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1949-05-10 第5回国会 両院 両院法規委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月十日(火曜日)    午後二時四十五分開議    〔参議院両院法規委員長藤井新 一君が会長となる〕  出席委員    衆議院両院法規委員長            高橋 英吉君    理事      角田 幸吉君            尾関 義一君            眞鍋  勝君            鈴木 幹雄君    参議院両院法規委員長            藤井 新一君    理事      新谷寅三郎君    理事      伊東 隆治君            松村眞一郎君            鈴木 安孝君            大野 幸一君            羽仁 五郎君   委員外出席者    衆議院法制局参    事       三浦 義男君    参議院法制局長 奧野 健一君   —————————————   本日の会議に付した事件  財産権に関する法律等改正のための  特別委員会設置に関する勧告案  委員会報告書に関する件   —————————————
  2. 藤井新一

    会長藤井新一君) ただいまより両院法規委員会を開きます。  本日の議題は財産権に関する法律等改正のための特別委員会設置に関する勧告案でございます。御審議をお願いいたします。ついては発議者角田委員説明を求めます。
  3. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) 前回の勧告案を一應撤回いたしまして、ただいま委員長よりお述べになりました案を、今日勧告案として提案せられんことを求めます。  勧告案要旨を申し上げます。   両院財産権に関する法律等改正のための特別委員会設置すべきである。 これが要旨であります。  理由を申し上げますと、憲法の施行に伴いまして、民法商法改正が約束され、すでにその一部、民法におきまして親族相続編改正されたのであります。  憲法第二十九條第二項は「財産権内容は、公共福祉に適合するように、法律でこれを定める。」として、財産権に関する法律の制定を約束しておるのであります。從つて本來からすれば民法のうちの親族編相続編改正されましたときに、同時に財産権に関する規定憲法規定に適合するように改正されなければならなかつたのであります。内容のことを申し上げますと、いまだ憲法二十九條に適合しない規定があるのみならず、條文自体が非常に難解でありまして民主化されておりません。ことに民法商法には憲法二十九條の規定に反するように考えられる規定がなおあるのでありますが、今日でもこの改正が企てられておりません。  私がここに特別委員会設置を要望するわけは、いわゆる財産法に関する規定は非常に厖大な法典でありまして、その内容複雜多岐をきわめております。この改正審査のためには相当愼重審議を要するものがあるのでありますから、この際特別委員会を設けて、これが改正調査をなさしむべきであると考えられますので、これを勧告したいと存ずるのであります。
  4. 藤井新一

    会長藤井新一君) ただいま角田委員より勸告案要旨並びに理由説明がございましたこの勸告案について御質疑のあるお方は御発言を願います。
  5. 大野幸一

    委員大野幸一君) 憲法第二十九條第二項の趣旨に沿いまして、新國会の初めにあたりまして民法一條を新たに設けまして「私権ハ公共福祉ニ遵フ」「権利行使及ヒ義務履行ハ信義ニ從ヒ誠実ニヲ爲スコトヲ要ス」「権利濫用ハヲ許サス」と規定されました。特に第一條を名誉ある第一國会が制定いたしましたゆえんのものは、この角田委員憲法二十九條の第二項によるところの内容を、まず冒頭に原則として規定したものと思われますが、角田委員においてもこの考えと同じであるかどうかをお伺いいたしたいのであります。
  6. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) ただいまの大野委員とまつた同感であります。
  7. 大野幸一

    委員大野幸一君) そうすると、この勸告案趣旨では、この第一條内容をさらに各條的に整理充実しようという意味勸告案であると了解してよろしゆうございますか。
  8. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) 大野委員のお考え通りであります。
  9. 藤井新一

