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1949-11-28 第6回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十八日(月曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 稻田 直道君   理事 大澤嘉平治君 理事 岡村利右衞門君    理事 關谷 勝利君 理事 前田  郁君    理事 松本 一郎君 理事 米窪 滿亮君    理事 佐伯 宗義君 理事 田中 堯平君    理事 木下  榮君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       尾関 義一君    片岡伊三郎君       木村 公平君    黒澤富次郎君       佐藤 榮作君    周東 英雄君       高橋 定一君    土倉 宗明君       坪内 八郎君    畠山 鶴吉君       滿尾 君亮君    村上  勇君       松井 政吉君    清藤 唯七君       柄澤登志子君    山崎 岩男君       石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君  出席政府委員         運輸政務次官  原 健三郎君         (運輸大臣官房         長)         運輸事務官   荒木茂久二君         (大臣官房観光         部長)         運輸事務官   間嶋大治郎君         (海運局長)         運輸事務官   岡田 修一君         (鉄道監督局         長)         運輸事務官   足羽 則之君         (鉄道監督局国         有鉄道部長)         運輸事務官   石井 昭正君         (国有鉄道部財         政課長)         運輸事務官   紙田千鶴雄君         (自動車局長)         運輸事務官   牛島 辰彌君  委員外出席者         日本国有鉄道営         業局長     藪谷 虎芳君         参  考  人         (船主協会理         事)      淺尾 新甫君         参  考  人         (全日本海員組         合副組合長)  有井  澄君         参  考  人         (全日本中小工         業協議会中央常         任委員)    伊藤 英男君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         行副委員長)  菊川 孝夫君         参  考  人         (日本石炭協会         専務理事)   天日 光一君         参  考  人         (日本トラック         協会事務局長) 森田  賢君         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 堤  正威君 十一月二十七日  委員坪内八郎辞任につき、その補欠として金  原舜二君が議長指名委員に選任された。 十一月二十八日  委員金原舜二君辞任につきその補欠として坪内  八郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡村利右衞門君、黒澤富次郎君、小西寅松  君、及び高橋定一辞任につき、その補欠とし  て佐藤榮作君、周東英雄君、木村公平君及び村  上勇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出第五四号)  国際観光事業助成に関する法律案内閣提出  第五六号)     —————————————
  2. 稻田直道

    稻田委員長 それでは会議を開きます。  国際観光事業助成に関する法律案議題とし、審査を進めます。前会に引続き質疑を許します。關谷君。
  3. 關谷勝利

    關谷委員 この観光宣伝を実施し、その他観光に関する事業を行う法人であつて、営利を目的としないもの、この団体がどれだけあるのか。またこの団体に対してどの団体へ何ほど今まで助成して来たか。なお二十四年の今度の補正予算で、どのくらいこれに組まれておるか。なお来年の見通しというようなことをちよつとお尋ねいたしたいと思います。
  4. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 過去の実績からまず申し上げますと、昭和二十三年度におきましては観光事業に対する助成金といたしまして、全日本観光連盟に対して一千万円、これは鉄道特別会計からの助成金でございます。この全日本観光連盟社団法人でございます。それから財団法人日本交通公社に対しまして、これも鉄道特別会計からの助成金でありますが五百万円、それからそれ以外に昨年度日本海上観光協会というものがございますが、これは法人格はございませんでしたが、これに対しまして一般会計から七十五万円の助成金が出ておつたのでございます。本年度におきましては、予算編成の際に、この三社に対してそれぞれ要求をいたしたのでありますが、遺憾ながら本年度におきましては、全額を認められなかつたのでございます。その後折衝いたしました結果、幸いに全日本観光連盟に対します分だけが補正予算に認められまして、今回の補正予算には一千万円だけ全日本観光連盟に計上し得たのであります。今年度からはこの補助金一般会計からの支出ということに相なります。二十五年度におきましては、目下のところ全日本観光連盟に対しましては、本年の補正予算と同額の一千万円を予定いたしております。日本交通公社に対しましては二千万円、同じくこれは一般会計でありますが、予定になつておりまして、通常国会提出予定になつております。来年度の本予算には計上いたす予定でございます。現在この法律がもし通りましたならば、政令でこの法人を指定いたさなければならないのでございますが、これに対しましては、今申し上げた通り本年度と来年度の両者を合せまして、日本交通公社全日本観光連盟だけが補助対象として考えておりますので、とりあえずこの二つを指定いたすつもりでございます。しかし将来の問題といたしましては、あるいは一、二全国的な、また代表的な観光機関ができましたら、補助対象とすることも考えられますが、しかしこの性質からいたしまして、やはり日本の代表的な観光機関でなければならないと考えますので、そう数が多くなることは、私どもといたしましても考えてはおらないのであります。
  5. 岡田五郎

    岡田(五)委員 今政府から説明を承りますと、大体観光事業団体、すなわち日本交通公社全日本観光連盟に対する補助金お話があつたようでありますが、配付されました資料によりまして、大体ホテル事業基本調査のために、八十五万円ばかり補助金を出しておられるようでありますが、かような観光事業関係方面に、今提示いたしました八十五万円のほかにどういうふうなものがありますか。参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  6. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 ただいまの御質問で、先般お手元に提出いたしました資料の中で、ホテル関係調査費として八十五万円と書いてありますのは、これは昨年度におきまして、緊急にホテル整備しなければならない箇所がたくさんございましたので、それらの関係府県に対しまして、ホテルの新設に関する諸般の調査を依頼したのであります。これは補助金としてでなしに、調査費というものをこの中に計上いたしまして、他に必要な経費を都道府県と契約を結びまして、調査費として支出したのであります。それ以外にも昨年度は、たとえば日本観光通訳協会にたしか十五万円だつたと思いますが、やはり調査費支出いたしました。これは観光客消費額——実際ガイドが観光客に付添いまして、事情はよくわかつておりますので、調査費を渡しまして、そしてどのようなところにどのような金を投じたかというふうな調査も依頼したことはございますが、しかし本年度におきましては、われわれの方の行政費消全部一般会計になりまして、予算の余裕がございませんので、遺憾ながらそういつた調査費は、本年度におきましては全然計上し得ておらないのでございます。
  7. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に先ほど政府委員からお話があつたようでありますが、大体外客誘致海外宣伝のために、財団法人日本交通公社国内観光事業者指導、またはホテル整備という受入れ態勢関係は、社団法人全日本観光連盟がやる。こういうことで、外は日本交通公社が一手に引受け、内は一手に全日本観光連盟が引受けておる。こういうように、独占という言葉は多少強いかもしれませんが、一応單一形態をとつておられるようでありますが、先ほど政府委員の御説明言葉の中には、ほかに有力なりつぱなかような機関ができれば、そういうものを利用してもよい。こういう意味言葉があつたように思うのでありますが、政府としては、必ずしもこの形態唯一無二の最善の形であると考えておられるのであるかどうか。私はむしろ国内受入れ態勢整備の面におきましては、これが指導育成という面には、あるいは一本建が一定の期間必要であるかもしれぬと思うのでありますが、やはり海外宣伝におきましては、ある程度の統制のとれた競争によつて国外宣伝をやる。こういうこともまた必要であるのではないか。また内地に来られた外客に対する案内サービスというような面におきましても、統制のとれた競争によつてサービスの充実をはかる。こういうことがよいのではないか。かように考えますので、観光事業宣伝及び外客サービス案内というような面については、あるいは複数制もまた可なりや、かように考えるのでありますが、かような点につきましての政府の御見解を承りたいのであります。
  8. 原健三郎

    ○原(健)政府委員 ただいま岡田委員から非常に根本的な御質問がございましたので、お答えいたしたいと思うのであります。われわれも日本交通公社全日本観光連盟、この二つに現在のところは一応限つたようになつておりますが、将来ともこれだけに限定して、ほとんど独占的にこれらを援助し、支持しよう、こういう意図は決してございませんので、ある程度の自由競争によつて外客誘致その他をしてもらうのはけつこうでございます。しかしこの外客誘致宣伝とか、旅客のあつせんということになりますが、外客誘致というようなことは、ほとんど宣伝の費用ばかりいりまして、実質的の收入がございませんので、こういう面におきましてはやはり政府援助が必要となるし、またそういう援助をしない場合においては、外客誘致の單なる收入のない宣伝だけは、民間のものではやれませんので、この点も勘案し、今の岡田さんの御希望などをも勘案して、将来大いに善処いたしたいと思つておるのであります。
  9. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に簡單に御質問申し上げますが、観光事業振興重要性にかんがみまして、内閣総理大臣諮問機関として、観光事業審議会というものが設置されておるようでありますが、せんだつて政府委員の御説明によりますと、審議会の整理というような関係もこれあり、また事実何もしておられない。従つてこの審議会活動も全然始まつていない。かようなことを承りまして、私多少落胆をいたしたのでありますが、観光事業の重要なことにつきましては、提案理由にもるる説明してありますし、それが貿易外收入として国家に益することは、この数字を見ましても九箇月間に二十億円というような貿易外收入を得ておりまして、年間数十億の收入があるのではないか。相当重要な事業である、かように考えるのでありますが、もし審議会が廃止されたならば、運輸大臣のもとにおいて何か民間のあらゆる人材の知能を吸收いたしまして、適切なる海外宣伝ができますような委員会なり、組織を設置いたされる意図政府においてありますかどうか。これを承りたいのであります。
  10. 原健三郎

    ○原(健)政府委員 御趣旨の点はわれわれも賛成でございまして、内閣観光事業審議会というものを置くということになつておりましたが、委員の選定その他でずいぶん遅れまして、最近審議会とか委員会とか、いろいろなものを整理するという政府の建前になりまして、目下のところ行き悩みの状態であります。これを何とかこのままにするか、委員の数をどうするかという点につきまして、こまかい点はもう一度再検討いたしまして、政府といたしましては岡田さんの御希望のように、ぜひこの観光事業審議会というものをこしらえる必要を認めておりまして、早急にこの機会にこの点についてもう一度研究し直し、関係各社とも相談をいたしまして、これを設置いたしたい、こう思つております。
  11. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に條文に入りまして簡單質問を申し上げたいのでございます。第六條の二項でございますが、これら補助金を受けておる法人が、前五條規定に反したり、また交付金剰余金ができて、運輸大臣承認を受けられないで、還付しなければならないというような場合における規定のようでありますが、この場合に当該業務を執行した者がなおその職にあるときは、当該法人に対しては補助金交付しない。こうなつておるのでありますが、もしこの執行責任者が職を去つてしまつたら、この余つた金もまた交付金も返さなくてもいいのか。こういう解釈が反面出て参るのであります。またかような執行責任者が去つてしまつた後の法人に対して、なお補助金が與えられるのか。かようなことをこの法文を見まして疑問を抱くのでありますが、明快に御説明願いたいと思います。
  12. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 その点につきましては、第五條でまず補助金観光事業振興に役立たない用途に使用してはならないということになつております。また第六條でこういうふうな規定に違反した場合、及び支出額收支見積り書に掲げる支出額の見積りに達しなかつた場合において、運輸大臣に申し出て、その承認が得られなかつた。こういうふうな場合には還付を命ぜられるということになつておるのであります。そのあとにございますように、正当な理由がないのに還付しないときは、補助金交付しない。またたとい正当な理由がありましても、当該業務を執行した方がなおその職にあるときは、当該法人に対する補助金交付しないというふうに、さらにこの制限を厳重にいたしまして、そういつた法律に定めました観光事業振興に役立たない用途に、使用してはならないというふうな規定に違反したような役員がおります間は、その法人に対しましては、その後における補助金をやらないということにいたしまして、厳重にいたした。こういうことになつておるのであります。そういう事情によりましてかように第六條によりまして還付を命ぜられましても、場合によりましてはすぐこれを還付するというふうなことができない場合もございますし、その他の場合も考えられます。しかしそういつた違反行為をやつた役員がおりますような場合には、さらに嚴重にいたしまして、その後における補助金を全然やらないというふうに、巌重にいたす、こういうことに相なつております。
  13. 滿尾君亮

    滿尾委員 簡單に三、四点お伺いします。前回御質問申し上げましたときに、さしあたりわが国の対外観光宣伝重点を、どの国に置かれるか。まんべんなくやつてつても効かないと考えられますが、どういう国に要点を置いておられるかという点についてお伺いいたします。
  14. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 御質問の点につきまして、まず観光宣伝対象となる国につきましては、皆様もすでに御承知の通り現在参つております観光客その他の外客の中で、数字の上から見ましても、また実際消費額のウエイトから見ましても、何と言つてアメリカ人が非常に多いのであります。ことに観光客は大部分アメリカ人であります。一部に従来から中華民国人の中で香港あるいは台湾の人たちが、観光団を組織して参つたのもかなりございますが、これが最近中国がああいうような事情になりまして、遺憾ながら少しストップいたしております。ことに最近新聞に出ましたように中華航空会社の飛行機が、中共地区へ全部飛び立つたというようなこともございまして、今月から中絶のような状態に相なつております。何と申しましても誘致宣伝対象といたしましては、当分の間はアメリカ重点で行かなければならないと考えております。
  15. 滿尾君亮

    滿尾委員 第一條についてお伺いしたいのですが、これは事業助成するということになつておりますけれども、人格が別でありましても、観光のために非常に役立つようなことを計画している場合に、事柄自体に対する補助金というようなものはないのでございましようか。
  16. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 今のお尋ねの点につきましては、私どもはさしあたり対象として考えております団体の中で、全日本観光連盟は、先日もお話を申し上げた通り国内受入れ態勢の準備の促進ということを主たる使命にいたしておりますので、その事業活動の大部分は、いわゆる国際観光事業振興するために必要な事業であると言い得るのであります。それから交通公社の方は、私ども交通公社でやつております仕事の中で、対外観光宣伝のものだけに、一応補助金考えたのであります。それ以外にもしそういつた団体で、国際観光事業振興に役立つ事業をやつております場合におきまして、それが全国的な、また代表的な観光機関で、国家的に見て助成の必要があるというふうに考えました場合には、第一條による政令で追加することになると思うのでありまするその場合におきましてもやはりその団体の行つております事業の中で、この国際観光事業振興のために役立つ事業に対して、経費の一部を補助する。こういうことに相なると思うのであります。
  17. 滿尾君亮

    滿尾委員 別に現在の二団体だけに限つておるのではないというお話を聞きまして了解いたしたのでありますが、NAAという団体日本におきまして、英語のロード・マツプ作成しております。東京から日光、東海道線あるいは九州幹線自動車交通路に関する相当役に立つロードマップ、まつた観光客専門のためのロードマップをつくつております。これに対して政府でどうしても育成したいという考えを持つておるのでありますが、御調査の結果、これを追加せられる御意思がありますかどうか。
  18. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 その点については全国的な観光機関としての活動をしておるものも、まだほかにも二、三はございますが、私どもとしてはさしあたりは予算のにらみ合いとの関係もございまして、早急にそういつたものに補助を出すということは、ちよつとむずかしいのではないかと考えておりますが、今後においては十分その点は研究いたしたいと思います。しかし全日本観光連盟先ほども申し上げました通り全国観光機関総合団体でありまして、ほとんどそういつた機関をその傘下に持つておるのでありまして、そういう意味傘下団体事業助成というふうなものもある程度やつておるのであります。そういつた意味において、今後法律通りまして、全日本観光連盟事業計画を立てることに相なりますが、もしそういううちにそういつた計画があれば、私どもとしても十分考慮はいたしたいと思います。
  19. 滿尾君亮

    滿尾委員 今の政府委員の御説明の中に、この補助金を受ける団体という観念の中に、全国的という意味が非常に強調されて聞えるのでありますが、そういうことになりますと、将来ともこの二つ団体補助金を受けるボス的存在になりはしないかということをおそれる。なるほど北海道なら北海道地区だけの観光宣伝をすることに対して、補助はしにくいということをお考えになるのは、一応ごもつともでありますが、少くとも全国のどの地区も全部役立つように漸次勉強しようという団体は、団体大小を問わず、事柄の軽重に従い、観光事業にどれだけ役に立つかという見地から十分御調査願いたい。その意味において私はNAAについて再び政府が虚心坦懐に、全国にわたるロード・マツプ作成事情を十分御認識あつて、御考慮を煩わしたいと思います。  もう一つ第五條解釈でありますが、第五條に「補助金国際観光事業振興に役立たない用途に使用してはならない。」とこう書いてありますが、補助金を御交付になりますときに、その法律のような簡單な文句でなしに、どの事業、どの事業に対して助成するということを当事者に対しては明示せられるものであるかどうか、伺いたい。
  20. 間嶋大治郎

    間嶋政府委員 第一段のお尋ねに対しましては、私どもも決してそういう団体大小ということを別に区別はいたしておらないのであります。先ほどちよつと御説明申し上げました通り、実は二十三年度には海上観光協会には七十五万円出したのです。これは大小からいえばそう大きな団体ではございませんけれども、この団体は折衝いたしましたが、認められなかつたのであります、海上部門にもそういう認められない部門がありまして、こういう点は私どもとしてもほんとうにその団体全国的な事業に携つておるということを認めますならば、虚心坦懐に十分審議はいたしたい、こういうふうに考えます。  それから第二段のお尋ねに対しては、第四條にその団体がもし計画等を変更しようとするときは、あらかじめ運輸大臣承認を受けなければならないということになつておりますので、私どもとしては事業計画が出ましたならば、それが適当なりやいなやということを審査いたしまして、事業別に内容を審査して、こういう用途に幾らということで、一応きめてやる。そしてその事業種目の中で、ある程度の経費が動くという程度のことは、あらかじめ承認してよろしゆうございますが、計画を変更する場合には運輸大臣承認を要する。こういうことでこの事業が確実に遂行されるということを、監督いたしたいと考えております。
  21. 稻田直道

    稻田委員長 これにて通告者質疑は終りました。以上をもつて本案に対する質疑を終局いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 稻田直道

    稻田委員長 御異議がなければこれにて質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。
  23. 關谷勝利

    關谷委員 本案に対する討論はこれを省略して、ただちに採決せられんことを望みます。
  24. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議を採決いたします。關谷君の動議に御賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  25. 稻田直道

    稻田委員長 多数であります。よつて關谷君の動議は成立いたしました。  国際観光事業助成に関する法律について、採決いたします。本案を原案通り可決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  26. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なおこの際おはかりいたしますが、衆議院規則第八十六條による本案に対する報告書作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。     —————————————
  28. 滿尾君亮

    滿尾委員 一昨日御相談がありました観光ホテルに関する主務大臣の件でありますが、あれはわれわれもその後よく考えてみましたところ、どうしてもこの際当運輸委員会におきまして、明確な意思表示をする必要がある。そこで委員会としては運輸大臣主務大臣とすべしというように意思表示いたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  29. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの滿尾君の動議でありますが、先ほど観光特別委員長にお会いいたしましたときに、きよう向うの方では大体採決いたすから、その採決の模様によつてこちらの運輸委員会の方の意思表示をしてもらつた方が都合がいいということで、大体さよういたしておりますから、滿尾君、この動議を撤回していただきまして、明日あらためて御提出されたいと思いますが、いかがでございましようか。
  30. 滿尾君亮

    滿尾委員 それでは時期は委員長に御一任することといたしまして、時期を失せざるように措置をしていただきたい。
  31. 稻田直道

    稻田委員長 承知いたしました。     —————————————
  32. 稻田直道

    稻田委員長 これより国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題といたし、質疑に入ります。質疑通告があります。これを許します。關谷君。
  33. 關谷勝利

    關谷委員 この運賃の問題につきましては、すでに提案せられまする以前から非常な論議がありまして、ほとんど論議を盡されておるのでありますが、私ここに四、五点だけ政府当局にお伺いいたしたいと思います。  この今回の運賃改正を見ますと、これは再三申しますが、運賃原価に重点をおいておるのか、あるいは国有鉄道の独立採算制というところへ重点を置いておるのか、いずれを見ましてもはなはだ十分でないというふうに考えられるのでありますが、この点は政府といたしましては、どの角度に重点を置いて決定をせられたのか。この点まずお尋ねいたしたいと思います。
  34. 足羽則之

    ○足羽政府委員 お答え申し上げます。今回の運賃の改正に関しましては、採算運賃ということに大体重点は置いてあるのでございますが、しかし国鉄の赤字の克服、並びに物価に対する影響、そうした諸点を考慮しました点、並びに海陸運賃の調整の観点、そうした四つの点が今回の運賃改正についての主要な点でございます。
  35. 關谷勝利

    關谷委員 採算運賃重点を置いたと言われた。これはまことに私不十分な答弁のように考えるのでありますが、現在の運賃は原価に対する四九%ということになつておりますので、採算に重点を置いたのならばこれを二倍にするのが至当である。このように私は考えておるのであります。すべて他の運賃——今回値上げをいたします汽船の海上運賃も、採算運賃ということになつておりますし、その他のものも全部が採算運賃になつておりますのに、なおかつこの値上げをいたします際に、原価ということにも重点を置かず、八割というふうなことを政府がきめておられることは、私まことに不都合であるというふうに考えておるのであります。いろいろこの運賃の問題に対しまして、こういうふうに運賃が上つて参りますと、そこに摩擦と申しますか、原価の安いもの、物価の安いものあたりが、運賃の上る率が多いということで、そこに非常なむりが行くということになりますので、この際値上げは思い切つて採算運賃でやつて、それから後にむりの行くところに割引して行くのが、最も当を得た政策であると私は思うのでありますが、そういうことをせずして、ただ最初から八割というふうなことでやつてみたところに、非常に矛盾がある、このように考えるのであります。予算もすでに八割値上げということで決定をいたされておるのでありますが、しかしあの八割というのが、総額において八割の値上げになつておりますので、あの予算の範囲内ということになりますれば、一応九割値上げをして、その一割を非常にむりの行くところに対して割引をする。こういうような方法も考えられるのでありますが、こういうふうな方法を政府はとるというお考えはないか、お尋ねいたしたいと思います。
  36. 足羽則之

    ○足羽政府委員 今お話の点につきましては、今回の運賃改正に事前にそういうふうに九割値上げをいたしまして、なお個々の貨物について検討をして行くということは、非常な困難が伴う次第であります。そういう点につきましては今後十分検討はいたしたいと思うのでありますが、今回の八割の原案を作成いたすにつきましては、その点はやや困難かと考えておる次第であります。
  37. 關谷勝利

    關谷委員 運輸審議会におきましては、九割という答申が出ておりますにもかかわらず、国有鉄道としては八割を政府に対して要求した、こういうふうに聞いておるのであります。運輸審議会の意見はこれを尊重せよということになつておりますにもかかわらず、また運輸審議会の答申の意見を読んでみますと、まことに合理的であります。私は九割値上げするのが当然であるというふうに考えておりますのに、運輸当局と申しますか、国有鉄道の方では八割ということを最初から主張いたしておつたかのように聞いておるのでありますが、なぜ八割ということを主張いたしたか。こういうことを国有鉄道の関係の方にお尋ねいたします。
  38. 紙田千鶴雄

    紙田政府委員 ただいまの点につきましては、最初国有鉄道として貨物運賃の値上げの時期を、十月ごろということで運んだのであります。従つてここに時期が遅れております差の問題が出て来るかと思いますが、大体十月ごろとしまして、八割が至当であろう、こう思つたのが第一点でございます。  第二点は、今原価計算の問題が出ましたが、原価計算のもいろいろ見方がありまして、理想的に見ると、減価償却も十分見ていたしますと、關谷さんからただいま御指摘になりましたように四十九という数字が出て参りまして、倍上げるというような考え方があるのでありますが、原価計算を十分見ないで、暫定的にこれを減額して押えて見るという関係と、物価への影響をなるだけ少くするという意味と、また非常に切り詰められた今年度予算でありますが、一層の経営の合理化をすることによつてなるだけ値上げの率を少くする。こういうふうな努力を考えまして、八割というものを考えたのであります。
  39. 關谷勝利

    關谷委員 私いま少しつつこんで四、五点お尋ねいたしたいと思つておるのでありますが、再質問をすることを留保いたしまして、一応私の質問をこれで打切ります。
  40. 米窪滿亮

    米窪委員 この法案を提出した当時の運輸大臣説明によると、この程度の値上げでは憂慮すべき物価の値上げにならない。このことはたしか総理の施政の一般方針の際にも言われておるように記憶しておる。しかしわれわれの考えによりますれば、これはただちに生産費が上つて来るのでございまして、それは当然物価に響くことは、三歳の童子といえどもわかることであります。この点がこの法案が上程されるまでの間に、安本当局と運輸省との間に、物価に響く、響かないということで、相当折衝が行われたことを新聞紙は伝えておるのですが、運輸大臣がこれを出されたときに、さほど物価に響かないという確信を持たれて出されたのか。その響かないというのは、單に腰だめ的な勘でもつて言われているのであるか。それとも何かの資料があつて、何%くらいしか上らない、それは、大勢に影響ない、経済界に響かぬ、そしてそれはインフレを誘発しない、あるいは生産品を消費する立場に立つておるところの勤労階級の生活を脅かさない、何かそういう確固たる資料があつて言われたのであるか。安本当局との交渉の経過がもしお話ができれば御説明願いたい。またその資料がありましたならば、どうぞわれわれ議員一同に御配付を願いたいと思います。     〔委員長退席、關谷委員長代理着席〕
  41. 石井昭正

    ○石井政府委員 物価に響くかどうかという問題でございますが、もちろん運賃が上りました部分だけは、これは消費者が負担いたしますか、生産者が負担いたしますか、あるいは中間にあります販売業者等がこれを負担いたしますか、いずれにいたしましてもどこかに転嫁されることは御承知の通りだと思うのでございます。しかしながら問題は結局その割合が耐え得るものであるかどうかという点にかかつておるし、またその物の価格に対します運賃の上り方が、全体といたしましてごく微妙なものでございまして、いろいろ価格をきめて参ります過程においてネグレクトしてもよろしい。あるいは吸收されてしまうというようなものであるかどうかという点にあるのではないかと思うのでございます。この点につきまして物価方面の当局と、もちろんお話のように折衝はあつたのでございまするが、私どもの承知いたしておりまする折衝の過程におきましては、物価に影響があるということについて、いろいろ議論があつたわけではなくして、物価当局といたしましてはいずれにせよ、なるべく値上り率は少くとめた方がいい。従つて国鉄の運賃を上げることは、これはやむを得ない現在の情勢であると思うが、できるだけ少く上げた方がいい。そのためにはこういう点で国鉄の経費が多くはないか。あるいは国鉄の経費のうちに減価償却を来年度は相当見込んでいるけれども、これはまだ時期尚早ではないかというような点について、いろいろ折衝があつたのでございまして、物価そのものに及ぼす影響が大であるからというような点についての、大きな根本的な反対というようなものはございませんでした。  それからただいまお話のように何か資料に基いているということでございまするが、これはこの法案を提出いたします際に、お手元に一そろえそろえて差上げてございますし、なおまた簡單に御理解を願えるようにと、図表も一そろえそろえて差上げたつもりでございます。  総括的な数字を申し上げますと、現行の運賃は、これは国有鉄道の輸送にかかつております主要な品目二十六品目をとりまして、その生産価格に対しまして運賃がどのくらいの割合になるかということを輸送数量のウエイトにいたしまして、すべて平均いたしましたときに、これが現在では二・三%になつているわけでございます。これを国鉄の全貨物について考えますと、少し推算も入りまして、正確な数字とは申しかねるのでございますが、われわれのいたしました調査では〇・七七%程度ではなかろうか。特に鉄道にかかつております二十六品目について見ますと、御承知のように石炭というような、運賃の価格に対しまする割合が高いものが大宗を占めておりますので、そういうものの数量のウエイトが高くなつておりまするが、それでも二・三%程度でございます。これを昭和十一年の実績で検討いたしますと、この二十六品目に対しまして四・六一%となつているのでございますが、今回八割値上げいたしましてもその割合は四・一%にしかならない。大体物価というものがある均衡を得た形に回復いたして来るということを考えますときに、総括的な考え方といたしましては、こういう数字でもつてほぼ今回の運賃値上げが原価の点から見ても、また物価との関連から見ても大体妥当なところではなかろうかと考えるのであります。しかしながら個々的な品目について見ますれば、いろいろ御議論もあり、いろいろ御要望もあることと存ずるのでございまするが、最も基礎物資であり、従来の運賃改訂にあたりまして問題となりました石炭につきましては、これは鉄道の大宗貨物でございますから、鉄道の方から見ますれば收入源の大きな問題でありますけれども、また物価の方から見ますると、最も基礎的な材料でありますので、各種産業に及ぼす影響がきわめて大きいということで、問題が常に石炭の点にかかつてつたのであります。今回は石炭は御承知のように価格統制並びに配給統制が撤廃された結果といたしまして、配炭公団の廃止その他によりまして、相当中間的なマージンの節減ができる。従つて有効需要の現状とにらみ合せて、石炭の価格が消費者に対して負担されるというようなことはなからうということについて、物価当局におきましても、また石炭方面の主管官庁におかれましても、あまり御意見はなかつたのでございます。この提案に至りますまでの経過について申し上げますと、かようなことであります。
  42. 米窪滿亮

    米窪委員 この問題はきわめて重要な問題で、先ほど申し上げた通り、当時運輸大臣はまだ御出席にならなかつたようですが、運輸大臣の提案の御説明でも、大して物価に響かないというお話であつて、ただいま政府委員から詳細のことを伺つたのでありますが、十一月一日通産省振興局管理課の調べによつて見ましても、相当の影響があるということは、消費者価格の点において、一、二の品物に例をとつて見てもわかる。たとえば硫化鉱は二九%の値上げ率になり、また石灰石においても三二%、ドロマイトにおいて五一%、砂利において三四%、こういうぐあいに生産者価格の値上りということは、一、二の品目を除いてはそう影響はない。消費者価格には相当の影響があるということは、私が信じておるところの物価に響いて、それが結局は国民生活の安定を脅かす様相を示していることは、今私が拾い上げた一、二の品目についても明らかにこれを示しておる。この点がただいまの御説と若干の開きがあるのですが、これは物価庁及び通産省方面の意見を参酌して、先ほどの御説明があつたのであるか、あるいは運輸当局だけのお考えでそういう御説明がなされたのであるか。その辺を明らかにしていただきたい。
  43. 石井昭正

    ○石井政府委員 ただいまのお尋ねでざいまするが、もちろん鉄道の輸送は、運賃という観点から見ますると、原材料的なものに対して、生産者価格というものに対して運賃というものの率の高いことは、これは当然でございます。従いまして原材料になればなるほど、運賃の割合が高くなりますが、私が先ほど説明申し上げましたのは、それが平常な形における価格と運賃との割合に対して、今回の八割値上げは決して多過ぎるのではないということを申し上げたことが一つ、それから硫化鉱のお話もございましたが、なるほどおつしやるように硫化鉱につきましては、運賃の値上げが消費者価格に一応転嫁されて参るようなことになることも、ある程度事実だろうと存じますが、硫化鉱自体はただちに国民生活に及ぼすものではなくして、これはやはり第二次、第三次製品となつて国民経済の中に溶け込んで参るのではないかと思う。そういうように高次の製品になつて参りますと、鉄道運賃がなるほど硫化鉱自体に対しましては、かなりのパーセンテージになりますけれども、そういう生産過程を経て参ります中において見る時においては、今回の値上り程度のごときは、そう大きな影響はなかろう。こういう考え方でございます。  それから今の物資主管官庁と一緒の見解かということでございまするが、個々の品目には、どれがどうのというところまで、具体的に主管官庁とお話はいたしておりません。もちろん主管官庁としても、いろいろ個々の品目について御意見をもたらしたところも相当ございます。それらにつきましていろいろ御懇談を申し上げて、協議をしていることはございまするが、しかしすべて凡百の物資につきまして、全部管官庁と協議してきめたことではございません。さらに硫化鉱につきましては、その主管でありますところの通省方面から、特段のお話が運輸当局にあつたということは、これもまたございませんで、そういう意味におきまして私どもは硫化鉱等につきまして、一応原材料としては価格の値上りはやむを得ない。しかしながら高次の製品をつくります過程におきましては、相当程度吸收していただけることだと、かように考えておる次第でございます。
  44. 米窪滿亮

