萱場工業株式会社仙台製造所というものを視察して、われわれの観察の課程を終つて参りました。非常に簡單でありますが、大体視察状況は以上のごとくであります。  私どもの一行は若松虎雄君、安部俊吾、守島伍郎君、並木芳雄君、それに私の五名でございましたが、そのうち守島氏はちようど一行に加わる時間の余裕がございませんので、われわれが視察終つたあと、すぐわれわれと同じようなコースをたどられまして、北海道及び東北地方を單独で視察してお帰りになつたのでございます。ここでこういうことはあるいは蛇足かもしれませんが、大体われわれが北海道視察するということは、これは北海道土地柄から見ると、夏中議員が北海道に来るということはあまり感心しておらないようです。新聞紙上でも、当時の新聞紙に、またたま議員が続々北海道に来道した、こういうような皮肉な記事が大分出ておつた。ところが私どもは、これは誇りとするわけではございませんが、実にあと味のいい、非常に印象の深い旅行をやつたのであります。大体衆議院からいただくあの旅費の一千二百円くらいでは、とても普通では旅行ができなかつたかもしれませんが、私どもは一行中に木村調査員のような有力な経理方面に明るい方がありまして、ほとんどその十日間の費用を、一万二千円のうちでまかなつて来ました。こういうような実情で、これは私ども議員に対して、あるいは第三者の北海道の道民諸君にも、おそらく非常にりつぱな旅行であつたということを考えられる人もあろうかと思つておるのであります。しかしこの旅行後若松虎雄君は御承知のように病気のため急逝されました。私はこの席上であらためて深く弔意を表したいと思つております。  そこで質問になりますが、この間橘政務次官は、賠償撤去の問題は、一昨年五月十三日の極東委員会決定でございますが、これによりまして、この中間賠償計画に基礎を置いて計画を定めた。ところがその後、昨年の四月でございましたが、米国政府は緊急事態に関する権限に基きまして、右の計画の三割を撤去する、こういうようなことでありましたけれども、これもむし返すようですが、本年の五月十二日でございますが、マツコイ声明によりまして、その三割撤去を中止する、こういうことになつておるようでありますけれども、この間政務次官の御答弁の中で、しからば極東委員会におきまして、今後それについて反対の意思表示をする者が現われても、アメリカの意思が変更せられない限り、賠償撤去は今後行われないと解してよろしいものかどうか、この点をさらに明確にひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。これが第一の私のお尋ねであります。  次にこの賠償中の民間工場に対しては、賠償指定を受けておるものは、完全にこれが分離されて、非常に嚴重な保全管理が現在行われておる。しかしそのうち平和産業転換可能のものについては、御承知のように総司令部許可を得て使用中である。そこでマツコイ声明によりまして、今申し上げた民間工場に関する限り、マツコイ声明が直接に好影響を将来與える、また現在與えておると思われるような節もありますけれども、この点についてマツコイ声明が、民間工場操業についてどういう有利な條件を包括的に與えるものであるか。この点をひとつお尋ね申し上げる。私の質問は大体この二つでございます。
  11. 橘直治

    橘政府委員 竹尾委員の御質問の第一点は、マツコイ声明によつてアメリカの態度は明らかになつた、しかしもしもこれに反対をする連合国の一部の方があつた場合には、どうなるか、といつたような御趣旨のように考えますが、これは過般の委員会でも申し上げました通りマツコイ声明によりまして、アメリカの態度は大体決定をし、これ以上大体日本から賠償施設取立て撤去をいたさぬというふうな線が明らかになつたのでありますが、これは先日申し上げました通り、現在なお九月の中旬に極東委員会アメリカから提案に相なりまして、目下愼重協議中でありまして、まだその最後決定を見るに至つたというようなことは聞いてはおりませんが、極東委員会は御承知通り、拒否権を行使し得る建前と相なつております関係上、あるいは拒否権を行使する国があるかもわからないということは想像し得ると思うのであります。その場合といえども、問題は最終決定はやはり講和会議において決定いたされます関係上、すべての最終的決定は依然として問題はやはり講和会議において決定いたされます。いたされますが、それまでの経緯としては、かりに極東委員会におきまして拒否権を行使した場合といえどもわが国の占領状況から勘案してみまして、大体マツコイ声明の線で押して行かれるのではないかというふうに考えておるのであります。  それからマツコイ声明が一体わが国の民間の賠償指定工場に対して、どういうふうな利点を與えたかという御質問でありますが、マツコイ声明の持つておりますもう一つの大きな意味といたしましては、わが国の工業水準を示されたというふうな点にあると思つております。工業水準は大体一九四〇年から一九四三年の平均のわが国の工業水準に線をとつてあるようであります。特に具体的に最も大きな効果といつていいような点は、平和産業を無制限に伸張していいというふうな点が明らかになつた点であります。平和産業に関しましては無制限生産能力を高揚していいということが、私は民間工場生産再開に対しまする大きな一つの利点であつたというように考えておるのであります。しかし平和産業の無制限生産増進の示唆を受けたといいましても、やはり平和産業にも種類が多うございまして、ある種の産業は、やはりある程度の制約を受けておるというふうに考えるのであります。一例を申し上げますれば、船舶のように、わが国船舶の保有量がやはりある程度制限下にあるといつたような部類もあるのでありますが、大体そういうような制限下にありまする種類は数が少いようでありまして、平和産業に対しましては非常に大きな恩恵を與えられた、かように考えておる次第であります。
  12. 竹尾弌

    竹尾委員 今政務次官の御答弁によりまして、大体はわかつたのでありますが、非常に政務次官愼重に構えられておるので、もう一度私は政務次官のお言葉を結論的に考えれば、賠償の撤去は今後行われないと解釈してよろしゆうございますか。
  13. 橘直治

    橘政府委員 現在第三次指定によりまして、大体四万千トンのトン数において本年度中に撤去、梱包、輸送いたすということになつておけますが、これは大体本年度内に終了し得る見通しでありますが、その後には大体追加指定がないじやないかというふうに考えておる次第であります。
  14. 竹尾弌

    竹尾委員 そういたしますと、今梱包をして輸送する、向うに送つているというものはマツコイ声明以前に指定されたものである。それが終ればもう撤去指定はない、こういうことになりましようか。
  15. 橘直治

    橘政府委員 以前に手続が済んでおりまして、正式割当指令はその後において参つたものであります。
  16. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまの仲内、竹尾両委員の報告に対して質疑はございませんか。
  17. 並木芳雄

    並木委員 転換申請の六十四件のうち四十四件OKが来た。あと二十件残つておるわけでありますが、それもやはり近いうちに許可になる見込みでございますか、お伺いいたします。
  18. 島津久太

    島津政府委員 近く大体許可になると考えております。
  19. 並木芳雄

    並木委員 今までの民間工場のうちで、これが許可になつてなお転換しないでそのまま休止状態にある工場の数とか、そういうものの概要をお知らせ願いたい。
  20. 島津久太

    島津政府委員 稼働工場休止工場の割合を御参考までに申し上げます。  航空機部門では稼働工場が二三一、全休止工場が七八、民間兵器部門では稼働工場が一三六、休止工場が四五、工作機械の部門は稼働工場が七九、休止工場が一一、造船部門では稼働工場が一八、休止工場が一であります。その他軸受、ソーダ、硫酸、鉄鋼、人造ゴム、そういう部門を含めまして稼働工場が九三、休止工場が二四、軍工廠研究所の部門では八八稼働しておりまして、休止工場が五二、総計稼働工場が六四五、休止が二一一、こういう数字でございます。
  21. 並木芳雄

    並木委員 休止されておる工場の原因、理由、つまりこれらのうちにもなお稼動したいという希望があるにもかかわらず、稼働できないという状態が、あると思うのです。それは申請しても何か隘路があつて許可にならないのか、申請の段階にまでも至らないで弱り切つておるのかどうか、そういうような状態についての見解を伺いたい。
  22. 島津久太

    島津政府委員 休止工場は大体の原因は経済上の原因であります。賠償の面から特に休止を命ぜられておるというのはないのであります。一例を申し上げますと、ある部門—これはソーダの部門でありますが、優秀な工場が休止工場になつております。この転換目下申請中なのでありますが、一面現在稼働しております工場に対して、資材その他の分量が制限されておりますので、新しい工場を動かすということが、経済の規模から申しまして困難な場合があるのであります。賠償の面から申しますと、賠償工場でもほかの非賠償工場と同様な立場で考えられることを希望しているのであります。手続上急速に行かないでそのまま休止しておるという事例はあるわけです。
  23. 並木芳雄

    並木委員 そこで私、この前の委員会にもちよつとお尋ね並びに希望を申し上げたのですが、せつかく賠償撤去を中止するという朗報に類するものが與えられておるのでありますから、その結果こういう休止工場というものがたくさんありますと、連合軍の方に與える印象が、中止をしても大して役に立たないじやないか、そんな活用の方法はないじやないかというのではいけないと思う。ですからこれは他の普通の産業と少くとも同様、あるいは自由経済のただ中にほつておかないで、国家というものがこれに対して、補助的な意味を含めた管理というものを、私はやはりやつていただきたいという希望を持つておりますが、そういう点についていかがでしようか。
  24. 勝野康介

    ○勝野説明員 今御質問のせつかく撤去が中止されても、遊んでおつたのでは日本の経済を復活させる上において、撤去の中止が意味がなくなるという御質問でございまして、賠償庁といたしましては、今の並木委員のお話とまつたく同様な意見でございます。せつかく撤去が中止されたものは、これはどんな隘路があつても打開して、これを動かして行きたいという希望を持つておりまして、またその点で折衝しておりますが、日本全体の産業のわくというものにつきまして、マツコイ声明にもまだいろいろな難点がございまして、マツコイ声明の趣旨の通りにまだ動いておらないのでありまして、そのように動かすには全面的に努力しておるわけであります。
  25. 並木芳雄

    並木委員 もう一つお尋ねします。これは橘政務次官の御答弁にあつたと思いますが、ちよつと完全に聞き取れなかつたのですが、十三種の賠償の中で、五、六百万円の損害賠償許可された。そういう項目がさつきありましたね。それでこれは非常に参考になると思うのですが、どういうものが申請されてどういうものが許可されたか。十三種の中で五、六百万円許可なつたその具体的な内容をおつしやつていただきたい。
  26. 橘直治

    橘政府委員 今までの分は、台風による被害をこうむりました指定工場の復旧関係であります。これに関しては先刻御説明いたした通りでございまして、われわれとしても関係方面折衝して復旧の許可をとつております。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 最初賠償指定された工場機械、それから打切られた機械、それを比べましておよそどのくらいの差がありますか。金額にしておよそどのくらいのものか、大体の御見当を承つておきたいと思います。  それから梱包に要した木材、およそ何石くらいになるものですか、大分世間にはしろうとが宣伝いたしまして、飛騨の山林、木曽の山林が切り荒されて、洪水がそのために起つたというようなでたらめの宣伝もありますので、これをちよつと明らかにしていただきたい。大体の見当でよろしゆうございます。
  28. 橘直治

    橘政府委員 いずれ詳細の数字はあとで事務当局から御説明いたしますが、マツコイ声明によつて恩惠を受けると申しますか、大体撤去指定を許されるであろうと想像し得る数字は、先日の委員会で申し上げました通り、多少詳細に申し上げますと大体八万二千トン、これを昭和十四年度の評価に換算してみると一億五千万円見当になつております。こういうふうに考えております。
  29. 島津久太

