○
政府委員(齋藤邦吉君)
委員長からお話がありましたので成るベく簡單に御
説明申上げたいと思います。甚だ恐縮でございますが、
職業安定法の一部を改正する
法律案の資料を御覽頂きまして、
法律案の要旨を明らかにして、必要な條文を引きながら御
説明を申上げたいと存ずる次第でございます。職業紹介法は御
承知のように
政府が公共職業安定所を設置しまして、公益を保持し無料の職業紹介
事業を行うということが法の
基本的な
原則にな
つております。これにつきまして民間の職業紹介
事業につきましては非民主的な封建的なものにつきましては、所要の規制を加え、募集等につきましても必要な規制を加えるのでありますけれども、特に必要なものにつきましては、民間の職業紹介
事業の創意工夫に俟ちまして、
政府の経営いたしまする職業安定所と民間の方々の協力を得て、全般に互る職業紹介
事業を円滑に遂行して参りたいというのがこの
法律全般を通ずる根本的な精神であるのであります。こういう建前からいたしまして、今回
提案になりました
職業安定法の改正
法律案の中の最も大きい問題は、要綱の一にあります学生生徒及び新規学校卒業者の職業紹介の問題であると思います。御
承知のように以前におきましては、学生生徒の職業問題は大して深刻な問題ではありませんでした。御
承知のように内職といたしましては、家庭教師というもののみが学生生徒の内職であ
つたという実情であ
つたのでありますが、最近におきましては、学生生徒の生活難からいたしまして、各
方面に内職をせざるを得ないような状勢に追いやられておるのであります。特に夏休み、冬休み等におきましては、工場その他
方面に出ております。更に又進駐軍労務等の雜役にも働いておるような実情であるのであります。更に又新規学校卒業者の問題でありまするが、御
承知のように近い將來に
相当失業者が出ようという
情勢でありまして、労働事情は極めて緊迫しておるような状況でありまして、このような状勢下におきまして、新規学校卒業生の職業紹介をどういうふうにや
つて行けば一番よいだろうかということが非常な問題であ
つたのでございます。これに対処いたしまして、私共は今回の
法律案の中に
二つの新しい
方法を
考えて見たのでございます。学生生徒、或いは新規卒業生の職業紹介は、御
承知のように
一つの
方法は自分で自分の職業を探すというのが
一つ、御
承知のように安定所に求職の申込みをして安定所のお世話にな
つてや
つて行くというのが二番目の
方法であります。併しそのだけでは不十分でありますので
二つの
方法を
考えたのであります。その
二つの
方法とも根本とするところは、学生生徒及び新規学校卒業生につきましては学校の教職員の方々が学生生徒の一身上のこと、或いは家庭の事情、或いは本人の能力等も十分知
つておるということ、及び学校は
教育がその使命でありますが、全般的に公共的な性質を帶びておること、この
二つの理由からいたしまして学生生徒の職業紹介につきましては、全面的に学校の協力を願うということにいたしたのでございます。
先ず第一点といたしまして、学校が独立に職業紹介
事業を自由に行い得る途を拓いたということがこの一の一でございます。從來の
法律によりますと、学校といえども職業紹介を行います時には
労働大臣の許可を必要とするのでございますが、学校の公共的性質に鑑みまして一々許可いうことなしに届出をして、これを行い得るといたしたのでございます。これがこの改正の三十三條の二でございます。三十三條の二は、無料紹介
事業を行うときには
労働大臣の許可を受けなければならないという第三十三條の例外をなすのでございます。三十三條の二即ち学校の長は
労働大臣に届出をして、生徒又は卒業した者について、無料の職業紹介
事業を、行うということが規定いたされたのでございます。但しこの場合におきまして大学、高專等の卒業生につきましては制限を設けないのであります。中学校或いは小学校でやりまするような場合におきましては、だんだん無制限にその卒業後の期間を無制限にいたしますとそこに弊害も生じ易いので、但書を置きまして、大学、高專以外の者につきましては六ケ月以内という期間に定めてあります。
尚第二項にこれは重要な点でありますが、学生生徒、特にこれは卒業生の問題でありますが、遠隔地の紹介という問題につきまして必要な規定をいたしたのでございます。即ち大学、專門学校の卒業生につきましては遠隔地に就職することが不便でもあり、大学高專の生徒でありまするなら弊害はないのでありますけれども、小学校、中学校
程度の卒業者につきまして、住所の変更を來すような遠隔地の紹介をやりますると極めて弊害が生じ易いということからいたしまして、遠隔地の紹介は小学校、中学校につきましては、