    米窪委員 運輸大臣が御出席ですから、運輸大臣お尋ねしたいのですが、ただいま説明があつたのですが、何といつてもこれは物価に響いて、内的にはやはりインフレを助長する、結果になる。国際的には三百六十円で一応押えているところの為替レートは、とうていこれでは押え切れない現状においては、すでにやみ為替の形において国際貿易が行われていることは、天下周知であります。三百六十円が五百円くらいで、品物をよけい渡すか、あるいはその他の方法で、三百六十円レートは実質的にはもう破れていることは、皆さん御存じの通りで、いかに総理大臣たびたび声明して、三百六十円は堅持すると言つても、実際海外との貿易関係におけるところの取引においては、三百六十円は破れている。これはもう明らかである。そのときに、結果において生産費が上つて来るような運賃の値上げというものは、国際的には日本の輸出貿易がその点でも非常な危惧というよりも、破壊的な、壊滅的な原因になるおそれがある。そこで運輸大臣お尋ねしたいのは、運輸大臣はしばしば物価に対して影響はないと言うのですが、私が先ほどお尋ねした二、三の点だけでも、相当の影響がある。これはなるほど直接消費者価格に響かないかもしれませんけれども、二次的、三次的な品物であるかもしれませんが、結局はやはり消費者価格に響いて来まして、インフレを助長すると同時に、国民生活は脅かされる。また海外貿易においては、やはり申し上げたように三百六十円のレートが保てなくなる一つの原因になると思うのですが、この二点について運輸大臣の御信念を伺いたいと思います。
  45. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま米窪君の御説ですが、前提が私どもとまつたく異なつているように思われるのであります。三百六十円の為替レートが全然破壊しているというような事柄は、私は毛頭信じないのでありまして、現在はいろいろな点におきまして十分ではございませんが、ともかくもインフレは高進の速度をまずゆるめて、むしろデフレイトしている。つまりディス・インフレの方向に向つておると私は信じておるのであります。元来インフレーシヨンが高進しておりまするときには、いかなる微細な政策でも、少しでも物価に影響を與えるというような種類の政策は、とつては相ならぬのでありまするが、今日はようやくこのインフレの速度が鈍りまして、かつ各種の産業界並びに国民消費大衆におきましても、それぞれのいわゆる耐乏経済というような点に対しまして、相当の鍛練ができて参つておる次第であります。そこへもつて参りましで、由来運賃なるものが、正当の運賃である場合には、政府はほかに財源を求めまして、これを値上げするというようなことは考えないのでありますが、大体米窪君御承知の通り、貨物運賃というものは、コストを償つておらぬ。大体においてコストの四八%しか、平均において貨物運賃は徴収されておらない。非常にびつこになつておりまして、そういう意味合いにおきまして、やはりこれをアジャストいたしますとするならば、国民経済が今ダウンウアーズテンデンシーをとつておる最もいいときで、しかも運賃がコストをカバーしないということは、助成金を與えておると同じような作用をなしておるのでありますから、御承知の一連の経済政策が、助成金というようなものは全部これを撤廃するということを今やつておるときでございますので、なるほど現在のものを八割上げるのでありまするから、多少の微細な響きはあるかもしれませんが、私はそれは国民消費経済の中で十分吸收し得る。決してこれが為替相場三百六十円の破綻のもとになるとかいうことは、私は考えておらぬのであります。
  46. 米窪滿亮

    米窪委員 対外的の問題については、三百六十円のべースをいかに内閣が堅持すると言われても、堅持せられておらぬ。また将来これがこわれて行くという見通しと、運輸大臣がそれをそう考えないということは、結局見解の相違でありますが、私が先ほど運輸大臣お尋ねした国内的の問題、すなわちこれは消費者価格が上つて、インフレを誘発することになりますと同時に、国民の家計費に相当響いて来るという点、この点についての御説明がない。
  47. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 それは大体日本の経済が最も平常な時代であると考えられまする昭和十一年の場合を考えて見まするのに、各種の商品、とりわけそのうちで鉄道が運送いたしておりまする主要なる二十六品目について統計をとつて申しますると、昭和十一年度におきましては、二十六品目の商品の中に含まれておる運賃の割合が四・六%になつておるのであります。しかるに現在はこれが二・三%にすぎないのであります。そうしてこれを八割値上げいたしましても、四・一%にすぎないので、ちようど健全な経済状態昭和十一年の割合と比較しまして、十一年の数字の四・六%に対して、今回八割値上げをいたしましても、四・一%ですから、まだこのバランスは十分とれておるというふうに考えられると存じます。なかんづく米窪君御指摘のごとく、硫化鉱その他の分は、ただいま石井政府委員の御説明通り、これは第一次の商品でありまして、これが国民生活にまわつて来る間には、たとえば硫化鉱が硫酸になり、その硫酸がいろいろな化学製品になり、その製品がまた最後の消費物資にかわるというような二段、三段、四段の階梯を経て、最後に国民生活に滲透して参るというわけで、私はその影響は絶無であるとは申しませんが、このくらいの程度は十分に国民消費経済で吸收し得ると考えておる次第でございます。
  48. 米窪滿亮

    米窪委員 今回の鉄道運賃の値上げによつて、大体物価に影響を與えないというだけのお話で、私が冒頭にお願いした、何らわれわれの納得するような資料というものが御提供がないので、これ以上はやはり見解の相違ということになるのでございますから、私の質問は他の点に移つて行きたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、この春鉄道旅客運賃を上げたときの説明をわれわれは思い起すのですが、先ほど貨物運賃の値上げについて關谷委員からその理由お尋ねになつたのに対して、約四点ばかりの理由をあげられております。しかし一番おもな理由は、やはり日本鉄道公社の独立採算性において赤字が出て、穴があくのを埋めようというのが、最大の理由であると思う。そこでこの春の旅客の運賃の場合においても、やはり当時あつた赤字を埋めるために六割の値上げをしたのですが、当然運輸当局は歩どまりの点をお考えになつて、六割でカバーできると思つたのが、いわゆる收益逓減税が現実に現れて来て、旅客の運賃をせつかく上げたけれども運賃増額が予想通り行かなかつたということで、これが依然として残されて、その結果貨物運賃八割値上げというところに来たのではないがと私は思います。そうすると、今年の春の旅客運賃でわれわれが味わつたその苦しい経験を、再び繰返すおそれが全然ないと思われるのか。歩どまりはどの程度に考えて八割ということにしたのか。その辺のところをお伺いします。
  49. 石井昭正

    ○石井政府委員 旅客運賃の値上げに伴う利用減の見方につきまして錯誤をいたしたために、今日こういうような状態になつたのだというおしかりでございますが、当時の旅客運賃は、これはいろいろの事情もありましたが、御承知のようにあるべき姿に対しまして、多少上まわつているというような上げ方をいたしたわけでございます。今回の貨物運賃の是正は、非常に低い水準にありますものを、あるべき水準、あるいは多少それに下まわる程度のところにとどめるのでございますので、これによりまして海運あるいは自動車というような各種の輸送機関との間の調和というものは、自然の姿に返るのじやないかと思うのであります。その程度におきまして、現在鉄道で背負つておりますところの貨物輸送の幾分かは、こういうほかの運輸機関に転化するということは考えなければならぬと思つているのでございます。輸送の需要そのものにつきましては、私ども日本経済が安定期に向いまして、今後ますます生産が増加する。またそうしなければならないものと信じておりますので、大体におきまして貨物の輸送需要そのものが減少するということは考えておりません。従いまして本年あるいは明年度に対します貨物運賃の値上げによる影響は、輸送分野が正常化することに伴うところの歩どまりと申しますか、利用減はある程度やむを得ないものと考えておりまして、それは大体大まかに見てまず三%程度の減があると考えるのでございますが、しかしながらこれは現在の数量に対して三%でございますから、多少生産等が増加いたしますことを念頭に置きますと、大体五%ぐらい減ると考えたと同じ結論になるのではないかと思うのであります。
  50. 米窪滿亮

    米窪委員 ただいま私どものところへも来ているのですが、おそらく内閣の方にも與党の方にも来ていると思います。この鉄道貨物運賃値上げに付随して起つて来る業者の陳情は、各品目ごとに等級の引下げを盛んに言つて来る。仄聞するところによると、政府の間においても、與党の民自党の間においても、各品目ごとの等級引下げをどう取扱うかということが、この問題に関連しての最大の政治問題になつているということであります。結局そのうちの一部でも——全部とは言わないでしようが、大多数がもし引下げをしなければならないという政治情勢というものを加味するということになれば、この八割値上げというところの根本のべースはくずれて来る。そういう陳情をもし政府当局なりあるいは與党当局が聞くならば、八割値上げというものは根本的に乱れてしまつて、あるいは五割になり、あるいは六割になるということが起つて来るのでありまして、運輸当局はそういつた陳情に対しては、この法案編成後の責任の立場において、それは聞き入れられない。どうしても聞くことができないと考えるか。あるいは考え直すというお考えであるか。この辺のところを運輸大臣お尋ねします。
  51. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま米窪委員の仰せられたような点があることは、私も存じております。つきましてはこの法案は御審議、御可決を願いまして、さらに運賃に関しまする等級の点は、なるほど等級作成がずつと以前にかかりますので、あるいは多少かれこれの比率権衡というような点、あるいはあるものの等級自体について、多少妥当を欠くようなものがあるかもしれませんので、これを全面的に検討する用意を持つておる次第でございますから、その検討の結果に従つて成案ができますれば、来年度四月一日から新等級表に従つて、かれこれ調節いたす考えをいたしております。
  52. 米窪滿亮

    米窪委員 先日各業者が陳情に参つたときに、たとえば木材の運賃の値上げに対する木材業者の陳情が来たときに、私もその陳情団に会つた。民主自由党の方もいた。私は名前を言いませんが、相当有力な人が行つてつた。その人は、等級の変更という陳情に対しては相当わが党も考慮している。従つてこの法案は八割値上げ、あるけれども、そういうことを考慮すると、実質的には四割になるから、君ら心配する必要はないじやないかということを言つている。そうだとすれば、この基準に基いて出た八割値上げという法案が、根本からくずれて来ると思うのですが、そういう考え方は誤りであると運輸大臣はお考えになるのか。その点を確めたいと思います。
  53. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 本年度はともかくといたしまして、来年度は等級のアンバランスを直す用意は持つておるのであります。
  54. 米窪滿亮

    米窪委員 はなはだ含みのある大臣の御答弁でございました。来年になるとどうなるかわかりませんが、ともかくも本年は総体的に平均して八割の値上げという御意見を、堅持して行かれるお考えであると了承してよろしゆうございますか。
  55. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 本年度は原則的にはこの八割を堅持いたして行きたいと思つております。
  56. 米窪滿亮

    米窪委員 そうすると等級の引下げということは一月一日と仄聞しておりますが、一月一日から実施される値上げに対しては、少くとも今年度内においては、そういう陳情があつても聞き入れられない。こう翻訳して考えたらよろしいですか。
  57. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 それはただいま何とも申し上げられません。
  58. 米窪滿亮

    米窪委員 はなはだ不満足でありますが、さらに別の点からお尋ねいたします。先ほど申し上げた通り運賃の八割値上げというものの理由は幾つもあるでしようが、おもなるものはいわゆる日本国有鉄道の独立採算性を保つということにあると思うのです。そこでお尋ねしたい点は、九十億赤字があるから、歩どまりを考慮して八割上げるというような考え方でなしに、もつとほかに経費の節約であるとか何とかして、今の運営面から余裕が出るのじやないか。先ほども局長から運営の合理化ということを言われており、再々運輸当局から伺つておる御意見ですが、今まで何らわれわれの納得するような点において実現されておらない。たとえば入札の場合におけるトンネル会社あるいは指定会社が、不労の所得をとつておるものが、運輸省に付随してたくさんあることは天下周知のことです。なぜそれにメスを加えないか。そういうところからいわゆる運営費、行政費の節約分が出て来るのに、そういう点は口では言つてつても、よく行われておらぬ。これに対して御当局は現在どういう手を持つておるか。また今後はどういう方針でございますか。この点をお伺いしたい。
  59. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 今回八十数億の赤字が出ましたのは、旅客運賃收入の逓減の法則がきつく響いたという点が、最も大きな原因でございますが、赤字が出放しのままでよいというものではありませんので、努めて国鉄の運営の合理化をはからしておるのであります。その合理化の目標といたしまして、まず一番に最近足しになりましたのが、石炭統制の撤廃で石炭公団というものが廃止になりました結果、十二、三億の節約ができたと考えられております。なおまたこの鉄道の在来のいろいろな車両の修繕は外注をいたしておりましたが、これもほとんどこのコーポレーシヨン内の工場でできるものは、それを引上げて手前料理で修繕いたすというように切りかえたというようなこと、それからまた石炭のカロリーが当初予算で出したものよりも上昇して、石炭の節約というような点に大分改善の余地が認められたこと、また日本通運あたりに仕事を請負わしておりました面を鉄道自体に回收いたしまして、これも手前料理でまかなうというぐあいにいたしまして、いろいろな能率化をはからせておりますが、今回は八十六億円ほどの赤字が結局出て参つたということで、まことにこの点は私といたしましても遺憾でありますが、今回大体八割値上げをいたしまして、将来はさらに進んで米窪君御指摘のような方面にも、まだまだ整理の余地があるように考えますので、引続いて能率化をいたしまして、再び赤字が出たら、ただちに運賃でこれを收拾するようなことは一つもないように、十分留意いたすつもりでおります。
  60. 米窪滿亮

    米窪委員 繰返して申し上げるようですが、日本の各方面において——必ずしも全部とは言いませんが、一番そういう弊害の多いのは、従来は鉄道係が多かつたと思う。すなわちそれどういう弊害かというと、表面は競争入札の形をとつておりながら、実は談合をして、一種の指名入札にひとしいことになつている結果は、その間相当の不労な手数料をとる。いわゆる一次的な引受者がとつて、それを下請負をさせる。下請負も二次的、三次的にわたつて行くということになり、結局はほんとうのコストに手数料が加わつている。こういう契約が行われておるのでありまして、この点、先ほど運輸大臣の御答弁の中になかつた実例をあげろと言われれば、私あげてもよいのでありますが、この際ですから実例をあげません。この点はすでに運輸大臣お聞きの点だと思います。そういう点を今後は係の者に命じて、絶対にさせないという御言明をこの際得たいと思います。
  61. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 在来の鉄道のいろいろな物品購入ないし建設面における方式が、必ずしも完全で公正であるとは申しがたいことがあつたかもれませんが、昨今は御承知の通りこの請負の点にいたしましても、あるいは物品の購入にいたしましても、いわゆるオープン・ビッドという方式にこれを切りかえまして、たくさんのものに公告をいたしまして、自由な競争のチャンスを與え、その中から高入札をいたしまして公正にきめることにいたしましたので、在来の米建君御心配のような弊害は、ほとんど一掃できると考えている次第でございます。
  62. 米窪滿亮

    米窪委員 最後にお尋ねしたい点は、多分私の質問に対して反対の御答弁があると思いますが、従業員の方面においては、この八割値上りが、旅客運賃の場合と違つて、確実に予定通りつた場合においては、当然給與ベースを引上げてもらいたいという要求を出そうという機運があります。大体それは今度の値上げのうちに、そういう給與べースの値上げということをお考えになつておるのかおらないのか、その点を——多分これは考えておらぬという御答弁があると思いますが、一応御質問申し上げます。
  63. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 米窪君御想像の通りで、考えておらぬのでございます。
  64. 米窪滿亮

    米窪委員 質問を保留して、大臣に対する質問をこれで終ります。
  65. 關谷勝利

    關谷委員長代理 暫時休憩をいたしまして、午後に参考人を呼びまして、本法案に対しまする意見を聞くことになつておりまするので、午後一時に時間を厳守して御参集願います。  休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  66. 稻田直道

    稻田委員長 これより再開いたします。  午前に引続き、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対する審査を進めて参りたいと思いますが、これから先般の委員会において決定いたしました通り、ここにおいでを願いました各階層の方方より、本案に対する御意見を承ることにいたします。  この機会に簡單にごあいさつを申し上げます。御承知の通り本案は国鉄の貨物運賃を八割値上げしようとするものでありまして、これによつて国鉄の收支の均衡をはかり、輸送力の維持増強に必要な経費をまかなおうとしております。この値上げに対しまする当局の見解といたしましては、現段階の社会経済の状況から見まして、消費者価格に影響する所も僅少であり、また海上運賃はこの鉄道貨物運賃値上げによつて、採算ベースに基ずく自由運賃形態に到達することが期待され、海陸の調整は十分その目的を達し得ることとなるものと考えておるようであります。しかしながら国鉄は物資の移動の大動脈をなすものでありまして、まことに経済の基盤をなしております。従いましてこの運賃への値上げが、はたして当局の予想するがごときものであるかどうか。すなわち国民の消費生活に與える影響が僅少であるか。あるいはまた海陸運賃の調整が実現できるか。さらには各種企業の経営が現在以上に惡化することなきか等々の諸問題につきまして、各位の多年にわたる研究と経験に基ずく貴重なる御意見の御発表を通して、関係各業者、いな全国民の声を聞き、本案審査の愼重を期することにいたした次第でございます。私はここに本委員会を代表いたしまして、本日御出席くださいました参考人各位に対しまして、深甚なる謝意を表しますとともに、本案に対する率直公明なる御意見を述べていただくことをお願いする次第であります。  なおこの際念のため参考人の方方に申し上げますが、参考人の各位の発言は、公聽会における公述人に準じまして、委員長の許可を得ること、またその発言は、意見を聞こうとする事件の範囲を越えてはならないことになつております。また委員は参考人に対し質疑はできますが、参考人より委員に対する質疑はできないことになつておりますので、念のため申し上げておきます。  それではこれより御意見を承ることにいたしますが、時間の関係から、参考人一人当りの発言は大体十五分以内といたし、一応全部の御意見の陳述が終つたあとで、委員各位の参考人諸氏に対する質疑を行うことにいたします。  それでは参考人の方々を順次御紹介申し上げます。まず初めに船主協会理事長代理淺尾新甫君。
  67. 淺尾新甫

    ○淺尾参考人 私の意見はごく端的に申し上げます。まず第一に、国有鉄道自体の立場から見て、八割値上げが妥当であるかどうかという点、それから第二といたしましては、競争関係にある船会社ないし私鉄に対していかなる影響があるか。この二つの点から申し上げて見たいと思います。  第一の点の国有鉄道自体から見まして、国有鉄道は今後独立採算制を実施すべきであるという点につきましては、これは当然でありまして、独立採算制がはたして今度の八割の値上げでできるかどうかという点であります。私運輸審議会の公聽会において述べましたが、八割値上げではまだ不十分であるという意見であります。と申しますことは、国有鉄道が従来一つの企業体としてやつてつておらなかつたのであります。これを一つの企業体として今後完全に経営して参りまするには、償却の面に相当な考え方を入れなければならない。それから従来保険等において、これは国有財産でありますから、保険にかけておらなかつたのでありますが、その保険料を見積るベき申し上げまして、かつまた貨物運賃が御承知の通りコストを割つた運賃であるということ、こういうふうな点から考えまして、八割値上げではなお足りない。少くとも九割の値上げにすべきである。こういう意見であります。しからばこの九割の値上げによつて、物価にいかなる影響があるかと申し上げますと、かりに九割値上げいたしましても、大体物価に対する影響は二%ないし三%である。こういうことでありまして、戰前の運賃が物価に対していかなる割合いであつたかと申し上げますと、これは四%以上になつてつたのであります。でありますから、国有鉄道を完全な独立採算制企業体として見て参りまするには、どうしても八割以上の値上げを必要とする。これが私の意見であります。  次に競争関係にある産業に対して、いかなる影響があるかと申しますと、国有鉄道の運賃は、私企業として考えまするならば、国有鉄道におきましては、これは税金はかかつておりません。一方これと競争関係にある船会社あるいは私鉄におきましては、非常な税金の負担をこうむつておる。そういう税金を拂いながら、同じく輸送の立場におりますから、これを公平な立場に見ますならば、国有鉄道の方がよけいの運賃をとつても、ちようど調整ができるわけでありますが、国有鉄道におきましては、またこれを完全な一つの私企業と見るには不適当な点もありますから、その点は考慮の外におきまして、少くとも競争関係におけるある企業体をも、ともに立ち得させるような運賃を制定してもらわなければ、競うむる。こういう結果になるのであります。そこで国有鉄道の貨物運賃を八割値上げするときに、海上運賃は九割三分という案になつたのでありますが、九割三分という数字をはじきまして、それではたして採算が立ち得るかどうかという点については、なお多くの危惧があるのであります。と申し上げますことは、九割三分の海上運賃を値上げいたしまするのは、石炭の原価を現在よりも一五%も安く見積るし、それからまだ修繕費その他においても三割減ということにそろばんをとりまして、そうしてやつと九割三分の値上げで国有鉄道とつり合いがとれるというような結論になつたのであります。ところが石炭の値下りを一五%見得るというようなことは、六千カロリー以上の石炭におきましては、これはなかなかむずかしいことであるし、修繕費を現在よりも三割以上も減らすということは、これもまたはなはだむずかしい問題であります。さようなわけ合いでありますから、海上運賃におきまして九割三分値上げいたしましても、採算点に達することはなかなかむずかしい。こういう結論に立ち至るのであります。私鉄につきましては、私詳細な数字は持ち合せませんが、おそらく同様なことが言えるのではないかと考えております。そういう意味合いにおきまして、国有鉄道の今般の八割の値上げというものは、これは最少限であります。私ども希望するところは、むしろ運輸審議会において決定した九割値上げを支持するものでございます。冒頭申し上げましたように、私はただ結論的にごく端的に意見を陳述いたしまして、お答えいたしたいと存じます。
  68. 稻田直道

    稻田委員長 次は日本トラック協会事務局長森田賢君にお願いいたします。
  69. 森田賢

    ○森田参考人 国鉄運賃の値上げについては、第一、国鉄運賃と物価との関係、第二、国鉄運賃の旅客と貨物との調整、第三、陸上輸送と海上輸送における運賃の調整、第四、陸上輸送における鉄道輸送とトラック輸送との運賃の調整、これらの点が検討さるべきだと思います。第一、第二、第三の点につきましては、それぞれこれら関係の方々の御意見に譲ることといたしまして、私はトラック輸送事業者の立場から、第四の陸上輸送における鉄道輸送とトラック運賃の調整について意見を申し上げます。  トラック輸送の輸送量の問題でありますが、本年度の輸送計画量は二億一千五百万円であり、経済情勢の変転、特に有効需要の減少に伴う物資生産計画の改訂を考慮いたしましても、これを大巾に下まわるとは考えられません。そこで鉄道運賃の八〇%の値上げを見ました場合に、鉄道貨物の距離にいたしまして、貸切り貨物、すなわち車扱いでありますが、これは五十キロ圏内、小口貨物にいたしまして、百キロ口圏内のものが、トラックに転移されるものと予想されるのであります。この数量は、私ども調査によりますと、年間約三百五十万トン程度と推定されるのでございます。  次に鉄道とトラック運賃との関連でありますが、車扱いによるトラックと鉄道との現行運賃の比較につき一例をあげますれば、一トンの荷物を三十二キロ輸送する場合に、トラックは五百十四円、鉄道は五百八十三円五十銭になります。さらに一トンにつき三十六キロ輸送する場合には、トラックは五百六十円に対しまして、鉄道は三十二キロの場合と同じく五百八十三円五十銭であります。現行運賃においては、三十六キロが運賃面より見た輸送分野の限界でありまして、三十六キロ以内においてトラツク運賃の方が安くなつております。改正運賃は、八〇%の値上げを見ました場合に、この限界は五級品で四十キロメーター、三級品で四十四キロメーター伸びることとなります。さらに貨物等級の格下げを考慮いたしますならば、おおむね五十キロ圏内まではトラツクの方が安くつくということになります。  次に小口扱いの方では、小口扱いによるトラツクと鉄道との貨物運賃比較に関するトラツクの輸送に依存すべき分野は、現行運賃については、三十キログラムの荷物を六千キロ輸送する場合、四十キログラムの貨物を三十キロ輸送する場合、大十キログラムの貨物を十キロ輸送する場合が、運賃面より見てトラックが安くなるという限界であります。改正運賃においては、六十キログラムの荷物と百二十キロ、七十キログラムの場合六十キロの輸送がその限界となり、さらに鉄道運賃の取扱い料を含んだ場合を比較するならば、六十キロの限界がさらに八十キロまで伸びることとなります。言いかえますれば、現行鉄道運賃が八〇%増の運賃改正を実施された場合、現行トラック運賃面と比較した限界が、三十キログラムの貨物において六十キロから百五十キロヘ、六十キログラムの貨物は三十キロから百二十キロへそれぞれ伸長されることになります。さらに取扱い料を含んだ場合は、六十キログラムの貨物は百五十キロまで、伸びる結果、小おむね現行の四十キロの限界が百キロ扱いはお程度まで、トラックの方が安くなるという結果になります。それゆえ鉄道運賃八〇%増の改訂によりまして、トラックの小品扱いの分は、車扱いの分よりも距離において大きく伸びます。トラック運賃昭和二十二年十二月にトラック実働一日一車当りの経費実績が二千九百円となりまして、これに基きまして当時一日車当り九百円であつた認可運賃の改訂を要望したのでありますが、昭和二十三年六月になりまして鉄道運賃の二十五割の値上げのとき、トラックは十五割増しの一日一車二千二百五十円に原価を割つて認可されております。爾来トラックはサービスの向上、諸資材の愛護、経費の節約、人件費の節減等、企業維持のために極端な合理化に努めて来たのであが、その後地方税法が改正され、今後ります運賃を改正した場合は、損益にかかわりなく、外形標準で運輸收入の二・四%になりますが、これが課税されることとなり、現行の車税負担額の四割五分を占めておりますガソリン税が実施されており、ガソリン、油脂、タイヤ、車両等諸価格の値上り、道路損傷負担金、道路改修協力費等の、自動車に特別課せられておる公課並びに一般諸税の改正累加、さらに帳簿価格に基く不合理の現行車両償却制度等の点からいたしまして、当然トラック運賃は値上げを必要とする段階に来ております。しかしながら一方陸上輸送における鉄道と自動車との貨物運賃面より考察いたしますれば、輸送分野の見地から遠距離は鉄道に、近距離はトラックの根本方針が立てられ、政府において国鉄輸送量の八・五%、それから都市中心の私鉄一五%の貨物は、それぞれトラックに転移せしめる計画が策定されました。昨年十一月から六大都市を中心に、また本年三月から全国地域に、それぞれ実施されることになりましたが、その成果からかんがみまして、これを行うためには鉄道近距離貨物の受託の停止、近距離貨物輸送における鉄道とトラックとの運賃の調整、資材の裏づけ等が強く要請されるのでありますが、近距離鉄道貨物の受託の停止という問題に関しましては、行政措置が種々の点から困難でありまして、ただちに実施はむずかしいと思います。  第二の近距離における鉄道とトラックとの運賃の調整については、今回の鉄道運賃八割値上げに関連して、トラツク運賃をかりに値上げせず、このままとして鉄道運賃改訂額と比較して先ほど申しましたように、車扱いにおいて五十キロ、小口扱いにおいて百キロ程度の取扱いが、トラックに転移するものと思われる。この三百五十万トンの貨物の流れに期待をかけておるものであります。結論といたしまして、陸上輸送の総合的調整については、つとに諸外国においても研究され、すでに実施されておるところであり、わが国においては終戰後ただちにこれに着手されておるところでありますが、鉄道近距離貨物のトラック転移に不可欠の條件である運賃の調整を行うために、鉄道運賃については近距離を高くしてもらわなければならない。従いまして今回の鉄道運賃八割値上げはやむを得ないものと考えるのであります。
  70. 稻田直道

    稻田委員長 次は日本石炭協会理事長代理、天日光一君を御紹介いたします。
  71. 天日光一

    ○天日参考人 秋は石炭生産業者の側から見ました本問題に対する意見を申し上げたいと存じます。申すまでもなく石炭生産業者は輸送機関の利用者側でありますから、もとより運賃の引上げのないことを望み、また引上げやむを得ずといたしましても、その率の低からんことを希望いたすわけであります。またもしも予算その他の関係から、今回の引上げ率が動かしがたいものでありましたならば、そのわくといいますか、その引上げ率の適用の細部の点におきまして、遠距離逓減なり、あるいは石炭に対する運賃の等級の調整をお願いいたしたい。かような結論を持つておるわけであります。  少しく事情をつけ加えて申し上げますると、かように考えておるわけであります。国鉄は元来公益事業の一つでありまするから、公共的政策に沿つて運営されなければならない。これがわが国の主要鉄道が国有鉄道となつている大きな理由の一つであろうと考えるものであります。従いまして運賃を決定いたすにあたりましても、單に鉄道の経理の面からのみ決定さるべきではなくて、公共的の政策の必要に沿うことを、十分に考慮されなければならないというふうに考えるわけであります。運賃は、輸送原価のほかに、負担能力とか、その他一般物価問題にも重点を置いて決定されねばならないというふうに考えておる次第であります。かような事情からいたしまして、従来長い間わが国の貨物運賃というものは、政策運賃であつたということが、すなわち産業、経済上からの必要を裏づけしておつて、それに沿うように運営されて参つて来たというふうに考えておるわけであります。運賃がそれぞれの旅客なり貨物なりの輸送原価を割らないことは望ましいのでありますけれども、必ずしもわが国の例のみでなくても、アメリカあたりの例を聞きましても、アメリカの鉄道は日本とは逆に、旅客運賃がむしろ輸送費を割つておると聞いております。いずれの国におきましても、それぞれの国の事情から、運賃が單に輸送原価という線のみでなしに、決定されておるというふうに考えるわけであります。  まず物価面に対する影響でありまするけれども、石炭価格の中に占めます運賃の割合は、鉄道の方の御調査によりますと、三千三百四十四円八十六銭の石炭の値段に対しまして、平均百六十一円という数字をお出しになつてつたように拜見いたすのでありますが、やや低く出ておるきらいがあるというふうに考えるわけでありまして、公団の諸掛り等から算出した数字が、百八十円八十七銭というような数字が出るのでありまして、従つて運賃割合が四・八というふうに出ておりますけれども、少しく上つて五・四程度であろうかと考えます。また石炭の費用が各種の品物の生産者価格の中で、どのくらいの割合を占めておるかと申しますと、昨年あたりの情勢であつたかと思うのでありますけれども、銑鉄につきましては三三%台、石灰窒素につきましては三三%強、セメントの生産者価格のうちで石炭価格の占めますものは七八%強、カーバイトで三九%、また人絹等に至りますと十四%強というような程度に当つておろうかと思うのであります。かようなわけでありますので、石炭の価格が、運賃が値上りいたして参りますと、各種の生産物資につきまして、かなりの影響があるのでありまして、この点につきましては国鉄関係の方の御説明によりますると、その影響はさほどのことではないというふうな御見解のようでありまするけれども、必ずしもそれほどではないというふうに片づけ得られるかどうか、疑問であろうと思うのであります。なお今春旅客運賃が引上げになりました際にも、当時の大屋運輸大臣が国会におきまして、日本経済自立のために要求されている経済九原則の根底には、現行の物価水準を維持するということが強く要請されておるのであつて、そのために、この際は物価に影響を及ぼすおそれのある貨物運賃の改訂は、見合せたのであるというような、公式の言明があるのであります。その当時から半歳余を過したにすぎないのでありますが、この物価水準維持という原則が、必ずしも変改を見ていないというふうに考えますと、この際貨物運賃を大巾に上げるということが、物価政策の面から行きまして、はたしていかがであろうかと考えるわけであります。  なお企業といたしましては、独立採算制はもとよりさもあるべき姿でありまするから、国鉄が独立採算制を必要といたしますことは、あえて国民の一人として、何人も異論のなかるべきことであると思うのでありますけれども、ただ長年の政策運賃から、一挙に輸送原価をカバーするという線に移行いたします際に、その客観的情勢なり、周囲の事情を十分に組み入れなければ妥当ではあるまい、かように考えるのであります。  以上は、ごく骨子を申し上げたのでありますけれども、昨年あたりの数字によりますると、鉄道の輸送貨物のうちの二七%強は石炭であります。非常に大量のものでありますので、至大の関係を石炭業者としても持つておるわけでありますが、今回もしも八割引上げになりましたならば、それを消費者に転嫁できるであろうかどうかという問題でありますけれども、それは去る九月十五日配炭公団が解散になりましたあとの情勢を受けまして、とてもこの運賃値上り部分を消費者に転嫁するということは、とうていできない情勢であります。転嫁できないとすれば、しからば生産業者がそれを全部吸收できるであろうか。吸收することはある面から申しましたならば望ましいし、また努めなくちやならぬ点もあるのでありますけれども、現在の石炭生産事業といたしましては、幾多合理化の段階にありまして、努力は傾倒いたしておりますけれども、これらのものをすべて石炭生産事業自体の中において吸收できるかというと、とうていその力は現在ないのであります。従つて全部消費者に転嫁もできなければ、また全部を生産業者自体が合理化によつて吸收することはできないというジレンマに陷るわけなのであります。かような事情からいたしまして、冒頭に結論的に申し上げましたような考えを持つておるわけであります。願わくは、この八割の引上げがいろいろな事情からいたしまして避けがたいものといたしますならば、どうぞ遠距離逓減の方途をもつと強化していただくなり、また等級の調節をお願いしたいと思うのであります。  なお最後にちよつと申し上げますと、配炭公団がなくなりましたあと、石炭の足といいますか、輸送距離が非常に伸びて参つておることを、特に御注意願いたいと思うのであります。石炭の輸送距離につきましては、国鉄のお調べにもございますが、昭和十一年度におきましては平均七十七・四キロでありましたが、二十三年度におきましては百十四・七キロになつております。概見して二倍近くの線まで足が伸びておるわけであります。というのは、長距離輸送が多くなつて来ておるということであります。なお配炭公団がなくなりましたあと、非常に遠くまで輸送されるということが強くなつてつておるわけであります。それから銘柄に対する要求が当然のこととして、強まつておるわけであります。なお配炭公団がありました際は、御承知の通り運賃をプールいたしておつたのでありますが、配炭公団解散後、運賃プール制度がなくなりましたから、遠くに動く炭は、それだけ長い路離に対する運賃を持たねばならないという実情に相なつてつておるわけであります。その一例といたしまして、たとえばよく問題になりますが、ごく卑近な例をとつて申しますると、山口地区における無煙炭の中で、東京方面に輸送されますものが、無煙炭の生産の四八%くらいになつております。大阪方面に二六%というふうな数字が出ております。ごく近い、つまり地元で使われるものは非常に少いのであります。これは一つの例でありますが、かように遠くまで運ばれるという事情に応じて、石炭が動いて行くということは、ここに運賃の問題を非常に強く感ずることを申し上げたのであります。無煙炭なども、他の豆炭、煉炭というようなものとの間に等級を十分に考えて、御調整願いたいという希望を持つておるわけであります。  非常にまとまりませんでしたが、骨子だけを申し上げた次第であります。
  72. 稻田直道

