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1949-11-09 第6回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十月二十九日       菊池 義郎君    近藤 鶴代君       佐々木盛雄君    仲内 憲治君       竹尾  弌君    戸叶 里子君       並木 芳雄君    野坂 參三君       犬養  健君    松本 瀧藏君 が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十四年十一月九日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君    理事 仲内 憲治君 理事 戸叶 里子君    理事 並木 芳雄君 理事 野坂 參三君       栗山長次郎君    塩田賀四郎君       中山 マサ君    北  二郎君  出席政府委員         外務政務次官  川村 松助君         外務事務官         (政務局長)  大野 勝巳君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君         外務事務官         (管理局長)  琵琶島英二君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  中立問題に関する件  講和問題に関する件  移民問題に関する件     —————————————
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。  議会に引続きまして中立問題に関する件、講和問題に関する件を一括議題といたします。
  3. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 前回の本委員会におきまして、所管大臣出席を満場一致要求しておいたのでありますが、不幸にしてまだ出席を得られませんでしたので、本日はやむを得ず、対日講和に関連する諸問題につきまして、いささか質問を試みたいと思うのであります。外相出席がありませんので、根本的な外交政策の問題はなるべく避けまして、主として外交事務の問題や、法理論上の解釈論や、あるいは国際情勢に対する当局認識等の問題につきまして、政府見解をただしてみたいと思うのであります。  なお冒頭に前提をしておきたいと思うのでありますが、それは前回の当委員会におきましても、政府委員の注意を特に喚起しておきましたように、対日講和の問題は、国家、民族の生死を決する重大問題でありまして、国民はひとしくこれに対して重大なる関心を拂つておるところでありますから、従つて政府委員におかれましても、このことを十分念頭に置いて国民の要望にそむかざるように、われわれの納得の行けるような御答弁を今回は願いたいと思うのであります。  ます第一には、アメリカイギリスが今回の対日講和條約を起草するに至りました国際情勢の背景についての問題であります。すなわち今日まで対日講和のがんとなつてつた拒否権を含む会議方式において、米、英、ソ連あるいは中国との間に主張が対立しておつたのでありますが、この対立が依然として解決をしないままにおいて、スターリン首相平和声明によつて米ソ平和交渉が行われ、とにもかくにも四国外相会議にまで発展し、さらにヴィシンスキー外相の対日講和問題の討議の提案となり、また他面アメリカにおきましても、トルーマン大統領以下しきりに米ソ平和関係の回復を要望する空気が強くなりまして、今回の米英の対日講和條約の起草ということもまた、このような情勢のもとにおいて発表されたものでありますが、そうだとすると、今回の米英の対日條約の起草を見るに至つた国際情勢について、外務当局はどのようにこれを分析し、どのようにこれを認識しておるか。この点は私は外務当局国民の前に率直に明らかにする意向であろうと考えますので、この点に関する政府見解をただしたいと考えます。また従つてその情勢判断の結果として、單独講和になるのか、あるいは全体講和になるのかということの見通しをも含めて、ひとつ御説明を煩わしたいと存じます。
  4. 川村松助

    川村政府委員 佐々木委員の御質問にお答えいたします。いわゆる現在の国際情勢につきましては御承知のように、またただいまのお話のように、非常に複雑な困難な事情がありますので、せつかく連合国全部が一致して対日講和に臨んでもらいたい、こう望んでおりましても、実現がなかなか期しがたい節があるのであります。そのときにあたりまして、最近各方面からの情報によりますれば、英米中心にした国が日本ととにかく講和條約を早く結んで、将来のいわゆる世界に対するところの平和を促進しようというような状態に遭遇いたしておるのであります。しかし実際問題として、連合軍側におきましてもそれぞれの考え方あるいは事情がありまして、はたしてどの線に結論は到達しまして、そうして対日講和の諸條件というものが具体化して来るかということにつきましては、現在のところまだ見通しがつきません。従つて政府といたしましては、いろいろの場合を仮想いたしまして研究する必要がある、こう考えておるような次第であります。
  5. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それから先ほどこういう情勢に立至つた国際情勢に対して、外務当局はどのように考えているかということをお尋ねしたわけでありますが、それに対して政務次官でむりがあれば、政務局長でもけつこうでありますから御答弁を願います。
  6. 大野勝巳

    大野政府委員 パリの四国外相会議というのがこの春あつたのでありますが、国際情勢を概観いたしますと、この時期を中心として中間安定段階に一応入つた、こういうふうに見てさしつかえなかろうと思います。その後米国が、西欧におきましては西ドイツ政府の樹立、それから北大西洋保障條約等の政策を完成して参つた次第でありまして西欧方面におきましては、一応かねて米国対外政策の大きな項目と目されておつたような問題は、完成に近づいた形になつてつたのであります。あたかもちようどこういう時期におきまして、極東方面情勢を見てみますと、一方におきましては中国における形勢の重大な変化がありまた南北両鮮の統一問題もきゆうくつな問題になつて来ましたし、南方方面におきましては東南アジア諸国独立運動、あるいは香港台湾地位等をめぐる複雑な問題が、ちようど十月、十一月くらいを峠として、むずかしい問題にますますなつて来た次第であります。他方日本管理に関しましては、連合国側は着着と管理目的を達成して来たということが言える、と思うのでありまして、本年の四月、憲法制定の三周年記念であつたと思いますが、その際におけるマッカーサー元帥声明並びに本年九月二日の日本占領四周年記念におけるマッカーサー元帥の同じく声明が出ておりますが、それによつて連合国側日本管理の所期の目的を着々と完成しつつあるということが言われておるわけでありまして、はなはだ心強い次第であるわけであります。そういう意味におきまして、この辺で大きな転回があつても別に不自然ではない、こういう状況が展開されていると思うのであります。要するにこれは極東だけの問題、あるいはヨーロツパだけの問題というふうに切り離しては考えられないものと私どもは思う次第でありまして、全体の世界政策の面においてそういう動向が看取される、外務官といたしましては、大体こういうふうな見方に立つているわけであります。
  7. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それではあまり人で長い時間を占領するのもどうかと思いますので次の問題に移ります。仮定の話でありますが、もしかりに米英日本との單独講和を締結いたしました場合において、それがよく言われております一九四二年の連合国宣言によつて單独講和はしないという脇定の違反とはならないかどうか。これは連合国間の問題でありますが、もし御所見を承ることができますれば、明らかにしていただきたいと思います。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の、全体講和とならないで多数講和という形になつた場合に、一九四二年の連合国共同宣言にあります、單独講和はせぬという協定との関係は、どうなるだろうかという点につきましては、佐々木委員の御説明通り、まつた連合国間の問題でございますので、日本側として意見を述べることは愼ましていただきたいと思います。
  9. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは次の問題に移りますが、外国新聞電報の伝えるところによりますと、講和会議への参加條件としてイギリスあるいはアメリカ中共政権承認を与えるであろうとの報道もあるわけでありますが、この報道が真実なりやいなやは別の問題といたしましても、日本政府承認をしていない中共政権というものが、中国政府にかわつてポツダム協定当事国としての権利を日本に対し主張し得るかどうかという点。また連合国承認のない、いわば国際人格のない中共政権というものが、連合国に対して対日講和への参加を主張し得るかどうか、この点に対する御見解を明らかにお願いしたいと思います。
  10. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問のこの問題もまた、実はポツダム宣言調印国でありますアメリカイギリス中国、三国間の問題でございまして、北京政府がこの協定の当事者となれるかどうかという問題は、直接日本北京政府承認しているかどうかという問題とは関係がない問題でございます。なおまた占領下にあります日本につきましては、他国または他国政府承認をするという能力はないということを特につけ加えておきたいと思います。
  11. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは單独講和の場合におきまして、日本領土所属決定ということはどうなるか。すなわちポツダム宣言やカイロ、ヤルタ協定等によつて日本の主権は本州、北海道、四国九州並び連合国決定をいたしまする小島に限定するということか規定されているわけでありますが、申すまでもなくそれらの小島とは小笠原沖縄等を含むものでありましようが、ソ連の千島、樺太に対する、またアメリカ小笠原沖縄に対する、そしてまた中国台湾に対する関係におきましては、それぞれ特殊なる関係があるのでありますが、この領土の帰属というものを、全体の連合国参加しない單独講和において、一方的に決定することができるかどうかという問題をお聞きしたいのであります。
  12. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題についてお答えいたします。條約参加国に関する限りは、領土所属決定し得ると考えます。
  13. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次に單独講和條約が成立をいたしましたときに、その條約は、條約に参加しなかつた他の連合国をも拘束し得るかどうか。たとえば今申しました領土であるとか、賠償であるとかの問題につきまして、單独講和において決定したことに対して、條約に参加しない他の連合国がこれを認めないでポツダム宣言に基いて別個の要求をして来るというような場合にはどうなるかという問題をお聞きしたいと思います。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 條約に参加しない国を拘束し得ないことになります。
  15. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次にソ連中国が同意しないならば、アメリカイギリス側におきましては、單独講和をも辞せないという報道が伝えられておるのに対しまして、日本国内におきましても單独講和に対する反対の空気もあり、国会においても一部にこの空気のあることを新聞を通じて承知しております。従つてあくまでも全体講和でなければならぬと主張する向きがあるのでありますけれども、種々なる事情のために全体の講和がむずかしいというなれば、われわれは單独講和も大いに歓迎すべきであると考えます。もとより單独講和の場合におきましては、講和した国とは通常の国際関係に入り、講和せざる国との間には依然として交戰状態が続くという、まことに複雑かつ困難な関係日本が置かれることになるのではありましようけれども、しかしかりにアメリカイギリスとの單独講和ができたといたしますならば、それはソ連中国との講和を促進するということにもなるでありましようし、また中国ソ連との講和の場合におきましても、アメリカイギリスとの間にでき上つた講和條約が大体基準となるであろうということは、国際社会の通念とも考えられますから、われわれは單独講和であろうとも心からこれに感謝し、かつこれを歓迎すべきであろうと考えますが、この際私は政府見解を明らかにしたいと思うのであります。
  16. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 單独講和よりも全体講和が望ましいことはもちろんのことでありまして、外電によりますれば、関係国におきましても全体講和となるように折衝が行われておる模様であります。     〔「今の答えはまだ政府見解を発表していない」と呼ぶ者あり〕
  17. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 たまたまほかの方から発言がありましたが、私もまた同じことをもう一度繰返そうと考えておつた次第であります。その点をもう少し明らかにお願いいたします。
  18. 川村松助