    島津政府委員 ただいま政務次官からお答え申しました取立ての一億五千万円と比較いたしまして、全体の賠償規模からどうなつておるかと申しますと、これもいろいろな算定がありまして、賠償予定施設のどのくらいの価格になるかという算定はむずかしいのでありますけれども、ストライク調査団の調査しました数字は二十六億ということになつております。ただそれが全部賠償として取立て得るものだけであるか、あるいは輸出不可能のものも含んでおるものか。その点は判明しないのであります。大体の規模はそういうような程度に御承知を願いたいと思います。これはもちろん一九三九年の評価換算であります。  資材の面はただいま正確な数字を持つておりませんが、大体は一トンが二石半というような見当で取扱つてつたのであります。一万トンといたしますとその二倍半という程度のものだと思います。
  30. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではお諮りいたしますが、当外務委員会におきましては、第一回国会以来、先ほど仲内委員の御説明のように、国際経済に関する総合的調査と講和会議に関連した諸問題について、いろいろの角度から研究を進めて来たのであります。第五国会閉会中も審査を継続しまして、特に賠償問題を取上げて調査して参りました。それは国民の現在及び将来の生活水準その他に関連いたしまして、講和会議の準備研究として調査を進めて来たのであります。そうして今日までこの中間的な報告を一応まとめ上げましたが、それらの問題は将来締結される講和会議におけるきわめて重要な項目でありますので、今後もさらに研究を進めることはもちろん必要であります。従つてただいまつくりました報告書は最終的な調査報告でなく、一応の中間的な報告であります。この報告につきましては先に理事の方々及び賠償指定工場視察された方々の検討をいただいたのでありますが、ここにごく簡單にこの報告書の概要を項目別に申します。  第一は緒論であります。第二は賠償問題の性格、これには賠償決定の機関とか賠償の責任、賠償程度賠償金額、実物賠償等の項目を含んでおります。第三は日本経済再建と賠償問題、第四は世界経済再建と賠償問題、第五は最近におけるわが国賠償問題の経過、この中にはポーレー案その他からマツコイ声明に至るまでの経過が書いてあります。また各国のこれに対する反響を載せてあります。第六は米国の対日賠償政策の今日までの経緯、第七は引渡し済みの賠償物件内容、第八は民間管理工場内容、第九は賠償放棄は絶対に必要であるという米国側の主張を説明しております。第十は割当済みの取立ては今継続中であるという点について説明をしております。第十一は賠償施設保管基準緩和、第十二は賠償問題に対する日本国民の要望、第十三は賠償問題と満州における日本権益、第十四は賠償打切りによる各産業の利益、こういう点がそのおもな項目であります。でこれをわが国賠償問題という表題にいたしまして中間的な報告を一応議長に提出したいと思いますが、このことについて御異議はありませんでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認めますので、委員長においてさようとりはからいます。     —————————————
  32. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に請願及び陳情書審査に入ります。  請願日程第一の文書表第一五二号及び第二の文書表第五四四号はいづれも在外同胞引揚げ促進請願でありますので、これを一括議題といたします。紹介議員の説明を求めます。紹介議員河原伊三郎君。
  33. 河原伊三郎

    河原伊三郎君 太平洋戦争は幾多の大きな悲惨事をもたらしましたが、その中におきましても、終戦後すでに満四年を経過いたしまして、まさに第五回の新年を迎えようとする今日において、なお多数の未復員者、在外同胞の引揚げが完了せずに現地に残つておるということは、われわれ国民の最大の痛心事、痛恨事でございます。これにつきましては、有力関係方面並びに歴代の日本政府国会、特に当外務委員会におかれまして、引続き不断の御努力を願つておりますことにつきましては、十分これを認識し、多とするものでありますけれども、現実になお多数の同胞が残つておりますことにつきましては、今後たゆまざる努力、むしろ一層熱意を傾けられまして、その引揚げ促進に御盡力を切望してやまない次第でございます。ことに多数の人々が残つておりまする初期の場合に比較いたしまして、長い月日がたつて多くの人が引揚げた後に少数の人が残つているときに、その人々の心中並びに家族の心中を察しますると、多数の人々の残つています際よりも、今日数が少くなつたときにおいて一層その悲痛な気持を察する次第でございます。この点何とぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。  なおそれと附帯いたしまして、厖大な数の同胞の行方、生死が不明になつております。伝えられるところによりますと、三十万人内外という大きな数字の人々の行方が不明であるということは、これまた非常なる痛恨事でございまして、これの調査は相当むずかしいこととは存じますけれども、でき得る限りこの方面につきましても解明されるように、格段の御盡力をひたすらお願い申し上げる次第でございます。  一五二号の請願書は、五月二十八日の定例県議会におきまして議決いたしたもので、当時ただちに私の方へ送付して参つたのでございますけれども、その際はすでに第五国会請願書受付の期限をはずれておりました関係上、非常に遅れまして、提出は十月の二十七日となつており、この間相当日のずれもございますが、請願書の趣旨は時期の遅速にかかわらず、一貫してかわらないものでございます。どうかこれらの点をよくおくみとりいただきまして、何とぞ御採択くださるよう、切にお願い申し上げる次第でございます。
  34. 岡崎勝男

    岡崎委員長 政府側に御意見があれば承ります。
  35. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今引揚げ促進請願についての御説明がございましたが、政府といたしましてもこの引揚げがすでに四箇年以上を経過して遅延をしておる。現在にまだ多くの方々が残つておられるということにつきましては、まことに同情にたえない次第でありますと同時に、政府といたしましても、その引揚げ促進について、あらゆる努力をいたしておる次第であります。先日も当委員会におきまして、最近の政府の努力の模様を報告したのでございますが、さらにこの際繰返して申し上げますと、現在の状況といたしましては、一番多く残つておりますのは、シベリア、いわゆるソ連地区関係と、次は満州でございますが、その関係につきまして、しよつちゆう司令部の引揚げ促進関係方面には、われわれ事務当局としてお願いしておるのでありますが、特に五たび冬を現地で迎えられるようなことがあつてはたいへんだというので、言葉ではしよつちゆうお願いしておるのでありますが、十月の二十一日付をもちまして書面をもつて日本政府から司令部の方へ、引揚げ援助の願いを出しております。そのときにおきましても日本政府といたしましては、日本国民全体としては、同胞が五たび現地で冬を迎えるという状況を前にしておるので、ぜひ再びお願いを繰返したい、留守宅家族の困窮しておる状態は周知の通りであるが、何とかその困窮しておる、特にその生活の支柱を失つて、最近の状況ではたいへんであるということを述べまして、シベリア方面のみならず、満州の最近帰つて来られた同胞の模様から察しても、ソ連さえ引揚げの援助をするという気になつてくれれば、引揚げが実現する模様であることがわかつた次第でもあり、ぜひこういう状況も含んで、引揚げの促進をお願いしたいということを懇請いたしたのに対しまして、司令部の方から十月三十一日に書面をもつて返答がありました。この中には引揚げ一般の状況についてでありますが、司令部としても留守宅家族の困難な状況に対しては、まことに同情にたえぬ次第であるが、司令部としても関係のあらゆる向きと力を合せ、また不断の努力をして来たことは御承知通りで、今後もそういう努力を続けて行くつもりであるということと、それから特にソ連関係の引揚げのことにつきましては、すでに月々十六万引揚げることにしたいという申し出をしたのであるが、ソ連の方でこれを受諾しない状況である。但し今後われわれの方の用意としては、特に輸送機関、その他受入れ準備が不備であるということで、帰還が遅れるということがあつてはならないから、そのためには最高指揮官は、そのことについて万全の準備を整えさせておくというような返事がありました。これは書面でありますが、これに加えてシベリアの関係につきましても、満州の関係についても、司部令としてはできるだけの努力をしておるからということを承つております。  それから数の開きの問題がございましたが、これは御承知通り、ことしの春に新聞通信等で伝えられましたソ連当局の発表なるものがありましたあと、政府といたしましては、すぐさまこの実情について、実際どういうことになつておるかということを、司令部を通じて尋ねておるのでありますが、いまだに何らの正式の情報がありません。従つて現在われわれが承知いたしている数と、ソ連側から報道せられた数との開きというものにつきまして、これはこうなつておりますということを御説明するだけの資料もまだ持ち合せておりません。なお御参考までに、十一月の初めまでにソ連地区から帰つて来られた同胞の全部の数字は、八万四千九百七十三名になつております。これに今月のちようど明日、第一船がナホトカに入港することになりまして、十二月の初めまでには、五はいの船で約一万の同胞が引揚げて来られる予定になつております。
  36. 岡崎勝男

    岡崎委員長 別に御質疑はありませんか。—御質疑がなければ採択いたします。日程第一、第二は採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 岡崎勝男

    岡崎委員長 御異議なしと認めまして、さよう決します。  なお報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、これも御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではさようとりはからいます。     —————————————
  39. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次に陳情書審査でありますが、在外胞引揚促進に関する陳情書外十八件は、先ほどの請願と同趣旨でありますので、審査を省略することとし、本委員会において了承することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではさよう決します。     —————————————
  41. 岡崎勝男

    岡崎委員長 この際玉井委員より質問があるそうですが、簡單だそうですから、これを許します。
  42. 玉井祐吉

    ○玉井委員 第五国会からの継続と申しますか、小瀧さんに御足労を煩わしまして、いろいろお伺いしたり、御注文も申し上げたいと思いますが、最初に申し上げておきたいことは、先般来通産省における貿易関係取扱い方がたいへん親切になられて、ありがたいということを、業者の方から言つて参りましたので、この点まずお礼を申し上げておきたいと思います。  そこでお伺いいたしたいことは、現在の貿易は御承知のように政府貿易の域をまだ出でておりませんが、実際上やはりサプライヤーの方は政府の方に品物を売つて政府が向うのバイヤーと契約するというような形になつているわけです。そこで問題が起きて参りますと、特にクレームなどが起つて参りますと、その残りの跡始末は事実上業者が処置しなければならぬ、こういう現状になつているわけであります。従つてこれらの問題については、おそらく個々の場合に、業者の案件については事態が違うのだからということが考えられるわけですが、その場合業者の方に責任が全然なかつたような場合には、政府の方でどういう形の責任をおとりになるかという点が一つ。従つておとりにならないとすると、訴えを起すことがあるかもしれないことになりますが、そういう場合についてもどういう処置をおとりになるだろうかということを、ここで明らかにしておきたいと思うのが第一であります。  第二番目に、品質の不良によつてもどつて来るクレームの問題と関連いたしますが、それについて現在通産省の関係で検査制度をとつておられるわけであります。ところがこの検査制度は輸出規格が中心になつておりまして、向うへ出す商品としての規格が中心になつておりません。従つて輸出規格品として合格して輸出いたしましても、商品として意味をなさないものが相当にある状況であります。こういう場合には今後の輸出の検査制度の内容に対して、特に自由貿易になりましても、その方面については国家的な調査をしていただくわけですが、しかし私どもとしましても、このときに国家的な調査よりは、むしろ業者の手における検査制度、すなわち買手の市場性を十分に考えたところの検査制度を、採用していただきたいと考えておりますので、従つて私の質問の要点は、この検査制度を民間に移す御意思があるかどうか、むしろ移していただきたいということを申し上げたいのであります。  それから最近御承知のように、日米仲裁委員会日本商工会議所にできる予定になつているわけであります。ところがこれができるようになつておりますにもかかわらず、日本商工会議所の役員たちの中で、いろいろな形の対立というようなものがあつて、内乱状態になつておりまして、この日米仲裁委員会日本商工会議所の中に設置ができないという現状であります。そこで今度十二月一日からクレーム制度が司令部関係においては廃止になりますが、廃止になつた後に、この内乱状態を放置しておいたならば、どこでクレーム問題を解決なさるおつもりでおられるか。それを処理していただいて、一日も早く仲裁委員会をここに設置していただきたいということを申し上げるわけであります。そこで仲裁委員会ができましても、これは日米仲裁委員会として出発をする以上は、日本アメリカとの関係、あるいはこれに特別賛意を表する所の関係でありまして、その他の国々は直接これには関係ございません。一昨日もこの委員会におきまして、ちよつと外務省関係の方に御質問申し上げたのでございますが、特に中国からの輸入については、クレームが大体五千万円から六千万円の見当であるはずであります。前の国民政府に入れかわつて、中共がその後における政府になつておりますが、これがそういうクレームの関係においても、政府の交代によつて、その債務を中共が負担するものかどうか。これは実は外務省の関係の問題でありますが、クレームがありますのでその点をお伺いしたいわけであります。もしそこで国際法上債務を継承するものだとするならば、これの解決方法はどのようになさるおつもりであるか、ということをお伺いしたいのであります。  次に朝鮮並びにソ連との間にもクレームがございます。御承知のように、パルプその他の問題で関係がありますが、これに対して今後どのように処置をなさるか、仲裁委員会ができましても、これはらち外に置かれますので、この点について御説明をお願いしたいと思う次第であります。  最後に一点だけつけ加えます。それは御承知通り、現在の輸出入関係では船賃が非常に高くなつておる。ことに保險が非常に高くついておることは御承知通りでありまして、しかも日本の国の中で造船している船舶が、実は日本の保險会社の保險に入らないで、英米の保險会社の保險にかかつております。これは一体どういう理由であるか。むしろ日本の保險会社にかける方が、少くとも日本の立場から見て正しい行き方であり、しかも日本の保險業を育成する意味においても正しいことだと考えでおりますが、そのように処置されないで、英米の保險会社がこの保險契約権を握つておるという実情に対して、特に貿易問題と関係がありますので、この保險の問題についても、御存じの限りにおいてお答え願いたい。  以上の点を御質問申し上げる次第であります。     〔委員長退席、仲内委員長代理着席〕
  43. 小滝彬