原則としてこれはいけないというふうに規定いたされたのでございます。即ちこの規定を適用されることによりまして、曾ての繊維の女工の募集というものを学校で替
つてやるというふうな弊害が起
つては相成らんと存じましたので、第二項にその点の制限を設けておるような次第でございます。
次にこれは学校が独立で職業紹介をやる場合でございますが、二番目の問題は学校が安定所の業務の一部を行い得るブランチ的な組織の必要があるならば、その組織にして行くという問題でございます。これは第二十五條の三と四にその規定を掲げておるのでございます。即ち二十五條の三に、学校長の同意があ
つた場合、又は学校長から要請があ
つた場合、その
二つの場合に限りまして、学校は公共職業安定所の業務の一部を分担して安定所のブランチとして職業紹介の円滑を図
つて行く、こういうやり方であります。このやり方は、これは学校に強制するのではないのでありまして、学校の要請した場合、或いは学校の同意を得た場合にのみやる得るということにな
つておるのであります。これによりまして学校は安定所の組織の一部に入ります。そうしてその分担する業務の
範囲は第二十五條の三の第二項に掲げられておりますが、求人申込、求職申込の受理、種々ありますが、氣持といたしましては、学校は少くとも求職申込、求人申込の受理をいたしまして、学生の個性なり、特性なり、或いは家庭の状況なり、或いはこういう求職に関する受理を主として
相当して頂く。安定所の方は主として求人申込を受けましてこれを学校の方に
連絡を取
つて頂く。そうして安定所、学校各々の特性を生かして学校と安定所が不即不離一体の
関係におきましてこの紹介に円滑に進めて参りたい、こういうように
考えておる次第でございます。第二十五條の三の三項、四項、これは大したことはありませんが、ただ五項として、このブランチとして学校が職業紹介
事業の一部を行います場合には、公共職業安定所は学校に対して
経済上の援助をすることができると書いてあります。これは安定所の業務の一部を行うのでありますので、当然であります。求職表とか求人表を学校に交付いたしまして、学校におきましてできるだけそうした機能を円滑にや
つて頂くということにいたしたいと
考えておる次第であります。尚二十五條の三の規定の運用につきましては、文部当局と
関係するところが極めて多いのでございますので、この学校が職業紹介業務を行うに当りましてのいろいろな基準を設けることにな
つておりますが、こうした基準はその都度文部省の
関係局長と相談をして決めて行くということにいたしまして、その緊密なる
連絡を保持しておるような次第でございます。以上
二つの
方法を今回新たに設けたのでありますが、その外に
原則的に第二十五條の二といたしまして、学生生徒の職業紹介に関する
原則を新たに掲げたのでございます。第二十五條の二の学生生徒等の職業紹介の
原則、これは安定所と学校は学生生徒につきまして、相互に緊密なる
連絡をとりまして、安定所は必要な雇用に関する情報を提供し、そうして相互に緊密な
連絡の下にその学生生徒の能力に適合した職業紹介をいたしたい、こういう職業紹介の
原則を定めたのであります。以上三点が学生生徒に関する
関係の條文でございます。
次が身体障害者の職業補導の問題でございますが、身体障害者につきましては、
原則といたしまして、普通の
労働者として再起自立して参りますことが、職業政策といたしまして、最も大事なことと
考えておりまして、從來とも必要な職業補導を加えることにいたしておるのでございます。そしてこの職業補導につきましても、
原則といたしましては、一般の公共職業補導所に入所いたしまして、普通の方々と一緒に補導を受けて行くということが必要でありますが、特別の職業補導を別個に加える必要がありますときには、別個の職業補導を行い得るという規定があ
つたのであります。
併しながら今回新たに身体障害者の職業補導
施設は昨年度まで三ケ所ありましたが、本年度の
予算におきまして二ケ所増設となり五ケ所と相成りますので、將來身体障害者の職業補導の重要なるに鑑みまして、特別の公共職業補導所を設けるという規定を設け、そうしてこれに関する必要な規定を
整備いたした次第であります。それが二十六條の二の規定に相成
つておるのでございます。二十六條の二の但書に「通常の職業補導を受ける者と共に職業補導を受けることが困難であると認められる者については、その者の能力に適するよう、補導の種目及び
方法を選定し、特別の公共職業補導所を設けて、職業補導を行うことができる。」かように定めてございます。
これに関連いたしまして、次の二項、三項に必要なこれに
関係のある條文を設けておるような次第であります。