    川村政府委員 私からお答えいたします。單独講和よりは全体講和がもちろん望むところでありまして、そう行くように期待しております。
  19. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 答弁は私にとつて不満足でありますけれども、それ以上の御答弁が願えないでしようか。—むずかしいというなれば、いろいろな点を考慮いたしまして、あえて私はこの際は追究をいたさないことにいたします。  それでは次に、これはこの前からの懸案になつておる問題でありまして、委員長も今日のこの委員会において一応これの結末をつけてくれというお話でございますので申し上げますが、それは今度の講和問題とは密接不離関係にありまする憲法第九條の戰争放棄規定に関連する問題であります。この前の本委員会におきまして、この第九條の規定は、攻撃的な戰争はもとよりのことであるが、日本が侵畧された場合の自衞権をも放棄したものであるかどうかという私の質疑に対しまして、川村政務次官はあいまいな御答弁ではありましたが、西村條局長とともに、とにかく衞権の発動たる戰争をも放棄したものであると解釈する旨の答弁があつたのであります。しかし新憲法成立当時の第九十帝国議会におきまする憲法改正案委員会速記録を私はここに持つて来ておりますが、これを詳しく調べてみましたけれども、今の條約局長政府委員の御説明と大体同じような解釈提案者はなしております。しかしながらこの憲法改正委員会委員長を勤められ、後には憲法普及会会長であつた芦田均氏の著書の「新憲法解釈」というのによりますと、「第九條の規定戰争武力行使武力による威嚇を放棄したことは、国際紛争解決手段たる場合であつて、これを実際の場合に適用すれば、侵畧戰争ということになる。従つて自衞のための戰争武力行使はこの條項によつて放棄されたのではない。又侵畧に対して制裁を加へる場合の戰争もこの條文の適用以外である。」ということを明確にされておるのであります。そこで、この芦田氏の立場が、今申しましたように、新憲法審議とその成立を担当した責任者であり、この新憲法趣旨徹底をするための普及会会長であつたという特殊なる立場から推しまして、單にこれを芦田さんの個人的な見解とのみ解釈することはできないと私は考えるのでありますが、この点をどういうふうに政府はお考えになつておりますか。これは今後とも対日講和進行途上におきまして私は必ず大きな問題として浮び上つて来る点であろうと考えますので、この際これに対する解釈を明確にしていただきたいと存じます。
  20. 川村松助

    川村政府委員 政府といたしましても、あらゆる御意見を総合いたしまして判断した結果、自衞権、自衞戰争は放棄したものと、こう考えております。
  21. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私から補足さしていただきます。憲法第九條第一項は、国際紛争解決する手段としての戰争武力行使はこれを放棄しておりまして、直接には自衞戰争には触れておりません。しかし第二項で一切の軍備と国の交戰権を認めておりません結果、自衞のための戰争も放棄したものと了解いたします。自衞権行使戰争または武力行使、こういう形をとる場合、わが国は原因のいかんを問わず、すべての戰争または武力行使を放棄しておりますから、そういう形式をとる自衞権はないものと解します。しかし急迫した不正の危害が現に起つておる場合、かような火急の場合、やむを得ずこれを実力をもつて排除することをも否定したものとは考えません。  なおこの憲法解釈の問題につきまして、一言つけ加えさしていただきます。憲法條項のうちには、解釈についていろいろ意見が立ち得るものがあり得ます。これらの解釈は、結局将来長い間にわたつて成立するであろうと考えます最高裁判所による判例と、国会政府など憲法運用責任にある機関によつてつくり上げられます運用上の慣行等によつて固まつて行くものと考えます。憲法上の慣行成立には、国会が一番大きな役割を演じられるものと考えます。憲法制定会議におきます審議によつて明瞭にされました立法者の意思とか、政府当局解釈とか、憲法学者解釈とかいうものも、それぞれ大事なものではありますけれども、結局のところは判例慣行とで固まつて行くと考えます。これは昨年の秋、衆議院の解散に関連する関係條項解釈問題の経緯を考えてくだされば御了解していただけると思います。  以上のような次第で、憲法第九條について、芦田総理解釈は一つの解釈としてあると心得ております。また佐々木惣一博士著書にも芦田総理とほぼ同様な意見が述べられてあるということをつけ加えておきます。
  22. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 これによりまして、第九條の解釈は非常にわれわれも明らかになつて参りました。  次に、私はもう一、二の点につきまして質問いたしたいと思います。最近の講和会議に関する新聞報道によりますと、日本アメリカとの軍事協定のようなものを講和條約の中に織り込むようなことも伝えられているわけでありますが、そのような協定を結ぶ場合におきましては、たとい日本は先ほどの憲法第九條によりまして一切の交戰権を放棄し、軍備をなくいたしました国でありましても、たとえば海軍や空軍の基地を提供するとか、その他の軍事的に役に立つサービスを提供することになりますと、結局は戰争の火中の栗を拾うというような結果になるのではなかろうかと考えますが、そういたしますと、それは憲法第九條に反するのみならず、徹底的に平和を追求するという新憲法の真髄にも反する結果となりはしないかと思うのでありますが、この軍事協定の問題と憲法との関係をどのようにお考えであるか、伺いたい。
  23. 川村松助

    川村政府委員 非常に大事な御質問と拜察いたしましたが、現実の問題といたしましては、協定内容によることでありまして、今のところ協定内容見通しがつかない以上は、御返事できないと思います。
  24. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 協定内容と申しましても、いかなる内容にしろ、軍事協定というならば、戰争の場合を予想したものと私は考えるわけでありますが、そういう協定を結ぶということと憲法との関係をどういうふうに解釈すべきか、できますれば、もう一度御答弁願いたいと思います。
  25. 川村松助

    川村政府委員 憲法の本旨にもとらない範囲内においての協定になると思います。
  26. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは次に移りましよう。これはこの前の委員会において問題になつた点でありますが、国際連合について政府はまだ何にも考えていないというような川村政務次官答弁でありまして、これは日本が一日もすみやかに国際社会一員に復帰したいことをこいねがつておりますわれわれにとつても大きな失望であつたとともに、本日の新聞を見ましても、アメリカジエサツプ米国連代表も、日本がすみやかに国連参加することを待望しておるという好意ある声明をなしておるのでありますが、そのような国々から見ましても、確かに大きな、むしろ意外な驚きであつたのではなかろうかと考えます。この新憲法成立当時の、先ほど申し上げました速記録を調べてみましても、武力なき日本の平和と安全は、国際連合参加することによつて保障するのだという旨のことが、随所に提案者によつて強調されております。ここに私が持つております内閣が発行いたしまして、法制局が校閲をいたしました「新憲法の解説」というのを読んでみましても、今後わが国防衞は、国際連合参加することによつて全うされることになるということが、政府責任において明らかにされておるわけなのであります。従つてこの際政府国際連合に対する態度を、もう少し積極的に明確にすることが、日本の国策上からいつても当然なことではなかろうかと考えますので、この点に関して明らかにしたいことが第一点。  しかしまた国際連合参加した場合に、安全保障理事会決定に基き、侵畧国に対して共同防衞とかあるいは武力制裁に関する共同措置をとるようなことになつたならば、従つて戰争に巻き込まれる危險性があるわけであるがこの点と憲法との関係も、この前も少しく承つたのでありますが、この前ももう少し研究してから考えましようという話であつたので、この際これを明らかにしてほしいと思います。
  27. 川村松助

    川村政府委員 この前の答弁に言葉が足りなかつたきらいがありますが、私のお答えいたしましたのは、ただいまもお話のありましたように、憲法国際連合との調整も非常な困難な点がありので、いろいろ研究しおりますけれども、具体的に手続上の用意をしておらないという意味で申し上げたのであります。
  28. 大野勝巳

    大野政府委員 ただいま外務政務次官からお答え申し上げた通りでありまして、日本といたしましては、希望としては国際連合に入れてもらえるならば一日も早く入りたい、そういうふうに希望することは現内閣のみならず、大体いずれの内閣においても共通した希望に違いないと思うわけであります。従つて外務政務次官が先般お答えになられたのは、もつと技術的に解釈されまして、政府として加入のための手続をとるとかあるいはいかなる準備をするかという具体的な問題についてはまだ閣議決定その他の手続などがない、そういう趣旨で正式に加盟を求めるという問題については、別段政府としての具体的な処置がきまつている次第ではない、こういうような趣旨で答えられたのであります。ただいまの外務政務次官答弁によりまして御了解願えるかと思うわけであります。国際連合加盟を許されるということは、長い間戰争し、また戰争後国際社会一員に入ることを許されていないまま今日に至りました日本といたしましては、それへのフリー・パスという意味におきましても、重大なる意味があることもちろんでありますし、のみならず国際連合の主催のもとにある各種の国際行政協力機関ないしは国際経済機関等参加を許されるのでないと、日本憲法で確立しております世界平和への寄与という大きな目的を達成する意味におきまして、困難を生ずること申すまでもないわけであります。しかしながら、非常に人は簡單国際連合加入を許され得るというふうに考えやすいのでありますが、それは必ずしも私は正しくないと思うのでありまして、国際連合への加入手続の問題からいたしましても、現実日本が直面しております現下国際情勢から行きますと、われわれがここで加盟の問題をしごく安易な考え簡單加盟できるように考えて論じているといたしますならば、これは私は正しくないことだと思うのであります。非常にむずかしい、かように申し上げておきたいと思います。
  29. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 最後に私はもう一点だけ御質問をしておきます。それは吉田総理大臣はきのうの一般施政演説におきまして、日本は新憲法によつて戰争を抛棄し、一切の軍備を抛棄した、この無軍備ということが平和確保の最大の安全保障であるという意味のことを言明されておつたのでありますが、しかしまたわれわれは現下国際情勢をつらつらながめてみますと、しかくなまやさしいものではないと考えるのであります。一体、占領軍撤退後の日本安全保障というものは、先ほどの政府委員答弁にもありましたように、結局は国際連合による集団保障体制に求めるということになりますと、国際法上の永世中立とは両立し得ないことになりますから、従つて今問題になつております永世中立か、集団保障か、という疑問に対しましては、政府当局としては、永世中立体制よりも、この国際連合による集団保障体制をとるべきであるとの見解を持つているものとわれわれは解釈していいのかどうか。この点は国民の非常な関心の的でありますから、この際これを明らかにされんことを望みます。
  30. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点につきましては、講和條約によつて日本が置かれる地位がはつきりきまつた上でなければ、確とした見解見通しは立てかねる、こう考えております。
  31. 中山マサ