    ○小滝説明員 玉井委員から御注意いただきまして、できるだけ御注意に沿うようにせつかく努力しておるのでありますが、何分にも従来新聞に出ておりますめくら貿易と申しますか、人が出せなかつた関係で向うの事情がわからなくて、あるいは人が出ていたならば避け得べかりしクレームの問題が発生したということもありまして、その点非常に遺憾に思つておりますが、幸いにして近く通産関係の役人も海外に出られるようになり、現に優先外貨の使用制度によつて海外に行けるようになりましたから、これまでよりは実際問題として、そうした原因が少くなつておるというふうに考えております。  なお御質問の第一にありましたサプライヤーは個々の会社がなるけれども、それは名義上は対外的には依然として政府が輸出の名義人と申しますか、輸出者となつておるというようなお話がありましたが、玉井さんのお考えになつておるようなかつての事件にはそういうものがありましたけれども、現在では輸出のうちで多くて五%、少いときは二%ぐらいが政府貿易になつておりまして、その他は完全に個々にサプライヤーの人が、経営者として対外的に働いておるというのが実情であります。但し制限付の民間貿易の時代において、対外的には政府の名前で契約がされておつたにもかかわらず、向うがキャンセルして来た、キャンセルしないまでも、だらだらとひつぱつてサプライヤーに非常に迷惑をかけたというような案件については、政府も責任があるのではないかという点でありますが、これにつきましては実は政府の名前で出しますときにも、サプライヤーの方には決して政府が買いとるという條件のもとにやるのではない。当時の制度として為替の関係があるので、政府の名前でやるけれども、その責任は負わないというような規約のもとに行つたのでございます。しかしながら何としても対外的には、日本政府が当事者になつておりますから、これについてはできるだけのあつせんをし、サプライヤーの損害が少くなるようにしなければならぬと思いますので、たとえばこの前も問題になりました日本から貿易業者の業態を紹介する書物を、海外に出すというような契約について、向うがこれを履行しなかつたこと対して、われわれとしてはどうすべきかということについていろいろ司令部と話しまして、これはこちらから訴訟することができるということを、向うの法律関係の方でも調べていただきまして、やむを得ない必要がある場合には、向うの買手を相手取つて訴訟を起すということも考えておるわけなのでありますが、その点金銭的にそれではどれだけの責任をとるかということについては、先ほど申し上げましたような規定のもとに政府貿易の形をとつたものでございますから、その辺については何ともここで言明し得ないのですが、とにかく十分あつせんをして協力してこの問題を解決するようにして行きたい。また国内で利用する方法、あるいは転売する方法について、せつかく御援助を申し上げておる次第であります。  それからその次の点、日本の輸出検査制度は日本本位であつて、外国の規格に合わないというような点は非常に多かつたと思いますが、先ほど申しましたように、今後海外に相当出て行けることになれば、なるべく海外のバイヤー—今後はバイヤース・マーケツトになるからバイヤーの意向に沿うようにしたい。そうして政府でやつておりますのはスポツト・チエツクでありまして、大きなところは各商社、各メーカーの方で検査も実行しておりますし、最近は海外のインスペクターも参つております。御承知のように一番大きなのが四社ぐらいありますが、これが契約に基いて製造工程において検査をする。検査と申しますか、出すようになつてから問題を起しては、かえつて製造業者に迷惑をかけるというので、そういう海外から参つております検査協会の人が、事実上検査に当つて、国営の検査は、ある部分を引き抜いてみて、特に悪いものはありはしないかという確認行為のようになつておりますので、民間の方で自転車協会とかいろいろな協会でおやりになることは、これは決してわれわれは阻止しようとするものでなしに、ぜひそういう自主的な検査を行つていただきたいのですが、いろいろな点で日本政府が責任を負担しております以上、この国営の検査というものはむしろ強化して行きたいという考えで、今般も検査法の改正を議会でお願いしたような次第であります。  それから日本商工会議所がアメリカン・アービトレーター・アソシエーシヨンと規約をつくりまして、クレームの解決に乗り出すということは前から話が進んでおりまして、現にこちらの方は日本商工会議所及び日本にあるアメリカン・チェンバー・オブ・コンマースがこちら側を担当し、向うの方が—アメリカン・アービトレーター・アソシエーシヨンと申しますか、すでに規約の調印を終つておるようなわけでありまして、私日本の内部で対立があるということは存じませんでしたが、もしそういう点でわれわれに何かできることがありましたら、御協力申し上げたいと思います。現在の状態ではGHQ、通産省、総理府の承認を得れば、来年の正月ごろから動き出すように期待いたしておる次第であります。今後のクレームの処理について、ただそれだけにたよるわけに行かない。これをどうするかという御質問に対しましては、今後輸入の方は一月からは商業勘定で民間で契約しておりますので、輸出も輸入もともに民間業者の自主的な解決方法というものを、中心にして行かなければならないと思います。しかしそれにつきましても、できるだけ便宜を供與する意味において、たとえば向うのクレジツトのスタンドと、財政的に相手方の商社はどういう状態にあるかという点は、できるだけ海外に施設を設けまして、それから情報を提供するというようなこと、また海外に商館でもあれば、それによつてあつせんするというような方面において、政府はこれに援助しなければならない、こういうふうに考えておる次第であります。  また中国からの輸入にしても、なるほど従来塩、大豆、ウエースト・シルクというようなものについて、クレームを持つていたことは仰せの通りであります。これについては一部解決したものもありますし、せつかく司令部の方へも話しまして、すみやかにこれを解決しようといたしております。かりに政府がかわつたそのあとは一体どうなるかという点については、私ども專門外でありまして、外交上のことは何とも申し上げかねますが、現在におきましても、対満の勘定というものは、依然として中国のミツシヨンの方に関係のある勘定でありまして、現在中国のミツシヨンとの関係における取引というものが、全然なくなつておるわけではありませんから、こうした勘定の利用によつて、向うの支拂うべき限度のものは支拂うと申しましようか、日本側へ返済するという処置は、現状においては依然として可能であるということを御承知願いたいと存じます。  なお朝鮮なんかの話も先ほど出ましたが、なるほどのりだとかいうことだとか、いろいろの問題が起つたこともありますが、朝鮮側に対して一番大きな問題であつたのりの問題も、すでに解決しているというように御承知を願いたいと思います。但し国内の拂下げ価額などについては、業者の方の非常な、困難の点も考えまして、目下経理局の係官などと話しまして、できるだけ不当な損害を業者が受けないようにというような処置を講じたいと考えております。  それから日本の保險会社があるにもかかわらず、外国の保險会社を利用しているのはおもしろくない。まことにごもつともでありまして、日本でも輸出品についてはCIFの契約をし、輸入においてはFOBの契約ができるように、そして日本の保險会社へ円の支拂いをして、一部司令部に設けてある商業勘定のドルを利用して、ドルの保險契約が円でできるようにしようということは、われわれ従来努力し参つた点でありまして、われわれの期待では、あるいは本日私がここに出るまでには、この問題ははつきりと片づいて、もうこうなつておりますと説明し得るであろうというように期待しておりましたが、いろいろ手続の上で、勘定をどういうふうに設けるか、すなわち別個の勘定にするか、それとも商業勘定の中の一部を別わくにして、リヴオルヴイング・フアンドにするかというような技術的な点で、うまく行かないこともあると存じますけれども、この問題はきわめて近いうちに解決せられまして、日本の保險会社を利用できるようになるということを御承知願いたいと思います。大体以上で玉井さんの御質問に一応お答えいたします。
  44. 玉井祐吉

    ○玉井委員 ただいまのお答だに対しまして、さらにもう少しお答えを願いたいのですが、それは政府貿易であつたものはごく一部分だといたしましても、私の知る限りにおきましては、政府との契約書は、通商産業省の当事者と日本のサプライヤーとの間における契約書の交換がなされております。それで免責契約というものが別にあるかどうかということをお伺いしたい。政府が責任を負わないというような契約があるかどうか。もしくはそういうような法律ないしは規約というものがあるかどうか、その点をお伺いしたい。私の記憶する限りではないと思つております。  それから第二の点ですが、事実上の検査は協会その他民間でやつておるのだというお答えであつたわけです。ごもつともなので、そうなつておればおるほど、国営検査制度というものは意味がないと思う。はなはだ失礼な言い方ですが、そういうふうにすることは、最近言われているように、官吏がとかくほかに職場を求めて、自分の権限をふやそうというようなそしりを免れないのでありまして、特に民間でやつているものにしいて官庁がそれに加わつて、国営検査制度を強化しなければならない、しかもあらためて法律まで出す理由が私にはどうも納得できない。こういう二点について特に御説明をお願いしたいと思う。  それから第三は、保險契約の問題で、手続だけの問題だというお話であつたのですが、手続だけの問題となつておれば非常に喜ばしい次第ですが、これができるだけ早く解決のできるようにお願いしたいと思う次第であります。  そこでもう一つだけ、これは朝日新聞社で出した通商産業白書、この序文には稻垣さん大臣自身が序文を書いておられて、相当責任のある内容を持つておるべきものだと思いますが、これが九月の十九日に印刷されて、発行されておりますが、特にクレームとかキヤンセルのごときも、この七十八ページ以下のところを見ますと、この中で契約のクレームの扱い件数は、二百二十九件という非常に少い数字が出ている。先般第五国会で小瀧さんにお伺いしたときは、五月十日現在で調査した数字を申し上げたのですが、当時でさえも六百四十一件になつてつたはずです。これが九月の発行、しかも政府で出すべき通商白書という信用できなければならないものでありまして、およそ半分以下の数字が出ているが、その理由をお答え願いたい。特に現在においては、最近の調査ではおよそ千件以上を上まわつているという想像をしているので、千六十件くらいになつておると私は思います。そうしますと、これは三倍くらいになつているはずです。こういうような数字は、とかく日本の官庁の統計数字は最もでたらめであるというような、世界の悪評を除きます意味においても、こういう問題は十分検討した数字を出していただきたい。そこに行き違いがあれば、その点を御説明願いたいと思う次第であります。
  45. 小滝彬

    ○小滝説明員 第一点は、通商産業省の責任でありますが、先ほどもちよつと申しましたように、通商産業省の買受けがB・Lによつて行われることになつておりますので、船積みをするときに初めて通商産業省の方の責任になるということになるだろうと思いますが、この辺はつきりした回答を申し上げることはできませんから、さらに詳細に調べて、その法律的な点は御回答申し上げることにいたしたいと考えております。  それから検査制度を強化する必要はないじやないかという御質問でありますが、一面からそういうふうに考えられるかもしれませんが、今度の改正の要点は、従来衛生であるとか、保健であるとかいうような理由でない限りは、たとい等級に合わなくても、全部等級だけを見て、輸出が自由にできたのでありますけれども、今度の改正で規格を定めて、規格に合わないものは輸出しないというように、輸出をさしとめることができるというような趣旨の改正でありまして、これはすなわち、クレームなんかが盛んに起る、ことに海外の市況が悪いようなときには、とかくいろいろ相手方が文句をつけがちでありますから、そういう危險を防止するために、等級に合わないようなものは輸出をさしとめするような制度にする意味でございまして、この点はこういうクレームの問題なんかを予防する上に、むしろ効果があるように私ども考えておるわけであります。但しそのグレード、等級のつけ方なんかについては、今後もますます勉強いたしまして、実際に即するようにいたしたいと思つておりますが、趣旨はそういう趣旨の改正であるということを御承知願いたいと思います。  なお保險につきましては、先ほど申しましたように、もう手続上の問題になつておりまして、これは必ず近くできるであろうということを確信しております。  なお、通商白書の数字は、玉井さんのお調べになつたものと違つておるということでありますが、ちよつと私の方で今持つておりますのは、輸出クレームを中心にした日本側のクレームが三百八十件、そのうち解決したものが百五十二件、それから輸入のクレームが五百四十三件、解決したものが百二十一件、これはさらに事務当局で調べさせまして、通商白書が実際に即していない間違つたものでありましたら、さつそく訂正するような措置をとりたいと思つております。
  46. 玉井祐吉

    ○玉井委員 ただいまの問題で、一つだけどうも私納得できないのは、国営検査の問題です。規格に合わない場合は、輸出をさしとめるような制度にしたいというお話、これは一応ごもつともです。ところが一番問題になりますのは、第一の質問関係いたすのでありますが、政府が責任を負つていないような契約ができてみたり、あるいはそれが直接口をきいたり—しかも責任を持つていないものが口をきくような形にしておくと、はつきり言つてますます無責任なことになつて来ると思います。これは政府が無責任だということではなく、人間としてそうなつて来るのであります。ことに国営検査の強化の面において、それによつてつたあらゆる問題に対して、検査官あるいは通商産業省の責任者が、どういう責任をとるかという点について、案があるかどうかをお伺いしたい。売れないで返されて来れば、業者が当然損をするわけで、特にクレームなどがついて来れば非常に自分が困るから、かえつて放置しておいた方がよいのではないかとも思われる節が多々あるので、その面についてお伺いしたいと思います。  それから輸出補償制度ができるわけですが、これについてクレームというような特殊な状態に対しては賛成ができないために、これが成立するかしないかわからぬというような話もありますが、これについても、この制度制定に後に特に有効なだけでなくて、遡及権も認めて、今までのクレームについても、これで解決できるような改革の方法を講ぜられるかどうか、この点も追加してお答え願いたいと思います。
  47. 小滝彬