    稻田委員長 次は国鉄労働組合本部中央執行副委員長の菊川孝夫君を御紹介いたします。
  73. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 私国鉄の労働組合を代表いたしまして、今度の運賃改正の問題について意見を申し上げたいと存じます。私の申し上げる意見は、おそらく国鉄の労働組合の大多数がこういう意見であるということを、確信を持つて申し上げられると思います。本日申し上げまする証言は、来る十二月八、九両日開かれまする中央委員会におきまして、私はこういう証言をしたということを報告いたしまして、その承認を求めるつもりで、それだけの確信を持つて申し上げたいと思います。  結論といたしまして、まず第一番に今回の八割値上げの問題は、好ましくないものであるけれども、現在の段階においてはやむを得ない処置として賛成せざるを得ない、かように考えるものであります。と申しますのは、運賃論につきましては、原則論的に振りまわし出しますると、あるいは受益者負担がよいのである。あるいは国家負担にするのがよいのだということで、いろいろ論争の的になると思いますが、われわれといたしましては、理想論としては国家の負担にすることが正しいと思い、それを主張するものであります。そういう社会が一日も早く来るようにわれわれは主張して、闘争を続けて行きたい、かように考えておる次第であります。その観点からいたしまするならば、できる限り現在の運賃を低位なものにしておきまして、採算割れの一部分一般会計から繰入れられることが、最も好ましいことと考えております。しかしながら現在の国の経済を考えまするときに、そうした余力はむしろ六・三制の完全実施とか、あるいは社会保障、失業対策事業の方に振り向けられて、戰争の影響によつて非常にいたんだとはいいながら、どうにかまわつて行けるという国有鉄道は、まず独立採算制をとらざるを得ないのではないかと考えます。そういう点からいたしましても、今回の運賃値上げはやむを得ない処置として認めざるを得ない、かように考えるものであります。また国鉄予算の面から考えましても、本年度の当初に承認されました国鉄予算そのものは、私たちの考え方からいたしまするならば、これはどうしてもむりであつた。最初に運賃値上げをされる際にも、旅客運賃の値上げをされるよりも、むしろ貨物運賃について再検討さるべきであるということを、われわれは主張して参つたのであります。しかるにもかかわらず、国会におきましては貨物運賃の値上げは認められずに、旅客の方にこれを振り向けられたことは、私たち遺憾に思つておりました。しかし幸い今回貨物運賃の調整という問題が論議されるということにつきましては、一応いい傾向だと考えておる次第であります。そこで旅客運賃については、これ以上の負担力はない。どうしても私は旅客運賃についてはある程度下げるベきであると考えております。なぜかと申しますと、運賃値上げをいたしまして以来、利用者側からいたしますならば楽になつたとおつしやるかもしれませんが、非常にすいた車がたくさんになつて、特に高級車についてはすいて参つておるのでありまするが、これは高級車を廃止すればいいのであつて、われわれは何も高級車の値下げをせよというような主張にくみするものではありません。しかしながらそういうふうな状態だから、限度をついておるということだけは、常識に認めざるを得ない。私たち駅に勤務しておりましても、すいたがらがらの車が走つておることは、実に情ないような気がいたします。実際問題として国鉄の従事員として、すし詰めになつておる車をながめて、これはけつこうだというふうには毛頭考えておりません。一応座席に皆さんがおかけになつて、大体において満ちておるという状態が一番いいと思いますが、そういう状態になつていない。がらがらの車が走つておるのはさびしい気持が起つておるわけであります。そこで旅客運賃については、定期を除いては一応輸送の原価を多少しまつております。ただいま表をもらいましたが、これを見るまでもなく、われわれの方で検討しても多少上まわつております。しかしながら貨物運賃が、輸送すればするほど赤字が出ておるということは、これは運輸省当局あるいは国有鉄道当局が調査いたしましても、そういう結果が出ておりまするし、私たち組合側から調査いたしましても、やはり貨物運賃が、貨物を輸送すればするほど赤字が出ておる。しかもこの赤字を單に国鉄の労働生産性ばかりに押しつけられることになると、すぐ人が多過ぎるとかいうので、労働の生産性を強調され、しかもこれは運賃値上げをこのままされずに、一般会計の繰入れもされないままにやつておかれると、ますます労働の生産性、労働の生産性といつて押しつけられて来まして、特に法的に労働運動は遺憾ながら制約を受けておるこの一段階におきまして、非常に労働組合としては窮地に追い込められ、闘いをやろうとすればすぐ法律だ何だといつて、締められてしまう。こういう段階におきましては、むしろ以上のような考え方からいたしまして、一応やむを得ざるものと考えておる次第であります。  次に、この表にも示されておりますように、昭和十一年との対比からいたしましても、八割値上げをされたあかつきにおきましても、あの昭和十一年の水準に早くもどそうという努力から考えましても、まだまだ余力はあるのじやないか。この表を眺めましても、われわれから調査いたしましても、たとえばきわめて常識的に、従来名古屋から東京へ参りますために、われわれ農民の子弟といたしまして、米を何升売つて東京へ来られたという、採算制をほんとに常識的に考えましても、現在米をどれだけ売つて東京へ来れるかという旅客運賃との対比を、われわれ一応闘争の時代に、今の運賃がどうだということを数学的に示しまして、絵を描いて出して見たのですが、米だとか、なすだとか、そういう野菜ものとの比較をいたしましても、私は八割はそういう点から考えてもちよつと認めざる得ないじやないか。ただここで遺憾なことは復金債の償還のというようなものが、あまりにも多く本年度予算の中に見積られておつて、むしろそういうものを社会保障だとか、失業救済事業に振り向けられずに、われわれが運賃の値上げによつて生ずるところの余力というものは、そういう方に向けらるべきものであるというふうなことを主張するにもかかわらず、そうでなしに、復金債の償還というものに充てられているということについては、きわめて遺憾でありますけれども、この点については、どうか議員諸公の来年度予算の審議にあたりましても、十分御検討をお願いいたしました上で、この運賃値上げの問題をひとつ私たちのこういう考え方も御参考の上に御審議願いたい、かように考える次第であります。  次に、競争状態にある交通業のバランスを考えて、値上げというような意見もあるようでありますけれども、私はそういうことは反対でありまして、むしろできる限り、採算のとれる限りはやはり低位に置いて、そうして国民に奉仕すべきであつて、国家事業としてはそういうことが望ましいのじやないか。ただよその事業を起させるためにそうするならば、むしろわれわれの主張する一歩でも社会化への前進をするもとにおいても、そういう事業は国家事業として吸收してやつて行く。こういうふうな考え方からして、競争事業とのバランスを考えての値上げについては、私たちは反対せざるを得ないのであります。  次に、現在の客車、線路の状態考えまして、皆さんも御旅行をなさいまして十分御存じのことと思いまするが東海道線はややどうにか日本の鉄道らしくはなつておりますけれども、これを一歩中央線なり、あるいは東北線、奥羽線、北陸線あたりへ足を踏み入れられましたら、痛切にお感じになるだろうと思うのでありますが、これが日本の鉄道かと、情ないような状態だということはお認めだろうと思います。特に目には触れませんけれども、線路もその通りに弱つておるように考えるのであります。そういう点からいたしましても、赤字になるからといつて運賃は値上げするが、そのかわりに補給金は出さないといつてつておかれたならば、客車はここ五、六年すれば、線路は二、三年もすれば、動かないような状態になる。この際にはどうしても水を注がなければならぬ、かように考える次第であります。特に最近の国鉄の、今年時へ九十億程度の赤字が出るというような状態から、一般の車両工業あたりに対する発注なんかもほとんどとまつてしまいまして、これか崩壊の状態にあります。現在戰後日本が許された重工業部門といたしまして、車両工業や自動車工業、それから造船工業等の事業は、どうしてもこれを育成して行かなければ、ほんとうに植民地的な軽工業ばかりになつてしまうために、この車両工業を育成する商においても、この国鉄の今回の運賃値上げを認めて、どうにか黒字になつて来たならば、国鉄の経理状態なんかも再検討を加えまして、こういう面にも新しい車の発注をたとい一両でも三両でも向ければ、それに関連いたしましてほかの産業も起つて来るのであります。  次に、労働の生産性につきしましては、これは労働力の再生産、あるいは労働の生産性ということで、いろいろ議論もございましようが、私たちもやはり国民各位が著しい中から運賃を負担されるということを十分理解いたしまして、労働の生産性につきましてはやはり努力をいたしたい。これだけの決意は、現在の国鉄労働組合では十分持つていることだけをひとつ御認識願いたいと思います。  次に、インフレというのは、どういつでも労働者に不利である。これは今日本へ来て一番問題になつておられますドツジ公使も、この間われわれの代表が会つた際にも、インフレというのは労働者には一番不利だから、何とか切開しなければいかぬ。そういうことを言つておりますが、私どもはインフレの初めごろから、常にそのことを主張して参つた次第でありまして、従いまして一日も早くこの運賃が値下げされるような傾向に持つて行く。すなわち一般会計からの補償なり、あるいは経済状態がそういうように向くようになつて、一日も早く値下げをされるような政策をおとりくださることを前提といたしまして、今回は賛成するものであります。  次に、だからといいまして、このまま温存して置きますと、昔の鉄道省から運輸省、それから国有鉄道、一応看板こそはかわつておりますけれども、やはり根強い官僚性というものは、そのまま温存されて、公共企業体に移行しております。従いまして戰時あるいは戰後を通じまして、この国有鉄道事業というものは国家の独占事業として、ある程度、非常にあたたかい温室の中に育てられて参りましたために、しかもそういう官僚性を温存しておりますために、事業経営の面においても私どもは改善すべき余地が多々あることを指摘せざるを得ないと思うのであります。そういう面につきまして、運輸委員会の各位におかれましても、十分運賃値上げはされたから、これでどうにか黒字になつたから安心だといつて、いすの上でふんぞりかえつておるような高級官吏の行動については、十分批判されまして、そういう連中の行政機構その他の面についての改革その他については、十分なる監視を願いたいと思うのであります。われわれ組合側といたしましても、今度の公共企業体労働関係法に定められた通り、労働協約締結にあたりましても、そのままそういう官僚性をいつまでも温存しておいてはだめだというので、アメリカのTVAの考え方をそのまま一応取入れまして、協力会議をぜひ設置せよ、その席におきまして徹底的に論議しまして、たとえば先般も新聞紙上に載つておりました、札幌の鉄道局長が建設工事業者との悪い結託があつて、收賄罪に問われて、今東京の地方裁判所に引張つて来られておる。名古屋方面でもその資料収集に来ておる。これは現われた事実でありますが、あれだけであつて、そのほかにはないとは保証できない。そういう点につきましては協力会議等を通じまして、十分に批判を加え、そして改正いたして行きたい。かような観点に立ちまして、まことに突然呼び出されましたために、十分な系統立つた証言ができなかつたことは、まことに遺憾でございますけれども、結論といたしまして、冒頭に申し上げました通り、好ましくない運賃改正では、あるけれども、現段階におきましてはやむを得ないものと確信するものであります。以上証言いたします。
  74. 稻田直道

    稻田委員長 次は全日本中小工業協議会中央常任委員の伊藤英男君を御紹介申し上げます。
  75. 伊藤英男

    ○伊藤参考人 私は中小企業のうちの中小工業団体の一員でございますが、皆様御承知のごとく、全日本の工業のうち、われわれ中小工業の占める数字は、その工場数におきまして九九%強を占めております。労働者数におきましては六五%を占めており、戰後の輸出品に対するわれわれの担当部門は、六三%を占めておるのであります。いろいろ業種は種種雑多でございますが、今度の運賃値上げにつきまして、最も多く打撃をこうむりますのは、御承知のごとく材木であります。また先ほど御証言がありました石炭もそうでありますし、また金属産業もそうであります。すでに数字的なものは論議し盡されておると思うのでありますが、大体私たち中小工業の仲間が、実は現政府が出現するにあたりまして、多くの期待を持ち、これに多くの支持を與えたのであります。私たちの多くの仲間は、民自党政府支持者が多いのでありますが、今度のこの結果を見まして、この運賃値上げの問題が取上げられるや、労働者と一緒になつて、われわれの死活問題を擁護すべく、立上らざるを得なかつたのであります。すでに幾たびか御指摘いただいておりまするように、いろいろわれわれ弱小の零綱の経営者の知らない御苦労が、国会のうちにはあるものとは考えられるのでありますけれども、この結果どうなるかということを簡單に申し上げますならば、一言にして、首を一方ではくくつているありさまを、一方では足をひつぱるような結果になることを、私は証言できると思います。木材は、運賃の占めるパーセンテージは、その販売価格におきまして従来は一四%を占めておるのでありますが、今度の結果二六%というような状態になるのであります。その他数字は私が申し上げるまでもなく、いろいろ出ておることでございまするが、とにかく私の申し上げたいことは、私たち一応政府に首肯せられ、また鞭撻されておりまする点は、大ざつぱに申し上げまして企業合理化であります。この企業合理化の線を耐乏によつてなし得る。そのことによつてまたドツジ氏の九原則に従うべく、日本の経済自立化と輸出振興ということに最大目的があるかのごとく、私たちは日々鞭撻されて来ておるのであります。一方において私たち個々の企業が、今日極端な程度にまで企業合理化をしいられておりまする一方において、今国鉄の方の御証言もありましたごとく、官業においてはその合理化が等閑に付されておるという事実に至りましては、何と言つても憤激を覚えざるを得ないのであります。個々の小さい企業におきましては、すでに限界に達しておりまするので、企業合理化はもつと大きい国家関連企業において、その目的を達成されなければならないのではないかと私は思うのであります。この結果どうなることでございましようか。私はいろいろな面におきまして、最近われわれの仲間が現在の政府に、また民自党に期待するところが大きかつただけに、最近いろいろと今日のような政治の結果に対して、いろいろと不審を抱き、また危惧を抱きつつある情勢になつております。その結果を私考えまするときに、私たち仲間に対しまして、本店のこの空気を私たち仲間に報告する場合において、現政府がわれわれの立案ほんとうに御理解のもとに、私たちの生きる政治をやつていただくように御盡力いただいておるのだということの証言が、帰つて報告ができるようでありたいと私は念願しておるのであります。もしこのまま八割の値上げがやむを得ないというそのことで通りますならば、われわれ小さい企業家は、この独立採算制に対する根本的なものに対して、多くの不審と危惧を抱くことの結果となると思うのであります。その結果はどうなりましようか。私の予言の現実が現われて、社会不安と政府に対する呪詛がふえて行くということになつて、その結果みんな政府考えておられるような理想は、夢と消え去ると私は思うのであります。いろいろ数字も多少調べてございまするけれども、すでにいろいろ論議し盡されておると思いますので、今日塗炭の苦しみに追い込まれておるわれわれ、中小業者が、現在の政府と民自党に対する期待とその結果について大きな疑問符と、また一方に期待をかけつつ最後まで望みを捨てないように、むしろ念願しつつあるということを皆さんにお伝えいたしまして、何とかわれわれのために、この値上げ問題について善処していただくべく御盡力いただくように、おすがり申し上げたいと思います。従つて私の結論は、今度の値上げ問題に対しましては反対でございまする以上抽象的でございまするけれども簡單に証言申し上げる次第であります。
  76. 稻田直道

    稻田委員長 次は全日本海員組合副組合長有井澄君を御紹介いたします。
  77. 有井澄

    ○有井参考人 私全日本海員組合の者であります。結論として申し上げたいのですが、私ども働く者といたしましては、いかなる場合におきましても、物価に関係のあるこういう運賃というようなものが上ることには、賛成ではないのでありまするが、現下の情勢及び当然あるべき海陸の平常なるバランスを保つ点から考えまして、この際はやむを得ざる処置と考えまして、本組合は賛成をいたすものであります。その運賃の採算問題につきましては、先ほどからそれぞれ当面の專門の方々の御意見がありましたから、私ども若干立場の違う者がくどくど申し上げることは差控えますのと、今日突然お呼出しの御通知をいただきましたので、資料等を調べておる間がありませんでしたので、はなはだ不十分な証言になるかと考えます。  大体戰前のノーマルな状態におきまして、鉄道の便と海運の便とは、運賃の点におきましても、また運ぶべき荷物の種類におきましても、それぞれの立場がはつきりしておつたのであります。しかるに戰争のためにこれらがごちやごちやになつてしまつて、今日においては海運と陸運とのバランスが全然アブノーマルになつておるような次第であります。しかも海運はほとんど壊滅的な打撃を受けまして、今日自由貿易を許されても、出て行く船は何艘あるかというみじめな状態にあるばかりでなく、いまだに多少の曙光を認めたといえども、われわれの働くところはことごとく閉鎖されておつて、ただこの日本の狭い範囲の中で、何とか余喘を保つて、他日の奮起の機会を待つておるというような状態に置かれておるのでありまして、これは單なるバランスを保つという意味では決してないのでありまして、先ほど国鉄の菊川さんの言われましたバランスのために云々ということは、われわれももちろん同感でありまするが、そういうバランスとは全然意味の違つたバランスであるのでありまして、日本が四つの島に追い込まれた以上は、一日も早く国際的に進出する機会が得られなかつたならば、われわれの生きる上に非常に大きな役割を持つべき海運は、壊滅してしまう状態にあるのであります。しかも今日におきましては、多少の曙光は見えたといえども、まだ決して楽観を許されないし、たとい許されましても、おそらくさまざまの條件がついて、決して昔大手を振つて七つの海に活躍したような情勢は、近い将来に期待することはできないだろうと私は思うのであります。それで今日この運輸交通の委員の諸公におかせられましても、また経営者におきましても、この問題については日夜非常な御盡力してくださつていることと存じておりまするが、私ども労働組合といたしましても、英米の組合に連絡をとりまして、過日代表の行きましたときにも、この問題を大きく取上げまして、この窮状を訴えて、世界の同情を少しでもこちらに持つて来て、一日も早くこの目的が達成されることを念願しておる次第でありまするが、今日の情勢におきましては、昨年切り離されました機帆船のごときは、ほとんど壊滅の一途を辿つて、いまだにその営業を続けておるものはほとんどないような状態にありまする。本年八月に切り離されました小型船に至つては、まさに瀕死の状態に陥つて、マル公の運賃すらキープして行けないような状態にある次第であります。それでわれわれは運賃を上げろというようなことにつきましては、決して心から賛成とは言いかねるわけでありまするが、現在この日本の置かれた立場においては、海外進出に絶対必要なわずかな船、及びその海運なるものを保つて行くためには、どうしても海陸の運賃のバランスが得られることが必要と私は考えまして、今度の処置はやむを得ないものと考える次第であります。同時に先ほどちよつと淺尾参考人が触れられましたが、国鉄の運賃が八割上つたら、海運もそれに従つて同じように上げるのだというなら、ただいたずらに運賃を上げて物価を高騰させる以外に、何の得るところがないものと考えまして、この点は採算のとれる運賃にきめられることを私は希望するのであります。しからずんば海運は海外に出られることがきまつても、動かすことができない状態に追い込まれるものと私は信ずるものであります。はなはだ不得要領であつたかもしれませんが、私の証言はこれをもつて終ることにいたします。
  78. 稻田直道

    稻田委員長 これにて本日御出席になりました参考人各位の意見の発表は終りました。なお本日御出席予定全国木材組合連合会副会長武市昇太郎君は、都合によりましてお見えになりません。御了解を得たいと思います。  これより参考人の方々に対する質疑を行います。
  79. 石野久男

    ○石野委員 参考人の方々にお伺いいたしたいのでありますが、最初にトラック協会を代表されております森田さんにお尋ねいたしたい。トラックの輸送限界が、今度の八割の値上げによりまして、およそどの程度まで伸びるかということについて、先ほどそれぞれ小口扱いあるいは車扱いについての話があつたのであります。これを総体的に見ますと、大体どの程度のものになるのでございましようか。量の点についておおよそおわかりになりましたら……。
  80. 森田賢

    ○森田参考人 小口扱い、車扱いにわけまして、小口扱い幾ら、車扱い幾らという二つの別は算定いたしておりませんが、大体三百五十万トンの鉄道荷物が、トラックに移行する計算になつております。
  81. 石野久男

    ○石野委員 その三百五十万トンは、先ほどありました小口扱いはキロ数にいたしまして約百キロ、車扱いにしましてはどのくらいでありましたか、忘れましたが、その距離の限界点をもう一度教えていただきたい。
  82. 森田賢

    ○森田参考人 車扱いの場合で五十キロ圏内のものがトラックに移行し、小品扱いで百キロ圏内のものがトラックに移行することになります。
  83. 石野久男

    ○石野委員 次に淺尾さんにお尋ねしたいのであります。淺尾さんの言によりますと、競争の立場にある業種に対しましての関係から言つても、当然国鉄が独立採算制の立場に立つて値上げがさるべきであり、それは八割ではまだ少い、九割くらいにすべきである、こういうお話があつた。ただいま最後に御発言のあつた有井さんもおつしやつておりましたし、菊川さんもおつしやつておりましたが、競争業者に対する立場からの値上げ、それだけではありませんが、それが非常に大きな理由でありましたが、この場合に特に船の場合からいたしまして、海外貿易という観点からいたします点につきまして、日本の海運業界が他国船との運賃競争点を考えます場合に、国内的な鉄道輸送、陸上輸送と海運との関係の観点からだけで、そういうような結論を出されるのは、ちよつと淺尾さんの立場からいたしましても、そんな簡單意味ではなかつたろうと思うのでございます。それでは私は海外貿易の観点からしまして、外国船との関係における船賃の問題等を考えて、なおその点を御主張なさるのであるかどうかという点について、御意見を伺いたい。
  84. 淺尾新甫

    ○淺尾参考人 先ほど海上運賃を九割三分値上げしても、なおコストを割ると申し上げたのは、現在のコストから申し上げたわけでございます。現在は船舶運営会という計画経済のもとに立つておりますから、コスト計算からなつておる運賃でございます。自由の企業として海運本然の姿にまだ立つていない。そういう意味合いにおきまして九割三分ではまだ少い、こういうふうなことを申し上げたつもりでございます。もしこれが全部自由になりまして、世界各地に日本の船が行き得るというような状態になりますれば、これはまた話が違つて参ります。
  85. 石野久男

    ○石野委員 次に天日さんにお尋ねいたしますが、石炭の場合からいたしまして、いろいろの理由があるけれども、率を下げてほしいというような結論でございます。しかし石炭の鉄道輸送貨物中に占めるところの率の問題や、あるいは石炭は最近において輸送距離が非常に延びたというような意味からいたしまして、こういう値上げをされましたときに、輸送量が相当に減退するであろうというようなこともまた申されたわけでございますが、この八割の値上げということによりまして、石炭業界におけるところの炭の輸送量というものは、現在よりはどの程度減少するであろうかということにつきまして、およその見通しがありましたらお尋ねいたします。
  86. 天日光一

    ○天日参考人 私は実は先ほど運賃引上げによりまして、石炭の輸送量が減るというところまでは申し上げなかつたつもりでございます。但し一般論といたしましては、今春旅客運賃引上げの際に、国鉄が予想されたよりも旅客数が減つていることは事実であります。また今回貨物運賃引上げに際しまして、八割上げたならば、三%貨物輸送量が減少するというふうに想定されておるようであります。今の経済界の情勢から見まして、荷動きがはたして三%程度の輸送量見込み減で済むかどうかということは、非常に疑問だろうと思うのであります。もう少しよけい響いて来るのではないかと思います。それから石炭につきましては、昨年の数字でありますが、先刻申し上げたのは二十三年度におきまして、全輸送量が一億三千万トンにつきまして、石炭が三千六百十九万八千トンであつて、パーセンテージは二七、八四%というふうに、昨年の例をとつたのであります。しからば今年石炭の輸送量がどれだけ減つて来るかという問題でありますけれども、御承知のように本年度の出炭目標は、四千二百万トンというべースが掲げられておつたのでありますが、先般その筋からのメモランダムによりまして四千二百万トンという論は消えてしまつたのであります。ただいまのところ本年どのくらい出るかというのが、一つの問題でありますが、配炭公団廃止後の石炭の情勢が、いまだはつきりと定まらぬところにあるというふうに考えられるのでありますが、安定本部などでは、本年度の有効需要三百六百万トンから八百万トンくらい見込んでおられるようでありますから、そういたしますと、輸送量は昨年とそう大きく開かないのではないかというふうに思つております。ただ運賃値上げのために、石炭の輸送量がどれくらい減るかということを的確に申し上げかねるのは遺憾でありますけれども、最近御承知のように下級炭などにつきまして、荷動きがちよつと鈍つておるという関係がありまして、生産業者の貯炭がふえておる傾向がありますから、その辺少し減るというふうに現われて来るのじやないかというふうに考えております。
  87. 石野久男

    ○石野委員 最近の有効需要の観点から見まして、当初の予定でありました四千二百万トンが、三千六百万トンないし八百万トンくらいになるだろう。それに最近の売行き不振による手持量が、山元に非常に多くなつておる。こういう実情に加えて、今度の八割の運賃値上げというものがかかつて参りますと、ただいま申されましたように、一層輸送量といいますか、出荷量が減つて来るだろうと私思うのでございます。しかしその場合に現在石炭業者のうちにおきまして、この打撃を受ける業者は、大中小のいろいろな企業ございますが、大企業と中小企業との間における差は、どういうふうに出て来るであろうかということについてお伺いしたいと思います。
  88. 天日光一

    ○天日参考人 ただいまのお尋ねの問題でありますが、最近の石炭界の情勢は御承知かと思いますけれども、大体中級以上の炭、原料用炭でありますとか、発生炉用炭、一般炭級の中級以上であります。これに対しましては需要が相当強く出ておるのでありますけれども、中級以下の炭につきましては、需要が鈍つておるというのが実情であります。従つて以上申し上げたところの炭の生産業者の振合いを見ますと、大体におきましてはこれは外見でありますけれども、上級炭は大ざつぱに申せば大手筋、業界ではよく五社と言つておりますけれども、この五社とは限りませんで、いわせる大手十九社と俗にいいますが、この方面が割にいい炭を比較的出しているのであります。しかしもとより企業は小さくても、良質の炭を出しておりますけれども、銘柄等がまだ十分に通つていなかつたり、名前が売れ込んでいなかつたり、また古くから通つていなかつたために、いい質の炭を出していながらも、売れ行きが鈍いというのもありますので、従いまして運賃が上りまして石炭の値段が高くなりますと、値が安ければこの程度の炭でもといつて、使い方の方でそれだけ押えてしまいますので、運賃の負担は同じでありましても、売れ行きの面から行くと、響きは下級炭の方によけい響くかと思われます。
  89. 石野久男

    ○石野委員 その次に菊川さんにお尋ねいたしたいのでございますが、菊川さんは、値上げは好ましくないけれども、やむを得ないものであるということで、いろいろな点について好ましくない観点における、たとえば競争事業におけるバランスをとるという見方からでは反対だ。あるいはまた現状における貨車、線路の状態から見ても、むしろこういう方面に国鉄の独採制の問題について強く思いをいたしてほしい。あるいは労働の生産性は労働組合自体において極力維持するようにやつて行きたい。またインフレは労働者にとつては不利であるから、従つてまたこういう値上げは本質的には反対であるけれども、現状ではやむを得ないのだ、こういうふうなお話でございました。そこで私お尋ねいたしたいのでございますけれども、労働組合の立場からいたしまして、現状におけるところの貨物運賃なり、あるいは国鉄の経理内容自体から見ますところの赤字は、どうしてもこの運賃の値上げをしなければカバーができないものであるかどうか。これはもう少し経理内における赤字を消すということについての余地はないのであるかどうかということについて、ひとつお伺いしたいのです。
  90. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 ただいまの石野さんの御質問につきましては、私たちの考え方からいたしまするならば、国鉄の経理内においては、運賃値上げをカバーするだけの厖大な捻出ということは、とうてい困難であろう。しかしながら今後経費節約その他において、ある程度捻出する余地があるでしようが、その分はむしろ先ほど申し上げましたように、新車の増備とか、線路の補修等にまわすべきであると思います。またほつておけばあぶないところはたくさんあります。そういう面へ経理面の合理化したものをまわしたい。そういうことによつて労働者もそこへ吸收され、一般関連産業もそれによつて大いに起つて来るのであるからして、先ほども申し上げましたように、値上げしたからこれで安心だというように、今の官僚連中を安閑とさして置いてはだめだ。経理の面について、そこから出したものは、車両の増備、線路の改修、橋梁の改修、そういう方面にまわすべきである。そういう観点に立つております。
  91. 石野久男