    ○中山委員 二、三日前のお晝のラジオの放送であつたかと私は記憶しておりますが、これはさつきの佐々木委員單独講和軍事協定という御言葉をお使いでありましたが、私がラジオで聞きましたのは軍事同盟という言葉をラジオのニュースが使つておりまして私大阪に帰つてつてこれを聞いたのでありますが、私がいろいろと人と接触いたしました間に、これが非常に問題になつておりまして、もし單独講和というものが軍事同盟を意味するものであるならば、まことに国民全体が不安にかり立てられて行くということを人々が申しておりましたが、そういう危險性を持つてでも單独講和をなさる御意思であるかどうか、その点を私は伺いたいと思います。
  32. 大野勝巳

    大野政府委員 中山さんの御質問にお答え申し上げます。実はこの数日来、外電がしきりにこの講和問題についてたくさんの情報を伝えて来ておりますが、中には矛盾しておる点もあり、またこまかく検討いたしますと、何かありそうだと思われる節もあり、非常に内容が多種多様でありまして、これだけに頼つて実はいろいろの判断をするわけにも参らぬのであります。政府といたしましては、正式にこの種の問題につきまして確たる通知も情報も権威筋から何ら得ていないわけなのでありまして、この段階におきまして、御質問のような問題につきまして、政府見解をここで申し述べますことは、ひとつ差控えさしていただきたい、かように思うのであります。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 早期講和が必至となつて参りました今日、いろいろ講和問題についての政府としての発言はむずかしい立場に置かれておるとは思いますけれども、しかしこうした情勢の中にありますときに、日本政府かくありたいとの希望條件くらいははつきり言われてもよいのではないかと思います。そこで私は、さつきの御意見の中に、單独講和よりも全面講和の方が望ましいというような意思表示は大体伺つたと思いますが、もう少しはつきり信念をもつてのお答えを得ておきませんと、もしも單独講和が行われたような場合には、先ほど中山さんのおつしやいましたように、軍事的な協定というものが行われ、従つてそういうような場合には、武装なき日本の国土を守るという名のもとに、軍事的基地の設定とか、あるいは駐兵とか、あるいはまた地域的安全保障というようなことが考えられるのでありまして、結局日本の軍事的な協力が求められるような結果になりはしないかと思うのであります。そういう意味におきまして、戰争を放棄した日本が非常にむずかしい立場になつて来ると思います。米英側との協力、單独講和というようなことがなされましたときには、あるいは米国とか、あるいは米国側の一方的協定成立によりまして、日本米国側の国に加担することにはなりますけれども、こうした国と、ソ連とかあるいは中国との間に衝突が起きた場合に、結局戰争に巻き込まれることになりはしないか、それを非常に懸念するものでございます。先ごろまことに残念なことには、政府の要路の方々、あるいはまた民自党の一部の方々が、太平洋同盟のような地域的集団保障参加説を言われたり、あるいはまた国内の国土防衞、治安維持のために長期駐兵を望まれるような発言をせられておりましたが、こうした非常に世界の誤解を招くような発言が、一方的な意見となつて、あるいは講和会議アメリカの草案となるとも限らないと私は非常にそれを心配するものでございます。従つてそういうような考えに対して、政府はどういうふうに今考えていられるかどうかを、はつきり伺つておきたいと思います。
  34. 川村松助

    川村政府委員 お答えいたします。ただいまの御質問につきましては、私どもも愼重の上にも愼重を期して行きたいと考えておるわけであります。單独講和になるか、ならないか、また軍事基地あるいは駐丘などの問題については、新聞報道以外に、まだ何も入手がないのであります。それにこれは今のところまだ連合国間の問題でありまして、日本政府に対しましては、この問題について全然交渉がないので、ただいまのような御質問趣旨には私どもも同感でありますけれども、お答えする基礎資料を持ち合わせないのであります。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 答えられる基礎資料をお持ちにならないとの御答弁でございましたが、そうであるとするならば、すでに新聞にもあれだけのことが発表せられておりますから、そうした問題に対しましては、なるべく早く、いろいろな点を考慮して、政府としての態度をきめておかなければならないと思います。  次に永世中立集団保障の問題でございますが、国際法学者の中には、永世中立というものは、十九世紀に発達した法理論であつて集団保障というのは、第一次欧洲大戰後に発達した政治思想であつて永世中立よりもむしろ集団保障を選ぶ方かいいというようなことを言つております。また政府の中でも、永世中立と言つてみたところで、ベルギーのように、現実の問題として蹂躙せられるような場合もあるから、永世中立と言つても、むずかしい。大体集団保障の方に傾いて来ておるようでありまして、私どももこの集団保障ということには賛成を表しますけれども、しかしここで、日本の国の新憲法による国家性格というものをよく考えて行かなければならないと思います。永世中立なり集団保障というような議論をする場合に、私はときどき考えるのですが、ややもすると現実的に流れている現象面にとらわれて、もつと根本的なことを忘れているのではないかと思います。国際連合憲章というものは、大体既存の国家を対象としてでき上つたものであつて日本の国はポツダ宣言を母胎としてできた新憲法の精神によつて絶対平和を守るという、その新国家としてできたのが日本の国だと思います。そうであるとするならば、国際連合というものも、日本のような、こういう絶対平和を維持する新国家を加入せしむるような役割をして行くのが、国際連合でなければならないと思うのです。そう考えて参りますと、スイスは永世中立でありましたために、国際連合には入らなかつたと言われておりますが、スイスは国際連盟には入つておりました。それはどういうわけかと申しますと、国際連盟の制裁規定を特例にしてもらつておいて、たしか入つていたと思うのです。そういうことが許されるといたしましたならば、日本の国もこの絶対李和という新憲法の精神を、あくまでも堅持した国家性格を持つて国際連合への加入というような意味からいいまして、この制裁規定に対しての特例を設けてもらつたならば、日本の国の国家性格というものに反せずにそこに入つて行けると思うのです。もしも私は日本の国が国際連合に入るために、新憲法を改悪するようなことを企てる人があるとするならば、結局これは国際政治の退歩であり、決して進歩ではない。そういう意味からいいましても、日本政府国際連合への参加を望むというその心の奥には、こうした特例を設けてもらつた上で入りたいとの希望を持つておられるかどうかを承つておきたいと思います。
  36. 大野勝巳

    大野政府委員 戸叶さんの御意見は、きわめて有益な御意見でありまして、政府といたしましては御意見として承つておきたいと存じます。
  37. 並木芳雄

    並木委員 たくさん質問事項がありますが、ほかの方々も御質問されますから、はしよつて特にただいままでの問題に関連した点に限定して質問をいたします。  私が第一にお伺いしたいのは、憲法第九條の自衞権すら放棄したという項目に関連して、さつき條約局長答弁にも但し火急の場合には許される。あるいはまたこの前の外務委員会のときの答弁には、自然発生的な防禦の場合にはこの限りでないというような但書がついておつたと思うのです。これは私たちは今後の行き方として非常に大切であると思いますので、もう少し具体的に、火急の場合とはどんな場合を指すのか、自然発生弱な防禦とは、どういうものを言うのかということを例示をして説明をお願いいたします。
  38. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問に対しては、先刻の佐々木委員の御質問に対してお答えしました以外につけ加えることはございません。実例を掲げてみろと言われますけれども、実は適当な実例というものが想定できませんので、ごかんべん願いたいと思います。
  39. 並木芳雄

    並木委員 この例示をすることが非常にぼくは大切なケースであると思うのです。ですからその限界が度を越しますといわゆる濫用にもなりますし、このごろときどき公共の福祉という名のもとに、いろいろな制限などが行われるのと同じような一種の濫用を招くようなおそれがありますので、ぜひともこれは例示しつつ限界点を説明していただきたいと思うのです。御用意置きを願いたいと思います。  それからさつき佐々木委員の御質問にもちよつとありましたが、万一全面講和がならない場合、不幸にして全面講和がならないで單独または多数の部分的講和となつた場合に、これに加わらなかつた国々に対しては、講和條約は拘束しないという御答弁であつたのですが、この拘束しないということは、そういう国々が日本に対してなお戰勝国たるの立場をもつて日本を戰敗国として今まで通り取扱つて行くのかどうか、いろいろ問題が起ると思いますけれども、單に拘束しないというだけではなく、もう少し具体的にどういう関係で持続されるかということを御説明願いたいと思います。
  40. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 條約参加国との間におきましては、條約によつて関係規定されます。條約に参加しない国と日本との関係におきましては、現状、今日の状況がそのまま持続するとお考えくださればいいと考えます。
  41. 並木芳雄

    並木委員 そうするとやはり私たちが心配するようなことは、必らずしも杞憂ではない。やはり私たちとしては多数講和、あるいは單独講和というものを極力避けて、全面講和というものを希望することが当然である。それにつきましては実は昨日の総理大臣の施政方針の演説の中にも、せめて全体講和を熱望するというくらいの力強い希望のお言葉が当然あつてしかるべきだこういうふうに私たちは期待しておつたのですけれども、まことに残念ながらその声を聞くことができなかつた。また本日川村次官などの答弁を聞いておりましても、何ですか全面講和に対する熱意というものが欠けておると思う。これは向うから何か問合せがなければ回答の限りでないとかいう問題ではなくして、私はいかに講和條約に対して敗戰国には発言権というものが許されておらないか知れませんけれども、御選解ある連合軍というものが、日本国民の意思とか熱望というものを無視しては、違つた方向に條約というものを取運んで行かないだろうと思うのです。そういう点について、特に政府として全面講和希望するというような言葉を避けておる点において、やむを得なければ單独講和、あるいは多数講和というものもしかたがないのだという意図を持つておられるものと推定されるのでありますが、この点いかがでございますか。
  42. 大野勝巳