次が三番目に有料職業紹介
事業の問題であるのでございます。これは一昨年
法律を制定されましたときに、私共事務当局の不勉強でありまして、多少概念がはつきりしないものがあ
つたのであります。そこで今回國際條約の趣旨に則りまして、この有料職業紹介
事業を実費及び営利の二種に区別し、そうしてこの許可料、保証金等につきまして、それぞれの規定を設けることといたしたのであります。有料職業紹介
事業の定義を下し、はつきり明記いたしましたのが、第五條の第三項の規定でございます。即ちこの
法律で有料職業紹介とは、実費職業紹介及び営利職業紹介をいい、実費職業紹介とは営利を目的としないで、入会金或いは定期的掛金等を徴收するものをいい、営利職業紹介とは営利を目的とするところの職業紹介である。という定義を下したのでありますが、これは千九百三十三年の有料職業紹介に関する條約の趣旨に從いまして、今回分けた次第であります。これを分けることによりまして、保証金、許可料、手数料につきまして、それぞれの差を設けることといたしたのでございます。それが三十三條の規定でございます。
三十二條の第一項は從來の規定と同じでございます。
第五項に許可料の規定を定めております。それからその次に手数料の規定を定めておる次第でございます。
尚保証金につきましてはこの條文の第三項に営利についてのみ、保証金という制度を設けることといたしたのでございます。この規定は大体におきまして
関係方面の意向によりまして、実は命令で規定いたしてお
つたのでございますが、命令でかような保証金の規定、或いは許可料の規定を定めることは如何と存じますので、今回はつきり
法律に明文化して頂きたいと存じて、この改正を
考えたのでございます。そこで現在のところ実際にや
つておりまする例を申上げますると、保証金でありますが、これは民間の営利職業紹介によりまして、求職者に弊害を與えてはいけないという趣旨から保証金という制度を
考えておるのでございまして、これは有料の職業紹介についてのみの規定でございます。即ち五万円を超えない限度の保証金を有料についてのみ供託せしめるということでございます。実費の職業紹介につきましては、保証金という制度はないのでございます。尚許可料、手数料等につきましても、実費と有料によりまして各々の金額を変えて参りたいと存じておりまして、その内容につきましては、物價廳長官と
労働大臣が協議して定めるということにいたした次第であります。
尚この有料職業紹介
事業と関連いたしまして民間の職業紹介
事業についての、
一つの兼業禁止の規定を新たに設けることといたしたのでございます。それは三十三條の四でございます。この三十三條の四の即ち「理料店業、飲食店業、旅館業、古物商、質屋業、賃金業、両替店、その他これらに類する営業を行う者は、職業紹介
事業を行うことができない。」この規定は船員の
職業安定法にも実は同様の規定があ
つたのであります。船員の
職業安定法にも同様の趣旨があり、而もこれは一九三三年の有料職業紹介に関する國際労働
会議に勧告にも規定されておるのでございますので、今回これを
法律に明記いたしたいと存じておるのでございます。大体以上が有料職業紹介
事業の民間の職業紹介の関する規定の点であるのでありますが、その他職業紹介法施行以來一年半になりますので、その間におきまする種々の事務的な規定の
整備をいたした次第であるのでございます。その一、二を申上げますと、從來
職業安定法に
連絡委員という制度がありましたが、これは安定法の第十條であ
つたのでありますが、
連絡委員のその後の活動の実績にも鑑みまして、
連絡委員の制度を廃止いたしたことでございます。
それかに事務的な問題といたしましては、安定法の第四條の一番最初のところにあります「二、
失業者に対し、職業に就く
機会を與えるために、必要な政策を樹立し、その
実施に努めること。」とい
つたような
失業対策の樹立を
政府の責任を明らかにしたこと、それから第三号に
政府は無料職業紹介
事業を行うという規定、こういう事務的な規定を
整備いたしました。
それから尚第十二條の第十一項に、安定
委員会の旅費額の定め方につきましての改正をお願いいたしたのでございます。職業安定
委員会、即ち職業安定に関する諮問的な機関でありまする安定
委員会の
委員の旅費、日当、宿泊料の金額につきましては、從來は参議院、衆議院の両院の合同審査会を経て
國会において定めるということにな
つておるのでありますが、極めて煩でありまするので、今回この金額は「一般
政府職員の旅費、日当及び宿泊料の金額に準じ、労務大臣が、これを定める。」ということにお願いいたしたい。かよな事務的な規定をいたしたのでございます。尚その他一、二事務的な規定はございますけれども、一應