    ○石野委員 よくわかりました。菊川さんは国鉄内部におられますので、こまかいことをお尋ねいたしたいと思いますが、政府の今度の損益勘定の方から見まするところの減收見込みは、約八十六億と見込まれておるのでありますが、この減收が最近の旅客輸送等の形態において考えますると、九月、十月の比較からいたしますると、十月のが大分よろしくなつておるわけでありまするが、こういうような観点からずつと来年の三月までにわたるところの見込みにつきまして、はたしてこの八十六億の当局から出ております減收見込みというものは、そのままのんでよろしいのでありましようか。それともこれはもう少し見込み違いであるのではないかということについて、お調べがあるだろうと思いますが……。
  92. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 この点につきましては、私たちの調停委員会、仲裁委員会においても、当局側とも相当論争いたしました。しかし九月も十月も旅客の面において多少上昇するのは、ちようど十月は昔から旅行シーズンであり、特に国鉄の従事員がこの際運賃の値上げという問題よりも、まず旅客に乗つてもらうという線から、旅客のサービスに努力して行こうということをまず第一点に置いて、相当サービス改善については労働組合もやりました。特に団体客の吸收という面につきましては、現場の駅の助役とか、あるいは旅客の輸送を担当している諸君が、わざわざ出かけて行つて、学校の先生、あるいはお寺の坊さんを勧誘して、団体客の誘致についてまで当つた。そういう効果が多少現われて来たのでありまして、組合もそういう点までも考えなければいかぬ。今まで汽車は込むものだ、殺人的な汽車だと悪宣伝をされておつたけれども、現在においては多少楽な列車もできましたし、旅行は決してぜいたくではなくて、国民厚生の面から考えて大事なことですからというわけで、または、インフレの收束の一つにもなるという観点から、労働組合も相当協力いたしまして、旅客誘致に努めたために、上昇を示しております。また年々十月になりますと、東北方面ではちようど秋の刈入れを終つて出て来る。関西方面では刈入れ前の農閑期を利用して旅行するので上昇するのでありますが、この年末から来年へかけましては、厖大な税金をとられますので、相当旅客に影響して落ちて来るのではないかと心配しております。従つて九十億の赤字は、大体において私の方の見方としても出るのではないかと思つておりますが、今後もし幾らかでも赤字が減りますれば、夜勤手当の方に振り向けたいと思います。これは調停委員会に今申請しておるのですが、一晩徹夜勤務をやつて、一番よく走りまわる連結手なんかでさえ十円しかもらえない。われわれ若い時分やつておるころは三十五銭もらいましたが、当時の物価からすると、これでうどんの二はいくらい食べて、タバコ銭くらい出て、徹夜の慰労になつたのですが、今日の十円では光二本よりすえない。うどん一ぱい食えないというので、そういう面をなるべく上げさせる。せめてうどん一ぱいぐらい食える程度まで上げさせたい。そのためには組合としては旅客の輸送をもう少しふやすことに努力しようと考えておりまして、幸いにしてこの九十億の見込み違いが出ますとすれば、待遇改善の面において主張して、これを獲得しだいと考えておる次第であります。
  93. 石野久男

    ○石野委員 いろいろとお話がありましたが、結論的に菊川さんといたしましては、大体八十六億何がしの赤字が出るということは、大きく違わないというお見込みなんですか。
  94. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 さようでございます。
  95. 石野久男

    ○石野委員 それではもう少しお尋ねしますが、組合の方で運輸協議会等でお調べになつております資料によりますと、相当程度赤字の見込みについては減るような数字が出ているように私聞いておるのでございますけれども、菊川さん御存じはございませんか。
  96. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 運輸協議会からそういう答申案が本部に出されたことをよく承知しておりまして、私たちも検討いたしました。しかしながらあくまでも見込みでございまして、論争になりますと、水かけ論になりますので、今までの旅客の運賃その他から考えまして、私たちはこれをそのまま組合の決定的な予想として、確信を持つて赤字を減らすということを、ここで断言できない。今後の経営状態のいろいろな影響、いわゆるドツジ・ラインといわれておりますものが、どういうふうに響いて来るか。それが敏感に旅客の輸送にも響いて参りますので、そういうことを考えましたら、運輸協議会から出ました案についても、私は私なりに意見があつて、いろいろ論争いたしまして、これは結局水かけ論に終りました。われわれの予想から見ましても、これだけは遺憾ながら見込まざるを得ないのであります。また先ほど申し上げましたように、それが少しでも減らされるならば、まつたお話にならない低位な徹夜料にまわされるべきである。これは委員の皆様方も十分御理解が、できるのではないか。かりにそういう見込み違いが出たならば、たつた十円で徹夜しておる者にまわしてやるべきであるということについては、皆さんの御理解が願えるのではないか。私も一文でも見込み違いのあることを望んでおります。それだけは黙認といいますか。目をつぶつていただきたいと私は考えております。
  97. 石野久男

    ○石野委員 見込み違いがあつたならば、給與とか手当の方面にまわすことについては、いろいろとまた御意見もあると思いますが、私もそれは同感でございます。ただその差額がどの程度になるかということは、ここで一応問題にしませんで、もう一つ菊川さんにお尋ねしますが、経費節約の問題は、特に石炭が国鉄の経費の中で非常に大きなパーセンテージを占めていることは事実でありますし、今日までに大きな赤字を出しましたのも、ここにあつたと思うのでございます。最近になりまして石炭の事情が従前と非常にかわつて参りましたので、当局においても本年度内の石炭節約量を約二億くらい見込んでおるように聞いておる。この点については組合側の立場からいたしまして、相当技術的な面等における考慮、また熱量の上昇等によつて、あと三、四億のものが節約できるのではないかという見込みを持つておるように聞いておりますけれども、これも架空な数字でございましようかどうか。この点お答え願いたい。
  98. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 今石野さんがおつしやいましたように、確かに石炭は良質炭が入るようになつたので、石炭の面においては節約ができるのではないかというふうに私も考えております。しかしながらそれは今東海道線の夜行にお乗りになつても、実は東京を立つときには寒くて、そのままふるえて——私も昨日名古屋から帰つて参りましたが、こういう点については、この方面へ少しはまわしてやつて、旅客のサービスに努めるというふうにさすべきではないか。今のままでいいのだということではなしに、嚴寒中でもヒーターが通らずに走つてつたのを、今年は少しでもヒーターを通して、がまんができるというのではなしに、カロリーが上つて来て節約し得た石炭は、各線ともそういう方へまわすべきではないか。これがほんとうの国鉄の使命ではないかというふうに考えておるようなわけでありまして、今までの国鉄の石炭が、ただ去年のような調子で、ヒーターも何も通さずに、そのままでやつて行けというならば別でありますが、そういうことは運輸委員会でも十分責任を追究していただきたい。先ほど私が申し上げたように、当局は眠つており、その独占事業の上に立つている官僚制を打破しようという面でやつておるのでありまして、多少の捻出ができたのは、やはり接客のサービスの方面に振り向けるべきである。えらいことを言うようでありますが、そういう点も徹夜料の値上げと申しても、なかなか一つの問題だけでは出て来ないのでありまして、そういうところから少しずつ繰出して、こういう圧迫された下級労働者の待遇改善の方に向けるような主張を、私たちは協力会議を通じて申し上げたい。  ここで石炭問題が出来ましたから、最後に申し上げたいのですが、今年の六月一日に、あの定員法の首切りの際に、この石炭料の節約できたものが、首切り料に四十億からのまわされたという事実がある。こういう点については仲裁委員会においても、調停委員会においても、私は組合を代表して、当局側の代表と激論をやつた。こういうことにまわすのは断じて許さるべき問題ではない。こういう点についても目も注いでいただきたいということを、くれぐれも申し上げたのであります。こういう予算のからくりという点について、十分御戒心願いたい。組合も協力会議を通じて、社会の輿論に訴えて、今後はそういうことはさせないようにいたしますが、こういうことは国会の権威を蹂躙するもはなはだしいものだと考えておるのでございます。
  99. 石野久男

    ○石野委員 菊川さんのお話の点で、私の聞きたいのは、そこから出て来たものをサービスの向上に向けるとか、あるいは給與の問題にまわすとかいうことではなしに、現実の問題として石炭節約によつて、当局の予定している二億より以上の節約費が出て来るだろうかどうかということを、私ははつきりお伺いしたい。
  100. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 私の考え方からいたしますならば、この二億をうんと上まわるというような、運輸審議会からの資料をあなた方ごらんになつたとおつしやるが、あの通りのものはちよつと困難であろうと考えております。大体において二億前後のものが精一ぱいであろう。というのは、旅客に対するサービスの向上の方にも、やはり機関車の従事員としてもヒーターをよけい通すということになりますし、従つて嚴寒期を控えてまた積雲の問題があります。今年は雪が非常に多いというふうに私ども見ております。寒さもきびしいし、去年のようなことはないと思いますので、石炭の使用量もどうしても多いのではないか。去年の数字をもつて今年を律することは困難であろう。これは一つの天災でございますけれども、雪の降り方によつては、石炭の使用量も非常に違つて参りますので、そういう点も考えまして、これは今の予想で論争してもきりがないと思いますから、四億のはみ出しは困難ではなかろうかと考えております。
  101. 石野久男

    ○石野委員 菊川さんにいま一つお尋ねいたしますが、今度の国鉄の八割値上げで、一般の消費生活者に対してはどのくらいの影響があると考えておられましようか。
  102. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 これはむずかしい問題でございますが、直接的な影響というものは、ここに表に示されておりますように、大したことはないと思いますけれども、この値上げを理由にやはり一般物価に響いて来ると考えます。それでわれわれの生計費にどのくらいはね返るだろうということを、まず私たちで数字をとつて見ましたところ、大体において六%から八%くらいのはね返りはあるのではないかと考えております。これは直接的な影響に対して、当局側から出しておる数字にはそうなつておりますけれども、生計費そのものに響いて来るということは、関連して参りますから、八%くらいの生計費のはね返りは、必ず影響して来るだろうと考えております。
  103. 石野久男

    ○石野委員 次に伊藤さんにお尋ねいたしたいのでございますけれども、中小企業の立場に立つて、とにかく今度の八割値上げは非常に大きく響くということをるる御説明になられたわけでありますが、特に木材関係などではひどいというお話もありました。そこで一、二の具体的な例をとつていただきまして、たとえば金属産業などにおきましては、大体今度の八割値上げによりまして、皆さん方の事業の上にどういうふうに響くかということの、具体的な例をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  104. 伊藤英男

    ○伊藤参考人 木材の方は、先ほどちよつと申し上げましたように、二六%の負担率を生じて来る計算になりますが、これは御承知のごとく最近それを消費者に転嫁することが困難であります。従つてわれわれの営業が成り立たなく、結局われわれが破算する運命になつておる次第であります。その他金属産業においてもそうでございますし、あるいは木工家具の組合もそうでありますし、例をあげればほとんどわれわれの関係いたしております中小企業の営業者は、今日のような購買力の減退しております状態においては、とてもその販売価格に転嫁して行くということは困難でありまして、この政策の結果がどうなるかと申しますならば、おそらく政府のねらつております、また国鉄で考えておりますことは、だんだんに改良をして、われわれを豊かな生活者に持つて行こうというところにねらいがあるかと思うのでありますけれども、これでは金持も貧乏になり、貧乏人はくたばつてしまえというような結果になりはしないかと思うのであります。簡單に申しますと、そういう次第でございます。
  105. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は菊川さんにお伺いしたいのですけれども、鉄道運賃の負担を国民にこれだけかけます以上は、必ず反面におきまして合理化をしなければいけない。またサービスの改善をしなければいけないということは、この値上げ問題のうらはらになると思うのであります。菊川さんは先ほど国鉄の労組といたしましても、大体この案は賛成するというお話でありましたから、この運賃値上げの反面に伏在いたしますところの合理化なり、サービスの改善についても、労働組合はどういうふうに協力せらるる御意思がありますか。お伺いいたします。
  106. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 これは皆さんも御承知の公共企業体労働関係法といいます法律がございまして、経営の面につきましては一切団体交渉の対象としない。こういう規則がございますが、この條項をたてにとりまして、当局側は、われわれが経営の改善、企業の合理化という面について発言いたしましても、参考として聞き置くという程度で、今日まで黙殺いたして参りました。しかしながら私たちはそれを立法されたのは、アメリカのTVAをモデルとしてとつておるのだし、ああいうのが正しいのだ、またマツカーサー司令部の七月二十二日の書簡によつて設けられたことはいなめない事実である。その一貫した精神が流れておるから、ここで経営協議会というものを認めがたいとすれば、協力会議というものを労働協約の面において認めるべきだという要求をいたしましたところ、これも拒否しております。ただお前らの意見を聞くだけだ、最後の決はおれらの方でかつてにきめる。こういうふうにあくまでもつつぱつておりますが、私たちは協力会議だけはぜひとも獲得いたしたいというので、まず最後は仲裁委員会にかけてでもこれを獲得して、それができたならば、その場面におきましては当局と組合と、堂々と企業合理化の点につきまして論議をいたしまして、そこで得た結論を当局側に実施させる。こういう方法をとつて——抽象的でございますが、そういう方法をもつて逐次合理化を進めるべきである、かように考えております。先ほど私が申し上げました中で、サービスを改善するためにということを一つ言つたために、非常にこれを大きく取上げられたようですが、国鉄が危険な状態になつておる。たとえば客車にいたしましても、あのボロ客車をそのままにしておいて、東海道線の問題にしても、これを一、二年そのままにして、修車費なんかをどんどん削る。そういうことをもしかりにいたしますならば、東海道線でもやはり中央線並になつてしまう、東北線なみになつてしまう。そうなれば東北線はそれ以下に落ちるから、少くとも現状だけは守つて行くつもりである。少しでも向上するようにいたしたい、またすべきが正しい。こういう考え方から申し上げておるので、この点誤解のないようにお願いいたしたい。協力会議を通じて私たちはやつて行く、こういうように考えております。
  107. 滿尾君亮

    滿尾委員 私がお伺いいたしたいことは、経営の内容にタッチせられるという面もございましようけれども、それよりも特に重点を置いてお伺いいたしたいことは、多数の組合員に対して、お客と接触する面、あるいは貨物を扱う上において、すなわち現業の第一線における協力態勢を、どういうふうに考えておるかということを伺いたい。それで私思いますのに、私もかつて国鉄におつたものでありますが、国鉄の経営が困難になつて、いろいろと節約しなければならぬ。また増収もはからなければならぬのでありまするが、どうも国鉄の個々の現業の第一線の方々の努力を拝見しておりますると、お客に対する、つまり国民に対するサービスの根本義がどこにあるかということを、はき違えておられるのではないかというような気がする。末梢神経的なサービスに熱中して、本質的なサービスに徹底しておられぬようなきらいがあるように思うのであります。今日多くの駅で汽車が出ますときにレコードをかけて、音楽を放送するというようなことが行われておる。国鉄が経営困難な場合に、拡声機を使つてレコードをなぜ放送するのか。私の乏しい経験でも、世界各国の鉄道でかくのごときサービスをしておる鉄道はない。なぜ日本の鉄道はかくのごときサービスをしなければならぬか。しかもその鉄道は赤字に苦しんでおる。必要な緊急欠くべからざる通告をするために、拡声機の設備はあつてよろしい。しかし軽音楽を放送するために拡声機を使うがごときは、拡声機の濫用だ。それだけ真空管も年をとるわけでありまして、いらぬことだと思う。私どもがほんとうに要求するところは、たとえば急行列車において水が出ない。朝多く水が出ない。便所は非常にきたない。国鉄の資材がいかに老朽いたしましても、労働組合の皆さんにおかれて、ほんとうに客に対するサービス、客は何を欲しておるかということをよくお考えいただけば、まず洗面所の水を断たぬように注意していただく。便所の掃除を励行していただく。それらのことはやる気さえあれば必ずできる。ところがこういう利用者の立場に立ちまして、最も緊切に感ずる問題は行われないで、ほたるの光くらいで送つていただくということは、どうも要点の置きどころが違つていやせぬか。従つてこれらの国鉄の今後国民に対するサービス面において、もう一ぺん御反省願いたい。国鉄の国民に対するサービスの本質は何であるかと言えば、一つは低運賃であります。それから回数が多いこと、乗つた場合に座席に若干のゆとりがあつて、コンフアターブルな旅行ができること、コンフアターブルな旅行というのは、列車内が清掃されておることが第一義であります。座席に二割か三割の余裕のある程度の輸送力を用意してもらいたいことが第二である。どうしても洗面所の水は断たないようにし、便所はしつかり掃除していただかなければ、国鉄が相次ぐ運賃値上げをもつて国民に訴えて、しかも国鉄側における国民に対する待遇がこれに伴わぬに至つては、非常な不満が出ると思う。このことは国鉄の幹部をいかにしかつてみたところで、実際はあなた方のお気持がそこまで徹底していないと実行できないと思いますので、今日ときたまお見えになつた機会に、ぜひお願いしたいと思つて申し上げるのであります。
  108. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 ただいま滿尾さんの御指摘になりました点は、私たちもかねがね痛感しておるのですが、そういう点の基本的な考え方としては、国鉄は国民大衆の公器であるから、国民大衆の利益と幸福のために運営しなければならぬ。この観点に立つて組合もやつて行こうということを、今日まで強くわれわれ叫んで来ましたが、逐次滿尾さんの御指摘になつたような点が改善されつつあることは、お認めになると思います。戰争も終りましてから四年になり、逐次改善されつつありますが、しかしながらまだ戰町中から、いわゆる汽車に乗せてやるんだというような考え方—これはすべての官庁、商工省にしましても、何にしましても、そういう考え方があつたのですが、民主化の声がだんだん高くなるに従つて、そういう面に非常にこのごろは力をいたして、大分改善されて来たことはお認めくださると思います。  それからレコードの問題に対しては、何も組合からやろうと言つたのではないのであります。駅には協力会議がございまして、そういうところからレコードの寄進などがあつたり、あるいはレコード会社から特に広告の意味も含んだ寄贈があるとか、そういうようなその駅の協力会議などの篤志家というようなものに、非常なつながりを持つてつておりまして、経費もある程度そういうところから集めてやつておる面が多いのでありまして、決して国鉄の予算の中からさいて、ああいうレコードを買つてつておる面はないと思います。今まで私もういうことに気がつきましたから、駅長なんかに聞いてみると、そういう面によつてつておるんだということです。たとえば駅頭に菊の花を植えたりしておるのは、たいがいはただで、国鉄の金を出さずに、少しでもこれで楽しんでもらいたいというような駅長の考え方でありまして、そういう面より本質的に便所のきれいな方がいい。あるいは荷物を預けに来られた場合、あるいは荷物を送りに来られた場合に、タバコを吸つてつて待たしておることが、むしろ逆効果になつてしまうから、こまかいことではあるが、お互いにそういうことに気をつけようじやないかというように、大分向いて来ました。あの闘争一点張りで赤旗を振りまわした時代から一歩成長して、世界労連につながろうというところまで来ておるのでございますから、そういう点もお認め願つて、いましばらくの間大きな目で皆様も見ていただきたいと思います。
  109. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、きよう参考人としておいでになりました方の中で、トラックの方の代表者であられます森田さんにちよつと御質問申し上げたいと思います。森田さんの御意見では、今度の運賃改正は妥当だという御意見だつたろうと思うのでございます。私ちようどおりませんでしたが、御意見の中に三百二十五万トン国有鉄道の方からトラックの方へ移行されるということがあつたのでございますが、そういたしますると、国有鉄道の方の收入といたしましては、それだけ減收することになるわけだと思うのでございます。そういたしますと、国有鉄道の赤字を埋めますために運賃を上げましたが、トラックの方に荷物が移るということも、国有鉄道の貨物運賃を上げる原因になると思うのでございますが、その点ではトラック業の方といたしましては、業者だけというのじやなくて、全体の矛盾につきましては、どういうふうにお考えになつていらつしやいますか。ちよつと御意見を承りたいと思います。
  110. 森田賢

    ○森田参考人 陸上輸送力の調整につきまして、遠距離荷物は鉄道に、近距離荷物はトラックにという、一つの計画的な輸送分野というものが確立されなければならない、こういうふうに思つております、先ほど菊川さんが、競争のために運賃をいじるというのには反対であるというお話でしたが、鉄道の輸送性能とトラックの輸送性能とは違う。従つて近距離はトラックによつて運ばれるべきものであつて、トラックは厳格な認可基準というものを設け、やはり主務大臣が認可をして初めて成立つ企業体であるから、これはりつぱな公共企業である。国有鉄道ももちろん公共企業でおる。この公共企業が一つの分野を逸脱して競争し合い、原価を割つてお互いに疲弊困憊するということは、輸送政策としておもしろくない。従つてこの運賃値上げは、われわれが多年要望しておりました近距離はトラックによつて輸送されるべきものであるというのが、今まで鉄道運賃がトラックよりも安かつたために競争ができなかつた競争ができなかつたというと語弊がありますが、調整ができなかつたのでありますが、八割値上げによつて大体同一條件に置かれるので、トラックは本来の姿に立ち返つてやるべきものであつて、国鉄が赤字を出すという問題につきましては、三百五十万トン程度の問題のことでありますから、そう大して問題じやないと思います。
  111. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君に申し上げますが、会期も切迫しておりますし、参考人の諸君もいつまでもこうしておそくまでお引きとめするわけにいきませんから、簡單に願います。
  112. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 まだ一人だけお聞きしましたので、その委員長の趣旨を徹底いたしまして、順々に御質問したいと思います。
  113. 稻田直道

    稻田委員長 十分ぐらいでお願いいたします。
  114. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 あまり発言を制限しないでいただきたいと思います。これは重要なる運賃の問題で、中小企業の興廃にも関する問題でございますから……(発言する者あり)発言に対しても、あまり干渉しないように、關谷委員に注意していただきたいと思います。
  115. 稻田直道

    稻田委員長 十分以内でお願いします。
  116. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 反対です。努力いたしますが、要旨だけ徹底するために……。
  117. 稻田直道

    稻田委員長 あなたはいつも長いので、簡單に願います。
  118. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 有井さんに御質問いたしますけれども、海員組合のお立場から、今度の処分はやむを得ないだろうという御意見でございましたが、それは海陸運賃の調整ということに主眼があつたように考えられます。この海陸運賃の調整ということは、海運の興廃にかかつている問題の中心であるかと思うのでございますが、今度貨物の運賃を上げますと、ただいま衰微しております海運が、それによりまして多少海運の方に貨物が移つて、この衰微した海運を振興することができるというお考えから、そういう御意見が出たのでございましようか。
  119. 有井澄

    ○有井参考人 お答えいたします。本来海運と鉄道とは全然違つた建前をとつて行けるはずのものでございます。しかるに先ほど申し上げましたように、これが非常に戰争以来混乱して参つて、こういう今日のような事態を来しております。しかし日本が今後生きて行くためには、どうしても海運をつぶすことができない状態にありますから、昨年切り離されました機帆船はもとより、今年八月に切り離されました小型船に至つては、マル公の運賃を割るような状態で、どうにかこうにか余喘を保つているという状態でありますから、われわれの期待いたしますような、世界に出て行くことができる状態になるまでは、どうしてもこれは保つて行かなければならぬ海運でありますから、そういう面も私ども考えていただく。というのは、陸運の方へ全部荷物が移りますことは、戰後の企業状態がはなはだ規模が小さくなつたので、石炭のごとく大口の、船で何千トンも買うような人が少くなつたという事情もあつて、陸運の方へ移ると思いますが、海運は、船腹の方に持つて行きますものが、荷役賃とか何とか、掛りが多いものですから、今日の状態では運賃が同じであつてもそういうことになりやすいので、何としても海運を適当な時期まで温存しなければ、日本の運命は推して知るべしだという観点から、私どもこの際こういう調整もその一助になるだろうと考えたのであります。国鉄の言われますように、決してバランスとか何とかという意味じやない。本来バランスとか何とかいつて競争するような意味の立場じやないと思うのでありますけれども、今日の置かれた状態におきましては、それらの点も一つの助けになるだろう。そうして少しぐらい船が動かなければ、遊んでおる人間を温存するために、国家がどんどん予算を費やさなければならぬことになつて、これでははなはだ意味をなさぬことだろうと思う。早くそういうことのないように、皆さんのお力で海外へ出られるようにしていただきたいということを切願いたします。
  120. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 簡單に御答弁願えばよろしゆうございますが、要領を得ませんので、もう一言聞きたいのですが、つまり私のお伺いしたのは、海外の問題は別にいたしまして、国内の貨物の輸送が、陸上の方の運賃を上げますことによつて、多少ながらも海上の方に移ることになり、それで海運が幾らかでも行けるということをお考えになつておるかどうかということであります。海外に対しましての問題じやございませんで、国内のやはり問題だと思うのであります。
  121. 有井澄

    ○有井参考人 その意味も含んでおります。
  122. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 淺尾さんにお伺いしたいのでございますが、海上運賃は、今度の国会が始まりました当初、運輸大臣によりまして、陸上の貨物の運賃を上げると同時に、九割三分ぐらい上げるということをはつきり言明されております。ただいま有井さんに御質問申し上げましたのは、国内の貨物の操作の問題でございますが、そういたしますと、大体今の吉田内閣のとつて参りました方針では、むしろ採算の上から申しますれば、貨物の運賃を上げた方が当然であるものが、旅客の運賃を上げることによつて解決されました。これもやはり赤字の原因となります。今度は貨物の運賃を上げるということを言われまして、海上の運賃はまだ今のところ不明でございますが、しかし当時海上運賃も上げるということはすでに言明されておりますので、その一つの前提條件になるおそれが多分にあるわけでございまして、やはりそういう観点からお考えになりますと、広く世界を相手にして、大きな立場から海上の輸送に当つておられました淺尾さんたちの御意見として、こういう大きい国際運賃の建前から、貨物の運賃が陸上で上げられますことは、海上運賃にも関連して来るというふうにお考えにならないかどうか。ただ單に海陸運賃のバランスという国内の問題だけで、われわれ考慮すべきではなかろうと思うのでございますが、そういう広い国際場裡で活躍なすつたお立場から、今度の陸上運賃の値上げということは、やはり海上運賃にも関連して来るのではなかろうかとわれわれ考えるのでございます。国際市場に進出するというようなことも非常に主張されておりまして、海上の運賃の高いということが、非常に今日本の損害になつておるのでございますが、そういう広い観点から、その辺の識者としての淺尾さんの御意見を伺つておきたいと思います。
  123. 淺尾新甫

    ○淺尾参考人 先ほど石野さんにもお答えしておいたのでございますが、日本の海運の本然の姿は、海外に自由に歩けるということでございます。海外に自由に参れますれば、船会社の採算等もぐんと下つて参ります。そうしますと、鉄道運賃との関連におきましても下げることができ得るのでございますが、現在におきましては、海外の活動区域が非常に局限されておりまして、内地の航路が主体になつておりますから、そうしますと船の方のコストも上つて来るわけであります。先ほど私が申し上げましたように、かりに国内運賃を九割下げるというようなことになりますと、現在すでに原価を割つておる状態でございますから……。
  124. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 菊川さんにひとつ御質問申し上げたいのでございますが、労働組合としては、いたしかたないという御意見でございまして、いろいろ先ほどから伺つていたわけでございますが、国有鉄道の赤字の原因が、今度の運賃値上げの原因になつておりますが、これにつきましては、私ども野党といたしまして、今までいろいろ政府とも交渉を加えて来たわけでございますが、当局の説明では、赤字の原因は、政府のインフレ政策、物件費だと言われておるのでございますが、今度運賃を上げますと、このインフレ政策というものは、一応今終息しておるから何ともないのだという運輸大臣の御答弁でございますが、その点ではきようあなたも、多少影響して行くということをおつしやつたと思うのでございます。今国鉄労組の幹部としては、賃金要求をお出しになりまして、仲裁にもかかつておりますが、御承知のように池田蔵相は、実質賃金が低下して行くような方針のもとに、予算その他すべての財政方針をお立てになつております。そういたしますと、労組自体がこの運賃値上げはやむを得ぬということになりますと、あなた方のただいまの御要求というものと、どういう関連になりますか。今度の予算では、新しい賃金の要求に対します予算は何にも含んでおりません。きようはつきり運輸大臣は言明されまして、そういうことは考えておらないということを言つておる。運賃の八割値上げは、賃金の値上げというものを裏づけしておらぬと言つております。そういう点であなたは、労働組合の代表として、どういうお考えを持つておいでになりますか。
  125. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 柄澤さんの御指摘の点、これは確かに全然響かぬということはないので、私も先ほど申し上げましたように、確かにこれは響いて参ります。それでわれわれの賃上げ要求は、今度の補正予算には全然含まれていないが、これを一体どう考えるか。こういう御質問で、ぜひ発言したいのでございますが、それは、仲裁案が期限が参つておりますので、きようあすのうちには示されるものとわれわれは確信しております。しかし私たちも仲裁に出すという決意をした以上は、ここでどういう裁定をされようとも、われわれは服する。賃金を下げようと言つても、服さざるを得ないだろう。あるいはこのまますえ置けと言つても、服さざるを得ない。そう考えておりますから、補正予算に含まれていないが、しかしわれわれ組合員それだけの決意を持ち、当局も承知して仲裁に持つてつている以上、出た以上は政府といえどもこれに服してやつて行くということになつてこそ、初めて仲裁委員会の権威が成立つのだ。しかるにもかかわらず吉田総理大臣が、仲裁委の裁定中に、どういうものが出てもわれわれはやれないのだ。ドツジ・ラインというものがあつてやれないのだということを声明されることは、仲裁委員会の権威をまるきり冒涜しておるものであつて、せつかく総理大臣指名した仲裁委員を冒涜するものであつて、この点、民主主義はいずこにありやと言いたいのでございますが、この点に関しまして、特に日本の労働運動の指導に参つております関係方面の高官に、先般土曜日に面会いたしまして、あなたはこの点どうお考えだということを言つたところ、それは君の言う通り、ああいう声明をするのはけしからぬ。それじやあなたがひとつ声明してくださいということまで私言つたのでございますが、仲裁委員会というものは、最後の決定としてどういうものが出ようとも、双方が納得するのだということで仲裁委員会に持つて行く。これが仲裁委員会のほんとうの性格である。従いましてどういう案が出ましても、私たちはこれに服従する考えでございまして、政府もそういうつもりでやつていただきたい。政府がそういうふうに踏み切られまして、少くとも現在の予算が多少とも上るということになつても、政府予算案を練つて国会にお出しになるであろう。この場合には公共企業体労働関係法第十六條に定めるところによつて、国会の開会中だつたら十日以内、閉会の場合には開会されてから五日以内に国会にその予算提出することになつております。おそらく政府考えられまして、それから皆さん方の御協力によりまして、五日以内にあらためてこの問題についての補正予算を出されるものと私たちは信じております。そういうふうに持つてつてもらえるだろう。そうした場合には、現在の政府が出したのだから、その政府の與党が絶対多数を衆議院においては占めておられますし、参議院においても、緑風会その他の今の協力関係から言つても、おそらくこの問題は通過するだろう。それを破壊的に、政府が出したものを衆議院で否決されるとは絶対考えておらない。政府が出して、與党が絶対多数を占めておつて政府の出した案を衆議院において否決されるというようなことは、おそらくそんな例を示しておる国会は少いだろうと思う。そういうことから考えて、私はそういうふうに行けるだろうと確信しておりますので、今の段階におきましては、この予算には組んでなくとも、仲裁案が明日か明後日あたりは示されると私は見ておりますので、その上で政府が善処さるべきであつて、またされないとするならば、われわれは国際的な輿論に訴えてまで、最後まで闘争するという決意を持つておりますし、私たちは現在でも、すえ置けというのなら、遺憾ながらこれに服従して、この年末を見送るというような、悲壮な決意を今日持つておるということだけを御理解願いたいと思います。もし少しでも改訂せいという案が示されましたならば、ぜひとも政府が十六條に定める措置をとるように、特に運輸委員各位が絶大な御支持を賜わらんことをお願いしておきたいのであります。柄澤さん、よろしくお願いいたします。
  126. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働組合としては、仲裁には完全に服従するということでございますし、それを実行してもらいたいということでございますが……。
  127. 稻田直道

