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1949-11-19 第6回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十九日(土曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君    理事 仲内 憲治君 理事 戸叶 里子君    理事 並木 芳雄君 理事 野坂 參三君       中山 マサ君    玉井 祐吉君  出席政府委員         賠償政務次官  橘  直治君         賠償庁次長   島津 久大君         外務政務次官  川村 松助君         (政務局長)         外務事務官   大野 勝巳君         (條約局長)         外務事務官   西村 熊雄君         (管理局長)         外務事務官   倭島 英二君  委員外出席者         外務事務官   與謝野 秀君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十一月十七日  在外同胞引揚促進の請願(鈴木善幸君紹介)(  第五四四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  国際情勢等に関する件を議題といたします。
  3. 並木芳雄

    並木委員 議事進行について……。吉田首相について当然報告があるべきだと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎委員長 本日は総理出席がなくても会議を開けというお話でありまして開きました。
  5. 並木芳雄

    並木委員 だから出席がない理由をちやんと説明をして了解を求めるのがあたりまえです。
  6. 岡崎勝男

    岡崎委員長 参議院の本会議であります。——菊池義郎君から質問の通告があります。これを許します。菊池君。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 総理は最近講和問題について今日から論議することは外国の疑いを招くおそれがある、疑惑を招くおそれがあるということを言つておりますが、われわれといたしましては今日より十分にこれを論議し、検討いたしまして、そうしてわが国民意向をば議会を通じて列国に知らしめておく必要があろうと思う。それは一例をあげてみますならば、前の賠償問題についてもそうでありますが、ドイツにおいては国民の全部が議会を通じて戰争に賛意を表して初めて戰い、その戰いに負けた国民であるにかかわらず、しこうして戰争に対して全責任を負わなければならぬ国民であるにかかわらず、ドイツから賠償をとることに対してはごうごうとしてみな反対をとなえておる。日本においては軍閥に引きずられて、あとから機械的に参加した、実質的には何ら責任のない国民であるにかかわらず、これに対して一言半句賠償の取立てに対して論議を行わない。それがためにドイツは非常に得しておるにかかわらず、日本は非常に損しておる。この一例が講和会議の問題につきましても論議すべきであるか、今日より差控えるべきであるか、いすれが有利であるかということを示す一つの実例ではなかろうかと思うのでありますが、この意味におきましても私は十分に論議いたしまして、国民意向列国に知らしめることが必要である。それによりまして、列国はさらに用意があるはずであろうと思うのであります。  私はさらに一、二伺いたいが、総理大臣單独講和でも、やらないよりはやつた方がいいということでありますが、單独講和をいたしましたあとから、講和をしないところの国の軍隊が入り込んで来た場合には、これに対してどうしようというお考えは、今日より持つて行かなければならぬはずであります。政府はこれに対してどういうお考えを持つていられるか。あらゆる問題について今日より政府は研究討議しておかなければならぬはずであろうと思うのであります。一国の軍隊が撤去した場合、または平和状態に入つた場合、また平和状態に入らない他の国の軍隊が増強して来る、入り来るということはまことに自炊の動きであります。講和後において、たとえばアメリカ軍隊が條約実施の保障のためにまだ残つているといたしましても、そこへさらにソ連なんかの軍隊が入つて来ますと、そこに猛烈なる相剋摩擦が起りやすい。そうして両国軍隊摩擦ばかりではなく、国民もまたこれに刺激されて、国内左右両勢力の摩擦がはげしくなる。しこうして国内左右両翼の闘争のちまたと化するおそれがあるのでありますが、これに対して政府はどういうお考えを持つておられますか、簡單にお答え願いたいと思います。これが質問の第一点。  それから第二点は、講和伴つて米国は必ず日本軍事基地を要求するでありましよう。無條件で降服したのでありますからこれを拒むことはできない。アメリカ軍事基地日本に得ますならば、ソ連もまた必ず軍事基地をよこせというにきまつておる。これもまた拒むことはできないのであります。そういたしますと、両国軍事基地日本に置かれましたときにもし戰争となりますと、この軍事基地中心といたしまして、両国軍隊が相争うことになつて、戰場のちまたとなるのでありますが、こういう点について、政府は今日よりどういう対策、構想を持つておられるか、お答え願いたいと思うのであります。
  8. 川村松助

    川村政府委員 菊池さんにお答えいたします。講和後の治安のためにどうするかというお尋ねでありますが、これは平和條約がどういう内容を持つて来るかによりまして、相当事情が違つて来るのでありまして、その内容のわかつておらぬ今日では、まだお答えを差控えたいと思うのであります。  それからアメリカがもし軍事基地を要求して来たならば、同様にソ連においても要求して来るだろう。こういうお話でありますが、そうしたことにつきましては、仮定的なことでありまして、私どもといたしましては、お答えを差控えたいと思います。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 仮定に対しては答えられぬと言われるのでありますが、われわれは今日より仮定を元として論議をし、大いに検討しておかなければならぬ。仮定こそわれわれの論議の的でなければならぬ。仮定を除いては準備も何もできはせぬと私は思うのであります。——お答えがなければしかたがありませんが、まあ大野政府委員の方からしてお答えを願いたいと思うのでありますが、いかがでありましようか。
  10. 大野勝巳

    大野政府委員 ただいまの御質問でありますが、別につけ加えることはございませんが、いろいろな場合を想定いたしまして、研究だけは政府としては十分いたしております。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 今日の新聞を見ますと、スナイダー長官記者団と会見いたしまして、その会見の中に今回の訪日の目的は、日本沿岸監視施設の視察にあるということを言われておるのであります。これまで朝鮮人台湾人の密入国、密輸入が非常に頻繁に行なわれております。今日の海上保安庁だけではまつたくかかし同然で、役に立たぬと言われておるのであります。こういう事態に対しまして、政府といたしましては司令部に対しまして、この取締りのために助力を要請せられたことがありますか。またこれに対して今後いかなる対策を講ぜられんとするのでありますか。司令部に対しまして陳情折衝いたしまして、万全を期するという考えがなければならぬのでありますが、これに対する政府のお考えをお伺いしたいと思うのです。
  12. 大野勝巳

    大野政府委員 この問題は、主担当が海上保安庁に相なるのでありまして、外務省といたしましては海上保安庁と協力いたしまして、問題が起るたびに種々これを援助し、必要な措置を今日までとつて来ております。また最近日本漁船等に関しまして、多少問題が起つておるようでありますが、それらの問題に関しましても最も慎重な考慮を加えつつ、海上保安庁目的としておる業務の遂行を円滑にするように努力いたして来ております。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 さらにこれは小さな問題かもしれませんが、昔の選挙区であります小笠原島嶼は、われわれの荏原、大森、蒲田とともに、この選挙区は世界で一番長い選挙区で、小笠原から硫黄島、南鳥島、えんえん二千キロ、温蔕から熱蔕に延びる選挙区でありましたが、(笑声)われわれもこの小笠原島、硫黄島に対しては非常に関心を持つておる。小笠原は今日米軍占領下にありますが、同じ占領下にあります沖縄大東あたりに対しては、島民の内地から帰つて来ることを許しておるのでありますが、小笠原島に対しましては許しておりません。これまでたびたび民間から陳情いたしましたけれども許しません。その許さない理由といたしましては、ただ北緯三十度以南——小笠原島は北緯三十度以南にあるから、帰島を許すことはできないという、これが向うの唯一の理由になつております。しかしながら沖縄島も大東島もみな北緯三十度以南にある島であります。特に小笠原島には今日アメリカ軍隊でもいるかと申しますと、一人も兵隊はおらぬという話であります。軍事基地としてもあまりに小さくて、まつたく役に立たぬ、そういう所なのであります。なお今日住んでおりますのは先住者の子孫、つまり米英系混血児その他の人が百三十五人しか住んでおらない、これらが向うでは結婚することも何もできなくて、困り切つているという話で、同族相愛するという忌まわしき問題も起つておるということでありまして、この人たちも非常にこれまでの六千人の同胞が帰つて来ることを望んでおりますし、アメリカ兵で前に小笠原にちよつと駐屯したことのある兵隊も、どうか小笠原島民が早く帰つて来て、向うでバナナをつくり、パイナップルをつくり、あるいは魚をとり、そうしてときどき、二見港に入つて来るアメリカ軍隊にこれを供給してもらいたいということを言つておるのだそうです。アメリカ兵隊たちがそう言つておりながら、まだこれが上部に通達されてないらしいのでありまして、それでまだ許されないのでありますが、政府といたしまして、熱心に根強く陳情、懇請いたしましたならば、必ず帰ることができるだろうと思うのであります。これまで何回陳情せられたかわからないのでありますが、もつと事情をわけて、上層部に根強く陳情していただきたいと思うのであります。これに対するお答えをお願いしたい。
  14. 川村松助