    大野政府委員 並木さんの御意見非常に傾聽した次第でありますが、いろいろな外電が入つて参りますが、米英仏三国外相会談以来、対日講和につきましては一部の国が同調して来ない場合には、その場合でも講和を促進するかもしれない。こういう趣旨の電報が少しはあつたのでありますが、しかしこの点につきまして、米国のアチソン国務長官は、講和会議目的は、講和問題に関係あるすべての国の意見をまとめることである。右の目的が実現されない場合、どうなるかということについては何も言うことができない。こういうことを語つたと伝えられております。また地方別の外電によりますと、関係当事国政府ができるだけ全面的な講和ができるように努力をする気構えである。こういう電報があるわけでありまして、ここでまだいろいろ入つて来まする外電に、一々動かされておるわけには参らないわけであります。それから政府としては、全面的な平和條約が望ましいことは言うまでもないわけでありまして、先ほど政務次官からもお答えがあつたと思つております。従つて何かただいま並木さんのお話では、全面的な平和條約が望ましいということを大声では言えないのは、どういうわけだという御質問であつたと思いますが、それは私は当つていないと思う。筋としては平和條約ができるのであれば、日本立場からいいまして、できれば全面的な講和条約であつてほしいというのは、これはあらためて言わなくても当然のことと思つております。
  43. 並木芳雄

    並木委員 あらためて言わなくても当然だというならば、きのうの総理大臣のあの講和問題に関する施政方針と称せられるものは、あらためて言わなくてもわかり切つたことばかりであります。私は連合軍の方でなるべく全面的な講和をやろうと努力しておられるのですから、それに相呼応して、私どももほんとうに平和を愛好するということを十分に出して行かなければならない。こういうことを申し上げておるのでございます。そういう点でひとつ政府は外電によつて動かされるどころか、もつとこれは基本的なものであろうと思います。外電があろうがなかろうが、もつと強いところの信念に基いて、ほんとうに非武装の平和を愛する全面講和の熱情を吐露していただきたい、こういうふうに希望しておきます。  それから次に、先ほどからお話を聞いておりますと、当然国際連合加盟を許されることを希望することを前提として論議が進められておるように拜聽したのでございますが、国際連合加盟するのとともに、もう一つの大きな、また私自身よりよいと思う方法でありますけれども、永世中立立場をとるという方法もあるのでございますが、そういう点について、政府国際連合に入ることを前提としてしまつて、そうして永世中立というようなことに対して、研究なり検討なり、希望なりというものを持つておられないのかどうか、御答弁願いたい。
  44. 大野勝巳

    大野政府委員 並木委員の御質問にお答えいたします。さつきから幾たびか立つて説明を申し上げておるのでありますが、要するにいすれの内閣といえども、国際連合加入を許してもらえるなら許してほしいという希望を持つているのはこれは当然である、私はそういうふうに解釈しております。それ以上別につけ加えることはないと思います。
  45. 並木芳雄

    並木委員 それはよくわかつております。それを議論される以上は、また望まれる以上は、当然永世中立というものと両立しない。永世中立というものを考えておらないというふうに私たちは拜聽した。そこがまことに私には不審に思われる。永世中立という立場をとり得る、こういう一つの安全保障の方法というものがある以上、どちらがよりよいものであるか、どちらが日本がほんとうに平和を愛好することを示し得るものであるかということは、比較研究される余地があると思う。それをお伺いしておるのですから、その点を御答弁願いたいと思います。
  46. 大野勝巳

    大野政府委員 御意見通りであります。従つて永世中立を是とするか、あるいは非とするかというふうな議論は、これは国民の間にあつて一人々々が大いに愼重に考えて、意見決定すべきものであると思います。政府ももちろんそれに対する研究は怠つてもおりませんし、また国際連合加入することが望ましいという希望を持つておるからといつて、ただちにそれをもつて永世中立を非とするという方針であるというふうに断ずることはできないわけでありまして、これは政府国民も一緒に大いに研究して、これは国家百年の計に関係することでありますから、愼重に検討して決定すべき問題である、かように考えます。
  47. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、国際連合加盟する場合と、永世中立を守る場合と、必ずしも両立しないものではないというような今の御答弁なのでございますか。
  48. 大野勝巳

    大野政府委員 これは日本を入れてくれるか、入れてくれないかもわからないのでありまして、向うさまの意思次第なのでありますが、どうしても入れようと思うならば、相当例外的なことも考えてくれるということも言えるのであります。これは前田の本委員会におきまして、西村政府委員からもその趣旨の御答弁を申し上げております。
  49. 並木芳雄

    並木委員 そこで私は一つこれに関連して提案的なものを申し上げてお尋ねしたいのですが、国際連合加盟を許可それた場合に、われわれは日本の安全を保障していただくけれども万一侵畧国への制裁措置が起つた場合に負うところの責任あるいは義務を特に免除していただく。こういうような懇請をして、一方において永世中立という立場を堅持して行くような新しい方法というものが、私は新しい時代に日本の平和の行き方として考えられてもいいし、場合によつてはそれを懇請してみてもいいと思うのですが、はたしてその余地があるかどうか、御見解をお知らせ願いたいと思います。
  50. 川村松助

    川村政府委員 最高の理想案としましては、私どもも同感であります。同時にでき得るなればそういうふうに行きたいと努力いたします。
  51. 並木芳雄

    並木委員 それではまだたくさんありますが、もう一つだけにして今回は終つておきたいと思います。軍事協定の問題というようなことか起りましたが、これはかりに起るか起らないかということを別といたしましても、一つのケースとして、もしある国がある特定の国と講和條約を結んで、その安全保障のために海陸空の基地といつたようなものを提供する、貸す、こういう協定を結びましたときは、これは憲法上少くとも疑義があるということは、さつき佐々木委員質問にあつた通り、私たちも憲法上疑義があるように考えております。しかしそれに対する御答弁は、憲法との関係においては本旨にもとらない範囲内で何とかするというような、まことにあいまいな御答弁で、これはもう少し政府としては研究して、はつきり憲法との関係を示されたいと思いますが、さらにそういう協定を結んでおつたあかつき、その特定の国が他のある国と交戰状態に入るような場合があり得ると思う。そのときに基地を提供しておつた国は、当然国際法上交戰国の側に立つものとみなされるのではないか。そうするといやでもおうでも交戰国家として認められて敵国の侵入を受ける。こういうおそれがあるのではないかと私たちは考えているのですが、この点どういうふうになつているか、御回答願いたいと思います。
  52. 川村松助

    川村政府委員 ただいまのようなことは確かに研究を要する問題でありまして、政府といたしましてもいろいろと研究をしておりますが、ただいまそれに対してただちにはつきりしたお答えはいたしかねるわけであります。
  53. 並木芳雄

    並木委員 條約局長の法理上の答弁をお願いして終ります。
  54. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 並木委員の御質問は、まつたく仮定のケースをとりつつ、ある意味において日本の場合に言及いたされますので、まことに法理的に答弁いたしかねるということを條約局長として申し上げます。
  55. 並木芳雄

    並木委員 そういうふうに研究課題としてとつてつて、それが近き将来にあるいはわれわれが当面するかもしれぬ問題であるし、架空の問題だといつて片づけすに、そういう場合があつたときにはこうなるのだということは、條約局長として当然答弁ができると思う、御答弁願います。
  56. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 いかに仮定のもとに質問をいたされましても、現下国際情勢日本の置かれている客観情勢はきわめて機微なものでありますから、ぜひごかんべん願いたいと思います。
  57. 並木芳雄

    並木委員 きようはこれだけで終つておきます。
  58. 野坂參三

    野坂委員 時間もあまりありませんから、簡單に二、三御質問したいと思います。私の質問は、きようは総理大臣兼外務大臣にお聞きする二つの問題を、こちらの方で提出していましたけれども、総理大臣が見えませんので、また別の機会にこまかくお伺いしたいと思います。と申しますのは、二つの問題のうち一つは、先ほどから佐々木委員の方から出された自衞権の問題、それから講和の問題であります。きようの政府の御答弁の中で、多少わかりかねる点、あるいははつきりせぬ点がある点だけを、今お尋ねしてみたいと思います。この点は先ほど憲法第九條のあの解釈について、当時の政府としては自衞権日本には否定されているもの、ないものであるというふうな解釈をされているように、はつきりと申されましたけれども、当時のあの審議の状態あるいは議事録などを見ましても、この点が実は非常にぽかされているのです。吉田総理答弁を見ましても、顧みて他を言うような形でお答えになつているし、ことに金森国務大臣は、非常にぼんやりしたお答えしかなかつたと思います。これは議事録をごらんになれば非常にはつきりしている。しかも当時の憲法改正委員会委員長であつた芦田氏がその後、先ほど佐々木委員の方から言われましたこの本の中に、あの憲法審議の上で自衞権の問題について、政府見解として、自衞権があるというような意味のことが、実はこれに書いてあるのです。しかも芦田氏はその後においてもいろいろな演説会などでも、はつきりと言われていると思う。そうしてみますと先ほどの政府側のお答えによりましても、この解釈についてはいろいろの解釈があり得ると思います。これは慣行によつて決定されるということになりますと、結局今日本の国内においても、二つの対立した意見があるということは、やはり現実の事実であるし、これは将来私たち国民によつて決定されるべきものだというふうに解釈されますから、この問題は現在まだ決定的なものでないとというふうに、われわれは理解していいかどうかという点が第一。  第二の点はこの問題について国際的に、どういうふうに解釈されているか。これについての情報があれば、ぜひお聞かせ願いたいと思う。国際的と申しますのは、連合国側政府全部の政府ではなくても、一、二の政府とか、あるいは有力な学者でもよろしい、これが日本に自衞権があるかないかについて、どういう見解を発表しているか、こういう二点をお伺いしたいと思います。
  59. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 野坂委員の御質問にお答えいたします。第一点については、結論的に申し上げますが、野坂委員のおつしやる通り考えております。
  60. 野坂參三

    野坂委員 そうすると、つまりまだはつきりしていないということですね。
  61. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そういうふうに思います。解釈が一定していない、固まつていない、こういうところでございます。  第二につきましては、われわれの持つている範囲内におきましても、この問題について外国の学者その他が解釈を下したという資料を何も持ち合せておりません。
  62. 野坂參三