    ○小滝説明員 最初の点は、政府の方がどこまで責任をとるかということであります。従来資本逃避及びドンピングについては司令部側が責任をとつて、これを押えるように努めるという態度をとつて来たのでありますが、今度自由に輸出ができるようになりますと、その際政府はどこまで責任を負うことができるかというので、外国政府との間に問題になる関係も考慮いたしまして、とにかく個々の取引については業者の方に責任があるけれども政府としてはそれをできるだけ阻止するための行政的措置をとつておるのだということをはつきりさせる必要がありますので、こういう制度を設けたわけであります。従いまして、個々の取引についてのクレームは、あくまで業者の方がとられなければならないのであつて政府の方はそうした行政措置において全部を検査するということもできないので、日本の国営検査を通つたから全部完全であるということは必ずしも保証できないにしても、とにかくおまわりさんが、いろいろ悪いことがありはしないかと検査して歩くのと同じような趣旨においてやつておるというように御承知願いたいと思います。  それから補償制度については、ただいま政府でも審議を重ねておりまして、できるだけ業者の方が海外の事情により不当な下利益を受けないような條項にしたいと努めておるということを御承知願いたいと思います。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 通産省の方がお見えになつておるので、ちよつと伺いたいと思います。  実は一昨日輸入委員会のことをお伺いいたしましたが、これは通産省の方の関係であるからという御答弁でございました。そこで私お伺いしたいのは、いつごろかの新聞に、輸入委員会がつくられるということが出ており、そしてその内容は、大体官庁関係の方が多かつたと思うのです。それで、その輸入委員会で、もしも輸入品のわく等もおきめになるといたしますならば、原料や食糧をたくさん輸入しております日本状態から考えましても、そういう方面に経験のある人たちも入れられた方がいいように思われるので、この輸入委員会の性格なり権限なり、あるいはその内容がその後どうなつておるか、おわかりになりましたら伺わしていただきたいと思います。
  49. 小滝彬

    ○小滝説明員 輸入委員会というようなものにつきましては、なるほど一部関係当局の方でそういう意向もありまして、新聞にもそういうことが出ていたようでありますけれども、実は明日ごろ国会に上程せられます案においては、こういう輸入委員会というものはおそらくないであろうというように私承知いたしております。従いましてもつと権威のある、ただいまおつしやいましたように、各方面の意向を十分反映し得るような委員会ができるのではないかというように思つておりますけれども、まだ審議中でありまして、これ以上のことは申し上げられない次第であります。
  50. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これにて休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  51. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を再開いたします。  国際情勢等に関する件を議題とし、質疑は通告順にてこれを許します。菊池義郎君—ただいま外務大臣より発言を求められておりますから、まずこれを許します。
  52. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私から一般的に今日まで体験したというか、承知していることだけ、まず第一に申し述べて、御参考に供します。  第一次吉田内閣総辞職の前後においては、その年の秋には講和会議もしくは條約という問題が引起し得るだろう、こういう予測をしてわれわれはやめたのでありますが、その後御承知のような国際環境といいますか、米ソの関係等も悪化したがためでしよう。日本の講和問題などは取上げられもせずに参つて来たことは御承知通りであります。ところがだんだんその後、アメリカの内部の状態、あるいは欧米等の日本に対する気持、感情について私の承知するところでは、ヨーロツパの一部では今なお日本に対して決していい感情ではないそうであります。たとえばオランダのごとき——と申すと、これはあまり新聞に書いていただきたくないが、オランダなどにおいては、日本人に対して、あるいは国際会議等においては手も握りたくないというような顔色をしておる委員もある。現にヘーグにおいて体験した人もあるそうであります。これはインドネシアなどの問題もあるでありましようが、とにかく日本に対して決していい気持、好意ばかりを持つておる国はそうたくさんないと承知してはなはだ悲観しておるのであります。イタリアであるとか、フランスであるとか、イギリスにおいてもなお昔のような気持で日本に対してはおらない。ことに通商関係等においては、今なお相当な反感がある。ことにマンチエスターとか、あの方面においては、昔の商売関係などの記憶も思い起して、あまり日本人を歓迎しない。これがマンチエスター・ガーデイアンがときどき変なことを書く一つの理由であるかとも私には思われますが、イギリスにおいてさえも、日本に対してことごとく好意のある者ばかりではない。もつともイギリスにおけるかつて日本の友人は、今なお日本に対して相当好意を持つておるそうであります。例をあげますと、イギリスの大使であつたリンドレーであるとか、あるいは日本に長く来ておつたピゴツト君にしても、それからセールスとか、そういう人は日本に対して今なお友情を持ち、そうして日本のためにいろいろな宣伝等をしてくれるそうです。私の体験について考えてみましても、私がロンドンにおつた間に、ちようど日華事変が起つて、そうして日本に対してデモンストレーシヨン等が起つたことがありましたが、そのときでもリンドレー大使にしても、セールスにしても、ピゴツトにしても、力をきわめて日本のために弁護してくれたのであります。ことに日英協会会長のセールスのごとき自分が会長のときにこういう問題が起つて、日英の間の関係が悪くなつたということは、実に嘆かわしいことであると言つて、私に涙をこぼして衷情を訴えてくれたというような、まことに涙ぐましき人たちもあるのでありますが、そういう人たちは、今なお日本の友人として、演説であるとか、宣伝であるとか、講演であるとかいうので盡力しておつてくれるそうであります。しかし一般の人、ことに商売関係などの方面においては、かつて日本の商業取引上における強敵であつたという昔の記憶が残つてつて日本が再び貿易市場に入つて来るということになると、ことに紡績のごときは相当圧迫を受けるという危惧の念もあるのでありましよう。そういうところから、イギリスにおいては必ずしも日本に対して好意のある人ばかりではない。  またアジアについて考えてみますと、中国は御承知通り、マニラであるとか、あるいはマレーとかいうようなところにおいては、ことに日本軍がいろいろ不愉快な事跡といいますか、アトロシテイの問題を残しておる地方においては、日本に対して非常な反感を残しておるということは事実であるようであります。反感ばかりではなく、負けた日本が非常な勢いで再興しつつあるということは、実に意外千万な話で、いわんやこれを連合国が助けるのは一というような気持を露骨に言い表わしておる向きもあるそうであります。ただインドのごときは、これは非常に違います。日本の戰犯の裁判においても、日本の被告に有利な意見を持つてくれた人はインド側の人だと聞いております。しかしとにかくインドを除いたアジアのほとんどすべてと言つてもいいでありましようが、日本に対して決していい感じを持つておらないそうであります。ことにオーストラリア、ニユージーランド等は、日本の再興といいますか、再び軍備を備えて、そうして日本が立ち上りはしないかというので、相当恐怖の念を持つておる。その恐怖の念は漸次薄らいで行くようでありますが、とにかく恐怖の念があるということは確かであると思います。この前オーストラリアの代表として日本におつたマツクマホーン・ボールが、最近「日本は敵か味方か」というごく露骨な表題で本を書いておるような始末で、これらの国の日本に対する反感をぬぐつて、そうして日本に対する好意にまで転じさせるのには、やはり相当な時が要するのであろうと思います。  ただひとりアメリカに至つては、これは最近日本に対する感情が非常によくなつた。これは日本人でアメリカに往復した人の常に言うところであります。その原因はどこにあるか、特に調べたわけではありませんが、日本から帰る、アメリカの軍人というような人が、日本人は実に親切な国民である。いい国民であるといつて、非常にいい感じを持つてつて日本状態を親戚、知己、友人に話をするのであろうと思います。現にキーナン氏から私のところに二、三日前に手紙をもらつたのでありますが、自分は日本において非常に愉快に暮した、日本人の実に正直な親切な気持をよく自分は了解して帰つたといつて、非常に好意のある手紙を寄せて参つたのであります。そういうふうにアメリカ日本に対する感情は非常によい。しかしアメリカを除いた一というとはなはだ心細いことでありますが、日本に対する戰争中の感情がすべてなくなつたとは言われないのであります。この空気において講和條約、講和問題が取上げられるのでありますから、日本の立場は決して自由ではなく、日本に対する好意に満ち満ちての講和條約、講和会議ということは考えられないのでありますから、ここにおいてわれわれが講和会議促進し、講和條約の内容をよくするためには、日本の国家、国民の性質、気持をよく徹底するように努めなければならないと思うのであります。すなわち日本において民主主義が徹底しておるのである、日本は防禦をなくすことにおいて徹底するのである、平和に終始するのである、しかも進んで世界の平和、文化に貢献するかたい決意を持つておるということを内外に示して、そうして連合国においても、この国を友邦とせずして世界の復興なり平常化ということは待ちもうけられない、こういうような感じを與えるようにしなければならぬと思います。これが私の講和会議はわれわれの日々にあるものであると申すゆえんであるので、講和会議内容をよくするためには、列国の日本に対する信頼の念を高めるということが第一であると思うのであります。また逆に申すと、日本相当な国で、民主主義に徹底しておる国であり、世界の民主主義を助ける国であり、将来有力な国となり得る国である。しかもその文化は高い、国民の性質は正直であり、勤勉であり、世界の経済復興を助けるのに足るということを世界に印象づけることが、すなわち講和條約の内容をよくするゆえんだと私は確信するので、そこで私は講和会議はわれわれの日々にあると申すゆえんであるのであります。そこで私として希望を述べれば、日本の復興再建は非常に堅実に歩を進めつつあるのである、また日本は再び軍備を通じて世界の平和を脅かすというような気持は毛頭ないのである、のみならず進んで平和を助け、世界の平和に貢献しようというかたい決意を国民は持つておる、こう印象づけないと、日本はなお平和を害する危険な国であるということであれば、講和條約の内容は自然日本に対して苛酷になると思います。また逆にこういう国民であると考えられて、しかも国民の希望を講和條約の内容に取入れなかつたということになれば、日本国民の希望意思に反する講和條約を押しつけるということになれば、自然その條約は行われないことになる、やがて将来に禍根を残すものであると列国で考えるようになつてこそ、対日講和日本に有利にできるものと私は確信するのでありますから、どうかこの点においては、国民をあげて世界の好感情を招くとともに、誤解を去るように努めたいと思います。  また講和会議において、いかにも堂々と日本の主張を通すことができるように考えておられる人もあるようでありますが、第一次戰争のあとのベルサイユ会議状況を申し延べれば、講和條約草案ができて、列国の間に合意ができて、そこでドイツの全権をパリーに招集したのでありますが、そのとき私の記憶では、クレマンソーがドイツの全権に対して、二十四時間内にこの草案に対してイエスかノーかをはつきり言つてもらいたいという宣言であつたドイツ人のことでありますから、何でも二十四時間内とかに対策をつくり上げて印刷し、クレマンソーのところに出したといううわさもあります。しかしいずれにしてもドイツが対策を出してもその対案は顧みられなくて、たしか第一回に来た全権は引揚げて、第二回目において調印したと思います。先例はかくのごときものであつて講和会議で論難をすることは事実できないことであり、またそれだからといつてこの條約の調印を拒むなどということは事実できないことと思います。でありますから平生においてわれわれとしては世界の日本に対する好意なり、了解なり一誤解を與えないように、日本は列国に対して危惧の念を抱かしめざるように、真に日本が平和国民であり、民主主義に徹底する国民であり、世界の平和を増進さしても妨げる国民でないということを十分了解せしむることが、われわれ今日において努むべき道と考えるのであります。  その他講和條約についてわれわれはいまだ連合国から何らの指示を受けておりません。新聞以外に何も公然の通知なり報告は受けておらないのであります。従つて講和問題についてどうこうと仰せられても、こうであるとか、ああであるとかいう一つの公式の回答あるいは説明は、私においてできないのであります。するだけの材料が現実にないのであります。でありますから自然仮想の問題について論議することになりましようが、これに対して外務大臣として一々意見を述べることになれば、これは結局誤解の種であり、うわさの種であり、国家のためにならぬと考えますから、常に申すことでありますが、仮設の問題について、あるいは将来講和條約の草案後に起るべき問題に対して、とやかく私がここにおいて諸君に説明なり、何なりをする材料もなければ、しない方がいいと考えますから、こういう問題についての説明なり回答なりは私において差控えたいと思います。
  53. 菊池義郎