    川村政府委員 小笠原島の問題につきましては、おそらくこれは平和條約によつてはつきり所属がきまるだろうと思つております。また同島民復帰につきましては、司令部の許可を得て、その上で処置しよう、こういうことになつております。  それから菊池委員の御要望なさいましたことにつきましては、きわめて同感でありますので、今後司令部の方につきましても、御趣意に沿うように折衝して参りたいと考えております。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 その復帰の問題は問題ではございません。それに沖縄大東島には帰つておるのでありますから、政府陳情いかんによつて必ず帰ることができるだろうと思います。小笠原島は今日米軍マリアナ司令官の所轄になつておるはずであります。マリアナの方ではどういうふうに考えておるかというと、小笠原島を裏南洋諸島と同じような考え方をしておるらしいというのが、あるくろうと筋考えなのでありまして、そういう考えを改めさせるために、サイパン、テ二ヤン、ロタ、ヤツプ、グアム・トラック、ポナぺそういう所とはまつた違つた地域であるという考えに切りかえさせてもらうために、御努力願いたいと思います。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は前々回の会議におきまして、安全保障の問題についてお伺いいたしましたが、大野委員から一応御意見として承つでおくというお答えをいただいただけで、たいへん不満でございますので、今度は吉田総理がお見えになりましたときにはつきりとしたことを伺いたいと思います。  ただ一言お伺いいたしたいのは、講和の問題に対しまして、吉田総理さきごろからの国会における答弁を聞いておりますと、あるときには非常に強気なことをおつしやつたり、あるときには、政府は言われないけれども国会での議論は自由であるというような、まことにごもつともな御意見を吐かれたり、あるいはまた国会議論をする必要はないかのようなことを言われておりまして、まことに一貫性がないように思われるのですが、これは何かどこからか制約を受けておるのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  17. 大野勝巳

    大野政府委員 別に制約を受けるとか、あるいは口どめをされておるというようなことではないと思つております。ただ全般的に機微なる情勢考えまして、国家民族のために最もよかれと思うだけのことであります。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 別に制約を受けられないで、国家民族のためによかれと思つていらつしやるということでございましたので、私どももたいへん安心いたしました。ぜひともこの外務委員会の使命を果すために、吉田総理兼外相の出席を促して、この外務委員会を意義あらしめていただきたいことをお願いいたします。  私はきよう一言伺いたいことは、技術者移民のことでございます。すでに技術者インド及びタイ国からの招聘に応じまして集団的に迎えられておりますが、これは経済建設を通じて産業復興を行おうとしておるインドタイ国の求めに応じたものと思つております。現在この種のいわゆる技術者移民というものが、どういう国に何人ほど渡航を許されておるか。また行つておる人たちがどういう産業部面において技術に協力しておるか、あるいはまたその待遇状態はどんなであるかということをお伺いしたいと思います。
  19. 倭島英二

    ○倭島政府委員 御質問お答え申します。技術者海外渡航につきましては、司令部から今年の八月一日付をもつて技術者渡航を許すという指令が参りました。以前から司令部交渉の続いておつた技術渡航関係もございまして、必ずしも技術者という名前をつけないで、実業関係から渡航された人もございます。それから司令部手続は多少いろいろな契約形式その他がありますので、現在その手続進行中でありますが、その従来参りましたところと、現在どれくらいな国々に対して契約が進められつつあるかということを申し上げたいと思います。従来はエジプトへ織機の関係で二名、タイ機関車の組立ての関係で二名、インド通信ケーブル関係で二名、それから一般の工業関係、いろいろな技術関係がございますが、インドヘさらに七名、これは先ほど申しました八月一日の指令以前の手続で出ておるのでありますが、指令がありました後の手続では現在まだその関係で出ておりませんが、どういう国の関係が今言われておるかということだけ申し上げます。インドに相当ございますが、インドではこうもりがさの機械関係が一名、紡織機関係が五名、陶器関係が五名、これはいずれも技術者でございます。それからパキスタンへ電球とかネオン・チューブの関係が二名、ビルマへ織物関係技術者が十名、北ボルネオへ麻の栽培の関係で一名、セイロンへ陶器関係が一名、ベルギーへひなの鑑別の技術者が五名、南米関係では、メキシコに医療機械関係で十五名、その他の技術者が三名、パラグアイへ紡績機械技術者が三名、中南米の方に対してはまだふえるかと思いますが、インドこうもりがさの技術者でありまする間もなく実現することになると思います。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点、これは違うことですがお伺いしたいと思います。さきごろ新聞に蔵入委員会を結成するということが出ておりまして、その中には通産省のお役人の方々を主として入れてつくられるように書いてあつたように思われるのでありますけれども、その後何とも発表されておりませんが、この輸入委員会はその後どうなつておるかということと、それからその委員会はどういう方々をもつて構成されようとしているのかということと、それからその委員会の性格、どういうことを決定しようとされるものであるかということがおわかりになりましたならば、伺いたと思います。
  21. 大野勝巳

    大野政府委員 戸叶さんの御質問でございますが、この問題はもう少し調べまして、正確な御答弁を申し上げた方がよろしいと思います。今の段階ではまだ関係方面と話合い中なのであります。従いましてほんとうはきよう事前にそのことがわかりましたら、通産省の方の責任ある方をここへお連れするはずでございましたが、いとまがございませんでしたから、なるべくこの次の最も早い機会に何らかの形で正確なお答えを申し上げるようにとりはからいたいと存じます。
  22. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 新憲法下国会の運営というものが、常任委員会中心に行われることは申すまでもないことなのでありまして、従つて外政最高機関でまるわが外務常任委員会が再三の要求にもかかわらず、事情いかんは存じませんが、不幸にして所管外務大臣出席がないことを、私は党派を越えた国民立場から、国民代表たる立場から特にこの点を強調しておきます。従つてきわめて近い機会において、ぜひとも所管大臣出席を求めたいことを野党の人とともに私も要求しておきたいと思います。  次に所管大臣がお見えでございませんので、政府委員にきわめて簡単に二、三の点だけをお聞きしておきたいと思うのであります。まず第一には憲法第七十三條に関連する問題であります。憲法第七十三條によりますと、内閣の行う行為の中に、條約の締結をなすことということが明記されておるわけでありまして、従つてこの講和條約の締結の問題が非常に身近になつて参りました今日、われわれは国会において、特にわが外務委員会におきまして、講和條約に関連する問題の論議を展開するということは、もとより当然のことでありまして、これに関しまして私は国民代表たる者の権利であり、かつ義務であるということを痛感しております。もとより国際情勢に関越する問題はきわめて微妙複雑なるものがありますので、これに対しては十分の認識をわれわれも怠つてはならないわけでありますけれども、先般来総理大臣答弁として新聞などに伝えられておるところによりますと、国会外交論議をあまりやかましく言うべきではない。愼んでほしいというようなことをおつしやつたということでありますが、私はまことに残念に存じております。むしろ私は講和会議と申しましても、ポツダム宣言によつて條件の降伏を誓つた日本でありますから、通常の国際会議と違うわけであります。従つて、従来の形式からいう講和外交というようなものはないのであります。総理大臣のお言葉のごとく毎日々々が講和外交の連続であろうと私は考える。このときにあたりまして、この外政最高機関であるところの当委員会などにおきまして、活発なる論議を展開することがむしろ私は国内的にのみならず、国際的にも望ましいことであろうと考える。従いましてこういうことに対して、外務当局は一体どのようにお考えになつておるのかということがまず承りたい第一点。  それから憲法第七十三條によりますると、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつて事後に、国会承認を経ることを必要とする。」ということが規定されております。しかりとするならば、私は今度の講和條約の締結にあたつて、條約の国会に対する承認は、おそらく事後において行われるのではなかろうかとは考えますけれどもイタリア等の場合のこともありますので、これは條約局長あたりからそれらのことを御参考にお話伺つて国会承認事前に行われるのか、事後に行われるのかという点について、ひとつ御説明願いたいと思います。
  23. 大野勝巳

