○國務大臣(鈴木正文君) 田村さんの御
質問は、極めて根本的な
立場の立つ
つて御
意見であり、同時に御
主張であつたと拜聽いたします。新憲法特にその第九條において、
日本の平和的宣言が行われた。新らしい出発をした。それに対して同時に産業の平和
自体もこの際深く考慮すべきである。そういう
考え方に対してはこれはもう根本的に全く同感でございます。
労使双方と申しまするか、國民全体の特に生産の方面を狙うところの
労使双方の平和的の
関係の下において、私共の根本的に
主張しておるところ丸対等
関係の確立、そういう形の上に産業平和というものの基礎が打建てられて行くべきである。こういう
考え方には全く賛成でございまして、今度提案いたしましたところの両
法律案につきましては、それぞれの角度、
立場から、幾多の批判はございますけれども、率直に申上げますれば、私共一月頃
作つた労働省の試案から幾度か変遷を経て、
只今提出して御審議願
つておるところの案に到達したのでございまして、この間におきましては、
主張の、構想の後退であるとかいうような批判を受けたことも確かにありますし、又その
反対の批判、つまり保護法から取締法、彈圧法に前進したんだという批判も亦一方から出て來たんでございます。見方、
立場によ
つて幾多の視角、角度というものはあると思いますけれども、結論的に申上げますれば、これは私共の一人よがりだと仰せられるかも知れませんけれども、與えられた條件の下に、今日の産業の下におきまして田、私共はこの
法律案が完全無欠のものであるとしてうぬぼれてはおりませんけれども、妥当な線に到達し得たものと、單に弁明だけではなくて、静かに
労使双方の
関係、
日本の
現状、
組合運動の
現状までの発展過程というものを
考えますときに、私はそう信じて、そうしてそう信じたからこそ提案して御審議を願つたわけでございます。平和処理、平和的
関係というものがどういうものを指しておられるのか、ちよつと田村さんの後で又御
意見を伺い得るのかも知れませんけれども、
只今の御
質問の中では、そこまで触れておられませんでしたのですけれども、若し労働
爭議というものを全然なくなしてしまうような立法的措置をも伴う、その平和
関係の法的準備というもののような
意味でありますならば、一方においてはそこまで行けば、そういう
方法があれば、それは行けないとは申しませんけれども、大体労働
爭議の起きて來る根本的な原因は、より根本的な政治的、
社会的、経済的の現実があ
つて起きて來るのでありまして、ここに如何なる法を準備いたしましたところで、そういつたものがなくな
つて、法によ
つて平和的
関係が完全に樹立され得るというような
関係は出て参らないと思いますし、提案された両法案共にそこまでを信じて、そこまで言われておらないということも事実でございます。むしろ資本主義的生産組織の下におきましては、
労使の
利害というものが、最終的に、一部或る人達が言うように、食うか食われるかの鬪爭以外には何らの共通点を持たないところの、たつた二つの存在する階段集團というふうには私共は
考えておりませんけれども、單に相互の直接的な
対立があり、これを
解決するための
爭議というものも起きて來るということは、誠に止むを得ない
一つの現象であり、そうであるからこそ、その
爭議を破壞的な鬪爭的なものにまで持
つて行くことなくして、平和的な民主的な双方協力的な形において
解決して行くということが切実に要求されるのでありまして、本両法案共に、この
意味において、この
立場において、平和的な協力的な
爭議の
解決、延いてその上に展開されるところの産業平和主義の展開というものを狙つたつもりでございます。根本におきまして、産業平和主義をこの際展開して、祖國の再建に
お互いに当るべきではないかという
考え方には全く同感でございますが、ただ労働
爭議或いはそういつたものの措置
自体に対しますところの、法の関與し得るところの範囲というものにつきましては、おのずから限度があり、殊に提案されましたような
労使双方、それから
労働委員会というふうなものが誠意を持
つて運用することによ
つて、そこに産業平和の最終の有終の美を狙い得るものではないかと、そういうふうに
考えておる次第でございます。