    菊池委員 ただいまの総理のお言葉によつて質問を封ぜられたような形でありますが、わが党の総裁のことでありますから甘んじて了承いたします。昨今の新聞を見ますと、アメリカがただいま起草中の日本に対する講和條約の草案なるものは、実は講和條約ではなくて、戰争状態終止の宣言の案ではなかろうかということであります。平和條約の早期締結が困難であるという見通しのもとに、こういつたような案を考慮しておるのではないかと思われるのでありますが、過般十日に開会されましたパリの米英佛三国外相会議は、ドイツとの間の戰争状態の終止宣言を行うことを決議したと言われておる。去る十五日に西独の総理に対して戰争状態の継続によるいろいろの障害を除くであろうということを通告した。これに対しまして、総理の方からは、連合国との戰争状態の停止方を要望して来たということでありますが、米英は日本に対してもやはりこういつたような宣言によつて、戰争状態に伴うところの各種の障害を除いて、日本を国際社会に復帰せしめようとしておるのではないかというようにわれわれは考えられるのでありますが、これも仮定の問題ではありますけれども、このくらいのことは親切にひとつ総理の御意向を漏らしていただきたいと思うのであります。それ以上申しません。  それからこれは問題が違いますが、時間がありませんので、いろいろのことをとりまぜてお伺いいたしたい。  来春早々開会せられるところのアジア防衛同盟会議につきまして、日本政府はどういう態度をもつて臨まれるおつもりでありますか、これをひとつ教えていただきたいと思います。  それから私がいつも言つておりますのは移民の問題であります。八千万の人口が四つの島にあふれて、年々百五十万もふえておる。どうしても吐き出さなければならぬのでありますが、吐き出せばあとに残る人も楽になり、出て行く人もさらに楽な生活ができる。この移民の問題は、講和條約がもし締結されるといたしますならば、講和條約に織り込まれるつもりであるかどうか、この点をお伺いいたしたい。  また講和條約なくとも、この移民の問題につきましては、今日より政府はいくらかでも骨を折り一インドネシアの大統領スカルノのごときは、日本人が国籍を脱して来れば、二千万人を受入れる用意があるということを手紙で言つて来ておるということを聞いております。そういう條件がついておりますが、日本の国籍を脱して向うで働いて、日本へ帰りたくなつたら、また向うの国籍を脱して帰つて来ればいいわけで、これは自由自在でありますが、どういう條件がついても、どしどし日本人をたくさん外国へ吐き出してやりたいと思う。厚生省でも二千万人どうしても出さなければならぬということを言つておるそうであります。向うから二千万人というなら、こつちから四千万人くらい行く余地はたしかあると思います。今日からでも南方方面に対しましては働きかけていただきたいと思うのでありますが、総理のお考えを伺いたいのでございます。  それから追放の問題でありますが、われわれも辛うじて追放を免れておる一人であります。紙ひとえの口でございます。われわれのようなものは別といたしまして、地方農村の村長とか、村会議員とか、こういう連中がかわいそうに国際情勢も何も知らないで、ただ機械的に戰争に協力させられたというだけでもつて、追放になつておるのでありますが、これは日本再建のためにも非常に惜しむべきであつて、こういう機械的に戰争に参加したという連中は、どうしても政府でもつて司令部の方に働きかけて、追放を解いてやるべきであろうと思うのでありますが、こういう点について総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  54. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 もつと親切にお話をしたいのでありますが、何分材料がありませんから簡單でありますが、知つておるところだけ申しますが、今後の講和條約とか、講和という問題は、單に日本との間に戰争状態を終止するという意味ではないのであります。戰争状態は少くともアメリカ関係においては事実終止したとも言えるので、現に向うからも来、こちらからもずいぶんたくさんの人がことにアメリカに出ておるわけで、これが戰争状態であつたら出て行けもせず、またバイヤーによる貿易もできないわけでありますから、戰争状態は事実終止しておると思う。とすれば、今後の講和條約というものは、それ以上の内容を持つべきものであると私は信じて疑いません。  第二は、これは日本としては今日参加する権利がないのであります。外交を停止されておる状態でありますから、招請を受けてもこれに応諾はできないと思います。あるいは司令部あたりがぜひ参加したらよかろうというような相談があれば別でありますけれども、單独には決定できない問題であります。  それから第三は移民問題ですが、先ほど申した通りに、日本の移民は、日本に対する恐怖の念が盛んである間は、ある国は別として、全体的に申すと、講和條約の問題として取扱う場合にどうなるかちよつと申しにくいのでありますが、しかし日本の移民が出て行くためには、日本の移民は勤勉であつて、そうしてその国の復興を助ける資格のある国民であるということを、相手方あるいは世界が認識しなければむずかしいだろうと思います。これは講和條約の問題をからめて……。しかし講和條約ができるときになれば、移民はともかくとして、日本と外国の間に自由に渡航をし、もしくは往来もできるはずであります。移民という特別な問題になりますと、さらに今日においては私は希望はとにかくとして、講和條約にこういうふうに書かれるだろうということは想像もつかないことであります。政府としてはなるべく移民の自由も得たいと思います。  それから追放問題、これは私も同感でありますが、これはただいま向うの意向を探つておるというよりも、交渉中の問題でありますから、しばらく経過をお待ち願いたい。
  55. 岡崎勝男

  56. 戸叶里子

    戸叶委員 最初に吉田総理大臣からのお話によりまして、講和の問題は日本国民の日々の生活にある。日本の国内における絶対平和を守つて行く精神に徹底し、世界の平和に貢献的であれば、講和が非常に有利であるというお話を承りまして、私もたいへんうれしく思つたものでございますが、この精神に徹して、私は私の安全保障に対する考え方を申し上げてみたいと思いますので、吉田総理のそれに対する御批判を伺いたいと思うのであります。  安全保障の問題に関しましては、集団保障か、あるいは永世中立か、いろいろ言われておりますが、私はこれらの二つの対立した意見が少し問題の中心をずれていはしないか、そう考えるものでございます。それはなぜかと申しますならば、日本の国は新憲法によつて戰争放棄、非武装、絶対平和というその精神に徹しておりまして、そういう精神を付與せられております。この精神というものは結局ポツダム宣言を母体としてできたところの新憲法の精神であろうと思います。従つてこのポツダム宣言の署名国は、日本のこの国家性格、すなわち永世中立国的な国家性格というものを、すでに容認しているはずであろうと思います。と言うよりは、むしろこの四箇国は、少くともこういう日本のような新しい国家性格を持つ、永世中立国的国家性格を持つた国を、国際社会の一員として育成して行く義務があると思われるのであります。そこでただ永世中立国がいいか、あるいは集団保障がいいかというような、対立した観念の論議に終るだけでなしに、むしろもつと積極的に、日本の国は永世中立国的国家性格を持つて国連に加入し、集団保障を受けて行くという態度が望ましいと思うのでありますが、これに対するお考えはどうであるか、伺いたいと思います。
  57. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは、あまりに具体的というか、話が具体的になり過ぎて、現在問題になつた場合には、とやかく何しますが、一つの理論として局外中立がよいか悪いか、あるいは団体保障がよいか悪いかということは、あまりに具体的であるごとくであつて、従つて私としては、自分はこうがよい、こういうことは、外務大臣としては意見を述べる自由がないことを御了承願いたいと思います。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣として意見を述べることができないとのお話でございましたが、りくつから言えばそうあるべきではないかと思うのですが、それに対してどう思われるでしようか。
  59. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 それはとにかくといたしまして、私の職務上、局外中立がよいと申せば、局外中立を政府として、現内閣として、そう考えておるとかいうことになると、これがまた中心になつていろいろなうわさを生じますから、今日のところは、なるべく波風立たずに参りたいと思いますから、意見を申し述べたくないと思います。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうにおつしやつてしまわれると、どうもとりつく島がなくて困るのですけれども、たとえば、さきごろ吉田総理大臣は、十月四日の国際連合憲章発布第四周年記念日に、日本もなるべく早く国連に加入したいとのメツセージを贈られております。私はそのときに、実は国連憲章の中にあるところの制裁規定と、それから戰争放棄の新憲法の精神を持つている日本の国と、矛盾するのではないかと心配したのでありますけれども、しかしスイスが永世中立国でありながら、国際連盟に加入を許されて、その国際連盟への加入の場合にも、いろいろと議論されたところでありましたけれども、一九二〇年の二月にロンドンの理事会において、結局スイスが軍事的制裁に参加すること、あるいは領土内を軍隊の通過すること、あるいは領土内に軍事行動を準備するというような、そういう條件を許して、例外として国際連盟への加入を許されたという歴史を聞いたのでありますが、日本の国も、国際連合に加入の場合には、日本の国として新しい国家性格を持つているのですから、このままの国家性格を持つて、国際連合への加入を許してほしいとのお考えを持つて、こういうメツセージを贈られたかどうか、その辺のことを伺いたいと思います。
  61. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 国際連合は結局世界の平和を中心にして、世界の平和という理想のもとにできておるのでありますから、その団体に入ることは、われわれも希望いたしますが、入るについていろいろ條件があるだろうと思います。日本は軍備を持たなくてもいいとか、あるいは何とかいろいろ條件があつて、その條件について相当に交渉した後でなければ入れないことであろうと思います。でありますから、これは、いよいよそういう問題が起つたときでないと、今日單に希望を述べるだけならともかくでありますけれども、たとい局外中立をする、何とか連合に入るということになつても、さてその條件がどうかということになつて、いろいろ議論が生じるわけでありますから、お答えはしにくいと思います。
  62. 岡崎勝男

    岡崎委員長 次は竹尾弌君。
  63. 竹尾弌

    竹尾委員 私のお尋ねはきわめて簡單で、與党の総理大臣を私はいじめるようなつもりは一つもありません。そこで簡單明瞭に三つのお尋ねをいたします。そのうちの二つ半は首相に対しまして、あとの半分は大野政務局長に対して、これは簡單でございますから、お尋ね申したいと思います。  第一は、国際情勢に対する認識に関する根本の問題で、きわめて抽象的なことでありますけれども、現在御承知のように、二つの陣営が世界的に相闘つておる。そこでこれは一九四七年の九月と思いますが、ソ連がコミンフオルムの結成にあたりまして、あのワルシヤワ大会で宣言された宣言文が、私は非常に重大だと思つております。それには、かつてソ連が主唱して来ましたところの人民戰線の戰術を完全に放棄いたしまして、そうして今まで提携した米英こそわれわれの敵である、最後に残された帝国主義陣営の諸国である、これに対して徹底的な抗争をしなければならぬ、こういうような声明をしております。そこでソ連の態度が、いわゆる彼らの世界政策の遂行をやらなくではいけない、こういうことで今ソ連外交の根本方針は進んでおると私は思います。そういうことを考えますと、ソ連から言わせれば、最後に残された帝国主義陣営との争いというものは、ソ連自身の世界政策の方針を放棄せざる限り、これがやがて第三次世界大戰の勃発の契機となると私は思つております。また現在契機となりつつあると思いますが、総理大臣は、現在の情勢をもつて第三次世界大戰の危険があると思うかどうか、こういうことをひとつお尋ね申したいと思います。  第二番目は、もしそうした危險がありますれば、今首相の言われました通り日本国民は一丸となりまして、世界平和のために働かなくてはならぬ。幸いにわが国の憲法が、あらゆる意味におきまする戰争を絶対に放棄する、こういうことを言われておる関係からも、私どもは全力をあげまして、世界平和、世界外交のために働かなくてはならぬと思うのであります。そういたしますと、現在占領下であるから外交がないというようなことは、これはもつてのほかの話でありまして、今こそ大いにこの外交の実をあげなくてはならぬと思いますが、その点につきまして、世界の平和外交に対しては、あるいは諸国間の文化交流であるとか、あるいはまた貿易促進であるとか、そうした面から世界平和を促進することもございましよう。しかしながら、こうした時代におきまして、私はあえて申し上げますが、やせても枯れてもわれわれの総理は、天下の大宰相であると私は思う。その大宰相がこうした時代にいわゆる世界的憲法をひつさげまして、いかなる世界外交の実をあげられるかというその御抱負、御識見があるはずでございますが、その点につきましてお尋ね申し上げたいと思います。  第三番目はこの間総理がお見えになりませんでしたので、川村政務次官が御答弁になつたようでありますが、むし返すようですが、專任外相設置の問題であります。これは総理は参議院でそういう必要はないとこうおつしやられたようでございますが、われわれの目からもつてしますれば、今こそ優秀なる專任の外相を置かれ、その下に優秀なる政務次官を置かれて、この難局を乘り切るのが至当であると私は考えますが、首相がそういうお考えがないと言われるその理由を、ひとつここでやや詳細に御答弁願いたいと思います。  それから首相は專任外相を置かれぬと申しますが、ここに外務省の最高首脳部の方々がおられますから、私は大野政務局長にその代表としてお尋ねするのですが、総理大臣がその必要はないとこうおつしやられるけれども、あなた方外務省の首脳部としてはその必要があるかないか。それをひとつ御答弁願いたいと思います。
  64. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 第三次戰争があるかないかという大議論を私がここでもつてするということは、実ははなはだ迷惑千万のことでありますが、例外としてお答えしますが、私は第三次戰争はないと信じます。何百年の後は知りませんが、さしあたりはないと存じます。何となれば大きな戰争があつた後に、一時平和が危殆に瀕することはいつの時代においてもあつたことで、御承知通り第一次戰争のときも、ルールの占領からまさに平和が破壊されようとしたということがあるわけでありますから、大きな戰争があつた後に、ときどき小なる勃発が生ずるということは、普通の状態である。従つて一時平和が危殆に陷ることもありましよう。しかしながら今日どの国も平和を望んでおりまして、いくさはもうたくさんだという気持、これが世界の輿論だと思いますから、私は第三次世界戰争はまのあたりないと確信しております。これは私の確信ですから、当てにならぬかもしれませんが、とにかく今おつしやつたようなことはまずないと思います。  それから第二の專任外相を置かないかというお話でありますが、ただいま幸いに私は天下の大宰相でありますから、従つて外務大臣などは置く必要はない。従つてまた私の部下にそれに反対する者があつたならば、これは私が処分せざるを得ない。こう思います。  それから平和外交は、これは私がさつきも申したように、平和外交というか講和会議は日々あり、現に国民外交を最も必要とするときであるので、外交は停止しておるとは言わぬ。停止しておるというのは私の外交が停止されておるので、日本国民としては日々この外交をやつて、大いに日本国民の性格を知らせるべきである。こう思つております。
  65. 岡崎勝男