    大野政府委員 佐々木さんの第一問に対して私からお答え申し上げますが、今後日本締結しようとしている平和條約というものは、その性質上申し上げるまでもないことでありますが、戰勝国である連合国側見解中心になつて検討されるわけであります。従つて連合国側見解が明らかとなつていない今日、いろいろな和想定をいたしまして、あるいは仮定に基きまして論議をするということは、場合によつてかえつて無用の混乱を惹起するおそれなきを保しがたい、かように考えておる次第でありまして、ただ政府といたしましては当然のことでありますが、どんな事態が起つて参りましても、これに対処し得るような準備だけはもちろん進めております。
  24. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 平和條約に対しまする国会承認を求める場合、事前になるか、事後になるかという御質問でありますが、これにつきましては大体事前になるものと考えております。しかし條約に関する交渉が進捗しまして、締結の時期にいたるまでは、今日からそうなると断定することだけは差控えたいと思います。
  25. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次にもう一点承つておきたいことは、講和條成立後の日本安全保障という問題があります。しかしながら新憲法によつて一切の軍備を放棄した日本が、講和條成立後に身に寸鉄を帯びないまる裸の姿となつて国際社会のあらしの中に立たなければならぬということは、新憲法の審議にあたつても十分論議されたところであり、かつまたこれが成立したときに、すでに日本の行くべき道は決定的に運命づけられておつたと私は考えるのであります。ところが今日に至りまして、新憲法において武器なき平和を求めたものが、武器なき恐怖の前に、国民がおののいておるというような現状であろうと考えます。ところがこれをよく突き進めて考えてみますならば、それらの不安は、要するに今日の米ソ関係の緊迫をしておる状態の前提の上に立つて考えであろう考えのあります。従つて現実的には米ソ関係の今後の発展いかんによつて日本安全保障ということもきまつて来ることに、実質上なると思うのであります。このときにたまたま行われんとする講和会議でありますが、外務当局は、米ソ関係の現在並びに将来に対して、どのような見解をお持ちになつておるのか。これは非常に好転をして行くか、あるいはどういうふうになるとかいう見通しの点について、外務当局としての、講和会議に臨む場合の見解を承りたいと思います。
  26. 大野勝巳

    大野政府委員 佐々木委員の御質問の趣旨は、安全保障の問題の基礎になる国際関係としての、米ソ関係に対する外務省見解いかんということであつたと思いますが、米国と相並んで連合国の有力なる一員であるソ連邦、この二つの関係を、この席で外務省見解はこうだと申し上げることは差控えたいと考えますので、御了承願いたいと思います。
  27. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それではこの問題は別個の機会において承ることにいたします。  次に、最後に一点だけ承つておきますが、それは最近全面的な講和か、あるいは單独講和かという問題が、非常に国民関心の的になつておりますときに、たまたま吉田総理大臣の発意によつてか、各党代表者を網羅する外交懇談会というようなものが行われるであろうということを、新聞紙は伝えておりますが、この問題と関連して、講和会議に臨む国内態勢としては、ぜひとも挙国的な態勢あるいは連立的態勢でなければならぬという声も一部にはあるようでありますが、この挙国態勢でなければならぬという考え方には、私はもとより賛成はしていないのであります。けれども單犯講和全面講和かという問題について、各党意見が、それぞれ違つておるようでありますが、こういう際にあの外交懇談会なとを行われるということは、私はむしろ世の疑惑を招くことになりはせぬかというようにも考えておる次第でありますので、私はこれは総理大臣から承りたいと考えておつたのでありますが、外政を担当しておられる外務省当局としては、そのような挙国連立的な態勢がいいというようにお考えになつておるのかどうか。これは川村政務次官から承りたいと思います。
  28. 川村松助

    川村政府委員 佐々木委員お答えします。講和に臨む内閣態勢としては、大きな政治問題でもありますし、外務省政府委員お答えする場合でないと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 講和の問題に関して、外務当局が相当神経質になつているということは、私たちわかるのです。しかしこのごろの国民関心というものは偉大なもので、ただいまも佐々木委員からその点お話があつたのであります。そこで外務委員会はあまりかたくならずに、何か言葉じりをとらえられて、あとから追い込まれるのではないかという意識が、官僚として当然あるように見受けられるのですが、われわれ国民代表なんですから、その声を聞いて、虚心担懐な気持でお答え願いたい。いずれの問題も研究課題であつて仮定だから答えられないと言えば、菊池委員の言うように、まつた仮定でない問題はない。仮定の問題として出されることが多いのであります。ことにわれられはかつて経験したことのない敗戰というものを経験して、そこから出て来る今度の講和というものですから、役に立つ材料というものは整つておらない。ですから、材料を十分與えてその上の健全な判断をしてもらう。これは一つの重要な要素であると思う。そういう点であまりかたくならないで、お互いに研究し合つて行くようなれ気持で御答弁願いたいと思います。  そこで私は中共の問題について伺いたいのでありますが、やはりまだ先のことだからとか、あるいは仮定のことであるとかいうことでなく、お答え願いたい。研究課題としても非常な重要性を持つておると思うのでお聞きするのですから、さようお含みの上お聞き取りを願いたいと思います。  今中共政権というものがすでにソ連によつて承認されておる。その衞生国でも承認したものもございます。さらに連合国の中でも、これを承認しようとするような空気もできておるように、われわれは報道を受けておるのですが、こういう場合に、わが国の立場というものも出て来ると思うが、日本としては、だんだん中共を承認するという状態になつて来た場合に、これは外交権がないから、当分正式承認はできないようにも思われるのですが、この点に対して政府当局の見解を伺いたい。
  30. 川村松助

    川村政府委員 あなたのお話しの通り資格がないということであります。ただいまのところ承認するとか、しないとかいう発言権がないと思います。
  31. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、日本はこれを承認しない限りは、結局中共との間の講和というものはできないということになるのではないのでしようか。それとも連合国が中共を承認する場合には、中共との問の講和ができるとお考えになりますか。
  32. 大野勝巳

    大野政府委員 かたくならないで、なるべく、楽な気持で返答しろということでありますが、この問題はどうも自然かたくならざるを得ないのでありまして、講和の問題と、中共の承認の問題というのは、日本の問題というよりは、それよりも前に連合国の問題でありまして、今の場合に日本側でどういう見解を持つておるかというようなことを、ここで申し上げても、実は始まらないわけであります。十分注意して研究することの必要は並木さんのおつしやる通りでありますが、ここで政府として見解を申し述べるわけには参りませんから、さよう御了承を願います。
  33. 並木芳雄

    並木委員 それはよくわかるのです。この前の委員会でも連合国の間の問題であるという御答弁があつたことを私記憶しております。しかしこれは現実の問題として出て来る可能性は多いのです。それでお聞きするのですから、その点をお含みおき願いたいのです。結局日本が中共を承認しないということは、蒋介石の政府が今なお旧敵国、つまり戰勝国としてポツダム宣言三箇国の一つであるということなら、中共というものは旧敵国ではない。そうすると中共を承認しないで、講和をするということが、もし起るとすれば、これはどうなるのでしようか。おかしいのではないでしようか。
  34. 大野勝巳

    大野政府委員 先ほど申し上げたように非常に難問でありまして、この際この席でお答えすることは差控えさしていただきたいと思います。  なおこの問題について、御研究の御熱意かございましたならば、外務省で持つております資料とか、研究のための材料などにつきましては、できるだけ御要望に応じたいと思います。
  35. 並木芳雄

    並木委員 どうもそれに関する質問は続けて行かれなくなるような状態ですが、連合国日本政府を通じて日本の政治をされている。ということは、日本の外交権を占領国が行使されているということになると思うのですが、その点いかがですか。
  36. 川村松助

    川村政府委員 並木委員のおつしやる通りであります。
  37. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、それは研究というか、現実の問題として、ポツダム宣言のどこでそういうふうにわれわれ了解していいのでしようか。
  38. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 降伏文書の最後の項目の、天皇及び日本政府の統治の権限は、連合国最高司令官の制限のもとに属するという趣旨であつたと記憶しております。
  39. 並木芳雄

    並木委員 最後というと、十三ですか。
  40. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 降伏文書の一番最後の項目です。
  41. 並木芳雄