    稻田委員長 広汎の質問はよしてください。運賃問題に関する範囲内においてやつてください。
  128. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 運輸大臣がきようはつきり、運賃の値上げの問題に関連いたしまして、給與を上げるということは全然考慮しておらぬということを言われたのでございます。それについて組合といたしまして、どういうふうなことを考えておられるか。この運賃の値上げが妥当だという裏には、当然労働者も、労働條件の問題や、今の徹夜勤務してももらえないというような問題を解決してもらうために、この運賃の値上げにも賛成されるのかどうかということ、それは当然だと思うのでございますが、その点がはつきり出なかつたと思うのでございます。
  129. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 運輸大臣がどうお答えされたかしれませんが、私がただいまも申し上げましたように、まだ仲裁案が示されておりませんし、どういうふうな仲裁案が出るかもわからぬ。われわれは九千七百円を主張しておりますが、現在ですえ置けという仲裁案が出ないとも限らないと思うのです。厳粛なるドツジ・ラインの前には、遺憾ながら認めがたいというふうに仲裁案が示されるかもしれないと思います。それで運輸大臣がこれを組むわけにも行かなかつたのだろうと、私はそういうふうに思つておりますし、この予算案通過よつて、われわれの賃上げを認めてもらおうとは考えておりませんし、その出て来たもの、それによつてさらにあらためてこれは十六條の法律でしつかり定められてあるのだから、それによつて処置をとつていただきたい、こういうふうに考えております。
  130. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君の御質問は冗長に走りますから、もう打切りを願います。
  131. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 簡單にいたします。
  132. 稻田直道

    稻田委員長 賃率の範囲内においてやつてください。
  133. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一つお伺いいたしますが、戰後運賃の改訂は何べんにもわたるわけでございますが、石野委員よりも御発言がありましたように、石炭の値段、鉄の値段というものが、日本では独占価格で、物件費の中で非常に高い比率を占めておるというのが、赤字の大きな原因だとかいわれておりますが、この石炭につきましては、多少の御倹約があつたように承りましたが、私どもとしましてとりました資料によりますと、自由販売になりましてから、公団から売り渡しますよりも、三井等の会社などから入つております値段が、逆に高くなつておるというような資料をとつております。こういう点につきまして、補助金をなくするという方針がきめられてはおりますが、国有鉄道が企業体になりまして、今度は国有でなくなつた建前から、労組の方たちが、石炭の価格について、物件費の高率について、人件費と物件費が逆になつた戰前と戰後のこの状態につきまして、どういうふうな見解を持つておるか。もつと石炭費などの点について、本質的に縮小せられる條件があるように私ども考えられるのでございますが、一億とか、二億、三億とかいう問題でなく……。そういうふうな御意見はおありにならないかどうか。こういうふうなことをちよつと承つておきたいと思います。
  134. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 柄澤さんのおつしやる通りでございまして、戰前と戰後との物件費と人件費の関係ですね。戰後におきましては、物件費がかさんで、人件費は戰前よりも低くなつている。この点につきましてはわれわれ反対しておりまして、いつも機会あるごとにそういう点を指摘しまして、人員整理にも反対し、すべての場合に反対し続けて参りました。  最後にちよつと石炭の三井からという問題でございますが、これはあなた方の常におつしやつております独占資本に対する——これは国家がこれに対してやるということについては、われわれも反対であります。ところが三井の山元へ行つて見ますと、やはりあなた方の党員の方が相当おられるのですが、あなたの組のところはどうもけしからんぞと言つてみたところで、なかなか独占資本から吐き出させよう、もつと安く売らせようと言つても、組がなかなか協力するというぐあいに行かないで、むしろ最近の傾向は、どこの組合でもうちの山から買え、これ以上は下げられぬというような主張が多いのでありまして、これは石炭の労組とも話し合つて、もつと安く納入するように勧めてもらいたいと言つて、そういう運動も続けてもらいたいと私は思うのであります。なかなかそういうふうに行つていないのですが、将来はそういうふうに労働戰線が統一されまして、悪いところはこういうふうに示し合いまして、逐次そういうふうに持つて行きたい。従つて戰前戰後のこの人件費と物件費の関係が逆になつて来たというようなことについては、私たちは大きな不満を持つている。この点をいつでも突いておりまして、あなたのお考えと私同じような考えを持つておるのであります。御了承願いたいと思います。
  135. 天日光一

    ○天日参考人 石炭の値段の話が出ましたので、ちよつと……。  ただいま石炭の価格のお話が出たのですが、石炭は独占価格にはなつておりませんことを、よく御記憶願いたいと思います。これはくどく申し上げませんが、配炭公団のありましたときは、平均炭価三千三百四十四円八十六銭となつております。そのうちの九百五十六円というのは、配炭公団の諸経費等になつております。公団が廃止になりましたあと、自由価格になつております。一部の石炭の値段が高くなりましたのは、これは本来自由経済になつた場合に、当然あるべき姿にもどりかけておるということであります。ということは、メリットということがよくいわれますが、石炭の持つている品質等に応じた値段が、従来低く人為的に押えられたものが、本来の需要者の要求の度合いによつて、本来の姿にもどりつつあるということであります。ただ公団廃止後、全体として石炭の値段はどうかと申しますと、全体としては公団当時の平均価格よりは下つておるというのが実情であります。鉄道の方では平均二千七百円台でおとりになつていたはずでありまして、公団がなくなつたあとも、入札制度をとられましたので、おそらく多くのかわりはないだろうと考えております。
  136. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君には十分許したのが二十五分過ぎましたから、もう打切りを願います。石野君、さつきの続きを願います。
  137. 石野久男

    ○石野委員 伊藤さんにお尋ねいたしますが、先ほど木材、それから木工家具等のおきまして、いろいろと受ける打撃が非常に大きいということのお話があつたわけでございますが、この運賃値上げだけではなくして、すでに今までにも二十四年度予算の当初予算がきめられましてから後、中小企業の受けている打撃が非常に大きいと思うのです。今度また八割の値上げがきまりました場合に、はたして耐え得られる企業というのは、どういう中小企業でありましようかということのお見通しと、さほどの影響がないかどうかということについてちよつと……。
  138. 伊藤英男

    ○伊藤参考人 お答えいたします。大体におきまして自分たち中小、特に数においては、弱小の工場主といたしましては、今石野さんからお話がありましたように、大部分がもう参つてしまうというような傾向にあると思います。もつともそのままでは済まされませんので、われわれにおきましても生きるべくできるだけ一層の合理化と奮起はいたしますが、そのあり方につきましては、さらにこのできた結果によつて、より一層深刻な様相において現われて来るであろうということを、一言付言したいと思います。
  139. 石野久男

    ○石野委員 ただいま合理化と申されましたが、中小企業において八割の運賃値上げがありまして、それがコストに響いて来る面が多いことはおおわれないのでございますが、中小企業における合理化は、はたしてどういう線で皆さんは合理化をされようとしておられましようか。これは非常に大きい問題だと思いますのでちよつと……。
  140. 伊藤英男

    ○伊藤参考人 合理化の問題につきましては、実は自分たちの望みますところは、より積極的な面でお願いしたいと思つておるのであります。いささか運賃とははずれまするけれども、われわれすでに腐朽しておりまする機械の修理であるとか、新しい機械の買入れであるとかいうことにつきましても、ほとんど資金に話まつておりまして、その合理化が不可能になつております。なお今私たちがつくりますものが、現在のような状態におきましては、ほとんど滞貨をして来がちでありまして、いささかさばけて行かない状態であります。なお先刻も申し上げましたように、輸出の点につきましても、現状はこの通りでございますので、その面において合理化合理化いうことにつきましては、私たちは非常に不満を持つているものであり、容易にそれが達成しがたいものであり、すでに限界に来ておるということは、先ほど証言申し上げた通りでありまして、その合理化の面はわれわれよりも、先ほども指摘いたしましたように、国家関連産業において多くお願いしたいと存ずる次第であります。
  141. 石野久男

    ○石野委員 合理化を国家関連産業においてやつてもらいたいという、中小企業の皆さんの御意見は一応わかりまするけれども、しかしそれは希望ではありましようが、事実上にはおそらくできないのだろうと私は思うのであります。国家関連産業におけるところの合理化の線よりもより以上、皆さん方の現実の問題としまして、企業がやつて行けるか、やつて行けないか。滞貨が現在非常に多いという実情に加えて、この運賃値上げというものが、はたしてそういう希望的な面だけで、あなた方の企業が持ちこたえて行けるかどうかという点が、私どもにとつて非常に大きな問題だと思うのでございます。この点についてもつとこまかく、八割値上げが行われた後に、おけるあなた方の合理化を、どういう線でやろうとしておるのかということを、つぶさにひとつ御説明願いたいと思うのです。
  142. 稻田直道

    稻田委員長 石野君、あまり広汎にわたることは……。それは非常に微に入り、細をうがつことはいいのですが、大体ひとつ……。尾崎君。
  143. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで委員長に申し上げますが、今言つたような運賃値上げが、どういうふうに企業その他に響くかということを今日聞いておるのであつて、響いた後における合理化をどうするというような問題は、第二段の問題でありますから、その点質問者に御注意願います。
  144. 稻田直道

    稻田委員長 委員長は承知しております。伊藤参考人。
  145. 伊藤英男

    ○伊藤参考人 お答えいたします。一言にして申し上げますならば、困難であります。従いまして、私今日証言に出ましてお願いする点も、ぜひ値上げの点を、皆さん方の御協力によりまして阻止していただくようにお願い申し上げたい、こういう次第であります。
  146. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 参考人に対する質疑はこれにて打切り、政府に対する質問を続行されんことを望みます。
  147. 稻田直道

    稻田委員長 大澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  148. 稻田直道

    稻田委員長 御異議ないのを多数と認めます。  それではこれにて参考人の方々の意見を承ることは終ることにいたします。参考人の方には御多用中をお繰合せをくださいまして、まことにありがとうございました。  引続き法案につきまして、政府当局に対する質疑を続行いたします。滿尾君。
  149. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は大臣の御出席を求めておるのでありますが、すぐにお取運びを願いたい。  それでは政府委員に伺います。議会にただいま身体障害者福祉法案というものが出まして、その五十條に、鉄道運賃をこれらの身体の障害のある人に相当割引するという法案が出ておるのでありまするが、この事柄の実態につきましては、私どもも社会的見地からこれに異存はないのでありますけれども、それぞれの法律で、当運輸委員会に対しまして連絡なしに、思い思いに国鉄の運賃制度を改変するような法案が出ますことは、将来非常にこれは重大な問題でありますから、当委員会といたしましてかくのごとき立案をせられる場合は、あらかじめ当委員会に十分なる連絡をとるよう、委員会意思表示をいたしたらどうか。かような決議案をつくつたらどうであろうかという動議を、私は皆様に提議いたしたいのであります。どうぞ御審議を願います。
  150. 稻田直道

    稻田委員長 この際運輸省当局の御意見を承つておきたい。
  151. 石井昭正

    ○石井政府委員 ただいまの身体障害者の運賃割引に関する件でございますが、これはいきさつを申し上げますと、本来厚生省の起案で、われわれ運輸省当局としても協議を受けておつたのでありますが、その際に法案の内容は、鉄道に乗車する場合に運賃を割引くという問題でございましたので、このことにつきましては私どもも、ただいま滿尾委員のおつしやるように、社会政策的に事柄自体として、もちろんそういう気の毒な方々に対する御協力は惜しまないのでありますが、しかしながら国鉄が独立企業体となりまして、収支の均衡を得るという原則に立つております一つの企業経営を要求されております以上、相当の減額となるようなものについては、まず第一に国家においては一般会計をもつて負担すべきではないか。運賃を免除すべきものは国鉄の負担でなくして、一般会計でやつたらどうか。これが筋道であろうということを申しておりまして、そうして少くとも減免の際におきますることを法律で書くことはいかがか。法律で書くものならば、建前上は当然損失補償ということを考えていただくことが、これが企業の建前上当然である。また憲法にも、公共のために使用する場合といえども、財産を使用する場合は相当の補償をしなければならぬということがあるのでありますから、このことを法律に書かないで、そうして実際上においては大国鉄でありますから、その程度の御協力をするということでどうかということで、折衝しておつたのでございます。そのうちにいろいろな事情で、これが国会提出というふうにかわられたのでございます。国会提出となりますと、立法府の仕事でございまして、われわれ行政方面には別段の御連絡がない。これは建前上やむを得ぬと思つております。実際上しかし今までの慣例では、事実上の御連絡があつたのでありますが、今回の場合におきましては事実上の御連絡はない。そうして突然として運賃法の改正という形で、しかも減額ということでなく、半額にするとはつきりきめておるのであります。この半額とする内容をしさいにわたつて見ますると、一等、二等、三等のいずれに対しましても適用される。また定期運賃に対しましても適用されるという結果になるような法律の書き方になつておるのでございます。私どもといたしましては、三等普通の旅客運賃について半額に減額をするということは、これは協力を申し上げるべき事柄ではないか。かように実際上の問題については考えておるのでありますが、定期運賃あるいは一、二等運賃等につきましては、実際問題としても若干の疑問がないことはないのでございます。しかしながらいずれにいたしましてもかようなことは、国鉄の財政に多かれ少かれ相当の影響を生ずることでございますので、国鉄全体の経営全部について十分な御関心と御理解を持つておられ、しかも当省の所管でありますところの運賃法の御審議を願う当委員会におきまして、いろいろ御検討願いまして、その結果として国会において法律を御制定になります場合においては、これはもちろん当然私ども十分これに快く従わなければならない。かように考える次第でございまするが、もしそうでなくして、当委員会の御審議を経ずして、各方面において個々ばらばらにこういうことが行われますと、現在の事柄自体については、もちろん気の毒な方々に対する問題でございますので、われわれといたしまして一向その内容について反対はいたしませんが、しかしながら、いろいろ社会政策、経済政策上の御要求に基きます運賃の減免等が相当あるのでございますから、その点を各方面で個々的に御提案になつて、それが可決されるということになつてしまうということは、私どもといたしまして今後国鉄の経営を監督して参る、あるいは実際に運営して参る国鉄当局といたしましても、相当憂慮にたえないことになるのではないか、かように考える次第でございます。
  152. 稻田直道

    稻田委員長 委員長から一言この問題につきまして意見を述べておきまするが、いやしくも国有鉄道の運賃を云々することを、運輸省を無視してやり、特に運輸委員会にかけなければならぬような運賃に関する問題を、厚生委員会がきめることは、まことにもつてどうも不穏当だと思う。いかが思いますか。     〔「同感」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 稻田直道

    稻田委員長 向うの方ではきようすでに採決したそうです。この運輸委員会にかけるべき運賃問題を、厚生委員会の方できめるというふうなことは、一応運輸委員会にこういう問題があるがというて、合同審議をやつてくれということぐらい申し込んで来なければならないのに、何ら運輸委員会には申入れがない。そうしてきよう採決したということは、まことにもつて運輸委員会を無視するのみでなく、国会内における常任委員会において、意思の疏通を欠くこと最もはなはだしい。これは黙視できぬと私は思います。
  154. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これはこの委員会で決議か申合せをやつて、嚴重に厚生委員会に申し込まれたい。
  155. 稻田直道

    稻田委員長 滿尾君の動議はしばらく留保していただきたいと思います。  それでは田中君に発言を許します     〔委員長退席、關谷委員長代理着席〕
  156. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 私の質問運輸大臣並びに加賀山総裁でないと……。
  157. 關谷勝利

    關谷委員長代理 それでは石野君。
  158. 石野久男

    ○石野委員 私も運輸大臣でありませんと……。
  159. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 議事進行についで申し上げます。定足数も足りませんし、大臣も見えておられぬので、しばらく休憩されんことを希望します。
  160. 關谷勝利

    關谷委員長代理 それでは質問を続行いたします。滿尾君。
  161. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は運賃についてお伺いいたします。まず第一に、藪谷業局長にお伺いしますが、先ほどの御答弁の中に、十円から運賃実施ということを考えて、実は八割であつた。ところが遅れれば遅れるほど、運賃の値上げの比率が多くなるのだ。早ければ値上げの率も少いのだというふうな考えであつたかのごとき印象を受けたのでありまするが、私はこれはちよつとつじつまが合わぬように思うのであります。運賃を値上げするというのは、その経過年度において赤字はいくら出たか、その経過年度の赤字を補填するのが目的ではなくして、われわれは国鉄の運賃というものは、恒久的の性格を持つていると思う。従つて当該年度の赤字の克服ということも重大な問題ではありますけれども、少くともその目標は、平年度における恒常的な状態において、これだけの赤字が出るのだから、これだけの率にきめるのだと見るべきではなかろうか。あとどのくらいあるからと言つて、それによつて値上げの起案の率を変更するということは、運賃値上げを取り運んで参ります基本的な技術の面において、疑惑を生じているのでありますが、そのお考えを教えていただきたい。
  162. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 滿尾さんの御質問に対してお答えいたしますが、私の先ほど説明が、あるいは言葉が足りなかつたかと思いますが、御承知のように国鉄運賃收入の中で、貨物運賃收入は、平年度において約三百億でありまして、八割値上げして若干の減收を考慮いたしますと、おそらく二十五年度においては二百三十億内外になろうかと思つております。それを二十四年度予算においては、一月一日からもし改正が実施せられるといたしますと、大体五十七億程度の増收にとどまるかと思いますが、今年度の八十六億に対しまして、大体三十億程度の赤が生ずるのでありますが、これは合理化と一般会計よりの補填によるほかはないと考えております。最初八割を計画いたしたのは、十月ごろから、こういうことでありますが、それを一月に直しますと、やはり三十億ばかり赤字が出ますから、それの穴埋めとして、今言つたような処置をとるよりほかないと存じております。
  163. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は本年度のこの政策そのものには、大して異存はないのでありますが、お尋ねしたい要点は、遅れれば遅れるほどたくさん値上げをしなければならぬということです。なるほど当該年度の赤字を埋めるにはその通であります。しかし運賃値上げというものは、その立案当時の経過年度の残存月数の関係で、非常に高率をかけて、翌年以降はまるまる十二箇年、その高い率でとるということは非常に不合理じやないか。運賃のベースを動かすことは、平年度を念頭において、値上げの率をきめるべきではなかろうかと思うのでありますが、これはつまり運賃値上げというものに対する、基本的性格に関する疑問であります。今年の運賃値上げという議論以上に、その点についてどういうふうにお考えになつておるか、お伺いしたい。
  164. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 二十五年度における財政の収支を予想いたしますと、一応その経費は現行程度にとどめまして、なお物価補正等の見込みあるいは節約等を考えましても、現行運賃では二十五年度の平年度において、なお二百三十億程度の赤字が出るのでありまして、それには今申した通り、八割を値上げしてちようど減收を見込んで二百三十億程度の財源ができて、これでつじつまが大体合うのであります。本年度の点については先ほど申した通りであります。やはり来年度においても、なおかつ二百三十億程度であるから、八割を値上げしていただかないとつじつまが合わない。こういうことであります。
  165. 滿尾君亮

    滿尾委員 そういたしますと、今年度の経過的な年度の赤字の補填と、二十五年度の平年度の赤字の関係が、偶然一致したというわけでございますか。
  166. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 そういうことでございます。
  167. 滿尾君亮

    滿尾委員 それではさらに伺いますが、一体この運賃というものは、なぜこういうぐあいに小刻みに改正するか。わが国の国民経済のベースをなすべき国鉄の運賃というものが、数箇月ごとに始終動揺しているということは、これはまことに遺憾なことであると思う。そこで運賃率の安定性ということは、御当局はどういうふうに考えておられるか。この点はさらに大臣が見えましたときもう一ぺん伺いますが、事務当局の御意見一応伺つておきます。     〔關谷委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 石井昭正

    ○石井政府委員 小刻みに上げているというお話でございますが、貨物運賃は昨年七月に改正いたしまして以来、今度が初めての改正でございます。
  169. 滿尾君亮

    滿尾委員 貨物運賃は初めてでありますけれども、旅客運賃はついこの間上げたばかりでありまして、結局国鉄の運賃という一貫した点から言えば、これは小刻みでありますが、これはいずれ大臣が見えましたときに譲ります。  それでは貨物運賃の基本的な観念についてひとつ伺いたい。国有鉄道からパブリック・コーポレーシヨンになりまして、独立採算制ということがきつく言われて来ましたが、今後この貨物運賃の基本的な考え方を、やはり負担力説、あるいは実費主義というものを、今後相当強く見られるお考えかどうか。その点について伺いたい。
  170. 石井昭正

    ○石井政府委員 貨物運賃につきましては、小運送実費主義と負担力説との両主義があることは、御指摘の通りでございます。現実の貨物運賃につきましては、そのいずれだけと決定しているわけはなくして、その両方相まつて決定いたしておるのであります。今後も実費説あるいは負担力説の両方を彼此勘案いたしまして、公正妥当な運賃を設定するのが、貨物運賃のあり方であると考える次第であります。
  171. 滿尾君亮

    滿尾委員 今の御答弁でははなはだ不満足でありますが、今日まで運輸省直営の鉄道として、貨物運賃の構成を考えられておりましたが、その基本的な観念に変更がないかどうかを私は伺つておるのであります。もちろん一つの主義に一方的に偏するということは、かなり困難であろうことはよく存じておるのでありまするが、独立採算性という特殊、と言つてぐあいが惡いが、特にそういう強い光に照らされて今後パブリック・コーポレーシヨンとしてお歩きになるとすれば、従来にも増してコスト主義というものが加味せられるという必要がありはせぬかと私は考える。従来は非常に負担力説の色彩が強かつた。それを今後薄くして、漸次コスト主義にかえらるべき筋合いのものではないかと考えたので、その点について当局の意見を伺つたわけであります。
  172. 石井昭正

    ○石井政府委員 貨物運賃の平準化いたしましたレベルにつきましては、お説通りパブリック・コーポレーションともなりますれば、これは原価主義、実費主義にのつとつて行くのが当然であり、また今度の改正も、その点が重要な大きな要素となつて御審議をお願いしておるのであります。しかしながら個々の貨物に対しまする賃率の配分につきましては、相当負担力というものを考えてやるのが、これは滿尾さんも御承知の通り、世界各国の鉄道に共通な貨物運賃の体系ではないかと考えておる次第であります。
  173. 滿尾君亮

    滿尾委員 私の質問の要点をやはりぼかしておられる。私は従来やつてつた比率よりも、コスト主義を重く見るように、方針の変更があるかないかを聞いておるのであつて、方針を変更しないという御意向であるか、するという御意向であるか、その点を伺つておるのです。
  174. 石井昭正

    ○石井政府委員 重ねて申し上げまするが、個々の貨物に対しまして賃率の配分をどうするかということは、負担力を相当念頭において考えなければならぬことございまして、その点については今後も従前とかわりないと私は信じております。
  175. 滿尾君亮

    滿尾委員 運賃割引でございまするが、運賃割引は運賃法の中に現われて来ておらぬのであります。従つてこれはコーポレーシヨンの総裁が独断で專決できる事項であるか。あるいは国鉄監督局長のところまで出して、大臣の認可を必要とする事項であるか。もし認可を要せずしてできるということになりますると、運賃制度としてはここに一つの大きな穴がある。その点について主務官庁はどういうふうにお考えになつておられますか。
  176. 石井昭正

    ○石井政府委員 運賃割引につきましては、これは運賃法で御決定願つておる基礎的な賃率についての変更は、きわめて軽微な、全体として国鉄の財政收支に影響のないようなものに限つて、国有鉄道総裁が総裁限りでできるようになつておるのであります。従いまして、ただいま滿尾委員は、大きな穴があるとおつしやいましたが、そういう大きな変更については、割引は国有鉄道総裁にはまかされておらぬ、かように考えられる次第でございます。
  177. 滿尾君亮

    滿尾委員 これまた御答弁がはなはだぼけておるのですが、運賃割引と言いましても、現行の貨物等級表を見ますと、ほとんど恒久的に割引政策をとつておられるものがある。これなんかはいつまでも割引主義をとつて行かれるつもりか。本来ならば当然等級の変更があつてしかるべきではないかと思うが、これについても一つ問題がある。これは国鉄総裁に限りできるものであるかどうか。私はさらに聞きたいのは、季節的にある期間を区切つて、あるいは発送地域、着地域を区切つて、季節的に地域的に、かつ個々の貨物別に行われるところの営業政策上から来る運賃割引、あるいはまた国策的な社会政策的な見地からするところの運賃割引というようなものについてのお取扱いは、どういうふうになつておるかということを伺いたい。
  178. 石井昭正

    ○石井政府委員 ただいまのお話のございましたような運賃の変更は、全体として国鉄の財政に影響を及ぼさない範囲におきましては、国有鉄道総裁限りできることになつております。しかしながら営業政策と申しましても、他の運輸機関等との関係によりまして、不当な競争の行われるような運賃の割引は、国有鉄道総裁がするとは思つておりません。かりにもしそういう事実がございましたときは、運輸大臣は公益上必要なる命令を発して、これを修正させるつもりでございます。
  179. 滿尾君亮

    滿尾委員 どうも政府委員はことさら私の質問の要点を避けておられるように私には感ぜられるので、どうもピントが合わないのであります。運賃法第八條の国鉄の收入全体に影響のない軽微の云々というのは、私は割引政策のことではないと思いまするが、その点について当局の御意見をただしたい。ここに割引というのは、あの八條にいうものではない。八條のいうのは、別個の基本的な運賃の賃率、あるいは等級の変更を指しているものはないかと思うのですが、第八條の解釈からお伺いしたい。
  180. 石井昭正

    ○石井政府委員 ただいまの御質問でございますが、これは私当時立法当事者として、関係方面とも折衝し、また国内的にも責任を持つて立法いたしたのでありまするが、御指摘の運賃割引のごときは、八條によるものであるという解釈でございます。なお付言いたしまするが、條文の表現の仕方が、今までの法律と非常に異なつておりますので、あるいはそういう御解釈をいただけなかつたかと思うのでありますが、この点は終戰後における日本の特殊事情にかんがみまして、御了承を願います。
  181. 滿尾君亮

    滿尾委員 それでは運賃割引に関しては、大臣の認可は要らないというわけですか。
  182. 石井昭正

    ○石井政府委員 第八條の規定による限り、大臣の認可はただいまいりません。
  183. 滿尾君亮

    滿尾委員 この運賃の値上げに関しまして、たての反面をなしますものは、鉄道の合理化であり、サービスの改善でなけらねばならぬことは、私先ほど菊川氏にもただしたようなわけであります。今回はコーポレーシヨンの方にお伺いしたいのでありますが、一体いかなる合理化を並行的に考えておられるか。またその合理化にも二つの面があると思う。一面におきましては増收のくふうをこらされる面が一つあるだろうと思う。一面におきましては経費の節約を考えられる面があるだろうと思う。第三面においては、将来の利益を生むべき基本的な施設の改良計画というものがこれにあるであろう。こう考えるのでありますが、そのおのおのにつきまして、ごく簡単でよろしゆうございますから、アウトラインを教えていただきたい。
  184. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 まず第一の、二十四年度において国鉄として、経営合理化によつてどれほどの節約をしたかという点でありますが、従来日通に委託しておりました小口貨物の取扱い事務を直営することによりまして、まず本年度は二十五億浮かしました。また石炭の節約によりまして約二十億、入札制度によりまして大体十五億から二十億程度節約いたしました。車両の修繕費につきましても二十億から二十五億程度の節約をいたしたのであります。そのほかに物件費としましては、前議会においていろいろ御注意がありました死退蔵物資の減少でありますが、これにつきましても、前年度に比しまして貯蔵品が約三十億程度節約になるかと思つております。そのほかに第二の人件費でありますが、過般御承知のように全員の約二割、十二万ばかりの人員整理を断行いたしまして、本年度はこれによつて給與は大体五十億と推定いたしておりますが、退職資金等考慮いたしますと、そう大きな経費の節約にはならぬと思います。来年度におきましては、相当の節約になろうかと思つております。大体以上申し上げたところを概算いたしますと、確かなところは百億から百二十億程度の節約を、前年度に比してはいたし得たと思つておりまする来年度以降におきましても、なおこの上に節約ができるかどうかにつきましては、目下年度予算の編成にあたりまして十分注意して、できるだけ節約を期して行きたいと思つております。  今後増收方面としていかなる政策を持つておるかという第二の御質問でありますが、旅客におきましても貨物におきましても、輸送量の増加に対応して輸送力を増強して行かなければならぬことは確かでありまして、旅客においては外客誘致であるとか、近距離の列車の回数を増すとか、いろいろ方法があります。また貨物につきましても、出荷誘致運動、増送運動などを展開すベきでありまして、ただいまにおきましても暮の出荷期を見込みまして、増送運動を展開しておる次第であります。雑収入におきまして、広告料とか、あるいは諸料金の改正とか、そういうことについても本年度においては、前年度よりも約十億程度増収を期待しておりまして、今までの実績ではほぼ計画通りに、進んでおります。  第三点の、今後の施設等においてどういう節約、合理化の計画があるかという問題でありますが、まず一番大きいのは御承知の電化であろうと思います。石炭の節約につきましては非常に大きな問題かとも思いますが、ただ石炭節約もまるまるもうかるのではなくて、やはり電力の差は、動力におきまして大体半分でございます。しかしながら電化工事による原価償却、あるいは利子とか、補修費等に、非電化区間よりもよけいかかりますので、かれこれ差引きますと、電化すれば約二〇%の節約が可能であろうと存じます。しかしながらこれは東海道等のごとく、非常に條件のいい路線でかような実績を收めておりますが、今後行う五箇年計画の約三千キロの電化に対しましては、差引條件が悪くなるので、六〇%ないし一〇%くらいに下るであろうと思います。電化以外の事項につきましても、いろいろと御意見があろうと思いますが、今までやつている項目をますます強化して、できるだけ節約をして行きたいと考えております。
  185. 滿尾君亮

    滿尾委員 大体合理化のお話を伺つたのでありますが、その中でもう一言伺いたいことは、増收対策の中に旅客の誘致貨物の誘致運動を展開せられることもまことにけつこうであろうと思いますが、このごろ新聞等で拜見しますと、ときどき第三者から見ていかがわしいと思われるような企画が、運輸省の国鉄の企画として現われる。この間も去る委員から質問がありましたが、映画のスターをおとりにしたり、あるいは酒を飲ませるとか、あるいは女ばかりのハイキング乗りをしたということが出ておりますが、いかにも国鉄が赤字を出しますことは、めぐりめぐつて国民の不利益になり、国鉄の健全なる経営は、公共の福祉にも深くつながつておりますが、反面考えてみますと、国鉄が黒字になりさえすればよい、増收になりさえすればよいということで、国民経済的に見ましてまつたく浪費と目せられる、あるいは道義的に見てどうかと思われるような、目的のためには手段を選ばずというような誤解を受けるような企画があるように散見せられるのでありますが、一体国鉄当局としてこれらの企画に対して、どういうようにして指導してやつておられるか、お伺いしたい。
  186. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 もちろん御注意のように、国鉄の増收をはかるのが第一目的でありますが、ただこれだけに終始して、何が何でも増收すればよいというような指導方針はとつておりません。ただ地方に参りますと、その地方の希望をいれて計画した結果、中央の方針とはやや違つて、行き過ぎたものも一、二あるかと思いますが、いろいろの運動をやるに際しまして、一つや二つは間違いのあるのは常であります。地方に対しても御説のような指導方針をできるだけ徹底して行きたい、かように考えております。
  187. 滿尾君亮

