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政府委員(賀來才二郎君) この前も
休憩中でございましたか、開会前でありましたか、中野さんから非常に只今のような御
質問なり御
意見の趣旨を詳細承つたのでありまするが、只今の御
質問は、現在の
労働委員会を、或いは今度の
改正法によります
労働委員会というものを見ると、どうもその独立性というものが侵される虞れがあるように
考える、そこで然らざるような組織にすることについての
考え方、即ち若しそういう組織が必要であるというならば、それを現在の諸法規に当嵌めるような方向で
考えられないか、或いはそれらの二つの意向についての利害得失と申しますか、そういうものをただ行政組織法があるから外局にしたという逃込みをせずに、
答えて貰いたいという御
質問だと覚えるのであります。中野さんのような御
意見と申しますか、
労働委員会の独立性を侵されないように運営をさるべきであり、保持すべきであるという
意見は、これはもう輿論と申しますか、一般的に公認された議論でありまして、我々行政の任にありますものといたしましても、当然
かくあるべきだと
考えるのであります。ただ今の形から見ますると、どうも危險性がある、そこでこれを然らざるような形にやつたらどうかという
意見が別にあるわけであります。この
意見を具体的に持
つて行く、殊に現在の新憲法下におきまする
一つの組織といたしまして、これを持
つて行くという場合に、或いはこれと関連して
考えます場合に、さような制度は具体的に申しますならば、いわゆる裁判所制度、これは立法機関にも行政機関にも左右されないところの司法機関である。こういふうな形になるではないか、
從つて少くとも裁判所自身がそれに当ることはこれは困難であろう、これは労資、中立、皆かような
方面におきましても、結局裁判所がさようなことを扱うということになりますると、やはり
一つの一定の資格要件というものがその裁判官には必要にな
つて來まして、これは現在のように、労資、中立という、いわゆる民主的な
構成にすることができない、又然らば、さような
構成を準用した特別裁判機関というものはどういうことになりますると、これも憲法に基きまして、これは不可能にな
つて参るわけであります。更にこれを行政的に
考えて見ましても、現在にもそうでありまするが、苟も労働問題が起りましてから將来に亙
つてもそうと
考えまするが、この労働問題というものは非常に複雜多岐な要素を持
つておるのであります。今朝程來
原委員の御
質問にもありましたように、現在の労働問題を片付けるためには、相当廣い面からこの複雜な要素を持
つておるものを片附けて参らなければならんのであります。そういうことになりますると、審判をする際には
一つの裁判所のような独立不覇のものがいいように見えましても、その組織が民主的にも参りませんし、特別にさようなものを拵えるわけにも参りませんし、又と
かく行政と離れて参りますると、行政面とは非常に密接な
関係のありまする労働問題の解決というものは、これは至難にな
つて参りますので、どうしてもこれは司法面というよりも行政面に近い制度で以て、行政面を十分取入れた面で解決をしなければ適当な解決ができない、即ち
内閣の一体性というふうな建前から労働行政と一般行政というものは不即不離のみならず、一貫した流れにおいて解決しなければ、労働問題の解決は至難である、かような意味からいたしまして、いわゆる独立した、何らの権力にも侵されない
立場で
労働委員会が処置すべきことは必要でありますけれども、これを現在の行政機構外に置いて、そうしますと立法機関になるわけに行きませんから、司法機関の司法面にこれを入れて行かなければならない、これは憲法の定めるところであります。そういうことは不適当である、從いましてこれを行政面に入れまして、そして行政機関の特別なる行政機関といたしましてこれを処置するということが必要に……、その方が解決に適当である。
かように
考えて我々といたしましては、やはりさような制度を採るのがいいということに
意見を決めておるのであります。そういうことになりますと、中労委の職務といものが、労政、この行政事務を行うということになるのでありやして、
從つて一つの國家行政機関と解釈しなければならんのであります。行政権利というものは憲法六十五條の規定によりまして
内閣に属しておりまするし、六十六條の規定によりまして、
内閣は
総理及びその他の
國務大臣によ
つて組織され、行政権の行使について連帶して國会に対し
責任を負うことにな
つておるのであります。
内閣法第三條におきまして、各大臣は
法律の定めるところによりまして、主任の大臣として、その行政事務を分担、管理するということにな
つておりまして、行政事務はいずれかの大臣の
責任の下に置かれるということになるのであります。
労働委員会の職務は労働行政の一部でありまして、特殊なる労働行政をや
つておるという建前になるのであります。それ以外に亙るものでもありませんから、当然
労働大臣がその行政事務につきましては、分担、管理するということが憲法の精神から見ましても、又
内閣法の建前から見ましても、必要にな
つて來るわけであります。以上の理由によりまして、中労委は
労働大臣の所轄の下に置き、
労働省の
一つの外局的な機関ということにいたした次第であります。併しながら先程來申しますように、
労働委員会の行う調整的機能につきましても、或いは準司法的機能につきましても、その性格から見まして一般の労働行政と同一に行うことは、これは妥当ではないのであります。今日の実情からいたしますならば、
労働大臣から一定の独立性を保ち、その
構成につきましても民主的に選ばれた者が
構成する合議機関であるということにいたしておるのであります。右の理由によりまして、中労委は
労働大臣の所轄ではありまするけれども、その職務遂行につきましては独立性を保つ、合議体の外局ということにいたした次第であります。外局は一般的に独立性が強いのでありますが、その機関が合議体であるということは、その
権限の行使につきましては当然の法理といたしまして独立して行うものでありまして、上級機関の指揮監督は受けないものであります。而も中労委につきましては、その
委員の罷免について一般公務員よりも更に強い制限を課しておりまして、
労働大臣が署免をなします場合には限定された…、これは
法案の第十九條第十項で限定をいたしておりましてその独立性を担保いたしておる、かような実情にな
つておるのであります。以上によりまして御了解を願いたいと思います。