  66. 並木芳雄

    並木委員 御質問を申し上げます。一切り離してやるつもりでありましたが、委員長は何か時間を戸叶さんのときに少し短縮したような感じがいたしましたから、まとめてやりますから総理大臣もまとめてお答え願います。  第一番目に、私は一番先に質問しようと思つたのですが、冒頭首相が発言を求められて、機先を制せられたのですが、国際情勢について丁寧なる解説があつたことを感謝いたします。去る第五国会の終りに本会議で私が緊急質問したあのときと、今日までの間におきまして、ただいまの御見解のように率直に世界情勢は好転しておるか、停頓しておるか。あるいは後退しておるかということの御説明をお願いしたいと思います。それと同時に講和会議を迎えるにあたりましての国内の情勢、こういつたことが、首相の希望されるような方向にうまく行つているかどうか、これもお尋ねいたします。  それから情報で講和会議のことが論ぜられておりますが、首相の見通しとして、今まで通り講和会議が案外早い、こういうふうな見通しであられると思うのですが、その点もお伺いします。これに関連して去る八月ころ朗報説というものがどこからともなく伝わつたのですが、首相は講和会議のことを予期して朗報と結びつけられたのであるか、あるいはまた朗報と言われておる中に、そのほかに講和会議以外のもので、現在でも他に期待されておるものがあるかどうかということをお尋ねします。  第二点は全面講和に対する熱意ということですが、これは首相が国連に加入したいという一首相のいわゆる仮定のことになると思うのですが、そのあげ足は私はとりません。それで率直に全面講和ということは、当然希望、熱望するものであると私たちは思つております。それでこの間の施政方針演説の中に期待しておつたのですが、出ておりませんでしたので、ちようどいい機会ですから、ひとつただいまのような大きな声で、当然全面講和を希望するということを呼びかけてもらいたい。こうお願いするのであります。  第三は国民にいろいろ知らせてその意見を聞くのでありますが、それについて国民の方としても、よく首相の先ほどおつしやつたような点は取入れつつ発言なり行動なりに注意しておるのです。その場合にどこまでそれが届くものか、われわれが大いに平和を要求する気持なり、行動は当然認められて来るとは思いますけれども、講和條約を結ぶ場合になりまして、憲法第七十三條に国会承認を経るを要するという條項がございます。そこでこれはお伺いしておきたいのですけれども、私などは講和條約が調印される前に国会に出されるというふうに了解しておるのですが、これはむしろ手続の問題だと思います。お教え願いたいと思います。  第四は国民の意思でございます。首相はこのごろ国会に対しても、国民に対しても、その意思を聞くということを仰せられておるので、われわれ喜んでおるのですが、具体的に国会中心主義で国民の意思というものをはかられますか、あるいはそれとも国民運動というようなものを起すことをお考えになつておるか。そういう点について国民の動向をどうして知るか。あるいはこの前の選挙でも現内閣で講和條約に結びつくその手続は国民の了解を得ておるのだからという御意向のようですが、講和の方向について、たとえば全面講和か單独講和かという問題が起つて来たときに、重大要素において変更を来したものと認められて、たとえば総選挙によつてもう一度国民の意思を問うことも、考えられるであろうと思うのでおりますが、こういう点について、特に民主主義を強く主張される首相として、国民の意思をどういうふうに知り、はかられるか、具体的の方策をお聞きしたいと思います。  第五は外相の問題であります。ただいま竹尾委員から非常によい質問が出まして、繰返す必要はないと思うのですが、首相はこの前まだその時期でないとおつしやつたが、時期が来たならば岡崎君のような人がおるのだから外務大臣を任命するとここでおつしやつた。ところが外である新聞記者団との会見で、適任者がいない、おれを除いてたれが外務大臣になるかということをおつしやつた。ただいまも大宰相であるからと言われた、たいへん力強いことはけつこうでありますけれども、私もその時期が来たと思う。どうかひとつ適任者もあると思いますので、ぜひ大宰相のもとに中宰相をおつくりになつて、その下に小宰相の政務次官を置いて万全を期していただきたい。そういう考えをもう一度お伺いします。  それに引続いて第六点は、外務政務次官は今まで婦人の外務政務次官を非常に尊ばれて二回も連続して置かれた。そこで当然第三回近藤政務次官というものを期待したのですが、突如として川村次官にかえられた。しかも一一答弁するときには政府委員のメモを借りて、しかもそのメモ通りやらないといつて、たれかに怒られた。そういうような政務次官を置いたのでは、とうていこの大宰相のもとにおいての役割は勤まらないと思う。どういう理由で突如政務次官をかえられたか、これを伺いたいと思います。
  67. 岡崎勝男

    岡崎委員長 並木君、時間が来てしまいました。
  68. 並木芳雄

    並木委員 ではもう一点。首相の特に主唱される通商外交、領事派遣のお話はどうなつておるか。日本の外債償還は非常にけつこうなことと思いますので、着々準備は進められておると思うが、この点どの程度の準備が整えられておるか。以上御質問申し上げます。
  69. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 お尋ねの朗報云々ということでありますが、この朗報は私が出した朗報ではなくて、第三者が出した朗報でありますから責任を負いません。  それから全面講和は当然のことであるが何と考えるか、全面講和はむろんいいのにきまつておる。私は連合国といえども全面講和を希望しておるであろうと思います。その全面講和ができなかつた場合は、どうなるかといえば、單独講和といいますか、少数の国との講和にもなるかもしれませんが、これこそ現在問題になつておらない仮設の問題でありますから、答弁を差控えたいと思います。  事前に国会におけるかかけないか、抽象的に申せばかけるのがあたりまえでありましよう。しかしながら事後承諾を求めなければならぬほど急速な場合も生ずるでありましよう。今日講和條約は連合国のさしずによつてきまるので、先ほど申したように実際にはドイツの例もありますし、われわれが主張をして、そうして聞かれなければ講和條約を承知しないなんというわけに行かないでありましようから、そのときの事態になれば、あるいは事後承諾になるかもしれません。これはそのときの問題であつて、今日あらかじめこうなるだろう、事後承諾になるだろうと私が申す理由もなし、普通は国会承認を経て、そうして條約を結ぶということになるだろうと思います。  それから総選挙をやるかやらないかというお話でありますが、これも将来のことですが、私は総選挙の必要はないと思います。これはこの間も申した通りに、この前の総選挙のときにすでに講和という問題があつたのでありますから、特に講和のために総選挙をする必要は私はないと思います。  次に外相專任のお話でありますけれども、いまだ時期に至らないものでありますから專任しないのであつて、今は大宰相が兼任しておるのがいいと思つております。政務次官をなぜかえたかという御質問でありますが、これは私としては三回でも四回でも、適任の人が就任しておられたらよかろうと思つておりましたが、党内事情でかえた方がいいということでかえたわけであります。  通商外交、領事派遣のことは、これはやがて希望通りになし得ることだろうと思います。外債償還は、日本国の義務に属しております対外債務は、できるだけ早く政府として返したい、たしか予算措置も講じておるだろうと思います。これは来年度の予算のときにいずれ御承知になるだろうと思います。  国際情勢はますます好転するだろうと思います。またすることを希望いたします。
  70. 岡崎勝男

    岡崎委員長 仲内憲治君。
  71. 仲内憲治

    仲内委員 まず中共政府承認の問題でありますが、ただいまもお話がありました、いわゆる全面講和というものが希望されることはもちろんでありますけれども、この全面講和ができるかどうかの問題は、主としてソ連の態度いかんにあることはもちろんであると想像されるのであります。同時に中共政権がどうなるかによつて、さらに中国の参加いかんの問題になつて来ると思うのでありまして、すなわち中共政権が国民政府にかわる中央政府として米英等によつて承認される場合には、中国の対日講和参加の機会は多くなるだろうと思うのでありますが、しからざる場合にはソ連、中国、両国ともに不参加の危險があるわけでありまして、日華関係の重要性からかんがみまして、まことに憂慮にたえないところであります。この点につきましては、イギリスは中国に対する特殊の権益の関係からいたしまして、承認に傾いておるというように報道せられておるのでありますが、英国の態度はもちろん友好国である米国とも十分連絡があるものと考えられるのであります。これら米英側の中国承認問題に対する態度を、総理はどう御観察になつておられるか。この問題はもちろん米英側自身の問題でありますが、ただいま申し上げましたように、單独講和あるいは全面講和かの問題に密接な関係がある問題であるばかりでなく、ひいては米ソ関係ないしは世界平和の将来にも関する重要な問題であり、国民の関心の大きい点であると思うのでありまして、これに対する総理のお考えを承りたいと思います。  次にこの前川村政務次官から一応伺つたのでありますが、この機会に総理に特にお尋ねいたしたいのは、米国の対日経済政策の動向に何かかわつたことはないか。ことに最近スナイダー財務長官を初めといたしまして、米国財界、経済界の大立物が続々とわが国を訪問せられておるのでありまして、ことに総理はそれらの来訪者とも御会談になつておることと承つております。また特に私が承りたいと思いますのは、先ほど総理の御説明にもありました通り、米ソ関係は最近非常な変化を見ており、いわゆる悪化になつております。またアジアにおける中共の進出、同方面における軍事的、政治的、客観的情勢の変化ということも認められるのでありまして、現在までアメリカ日本に対する経済政策の基調は、もちろんいわゆるドツジ・ラインにあることはわれわれの知るところでありますが、講和会議の接近と相まつて、東亜における客観情勢の変化に備えまして、たとえば現在の政策である見返り援助資金というようなものは、講和会議が済めば漸次減額ないし廃止の運命にあるのでありますが、同時にまた幸いにアメリカの対日感情がほかの国に比べて、特によろしいという先ほどの総理のお話もありましたような次第で、アメリカ日本に対する経済復興の援助、あるいはまたことに東亜における情勢の変化に応じての日本の立場ないしは役割の再認識というようなことから、何か経済的にも積極的な援助の方法が考えられておるのではないか。たとえば対日長期信用の供與、ないしは日本を本格的に国際経済機構に参加せしめるというような方向への動きは見られないか。特に今度のスナイダー財務長官の来訪と関連いたしまして、もしおさしつかえがないならば承りたいと思います。
  72. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 中共承認の問題はしばしば聞かれますけれども、実は日本国の承認が済んでおらないときに、われわれの方として中共の商人問題は議する立場にないのでありますが、希望を申せば、昔の日本本然の外交を全うすることが、日本としても存在を確かにするゆえんでありますから、希望はございますけれども、法理的に申しますと、今日は御承知通り手が出ない状態におるのであります。  それから米国の経済政策の動向というような大きな問題については、私はここで申し上げる材料もなければ、資格もないのでありますから、これは感じであります。感じでありますが、われわれのところに来る外国の資本家、企業家などの話し方、あるいは話の内容から考えてみて、何とかして日本アメリカの市場にしたい、あるいは日本の復興を助けてやりたいという気持は、これは言外にあふれておると私は信じて疑わないのであります。しかしながら、ではしからばただちに外資を導入してどうという、そこまでには至、つておらないのは、日本の受入れ態勢がいまだきまつておらないのも一つの理由であります。たとえば税制のごときはまだ確実に議会の決定が済んでおらないものでありますから、シヤウプの勧告案はありましたけれども、まだ確定しておらないという状態であります。またしきりに日本の財界は不安定であると議会でも大分近ごろ論議されておりますが、そのたびごとに、来た人がはたしてそうか、労働状態はどうなんであろうか、再びストライキが起るのではないか、社会経済問題に対する不安が、議会を通して相当衝動を與えておるように考えられるのであります。経済が不安であり、そして社会状態が不安である国に—資本家という最も臆病な人が、安んじて金を投資するという事態にならなければ、投資する人もないでしようし、投資した資本が安全であつて、そしてまたそれが利潤を生むということができるような状態にならなければ、投資はしますまい。今日のところでは、外国人はまだその利益を送金するという関係ができておらないために、この送金も今日は現にとまつておる状態で、要するに外資導入の受入れ状態がまだ完成しておらないために、希望はあつてもまだ実現されたものが少い。事実は投資した人もあれば、また投資関係もできておるでしようけれども、法律的に表面の上にこれだけのものができたという事実は発生しないのがあたりまえで、さらに法制化その他が完備しない限りはむずかしいと思いますが、しかしこれも四月以後には相当できるであろうと思います。また四月以後日本の税制が定まつた後、あるいはその他の法律がきまつた後に、投資をしたいという考えをもつて私のところに見える人もあります。  それからスナイダー氏との話は、これは同氏の承諾を得ない限り、私がこの席でひろうするわけには行きませんから、これはごめんをこうむります。
  73. 岡崎勝男

