○琵琶島
政府委員 移民問題についての御
意見なり御
質問がございましたが、これについてこの機会に最近の
政府のと
つておりますところ、
考えておりますところを
簡單に御
説明申し上げたいと思います。
最近海外への渡航の制限が緩和せられましたのと、人口問題との
関係からいたしまして、移民問題について国内の一般の関心が高ま
つて参りました。現在の模様を一言申し上げますが、現在渡航を許可せられておる
関係では、一般の渡航
関係とわれわれ申しておりますが、
国際会議その他に
参加するために海外へ行行する、あるいは海外へ勉強するために渡航するという人と、第二番目は経済的の
関係で、優先的に外貨を使い得る実業家の方がぼつぼつ海外に出ることができ出したということと、それから技術者が外国から招聘を受けて海外に出て行けるようにな
つた。第三番目の海外に出ることが現在でもできまする
関係では、その御家族がたとえば南米等にありまして戰前あるいは
戰争中に
日本にその家族の方が、あるいは勉強その他で来ておられて、その人が呼び寄せ等で帰
つて行かれる、こういう人がおもに南米諸国にございます。こういう
関係で最近渡航せられております。但し先ほどもちよつと御
意見がございましたが、移民と申しますか、相当多数そろ
つて海外に移住するという
関係では、現在のところまだ
占領下におきまして許された例もございませんし、なおこの前技術者が海外へ渡航することが許された指令の中にも、一般労働者は含まないということが明確にせられておりまして、現在のところ、いわゆる従来移民といわれてお
つた関係は、許された例がございません。但し先ほども御
意見がございましたように、われわれといたしましても、これは最も深い関心を持
つておる問題でございますが、ただこれにつきましては相手のあることでございますし、その相手の国の
政策なり都合によ
つて決定せられることが多いことは、いまさら申し上げるまでもないと思います。この移民についての渉外の態度につきましては、ときどき
新聞通信等によ
つて承知しておるのでございまして、だんだん
わが国に対する理解なり同情なりが、深ま
つて来つつあることは承知しておるのでございますが、
政府といたしましては、まだどの国がどういうふうになりつつあるということを、ここで申し上げるほどのはつきりした資料を持
つておりません。ただ先ほども御
意見がございましたように、この移民の問題は、
わが国の人口の問題から申しましても、また経済の今後の問題から申しましても、重要なる問題でございますし、将来適当な時期に、相当多数の人が海外で活躍せられるということは、われわれとしても衷心から
希望しておるところでありますし、またそうすることによ
つて、
わが国も
世界の平和なり経済の発展に寄与し得るところでありますので、その方向に向
つてあらゆる努力をしたいと思
つておる次第でございます。
政府はどういうようなことをや
つておるかという御
質問がございましたが、こういうような状況のもとにおきましては、大ざつぱに申しますれば、いろいろ努力をしておるということを申し上げるわけでありますか、その二、三の問題について特に申し上げてみますと、先ほども申し上げましたように、何と申しましても、移民の
関係は相手の国のあることでございますので、今後の問題を
考えるその準備といたしましても、
わが国の
国際的な信用を高めるようにすることが第一だと思
つております。
わが国が戰後に平和的に民主的に再建せられて行
つておるということを、あらゆる機会に実績を示して行くことが必要だと
考えております。従来われわれの同胞が発展をしておりました外国から、御承知の
通り終戰後約三百万の同胞が引揚げて参りました。これは主としていわゆる大東亜地域の諸国からでございましたが、か
つて活躍してお
つた国の中では、まだ
わが国の態度に対して、あるいは行き方に対して、再建の方向に対して、警戒的な気持を持
つておるような国もございますが、やがて
わが国が真に平和的に建設されつつあるということがわか
つて参りますれば、漸次
わが国に対する態度なり
考え方も改善せられると思うのでありまして、要は
わが国の努力と誠意にかか
つておるものと存じております。
第二番目に今後の移民の問題を