    並木委員 その問題は相当困難かつ重要な問題であると思いますから、この程度できようはとどめておきたいと思います。  そこでひとつお伺いしたいのは、この前西村條約局長にお願いしておいたのですが、憲法の自衞権の限度の問題、あれも御研究済みと思います。つまり火急の場合には、こういう自然発生的火急の場合には、実力行使が認められるか。
  42. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 前会私が答弁したこと以外につけ加えることはございませんが、ただ一つ私はお答えしたいと思います。自衞権と言われるときに、みんなの頭の中にすぐ戰争というような大きなものだけを考えていらつしやるように思います。しかし自衞権に関する国際法の本を繰返してお読みになるとよくわかりますように、一番民主的な自衞をしてあげられるのは、一八三八年のカロライン号事件であります。これを一番自衞権のいい例としてあげてあります。それをごく簡単に説明しておきますと、大体おわかりになると思います。  カナダと合衆国の国境をなしておりますナイヤガラの上に、小さな米国領土の島がございます。その島にカナダの反徒が逃げ込みまして、そこで武装をして、カナダの本土に攻め込む用意をしておつたのであります。それに対してカナダの方が軍を入れまして、その島を占領いたしまして、カナダ人の反徒を征服し、彼らが武装していたカロライン号という船を沈めた事件であります。そのときに合衆国は、カナダはアメリカの領土権を侵害したと抗議したわけであります。それに対してカナダは、もともと米国としては、米国領土内でいわゆる友好国に対する反徒の武装団体を組織するというようなことを防止する国際法上の義務があるけれども、その義務を怠つたからして、やむを得ず危急の不正なる侵害を防衞するために兵を入れて、実力をもつて鎭圧したのである。そのためになるほど米国の領土を侵した。普通の国際法上から行けば、領土を侵害したのだから、カナダとしては米国に対して責任を負つて陳謝または賠償その他の問題が起るわけであります。しかしこの際は危急なる侵害に対して、やむを得ずとつた措置であるからして、国際法上の責任はないということになつて、カナダの主張は通つたわけであります。これがどこから見ても、自衞権の発動として最も申分のない自衞として掲げてあります。大体そういうふうな小さなことを考えればいいのでありまして、自衞権というものをすぐ戦争々々というふうに考えられるのは、憲法制定当時、吉田総理の繰返しおつしやつたように、満州事変以来われわれの頭がそういうふうに訓練されているので、そういう考え方から抜け切らないものかと私は思つております。
  43. 並木芳雄

    並木委員 ありがとうございました。私は実際この間から、そういうような例、またこれから日本の場合に起り得るような例を想定して、懇切丁寧に説明していただきたいということだつたのです。なおその点今後も研究を進めてもらいたい。  それからもう一点、これも研究課題ですが、実は昨夜東京日日新聞という夕刊を拝見いたしましたら、與謝野さんが非常に参考になることを書いておられる。その中に、どうも講和條約の話が始まると、国民がうちようてんになりがちなものだ。これはそういう半面もあるでしよう。しかし與謝野さんは、少し外務省の高い窓から国民の民のかまどをながめて、お祭りさわぎのような、講和條約が来た、さあ喜べ喜べというような、うちようてんな姿を想像しておられたならば、これは少し感覚が違うのではないか。ねこもしやくしも講和條約で騒いでおる。おれは高級官僚だ。何もわからないでやつらがややつているのだという気持ちが、もしあつてこういうことが出て来たとすれば、これは国民と官僚との遊離になると思う。どういう感覚でうちようてんになるというようなものが生れたか、これをひとつお伺いしたいと思います。  それからその途中ですが、單独講和全面講和かというものの例として、わかりやすく書かれたのだろうと考えますが、「いわば刑期の確定満了を待つている囚人が、保釈の可能性がありそうだと早合点して『保釈はいやだ、放免までは出ない』と叫んだり『娑婆の空気を吸うことこそからだのためにまず大切』と反駁して保釈を希望するのも、先様がまだ單独講和とも全面講和ともいつていないのであるから妙なことになる。」先様が何とも言つていないから妙なことになるということはいいと思う。また例としてわれわれを罪人扱いされたということも、私は深くとがめようとは思いません。ただ私が常に自分の考えをまとめようまとめようとしている努力の過程において、これから受取れる印象というものは、そうすると單独講和というものは、あなたの言葉を借りますと、放免に行く段階としての保釈であるというように受取れた。つまり單独講和全面講和への段階である、こういうふうに受取れたのですね。そういたしますと、私のナイーヴな感覚から言うと、問題はないのじやないか。もしそうだとすれば、単独講和全面講和かということを私たちが研究するのは、もう余地がないじやないか。私たちは單独講和全面講和かというのを二つの場合だちいうふうに考えておつたのです。ですから、こう行くのかああ行くのということで頭を悩ましておつたときに、この文章を読んで、こういう縦の関係にある、段階の関係にあるという印象を受けたので、もしそうだとすれば、これはまつた議論研究の余地がないように思うのですが、そういう点について輿論野さんの御説明をお伺いしたい。
  44. 與謝野秀

    與謝野説明員 私の拙文が問参題になりまして非常に恐縮であります。実は第一点のうちようてん云々ということはまことに御同感でありまして、私も昨夜夕刊を見ますと、表題に大きな字で「うちようてんはまだ早い」ということが出ておりました。実はうちようてんになりがちということが言葉の中に出て来るのでありますが、これは私はむしろ国民が特にうちようてんになつておると思わないのでありまして、むしろ外務省がうちようてんになつておるのではないかというようなことを非常によく言われる。それを私がある意味で裏から言つたような意味でありまして、私がああいう、どちらかと申しますと、通俗的に講和会議の参考になるようなことを書きましたのも、先ほど並木さんが言われました、できるだけ広く材料を與えるようにという趣旨とちつとも違つておらないと思うのであります。たまたまできるだけわかりやすくと思いましたために、また問題を起るようなニュアンスも出て来ることになるのかと思うのであります。  第二点の保釈云々も、言葉が惡かつたかもしれないのでありますが、日本の占領されておる状態を、いわば刑期の満了を待つておる形というふうなたとえでいろいろなこと行つた例は、外国側から見ても多いのでありまして、たとえば日本は囚人のようなものであるとか、占領軍がやはりこれに食糧の心配をしてやらなくちやいかぬというようなことは、過去においても言われたことでありまして、たまたまそういう言葉を使つてたとえに出したわけであります。また保釈と放免の関係が段階的かどうかということは、そのたとえだけからは出て来ないのでありまして、段階的な場合もありましようし、また対立した場合もあるでありましようが、私があそこで申したかつたのは、こういういろいろな問題はあるけれども、公務員として、まだ外国側が何も公のことを一言つておらないのに、そういうことに関する自分の意見は差控えたい。しかしほかの参考になることは述べましよう。こういう趣旨であれを書いておるのでありますから、その点御了承願いたいと思います。
  45. 並木芳雄

    並木委員 そうすると単独講和必ずしも全面講和への段階ではない、別の問題であるという余地もあるわけですね。與謝野さんの今の御答弁から……。そこが一番聞きたいところなんです。
  46. 與謝野秀

    與謝野説明員 そういう点を深く考えて書いてある文章でないのでありまして、あの中からその問題に演繹されまして御質問を受けることは、私としてもちよつとお答えいたしかねるのであります。私があまりそういうことに触れたくないと言つて書いてある文章をつかまえて、そこをもう少し掘り下げろと言われると困るわけであります。どうぞ御了承願いまする
  47. 竹尾弌

    ○竹尾委員 総理大臣兼外務大臣のの出席の要求がただいまもございましたので、名委員長であらせられる岡崎さんは、おそらくきわめて近き将来に、首相兼外相をここにお呼びくださることを私は期待しております。従いまして私総理大臣にお尋ねねしたいことは次会に譲りまして、一つだけ私は政府当局にお尋ね申し上げます。通告者もたくさんあるようですから、あまりくどくどしく再質問はできるだけやめるつもりでおりますから、どうぞ親切丁寧なる御答弁をお願いしたい。  それは、この間も参議院でございましたか、いろいろ問題になつた。この委員会でも問題になつたのでございましたが、專任外相設置の問題であります。これにつきましては、総理大臣は、自分が外相を兼任して專任外相を設置する必要を認めない、こういうような御答弁のようでございましたが、その理由はわれわれは聞いておらぬのでございます。そこで今各同僚議員諸君の真劍なる御質問によつても明らかなごとくに、時局はきわめて重大でありまして、私ども考えでは一日も早く專任外相を置いていただきたい。なるほどここに川村政務次官がおられますが、実は政務次官は参議院の方だからあまり御存じないのは当然かもしれないが、聞くところによりますと、何も外務政務次官がくろうとである必要はないかもしれませんが、しかしこういう時代におきましては、政務次官もある意味におきまして、くろうとであるということを私どもは要求したいのです。これは私與党の一議員としてこういうことを申し上げるのは、はなはだ失礼かも存じませんが、要するにとにかく外交陣営を刷新いたしまして、私どもはわが民族に許された唯一の平和外交を、これから大いにやろうという時期にあたりまして、外務陣営のいわゆる充実ということが刻下の急務なりと思う。そこで今こちらにも大野政務局長を初め、條約局長、調査局長など外務省の首脳部が集まつておりますが、しかしこれだけでいいのかどうか。両頭のへびのようでありますが、がん首が一つなければ、いかに叡智と聰明をもつて鳴る外務首脳部でも、なかなか仕事がやりにくいと思う。そこで総理大臣は外相設置の必要なしと言われますけれども政府当局の皆様方は、これに対してどうお考えになつておられるか。おそらく專任外相設置の必要を私は痛感しておることだろうと思う。そうすればそのときに総理大臣は、もうおれが一人で、ワンマン・ディプロマシーですか、そういうことをやられるというお考えかもしれませんが、しかし首脳部としては、一日も早く專任外相を設置していただきたいということは、私どもと同じ考えだと私は思うのです。そこで総理大臣はおれが一人でやるのだとおつしやいますけれども政府当局として、政府の首脳部として、この点についてどうお考えになつておるか。この点をひとつお尋ね申し上げたいのです。これで私は終ります。
  48. 川村松助