    岡崎委員長 野坂參三君。
  74. 野坂參三

    ○野坂委員 私は時間が非常に少いので、講和の問題についていろいろ聞きたいことがありますけれども、仮設の問題でなしに憲法解釈について、二、三お伺いしておきたいと思うのであります。  まず第一は第九條のあの條項の解釈で、かつてこの委員会でも自衞権の問題が問題にされて、政府委員の方から若干の御回答がありましたけれども、この問題は非常に重要な問題であるし、またいろいろの解釈もあるようですから、総理兼外務大臣の方からはつきりとお答えを願いたいと思うのであります。これは御存じのように、あの憲法が改正されたときの委員会でもいろいろ問題があつて、今の吉田総理及び金森国務大臣の方から、あの九條の解釈は自衞権がないようにも言われたし、また解釈の仕方ではあるようにも思われる。こういう解釈が一つある。それからあの委員会委員長であつた芦田氏が、その後著書の中でもはつきりとあの九條の解釈は、政府としても自衞権を日本は持つと解釈してもよろしいし、自分もそういうふうに解釈するという意味のことをはつきりと発表されております。それでまずお伺いしたいのは、あの九條には自衞権を日本が持つことができるというふうに解釈するか、あるいはしないのであるか、この点をひとつお伺いいたします。
  75. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私はこう考えております。日本は戰争を放棄し、軍備を放棄したのであるから、武力によらざる自衞権はある、外交その他の手段でもつて国家を自衞する、守るという権利はむろんあると思います。
  76. 野坂參三

    ○野坂委員 今の点で今まではつきりしなかつた点がはつきりしましたが、つまり武力によらない自衞権というものは、日本はあるというふうにお考えなつたことと私は了解いたします。この場合においても、実は政府委員の方から一昨日の委員会で、カナダのカロライン号事件のようなことをお引きになつて、ああした意味の自然発生的な自衞権はあるというふうに御解釈になりましたが、吉田総理もやはりそういうふうな解釈ですか。
  77. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 その話は存じませんが、カロライン号のごとき事件が起つたそのときに考えます。がそれ以前に仮設の問題についてはお答えできません。
  78. 野坂參三

    ○野坂委員 その次にやはり憲法解釈の問題についてお伺いしたいのは、この九條の條項は、武力を放棄したということははつきりしております。この武力はむろん日本国の武力を放棄したことで、これは言うまでもないことであるが、外国の武力が、日本に講和後においても長く駐在するということも、放棄したことになるようにわれわれは解釈すべきだと思いますが、この点について総理の御言明を願いたい。
  79. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これも仮設の問題でありまして、現に條約後においてさらに日本に武力をもつてつてくれるという申出がございませんから、はつきりお断り申し上げます。
  80. 野坂參三

    ○野坂委員 総理はどうしてそういうふうに私の質問に対してはけんか腰でおやりになるか。私もやはり国民の一人であり、主権を持つておる。もう少し親切にお答えになつていただきたい。私は今の、将来日本の安全の問題であるとか、あるいは外国軍隊の駐留という問題は、根本的な問題になつて来ると思いますから、何も仮設の問題ではなくして、憲法の解釈を私はお聞きしておるのです。あの武力の放棄というものは、外国軍隊の日本における武力も放棄したということを意味していいかどうか。言いかえれば、日本の武力に外国軍隊が代行することも放棄したというふうに解釈していいかどうか、これをお聞きしておる。憲法の解釈ですから、仮設の問題でも何でもないと思う。もう少し親切に願いたい。
  81. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 親切不親切はとにかくとして、これは講和條約後の問題であります。現在問題はないのでありますから、学校ならとにかくだけれども、講義するときではありませんから、ごめんこうむります。
  82. 野坂參三

    ○野坂委員 それは私何も学校に来ておるわけではない。またこれは何も講和会議後の問題でもないのです。今日本憲法がちやんとある、九條というものもちやんとあります。必要なら読みます。読む必要はありませんが、ここにこれをどういうふうに解釈するか、武力とはつきり書いてある。これは日本の武力だけを放棄したのか、外国の武力が日本にあつてもいいということを承認したものかどうかという、憲法の解釈ですから、これをひとつもう少し落ちついてお答えになつていただきたい。
  83. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 あなたも落ちついて問われたがよかろうと思う。私の言うのは、これは講和條約以後の問題であつて、講和條約の具体的問題が起つたときに外務大臣が答弁いたします。憲法の解釈については外務委員会のほかでお聞きになつたらいいだろうと思う。
  84. 野坂參三

    ○野坂委員 この問題は憲法の問題で外務委員会の問題でないと思います。吉田総理、あなたの内閣のときにこの憲法は制定されておる。ですから当然吉田総理はこれに対して責任ある御答弁があるべきだと思う。私たちの解釈では、外国の軍隊が日本に駐屯する権利も放棄したというふうに解釈すべきだと思つております。これについての総理のあるいは御批判でもよろしいからひとつ……。
  85. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 これは私として、外交の衝に当る者のたとえそれが個人の意見であつても、講和條約もしくは外国の軍隊、軍力等に関係する問題について、私がとやかく申すことは、国家のためにならぬと考えますから、ここではお答えをいたしません。
  86. 野坂參三

    ○野坂委員 そうすると、これは仮設の問題ではないということは、御承認なすつたはずです。今外務大臣という職務があるから答えられない。そうすれば私は総理大臣としての吉田さんにお伺いしたいのは、この問題はどこできめたらよろしいか、もし総理大臣のお答えができないということになれば、一体どこで—国会できめるのか。あるいはどういう状況のもとでこれは決定すべきものであるか、この解釈をちよつとお伺いします。
  87. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 解釈の問題は、あなたの方も御研究なつたらいいでありましよう。とにかく外務委員会において講和條約の問題になるような問題は、ここで私がとやかく申すことはできない。
  88. 野坂參三

    ○野坂委員 こうなれば押問答ですけれども、結局私はこの問題は外務委員会の問題ではなくて、憲法の解釈の問題ということを繰返し申し上げておる。この問題は今後また機会があればお伺いをすることにします。  それからまだたくさんありますけれども、先ほどこの会の始まつたときに、総理としては外国の日本に対する印象がよろしくないというふうなお話がありました。これは戰時中におけるいろいろ日本軍の行動が、今日まで災いしておるというふうに解釈されましたが、お伺いしたいのは、單にそれだけであるかどうかということ、たとえばイギリスにおいても相当目的な気分があると言われますけれども、イギリス本土に日本が侵略したのでなく、その植民地に侵略しておるし、單に日本軍のあと押しというだけの問題でなくて、私はむしろ問題は日本国内の問題ではないか。つまり戰争後における日本国内の問題が問題になつて、外国に反目的な気分をやはり今日まで続けさせておるのでないか。吉田総理のお言葉の中にも一言触れられましたけれども、つまり日本に民主主義が徹底してないということ、それから御存じのように反動的な軍国的な勢力が十分残つており、頭をむしろ持ち上げようとしておる。これがすなわち外国の日本に対する感情を悪化させておる根本原因である。第二の原因としては、経済問題があつて、これも総理が触れられましたけれども、今のようないわゆる低賃金でいわゆるソーシヤル、ダンピングを再びやろうとしておる。これの脅威に対して外国は反感を持つて来ておるというふうに、われわれはむしろ解釈しなければならぬと思いますが、これについての総理の御見解、こうした二つの大きな障害をいかにして除くかということについての総理の御見解をお伺いしたい。
  89. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私はイギリスにもそういう反感のある事実があるということを申したので、その原因については、あなたの御解釈は御解釈でいかようにお考えになつても私の方異論はない。
  90. 野坂參三

    ○野坂委員 私の解釈を言つておるのでない。総理はどういうふうに御解釈になるかということ、政治的な経済的な原因はどういうふうに私は解釈するが、総理はどういうふうにお考えになるかということを聞いておる。
  91. 吉田茂

    ○吉田国務大臣 私はそういう事実を聞いただけの話で、別段研究いたしておりませんから、ここにこうだとは申しません。
  92. 岡崎勝男

    岡崎委員長 時間が参りましたから総理大臣に対する質問はこの程度で終ります。
  93. 野坂參三

    ○野坂委員 議事進行について……。会期中に総理にもう一、二回出てもらうようにお願いします。
  94. 岡崎勝男

    岡崎委員長 また機会がありましたらできるだけ……。
  95. 野坂參三

    ○野坂委員 やり方も時間が少い。もう少し時間を與えてもらつて、問答式にやらないと問題がはつきりしないと思う。きようのようなのは答えになつてない。
  96. 竹尾弌

    竹尾委員 私の三つの一番最後のを大野政務局長からひとつ……。
  97. 大野勝巳

    ○大野政府委員 御答弁申し上げる限りでありません。
  98. 竹尾弌

    竹尾委員 限りでないというのは、どういう意味ですか。
  99. 岡崎勝男

    岡崎委員長 もう大体おわかりになつたでしよう。
  100. 並木芳雄

    並木委員 西村條約局長がおりますから御質問したいのですが、これは別に攻撃的な質問でないから警戒しないでお答え願いたい。憲法七十三條の講和條約に関する問題ですから現実の問題です。事前に国会にかけるということは、事前ということを解釈する場合に、私たちとしては調印前のことを事前というふうに考えておるのですが、その点いかがでしようか。
  101. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 並木委員の御質問に対しましては、ただいま総理からはつきり御答弁がございましたから、あれ以上私つけ加えることはございません。ことに平和会議に関連しての御質問ですから……。
  102. 並木芳雄

    並木委員 私聞き落したかもしれないけれども、総理はこういうふうに答えられたと思う。事前になるかもしれないし、事後になるかもしれない。そうでなく、もつと手続の技術的なことをお聞きしたい。つまり事前にかけるという場合、国際法上の解釈によれば、事前ということは調印の前なのか、あるいは調印をしたあと批准までの間というものが事前というふうに解釈されておるのか、そこのところをお伺いしておるのです。
  103. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 その点も御答弁いたしかねます。
  104. 玉井祐吉

    ○玉井委員 実は午前中に貿易関係の問題についてお伺いしたので、特に條約局長の方からお伺いしておきたい点が一点ありますので、御見解を御披瀝願いたい。  それは中国との間に貿易上の賠償関係の問題が残つてつて、今度は中共の方があらためて政権といいますか、現在の情勢では相当大きく中国の支配権を握つた形ですが、これが承認されるとかされないとかは別として、現在の貿易関係の問題で、中国に対して要求する損害賠償の問題は、当然今までの国民政府の方に要求すべきものか、あるいは中共が入れかわつた場合に当然にその債務を負担するものかどうか、その点をひとつここでお伺いしておきたい。
  105. 大野勝巳

    ○大野政府委員 貿易上の損害あるいはクレームの処理につきましては、大体個人と個人の関係だと思いますので、別に政府がかわるとか、新しい政府承認されるとか、そうすればそれが継承されるとか、されないとかいう問題ではないじやないかと思つております。
  106. 玉井祐吉

    ○玉井委員 今の貿易の現状はそういう形でなくして、やはり現在の日本政府の方の仲介もしくは向うの業者の直接やつておる面があるのですが、実際上これらの取引の問題になつて来ますと、特に賠償を要求する、それが解決されない。要求したがとれないということになりますと、訴訟に訴える。すでに司令部の方からも訴訟に訴えろという通告が参つておるのですが、それによれば、その裁判権はいずれの政府が持つかという問題に直接関係するわけです。日本の場合では、日本の国内だけの問題としていいのか、あるいは向うの政府とどちらの方にその裁判権を付託して行くのかという問題が起つて来ますので、その点を特にお伺いしたいと思うわけです。
  107. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまお話のような御質問でございましたら、これはやつぱり理論と実際とをわけて考えなければいけなくなると思います。理論の方から申しますと、玉井さんのお考えになつていらつしやる通りだと思います。しかし現実の問題になつて参りますと、非常にむずかしくなりまして、これは個々のケースについてよく検討して、最善の解決をはかつて行くより方法がないのであります。外務省といたしましては通産省その他関係省とよく連絡いたしまして、万遺憾なきを期したいと思つております。
  108. 野坂參三