    野坂委員 当時憲法審議されたとき、外国、特にアメリカ側のこの問題についての権威のある方が見えて、内面的にいろいろ援助されておるということははつきりしておりますが、この場合にどういうふうな見解が発表されておるか、これをもしできればここでお漏らし願いたいと思います。
  63. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私に関する限り何も存じておりません。
  64. 野坂參三

    野坂委員 あなたでなくても、ほかの人でもけつこうです。
  65. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 同僚に耳打ちして聞いてみましたが、何も聞いておらないということです。(笑声)
  66. 野坂參三

    野坂委員 この問題は実は先ほどから論議されましたように、たとえば軍事的協定とか同盟とかいうような問題とか、あるいは安全保障の問題とかこれのずつと根本をたどりますと、自衞権があるかないかという問題に帰すると思います。これは重要な問題でありますから、今後は私は総理大臣にお聞きしたいと思いますし、政府側においても十分研究していただきたいと思います。それからこの問題についても先ほど條約局長つたと思いますが、佐々木委員質問に答えて—私は今はつきり言葉は思い出せませんけれども、万一の場合には実力行使をする、こういう意味のことを言われたと思うし、それからこの前のときには自然発生的な防衞とか実力行使、こういうようなことを言われたと思いますが、こういうことがもし許されるならば、やはりこの意味からも自衞権が許されておると解釈してもさしつかえないように思いますが、この点はどうですか。
  67. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御指摘の点についての私の答弁をもう一回繰返させていただきたいと思います。自衞権行使戰争または武力行使という形をとる場合、わが国は原因のいかんを問わす、すべての戰争または武力行使を放棄しておりますから、そういう形式をとる自衞権はないものと解します。しかし急迫した不正の危害が現に起つておる場合、かような火急の場合やむを得ずこれを実力をもつて排除することをも否定したものとは考えません。
  68. 野坂參三

    野坂委員 今の最後に言われたことは、やはり広い意味の自衞権だと解釈してさしつかえないのでしようか。第一の形における自衞権は認められていないが、第二の形における自衞権は認められておるというように解釈していいですか。
  69. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 いろいろな解釈がございましようが、解釈は自由だと思います。
  70. 野坂參三

    野坂委員 またそのうちよい考えが出たら一つお答えを願いたいと思います。(笑声)  次にお聞きしたいことは、佐々木委員の方から軍事協定云々、こういう御質問に対する政府の答えの場合に、いろいろ答弁がありましたけれども、これについて私のはつきりしておかなければならないのは、たとえば講和條約が締結せられる、せられないにかかわらず、現実にある種の協定が今認められておると思います。たとえば最近は小麦協定の問題とか、あるいはこの夏には阿波丸事件に関する協定も結ばれたと思います。まだ日本国際的に何ら正常な外交関係を持たない状態のもとにおいても、こういう特殊の協定が認められておりますが、こういう形でも今後軍事協定というようなものも結び得るものかどうか、この点についてどなたか御回答をお願いしたいと思います。
  71. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 たいへんむずかしい御質問ですが、現状のもとにおいては、できないことではないかと考えます。
  72. 野坂參三

    野坂委員 そうするとそのような協定講和会議後に初めてつくられるものだと理解してさしつかえないですか。
  73. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 もしできるとしますならば、一般にそういうふうに考えた方がよかろうかと思います。
  74. 野坂參三

    野坂委員 そうしますと、たとえば阿波丸事件におけるあの協定とか、あるいは性格は違いますが小麦協定への参加といつたようなこの協定は、国際法上どういう性格を持つものか、この点について伺いたい。
  75. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本は原則として国際條約を締結し、あるいは国際條約に参加する能力を持たないわけでありますが、それを特に特殊にケースについて解除してもらつて締結し、または参加するという手続をとつておる、こう考えたらよかろうと思います。
  76. 野坂參三

    野坂委員 そうしますと、その中に、先ほど條約局長が申されましたように、軍事協約のようなものがあつては悪いということがどうしてできるのですか。
  77. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 それは性質が全然違うからだと考えます。今まで参加いたし、または締結いたしました国際條約は、結局日本の占領管理目的に沿うた性格を有する協定参加または締結する、こういう性質のものではないかと思います。
  78. 野坂參三

    野坂委員 この問題は、私はまた別個に総理大臣の方からはつきりとした御見解をお聞きしたいと思います。と申しますのは、今のように国会の知らない間にいろいろなことを政府協定の形でやられておると思います。こういうことはわれわれはないと思いますが、軍事的な何らかの形においてわれわれの知らぬ間に協定が結ばれ、そのあとで国会に発表されるというようなことは絶対に反対しなければならぬので、今申し上げたわけであります。  最後にお聞きしたいのは、今内外に対日講和の問題が非常に論議されるようになつて来ております。この場合に、政府としては今どのような準備をなされておりますか。これについて実は前にも聞いたことがありますが、政府側としては答えにくいというような御答弁でしたけれども、この問題は隠しておく必要はないと思います。われわれとしてもこの準備をどうしても積極的に始めなければならない。外務省としては今どういう準備をなされておりますか。これについて政務次官の方からお答え願いたいと思います。
  79. 川村松助

    川村政府委員 外務省におきましては、各局各課全能力をあげて研究いたしております。
  80. 野坂參三

    野坂委員 われわれここで外務委員会を構成してやつておる限りは、現在日本における中心問題は講和の問題だと思いますが、この場合に今政府がどういう講和の準備をしておるか。外務委員がまるでつんぼさじきに置かれて、でくのぼう扱いにされておる、われわれは実はこいう状態をすぐやめていただいて、政府側においてどういう準備をされておるかを御報告を願いたいと思います。また何らかの形でこの委員全体がこの準備に参加することをわれわれは考うべきだ、これは私個人の意見として申し上げておきたいと思います。  私は講和の問題につきましてはこれでおしまいにしますが、これは政府側ではなくて、委員長にお聞きしたいのですが、数日前の毎日新聞に、委員長委員長という名前で講和の問題について御意見を発表されたと思います。第一点は單独講和か、全面的講和かという問題で、委員長の方は單独講和という意見を発表されております。第二の問題は安全保障のことで、これはいろいろ逃げられておるようですけれども、第一の問題はこういうはつきりした御意見でありますが、これは民自党としての見解なのか、あるいは委員長としての見解なのか、あるいは岡崎個人としての見解なのか。それから今後もこういう見解をあくまで固持しておやりになるつもりかどうか。これをひとつ、参考のためにお伺いしたい。
  81. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これは私が話したのを毎日新聞が外務委員長という肩書きをつけて発表したのであります。しかしながらあの中に書いてあることは、私は今も、また今後も確信をもつてそういうふうに進めたいと思います。
  82. 野坂參三

    野坂委員 別の問題でありますけれども、これは前の質問の続きでありますが、外務省はこの夏、各地方に出向いて国際事情の知識普及という講演をなさつており、それに私の質問に対する答えが出ておりますが、この答えの重点は全然載つておりませんから、私はもう一度質問したいと思いますので、この資料の提供をお願いします。それは講演の内容についてできるだけ詳しいものを私たちに提供していただきたい。特に調査局の第三課の方方、課長、次長そのほかの方々の講演の内容はできるだけ詳しく知りたいと思いますから、これをお願いいたします。
  83. 大野勝巳

    大野政府委員 野坂委員の先ほどの御発言の中にあつたかと思いますが、国会の知らぬ間に国際協定などを結んだのはけしからんというお話でありますが、それは国際小麦協定のことを言つておられるのですか。
  84. 野坂參三

    野坂委員 いや、阿波丸協定です。
  85. 大野勝巳

    大野政府委員 阿波丸協定のことにつきましては、当時すでに論議を盡されておりますし、政府といたしましては参議院及び衆議院の両本会議におきまして、採決されました決議により、適法に協定を締結した次第であります。
  86. 野坂參三

    野坂委員 今の大野政務局長のお答えは非常におかしな話で、あの協定の中には、日本の持つてつた請求権がこれは御存じの通りに放棄してあるのです。これは重大な問題だと思うのです。これは全然国会に御審議もなし、あらかじめ政府側の御報告もなしに突然あの議案が出された。国会の知らない間に吉田総理とシーボルトと、この二人の間に協定が結はれている。これを言つているのです。国会を全然無視して、あの重大なわれわれの持つておる債権というものを一方的に放棄しておる。こういうことを一体どうして国会審議をせずにおやりになるのか。これを私は言つておる。
  87. 栗山長次郎