    川村政府委員 お答えいたします。竹尾委員の御趣旨を十二分に総理にお伝えいたしたいと思います。
  49. 玉井祐吉

    ○玉井委員 西村條約局長にお尋ねしたいと思いますが、今般の講和條約の問題とからんで、戦争という言葉の、特に国際法上の定義の問題をいかに考えておられるかということを最初にお伺いしたいと思いますが、いかがでございますか。特に申し上げますと、日本がいわゆる支那事変あるいは満州事変というような言葉で、事変という用語をもつて外国に侵入した。戦争の宣言はしていなかつたけれども、実質的に戦争状態であつた。その状態というものを戦争として今後扱つて行かれるかどうかという点を、まず最初にお伺いしたいと思う。
  50. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問に対しましては、今即座に御返答申し上げない方がいいと思いますので、十分研究いたしましてから返答する機会を得たいと思います。
  51. 玉井祐吉

    ○玉井委員 私は政治的な用語をお伺いしておるのではございません。先ほどお話になりましたように、国際法上におけるいろいろいい例までお引きいただいておりますので、国際法上における戦争の、定義をお伺いいたしたわけであります。
  52. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 実は国際法上も戰争の定義については、いろいろな学説がありますので、あります学説を御紹介し、どれがいいだろうかということを含めて御返答したいと思うからなのです。国際法上定義が一致しておるのならむろんすぐさま御返答いたしますけれども、一致していないのであります。
  53. 玉井祐吉

    ○玉井委員 それでは次にお伺いいたしたいのですが、私が戰争の定義、事変についてのことをお伺いいたしましたのは、先ほどお話になりました自衞権の問題と非常な関係がありますのでお伺いした次第であります。この前の委員会はちようど私不測の用事がありまして出席いたしませんでした。その後速記録その他によつて調べますと、特に野坂委員その他の方面から、自然発生的な自衞権というような広い意味の自衞権というものがあるかというような御質疑もあつたようでございます。私の考えております限りにおきましては、自衞権というものは国家意思の発動右ある限り、自然発生的な自衞権というものを取上げることができない、あくまでも何といいますか、山ねこストライキ的なものであつて、一つの国家意思としての統一した見解のもとに行われているのではないかという考えを持つておるのですが、この点についてはいかがでございますか。
  54. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は国際法的に考えまして、仰せの通り自然発生的な自衞権はないと考えております。自衞権というのはあくまで国際法上の観念であるというふうに考えております。
  55. 玉井祐吉

    ○玉井委員 そうなると、先ほど例をお引きいただいたような事例に対しまして、日本の方から自衞権を発動して、このまま侵害を除くという行動をする場合には、われわれがただぶらぶら出かけて行つて、そういう騒擾を追放することができないのですと、どうしてもかなりよく武装した警官とか、あるいは軍隊というものが必要そうになつて来ると思うのですが、この意味において先ほど例をお引きになつた自衞権の形、これは一例でありますので、今後もそういう形があるという予想では決してないと思いますが、その問題とからんで、軍隊もしくは相当によく武装した警官を必要とするだろうという御想像でおられるかどうか、この点について御質問いたしたいと思います。
  56. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点につきましては、私前回の答弁ではつきり申し上げましたように、日本としては戦争または武力行使の形式をとる自衞権の発動は考えられないと答弁した通りであります。
  57. 玉井祐吉

    ○玉井委員 今のお話のようでありますと、戦争もしくは武力による形における自衞権の発動は考えられないと仰せられるわけですが、そうすると残りはどのような自衞権があるか。そしてその自衞権が、はたして先ほど例をお引きになつた国際法上有名な事例に対しての自衞権の形として、あのときに武力を使わないでどういうような自衞行動をとられただろうと御想像になるか、この点についてひとつお伺いしたい。
  58. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本の現状におきましては、警察力以外にないと考えます。
  59. 玉井祐吉

    ○玉井委員 現在の警察力の内容から見まして、それだけの能力があるとは私は考えておりません。国内の治安でさえもかなり不十分であると認めております。こういうような情勢のもとで、かような自衞行動が特に一部分的であるならば格別、相当広い海岸線等において行われた場合には、なかなかそういうことはできまいと想像しておりますが、この点についての現実上の矛盾、りくつはいろいろ理論的には言えますが、事実政治はやはりりくつや想像ではございませんので、現実に起つて来る問題を具体的にどう解決するかという問題だと思います。この面について外交官の一人としての西村さんにお伺いしたいと思います。
  60. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は職掌上純粋に法律面だけに限りまして、御指摘のような問題はまさに事実上の問題であると思いますので、答弁を差控えさしていただきたいと思います。
  61. 玉井祐吉

    ○玉井委員 それではただいまの問題につきまして、川村政務次官に御質問申し上げたいと存じます。
  62. 川村松助

    川村政府委員 非常に複雑でありまして、国際的にも影響が大きいと思いますので、ただいまお答えを差控えたいと思います。
  63. 玉井祐吉

    ○玉井委員 どうもそういう逃げ口上をいつもお使いになりますので、はなはだ困るのでありますが、先般も参議院におきまして、私どもの方の党の星野参議院議員の施政方針に対する質問におきまして、外務大臣の方から特にお答えがあつたのについて、参議院等において戰争だとかそういう問題について、あまりいろいろなことを言つてもらいたくないというような御趣旨のお話がありました。そういう一例についても、仮定については何とも答えられないというのと非常に似たようなものがありますので、私どもとしてはまじめに考えておればおるほど、この問題については今のような点についてお答えを願いたい。特に自衞権の問題というものを武力を行使しないで自衞できるか、しかも警察力を使うということになりますと、なるほど警察力は軍隊じやない。しかしながら物理的な力を持つているものであることは間違いない。軍備をしておるか、武装をしておりますということの多少の違いがあるだけでありまして、事実上から見まして輿論であるとか、あるいは手紙や本を書いて、自衞をやろうというやり方があるとすれば、そういうものと違うということだけははつきりわかつている。従つて武力を使わないということと、警察官を使うということは紙ひとえの違いにすぎませんので、特にその点をお伺いいたしたいわけです。特にそういう意味から今申し上げておるような点をお伺いをしているのであります。この点について微妙であることはわかつておりますが、それでは守り切れないとすれば、どうすればいいだろうかということだけは、日本の今後の立場もあることなのでしようから、十分にこの点をお考えいただかなければならないわけであります。ただ委員会において足を押えられたくない、しつぽをつかまえられたくないということでなく、まじめにお考えいただいて、この点についてはここではその程度でけつこうでありますが、しかしながら十分そのお考えをいただくということを、ここにひとつはなはだ押しつけがましいのですが、お約束を願いたいとこう思うわけであります。  そこで今の自衞権の問題と特に関連して来るわけでありますが、武力の、もしくは物理的力を使わないで自衞しようということを考えて行きますと、結果におきましては先ほど申し上げましたように本を書く、いわゆる輿論の喚起による自衞というものは、事実上は形式上の自衝であつて、実質的の自衞になるまいと考えております。この前も委員会で問題になつてつたかと思いますが、自衞権はやはり日本のような国においては、特に日本の国自体を守るための緊急避難の形であります。正当防衞の形であると思う。なぐられなぐられて、どんなになぐられてのばされて殺されるまでもなぐられておつて、そういう形でこれがなぐるのだ、なぐるのだといつて逃げまわつておれば、それで自衞権になつているのかどうか、個人的問題と関連させて例を引けばかような状態であると思う。なぐつて来る者に対してはなぐり返すか、ひつくり返すかしなければ、こつちの身の安全が期し得られない。より小さい法域まで何とか侵すのでなければ、自分の立場を守ることができないというのが、実際の自衞権の意味であろうと私は考えている。従つて国の正当防衞的の立場における自衞権は、先ほどお話のありましたような日本状態といたしましては、やむを得ず警察官あたりでやるよりしようがないだろうというように私も考えておる。そうだとすればそれについて日本の現在の国情から、これに対してそれだけの警察官を維持して行くだけの費用その他の問題について、十分に考慮しなければならないということを考えておるわけなのです。そういうように考えて参りますと、自衞権という形も、軍隊も置かない警察官だけで何とかしようというならば、十分にこの点の見通しを持つていただきたいということを申し上げておるわけなのです。まじめに日本立場考えてみればみるほど、自衞権はやはり日本の現状が、どちらの方面からも侵略を受けないという保障は、とうていできないわけでありますから、特に永世中立などと申しましても、結局はこの條約としての永世中立ということは、保障国の態度自体にかかつて来る。永世中立の立場を維持したいといたしましても、やはり日本立場としては自衞の問題が最後まで残つておる。国家というものが一応ある限りにおいては、この一つの人格、この一つの意思を決定する集まりというものに対するそれの主体としての自衞権の問題は、当然残つて来るはずであります。先ほどお話のありましたように、ごく形式的な御答弁だけでは、実ははなはだ不満足だと言わざるを得ないわけであります。そういうようにして起つて来る自衞権に対して、事実上の形は先ほど最初に西村條約局長に御質問申し上げた形と比べて、それが戰争という言葉にひつくるめられやしないかという問題なのであります。武力上の争いが事変という問題で解決されるのか、あるいは戰争の宣言をしないでも事実上の戰争なんだ、そうなつて来れば憲法の第九條との関係において、いかにこれを取扱うのかという点であります。極端に言いかえて行きますと、そういうような場合は憲法の第九條の中に入つて来るのかどうか。非常に大きな問題でありますので、首相にお伺いしようと思つたのでありますが、まだお見えになつておりませんので、あらためてお伺いすることとして、川村政務次官は、ただいまの九條の問題の中における日本の自衞権の形に現われたところの紛争状態——あえて事変とは申しません。あえて戰争とは申しませんが、その紛争状態というものは第九條の中に認められるかどうか。また警察官が不当な外国の侵害に対して防禦態勢をとることが、この第九條の武力の行使というような言葉の中に含まれるとお考えになるかどうか。武力というものは私は單に軍隊だけとは考えておりませんので、あえてお尋ねしたいわけであります。九條との関係において最後に御質問申し上げます。
  64. 川村松助

