○波多野鼎君 二十四年度の
予算案につきまして、第一
分科会におきまして次の点を修正する動議を
提出いたします。
先ず、歳出の
方面から申しますと、公共事業費を百億円増額する。その内訳は文教
施設費、いわゆる六三制の設備の拡充のために三十億円、農業改良補助金のために五十億円、住宅建設費のために二十億円をそれぞれ増額するのであります。総計百億円、それから地方配付税配付金を百六十億円増額する。減額の
方面を申上げますと、
價格調整費を五百七十五億八千八百万円減少いたします。その内訳は特定
産業向け
石炭價格調整補助金の中から三百三十七億円の減、
鉄鋼價格調整補助金の中から百五十六億円の減、同價格調整補助金の中から十億五千万円の減、
肥料價格調整補助金の中から六十五億二千五百万円の減、曹達價格調整補助金の中から七億一千三百万円の減、総計五百七十五億八千八百万円を
價格調整費の中から減ずるのであります。歳入の
方面を申上げますと、租税及び印紙收入の
予算額の中から四百十五億八千八百万円を減ずるのであります。内訳は所得税の中から三百八十一億五千五百万円の減、法人税の中から三十四億三千三百万円の減、その外に前年度剰余金から百億円を追加繰入れるのであります。以上が修正案の大要でありますが、この内容について若干御
説明を申上げます。
特定
産業向けの
石炭補給金はこれは四月末日を以て廃止する。それから
鉄鋼、銅、
肥料、曹達等の價格調整
補給金は年度内に順次減額して、最後に全廃するという
考えの下にすべて凡そ三割七分五厘ずつを、金額にしますと二百三十八億八千八百万圓になりますが、これを減少する。歳入の方の面におきましての所得税は大体個人並びに法人を押しなべて一割二分の軽減の金額になるのであります。今日單一爲替レートの復活、それと
日本経済の
自立が叫ばれておるのでありますが、他の商品と明確にその重要度を判別し難いいわゆる安定帶
物資と言われておる
鉄鋼品、銅、
肥料等数品目に対しまして、
國民の
負担において莫大な價格調整金が交付されておるということの不合理なことはすべての人の認めるところであります。早晩これが廃止さるべきものであるということはこれは当然予期されるところであります。このような不合理が今日まで続いて來たのは、この数品目の
消費者價格が上昇することによ
つて、一般物價の値上りを招くということを危惧しておつたからに外ならないのでありますが、この
補給金の額が年々増額されまして、本年度は安定帶
物資に対して千二十億、
輸入物資調整金、主として食糧並びに
肥料などにつきまして八百三十三億圓、塩の
輸入調整金が三十七億、総額二千二十二億という莫大な額になりまして、今日の租税收入の約四割をこういう
物資の
補給金に使用するということにな
つておる。これは
國民として甚だ納得できない
一つのやり方であると思うのであります。殊にこの基準年次に比較して見まして、あらゆる安定帶
物資の
生産者マル公價格が、その他の商品の
生産者價格に比較しまして、比較的に高いところに定められておるという点につきましては、これは我々として今後嚴密に檢討しなければならない点であろうと思うのであります。我々はこの單一爲替レートが設定されて、
日本経済が
自立に向
つて出発する時期に当りまして、この價格調整金をできるだけ減額して行く。そうして
企業家並びに全
國民に
日本経済の本当の姿というものは一体何であるかということを認識せしめ、この認識に基いて
企業の
合理化なり、
物資消費の規正なり、節約なりということを促進することが必要であるということを
考えておるのであります。併し一挙にこの
補給金を廃止いたしますると、現行の價格体系を激変せしめて、そのために
経済界に不測の混乱を招く虞れがありますので、この修正案におきましては、この点に考慮を拂いまして、先ず第一に特定
産業に対する
石炭の價格を一般並の炭價に引き直すために一ケ月間の余裕を置くことにいたしております。すでに昨年度より
日本鉄道に対する
石炭の供給價格は一般並に引き直しております。そうして使用炭價の値上げによりまして製品原價に若干の膨脹が予想される