考えます際に、従来も必ずしもそうであ
つたわけではございませんが、いわゆる移民というものは国内で生活しにくくな
つた人を国外に送り出すということでなくて、海外でしつかりした活動ができ、また
関係の国でもぜひ来てほしいというような人を一人でも多く送りたいと
考えております。そのためには先ほどちよつと申し上げましたが、すでに技術者は現在でも招かれれば渡航できるようにな
つておりますし、さしあたり各
方面の優秀な技術者を養成することがまず手取り早い最初のなすべきことではないかと思います。最近の人口問題審
議会の調査によりましても、十五歳から五十九歳までの間のいわゆる稼働人口というものは、
わが国の現在の人口
情勢では、今後まだ二十年間はずいぶん増加する傾向にあるという結果が出ておりますが、われわれといたしましてもこの稼働人口、いわゆる働き盛りのわれわれの同胞を、一人でも多くりつぱな技術者に育て上げて外国でも歓迎を受ける人を一人でも多くつく
つて行きたいと思
つております。
第三番目の問題として
考えておりますのは、これは従来
世界の人口なり移民
関係の学者あるいは識者等が、いろいろ
わが国の人口問題、移民問題というものを研究史、またいろいろな
意見を発表しておるわけでありますが、この外国の識者あるいは人口問題、移民問題等についての指導的
立場におる人たちの理解と同情を深めるためには、
わが国ではやはりなすべきことがある。つまり将来円満に
わが国の
希望するように海外に移住ができるというためには、いろいろ
わが国でしなければならぬことがあるように思います。その一つといたしまして、
わが国として移民をすれば、実際上国内の人口重圧と申しますか、人口圧力が低下するような
情勢になるという実情を示す必要があるのではないかと存じます。つまり別の言葉で申しますと、出生率がむやみに高くて、少々海外に移民を出しても、その出しただけはすぐ埋ま
つてしま
つて、焼石に水のような人口の増加状況にあるということでは、
世界の人口問題、移民問題、特に
日本の問題について、好意的に
考えてくれている人たちの積極的なる支持を得にくいということが
考えられるわけであります。御承知の
通り、昨年から今年にかけまして、主として
米国でございますが、これは司令部の方の好意的なはからいだと思いますが、人口
関係の学者が
日本に見えたのであります。その中の一入にプリンストン大学の教授でノーテスタインという人がありますが、その人なども座談会等で
わが国の社会的、経済的な
條件が向上して死亡率が下るとともに、地方出生率もその向上の度合に
従つて下
つて行くということがはつきり現われて来ない限りは、
日本の移民への道は開かれないであろうという
意見を表明せられたこともございましたし、また今年の一月から三月ごろまで
日本に来られて、人口問題、移民問題を研究しておられた
米国の人口学者、マイアミ大学の教授でございますトムソン博士等も—このトムソン博士というのは、か
つて移民が
わが国の人口問題の
解決上寄与するものであるということを理論的にその
著書で
説明せられ、
わが国にきわめて好意的な
意見を発表せられた方でありますが、その人が本年三月
わが国を去られますときに
日本の人口問題の
解決は、
日本人個人が自主的にやる妊娠調節以外に道はない。さしあたり移民の問題については諸般の政治的な考慮もあ
つたと思いますが、従来のような積極的な
意見は表明せずに帰られたわけであります。つまり第三の点で今多少長々しく申し上げましたが、
世界各国の識者あるいは学者等が、
日本の人口問題あるいは移民の問題について、
日本の社会的経済的
條件が向上しなければいかぬとか、産兒制限を多くやらなければいかぬとかいう
意見を表明しておるわけでありまして、
わが国といたしましても、こういうような各
方面の努力をしなければならぬということが
考えられるわけであります。さしあたり大まかな御
説明を申し上げれば、
政府として
考えております、われわれとして将来わが同胞が海外に発展しやすいような雰囲気をつくる用意をするという
意味で、現在でもわれわれができる
方面を申し上げますと、二、三の問題がありまして、そういう
方面へ
政府としても努力をしたい。あるいはしておるという状況でございます。