    川村政府委員 この問題は先般来再三論議されましたが、実際問題のあらゆる場合を仮想しまして考えますと、非常に微妙な点が多心ので、十分に研究さしていただきたいと思います。
  65. 玉井祐吉

    ○玉井委員 本日の委員会におきまして、実は今度の講和問題と関連をしまして、特に今まで懸案になつております外国貿易関係のクレームの処理の問題をお伺いしたいと存じておつたのでありますが、不幸にして小瀧通商監あるいはまた大臣の方でもおさしつかえがあるように伺いましたので、本日はこの問題についてはあえてお伺いをいたしませんが、この問題に関しましても、外務省の方におきまして、今後の自由貿易との関係において、しかもその前にすでに今の管理貿易のもとにおいて発生しておつたクレームの問題の処理について、十分のお取扱いをお願いしたいということを、この席を借りて申し上げておきたいと思う次第であります。
  66. 大野勝巳

    大野政府委員 玉井さんの今のクレームの問題につきましては、前回の委員会でございましたか、並木委員からちようど今問題になつております日米仲裁委員会の成行きいかんという御質問がありましたので、その際私からやや詳しく状況をお答えしておいた次第であります。従いまして外務省といたしましても、もちろん大きな関心を持つておりまして、これらが円満に行くように努力いたしておるのでありますが、その際申し上げたことにつきましては、恐縮でございますが、速記録につきまして御了承願いたいと思います。
  67. 玉井祐吉

    ○玉井委員 今の日米仲裁委員会のことにつきましては、できたあとの問題はよいのです。ところができない前に起つてつたクレームの問題、特に私お伺いしたいのは、現在の中共が最近においては中国の主権を握つておるような形になつておりますが、それ以前の中国政府との間のクレームの問題をどう処理するか。さらにソビエトとの関係、朝鮮との関係、その他アメリカの方に対しこの問題もありますが、特に最初に申し上げた三国との問題、これは日米仲裁委員会ができてもその範囲の外でありますので、これの扱い方は相当量重要になつて来ると思う。特に日本の鉄鋼業を今後進めて行こうとする場合における粘結炭の問題や、あるいはソビエトからのパルプの問題というようなものがからんで来ておりますので、今後のわれわれの国民的な生活を維持して行く上においても、この問題は小さな問題ではありませんので、そういうような点についても盡力をお願いしたい、その方面のことを申し上げておきます。
  68. 並木芳雄

    並木委員 関連して大野政府局長に伺いたいと思います。その時期は早晩実現しそうですが、大体いつごろの見当でしようか。
  69. 大野勝巳

    大野政府委員 今のところまだ確実な日限のお見込みをここで申し上げることはできません。なお通産当局ともよく相談いたしまして御要望に沿いたいと思います。
  70. 中山マサ

    ○中山委員 私は大野政府委員にお尋ねしたいと思いますが、この秋でございましたか、スエーデンのストックホルムにおきまして第二回の万国会議を開催いたしまして、出席国が二十箇国、出席人員三百名をもつて構成しておりますが、世界連邦主義の動向についてお尋ねをいたしたいと思います。この間から国連に入る入らないについて、いろいろ憲法との矛盾があるというような点を御心配していらつしやるが、この問題について外務省ではどういうふうなお考えをお持ちになつていらつしやいますか。またこれに対してどの程度の御研究をなさつていらつしやいますか、お尋ねしたいと思います。
  71. 大野勝巳

    大野政府委員 中山さんの御質問お答えいたしますが、世界連邦という考え方は、戦争を放棄し、完全な非武装を標湧いたしております日本立場からいたしますと、世界の秩序が確立して、平和の世界が到来することが最も望ましい次第でありますから、そこには何か共通なものがあるということを感ずる次第でありまして、世界連邦の掲げております目標に対しまして、まことにけつこうなことだと存じております。従つて外務省としてはこの問題についても従来から研究を進めておりますが、ただこれは非常に大きな理想でございまして、現在直面いたしております緊迫した国際関係から見ますと、まだ大分先のことのような気がいたしますので、どういう措置をとつたらよいかということについては、外務省としてまだ中山さんの御質問に積極的にお答えする程度に至つておりませんことを申し上げておきたいと思います。
  72. 中山マサ

    ○中山委員 倭島局長にお尋ねしておきたいことがあります。この間中共地区から引揚げて来た井上という昔の軍医であつたかと思いますが、その人のお話の中に、これは引揚げの問題になりますけれども、残留を希望していないのに、残留希望という名目でもつてとめておかれる人がたくさんある。そういうふうなことに対して、何かあなたの方でそういうことのないような手の打ち方がおありになるかどうかをお尋ねしておきたいと思います。
  73. 倭島英二

    ○倭島政府委員 お答え申し上げます。政府としましても、中共地区に現在残つております同胞の最近の情報については、帰つて来る人たちから聞いて、いろいろ調べておるという程度しかわかつておりません。従つてその残留希望というような点についても聞いておりますが、たとえば実際現地で結婚したとか、その他職業があるとかいう関係から、実際自分はもう帰りたくない、あるいは帰らないんだという希望を表明しておられる同胞の人もあるようでありますが、そのほか技術者関係で、向うで従来からいわゆる留用されておりまして、しかもそれは一種の契約のような、ことに自分が進んで希望して残るんだというような契約に判を押しておられる人もあるようであります。しかしそれがどういうような状況のもとに、どういうふうな條件で続けられておるかということは、実は現実の事態をまだ承知しておりませんので、そういう関係で残つておられる人もあるという程度しか存じておりません。なおそれに対してどういう打つ手があるかということでございますが、現在の情勢下におきましては、直接これに対して日本側から調査し、あるいはその状態を改良する、変更するという直接の方法はございません状況であります。
  74. 仲内憲治

    ○仲内委員 先日来総理の御出席を待つてつたのでありますが、なかなかお見えにならぬし、質問が腐つてしまいますので、旧同僚の政府委員諸君は御迷惑かもしれませんが、ひとつ総理にかわつて当局の御意向を御説明願いたいと存ずるのであります。  第一点は米国の対日経済政策の動向という点であります。最近講和会議の接近と相まちまして、米国の対日経済援助の動向が変化しておるのではないかというような見方、ないしは情報が多くなつて来ておるのであります。すなわち最近シーツ氏あるいはアツキンソン氏の来訪があり、また現に米国のスナイダー財務長官というような財政経済の権威者、ないしは当局者が続々と日本に来訪せられておるのでありまして、これらの事実と関連いたしまして、アメリカは最近における日本の経済復興の進行状況、ないしは中共問題等を中心といたしますアジアにおける軍事的ないし政治的情勢の変化というような点などを考慮せられて、対日経済政策の中心とも見られる現在のドツジ・アイン、このドツジ・ラインを中心とする対日経済政策に再検討を加えておるのではないか、そうして従来のように軍に日本の経済復興とその自立を促進するというばかりではなく、新しい情勢の変化に伴う日本の東亜における立場、ないし役割というものを見直そうとしておるのではないかという感じがするのであります。われわれも第六感と申しますか、最近の新しい米国側の動きというものから来る変化を感ずるのであります。すなわち従来の見返り資金というものは漸次減額の傾向がある。また講和條締結後にはむしろ廃止になるという情勢にあるわけでありますが、これとは異なつた意味の対日経済援助、すなわち日本の経済復興を一般アジア産業開発の計画、いわゆるアジア復興計画の見地から日本立場を見直して、そうして日本に対して別な角度からの積極的な経済援助計画、たとえば長期信用の供與あるいは日本の国際経済機構への復帰、参加というような方向に、何か計画が進められておるのではないかというようなことを感知するのであります。そうしてまたそういう方向に発展することを、国民とともにわれわれは期待するものであるのでありますが、最近におけるアメリカの対日経済政策につきましての動向につきまして、おさしつかえない限り伺うことができれば——特にスナイダー財務長官の来訪等につきましては、国民ひとしく重大な関心を持つておる次第でありますので、おさしつかえのない限り御説明願いたいと存ずる次第であります。
  75. 川村松助