企業におきましては、稼働率の向上とか、経営の
合理化など、或いは冗費の節約などによりまして、コストに及ぼす影響をできるだけ少くして貰うということが必要だろうと思います。かようにして究極において適正な
生産者價格を決定するという方向に向
つて努力すべきものであると我々は
考えております。更に第二次製品等にありましても、
企業合理化と、配給経費、公團などの配給経費の切下げによりまして、中間経費を極力圧縮して、若干の原材料の値上りをここに吸收させるべきであるというふうに
考えております。第二に
鉄鋼その他三品目の調整金の撤廃は、今直ちにこれを行いましては
消費者價格に急激な影響を與えるのでありますので、先ず第一四半期はこれを据え置いて、以後逐次これを半減して行くということによ
つて、これは明年度以降はこれを全廃するという漸進的な措置を採ることが適当であると
考えております。このような方法で削減することによ
つて、この間に
企業経営の
合理化、配給経費の節約、
生産稼働率の向上によるコスト低減の機会を以て、同時に現行公定價の著しく不合理なでこぼこを是正する期間を確保することができる、こういうふうに思
つております。これらの
價格調整費を、減額する一方、
國民生活の福利を直接に左右する公共事業費に対して百六十億圓を増額しまして、六三制の校舎建設費に三十億圓、食糧増産のための前堤であるところの農業改良補助金に五十億圓を追加支出いたしまして、最後に現在の
國民に取
つて最大の苦痛である住宅難を緩和するために住宅建設費を二十億圓増額出資しようとするものであります。更にこれと並行しまして、この
政府提出の
予算案を実行いたしました曉には、当然地方財政は破滅の運命に見舞われるということを危惧いたします
関係上、地方配付税法による配付金を百六十億圓増額したいと
考えておるのでございます。歳入の面につきましては、今日の
國民所得の計算につきましていろいろ問題があり、大きな水ぶくれ的な計算がなされておるということは、もうすべての
委員諸君の一致した見解のようであります。その上に立
つて所得税並びに法人税が徴收されておりますが、この税率は一應表面的には過重ではないように見られますが、今日の物價及び
生活費の現実から檢討しますと、先程申しました
國民所得の算定において大きな水ぶくれがありますために甚だ苛酷な圧迫を與えるということになるのであります。例えば年額五十万圓の所得者の支拂う税額はどの程度であるかと申しますと、地方税をも含めて、全所得の五割以上にもな
つておるのでありまして、差引手取凡そ二十五万圓内外でしかありません。これを基準年次における物價に換算して見ますと、僅かに年額千三百圓の收入でしかないというような状態であります。正にこれは当時の免税点に近いものと言わなければならないのであります。かようにして極めて零細な所得しかない、今日の
國民の大多数に
通りましては、現行税率では堪え難い苛酷な税
負担を強いられるという結果に
なつとしまうのであります。この税制につきましては、恐らく近い將來に十分檢討がされる機会があるだろうと思いますが、税の実質
負担の軽減はこれは一日も等閑に附してはならない重大な問題だろうと思
つております。現に四月以降におきましては米の
消費者價格並びに交通費、郵便料金、こういつたようなものが、皆一時に引上げられて、
國民は誰も彼を容赦なく一律に生計費の膨脹を余儀なくされておる状態であります。せめて税率は動かさないようにして、税額の幾分でも緩和することによりまして、今日まで
國民の肩に転嫁されておつた僅かに数品目の
物資に與えられておつたあの價格調整
補給金を
國民の手に返すということにしなければならんと思うのであります。これと同時に二十三年度剩余金見込中、これは二百億圓であるということを
政府側も
言つておりますから、その半分を國債償還に当てまして、半分の百億圓を計上いたしまして、前年度剩余金に加算しまして、これによ
つて税
負担の一部を軽減するというのが本修正案の趣旨であります。