    滿尾委員 私はこの際特に国鉄の当局にお願いいたしたいことは、結局目前の国鉄の黒字よりも、国鉄の黒字を念願する根本は、国民経済の健全な発達にある。従つて国民経済の利益と合致する限度において、増收政策というものは存立するのであつて、その点の考慮を絶対にお忘れにならぬようにお願い申し上げたい。実は前の委員会において当局から、今私の申し上げるような筋から脱線したと誤解されるような御答弁がありましたので、私は実は非常に心配しておつた。きようも菊川君に申しました通り、国鉄は国民に対するサービスにおいて、その軽重先後を誤らぬように御勘案を願いたい。私どもから言わせれば、国民は何を求めるか、この本質的なところに対して十分にサービスしていただいて、末梢神経的な、皮膚の上の感覚的な面でなく、もう少しはつきりした御経営をお願いいたしたいということを申し上げておきます。
  188. 稻田直道

    稻田委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後五時七分休憩      ————◇—————     午後六時五十八分開議
  189. 稻田直道

    稻田委員長 それではこれより再開いたします。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。田中堯平君。
  190. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 第一にお聞きしたいのは、五月一日に旅客運賃の値上げをしたときに、政府側の御説明では、旅客運賃は値上げしても、物価にはあまり響かないが、貨物運賃を値上げすると、物価に響くからやらぬということでありました。その当時委員会では、貨物運賃の方を少し値上げして、旅客運賃の方は少し緩和してくれというような要求を出したにもかかわらず、そういうような見解であつた。ところがそれから半年しかたたぬ今日、今では事情がかわつたから、貨物運賃を値上げをしても——しかも八割というような大幅な値上げをしても、物価にはさほど影響なしということを説明をされておるが、何としてもわれわれはその点は納得が行かぬ。しかも二%、三%というような、ほとんどとるに足らない程度の影響しかないということでありますが、しかも石炭などは、鉄道の輸送量のうちの二七%——三〇%近いものを持つておるが、こういう石炭なら石炭、あるいは銑鉄とか、いろいろ他の物価に及ぼす影響というものは、決して軽視すべきものではない。かように考えますが、この点について、一体物価にさしたる影響なしということは、どういうふうに考えておるのであるか。納得の行くように御説明を願いたい。
  191. 足羽則之

    ○足羽政府委員 その点については、あるいは前に御説明申し上げた際に触れたかと思うのでありますが、この半年の間の経済界のいろいろな情勢の変化もありまして、現在ではいろいろな物資にわたつて統制も解除され、また経済界もだんだん安定して参り、従つて先般旅客運賃の値上げが論ぜられました時代と現在とでは、大分時間的な隔たりと、それに伴う経済情勢の変化というものも相当あつたと思います。かつだんだん、物資も統制のはずれるものが多くなつて、いわゆる有効需要によつて価格も決せられるという時代になりますと、しばしばご説明を申しましたような、現在程度の運賃の値上げによる価格に対する運賃の占める割合というものも、流通過程でだんだんそれが吸收されて、その影響も少くなるのではないか。こういつた考え方を持つておる次第であります。  それから石炭の例をあげられたわけでありますが、素材に対する値上げは、ことにそれが原料品でありますだけに、いろいろそれが物の製造に使われるものでありますと、二次製品、三次製品というふうに、価格の大きなものの原料になるわけでありまして、やはりそうしたものは生産過程において、運賃というものの値上げが的確に、直接に値上げに響いて行かない。こういうふうに考えておる次第であります。
  192. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 その点については、当初すでに五月一日当時は、インフレも上昇カーブをたどつておるわけではないし、今日といえどもその事情はかわつておらぬと思う。さしたる情況の変化ということもないし、時日もわずかに半年しか経つておらぬ。いろいろな事情考えてみると、今日ただ三%とか四%あまりしか物価に対する影響がないという点は、まことにどうも了解に苦しむのですが、さらにお尋ねしたいことは、一体国鉄の当局は、今度の八割値上げということによつて、今度こそは大体收支償うような経営ができるというふうな自信を持つておられるかどうか。この前旅客運賃値上げのときには、これを上げれば何とかなるということでありましたが、ふたをあけてみると、半年もたたぬうちに九十億近い赤字が出て来るというようなことになると、国民は少しも国鉄当局や政府を信頼することができない。また旅客運賃を上げる。さらにはまたもう半年もたたぬうちに貨物運賃も上げるということであつては、まことに不安状態に陥ることになるが、この際はたしてこれで大丈夫やつて行ける。独立採算上大丈夫という御確信があるかどうか。独立採算上だめだ、相当額国庫から援助を得なければならぬという考えであるかどうか。その点、独立採算制をめぐる将来の見通し、それから将来に対する覚悟のほどを御披瀝願いたい。
  193. 足羽則之

    ○足羽政府委員 その点につきましては、これによりまして私たちは、お話の独立採算制を確保し得る、こういう見通しを持つております。
  194. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 この八割値上げによつて、五十七億の増收ということになるというのでありますが、しかし調べてみると、小口扱いの方は約十五億減、車扱いの方が約七十一億増であつて、差引五十七億ということになつております。ところで中小企業が関係しておる部門は、大体小口扱いが多いかと思いますが、そうすると十五億減というのは、中小企業の状態というものが、まつたく衰微するということを見通しての計算でありますか。
  195. 足羽則之

    ○足羽政府委員 ちよつとお尋ねいたしますが、小口扱いの減というのは、どの表でごらんになつておるのでしようか。
  196. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 これは秘書の方に調べさせた結果をお尋ねしておるのですが……。
  197. 石井昭正

    ○石井政府委員 そういうことを一向私たちのところで存じませんが、こういうことならわかるのでございます。当初予算に対しまして、小口扱いの方は、今度改めました予定收入は少くなつておる。しかるに車扱いの方はふえておる。こういうことならよくわかるのでございますが……。
  198. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 それはどういうわけですか。
  199. 石井昭正

    ○石井政府委員 それはこういうわけであります。小口扱いの方は、当初予算を組みました当時は、御承知の日通の請負つております業務を環元して、国鉄の手で直営するということが予想されておらなかつたのでございます。その後いろいろの関係から、急遽六月一日から、日本通運のやつております小口の積みおろしの関係を国鉄職員の手で直営いたしますことに、これは一部経費の節減の目的をもつて、やらざるを得ないことになつたのであります。その結果厖大なる小口扱いを国鉄の従業員の手でもつて処理いたしまして、一方従業員につきましては、定員法の関係で十分なる充足ができないというような関係でございましたので、極力小口混載扱いを奨励いたしました。この小口混載扱いと申しますのは、小品のものをまとめて車扱いにして、鉄道の方は託送になるわけであります。そういう制度を大いに奨励いたしましたもので、その結果といたしまして、小口は約半減いたしたのであります。その見通しをもちまして、小口の方は減收の見通しになる。また車扱いの方は、過日御説明いたしたかと思うのでありますが、そういう小口からの転貨もございますが、また一面一トンあたりの輸送キロが、公布予算考えましたときよりも少し延びて参りましたので、その関係を勘案いたしますと、トン数では減つておるけれども、トン数とキロ数とをかけ合せたトン・キロでは、幾らか増して参る。そういう関係で若干の車扱いは増ということになるのであります。
  200. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 提案理由の一つには、海上運送との調整ということが載つておりますが、それぞれまずお聞きしたいのは、海上運賃は今度はどういう措置になるのでありますか。
  201. 岡田修一

    岡田政府委員 海上運賃は、鉄道運賃の八割引上げに伴いまして、平均九割三分程度の引上げ方を考慮いたしております。
  202. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 いつからですか。
  203. 岡田修一

    岡田政府委員 これも一月一日から実施いたします。
  204. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 そこで海上運賃との調整ということですが、今海上運賃が非常に高くて、海上の荷物が陸に上る。そこで困るという問題があるわけなのですが、ところで陸上運賃を八割値上げをし、またそれ以上に海上運賃を値上げするということになれば、依然としてその調整はとれないということになると思うが……。
  205. 岡田修一

    岡田政府委員 現在鉄道の方に比較いたしまして、海上の方が高いと申しますのは、運賃そのもののほかに諸掛を加えて、全体の輸送経費を見た場合に、海上の方が高いという意味であります。すなわち海上の場合の輸送経費を見ますれば、たとえば石炭について申しますと、山元から港までの鉄道運賃と、港の積込みの費用、それから揚げ地におきまするおろす費用と、艀、回船、こういうものを込めて見た場合に海上の方が高い、こういうのであります。運賃そのものは海上の方が非常に低いのでございます。たとえば割合に接近しております若松・大阪を例にとりましても、現在鉄道運賃が五百十七円に対しまして、海上は三百三十六円、従いまして鉄道の方が八割上げますと四百円増すのでありますが、海上の方を九割引上げました場合に幾らになるかというと、三百円余りでございます。その間においてやはり百円の開きが出て来る。従つて鉄道運賃を八割上げ、海上運賃を九割上げましても、その他の港の経費が固定しているか、あるいは下りの傾向にありますので、海運の方が非常に割がよくなる、こういうわけであります。
  206. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 今度の運賃改正によつて、海上の運送が今の窮状を打開されるということを盛んに言つておられますけれども、どうもわれわれから見れば、それは一つの幻想ではないかと思われる。というのは、片一方が値を上げ、また片一方が値段を上げるということになりますれば、今のような説明にかかわらず、やはり陸の荷物を少しでも海上に移すということは困難ではないか。約三%というものが海上に移るように出ておりますが、しかし三%の荷物をもらつて、海上運送がそれで息がつけるかどうかという点について、御説明願いたい。
  207. 岡田修一

    岡田政府委員 大体今海上から鉄道の方に移つていると考えておりまするのは、月平均二十五万トンから、三十万トン程度であります。この程度の荷物は、今度運賃引上げが実施されます場合に、海上の方に帰つて来るもの、かように考えております。なおこの運賃引上げの前提といたしまして、これはまだ決定ではありませんが、かりに運営会が民間側の手にその内航業務を移すことが実現いたしますならば——これはまだ決定ではございません。日本側でそういう希望を持つておるのでありますが、そういうことが実現いたしますならば、この措置によつて、この運賃引上げと相まつて相当のものが海上の方に流れる、かように考えます。
  208. 稻田直道

    稻田委員長 田中君、あと五分ですが……。
  209. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 大臣にお伺いします。この木材とか硫化鉱とか砂利とかいうような、日本の経済再建には非常に重要な基礎資材が、やはり運賃値上げで困つておるわけである。ことに農業増産についても相当さしつかえて来ると思うのですが、これはとりもなおさずドツジ・ライン、言いかえるならば、日本に健全なる産業の発達をはかつて、それによつて健全なる物価の引下げを行おう、インフレの克服をやろうという、根本的なラインと非常に違つたことになつて来る。やたらに基礎資材が高くなつて来て、再建をやろうにもさつぱりできないというような結果になりはしないかと思うのでありますが、この辺の見通し並びに見解を大臣から伺いたい。
  210. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 この運賃値上げによりまして、国民の消費生活に対する影響は相当吸收ができるという見地で、運賃の値上げを目途といたしたのでありますが、もちろん上げまして、少しも影響がないというふうに申しかねることは、私も認めておるのであります。しかし一面におきまして、しばしば申し上げました通り、たとえば木材にいたしましても、あるいは鉱石にいたしましても、その他のものにいたしましても、基本生産資材が国民生活の面に直接に現われるまでには、二次製品、三次製品あるいは四次製品の形をとりまして、運賃の値上げがかりに木材に、あるいは硫化鉱に多少影響を及ぼすことは事実でありまするが、たとえば硫化鉱にいたしましても、それが硫酸に製造される。その硫酸を使つて肥料をつくる。その肥料がまた農業に使われる。また一面化学繊維というような方面に硫酸が行つて、その繊維がまたいろいろ二次、三次の製品になつて、国民生活に影響いたしますときには、何分の一の影響力を持つというような事柄で、私たちはさまで国民大衆の生活には圧迫を加えない。こういうふうに考えておる次第でありますが、他面われわれは今回の補正予算、あるいは来年度予算考えまするときにも、少くともやはりこの運賃値上げということが、多少の影響のあることはいなめないので、これは話せば、大したことではありませんが、マイナスのフアクターでございます。しかし一面プラスのフアクターといたしまして、しばしば総理大臣の施政演説あるいは大蔵大臣の財政演説でも申し上げました通り、シヤウプ勧告案による税の軽減とか、あるいは補給金の減少とか、あるいは公共事業費に多額の経費を計上いたしますとかいうような面で、インフレの收束を大いに目途といたしまして、物価はなるべく上げない。たとい運賃の値上げだけが、今回のわれわれの予算的措置におきまして、多少の申せばマイナスの面ということも言えるかもしれませんが、これをプラスの面で補うて、総体的に見ました政策では、決してこれが不適当な措置ではないと考えて、さような信念でおる次第でございます。
  211. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 きようは参考人の意見もいろいろ伺つておりますが、中小企業の代表者、あるいは石炭の関係の代表者の方々の言葉によると、たとえば石炭の方では、今度のような値上げをされたのでは、石炭生産者の方でもこの値上げ部分を吸收することができぬ。また消費者側の方でも、これを吸收する能力がない。そういうような言葉になつておるし、中小企業の方では、おそらく大半は壊滅をするであろうというようなことまで極言をしておるわけであります。それほどの重大問題であるので、今これを大急ぎにやつて行く。ことにこの前の大臣の答弁では、いろいろ等級の点などについては再考慮を要するがゆえに、来国会でまた新たに愼重に審議を重ねる方がよいと思うという意味の答弁がおりましたが、して見ると今度のこの運賃値上げの措置は、まことに暫定的な措置だということになります。そうすると一月一日実施といたしましても、四月一日までわずかに四箇月、その間は三分の一年になるわけですが、五十七億の三分の一、幾らのものでもないが、それほどの効果を上げるために、これほど暫定的な、不完全な、十分に練られておらぬものを、ここに強引に通そうとすることよりも、さつき申しましたように、中小企業者その他幾多の方面から、強烈な反対の声の起つておる法案を、来国会まで待たれて、愼重審議の上、等級なども考えられて、万全の策を講ぜられることが、政府の態度として賢明ではないかと思いますが、そういう御意向はないでしようか。大臣からお答え願いたい。
  212. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 来国会において、あるいは来年度の会計年度におきまして、等級表のいろいろなアンバランスの点のあることは事実ございますので、それぞれの権威者を集めまして、その点を十分に検討いたしまして、適当なものにいたしたいという考えは持つておりますが、今回のこの運賃値上げの措置を、来国会まで延ばすという考えは持つておりません。
  213. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 ことに非常に困つておるのは木材関係なんですが、これはどうします。このままでは、たとい一月から四月までの間といえども、非常に困つた問題になると思うが、その辺について、ことに木材関係について不測の困つた問題が起るのではないかと思うのですが、そういうことについて大臣は十分なる覚悟を持つておられるのですか。
  214. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 覚悟は常にいろいろな覚悟を持つております。木材その他の点についても、原則的に今回八割値上げの措置を認めていただくことを希望いたしておる次第であります。
  215. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 最後に、最初質問をしたのですが、ちようど大臣が不在でかわりの方がお答えになりましたが、五月一日からの旅客運賃値上げのときにも、相当自信ありげな政府の答弁でありました。旅客運賃値上げをすれば、これでもつてどうにか收支がとれるような答弁でありました。ところが半歳ならずして、たちまち今度はこのような八割も貨物運賃の値上げをしなければならぬというような状態に来ております。帰するところ私どもの見解は、これは元来交通事業というような公共性を持つたものを、独立採算で行こうというところに、根本的なむりがあると思うわけです。ところがこの根本的な建前をいつまでも独立採算制でつつぱつて行こうというならば、おそらく私どもの見通しでは、旅客運賃、さらに貨物運賃の再値上げと、次々にそういうむりをしなければやつて行けないことになると思う。そこでお伺いしたいことは、一体今度こそはこの貨物運賃の八割値上げによつて、もうここ当分は大丈夫、これでもつて国鉄の收支はとれるというような、そういう見通しがあるのか、ないのか。まあちよつとやつてみようという程度のものであるのか。その辺のところのはつきりした心組みを大臣から伺いたい。
  216. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 この春の旅客運賃の値上げによりまして、国鉄の收支をカバーするということは私も申し上げたのでありますが、これは私の見通しで、その当時はさように確信いたしておりましたが、やはり経済現象というものは、時間の経過とともに種々変化する場合がありますので、当時の見通しといたしまして、旅客運賃を上げました場合には、利用者の減耗が一〇%減るだろうという見込みをしておりましたところが、その後のドツジ・ラインの浸透、その他の経済現象から、旅客の利用率が一〇%以上も下りまして、この点は私も誤算を自認せざるを得ないのであります。つきましては田中君のただいまの御忠言は、まことに私も感謝いたすのですが、またぞろ貨物を八割上げて、時間がたちますとまたぞろ收支が合わなくなるのではないかという御警告ですが、この点は大いに肝に銘じて注意いたし、さようのことのないようにいたすつもりでおります。
  217. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 国有鉄道運賃法の改正によりまして、運賃の値上げをすることになつたのでございますが、これも先ほど来の政府の答弁なり、あるいは経済事情の面から見て、一応やむを得ないということはよく承知でき得るのでありますが、今回国有鉄道法の改正によりまして、公債の募集ができ得るようになりましたので、これによりまして加賀山国有鉄道総裁は、東海道線並びに上信越線等の電化をしたいということを発表しておるのでありますが、その電化によりまして採算上のコストが下つて参ることは、もちろん当然であると思うのであります。すなわちこの電化によりまして赤字の補填ができるならば、現在の貨物運賃の値上げにいたしましても、あるいは本年五月の旅客運賃の値上げという点も、これによつて一応採算があえば、また値下げをする意思政府にあるかどうかということを、一応お尋ねしたいと思います。
  218. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 東海道本線その他の線の電化が完成したといたしますならば、営業費の面につきましても相当の節約がか行われると思いますので、その場合にはただいま正確な計数上の材料は持ち合せませんが、旅客運賃あるいは貨物運賃の面も、これによつて相当に節約ができますから、あるいは値下げをすることが可能であろうと私も存じます。
  219. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 先般運輸委員会におきまして、委員各位が全国的に実地に国有鉄道の面、あるいはその他の面を休会中に視察をして参つたのでありますが、私たちも視察して参つた結果が、東海道線のごときにいたしますと、電化によつて、電化に投下したるところの資金は、二箇年間でこれが回收がつくというようなことを、鉄道局の局長なり、あるいは労働組合の諸君なりが申されておつたのでありますが、かように大資本を投下して電化した結果が、わずか二箇年でこの投下資本の回收がつくということならば、いかなる処置を講じましても、現在わが国の国有鉄道が赤字であるというような現状からかんがみまして、これを一刻も早く全国的に電化をしなくてはならぬというようなことは、私たち視察して参つた結果当然考えられる問題であるのであります。ここで資金その他の面ももちろんあることとは存じますが、先ほど申しましたように、このたび国有鉄道法の改正によりまして、公債の募集ができ得るとい段階に立ち至つておる以上は、これに対して積極的に政府はこの方針で進む意思があるかどうかということを、一応お尋ねしておきたいと思います。
  220. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 資本を電化に投下いたしまして、二箇年で回收できるというような御意見でありましたが、二箇年ではむずかしいと思うのであります。しかしながらこの電化によります利益というものは相当に考えられるのでありますので、従来から見返り資金においてこの鉄道電化の資本を調達いたしたいという線でいろいろ盡力をして参つたのでありますが、これが成功をいたしませんので、また今回の補正予算におきましても、予算に組み入れることを考えましたが、これも一応成功いたしません。また三十五年度の本予算におきましても、電化の費用を計上いたそうと努力いたしておりましたが、これもまだ公然不可能というほどでもございませんが、いろいろな関係で、目下電源が不足というようなことからもにらみ合せまして、ただいまはまだ何とも確定をいたしておらないのであります。いずれにしましても電化するということは、われわれ当局といたしましても、また国民生活あるいは輸送の面の改善という点からも、非常に望ましいことでございますので、まだそこまで、運輸当局といたしましてはかくかくにするというほどの決定を見ておりませんが、いわゆる鉄道債券というようなものも、鉄道の建設面の仕事にこれを使い得るという意味合いで、今回会計法の一部改正の中にそういう規定を設けた次第でございますので、いずれ予算に計上の能、不能というような問題とにらみ合わせまして、鉄道債券による電化事業その他の建設面の仕事に着手するかいなかということにつきまして、十分に考慮をいたしたいと考えておる次第であります。
  221. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 加賀山国有鉄道総裁が、東海道線並びに上信越線の電化に鉄道公債を引当てるということを申されましたので、この点に対して私は、本日加賀山総裁がおりませんから、藪谷業局長質問をしたいと考えておるのであります。すなわち東海道線並びに上信越線の電化をするということは、最も適切な処置であり、当然のことであると存じます。なお上越線と一貫するところの両毛線という線がありますが、こういう両毛線のごときは、もちろん現在のわが国の経済事情からいたしましても、外貨獲得という面からいたしましても、最もわが国の重要な産業地帯でございます。すなわち高崎、前橋、伊勢崎、桐生、足利、佐野、栃木、小山というような所は、御承知の通り機業地でございまして、かかる産業の育成という面から見まして、なお外貨獲得という面から見ましても、このような重要産業地帯をこの機会に電化することは、緊要であると私は考えるのでありますが、藪谷業局長の見解を一応伺いたいと思います。
  222. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 国有鉄道の電化が、国有鉄道の財政の健全化のみならず、わが石炭資源に対する国策的な見地から申しましても必要なことは、申し上げるまでもありません。そこで国鉄といたしましては電化の順序といたしまして、従来は勾配線の多い所、あるいは煤煙の多いトンネル区間の救済のために、こういうことでありましたが、これを今回新しい観点から、運輸量の多い所から電化する。こういう方針を立てまして、東海道、山陽、東北、奥羽線等の本線からまず電化いたしまして、それからこれに関連する支線で運輸量の多い所、これは全国をながめますと、いろいろございますが、今お話に出ました両毛線のような、非常に交通量が多く、かつ本線に関連しております所は、設備費もそれだけ少くて済みますので、非常に有望な電化区間だと私も存じている次第であります。しかしながら順序は今申し上げたような順序でありまして、今すぐにいつからというようなことは申し上げかねますが、本線を電化したあかつきには、非常に有力な線だとわれわれも考えている次第であります。
  223. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 ただいま藪谷業局長からの答弁によりますと、わが国の産業の上からいたしましても重要な地点であり、鉄道としての採算の面から見ても、最も必要であるということでありますが、私は先ほども申しましたように、旅客に対しましても貨物に対しましても、運賃の値上げということは、われわれ国民生活にとりましてまことに重大な問題であり、しかも現在中小商工業者といたしましても、本日の公聽会でありましたかの機会にも、いろいろ御意見が述べられたのでありまするが、かような点からかんがみましても、この運賃の値上げという面に対して、政府は一日も早く電化を実施して、運賃の採算が、すなわち国有鉄道の採算がバランスがとれるようになるならば、この運賃の値下げをする。あるいはこれに対して適切の措置を講ずる。こう先ほど運輸大臣は申されましたが、先ほど申しましたように宇都宮管理部といたしましても、両毛線のごときは最も採算がとれ得る線であるということを、私たちが本年視察に参りましたときもはつきり申されております。かような点から参りましても、また重要産業地帯であり、しかも採算の点から見ても十分とれ得るということを申されておりますので、こういう重要産業地帯の国有鉄道に対して、一日も早くこの電化を実施する意思があるかないかということを、運輸大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  224. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 この電化の順位等につきましては、ただいま籔谷君から御説明がありました通り、大体基本の観念は幹線本線からスタートして、順次それ以下に及ぶという観点で参つております。本線はもとより、これに準ずる重要な支線も相当ございますので、ただいま大澤君の仰せられた両毛線のごときも、もし資金の関係等とにらみ合せまして、本線の建設あるいはそれに準じて、やつてもよろしいというふうに特つて行けることができれば、非常に仕合せだと考えている次第であります。
  225. 石野久男

    ○石野委員 大臣は生計費等に対しての影響は、この八割値上げによりましても大してないであろう。いろいろとその間において吸収されて行くであろうというふうに言われているのでありますけれども先ほど参考人の意見としては、国鉄労組の諸君ども、約六%ないし八%くらいの影響があるだろうと言つております。中小工業の諸君にいたしますならば、これは生計費の問題だけでなしに、企業はつぶれてしまうだろうというふうに言つているのであります。再三の重複した御質問でありますが、この点についてはつきりひとつ、どの程度に生計費等に響くものであるかどうかということのお見通しをお伺いしたい。
  226. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 これは凡百の商品がございますし、またその商品の生産過程、消費過程、あるいは採算状態というような点で、單に数字の上の現象だけでは、十分ではないのでございます。たくさんあるものを、一々これはどうだということを吟味いたすのも、むろん必要でありますが、まず大量観察をいたしているのでありまして、それはつまり現在のこの運賃が物価に占める割合、その物価も、国鉄が運搬しておりまする重要なる二十六の品目に対しまして、日本経済がまずバランスのとれておつた昭和十一年を基準をいたして考えてみますときには、昭和十一年にはこの運賃の占める割合は四・六%であつたのでございまするが、現在はそれが二・三%になつている。これを八割値上げをいたしましても四・三%にしかすぎない。これは平均でございます。もつともこの個々の割合を申し上げまするならば、木材とか、あるいは鉄鋼とか、あるいは石灰石とか、砂利とかいうものに対しましては、相当大きな割合で値上りがあるのでありますが、こういうものは国民の消費生活には二次、三次、四次というようなぐあいに分割されて、運賃の値上げをしたその影響の割合の何分の一、あるいは十何分の一が、終局の国民生活に、お互いの生活の面に響いて参ります。こまかく一々何%どう響くかということは申されませんが、一応運賃と物価の関係はそういうように考えます。まずインフレーションは大方ストツプの過程にあり、むしろデフレ傾向、あるいはデイス・インフレという今日の時代におきましては、やはり国民生活の中でまず吸收できる。一部分の個々の商品については、あるいは吸收のできがたいものもあろうかとは思つておりますが、全体といたしましてはまずできるという観点で、実はこの案を提出いたしました次第であります。
  227. 石野久男

    ○石野委員 生計費に響くか響かないかということについては、いろいろ見方の相違もあるだろうから、私はこれで聞きませんが、資料によりますと、大体今度の値上げによつて、小口扱いあるいは車扱いは三%くらいの利用減だろう。こういうふうになつているわけでありますが、はたしてこの三%で食いとめられる見通しがあるかどうかという問題でございます。これは先ほど田中君からの質問にもありましたのですが、旅客の運賃を値上げしました場合にも、大きな誤算を起しているわけでありまして、今度の場合、はたして三%くらいの利用減でとまるのであるかどうかということについて、この三%くらいを見込んだことについての、一応説明をしていただきたいと思います。
  228. 石井昭正

    ○石井政府委員 大体三%の減少を見込んだ理由は、海運への転貨を考えまして、石炭、銑鉄、木材等の主要物資の貨物運賃について、これを検討いたしまして、こうして九州・本州間・北海道・本州間等について、石炭の海運への転移を予想いたしました。またそのほか九州・本州・北海道・各相互間の貨物のうち、原木、セメント、魚貝類、わら工品、種ばれいしよ等につきましても、およそ月間平均の見通しをつけたのでございます。このほか自動車への転貨でございますが、これはすでに相当近距離貨物は自動車へ転貨しているのでありますが、さらに現状のトラック輸送に対しまして、五十キロ車扱い貨物につきましては、五十キロ程度のものはこれは品目等によりまして違うのでございますが、大数的な観察をいたしまして、月間の輸送量の減少を大体見込んだのでございます。こういうような点を見込みまして、月間約三百万トン、あるいは多少それ以上が、大体転貨数量だと思つております。しかしお話のようにほんの多少は、運賃の高いために動かなくなるというものも、考えられることは考えられるのでございますが、これは旅客と違いまして、貨物の輸入は生産事業でございますから、必ずしも運賃が高くなつたからといつて、旅客の輸送が抑制されるようなぐあいに抑制されるとは、私ども考えておりません。のみならず日本の経済の再建は、着々として進んでいることを信じておりますから、本年の輸送量に比較いたしまして、来年度の全体の貨物の輸送量の要求が落ちるということは、予想いたしておりません。本年よりも来年、来年よりも再来年と、貨物全体の輸送を要求する量は多くなる。ただそれが海陸いずれの分が多くなるかというだけのことでございますので、そういう点を勘案いたしますと、三%の減少も実は来年度について見ますれば、あるいは五%なり六%という減少までにわたるというような考え方もできるのではないかと思うのでございます。
  229. 石野久男

    ○石野委員 輸送量が減少するであろうという見通しについては、いろいろな見方があると思います。先ほどの参考人のお話によりまして、たとえばトラツク業者の場合によりますと、相当トラツク業の距離が延びるであろうということも言われております。そこにおいては相当な量がトラツクにまわつて来るだろうということも数字をあけておるわけでありますが、ただいまの御答弁にありましたように、おそらく三%か五%になり、一〇%になつて行くだろうと私は思います。時間がありませんので、あまりこの点につきましては、長くお尋ねできませんのを遺憾と思いますけれども、次に今度の補正予算を組むにあたつて、特に赤字を埋めなくちやならぬという意味合いから、提案理由にもありましたいわゆる三十六億二千六百九十七万七千円という赤字についてでありますが、運賃の値上げをいたすについて、どのような形で当局はこういう赤字の見込みをされたのであるかどうかということについてお尋ねいたしたいのでございます。それは二十四年度補正予算提出するにあたりまして、当局から出された資料の中において、政府機関予算補正の内訳の中に入つております八十六億二千六百七十七万というものは、当局の同じ資料の中にあるところの運輸收入月別通算算出表によります場合の数字と比較いたしましても、これが少くとも六十二億四千六百万くらいのものになるので、その間約二十四億の差があると私たちは見ておるのであります。これは同じ表の中に入つている数字でございまして、この見込みの相違というものは、どうして八十六億二千六百万になつたのであるかどうかということについて、御説明願いたいと思います。
  230. 石井昭正

    ○石井政府委員 ただいまの資料でございますが、おそらく私が考えますには、ごらんになつ資料は、総体として結果と出ております八十六億の收入減の内訳をいろいろ書いた。その中にあるいは増收するものもあり、減收するものもあり、差引結局八十六億になりますが、その減收の方だけをごらんになつてお話ではないかと思うのでございます。
  231. 石野久男

    ○石野委員 減收の方だけという意味ではないのでありまして、二十四年度補正予算説明資料の中の、月別の取扱い收入旅客計というものは、七百十六億七千五百二十四万三万円ということになつているはずでございます。この数字の中から純收入を出しますと、約六百八十億くらいになるはずでありまして、ここでは当初交付予算であるところの七百三十四億三千万との差が約六十二億ほどの不足になるはずでございます。從つてあの説明によりますところの政府機関予算の補正内案というものに出ております九百八十六億五千七百万円との差において、約七十四億の差があるはずであります。決して片方の減だけを見ているわけではございません。
  232. 石井昭正

    ○石井政府委員 失礼ですが、どの資料でございましようか。
  233. 石野久男

    ○石野委員 予算説明に出しました資料ですから、ここにもらつている資料ではないのです。
  234. 石井昭正

    ○石井政府委員 ここに差上げました補正予算の表は、今国会に提案御承認を得ましたものをそのまま写したのでございまして、食い違いはないと考えてあります。
  235. 石野久男

    ○石野委員 予算の八十六億一千六百数万円というものについて、これはもうすでにこの経費の中には入つているわけです。この数字を出す資料が問題なのです。
  236. 石井昭正

    ○石井政府委員 八十六億二千万円の減少を計算いたしましたのは、これは本年の第一・四半期におきまする実績をそのまま出しまして、その後の旅客運輸量を第二・四半期まで、前半期の九月末の実績を基礎といたしまして、後半期は月別パートをとりまして、この月別パートを九月末におきまするところの標準数量に当てはめまして、毎月の運輸量を想定いたしました。これに対しまして一人当りの平均賃金をかけまして、算出いたした次第であります。
  237. 石野久男