説明は省略さして頂きたいと存ずるのでございます。
次に
緊急失業対策法でございますが、これにつきましてはお手許にお配ばりいたしてありまする
緊急失業対策法案の資料の中に挟んでおりまする小さいパンフレツトの、公共
事業計画原則というのを御覽頂きたいと存ずるのでございます。我が國におきまする
公共事業は昭和二十一年度から開始せられまして、御
承知のようにこれにつきましては同年の五月二十二日の司令部からメモランダムによ
つて出されておるところのものでございます。このメモランダムの第一と第二の問題でございますが、第一はこの
公共事業というものが、飽くまで
基礎的な必需品増産に主力を置いた
事業を行わなければならないと規定されております。
それから二号にはこうした
公共事業にはできる限りの
失業者を有効に活用することであると規定せられておるのでございます。即ち
公共事業は
経済の復興と
失業者の吸收という
二つの目的で行うべきものであるというメモランダムが出されております。
尚この
公共事業原則の第九でありますが、裏の頁でございますが、
事業計画に使用せられる
労働者は公設の職業安定所の紹介によらなければならない。即ち
公共事業に使用する
労働者はすべて安定所の紹介する
労働者でなければならないと規定せられて参
つておるのでございます。
かような
意味合から昭和二十一年度以降今日まで
経済復興と
失業者吸收という
二つの目的で、この
事業が進められて参
つたのでありまするけれども、今日までの実績を
考えて参りますると、
公共事業はとかく建設復旧というコンストラクシヨンの
事業に傾きがちのものであるということが
一つ、第二番目には
公共事業実施の場所と、
失業者の分布の場所がマツチしなか
つたということ、或いは又
公共事業の
事業主体におきましては、公共職業安定所から紹介いたしまするところの
失業者を、
能率が
惡いという理由で使用することを嫌が
つたとい
つたような、いろんな理由からいたしまして、
経済復興という面は別といたしまして、
失業者吸收という面におきましては、大した成果を收めておるとは申上げることのできないような実情であ
つたのであります。ここにおきまして昨年の四月でありましたが、
公共事業に一定の
失業者の吸收率というものを設定いたしまして、これで河川或いはその他、これもお手許へお配りいたしておりまする、その資料の最後にございまするが、その資料にありまする
通り、都市
方面の
事業にはパーセンテージを多くいたしておりますが、一〇%乃至五〇%或いは大都市におきましては七〇%、八〇%、こういう
失業者の吸收率を不熟練
労働者につきまして設けまして、これによりまして安定所の紹介する
失業者を使
つて頂くというふうにして参
つたのでございます。その結果といたしまして大体昨年度におきましては、
公共事業の就労人数実人員が五十万でありましたが、そのうちの十万人
程度は安定所の紹介によりまして
失業者が就労してお
つたような実情であ
つたのでございます。かような
状態でありましたので、今回こうした
公共事業における今日までの
失業者吸收率の設定という、こういう行政措置でや
つてお
つたことを、
失業の深刻にな
つて参りました現段階に対処いたしまして、更にこれをより強力なものとして行きまするために、今日まで行な
つて参りました慣行を法文化するということが
一つ。それからもう
一つの問題は、従來の
公共事業の中には
公共事業とは申しましても、やはり二種類あ
つたわけでございます。即ちコンストラクシヨン
中心の
公共事業と、
一つは
失業者吸收というものを
中心としての
公共事業、この
二つがありましたのを、今回ははつきりとこれを分けまして、従來は
公共事業の
予算はすべて
経済安定本部の所管にな
つてお
つたのでありますが、
公共事業のうち
失業対策事業は
労働省所管にこれを移して
しまつて、
予算も
公共事業費と
失業対策事業費と
一つに分けることにいたしたのでございます。こういうふうな
関係からいたしまして、
公共事業における
失業者吸收率という現在までの慣行を法文化しまして、これを強化して行くということ、それから
失業対策事業というものを今回新らたに設けまして、
失業者に就業の
機会をできるだけ與えることを目的とした
事業をや
つて行くと、こういうことにいたした次第であるのでございます。
以上一般的のことを申上げまして、逐條的に簡單に御
説明申上げたいと存じます。
第一條に
法律の目的が掲げられてありますが、多数の
失業者の発生に対処して
失業対策事業と、
公共事業にできるだけ多数の
失業者を吸收する、そうしてその生活の安定を図ると共に、