    ○栗山委員 議事進行について……講和会議が爼上に上りつつあります。そこで政治の最高機関である国会の中の外務委員会が、何をなすべきかということが考えられるのであります。ただいま野坂氏がたまたまわれわれ委員はでくのぼうのごとき存在である。かように委員自体を侮辱せられる発言をせられたのでありますが、私はその発言を別にとがめようとするものではない。その発言に私の発言が拍車をかけられたからでありますが、新憲法と旧憲法とは大きな差異があつて、われわれは国政の最高機関としてここにその職責を来しておるのであります。もちろん研究過程におきましては、政府の準備なり見解なりを聞くこともよかろうと思いますが、これをただ質問応答の連続で過すということは、この委員会の職責を全うするものではないと考えておりますので、委員長はどういうような運営の方法をとられるか、これを明らかにしておきたいことが第一であり、またお互い委員としては、いかにこの外務委員会のあり方を進めて行くべきか、いろいろ憲法もあり、国会法もありますけれども、冒頭に申しましたように、これから活動に入ろうとする外交問題でありますので、われわれの扱いいかんが慣例となり、それがやがては方向を決定するものであると考えるのでありますが、政府に主としてただして、政府意見を聞けば、それで終るというものではなくして、私見をもつてすれば、たとえば野坂委員の指摘されましたごとき講和会議に対する準備、この準備はわれわれみずからもお互いに意見を交換し、案を練らなければならぬ問題である。その前提に政府意見を聞いていられるのだとおつしやればそれも一つの考え方でありますけれども、專門員もおる、私どもはただ政府意見を聞くだけでは能事終れりとは考えておりません。この委員会として中立の問題、集団保障の問題、そういう問題に対していかなる行え方、いかなる意向を委員会の意向としてまとめるかというところまで行つてもさしつかえないばかりでなく、それが当然ではないかと考えられますが、今までの皆様の御論議を拜聽しておると、元の憲法下における委員会と同じような状態ではないかということを私は懸念するものであります。そこで今後外交問題についてこの委員会はいかなるあり方、いかなる行き方をもつてなすべきかということも委員全体の問題ではなかろうかと考えて、これは今回御検討願うというよりも、失礼ながら課題として出したく思うところでございます。またその委員会のあり方がだんだんとセメントされて行きますならば、一例をあげますと、先ほど並木委員の盛んに政府に肉迫しておられた問題のごときものは、この委員会国会として取上げなければならぬ問題だということがおのずから明らかになつて来るような気がいたすのであります。たとえば自衞権まで放棄したのか、そうではない。緊急やむを得ざる場合にはそこにおのずからなる活動が起つても当然であるという見解が披瀝されておるのでありますが、さような緊急やむを得ざる場合とは何であるかというようなことは、具体的事実が起つたときに、私のただいまの見解をもつてすれば、政治の最高機関である国会が、これはこうしておれぬ、こうすべきだというようなことを指導的立場においてなしてよろしいことだ。端的に申せば、憲法にはこう書いてあるけれども、やむを得ぬ緊急、火急の場合であるから、こうすべきものであるというようなことに、国会自体が及んでさしつかえないものだ、今はそういうように考えております。そうした外交問題の国としてのさばき方、繰返して申しますが、今は慣行を立てるときでありますから、委員会としてどういうふうにするかということ、このことに政府答弁をしなければ、われわれはでくのぼうであるというような態度でなく、私どもは卒先して指導的な立場に立つてさしつかえない問題については、指導的な立場に立つべきではないか、政府国会との外交問題に対する調和については、きわめてデリケートな問題であつて、ただ單に憲法の條章のみでは行かない場合が多いと思いますが、その関係をどうして行くかということは、外国の例を見ても、歴史の事実によつて打立てられている場合が多いので、外交のことは政府が指導権を握つておるのだ、政府に一切まかして、われわれは批判さえすればよいのだという建前であつてはならぬような気がいたしますので、外交問題に関して政府国会とはいかように調和し、いかようにその職分もしくは権限を運営発動して行くかというような問題についても、委員会として研究考慮をしておくべきではなかろうか。その三点についてただいますぐにというわけではございませんけれども、僭越ながら問題を提供したく存じます。  要約して申しますと、第一はこういうような審議の状態を委員長はいつもお続けになるおつもりか。しかし研究過程においては私もけつこうだと思います。第二点としては、われわれ自身が準備すべきことは、專門員もおることでありますから、われわれがお互いによく検討して意見の交換をして、案を練り、意見のとりまとめをしなければならぬではなかろうか。第三点は外交問題に関する政府国会との結びつき、調和のあり方、こういうものについて委員会自体が、慣例によつて打立てられることではあるけれども、およそヴィジヨンをもつて将来のことも考えて着々行かねばならぬのではなかろうか、ということを申し上げたく存じます。
  88. 岡崎勝男

    岡崎委員長 栗山君の発言に対してお答えいたします。私は栗山君の御意見にまつたく同意見であります。前から最近の機会に理事会を開きまして、運営の方法をとくと御相談いたしたいと考えておりますので、ただいまの御発言もありましたから、できるだけ早い機会に理事会を開催いたしたいと思つております。
  89. 野坂參三

    野坂委員 今の、議事運営についての意見にはまつたく賛成でありますけれども、実は共産党としては、一昨日運営委員会の方に、国会として超党派的に講和問題を調査研究する特別委員会を設けることを提案した。その前に実は各党にも了解を求めて参りました。ところがどういうわけか、民自党だけがこれに対して賛成なさらないようなことを承つております。この点はまだ最後的な決定をなされてないならば、非常に幸いだと思います。共産党が提案したからどうもおれだちは賛成できないということならば、そういうふうなけちなお考えは捨てていただいて、超党派的な全国民的な問題ですから、できるだけ民自党の、特に外務委員参加されておる委員の方で努力していただきたい。  第二は今提案されておりますように、外務委員自体の運営としても、実は私ども委員としてありながら非常にあきたらないところがあります。しかも中心問題の講和問題になりますと、政府側としてはほとんど何らの材料も提供されていない。先ほどのお言葉によれば、政府は全力をあげて準備されておる、その準備の一端もわれわれに見せられない。だから私が先ほどわれわれ委員政府によつてでくのぼう扱いにされておると言つたのも、こういう態度をとられるからだ。こういう態度がかわらない限りは、ほとんど個々の委員がどう考えてみたとてしようがない。こういう態度を改めてもらいたい。ほんとうに国民立場に立つて、重大な問題は審議するというふうに再編成していただけばけつこうだと考えます。
  90. 栗山長次郎

    ○栗山委員 ただいま野坂氏が講和問題の準備特別委員会というものを超党的に特設する、こういう話もあり、その中に民自党云々という話もありましたので、私も民自党の一人としてこれについて考え方を述べたいと思います。外務委員会がここにある。そうして外務委員会は相当整備されたものであるということを私どもは自負しておる。にもかかわらず講和会議が目前に開かれそうであるということの前提のもとに、超党派的な講和会議の準備特別委員会を開こうという御提案—別に共産党が御提案になつたからこれに対して賛成する、しないという問題でなくて、外務委員会というものがここにあつて、相当のタレントがそろつてつて、準備もすればできる状態にありますから、私どもは議院運営委員会で御提案になつたその特別委員会というものに、こだまの声に応ずるがごとくお答えいたさなかつたわけでありまして、私一個の見解をもつてすれば、この委員会で十分できるし、またやつて行かなければならぬ問題である。そういう外交問題として一番重要な、またわれわれがもろはだ脱いで当らなければならぬ問題がどうもできないということだつたら、外務委員会は落第である。私はこの外務委員会野坂氏並びに共産党の御提案になるような事柄は十分に運営され、とり行われることを期したいものであります。
  91. 野坂參三

    野坂委員 簡單に申しますが、私たちの提案について多少誤解があるように思います。私どもは講和の準備ではなくて、單なるこれは国会全体として講和に対する調査研究をやる特別委員会を設けた方が、このような重要な問題については適当ではないかという点で、決してこの委員会を無視した意味ではなく、この委員会も当然やらなければならぬと思います。ただこの二つの機関をどういうふうに調整するか、どういうふうに分業化するかということはあとの問題だと思います。今特別委員会を見ますと、遊覧事業というようなものについても特別委員会があります。いろいろな特別委員会がありますが、これよりも私は講和問題の方が、何よりも一番重要な問題だと思います。そういう意味ですから、民自党側の委員としてもどうか十分御理解くだすつて、超党派的な見解でそういう特別委員会を設けていただくように御努力願いたいと思います。
  92. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 講和問題に関する特別委員会を設置してはどうかという問題に関しましては、各委員におかれましても、各党におかれましてもそれぞれの意見もあることと思います。本日はこの問題は後刻理事会の問題に移しまして、他にもまだ大分質問される方があるようでありますから、日程に従つて議事を進行されんことを望みます。
  93. 岡崎勝男

    岡崎委員長 佐々木君の御意見、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは菊池君。
  95. 菊池義郎

    菊池委員 講和の問題につきまして先ほどから同僚委員諸君からいろいろと御意見がありましたので、大体において私の言わんとする点は盡きておるのでありますが、ただ仮定のもとに今日からこまかい議論をいたしましてもあまり価値はない。それよりもわれわれがまず考えなければならぬこと、また政府としてもまず第一にきめておかなければならぬことは、講和に対する国民の心構え、政府の心構え、これであると私は考えておるのであります。この講和が全体の講和になるか、單独の講和になるか、これについて皆さんの御懸念は全体講和はむずかしいといつたような意味のことが大分述べられた。それについては私は必ずしもこれは望みなきにあらず、かように考える。革命記念日におけるソ連の副総理の発言に徴してみましても、ああいつたことを言つた以上は、くつがえす他に理由がなければ、これをくつがえすことはできぬと考えております。それで私は全体講和はおそらく最後にはできるという見通しを大体つけておるのであります。この講和につきまして私は政府に要望いたしますることは、先ほど申しました心構え、これが根本でなければならぬと思う。これが一番大事なんです。枝葉末節の問題はあとでもつてどうにでもこうにでもきまる。  ところで政府として考えていただかなければならぬことは何であるかといいますと、大体この戰争日本におきましては、われわれ国民が最初から賛成した戰争でない。ドイツにおきましてはあのヒトラー政権のもとに多数の議員が出まして、国民の意思は国会を通じて明らかに戰争賛成に表明されておるのであります。ところが日本におきましては、だしぬけに東條軍閥がおつ始めた戰争であります。国民には何の責任もない。あとから陛下の名において宣戰の布告がされたのでありますから、結局形式的には全国民ことごとくその責任を負わなければならぬということにはなるのでありますけれども戰争の動機を飜つて考えてみますと、ドイツと日本との間にはさような格段の相違があるのでありますから、講和に臨みましても、相当に陳情折衝ができると思うのであります。これを忘れてはならない。ポツダム宣言には無條件で降伏いたしましたが、陳情、折衝、懇請は自由自在でありますので、この点を忘れないで、十二分に準備を整えて、大いに内面の折衝を十分にしていただきたいと思うのであります。たとえば領土の問題、その他の問題、あらゆることにつきまして、大いに腹案を練つて、どこまでも建設的に、日本のために得になるように得になるようにと考えて、この講和を進めていただきたい。これを私はお願いするのであります。それについて先ほどからもいろいろ議論がございましたが、講和のあとで米国軍事協定が行われ、軍事基地として日本の国土を提供するよう向うが要求するかもしれぬというように新聞にも出ております。その軍事基地をアメリカから要求せられる場合におきましても、これに対して政府はそれに甘んじて受諾せられるつもりであるかどうか、この点をお伺いしたいのでありますが、これを受諾したとなりますと、先ほど委員諸君も言われました通り、戰端の開かれたる場合におきまして、戰争の渦中に巻込まれることは必定であります。軍事基地を提供するくらいであるならば、むしろわれわれは軍備を持つて、ある一国と合併して、合邦くらいのことを考えてもさしつかえないというような意見すらも持つておる人がたくさんあるのでありますが、こういう点について政府の御意見を伺いたいと思うのであります、同時に先ほど申しました第一点の政府講和に対する心構えをお伺いしたいと思うのであります。  私は移民問題につきまして通告をいたしておきましたが、今日すでに日本の人口は行き詰まつております。この小さな四つの島の日本列島に八千万の人口が込み合つて、そうして蝸牛角上の争いを続けておる一方に百五十万ずつふえて行く。今日においてすら食えない。これが子の代、孫の代には一体どうするか。産兒制限のごときことではこの人口問題を解決することは絶対できないのである。     〔委員長退席、佐々木委員長代理着席〕 それで厚生省の人口問題研究所では、少くとも二千万人海外にはき出さなければならぬと言つておられますが、私は二千万ではまだ少い、少くとも三千万人出さなければならぬと考えておるのであります。あのインドネシア共和国の大統領スカルノが、もし日本人が国籍を脱して来るならば—こういう條件がついておりますが—二千万人受入れる用意があるということを言つております。私は戰争中に向うへ行つておりまして、スカルノとしばしば会いまして酒を飲みながら意見を交換いたしました。(笑声)そのときはわれわれも戰勝国民であつた。—彼は非常な天才的なすばらしい政治家であります。この人がそう言つておりますし、またその当時蘭印で事業を営んでおりました南洋興発会社、これは先般つぶれましたが、この社長のところへも手紙が参りまして同じことを言つておる。日本国民は今平和移民として、ことに農業開拓の移民といたしまして、非常に南方諸国から歓迎をされておるということは争われない事実であります。南米からもたくさんの注文が来ておる。(笑声)こういうことでありますから、われわれといたしましては、この注文に応じまして、どしどし大和民族を向うへ吐き出すという用意がなければならぬ。今日よりその研究が—研究どころじやない。着々と実行に移さなければならぬ。講和会議が済まなければならぬということは毛頭考える必要はない。講和会議と移民の問題はまつた関係がない。でありますから、政府といたしましては、この点に大なる関心を持たれ、しこうして十二分の力を注いでいただきたいと思うのでありますが、この点どういう準備、どういう研究、しこうしていかなる用意、いかなる計画を持つておられるか、この点お伺いいたしたいと思うのであります。  それから最後にちよつとお伺いいたしたいのですが、これは別の問題ですが、われわれの同胞の湯川博士がアメリカでもつてノーベル賞をもらつた。これは非常にわれわれの名誉であります。同時にわれわれは湯川博士に対しまして非常に感謝にたえないのであります。湯川博士のこの献身的な努力に対しまして、日本国会あるいは総理大臣の名において、感謝激励の何か表彰がなければならぬと思うのでありますが、この点について何かお考えがありますか、お伺いいたしたいと思います。
  96. 川村松助