    会長藤井新一君) ほかに御発言か御意見はございませんか。
  10. 伊東隆治

    委員伊東隆治君) 私まだはつきりわからぬのですが、ただそれだけのために特別委員会をつくるというのですか。なおそういう條項枚挙にいとまないほどであるということでありますが、大体どれくらいあつて、それが特別委員会を設けるほどのものであるかどうかを、もつとわかりいいように御説明願います。
  11. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) まず内容の問題につきましては、これはいろいろ議論があろうと思います。結局憲法二十九條の精神に違反する規定がないかどうかということは、個々の問題に至りますと相当議論があつて調査研究をしなければならない点があろうと思うのでありますが、最も大切なことは、民法規定自体が非常に難解であります。これ自体が少くとも六・三制の中学校を出た人が平易に理解できるように、改められなければならないのであります。まずこの点に大きな重点を置かなければならないと思います。  それから内容的に見まするといろいろと議論が起つて参るのでありますが、これはまず財産法の基本というものを將來どこに持つて行くかというようなことが、問題になろうと思うのであります。憲法第二十九條の第一項には「財産権は、これを侵してはならない。」と規定してあります。ところが第三項に参りますると「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定してあります。何が公共のためというべきか、何が正当なる補償というべきかということにつきましては、これは相当議論があります。ことに今日農地調整法をめぐりまして各地に紛爭が起つております。そういう意味におきまして、この憲法第二十九條の第一項と第三項との調和のけじめをどこに置くかということは、結局財産法私有財産制度を認める問題といたしましてのけじめとして、相当重要なることであろうと思うのであります。これは今日解釈上、取扱い上非常に紛糾しておりますことは、今國会提案されております漁業権の問題につきましても、相当議論があろうと思うのであります。そういう次第でありまするから、一々こまかく上げますとこれは論爭の種になりますが、私は相当部分においてこの規定修正さるべきものであるとこう考えておりますので、相当大規模の調査を必要とすると思うのであります。そういう意味におきましてはなかなか容易じやなかろうというので、この特別委員会設置を求めるわけであります。
  12. 伊東隆治

    委員伊東隆治君) 私は憲法第二十九條というものを読んでみますと、從來の財産権に対する制限をもつと強く制限してある規定だと思います。言いかえれば、私有財産制度に対する制限を少し強化しておるのであつて、これが新憲法一つの新しい点であると思います。とにかく今までは財産権制限というものは法律によらなければならぬということだけであつたのに、今度は公共目的に沿わなければならぬという一つの大きな制限があります。今までの公用徴收法によりまするものも、私有財産制限されておつたのでありますが、この第三項というものは、今までの言葉をそのまま他の言葉で書き表わしたにすぎない、第二項の公共目的に沿わなければならぬという点は、ここに大きな制限が明記されたのであつて、それがむしろ新憲法の新しい特徴であると思うのであります。私はそれにのつとつて、この民法規定がどういうふうに齟齬しているか研究もいたさないで、そういうことを申しては何ですが、その点は憲法憲法として置いておいて、それに民法を沿わしめようという意味特別委員会なら、その沿わない條項は数によつて必要かと思いますが、ただいまお話を伺いますとその二十九條そのものが少しどうかと思うというふうに聞きとれたのであります。そうすると憲法改正特別委員会のようにも思われますが、その点どうですか。
  13. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) 私の申し上げたことは、そうではありません。憲法二十九條に沿うように民法改正されなければならぬ。今の問題で農地法でも、憲法違反の問題として問題が起つているということであります。でありますから、憲法二十九條の規定に沿うように改正しなければならないということと、それからあなたのおつしやる通り、第二項によつて公共のためにその制限をされる規定が強くなつた、これは同感であります。そういう意味において改正されなければならぬと考えるので、その点は同感であります。
  14. 伊東隆治

    委員伊東隆治君) そんなに枚挙にいとまないほどたくさんございますか。確かに文章はむずかしい新しい字句があつて、今度の民法はちよつとおかしい点があります。
  15. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) 害用されるおそれのあるものがあるんです。このままでも公共福祉に適合するよう解釈できる部分相当多かろう。しかしこれが相当濫用されているということは、実際のことをお取扱いになつて來るとわかると思います。
  16. 藤井新一