    川村政府委員 仲内委員お答えいたします。ただいまお話のありましたようなことは、私どもも希望するところでありますけれども、具体的にはまだ何もそうした動向の変化ということは聞いておりません。ただ国際連合のうちにあります極東経済委員会が本年の十月にシンガポールで開かれました際に、日本の貿易をアジア諸国の経済復興に役立たせる、これがために貿易を拡張しようじやないかという決議が行われたことを聞いております。そういう面からだんだん日本の経済アジアの経済に浸透しまして、あるいはそれが足場になりまして、貢献し得るならばまことにけつこうであるということを期待いたしておりますが、具体的にはまだ動向の変化ということまでは現われておりません。
  76. 仲内憲治

    ○仲内委員 次にやはり経済問題でありますが、中共との関係、ことに中共との貿易の問題であります。中共政府承認の問題につきましては、先ほどもお話がありましたので控えますが、わが国と中共との貿易につきましては、いわゆる政府承認の問題が米英の正式承認がない今日でありますから、その占領下にあるわが国としては、中国と正式の通商協定の締結や、あるいは公式の輸出入貿易が行われがたいことはやむを得ないところであります。しかしながら輸出品の滞貨処分の問題は、ようやく復興の緒についた日本の輸出貿易上においては、きわめて重要な懸案でありますが、わが国の輸出市場として中国が占める重要性から考えまして、中共との貿易はわが国経済の問題、ないし輸出問題解決の上において、非常に大きな問題であるといわなければならないのであります。しかも政治情勢から行けば、さしあたり米英等による中共政府承認は、現実の問題としては、ただちには期待できない状況でありますから、正式の中共との貿易は困難であると考えなければならないのであります。しかし米英、ことにわが国と中国に対する関係を非常に同じくしております英国は、中共承認の問題についても、相当積極的であるように報道せられておるのでありまして、この英国のあつせんによつて、あるいは中共との非公式の貿易ないしは物々交換というような方向が、促進せられることを国民としては要望しておるわけでありますが、聞くところによりますと、現在中共からは非公式に貿易の代表と申しますか、バイヤーと申しますか、来ておるということを聞いておりますし、ラジオ、新聞等にも開演炭が入るとか、大豆が入るというようなことも伝えられておるのでありますが、この中共との非公式な貿易、あるいはイギリスその他のあつせんによる貿易が、どの程度に進行しておるのでありますか、またいかなる形式によつてどのような通商の方向が進められておりますか、情報ないし御見解を承つておきたいと思います。
  77. 大野勝巳

    大野政府委員 従来日本の中共貿易は、香港を経由して行われて来たわけでありますが、本年に入りまして八月ごろから香港経由の貿易に加えまして、天津を通ずる直接取引がだんだん頭をもたげて来ましたのは注目に値すると思います。本年の八月、九月二箇月間におきまして、中共との直接取引の契約成立いたしました件数は、大体五、六件にすぎないのでありますが、その大部分は大豆であるとか、落花生などの原料品を輸入いたしまして、その見返りとして、またバーター物資として、日本側から先方が入手を希望しておりますものは、交通機関の資材であるとか、あるいは動力源の施設器材等であるのであります。それ以外にも若干こまかいものがございますが、主として二つの項目が大きなものになつておるわけであります。但しこれらの品物は、今の状況にかんがみまして、かなり機微な関係がございまして、そう簡単においそれと輸出し得ないような状況にもありますので、楽に輸出ができないという点も多少あるのであります。輸入に対する、ハーター物資といたしましては、今申しましたような動力源の施設、器具器材であるとか、交通機関設備等でありますが、そのほかにたとえば銅であるとか、鉄板あるいは鉄線などが多少見込まれております。すでに一部積出しも行われたものがありますし、第二次的な輸出品といたしましては、紡織機機械用の部分品であるとか、あるいは印刷機であるとか、印刷用のインクであるとか、用紙であるとか、こまかいものが多少ございます。それからさつき申しました大豆あるいは落花生など以外に、先方のオフアーして来ている品物の中には、石炭、塩、麻あるいは豆かす、ほたる石、銃鉄等も含まれているわけであります。現在天津を中心とする外国船の船便を利用して取引されている中共との貿易は、船舶の問題が非常に大きなボツトル・ネツクになつておりまして、そのほかにも通信関係もなかなかうまく行つておりませんので、これらの不十分な要素が競合いたしまして、中共との取引は今仲内さんの希望された点にもかかわらず、依然としてあまりはかばかしい見込みを持ち得ないという結論を下さざるを得ないのであります。長期的に見ますと、——長い間の戦争で相当消費物資が不足していることは申すまでもない次第でありまして、その他産業施設、交通機関の破損とか、損耗状況もはなはだしいように聞いております。従つて今後中共がその経済復興に努めるといたしますならば、地理的に申しましても、また従来の施設がほとんど日本から輸出されておつたものであつた点などからいたしましても、先を考えますと、漸次この貿易は有望なものになつて来ると思いますが、これはあくまでも理論的に申してそうなのでありまして、現実の情勢から申しますと、仲内さんの御言及もありましたように、中共をめぐる国際、情勢が実に機微な状況になつておりまして、これに影響されるところもすこぶる多く、また中共自身が採用いたしておりますところの対外貿易、政策というものも、自由貿易的な趣旨は少しも含まれておらないのでありまして、これらの大きな要素が障害になつておりまして、仲内さんの御希望にもかかわらず、この問題について近い将来に非常に明るい見通しを持ち得るということは、ここでは申し上げられないような状況になつておる次第であります。
  78. 仲内憲治

    ○仲内委員 ちようど管理局長見えておりますので、最近の引揚げ状況、それから今後のソ連側との折衝、これは総司令部を通じての話でありましようが、今後の引揚げの見通しというような点を承りたいと思います。
  79. 倭島英二

    ○倭島政府委員 十一月後半のソ連地区からの引揚げの配船要求がちようどきのう来たところでありますが、現在までの引揚げの数字を申し上げてみようと思います。  今年六月下旬から始まりまして、十一月の上旬までの数字でございますが、大連からこの期間において二千八百六十一名帰つておりますが、そのうちで軍関係が二百六十一名、残りの二千六百名が一般邦人であります。千島、樺太の関係では従来四千七百十名帰つておりますが、そのうち軍の関係は八十八名でありまして、その残りの四千六百二十二名が民間の一般邦人であります。それからシベリアからの引揚げでは、十一月の上旬までに七万七千四百二名帰つております。うち軍人が七万五千九百七十一名で、民間の一般邦人が千四百三十一名になつております。その計を申し上げますと、ソ連地区から今年の引揚げの期間において、十一月の上旬までに八万四千九百七十三名帰つております。うち軍人が七万六千三百二十名、一般邦人が八千六百五十三名、これが十一月上旬までの状況でございます。これにきのう配船要求が参りましたのが約一万二千人ずつ乗る船五はいでありますから、約一万帰つて来る予定になつております。この引揚げの関係につきましては、日本政府としましては、司令部に対してその引揚げの促進に関して、従来も機会あるごとにお願いをしております。シベリアの関係、それから満州の関係が、残留しておる数が一番多いのでありますので、シベリアの関係、満州の関係の引揚げ促進について、始終お願いをしておりますが、特にその一例といたしまして、政府は去る十月二十一日に書面を司令部に出しまして、冬になる前にぜひこの引揚げの完了するように、お願いしたいということをさらに懇請しております。その懇請したときに、中共地区の問題についても頼んでおるわけでありますが、その関係のところをちよつと申し上げますと、元来終戰のときに、満州にあつた日本人の処遇についての責任——どういうふうに処遇したかということに対する責任は、同地を占領したソ連軍の負うべきもので、また今回の事例に見られる通り——というのはこの前大連を通じて、中共地区から邦人が帰つて来たのでありますが、その事例に見られる通り、ソ連さえその気になれば、満州からの引揚げを援助することもできるのであるから、今後においても、ソ連当局が在満日本人の引揚げを援助、協力して、一人でも多く帰れるようにしてもらいたいものであるということも申し添えまして、引揚げ促進について、さらに書面でお願いをしたのでありました。それに対する返事の一部として、司令部から十月の三十一日付で来ております。さきに申し落しましたが、日本政府としては、留守宅家族もすでに待つこと四年以上に及んで、その生活もはなはだ困難である、ぜひ冬になるまでに引揚げを完了するようにお願いしたいということを述べたのに対して司令部としては、この留守宅家族の困難な状態にあるということに対して、深く同情するところであるが、従来引続きこの引揚げのために努力し、またあらゆる方面と連絡をとつて努力をして来たことは、関係の向きあるいは日本国民も御存じの通りだろう、今後もさらに努力するという趣旨と、それから特にまたその中に引揚船だとか、その他の施設において足らないから引揚げができぬのだということのないように、万全の準備を整えておるわけであるということと、さらにソ連地区からの引揚げについては、月月十六万を引揚げできる案を持つており、それもすでにソ連に提議したが、ソ連が聞かなかつたのであるというようなことも申し添えてあります。  今後の引揚げの見通しといいますか、交渉の問題でありますが、今後のことは見通しとしては、現在何ら申し上げるだけの材料を持つておりませんが、政府といたしましては、司令部の方へあるいはわれわれの持つておる資料を提供し、さらにその引揚げを促進せられるよう、従来以上にお願いをして行くつもりでおります。
  80. 近藤鶴代