経済の興隆に寄與することを目的とするのであります。第二條は
失業対策事業と
公共事業の定義でございまして、
公共事業は從來
経済安定本部でや
つておりました仕事の中から
失業対策事業を除いたものでございまして、大体において事柄の性質は公共的な即ち社会公共の福祉のためにする建設復旧の
事業を
公共事業と定義いたしております。
失業対策事業は、
失業者に就業の
機会を與えることを主たる目的といたしまして、
労働大臣が樹立する
計画及びその定める手続に
從つて國みずから、又は國庫の補助によ
つて地方公共團体等が
実施する
事業を言うのであります。こういうように
法律におきましてその定義を明らかにいたしております。第三條は
事業主体、施行主体の定義でございます。まず第二章の
失業対策事業の問題でございますが、これは大臣からもお話があ
つたと存じますが、本年度の
予算におきましては八億八百万円が計上されておるところの内容のものでありまして、第四條は
失業対策事業の要件を定めております。即ち
失業対策事業は、先程申上げましたように、
失業者吸收ということを主たる目的とする
関係上、
事業に或
程度の制約を設けたのでございます。即ち
失業対策事業の名において各般の
事業をやるということになりますれば、殊に行政の混淆を來しますので、
失業対策事業のみずからの姿をここに明記いたしたのでございます。第一号は、できるだけ多くの
労働者を使用する
事業でなければならないということ、第二号は、施行する場所は多数の
失業者が現に存在する、或いは又発生する虞れのある地域、そういう地域において施行されなければならないというのであります。発生する虞れがあるというのでありますので、大きな
企業整備等が行われまして、数千人の
失業者が出そうだという場合に
失業の防止のためにやる場合もあろうかと存じます。或いは又多数の
失業者が発生しておるというのでありますから、集團的な引揚民がおりまする場合にその地域に行うということもあろうかと存ずるのでございます。第三号は、
失業者の情況に應じこれを吸收するに適当な
事業とあります。この
失業者の情況と申しますのは、情況という文字よりも類型とい
つたふうな文字がぴ
つたりするのではないかと思いますが、即ち男女の性別或は技能の
程度、或いは一般
労働者、知識階級
労働者とい
つたふうな
労働者の類型に應じて、女子が非常に多いときには女子を吸收するにふさわしい
事業、或いは又知識階級が非常に多いときにはその知識階級をできるだけ吸收するに足るような
事業、こういうふうに定めておるのでございます。第四号は、これも一と裏腹になりまして、
事業費のうち労力費の占める割合が
労働大臣の定める率以上のものである
事業、こういうようなことが定められておるのであります。それから第五條以下が
失業対策事業を準備し
実施するまでの規定でございます。第五條は
失業状勢の
調査を
政府はやらなければならないということでございます。これにつきましては目下のところ
内閣統計局におきましていわゆるレーバーフオースの
調査があり、又毎年ではありませんが、國勢
調査等もあります。それから
労働省におきましては雇用
状態調査というものを毎月
行つております。更に又安定所の窓口から見ました雇用の趨勢等も
調査いたしております。そうした諸般の統計
調査というものを行いまして、
失業の状勢を
調査しなければならないと規定せられております。
第六條はこうした全國的な雇用及び
失業に関する
調査に基きまして多数の
失業者が発生し又は発生するおそれがあると認める場合には、これに対処するところの
失業対策事業を起すような、一定の
計画を定めて置かなければならないと規定せられております。この
計画を策定いたしますのは
労働大臣でありまして、即ち四半期ごとと申しますか、四半期ごと
程度に、どの地域にどの
程度の
失業者が出るだろうか、それではどの地域にどの
程度の
失業者を吸收するような
事業を起そうか、その
事業はいつから始めようか、どういう種類の
労働者が出るか、その
労働者の累計にマツチした
事業を起すにはどうするならばいいだろうかとい
つたふうな、総合的なその地域に必要な
失業対策の一般
計画を樹立いたすことになるのであります。そういたしますと第七條によりまして
労働省は或る地域にこうした
失業対策事業を起す必要があるとい
つたふうな地域を選んだり、或いは数を選んだり、或いはその状況等を
調査いたしまして、安定本部総務部長官に
連絡をいたすのでございます。
経済安定本部総務長官は
公共事業全般の所管の部局でありまするので、安定本部総務長官におきましては、
公共事業とのいろいろな睨み合せ等も
考えまして、この第四條に定めた