    ○野坂委員 ちよつと先ほど総理に私が自衞権の問題について尋ねたとき、武力の伴わない自衞権は認めるというふうにお答えになつたのですが、これと、それから先週でしたか、この委員会でこの問題が出た時に西村局長の方から、政府としては自衞権を認めないというふうに解釈するというお答えがあつたように私は記憶しておるのですが、速記録を見ないとはつきりしなければ、あとでもいいのですが……。
  109. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 もう一ぺん読みましようか。記録を見てください。あの原稿通りに読みましたから。
  110. 野坂參三

    ○野坂委員 それであなたが、はつきりと政府としては自衞権はないと認めるという……。
  111. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 そういうことは決して言つておりません。そういう用語は一字も使つておりません。
  112. 中山マサ

    ○中山委員 私は昨日の新聞であつたかで見ましたら、スナイダー長官の来訪に関して、平和條約ができればアメリカの陸軍の割当の小麦というものが全然入らなくなる。そしてヨーロツパにおけるマーシヤル・プランに対するアジア・スナイダー・プランというものはない。そうすれば平和條約ができました際に、人口がどんどんふえて行つております日本におきまして、食糧の見通しは外務省としてどういうふうに、どこから取入れるか、お考えになつていらつしやるか。その問題をお尋ねしたいと思います。
  113. 大野勝巳

    ○大野政府委員 中山さんにお答え申し上げますが、何か新聞で伝えられておりますようにスナイダー・プランであるとか、あるいはガリオア、イロア資金がどうなるかといつたようないろいろな報道がございますが、それらにつきましては、確実な情報をまだ持つておらないのであります。ただ御心配のような、将来万一援助資金がなくなつたような場合、講和條約のできたあとの場合のことを、中山さんは御心配になつていらつしやると思うのでございますが、その問題に関しましては、今後わが国の食糧事情に関しまして、一方では何と申しましても国内生産を増強するということに努力するよりほかないのでありますが、しかし他方何とかして食糧生活を確保するために、絶対的に輸入しなければならない最小限度の必要な食糧輸入に関しましては、これはますます貿易を振興して、わが国の輸出によつて広く各方面から食糧を輸入してまかなつて行くということ以外には、今のところ考えられないと思うのであります。その意味におきまして、大いに貿易を振興してそれで対処して行く、こんなふうに外務省としては考えております。
  114. 並木芳雄

    並木委員 いろいろ質問がありますが、またこの次の外務委員会に讓りまして、一つだけこの間から大野さんにお願いしておいたことについて、お聞きしたいと思います。それは、占領軍要員に対する連合軍としての制限緩和の事柄で、これは渉外局から発表になつたので新聞にも出ておつたのです。ところが要員に対する制限緩和したいろいろのこまかいことが書いてあるのですけれども、なかなかわれわれ日本人側にわかりにくい点が多いのです。たとえば「特に立入禁止の掲示がない限りすべての日本側ホテル、旅館、劇場の利用、但しどんな場合にも、飲食物は許可された施設または個人から入手しなければならない」とか、その第五に「家事使用人または日本人知人に贈物をしてもよい、但し品物の売却、取引、交換および外貨や日本円の使用に関する現行規則に違反してはならない」、これらのものもなかなかわかりにくいのです。六のところでは「PX、シツプス・ストア・コミサリーから購入した以外の個人の私有財産(自動車を除く)を占領軍要員、一般外人または日本人との間に売却、取引、交換してもよい、但しこうした売却、取引、交換によつて日本円を取得してはならない、しかし多少でもやみ行為らしい意図のある場合にはこうした取引はもちろん禁止」、こういうことは、よくわれわれも研究してはつきり分析すればわかるのではないかと思いますけれども、何分にも周知されておらない。それで私が二、三聞いたところでは、ある所ではつかまらなかつたけれども、当然これによつて許されると思つてつた日本人の行為が警察へつかまつた。こういうことで混乱を生じておりますので、この点についてわかりやすい贈いものの関係、それから物の売買の関係、旅館とか飲食物に対する関係等につきまして、クリスマスも近くなつておりますので、こういうことで日本人が思わぬ損害をこうむらぬようお示しを願いたいと思います。
  115. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの並木さんの御貸間につきましては、先般も懇切丁寧な答弁がほしいという御要求が、ございましたので、外務省といたしましても、よく勉強しておいたのでありますが、実は私も勉強してみたところ、やはり並木さんの言うようにわかりにくいところが多々ございます。そこで本日特に外務省の連絡局の次長をいたしております小田部君をここに説明員として連れて参つておりますから、小田部次長から詳細に御説明申し上げさせたいと思います。
  116. 小田部謙一

    ○小田部説明員 実は一番最初に申し上げますと、これは進駐軍の方に九月十三日にサーキユラーがまわつております。回状の二十三号でまわつております。これを九月二十三日に新聞発表したのであります。それでそのうちの今御質問になりましたことを申し上げますと、進駐軍の要員の人は、今までは日本側のホテルとか旅館とか劇場というものは原則としてオフ・リミットになつておりまして、これに入れませんでした。しかし今度はこのサーキユラーによりまして入ることができる。但し食べ物に関しては、進駐軍はそこの旅館から買うとかいうようなことはできないで、自分の方から持つて来て旅館にとまるだけならいい。旅館に関してはこういうふうな建前になつております。それでございますから、進駐軍がいまだに料理屋とか飲食店に入つて日本のものを食べるということは、この回状によつても禁止せられておる次第であります。  それから日本の知人に対する贈りものの点でございますが、この贈りものは、いわゆるこのサーキユラーが出ます前は、たとい善意の贈りものでありましても、進駐軍のものを持つておるということだけでつかまつたのでございますが、この回状が出ましてからは普通の贈りものとして善意にもらつたものはこれを処理してよろしいということでございます。これに関しまして、前の進駐軍の不法処理に関する政令が昭和二十二年に出ておりますが、その改正を必要とするわけでございます。しかしこれはまだ手続中でありまして、とりあえず法務府から十月四日並びに十月二十日に全国の検事長にあてまして、この政令の解釈というものを出しまして、そうして進駐軍からのものを贈りものとしてもらつた場合には、善意にもらつたと思われる範囲内においては問わぬ。但しこれがもしつかまつた場合などにおきまして、限度を越えていて、これをほかに転売する目的だとか、やみ行為をする目的だとか、そういうふうに使用されるおそれがあると判定された場合はいけない。こういう意味でございます。  それから最初に旅館のことにちよつと触れましたけれども、旅館のことに関しましては、進駐軍がただいまやはりこれに代金を拂う。その代金を拂うときに課税をしてもよろしいということが、十一月にサーキユラーで日本の各都道府県知事に出ております。それのもとをなしておりますものは、最高司令官から来ました指令がもとになつております。  それから物の売買でございますが、PXとかコミサリーとかシツプス・ストアーシツプス・ストアと申しますと海軍の方でございますが、それから買いましたもの、それにもう一つ自動車を含みますが、そういうものは除きまして、そうでなく個人の私有財産は日本人に売ることはさしつかえないということになつておりますが、その点疑問になりますことは、実はこの回状の中に入つております通り占領軍の要員というものは、日本の円を売買して獲得してはいけないということになつておりますから、事実上日本人に物を売ることが進駐軍要員に関してはできない。但しこの回状は進駐軍のみでなくして、その他バイヤーとか、その他の者に適用されまして、そういう者は日本の円で商売することができますから、その程度においてはできるのではないかと思われます。
  117. 並木芳雄

    並木委員 それははつきりできるんですか。そのことが非常に問題です。大丈夫ですね。
  118. 小田部謙一

    ○小田部説明員 その進駐軍要員に関してはできません。但しそれが日本のやみをするとか何とかいうようなことのためにすることはできないということに解釈しております。大体それだけであります。
  119. 岡崎勝男

    岡崎委員長 よろしゆうございますか。
  120. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  121. 岡崎勝男

    岡崎委員長 別に御質問ございませんか。
  122. 野坂參三

    ○野坂委員 ちよつと事務的なことですけれども、簡單に大野局長にお伺いしたいのです。私が十月二十九日に国内啓発宣伝に関する質問主意書というのを政府に出して、これに対するお答えがありました。ここに印刷物として、啓発宣伝について日にちとか人とがありましたけれども、私が一番お聞きしたいのは講演の内容です。これをお聞きしたら、外務省には内容についての記録がないというようなお話ですけれども、漏れ承るところによると記録があるようです。速記録がある場合もありましようし、ない場合もありましようし、北海道のユネスコなんかから出しておるところでは、ちやんと印刷に付されたものがあります。それから講演者が、外務当局に対してどういう講演をしたかというような報告書もおそらくあると思います。なければならぬと思いますから、こういうものを私の方で拝見したいと思います。これをひとつお願いいたします。
  123. 大野勝巳

    ○大野政府委員 野坂さんの御質問お答えいたしますが、外務省員のやつております講演というものは、国際情勢、ことに各国における政治、経済事情に関する問題について、外務省で收集いたしました資料に基いて行われておるわけであります。これはもう書面によりまして多分御承知つておると思います。外務省では、個々の外務省員が一々地方へ参りまして、講演をいたしますのにつきまして、その内容についての速記録とか、あるいは速記録、に近い詳細な記録というものは事実のところ持つておりません。従つてただいま御言及になられたような、何かユネスコの話の記録でございましたか、今野坂さんがおつしやいましたが、まれには地方で話したことを、その主催者の方できつと速記をとつておるのがあるのかもしらないのでございますが、そういうのがあるいは印刷に付されたりすることはあり得ると思います。しかしそういうものは別に外務省でその速記録をとりまして、そうしてそれに基いて出版されるとか何とかいう趣旨のことではないのでございまして、従いまして、どうも個々の外務省員が地方でやります講演につきましては、これを聽講する者がメモをとつたり、あるいは速記をとつたりする以外には、その内容を一字一句漏らさず知るというわけには参らない次第でございます。さよう御了承を願います。
  124. 野坂參三

    ○野坂委員 何もステノグラフを要求しておるのではありませんで、講演者が、たとえば大野政務局長かその他の責任者に対して、こういう演説をやつたというふうに報告があるだろうと思います。これを私たち見せていただきたいということであります。ちよつと申しますけれども、なぜ私がこの問題を二、三回にわたつて質問しますかと申しますのは、地方でおやりになつた講演者の人にも使います。一部の講演、者は明らかにある政治的な意図をもつて講演されておるというふうな形跡が非常にはつきりしておるのです。これは私は外務省の役人として当然やるべきでないし、ことに今の日本連合国管理下にある。この場合においては連合国を誹謗することは禁ぜられておるはずです。一般人でもそうですし、ことに外務省の官吏はそうであるべきである。ところがこの講演者が出かける前に、ここに行けば必ず共産主義者がおつて質問するだろうから、この質問に対してはこういうふうに回答するがいいだろうというようなおぜん立てがちやんときめられて、出版されておるということを私も聞いております。そうなれば私はたいへんな問題だと思う。この意味で私は、この講演者が外務当局に送られたところの報告書を拝見したいと思いますが、その点はどうですか。
  125. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまお答えいたしましたように、外務省員が地方において招待されまして講演をいたす材料というものは、すべて外務省の収集し、かつそれに基いて研究した結果を基礎として話しておる。こういうふうに御了承願いたいのでありまして、従つて最も客観的な立場に立ちまして、国民の国際知識の増進に努める、また国民の民主化の一助ともいたしたい、こういう趣旨でやつておる次第でありまして、特定の政治的意図をもつてこれを行うというがごときことはございません。なお報告内容ということでございますが、もちろんどういう機関、つまりどういう団体から講演の申込みがあつたからして、こういう人に行つてもらつてこういう論題で話すことにする、こういうことは大体事前にはわかるわけでありますが、これらの方々が出かけて行つて話しまする内容につきましては、今申しますように、外務省において収集研究いたした範囲において行つておるというふうに、われわれは承知いたしておるわけであります。従つて話をして帰つた者が、口頭などでどういう地方では状況はどうであつたとか、これからもまた来てほしいという希望が表明されたとか、こういう種類の質問があつたというふうなことは、ごく概略はたいがい口頭などでわれわれは聞いておりますが、書面で詳しい報告などを徴しておりませんので、外務省といたしましてはそういうものを持つていない、かようにお考え願いたいと思います。
  126. 野坂參三

    ○野坂委員 この問題はまたあとでいたしたいと思います。
  127. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後三時五十二分散会