    ○近藤委員 先ほど戸叶さんから御質問に出ましたことに関連したことでございますが、講和会議も非常に話題になつでおります。しかし今日講和会議はあくまでも仮定の問題でございますが、日本人がいろいろの面から海外にたくさん進出いたしております。なお技術指導者のような立場において、日本人を求めて来ている向きもたくさんございまして、だんだん派遣されているということを伺いまして、私は非常に講和会議の前に海外に出て行きます日本人に、重責があるということをつくづく感じるのであります。この間、毎日新聞でしたか、高良とみさんがシンガポールからお寄せになりました手記にもございますように、私ども国内において、すでに敗戰後四箇年を経て、きわめて平和を愛好しておるというような趣旨において、何も矛盾を感じておらないような気持でございますが、さて一歩外に出てみますと、非常にきびしい反省をしなければならないということを、高良さんがしみじみと述懐しておられた。その手記を見てもわかりますように、私は日本が平和を愛好し、ほんとうに平和立国であるということを念願していることが、まだまだ十分徹底しておらない向きも多いであろうと思います。そのようなときにあたりまして、どのような使命を持つて海外に出て参りましようとも、その一人々々の日本人は、いわゆる国民外交の立役者でなければならない。ことに技術方面で長い間その国にとどまつて、指導的な立場に立たなければならないという人は、技術の上ではもちろんでございますが、あるいは人物の上から申しましても、思想の方面から申しましても、まさに平和日本代表として迎えられた人であり、送つた人であるということでなければならないと思うのですが、こういう人たちをお送りになります場合の人選と申しましようか、それが適当であると認める機関はどこにあるかということと、それから、あるいは非常にすぐれた人で、そういう技術者として迎えられたならば行きたいという願いを持つている人が、一般の中にも相当数あることを聞き及んでおりますが、そういう人たちはどういうところに、どのような手続をいたしましたならば、そのような派遣者として出してもらえるかどうかという点について、お尋ねしたいと思います。
  81. 倭島英二

    ○倭島政府委員 先ほど戸叫委員の御質問のときに、現在懸案になつております国及びそれの関係の大体の数字を申し上げたのでありますが、今近藤委員の御質問もありましたので、この技術者の現在司令部から許されている範囲の手続の問題を一言申し上げたいと思います。この技術者渡航というのが許されました目的といたしましては、日本が世界の産業に積極的に寄與するというのが一つであります。それから日本が優秀な技術を持つているの、だから、それを海外に出して、それによつて相当の外貨その他の獲得をしたらいいじやないかということと、第三番目には、ただむやみに技術者が外に出てしまつて日本の経済再建にさしつかえるということがあつてはいけないというような目的、それから第四番目には、日本技術者が外に出ますとき、いろいろ競争があつて、安く賃金をきめて出て行くというようなことがあつても変なことになりますので、そいうような問題を考慮して、この技術者の問題を考えろということになつております。  それから、なお申し添えますが、技術者というのは、司令部が現在許して来ました指令の中には、一般の労働者を除くということになつております。従つて、一般労働者ということの解釈でありますけれども技術者というものは相当広く解せられると思います。先ほどもちよつと申しましたが、普通の工業関係のみならず、漁業だとか農業だとか、そのほかさつきちよつと例に申しましたひなの雌雄の鑑別というようなことに及ぶまで、技術者という名前で出れるようになると思います。今申し上げましたような目的で、この技術者渡航が許可せられるわけでありますし、政府としましても、できるだけりつぱな人を出したいと思うのでありますが、この技術者の出る手続としましては、外国の関係会社から日本関係会社へ、どういう関係でどういう人をほしいということで直接話をきめる場合が一つと、それから外国の政府あるいは会社から日本政府にあてまして、こういう関係技術者を推薦してもらいたいということを、何の太郎兵衞というようなことを言わないで頼んで来る場合と二通りございます。最初の、自分できめる場合は問題ございませんが、第二の、適当な技術者を推薦してもらいたいというときには、だれを送るかということを日本政府の方できめなければなりません。そういうような状況でありまして、技術者と申しましても、実に関係するところが多いのであります。政府の省の関係を申しますと、全部の省がこれに関係して来ることになりますが、現在の建前といたしましては、外務省が世話役になりまして、外務省の中で、どういう人が今申し上げましような目的に適して外国に出て行くのによろしいか、その報酬としてはどの程度にきめた方がよろしいか、というようなことを協議する機関をつくつております。なおこの技術者海外渡航は、現在のところでは、日本側の方から出たいといつても、すぐ出れるわけではないのでありまして、やはり外国の要求があるということが前提條件であります。向うから要求があれば出て行けるのでございます。そういうような状況であります。
  82. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 西村條約局長に先ほど私が質問いたしましたことに関連して、追加してお尋ねしておきたいと思うのでありますが、先ほど私の、予想される対日講和の場合の條約の国会に対する承認は、事前に行われるのか、事後に行われるのかという質問に対して、事前に行われるであろうと思うというような御答弁のように記憶いたしております。私といたしましては、いささか意外に思つたのでありますが、もし事前に行われるといたしますならば、その條約の案文は国会において審議することができるということになるのかどうか、この点を承りたいと存じます。
  83. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もちろん御趣旨の通りかと考えますが、実際その場になつてみませんと、何とも確たることはお答えいたしかねます。
  84. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 イタリアとの講和会議の場合などにおきましても、事前において内容について国民が、あるいは政府の機関が、これを審議するようなことはできなかつたのではなかろうかと考えるわけでありますが、どういうふうであつたかという点も承りたいのであります。
  85. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 イタリアの講和條約の場合には、最後の段階におきまして、イタリア政府意見を陳述する機会を與えられております。またでき上つた條約は、第九十條でありますが、批准條項がついております。
  86. 玉井祐吉

    ○玉井委員 ちよつと西村條約局長にお願いしておきたいと思うのですが、最初に御質問した戦争の定義の問題については、実は私もここ両三日を費して調べたのであります。ところが戰争の定義というものについては、国際法上何も出ておりませんので、特にこの際、政府の方で何らかの定義というものを、ぜひとも出していただかなければならない状態になつておるということと、それからその次に申し上げた自衞権の問題についても、私が先ほど申し上げたように、個人の場合における緊急避難もしくは正当防衞と同じような立場にある国家としての権能だ、これは国家の生存権の問題だと考えておるのですが、その点について、自衞権というものも調査しましたが、戦争の定義の問題と自衞権の内容については、十分な答えが出て来ておりません。特に今までの国際情勢を通じて、そういうような国家の権能というものが、十分に認められておるとは思われない面が多々ある。そこで日本が武力を放棄した形において、日本の自立をはかつて行こうとする場合の自衛権の問題というものを含めて、ぜひともできるだけ早く、もしできるならば来る二十一日の委員会ごろまでにでもいこの戰争の問題と自衛権の問題の二つをひとつ御研究をお願いしたい。宿題を出すと言つては失礼ですが、特にその点を研究していただきたいことをここで申し上げておきたいと思います。
  87. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは時間も大分経過いたしましたので、本日はこの程度で散会いたします。     午後零時二十八分散会