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木村禧八郎君 私は
無所属懇談会を代表いたしまして、
衆議院送付の原案に反対するものであります。反対理由を要約いたしますと四点に帰著いたします。理由の第一は、この
予算の中には厖大な額の強制的な資本蓄積が計画されておるのでありまして、而もそれが過大見積の國民所得の基礎としているのでありまして、
日本経済乃至國民生活の現状から見まして著しく過大に過ぎ國民生活安定と再生産とのバランスを失し、國民生活を破綻に陷らしめ、延いては却
つて日本経済の安定、再建、自立化を阻害する結果となるという点であります。即ち本
予算の中には対日援助見返円資金として一千七百五十億円、
政府出資及び
財政償還金として七百五億、
價格調整費中蓄積分の推定が約五百億、合計して二千九百五十五億、ざつと三千億円の資本蓄積が強制的に計画されているのであります。これは國民の新たなる税
負担によ
つて賄われる強制的な資本蓄積であることは言うまでもありません。これは
一般会計予算七千四十六億円の実に四割強に当
つております。戰爭によ
つて莫大な資本を喪失した
日本にと
つて資本の蓄積が大切であることはドツジ氏の言を待つまでもありません。更にインフレーションは資本を浪費いたしますので、資本蓄積のためには、インフレーションを急速に收束する必要上実質的な総合的な均衡
予算を組む必要のあることも言うまでもないところであります。この点においては二十四
年度予算編成に当
つて表明されましたドツジ氏の見解は、正しく何ら異議を挾む余地はないと思います。ただその資本蓄積の速度
方法が
日本経済の実状から見て余りに早過ぎ且つ苛烈過ぎるというのであります。そうしてこの強制的資本蓄積を強行する結果として税
負担が六割を増加し、
公共事業費、六・三制
予算、
失業対策費が犠牲となり、更に
地方配付税が大幅に削減されまして、
地方財政を圧迫し、これを犠牲に供せんとしておるのであります。これほどの大きな犠牲を拂
つてまでも本
予算案に示された規模と
方法において、資本蓄積を強行するにはどうしても賛意を表し難いのであります。
理由の第二はこの強制的な資本蓄積に伴う犠牲が
労働者、農民、中小業者などの廣汎の勤労大衆のみに不当且つ不公正に
負担せしめておる点であります。税
負担につきましては、もう詳しく申すまでもなくこの
委員会において十分
討論されましたから、重複を避けますが、勤労
所得税が九六%増加されるに対して業主所得は五五%、そういう課税面においても不公平であります。又経済安定本部の調査によりましても、
昭和二十三
年度の闇所得は八千二百四十五億二千万円に達しております。このうち免税分を除いた脱税闇所得が五千九百億円もあ
つたと平田主税局長は言明しておるのであります。こういう闇所得を捕捉すれば、勤労所得のみならず、農業事業税、中小業者の
負担を軽減することができるに拘わらず、
政府は何らこれに対して積極的な
努力を示しておりません。この闇所得の捕捉については今闇所得の隠蔽に金融機関が協力しておりますが、逆に金融機関をこの闇所得の捕捉に協力する
方法を講ぜば、必ず闇所得は捕捉できると思うのでありますが、その点について
政府は何ら
努力をいたしませんのみならず、税
負担ばかりでなく、主食の値上り、又通信料金、鉄道運賃、そういうものの値上りによ
つて勤労大衆の生活は二重に圧迫されるのであります。こういう資本蓄積の犠牲と
負担は盡く勤労大衆に背負わせするということが、この
予算案にはつきり示されているのであります。
理由の第三はこの資本蓄積の強行の犠牲と
負担が勤労大衆に背負わせる半面、この
予算案の実行によ
つて、資本蓄積の過程において、独占的な大銀行大企業に莫大な利潤を與える仕組にな
つている点であります。米國の対日見返円資金千七百五十億円の大部分は公債償還、
復金債償還の形で金融機関の手にこれが還るのであります。金融機関がこれまでのような
考えで、この資金を運用しましたならば、
日本の今後の経済はこの独占的な大金融資本の手に握られてしまうわけであります。從
つてこの
予算を実行する以上どうしても金融機関の公共性、
日本銀行及び市中大銀行の公共性を非常に強めなければならないにも拘わらず、
政府はこれに対して何らの具体案も示しておりません。たまたま
日本銀行法の一部改正によ
つて、公共性を高めようとしているようでありますが、それも
日本銀行の改正法案すらまだ
國会に
提出されておらないのであります。この重大な
予算案の裏付けとなるべき
日本銀行の改正案さえまだ
國会に
提出されておらないのであります。
理由の第四は、この十八年間もインフレーション経済を続けて來ましたが、これを一挙にここで止めようという重大な、総額二兆億円にも達する重大な
予算案、この
予算案に対する
審議期間が極めて短いことなのであります。我々はこの二兆億にも達する而も画期的な重大な
予算案を
審議する期間として、非常に僅かな時間しか與えられない。そのために我々は責任を以て國民のために、この
予算を
審議することはできなか
つたのであります。
財政法第二十七條によれば大体
予算案審議のためには三ケ月の期間を要することが常則とされているに拘わらず、私はこの二兆億円の
予算案を
審議するために、我々にこの
予算委員会で総理大臣の
質問に対して、割当てられた時間は、僅かに五分間であります。この五分間を以て画期的な二兆億円の
予算をどうして責任を以て國民のために
審議することができましようか。
以上四つの理由を以ちまして、私はこの
予算案に反対し、これを返上して根本から組替えることを要求する者であります。