    会長藤井新一君) 鈴木委員、何か御質問ありませんか。
  17. 鈴木幹雄

    委員鈴木幹雄君) これを拜見しただけでは、実際に具体的にどういう点が、この憲法第二十九條に違反するか、あるいは少くも不穩当であるかという点が、私にはちよつとはつきりのみ込めませんが、一例をあげておられます農地調整法、これについては確かに問題があると思います。ところがこれは民法改正審議会といいますか、特別委員会というようなところでやるだけではいかぬので、農地調整法自体の問題として考えなければならぬことになるじやないかと思います。また漁業法の問題につきましても、これは今提案をされたばかりで、私内容を存じませんけれども、相当内容として大きな問題を含んでいるように考えられるのであります。それと、あるいは臨時的に今度設けられる審議会との関連をどういうふうにつけるかということになつて來ますと、にわかに私はこの案に具体的に、事実的に、どこまでそれが必要だという確信が今のところ持てないというのが、私の現在の心境なんです。そこのところをもう少し提案者の方から御説明を願えませんか。
  18. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) まず濫用されている部分がここに書いてありましたが、財團法人なんかで、相当濫用している部分があるのです。これは公益信託という制度があるということになつて公益信託でもやれるということになりますと、一例を申しますると、一つ図書館をつくり、これは財團法人になる。財団法人の土地として自分の邸内を全部財團法人のものにする。そうしてそれに若干の家を建てる、そして経営をする。ところが図書館公共のためにやつております。しかし理事部分でやる。その次には自分子供をその理事にする。こういうように濫用をした場合に、なるほど公共のためにやつているのだけれども、それは本当に公共のためにするなら、その図書館の運用としては公共福祉に沿うような発展性のある、利用の價値のあるような人が、これに選ばれなければならぬ。そうするとその選任というものは、一体そこだけの点でどうかというようなことも問題になろうと思います。ところが最近またいろいろな違法行爲ができたりなんかして、それが財團法人になつていたりして、同樣のことがいろいろあるんです。一例を申し上げますと、そういうようなものがあり、あるいはまた所有権濫用なども相当つている者があるようであります。そこでもう少し改正をしなければならない点が相当存在しているだろうと私は考えております。
  19. 伊東隆治

    委員伊東隆治君) これは民法だけでなくて、諸般の法律について、憲法に沿うているかどうかということを審議しようとするのではないですか。
  20. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) これは財産法とあげましたが、実は民法親族編などが改正されております。これなどもまつたく不合理の点が多々あるんです。たとえて言えば、なるほど平等相続をいたします。ところが平等相続の結果長男的存在が一番相続法上の不合理を受けているんです。次男は養子に行きますと、実家財産も平等に相続し、養家の財産相続いたします。こういう規定があります。嫁に行くと実家財産相続するが、夫がなくなつたときは夫の財産も妻として相続する。ところが日本の國においてはまだ長男として実家におる者がある。そういう相続の場合でも非常に不合理部分があると思います。これは立法の際にも、私は起草者に御注意を申し上げましたが、なかなか立法的技術としてどういうふうにそれを表現して行つていいかということになるとむずかしい。多年親のそばにおいて、あるいは財産建設に貢献して子供も、他に養子行つて何も財産建設に貢献のない子供も平等の相続をする。ことにいわんや養子行つた者双方相続ができる、こういうような規定なども財産権に関して改正を要する規定ではなかろうかと思います。これなどは非常に不合理が存在していると思います。それでやはりこれらも改正する必要があるんではないかと思うのであります。
  21. 藤井新一

    会長藤井新一君) 速記をやめて。    〔速記中止
  22. 藤井新一

    会長藤井新一君) 速記を始めて——別に御発言もないようでありますから、ただちに討論に入ります。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 藤井新一

    会長藤井新一君) 御異議ないものと認めます。御発言お方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——ほかに御発言がございませんか、別に御発言がないようでありますから、討論を終結したものと認めて、ただちに採決をいたします。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 藤井新一

    会長藤井新一君) この勸告案について御賛成の方は挙手をお願いいたします。    〔総員挙手
  25. 藤井新一

    会長藤井新一君) 総員挙手全会一致でございます。よつて本案全会一致をもつて可決されました。
  26. 角田幸吉

    委員角田幸吉君) この際字句等修正は、委員長において整理されんことをお願いいたします。
  27. 藤井新一

    会長藤井新一君) 角田委員から、字句修正委員長の方におまかせするということでございますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 藤井新一

    会長藤井新一君) それではさように決します。両院法規委員会規定第二十條によりまして、勸告の要旨及びその理由を付して、文書をもつて委員長から衆議院及び参議院議長に提出をいたします。  速記をやめてください。    〔速記中止〕   —————————————
  29. 藤井新一

    会長藤井新一君) 速記を始めて——なお国会法第九十九條の第二項によりますと、本委員会毎会期終了前に同條の前項に掲げてあります三つの事項についての報告書を、両議院議長に提出しなければなりません。またこの報告書両院法規委員会規定の第二十一條によりますと、両議院委員長から、各議院議長文書により提出いたすことになつております。つきましては、この報告書内容、時期等を両院委員長におまかせを願いたいと思いますが、いかがでございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 藤井新一

    会長藤井新一君) 御異議なしと認めます。よつて本件に関しましては、両委員長において報告書を作成の上、適当の時期に両議院議長に提出することにいたします。  本日はこの程度で散会いたします。    午後三時二十五分散会