    ○石野委員 当局の算定の基礎になつておりますのは、そういう数字を出すにあたりまして、八月を基準にいたしました。いわゆる人員一人当りの旅客運賃というものを基準にして、その後数字を出したというように説明があつたわけでありますし、また私どもからいたしますると、その八月基準がはたして正しいかどうか。八月は御承知のように国鉄の人員整理がありましたあとで、最も能率の悪かつたときと思うのであります。そのときを限つて出しております数字は、私たちとしてはふにおちないのであります。なお收入を一人当り旅客人員において出しておるということに対しても、疑問があるのでございます。私どもはやはり收入を基準にして出すべきだ、こういうふうに思つておるわけです。それは別といたしまして七百十六億という年度末におけるところの取扱い收入を、旅客において計算しておりまする当局が、この八十六億二千六百万というところの赤字を出すについては、その数字だけでも二十四億の差があるわけでございます。これがどうしてもふに落ちない点であります。
  238. 石井昭正

    ○石井政府委員 差があるとおつしやつておるのでございますが、私どもはそういう間違いは絶対にないと信じております。
  239. 石野久男

    ○石野委員 どうも間違いがないとかあるとかいうことを待つてつても解決がつきませんが、いずれにいたしましても当局の見込みでは来年の三月、年度末におけるところの旅客收入の増が、七百六十六億七千五百二十四万三千円という見込みがあるはずでございますので、ここで二十四億の差が出て参ります。それのみならず私どもいろいろ調べておるところによりますと、この八十六億というものが約三十三億くらいのものになるはずだということが、運輸協議会等によつて出ておるはずでございます。この点非常に私ども疑念があるわけでございまして、運賃收入を値上げによつて求めなくてはならないのであるかどうかということの疑問点が、ここに出て来るのであります。
  240. 石井昭正

    ○石井政府委員 誤解と申しましては失礼でありますが、お考え違いになつておるのじやないかと思うのでございます。と申しますのは、国鉄の收入は、取扱い收入と純收入とございまして、取扱い收入と申しますのは、日々各駅でもつて運賃を上げました收入の総額と言つておるのであります。これに対しまして純收入というのは、そのうちから社線に拂うべきものを拂い、逆に社線からもらうべきものはもらうというような清算をいたしまして、ほんとうに国鉄收入となりまするものを純收入といたします。それで取扱い收入と純收入とは常に差がございまして、旅客運賃につきましては、常に取扱い收入の方が若干純收入より多いのであります。この純收入は連帶運輸の清算が済まなければ確定いたしませんので、そこで運輸收入の想定をいたしますときには、とりあえず取扱い收入をもつて想定いたしまして、それを一定の比率で純收入に還元いたすわけであります。その差がおそらく疑問の点ではなかろうかと思うのであります。
  241. 石野久男

    ○石野委員 ただいま御説明になりました純收入と取扱い收入との差があるということは、十分承知の上で私は言つておるのであります。從つてまた七百十六億というものを純收入で計算したときに、約六百八十億になるだろうということを、先ほども申し上げたのであります。純收入との差が、この赤の二十四億の差が出て来ると私は申し上げておるわけでありますから、決してその点は私は誤解をしていないはずであります。
  242. 石井昭正

    ○石井政府委員 御質問数字の中には、連合軍関係運賃收入もお込めになつておるのでございましようか。一ぺんお確かめ願いたいと思います。
  243. 石野久男

    ○石野委員 連合軍收入は別途計算いたしておるのであります。連合軍收入はそのほかにあるのでございます。その点は別に含んでおりません。それからなお時間がありませんので、関連して質問を一つさせていただきたいと思います。それは大臣は現下国鉄の電化の問題につきまして、できる限りそうしたい。しかしそれは電源の不足等によつてなかなかできないし、予算的な措置もできないのだとおつしやるのでおりますが、もし電化が解決がつくような場合においては、電化の構想については、相当考慮さるべき余地があるのかどうかという点について……。
  244. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 大体石野君のお説の通り考えております。
  245. 石野久男

    ○石野委員 先ほどの問題に返りますけれども、私はなぜこの問題を取上げるかと言いますると、八十六億の赤字があるのかないのかということを、第一われわれの問題にしなくちやならないわけであります。われわれといたしましては、八十六億の赤字がなければ、提案の説明通り八割の値上げをしなくてもいいわけであります。旅客におけるところのいわゆる純收入の問題は、若干取扱い收入額よりは下まわりますけれども、貨物の場合においては、当然社線等との計算において、それよりも上まわるはずであります。このような関係から、私は旅客におけるところの八十六億の赤字というものは、当局の説明だけでも六十二億くらいにしかならないはずであります。それがなおこういうような形で論議されて行くことになりますと、国民経済に及ぼす影響が非常に大きいだけに、私はこの八十六億という赤字が出て来た根源について、明確な御答弁をいただきませんと、国会の権威においても、この問題の審議が進みにくいのじやないかと思うので、お尋ねしておるわけであります。
  246. 石井昭正

    ○石井政府委員 私の方のあげました資料について、間違いはございません。八十六億の赤字が出ました原因は、旅客收入予定より八十七億足りないためでございまして、これは当初予算におきまして、七百八十一億の旅客收入を見込みまして、——これは連合軍を含めてでございますが、それに対しまして、本年度の上半期の実績をとらえまして、その後半期は最も科学的な推定によつて推定いたしまして、その合計が六百九十三億九千万円となるのでありまして、その差八十七億が旅客收入の減收となつておる。これは間違いない数字であります。     —————————————
  247. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 動議提出いたします。質疑のことに関する問題ではなく、各委員の御了解をいただきたいと思うのでございます。それは国際観光ホテル整備法案に関係のある動議提出いたして、各委員の御賛成をいただきたいと思うのであります。国際観光ホテル整備法案に主務大臣規定せられてある。その主務大臣運輸大臣であることを明らかにいたし、同法に定める事業の所管は運輸省に属するものであることを、本委員会において決議せられんことを、提議いたす次第であります。その理由といたしましては、この法律案の目的から考えましても、また運輸省設置法第三條に規定する運輸省の任務、並びに同法第二十二條の運輸省の所掌事項の規定から判断いたしましても、また他面観光事業と運輸省との沿革から考えましても、国際観光ホテル整備法に定める事業の所管は、運輸省の所管であるべきが明白であるからであります。右国際観光ホテル整備法の事業が、他の省に一部関係を持つ点がありといたしましても、この事業の所管が運輸省であることを明らかにいたしまして、この事業の興隆をはかる目的のために、この法案を要求いたす次第であります。この段動議提出いたします。御賛成を願いたいと思います。
  248. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの尾崎君の動議でありますが、本日午前中にこれと同様の趣旨の動議が瀬尾君からでておりますので、満尾君の動議と一緒にいたしまして、お諮りいたします。ただいまの尾崎君の提出動議を決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定をいたします。     —————————————
  250. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 このたび貨物運賃を八割値上げするということは、九十億の赤字を埋めるためには、あるいは必要かもしれませんが、そのために中小工業などが相当の影響を受けることは、確かだと私は思います。運輸大臣はどういうふうにお考えなりますか。
  251. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 運賃値上げをいたしましても、この計数上の点、あるいは各取扱いの貨物の内容、日本経済の振興の状況という点から判断いたしまして、まず国民生活において吸收が可能でありまするし、また中小工業の面においても、一部は多少影響をこうむるものはあると考えておりまするが大部分において、全体の大量観察の点から見ましては、まずまず国民生活並びに中小工業生産者自体においても、大した影響ははかろうかと考えておる次第であります。
  252. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 大臣の答弁は、大体において一般産業についてのお話のように承りますけれども、その影響する産業といたしまして、私は石炭であるとか、木材などが、最も影響があるものだと思うのでありますが、石炭の影響することは別といたしまして、木材に影響することはいかにお考えになりますか。
  253. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 多少の影響は認めます。
  254. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 その多少とはどの程度でございますか。
  255. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 木材工業がこの措置によつて壊滅するまでには、私は考えておりません。多少の影響はあろうと思つております。
  256. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 相当の影響を受けるということは、大臣がお考えになつておるように聞きますが、これにつきまして何か救済方法をお持ちになつておるか、いかがですか。
  257. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 原則的にはこの法案は、全部八割上げるということに対しまして、十分なる御審議をいただいたことと考えまするが、ただいま岡村君御指摘の木材工業等に対しましては、私も皆さんの御意思があれば、その線を尊重いたす用意をいたしております。
  258. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 ぜひとも十分に御用意あらんことを切にお願いいたします。またこの木材工業が相当に影響を受けるために、あるいは五十キロ以内はトラックによつて相当選ばれということを言われましたけれども、そのために近山はずいぶん濫伐になり、遠山あるいは北海道であるとか、奥地の木材は、全然運送することができないということになると、結局近山の木材を濫伐することになる。そうすれば赤裸の山がたくさんできまして、夕立一つで大水が出るということになると私は考えます。そうすると治山治水に與え影響は大きいだろうと思いますが、運輸大臣はいかがお考えになつておりますか。
  259. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 先般来数次の台風の襲来によりまして、戰前にはかつて見ない大きな被害を受けておりまする原因は、いわゆる戰争中の濫伐等に起因している実情がよくわかつておりますので今回政府といたしましても、治山治水の方面には相当の公共事業費を支出計上いたした次第でございますが、たまたま私の所管の運賃の値上げのために、治山治水に障害をこうむるということになりますと、せつかくのこの方面の措置も水泡に期しますので、ただいまの御注意を十分拜聽して善処いたします。
  260. 岡村利右衞門

    ○岡村委員 これは運輸大臣といたしましては、あるいは農林省関係、建設省関係の方の部署であるとおつしやるかもしれませんが、国務大臣としては十分お考えになる責任があると私は考える次第であります。これで終ります。
  261. 稻田直道

    稻田委員長 岡田五郎君。
  262. 岡田五郎

    岡田(五)委員 大分時間がたちましたので、ごく簡單質問させていただきます。私は健全な国鉄の均衡財政の保持、二大交通機関の海陸の適正なる輸送分野の確立のためにする海陸運賃の調整、こういう点から見まして、この貨物運賃の八割値上げはむしろ少ないのではないかと、かように実は考えておるのであります。一面現在国鉄の旅客運賃は、輸送原価に対して一三八になつております。貨物は八割上げましても、なお輸送原価に対して八三%という状態になつておるのであります。かように国鉄内部の旅客運賃と貨物運賃の調整というような面も、また近き将来において起つて来るのではないか。かようにも考え、また今日の参考人もおつしやつておられましたが、外国におきましては、むしろ接客運賃の方は輸送原価を割つており、貨物運賃はむしろ輸送原価を相当上まわつておる。これはだんだん旅客輸送の需要者が減少いたしますならば、中近距離のみの旅客いうものについて、相当画期的な変革を来すというようなことを考え合せますと、私は貨物運賃をむしろ運輸審議会における案のごとく、九割なら九割を上げるのが、健全財政の保持という面から見まして当然ではないか。かように考えるのでありますが、運輸大臣におきましては、この国鉄の旅客運賃と貨物運賃の調整について、どういうようにお考えになつておりますか。また近き将来におきまして国民の生計費に非常に大きな影響を持つております旅客運賃について、どういうお考えを持つておりますか、伺いたいのであります。
  263. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 今回貨物運賃を八割値上げいたしますと、しばしば私が引合いに出しまする昭和十一年度の旅客運賃と貨物運賃との割合から比較いたしますと、貨物運賃の値上げの倍率の方がはるかに超過いたしまして、旅客運賃の値上げが率におきまして、これに及ばないということに相なるのでございます。御指摘のように将来旅客運賃の値上げを惹起するおそれがないかということでございまするが、なるほどこの倍率の点から申しますると、現在貨物を八割値上げいたしますと、旅客運賃が値上げ負けをしているわけで、もつと値上げをしなければバランスがとれないということに相なるのでありまするが、今は幸か不幸かしれませんが、その倍率の数字上の点以外に、旅客の方は御承知のように定員以外に鈴なりにうんと旅客をつめ込んで輸送しておりますので、実收入の方はその倍率の数字の面に現われました以外に、より多く收入が上つておるというような状態に相なつておる次第でございます。もつとも人間を定員以上に満載するというようなことはよろしくないことでありますので、もしもこのいわゆる乗客の乗せぐあいを、戰前のような比較的定員に近い、あるいは定員をあまり超過しないというような状況に終始これを保つということでございましたならば、貨物運賃の値上げの率に比しまして、旅客運賃の現在の倍率は、昭和十一年に比較しましては少し劣るということが言い得るのでありまするが、ただいまのところは敗戰国の現状でございまするし、定員以上にあまり鈴なりに乗せては事故も起きますので、よろしくないと思うのですが、まあ今のところは旅客運賃はあまり上げずに済むのじやないかと考えておる次第であります。
  264. 岡田五郎

    岡田(五)委員 先ほど来貨物の等級につきまして、相当問題があつたようでありますが、これにつきましても大臣からは、早急にこの等級の調整というか、合理化につきまして考慮し、これが措置を講じたいという御答弁があつたようであります。今までの等級をきめる方法は、私の経験によりますと、運輸当局がほとんど他に諮ることなく、独善的におきめになつてつたようであります。ところがこの貨物運賃につきましては、等級が根本的な問題でありまして、これまた非常に社会政策的に、また産業政策的に、これを考慮しなければならない重要な問題であると考えるのであります。従いましてこれがきめられるにあたりまして、広く民間の知識を取入れられるような方法をもつて、この等級をおきめになる御意思があるか。従来通り国鉄経営事務当局者にのみおまかせになるつもりであるか。この辺のところをお聞きいたしたいのであります。
  265. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま岡田君の御質問でございまするが、来年度におきまして実施いたす考えでおりまする等級のバランスの調整につきましては、在来の運輸省だけのとりきめでなく、御指摘のように民間各方面の利害関係者を集めまして、それらの人々の意見を広く聽取いたしまして、さような組織をもつてこの研究をやつていただきたいと考えております。
  266. 岡田五郎

    岡田(五)委員 次に、今までの例を見ますと、貨物運賃を上げますと、必ず自動車運賃が上り、小運送料金が上るのが、今までの通例の状態になつておるのでありますが、今回も貨物運賃が八割値上げせられますと、間もなく小運送料金がまた上るのではないか、また自動車運賃が上るのではないか、そうなりますと、ひいては物価に相当大きく影響して来るのではないか、かように考えるのであります。と申しますのは、現在小運送料金は昭和十二年に対して九十五倍程度になつておる。貨物運賃昭和十一年に比べまして七十二倍、日銀の卸売物価指数が二百二、三十倍、こういうような状態になつておりまして、日銀の卸売物価指数から見ましても、小運送料金が上げられるような傾向を私は心配するのでありますが、小運送料金の今後の見通しにつきまして、御意見を承りたいのであります。
  267. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま岡田君の御懸念は、貨物運賃を上げると、それにフオローいたしまして、小運送ないし自動車の運送の運賃が上るだろう、こういうことでございますか、今回は貨物運賃を上げましても、それらのものは上げないという方針で臨んでおります。
  268. 岡田五郎

    岡田(五)委員 それでは事務当局の方に、簡單な問題でございまするから、ちよつとお聞きいたしたいのでありますが、国鉄線と会社線の運賃の併算制及び通算制の問題であります。昭和十七年に今まで併算制であつたものを通算制にされたようであります。ところが昨年でございますか、これまた改められて、これを併算制にもどされたが、このだびの貨物運賃改正にあたりまして、またもとのように通算制に改められる御意思があるかどうか。ちよつと承りたいと思います。
  269. 足羽則之

    ○足羽政府委員 併算制と通算制の問題は、今お話になりましたような歴史があるのでありますが、これにつきましては、現在私鉄のそれぞれの希望をとつてみますと、大体におきまして、国鉄と連帯をしておる私鉄の会社のうち、併算を希望するものと通算を希望するものと約半々でございます。そこで併算制にいたしますると、どういうふうなかつこうになると申しますと、距離の刻み方によつて運賃のとり方がそれぞれの地帯によつてつて参りますので、連帯をいたしております私鉄線は比較的距離が短くて、国鉄線の方が相当に長いために、通算をして出た運賃を国鉄線と私鉄線の双方に割付いたしますると、大体において結果的に国鉄の方の負担が約八億ぐらいになる計算であります。それらの点を考え、かつ従来の併算から通算に移した事情等をも考えまして、通算にいたしますことは、今回の貨物運賃の値上げに際しましてはやや困難だ、こういうふうに考えておりますが、なおその点はいろいろ検討いたしております。
  270. 岡田五郎

    岡田(五)委員 三つばかり項目をあげますから、簡單でけつこうですから、御説明を願いたいと思います。最低運賃が千三百円台であつたと思うのでありますが、大体一般の賃率は八割値上げになつておるにかかわらず、これに対して四割増しというふうにおきめになつておるようであります。これがひとつ、それから発着手数量が、車扱いにおいては二倍にされておりまして、小口扱いにおいては一・六倍、六割増、こういうようなことをされておるようでありますが、この理由簡單でけつこうでありますから、御説明願いたい。
  271. 石井昭正

    ○石井政府委員 最低運賃は、大きな会社を使いましても、小さな会社を使いましても、今まで同じでございましたが、これは不合理でございますので、その点を是正いたすつもりでございますが、これをならしますと、四〇%ぐらいの値上げになるというわけであります。それから発着手数量の小口と車扱いについての差でございまするが、小口の方は御承知のように積みおろし料金が加算されておりますので、従いまして、相当今までにも高く上げておりますから、今回の値上げの際には割合が少くて済むだろう、こういうのであります。
  272. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今度の値げの引当てでございますけれども補正予算は大体石炭手当と寒冷地手当が引当てになつているようでございますが、今度の値上げの増収によりまして、当局はどういうものにこれを引当てにされておりますか、御説明願いたいと思います。
  273. 石井昭正

    ○石井政府委員 今度の値上げは、公布予算に対しまして、收入が実際見込みより少いので、收入予算を更改いたしたのでございまして、支出の増加に対応いたしたものではございません。
  274. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは支出の引当ては何らの対策がないとおつしやるのでございますか。
  275. 石井昭正

    ○石井政府委員 現在の値上げを認めていただきまして、千百五十一億の收入になります。その限度において支出予算を組んでいるわけでございます。
  276. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 借入金とか減価償却が、今までの独立採算制になる以前よりも多く組まれているように承つておりますが、その点はいかがでございますか。
  277. 石井昭正

    ○石井政府委員 減価償却は本年度は十三億で、これは帳簿価格でやつておりますから、今までとかわりはございません。それから借入れでございまするが、補正予算の借入金は、運賃値上げの時期のずれと、お話のありました石炭、寒冷地給を支出するために、結局十一億だけ支出を減ずるのをとどめた。その結果としてプラスされたものでございます。
  278. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 運輸大臣お尋ねいたしますが、経済情勢がかわつたので、採算の見通しは狂つて来たというお話でございましたが、これは政府の政策の破綻で、大臣の責任だと考えますが、大臣はどうお考えになりますか。
  279. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ものは生成躍動いたしますので、運輸大臣の責任はございません。
  280. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 これはまつたく遺憾の御答弁だと思います。少くとも運輸大臣としてあの当時、絶対に採算がとれるという御言明をしばしば運輸委員でなさつたのでございますから、少くとも私の責任を感じておりますぐらいのことは、御答弁があつてしかるべきだと思いますが、そういう御態度で今度の運賃の値上げをなさろうとするならば、私どもはまつたくこういうものを信頼できないのでございます。運輸大臣お尋ねいたしたいのでございますが、池田蔵相は実質賃金が上るということをおつしやつたのでございますが、部分的にはなるほど木材も石炭も、あるいはその他の物資にいたしましても、平均いたしますれば六分ぐらいにはならないかもしれませんが、しかし全体の生計費の中で、野菜も上る、魚も上る、げたも上る、くだものも上る、あるいは運賃も上るというようなわけで、これが上りますことは、私ども家庭を持つておる者から見ますと、現在でさえ生活が成り立たない状態でございますから、相当の影響を持つのでございます。そういう国民の経済からお考えになりまして、これははたして些少という限定なさつていいかどうか。しかしこれも独立採算制をとる以上、やむを得ないのだというふうなお考えからそうおつしやるのか。個々の物資でもつて考えになれば、それはわずかかもしれませんが、御承知のように、石炭だけ、あるいは木材だけがわれわれの生活ではございません。魚の方でも、野菜の方でも、あらゆるものが総合されてわれわれの生活を形成しておるのでございますが、そういう点で非常に大臣の考え方が下情にうといといいますか、雲の上にいて生活に困つたことのない者の考え方だと思うのでありますが、池田蔵相との食違いの点をどういうふうにお考えになりますか。
  281. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 その点は非常に重要な問題で、私がしばしば申し上げておるのでありますが、なるほど原材を八割値上げいたしますと、このためにその影響が絶無とは絶対に私は申されないと思います。多少の影響があるのでありますが、これは計数を引きましても、しばしば申し上げました通り昭和十一年の日本の経済が安定しておつたときには、運賃の物価に占める割合が四・六%、現在は二・三%で、これを八割値上げいたしましても四・三%になるわけで、昭和十一年の割合よりもいくらか低いというような一応の計数が出るのであります。しかしながらこの計当数は必ずしも当てにならないのでありまして、いろいろな商品の生産事情、あるいは特殊ないろいろな関係考慮いたしまして、ものは判断をいたさなければならないのでありますが、ものによりまして相当の値上げになるものでも、たとえば先ほど硫化鉱の例を引きましたが、硫化鉄から硫酸ができて、その硫酸からまた硫安をつくる。その肥料がいろいろ農村の作物にまわる。その作物がいろいろ家庭に入つて参る。また一面化学製品にいたしまして、硫酸を使つていろいろ様々の製品がつくられると、そのまま製品を原料としてまたつくるというふうに行きまして、今回われわれが値上げいたします素材が、生活状態に直接入り込むまでには一段、二段、三段、四段という、相当の段階を経て参りますので、今回私どもが上げました総平均が、運賃の物価に占める割合が四・三%でありますが、それがさて家庭生活に入るときには四・三%が、またそれが十数分の一に細分されて来るわけです。しかしこれもそれだけ上つても、上るのは上るのでありますが、一面政府といたしましては、今回の予算を組む面におきましても、税金の軽減とか、あるいは公共事業に相当多額の予算を割付いたしましたし、あるいは企業の価格差補給金というようなものもこれを減額いたすというような、一連の政策をもちまして、ただ運賃の値上げというものが少しマイナスになるかもしれませんが、プラスの面の政策も相当加味いたしまして、今回の補正予算を組んでおる次第でありますので、総合いたしてプラス、マイナスいたしますれば、私は決して国民大衆の生活に過重を強いるものではないという信念を持つておる次第であります。
  282. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいまのお話では、公共事業費を増すとか、いろいろ御答弁がございますけれども、新しく組みます公共事業費などには、運賃の値上げということによりましてやはり影響すると思いますが、そういう点は御考慮になりまして、補正予算が組まれておるのでございますか。
  283. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 運賃の値上は、総体にいたしまして四・三%上るということでもつて、国民生活の各方面で吸收できると考えておる次第であります。
  284. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 国鉄の経費の方の赤字を埋めます点で、いろいろ御苦心が報告されたようでありますが、ひとつ具体的な例をもつて質問申し上げたいと思います。それは国鉄の物件費が人件費よりも多くなりまして、健全財政を誇つて七十有数年黒字を続けて来た国鉄が、戰後初めて赤字になつたということは、私が申し上げるまでもないと思うのでございまして、藪谷局長などもはつきりと、政府のインフレ政策が物件費を拡大して、戰後初めて国鉄に赤字ができたということを、たびたび御証言になつたと思います。その物件費の節約ということが、国鉄の財政の赤字を解決する最も根本的なものではなかろうかと思うのであります。これは経済情勢の変化が、運輸大臣の見通しを誤らして、赤字になつたという御答弁もあつたのでありますが、そういう点につきまして、当局として石炭やその他の競争入札という一つの方便を、また新たに設けられておるようでありますが、この競争入札の実情というものをひとつ御説明願いたいのであります。私どもの得ました資料によりますと、なるほど自由販売になりまして、石炭の購入価格も多少減つておるような御報告でございますが、一つの例を申し上げますれば、三井鉱山の十一月分の入札などは、平均トン当り公団の入札のときよりも四百三十六円七十一銭増加しておる。総額では二十八万三百六十七円の三井にとつては利得を得ておるということが、資料としてあるのでございます。そういたしますと、小さい企業がたくさんございまして、競争入札の相手の多い場合には、あるいは安くなるかもしれません。その場合には粗雑なものが入札になるという傾向もあり、独占的な事業の場合には、今の三井のように、かえつて高いものを公団時代よりも国鉄が買うような結果になるおそれがあるのではないかというふうに憂慮されるのでありますが、その点当局はどのような御配慮があるかということ、この事実は間違つておるかどうかということを御答弁願いたいのでございます。
  285. 石井昭正

    ○石井政府委員 公開入札のやり方は、何ら資格に制限はございません。何人といえども自由に入札に参加できる仕組みになつております。但しその入札におきまして、その結果として非常に不正な納品等をいたしたような場合に、そういう実績が上つた場合に、初めて爾後の入札を許可しないという建前でやつております。その実績はまだ本年の当初から始めたばかりでございまして、はつきりした成績はございませんが、ものによりましては非常に安く入札できておるものもございますが、中には必ずしもそうも行かないものもございます。大体において標準価格に対しましては、九〇%くらいの入札価格になつております。それからただいまお話のありました石炭の問題につきましては、具体的な例を存じませんが、御承知のように石炭は自由販売になりましてから、カロリーの高いものを高く買わなければなりません。現在国鉄が欲しておりますものは、価格が高くとも、カロリーが高くて、従つて一トン当りの能率が非常に高い石炭を買つておるわけであります。おそらくそういう良質炭を買つたために、平均の炭価よりも上つておると思いますが、結局その方が国鉄の経営上得策でございます。そのための炭価の値上りも、補正予算の石炭費の中には組んでございます。量の方においては百万トン近く減じまして、そのかわり質の方においては相当向上いたしました高い炭価で買うような計算をしておるわけであります。
  286. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君、もう時間ですから簡單に願います。
  287. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今の点でございますけれども、石炭の点では詳しいことはわからないと言われますが、簡單に答弁が願いたかつたのでございます。そういう事実があつたかないかということだけを御答弁願えればよかつたのでありまして、私どもが聞かないでもいいことまでいろいろ御答弁していただきまして、その方が質問の時間から引かれますので、私も迷惑でございます。そういう点を御考慮くださいまして、発言の時間なども少し……。
  288. 稻田直道

    稻田委員長 そう言うておるうちに時間がたちます。
  289. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 非常にそういう点でたびたび経験しておりますので、御考慮願いたいと思います。  実は藪谷局長がお見えになつておりますので、ひとつ御質問申し上げたいと思うのであります。きようトラック業者の方や海運関係の方が参考人としてお見えになりまして、国有鉄道の運賃の値上げによつて、海運産業の今沈滞しているのを救うことができるというのや、トラック業者はトラック業者の立場から、荷物が自分らの方に四百万トン近くまわつて来るというようなことをお述べになりまして、この国鉄の立場から考えますと、收入が減る條件が非常に多く参考人から述べられたのでございます。これを考慮いたしますと、三分ぐらいの減りではとうてい追いつかないのじやないか。これは旅客運賃のときにすでに経験があるのでございますが、籔谷局長はこの点をどういうふうにお考えになるかということでございます。
  290. 藪谷虎芳

    藪谷説明員 公聽会におきまして、トラック業者から約三百二十五万トンのトラツクヘの転貨がある、こういうことでございます。ちようど一億三千万トンの国鉄から見まして、わずかに二・五%であります。海運においても同様の転貨があるものと思つております。そうすると合せて五分であります。これに対して收入増、来年度の増送をまず二分見まして、石井君の言いましたように大体三%と踏んでおるのです。国鉄としてはわずかなものでありましても、自動車及び海運の輸送力が、国鉄に比べましてそう大きくありませんから、非常に助かる点もあるかと思いますが、国鉄としては失う点が少い。しかも海陸の運賃調整ができるということを、われわれとして確信いたしておる次第でございます。
  291. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君、もうあと一回に全部お願いします。
  292. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 旅客運賃のときに経験しましたことは、運賃を上げたことによつて收入が減つたという結果、つまり乗客が減つたということが生れて来ておるのでございます。このことは原価に比べまして二百七十二というような運賃をとつております。旅客の場合には減らした方が、收入がふえるのではなかろうかという結論になるかと思うのでございます。これはひとり国有鉄道だけではなくして、私鉄にいたしましても、大阪方面の宝塚などの乗客が減つておることや、嵐山のもみじ狩りの乗客が三万人の見込みよりも減つたということで、決して運賃收入によつて独立採算を立てる建前の條件、経済的な條件というものが、日本国内には今非常に欠如しておりまして、運輸大臣はこういう観点から大きな運賃に対するところの、いわゆる運賃法の根本原則をもう一ぺんここではつきりお立てになりまして、旅客の運賃をお下げになる考えがないかどうか。そのことの方が国有鉄道の赤字を埋めることになりしないかとわれわれは考えるのでありますが、その点の御意見はいかがでございますか。
  293. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま御指摘の点は真理でありまして、経済状態日本が相当整備いたしまして、いろいろな物の出まわりが非常に多くなるという状態が到来いたしました場合には、むしろ旅客運賃にしましても、貨物運賃にいたしましても、下げた方が收入がふえるということは、一般の事業の原則でございますので、これはさように信ずるのでありますが、ただいまのところそれらの要因はまだ発生していないと考えますが、あなたのおつしやつたことはほんとうに真理だと考えますので、その点を心しまして、先行きの成行きを十分注目いたす考えでございます。
  294. 稻田直道