    川村政府委員 第一の御質問の基地その他の問題につきましては、現在の情勢のもとにおいてはそういうことはあり得ないと思います。  第二の政府の心構えであるとかあるいは国民の云々というお話でありますが、これはさきに栗山委員も言われましたように、あらゆる立場にある人たちが全部一丸になりまして、これが研究対策を立てる必要がある。またお話のように何らポツダム宣言にとらわれることなく、遠慮することなく、要望するものは要望すべきだと考えております。  湯川博士の問題につきましては、ただいまのところ私としてはお答えする資料を持つておりません。  移民につきましては管理局長からお答えいたしたいと思います。
  97. 琵琶島英二

    ○琵琶島政府委員 移民問題についての御意見なり御質問がございましたが、これについてこの機会に最近の政府のとつておりますところ、考えておりますところを簡單に御説明申し上げたいと思います。  最近海外への渡航の制限が緩和せられましたのと、人口問題との関係からいたしまして、移民問題について国内の一般の関心が高まつて参りました。現在の模様を一言申し上げますが、現在渡航を許可せられておる関係では、一般の渡航関係とわれわれ申しておりますが、国際会議その他に参加するために海外へ行行する、あるいは海外へ勉強するために渡航するという人と、第二番目は経済的の関係で、優先的に外貨を使い得る実業家の方がぼつぼつ海外に出ることができ出したということと、それから技術者が外国から招聘を受けて海外に出て行けるようになつた。第三番目の海外に出ることが現在でもできまする関係では、その御家族がたとえば南米等にありまして戰前あるいは戰争中に日本にその家族の方が、あるいは勉強その他で来ておられて、その人が呼び寄せ等で帰つて行かれる、こういう人がおもに南米諸国にございます。こういう関係で最近渡航せられております。但し先ほどもちよつと御意見がございましたが、移民と申しますか、相当多数そろつて海外に移住するという関係では、現在のところまだ占領下におきまして許された例もございませんし、なおこの前技術者が海外へ渡航することが許された指令の中にも、一般労働者は含まないということが明確にせられておりまして、現在のところ、いわゆる従来移民といわれておつた関係は、許された例がございません。但し先ほども御意見がございましたように、われわれといたしましても、これは最も深い関心を持つておる問題でございますが、ただこれにつきましては相手のあることでございますし、その相手の国の政策なり都合によつて決定せられることが多いことは、いまさら申し上げるまでもないと思います。この移民についての渉外の態度につきましては、ときどき新聞通信等によつて承知しておるのでございまして、だんだんわが国に対する理解なり同情なりが、深まつて来つつあることは承知しておるのでございますが、政府といたしましては、まだどの国がどういうふうになりつつあるということを、ここで申し上げるほどのはつきりした資料を持つておりません。ただ先ほども御意見がございましたように、この移民の問題は、わが国の人口の問題から申しましても、また経済の今後の問題から申しましても、重要なる問題でございますし、将来適当な時期に、相当多数の人が海外で活躍せられるということは、われわれとしても衷心から希望しておるところでありますし、またそうすることによつてわが国世界の平和なり経済の発展に寄与し得るところでありますので、その方向に向つてあらゆる努力をしたいと思つておる次第でございます。  政府はどういうようなことをやつておるかという御質問がございましたが、こういうような状況のもとにおきましては、大ざつぱに申しますれば、いろいろ努力をしておるということを申し上げるわけでありますか、その二、三の問題について特に申し上げてみますと、先ほども申し上げましたように、何と申しましても、移民の関係は相手の国のあることでございますので、今後の問題を考えるその準備といたしましても、わが国国際的な信用を高めるようにすることが第一だと思つております。わが国が戰後に平和的に民主的に再建せられて行つておるということを、あらゆる機会に実績を示して行くことが必要だと考えております。従来われわれの同胞が発展をしておりました外国から、御承知の通り終戰後約三百万の同胞が引揚げて参りました。これは主としていわゆる大東亜地域の諸国からでございましたが、かつて活躍しておつた国の中では、まだわが国の態度に対して、あるいは行き方に対して、再建の方向に対して、警戒的な気持を持つておるような国もございますが、やがてわが国が真に平和的に建設されつつあるということがわかつて参りますれば、漸次わが国に対する態度なり考え方も改善せられると思うのでありまして、要はわが国の努力と誠意にかかつておるものと存じております。  第二番目に今後の移民の問題を考えます際に、従来も必ずしもそうであつたわけではございませんが、いわゆる移民というものは国内で生活しにくくなつた人を国外に送り出すということでなくて、海外でしつかりした活動ができ、また関係の国でもぜひ来てほしいというような人を一人でも多く送りたいと考えております。そのためには先ほどちよつと申し上げましたが、すでに技術者は現在でも招かれれば渡航できるようになつておりますし、さしあたり各方面の優秀な技術者を養成することがまず手取り早い最初のなすべきことではないかと思います。最近の人口問題審議会の調査によりましても、十五歳から五十九歳までの間のいわゆる稼働人口というものは、わが国の現在の人口情勢では、今後まだ二十年間はずいぶん増加する傾向にあるという結果が出ておりますが、われわれといたしましてもこの稼働人口、いわゆる働き盛りのわれわれの同胞を、一人でも多くりつぱな技術者に育て上げて外国でも歓迎を受ける人を一人でも多くつくつて行きたいと思つております。  第三番目の問題として考えておりますのは、これは従来世界の人口なり移民関係の学者あるいは識者等が、いろいろわが国の人口問題、移民問題というものを研究史、またいろいろな意見を発表しておるわけでありますが、この外国の識者あるいは人口問題、移民問題等についての指導的立場におる人たちの理解と同情を深めるためには、わが国ではやはりなすべきことがある。つまり将来円満にわが国希望するように海外に移住ができるというためには、いろいろわが国でしなければならぬことがあるように思います。その一つといたしまして、わが国として移民をすれば、実際上国内の人口重圧と申しますか、人口圧力が低下するような情勢になるという実情を示す必要があるのではないかと存じます。つまり別の言葉で申しますと、出生率がむやみに高くて、少々海外に移民を出しても、その出しただけはすぐ埋まつてしまつて、焼石に水のような人口の増加状況にあるということでは、世界の人口問題、移民問題、特に日本の問題について、好意的に考えてくれている人たちの積極的なる支持を得にくいということが考えられるわけであります。御承知の通り、昨年から今年にかけまして、主として米国でございますが、これは司令部の方の好意的なはからいだと思いますが、人口関係の学者が日本に見えたのであります。その中の一入にプリンストン大学の教授でノーテスタインという人がありますが、その人なども座談会等でわが国の社会的、経済的な條件が向上して死亡率が下るとともに、地方出生率もその向上の度合に従つてつて行くということがはつきり現われて来ない限りは、日本の移民への道は開かれないであろうという意見を表明せられたこともございましたし、また今年の一月から三月ごろまで日本に来られて、人口問題、移民問題を研究しておられた米国の人口学者、マイアミ大学の教授でございますトムソン博士等も—このトムソン博士というのは、かつて移民がわが国の人口問題の解決上寄与するものであるということを理論的にその著書説明せられ、わが国にきわめて好意的な意見を発表せられた方でありますが、その人が本年三月わが国を去られますときに日本の人口問題の解決は、日本人個人が自主的にやる妊娠調節以外に道はない。さしあたり移民の問題については諸般の政治的な考慮もあつたと思いますが、従来のような積極的な意見は表明せずに帰られたわけであります。つまり第三の点で今多少長々しく申し上げましたが、世界各国の識者あるいは学者等が、日本の人口問題あるいは移民の問題について、日本の社会的経済的條件が向上しなければいかぬとか、産兒制限を多くやらなければいかぬとかいう意見を表明しておるわけでありまして、わが国といたしましても、こういうような各方面の努力をしなければならぬということが考えられるわけであります。さしあたり大まかな御説明を申し上げれば、政府として考えております、われわれとして将来わが同胞が海外に発展しやすいような雰囲気をつくる用意をするという意味で、現在でもわれわれができる方面を申し上げますと、二、三の問題がありまして、そういう方面政府としても努力をしたい。あるいはしておるという状況でございます。
  98. 菊池義郎