失業対策事業の要件に合致するような
事業を選び、その場合に注意すべきことは、できるだけ
経済的効果のあるものを選ぶという制限を受けておりますが、そうした下に安定本部総務長官が適当な
事業種目を選びまして
労働大臣に提出する、かような順序を経て
失業対策事業というものの
事業主体、種目及び規模等を予め定めて置きまして、第八條によりましていよいよ
失業対策事業を起すべきだと決定いたしますると、その権限は
労働大臣の所管といたしまして、
事業の開始又は停止の時期等を定めまして命令を発する、こういう形になるのでございます。
尚
失業対策事業の費用
関係でありますが、それは第九條に定められておりますように、國がみずからやる場合には、みずからの費用において行なう。地方公共團体が行なう場合には、國庫から必らず全部又は一部の補助を受けてやるということにな
つております。即ちこの
法律の建前としては國から全部又は一部の補助を受けて行う
失業対策事業のみを本法でいう
失業対策事業と定められておるのでございます。
第十條は
失業対策事業に使用する
労働者の問題でございます。これは雇用の問題と賃金の問題が
二つ定められております。即ち
失業対策事業はもともとが、ことの性質が安定所のいわゆる窓口に現われた
失業者を吸收するということが一番の狙いでありますので、結局におきまして安定所の紹介する
失業者でなければならないと定められておるのでございます。併し安定所が紹介することの困難な技術者、技能者、或いは監督者等は当然除いてあるのでございます。それから二番目は
失業対策事業に使用せられる
失業者に支拂われる賃金の金額の問題でございますが、御
承知のように
失業対策事業は、民間における
産業に吸收することができず、深刻な
失業状態にな
つてのみ、初めてこの
事業が起されるのであります。從いまして民間
企業の雇用を圧迫するということがあ
つてはならないし、あるべきものではありませんので、いわゆる民間雇用におけるところの賃金の額よりも、或る
程度低く定めなければならないというふうに限定しております。この賃金につきましては地域ごとに定めることが必要かと存じておる次第でございます。
以上が公共
失業対策事業の内要であります。
第三章は
公共事業の内容でございますが、これは最初に私申上げましたごとく、
失業者吸收率の決定というものを
中心といたされておるのでございます。十二條に、
労働大臣が
失業者吸收率を決定する。これは業種別に從い、職種別、又は地域別に定められておりますが、これは大体におきまして昨年の四月
経済安定本部総務長官が定めましたところの
失業者吸收率というものを踏襲して参りたい、かように
考えております。この運用に当りましては、
事業の遂行に支障を來たさないように注意をいたしたいと存じておる次第であります。第十三條は、その場合の
労働者の雇用の問題でございまして、
失業者吸收率の定められております場合には、その率に達するまで必要な
失業者を雇入れて置かなければならないという從來の例の
通りでございます。第十四條、第十五條は普通の例文でございます。
第四章は雜則でありますが、主とした監督規定であります。この
法律の建前といたしましては、罰則は一切科しておりません。單なる行政事務の監督の規定を設けておるに過ぎないのがこの
法律の
一つの特徴かと存ずるのでございます。即ち第十七條におきまして安定所が、
事業主体等がこの
法律違反の事項がありましたときには、その違反事項を明記いたしまして
事業の主体に是正の通知を発するのであります。第十八條によりまして、この
事業主体がその通知を受けました後二十日以内に違反事項を是正しない場合には、
労働大臣に安定所長はそうした旨を申達する。第十九條によりまして、
労働大臣は、
失業対策事業について前條の申達がありました場合には、
労働大臣は必要があると認めるときは、補助金の全部、又は一部について返還又は停止を命ずるということにいたしております。
公共事業につきましては
労働大臣の所管ではありませんので、第二十條に基いて安定本部総務長官に対し、違反事項の是正を請求することにいたしております。その請求がありますので第二十條、第二項に総務長官はその請求の内容を審査いたしまして、請求に正当な理由があると認めますときには、違反事項を是正するように必要な命令を発し、又安定本部総務長官は自己の認識におきまして必要があると認めるときは、当該
事業の全部又は一部の次期認証を拒否するということに相成
つておるのでございます。第二十一條、第二十二條は監督に関連いたしまする字句的な例文的な規定を掲げた次第でございます。以上
二つの
法律によりまして概要を申上げた次第であります。