  295. 滿尾君亮

    滿尾委員 私は質問能率を高めるために、最初に質問を列挙しますから、順番にお答え願いたい。  第一点は、今回旅客運賃の値下げが同時に行われることは、運輸大臣としての政治感覚を非常に高く評価し、かつ前回の当委員会の修正案通りであつて、私ども喜んでおつたのでありますが、これが延びましたことにつきましては、私はまことに遺憾の意を表する。それで御説明にありましたように、最初の提案理由にありましたけれども、あらためて旅客遠距離逓減を、来る四月期に必ず提案するということの言明を得たいことが一つ。  第二は、貨物等級の改正を考えているという御説明でおりましたが、前回以来の運輸省の運賃改正というものは、どうも目前の赤字に追われ追われて、いつもどろなわ的な計画であるような感じを私は受けるのでありますが、この貨物等級の改正というものも、今から三箇月やそこらでそううまくできるとは思えぬのであります。従つて私はこの等級改正の委員会というものを常設せられて、国鉄運賃法第八條によつて、個々の貨物の賃率の変更を随時にやれるような方策をおとりになつたらどうかと考える。政府にその意思があるかどうか。  第三点は、今回の貨物運賃の値上げで、実に機械的に、一ぺんに小口も車扱いもそのまますぽつと八割をかけて上げるというような機械的な方法をとつておられる。そのために国民側における難儀というものは相当深刻な部門が出て来ることは明らかであります。そこでこれを救済する方法としては、私は遠距離逓減率を貨物においても当てはめられたらよろしいと思う。貨物運賃が八割上つたために、その貨物の動き得る経済範囲というものは漸次狭まつて、それが国民経済の上に少からぬ影響を持つ。それを救済するには、遠距離逓減の率をうんと強くいたしましたならば、たとえばバラスにいたしましても、石炭にいたしましても、木材にいたしましても、大量貨物の動き得る幅が広くなり、従つてこの値上げの効果をもつて、苦しいところをある程度に緩和する。この考えがあるかどうか、これが第三点。  第四点は、電化のお話が出まして、わが国の乏しい動力エネルギー資源の管理という点からしまして、どうしても電化に行かねばならぬことは、明明白白の事実だと思う。ところが今大臣の御説明によりますと、今年の予算並びに来年の予算においても、また見返り資金の流用というような方法も、大分門戸を閉ざされておつて、明確な目途が立つておらぬというお話でありますが、一体政府当局なり、そういう方面の人は、どういうわけでこういう明らか事実に対して、門戸が開放されておらぬのか、この経過についてひとつ御説明いただきたい。またもし電化する場合の電源の問題でありますが、国鉄の電化は、電源を自家発電せられるお考えであるだろうと考えておりますが、この点についてのお考え、それからもう一つ、もし国鉄の鉄道債券なり、その他あるいは見返り資金の流用というものが、国鉄自体における資金等の面において支障があるとすれば、電化作業を、民間の資本によつて電化会社というようなものをつくつて、その力を利用して電化を促進するお考えがあるかどうか。  以上五点に関して私はお答えをいただきたいと思うのであります。
  296. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 満尾君にお答えいたします。  第一点の、四月一日からいわゆる三方面にわたつて旅客運賃の引下げを行うということは、これは実行いたす所存であります。  第二点の、等級改正の常設的委員会を設けたらどうかというお話でありますが、これは常設にいたしますか、あるいは臨時といたしますか、とくと考究いたしまして、適当に処置いたす考えであります。  第三点は、遠距離逓減の率を強化したらたいへんよろしいというような御議論でございましたが、貨物運賃につきましては、とくと研究いたすことにいたしましよう。  次に、電源の問題に対するいわゆる電化計画との関連の沿革を話せというお話でありましたが、大体われわれといたしましては、昭和二十四年度におきまして、浜松以降のエキステンシヨン、米原まで電化をやる。それに対して五十二億の資金が入り用だというので、昭和二十四年度予算に組むべく十分努力をいたしました次第でありますが、多少電源の方面におきましても懸念される節がございますので、信濃川の電源開発につきましては、目下鋭意これを促進いたしておるのでありますが、これの完成が少し遅れておりますような関係もあり、かつまた予算編成上におきまして資金の窮迫というような面と、二つからみ合いまして、昭和二十四年度は実現ができませんでしたが、昭和二十五年度におきましては、なるべく少少でもこれに手をつけたい。従つて目下まだ脈が絶えたというわけではないのでありまして、引続いて当局といたしましては努力をいたしますと同時に、もしもいわゆる予算的措置において、資金の調達が不可能である場合におきましては、電源の方と見合いまして、民間の資金の力を借りてこれを速成いたすということに対しましては、私も同じ考えをもつて滿尾君の御提案に賛成をいたす次第であります。
  297. 稻田直道

    稻田委員長 木下君。
  298. 木下榮

    ○木下委員 時間の都合もありますから、きわめて率直に運輸大臣に対して質問したいと思います。  今回の値上げが、国鉄の独立採算制堅持のために、その收支の権衡を得るために値上げをする、これはよくわかります。ただインフレーシヨンが終息した段階においては、消費者に対して大した影響はないと、きわめてあつさり片づけておられますが、この重要物資の運賃の八割値上げということは、直接生産費に影響しまして、わが国の産業に大きな悪影響を及ぼし、ひいては貿易に対しても大きな影響があると思うのであります。これは賢明なる大屋大臣もよく御承知のことと思いますが、これは立場が立場でありますから、私はこれに対して御答弁を得ようとは思いません。ただ收支の均衡を得ないために賃金を上げる。賃金を上げてもなお足りないから、今度は運賃を上げる。この安易な手段によつて、国鉄の独立採算制を堅持して行こうということは間違つていはしないか。もつと根本的な国有鉄道の独立採算制の基礎、これを確立するのが一番の急務ではないか。それには運輸当局並びに国鉄当局の方々がもつと鋭意研究して、平たく言えば勉強して、ほんとうの根本的の基礎を確立する方法を講じなければならぬと思うのであります。ところがそれには一言も触れずして、ただ坑衡を得ないから運賃を上げるのだ、影響は少い、こういうようなことでは、われわれは承服できない。こういうふうにして独立採算、收支均衡の基礎を確立しようと思う、こういうようなこともやつておる、こういう研究もやつておる、しかしそれでもなお足りないから運賃の値上げをするということならば、われわれは承服できるけれども、一言もこの根本的な基礎の確立になる計画をお漏らしにもならず、構想をお話しにもならず、ただ收支の均衡がとれないから上げるのだ、それで権衡がとれなかつたらまた上げるのだ、賃金を上げて不足したら、また運賃を上げる。これでは国民が承知できない。でありますから、運輸当局並びに国鉄当局は、将来運賃を始終変更したり、上げたりすることをやめて、基礎を確立するという方法をお考えになるのが一大急務である。それにはいろいろな方法があると思います。たとえば、この前の議会にも出たかもしれませんが、私鉄を買上げて赤字をもつて経営しておる。これらは民間に拂い下げるとか、あるいは不用資材は有利に処分するとか、あるいは今直営しておる自動車事業は、運輸当局から提出資料によると、年間十億の收支の不足を来しておる。こういうものも考え方によつて民間に委譲したならば、民間からは自動車税とか、ガソリン税とが、いろいろな国庫の歳入になるべき税金を徴収できて、一方においては赤字が減る。そういうようなことに対して運輸当局はどういう考えを持つておられるか。これは当然なすべきことである。こういう構想をもつてこういうふうに研究して、そうしてなおいけないから運賃を上げるというなら、われわれは賛成できるけれども、そうでない以上は賛成できない。そういう意思があるのか。非常に安易な考えを持つて、收支の均衡がとれないから運賃を上げる、影響するところは少い、そういうふうに軽く片づけることは、賢明なる大屋運輸大臣としてよくおわかりのことと思うけれども、一応念のためにお伺いしておきます。
  299. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいまの木下君の御意見なり御質問は、まことに同感でございます。ただ今回鉄道経営上に赤字が出来いたして、それを旅客運賃をもつて償い、なおかつ不足いたし、また赤字ができたので、今度は貨物運賃を上げてバランスをとる。いかにもこれは事業経営の方法として拙劣なきわみであることは、私もまさに自覚いたしておる次第でありますが、今回はいわゆるコーポレーシヨンに切りかえまして、自由な鉄道事業の経営を国民諸君から期待をされておつたのでありますが、時間がまだ十分にたちませんので、いろいろな理想を実現するいとまがなかつたのであります。しかしながら早い話が、この合理化ないし能率の増進という件に関しましては、全然これを看過したというわけでは毫もございませんので、これは是非の議論がありましたが、ともかくもいわゆる過剰人員の整理というような事柄、あるいはオープン・ビッド制、いわゆる公入札制度というような点、あるいは石炭の買入れ方法の非常な改善、また従来は外注をいたしておりました車両の修繕その他の仕事も、全部鉄道の自営の工場に引取りまして、いわゆる手前料理をいたすというような、いろいろな事柄を加味いたしまして、企業の合理化に邁進いたしたのでありますが、何分にも時間の足りない関係上、この方面の十分なる効果を期待できなかつたのであります。  さて今回は、木下さんのお話通り、将来に向いましては、ぜひともいわゆる安易な運賃の値上げというような方面に持つて行かずに、企業の合理化、その合理化はどういうことをするかということは、今ここで一番列挙はできませんが、あらゆる点に対して、合理化を十分にいたしまして、この企業のバランスをとり、またこの運賃の値上げというようなことをしばしば繰返すというような愚はやらない覚悟をいたしておりますので、もう少し時間をかしていただきたい。かように存ずるので、決して無責任にその点を看過いたしておるわけではないことを御了承願いたいと思います。
  300. 木下榮

    ○木下委員 ちよつとお伺いしたいことは、今るる運輸大臣が、合理化とか、いろいろな方面でお答えになりまして、よくわかりましたが、さしむき買收線とか、直営の自動車とかいうふうなものを民間に委譲して、そして赤字を防ぎ、一方において国庫の收入をはかる。こういうふうなお考えを持つておられませんか。もし持つておられますならば、おさしつかえない程度において御答弁願います。
  301. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 戰時中に鉄道で買い上げました鉄道を、再び民間に拂下げをするという考え方は、前国会において提案されたのでありますが、これが可決に至らなかつたのであります。でき得べくんば、来通常国会にそれを提案いたしたいと考えております。また自動車路線の民間拂下げの問題に関しましては、目下十分可否を考究いたしておりますので、いましばらく言明をする用意を持つておりません。
  302. 關谷勝利

    關谷委員 運賃に関しましては、いろいろ論議がかわされたのでありますが、各方面の意向を総合いたしますると、運賃に関する等級は、全国的に研究して、四月一日より新等級を実施すること、但し木材、亜炭、一部の貨物等、物価に重大な影響を與え、生産に多大なる障害を與える物資に対しては、本法案通過後可及的すみやかに何らかの方法によつて運賃を適正に軽減すること、このような要望が非常に多いのでありますが、運輸大臣はこれに対していかなるお考えを有せられるや、御答弁を願います。
  303. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 御趣旨を尊重いたすつもりであります。
  304. 關谷勝利

    關谷委員 本案に対する質疑はこの程度にて終了し、討論に入られんことを望みます。
  305. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。     〔「異議あり」と呼び、その他発言する者多し〕  これより本案に対する討論に入ります。討論通告があります。順次これを許します。松井政吉君。——松井君、討論がなければ次に移りますよ。     〔発言する者多し〕
  307. 松井政吉

    ○松井(政)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本案に対しては反対をいたします。  その前に、ただいま委員会の運営について、一言遺憾の意を表したいのであります。今朝委員長及び理事会の……。     〔発言する者多し〕
  308. 稻田直道

    稻田委員長 御静粛に願います。
  309. 松井政吉

    ○松井(政)委員 約束がありましたように、理事会の打合せによりまして、本日質疑を打切りまして、明日朝討論をやるということが約束になつておるはずであります。従いましてそれに基きまして、私の方は先ほど與党の方の理事の方々にも、毎朝九時半から国会対策委員会を開いておりますので、明日この問題について賛否を委員会にかけて、明日予定通り討論に入るように、幾たびかこの会場で懇請をいたしたのであります。ところがそれにつきまして、一言も取上げることがなされないのであります。さらにまた、前から申し上げておりますが、いろいろ議論がありましたので、委員長にも、非公式ではありましたが、討論に移る前に休憩をしていただいて、理事会を開くなり、懇談をしてから相談をしてもらいたいということを、幾たびも申し上げたのであります。ところがそういうことも一つもお取上げにならない。さらにただいま質問を打切つて討論に入れという動議が出た場合に、同時に緊急動議が出たのでありますが、これもお取上げにならないで、ただちに討論採決に入ろうといたしておるのであります。こういう事柄は、いかに與党が多数を持つておりましても、私は休憩をして打合せをする程度の襟度は持つていただきたいのであります。そういうことを考えずして、ただちに多数の横暴は、決して民主主義ではないのでありまして、多数の横暴はややもすれば独裁に走る場合が多いのであります。こういうことにつきまして、はなはだ遺憾の意を第一番に表しておきます。  それで、反対の理由をただいまから申し上げます。大体本案に対しまして反対する理由の第一点は、運賃値上げの理由が、独立採算の上からして、赤字を補填するためだという理由でございますが、この理由だけで運賃を八割も値上げするということについては、納得が行かないのであります。なぜ納得が行かないかといいますならば、御承知の通り国有鉄道は公共事業でありまして、公共性を強く発揮しなければならない企業体であります。從いまして單に国鉄だけの採算制、赤字補填という考え方よりも、公共的な立場に立つて経営というものが考えられなければならない。その上に立つて、また国は国鉄の持つ公共性を生かすために、国自身が負うべき責任は負わなければならないというのが、今日の国有鉄道の企業体の本質だと考えております。そう言いまするならば……。     〔発言する者多し〕
  310. 稻田直道

    稻田委員長 御静粛に。
  311. 松井政吉

    ○松井(政)委員 單に赤字を埋めるため、あるいは独立採算制を完全に行うためということのみによつて、四方八方に影響を及ぼす運賃の値上げの理由が正しいものであるかどうかということについては、遺憾ながら私たちは正しいとは考えられないのであります。  さらにその影響の面を拾い上げてみますならば、質疑応答の過程においていろいろ御答弁をお伺いしたのでありますが、上げられた貨物運賃の引当てにつきましても、ある政府委員は、この額は従業員の待遇、福利厚生には一銭も充てられてないとお答えをせられております。さらにまたある政府委員からは、この引当ては総体の赤字として引当てるのであるから、上つた分を何に使うかということについては、はつきりしておらないという程度の御答弁をお伺いしておるのであります。われわれは少くとも八割の貨物運賃を値上げする場合におきましては、どの返済にどの程度、あるいは従業員の待遇にまわつた分がどの程度と、明確に資料の上において、あるいは答弁の上において多角的な答弁がなされなければならないはずであります。ところがこれがなされておりません。従つて引当ての問題についてはほとんどわれわれは了解するに至らないのであります。  さらに貨物運賃の値上げによつて、物価に影響があるかという同僚委員質問に対しまして、影響がないとは考えないが、きわめて軽微であるというお答えをいただいておるのであります。ところがこの七月までにおける物価及び運賃のパーセントによる資料は、七月以降におきまして、補給金の打切りあるいは補助金の打切りによりまして、石炭を初めその他の物価が七月から今日まで非常に上つているということは、資料の中にもなければ、御答弁の中にもないのであります。従つて一例を申し上げますならば、石炭の三千三百四十八円の計算に基いて、現行運賃のパーセントが基礎をなすところの資料になつておりますが、九月十五日に公団が廃止されてから以来というものは、石炭の価格が所と場合によつては三割以上下つているのであります。現行運賃でも炭価の下つた分だけは、物価の中における運賃率の変動が起つておるのであります。にもかかわらず今日八割上げるということになりますならば、三千三百四十八円の石炭がかりに宇部、常磐のごとき平均二千円か二千一百円に下つたといたしまするならば、それに八割の運賃をかけますと、運賃が三〇%、四〇%を占めることに相なりますので、石炭を初め中小企業の生産部門というものは、八割の運賃値上げによつてこうむる影響は大なるものと言わなければならないのであります。そういう観点からこの点について賛成ができかねる。  さらに食糧品の運賃の問題につきましては、農林委員会の方におきましても、食糧品を中心とする運賃値上げについては、運輸委員会と合同審査をしてほしいという委員会においての申合せがなされているのであります。これは何を意味するかといいますならば、生産者たる農民が運賃値上げによつて困るばかりではなく、消費地における主要食糧を中心とする物価の値上げによつて、影響があるということを考えるからであります。これも合同審査の何らの協議もしないで、本日ただちに採決をしようということになるのでありますが、この農林委員会の合同審査を申し込むという意図は、ただいま申し上げたような生産者の農民と消費地における消費者の物価変動によることを中心に考えられているということも、われわれは十分に考えなければなりません。従つて物価に対する変動及び中小企業体に対する影響というものはきわめて大でありまして、公共性を中心として運営、経営をしなければならない国有鉄道の企業体といたしましては、單にその企業体の赤字、あるいは独立採算制の建前から、かかる影響のあるものを考慮なしに値上げするということについては、どういう角度から考えましても納得できない点であります。従いまして日本社会党はこの運賃値上げの問題に対しましては、全面的に反対の意を表明いたす次第であります。
  312. 稻田直道

    稻田委員長 關谷勝利君。
  313. 關谷勝利

    關谷委員 ただいま社会党から、この運賃値上げに対しまして反対の御意見があつたようでありまするが、去る五月の第五国会におきましては、海陸運賃調整の立場から、私が趣旨弁明をいたしたのでありまするが、その際社会党は米窪君を初めといたしまして、全員この運賃値上げに対しましては賛成をいたしたのであります。しかるに今日この運賃の値上げに反対をいたしますることは、その信念のいずこにありやを疑うものであります。私は運賃原価から申しましても、あるいは鉄道の独立採算制から申しましても、海陸運賃の調整の面から申しましても、この運賃の値上げは当然であると心得まして、運賃値上げに賛成をするものであります。但しこの運賃に関する等級は全面的に研究して、四月一日より新等級を実施すること、並びに木材、亜炭、一部の貨物等、物価に重大な影響を與え、生産に多大なる障害を與える物資に対しては、本法案通過後において可及的すみやかに何らかの方法により、運賃を適正に逓減すること、この條件は嚴に政府当局としては守つていただきたい。この條件を付して賛成をいたします。
  314. 稻田直道

  315. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 日本共産党を代表いたしまして、この運賃値上げに対しましては反対するものでございます。  さきに第五国会におきまして、政府は旅客運賃の値上げをいたします際に、旅客運賃は物価にあまり影響をしないけれども、貨物の場合には影響が多大であるという観点で、貨物の運賃が当時すえ置きになつたと心得えております。また運賃の値上げ全体に対する方針は、ただいまの與党でありますところの民主自由党は、従来これに反対をして来られたものであります。運輸大臣の御趣旨によりますと、経済情勢が変化したので、ただいまではこの貨物の運賃が妥当であるという御答弁であつたのでありますが、先日来休会中にも私ども運輸委員会を開きまして、ただいまの国有鉄道に関する視察の結果、六月一日に公共企業体に移りました国有鉄道が、旅客運賃を六割値上げいたしましても、今日九十億からの赤字を出しておりますところの原因は、経済情勢が変動しておるから当然である。その経済情勢によつて赤字が出ているということを、当局御自身が証明されておるのであります。すなわち経済九原則の実施によりまして中小企業がつぶれ、大衆が失業と賃金の遅拂いと、この今日の窮乏の中に乗客の数が減つたということ、貨物が減つたということが、今日の国有鉄道の赤字の最大の原因であるということを言われておるのであります。そういたしますと運輸大臣のこの御答弁、御趣旨と、当局の申しますところの答弁とは、まつたく相矛盾するものであります。さらに将来の見通しにつきましても、私ども運輸大臣の御答弁にはまつたく信頼をおくことができないのであります。たとえば道監の地方委譲の問題にいたしましても、当委員会がその権威にかけて決議案をもちまして、当時運輸大臣までが賛成されておりました地方庁委譲の問題が、わずかの間に心境の変化というような無責任なことで、決議がまつたくくつがえされてしまつたことは、ごく最近の問題でございます。われわれがきよう参考人として呼びましたところの中小企業家は、全力をあげて日本の中小企業のつぶれることを主張いたしまして、この中小産業の危機にかけても、運賃の値上げに対して反対しております今日では、とうていこのような政策が、この法案の持つております本来の趣旨を、つまり国有鉄道の独立採算制の赤字を埋める見通しを証明するまでには足らないという観点からも、反対せざるを得ないのであります。さらに私どもが主張いたしたいことは、日本国有鉄道の今日の会計が、政府によりまして明らかに引継がれていないという点であります。それは当運輸委員会におきまして、会計検査院の証明によりますと、二十三年度までの会計検査は終了しておるけれども、現在の日本国有鉄道の会計が、新たに今度日本国有鉄道の一部改正法案によりまして、まつたく国有財産から切り離され、新しく発足する重大な変革に際しておりますにもかかわらず、その引継ぎが十分にされていないということ、つまり現加賀山総裁が、国有鉄道は伏魔殿といわれていると言つて、みずから証明されておりますごとく、また考査委員会におきましても、種々なる国有鉄道の不正の問題が討議されておりますごとく、その会計につきましては世間の疑惑が多いのでございます。私どもが今日国民あるいは多くの業者の反対を押し切りまして、この運賃の値上げを断行いたします前には、まずその国有鉄道の財産の引継ぎにつきましても、会計の検査につきましても、国民に対しまして明るいガラス張りの箱の中のような形において、これが明々快々に示されなければならないのであります。ところが今日ではその点にまだ多くの疑問を付しましたまましかも今日本会議に上程されましたところの日本通運事業に関しますところのあの問題につきましても、国有鉄道の株を九十九万株持つておりましたものを、国有鉄道所有地内のこの施設と交換するというような形で解決されております。こういう形のもとにこの赤字の根本の原因が、われわれの納得の行かない形のままで、ここで大衆の負担としての運賃の値上げに転嫁されますことは、私どもといたしましてはどうしても賛成することができないのであります。これは何を示すかと申しますれば、今日の国有鉄道の独立採算制そのものが、大衆の窮乏にその原因があるということであります。つまり吉田内閣は、民主自由党の政党内閣であります。この民主自由党の政策であります国営事業を民営に移すというこの政策が、首を切つて運賃をいくら上げましても、決して独立採算制を償うことのできないという政策の根本的な破壊、あの農林大臣に対しますところのわれわれの不信任の決議が、吉田内閣に対する不信任の決議であつたと同じように、われわれはこの運賃の政策に対しまするところの破綻は、吉田内閣の政策の破綻であるという、こういう観点から、つまり今日の敗戰後の日本におきまして、こういう状態のもとにおきまして、つまり公共性を持つた国有鉄道の経営は成立たぬという観点からも、この法案に本質的に賛成することかできないものでございます。ですから私どもは前の会計の方針につきまして、新しい変革を当委員会が決議しましたときに、共産党の建前から反対したのでありますが、あの法案に明らかなごとく、運賃をいくら上げても、いくら首を切つても、国有鉄道の赤字というものは解決できずに、依然として追加予算を組み、あるいは補正予算を組み、あるいは交付金をもらい、政府から補助金をもらつて、あくまでも国家財政をとろうという……。(発言する者多し)この際私ども運賃の値上げをするくらいであるならば、あざやかに独立採算制かできないということを、皆さんはみずからこれを認められて、そうして国有鉄道というような公共性を持ちましたこの事業は、もう一ぺん国家の手において、国家財政の温床のもとに、あの帝国鉄道会計法が昭和十二年に返還されましたあの趣旨のもとに、私ども運賃の値上げに求めずに、国営にして、社会化したところの、企業性を捨てたところの、公共性を持つたところの方向に行くべきだと信ずるものであります。でありますから今の鉄道の営業方針というものは、加賀山総裁が明らかに言われましたごとく、われわれは今まで公共性を中心にして来たために、現存の経営方針は企業性をもつて進むということでございました。その具体的な現われといたしましては、たとえばきよう滿尾委員か参考人に質問されました中に、サービスの問題が出て参つたのでありますけれども、これは労働組合に望むのではなく、民自党みずからに望むべきだと思うのであります。すなわちほろ酔い列車というようなものや、マージヤン・カーとか、ダンス・カーというような、一部特権階級の乘りますものだけはふやしまして、へいわ号とか……。     〔発言する者多し〕
  316. 稻田直道

    稻田委員長 御静粛に。——御静粛に。
  317. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 あるいは観光列車であるとか、展望車であるとか、食堂車であるとかいうようなものが、新しい予算に組まれると聞いておりますが、一般の勤労大衆の乘りますところの三等列車というようなものの新造計画はまつたくなく、通勤列車などはへいわ号を通しますために、二本も減らされておるのであります。こういう観点から見ましても、この公共性というものは、運賃の値上げをいたしましても、決して保障されないのでありまして、あくまでも大衆の收奪のみであります。私どもは、九万数千の労働者を首切つて運賃を六割引上げて、さらにここで貨物を八割も上げまして独立採算制の破綻ということをこういう方面に転嫁して、しかも国家の財政からまた新しい予算を組んで盗みとろうというような、こういう吉田内閣の、民主自由党の政策を中心にしまして運賃の値上げに対しましては、絶対に賛成することができないのでございます。これによりまして国有鉄道はその運営の上に大きなる破綻を来し、むしろ赤字が出るであろうということを予言いたしまして、反対の趣旨といたしたいと思います。
  318. 稻田直道

    稻田委員長 石野君。
  319. 石野久男

    ○石野委員 私は労農党を代表いたしまして、本案に反対するものであります。  この法案か民自党の内閣である吉田内閣から出されたということに対して、私は驚きを感じておるのでございます。昨年一月の選挙におきましては、さしあたり運賃の値上げはしないのだということを、民自党の諸君は公約して絶対多数をとつた。この公約を無視した八割の値上げが、今九万五千を首切りした後のコーポレーシヨンとして発足しておる。国鉄の独立採算制を維持するためにどうしてもなさなければならないのだという、ふに落ちない点が幾多あります。しかもまた、この問題についてそれがはたして独立採算制を維持し、この赤字を埋めるであろうかどうかということに対しての疑問も、たくさんあるわけであります。それはすでに旅客の運賃値上げをいたしたときに、それ自体において收支が償うであろうと見られておるものが、その予定をはるかに下まわるような、このような厖大なる赤字を出すということが、今日伝えられておることから見ても、はつきりすると思うのでございます。しかもなお私どもは、このような政府当局の発表であるにもかかわらず、いろいろと政府の出しておる資料の中には、逆にむしろこの赤字は少いのではないかということを、先ほど質問の際においても答弁を求めたのでありましたか、その点に対しては十分な答弁がありませんでした。私どもの見通しによりますと、国鉄の赤字八十六億というものに対して……。(発言する者多し)政府数字だけをもつてしても、六十二億くらいであると見ておるのであります。しかもまた、この八割の値上げが行われた後に出て来るであろうところのこうした赤字の減少額を、当初の赤字予定額よりも少いという点をおおい隠して、そして今日ここで八割の値上げをするというそのほんとうの意味が、全然理解されないままに、八十六億をそのままの赤字と見てこの八割の値上げをしておるということは、国民経済の上に対しても、国民生活の上に対しても、非常に大きな負担をのみ課するということになるのであつて、絶対反対であります。しかもまたこの八割の値上げは、一般産業に及ぼす影響等につきましては、すでに反対された各党の諸君が述べておりますように、特に本日の参考人諸君の言をかりて言えば、中小企業の諸君は現に首をつつておるのだ。ところがこの八割の値上げをすると、その首つり人の下から足をひつぱるのだ、こう言つておる。それほど残酷な運賃値上げであることを私は申し上げたいのであります。このような残酷な政策が、このような法案が、はたして再建さるべき日本経済のためによいであろうかどうかということを、特に考えてもらわなければならぬと私は思うのであります。はたしてこの運賃の値上げによつて、貨物の運輸力が予定通り得られるかどうか、また民自党の……。     〔発言する者多し〕
  320. 稻田直道

    稻田委員長 静粛に願います。
  321. 石野久男

    ○石野委員 ……中における條件といたしまして、政府は早急の問にいろいろ不利を来すであろうところの産業に対しては、等級の変更をも考慮さるべきであるということも言われておりました。等級変更を行つて、はたしてこの赤字を埋めるだけの收入が得られるであろうかどうか。かりに上げるというようなものがはたしてあるであろうかどうか。少くとも木材の上におきましては、現在六級のものを九級あるいは十級に下げようという意図が、すでにあるということを聞いておるのでございます。もし九級を十級に引下げるといたしましたならば、そこから来る收入減はおびただしいものがあると私は予想するのでありまして、この八割の運賃の値上げというものは、むしろ逆に一般大衆に対して大きな負担をかけるだけでありまして、決してそれ自体が国鉄の收入城をまかなうものにならないということであります。收入減をまかなうだけの点から行きますならば、本来政府はもつともつと経営内部おける観点に立つて、いろいろな企画をなされなければならないというふうに考えるのであります。現に国鉄の内部における企業の状態がどうであるか。客車あるいは機関車その他のいろいろの操作さるべき車が、どの程度に困難かあるであろうかということを考えますときに、これらのものに対する考慮を少しも拂うことなく、すなわち企業内における合理化というものが、ただ人員を首切るということだけに持つて来ておるのでございます。しかしこの首切りということによつて、はたして経営内の合理化が行われるものであろうかどうか。決してそれは行われないのであります。私たちはむしろそういう点に立つて考えます場合に、この赤字八十六億の問題か、まつたく一方的でおるということを言わなければならないのであります。またわれわれはこのような観点に立つて運賃の値上げをされる当局は、これが決して一般の国民生活には響かないのである。それはごく微量なものであると言われております。しかし現にこの運賃値上けが影響しまして、各勤労者の諸君かどの程度に大きな影響を受けるであろうかということは、すでにもうその生活自体の中にはつきりしておる。現に今日の参考人の中において、国鉄の労働組合の諸君か、やむを得ず賛成するということを言われました。今民自党の諸君か、組合の諸君賛成であるということをもつて多としておるのでありますけれども、それは本来の意向ではないとわれわれは思つておるのでございます。むしろ国鉄の本部の菊川君の言をかりて言うならば、多くの反対すべき理由を持つておるのでございます。今日の参考人の発言はやむを得ずしてこれを認めると言つております。それは…(発言する者多し)……その裏に含むものかあるということを考えなければいけない。これは当局の諸君はよくわかつておるはずであります。われわれは組合の諸君があのような発言をしたことに対して、遺憾だと思つている。むしろ私たちはあの発言に対しては、諸君自身がもつともつとあの裏に隠されたものをくみとらなければならないと思うのでございます。またわれわれはこのような観点からなされる運賃の値上げというものが、至るところに多くの欠点を見出しまして、そのこと自体か日本の経済を破壊の方向に追い込んでしまうであろうということを、特に中小企業の立場に立つた本日の参考人の意見をもつてしても、はつきり言えるのでございます。本日の参考人は先ほど申しましたように、木材労働組合の意見、特に木材企業家の意見ではつきり申しておりました。本日の委員会にも石川一郎氏から運賃改正問題に関する要望書が出ておるのでございます。また林業団体連絡懇談会代表といたしまして、民自党の大村清一氏はこの運賃改正によつて反対の意見を述べられておるのでございます。民自党の中においても多くの反対点があることを如実に物語つておるのでございます。私どもはこうした不備な点を持つておる八割の値上げというものによつて、もし民主自由党か再建されると……。     〔発言する者多し〕
  322. 稻田直道

    稻田委員長 御静粛に願います。
  323. 石野久男

    ○石野委員 再建できるとお思いになるならば、あやまちもはなはだしいといわなければならない。私どもはあらゆる観点から見まして、この八割の値上げに対して反対するものであります。またこの八割の値上げをすることによつて、金詰りによつて苦しんでおるところの今日の日本経済か、一層大きな混乱の中に追い込まれるであろうということを憂えるものであります。  私たちはすべからく民主自由党の諸君は、ただ單に自己の立場だけを守るというたけではなくして、もつと大きな観点に立つて日本の経済を見、日本の産業を見、もつと皆さん方は本心から選挙民の前に立つて言うところの言葉をもつて、この委員会の審議に当られんことを切望するのであります。諸君たちの言葉が、ほんとうに民自党の諸君の本日のこの討論において述べるところの言葉が、はたして一般の消費生活者、一般の選挙民に対して、そういうような言葉をもつて皆さんがもし言うというならば、私は可とする。けれども決してそうでなかろうと思つておるのでございます。もつともつと真劍に日本の経済の将来を見て、この八割の値上げ問題を検討していただきたいということを、特にわれわれは要望しなければならないし、またもしそれをしないならば……(発言する者多く、聽取不能)と言わなければならないと私は思つておるのでございます。私どもはいかなる観点からいたしましても、この八割の値上げに対しましては反対であります。  また本日の委員会におけるところの審議の状況においても、また国会がこの問題を討議する時間的な問題から見ましても、大きな不満を持つものであります。この問題の討議に際して、今日までわずか九時間そこそこしか持つていないのであります。しかも参考人の意見を聞くのも約三時間、休憩時間を持つこと約一時間であります。こうした短い時間の間にこの重大問題を討議し、それを多数によつて押し切ろうとするところの民自党諸君は、数をもつてするところの横暴である。それはフアツヨであるということを言わなければならない。私は絶対にこの八割値上げに反対するものであります。
  324. 關谷勝利

    關谷委員 これにて討論を打切り、採決せられんことを望みます。
  325. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  326. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。  以上をもつて討論は終局いたしました。これより国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対して採決いたします。本案を原案通り可決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  327. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決いたしました。  なお本案に対する衆議院規則第八十六條の報告書作成につきしましては、委員長に御一任を願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  328. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後九時四十三分散会     —————————————