    菊池委員 政務次官にお飼いしたいと思います。先ほどの御答弁では、現在のところ外国に軍事基地を提供する考えはないということでございましたが、現在のどころではない、将来そういうような要求をせられた場合において、これに応ずるつもりかどうか、これをお伺いするのであります。
  99. 川村松助

    川村政府委員 あまりにもも重大であり、しかもちよつと想像がつかない仮定でありますので、答弁を差控えたいと思います。
  100. 菊池義郎

    菊池委員 あまりにも重大であるからしてお伺いするのでありますが、——それでは質問いたしません。  それから移民の問題でありますが、ただいまの御説明だけでは私はちつとも満足できませんが、こちらから積極的に外国に働きかけて、たとえば南方のごとき向うからよこしてもらいたいと言つている、そういうところへ積極的に働きかけて、そうして今日からでも出すようにしてもらいたいと私は考える。ただ国際情勢がどうであるとか、あるいは法規がどうであるとか、そういうことにとらわれる必要はない。国と国との約束により、向うから誘われてこちらから行くということは、これは少しもさしつかえない、特別法は一般法に先んずるという原則もありますので、どこから考えてもそういうことは少しも矛盾でも何でもない。また悪いことでも何でもないのでありますから、南方は日本国民の発展地としては最も適当であろうと考える。アメリカの書物などでも、日本人はインドネシアであると書いてある。全部が全部そうとは限りますまいが、いずれにしても向うを歩いて見ますと、顔形から慣習、家の建て方からすつかり—日本の鳥居なども南方の鳥居とまつたく同じ、私はジヤワへ参りまして、バタビアからスラバヤまで千二百キロの山道を通りまして、その間に何十という大きな石の鳥居にぶつかりました。何万年昔から立つているかわからぬが、厚いこけが生えている。向うの踊り方を見ましても、いろいろな風俗慣習も日本人そつくり、アメリカ人がそう言つているのは当然だろうと思います。従つてわれわれが南方へ発展するということは、発展することではなくして、実は祖国に帰つて行のだと考えて少しもさしつかえない。私はそういうふうに考えている(笑声)インドネシア共和国だけでも日本の何十倍の地域である。向うで要求しているのだから、どしどし出すようにしてもらいたい。こつちから誘いの水をかけてもらいたい。あまり消極的にならないで、どしどし積極的に呼びかけて、向うの方へ出すように御努力を願いたいと思うのであります。何かこれまでにも相当準備がなければならぬと私は考えておる。南方諸国に行つたところの軍人を全部呼び返すのも私は国策上どうかと考えたくらいでありますが、日本の軍人たちは向うにそのままとめて、日本へ帰つて来ても食えぬから、そこでもつて働けというような大きな腹を持つて、高邁な識見を持つてこの偉大なる画時代的な国策を遂行してもらいたいと思いますが、どうも官吏諸君の頭が小刻みでわれわれにはあきたらないと思います。どうぞお願いでありますが、大さな計画を立てて、そうして今日本が滅びるか興るかのせとぎわでありますから、その計画を立てるにしても、これまでの—終戰前までの法規にとらわれた、規矩準繩にとらわれたようなことでなく、形を破つた大きな経綸をもつて移民問題に善処されんことを切にお願いして私の質問を打切ります。
  101. 佐々木盛雄

    佐々木委員長代理 他に質疑はありませんか。—並木君に申し上げますが、はなはだ遺憾でありますが、時間が非常に経過しておりますから、なるべく簡單に願います。
  102. 並木芳雄

    並木委員 一つは日米貿易紛争仲裁委員会についてちよつとお尋ねしたいのです。これは日本の貿易上の紛争解決のために、クレームの裁定機関の設置というものは非常に要望されておつたんですが、先般アメリカ仲裁協会と在日アメリカ商業会議所、日本商工会議所の間で話が進められて、十一月の初めにはおそくも発足するということで私ども聞いておつたんです。これができますと、非常に貿易上のクレーム決裁上役立ちますが、その後ちよつと情報を聞いておりませんので、外務省として関知されておるところがあるかどうか、それをお知らせ願いたいと思います。あわせて関税の問題ですが、国際関税協定というようなものをせひ早く結ばれたいというわれわれの希望ですが、その点に対しても情報がありましたら、お知らせ願いたいと思います。  もう一つですが、この前私は提案しておいて、なるべく早く外務省の研修所を見学したいと皆さんの御同意を得てございますが、あれは期間があつたと思いますが、もし終つてしまうようなことがあるといけませんので、至急日取りをきめていただくようにお願いしたい、特に今度は婦人の研修生がおりますが、婦人の研修生について成績はうまく行つておるかどうか、状況をお知らせいただけば、見学の折の非常な参考になると思います。
  103. 大野勝巳

    大野政府委員 並木さんの御質問の三点のうち第一点と第二点について御答弁申し上げたいと思います。  並木さん御指摘の通りでありまして、日本の貿易業者の間にクレームがいろいろ起ることにつきまして、非常に憂慮すべき事態になつておると思いますが、従来からあるわけであります。多少誇張されておるかもしれませんので、実情をちよつと申し上げておきたいと思いますが、大体クレームというのに二色あるのでありますが、第一は輸出業者の過失責任に帰すべきもの、すなわち具体的に申しますと、品質が不良であるとか、あるいは法規に抵触しておるとか、あるいは着荷当時実物を見たら不足しておる、あるいは積荷の遅延ないしは内容が見本と違つている、こういうふうな理由によつて生ずるのが、輸出業者の過失責任に帰すべきクレームであります。また第二の範疇に属するものは、先方の輸入業者の方の市況、マーケツトの状況によりまして、クレームが発生するというのもなくはないのであります。大体今までクレームの数が終戰当時から今年の九月までで、輸出に関するクレームが三百八十件ほどあるのでありますが、ほぼその四割近くがすでに解決済みになつております。これは大体三百八十件のうちのまた四十パーセントくらいが輸出業者の過失に帰すべきクレームでありまして、それ以外に輸入業者に関連して発生するクレーム、つまり日本の輸入業者に関連して発生するクレームが百三十四件今日まであるのであります。このうち三十件ほどすでに解決されております。いずれにしましてもこういうクレームの解決につきましては、当事者の示談によるか、あるいは仲介機関の調停によるか、ないしは訴訟の提起ということが考えられるのでありますが、現在日本の置かれております立場にかんがみまして、それができないわけであります。その欠を補うために、ただいま並木さんのおつしやつたような事態に好転して参つたのであります。すなわち米国の仲裁協会、それから在日米国商業会議所及び日本商工会議所が合同で日米仲裁機関の設定を決議いたしてあつたわけであります。現在この原案は、認可を得るために米国政府に送られておるのでありまして、この委員会成立することによりまして、クレームの処理が大いに進捗することが期待されるのでありまして、私としましては一日も早くこれが成立することを待望いたしておる次第であります。  第二問につきましては、関税協定の問題でありますが、御存じのように国際貿易機関と並行いたしまして、それの一つの並行機関のようなかつこうで、関税及び貿易に関する一般協定というものに参加している国の会議が、今日まで三、四回行われて来ております。この目的とするところは、要するに相互の国の間におきまして、関税をなるべくお互いに下げ合つて、そして全体として国際通商の障壁なり、あるいは障害物を極力除去する、それによつて国際貿易のヴォリュームをふやして行つて世界経済の均衡を回復するのに役立たしめる。こういう根本的な思想に基いておりまして、すでに相当の国がこれに参加いたしております。日本に関しましては、ただいまのところこれに参加する資格が実はないのであります。日本のみならずドイツ並びに現在問題となつておりますのは、それ以外には南朝鮮—韓国であります。この問題につきましては、連合国側の、ことに米国の非常な好意によりましてなるべく早く日本側をこの関税及び貿易に関する一般協定参加国会議参加せしめたい。それによつて通商上その他に関する最惠国待遇の確保を与えたいという大きな目標で、米国政府がその間あつせんの労を今日までとつて来ておるわけであります。政府といたしましては、それに必要な諸般の準備を目下鋭意進めておりますが、今日までのところ、まだ朗報をここで申し上げることは、残念ながらできないのでありまして、まだ一年ないしそれ以上待たなければ加入は許されないのではなかろうか、かように考えております。しかしこれは一年なり二年なり先のことであるといたしましても、わが国といたしましては、いつ何時加入を許されてもさしつかえないように、また積極的に加入を許されるように、大いに條件を整えておくためにも、諸般の準備をする必要があります。特に関税定率法の改正という問題があるわけであります。ないしはそれに関連する国内の措置というものがあるわけでありますが、それをいつ何時でもできるように準備いたしておく、こういう方針を立てまして、関係各省目下協議をしつつ準備を進めておる、こういう段階にあります。
  104. 佐々木盛雄

    佐々木委員長代理 なお並木委員に申し上げておきますが、先ほど質問並びに御要求のありました外務官研修所見学の件に対しましては、私から委員長にその旨を伝えまして、理事会にはかつた上、御希望に沿うように努力いたしたいと思います。
  105. 川村松助

    川村政府委員 並木委員の御質問の御三問についてお答えいたしたいと思います。婦人の外交官の養成につきましては、研修所に女子班を設けまして、女子のいわゆる判断力、感覚、そうしたものを外交面に働かしていただく方が効果的ではなかろうか、ことに今後平和日本の外交といたしましては、そういう措置は先進国の側によりましても、きわめて適切であるというふうな考えから、女子班を設けているような次第であります。ただいまのところ、入所いたしました人たちは、人選の都合上三級官級の予定になつております。そうしてその仕事は事務補佐官程度のものになつております。さきに申し上げましたような女子を極力生かすように指導研鑽をいたしております。幸いに近く皆様で現状を御視察になれば、より以上具体的に御了解願えるのではなかろうか、こう考えております。
  106. 佐々木盛雄

    佐々木委員長代理 他に御質疑もなかろうかと存じますので、本日は非常に時間も経過いたしておりますので、これにて散会いたします。     午後零時五十五分散会